JP7535962B2 - 超仕上加工方法 - Google Patents

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Description

本発明は、被加工物の表面の精密仕上加工やホーニング加工等、種々の加工物の表面研磨加工に用いられる、水溶性加工液剤を用いた超仕上加工方法に関する。
炭素鋼、特殊鋼などの被加工物の表面とそれに接触した超仕上砥石とを所定の研磨方向に相対移動させるとともに、超仕上砥石を研磨方向に交差する方向で揺動させることにより、被加工物の表面に精密な研磨加工を行なう超仕上加工方法が知られている。この超仕上加工方法は、被加工物の表面を鏡面のような非常に精度の高い品質に仕上げる加工であり、その特徴から潤滑性、洗浄性に優れた不水溶性加工液剤、例えば油性研削液が用いられている。
上記不水溶性加工液剤は、潤滑性、洗浄性に優れたものであるが、火災のリスクが皆無ではなく、作業環境を悪化させるという不都合もある。これに対し、近年、超仕上加工方法において、研削液の水溶性化に対する取り組みが行なわれている。例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されている超仕上加工方法がそれである。
特許第6018728号公報 特許第6162649号公報
しかしながら、水溶性加工液剤を用いた超仕上加工は、不水溶性研削液剤を用いた場合よりも、切り屑の洗浄性や、砥粒の潤滑性が劣ることから、超仕上砥石が持つ本来の研削性能が充分に得られなかった。例えば、特許文献1に記載された水溶性加工液剤を用いた超仕上加工では、酸化アルミニウム、炭化珪素等の一般砥粒を用いた超仕上砥石を用いる場合には、水溶性加工液剤を用いると、超仕上砥石が持っている本来の研削性能が発揮できないという問題があった。また、特許文献2に記載された水溶性加工液剤を用いた超仕上加工では、目標の仕上性能を発揮するまでの加工時間が10秒(粗加工が8秒+超仕上加工が2秒)と長いため、サイクルタイムを重視する生産ラインには適していないという問題があった。
本発明は以上の事情を背景として為なされたものであり、その目的とするところは、超仕上加工において高い研削性能が得られる、水溶性加工液剤を用いた超仕上加工方法を提供することにある。
本発明者等は、以上の事情を背景として種々研究を重ねた結果、以下の知見を得た。超仕上げは、切削→目詰まり→仕上げ→新たなワーク面による目詰まりの除去→切削という超仕上サイクルにより行なわれると理論づけられているところ、不水溶性加工液剤から洗浄性に劣る水溶性加工液剤へ切り替られた場合には、砥粒による削除量が1/3程度に減少して目詰まりが顕著となるので、上記超仕上サイクルが充分に機能しない。このため、水溶性加工液剤を用いた超仕上加工を、粗加工用ビトリファイド砥石を用いた第1超仕上工程と、仕上加工用ビトリファイド砥石を用いた第2超仕上工程とに分割して役割分担させることで、第2超仕上工程における砥粒の削除量を軽減し、仕上加工用ビトリファイド砥石の砥粒を、高削除性能を有する材質で相対的に微粒子の#4000以上#8000以下の立方晶窒化ホウ素(CBN)砥粒をとし、且つ、砥石の洗浄性を高めるために仕上加工用ビトリファイド砥石の気孔率を60体積%以上81体積%以下の気孔率とすると、不水溶性加工液剤を用いた場合と変わらない被削材の表面粗さRaが短時間で得られるという事実を見出した。本発明は、斯かる知見に基づいて為されたものである。
すなわち、第1発明の要旨とするところは、(a)水溶性加工液剤の供給下で、粗加工用ビトリファイド砥石を用いた第1超仕上工程を実行し、次いで、仕上加工用ビトリファイド砥石を用いた第2超仕上工程を実行して被削材の凹溝に超仕上加工を行なう超仕上加工方法であって、(b)前記粗加工用ビトリファイド砥石及び前記仕上加工用ビトリファイド砥石は、長手状を成し、部分円筒面状の研磨面を長手方向の一方の端面に有し、(c)前記仕上加工用ビトリファイド砥石の砥粒は、前記粗加工用ビトリファイド砥石の砥粒よりも細粒であって、#4000以上#8000以下の立方晶窒化ホウ素砥粒であり、(d)前記仕上加工用ビトリファイド砥石の気孔率は、60体積%以上81体積%以下であり、(e)前記第2超仕上工程において、前記仕上加工用ビトリファイド砥石は、0.6MPa以上2.0MPa未満の面圧力で前記研磨面が前記被削材の凹溝に押圧され、100cpm以上300cpm未満の揺動数で前記研磨面の曲率中心まわりに揺動させられることにある。
発明の要旨とするところは、第1発明において、前記第1超仕上工程に用いる前記粗加工用ビトリファイド砥石の砥粒は、#2000以上#3000以下の立方晶窒化ホウ素砥粒であることにある。
発明の要旨とするところは、第発明において、前記被削材は、0.03μm以下の表面粗さRaとなるように超仕上げされることにある。
発明の要旨とするところは、第1発明から第発明のいずれか1の発明において、前記水溶性加工液剤は、前記水溶性加工液剤の組成物の全量を基準として、1質量%以上40質量%以下の無機塩と、60質量%以上90質量%以下の水とを含み、前記組成物の5%希釈液の25℃におけるpHが10以上14以下である。
発明の要旨とするところは、第発明において、前記無機塩は、リン酸、炭酸、ケイ酸、およびホウ酸のナトリウム塩とリン酸、炭酸、ケイ酸、およびホウ酸のカリウム塩とからなる群から選ばれる少なくとも2種類から構成されるものである。
第1発明の超仕上加工方法によれば、前記第2超仕上工程に用いられる前記仕上加工用ビトリファイド砥石の砥粒は、前記第1超仕上工程に用いられる前記粗加工用ビトリファイド砥石の砥粒よりも細粒であって、#4000以上#8000以下の立方晶窒化ホウ素砥粒であり、前記仕上加工用ビトリファイド砥石の気孔率は、60体積%以上81体積%以下である。このため、仕上加工用ビトリファイド砥石の砥粒を、高削除性能を有する立方晶窒化ホウ素(CBN)砥粒で相対的に微粒子とすることができるので、第2超仕上工程における砥粒の削除量の負担が軽減される。また、仕上加工用ビトリファイド砥石は60体積%以上81体積%以下の気孔率を有するので、仕上加工用ビトリファイド砥石に対する水溶性加工液剤の浸透が容易となって切り屑の排出性が高められる。これにより、高い研削性能が得られる。また、被削材において充分な表面粗さRaが短時間で得られる。
また、前記粗加工用ビトリファイド砥石及び仕上加工用ビトリファイド砥石は、長手状を成し、部分円筒面状の研磨面を長手方向の一方の端面に有するものであり、前記第2超仕上工程において、前記仕上加工用ビトリファイド砥石は、0.6MPa以上2.0MPa未満の面圧力で前記研磨面が前記被削材の凹溝に押圧され、100cpm以上300cpm未満の揺動数で前記研磨面の曲率中心まわりに揺動させられる。これにより、被削材において充分な表面粗さRaが短時間で得られる。
発明の超仕上加工方法によれば、前記第1超仕上工程に用いる前記粗加工用ビトリファイド砥石の砥粒は、#2000以上#3000以下の立方晶窒化ホウ素砥粒である。これにより、相対的に粗い粒度の砥粒による研削によって削除量が多くなるので、仕上加工用ビトリファイド砥石の砥粒による削除量が軽減され、被削材において充分な表面粗さRaが短時間で得られる。また、砥石寿命が向上する。
発明の超仕上加工方法によれば、前記被削材は、0.03μm以下の表面粗さRaとなるように超仕上げされる。これにより、被削材において充分な表面粗さRaが短時間で得られる。
発明の超仕上加工方向によれば、前記水溶性加工液剤は、前記水溶性加工液剤の組成物の全量を基準として、1質量%以上40質量%以下の無機塩と、60質量%以上90質量%以下の水とを含み、前記組成物の5%希釈液の25℃におけるpHが10以上14以下であり、アルコールおよびアルキルエーテルを含まない。このように、前記水溶性加工液剤は、アルコールおよびアルキルエーテルを用いないので、切り屑の排出性が高められ、優れた削除量が得られる。
発明の超仕上加工方法によれば、前記無機塩は、リン酸、炭酸、ケイ酸、およびホウ酸のナトリウム塩とリン酸、炭酸、ケイ酸、およびホウ酸のカリウム塩とからなる群から選ばれる少なくとも2種類から構成されるものである。これにより、滑らかな鏡面の超仕上加工が得られる。
本発明の一実施例の超仕上加工方法に用いる超仕上砥石の外観を例示する斜視図である。 図1の超仕上砥石による超仕上加工方法の一例であって、ボール軸受の内周輪の外周面にボール(鋼球)を受けるために形成された凹溝である軌道面を超仕上加工により研磨(研削)する状態を説明する図である。 図1及び図2に示す超仕上砥石の製造工程の一例を示す工程図である。 図2の超仕上加工方法を説明する工程図である。 一般砥石を用いて超仕上加工を行なったときの削除量、砥石摩耗量、表面粗さRaを、不水(油性)研削液及び水溶性研削液毎に対比して示す図である。 CBN砥石を用いて超仕上加工を行なったときの削除量、砥石摩耗量、表面粗さRaを、不水(油性)研削液及び水溶性研削液毎に対比して示す図である。 表5の粗加工法Ma、粗加工法Mb、粗加工法Mcによりそれぞれ得られた被削材の削除量を、対比して示す図である。 表5の粗加工法Ma、粗加工法Mb、粗加工法Mcによりそれぞれ得られた被削材の表面粗さRaを、対比して示す図である。 表5の粗加工法Ma、粗加工法Mb、粗加工法Mcによりそれぞれ得られた1カット当たりの砥石摩耗量を、対比して示す図である。 表6の粗加工法Md及び粗加工法Mbによりそれぞれ得られた削除量を、対比して示す図である。 表6の粗加工法Md及び粗加工法Mbによりそれぞれ得られた被削材の表面粗さRaを、対比して示す図である。 表6の粗加工法Md及び粗加工法Mbによりそれぞれ得られた砥石摩耗量を、対比して示す図である。 表7の粗加工法Me、粗加工法Mf、粗加工法Mbによりそれぞれ得られた削除量を、対比して示す図である。 表7の粗加工法Me、粗加工法Mf、粗加工法Mbによりそれぞれ得られた被削材の表面粗さRaを、対比して示す図である。 表7の粗加工法Me、粗加工法Mf、粗加工法Mbによりそれぞれ得られた砥石摩耗量を、対比して示す図である。 粗加工法Mbで用いられた表7の砥石1Bの研磨面を示すデジタルマイクロスコープ画像(光学顕微鏡写真)を示す図である。 表10の仕上加工法Fa、Fb、Fc、Fdによりそれぞれ得られた削除量を、対比して示す図である。 表10の仕上加工法Fa、Fb、Fc、Fdによりそれぞれ得られた被削材の表面粗さRaを、対比して示す図である。 表10の仕上加工法Fa、Fb、Fc、Fdによりそれぞれ得られた砥石摩耗量を、対比して示す図である。 表11の仕上加工法Fe、Fc、Ff、Fgによりそれぞれ得られた、削除量を、対比して示す図である。 表11の仕上加工法Fe、Fc、Ff、Fgによりそれぞれ得られた、被削材の表面粗さRaを、対比して示す図である。 表11の仕上加工法Fe、Fc、Ff、Fgによりそれぞれ得られた、砥石摩耗量を、対比して示す図である。 表12の砥石2bと不水研削液とを用いた仕上加工法Fc、砥石2aと水溶性研削液とを用いた仕上加工法Fc、砥石2bと水溶性研削液とを用いた仕上加工法Fcによりそれぞれ得られた削除量を、対比して示す図である。 表12の砥石2bと不水研削液とを用いた仕上加工法Fc、砥石2aと水溶性研削液とを用いた仕上加工法Fc、砥石2bと水溶性研削液とを用いた仕上加工法Fcによりそれぞれ得られた被削材の表面粗さRaを、対比して示す図である。 表12の砥石2bと不水研削液とを用いた仕上加工法Fc、砥石2aと水溶性研削液とを用いた仕上加工法Fc、砥石2bと水溶性研削液とを用いた仕上加工法Fcによりそれぞれ得られた砥石摩耗量を、対比して示す図である。 仕上加工法Fcにおいて、砥石2b、砥石2c、砥石2d、砥石2eを用いたときにそれぞれ得られた削除量を、対比して示す図である。 仕上加工法Fcにおいて、砥石2b、砥石2c、砥石2d、砥石2eを用いたときにそれぞれ得られた被削材の表面粗さRaを、対比して示す図である。 仕上加工法Fcにおいて、砥石2b、砥石2c、砥石2d、砥石2eを用いたときにそれぞれ得られた砥石摩耗量を、対比して示す図である。 表11の仕上加工法Fcで用いられた砥石2dの研磨面を示すデジタルマイクロスコープ画像(光学顕微鏡写真)を示す図である。 表14の組合せ1~組合せ5を用いたときにそれぞれ得られた削除量を、対比して示す図である。 表14の組合せ1~組合せ5を用いたときにそれぞれ得られた被削材の表面粗さRaを、対比して示す図である。 表14の組合せ1~組合せ5を用いたときにそれぞれ得られた砥石摩耗量を、対比して示す図である。
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比及び形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例である超仕上砥石10の外観を例示する斜視図である。本実施例の超仕上砥石10は、例えば玉軸受の内輪の軌道面の鏡面仕上研磨加工や平面、円筒面、螺旋形状面、及びその他の形状面のホーニング加工乃至超仕上加工に専ら用いられる長手状のビトリファイド砥石である。例えば、図1に示す超仕上砥石10は、長手方向の一方の端面が曲率中心K1を幅方向の中心線上に有する部分円筒面状の研磨面12とされた直方体状(スティック状)に形成されたものであり、横方向寸法W1が5.5mm程度、縦方向寸法H1が5.5mm程度、長さ(長手)方向寸法L1が25mmから30mmとなるように形成されている。
図2は、図示しない超仕上研磨装置(超仕上盤)における超仕上研磨(超仕上加工方法)を説明する図である。超仕上砥石10の研磨面12は、図2に示すように、玉軸受のボール(鋼球)を受けるために形成された被加工物である内輪20(被削材:SUJ-2、HRC60以上)の外周面に周方向に連続して形成された凹溝状の軌道面22の形状に合わせて軌道面22と同じ曲率の凸面に形成されている。図示しない超仕上研磨装置(超仕上盤)における超仕上研磨に際しては、その研磨面12が軌道面22に当接させられた状態で、内輪20が軸心C1まわりに連続回転させられると同時に、所定の砥石面圧(Pa)の付与下において、超仕上砥石10が研磨面12の曲率中心K1まわりに所定の揺動数(cpm)で連続揺動させられる。これにより、軌道面22では、研磨面12が主研磨方向である周方向に摺接させられると同時に、その主研磨方向に交差する方向に往復移動させられて、軌道面22に超仕上加工(研磨加工)、すなわち後述する図4の第1超仕上工程PP1及び第2超仕上工程PP2が行われる。
上記軌道面22の超仕上加工は、図2に示すように、内輪20の外周面に形成された軌道面22とそれに摺接させられる超仕上砥石10の研磨面12との間に、例えばノズルNからの水溶性加工液剤Fが十分に供給された湿式で行なわれる。
上記水溶性加工液剤Fは、例えば、その組成物の全量を基準として、1~40質量%の塩と、60~99質量%の水とを含有し、前記塩が、リン酸ナトリウム塩、リン酸カリウム塩、炭酸ナトリウム塩、炭酸カリウム塩、ケイ酸ナトリウム塩、ケイ酸カリウム塩、ホウ酸ナトリウム塩、ホウ酸カリウム塩からなる群から選ばれる少なくとも2種から成る無機塩からなり、前記組成物の5%希釈液の25℃におけるpHが10~14である。上記無機塩は、正塩、酸性塩(水素塩)、又は塩基性塩が用いられ、その無機塩は、無水物でも、水和物でもよい。被加工物である内輪20に錆が発生しやすくなることを防止するため、水溶性加工液剤Fは、例えばアルコール及びアルキルエーテルや、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩などの他の無機塩を含まないし、アミン塩又はアンモニウム塩等の有機塩も含まない。
超仕上砥石10a,10bは、鋳込み成形法によっても製造され得るが、プレス成形法によっても製造され得る。図3は、プレス成形法を用いた超仕上砥石10a,10bの製造工程の一例を示す工程図である。本実施例の超仕上砥石10は、超砥粒例えば立方晶窒化ホウ素(CBN)砥粒から成る研磨砥粒32と、その研磨砥粒32を互いに結合する無機質結合剤(ビトリファイドボンド)34と、それら研磨砥粒32及び無機質結合剤34の間に形成された連通気孔と、その連通気孔内に含浸された例えば硫黄又は石蝋(石油系パラフィン)などの固体潤滑剤とを備え、60~81体積%の気孔率を有している、粗加工用ビトリファイド砥石10a及び仕上加工用ビトリファイド砥石10bである。粗加工用ビトリファイド砥石10a及び仕上加工用ビトリファイド砥石10bは、粗加工用ビトリファイド砥石10aの砥粒32が#2000以上#3000以下の粒度であり、仕上加工用ビトリファイド砥石10bの砥粒32が#4000以上#8000以下の粒度である点で相違するが、他は同様に構成されている。
図3において、先ず、攪拌工程PB1では、粗加工用ビトリファイド砥石10aとして予め用意された#2000以上#3000以下の粒度、または仕上加工用ビトリファイド砥石10bとして予め用意された粒度の立方晶窒化ホウ素(CBN)砥粒32と、無機質結合剤(ビトリファイドボンド)34と、成形助剤36と、必要に応じて混入される気孔形成剤38とが所定の割合で調合された後攪拌されることにより、混練或いは混合される。
気孔形成剤38は焼成後の超仕上砥石10a,10b内に気孔を形成するためのスチロール、ポリエステル、エポキシ等の合成樹脂から成るレジンボールやクルミ粉等である。また、成形助剤36は、混合性、成形性、保形性等を高めるためのものであり、デキストリン(合成澱粉)、水、フェノールレジン、ポリエチレングリコールなどが用いられる。
上記所定の割合は、超仕上砥石10a,10bの砥石硬度(ロックウェル硬度)HRが目的とする硬度となるように調節される。また、粒度は、JIS R6001:1987に規定されたもの(精密研磨用微粉/電気抵抗法)であり、#2000は、最大粒子径が19μm、累積高さの50%の粒子径が6.7±0.6μmを示し、#3000は、最大粒子径が13μm、累積高さの50%の粒子径が4.0±0.5μmを示し、#4000は、最大粒子径が11μm、累積高さ50%の粒子径が3.0±0.4μm、#8000は、最大粒子径が6.0μm、累積高さ50%の粒子径が1.2±0.3μmを示す。
続く成形工程PB2では、上記攪拌工程PB1の攪拌により得られた混合材料から分割された予め設定された一定の分量に対して、プレス装置を用いて所定の密度となるように加圧成形され、所定の形状の成形品すなわち生砥石が作製される。この生砥石はブロック体である。
次いで、乾燥工程PB3では、その成形品(生砥石)が所定の乾燥温度例えば60℃で24時間乾燥された後、焼成工程PB4において、所定の焼成炉内において無機質結合剤34が溶融させられる適当な温度で数時間保持する事によって成形品が焼成される。
そして、仕上工程PB5において所定寸法に切り出されるとともに、例えば150℃程度にて液化させられた硫黄が砥石組織の連通気孔内に含浸させられ、且つ検査工程PB6において所定の検査項目の検査が行われることにより、最終製品である超仕上砥石10a,10bが得られる。
図4は、第1超仕上工程PP1及び第2超仕上工程PP2に分割されている本実施例の超仕上加工を示している。粗加工を目的とした第1(粗)超仕上工程PP1では、前述の粗加工用ビトリファイド砥石10aを用いた図2に示す超仕上研磨が、100cpm以上300cpm未満の砥石揺動数で粗加工用ビトリファイド砥石10aが研磨面の曲率中心K1まわりに揺動させられ、0.5MPa以上3.0MPa未満の砥石面圧下において、ノズルNからの水溶性加工液剤Fが十分に供給された湿式状態で、例えば3秒間実行される。砥石面圧が0.5MPa未満となると、削除量が低下して表面粗さRa(算術平均粗さ:JIS B 0601:2013)が悪化する可能性がある。また、砥石面圧が3.0MPa以上となると、砥石摩耗が増大する。
次いで、仕上加工を目的とした第2(仕上)超仕上工程PP2では、前述の仕上加工用ビトリファイド砥石10bを用いた図2に示す超仕上研磨が、100cpm以上300cpm未満の砥石揺動数で仕上加工用ビトリファイド砥石10bが研磨面の曲率中心K1まわりに揺動させられ、0.6MPa以上2.0MPa未満の砥石面圧下において、例えばノズルNからの水溶性加工液剤Fが十分に供給された湿式状態で、例えば3秒間実行される。砥石面圧が0.6MPa未満では、圧力不足から削除量が減少する。また、砥石面圧が2.0MPa以上では、砥石面圧が高くなり過ぎて切り屑の凝着が顕著となり削除量が減少する。削除量が減少すると時間内に充分な表面粗さRaが得られない。
上記第1超仕上工程PP1及び第2超仕上工程PP2による合計6秒の加工が施された内輪20では、径方向の削除量が7.0φμm以上、表面粗さRaが0.02μm以下、及び1カット当たりの砥石摩耗量が第1超仕上工程PP1で0.7μm/cut、第2超仕上工程PP2で0.2μm/cutが達成される。
(実験例1)
本発明者等は、先ず、不水研削液(不水溶性加工液剤)と水溶性研削液(水溶性加工液剤)との研磨性能の差異を確認するために、以下の試験条件(表1、表2)を用いて一般砥石とCBN砥石との研削試験を行なった。この研削試験では、玉軸受の内輪30個(始めの10個は捨て研削)を研削した。研削性能については、20個の平均値から削除量(φμm)を決定し、28、29、30個目の平均値から砥石摩耗量を決定し、1カット当たりの砥石摩耗量(μm/cut)を加工前後の差から算出した。以後の実験例でも同様の評価を実施した。なお、表2等の結合材の「ビト」の記載は、ビトリファイドを示している。
表1(一般砥石とCBN砥石との比較試験条件)
研削機械:超仕上研削盤
被削材:玉軸受の内輪(外径25mm×内径17mm×厚さ12mm)
被削材の材質:SUJ-2
被削材の硬度:HRC60以上
砥石寸法:横5.5mm×縦5.5mm×長さ35mm
研削液:水溶性研削油(ノリタケクールC’-30T)
加工物回転数:5700rpm
砥石揺動数:粗700cpm、仕上げ200cpm
砥石揺動角:±18°
加工面圧:粗1.9MPa、仕上げ0.6MPa
加工時間:粗3sec、仕上げ3sec
加工数:30個(捨研10個)
表2(試験砥石)
砥粒 粒度 結合度 集中度 結合剤 備考
一般砥石 WA/GC #3000 RH40 - ビト 硫黄処理
CBN砥石 CBN #3500 - 90 ビト -
図5は、一般砥石を用いて超仕上加工を行なったときの削除量(φμm)、砥石摩耗量(μm)、表面粗さRa(μm)を、不水(油性)研削液及び水溶性研削液毎に対比して示している。水溶性研削液で超仕上加工を行なったとき、超仕上用の一般砥石(#3000)の研削性能は、不水研削液と比較して削除量が減少し、砥石摩耗量が増加する傾向が確認された。
図6は、CBN砥石を用いて超仕上加工を行なったときの削除量(φμm)、砥石摩耗量(μm)、表面粗さRa(μm)を、不水(油性)研削液及び水溶性研削液毎に対比して示している。水溶性研削液で超仕上加工を行なったとき、超仕上用のCBN砥石(#3500)の研削性能は、不水研削液と比較して削除量が殆ど同様で、砥石摩耗量が増加する傾向が確認された。
(実験例2)
本発明者等は、超仕上げの第1超仕上工程PP1に用いられる粗加工用ビトリファイド砥石10a(粗加工用CBN砥石)について、以下に示す粗(第1超仕上)加工試験条件(表3、表5、表6、表7)及び試験砥石(表4)を用いて、砥石面圧(MPa)、砥石揺動数(cpm:1分当たりの揺動回数)、砥粒の粒度が異なる粗加工法毎に研削性能を、削除量(φμm)、表面粗さRa(μm)、砥石摩耗量(μm /cut)を測定することで確認した。
表3(粗加工試験条件)
研削機械:超仕上研削盤
被削材:玉軸受の内輪(外径25mm×内径17mm×厚さ12mm)
被削材の材質:SUJ-2
被削材の硬度:HRC60以上
砥石寸法:横5.5mm×縦5.5mm×長さ35mm
研削液:水溶性研削液(ノリタケクールC’-30T)
被削材回転数:5700rpm
砥石揺動数:粗300~700cpm
砥石揺動角:±18°
加工面圧:粗0.5~3.0MPa
加工時間:粗3sec
加工数:30個(捨研10個)
表4(粗加工試験に用いた試験砥石)
砥粒 粒度 結合度 集中度 結合剤
砥石1A CBN #3000 N 90 ビト
砥石1B CBN #2000 N 90 ビト
表5(砥石面圧が異なる粗加工試験に用いた粗加工法)
試験砥石 砥石揺動数 砥石面圧
粗加工法Ma 砥石1A 700cpm 0.5MPa
粗加工法Mb 砥石1A 700cpm 1.0MPa
粗加工法Mc 砥石1A 700cpm 3.0MPa
粗加工法Ma、Mb、Mcは、砥石面圧(MPa)が相違し、他は同様の粗加工条件である。図7及び図8は、粗加工法Ma(砥石面圧0.5MPa)、粗加工法Mb(砥石面圧1.0MPa)、粗加工法Mc(砥石面圧3.0MPa)における削除量(φμm)及び被削材の表面粗さRa(μm)を、それぞれ示している。図9は、粗加工法Ma(砥石面圧0.5MPa)、粗加工法Mb(砥石面圧1.0MPa)、粗加工法Mc(砥石面圧3.0MPa)における1カット当たりの砥石摩耗量(μm/cut)を示している。
図7から図9に示されるように、粗加工法Ma(砥石面圧0.5MPa)と粗加工法Mb(砥石面圧1.0MPa)とを比較すると、表面粗さRaは同等であり、削除量は粗加工法Mb(砥石面圧1.0MPa)が有利な結果が得られた。粗加工法Mc(砥石面圧3.0MPa)では、図9に示されるように、砥石摩耗が異常に大きく、正常な粗加工ができていない。このような結果から、水溶性研削液下での粗加工は、粗加工法Mbが好適であり、砥石面圧は好ましくは0.7以上1.5MPa以下、さらに1.0MPa付近において最適である。
表6(異なる砥石揺動数を粗加工試験に用いた粗加工法)
試験砥石 砥石揺動数 砥石面圧
粗加工法Md 砥石1A 300cpm 1.0MPa
粗加工法Mb 砥石1A 700cpm 1.0MPa
粗加工法Md及び粗加工法Mbは、砥石の揺動数(cpm)が相違し、他は同様の粗加工条件である。図10、図11及び図12は、粗加工法Md(揺動数300cpm)及び粗加工法Mb(揺動数700cpm)における削除量(φμm)、被削材の表面粗さRa(μm)、及び砥石摩耗量(μm/cut)を、それぞれ示している。図10、図11及び図12に示すように、粗加工法Md(揺動数300cpm)と粗加工法Mb(揺動数700cpm)との対比において、削除量(φμm)、被削材の表面粗さRa(μm)、及び砥石摩耗量(μm/cut)について僅かな差異しかなく、揺動数の差異に起因する研削性能の大きな差異を見出すことができなかった。しかし、傾向として、表面粗さについては粗加工法Md(揺動数300cpm)が有利であり、削除量については粗加工法Mb(揺動数700cpm)が有利であった。
表7(粒度が異なる砥石を粗加工試験に用いた粗加工法)
試験砥石 粒度 加工条件
粗加工法Me 砥石1A #3000 不水研削液を用いた粗加工法Mb
粗加工法Mf 砥石1B #2000 砥石1Bを用いた粗加工法Mb
粗加工法Mb 砥石1A #3000 砥石1Aを用いた粗加工法Mb
粗加工法Me、粗加工法Mf、粗加工法Mbは、粗加工法Meは不水研削液が用いられている点、粗加工法Mf及び粗加工法Mbは水溶性研削液がそれぞれ用いられるものの粒度が相違している点で相違し、他は同様の粗加工条件である。図13、図14、図15は、粗加工法Me(不水研削液、CBN砥粒#3000)、粗加工法Mf(水溶性、CBN砥粒#2000)、粗加工法Mb(水溶性、CBN砥粒#3000)における削除量(φμm)、被削材の表面粗さRa(μm)、及び砥石摩耗量(μm/cut)を、それぞれ示している。
図13、図14、図15に示すように、粗加工法Mf(水溶性、CBN砥粒#2000)、粗加工法Mb(水溶性、CBN砥粒#3000)のいずれにも、水溶性化による研削性能の低下は確認されなかった。削除量が優先される加工では粗加工法Mf(水溶性、CBN砥粒#2000)が適しており、表面粗さRaが優先される加工では粗加工法Mb(水溶性、CBN砥粒#3000)が適している。水溶性研削液下では、砥石面の切り屑の凝着が多くなる傾向となるが、粗加工法Mb(水溶性、CBN砥粒#3000)では、図16に示すように、正常な砥石面が得られた。図16及び図29は、縮尺を50倍、光源を斜光として(株)キーエンス製のVHX-600により撮影したデジタルマイクロスコープ画像である。
(実験例3)
本発明者等は、砥石1Aを用いた粗加工法Mbによる粗加工後に、仕上用の第2超仕上工程PP2に用いられる仕上加工用ビトリファイド砥石10b(仕上加工用CBN砥石)について、以下に示す仕上(第2超仕上)加工試験条件(表8、表10、表11、表12、表13)及び試験砥石(表9)を用いて、砥石面圧(MPa)、砥石揺動数(cpm:1分当たりの揺動回数)、砥粒の粒度、砥石の気孔率(体積%)が異なる仕上加工毎に研削性能を、削除量(φμm)、表面粗さRa(μm)、砥石摩耗量(μm/cut)を測定することで確認した。
表8(仕上加工試験条件)
研削機械:超仕上研削盤
被削材:玉軸受の内輪(外径25mm×内径17mm×厚さ12mm)
被削材の材質:SUJ-2
被削材の硬度:HRC60以上
砥石寸法:横5.5mm×縦5.5mm×長さ35mm
研削液:水溶性研削液(ノリタケクールC’-30T)
被削材回転数:5700rpm
砥石揺動数:粗300~500cpm
砥石揺動角:±18°
加工面圧:仕上げ0.3~2.0MPa
加工時間:仕上げ3sec
加工数:30個(捨研10個)
表9(試験砥石)
砥粒 粒度 結合度 集中度 結合剤 気孔率
砥石2a CBN #4000 N 90 ビト 54.5体積%
砥石2b CBN #8000 N 90 ビト 56体積%
砥石2c CBN #8000 Q 140 ビト 30体積%
砥石2d CBN #8000 N 90 ビト 60体積%
砥石2e CBN #8000 I 38 ビト 81体積%
表10(砥石面圧が異なる仕上加工試験に用いた仕上加工法)
試験砥石 砥石揺動数 砥石面圧
粗加工法Mb 砥石1A 700cpm 1.0 MPa
仕上加工法Fa 砥石2b 200cpm 0.30MPa
仕上加工法Fb 砥石2b 200cpm 0.60MPa
仕上加工法Fc 砥石2b 200cpm 1.0 MPa
仕上加工法Fd 砥石2b 200cpm 2.0 MPa
図17、図18、図19は、粗加工法Mbに続いて行なわれた仕上加工法Fa、Fb、Fc、Fdにより得られた、削除量(φμm)、被削材の表面粗さRa(μm)、及び砥石摩耗量(μm/cut)を、それぞれ示している。一般的に、砥石面圧と削除量との間には比例関係があるが、水溶性研削液下の仕上加工では、砥石面圧1.0MPaにおいて削除量が最大であり、0.6MPaにおいて削除量が次に大きく、2.0MPaにおいて削除量が3番目となっている。このことは、砥石面圧を大きくしたことで目詰まり、凝着が顕著となり削除能力が低下したと考えられる。水溶性研削液は不水研削液よりも目詰まり、凝着が生じやすいこと、凝着が生じ易い仕上加工であったことが相乗して、上記の結果となったと推定される。本結果から、砥石面圧は、0.6MPa以上2.0MPa未満の範囲、さらに0.6MPa以上1.0MPa以下の範囲が好適であることが明確となった。
表11(砥石揺動数が異なる仕上加工試験に用いた仕上加工法)
試験砥石 砥石揺動数 砥石面圧
粗加工法Mb 砥石1A 700cpm 1.0MPa
仕上加工法Fe 砥石2b 100cpm 1.0MPa
仕上加工法Fc 砥石2b 200cpm 1.0MPa
仕上加工法Ff 砥石2b 300cpm 1.0MPa
仕上加工法Fg 砥石2b 500cpm 1.0MPa
図20、図21、図22は、粗加工法Mbに続いて行なわれた仕上加工法Fe、Fc、Ff、Fgにより得られた、削除量(φμm)、被削材の表面粗さRa(μm)、及び砥石摩耗量(μm/cut)を、それぞれ示している。仕上加工では、砥石揺動数200cpmが最も削除量が多く、砥石揺動数100cpm、砥石揺動数300~500cpmの順に削除量が減少する傾向が確認された。
この結果は、揺動数と削除量とに否定関係が見られた粗加工とは異なる傾向であった。この要因としては、面圧の変化の場合と同様に、砥石面の目詰まり、凝着が考えられる。目詰まりは被削材の切り屑が砥石の空隙に体積することで生じるため、切り屑の大きさを大きくすることで目詰まりを抑制することができる。砥石揺動数を減らすことで、砥石と被削材との接触時間が長くなり、切り屑の大きさが大きくなる。不水研削液と比較して水溶性研削液は洗浄性が低いため、切り屑のサイズが大きくなるような条件を設定することが重要である。本結果から、水溶性研削液下では、砥石揺動数が100cpm以上300cpm未満の範囲が好ましく、さらに100cpm以上200cpm以下の範囲が最適である。
表12(粒度が異なる砥石を用いた仕上加工試験)
粒度 加工条件
砥石2b(参考) #8000 不水研削液を用いた仕上加工法Fc
砥石2a #4000 砥石2aを用いた仕上加工法Fc
砥石2b #8000 砥石2bを用いた仕上加工法Fc
図23、図24、図25は、粗加工法Mbに続いて行なわれた、粒度#8000の砥石2bと不水研削液とを用いた仕上加工法Fc、粒度#4000の砥石2aと水溶性研削液とを用いた仕上加工法Fc、粒度#8000の砥石2bと水溶性研削液とを用いた仕上加工法Fcにより得られた、削除量(φμm)、被削材の表面粗さRa(μm)、及び砥石摩耗量(μm/cut)を、それぞれ示している。粒度#4000、粒度#8000のいずれでも、水溶性化による研削性能の低下は確認されなかった。削除量を優先する加工の場合には粒度#4000の砥石2aが適しており、表面粗さRaを優先する加工の場合には粒度#8000の砥石2bが適している。
表13(気孔率が異なる砥石を用いた仕上加工試験)
粒度 気孔率 加工条件
砥石1A #3000 粗加工法Mb
砥石2b(参考)#8000 56 不水研削液を用いた仕上加工法Fc
砥石2b #8000 56 仕上加工法Fc
砥石2c #8000 30 仕上加工法Fc
砥石2d #8000 60 仕上加工法Fc
砥石2e #8000 81 仕上加工法Fc
図26、図27、図28は、粗加工法Mbに続いて行なわれた、粒度#8000の砥石を用いた仕上加工法Fcにおいて、気孔率が56体積%の砥石2b、気孔率が30体積%の砥石2c、気孔率が60体積%の砥石2d、気孔率が81体積%の砥石2eを用いたときに得られた、削除量(φμm)、被削材の表面粗さRa(μm)、及び砥石摩耗量(μm/cut)を、それぞれ示している。
気孔形成剤を用いた人工(強制)気孔のない気孔率30%の砥石2cは、削除量が非常に少なく、砥石面に負荷がかかることで異常摩耗が生じた。気孔率を60体積%まで増加させた砥石2dは、削除量が1.1φμmと増加し、表面粗さRaも0.02μm以下となった。さらに、気孔率を81体積%まで増加させた砥石2eは、削除量が1.8φμmとさらに増加し、表面粗さRaも0.019μmとなった。
不水研削液と比較して洗浄性が低い水溶性研削液下では、目詰まり、凝着が発生し易いが、砥石の気孔率を高めることで水溶性研削液を浸透しやすくすると切り屑の排出性が高められる。削除量、表面粗さRa、砥石摩耗量に関して、気孔率が60体積%以上81体積%以下が好適である。図29は、仕上加工法Fcで用いられた表13の砥石2dの研磨面を示すデジタルマイクロスコープ画像を示しており、凝着の少ない良好な研磨面を示している。
表14(粗加工及び仕上加工の組合わせ)
研削液 粗砥石 粗加工条件 仕上砥石 仕上加工条件
組合せ1 不水 砥石1B 粗加工法Mb 砥石2b 仕上加工法Fc
組合せ2 水溶性 砥石1B 粗加工法Mb 砥石2b 仕上加工法Fc
組合せ3 水溶性 砥石1B 粗加工法Mb 砥石2c 仕上加工法Fc
組合せ4 水溶性 砥石1B 粗加工法Mb 砥石2d 仕上加工法Fc
組合せ5 水溶性 砥石1B 粗加工法Mb 砥石2e 仕上加工法Fc
図30、図31、図32は、表14に示す組合せ1~組合せ5を用いたときに得られた、削除量(φμm)、被削材の表面粗さRa(μm)、及び砥石摩耗量(μm/cut)を、それぞれ示している。組合せ2~組合せ5において、総削除量が6.4φμm以上、表面粗さRaが0.03μm以下、粗砥石(粗加工用ビトリファイド砥石10a)及び仕上砥石(仕上加工用ビトリファイド砥石10b)共に1カット当たりの砥石摩耗量が1.0μm/cut以下の優れた研削性能が、水溶性研削液下において得られた。好適には、組合せ4及び組合せ5において、総削除量が7.0φμm以上、仕上加工後の表面粗さRaが0.02μm以下、粗砥石及び仕上砥石共に1カット当たりの砥石摩耗量が0.7μm/cut以下の優れた研削性能が、水溶性研削液下において得られた。これらの研削結果は、粗加工が3秒、仕上加工が3秒という総加工時間が6秒という短いサイクルタイムの加工により得られた。
上述のように、本実施例の第1超仕上工程PP1及び第2超仕上工程PP2を含む超仕上加工方法によれば、第2超仕上工程PP2に用いられる仕上加工用ビトリファイド砥石10bのCBN砥粒32は、第1超仕上工程PP1に用いられる粗加工用ビトリファイド砥石10aのCBN砥粒32よりも細粒であって、#4000以上#8000以下の立方晶窒化ホウ素(CBN)砥粒であり、仕上加工用ビトリファイド砥石10bの気孔率は、60体積%以上81体積%以下である。このため、仕上加工用ビトリファイド砥石10bの砥粒32を、高削除性能を有する立方晶窒化ホウ素(CBN)砥粒32で相対的に微粒子とすることができるので、第2超仕上工程PP2における砥粒32の削除量の負担が軽減される。また、仕上加工用ビトリファイド砥石10bは60体積%以上81体積%以下の気孔率を有しているため、仕上加工用ビトリファイド砥石10bに対する水溶性加工液剤Fの浸透が容易となって切り屑の排出性が高められる。これにより、不水溶性加工液剤を用いた場合と変わらない研削性能が得られ、不水溶性加工液剤を用いた場合と変わらない被削材の表面粗さRaが短時間で得られる。
また、本実施襟の超仕上加工方法によれば、第2超仕上工程PP2に用いられる仕上加工用ビトリファイド砥石10bは、0.6MPa以上2.0MPa未満の面圧力で玉軸受の内輪(被削材)20の軌道面22に押圧されることから、不水溶性加工液剤を用いた場合と変わらない軌道面22の表面粗さRaが短時間で得られる。
また、本実施例の超仕上加工方法によれば、第2超仕上工程PP2に用いられる仕上加工用ビトリファイド砥石10bは、100cpm以上300cpm未満の揺動数で揺動しつつ、玉軸受の内輪(被削材)20の軌道面22に押圧されることから、不水溶性加工液剤を用いた場合と変わらない軌道面22の表面粗さRaが短時間で得られる。
本実施例の超仕上加工方法によれば、第1超仕上工程PP1に用いられる粗加工用ビトリファイド砥石10aの砥粒32は、#2000以上#3000以下の立方晶窒化ホウ素(CBN)砥粒であることから、相対的に粗い粒度の砥粒32による研削によって削除量が多くなるので、仕上加工用ビトリファイド砥石10bの砥粒32による削除量の負担が軽減され、不水溶性加工液剤を用いた場合と変わらない軌道面22の表面粗さRaが短時間で得られる。また、砥石寿命が向上する。
本実施例の超仕上加工方法によれば、玉軸受の内輪(被削材)20の軌道面22は、0.03μm以下の表面粗さRaとなるように超仕上げされることから、不水溶性加工液剤を用いた場合と変わらない鏡面を有する軌道面22の表面粗さRaが短時間で得られる。
本実施例の超仕上加工方法によれば、水溶性加工液剤Fは、その組成物の全量を基準として、1質量%以上40質量%以下の無機塩と、60以上90質量%以下の水とを含み、前記組成物の5%希釈液の25℃におけるpHが10以上14以下であり、アルコールおよびアルキルエーテルを含まない。このように、水溶性加工液剤Fは、アルコール及びアルキルエーテルを用いないので、切り屑の排出性が高められ、軌道面22の優れた削除量が得られる。
本実施例の超仕上加工方法によれば、前記無機塩は、リン酸、炭酸、ケイ酸、及びホウ酸のナトリウム塩又はカリウム塩からなる群から選ばれる少なくとも2種類から成るものである。これにより、滑らかな鏡面を有する軌道面22の超仕上加工が得られる。
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
例えば、前述の実施例において、超仕上砥石10a,10bの砥粒32にはCBN砥粒が用いられていたが、その砥粒材質としては、ダイヤモンド、或いはそれら2種類の混合砥粒、それらの2種類の一方と一般砥粒の混合砥粒が用いられても差し支えない。
また、超仕上砥石10a,10bの砥石組織内には、気孔形成剤を用いて、平均径が10μmから100μmの人工気孔が意図的に形成されてもよい。
また、前述の実施例においては、長手直方体状の超仕上砥石10a,10bについて説明したが、超仕上砥石10a,10bは、円盤状や円筒状やブロック状等のその他の形状であっても差し支えない。
また、前述の実施例において、超仕上砥石10a,10bはその砥石組織の連通気孔内に蝋(ワックス)又は硫黄が含浸させられているが、それらの含浸処理が必須ではない。
また、水溶性加工液剤Fには、様々な物が用いられてもよいが、好適には、水溶性加工液剤Fにおける無機塩は、正塩、酸性塩(水素塩)、又は塩基性塩が用いられ得る。また、前記無機塩は、無水物でも、水和物でもよい。また、好適には、水溶性加工液剤Fの組成物は、被加工物に錆が発生しやすくなるため、例えばアルコール及びアルキルエーテルや、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩などの他の無機塩を含まない。さらに好適には、水溶性加工液剤Fの組成物は、アミン塩又はアンモニウム塩等の有機塩も含まない。
また、好適には、前記水溶性加工液剤の組成物中の無機塩の含有量は、組成物の全量を基準として、1~40質量%、好ましくは15~40質量%がよい。40質量%を超えると、無機塩の全量が水に溶解しない場合がある。1質量%未満では、加工精度が低下する。また、希釈しない場合や、希釈倍率が低い場合(例えば原液1に水1の割合)にも所定の加工精度が得られるように、1質量%以上がよい。また、一つの無機塩の含有量は0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。一つの無機塩の含有量が0.1質量%以上であることにより、加工精度が向上し、被加工物表面を鏡面に仕上げることができる。
また、前述の実施例では、特に玉軸受の内輪20の軌道面22の鏡面仕上げに本実施例の超仕上砥石10a,10bが用いられる例を説明したが、本発明の超仕上加工方法は、他の材質及び他の形状のワークの超仕上研磨加工乃至は研削加工に広く用いられ得るものである。好適には、本発明の超仕上加工方法に用いられる被加工物は、焼入れ鋼製であり、さらに、好適には、ボールベアリングの内輪又は外輪であり、超仕上砥石10a,10bは、ボールベアリングの内輪又は外輪の軌道面を研磨するものである。
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
10a:粗加工用ビトリファイド砥石
10b:仕上加工用ビトリファイド砥石
20:玉軸受の内輪(被削材)
32:砥粒
F:水溶性研削液(水溶性加工液剤)
PP1:第1超仕上工程
PP2:第2超仕上工程

Claims (5)

  1. 水溶性加工液剤の供給下で、粗加工用ビトリファイド砥石を用いた第1超仕上工程を実行し、次いで、仕上加工用ビトリファイド砥石を用いた第2超仕上工程を実行して被削材の凹溝に超仕上加工を行なう超仕上加工方法であって、
    前記粗加工用ビトリファイド砥石及び前記仕上加工用ビトリファイド砥石は、長手状を成し、部分円筒面状の研磨面を長手方向の一方の端面に有し、
    前記仕上加工用ビトリファイド砥石の砥粒は、前記粗加工用ビトリファイド砥石の砥粒よりも細粒であって、#4000以上#8000以下の立方晶窒化ホウ素砥粒であり、
    前記仕上加工用ビトリファイド砥石の気孔率は、60体積%以上81体積%以下であり、
    前記第2超仕上工程において、前記仕上加工用ビトリファイド砥石は、0.6MPa以上2.0MPa未満の面圧力で前記研磨面が前記被削材の凹溝に押圧され、100cpm以上300cpm未満の揺動数で前記研磨面の曲率中心まわりに揺動させられる
    ことを特徴とする超仕上加工方法。
  2. 前記第1超仕上工程に用いる前記粗加工用ビトリファイド砥石の砥粒は、#2000以上#3000以下の立方晶窒化ホウ素砥粒である
    ことを特徴とする請求項の超仕上加工方法。
  3. 前記被削材は、0.03μm以下の表面粗さRaとなるように超仕上げされる
    ことを特徴とする請求項の超仕上加工方法。
  4. 前記水溶性加工液剤は、前記水溶性加工液剤の組成物の全量を基準として、1質量%以上40質量%以下の無機塩と、60質量%以上90質量%以下の水とを含み、前記組成物の5%希釈液の25℃におけるpHが10以上14以下である
    ことを特徴とする請求項1からのいずれか1の超仕上加工方法。
  5. 前記無機塩は、リン酸、炭酸、ケイ酸、およびホウ酸のナトリウム塩とリン酸、炭酸、ケイ酸、およびホウ酸のカリウム塩とからなる群から選ばれる少なくとも2種類から構成されるものである
    ことを特徴とする請求項の超仕上加工方法。
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