JP7521295B2 - 全有機体炭素計、および、全有機体炭素濃度の測定方法 - Google Patents

全有機体炭素計、および、全有機体炭素濃度の測定方法 Download PDF

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Description

本開示は、水試料の水質分析に用いられる全有機体炭素計、および、水試料の全有機体炭素濃度の測定方法に関する。
河川水、湖沼水、海洋水、雨水、地下水などの環境水、上下水道水、製薬用水、純水、工業用水、排水等の水試料に対する水質分析が行われている。水質分析の一つとして、全有機体炭素の分析がある。特許文献1は、全有機体炭素の分析を行う全有機体炭素計のうち、燃焼酸化式の全有機体炭素計を開示している。
全有機体炭素計においては、全炭素(または全有機体炭素)を、燃焼その他の方法で酸化して二酸化炭素にし、この二酸化炭素を含むガスの二酸化炭素濃度測定を行うことで、水試料中の全有機体炭素の濃度測定を行う。二酸化炭素の濃度測定には、ガス分子の赤外線吸収を利用する非分散型赤外線(NDIR:Non Dispersive Infrared)検出装置が用いられる。
非分散型赤外線検出装置では、光源室内に配置された赤外光源から試料セルに照射され、試料セル内の試料ガスに吸収されず透過した赤外線を検出器で検出する。
赤外線光源を置く光源室内は、一部は赤外線の光路となる。そのため、測定精度の向上のため、光源室内の二酸化炭素を除去することが考えられる。
特開2001-318089号公報
光源室内には駆動部が存在し、光源室外から駆動させる必要があるため、光源室を完全に密閉することはできない。そこで、光源室には、パージガスを供給し続けることで光源室内の二酸化炭素を除去することが考えられる。光源室専用のパージガス供給設備を用意すると、装置構成が複雑になる上、新たなガスを連続的に供給するためのランニングコストが大きくなるという課題がある。
本開示の第1の態様は、非分散型赤外線検出装置を備えた全有機体炭素計である。非分散型赤外線検出装置は、試料セルと、光源と、検出器と、光源室と、ガス流路と、CO濃度調整部と、を有する。試料セルは、試料を含むガスを計測するために保持する。光源は、試料セル内のガスに赤外線を照射する。検出器は、光源から照射され試料セル内を透過した赤外線を検出する。光源室は、光源を収容する。ガス流路は、試料セルと光源室を接続し、試料セルから流出するガスを光源室内へ誘導する。CO濃度調整部は、ガス流路に配置され、CO吸収部材を有する。
本開示の第2の態様は、試料中の炭素を酸化させて二酸化炭素にする酸化ステップと、前記二酸化炭素の濃度を測定する測定ステップとを含む、全有機体炭素濃度の測定方法である。測定ステップは、二酸化炭素を含むガスを試料セルに導入するステップと、試料セル内の前記ガスに赤外線を照射するステップと、試料セルから流出する前記ガスを、CO濃度調整部を介して、光源室に誘導するステップと、を有する。
全有機体炭素計の非分散型赤外線検出装置においては、試料セルから排出されるガスの二酸化炭素濃度は変動する。試料セルから排出されるガスを光源室に導入して利用する場合には、ガス中の二酸化炭素濃度を低い値に安定化させる必要がある。本開示では、このような目的のために、試料セルからガスを光源室に導入するガス流路中に、CO吸収部材を含むCO濃度調整部を配置している。
CO吸収部材は、周囲の二酸化炭素濃度が高い場合には、二酸化炭素を吸着し、周囲の二酸化炭素濃度が低い場合には、吸着した二酸化炭素を放出する。したがって、CO濃度調整部は、光源室に導入されるガスの二酸化炭素濃度を低い値に安定化させることができる。CO濃度調整部を用いることによって、光源室専用のパージガス供給設備が不要になり、さらに、パージガスを連続的に光源室に供給する必要がなくなりランニングコストを低下させることができる。
本開示の全有機体炭素計1の概略構成および流路系統を示す図である。 第1実施形態の全有機体炭素計1の非分散型赤外線検出装置50の検出部51の概略構成図である。 第1実施形態のチョッパ59を検出器56の方向から見た図である。 第1実施形態の全有機体炭素の測定方法の測定ステップを示すフローチャートである。 第2実施形態の全有機体炭素計1aの非分散型赤外線検出装置50aの検出部51aの概略構成図である。 変形実施形態2Aの全有機体炭素計1bの非分散型赤外線検出装置50bの検出部51bの概略構成図である。
(1)全有機体炭素濃度の測定方法
本開示の全有機体炭素計は、水試料の全有機体炭素(TOC)濃度を測定する。一般に、環境水等の水試料には、全有機体炭素(TOC)だけでなく、無機体炭素(IC)が含まれている。そこで、全有機体炭素の測定には、無機体炭素の影響を除いて測定する必要がある。
全有機体炭素(TOC)と無機体炭素(IC)を合わせたものを全炭素(TC)という。つまり、式(1)の関係が成り立つ。
全炭素(TC)=全有機体炭素(TOC)+無機体炭素(IC) (1)
なお、(1)式、または、以下の(2)、(3)式は、質量(量)としても、水試料中の濃度としても成り立つ。また、本明細書中で、たとえば、全有機体炭素濃度を、単に全有機体炭素という場合がある。
全有機体炭素の測定には、2通りの方法がある。いずれの方法も本開示では有効である。
第1方法は、次のとおりである。(1)式を変形すると、次の(2)式が成り立つ。
全有機体炭素(TOC)=全炭素(TC)-無機体炭素(IC) (2)
第1方法は、全炭素と、無機体炭素とを測定して、(2)式に代入することにより、全有機体炭素を計算する方法である。
第2方法は、まず、前処理によって、無機体炭素をあらかじめ除去する。そうすると、(1)式より、(3)式が成立する。
全有機体炭素(TOC)=全炭素(TC) (3)
(3)式により、全炭素を測定して、全有機体炭素とする。
本開示の全有機体炭素濃度の測定は、酸化ステップと、測定ステップの2段階のステップで行われる。酸化ステップでは、水試料中の全炭素または無機体炭素を酸化させて二酸化炭素(CO)を生成する。測定ステップでは、生成された二酸化炭素の測定を行う。
酸化ステップを行う方法は、湿式酸化式と、乾式酸化式とがある。いずれの方式も本開示では有効である。乾式酸化式としては、燃焼酸化式がある。
測定ステップは、非分散型赤外線(NDIR)検出装置を用いる。
<第1実施形態>
(2)全有機体炭素計の全体構成
第1実施形態の全有機体炭素計1は、燃焼酸化式で酸化を行う方式を採用している。全有機体炭素計1は、図1に示すように、主に、試料注入器20、全炭素燃焼部30と、無機体炭素反応部35と、非分散型赤外線検出装置50と、を備えている。全有機体炭素計1は、キャリアガス制御部15と、除湿器40と、を備えていてもよい。
測定に用いる試料は、試料槽11内に用意される。試料は、水試料である。水試料は、液体の水と、炭素などの水以外の物質とからなる。
試料注入器20は、回転式マルチポートバルブ21と、シリンジポンプ22とを備えている。
回転式マルチポートバルブ21は、中央部の1の共通ポートと、周辺部の複数のポートとを有している。共通ポートは、シリンジポンプ22に接続されている。周辺部の複数のポートは、試料槽11に接続されている流路p11と、酸13に接続されている流路p13と、洗浄用水12に接続されている流路p12と、ガス抜きのための流路p25と、ドレンのための流路p26と、全炭素燃焼部30に接続されている流路p24と、無機体炭素反応部35に接続されている流路p23とに、接続されている。共通ポートは、周辺部の複数のポートのうちの1のポートに接続を切り替えることが可能であり、両ポートに接続された流路を連通させることができる。例えば、試料槽11の試料をシリンジポンプ22のシリンジに注入する際には、試料槽11に接続されている流路p11のポートを共通ポートと接続するように切り替える。
シリンジポンプ22は、筒状のシリンジと、シリンジ内に挿入されるプランジャを備えている。プランジャは、シリンジ内を上下することにより、シリンジ内に液体、ガスを導入し、排出する。シリンジポンプ22は、上述したように回転式マルチポートバルブ21の共通ポートに接続されている。シリンジの下部には、キャリアガス制御部15と接続するガス流路p15と接続されたガス導入口がある。
キャリアガス制御部15は、キャリアガスの流れを制御する。キャリアガスは、酸素を含み、二酸化炭素を全くまたはほとんど含まない。キャリアガスの例としては、酸素ガス、または、合成空気(高純度空気)など、である。キャリアガス制御部15には、ガスボンベ16からキャリアガスが供給される。キャリアガスの供給源は、ガスボンベに限定されず、他の供給源であってもよい。キャリアガス制御部15は、流路p15によりシリンジポンプ22のガス導入口に接続され、流路p17により全炭素燃焼部30に、接続されている。
全炭素燃焼部30は、全炭素試料注入部31と、酸化触媒が入った全炭素燃焼管32と、電気炉33とを備えている。全炭素試料は、試料注入器20より、流路p24、全炭素試料注入部31を経由して、燃焼管32に導入される。燃焼管32にはキャリアガスが流路p17より一定量供給された状態で、燃焼管32内が電気炉33により680℃に加熱される。これによって、全炭素が酸化され、二酸化炭素が生成される。
無機体炭素反応部35には、酸溶液が保持されている。無機体炭素反応部35は、試料注入器20に流路p23を経て、全炭素燃焼部30に流路p30を経て、除湿器40に流路p35を経て、接続されている。無機体炭素の試料は、試料注入器20と流路p23を経由して、無機体炭素反応部35に導入される。全炭素試料は、キャリアガスとともに、全炭素燃焼部30より無機体炭素反応部35に流路p30を経由して導入される。無機体炭素反応部35において、無機体炭素は、酸溶液と反応して二酸化炭素が生成される。
除湿器40は、無機体炭素反応部35と流路p35で、非分散型赤外線検出装置50の検出部51と流路p40で接続されている。二酸化炭素を含む試料は、キャリアガスとともに、除湿器40において、除湿される。除湿された試料とキャリアガスは、検出部51に導入される。
(3)第1実施形態の全有機体炭素計1を用いた全有機体炭素濃度の測定方法
本実施形態の全有機体炭素計1は、(1)で説明した全有機体炭素濃度の測定の第1方法および第2方法のいずれも実施できる。
第1方法の測定は、次のように行う。第1方法では、(2)式に従って、全炭素の測定と、無機体炭素の測定とを行う。
全炭素の測定は、次の通りである。水試料は試料注入器20により、全炭素燃焼部30に輸送される。全炭素試料は、キャリアガスとともに、全炭素燃焼部30で燃焼され、二酸化炭素が生成される。二酸化炭素を含む試料とキャリアガス(試料ガス)は、無機体炭素反応部35、除湿器40を経由して、検出装置50に運ばれる。検出装置50で試料ガス中の二酸化炭素濃度が測定され、水試料中の全炭素濃度が計算される。
無機体炭素の測定は、次の通りである。試料は試料注入器20により、無機体炭素反応部35に輸送される。無機体炭素は、無機体炭素反応部35で酸溶液と反応して、二酸化炭素が生成される。二酸化炭素を含む試料(試料ガス)は、除湿器40を経由して、検出装置50に運ばれる。検出装置50で試料ガス中の二酸化炭素濃度が測定され、水試料中の無機体炭素濃度が計算される。
第1方法では、全炭素濃度と無機体炭素濃度を(2)式に代入して、全有機体炭素濃度を求める。
本実施形態の全有機体炭素計1を用いた第2方法の測定は、次のように行う。第2方法では、まず、試料の前処理が行われる。シリンジポンプ22のシリンジに、試料と、酸13から酸とを導入する。酸とは、例えば、希塩酸(pH≦3)である。試料中の無機体炭素が酸と反応して、二酸化炭素が生成される。シリンジポンプ22のプランジャが所定位置まで下がると、シリンジのガス導入口に通気ガスが導入される。通気ガスは、キャリアガス制御部15より供給され、キャリアガスと同じガスである。通気ガスにより通気処理が行われ、通気ガスとともに、無機体炭素より生成した二酸化炭素が全有機体炭素計1外に排気される。
こうして、無機体炭素が除去された試料は、第1方法の全炭素の測定と同様の処理が行われる。すなわち、試料は試料注入器20により、全炭素燃焼部30に輸送され、燃焼される。生成した二酸化炭素を含む試料とキャリアガスは、無機体炭素反応部35、除湿器40を経由して、検出装置50に運ばれる。検出装置50で試料を含むガス中の二酸化炭素濃度が測定され、水試料中の有機体炭素濃度が計算される。
(4)非分散型赤外線検出装置50
(4-1)非分散型赤外線検出装置50の全体構成
本実施形態の非分散型赤外線(NDIR)検出装置50は、図1に示すように、検出部51と、データ処理部61と、操作部62と、表示部63とを備えている。
検出部51は、流路p40により除湿器40に接続されている。検出部51には、除湿器40から、二酸化炭素を含むガスが輸送され、二酸化炭素濃度の測定が行われる。
データ処理部61は、コンピュータである。データ処理部61は、プロセッサとメモリを有している。データ処理部61は、検出部51から赤外線検出データを受け取り、ガス中の二酸化炭素濃度、さらに、水試料中の全炭素濃度、無機体炭素濃度、全有機体炭素濃度を演算する。
操作部62は、前記コンピュータの一部である。具体的には、キーボード、タッチパネル、マウスなどである。ユーザは、操作部62に、装置の操作命令を入力する。
表示部63は、ディスプレイまたはプリンタである。表示部63は、データ処理部61で取得されたデータまたは演算されたデータを表示する。
(4-2)検出部51の詳細構成
検出部51の詳細構成を図2に示す。検出部51は、試料セル52と、光源55と、検出器56と、光源室54と、ガス流路p52と、CO濃度調整部53とを備えている。CO濃度調整部53はCO吸収部材530を含む。本実施形態においては、CO吸収部材530は、活性アルミナである。
試料セル52は、試料セル入口52aと試料セル出口52bとを備えている。試料セル入口52aは、流路p40により除湿器40と接続されている。試料セル出口52bは、流路p52に接続されている。流路p52の他端は、光源室54に接続されている。
試料ガスは、除湿器40から試料セル入口52aを経由して試料セル52の内部に導入される。試料ガスとは、試料セル52を通過するガスである。試料ガスは、キャリアガスと、試料槽11の試料から発生するガスとから構成されている。ここでは、試料ガスが、キャリアガスだけの場合も試料ガスと呼ぶことにする。試料セル52の内部で、試料ガスに光源55から赤外線が照射され、二酸化炭素の測定が行われる。試料ガスは、試料セル52の内部から、試料セル出口52bを経由して、流路p52に排出される。
光源55は、赤外線を発生する。赤外線は、試料セル52内の試料ガスを通過して、検出器56に到達し、検出器56に検出される。検出器56で検出される赤外線による信号を交流信号にするために、赤外線の光路に、図3に示される、チョッパ59が配置される。チョッパ59は、円盤状であり、円盤には丸い穴59a、59bが設けられている。この円盤が光源55の前で回転することにより、穴59a、59bが光源55の前に来た時に赤外線が通過し、円盤の穴59a、59bの開いていない部分が光源55の前に来た時に赤外線が停止される。
光源室54には、光源55と、チョッパ59とが配置されている。光源室54の外には、チョッパ59を駆動するためのモータ57が配置されている。モータ57とチョッパ59は、モータ軸58によって接続されている。モータ57は、モータ軸58の回転によって、チョッパ59を回転させる。モータ軸58は、光源室54の内と、光源室54の外を跨いで配置されている。
光源室54には、二酸化炭素濃度が低いパージガスが充填されている。光源室54内は、一部が赤外線の光路となるため、二酸化炭素濃度を0または低い値に安定化する必要がある。二酸化炭素濃度は0でなく低い値に安定化されている場合であっても、測定において、一定のバックグラウンドとなるので問題がない。
また、光源室54内と外との境界を跨いで、回転するモータ軸58が配置されているため、光源室54を密閉することはできず、境界からパージガスは常に漏れている。したがって、光源室54に充填されるパージガスは常に補充する必要がある。
試料セル52の試料セル出口52bと、光源室54のガス入口54aは、ガス流路p52を介して接続されている。試料セル52で用いられた試料ガスは、ガス流路p52を経由して、パージガスとして光源室54に導入される。
ガス流路p52の途中には、CO濃度調整部53が配置されている。CO濃度調整部53は、CO吸収部材530(活性アルミナ)を含んでいる。CO吸収部材530(活性アルミナ)は、粒状であり、カラムに充填されている。
活性アルミナは、常温において、周囲の二酸化炭素濃度が高い場合には、二酸化炭素を吸着する。二酸化炭素を吸着した活性アルミナは、常温において、周囲の二酸化炭素濃度が低い場合には、吸着した二酸化炭素を放出する。活性アルミナは、このような特性を有するため、二酸化炭素濃度の高いガスがガス流路p52を通過した時には二酸化炭素を吸収し、二酸化炭素濃度の低いガスがガス流路p52を通過した時には二酸化炭素を放出する。このようにして、光源室54に導入されるパージガスの二酸化炭素濃度は平滑化される。
本実施形態の全有機体炭素計1においては、試料セル52を流れるガスには、間欠的に二酸化炭素が含まれる。たとえば、1~2分間、二酸化炭素濃度が20ppm~100ppmのガスが流れ、続いて5~6分間、二酸化炭素を含まないガスが流れる。このような、二酸化炭素濃度の変動が繰り返される。ガスが連続的に流された状態で、赤外線を用いた二酸化炭素の測定が行われる。
このように、試料セル52から排出されるガス中に二酸化炭素が間欠的に含まれるため、CO吸収部材530(活性アルミナ)は、二酸化炭素を吸収、放出することによって、光源室に導入するパージガスの二酸化炭素濃度を低い値に平滑化または安定化することができる。
本実施形態の全有機体炭素計1においては、試料セル52を流れる試料ガスの二酸化炭素濃度は、数ppb以上数百ppm以下(具体例では4ppb以上100ppm以下)であってよい。全有機体炭素計1のような、水試料を用いた水質分析計においては、分析される試料ガス中の二酸化炭素濃度は低い。また、試料ガス中の二酸化炭素濃度が低くなるように、全有機体炭素計1を設計することができる。これに対して、例えば、煙突の排気の二酸化炭素濃度を測定する排ガス測定装置においては、二酸化炭素濃度が1000ppm以上のガスの二酸化炭素濃度を測定する。CO濃度調整部53は、比較的二酸化炭素低濃度のガスが間欠的に流されて用いられる、全有機体炭素計1において、特に有効である。
(4-3)非分散型赤外線検出装置50による、二酸化炭素の測定ステップ
本実施形態の非分散型赤外線検出装置50による、二酸化炭素の測定ステップのフローチャートを図4に示す。二酸化炭素の測定ステップは、図4に示すように、まず、試料ガスをセル52に導入して、赤外線を照射し、二酸化炭素濃度を測定する(ステップS101)。次に、測定した試料ガスを、CO濃度調整部53(CO吸収部材530、活性アルミナ)を通過させて二酸化炭素濃度を低い値に安定化させる(ステップS102)。CO濃度調整部53を通過した試料ガスをパージガスとして光源室54に導入する(ステップS103)。このようにすることで、光源室54のパージガスの二酸化炭素濃度を低い値に安定に保ち、精度良い赤外線測定を実現させることができる。
試料セル52からガス流路p52に排出される試料ガスの二酸化炭素濃度は、変動する。第1実施形態のCO吸収部材530(活性アルミナ)は、試料セル52から排出されるガスの二酸化炭素濃度が高いときは二酸化炭素を吸収し、二酸化炭素濃度が低いときは二酸化炭素を放出する。言い換えると、CO吸収部材530(活性アルミナ)は、二酸化炭素を一方的に吸収して飽和することがない。つまり、CO吸収部材530(活性アルミナ)は、自然に再生されるので、頻繁に交換する必要がなく、長期間連続して使用することができる。
また、光源室54に導入するパージガスは、本実施形態とは異なり、別途用意されたガス、たとえば、キャリアガス制御部15に供給されるガスを分岐して用いても、赤外線測定には支障がない。しかし、本実施形態のように、赤外線測定後の試料ガスをパージガスとして用いることにより、光源室54のパージガスを別途用意しなくて済み、ランニングコストを低下させることができる。
<第2実施形態>
(5)第2実施形態の全有機体炭素計1aの構成
第2実施形態の全有機体炭素計1aは、図5に示すように、活性アルミナの代わりに別のCO濃度調整部53aを用いている点を除いて、第1実施形態の全有機体炭素計1と同じ構成を有している。本実施形態においては、CO濃度調整部53aは、CO吸収部材530aと、CO吸収部材530aのCO吸収能を調整する温調装置(ヒータ60)とを含む。CO吸収部材530aは、カラムに充填されている。本実施形態においてCO吸収部材530aの例としては、ゼオライトである。ヒータ60は、CO吸収部材530aを加熱する。
第2実施形態のCO吸収部材530a(ゼオライト)は、常温では、二酸化炭素を吸収し、吸収した二酸化炭素の放出量は少ない。そこで、ヒータ60で加熱してCO吸収部材530aを60℃~200℃の高温に保持することによって、二酸化炭素の放出量を増加させる。第2実施形態におけるCO吸収部材530a(ゼオライト)は、所定の高温に保持することによって、第1実施形態の常温の活性アルミナと同様の役割を果たす。つまり、通過する試料ガスが二酸化炭素高濃度の時は、CO吸収部材530a(ゼオライト)は二酸化炭素を吸収して、ガス中の二酸化炭素濃度を低下させ、逆に、ガスが二酸化炭素低濃度の時は、CO吸収部材530a(ゼオライト)は二酸化炭素を放出して、ガス中の二酸化炭素濃度を上昇させる。このようにして、光源室54に導入するパージガスの二酸化炭素濃度を低い値に安定化させる。
<変形実施形態2A>
(6)変形実施形態2Aの全有機体炭素計1bの構成
変形実施形態2Aの全有機体炭素計1bは、図6に示すように、第2実施形態の全有機体炭素計1aの構成に加えて、データ処理部61で計算した試料ガスの二酸化炭素濃度をヒータ60の出力にフィードバックする機構を有している。
変形実施形態2Aの非分散型赤外線検出装置50bは、パージガスの二酸化炭素濃度を低い値に安定化させるために次の操作を行う。データ処理部61で計算された、試料ガスの二酸化炭素濃度が高いときは、ヒータ60のパワーをオフにして、CO吸収部材530a(ゼオライト)の温度を低下させ、二酸化炭素を吸収させる。逆に、データ処理部61で計算された二酸化炭素濃度が低いときは、ヒータ60のパワーをオンにして、CO吸収部材530a(ゼオライト)の温度を上昇させ、二酸化炭素を放出させる。このようにして、光源室に導入するパージガス中の二酸化炭素濃度を低い値に安定化させる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形実施形態は必要に応じて適宜に組み合せ可能である。
(7)態様
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
(第1項)一態様に係る全有機体炭素計は、
非分散型赤外線検出装置を備えた全有機体炭素計であって、
前記非分散型赤外線検出装置は、
試料を含むガスを保持する試料セルと、
前記試料セル内のガスに赤外線を照射する光源と、
前記光源から照射され前記試料セル内を透過した赤外線を検出する検出器と、
前記光源を収容する光源室と、
前記試料セルと前記光源室とを接続し、前記試料セルから流出するガスを前記光源室内へ誘導するガス流路と、
前記ガス流路に配置された、CO吸収部材を有するCO濃度調整部と、
を有する。
第1項に記載の全有機体炭素計は、試料セルと光源室を結ぶガス流路にCO吸収部材を有するCO濃度調整部を有しているので、別途パージガスを光源室に供給しなくても、光源室の二酸化炭素濃度を低い値に安定に保つことができる。
(第2項)第1項に記載の全有機体炭素計において、
前記CO吸収部材は、カラムに充填された活性アルミナを含む。
第2項に記載の全有機体炭素計においては、CO吸収部材として活性アルミナを用いている。活性アルミナは、常温で、周囲の環境の二酸化炭素濃度が高くなると二酸化炭素を吸収し、周囲の環境の二酸化炭素濃度が低くなると二酸化炭素を放出し、繰り返し使用できるので、長期に交換する必要がなく、メインテナンス性に優れている。
(第3項)第1項に記載の全有機体炭素計において、
前記CO濃度調整部は、前記CO吸収部材のCO吸収能を調整する温調装置を含む。
第3項に記載の全有機体炭素計においては、CO吸収部材のCO吸収能を調整する温調装置を有しているので、多様なCO吸収部材を利用して、光源室の二酸化炭素濃度を低い値に安定に保つことができる。
(第4項)第3項に記載の全有機体炭素計において、
前記CO吸収部材は、カラムに充填されたゼオライトを含む。
第4項に記載の全有機体炭素計においては、CO吸収部材としてゼオライトを含んでいるので、温調装置を利用することで、光源室の二酸化炭素濃度を低い値に安定に保つことができる。
(第5項)第1項~第4項のいずれかに記載の全有機体炭素計において、
前記非分散型赤外線検出装置は、さらに、前記光源室内であって前記光源と前記試料セルとの間に配置され、前記ガスに照射する赤外線を間欠にするためのチョッパを有する。
第5項に記載の全有機体炭素計は、光源室内で回転するチョッパを有しているため、チョッパを駆動するためのモータ軸が光源室の内外に跨り、光源室のシールが不十分にならざるを得ない。そこで、CO濃度調整部を通過したガスをパージガスとして、ガス流路より光源室に連続的に供給することによって、光源室の二酸化炭素濃度を低い値に安定に保つことができる。
(第6項)第1項~第5項のいずれかに記載の全有機体炭素計は、さらに、
試料中の炭素を燃焼させて二酸化炭素を生成する全炭素燃焼部と、
前記全炭素燃焼部に前記試料を注入する試料注入器と、
を備える。
第6項に記載の全有機体炭素計は、燃焼酸化方式の全有機体炭素計であり、有機体炭素を高効率に酸化でき、高精度の全有機体炭素濃度の測定ができる。
(第7項)一態様に係る、試料に含まれる全有機体炭素濃度の測定方法は、
前記試料中の炭素を酸化させて二酸化炭素にする酸化ステップと、
前記二酸化炭素を測定する測定ステップとを含み、
前記測定ステップは、
前記二酸化炭素を含むガスを試料セルに導入するステップと、
前記試料セル内のガスに赤外線を照射するステップと、
前記試料セルから流出するガスを、CO濃度調整部を介して、前記光源室に誘導するステップとを有する。
第7項に記載の全有機体炭素濃度の測定方法は、CO濃度調整部を通過させたガスを、赤外線の光源を収容する光源室に導入するので、簡単な構成、かつ、低コストで、光源室の二酸化炭素濃度を低い値に安定に保つことができ、全有機体炭素の測定精度を向上させることができる。
(第8項)第7項に記載の全有機体炭素濃度の測定方法において、
前記CO濃度調整部は、活性アルミナを含む。
第8項に記載の全有機体炭素濃度の測定方法においては、CO濃度調整部は、活性アルミナを含んでいるので、別途パージガスを準備する必要なく、長期に取り換える必要なく、簡単な構成で、光源室の二酸化炭素濃度を低い値に安定に保つことができる。
本開示の全有機体炭素計は、河川水、湖沼水、海洋水、雨水、地下水などの環境水、上下水道水、製薬用水、純水、工業用水、排水等の水試料に対する水質分析に利用できる。
1、1a、1b、1c 全有機体炭素計
11 試料槽
12 洗浄用水
13 酸
15 キャリアガス制御部
20 試料注入器
21 回転式マルチポートバルブ
22 シリンジポンプ
30 全炭素燃焼部
31 全炭素試料注入部
32 全炭素燃焼管
33 電気炉
35 無機体炭素反応部
40 除湿器
50、50a、50b 非分散赤外線検出装置
51、51a、51b 検出部
52 試料セル
52a 試料ガス入口
52b 試料ガス出口
53、53a CO濃度調整部
530、530a CO吸収部材
54 光源室
54a 光源室ガス入口
55 光源
56 検出器
57 モータ
58 モータ軸
59 チョッパ
59a、59b 穴
60 ヒータ
61 データ処理部
62 操作部
63 表示部
p11、p12、p13、p15、p17、p23、p24、p30、p35、p40 流路
p25 空気抜き
p26 ドレン
p52 ガス流路

Claims (8)

  1. 非分散型赤外線検出装置を備えた全有機体炭素計であって、
    前記非分散型赤外線検出装置は、
    二酸化炭素を含む試料ガス、又は、二酸化炭素を含まないガスを、連続的に流される、試料セルと、
    前記試料セル内のガスに赤外線を照射する光源と、
    前記光源から照射され前記試料セル内を透過した赤外線を検出する検出器と、
    前記光源を収容する光源室と、
    前記試料セルと前記光源室とを接続し、前記試料セルから流出するガスを前記光源室内へ誘導するガス流路と、
    前記ガス流路に配置されたCO吸収部材を有し、前記CO吸収部材は、前記試料セルから流出するガスが二酸化炭素を含む試料ガスの場合は、二酸化炭素を吸収し、前記試料セルから流出するガスが二酸化炭素を含まないガスの場合は、二酸化炭素を放出することによって、前記光源室内へ誘導するガス中のCO濃度を前記二酸化炭素を含む試料ガス中のCO濃度より低く、かつ、前記二酸化炭素を含まないガス中のCO濃度より高い濃度に安定化し調整するCO濃度調整部と、
    を有する、
    全有機体炭素計。
  2. 前記CO吸収部材は、カラムに充填された活性アルミナを含む、
    請求項1に記載の全有機体炭素計。
  3. 前記CO吸収部材は、カラムに充填されたゼオライトを含み、
    前記CO濃度調整部は、前記ゼオライトを60℃~200℃に保持する温調装置を含む、請求項1に記載の全有機体炭素計。
  4. 前記CO吸収部材は、カラムに充填されたゼオライトを含み、
    前記CO濃度調整部は、前記CO吸収部材のCO吸収能を調整する温調装置を含み、
    請求項1において、さらに、前記検出器から赤外線検出データを受けとり、前記試料セル内のガス中の二酸化炭素濃度を計算するデータ処理部を含み、
    前記データ処理部で計算された試料ガスの二酸化炭素濃度が高いときは、前記温調装置のパワーをオフにして、CO吸収部材の温度を低下させ、二酸化炭素を吸収させ、前記データ処理部で計算された二酸化炭素濃度が低いときは、前記温調装置のパワーをオンにして、CO吸収部材の温度を上昇させ二酸化炭素を放出させる、請求項1に記載の全有機炭素計。
  5. 前記非分散型赤外線検出装置は、さらに、前記光源室内であって前記光源と前記試料セルとの間に配置され、前記ガスに照射する赤外線を間欠にするためのチョッパを有する、
    請求項1~4のいずれか1項に記載の全有機体炭素計。
  6. 前記全有機体炭素計は、さらに、
    試料中の炭素を燃焼させて二酸化炭素を生成する全炭素燃焼部と、
    前記全炭素燃焼部に前記試料を注入する試料注入器と、
    を備える、
    請求項1~5のいずれか1項に記載の全有機体炭素計。
  7. 試料に含まれる全有機体炭素濃度の測定方法であって、
    前記試料中の炭素を酸化させて二酸化炭素にする酸化ステップと、
    前記二酸化炭素を測定する測定ステップとを含み、
    前記測定ステップは、
    二酸化炭素を含む試料ガス、又は、二酸化炭素を含まないガスを、連続的に試料セルに導入するステップと、
    前記試料セル内のガスに赤外線を照射するステップと、
    前記試料セルから流出するガスを、CO濃度調整部の配置されたガス流路を介して、光源室に誘導するステップとを有し、
    前記CO濃度調整部は、前記ガス流路に配置されたCO吸収部材を有し前記CO吸収部材は、前記試料セルから流出するガスが二酸化炭素を含む試料ガスの場合は、二酸化炭素を吸収し、前記試料セルから流出するガスが二酸化炭素を含まないガスの場合は二酸化炭素を放出することによって、前記光源室内へ誘導するガス中のCO濃度を前記二酸化炭素を含む試料ガス中のCO濃度より低く、かつ、前記二酸化炭素を含まないガス中のCO濃度より高い濃度に安定化し調整する、
    全有機体炭素濃度の測定方法。
  8. 前記CO濃度調整部は、活性アルミナを含む、
    請求項7に記載の全有機体炭素濃度の測定方法。
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