JP2000326204A - 機械部品の加工方法 - Google Patents

機械部品の加工方法

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JP2000326204A
JP2000326204A JP13709399A JP13709399A JP2000326204A JP 2000326204 A JP2000326204 A JP 2000326204A JP 13709399 A JP13709399 A JP 13709399A JP 13709399 A JP13709399 A JP 13709399A JP 2000326204 A JP2000326204 A JP 2000326204A
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Japan
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inner ring
finishing
frequency
grindstone
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JP13709399A
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Chuichi Sato
忠一 佐藤
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NSK Ltd
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  • Finish Polishing, Edge Sharpening, And Grinding By Specific Grinding Devices (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 音響特性や表面粗さを損なうことなく、優れ
た潤滑性能を有する転がり軸受用軌道輪等の機械部品を
得ることができるようにした。 【解決手段】 第1の粗加工と第1の仕上げ加工とを有
する粗工程と、第2の粗加工と第2の仕上げ加工とを有
する仕上げ工程とからなる2段工程により軸受軌道輪の
表面に超仕上げ加工を施す場合において、前記第1の粗
加工(a)では、砥石3を1000cpmで往復振動運
動させると共に被加工物ある内輪1を800rpmで回
転させて内輪1の表面に粗加工を施し、前記第1の仕上
げ加工(b)では、砥石を1000cpmで往復振動運
動させると共に内輪1を55〜65rpmの低速回転数
で回転させることにより砥粒軌跡の最大交差角を51°
〜61°に設定して前記被加工物の表面に仕上げ加工を
施す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は機械部品の加工方法
に関し、より詳しくは転がり軸受の軌道輪等の円形状被
加工物の表面に超仕上げ加工を施す機械部品の加工方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、パーソナルコンピュータ等の
記憶装置として使用されるハードディスクドライブ(以
下、「HDD」という)の玉軸受用軌道輪等、表面の高
精度な寸法仕上げが要求される機械部品に対しては超仕
上げ加工を施すことが行われている。
【0003】図11は軌道輪としての内輪の軌道面に対
し、超仕上げ加工を施している様子を示す要部斜視図で
ある。
【0004】すなわち、内輪101の軌道面102上に
は該軌道面102の溝形状に対応して先端が鞍形形状に
形成された砥石103が配されており、不図示の駆動機
構により内輪101は矢印A方向に回転する。そして、
加工面(軌道面)に多量の研削液を注ぎ込む一方、砥石
103を矢印Fに示すように軌道面102上に押し付け
ながら軌道面102の仮想中心Oを軸中心として二点鎖
線に示すように該砥石103を振れ角度αでもって往復
振動運動(揺動)させることにより、軌道面102に研
削加工を施し、これにより超仕上げ加工を行なってい
る。
【0005】該超仕上げ加工では、砥石103の振動運
動と内輪101の回転運動によって砥石103の各砥粒
の運動軌跡は正弦波状に交差する形となり、短時間で効
率の良い高精度仕上げが可能となる。
【0006】ところで、上記HDDの玉軸受は、回転駆
動中における回転精度や振動等の要求基準が厳しく、従
来より、2種類の異なる砥石を使用し、図12(a)
(b)に示すように、粗工程及び仕上げ工程からなる2
段工程でもって軌道輪となる被加工物に超仕上げ加工を
施している。
【0007】すなわち、この種の超仕上げ加工は、粗工
程104と仕上げ加工105とからなり、さらに該粗工
程104及び仕上げ工程105は、夫々第1の粗加工1
04a及び第1の仕上げ加工104bと、第2の粗加工
105a及び第2の仕上げ加工105bとを有してい
る。
【0008】そして、第1の粗加工104aでは被加工
物である内輪101を高速回転させると共に砥石103
を高速でもって往復振動運動させ、前工程で研削加工さ
れた軌道面102上の凹凸の山の部分を除去し、続く第
1の仕上げ加工104bでは前記内輪101を高速回転
させると共に砥石103を低速で往復振動運動させ、こ
れにより音響特性及び表面粗さRaの向上を図ってい
る。すなわち、第1の粗加工104aでは砥石103と
接触する軌道面102の凹凸の山の部分の面積は非常に
小さいため矢印F方向への加圧力が小さくても軌道面1
02との接触部位には大きな圧力が作用することとなっ
て軌道面102の凹凸の山の部分は急速に削り取られ
る。つまり、該第1の粗工程104aでは、内輪101
の回転数及び砥石103の振動数を共に高速設定とする
ことにより、砥粒軌跡の最大交差角βを軌道面102の
凹凸の山の部分が充分に削り取られるような所定値(例
えば、3.7°)に設定し、これにより軌道面102の
粗加工を行う。
【0009】そして、続く第1の仕上げ加工104bで
は内輪101の周速度を高速に維持しつつ砥石103を
低速で往復振動運動させることによって砥石103の各
砥粒の運動軌跡の最大交差角βを極めて小さな所定値
(例えば、0.3°)に設定し、これにより軌道面10
2の低周波数帯域〜中周波数帯域における表面うねりを
抑制し、音響特性の向上と表面粗さRaの向上を図って
いる。
【0010】また、仕上げ工程105では、粗工程10
4とは砥粒性能の異なる砥石を使用すると共に、該仕上
げ工程105の内、第2の粗加工105aでは内輪10
1を高速回転させると共に砥石103を高速で往復振動
運動させ、続く第2の仕上げ加工105bでは内輪10
1を高速回転させると共に砥石103を低速で往復振動
運動させ、これにより更なる音響特性及び表面粗さRa
の向上を図っている。すなわち、仕上げ工程105で
は、粗工程104に使用する砥石に比べて微細又は軟質
な砥粒で構成された砥石103を使用し、粗工程104
と同様の粗加工及び仕上げ加工を施し、軌道面102の
高周波数帯域における表面うねりを抑制して更なる音響
特性及び表面粗さRaの向上を図っている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】ところで、玉軸受等の
転がり軸受では、軌道輪と転動体との間で生じる摩擦力
を低減させてこれら機械部品が摩耗するのを極力回避す
るために潤滑剤としてグリースを混入し、これにより軸
受の潤滑性を確保しているが、HDDの場合は用途的に
グリースの流出を避ける必要があることから、グリ−ス
量を極力少量としなければならず、したがってグリース
量を極限まで少なくすることが要請される。
【0012】しかし一方、グリース量を極限まで少なく
すると油膜が不均一となり、またグリースが軌道面上に
均一に行き渡らなくなるため、軸受の潤滑性が悪化し、
このため回転によって周期的に発生する振動以外の振動
が生じ、HDDで最も重要な特性とされる非繰返し回転
精度(non-repeatable run out;以下「NRRO」とい
う)が悪化したり、回転トルクの変化を招来する虞があ
るという問題点があった。
【0013】また、良好な潤滑性を得るためには、前記
軌道面102の表面粗さRaは、内輪101の円周方向
に対して直交する直交方向の成分を大きくするのが好ま
しいとされているが、従来の上記加工方法では、砥粒軌
跡の最大交差角βが小さいため(例えば、0.3〜3.
7°)、前記表面粗さRaは内輪101の円周方向の成
分が大きくなるように形成されることとなり、したがっ
て潤滑性に対しては表面粗さRaの粗さ方向が不利とな
るような方向に研削加工されるという問題点があった。
【0014】本発明はこのような問題点に鑑みなされた
ものであって、音響特性や表面粗さを損なうことなく、
優れた潤滑性能を有する転がり軸受用軌道輪等の機械部
品を得ることができる機械部品の加工方法を提供するこ
とを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】従来より、機械部品とし
ての転がり軸受の潤滑性と軌道輪の表面粗さの方向性と
は密接な関連性を有していることが知られている。
【0016】転がり軸受は、一般に図1に示すように、
軸に嵌合する内輪1と、ハウジングに組込まれる外輪2
と、内輪1及び外輪2間を転動する多数の転動体3と、
これら転動体3を等間隔に保持して互いに接触するのを
回避する保持器4とから構成されており、転動体3は軌
道輪(内輪1及び外輪2)の夫々の軌道面5、6と接触
しながら該軌道面5、6上を転動する。すなわち、図2
に示すように、内輪1が矢印A方向に回転する一方で、
転動体3は軌道面5上を自転し、これにより軌道面5上
には接触楕円7が形成される。
【0017】図3(a)は接触楕円7の平面図を示して
いる。また、図3(b)は図3(a)のX−X断面図で
あって、トライボロジ理論により、優れた潤滑性を得る
のに理想的とされる表面粗さ形状を示している。
【0018】すなわち、優れた潤滑性を得るためには、
表面粗さRaは、軌道面5の円周方向(図2中、矢印B
で示す)の成分よりも該円周方向に対して直交する直交
方向の成分が大きいことが重要であり、さらに表面粗さ
Raの粗さ形状は、図3(b)に示すように、所謂プラ
トー部8上に多数の溝9…が形成され、該溝9が潤滑油
としてのグリース溜の作用を果たす形状が好ましいとさ
れている。
【0019】そして、前記直交方向の成分を大きくし、
かつ図3(b)に示すような表面形状を得るためには、
粗工程の仕上げ加工、すなわち第1の仕上げ加工におけ
る砥粒軌跡の最大交差角βを大きくする必要があり、そ
のために前記第1の仕上げ加工において、前記砥石を所
定の高速振動数で前記往復振動運動させると共に前記被
加工物を所定の低速回転数で回転させる必要のあること
が判明した。
【0020】そこで、本発明に係る機械部品の加工方法
は、第1の粗加工と第1の仕上げ加工とからなる粗工程
と、第2の粗加工と第2の仕上げ加工とからなる仕上げ
工程とを含み、砥石を、所定の往復振動運動をさせなが
ら被加工物の表面に押し付けることにより、前記被加工
物の表面に加工を施す機械部品の加工方法において、前
記第1の粗加工では、前記砥石を所定の高速振動数で前
記往復振動運動させると共に前記被加工物を所定の高速
回転数で回転させて前記被加工物の表面に粗加工を施
し、前記第1の仕上げ加工では、前記砥石を所定の高速
振動数で前記往復振動運動させると共に前記被加工物を
所定の低速回転数で回転させることにより砥粒軌跡の最
大交差角を所定角度以上に設定して前記被加工物の表面
に仕上げ加工を施すことを特徴としている。
【0021】具体的には、最大交差角を45°以上、好
ましくは51°〜61°の範囲内となるように砥石の振
動数及び被加工物の回転数を設定する必要がある。
【0022】ところで、被加工物の表面粗さを向上させ
る要素としては、上述した最大交差角の他、砥石の振動
数(振動速度)と被加工物の回転数(回転速度)との
比、すなわち速度比Vr(=振動速度/回転速度)も関
係する。
【0023】すなわち、被加工物上の1個の砥粒の砥粒
軌跡は正弦波状となることから、速度比Vrが整数或い
は倍数した場合に整数(以下、「半整数」という)とな
るように、砥石の振動数及び被加工物の回転数を設定し
たときは、砥石の同一砥粒が被加工物上の同一個所のみ
を加工することを意味する。したがって、このように速
度比Vrを整数又は半整数となるような数値に設定した
場合は、同一砥粒が被加工物上の同一個所のみを加工す
るため、砥粒の粒子にバラツキ等があるときは被加工物
に対して均一な加工が施されず加工精度の低下を招く虞
が生じる。すなわち、速度比Vrは整数部と小数部とか
らなるが、速度比Vrが整数となって小数部が「0」と
なる場合や、速度比Vrが半整数となって小数部が
「0.5」となる場合は、被加工物上の同一個所が同一
砥粒で加工され、加工精度の低下を招く虞があり、した
がって前記小数部が「0」、又は「0.5」とならない
ように砥石の振動数及び被加工物の回転数を設定するの
が好ましい。
【0024】さらに、超仕上げ加工の場合、被加工物
は、通常、駆動ローラと従動ローラとで挟持された形で
摩擦しながら回転駆動するため、速度比Vrの小数部
が、「0」又は「0.5」以外であっても「0」や
「0.5」の近傍値の場合は被加工物の微小な回転変動
により同一砥粒が容易に被加工物の同一個所に作用する
こととなり、したがって、速度比Vrを小数部が「0」
又は「0.5」の近傍値に設定するのは極力避けるのが
好ましい。
【0025】本発明は斯かる観点から、前記被加工物の
回転数に対する前記砥石の振動数の比率が、小数部を有
するように前記被加工物の回転数及び前記砥石の振動数
を設定すると共に、前記比率が、0.18〜0.38ま
たは0.68〜0.88であることを特徴としている。
【0026】また、上記第1の仕上げ加工において、砥
石の振動数を一定に保ちながら被加工物の回転数を連続
的に徐々に低下させるのも好ましく、これにより砥石上
の同一砥粒が被加工物の同一個所にのみ作用するのを回
避することができ、加工精度の均一性向上を図ることが
できる。
【0027】また、機械部品としての被加工物の表面粗
さが潤滑剤溜め用の溝を有しながら高精度な表面粗さを
維持するためには、粗工程でCBN(Cubic Boron Nitr
ide;立法晶窒化ホウ素)等の超砥粒砥石を使用してプ
ラトー面の基礎を形成するような表面加工を施し、仕上
げ工程では超微粒砥石、または被加工物よりも軟質であ
ってメカノケミカル作用を有するCeO2等の砥石、或
いはBaCO3等の軟質砥石を使用して表面粗さや音響
特性の向上を図るのが好ましい。
【0028】すなわち、本発明に係る機械部品の加工方
法は、前記粗工程では超砥粒で形成された砥石を使用
し、前記仕上げ工程では超微粒又は軟質砥粒で形成され
た砥石を使用して表面加工することを特徴としている。
【0029】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を図面
に基づき詳説する。
【0030】本発明に係る機械部品の加工方法は、加工
工程が、粗工程と仕上げ工程の2段工程からなり、さら
に前記粗工程及び前記仕上げ工程は、夫々第1の粗加工
及び第1の仕上げ加工と、第2の粗加工及び第2の仕上
げ加工とを有している(図12参照)。
【0031】以下、転がり軸受の内輪を被加工物とした
場合について、本発明の実施の形態を説明する。
【0032】粗工程では、図4(a)に示すように、超
砥粒を砥粒材料とする先端が鞍形形状に形成された第1
の砥石3を被加工物である内輪1の軌道面2上に配し、
内輪1を所定回転数NW1(例えば、800rpm)以
上の高速回転数でもって矢印A方向に回転させる一方、
軌道面2上に多量の研削液を注ぎ込み、第1の砥石3を
所定振動数(例えば、1000cpm)以上の高速振動
数でもって矢印F方向に押し付けながら軌道面2の仮想
中心Oを軸中心として二点鎖線に示すように所定振れ角
度α(例えば、18°)でもって往復振動運動をさせ、
これにより第1の粗加工を行う。
【0033】次いで、図4(b)に示すように、第1の
砥石3の振動数及び振れ角度αを第1の粗加工と同様の
条件に設定し、内輪1を所定の低速回転数NW2(例え
ば、55rpm〜65rpm)に設定し、第1の粗加工
と同様、多量の研削液を注ぎつつ第1の砥石3を往復振
動運動させ、これにより、第1の仕上げ加工を行う。
【0034】すなわち、図4(a)(b)で示す粗工程
では、砥粒材料として超砥粒を使用した第1の砥石3に
より、軌道面2に表面加工を施しプラトー面の基礎とな
るような表面形状を形成する。
【0035】次に、仕上げ工程では、図5(a)に示す
ように、被加工物である内輪1の軌道面2上に超微粒砥
粒やメカノケミカル作用を有する砥粒又は軟質砥粒を砥
粒材料とする先端が鞍形形状の第2の砥石4を配し、内
輪1を所定回転数NW1′(例えば、800rpm)以
上の高速回転に設定して該内輪1を矢印A方向に回転さ
せる一方、第2の砥石4を所定振動数(例えば、100
0cpm)以上の高速振動数に設定し、第2の砥石4を
矢印F方向に押し付けながら軌道面2の仮想中心Oを軸
中心として二点鎖線に示すように所定振れ角度α(例え
ば、18°)でもって多量の研削液を注ぎつつ往復振動
運動をさせ、これにより、第2の粗加工を行う。
【0036】次いで、図5(b)に示すように、第2の
砥石4の振動数NG及び振れ角度αを第1の粗加工と同
一条件に設定すると共に、内輪1を第2の粗加工時より
も高い所定回転数NW2′(例えば、1200rpm)
に設定し、多量の研削液を注ぎつつ第2の砥石4を往復
振動運動をさせ、これにより、第2の仕上げ加工を行っ
ている。
【0037】すなわち、図5(a)(b)に示す仕上げ
工程では、超微粒砥粒や、メカノケミカル作用を有する
砥粒又は軟質砥粒を使用した第2の砥石4により、軌道
面2に表面加工を施して表面粗さや音響特性の向上を図
り、これによりグリース溜め用の溝を有した高精度な表
面粗さRaの内輪1を得ている。
【0038】尚、前記粗工程の超砥粒の砥粒材料として
はCBNを使用することができ、また前記仕上げ工程の
超微粒砥粒の砥粒材料としては一般の砥粒及びCBN砥
粒を使用することができ、メカノケミカル作用を有する
砥粒材料としてはCeO2、SiO2、CrO2を使用す
ることができ、さらに軟質砥粒の砥粒材料としては、B
aCO3、CaCO3、Fe34、レジン、水ガラスを使
用することができ、これら砥粒材料はビトリファイトボ
ンドで結合されている。
【0039】しかして、上記加工方法では、第1及び第
2の砥石3、4の各砥粒が描く砥粒軌跡は、内輪1の周
速度と該第1及び第2の砥石3、4の往復振動運動との
合成によって、図6に示すように、最大交差角βを有す
る正弦波曲線となる。
【0040】ここで、最大交差角βは以下のようにして
算出される。
【0041】すなわち、図7において、最大交差角β
(°)の半角β/2は軸方向の平均速度Vyと円周方向
の平均速度Vxとから数式(1)で表される。
【0042】tan(β/2)=Vy/Vx …(1) また、軸方向の平均速度Vy及び円周方向の平均速度Vx
は数式(2)で表される。
【0043】 Vy=rw・NG・α・π2/180 …(2) Vx=π・DW・NW …(3) ここで、NGは砥石の振動数(cpm)、NWは内輪1
の回転数(rpm)、rwは被加工物である内輪1の軌
道面半径(mm)、DWは内輪1の直径(mm)を示し
ている。
【0044】数式(2)、(3)を数式(1)に代入す
ると、数式(4)のようになり、最大交差角βは結局数
式(5)で表される。
【0045】 tan(β/2)=rw・NG・α・π/90・DW・NW …(4) β=2tan-1{rw・NG・α・π/(90・DW・NW)} …(5) 前記数式(5)において、内輪1の軌道面半径rw、及
び内輪1の直径DWは、転がり軸受の形状寸法により一
義的に決まり、また所定の往復振動運動を行うためには
振れ角度αの選択範囲も一定の狭い所定範囲に設定され
る。したがって、最大交差角βは、砥石の振動数NG及
び内輪1の回転数NWに大きく依存することとなる。
【0046】しかるに、従来、第1の仕上げ加工では砥
石3の振動数NGを低振動数とし、内輪1の回転数NW
を高回転数に設定し、これにより最大交差角βを小さく
して軌道面2の仕上げ加工を行っているため、粗さ成分
は円周方向に大きくなる結果となっている。
【0047】そこで、本実施の形態では砥石3の振動数
NGを高振動数とし、内輪1の回転数NWを低回転数に
設定して最大交差角βを大きくし、これにより円周方向
に対して直交する直交方向の粗さ成分を大きくして第1
の仕上げ加工を施し、グリース量を極限まで少なくした
場合であっても良好な潤滑性を確保することができる軌
道面2を得ている。
【0048】具体的には、円周方向に対し前記直交方向
の粗さ成分を大きくするためには、最大交差角βを少な
くとも45°以上に設定する必要があり、本実施の形態
では、数式(5)において最大交差角βが45°以上と
なるように、砥石3の振動数NGは高振動数に設定さ
れ、内輪1の回転数NWは低回転数に設定される。さら
に理想的なプラトー形状(図3)を得るためには最大交
差角βが51°〜61°の範囲となるように、砥石3の
振動数NGは高振動数に設定され、内輪1の回転数NW
は低回転数に設定される。
【0049】また、砥石の振動数(振動速度)NGと被
加工物の回転数(回転速度)NWとの比、すなわち速度
比Vrは数式(7)に示すように、整数部VIと小数部
(端数)VDとで表されるが、本実施の形態では小数部
VDが0.18〜0.38または0.68〜0.88に
設定されている。
【0050】Vr=NG/NW=VI+VD …(7) 以下、小数部VDを0.18〜0.38または0.68
〜0.88に設定した理由について説明する。
【0051】図8は一つの砥粒が描く砥粒軌跡を示す図
であって、図中、Tは被加工物である内輪1が1回転す
る周期を示している。
【0052】速度比Vrが整数のとき、例えば、Vr=
1のときは、砥粒は被加工物である内輪1上の点x0を
研削した後、内輪1が1回転する間に曲線Pで示すよう
な正弦波軌跡を描きながら周期Tでもって1回の往復振
動運動を行い、内輪1の軌道面2上の点x0、x1を研
削する。また、速度比VrがVr=2のときは、内輪1
が1回転する間に第1の砥石3は周期T/2でもって2
回の往復振動運動を行うが、この場合も第1の砥石3
は、Vr=1の場合と同様、必ず点x0、x1を研削す
る。すなわち、速度比Vrが整数又は半整数のときは、
速度比Vrに応じて砥石3の振動周期は変化するもの
の、常に軌道面5上の同一個所が同一砥粒でもって研削
されることとなる。つまり、速度比Vrの小数部VDが
「0」、又は「0.5」のときは同一箇所が同一砥粒に
より加工されることとなり、したがって砥石3の砥粒粒
子にバラツキがあるときは研削加工の均一性を損なって
加工精度の低下を招来する虞がある。
【0053】そこで、本実施の形態では、速度比Vrの
小数部が「0」又は「0.5」以外となるように位相を
ずらし、曲線Q、Rに示すように点x0と点x1の中間
点である点x2、点x3を研削するようにし、前記速度
比Vrを設定することとした。
【0054】そして、超仕上げ加工においては、図9に
示すように、被加工物である内輪1は矢印C方向に回転
する駆動ローラ10と矢印D方向に回転する従動ローラ
11に挟まれた形で摩擦しながら回転駆動するため内輪
1は回転数変動、すなわち回転誤差を生じ易く、速度比
Vrの小数部VDが「0」又は「0.5」に近い場合
は、内輪1の回転誤差により容易に同一砥粒により同一
個所が研削される事態を招く虞がある。そこで、本実施
の形態では、斯かる観点を考慮し、小数部VDが0.1
8〜0.38となるように砥石の振動数NG及び内輪1
の回転数NWを設定した。更に同様の理由により、0.
18〜0.38に0.5を加算した0.68〜0.88
も有効である。
【0055】表1は軌道面半径rwが0.86mm、直
径DWが5.9mmとした場合の本実施の形態における
各工程での砥石の振動数NG、内輪1の回転数NW等を
従来例と共に示した表である。
【0056】
【表1】
【0057】すなわち、砥石の振動数NGは、CBN砥
石の場合は1500cpmに限界振動数があるため、い
ずれも1000cpmに設定している。また、第1の仕
上げ加工の最大交差角βを51°〜61°とするために
内輪1の回転数NWを55〜65rpmに設定してい
る。
【0058】このように本実施の形態では、第1の粗加
工では、最大交差角βは4.2°と小さく、表面粗さR
aは円周方向の成分が大きくなるが、第1の仕上げ加工
では最大交差角βを51°〜61°と大きくしているた
め、表面粗さRaは円周方向に対し直交方向の成分を大
きくなってトライポロジ的に理想的なプラトー面を有す
る表面粗さRaを得ることができ(図3参照)、該内輪
1を軸受に組込んで駆動させた場合であっても極少量の
グリース量でもって良好な潤滑性を確保することが可能
となる。
【0059】しかも、速度比Vrの小数部VDが0.1
8〜0.38または0.68〜0.88に設定されてい
るため、同一砥粒が軌道面2上の同一個所のみを研削す
るのを回避することができ、加工精度の優れた内輪1を
得ることが可能となる。
【0060】尚、本発明は上記実施の形態に限定される
ものではなく、例えば、粗加工において、図10に示す
ように、砥石の振動数NGを一定(例えば、1000c
pm)に維持する一方、第1の粗工程が終了した後の第
1の仕上げ工程では、内輪1の回転数を第1の粗工程時
の回転数から徐々に低下させることにより、同一砥粒が
被加工物の同一個所のみを加工するのを回避するように
してもよい。
【0061】
【発明の効果】以上詳述したように本発明に係る機械部
品の加工方法は、第1の粗加工と第1の仕上げ加工とか
らなる粗工程と、第2の粗加工と第2の仕上げ加工とか
らなる仕上げ工程とを含み、砥石を所定の往復振動運動
をさせながら被加工物の表面に押し付けることにより前
記被加工物の表面に加工を施す機械部品の加工方法にお
いて、前記第1の粗加工では、前記砥石を所定の高速振
動数で前記往復振動運動させると共に前記被加工物を所
定の高速回転数で回転させて前記被加工物の表面に粗加
工を施し、前記第1の仕上げ加工では、前記砥石を所定
の高速振動数で前記往復振動運動させると共に前記被加
工物を所定の低速回転数で回転させることにより砥粒軌
跡の最大交差角を所定角度以上に設定して前記被加工物
の表面に仕上げ加工を施すので、前記第1の仕上げ加工
では被加工物の表面粗さは円周方向に対して直交する直
交方向の成分が大きくなり、したがって前記直交方向の
表面の粗さ形状は、潤滑性に優れた理想的な溝付きプラ
トー形状となり、グリース量を極限まで少なくしても潤
滑性の低下を極力回避して良好な潤滑性を確保すること
が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】転がり軸受の一例を示す断面図である。
【図2】砥石との接触面に接触楕円が形成された様子を
示す内輪1の要部斜視図ある。
【図3】本発明の接触楕円の詳細を示す図である。
【図4】本発明に係る機械部品の加工方法の粗工程での
加工状態を示す図である。
【図5】本発明に係る機械部品の加工方法の仕上げ工程
での加工状態を示す図である。
【図6】内輪の軌道面上を描く砥石の軌跡を示す図であ
る。
【図7】最大交差角βの算出方法を説明するための図で
ある。
【図8】速度比Vrの設定理由を説明するための図であ
る。
【図9】超仕上げ加工を行うための装置を模式的に示し
た図である。
【図10】内輪の回転数NWの設定に関する他の実施の
形態を示す図である。
【図11】従来からの超仕上げ加工の原理を説明するた
めの斜視図である。
【図12】従来からの超仕上げ加工の工程図である。
【符号の説明】
1 内輪(被加工物) 2 軌道面(被加工物の表面) 3 第1の砥石

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1の粗加工と第1の仕上げ加工とから
    なる粗工程と、第2の粗加工と第2の仕上げ加工とから
    なる仕上げ工程とを含み、砥石を、所定の往復振動運動
    をさせながら被加工物の表面に押し付けることにより、
    前記被加工物の表面に加工を施す機械部品の加工方法に
    おいて、 前記第1の粗加工では、前記砥石を所定の高速振動数で
    前記往復振動運動させると共に前記被加工物を所定の高
    速回転数で回転させて前記被加工物の表面に粗加工を施
    し、前記第1の仕上げ加工では、前記砥石を所定の高速
    振動数で前記往復振動運動させると共に前記被加工物を
    所定の低速回転数で回転させることにより砥粒軌跡の最
    大交差角を所定角度以上に設定して前記被加工物の表面
    に仕上げ加工を施すことを特徴とする機械部品の加工方
    法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009166215A (ja) * 2008-01-18 2009-07-30 Nikon Corp 研磨方法および研磨装置
JP2011152618A (ja) * 2010-01-28 2011-08-11 Jtekt Corp 総形ツルーイング方法

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JP2009166215A (ja) * 2008-01-18 2009-07-30 Nikon Corp 研磨方法および研磨装置
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