JP7527178B2 - 耐凍害性混和剤、耐凍害性コンクリート、および耐凍害性コンクリートの製造方法 - Google Patents

耐凍害性混和剤、耐凍害性コンクリート、および耐凍害性コンクリートの製造方法 Download PDF

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本発明は、コンクリートに耐凍害性を付与可能な耐凍害性混和剤、耐凍害性コンクリート、およびその製造方法に関するものである。
コンクリートの凍害を防止する対策として、所定量の良質な空気を導入することが一般的な手段である。しかし、コンクリート中の空気量は、運搬過程、またはポンプ圧送、振動締固めなどの施工過程において低下することが懸念される。コンクリート中の空気量が低下することにより、耐凍害性の低下だけでなく、流動性の低下も起こる可能性がある。
このような課題に対する対応策の一つとして、高性能減水剤と天然樹脂酸塩を主成分とするAE剤(空気連行剤)を含有する、耐凍害性セメント混和材剤が提案されている(特許文献1)。
また、少なくとも、膨張材、パラフィン、および亜硝酸塩からなる、コンクリート用耐久性改善剤も提案されている(特許文献2)。コンクリートの乾燥収縮や自己収縮を低減する目的で膨張材が添加されるが、膨張材を含むコンクリートは、凍結融解抵抗性が低下する虞があることから、特許文献2では、膨張材を含んでいても、コンクリートの凍結融解抵抗性の低下を抑制でき、かつ収縮低減効果の高いコンクリート用耐久性改善剤について開示されている。
特開2000-95551号公報 特開2018-162171号報
本願発明は、コンクリート中の空気量を安定させるとともに、良好な凍結融解抵抗性を付与することができる耐凍害性混和剤、および耐凍害性コンクリート、および耐凍害性コンクリートの製造方法を提供するものである。
本発明は、前記課題を解決すべく、コンクリートに配合する添加剤について種々検討を重ねた結果、固形パラフィン等を含む耐凍害性混和剤を用いることによって、前記課題が解消できる知見を得て本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1](A)固形パラフィン、乳化剤、起泡剤、および分散媒を含むA剤と、
(B)亜硝酸塩および溶媒を含むB剤と、
からなることを特徴とする二液型耐凍害性混和剤。
[2]前記起泡剤が、樹脂酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物の硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、およびロジン酸塩類からなる群から選ばれる1種または2種以上である、[1]に記載の二液型耐凍害性混和剤。
[3]前記乳化剤が非イオン性界面活性剤である、[1]または[2]に記載の二液型耐凍害性混和剤。
[4]前記亜硝酸塩が亜硝酸リチウムまたは亜硝酸カルシウムである、[1]~[3]の何れかに記載の二液型耐凍害性混和剤。
[5]セメント、固形パラフィン、乳化剤、起泡剤、および亜硝酸塩を含み、前記セメント100質量部に対する固形分換算で、前記固形パラフィンを0.1~5.0質量部、前記亜硝酸塩を0.1~5.0質量部含む、耐凍害性コンクリート。
[6]コンクリートに、固形パラフィン、乳化剤、起泡剤、および亜硝酸塩を添加する耐凍害性コンクリートの製造方法であって、前記固形パラフィンおよび前記亜硝酸塩を、コンクリート中のセメント100質量部に対する配合量が固形分換算で、それぞれ0.1~5.0質量部および0.1~5.0質量部となるように配合することを特徴とする耐凍害性コンクリートの製造方法。
[7]コンクリートに、前記固形パラフィン、前記乳化剤、前記起泡剤、および分散を含むA剤と、前記亜硝酸塩と溶媒を含むB剤と、を配合する、[6]に記載の耐凍害性コンクリートの製造方法。
本発明によれば、耐凍害性(凍結融解抵抗性)に優れ、かつ流動性保持性を確保できるコンクリートを簡便に得ることができる。
<耐凍害性混和剤>
本発明者らの検討によれば、コンクリート中に特定の成分を特定量で配合することによってコンクリート中の空気量を安定させ、凍結融解抵抗性を付与できることがわかった。しかしながら、これらの特定成分を単一の組成物として調整した場合、その組成物の安定性を確保することが困難となり、所望の効果を得にくいこともわかった。そして、コンクリートに配合する成分、すなわち耐凍害性混和剤を二液型として、使用の直前にそれらを混合することで、良好な効果が得られることがわかった。
すなわち、本発明における耐凍害性混和剤は、A剤とB剤のふたつから構成される。A剤は固形パラフィン、乳化剤および起泡剤を含むエマルションであり、B剤は亜硝酸塩を含む溶液またはサスペンションである。これらA剤、B剤を併用して使用することにより、コンクリートに良好な耐凍害性を付与することができる。A剤およびB剤は、コンクリートにて添加する直前に混合しても、それらを順次コンクリートに添加してもよい。
<A剤>
A剤は、固形パラフィン、乳化剤、起泡剤、および分散媒を含む。A剤は、一般的に固形パラフィンが分散されたエマルションの形態である。
A剤に含まれる固形パラフィンは、C2n+2(nは、一般的には、20以上の整数)で表され、常温で固体の脂肪族飽和炭化水素である。この固形パラフィンの形状は任意に選択することができるが、コンクリート中に均一に分散させるために、粒子状であることが好ましい。固形パラフィン粒子の大きさとしては、粒子径が0.1~2μmが好ましく、0.2~1.0μmがより好ましい。この固形パラフィン粒子は、乳化剤により分散媒中に分散されている。固形パラフィンの固形分濃度は、A剤の総質量を基準として、例えば10~50質量%である。また、パラフィンエマルションの粘度は10~40mPa・sが好ましい。
上記乳化剤は、固形パラフィン粒子を乳化し、μmオーダーの粒子として分散可能なものであれば特に限定されるものではない。したがって、各種の界面活性剤などから任意に選択できるが、コンクリート耐凍害性混和剤を添加した際の空気量の安定性の点から、非イオン系界面活性剤が好ましい。乳化剤の添加量は、A剤の総質量を基準として、5.0~10.0質量%が好ましい。
A剤には、さらに起泡剤(起泡成分)が含まれる。起泡成分としては、一般的なコンクリート用起泡剤の主成分として用いられるものが挙げられる。例えば、樹脂酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物の硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、ロジン酸塩類等が挙げられ。これらのうち樹脂酸塩が特に好ましい。
一般にモルタルやコンクリート中の空気量を調整する場合、AE剤を添加して調整される。しかし本発明者らの検討によれば、固体パラフィン粒子をコンクリートに配合した場合は、その後からAE剤を添加して空気量を調整することが難しいことがわかった。一方、固体パラフィンを含むエマルション中に予め起泡剤(起泡成分)が含まれることによって、コンクリート中の空気量の制御が容易になることが判明した。このために、A剤中に起泡剤を配合しておくことが有効である。A剤中の起泡剤(起泡成分)の量としては、A剤の総質量を基準として、固形分換算で0.1~4.0質量%が好ましく、0.5~3.0質量%がより好ましい。
A剤は、各成分を溶解または分散させる分散媒をさらに含む。分散媒は、一般的には水を主成分とする水性媒体であり、好ましくは水が用いられる。この分散媒は必要に応じて少量の有機溶媒、例えばアルコール類を含んでいてもよい。
<B剤>
B剤は、亜硝酸塩および溶媒を含む。このB剤は溶液またはサスペンションであってもよい。
B剤に含まれる亜硝酸塩としては、例えば亜硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸ベリリウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸亜鉛、亜硝酸ストロンチウム、亜硝酸バリウム等が挙げられる。本発明において、好ましい亜硝酸塩は亜硝酸リチウム、または亜硝酸カルシウムである。経済的な点からは亜硝酸カルシウムが好ましい。B剤中の亜硝酸塩の固形分濃度は、例えば10~60質量%である。
B剤は、亜硝酸塩を溶解あるいは分散させる溶媒をさらに含む。溶媒は、一般的には水を主成分とする水性溶媒であり、好ましくは水が用いられる。この溶媒は必要に応じて少量の有機溶媒、例えばアルコール類を含んでいてもよい。
<耐凍害性コンクリートおよびその製造方法>
本発明によるコンクリートは、上記の各成分を含むものである。これらの各成分は、典型的には上記のA剤およびB剤を組み合わせて、コンクリートに配合される。以下、コンクリートに、本発明による耐凍害性混和剤(A剤およびB剤)を配合して、耐凍害性コンクリートを調製する方法を説明する。
A剤の配合量としては、固形パラフィンの固形分換算で、コンクリート中のセメント100質量部に対して、0.1~5.0質量部が好ましく、0.2~2.0質量部であることがより好ましい。固形パラフィンの配合量が過度に少ない場合、本発明が目的とする効果(凍結融解抵抗性)が小さくなることがあるので注意が必要である。逆に、過度に多い場合、スランプの低下が大きくなるとともに、強度発現性が損なわれる虞があるので注意が必要である。
なお、A剤のコンクリート中の配合量としては、固形パラフィンの固形分換算で、好ましくは0.5~5.0kg/mであり、より好ましくは1.0~4.0kg/mであり、さらに好ましくは1.2~3.0kg/mである。
B剤の配合量としては、亜硝酸塩の固形分換算で、コンクリート中のセメント100質量部に対して、0.1~5.0質量部が好ましく、0.2~2.0質量部であることがより好ましい。亜硝酸塩の配合量が過度に少ない場合、凍結融解抵抗性が不十分と治ことがあるので注意が必要である。逆に、過度に多い場合、スランプの低下が大きくなる虞があるので注意が必要である。
なお、B剤のコンクリート中の配合量としては、亜硝酸塩の固形分換算で、好ましくは0.5~4.0kg/mであり、より好ましくは0.8~3.0kg/mであり、さらに好ましくは1.0~2.5kg/mである。
本発明において、コンクリートとはモルタルを含むものである。コンクリートに用いるセメントは、特に制限されず、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の混合セメント、およびエコセメント等から選ばれる1種以上が挙げられる。単位セメント量は、好ましくは190~310kg/m、より好ましくは210~250kg/mである。単位セメント量が190~310kg/mの範囲にあれば、高い強度が得られる。
本発明のコンクリートは細骨材および粗骨材を含んでいてもよい。用いることができる細骨材は、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、硅砂、スラグ細骨材、および軽量細骨材等から選ばれる1種以上が挙げられ、粗骨材は川砂利、山砂利、砕石、スラグ粗骨材、および軽量粗骨材等から選ばれる1種以上が挙げられる。また、前記粗骨材および細骨材は、天然骨材のほか、人工骨材や再生骨材を用いることができる。
また、前記細骨材および粗骨材の単位量は、いずれの骨材も、良好なワーカビリティの観点から、好ましくは500~1100kg/m、より好ましくは600~1000kg/mである。
本発明によるコンクリートは、一般に水を含んでいる。用いることができる水は特に限定されず、上水道水、下水処理水、および生コンの上澄み水等の、コンクリートの強度発現性や流動性等に影響を与えないものであれば用いることができる。また、単位水量は、良好なワーカビリティの観点から、好ましくは100~200kg/m、より好ましくは120~180kg/mである。
本発明によるコンクリートには、その特長が損なわれない範囲で各種添加剤(材)が併用されても良い。この種の添加剤としては、例えば減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤等の分散剤、AE剤、凝結遅延剤、強度促進材、膨張材、セメント用ポリマー、繊維、発泡剤、防水剤、防錆剤、収縮低減剤、増粘剤、保水剤、顔料、撥水剤、白華防止剤、消泡剤、各種無機微粉末等が挙げられる。これらの成分は、コンクリートに対して単独で配合される他、本発明による効果を損なわない範囲で、上記の耐凍害性混和剤(A剤またはB剤)に配合することもできる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
<耐凍害性混和剤の調製>
A剤(A1~A7)は、樹脂酸塩(起泡剤)を含む固形パラフィン粒子分散物に、乳化剤を混合し、必要量の水を添加して分散させることで、表1に示す各配合物を調製した。乳化剤には、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)を用いた。
B剤は、亜硝酸カルシウム水溶液を30質量%の濃度で水に溶解させて調製した。
Figure 0007527178000001
<コンクリートの調製>
20℃、80%RHの恒温室内において、公称容量55Lのパン型ミキサを用いて、前記材料を表2に示す配合に従い、混練してコンクリート試験体を作製した。
なお、練混ぜ方法は、普通ポルトランドセメント(C)、細骨材(S)、粗骨材(G)をミキサに投入し、30秒間空練りした後、水(W)、耐凍害性混和剤(A剤およびB剤)、AE減水剤(Ad)、空気量調整剤(AE)をミキサに投入し、60秒間混練し、かき落とし後、再度60秒間混練した後に排出した。
Figure 0007527178000002
* カッコ内の量は、固形パラフィンまたは亜硝酸塩の固形分換算配合量(kg/m
<使用材料>
・練混ぜ水(記号W):上水道水
・セメント(記号C):普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、密度3.16g/cm
・細骨材(記号S):山砂(静岡県掛川市産、表乾密度2.57g/cm
・粗骨材(記号G):硬質砂岩2005(茨城県桜川市産、表乾密度2.65g/cm
・AE減水剤(記号Ad):商品名「マスターポリヒード15S」(ポゾリスソリューションズ社製)
・空気量調整剤(記号AE):商品名「マスターエア202」(ポゾリスソリューションズ社製)
<評価試験>
(1)スランプ
スランプの測定は、JIS A 1101「コンクリートのスランプ試験方法」に準拠して、排出直後および排出から60分後に測定した。
(2)空気量
空気量の測定は、JIS A 1128「フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法‐空気室圧力方法」に準拠して排出直後および排出から60分後に測定した。
(3)耐凍害性
耐凍害性は、JIS A 1148「コンクリートの凍結融解試験方法」に準拠して試験を行い、耐久性指数を算出して評価した。この耐久性指数が60以上であると、耐凍害性を備えていると判断できる。
<試験結果>
試験結果を表3に示す。
実施例1~7については、混練直後から60分経過後も十分な空気量が確保され、いずれも高い耐久性指数を示し、良好な凍結融解抵抗性が得られることが分かった。
耐凍害性混和剤を使用しない比較例4は、空気量が小さく、耐久性指数は極めて低い値を示した。
亜硝酸塩を含まない比較例2のコンクリートは、十分な空気量は確保されたものの耐久性指数は小さくなった。一方、固形パラフィン等を含まない比較例3のコンクリートでは、十分な空気量が得られず、耐久性指数は低い値となった。
また、起泡剤を含まないA剤を配合し、別にAE剤を追加した比較例1のコンクリートは、混練直後は比較的高い空気量が実現できたが、十分な空気量を維持できず、60分経過後のスランプも大きく低下する傾向がみられた。
Figure 0007527178000003

Claims (7)

  1. (A)固形パラフィン、乳化剤、起泡剤、および分散媒を含むA剤と、
    (B)亜硝酸塩および溶媒を含むB剤と、
    からなり、
    A剤の総質量に対して、前記固形パラフィンの固形分濃度が10~50質量%であり、前記乳化剤の添加量が5.0~10.0質量%であり、前記起泡剤の含有率が固形分換算で0.1~4.0質量%であり、
    B剤の総質量に対する前記亜硝酸塩の含有率が10~60質量%であり、
    コンクリート中のセメント100重量部に対して、前記A剤が、前記固形パラフィンの固形分換算で、0.1~5.0質量部、前記B剤が前記亜硝酸塩の固形分換算で、0.1~5.0質量部配合される、
    ことを特徴とする二液型耐凍害性混和剤。
  2. 前記起泡剤が、樹脂酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物の硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、およびロジン酸塩類からなる群から選ばれる1種または2種以上である、請求項1に記載の二液型耐凍害性混和剤。
  3. 前記乳化剤が非イオン性界面活性剤である、請求項1又は2に記載の二液型耐凍害性混和剤。
  4. 前記亜硝酸塩が亜硝酸リチウムまたは亜硝酸カルシウムである、請求項1~3の何れか1項に記載の二液型耐凍害性混和剤。
  5. セメント、固形パラフィン、乳化剤、起泡剤、および亜硝酸塩を含み、前記セメント100質量部に対する固形分換算で、前記固形パラフィンを0.1~5.0質量部、前記前記乳化剤を0.05~1.0質量部、前記起泡剤を0.001~0.4質量部、前記亜硝酸塩を0.1~5.0質量部含む、耐凍害性コンクリート。
  6. コンクリートに、固形パラフィン、乳化剤、起泡剤、および亜硝酸塩を添加する耐凍害性コンクリートの製造方法であって、前記固形パラフィン、前記乳化剤、前記起泡剤、および前記亜硝酸塩を、コンクリート中のセメント100質量部に対する配合量が固形分換算で、それぞれ0.1~5.0質量部、0.05~1.0質量部、0.001~0.4質量部、および0.1~5.0質量部となるように配合することを特徴とする耐凍害性コンクリートの製造方法。
  7. コンクリートに、前記固形パラフィン、前記乳化剤、前記起泡剤、および分散媒を含むA剤と、前記亜硝酸塩と溶媒を含むB剤と、を配合する、請求項6に記載の耐凍害性コンクリートの製造方法。
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