JP7528554B2 - ウェットマスターバッチの製造方法、ゴム組成物の製造方法及びタイヤの製造方法 - Google Patents

ウェットマスターバッチの製造方法、ゴム組成物の製造方法及びタイヤの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ウェットマスターバッチの製造方法、ゴム組成物の製造方法及びタイヤの製造方法に関する。
タイヤ性能の中でも、グリップ性能は、安全性に直結するという点で特に重要であり、これまで、グリップ性能を改善するための種々の検討が行われている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、近年では、湿潤路面におけるグリップ性能(ウェットグリップ性能)や、操舵時の応答性について、更なる改善が求められている。
特開2008-285524号公報
本発明は、前記課題を解決し、ウェットグリップ性能及び操舵時の応答性の総合性能を改善できるウェットマスターバッチの製造方法、ゴム組成物の製造方法及びタイヤの製造方法を提供することを目的とする。
通常、湿潤路面の走行時には、路面とタイヤとの間に水膜が形成されるため、乾燥路面の走行時と比較してグリップ性能が低下する傾向がある。
湿潤路面でのグリップ性能(ウェットグリップ性能)を改善する手法について、本発明者が検討を行ったところ、濃度20質量%以上の水分散液がゲル状となる無機充填剤と、イオン性官能基を有する共役ジエン系ゴムとを配合したゴム組成物により、ウェットグリップ性能が向上することを見出した。
そして、本発明者が更に検討を進めた結果、上記無機充填剤及び上記共役ジエン系ゴムを予め混合し、これらを含むウェットマスターバッチを調製することで、ウェットグリップ性能の向上効果が高まるとともに、操舵時の応答性も向上することを見出し、本発明に想到した。
すなわち、本発明は、濃度20質量%以上の水分散液がゲル状となる無機充填剤と、イオン性官能基を有する共役ジエン系ゴムとを混合する混合工程を含み、前記混合工程では、前記無機充填剤及び/又は前記共役ジエン系ゴムが分散液の状態で混合し、混合液を得るウェットマスターバッチの製造方法に関する。
前記混合工程では、温度25℃以上、圧力101.4kPa以上の条件で前記無機充填剤及び水を混合して、前記無機充填剤の濃度が20質量%未満である分散液を調製し、得られた前記無機充填剤の分散液を、前記共役ジエン系ゴムの分散液と混合することが好ましい。
前記混合工程では、温度25~300℃、圧力100kPa以上の条件で、前記無機充填剤と、前記共役ジエン系ゴムとを混合することが好ましい。
前記製造方法は、前記混合液のpHを8以下に調整し、生成された固形分を回収する回収工程を含むことが好ましい。
前記製造方法は、前記固形分を、温度40℃以上、圧力10kPa以下の条件で乾燥させ、ウェットマスターバッチを得る乾燥工程を含むことが好ましい。
前記ウェットマスターバッチのアセトン抽出分が2.5質量%以下、トルエン抽出分が50質量%以下であることが好ましい。
前記無機充填剤が、前記共役ジエン系ゴムの前記イオン性官能基と対となる電荷を有することが好ましい。
前記無機充填剤が、ケイ酸塩鉱物であることが好ましい。
前記共役ジエン系ゴムの前記イオン性官能基が、酸素を含む酸性官能基、又は、窒素を含む塩基性官能基であることが好ましい。
本発明はまた、前記ウェットマスターバッチを用いるゴム組成物の製造方法に関する。
本発明はまた、前記ゴム組成物を用いるタイヤの製造方法に関する。
本発明によれば、濃度20質量%以上の水分散液がゲル状となる無機充填剤と、イオン性官能基を有する共役ジエン系ゴムとを混合する混合工程を含み、前記混合工程では、前記無機充填剤及び/又は前記共役ジエン系ゴムが分散液の状態で混合し、混合液を得るウェットマスターバッチの製造方法であるので、ウェットグリップ性能及び操舵時の応答性の総合性能が良好となる。
本発明は、濃度20質量%以上の水分散液がゲル状となる無機充填剤と、イオン性官能基を有する共役ジエン系ゴムとを混合する混合工程を含み、前記混合工程では、前記無機充填剤及び/又は前記共役ジエン系ゴムが分散液の状態で混合し、混合液を得るウェットマスターバッチの製造方法である。
前述のとおり、濃度20質量%以上の水分散液がゲル状となる無機充填剤と、イオン性官能基を有する共役ジエン系ゴムとを配合したゴム組成物では、ウェットグリップ性能が向上する。この効果は、湿潤路面の走行時に上記無機充填剤が水を取り込むこと、上記共役ジエン系ゴムの分子内で水素結合が形成され、当該水素結合がゴム組成物中での水の移動経路として機能すること、等により、ゴム組成物が軟化して路面との実接触面積が増加することで、もたらされると推測される。
そして、上記製造方法では、ウェットグリップ性能の向上効果が高まるとともに、操舵時の応答性も向上する。
ウェットグリップ性能の向上効果は、上記無機充填剤及び上記共役ジエン系ゴムを予め混合し、ウェットマスターバッチ化することにより、水の移動経路となる水素結合が予め形成されるとともに、ウェットマスターバッチ化を実施しない通常の製造方法と比較して、水素結合やイオン結合が増加し、その結果、水によるゴムの軟化効果が高まることで、もたらされると推測される。
また、操舵時の応答性の向上効果は、ウェットマスターバッチ化することにより、上記無機充填剤の分散が良好となることで、変形に対するエネルギーロスが生じにくくなり、その結果、操舵時の入力に対して応力発生までの時間(位相差)が小さくなることで、もたらされると推測される。
以下、上記製造方法について具体的に説明する。
(ウェットマスターバッチの製造方法)
(混合工程)
上記製造方法は、濃度20質量%以上の水分散液がゲル状となる無機充填剤と、イオン性官能基を有する共役ジエン系ゴムとを混合する混合工程を含む。
上記無機充填剤に関し、濃度20質量%以上の水分散液がゲル状であるか否かは、所定量の充填剤及び水を混合し、得られた混合液の流動性の有無によって容易に判別でき、混合液が流動性を有しない場合はゲル状、流動性を有する場合はゾル状である。上記無機充填剤のように、ゲル状となる無機充填剤を用いることで、無機充填剤が良好に分散した複合体(ウェットマスターバッチ)が得られる。
上記無機充填剤としては、例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、サポナイト等のスメクタイト;セピオライト;バーミキュライト;クロライト;カオリナイト;タルク;マイカ等のケイ酸塩鉱物を用いることができる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、変性(有機修飾)されていてもよい。なかでも、スメクタイト等の層状ケイ酸塩鉱物が好ましく、スメクタイトがより好ましく、モンモリロナイトが更に好ましい。
上記無機充填剤は、上記共役ジエン系ゴムのイオン性官能基と対となる電荷を有することが好ましい。これにより、上記無機充填剤と上記共役ジエン系重合体との間にイオン結合が形成されるが、当該イオン結合が水によって切断されることで、水による軟化効果を高めることができる。
また、イオン結合は可逆的な結合であり、水によって一旦切断されても、乾燥路面を走行する等によって水が除去されると再結合する。これにより、硬度を可逆的に変化させることができると考えられる。
なお、ケイ酸塩鉱物は、通常、負電荷を有する、よって、ケイ酸塩鉱物を使用する場合、イオン結合形成の観点から、上記共役ジエン系ゴムのイオン性官能基は、正電荷を有するもの(陽イオン性官能基)であることが好ましい。
また、モンモリロナイトは、単位層の側面は負電荷、端面は正電荷を帯びている。よって、モンモリロナイトを使用する場合、上記共役ジエン系ゴムのイオン性官能基が、正電荷を有するもの(陽イオン性官能基)、負電荷を有するもの(陰イオン性官能基)のいずれであっても、イオン結合の形成は可能である。
上記共役ジエン系ゴムが有するイオン性官能基としては、陽イオン性官能基、陰イオン性官能基等が挙げられる。これらは、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
陽イオン性官能基としては、塩基性官能基等が挙げられ、窒素を含む塩基性官能基が好ましい。窒素を含む塩基性官能基としては、例えば、ピリジン基、ピペリジン基、ピロール基、イミダゾール基、ピリミジン基等の窒素を含む複素環基;アミノ基等が挙げられる。なかでも、窒素を含む複素環基が好ましく、ピリジン基がより好ましい。
陰イオン性官能基としては、ハロゲン基、酸性官能基等が挙げられ、酸素を含む酸性官能基が好ましい。酸素を含む酸性官能基としては、カルボキシル基、ヒドロキシ基、シラノール基、スルホニル基、リン酸基等が挙げられる。なかでも、カルボキシル基が好ましい。
上記共役ジエン系ゴムは、共役ジエン単位を含むポリマー成分が上述の官能基で変性されたものであり、該ポリマー成分としては、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)等が挙げられる。イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、グリップ性能の観点から、SBR、BR、イソプレン系ゴムが好ましく、SBRがより好ましい。
上記共役ジエン系ゴムにおいて、イオン性官能基の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、イオン性官能基の含有量は、NMR測定を行い、該当するピークに基いて含有量(質量%)を算出することにより、測定できる。
上記混合工程では、上記無機充填剤及び/又は上記共役ジエン系ゴムが分散液の状態で混合する。上記無機充填剤の分散性の観点から、上記混合工程では、上記無機充填剤及び上記共役ジエン系ゴムの両方が分散液の状態で混合することが好ましい。
上記無機充填剤の分散液は、例えば、上記無機充填剤及び水を撹拌機によって混合することによって調製できる。
上記無機充填剤及び水を混合する際の温度は、上記無機充填剤の分散性の観点から、好ましくは25℃以上、より好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上である。温度の上限は特に限定されないが、水の沸点との関係から、大気圧下であれば100℃未満が好ましく、加圧下であれば100℃以上であってもよい。
上記無機充填剤及び水を混合する際の圧力は、上記無機充填剤の分散性の観点から、好ましくは101.4kPa以上、より好ましくは150kPa以上、更に好ましくは200kPa以上であり、また、好ましくは3MPa以下、より好ましくは2MPa以下、更に好ましくは1MPa以下である。
上記無機充填剤の分散液において、上記無機充填剤の濃度は、上記無機充填剤の分散性の観点から、好ましくは20質量%未満、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下であり、また、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。
上記共役ジエン系ゴムの分散液としては、乳化液、水分散液等が挙げられる。乳化液としては、天然ゴムラテックス、乳化重合SBRラテックス、BRラテックス、IRラテックス等が挙げられる。水分散液は、例えば、アニオン重合で得られたSBR、BR、IRの重合溶液や、配位重合で得られたBR、IRの重合溶液等を、水と混合することで調製可能である。
上記共役ジエン系ゴムの分散液において、上記共役ジエン系ゴムの濃度は特に限定されないが、通常、1~70質量%である。
上記無機充填剤及び上記共役ジエン系ゴムを混合する際の温度は、上記無機充填剤の分散性の観点から、好ましくは25℃以上、より好ましくは30℃以上であり、また、ゴムの熱分解抑制の観点から、好ましくは300℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは100℃以下、特に好ましくは80℃以下である。
上記無機充填剤及び上記共役ジエン系ゴムを混合する際の圧力は、上記無機充填剤の分散性の観点から、好ましくは100kPa以上であり、また、好ましくは3MPa以下、より好ましくは2MPa以下、更に好ましくは1MPa以下である。
上記無機充填剤及び上記共役ジエン系ゴムを混合する際、これらの固形分の質量比(無機充填剤/共役ジエン系ゴム)は、上記無機充填剤の分散性の観点から、1/20~1/5が好ましい。
なお、混合工程において、混合(攪拌)方法は特に限定されず、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル等、一般的な撹拌機を使用可能である。
(回収工程)
上記製造方法は、混合工程の後、混合工程で得られた混合液のpHを調整し、生成された固形分を回収する回収工程を実施することが好ましい。
回収工程において、混合液のpHは、固形分の収率の観点から、8以下に調整することが好ましく、7以下に調整することがより好ましい。
pHの調整方法は特に限定されず、酸又は塩基を添加する等、一般的な方法で行うことができる。酸としては、硫酸、硝酸、塩酸等の無機酸、酢酸などの有機酸等が挙げられ、塩基としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
(乾燥工程)
上記製造方法は、回収工程の後、回収工程で得られた固形分を乾燥させ、上記無機充填剤及び上記共役ジエン系ゴムを含む複合体(ウェットマスターバッチ)を得る乾燥工程を実施することが好ましい。
固形分を乾燥する際の温度は、乾燥時間の観点から、好ましくは40℃以上である。温度の上限は特に限定されないが、ゴムの熱分解抑制の観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
固形分を乾燥する際の圧力は、乾燥時間の観点から、好ましくは10kPa以下、更に好ましくは1kPa以下、特に好ましくは0.1kPa以下である。下限は特に限定されない。
上記複合体のアセトン抽出分は、引張強度の観点から、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.4質量%以下である。下限は特に限定されないが、通常、0.1質量%以上である。
なお、アセトン抽出分は、JIS K6229:2015のA法に準拠した方法で測定できる。
上記複合体のトルエン抽出分は、引張強度の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは36質量%以下である。下限は特に限定されないが、通常、10質量%以上である。
なお、トルエン抽出分は、JIS K6229:2015のA法に準拠した方法で測定できる。
以上の工程を経て、上記無機充填剤が上記共役ジエン系ゴム中に分散したウェットマスターバッチが得られる。
なお、上記製造方法は、ここで説明した態様に限定されるものではなく、上述の混合工程、回収工程、乾燥工程以外の工程を更に含んでいてもよい。
(ゴム組成物の製造方法)
上記製造方法で得られたウェットマスターバッチを用いるゴム組成物の製造方法としては、例えば、ウェットマスターバッチを、他の薬品とともに混練し、その後加硫する方法等が挙げられる。
混練は、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程と、ベース練り工程で得られた混練物、加硫剤及び加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程とで構成されることが好ましい。ベース練り工程における混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃であり、仕上げ練り工程における混練温度は、通常120℃以下、好ましくは85~110℃である。
また、混練は、オープンロール、バンバリーミキサー等、一般的なゴム混練装置を用いて実施できる。
加硫は、プレス加硫等、一般的な加硫処理であればよい。加硫温度は、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。加硫時間は、通常5~15分である。
ウェットマスターバッチとともに混練する薬品としては、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、シリカ、カーボンブラック等の補強用充填剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、アロマオイル等のオイル、ワックス、硫黄等の加硫剤、各種加硫促進剤等が挙げられる。また、上記無機充填剤や上記共役ジエン系ゴムを使用してもよいし、上記共役ジエン系ゴム以外のゴム成分を使用してもよい。
上記ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中、上記共役ジエン系ゴムの含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物において、ケイ酸塩鉱物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは6質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
ウェットグリップ性能、耐摩耗性の観点から、上記ゴム組成物は、カーボンブラックを含有することが好ましい。
カーボンブラックとしては、例えば、GPF、HAF、ISAF、SAF等、タイヤ工業において一般的なものを用いることができる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックのBET比表面積は、ウェットグリップ性能、耐摩耗性の観点から、好ましくは50m/g以上、より好ましくは100m/g以上、更に好ましくは120m/g以上であり、また、分散性の観点から、好ましくは200m/g以下、より好ましくは180m/g以下である。
なお、カーボンブラックのBET比表面積は、ASTM D6556に準じてBET法で測定される値である。
カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸油量は、ウェットグリップ性能、耐摩耗性の観点から、好ましくは50ml/100g以上、より好ましくは100ml/100g以上であり、また、分散性の観点から、好ましくは220ml/100g以下、より好ましくは180ml/100g以下である。
なお、カーボンブラックのDBPは、JIS K6217-4:2001に準拠して測定される値である。
上記ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
ウェットグリップ性能の観点から、上記ゴム組成物は、シリカを含有することが好ましい。
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、EVONIK社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは100m/g以上、より好ましくは150m/g以上、更に好ましくは180m/g以上であり、また、好ましくは250m/g以下、より好ましくは220m/g以下、更に好ましくは200m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは60質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
シリカは、シランカップリング剤と併用してもよい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販品としては、EVONIK社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは6質量部以上であり、また、好ましくは12質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、硫黄を含有してもよい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄等が挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは3質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。市販品としては、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.4質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは6質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは6質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、粘着性樹脂を含有してもよい。
粘着性樹脂としては、タイヤ工業において慣用されるフェノール系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン系樹脂、インデン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ロジン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂(DCPD系樹脂)等の芳香族炭化水素系樹脂、C5系樹脂、C8系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂等の脂肪族炭化水素系樹脂や、これらの水素添加物等が挙げられる。市販品としては、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXTGエネルギー(株)、日本ゼオン(株)、ハリマ化成(株)、東亞合成(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
粘着性樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、ワックスを含有してもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックス等が挙げられる。市販品としては、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは6質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、オイルを含んでもよい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等を用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、JXTGエネルギー(株)、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含んでもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤等が挙げられる。市販品としては、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは6質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含有してもよい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、タイヤ表面の部材に好適に使用できるが、乾燥路面及び湿潤路面の両方において良好なグリップ性能を発揮できるという点から、トレッド(特にキャップトレッド)に好適である。
(タイヤの製造方法)
上記製造方法で得られたゴム組成物を用いるタイヤの製造方法としては、例えば、ゴム組成物を、未加硫の段階でトレッド等の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することで、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧(加硫)する方法等が挙げられる。
加硫の条件は、上記ゴム組成物の製造方法で説明したものと同様である。
上記タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バス等の重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)等に使用可能である。また、オールシーズンタイヤ、サマータイヤ、スタッドレスタイヤ(冬用タイヤ)等にも使用できる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下に、充填剤の水分散液の調製に用いた各種薬品について説明する。
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(BET比表面積:111m/g、DBP:115ml/100g)
シリカ:EVONIK社製のULTRASIL VN3(NSA:180m/g)
クレイ:竹原化学工業(株)製のクレイ
モンモリロナイト:クニミネ工業(株)製のクニピア-F(正電荷及び負電荷を有する無機充填剤)
<シリカの水分散液の調製>
シリカ及び水を24時間機械攪拌し、シリカの濃度が20質量%の水分散液を得た。得られた水分散液はゾル状態であった。
<カーボンブラックの水分散液の調製>
カーボンブラック及び水を24時間機械攪拌し、カーボンブラックの濃度が20質量%の水分散液を得た。得られた水分散液はゾル状態であった。
<クレイの水分散液の調製>
クレイ及び水を24時間機械攪拌し、クレイの濃度が20質量%の水分散液を得た。得られた水分散液はゾル状態であった。
<モンモリロナイトの水分散液の調製>
モンモリロナイト及び水を24時間機械攪拌し、モンモリロナイトの濃度が20質量%の水分散液を得た。得られた水分散液はゲル状態であった。
<モンモリロナイトの水分散液の調製方法の検討>
モンモリロナイト1000gを表1の条件で機械攪拌し、水分散液を調製した。
Figure 0007528554000001
表1のとおり、サンプルAでは、分散に要した時間が58時間であったが、濃度、温度、圧力を変更したサンプルB、C、Dでは、分散に要した時間が大幅に短縮された。
以下に、ラテックス及びゴムの調製に用いた各種薬品について説明する。
乳化剤(1):ハリマ化成(株)製のロジン酸石鹸
乳化剤(2):富士フイルム和光純薬(株)製の脂肪酸石鹸
電解質:富士フイルム和光純薬(株)製のリン酸ナトリウム
スチレン:富士フイルム和光純薬(株)製のスチレン
ブタジエン:高千穂化学工業(株)製の1,3-ブタジエン
ビニルピリジン:東京化成工業(株)製の4-ビニルピリジン
アクリル酸:東京化成工業(株)製のアクリル酸
分子量調整剤:富士フイルム和光純薬(株)製のtert-ドデシルメルカプタン
ラジカル開始剤:日油(株)製のパラメンタンヒドロペルオキシド
SFS:富士フイルム和光純薬(株)製のソディウム・ホルムアルデヒド・スルホキシレート
EDTA:富士フイルム和光純薬(株)製のエチレンジアミン四酢酸ナトリウム
触媒:富士フイルム和光純薬(株)製の硫酸第二鉄
重合停止剤:富士フイルム和光純薬(株)製のN,N’-ジメチルジチオカルバメート
アルコール:関東化学(株)製のメタノール、エタノール
ギ酸:関東化学(株)製のギ酸
塩化ナトリウム:富士フイルム和光純薬(株)製の塩化ナトリウム
<ラテックスAの調製>
攪拌機付き耐圧反応器に蒸留水2000g、乳化剤(1)45g、乳化剤(2)1.5g、電解質8g、スチレン240g、ブタジエン750g、ビニルピリジン10g及び分子量調整剤2gを仕込んだ。反応器温度を5℃とし、ラジカル開始剤1g及びSFS1.5gを溶解した水溶液と、EDTA0.7g及び触媒0.5gを溶解した水溶液とを反応器に添加して重合を開始した。重合開始から5時間後、重合停止剤2gを添加して反応を停止させ、ラテックスAを得た。
<ゴムAの調製>
得られたラテックスAから、水蒸気蒸留により、未反応単量体を除去した。その後、該ラテックスをアルコールに添加し、飽和塩化ナトリウム水溶液又はギ酸でpH3~5になるように調整しながら、凝固させ、クラム状の重合体を得た。該重合体を40℃の減圧乾燥器で乾燥し、固形のゴムA(乳化重合ゴム)を得た。ゴムA中、ビニルピリジン基の含有量は1質量%相当であった。
<ラテックスBの調製>
ビニルピリジン10gをアクリル酸10gに変更した点以外は、ラテックスAと同様の方法により、ラテックスBを得た。
<ゴムBの調製>
ラテックスAをラテックスBに変更した点以外は、ゴムAと同様の方法により、固形のゴムBを得た。ゴムB中、カルボキシル基の含有量は1質量%相当であった。
以下に、複合体の調製に用いた各種薬品について説明する。
ラテックス:上記で調製
モンモリロナイト:クニミネ工業(株)製のクニピア-F(正電荷及び負電荷を有する無機充填剤)
エタノール:関東化学(株)製のエタノール
硫酸:関東化学(株)製の硫酸
<複合体A1の調製>
サンプルCの条件で調製したモンモリロナイトの水分散液と、ラテックスAとを、それぞれの固形分比が1/10になるように、30℃、0.1MPaの条件で混合し、混合液を得た(混合工程)。
次いで、混合液中にモンモリロナイトの塊がないことを目視で確認してから、5%硫酸水を添加して混合液のpHを7以下に調整し、沈殿(固形分)を生成させた。そして、混合液を2000gのエタノールに添加してから、濾過することで、固形分を回収した(回収工程)。
次いで、回収した固形分を、40℃、0.1kPa以下の条件で48時間乾燥し、複合体(ウェットマスターバッチ)A1を得た(乾燥工程)。
得られた複合体A1は、アセトン抽出分が2.4質量%、トルエン抽出分が36質量%であった。
<複合体Bの調製>
ラテックスAをラテックスBに変更した点以外は、複合体A1と同様の方法により、複合体Bを得た。
得られた複合体Bは、アセトン抽出分が2.3質量%、トルエン抽出分が32質量%であった。
<複合体A2の調製>
混合工程において、温度を80℃に変更した点以外は複合体A1と同様の方法により、複合体A2を得た。
得られた複合体A2は、アセトン抽出分が2.5質量%、トルエン抽出分が33質量%であった。
<複合体A3の調製>
混合工程において、温度を100℃、圧力を0.1MPaに変更した点以外は複合体A1と同様の方法により、複合体A3を得た。
得られた複合体A3は、アセトン抽出分が2.0質量%、トルエン抽出分が33質量%であった。
<複合体A4の調製>
混合工程において、温度を200℃、圧力を0.1MPaに変更した点以外は複合体A1と同様の方法により、複合体A4を得た。
得られた複合体A4は、アセトン抽出分が2.6質量%、トルエン抽出分が30質量%であった。
<複合体A5の調製>
乾燥工程において、温度を100℃に変更した点以外は複合体A1と同様の方法により、複合体A5を得た。
得られた複合体A5は、アセトン抽出分が2.5質量%、トルエン抽出分が24質量%であった。
<複合体A6の調製>
乾燥工程において、温度を200℃に変更した点以外は複合体A1と同様の方法により、複合体A6を得た。
得られた複合体A6は、アセトン抽出分が2.7質量%、トルエン抽出分が20質量%であった。
<複合体A7の調製>
乾燥工程において、圧力を10kPaに変更した点以外は複合体A1と同様の方法により、複合体A7を得た。
得られた複合体A7は、アセトン抽出分が2.5質量%、トルエン抽出分が35質量%であった。
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
ゴム、複合体:上記で調製
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(BET比表面積:111m/g、DBP:115ml/100g)
モンモリロナイト:クニミネ工業(株)製のクニピア-F(正電荷及び負電荷を有する無機充填剤)
シリカ:EVONIK社製のULTRASIL VN3(NSA:180m/g)
シランカップリング剤:EVONIK社製のSi69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX-140
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ
加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
<実施例及び比較例>
表2、3に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製の1.77Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練物を得た。次に、得られた混練物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で20分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物からなる厚さ4mmのゴムシートを得た。
得られたゴムシートを用いて以下の評価を行った。結果を表2、3に示す。
なお、下記評価において、基準例は、表2:比較例A、表3:比較例Bである。
(硬度変化指数)
JIS K6253-3(2012)の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ」に従って、タイプAデュロメータにより、乾燥時におけるゴムシートの硬度(JIS-A硬度)を測定した(初期硬度)。測定は25℃で行った。
次いで、測定後のゴムシートを水に浸漬してから、6日後に取り出し、表面の水分を拭き取った後、同様の条件で硬度を測定した(水浸漬後の硬度)。
そして、初期硬度/水浸漬後の硬度×100により、水浸漬時の硬度変化を指数表示した。指数が大きいほど、水浸漬時の硬度変化(硬度の減少率)が大きく、ウェットグリップ性能が良好であることを示す。
(応答性指数)
(株)上島製作所製のスペクトロメーターを用いて、歪0.5%、周波数10Hz、温度30℃におけるゴムシートのtanδを測定し、基準例のtanδの逆数を100として指数表示した。数値が大きいほど、tanδが小さく、操舵時の応答性が良好であることを示す。
(ウェットグリップ性能及び操舵時の応答性の総合性能)
硬度変化指数及び応答性指数に基づき、ウェットグリップ性能及び操舵時の応答性の総合性能を評価した。総合性能は、各指数の和で表されるものである。
Figure 0007528554000002
Figure 0007528554000003
表2、3より、実施例は、ウェットグリップ性能及び操舵時の応答性の総合性能(各指数の和)が向上した。

Claims (10)

  1. 濃度20質量%以上の水分散液がゲル状となる無機充填剤と、イオン性官能基を有する共役ジエン系ゴムとを混合する混合工程を含み、
    前記混合工程では、前記無機充填剤及び/又は前記共役ジエン系ゴムが分散液の状態で混合し、混合液を得
    前記イオン性官能基は、窒素を含む複素環基であり、
    前記共役ジエン系ゴムは、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、及びイソプレン系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種であるウェットマスターバッチの製造方法。
  2. 前記混合工程では、温度25℃以上、圧力101.4kPa以上の条件で前記無機充填剤及び水を混合して、前記無機充填剤の濃度が20質量%未満である分散液を調製し、得られた前記無機充填剤の分散液を、前記共役ジエン系ゴムの分散液と混合する請求項1記載のウェットマスターバッチの製造方法。
  3. 前記混合工程では、温度25~300℃、圧力100kPa以上の条件で、前記無機充填剤と、前記共役ジエン系ゴムとを混合する請求項1及び2記載のウェットマスターバッチの製造方法。
  4. 前記混合液のpHを8以下に調整し、生成された固形分を回収する回収工程を含む請求項1~3のいずれかに記載のウェットマスターバッチの製造方法。
  5. 前記固形分を、温度40℃以上、圧力10kPa以下の条件で乾燥させ、ウェットマスターバッチを得る乾燥工程を含む請求項4記載のウェットマスターバッチの製造方法。
  6. 前記ウェットマスターバッチのアセトン抽出分が2.5質量%以下、トルエン抽出分が50質量%以下である請求項5記載のウェットマスターバッチの製造方法。
  7. 前記無機充填剤が、前記共役ジエン系ゴムの前記イオン性官能基と対となる電荷を有する請求項1~6のいずれかに記載のウェットマスターバッチの製造方法。
  8. 前記無機充填剤が、ケイ酸塩鉱物である請求項1~7のいずれかに記載のウェットマスターバッチの製造方法。
  9. 請求項1~のいずれかに記載の製造方法で得られたウェットマスターバッチを用いるゴム組成物の製造方法。
  10. 請求項記載の製造方法で得られたゴム組成物を用いるタイヤの製造方法。

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