JP7511241B2 - リシル-tRNA合成酵素N末端に特異的に結合する抗体を有効成分として含む免疫細胞の遊走関連疾患の予防又は治療用薬学的組成物 - Google Patents

リシル-tRNA合成酵素N末端に特異的に結合する抗体を有効成分として含む免疫細胞の遊走関連疾患の予防又は治療用薬学的組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP7511241B2
JP7511241B2 JP2020515025A JP2020515025A JP7511241B2 JP 7511241 B2 JP7511241 B2 JP 7511241B2 JP 2020515025 A JP2020515025 A JP 2020515025A JP 2020515025 A JP2020515025 A JP 2020515025A JP 7511241 B2 JP7511241 B2 JP 7511241B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
seq
amino acid
acid sequence
antibody
complementarity determining
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020515025A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2020534273A (ja
JPWO2019054819A5 (ja
Inventor
フン クォン、ナム
ニョン イ、ジ
キム、ソンフン
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Zymedi Co Ltd
Original Assignee
Zymedi Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Zymedi Co Ltd filed Critical Zymedi Co Ltd
Priority claimed from PCT/KR2018/010903 external-priority patent/WO2019054819A1/ko
Publication of JP2020534273A publication Critical patent/JP2020534273A/ja
Publication of JPWO2019054819A5 publication Critical patent/JPWO2019054819A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7511241B2 publication Critical patent/JP7511241B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、リシル-tRNA合成酵素(Lysyl-tRNA synthetase、KRS)のN末端に特異的に結合する抗体の新規な使用に関するもので、より詳細には、リシル-tRNA合成酵素のN末端のうち、配列番号117の配列を含むエピトープ(epitope)に特異的に結合する抗体又はその機能的断片を有効成分として含む免疫細胞の遊走関連疾患の予防又は治療用薬学的組成物に関するものである。
本出願は、2017年9月15日に出願された韓国特許出願第10-2017-0118917号に基づく優先権を主張し、前記明細書全体は参照により本出願に援用する。
体内の様々な組織において、それぞれの細胞は、それらの遺伝的特性と環境によって、異なる方法で遊走する。統制されていない細胞の遊走は、炎症性疾患、癌転移などの様々な疾病状態と関係するが、それぞれの細胞が有する遊走シグナリング及びメカニズム特性が完全に究明されなかった状態である。特に、それぞれの細胞によっては、同じ因子であっても、関係する方法が異なるものと報告され、シグナリング過程及びメカニズム究明を難しくしており、一例として、AQP1(water channel aquaporin-1)は、上皮細胞などから細胞の遊走を促進するものと知られ、特に癌転移を促進させるものと知られているが(非特許文献1~2)、大食細胞の場合、前記AQP1を発現するにもかかわらず、これが大食細胞の遊走を抑制するものと報告された(非特許文献3)。このように、各細胞は、これらの遊走に多様な方法及び特性が存在するため、従来の特定細胞の遊走を防止するために設計された薬物は、かなり制限的で不十分な効能を示す。従って、細胞の遊走性スイッチ(migratory switch)を制御して、遊走関連疾病を治療する新たな戦略の模索が求められているのが実情である。
一方、免疫細胞は、体内の一次防御網でもあるが、最近、過度な免疫細胞の活性化が主な発症メカニズムのうちの一つであることが報告されている。炎症性免疫細胞の活性化の際、一般的に免疫細胞の遊走性の増加が観察されるが、具体的には次のような疾病において、これらの免疫細胞の遊走及び浸潤が、疾病の病理と密接な関連があることが報告されている。
一例に、心血管系疾患は、心臓と主な動脈に発生する疾患で、粥状動脈硬化症と冠状動脈疾患などが含まれる(非特許文献4~6)。粥状動脈硬化症は、コレステロールによる炎症性疾患であり、動脈の内側の膜に沈着したコレステロールと、血液から動脈の内側に遊走した免疫細胞とで構成されたアテローム(粥腫)により発病する。つまり、コレステロール酸化物が炎症を起こしている部位に、単核球のような免疫細胞が遊走しながらアテローム(粥腫)が形成される。アテロームが形成される場合、血管の内面はごつごつして粗くなり、壁は厚くなりながら、血液が流れる内部の径が狭くなり、血液の循環に障害が生じる。アテロームの周りを取り巻く繊維性膜が破裂すると、血管内に血栓が発生してアテローム内に出血が起き、血管内径が急激に狭くなったり塞がれたりするようになる。主に心臓に血液を供給する血管、脳に血液を供給する血管、腎臓に血液を供給する血管及び末梢血管に発生して、虚血性心臓疾患、虚血性脳血管疾患(脳卒中)、腎不全、四肢虚血性動脈疾患を起こす。従来、これらの心血管系疾患の発生及び発達には、単核球の遊走を誘導することにより、炎症反応を引き起こすCCL2(CC-Chemokine ligand 2、MCP-1)が重要な役割を果たしていることが知られ、CCL2の作用及びそれに伴う単核球の遊走を抑制することにより、前記のような心血管系疾患を治療する方法が新たに提示されることもあった(非特許文献7~11)。また、高血圧においても、炎症性サイトカインを分泌する様々な免疫細胞などが血管に過度に遊走して、血管壁が厚くなり、血管の弾力性を喪失する病理が関係する。
また、肺動脈高血圧(Pulmonary Arterial Hypertension、PAH)は、世界保健機構(WHO)の肺高血圧臨床分類システム(非特許文献12)のGroup 1に分類され、呼吸困難、平均肺動脈圧(mean pulmonary artery pressure、mPAP)の上昇(mPAP>25 mmHg)及び右心室機能不全を共通的臨床特徴とする稀な疾患である。これらの肺動脈高血圧は、遺伝、感染、関連疾患など様々な潜在要因が関与するが、血管の損傷(endothelial cell injury)による免疫反応が核心病理的要因として作用することが知られている(非特許文献13)。このような現象には、免疫細胞の浸潤と機能障害に伴う一連の過程が病理現象と深く関連しているものと知られており、特にPAHでは免疫細胞と血管内皮細胞の相互作用が重要なことと知られている。のみならず、最近、アルポート症候群(Alport syndrome)においても、単核球、大食細胞の浸潤が、前記疾病の進行を促進させるとの報告があった。
一方、線維症(fibrisis)関連疾患において、持続的な炎症反応が創傷の治癒プログラム(wound-healing program)を活性化させるようになるが、これが線維症(fibrosis)につながるようになる。組織の損傷後、単核球/大食細胞や好中性白血球、好酸白血球、肥満細胞などの炎症性免疫細胞が、損傷部位に速やかに浸透しながら活性化されて様々なサイトカインを分泌するようになり、これらは周囲の繊維芽細胞や上皮細胞、平滑筋細胞を再び活性化させて、これらをミオブラスト型の細胞によって活性化され、ミオブラスト型の細胞は多量の細胞外基質蛋白質を生産分泌させて、最終的に組織に細胞の基質蛋白質の多量蓄積を招き、創傷を残してさらに組織の線維化や肥大化を誘導するようになる(非特許文献14)。この病理システムは、創傷、火傷、褥瘡などによって皮膚に傷ができた時に発生する皮膚組織内の傷痕形成や、肝臓、腎臓、血管、肺などの組織の硬化性線維化現象の根本的な原因の一つである。また、慢性自己免疫疾患である硬皮症(scleroderma)、リウマチ関節炎(rheumatoid arthritis)、クローン病(Crohn's disease)、潰瘍性大腸炎、骨髄線維症、全身性紅斑性ループス(systemic lupus erythematosu)でも、線維化は主な病理的特性に現れる。また、アトピー性疾患、喘息疾患、COPD、乾癬症、ケロイド、増殖性網膜症などでも、炎症性免疫細胞の活性化が病理現象に寄与すると知られている。
特に、前記創傷治癒プログラム(wound-healing program)においてミオブラスト型の細胞に活性化された線維芽細胞を筋繊維芽細胞(myofibroblast)と称す。筋線維芽細胞は、線維化(fibrosis)に関連した全ての疾患病理の中心にあるので、筋線維芽細胞の活性を誘導する分子生物学的、或いは免疫学的システムを除去することが、疾患治療の核心要素となる。多くの先天的免疫(innate immunity)或いは後天的免疫(adaptive immunity)が線維芽細胞(fibroblast)の活性と分化に重要であることは広く知られており、これに創傷部位における炎症反応を除去することが線維化への組織リモデリング(tissue remodeling)を中断させて、正常組織形態を維持する核心的な要素となる。しかし、実際に炎症反応の除去は容易には行われないため、先天的、後天的免疫のメカニズムを理解して核心媒介体(mediator)を見出だすことが線維化を遅らせるのに重要である。
単核球、大食細胞などは創傷治療(wound healing)にも貢献する部分があるものの、活性酸素(reactive oxygen)、活性窒素(reactive nitrogen)などを分泌するので、周囲の細胞に有害な影響を及ぼすようになる。従って、単核球、大食細胞の迅速な除去がなければ組織損傷をさらに誘発するようになり、線維化をもたらすようになる。従って、前記疾病の初期に最初に反応する単核球、大食細胞などを制限することは、様々な慢性炎症及び線維化関連疾患において一つの治療的戦略として考慮される。
前記創傷治療(wound-healing)メカニズムが線維化反応を触発させるとき、血球凝集に関連したPDGF(platelet-derived growth factor)は、他の炎症反応、免疫細胞を傷口に呼び込み、TGF-β1は、局所線維芽細胞(fibroblast)において細胞外の基質合成を促進させることが知られた。しかし、前記血球凝集反応に関連した要素は、これらが欠乏した場合にも、線維化を誘導する結果を示すことが報告された。
前記のように、過度な免疫細胞の活性化が問題となる疾患において、従来の免疫細胞の遊走(及び浸潤)を防ぐためのターゲット因子(target factor)が提示されており、これらを対象に疾病の治療的方法を考案する試みが行われているが、それぞれの限界点が報告されているのが実情であり、これにより、効果的な疾病治療のために、依然として免疫細胞の遊走において核心媒介体(mediator)が何なのか、これを制御する戦略は何なのかを見出だすことが、重要な解決課題として求められているのが実情である。
Hara-Chikuma M et al., Aquaporin-1 facilitates epithelial cell migration in kidney proximal tubule, J Am Soc Nephrol. 2006 Jan; 17(1): 39-45 Jiang Y, Aquaporin-1 activity of plasma membrane affects HT20 colon cancer cell migration, IUBMB Life 2009 Oct; 61(10): 1001-9 Tyteca D et al., Regulation of Macrophage Motility by the Water Channel Aquaporin-1: Crucial Role of M0/M2 Phenotype Switch, PLoS One. 2015 Feb 26; 10(2): e0117398 Ross R et al., New Engl J Med, 1999, 340(2): 115-26 Poli G et al., Redox Biol 2013, 1(1): 125-30 Libby P et al., Circulation 2002, 5, 105(9): 1135-43 Gu L et al., Mol Cell, 1998, 2(2): 275-81 Aiello RJ et al., Arterioscler Thromb Vasc Biol 1999, 19(6): 1518-25 Gosling Jl et al., Clin Invest 1999, 103(6): 773-8 Harrington JR et al., Stem Cells 2000, 18(1): 65-66] Ikeda U et al., Clin Cardiol 2002, 25(4): 143-7 ESC Guidelines, European Heart Journal 2015 Huertas et al., Circulation, 129:1332-1340, 2014 Gurtner GC et al., Trends Cell Biol. 15: 599-607, 2005
[技術的課題]
そこで、本発明者らは、免疫細胞の遊走(浸潤)関連疾患の新たな治療的戦略を探して研究を進めていた中、免疫細胞(単核球/大食細胞)の細胞膜領域においてKRS水準が増加する現象が、免疫細胞の遊走及び浸潤に関連した疾患について重要な病理現象であることを確認することができ、本発明で提供するKRSのN末端結合抗体が、免疫細胞の細胞膜領域に増加されたKRS水準を減少させ、実際に免疫細胞の遊走及び浸潤を抑制して関連疾患を治療する効果があることを確認して、本発明を完成した。
従って、本発明の目的は、免疫細胞の遊走関連疾患の予防又は治療において、リシル-tRNA合成酵素のN末端のうち、配列番号117の配列を含むエピトープ(epitope)に特異的に結合する抗体又はその機能的断片の使用を提供することである。
[技術的解決方法]
前記のような目的を達成するために、本発明は、リシル-tRNA合成酵素のN末端のうち、配列番号117の配列を含むエピトープ(epitope)に特異的に結合する抗体又はその機能的断片を有効成分として含む免疫細胞の遊走に関連する疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
また、本発明は、免疫細胞の遊走に関連した疾患の予防又は治療用製剤を製造するための、リシル-tRNA合成酵素のN末端のうち、配列番号117の配列を含むエピトープ(epitope)に特異的に結合する抗体又はその機能的断片の使用を提供する。
また、本発明は、リシル-tRNA合成酵素のN末端のうち、配列番号117の配列を含むエピトープ(epitope)に特異的に結合する抗体又はその機能的断片を有効成分として含む組成物の有効量を、これを必要とする個体に投与することを特徴とする免疫細胞の遊走に関連する疾患の治療方法を提供する。
定義
他の定義がない限り、本明細書に使用された全ての技術的及び科学的用語は、当業者によって通常的に理解される同じ意味を有する。次の参考文献は、本発明の明細書に使用された多くの用語の一般的な定義を有する技術(skill)の一つを提供する(Singleton et al., DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY (2d ed.1994); THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY(Walker ed.、1988); Hale&Marham, THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY)。また、次の定義は、本発明の実施のために読者に提供される。
本明細書で使用されたアミノ酸の一文字(三文字)は、生化学の分野での標準略語の規定に基づいて、次のアミノ酸を意味する;A(Ala):アラニン;C(Cys):システイン;D(Asp):アスパラギン酸;E(Glu):グルタミン酸;F(Phe):フェニルアラニン;G(Gly):グリシン;H(His):ヒスチジン;I(IIe):イソロイシン;K(Lys):リジン;L(Leu):ロイシン;M(Met):メチオニン;N(Asn):アスパラギン;O(Ply)ピロリシン;P(Pro):プロリン;Q(Gln):グルタミン;R(Arg):アルギニン;S(Ser):セリン;T(Thr):トレオニン;U(Sec):セレノシステイン;V(Val):バリン;W(Trp):トリプトファン;Y(Tyr):チロシン。
本発明で「「発現(expression)」とは、細胞における蛋白質又は核酸の生成を意味する。
本発明で、「「宿主細胞(host cell)」とは、任意の手段によって細胞内に導入された異種性DNAを含む原核又は真核細胞を意味する。
本発明で、「「タンパク質」とは、「「ポリペプチド(polypeptide)」との互換性を以って使用され、例えば、天然状態の蛋白質から一般的に発見されたように、アミノ酸残基の重合体を意味する。
本発明で、「「核酸」、「「DNA配列」又は「「ポリヌクレオチド」とは、単一鎖又は二重鎖の形態のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドを意味する。他の制限がない限り、天然に生成されるヌクレオチドと類似した方法で核酸に混成化される、天然ヌクレオチドの公知されたアナログも含まれる。
本発明において、用語「「ラミニン(laminin)」とはα、β、γ鎖からなるヘテロ三量体分子であり、サブユニット鎖の組成が相異するアイソフォーム(isoform、亜型)が存在する細胞のマトリックス蛋白質である。具体的には、ラミニンは、5種のα鎖、4種のβ鎖及び3種のγ鎖のヘテロ三量体の組み合せで約15種類のアイソフォームを有する。α鎖(α1~α5)、β鎖(β1~β4)及びγ鎖(γ1~γ4)のそれぞれの数字を組み合わせて、ラミニンの名称が決められている。例えばα1鎖、β1鎖、γ1鎖の組み合わせによるラミニンをLN111とし、α5鎖、β1鎖、γ1鎖の組み合わせによるラミニンをLN511とし、α5鎖、β2鎖、γ1鎖の組み合わせによるラミニンをLN521と称す。本発明において用語ラミニンとは、ラミニン亜型1種の単一成分を意味することもあり、又は2種以上のラミニン亜型が混合されたラミニンの混合物を意味するものでもある。
一実施態様(embodiment)において、前記「「LN421蛋白質」とは、ラミニン亜型α4、β2、γ1で知られているポリペプチドを意味する。当業界にLN421として知られたものであれば、その具体的な起源と配列(アミノ酸配列構成)が特に制限されないが、好ましくは、前記LN421においてα4鎖は配列番号120で表示されるアミノ酸配列を含むものでもあり、β2鎖は配列番号122で表示されるアミノ酸配列を含むものでもあり、γ1鎖は配列番号124で表示されるアミノ酸配列を含むものでもある。さらに好ましくは、前記LN421でα4鎖は配列番号120で表示されるアミノ酸配列からなるものでもあり、β2鎖は配列番号122で表示されるアミノ酸配列からなるものでもあって、γ1鎖は配列番号124で表示されるアミノ酸配列からなるものでもあるが、これらに制限されない。
また、本発明で前記LN421は、その機能的同等物を含む。その機能的同等物については、後述するKRSの機能的同等物に対する説明に準じ、ここで「「実質的に同質の生理活性」とは、単核球、大食細胞又は好中球(neutrophil)等の免疫細胞の特異的(選択的)遊走を調節することを意味する。
本発明で「「リシル-tRNA合成酵素(KRS)N末端領域"とは、細胞内で生成されたKRSが遊走して、細胞膜(又は原形質膜)に位置するとき、細胞外(extracellular)領域又は細胞膜表面に露出される特定の配列を意味するもので、通常、KRSのN末端の1乃至72個のアミノ酸領域の一部又は全長配列を意味するものでもある。さらに好ましい一例として、ヒトにおいては配列番号148で表示される配列を含めて、マウス(mouse)では配列番号149で表示される配列を含めて、ラット(rat)では配列番号150で表示される配列を含む。KRSのN末端領域は、種間配列類似性が存在し、特に配列番号117で表示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とすることができる。
本発明で、「「KRS蛋白質」とは、リシル-tRNA合成酵素として知られているポリペプチドを意味する。KRSはアミノ酸リジン(lysine)とtRNAのアミノアシル化(aminoacylation)反応を媒介する酵素である。本発明でKRSは、当業界でリシル-tRNA合成酵素として知られているものであれば、その具体的な配列が特に制限されないが、好ましくは(特に、N末端に)配列番号117で表示されるアミノ酸配列を含むものでもあるN末端。これらの一例として、本発明のKRSは、ヒト(homo sapiens)から由来したものであって、NCBI(Genbank) Accession No. NP_005539.1などで公知されたものを含めて、マウス(Mus musculus)由来のものとして、NCBI(Genbank) Accession No. NP_444322.1などで公知されたものを含めて、ラット(Rattus norvegicus)由来のものとしてNCBI(Genbank) Accession No. XP_006255692.1などで公知されたものを含めて、この他にも下記の配列情報を参照することができるが、これに制限されない:XP_005004655.1(guinea-pig、Cavia porcellus)、XP_021503253.1(gerbil、Meriones unguiculatus)、XP_002711778.1(rabbit、Oryctolagus cuniculus)、XP_536777.2(dog、Canis lupus familiaris)、XP_003126904.2(swine、Sus scrofa)、XP_011755768.1(monkey、Macaca nemestrina)、XP_008984479.1(marmoset、Callithrix jacchus)、XP_019834275.1(cow、Bos indicus)、XP_511115.2(chimpanzee、Pan troglodytes)。
本発明でKRS全長蛋白質は、配列番号118で表示されるアミノ酸配列を含むものでもあり、さらに好ましくは、配列番号118のアミノ酸配列からなるポリペプチドでもある(Genbank Accession No. NP_005539.1)。また、本発明で前記KRSは、その機能的同等物を含む。
本発明でKRS蛋白質は、好ましくは細胞内(intracellular)KRS又は細胞膜に内在された状態のKRSを意味するもので、これは細胞外(extracellular)に完全に分泌されたKRSとは区別される意味である。
前記細胞内KRSは、細胞質型(lysyl-tRNA synthetase、cytoplasmic)とミトコンドリア型(lysyl-tRNA synthetase、mitochondrial)の二つの亜型(isoform)がある。本発明でのKRSは、好ましくは細胞質型(cytoplasmic form)である。
前記機能的同等物とは、公知のKRS蛋白質を構成するアミノ酸配列と少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の配列相同性(つまり、同一性)を有するポリペプチドを意味する。例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の配列相同性を有するポリペプチドを含むもので、母体となる前記公知のKRS蛋白質(望ましい一例として、配列番号118で表示されるポリペプチド)と実質的に同質の生理活性を示すポリペプチドを意味する。ここで、「「実質的に同質の生理活性"とは、免疫細胞の遊走を調節することを意味する。好ましくは、本発明でKRSの機能的同等物とは、配列番号118のアミノ酸配列のうち一部が付加、置換又は欠失した結果生成されたものでもある。前記アミノ酸の置換は、好ましくは保存的置換である。天然に存在するアミノ酸の保存的置換の例は、下記の通りである:脂肪族アミノ酸(Gly、Ala、Pro)、疎水性アミノ酸(Ile、Leu、Val)、芳香族アミノ酸(Phe、Tyr、Trp)、酸性アミノ酸(Asp、Glu)、塩基性アミノ酸(His、Lys、Arg、Gln、Asn)及び硫黄含有アミノ酸(Cys、Met)。また、前記KRSの機能的同等物には、KRS蛋白質のアミノ酸配列上でアミノ酸の一部が欠失された変形体も含まれる。前記アミノ酸の欠失又は置換は、好ましくはKRSの生理活性に直接的に関連しない領域に位置している。また、アミノ酸の欠失は、好ましくはKRSの生理活性に直接関連しない部分に位置する。従って、前記KRSのアミノ酸配列の両末端又は配列内に幾つかのアミノ酸が付加された変形体も含まれる。また、本発明の機能的同等物の範囲には、KRSの基本骨格及びその生理活性を維持しながら、ポリペプチドの一部の化学構造が変形されたポリペプチド誘導体も含まれる。例えば、蛋白質の安定性、貯蔵性、揮発性又は溶解度等を変更させるための構造変更がこれに含まれる。
本明細書で配列相同性及び同一性は、鋳型配列(アミノ酸配列の場合望ましい一例として配列番号118、又は核酸配列の場合望ましい一例として配列番号119)と候補配列を整列して、ギャップ(gaps)を導入した後、鋳型配列に対する候補配列の同一マッチング残基(アミノ酸残基又は塩基)の百分率として定義される。必要な場合、最大百分率配列同一性を収得するために、配列同一性の部分として保存的置換は考慮しない。また、蛋白質配列相同性又は同一性判断の場合において、KRSアミノ酸配列のN末端、C-末端又は内部延長、欠失又は挿入は、配列同一性又は相同性に影響を与える配列として解釈されない。また、前記配列同一性は、二つのポリペプチドのアミノ酸配列の類似した部分を比較するために使用される一般的な標準方法により決定することができる。BLAST又はFASTAのようなコンピュータプログラムは、二つのポリペプチドをそれぞれのアミノ酸が最適にマッチングされるように整列する(1つ又は2つの配列の全長配列に従って、又は1つ又は2つの配列の予測された部分に従って)。前記プログラムは、デフォルトオープニングペナルティ(default opening penalty)及びデフォルトギャップペナルティ(default gap penalty)を提供してコンピュータプログラムと一緒に連携されて使用することができるPAM250(標準スコアリングマトリックス;Dayhoff et al., in Atlas of Protein Sequence and Structure, vol. 5, sup. 3, 1978)のようなスコアリングマトリックスを提供する。例えば、百分率同一性は次のように計算することができる。一致する配列(identical matches)の総数に100を乗じた後、対応するスパン(matched span)内のより長い配列の長さと二つの配列を整列するために、より長い配列内に導入されたギャップ(gaps)の数の合計で分ける。
本発明において、用語「「蛋白質(KRS)の細胞膜への遊走」とは、別に指示がない限り、ある細胞の内因性蛋白質(細胞内部で作られたタンパク質で、例えば細胞質に存在していたもの)が同じ細胞の細胞内(intracellular)方向に細胞膜へ遊走することを意味する。このとき、KRSは完全に細胞内の方向にだけ存在するものでもあって、又は細胞膜間に挟まれて一部(望ましくKRSの場合N-末端の一部)が細胞外に露出されることがあるが、いずれの場合にも、蛋白質が生成された細胞外に完全に分離されることを排除することが好ましくもある。つまり、本発明において前記細胞膜への遊走は、別の指示がない限り、ある細胞から完全に分離及び分泌された蛋白質が、他の細胞又は組織の外(extracellular)から相互作用するのと区分される。
本発明において、用語「「細胞膜の位置」とは、細胞膜それ自体、細胞膜と極めて近く、及び実質的に細胞膜と相互作用しているものと認められる隣近(付近)を全て含む意味である。
本発明で「「抗体(antibody)」とは、免疫グロブリン(immunoglobulin、Ig)とも呼ばれ、抗原に選択的に作用して生体免疫に関与する蛋白質の総称である。天然で発見される全体抗体(whole antibody)は、一般的に多様なドメインから成るポリペプチドである軽鎖(light chain、LC)及び重鎖(heavy chain、HC)の二つの対で構成され、又はこれらのHC/LCの二つの対で構成された構造を基本単位とする。哺乳類の抗体を構成する重鎖の種類は、ギリシャ文字のα、δ、ε、γ、及びμで表示される五つの類型があり、重鎖の種類によってそれぞれIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMなどの異なる種類の抗体を構成するようになる。哺乳類の抗体を構成する軽鎖の種類は、λ及びκで表示される2つの種類が存在する。
抗体の重鎖と軽鎖は、構造的に、アミノ酸配列の可変性により可変領域と不変領域に区分される。重鎖の不変領域は、抗体の種類によってCH1、CH2及びCH3(IgA、IgD及びIgG抗体)並びにCH4(IgE及びIgM抗体)等、3又は4つの重鎖不変領域で構成されていて、軽鎖は一つの不変領域であるCLで構成されている。重鎖と軽鎖の可変領域は、それぞれ重鎖可変領域(VH)又は軽鎖可変領域(VL)のいずれかのドメインで構成されている。軽鎖と重鎖は、それぞれの可変領域と不変領域が並んで整列されて一つの共有ジスルフィド結合(disulfide bond)によって連結され、軽鎖と結合した二つの分子の重鎖は、二つの共有ジスルフィド結合を通じて連結されて、全体抗体の形態を形成する。全体抗体は、重鎖及び軽鎖の可変領域を通じて抗原に特異的に結合し、全体抗体は、二つの重鎖及び軽鎖の対(HC/LC)で構成されているので、一つの分子の全体抗体は、二つの可変領域を通じて同じ二つの抗原に結合する2価の単一特異性を有するようになる。
抗体が抗原に結合する部位を含む可変領域は、配列可変性が少ない骨格部位(framework region、FR)と配列可変性が高い高度可変部位(hypervariable region)である相補性決定部位(complementary determining region、CDR)に細分される。VHとVLはそれぞれ三つのCDR及び四つのFRが、N末端からC-末端の方向にFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の順に配列されている。抗体の可変領域の中でも、配列可変性が最も高いCDRが、抗原と直接結合する部位であり、抗体の抗原特異性に最も重要である。
本明細書で「「治療」とは、疾患の発生又は再発抑制、症状の緩和、疾病の直接又は間接的な病理学的結果の減少、疾患の進行速度の減少、疾患状態の改善、好転、緩和又は改善された予後を意味する。本発明で使用される用語「「予防」とは、疾患の発症を抑制したり、進行を遅延させたりする全ての行為を意味する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、免疫細胞の遊走及び浸潤状態と関連して、KRSが、免疫細胞の細胞質と比較して細胞膜で、その水準が特異的に高まることが重要な病理現象であることを最初に究明し、特にLN421(ラミニン亜型α4β2γ1)との特別な関連性を有し、免疫細胞の遊走において、KRSの特異的調節機能を確認した。これに本願発明で提供するKRSのN末端の特定エピトープ(配列番号117を含む領域)に結合特異的な抗体が、細胞膜のKRS水準を著しく減少させ、実際に肺動脈高血圧のように従来の免疫細胞の遊走及び浸潤の病理現象と深く関連した疾患において、著しい治療効果を示すことを明らかにした。
そこで、本発明は、免疫細胞の遊走関連疾患の予防又は治療用製剤を製造するための、リシル-tRNA合成酵素のN末端のうち、配列番号117の配列を含むエピトープ(epitope)に特異的に結合する抗体又はその機能的断片の使用を提供する。
本発明は、リシル-tRNA合成酵素のN末端のうち、配列番号117の配列を含むエピトープ(epitope)に特異的に結合する抗体又はその機能的断片を有効成分として含む免疫細胞遊走関連疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
また、本発明は、リシル-tRNA合成酵素のN末端のうち、配列番号117の配列を含むエピトープ(epitope)に特異的に結合する抗体又はその機能的断片で構成される免疫細胞の遊走関連疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
また、本発明は、実質的に、リシル-tRNA合成酵素のN末端のうち、配列番号117の配列を含むエピトープ(epitope)に特異的に結合する抗体又はその機能的断片からなる免疫細胞遊走関連疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
本発明の用語「「~を含む(comprising)」とは、「「含有する」又は「「特徴とする」と同じく使用され、組成物又は方法において、言及されていない追加的な成分要素又は方法の段階などを排除しない。用語「「~からなる(consisting of)」とは、別に記載されていない追加的な要素、段階又は成分などを除外することを意味する。用語「「実質的に~からなる(consisting essentially of)」とは、組成物又は方法の範囲において、記載された成分、要素又は段階と共に、その基本的な特性に実質的に影響を及ぼさない成分、要素又は段階を含むことを意味する。
本発明において、用語「「エピトープ」とは、ある抗体が特異的に結合する任意の対象物において、前記対象物の中から抗原抗体反応特異性を決定している特定の部分を指称する。本発明では、エピトープは、(種にかかわらず)KRSのN末端配列に由来し、(実質的に)配列番号117のアミノ酸配列を含む連続領域であれば、その具体的配列が特に制限されず、通常、配列番号117のアミノ酸配列を含めて、13乃至52個、さらに好ましくは13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、又は42個のアミノ酸の配列からなるものでもある。
好ましい一例として、本発明の前記エピトープは、ヒトKRSのN末端から由来したものであって配列番号133、配列番号134、配列番号135、配列番号136、又は配列番号148の配列からなるものでもあり、マウスKRSのN末端から由来したものであって配列番号138、配列番号139、配列番号140、配列番号141、又は配列番号149の配列からなるものでもあり、ラットのKRSのN末端から由来したものであって配列番号143、配列番号144、配列番号145、配列番号146、又は配列番号150の配列からなるものでもある。
本発明の抗体又はその機能的断片は、前記エピトープでの特異的結合を通じて、細胞膜のKRS水準を減少させることを特徴とする。細胞膜位置に特異的にKRSの存在水準を減少させる場合、免疫細胞の遊走及び浸潤を抑制することができ、これに伴う関連疾患の治療効果が可能であることは、本発明者によって最初に究明された。本発明者らは、前記エピトープに特異的に結合する抗体(N3抗体及びこれからの改良抗体)が、免疫細胞の遊走及び浸潤現象に伴う免疫細胞膜のKRS水準の増加現象を(エンドサイトーシスなどを通じて)効果的に抑制及び減少させて、免疫細胞の遊走を抑制することを確認しており、実際、過度な免疫細胞の遊走及び浸潤が主な病理の疾患(一例として肺動脈高血圧)の動物モデルに適用したとき、著しい治療効果を有することを確認した。
リシル-tRNA合成酵素のN末端のうち、配列番号117の配列を含むエピトープ(epitope)に特異的に結合する抗体又はその機能的断片は、実質的に同質の生理活性を示す限り、その具体的な配列が特に制限はされないが、一例として、
配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位1と、配列番号3で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位2と、配列番号5で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位3とを含む重鎖可変領域;及び
配列番号7で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位1と、配列番号9で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位2及びと、配列番号11で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位3とを含む軽鎖可変領域を含むことを特徴とすることができる。これらの配列を有する抗体は、本発明でN3抗体と命名される。
さらに好ましくは、本発明に伴う抗体又はその機能的断片は、配列番号31で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);及び配列番号33で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含むものでもある。これらの配列を有する抗体は、本発明でN3抗体と命名される。
本発明に係る抗体は、これらに制限されないが、一例としてIgG、IgA、IgM、IgE、及びIgDからなる群から選択されるものでもあって、好ましくはIgG抗体でもある。最も好ましくは、本発明の抗体は、配列番号89で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び及び配列番号91で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖からなるものでもある(本発明でN3抗体として命名)。
また、本発明者らは、N3抗体の可変領域配列(配列番号31で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);及び配列番号33で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)配列)を基盤に、治療抗体として有用性が高い改良抗体(N3-1、N3-3、N3-4、N3-5、N3-6、N3-7、N3-8、N3-9、N3-8-1、N3-8-2、N3-8-3、N3-8-4、N3-8-5、N3-8-6、N3-8-7)を製作した。N3抗体とこれらの改良抗体は、下記(a)及び(b)のCDR配列上の共通点及び特徴を有する。
そこで、本発明は改良抗体として
(a) (a-1)アミノ酸配列SYDMSを含む重鎖相補性決定部位1(CDR1)と;
(a-2)アミノ酸配列X1IX2X3X4X5GX6X7YYADSVKGを含めて、ここでX1はA又はVであり、X2はS、D又はGであり、X3はY、P、S又はAであり、X4はD、Q、L又はYであり、X5はN、M、S、又はGであり、X6はN、R又はPであり、X7はT、V、I又はSである重鎖相補性決定部位2(CDR2)と;
(a-3)アミノ酸配列X8ALDFDYを含み、ここでX8はM又はLである重鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む重鎖可変領域(VH)、及び
(b) (b-1)アミノ酸配列TGSSSNIGSNYVTを含む軽鎖相補性決定部位1(CDR1)と;
(b-2)アミノ酸配列X9NX10X11RPSを含めて、ここでX9はD、S又はRであり、X10はS又はNであり、X11はN又はQである軽鎖相補性決定部位2(CDR2)と;
(b-3)アミノ酸配列X12SFSDELGAYVを含めて、ここでX12はA又はSである軽鎖相補性決定部位3(CDR3)を含む軽鎖可変領域(VL)
を含むことを特徴とする抗体又はその機能的断片を提供する。
本発明で提供する抗体及びその機能的断片は、具体的に
前記(a)重鎖可変領域(VH)は、配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位1(CDR1)と;配列番号3、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23及び配列番号151からなる群から選択される一つ以上のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位2(CDR2)と;配列番号5及び配列番号25からなる群から選択される一つ以上のアミノ酸配列とを含む重鎖相補性決定部位3(CDR3)を含むことを特徴とし、
前記(b)軽鎖可変領域(VL)は、配列番号7で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位1(CDR1)と;配列番号9、配列番号27、及び配列番号29からなる群から選択される一つ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位2(CDR2)と;配列番号13及び配列番号15からなる群から選択される一つ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位3(CDR3)を含めることを特徴とするものであってよい。
上記CDR配列で構成された抗体(N3抗体及びN3改良抗体)は、細胞外膜に露出するKRSのN末端領域に特異的に結合する能力が優れ、免疫細胞の遊走/浸潤を著しく抑制及び減少させ、免疫細胞の遊走関連疾患に対して優れた治療効果を見せることが特徴である。これは、本発明の明細書の実施例によく示されている。
本発明による細胞外膜に露出するKRSのN末端領域に特異的に結合する抗体又はその断片(機能的断片)は、これに制限されることはないが、望ましく以下のような重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のCDR構成を含む抗体として、下記i、ii、iii、iv、v、vi、vii、viii、iv、x、xi、xii及びxiiiは、それぞれ実施例のN3-1、N3-3、N3-4、N3-5、N3-6、N3-7、N3-8、N3-9、N3-8-1、N3-8-2、N3-8-3、N3-8-4、N3-8-5及びN3-8-6、N3-8-7抗体のCDRの組み合わせを示している:
i)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号5で表されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体重鎖可変領域(VH)、及び配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号9で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号13で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体軽鎖可変領域(VL)を含む抗体;
ii)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号5で表されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体重鎖可変領域(VH)、及び配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号9で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号15で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体軽鎖可変領域(VL)を含む抗体;
iii)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号151で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号5で表されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体重鎖可変領域(VH)、及び配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号9で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号13で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体軽鎖可変領域(VL)を含む抗体;
iv)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号151で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号5で表されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体重鎖可変領域(VH)、及び配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号9で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号15で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体軽鎖可変領域(VL)を含む抗体;
v)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号17で表されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号5で表されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体重鎖可変領域(VH)及び配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号9で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号15で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体軽鎖可変領域(VL)を含む抗体;
vi)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号19で表されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号5で表されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体重鎖可変領域(VH)、及び配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号9で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号15で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体軽鎖可変領域(VL)を含む抗体;
vii)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号21で表されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号5で表されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体重鎖可変領域(VH)、及び配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号9で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号15で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体軽鎖可変領域(VL)を含む抗体;
viii)配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号23で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号5で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体重鎖可変領域(VH)、及び配列番号7で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号9で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号15で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体軽鎖可変領域(VL)を含む抗体;
ix)配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号21で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号5で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体重鎖可変領域(VH)、及び配列番号7で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号27で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号15で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体軽鎖可変領域(VL)を含む抗体;
x)配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号21で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号5で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体重鎖可変領域(VH)、及び配列番号7で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号29で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号15で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体軽鎖可変領域(VL)を含む抗体;
xi)配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号21で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号25で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体重鎖可変領域(VH)、及び配列番号7で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号9で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号15で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体軽鎖可変領域(VL)を含む抗体;
xii)配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号21で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号25で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体重鎖可変領域(VH)、及び配列番号7で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号27で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号15で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体軽鎖可変領域(VL)を含む抗体;
xiii)配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号21で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号25で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体重鎖可変領域(VH)、及び配列番号7で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位1(CDR1)と、配列番号29で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位2(CDR2)と、配列番号15で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む抗体軽鎖可変領域(VL)を含む抗体;
を含むことを特徴とする抗体又はその断片。
最も好ましくは、本発明に係る前記抗体又はその断片は、下記の通り、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含むことを特徴とする:
前記抗体又はその断片において、前記重鎖可変領域は、配列番号31、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45及び配列番号47からなる群から選択される一つ以上のアミノ酸配列を含めて、前記軽鎖可変領域は配列番号49、配列番号51、配列番号53及び配列番号55からなる群から選択される一つ以上のアミノ酸配列を含む。
好ましくは、配列番号31で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号49で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;配列番号31で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号51で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;配列番号35で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号49で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;配列番号35で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号51で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;配列番号37で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号51で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;配列番号39で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号51で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;配列番号41で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号51で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;配列番号43で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号51で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;配列番号45で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号51で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;配列番号45で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号53で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;配列番号45で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号55で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;配列番号47で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号51で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;配列番号47で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号53で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;配列番号47で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号55で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;を含む抗体である。
上記重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含むIgG形態の抗体は、具体的には、配列番号89、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103及び配列番号105からなる群から選択される複数のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)と、及び配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113及び配列番号115からなる群から選択される複数のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)とからなることを特徴とする抗体であることができる。
最も好ましくは、配列番号89で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号107で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号89で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号109で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号93で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号107で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号93で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号109で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号95で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号109で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号97で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号109で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号99で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号109で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号101で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号109で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号103で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号111で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号103で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号113で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号103で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号115で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号105で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号111で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号105で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号113で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号105で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号115で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号99で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号111で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖;を含んでいる抗体である。
本発明の抗体は、モノクローナル(monoclonal)抗体、ポリクローナル(polyclonal)抗体及び組換え抗体を含む意味である。本発明の目的上、抗体の重鎖と軽鎖のアミノ酸配列が実質的に同一の抗体の集団であるモノクローナル抗体であることが望ましいことがある。モノクローナル抗体は、当業界に広く公知されたハイブリドーマ方法(hybridoma method)(Kohler and Milstein (1976) European Jounral of Immunology 6:511-519を参照)、又はファージ抗体ライブラリ(Clackson et al, Nature, 352: 624-628, 1991; Marks et al, J. Mol. Biol., 222: 58, 1-597, 1991)の技術を用いて製造することができる。
本発明の抗体は、ヒトを含む哺乳動物、鳥類などを含む任意の動物に由来してよく、好ましくはヒトに由来したものか、人間に由来する抗体の部分と他の種の動物に由来する抗体の部分を含むキメラ(chimeric)抗体であってよい。すなわち、本発明は、キメラ抗体、ヒト化された抗体、及びヒト抗体を含み、好ましくは、ヒト抗体であってよい。
また、本発明の抗体は、一例として、IgGとして2つの全長軽鎖及び2つの全長重鎖を持つ完全な形だけでなく、抗体分子の機能的な断片を含んでいる。上記機能的断片は、全体の抗体の抗原特異的結合力を維持している抗体の断片を意味し、好ましくは、上記断片は、抗体のKRSのN末端結合親和性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%又はそれ以上を保有する。具体的には、Fab、F、(ab)2、Fab'、F(ab')2、Fv、ダイアボディ(diabody)、scFvなどの形態であることができる。Fab(fragment antigen-binding)は、抗体の抗原結合フラグメントでは、重鎖と軽鎖のそれぞれの一つの可変ドメインと不変ドメインで構成されている。F(ab')2は、抗体をペプシンで加水分解させて生成され、断片としては、二つのFabが重鎖ヒンジ(hinge)においてジスルフィド結合(disulfide bond)で接続された形をしている。F(ab')は、F(ab')2断片のジスルフィド結合を還元して分離させたFabの重鎖のヒンジが付加された形の単量体抗体断片である。Fv(variable fragment)は、重鎖と軽鎖のそれぞれの可変領域だけで構成された抗体断片である。scFv(single chain variable fragment)は、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)が柔軟なペプチドリンカーで接続されている遺伝子組換え抗体断片である。ダイアボディ(diabody)は、scFvのVHとVLが非常に短いリンカーで接続されて互いに結合できず、同じ形の他のscFvのVLとVHとそれぞれ結合して二量体を形成している形態の断片を意味する。
本発明の目的上、抗体の機能的断片は、細胞外部に露出されているヒトKRSのN末端領域に対する結合特異性を維持し、同じ生理活性を示すものであれば、構造や形態の制限を受けないが、好ましくはscFvであってよい。本発明に係るscFvは、前述した抗体と実質的に同じ生理活性を有するものであれば、その配列が特に制限されないが、好ましくは上記したKRSのN末端領域に特異的なCDR構成又はVHとVLの構成を有するものであり、VHとVLがリンカーを介して接続されてよい。上記リンカーは、当業界にscFvに適用されるリンカーとして知られるものであれば、その種類は特に制限されないが、好ましくは、配列番号57で表されるアミノ酸配列を含むペプチドである。これにより、本発明では、N3 scFvは、具体的には配列番号59で表されるアミノ酸配列を含んでよく、より好ましくは、配列番号59で表されるアミノ酸配列からなるものであってよい。また、N3改良抗体のVHとVL配列の構成に応じて、本発明では、次のようなscFVを提供することができる:配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、及び配列番号87からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むscFV。
本発明の抗体又はその断片は、生物学的活性を実質的に変更しない保存的アミノ酸置換(抗体の保存的変異体と呼ばれる)、欠失、又は付加を含むことができる。本発明で」「実質的に同質の生理活性」とは、KRSのN末端に結合して免疫細胞の遊走及び浸潤を抑制することを意味する。
本発明では、上記の抗体又はその断片を提供するためのポリヌクレオチド配列は、前述した配列構成を満足する限り、その具体的な塩基配列を構成するが、特に制限されない。すなわち、本発明で提供されるポリヌクレオチドは、本発明の抗体又はその断片を符号化するのであれば、その配列が特に制限されないものであって、先に説明した本発明に係る抗体で前述したCDR配列を暗号化するポリヌクレオチドは、その配列が特に制限されないが、好ましくは、それぞれ配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30又は配列番号152で表示される塩基配列を含んでよい。それぞれの配列が符号化するタンパク質は、配列表に記載されている。
また、本発明に係る抗体で、前述したVHとVLを暗号化するポリヌクレオチドは、その配列が特に制限されないが、好ましくは、配列番号32(VH)、配列番号36(VH)、配列番号38(VH)、配列番号40(VH)、配列番号42(VH)、配列番号44(VH)、配列番号46(VH)、配列番号48(VH)、配列番号34(VL)、配列番号50(VL)、配列番号52(VL)、配列番号54(VL)又は配列番号56(VL)に表示されている塩基配列を含んでよい。
一実施態様では、上記重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含むIgG形態の抗体を暗号化するポリヌクレオチドは、好ましくは以下の塩基配列を含んでよい:重鎖(HC)を暗号化するポリヌクレオチドは、配列番号90、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、及び配列番号106からなる群から選択される複数の塩基配列を含んでよい。軽鎖(LC)を暗号化するポリヌクレオチドは、配列番号92、配列番号108、配列番号110、配列番号112、配列番号114、及び配列番号116からなる群から選択される複数の塩基配列を含んでよい。
また、前記抗体の断片を符号化するポリヌクレオチドは、好ましくは、本発明に係るscFvを符号化する配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86及び配列番号88からなる群から選択されるいずれか一つの塩基配列を含むものでもある。
本発明の抗体又はその断片を符号化するポリヌクレオチドは、当業界でよく知られた方法により得ることができる。例えば、前記抗体の重鎖及び軽鎖の一部分又は全部をコーティングするDNA配列又は該当アミノ酸配列に基づいて、当分野でよく知られているオリゴヌクレオチド合成法、例えば重合酵素連鎖反応(PCR)法などを使用して合成することができる。
前記ポリヌクレオチドは、ベクターを通じて、適切な宿主細胞内に導入された後、本発明の抗体蛋白質を発現する。宿主細胞を、前記抗体又はその断片を符号化するポリヌクレオチドが作動可能に連結された組換え発現ベクターで形質転換し、前記形質転換された宿主細胞を培養して、宿主細胞に導入された組換え発現ベクターから、本発明に係る抗体の重鎖、軽鎖、又は抗体断片のポリペプチドが生産されるようにした後、そこから抗体を分離収得する具体的な方法は、当業界によく知られている。
まず、通常的な方法により、前記抗体を符号化する核酸を製作する。前記核酸は、適切なプライマーを用いてPCR増幅することにより製作することができる。他の方法で当業界に公知された標準的な方法により、例えば、自動DNA合成器(Biosearch又はApplied Biosystems社製)を使用してDNA配列を合成することもできる。製作された核酸は、これに作動可能に連結されて(operatively linked)核酸の発現を調節する一つ以上の発現調節配列(expression control sequence)(例:プロモーター、エンハンサーなど)を含むベクターに挿入させて、それにより形成された組換え発現ベクターで宿主細胞を形質転換させる。
前記用語「形質転換(transformation)」とは、外来性ポリヌクレオチドが導入されることによる宿主細胞の遺伝子型の変形を意味し、その形質転換に使用された方法とは関係無く、外来性ポリヌクレオチドは、宿主細胞の細胞内に統合されて維持されたり、統合されずに維持することができるが、本発明では両者全てを含む。
本発明に係るKRSのN末端領域に特異的に結合する抗体又はその断片を発現することができる組換え発現ベクターは、当業界に公知された方法、例えばこれに限定はされないが、一過性トランスフェクション(transient transfection)、マイクロインジェクション、形質導入(transduction)、細胞融合、カルシウムホスフェート沈殿法、リポソーム媒介トランスフェクション(liposome-mediated transfection)、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション(DEAE dextran-mediated transfection)、ポリブレン媒介トランスフェクション(polybrene-mediated transfection)、電気穿孔法(electroporation)、遺伝子銃(gene gun)及び細胞内に核酸を流入させるための公知の方法により、抗体又はその断片を生産するための細胞内部に導入して形質転換することができる。通常の技術者は、選択された宿主細胞と組換え発現ベクターにより、適切な形質転換方法を選択して実施することができる。
重鎖と軽鎖の塩基配列を含む組換え発現ベクターは、同じ宿主細胞に共形質転換して重鎖と軽鎖が一つの細胞から発現されるようにすることもでき、重鎖と軽鎖の塩基配列を含む組換え発現ベクターをそれぞれ別々の宿主細胞に形質転換して、重鎖と軽鎖が別に発現されるようにすることもできる。
前記宿主細胞を培養するための培地組成と培養条件、培養時間などは、当業界で通常使用される方法により適宜選択することができる。宿主細胞から生産される抗体分子は、細胞の細胞質内に蓄積されるか、又は適切なシグナル配列によって細胞外又は培養培地に分泌されるか、ペリプラズムなどで標的化(targeted)するようにすることができる。また、本発明に係る抗体は、KRSのN末端に対する結合特異性を維持するように、当業界に公知されている方法を利用して蛋白質リフォールディング(refolding)させて機能性構造(conformation)を有するようにすることが好ましい。また、IgGの形態の抗体を生産する場合、重鎖と軽鎖は、別の細胞から発現させて、別の段階で重鎖と軽鎖を接触させて、完全な抗体を構成するように製造することもでき、重鎖と軽鎖を同じ細胞で発現するようにして細胞内での完全な抗体を形成するようにすることもできる。
宿主細胞で生産された抗体又はその断片ポリペプチドの特性、宿主細胞の特性、発現方式又はポリペプチドを標的化するかどうかなどを考慮して、通常の技術者は、得られる方法を適切に選択し、調節することができる。例えば、培養培地に分泌された抗体又はその断片は、宿主細胞を培養した培地を得て、遠心分離して不純物を除去するなどの方法で抗体を回収することができる。必要に応じて、細胞内の特定の小器官や細胞質に存在する抗体を細胞外に放出し、回収するために、抗体又はその断片の機能的構造に影響を及ぼさない範囲で、細胞を溶解させることもできる。また、得られた抗体は、クロマトグラフィ、フィルタなどによるろ過、透析などの方法により、不純物をさらに除去して濃縮する過程を追加で踏むことができる。
本発明の製造(生産)の方法のポリペプチドは、本発明の抗体又はその断片そのものであってよく、本発明の抗体又はその断片以外のアミノ酸配列は、追加で結合されてもよい。この場合、本技術分野の通常の技術者によく知られている方法を用いて、本発明の抗体又はその断片から除去することができる。
本発明のポリペプチドの合成のための遺伝工学的な方法は、次の文献を参考にすることができる:Maniatis et al., Molecular Cloning; A laboratory Manual, Cold Spring Harbor laboratory, 1982; Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, NY, Second (1998) and Third (2000) Editions; Gene Expression Technology, Method in Enzymology, Genetics and Molecular Biology, Method in Enzymology, Guthrie&Fink(eds.), Academic Press, San Diego, Calif, 1991; Hitzeman et al., J. Biol. Chem., 255: 12073-12080, 1990。
本発明において、用語」免疫細胞」は、体内の免疫反応に関与する細胞を意味するものであり、当業界に免疫細胞として知られているもの、特に人体に存在する免疫細胞として知られているものであれば、その種類は特に制限されないが、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、巨核球、T細胞及びB細胞などを含む。好ましくは、単球、マクロファージ又は好中球(neutrophil)を意味するものであることができる。免疫細胞は、KRSを発現する。
本発明において、用語」免疫細胞の遊走関連疾患」は、当業界において過度の免疫細胞の遊走(又は/及び浸潤)が主要な発症機序であることが知られているものであれば、その具体的な種類は特に限定されないが、例えば、心血管疾患、線維化疾患、炎症性疾患、及びアルポート症候群(Alport syndrome)からなる群から選択されてよい。
上記心血管疾患は、その具体的な種類は特に限定されないが、例えば、高血圧(高血圧症による炎症性合併症を含む)、肺高血圧症、アテローム動脈硬化、狭心症、心筋梗塞、虚血性脳血管疾患、細動脈硬化及び中膜硬化からなる群から選択されてよい。
上記線維化疾患は、その具体的な種類は特に限定されないが、例えば、硬皮症(scleroderma)、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)、クローン病(Crohn’ disease)、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)、骨髄線維症(myelofibrosis)、肺線維症(pulmonary fibrosis)、肝臓線維症(hepathic fibrosis)、肝硬変(liver cirrhosis)、腎臓線維症(kidney fibrosis)、糸球体硬化症、線維症(myofibrosis)、心臓線維症、間質性線維化症、膵臓線維化症、脾臓線維化症、隔膜線維化症、血管線維化症、皮膚線維化症、眼線維化症、黄斑変性症、関節線維化症、甲状腺線維化症、心内膜心筋線維化症、腹膜線維化症、後腹膜線維化症、進行腫瘤性線維化症、腎性全身性線維化症、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosu)、遺伝性線維症、感染性線維症、刺激性線維症、慢性自己免疫による線維症、臓器移植時の抗原不適合による線維症、外科手術の線維症合併症、高脂血症による線維症、肥満による線維症、糖尿病性線維症、高血圧による線維症及びステント挿入時線維化による閉塞からなる群から選択されてよい。
本発明では、上記炎症性疾患は、その種類が特に制限されないが、好ましくは、自己免疫疾患、炎症性腸疾患、皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬症など)、糖尿病性眼疾患(糖尿病性網膜症など)、腹膜炎、骨髄炎、蜂巣炎、髄膜炎、脳炎、膵炎、外傷誘発性ショック、気管支喘息、鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎、肺炎、胃炎、腸炎、嚢胞性線維症、脳出血(卒中、脳卒中など)、気管支炎、細気管支炎、肝炎(肝硬変、非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis)など)、腎炎(糖尿病性腎不全など)、蛋白尿症、関節炎(乾癬性関節炎、骨関節炎など)、神経炎(糖尿病性神経障害、多発性硬化症など)、痛風、脊椎炎、ライター症候群、結節性多発動脈炎、血管炎、ルー・ゲーリック病、ウェゲナー肉芽腫症、高サイトカイン血症(hypercytokinemia)、リウマチ性多発性筋肉痛、関節細胞動脈炎、カルシウム結晶沈着関節症、苛性痛風、非関節リウマチ、粘液嚢症、腱鞘炎、上顆炎(テニス肘)、神経障害性関節疾患(Charcot's joint)、出血性関節症(hemarthrosis)、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、肥厚性骨関節症、複数の心細網組織球腫、サルコイドーシス(surcoilosis)、血色素症、鎌状赤血球症、高脂タンパク血症、低ガンマグロブリン血症、副甲状腺機能亢進症、末端巨大症、家族性地中海熱、ベーチェット病、全身性エリテマトーデス、回帰熱、乾癬、多発性硬化症、敗血症、敗血症性ショック、急性呼吸窮迫症候群、多臓器不全、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)、急性肺損傷(acute lung injury)、及び気管支肺形成障害(broncho-pulmonary dysplasia)からなる群から選択され、また、慢性炎症性疾患を含む。
本発明では、自己免疫疾患は、リウマチ性関節炎、全身性硬皮症、全身性エリテマトーデス、乾癬、喘息、潰瘍性大腸炎、ベーチェット病、クローン病、多発性硬化症、皮膚筋炎、膠原病、血管炎、関節炎、肉芽腫症、臟器特異的自己免疫病変、潰瘍性大腸炎、及びGvHD(移植片対宿主反応疾患:graft-versus-host disease)からなる群から選択されてよい。
上記慢性炎症性疾患は、前述した炎症性疾患の種類を参照して、これらの慢性化された(chronic)状態を含む意味であり、それらの好ましい一例としては、喘息、アトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬症、骨関節炎、痛風、乾癬性関節炎、乾癬性、非アルコール性脂肪肝炎、慢性閉塞性肺疾患、鼻炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎不全、糖尿病性神経障害、及び多発性硬化症などがあるが、これらに限定されない。
本発明に係る薬学的組成物は、本発明の抗体又はその機能的断片を単独で含むか、複数の薬学的に許容される担体と一緒に適した形に製剤化されることができ、賦形剤又は希釈剤をさらに含有することができる。上記で「薬学的に許容される」とは、生理学的に許容され、人間に投与されるとき、通常、胃腸障害、めまいなどのアレルギー反応又は類似の反応を起こさない非毒性の組成物をいう。
薬学的に許容される担体としては、例えば、経口投与用担体又は非経口投与用の担体をさらに含むことができる。経口投与用担体は、ラクトース、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などを含むことができる。併せて、ペプチド製剤の経口投与用に使用される様々な薬物送達物質を含むことができる。また、非経口投与用担体は、水、適切な油、食塩水、水性グルコース及びグリコールなどを含むことができ、安定化剤、及び保存剤をさらに含むことができる。適切な安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム又はアスコルビン酸のような抗酸化剤がある。適切な保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベン又はプロピルパラベン、及びクロロブタノールがある。
本発明の薬学的組成物は、上記成分に加えて、潤滑剤、湿潤剤、甘味料、香味剤、乳化剤、懸濁剤などをさらに含むことができる。その他の薬学的に許容される担体及び製剤は、以下の文献に記載されていることを参考にすることができる(Remington's Pharmaceutical Sciences, 19th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, 1995)。
本発明の組成物は、人間をはじめとする哺乳動物にどのような方法でも投与することができる。例えば、経口又は非経口的に投与することができる。具体的には、本発明の組成物の投与経路は、公知の抗体の投与法、例えば静脈内、腹腔内、脳内、皮下、筋肉内、眼内、動脈内、脳脊髄液内、又は病変内経路による注射又は注入、又は下記の徐放性(sustained release)システムによる注射又は注入であってよく、これに限定されない。一例として、本発明の抗体は、全身的に又は局部的に投与することができる。
本発明の薬学的組成物は、上述したような投与経路に応じて経口投与用又は非経口投与用の製剤として製剤化することができる。
本発明に係る薬学的組成物において、上記の抗体又はその機能的断片は、臨床投与時に経口及び非経口のさまざまな剤形で投与されることがあるが、製剤化する場合には、通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を使用して製造することができる。経口投与のための固形製剤には、錠剤、患者、散剤、顆粒剤、カプセル剤、トローチ剤などが含まれており、これらの固形製剤は、少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)又はラクトース(lactose)又はゼラチンなどを混ぜて調剤することができる。また、単純な賦形剤以外にステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤も使用することができる。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤又はシロップ剤などが該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外にさまざまな賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてよい。
非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁溶剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。本発明の治療用組成物を、任意の生理学的に許容可能な担体、賦形剤又は安定化剤(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th Edition, Alfonso, R., ed, Mack Publishing Co. (Easton, PA: 1995))と望ましい純度を有する抗体を混合して保存するために、凍結乾燥されたケーキ又は水溶液の形態で製造することができる。許容可能な担体、賦形剤又は安定剤は、使用された投与量と濃度でレシピエントに無毒であり、緩衝液、例えばリン酸、クエン酸、及び他の有機酸;アスコルビン酸をはじめとする抗酸化剤;低分子量(約10個未満の残基)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、又はデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えば、マンニトール又はソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;(又は)非イオン性界面活性剤、例えばツイーン、プルロニック(登録商標)又はポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。
非経口投与用製剤の場合には、注射剤、クリーム剤、ローション剤、外用軟膏剤、オイル剤、保湿剤、ゲル剤、エアロゾル及び鼻腔吸入器の形で、当業界に公知された方法で製剤化することができる。これらの剤形は、すべての製薬科学で一般的に公知された処方書である文献(Remington's Pharmaceutical Science, 19th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, 1995)に記載されている。
本発明の抗体又はその機能的断片の総有効量は、単一投与(single dose)で投与されることができ、複数回投与(multiple dose)が長期間投与される分割治療方法(fractionated treatment protocol)によって投与することもできる。本発明の薬学的組成物は、疾患の程度及び/又は目的に応じて有効成分(本発明の抗体又はその機能的断片)の含有量を変更することができ、一般的に1回の投与時0.01μg乃至10000 mg、好ましくは0.1μg乃至1000 mgの有効容量で一日に数回反復投与することができる。しかし、前記薬学的組成物の容量は製剤化の方法、投与経路、及び治療回数だけでなく、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重症度、食物や排泄率など、さまざまな要因を考慮して、患者の有効投与量が決定されているので、このような点を考慮すると、当分野の通常の知識を有する者であれば、本発明の組成物の適切な有効投与量を決定することができる。本発明に係る薬学的組成物は、本発明の効果を示す限り、その剤形、投与経路及び投与方法に特に制限されない。
また、本発明は、、リシル-tRNA合成酵素のN末端のうち、配列番号117の配列を含むエピトープ(epitope)に特異的に結合する抗体又はその機能的断片を有効成分として含む組成物の有効量を、これを必要とする対象に投与することを特徴とする免疫細胞の遊走関連疾患の治療方法を提供する。
一つの実施態様では、本発明は、リシル-tRNA合成酵素のN末端のうち、配列番号117の配列を含むエピトープ(epitope)に特異的に結合する抗体又はその機能的断片で構成されている組成物の有効量を、これを必要とする対象に投与することを特徴とする免疫細胞の遊走関連疾患の治療方法を提供する。
別の実施態様では、本発明は、本質的にリシル-tRNA合成酵素のN末端のうち、配列番号117の配列を含むエピトープ(epitope)に特異的に結合する抗体又はその機能的断片からなる組成物の有効量を、これを必要とする対象に投与することを特徴とする免疫細胞の遊走関連疾患の治療方法を提供する。
本明細書で「治療」とは、疾患の発生又は再発抑制、症状の緩和、疾患の直接又は間接的な病理学的結果の減少、疾患の進行速度の減少、疾患状態の改善、好転、緩和、改善された予後と/又は予防を含む概念である。本発明で使用される用語「予防」は、疾患の発症を抑制したり、進行を遅延させたりするすべての行為を意味する。
本発明の上記「有効量」とは、対象に投与したとき、免疫細胞の遊走、あるいは免疫細胞浸潤の変化、又はこれによる疾患の改善、治療、予防効果を示す量をいい、投与量について、上記を参照にして理解される。
上記「対象」とは、動物、好ましくは哺乳動物、特に人間を含む動物であり、動物に由来する細胞、組織、器官等であってもよい。上記対象は、上記の効果が必要な患者(patient)であってもよい。
上記「製剤又は組成物」は、食品組成物、化粧料組成物、薬学的組成物などの形態であってよいが、好ましくは薬学的組成物であり、薬学的組成物の具体的な説明は、前述した通りである。
本発明で提供されるKRSのN末端特異的抗体は、免疫細胞の遊走を調節することができ、これにより、免疫細胞の遊走関連疾患の予防、改善及び治療等において非常に顕著な効果を示す。
図1は、免疫細胞(単球/マクロファージ)の遊走に対するコラーゲン(collagen)、フィブロネクチン(fibronectin)及びラミニン(laminin)の効果を、トランスウェル細胞遊走アッセイ(transwell migration assay)で比較した結果として、遊走細胞(migrating cell)の顕微鏡画像を示す。 図2は、上記図1の顕微鏡画像で細胞数を測定(定量)して、グラフで表示したものである。 図3は、免疫細胞(単球/マクロファージ)の遊走のために、様々なラミニン亜型(LN111、LN211、LN221、LN411、LN421、LN511、LN521)の効果を、トランスウェル細胞遊走アッセイで比較した結果として、遊走細胞(migrating cell)の顕微鏡画像を示す。 図4は、図3の顕微鏡画像で細胞数を測定(定量)して、グラフで表示したものである。 図5は、LN421処理によって単球/マクロファージ膜でKRSが増加することをウエスタンブロットで確認した結果を示す。 図6は、LN421に特異的な単球/マクロファージの遊走のために、本発明のN3抗体(KRSのN末端結合抗体)の遊走抑制効果をトランスウェル細胞遊走アッセイで比較した結果として、遊走細胞(migrating cell)の顕微鏡画像を示す。 図7は、図6の顕微鏡画像で細胞数を測定(定量)して、グラフで表示したものである。 図8は、LN421処理により単球/マクロファージの膜で増加されたKRS水準が、本発明のN3抗体(KRSのN末端結合抗体)の処理によって減少されることをウエスタンブロットで確認した結果を示す。 図9は、N3抗体(KRSのN末端結合抗体)の処理によって、細胞膜領域のKRSがエンドサイトーシスされることを確認した結果を示す。Alexa fluor 488(Thermofisher)蛍光プローブ(probe)で標識された抗(anti)-KRS抗体(N3)と対照群であるMock IgG(Thermofisher)を処理し、時間に応じた抗体の遊走を監視し、この時、エンドサイトーシスかどうかを確認するためにリソソーム(lysosome)マーカーとしてLysotracker(Thermofisher)を使用した。 図10は、ヒトKRSのN末端領域の、本発明のN3抗体の結合位置との位置別相対強度をSPR(surface plasmon resonance)実験で解明した結果を示す(配列の下部の灰色のバーは、その領域(F1乃至F5)のN3抗体の結合力を示すもので、バーの色が濃いほど、高い結合強度を示すことを表示する)。 図11は、ヒト(human、h)、マウス(mouse、m)、ラット(rat、r)のKRSのN末端領域に対する本発明のN3抗体の結合位置との位置別相対結合強度をSPRで確認して、共通のエピトープ配列を究明した結果を示す(配列の下部の灰色のバーは、その領域(F1乃至F5)のN3抗体の結合力を示すもので、バーの色が濃いほど、高い結合強度を示すことを表示する)。 図12は、本発明のN3抗体投与による肺高血圧症(PAH)モデルの右心室収縮終期圧力(right ventricular end-systolic pressure; RVESP)の変化を示す(Mock IgG:陰性対照群、Ab 1mpk:N3抗体1mpk、Ab 10mpk:N3抗体10mpk、sildenafil:陽性対照群)。 図13は、本発明のN3抗体投与による肺高血圧症(PAH)モデルの左心室収縮終期圧力(left ventricular end-systolic pressure; LVESP)の変化を示す(Mock IgG:陰性対照群、Ab 1mpk:N3抗体1mpk、Ab 10mpk:N3抗体10mpk、sildenafil:陽性対照群)。 図14は、肺高血圧症(PAH)モデルで、本発明のN3抗体投与により免疫細胞の遊走及び浸潤が減少したことをIHC染色で確認した結果である。 図15は、急性肺損傷のマウスモデルのBALF(Bronchoalveolar lavage fluid)内に増加した総(total)免疫細胞の数が、N3抗体(KRSのN末端結合抗体)の処理濃度依存的に減少することを確認した結果を示す。 図16は、急性肺損傷のマウスモデルのBALF(Bronchoalveolar lavage fluid)内に、特に多く増加している好中球(neutrophil)が、N3抗体(KRSのN末端結合抗体)の処理濃度依存的に減少することを確認した結果を示す。 図17は、急性肺損傷のマウスモデルの肺組織内に増加したマクロファージ(IM、CD11b +/F4/80 +)の遊走及び浸潤が、N3抗体(KRSのN末端結合抗体)の処理濃度依存的に減少することをFACSで確認した結果を示す。 図18は、上記図17の結果を定量化して、グラフで表した結果である。 図19は、急性肺損傷のマウスモデルの肺組織内に行われた組織線維化がN3抗体(KRSのN末端結合抗体)の処理によって抑制されることを示す組織画像である。各実験群と対照群の組織は、Masson'sトリクローム(trichrome)染色処理された後、顕微鏡観察された。 図20は、KRSのN末端(term)(1-72 aa)ペプチド(peptide)に固定化と特異性を有するものを選別した改良抗体であるN3-1抗体と、対照群としてN3抗体に対し、KRSのN末端の親和性を測定するためのELISAの結果を示したものである。 図21は、KRSのN-末端(1-72 aa)ペプチドに固定化と特異性を有するものを選別した改良抗体であるN3-1抗体、N3-3抗体、N3-4抗体及びN3-5抗体のKRSのN末端の親和性を測定するためのELISAの結果を示したものである。 図22は、N3抗体とN3-1抗体のKRSに対する親和度をSPR(surface plasmon resonance)法で比較した結果を示したものである。 図23は、N3-1抗体、N3-6抗体、N3-7抗体、N3-8抗体及びN3-9抗体の、KRSのN末端に対する親和度を測定するためのELISAの結果を示したものである。 図24は、N3-6抗体、N3-7抗体、N3-8抗体、N3-9抗体の主要な結合領域を確認しながら、KRSに対する親和度をSPR(surface plasmon resonance)法で比較した結果を示したものである。 図25は、それぞれN3抗体、N3-6抗体、N3-8抗体投与による肺高血圧症(PAH)モデルの右心室収縮終期圧力(right ventricular end-systolic pressure; RVESP)の変化を示す。 図26は、肺動脈高血圧症(PAH)モデルで、本発明のN3抗体、N3-6抗体、N3-8抗体それぞれの投与により、免疫細胞の遊走及び浸潤が減少したことをIHC染色で確認した結果である。 図27は、肺高血圧症(PAH)モデルで肺組織内に行われた組織線維化が、本発明のN3抗体、N3-6抗体、N3-8抗体それぞれの投与で抑制されたことをMasson'sトリクローム(trichrome)染色を使用して示した組織の画像である。
以下、本発明を詳細に説明する。
但し、下記の実施例は、本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記の実施例に限定されるものではない。
実施例1:免疫細胞の遊走及び浸潤におけるラミニンシグナルの役割の確認
血管を構成するいくつかの細胞外基質(extracellular matrix、ECM)の中で、単球/マクロファージの遊走及び浸潤を促進するものを確認した。細胞外基質としてコラーゲン(collagen、Col)、フィブロネクチン(fibronectin、FN)とラミニン(laminin、LN)を使用して、トランスウェル細胞遊走アッセイを行い、具体的な実験方法は、以下のとおりである。トランスウェル(Transwell)(Corning、#3421-5mm)をゼラチン(gelatin)(0.5mg/ml)でコーティングした後、RAW 264.7 cell(1x105cells/well)を上部チャンバー(top chamber)に播種(seeding)した。ラミニン(Laminin)(laminin mixture、Biolamina社)、フィブロネクチン(Fibronectin)又はコラーゲン(Collagen)をそれぞれ10μg/ml単位含む無血清(Serum Free)DMEM(500μl)を下部チャンバー(bottom chamber)に入れた。24時間後に70%メタノール(methanol)を30分(min)処理して固定(fix)した後、50%ヘマトキシリン(Hematoxylin)で30分(min)間染色した。メンブレン(membrane)の上部に存在する非遊走(non-migrating)細胞を綿棒で除去した後、メンブレン(membrane)をとり、スライドガラス(slide)にマウント(mounting)した。メンブレン(membrane)の下面に存在する遊走細胞(migrating cell)を高倍率顕微鏡で観察し、定量した。
実験結果を図1及び図2に示すように、様々な細胞外基質の中でラミニンが最も強く単球/マクロファージの遊走を促進することを確認した。つまり、単球/マクロファージの遊走(migration)はECM(extracellular matrix)の中でラミニン(LN)シグナルに最も強く反応することを確認した。
実施例2:ラミニン亜型(subtype)別の免疫細胞の遊走及び浸潤効果確認
免疫細胞の遊走及び浸潤において、ラミニン亜型による効果を評価した。様々なラミニン亜型タンパク質(Biolaminaから購入)としてLN111、LN211、LN221、LN411、LN421、LN511、LN521を1μg/mlずつ使用して、実施例1と同様の方法でトランスウェル細胞遊走アッセイを行った。上記ラミニン亜型の具体的な配列は、各ラミニン亜型を構成する鎖に沿って配列番号120のα4鎖、配列番号126のα2鎖、配列番号127のα5鎖、配列番号122のβ2鎖、配列番号128のβ1鎖、配列番号124のγ1鎖を参照することができる。
実験結果を図3及び図4に示すように、単球/マクロファージは、ラミニンの中でもα4β2γ1亜型(LN421)に特異的に反応して遊走することを確認した。つまり、単球/マクロファージの遊走は、ラミニンの中でもLN421に特異的であることを確認した。
実施例3:免疫細胞のラミニン処理に伴う、細胞KRSの細胞膜への遊走 免疫細胞の遊走関連疾患の新規病理現象解明
100パイのプレートにRAW 264.7 cell(2x106cell)を分注し、18時間培養した後、無血清DMEM培地にLN421 1μg/mlの処理後0h、12h、24hに回収(harvest)した。ProteoExtract Subcellular Proteome Extraction Kit(Calbiotech、cat#539790)を使用して、RAW 264.7細胞タンパク質(cell protein)を細胞質(cytosol)と膜(membrane)画分(fraction)に分離した。得られたタンパク質を電気泳動した後、PVDFメンブレン(membrane)(Millipore)に移し、3%スキムミルク(skim milk)でブロッキング(blocking)した。その後、ウエスタンブロットでKRSを検出した。具体的にはKRSポリクローナル抗体(polyclonal antibody)(rabbit、Neomics、Co. Ltd.#NMS-01-0005)を添加して1時間結合させた。結合していない抗体を除去し、抗-ウサギ(anti-rabbit)2次抗体(ThermoFisher Scientific、#31460)を添加して反応させた。二次抗体を反応させた後、基質としてECL試薬(reagent)を利用して、暗室でフィルム感光した。感光されたバンドを標準的な分子マーカーと比較して、KRSのサイズに対応するバンドを確認した。Na+/K+ ATPase(Abcam、ab76020)とチューブリン(tubulin)(Santa cruz SC-5286)に対する抗体を、それぞれ細胞膜(plasma membrane)と細胞質基質(cytosol)マーカー確認用に使用した。
図5に示すように、単球/マクロファージのLN421を処理する場合、細胞質基質(cytosol)領域でKRS検出量が減少されたものと比べて、細胞膜領域でKRS検出量が増加していることを確認した。これらの結果は、単球/マクロファージの細胞内で発現され、一般的に細胞質領域に存在しているKRSが、LN421処理によって細胞膜の領域に遊走することを示唆しており、免疫細胞の膜領域で特異的にKRSが増加される現象は、免疫細胞の遊走及び浸潤に関連する疾患に対して重要な病理現象であると考えられた。
実施例4:細胞膜の位置のKRSレベルの減少を通じた免疫細胞の遊走/浸潤の制御、免疫細胞の遊走関連疾患の治療効果を確認 KRSの細胞膜への遊走阻害化合物の利用
本発明者らは、前述した実施例の結果から、単球/マクロファージの遊走におけるKRSの細胞内形態が重要な影響を与えることを確認した。特にKRSが細胞膜に向かって遊走して、免疫細胞膜領域で特異的にKRSが増加する現象は、免疫細胞の遊走及び浸潤に関連する疾患に対して重要な病理現象であると考えられた。したがって、本発明者らは、KRSのこれらの病理形態を抑制することが、免疫細胞の遊走及び浸潤に関連する疾患の治療的戦略の一つに適用可能であることを検証し、これを韓国特許出願10-2017-0076718と10-2018-0069146にこれを記載した。
上記文献で、本発明者らは、免疫細胞の遊走関連疾患で免疫細胞膜においてKRS水準が増加されることを抑制するために、KRSの細胞膜への遊走を抑制する化合物を発見し、これらの免疫細胞の遊走に関連疾患の治療効果を確認し、検討した。
簡単には、免疫細胞膜においてKRS水準が増加されることを抑制するために、KRSの細胞膜への遊走阻害剤として代表的な一例として、BC-KI-00053化合物(4-({(7-フルオロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)[2-(4-メトキシフェニル)エチル]アミノ}メチル)安息香酸)などの化合物を発見した。そして、急性炎症反応(例えば、ear skin woundモデル)と虚血性免疫反応(例えば、肝臓虚血再灌流損傷モデル)などの炎症性症状態では、免疫細胞の遊走及び浸潤が、KRSの細胞膜への遊走阻害剤(特に、BC-KI-00053)投与によって阻害されて疾患緩和効果が現れたことを確認した。また、肝臓の線維化、肺高血圧症(PAH)、高血圧、蛋白尿、糸球体硬化症、腎臓線維症、心臓線維症、アルポート症候群(Alport syndrome)などの免疫細胞の遊走関連疾患の様々なin vivoモデルにおいて、免疫細胞の遊走及び浸潤で起きる疾患の状態を確認し、ここで、上記KRSの細胞膜への遊走抑制化合物の疾患の治療効果を確認した。
実施例5:細胞膜KRS水準減少のためのKRS-N末端特異的結合抗体の製作及び免疫細胞の遊走/浸潤の制御効果を確認
5-1.KRS-N末端特異的結合抗体の製作 N3抗体
前記実施例4の化合物が、細胞膜の位置におけるKRS水準増加を抑制し、免疫細胞の遊走/浸潤関連疾患の治療及び改善効果を示した通り、本発明者らは、類似した原理で優れた治療効果を示す抗体を製作することを試みた。一方、本発明者らは、KRSが細胞質から遊走して、細胞膜に位置すると、細胞膜に内在され、一部N末端領域が細胞外に露出されることを明らかにした(通常、KRSのN末端の1~72番アミノ酸の領域)。ここで抗KRS抗体の中でも、KRS-N末端に結合することができる抗体は、免疫細胞の遊走/浸潤阻害において、in vivoでさらに著しい利点を有するものと思われ、代表的な一例として、本発明者らは後述する通り、N3抗体の製作を通じて、このような治療的利点を確認した。N3抗体は以下のような方法で得られた。
具体的には、ヒトKRS全長配列(配列番号118)の中で、ラミニンシグナルにより細胞膜に遊走されたとき、細胞外膜に晒されるヒトKRSのN末端の領域のみに特異的に結合するscFvを選別するために、HAタグ(tag)で標識されたヒトのB細胞から由来したscFvファージライブラリ(phage library)を利用したファージディスプレイパニング(phage display panning)実験を実施した。本実験に使用したscFvディスプレイファージライブラリ(display phage library)(Library size:app. 7.6 x 109、Library produced by prof. Hyunbo Shim)については、韓国特許10-0961392号に記載されている。ヒトKRS全長配列及びN末端位置の相異する特定領域のKRS断片が、ファージディスプレイパニング実験のための抗原蛋白質として使用された。
ファージディスプレイパニング実験は、具体的に次のように行われた。1mlの1XPBS溶液を含むImmunoチューブに1~10μgの抗原蛋白質を添加して37℃、200rpmで1時間反応させ、チューブの内側表面に抗原をコーティングした。抗原溶液を注ぎ出して、水道水で1回洗浄して、コーティングされていない抗原を除去した。抗原蛋白質とファージ間の非特異的結合を防ぐためにImmunoチューブとscFvライブラリを、それぞれ3%スキムミルクを含む1XPBST(0.05%tween20を含むPBS)で1時間室温で反応させた。Immunoチューブからスキムミルクを除去した後、scFvライブラリを添加して、37℃、150rpmで1時間反応させ、抗原にscFvファージが結合するようにした。scFvファージをチューブで反応させた後、1XPBSTで2~5回洗浄して結合していないscFvファージを除去した。それぞれの抗原に特異的に結合したscFvファージは常温でトリエチルアミン(triethylamine)(100mM)1mlを添加して、10分以内に分離してTris(1M、pH7.4)で中和させた。濾過したファージscFvをOD < 1で培養したER2537 E.coli に添加して37℃、120rpmで1時間30分間培養しながら感染させた。ファージに感染されたE.coliは遠心分離して培養上澄み液を一部除去した後、再分散してアンピシリンとグルコース(2%)を含む直径15cmのアガロースプレートに塗布した。翌日5ml SB培地を塗布してプレートから育った細胞を全て収得してグリセロール(glycerol)(50%)を全体嵩の0.5倍になるように添加して混合して1mlずつ分注して-80℃に保管した(scFv panning stock)。前記製造したストック(stock)20μlを20ml SB溶液に接種して培養し、ヘルパーファージ(helper phage)を利用して次の段階のファージパニングのためのscFvファージライブラリ(1ml)を製作した。抗原に特異的なscFvを発現するファージを分離するための前記の過程を2~3回繰り返した。
前記バイオパニング後、ウエスタンブロット、免疫沈殿などを追加して行い、目的蛋白質への結合力が高いscFvクローンを選別した。
選別されたscFvをIgG(全抗体)に転換し、具体的な方法は次の通りである。まず、scFvクローンのゲノムからscFvを符号化するポリヌクレオチドをPCRで増幅した。scFvのVH領域の遺伝子の増幅に使用したプライマーの塩基配列は、下記の通りである:Forward(AGA GAG TGT ACA CTC C CA GGC GGC CGA GGT GCA G、配列番号129)、Reverse(CGC CGC TGG GCC CTT GGT GGA GGC TGA GCT CAC GGT GAC CAG、配列番号130)。scFvのVL領域の遺伝子を増幅するのに使用したプライマーの塩基配列は、下記の通りである:Forward(AAG CGG CCG CCA CCA TGG GAT GGA GCT GTA TCA TCC TCT TCT TGG TAG CAA CAG CTA CAG GTG TAC ACT CCC AGT CTG TGC TGA CTC AG、配列番号131)、Reverse(CGC CGC CGT ACG TAG GAC CGT CAG CTT GGT、配列番号132)。それぞれのファージDNAを鋳型として前記プライマー(それぞれ10pmol)を利用して95℃/3min;95℃/30sec、60℃/30sec、72℃/30sec、30 cycles;72℃/5minの条件でPCRを行い、scFvのVH又はVL遺伝子を増幅した。PCR産物は、制限酵素を利用して、IgGの生産に使用されるベクターであるpcDNA3.4ベクターに挿入した。IgGの重鎖(heavy chain)と軽鎖(light chain)の蛋白質は、別のプラスミドで個別的に発現されるようにした。
このような方法で製造された、scFvの可変領域を含むIgGの軽鎖と重鎖を符号化するDNAを含むベクターは、freestyle 293F細胞(ATCC)に共形質転換させ、軽鎖と重鎖が細胞内で一緒に発現されるようにした。形質転換された293F細胞を37℃、8%CO2の条件で7日間培養して上澄み液を得た。上澄み液は、セルロースアセテートメンブレンフィルター(cellulose acetate membrane filter)(pore size 0.22μm、Corning)で濾過してCaptivA(商標)PriMAB protein A column(Repligen、USA)を使用して精製した。得られた抗体の濃度は、BCAキット(Pierce、23225)を用いて測定し、Bioanalyzer(Agilent 2100 Bioanalyzer)を利用して、還元及び非還元条件下で生産されたIgG抗体タンパク質を分析した。
5-2.免疫細胞の遊走及び浸潤阻害効果の確認
上記5-1で製作した複数の候補群の抗体の、免疫細胞の遊走及び浸潤に対する効果を確認した。具体的な実験方法は、以下の通りである。Transwell(Corning#3421-5mm)をゼラチン(0.5mg/ml)でコーティングし、その後RAW 264.7 cell(1 x 105 cells/well)を上部チャンバーに播種(seeding)した。ラミニン(Laminin)421(1μg/ml)を含む無血清DMEM(500μl)を下部チャンバーに入れてくれた。各抗体は、上部チャンバーに100nMの濃度で処理した。24時間後に70%メタノールで30分間固定させた後、50%ヘマトキシリンで30分間染色した。メンブレンの上部に存在する非遊走(non-migrating)細胞を綿棒で除去した後、メンブレンをとり、スライドガラスにマウントした。メンブレンの下面に存在する遊走細胞を高倍率顕微鏡で観察し(図6)、得られた画像から細胞数を測定してグラフで表示した(図7)。
また、RAW 264.7細胞にラミニン421(1μg/ml)を、及び抗体(100nM)を処理して、24時間培養して回収(harvest)し、以降ProteoExtract subcellular proteom extraction kit(Calbiochem)を使用して細胞膜(membrane)と細胞質(cytosol)画分(fraction)に分けサンプリングした後、KRSについてウエスタンブロット(western blot)を行った。具体的な方法は、実施例2で記載した通りである。
実験の結果、本発明のN3モノクローナル抗体(KRS-N末端特異的結合抗体)が特異的にLN421依存単球/マクロファージの遊走を効果的に阻害することを確認しており、これを図6及び図7に示す。また、図8に示すように、LN421処理は、単球/マクロファージの細胞膜の位置でのKRSレベルを増加させ、N3モノクローナル抗体処理によって細胞膜の位置で特異的にKRSレベルが減少することを確認した。また、図9に示すように、N3抗体が細胞外に露出したKRS領域(特に、N末端領域)に結合すると、エンドサイトーシス(endocytosis)が起こることを確認した。これはKRSが細胞質から細胞膜に遊走することを抑制する方式だけでなく、すでに細胞膜に遊走しているKRSを、KRSに特異的に結合する物質(特に、細胞外部に露出されているN末端に特異的に結合する製剤等)を利用して、能動的に除去する方法で、免疫細胞の遊走を阻害及び免疫細胞の遊走関連疾患を治療することができていることを示唆している。
これにより、KRSのN末端に結合する抗体の免疫細胞の遊走/浸潤性疾患の新たな治療薬としての可能性を確認した。
5-3.N3抗体配列分析
N3 scFv(配列番号59)とN3 IgG抗体(配列番号89及び配列番号91)の配列はHye young Yang, et. al., 2009, Mol. Cells 27, 225-235Oに記載された方法に基づいてOmpプライマーを使用して確認した。このように確保された配列(sequence)を、Bioeditプログラムを使用してCDR領域(region)の配列を確認した。抗原結合部位の配列確認の結果を表1に示し、scFvの場合、配列番号57のリンカーをさらに含んでいる。
Figure 0007511241000001
5-4.N3モノクローナル抗体のヒトKRS結合位置確認
ヒトKRSのN末端領域のうち、N3モノクローナル抗体の結合位置を確認するために下記のような実験を行った。まず、図10及び表2に示すように、配列番号148のKRSのN末端領域の互いに少しずつ異なる位置のKRS断片ペプチドF1乃至F5を抗原(エピトープ)に使用して、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance)(SPR)を使用してN3抗体との結合力を分析した。SPR実験は25℃でSeries SセンサーチップCM5(GE Healthcare)を搭載したBiacore T200(GE Healthcare)を使用して行った。アミンカップリングキット(GE Healthcare)で抗体をチップに固定した後、各抗原ペプチドをPBS溶液に溶かした後、156 nM~15000 nMの範囲で、2の倍数で希釈して60秒間流した。その降300秒の間PBSを流した。得られたデータはBiacore T200 Evaluationソフトウェアv2.0(GE Healthcare)で分析した。
Figure 0007511241000002
実験結果を図10に示すように、N3 IgG抗体は、F5ペプチドには全く結合せず、F4>F3>F2>F1の順の結合力を示した。上記F4、F3、F2、F1は、配列番号148で表示されるヒトKRSのN末端の15~29のアミノ酸を共有する。このことから、ヒトKRSのN3抗体の結合には、15-29 aa領域が重要に作用することを確認しており、ヒトKRS 15-29 aaを含む領域の中でもF4ポリペプチドに対応する位置であるヒトKRS 15-42 aa部位がN3抗体の主結合部位であると考えられた。
5-5.他の種の動物モデルでN3モノクローナル抗体の効能評価できるかどうか確認
マウスやラットなどを対象に、疾患の動物モデルを製作し、本発明のN3抗体の有効性の評価が可能かどうかを確認するために、KRSのN末端配列の種間配列類似性を分析した。図11及び表2に示すように、ヒト(h)、マウス(m)、ラット(r)のKRSのN末端領域の互いに少しずつ異なる位置のKRS断片ペプチドF1乃至F5を抗原(エピトープ)に使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用してN3抗体との結合力を分析した。具体的な方法は、前記実施例<5-4>で記載した通りである。
実験結果を図11に示すように、N3抗体は、ヒト(h)、マウス(m)、ラット(r)で同じ結合パターンを示し、F5ペプチドには全く結合せず、F4>F3>F2>F1の順の結合力を示した。各種のF1乃至F4配列を比較したとき、これらは一般的にKLSKNELKRRLKA配列を含んでいた。これは、上記の実施例5-4で究明したKRS 15-29 aa領域の中でも、17-29 aa領域(配列番号117)が抗体結合に重要に作用すると考えられた。上記実験を通じてN3抗体の種間交差反応性が可能であることが明らかになり、このような事実は、N3抗体の毒性試験とin vivo効能試験にマウス、ラットモデルが使用されることを示している。
実施例6:KRS-N末端特異的結合抗体の免疫細胞遊走関連疾患in vivo モデルにおける効能確認 in vivo肺動脈高血圧モデル
KRSN末端に特異的に結合する抗体を処理すると、細胞膜の位置でのKRS水準が減少(エンドサイトーシスなどを介して)することを通じて、免疫細胞の遊走/浸潤が阻害されて、結果的に前記実施例4の化合物と同じ効果(細胞膜KRS水準の減少)を有するものと見られる。従って、本発明のKRSのN末端特異的抗体(代表的にN3抗体)は、前記実施例4の化合物の同じ適応症(免疫細胞の遊走関連疾患)に対して治療効果を示すものであることは自明であると考えられ、これは後述される実施例を通じてさらに証明された。
実験方法
1)肺動脈高血圧症(PAH)モデル製作及び試験物質投与
7週齢のSDラット(オリエントバイオ)にPAHを誘導するために、MCT(モノクロタリン(monocrotaline))60 mpkを皮下注射した。その後、4つの群に分けて(各群当り5匹で実験)、それぞれMock ヒトIgG(Thermo Fisher Scientific、陰性対照群) 1mpk、N3 IgG抗体1mpk、N3 IgG抗体10mpk、シルデナフィル(sildenafil)(陽性対照群) 25 mpkを3週間投与した。全ての抗体は週2回静脈(iv)注射して、シルデナフィルは毎日経口投与した。
2)血流及び血圧測定
3週間後、ラットをイソフルラン(isoflurane)で麻酔して動物用の超精密圧容積測定システム(MPVS Cardiovascular Pressure and Volume system、モデル名:MPVS Ultra、メーカー名:Millar Instruments)を利用して血流と圧力を測定した。右心室収縮圧力(RVESP)及び弛緩圧力は専用カテーテル(Mikro-Tip rat pressure catheter、メーカー名:Millar Instruments)を利用して測定した。左心室の収縮圧力及び弛緩圧力は専用カテーテルを利用して測定した。心拍出量は、血管周囲(perivascular)血流プローブ(Transonic Flowprobes、メーカー名:Millar Instruments)を利用して測定し、これに対する実験法は、下記文献に記載されたものと同じ方法で実行された:Pacher P, Nagayama T, Mukhopadhyay P, Batkai S, Kass DA. Measurement of cardiac function using pressure-volume conductance catheter technique in mice and rats.Nat Protoc 2008; 3(9): 1422-34。
3)免疫組織化学染色(immunohistochemistry、IHC)
採取した肺を通常的な過程に従ってPFA(paraformaldehyde)に固定させた後、水洗、脱水、透明過程を経てパラフィンを浸透させて包埋した。ラット(Rat)の肺組織パラフィンブロックを3μmの厚さに薄切してスライドを製作した。その後、次のように染色を行った。先ず5分間、3回のキシレン(xylene)処理後、100%エタノール、95%エタノール、90%エタノール、70%エタノール、DWの順に2分間処理し、PBSで5分間洗浄した。0.3%H2O2の処理後、サンプルをPBSで5分間、2回洗浄した。0.01Mクエン酸バッファー(citrate buffer)に浸して加熱した後、PBS-T(0.03%tween 20)で洗浄した。その後、30分間室温でブロッキング(blocking)(2%BSA及び2%goat serum in PBS)した。抗-CD68抗体(1:200、ED1 clone、Abcam)で 4℃で終夜(overnight)染色した。PBS-Tで5分間3回洗浄した後、polymer-HRP anti-mouse envision kit(DAKO)で、4℃で1時間処理した。PBS-Tで3回洗浄した後、DAB基質バッファー(substrate buffer)とDAB chromogen 20を処理して発色させた。染色された組織を1分間Mayer's hematoxylin(Sigma)で処理した後、70%エタノール、90%エタノール、95%エタノール、100%エタノールの順でそれぞれ 2分間2回処理した。最後に、5分間、3回キシレン処理した後、光学顕微鏡で観察した。
実験結果
6-1.血圧及び心拍出量の変化確認
免疫細胞の浸潤が病理現象と深く関係した疾患のPAHモデルに、N3ポリクローナル抗体を1mpk又は10 mpkで3週間処理した後(iv、週2回)、右心室収縮終期圧力(right ventricular end-systolic pressure; RVESP)、右心室弛緩終期圧力(right ventricular end-diastolic pressure; RVEDP)、左心室収縮終期圧力(left ventricular end-systolic pressure; LVESP)、左心室弛緩終期圧力(left ventricular end-diastolic pressure; LVEDP)及び心拍出量(cardiac output; CO)を測定して、その結果を表3に示す。
Figure 0007511241000003
肺高血圧症は、肺動脈が狭くなることにより右心室の圧力が上昇し、結果的に右心室不全をもたらす。また、継続的な高血圧によりその補償機序が破壊されると、右心室肥大に続いて右心室拡張が起きるようになる。これは心室中隔の動きに起因する左心室の圧力を引き起こし、左心室の拡張終期体積と心拍出量の減少をもたらすことになる(イ・ウソクら、重症肺高血圧症患者の臨床的特徴と予後予測因子、Korean Circulation J 2007; 37: 265-270)。結果的に、肺高血圧症は、主に右心室と関係するが、左心室の機能とも関連付けられる。
PAH患者ではRVESPが増加され、これは、本実験のPAH動物モデルでも確認された。これに対して、図12に示すように、N3抗体(KRS-N末端特異的結合抗体)は、両方の濃度の両方で有意にRVESPを減少させ、特に陽性対照群の薬物であるシルデナフィル(Sildenafil)より効果的にRVESPを減少させた。
また、N3抗体(KRS-N末端特異的結合抗体)の投与による左心室収縮終期圧力(LVESP)の減少は観察されず、むしろ本発明の抗体を投与した群では、図13に示すようにLVESPが有意に増加された結果を示した。これは、既存の肺高血圧症の治療薬として使われているシルデナフィル(Sildenafil)の場合、肺動脈の拡張だけでなく、全身の動脈の拡張も誘発して、全身血圧(systemic blood pressure)を低下させる危険性があるのと対比されるものである。すなわち、本発明のN3抗体は、シルデナフィル(Sildenafil)と比較して、全身動脈圧(systemic artery pressure)への影響が低い傾向を示すことを確認しており、これらの効果は、臨床現場でシルデナフィル(Sildenafil)投与時に低血圧のリスクを懸念している状況があることを考慮したとき、治療薬剤の有利な特性になるものと思われた。それだけではなく、肺高血圧症がひどい場合、収縮期心室不全(systolic RV failure)が発生することにより、低心拍出量(cardiac output)と全身低血圧(systemic hypotension)が伴われることがある。これに対して、本発明のN3抗体による肺高血圧症を好転させる治療によって心拍出量(cardiac output)と全身血圧(systemic blood pressure)が上昇して、血圧が正常化される効果が予想される。
総合して、これにより本発明のKRSのN末端結合抗体(特に、N3抗体)の投与は、既存の治療薬の副作用の可能性を改善し、PAHの症状緩和や治療効果を示すことが確認された。
6-2.心超音波検査(Echocardiography)
右心室の圧力の過負荷を示唆するD型左心室(D-shaped left ventricle)の所見は、MCT単独投与群(つまり、実験物質非投与PAHモデル)で3匹、MCT+Sildenafil投与した群の3匹でそれぞれ観察され、治療抗体(N3抗体)を投与した群では観察されなかった。
それだけでなく、下記の表4に示すように、各群の体重は、同程度増加し、有意差がなかった。つまり、治療抗体の投与を通じた異常体重減少をはじめとする異常の兆候を示唆する所見は観察されなかった。
Figure 0007511241000004
6-3.単球/マクロファージの遊走と浸潤程度の確認
各実験群の肺組織を利用して、単球/マクロファージマーカーのCD68のIHC染色を行った。実験結果を図14で示すように、本発明のN3抗体(KRSのN末端結合抗体)処理群は、単球/マクロファージの肺組織浸潤を明確に減少させたことを確認しており、これらの効果は、シルデナフィル(sildenafil)より著しく優れて確認した。
実施例7:KRS-N末端特異的結合抗体の免疫細胞の遊走関連疾患のin vivoモデルでの効能確認 急性肺損傷モデル
実験方法
1)LPS誘導急性肺損傷モデル製作と試験物質投与
急性肺損傷モデルは、7週齢の雄C57BL/6マウス(ヅヨルバイオ)にLPS(Sigma)2.5 mg/kgを気管内注入する方式で製作された。
KRS阻害剤の急性肺損傷に対する効果を調べるために、まず、C57BL/6マウスにN3 IgG抗体をそれぞれ1mg/kg又は10 mg/kgずつ静脈(IV)注入し、24時間後にLPS 2.5 mg/kgを気管内注入した。上記LPS注入後24時間目には、各マウスを犠牲にして、肺組織とBALF(Bronchoalveolar lavage fluid)を収集し、分析した。
2)BALF(Bronchoalveolar lavage fluid)内の免疫細胞数の測定
PBSで肺を洗浄して得られたBALFを集めて800xg、10分間4℃で遠心して沈殿(pellet)を回収した。細胞を浮遊させた後、RBC溶解バッファー(lysis buffer)(eBioscience cat.no.00-4333-57)を利用して赤血球(red blood cell)を除去した。その後、PBSで反応を停止し、2回洗浄(washing)した後、400μl PBSに浮遊させ血球計算盤(hemocytometer)で細胞数を測定し、Hema3染色を介して好中球(neutrophil)数を測定した。
3)肺組織内の免疫細胞のFACS
肺組織を回収してgentleMACS Octo Dissociator(MACS Miltenyi Biotec、Order no.130-095-937)装置を用いて、37℃で45分間回転(rotation)させて組織を破壞した。Cell strainer(40μm)を用いて濾過(filter)した後、1500 rpmで5分間、室温で遠心分離を行った。沈殿(Pellet)を回収してRBC溶解バッファー(eBioscience cat. no. 00-4333-57)を利用して赤血球を除去した。細胞を回収し、FACSバッファー(NaN3 1%とFBS 3%が含まれているPBS)に浮遊させた後、50μlをチューブ(tube)に入れ、同量の抗体混合物とよく混合し、4℃で1時間の間、光を遮断して染色した。肺への遊走(IM interstitial macrophage)の分析のために、FITC Rat Anti-CD11b(BD Pharmingen)とPE Rat Anti-Mouse F4/80(BD Pharmingen)抗体を使用した。FACSバッファーを利用して、400xgで5分間2回洗浄したあと、Navios Flow Cytometer(Beckman)機器で分析した。
4)肺組織のMasson'sトリクローム(trichrome)染色
肺組織を通常の方法でパラフィン包埋した後、薄切した。その後キシレンを利用して、パラフィンを除去した組織スライドをDWで洗浄した後、56~60℃のブアン液(Bouin Fluid)で1時間処理した。ワイゲルト鉄ヘマトキシリン溶液(Weigert’s iron hematoxylin solution)で10分染色し、その後洗浄し、再びビーブリッヒスカーレット-酸性フクシン溶液(Biebrich scarlet-acid fuchsin solution)に10~15分染色した後、洗浄した。ホスホモリブデン-ホスホタングステン酸溶液(Phosphomolybdic-phosphotungstic acid solution)を10~15分間処理し、アニリンブルー液(aniline blue solution)に移し5~10分間染色した。洗浄後1%酢酸溶液(acetic acid solution)に2~5分間処理した。洗浄と脱水(dehydration)後、キシレン処理してマウントした。
実験結果
7-1.BALF(Bronchoalveolar lavage fluid)内の免疫細胞の遊走抑制効果の確認
図15に示すように、LPS処理によって急性肺損傷を誘発したマウスでは、BALF内の総(total)免疫細胞の数が増加したことを確認し、これがN3抗体(KRSのN末端結合抗体)の処理によって濃度依存的に減少した。
特に、図16に示すように、LPS処理により急性肺損傷を誘発したマウスで好中球(neutrophil)が多く増加したことが確認され、N3抗体(KRSのN末端結合抗体)の処理は、これらの好中球の数値を減少させた。これによりKRSのN末端に特異的に結合する抗体の処理によってBALF内の免疫細胞、特に好中球(neutrophil)の肺への浸潤が著しく抑制されることを確認した。
7-2.肺組織内の免疫細胞の遊走抑制効果の確認
図17及び図18は、急性肺損傷によって肺組織に遊走してきたマクロファージをFACSで分析した結果を示す。IM(interstitial macrophage)は、CD11b+/F4/80+細胞であり、肺に存在しない。特定の状況では、肺遊走のマクロファージ(migrating macrophages)である。LPS処理によりIMの肺への浸潤が増加したが、N3抗体処理は濃度依存的にIMの肺への遊走を減少させた。これにより、KRSのN末端に特異的に結合する抗体(代表的には、N3抗体)処理によりマクロファージ/単球などの免疫細胞の肺組織への遊走及び浸潤が抑制されることを確認した。
上記マクロファージ/単球などの免疫細胞の過剰な肺組織への遊走及び浸潤は、組織線維化疾患において重要な病理現象である。上記急性肺損傷モデルに対して肺組織をMasson'sトリクローム(trichrome)染色して観察した結果(図19)、肺組織内の線維化がかなり進行したことを確認しており、これに対してN3抗体(KRSのN末端に特異的に結合する抗体)の処理は、これらの線維化を抑制したことを確認した。
実施例8:KRSのN末端の親和性を増加させたN3改良抗体の作製
本発明者らは、治療抗体として、より良い性能を示す抗体を作製するために、上記N3抗体を改良して、KRSのN末端領域に対する親和度がより優れた抗体を得た。これは、次のような一連の過程で、N3抗体の軽鎖可変領域と重鎖可変領域を改良した。
8-1.N3抗体ベースの配列の変異scFabライブラリ(酵母細胞表面発現ライブラリ)の構築 一次ライブラリ
ホモロジーモデリング(Homology modeling)法を用いてN3抗体のおおよその構造を予測し、これにより、抗原結合に重要な役割をするものと予測されるCDR部位にランダムな突然変異を導入して、ライブラリを構築した。具体的には、重鎖可変領域をベースにしたライブラリでは、重鎖CDR2、又はCDR3の残基に対し、20個のすべてのアミノ酸配列を含むことができる縮退コドン(degenerated codon)のNNKを使用した。軽鎖可変領域のライブラリでは、N3抗体の軽鎖CDR2、又はCDR3残基に対し、20個のすべてのアミノ酸配列を含むことができる縮退コドン(degenerated codon)のNNKを使用した。このようにデザインされたライブラリをコードするDNAは、PCR法を用いて増幅した後、エタノール沈殿法を使用して濃縮した。
その後、軽鎖可変領域の様々な変化を含むscFab酵母表面発現ライブラリは、後述する文献に記載された方法を参照して製作された:Baek DS and Kim YS, Construction of a large synthetic human Fab antibody library on yeast cell surface by optimized yeast mating, J Microbiol Biotechnol. 2014 Mar 28; 24(3): 408-20。
簡単には、相同性接合(Homologous recombination)のためのC末端にaga2タンパク質が発現される酵母表面発現ベクター(C-aga2:pYDS)にNheIとMluI制限酵素を処理して、アガロースゲル抽出法を用いて精製しており、エタノール沈殿法を用いて濃縮した。
それぞれのライブラリコードDNA 12μgに対して、上記制限酵素処理された4μgのベクターを酵母EBY100(表面発現用酵母)に電気穿孔法で形質転換し、カスケード希釈(serial dilution)を介して選択培地SD-CAA(20 g/L Glucose、6.7 g/L Yeast nitrogen base without amino acids、5.4 g/L Na2HPO4、8.6 g/L NaH2PO4、5 g/L casamino acids)に育ったコロニーの数を測定して、ライブラリのサイズを確認した。
8-2.KRS(1-72 aa)ペプチド(peptide)に対する親和度が改良されたscFab選別_一次ライブラリ選別
GSTが結合されたKRS(1-72 aa、N-term)ペプチドを抗原として用いて、上記実施例8-1で構築されたライブラリを対象に親和度が増加したFabを選別した。
具体的には、一次FACSスクリーニングのためにSG-CAA(20 g/L Galactose、6.7 g/L Yeast nitrogen base without amino acids、5.4 g/L Na2HPO4、8.6 g/L NaH2PO4、5 g/L casamino acids)培地を用いて、GST結合されたKRSペプチド(1-72 aa、精製された状態)10 nMを、上記実施例8-1で細胞の表面にscFabライブラリ発現を誘導した酵母と、室温で1時間反応させた。その後、GST結合されたKRS(1-72 aa)ペプチドとライブラリを発現する酵母を、PEが接合されたストレプトアビジン(Streptavidin-R-phycoerythrin conjugate、SA-PE)と4℃で20分間反応させ、FACS(Fluorescence activated cell sorting、FACS Caliber; BD biosciences)を介して浮遊化した。その後、同様の方法で1 nMのGSTが結合されたKRS(1-72 aa)ペプチドで二次FACSスクリーニングをしており、0.5 nMのGSTが結合されたKRS(1-72 aa)ペプチドで三次FACSスクリーニングを行った。
上記FACSを用いた選別過程を通じて、N3抗体と比較してKRS(1-72 aa)ペプチドの高い親和性を有するクローンが選別された。このような方法で、個々のクローンに対する結合能の分析を通じてKRS(1-72 aa)ペプチドに親和性と特異性を持つ3つの優秀なクローン(N3-1、N3-3、N3-4)を選別し、これらの軽鎖可変領域と重鎖可変領域を互いに組み合わせて、別の1つのユニーク(unique)なクローンN3-5を構築した。上記N3-5クローンもKRS(1-72 aa)ペプチドの親和性と特異性が優れていることが確認され、最終的に合計4つのユニーク(magnetic activated cell sorting)なクローンN3-1、N3-3、N3-4、N3-5を選別した。
KRS(1-72 aa)ペプチドに高い結合能を示す4つの個別のクローンN3-1、N3-3、N3-4、N3-5の軽鎖可変領域と重鎖可変領域のCDR配列を表5に示し、重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域全体配列を表6に示す。
Figure 0007511241000005
Figure 0007511241000006
また、ELISA法を利用して、前記選別された個別のクローンN3-1、N3-3、N3-4、N3-5のKRSのN末端に対する親和度を再確認した。本実験では、前記クローンをIgG抗体に転換した後、実験した。IgG抗体への転換は、前記実施例 5-1の方法を参照する。
具体的には、KRSの N末端(1-72 aa)部分ペプチドを96ウェルEIA/RIAプレート(COSTAR Corning)に処理して、1時間25℃で結合させた後、PBS(pH 7.4、137 mM NaCl、12mM phosphate 、2.7 mM KCl)(Sigma)で10分間3回洗浄した。その後、4%BSA PBS(4%Bovine Serum Albumin、pH7.4、137 mM NaCl、12mM phosphate、2.7 mM KCl)(SIGMA)を1時間処理した後、PBSで10分間3回洗浄した。その後、IgG形態のN3抗体、N3-1抗体、N3-3抗体、N3-4抗体、N3-5抗体をそれぞれ処理して結合させた後、0.1%PBSTで10分間、3回洗浄した。標識抗体にはHRPが接合された抗ヒト抗体(Horseradish peroxidase-conjugated anti-human mAb)(Sigma)を使用した。次に、TMB(3,3',5,5'-Tetramethylbenzidine)(Sigma)で反応させて450nmの吸光度を測定して定量した。
その結果、図20及び図21に示したとおり、N3抗体に比べて、改良抗体であるN3-1、N3-3、N3-4、N3-5抗体の親和度が著しく増加したことを確認できた。陰性対照群として使用されたGST又はNRP1-b1b2には、全てのクローンが結合していないことが分かった。突然変異抗体であるN3-1、N3-3、N3-4、N3-5間のKRSの結合力には大きな差がないことが分かった(図21参照)。
8-3.N3抗体と一次改良抗体の親和度比較及び細胞遊走抑制効果確認
改良抗体であるN3-1、N3-3、N3-4、N3-5間のKRSの結合力には大きな差がなかった。ここで、前記実施例8-2で選抜された改良抗体のうち代表的にN3-1 IgG抗体を利用して、その母抗体のN3抗体とKRS-N末端に対する親和度をより具体的に比較した。KRS断片(1-207 aa)精製蛋白質を抗原として使用し、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance)(SPR)を通じてN3抗体及びN3-1抗体(IgG)との結合力を分析した。SPR実験は25℃でSeries SセンサーチップCM5(GE Healthcare)が装着されたBiacore T200(GE Healthcare)を使用して実施した。アミンカップリングキット(GE Healthcare)を利用して抗体をチップに固定したあと、抗原を4.8 nM~1250 nMの範囲でPBS溶液に4の倍数で希釈して60秒間流した。その後、300秒間PBSを流した。得られたデータはBiacore T200 Evaluationソフトウェア v2.0(GE Healthcare)で分析した。
その結果、図22に示したとおり、N3-1抗体のKD値が31 nMと測定され、N3抗体よりもKRS蛋白質に対する結合力が増加したことを確認できた。
また、前記抗体を処理して、細胞の遊走抑制効果を確認した結果(方法は、前述した実施例を参照)、N3-1抗体がN3抗体に比べて細胞の遊走を著しく抑制することを確認した。
8-4.N3-3抗体基盤の配列変異scFabライブラリー(酵母細胞表面発現ライブラリ)の構築 二次ライブラリ
前記実施例8-2から導出されたKRSのN末端を標的するN3-1、N3-3、N3-4、N3-5抗体は、KRSに対する親和度が類似して、前記実施例8-3でN3-1抗体の結果で示したとおり、約31 nM水準の親和度を有するものと判断された。これらのKRS(特にN末端領域)に対する親和度を増加させて、より効果的な抗体を得るために、重鎖可変領域を集中的に改良した。
軽鎖可変領域配列はN3-3抗体の配列(配列番号51)で固定して、重鎖可変領域の様々な変異配列を含むライブラリを構築した。まず、ホモロジーモデリング(homology modeling)法を利用して、N3-3抗体のおおよそのモデリング(modeling)構造を予測し、これを通じて、抗原結合に重要な役割をするものと予測されるCDRに無作為的な突然変異を導入した。具体的には、N3-3抗体重鎖可変領域のCDR2とCDR3の残基に対して、20個の全てのアミノ酸配列を含むことができる縮退コドン(degenerated codon)のNNKを使用し、実施例8-1と同じ方法でscFabライブラリを構築した。
8-5.KRS(1-72 aa)ペプチドに対する親和度が改良されたscFab選別 二次ライブラリ選別
GSTが結合されたKRS(1-72 aa)ペプチドを抗原に利用して、前記実施例8-4で構築されたライブラリを対象に親和度が増加したFabを選別した。N3-3とN3-1の親和度が殆ど同じものと判断され、配列が殆ど類似するため比較実験はN3-1で行った。
まず、前記実施例8-4で製作したライブラリの発現酵母に、GTPが結合されたKRS(1-72 aa)ペプチドを処理して反応させた。その後、前記GTPが結合されたKRS(1-72 aa)ペプチドと結合されたライブラリを発現する酵母をストレプトアビジン(Streptavidin)Microbead(商標)(Miltenyi Biotec)と4℃で20分間反応させた後、MACS(magnetic activated cell sorting)を利用して前記KRS(1-72 aa)ペプチドに高親和度を有するscFabを発現する酵母を浮遊化した。前記MACSを通じて選別されたライブラリを発現する酵母をSG-CAA(20 g/L Galactose、6.7 g/L Yeast nitrogen base without amino acids、5.4 g/L Na2HPO4、8.6 g/L NaH2PO4、5 g/L casamino acids)培地で培養して、ライブラリの発現を誘導した。その後、実施例 8-2と同じ方法で、FACSを利用して順次的なスクリーニングを行った。簡単に、10 nMのGSTが結合されたKRS(1-72 aa)ペプチドで一次FACSスクリーニングし、1 nMのGSTが結合されたKRS(1-72 aa)ペプチドで二次FACSスクリーニングをして0.5 nMのGSTが結合されたKRS(1-72 aa)ペプチドで三次FACSスクリーニングをし、0.1 nMのGSTが結合されたKRS(1-72 aa)ペプチドで四次FACSスクリーニングを行った。
上記MACS(magnetic activated cell sorting)とFACS(Fluorescence Activated Cell Sorting)を利用した選別過程を通じて、N3-1抗体(N3-3抗体と同様の親和性を示す)と比較して、KRS(1-72 aa)ペプチドについて重鎖可変領域(VH)依存的に高い親和性を有するクローンが選別された。このような方法で、個々のクローンに対する結合能の分析を通じて、KRS(1-72 aa)ペプチドに親和性と特異性を持つ4つの優れたクローンN3-6、N3-7、N3-8、N3-9を選別した。
KRS(1-72 aa)ペプチドに高い結合能を示す4つの個別のクローンN3-6、N3-7、N3-8、N3-9の軽鎖可変領域と重鎖可変領域のCDR配列を表7に示し、重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域全体配列を表8に示す。
Figure 0007511241000007
Figure 0007511241000008
また、ELISA法を用いて、前記選別された個別のクローンN3-6、N3-7、N3-8、N3-9のKRSのN末端の親和性を再確認した。本実験では、上記のクローンをIgG抗体に転換した後、ELISA実験に用いており、その方法は、前記実施例5-1を参照する。
その結果、図23に示すように、N3-1抗体(N3-3と親和性類似)に比べて改良抗体であるN3-6、N3-7、N3-8、N3-9抗体の親和性が増加したことを確認できた。陰性対照群に使用されたNRP1-b1b2には、すべてのクローンが結合していないことが分かった。
また、改良抗体であるN3-6抗体、N3-7抗体、N3-8抗体、N3-9抗体(IgG)を処理して、細胞の遊走抑制効果を確認した結果(方法は、前述した実施例を参照)、上記改良抗体はN3-1抗体よりも細胞の遊走を著しく抑制することが確認できた。N3-6抗体、N3-7抗体、N3-8抗体及びN3-9抗体の間の細胞遊走阻害効果上の大きな違いは見られなかった。
8-6.改良抗体N3-6、N3-7、N3-8、N3-9のエピトープと親和も確認
KRSエピトープペプチド(epitope peptide)F4(EPKLSKNELKRRLKAEKKVAEKEAKQKE:配列番号136)を抗原エピトープとして使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)を介してN3抗体、N3-6抗体、N3-7抗体、N3-8抗体、N3-9抗体との結合力を分析した。SPR実験は、上記の実施例5-4と同様の方法で実施し、エピトープをPBS溶液に希釈して15.7 nM~4000 nMの範囲で2の倍数で希釈して90秒間流した。その後、2400秒間PBSを流した。得られたデータはBiacore T200 Evaluationソフトウェアv2.0(GE Healthcare)で分析した。
その結果、図24に示すように、改良抗体N3-6抗体、N3-7抗体、N3-8抗体、N3-9抗体もN3抗体と同様の主な結合部位(main binding site)を有することが確認された(実施例5-4を参照)。さらにKRSエピトープペプチドF4(配列番号136)の構成アミノ酸をそれぞれアラニン(alanine、A)で置換したペプチド(peptide)を用いて、抗体エピトープ結合において重要に作用する残基を確認するために、ELISAを実施した。その結果、KRSエピトープペプチドF4の各抗体との結合に重要に作用する残基を確認できた。
また、図24に示すように、N3-8抗体(KD = 0.8613nM)のKDが最も優れていると見られ、N3-9(KD = 2.842 nM)、N3-6抗体(KD = 4.114nM)が類似のKD値を示し、N3-7抗体(KD = 18.77nM)のKD値が最も大きくなった。N3-6抗体の解離(dissociation)時間がN3-7、N3-9より長く結合がより長く維持されるセンサーグラム(sensorgram)を示した。
8-7.N3-8抗体ベースの生産性と安定性の改良抗体作製(N3-8抗体配列改良(sequence refinement))
上記実施例では、N3-8抗体がKRS(特にN末端)への親和性が最も優れていることを確認した。そこで、N3-8抗体の生産性、安定性などの物性を確認し、これらの特性をさらに優れたものにするために、N3-8抗体の配列において安定性に影響を与えると予想される配列に変異(mutation)を誘導してN3-8誘導体(N3-8 derivative)を作製した。
その結果、N3-8抗体の重鎖可変領域に変異が導入された2種の重鎖配列(配列番号45、配列番号47)を得ることができた。また、軽鎖可変領域に変異が導入された3種の軽鎖配列(配列番号51、配列番号53、配列番号55)を得ることができた。このような重鎖及び軽鎖配列の組み合わせによるN3-8誘導体(N3-8 derivatives)7種の配列を表9及び表10に示し、これらはN3-8抗体の親和性特性を維持する。
Figure 0007511241000009
Figure 0007511241000010
前述した実施形態で使用されたIgG全体抗体の重鎖(HC)と軽鎖(LC)配列の構成を下記の表11に示す。
Figure 0007511241000011
8-8.N3-8誘導体の生産性と安定性の測定(Tm測定)
前記実施例8-7で得られたN3-8誘導体抗体の軽鎖及び重鎖を発現するプラスミドを用いて、一過性トランスフェクション(transient transfection)の方法で、それぞれの抗体タンパク質を発現及び精製した。フラスコ内の無血清FreeStyle 293発現培地(Invitrogen)で懸濁したHEK293-F細胞(Invitrogen)に、上記プラスミドとポリエチレンイミン(Polyethylenimine、Polyscience)の混合物でトランスフェクションした。
具体的には、200mL振とうフラスコ(Corning)にトランスフェクション時に、HEK293-F細胞を2X106細胞/mlの密度で培地100mlに播種(seeding)し、150rpm、8%CO2、37℃で培養した。それぞれのモノクローナル抗体の生産に適した重鎖プラスミドと軽鎖プラスミドを重鎖:軽鎖DNA=1:1、あるいは1:2の割合で処理(10ml FreeStyle 293発現培地に混合処理)してトランスフェクションした。まず、重鎖:軽鎖DNAを1:1の割合で使用する場合、重鎖125μg、軽鎖125μg、合計250μg(2.5μg/ml)を希釈して、PEI 750μg(7.5μg/ml)を希釈した10mlの培地と混合して、室温で10分間反応させた。比率が1:2の場合、軽鎖DNAの濃度を2倍にした。その後、反応させた混合培地を前もって100mlに分注したHEK293-F細胞に処理して、4時間、150 rpm、8%CO2、37℃で培養した。そして、残りの100 mlのFreeStyle 293発現培地を追加し、6日間培養した。
次に、細胞培養液を50mlチューブに移して3000rpmで5分間遠心分離を行った。その後、採取した細胞培養上澄み液から蛋白質を精製した。蛋白質Aセファロースカラム(Protein A Sepharose column)に前記上澄み液を適用した後、PBSで洗浄した。0.1 Mグリシン緩衝液を利用してpH 3.0において抗体を溶離した後、1M Tris緩衝液を利用してサンプルをすぐに中和した。溶出した抗体分画は、透析法を通じてPBS(pH 7.4)に緩衝液を交換して濃縮した。精製された蛋白質は、280nmの波長での吸光度と吸光係数を利用して定量した。
また、前記精製したそれぞれの抗体を1 mg/mlの濃度で100μlを使用して抗体の熱安定性(thermal stability)を測定した。Protein thermal shift Dye kitを利用して、Quant Studio 3 Real-time PCR装置(Thermofisher)で4回繰り返し行った。
その結果、下記表12に示した通り、テストした全てのN3-8誘導体抗体の収率(yield)がN3-8抗体よりも改善されたことを確認した。また、表12に示したとおり、Tm値を得て、抗体によって温度遷移(thermal transition)がTm1-Tm2に異なって観察されたが、すべてのN3-8誘導体抗体からTm値が増加したことが分かった。
これを通じて、N3-8抗体誘導体がN3-8抗体に比べて収率がより高く、熱安定性(thermal stability)が改善されたことを確認した。
Figure 0007511241000012
実施例9:N3改良抗体の恒常された治療効能の確認
前記実施例で製作したN3改良抗体に対して実際のin vivo上でも免疫細胞の遊走関連疾患の治療効果が優れているかを確認した。疾患モデルとして代表的に肺動脈高血圧症モデルを使用し、改良抗体には代表的にN3-6抗体及びN3-8抗体を使用して実験した。
7週齢のSDラット(オリエントバイオ)に肺動脈高血圧を誘導するためにMCT(monocrotaline)60 mpkを皮下注射した。2週間疾病を誘発した後、4つの群に分けて(各群当り5匹で実験)、それぞれPBS、N3抗体1mpk、N3-6抗体1mpk、N3-8抗体1 mpkを3週間投与した。すべての抗体は週2回静脈(iv)注射した。各実験群に対する血流及び血圧の測定、免疫組織化学染色(IHC)は、前記実施例 6に記載されたのと同じ方法で行われた。また、各実験群の肺組織をMasson'sトリクローム染色法で染色して肺の線維化(lung fibrosis)の程度を測定し、Masson'sトリクローム染色法は実施例7で記述されたのと同じく行われた。
MCT単独処理群の動物の肺では、肺血管の内皮炎(endothelitis)、小動脈(arterioles)の平滑筋増殖(smooth muscle proliferation)、内膜の過剰増殖(intimal hyperplasia)、血管閉塞(vascular occlusion)などが観察され、これにより肺動脈高血圧疾患モデルがよく製作されたことを確認した。
前記肺動脈高血圧で表れる現象は、本願発明の抗体処理によって著しく減少した。具体的には、図25に示した通り、肺動脈高血圧(MCT単独処理群)で増加したRVESPが、本発明のN3抗体及びN3改良抗体処理によって著しく減少され、特にN3-8抗体はRVESP減少効果が極めて優れていることが確認された。
図26は、各対照群及び実験群の肺組織に対するIHC染色の結果を示す。肺動脈高血圧(MCT単独処理群)動物の肺からCD68+単球/マクロファージ(monocyte/macrophage)染色が強く現れた反面、N3抗体又はN3-6抗体処理群において、前記染色程度が弱くなり、N3-8抗体処理群では、陰性対照群(negative control)と類似した水準に染色強度が著しく減少したことを確認した。これは、本発明の抗体処理により単球/マクロファージ(monocyte/macrophage)の組織内浸潤が抑制されたことを意味し、特にN3-8抗体の優れた効果を示す。
また、図27に示した通り、肺動脈高血圧(MCT単独処理群)動物の肺組織では、肺の線維化程度が強く現れた反面、N3抗体又はN3-6抗体処理群では、線維化症状の程度が著しく弱くなり、N3-8抗体処理群では、陰性対照群(negative control)とほぼ類似した水準に線維化が減少したことを確認した。これは、本発明の抗体処理により線維化が減少したことを意味し、特にN3-8抗体の優れた効果を示す。
以上述べた通り、本発明は、リシル-tRNA合成酵素N末端に特異的に結合する抗体の新規な使用に関するもので、より詳細には、リシル-tRNA合成酵素のN末端のうち、配列番号117の配列を含むエピトープ(epitope)に特異的に結合する抗体又はその機能的断片を有効成分として含む免疫細胞の遊走関連疾患の予防又は治療用薬学的組成物に関するものである。本発明で提供するKRSのN末端特異的抗体は、免疫細胞の遊走を調節することができ、これにより、免疫細胞の遊走と関連した疾患の予防、改善及び治療等において極めて有用に使用することができるので、産業上の利用可能性が高い。

Claims (14)

  1. リシル-tRNA合成酵素のN末端のうち、配列番号117の配列を含むエピトープ(epitope)に特異的に結合する抗体又はその機能的断片を有効成分として含む免疫細胞の遊走関連疾患の予防又は治療のための薬学的組成物であって、
    前記抗体又はその機能的断片は、細胞外膜に露出するリシル-tRNA合成酵素のN末端領域に特異的に結合し、
    前記抗体又はその機能的断片が、
    (a)(a-1)アミノ酸配列SYDMSを含む重鎖相補性決定部位1(CDR1)と;
    (a-2)アミノ酸配列X1IX2X3X4X5GX6X7YYADSVKGを含み、ここで、X1はA又はVであり、X2はS、D又はGであり、X3はY、P、S又はAであり、X4はD、Q、L又はYであり、X5はN、M、S、又はGであり、X6はN、R又はPであり、X7は、T、V、I又はSである重鎖相補性決定部位2(CDR2)と;
    (a-3)アミノ酸配列X8ALDFDYを含み、ここで、X8はM又はLである重鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む重鎖可変領域(VH)、及び
    (b)(b-1)アミノ酸配列TGSSSNIGSNYVTを含む軽鎖相補性決定部位1(CDR1);
    (b-2)アミノ酸配列X9NX10X11RPSを含み、ここで、X9はD、S又はRであり、X10はS又はNであり、X11はN又はQである軽鎖相補性決定部位2(CDR2)と;
    (b-3)アミノ酸配列X12SFSDELGAYVを含み、ここで、X12はA又はSである軽鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む軽鎖可変領域(VL)
    を含み、
    前記(b)軽鎖可変領域(VL)が、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位1(CDR1)と;配列番号9、配列番号27、又は配列番号29で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位2(CDR2)と;配列番号13又は配列番号15で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含むことを特徴とする、
    前記薬学的組成物。
  2. 前記抗体又はその機能的断片が、細胞膜のKRS水準を減少させることを特徴とする請求項1記載の組成物。
  3. 前記抗体が、IgG、IgA、IgM、IgE、及びIgDからなる群から選択され、前記機能的断片は、ダイアボディ、Fab、Fab'、F(ab)2、F(ab')2、Fv及びscFvからなる群から選択されることを特徴とする請求項1記載の組成物。
  4. 前記免疫細胞の遊走関連疾患が、心血管疾患、線維化疾患、炎症性疾患、及びアルポート症候群(Alport syndrome)からなる群から選択されることを特徴とする請求項1記載の組成物。
  5. 前記心血管疾患が、高血圧、肺高血圧、アテローム動脈硬化、狭心症、心筋梗塞、虚血性脳血管疾患、細動脈硬化及び中膜硬化からなる群から選択されることを特徴とする請求項記載の組成物。
  6. 前記線維化疾患が、硬皮症(scleroderma)、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)、クローン病(Crohn’s disease)、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)、骨髄線維症(myelofibrosis)、肺線維症(pulmonary fibrosis)、肝臓線維症(hepatic fibrosis)、肝硬変(liver cirrhosis)、腎臓線維症(kidney fibrosis)、糸球体硬化症、線維症(myofibrosis)、心臓線維症、間質性線維化症、膵臓線維化症、脾臓線維化症、隔膜線維化症、血管線維化症、皮膚線維化症、眼線維化症、黄斑変性症、関節線維化症、甲状腺線維化症、心内膜心筋線維化症、腹膜線維化症、後腹膜線維化症、進行腫瘤性線維化症、腎性全身性線維化症、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosu)、遺伝性線維症、感染性線維症、刺激性線維症、慢性自己免疫による線維症、臓器移植時の抗原不適合による線維症、外科手術の線維症合併症、高脂血症による線維症、肥満による線維症、糖尿病性線維症、高血圧による線維症、及びステント挿入時線維化による閉塞からなる群から選択されることを特徴とする請求項記載の組成物。
  7. 前記炎症性疾患が、自己免疫疾患、炎症性腸疾患、皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬症など)、糖尿病性眼疾患(糖尿病性網膜症など)、腹膜炎、骨髄炎、蜂巣炎、髄膜炎、脳炎、膵炎、外傷誘発性ショック、気管支喘息、鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎、肺炎、胃炎、腸炎、嚢胞性線維症、脳出血(卒中、脳卒中など)、気管支炎、細気管支炎、肝炎(肝硬変、非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis)など)、腎炎(糖尿病性腎不全など)、蛋白尿症、関節炎(乾癬性関節炎、骨関節炎など)、神経炎(糖尿病性神経障害、多発性硬化症など)、痛風、脊椎炎、ライター症候群、結節性多発動脈炎、血管炎、ルー・ゲーリック病、ウェゲナー肉芽腫症、高サイトカイン血症(hypercytokinemia)、リウマチ性多発性筋肉痛、関節細胞動脈炎、カルシウム結晶沈着関節症、苛性痛風、非関節リウマチ、粘液嚢症、腱鞘炎、上顆炎(テニス肘)、神経障害性関節疾患(Charcot's joint)、出血性関節症(hemarthrosis)、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、肥厚性骨関節症、複数の心細網組織球腫、サルコイドーシス(sarcoidosis)、血色素症、鎌状赤血球症、高脂タンパク血症、低ガンマグロブリン血症、副甲状腺機能亢進症、末端巨大症、家族性地中海熱、ベーチェット病、全身性エリテマトーデス、回帰熱、敗血症、敗血症性ショック、急性呼吸窮迫症候群、多臓器不全、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)、急性肺損傷(acute lung injury)、及び気管支肺形成障害(broncho-pulmonary dysplasia)からなる群から選択されることを特徴とする請求項記載の組成物。
  8. 前記自己免疫疾患が、リウマチ性関節炎、全身性硬皮症、全身性エリテマトーデス、乾癬、喘息、潰瘍性大腸炎、ベーチェット病、クローン病、多発性硬化症、皮膚筋炎、膠原病、血管炎、関節炎、肉芽腫症、臟器特異的自己免疫病変、潰瘍性大腸炎、及びGvHD(移植片対宿主反応疾患:graft-versus-host disease)からなる群から選択されることを特徴とする請求項記載の組成物。
  9. (a)重鎖可変領域(VH)が、配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位1(CDR1)と;配列番号3、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、又は配列番号151で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位2(CDR2)と;配列番号5又は配列番号25で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
  10. 前記scFvは、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、及び配列番号87からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項記載の組成物。
  11. 免疫細胞の遊走関連疾患の予防又は治療用製剤を製造するための、リシル-tRNA合成酵素のN末端のうち、配列番号117の配列を含むエピトープ(epitope)に特異的に結合する抗体又はその機能的断片の使用であって、
    前記抗体又はその機能的断片は、細胞外膜に露出するリシル-tRNA合成酵素のN末端領域に特異的に結合し、
    前記抗体又はその機能的断片が、
    (a)(a-1)アミノ酸配列SYDMSを含む重鎖相補性決定部位1(CDR1)と;
    (a-2)アミノ酸配列X1IX2X3X4X5GX6X7YYADSVKGを含み、ここで、X1はA又はVであり、X2はS、D又はGであり、X3はY、P、S又はAであり、X4はD、Q、L又はYであり、X5はN、M、S、又はGであり、X6はN、R又はPであり、X7は、T、V、I又はSである重鎖相補性決定部位2(CDR2)と;
    (a-3)アミノ酸配列X8ALDFDYを含み、ここで、X8はM又はLである重鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む重鎖可変領域(VH)、及び
    (b)(b-1)アミノ酸配列TGSSSNIGSNYVTを含む軽鎖相補性決定部位1(CDR1);
    (b-2)アミノ酸配列X9NX10X11RPSを含み、ここで、X9はD、S又はRであり、X10はS又はNであり、X11はN又はQである軽鎖相補性決定部位2(CDR2)と;
    (b-3)アミノ酸配列X12SFSDELGAYVを含み、ここで、X12はA又はSである軽鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む軽鎖可変領域(VL)
    を含み、
    前記(b)軽鎖可変領域(VL)が、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位1(CDR1)と;配列番号9、配列番号27、又は配列番号29で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位2(CDR2)と;配列番号13又は配列番号15で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含むことを特徴とする、
    前記使用。
  12. (a)重鎖可変領域(VH)が、配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位1(CDR1)と;配列番号3、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、又は配列番号151で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位2(CDR2)と;配列番号5又は配列番号25で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含むことを特徴とする請求項11記載の使用。
  13. リシル-tRNA合成酵素のN末端のうち、配列番号117の配列を含むエピトープ(epitope)に特異的に結合する抗体又はその機能的断片を有効成分として含む組成物の有効量を、これを必要とする動物(ヒトを除く)に投与することを特徴とする免疫細胞の遊走関連疾患の治療方法であって、
    前記抗体又はその機能的断片は、細胞外膜に露出するリシル-tRNA合成酵素のN末端領域に特異的に結合し、
    前記抗体又はその機能的断片が、
    (a)(a-1)アミノ酸配列SYDMSを含む重鎖相補性決定部位1(CDR1)と;
    (a-2)アミノ酸配列X1IX2X3X4X5GX6X7YYADSVKGを含み、ここで、X1はA又はVであり、X2はS、D又はGであり、X3はY、P、S又はAであり、X4はD、Q、L又はYであり、X5はN、M、S、又はGであり、X6はN、R又はPであり、X7は、T、V、I又はSである重鎖相補性決定部位2(CDR2)と;
    (a-3)アミノ酸配列X8ALDFDYを含み、ここで、X8はM又はLである重鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む重鎖可変領域(VH)、及び
    (b)(b-1)アミノ酸配列TGSSSNIGSNYVTを含む軽鎖相補性決定部位1(CDR1);
    (b-2)アミノ酸配列X9NX10X11RPSを含み、ここで、X9はD、S又はRであり、X10はS又はNであり、X11はN又はQである軽鎖相補性決定部位2(CDR2)と;
    (b-3)アミノ酸配列X12SFSDELGAYVを含み、ここで、X12はA又はSである軽鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含む軽鎖可変領域(VL)
    を含み、
    前記(b)軽鎖可変領域(VL)が、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位1(CDR1)と;配列番号9、配列番号27、又は配列番号29で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位2(CDR2)と;配列番号13又は配列番号15で表示されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含むことを特徴とする、
    前記治療方法。
  14. (a)重鎖可変領域(VH)が、配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位1(CDR1)と;配列番号3、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、又は配列番号151で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位2(CDR2)と;配列番号5又は配列番号25で表示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定部位3(CDR3)とを含むことを特徴とする請求項13記載の治療方法。
JP2020515025A 2017-09-15 2018-09-17 リシル-tRNA合成酵素N末端に特異的に結合する抗体を有効成分として含む免疫細胞の遊走関連疾患の予防又は治療用薬学的組成物 Active JP7511241B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
KR10-2017-0118917 2017-09-15
KR20170118917 2017-09-15
PCT/KR2018/010903 WO2019054819A1 (ko) 2017-09-15 2018-09-17 라이실 tRNA 합성효소 N-말단에 특이적으로 결합하는 항체를 유효성분으로 포함하는 면역세포 이동 관련 질환의 예방 또는 치료용 약학적 조성물

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2020534273A JP2020534273A (ja) 2020-11-26
JPWO2019054819A5 JPWO2019054819A5 (ja) 2022-05-30
JP7511241B2 true JP7511241B2 (ja) 2024-07-05

Family

ID=

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012500256A (ja) 2008-08-18 2012-01-05 ソウル ナショナル ユニバーシティー インダストリー ファウンデーション ライシルtRNA合成酵素の細胞内水準を調節して癌転移又は癌細胞の移動を調節する方法
JP2017502672A (ja) 2013-12-30 2017-01-26 メディシナル バイオコンバージェンス リサーチ センター 抗krsモノクロナル抗体及びこれの用途
JP7345181B2 (ja) 2017-03-27 2023-09-15 ザイメディ カンパニー リミテッド 細胞外膜に露出されるリシル-tRNA合成酵素N-末端領域に特異的に結合する抗体

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012500256A (ja) 2008-08-18 2012-01-05 ソウル ナショナル ユニバーシティー インダストリー ファウンデーション ライシルtRNA合成酵素の細胞内水準を調節して癌転移又は癌細胞の移動を調節する方法
JP2017502672A (ja) 2013-12-30 2017-01-26 メディシナル バイオコンバージェンス リサーチ センター 抗krsモノクロナル抗体及びこれの用途
JP7345181B2 (ja) 2017-03-27 2023-09-15 ザイメディ カンパニー リミテッド 細胞外膜に露出されるリシル-tRNA合成酵素N-末端領域に特異的に結合する抗体

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
Nature Chemical Biology、2014年発行、Vol.10、No.1、pp.29-34

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7173618B2 (ja) アルファ-シヌクレインに対する抗体およびその用途
KR20150032075A (ko) Tie2와 결합을 유도하는 항 Ang2 항체를 포함하는 항암제
US11965038B2 (en) Pharmaceutical composition comprising antibody binding specifically to lysyl-tRNA synthetase N-terminus as effective ingredient for preventing or treating immune cell migration-related disease
JP2018513141A (ja) ヒトカドヘリン−17、ヒトカドヘリン−5、ヒトカドヘリン−6およびヒトカドヘリン−20のrgdモチーフに特異的に結合する薬剤
WO2015083978A1 (ko) 항 VEGF-C/항 Ang2 이중 특이 항체
KR20220044397A (ko) α-SYN/IGF1R에 대한 이중 특이 항체 및 그 용도
KR102106160B1 (ko) 항 Ang2 항체
JP7511241B2 (ja) リシル-tRNA合成酵素N末端に特異的に結合する抗体を有効成分として含む免疫細胞の遊走関連疾患の予防又は治療用薬学的組成物
KR102312922B1 (ko) Tie2와 결합을 유도하는 항 Ang2 항체
KR102118691B1 (ko) 항 Ang2 항체를 포함하는 혈관누수 차단제
JP7453694B2 (ja) 細胞外膜に露出されるリシル-tRNA合成酵素のN-末端領域に特異的に結合する抗体
JP2022547018A (ja) 抗cxcr2抗体およびその使用
JP7345181B2 (ja) 細胞外膜に露出されるリシル-tRNA合成酵素N-末端領域に特異的に結合する抗体
WO2018182284A1 (ko) 세포 외막에 노출되는 라이실-tRNA 합성효소 N-말단 영역에 특이적으로 결합하는 항체
KR102195957B1 (ko) Tie2와 결합을 유도하는 항 Ang2 항체
US20220041706A1 (en) Anti-fgf19 antibodies
WO2023274340A1 (en) Novel anti-masp-2 antibodies
EA046377B1 (ru) Антитела к fgf19