JP7501798B1 - 超硬合金およびそれを用いた切削工具 - Google Patents

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Abstract

複数の炭化タングステン粒子と、結合相と、を備える超硬合金であって、前記超硬合金は、前記炭化タングステン粒子および前記結合相を合計で80体積%以上含み、前記超硬合金は、前記結合相を0.1体積%以上20体積%以下含み、前記超硬合金は、硼素、アルミニウム、珪素、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ルテニウム、レニウム、オスミウム、イリジウムおよび白金からなる群より選ばれる少なくとも1つの第1元素を含み、前記超硬合金は、前記第1元素を合計で0.01原子%以上10原子%以下含み、前記結合相は、コバルトを50質量%以上含み、互いに隣接する前記炭化タングステン粒子同士の第1界面領域において、前記第1元素が偏析しており、前記第1界面領域において、前記第1元素は炭化タングステンのCサイトに存在する、超硬合金である。

Description

本開示は、超硬合金およびそれを用いた切削工具に関する。
従来から、炭化タングステン(WC)粒子と、コバルト等を主成分とする結合相とを備える超硬合金が、切削工具の素材に利用されている(特許文献1、2)。
特開2016-098393号公報 特開2021-110010号公報
本開示の超硬合金は、複数の炭化タングステン粒子と、結合相と、を備える超硬合金であって、
前記超硬合金は、前記炭化タングステン粒子および前記結合相を合計で80体積%以上含み、
前記超硬合金は、前記結合相を0.1体積%以上20体積%以下含み、
前記超硬合金は、硼素、アルミニウム、珪素、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ルテニウム、レニウム、オスミウム、イリジウムおよび白金からなる群より選ばれる少なくとも1つの第1元素を含み、
前記超硬合金は、前記第1元素を合計で0.01原子%以上10原子%以下含み、
前記結合相は、コバルトを50質量%以上含み、
互いに隣接する前記炭化タングステン粒子同士の第1界面領域において、前記第1元素が偏析しており、
前記第1界面領域において、前記第1元素は炭化タングステンのCサイトに存在する、超硬合金である。
図1は、実施形態1に係る超硬合金の模式的断面図である。 図2は、第1界面領域において、第1元素が偏析していることの確認方法を説明するための図であり、第1グラフを示す。 図3は、第1界面領域において、第1元素が炭化タングステンのCサイトに存在することの確認方法を説明するための図である。 図4は、超硬合金の断面の高角散乱環状暗視野(HAADF:high-angle annular dark field)像である。 図5は、図4の界面部分の拡大図である。 図6は、実施形態2に係る切削工具の模式図である。
[本開示が解決しようとする課題]
5G(第5世代移動通信システム)の拡大に伴い、半導体パッケージ基板の需要が増大している。半導体パッケージ基板には、小径ドリルを用いて穴開け加工が行われる。コスト低減の観点から、半導体パッケージ基板の高能率加工の要求が高まっている。
そこで、本開示は、特に半導体パッケージ基板の高能率加工用の切削工具の材料として用いられた場合においても、工具の長寿命化を可能とする超硬合金およびそれを備える切削工具を提供することを目的とする。
[本開示の効果]
本開示によれば、特に半導体パッケージ基板の高能率加工用の切削工具の材料として用いられた場合においても、工具の長寿命化を可能とする超硬合金およびそれを備える切削工具を提供することができる。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の超硬合金は、複数の炭化タングステン粒子と、結合相と、を備える超硬合金であって、
前記超硬合金は、前記炭化タングステン粒子および前記結合相を合計で80体積%以上含み、
前記超硬合金は、前記結合相を0.1体積%以上20体積%以下含み、
前記超硬合金は、硼素、アルミニウム、珪素、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ルテニウム、レニウム、オスミウム、イリジウムおよび白金からなる群より選ばれる少なくとも1つの第1元素を含み、
前記超硬合金は、前記第1元素を合計で0.01原子%以上10原子%以下含み、
前記結合相は、コバルトを50質量%以上含み、
互いに隣接する前記炭化タングステン粒子同士の第1界面領域において、前記第1元素が偏析しており、
前記第1界面領域において、前記第1元素は炭化タングステンのCサイトに存在する、超硬合金である。
本開示によれば、特に半導体パッケージ基板の高能率加工用の切削工具の材料として用いられた場合においても、工具の長寿命化を可能とする超硬合金およびそれを備える切削工具を提供することができる。
(2)上記(1)において、前記超硬合金の前記第1元素の合計含有率は、0.1原子%以上5原子%以下であってもよい。これによると、工具寿命がさらに向上する。
(3)上記(1)または(2)において、前記超硬合金は、前記結合相を18体積%以下含んでもよい。これによると、工具寿命がさらに向上する。
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記互いに隣接する前記炭化タングステン粒子を、第1炭化タングステン粒子および第2炭化タングステン粒子とした場合、前記第1炭化タングステン粒子と、前記第2炭化タングステン粒子とは、第1界面を形成し、
前記第1界面領域は、前記第1界面から前記第1炭化タングステン粒子側への距離が1.2nm以内の第1A領域と、前記第1界面から前記第2炭化タングステン粒子側への距離が1.2nm以内の第1B領域と、からなる。
(5)本開示の切削工具は、上記(1)から(4)のいずれかに記載の超硬合金からなる刃先を備える、切削工具である。
本開示の切削工具は、特に半導体パッケージ基板の高能率加工に用いられた場合においても、長い工具寿命を有することができる。
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の超硬合金および切削工具の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本開示の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、必ずしも実際の寸法関係を表すものではない。
本開示において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。
本開示において化合物などを化学式で表す場合、原子比を特に限定しないときは従来公知のあらゆる原子比を含むものとし、必ずしも化学量論的範囲のもののみに限定されるべきではない。
本開示において、数値範囲下限および上限として、それぞれ1つ以上の数値が記載されている場合は、下限に記載されている任意の1つの数値と、上限に記載されている任意の1つの数値との組み合わせも開示されているものとする。例えば、下限として、a1以上、b1以上、c1以上が記載され、上限としてa2以下、b2以下、c2以下が記載されている場合は、a1以上a2以下、a1以上b2以下、a1以上c2以下、b1以上a2以下、b1以上b2以下、b1以上c2以下、c1以上a2以下、c1以上b2以下、c1以上c2以下が開示されているものとする。
[実施形態1:超硬合金]
本開示の一実施形態(以下、「実施形態1」とも記す。)に係る超硬合金は、
複数の炭化タングステン粒子と、結合相と、を備える超硬合金であって、
該超硬合金は、該炭化タングステン粒子および該結合相を合計で80体積%以上含み、
該超硬合金は、該結合相を0.1体積%以上20体積%以下含み、
該超硬合金は、硼素、アルミニウム、珪素、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ルテニウム、レニウム、オスミウム、イリジウムおよび白金からなる群より選ばれる少なくとも1つの第1元素を含み、
該超硬合金は、該第1元素を合計で0.01原子%以上10原子%以下含み、
該結合相は、コバルトを50質量%以上含み、
互いに隣接する該炭化タングステン粒子同士の第1界面領域において、該第1元素が偏析しており、
該第1界面領域において、該第1元素は炭化タングステンのCサイトに存在する、超硬合金である。
実施形態1の超硬合金は、特に半導体パッケージ基板の高能率加工用の切削工具の材料として用いられた場合においても、工具の長寿命化を可能とする超硬合金およびそれを備える切削工具を提供することが可能となる。この理由は明らかではないが、以下の通りと推察される。
実施形態1の超硬合金は、複数の炭化タングステン粒子(以下、「WC粒子」とも記す。)と、結合相と、を備え、超硬合金のWC粒子および結合相の合計含有率は80体積%以上である。これによると、超硬合金は高い硬度および強度を有し、該超硬合金を用いた切削工具は、優れた耐摩耗性および耐折損性を有することができる。
実施形態1の超硬合金は、該結合相を0.1体積%以上20体積%以下含み、該結合相はコバルトを50質量%以上含む。これによると、超硬合金は高い硬度および強度を有し、該超硬合金を用いた切削工具は、優れた耐摩耗性および耐折損性を有することができる。
実施形態1の超硬合金は、硼素、アルミニウム、珪素、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ルテニウム、レニウム、オスミウム、イリジウムおよび白金からなる群より選ばれる少なくとも1つの第1元素を含み、該超硬合金は、該第1元素を合計で0.01原子%以上10原子%以下含む。これによると、超硬合金の耐熱性および剛性が向上する。
実施形態1の超硬合金では、互いに隣接する該炭化タングステン粒子同士の第1界面領域において、第1元素が偏析しており、かつ、第1界面領域において、第1元素は炭化タングステンのCサイトに存在する。これによると、超硬合金において、炭化タングステン粒子同士の界面強度が向上し、半導体パッケージ基板の高能率加工時に炭化タングステン粒子の脱落が抑制される。よって、該超硬合金を材料として用いた切削工具は、長い工具寿命を有することができる。更に、該切削工具は穴位置精度も向上する。
<超硬合金の組成>
図1に示されるように、実施形態1の超硬合金3は、複数の炭化タングステン粒子1(以下、「WC粒子」とも記す。)と、結合相2と、を備え、超硬合金3のWC粒子および結合相の合計含有率は80体積%以上である。該超硬合金のWC粒子および結合相の合計含有率の下限は、82体積%以上でもよく、84体積%以上でもよく、85体積%以上でもよく、86体積%以上でもよい。該超硬合金のWC粒子および結合相の合計含有率の上限は、100体積%以下でもよい。該超硬合金のWC粒子および結合相の合計含有率の上限は、製造上の観点から、99体積%以下でもよく、98体積%以下でもよい。該超硬合金は、超硬合金のWC粒子および結合相の合計含有率は80体積%以上100体積%以下でもよく、82体積%以上100体積%以下でもよく、84体積%以上100体積%以下でもよい。
実施形態1の超硬合金は、複数の炭化タングステン粒子と、結合相とからなることができる。本実施形態の超硬合金は、炭化タングステン粒子および結合相に加えて、他の相を含むことができる。他の相の組成としては、TiCNが挙げられる。
実施形態1の超硬合金は、炭化タングステン粒子と、結合相と、他の相とからなることができる。超硬合金の他の相の含有率は、本開示の効果を損なわない範囲において許容される。例えば、超硬合金の他の相の含有率は、0体積%以上20体積%以下でもよく、0体積%以上18体積%以下でもよく、0体積%以上16体積%以下でもよい。この場合、超硬合金のWC粒子および結合相の合計含有率は、80体積%以上100体積%未満でもよく、82体積%以上100体積%未満でもよく、84体積%以上100体積%未満でもよい。
実施形態1の超硬合金は、不純物を含むことができる。該不純物としては、例えば、カルシウム(Ca)、硫黄(S)が挙げられる。超硬合金の不純物の含有率は、本開示の効果を損なわない範囲において許容される。例えば、超硬合金の不純物の含有率は、0質量%以上0.1質量%未満が好ましい。超硬合金の不純物の含有率は、ICP発光分析(Inductively Coupled Plasma Emission Spectroscopy(測定装置:島津製作所「ICPS-8100」(商標))により測定される。
実施形態1の超硬合金の炭化タングステン粒子の含有率の下限は、60体積%以上でもよく、62体積%以上でもよく、64体積%以上でもよく、68体積%以上でもよい。該超硬合金の炭化タングステン粒子の含有率の上限は、99.9体積%以下でもよく、99.2体積%以下でもよく、99体積%以下でもよく、98体積%以下でもよく、96体積%以下でもよく、94体積%以下でもよい。該超硬合金の炭化タングステン粒子の含有率は、60体積%以上99.9体積%以下でもよく、60体積%以上99.2体積%以下でもよく、64体積%以上96体積%以下でもよく、68体積%以上94体積%以下でもよい。
実施形態1の超硬合金は、結合相を0.1体積%以上20体積%以下含む。該超硬合金の結合相の含有率の下限は、靱性向上の観点から、0.1体積%以上であり、1体積%以上でもよく、2体積%以上でもよく、3体積%以上でもよく、4体積%以上でもよく、8体積%以上でもよい。該超硬合金の結合相の含有率の上限は、硬度向上の観点から、20体積%以下であり、19体積%以下でもよく、18体積%以下でもよく、17体積%以下でもよく、16体積%以下でもよく、15体積%以下でもよい。該超硬合金の結合相の含有率は、0.1体積%以上18体積%以下でもよく、1体積%以上18体積%以下でもよく、3体積%以上17体積%以下でもよく、4体積%以上16体積%以下でもよく、8体積%以上15体積%以下でもよい。超硬合金の結合相の含有率が18体積%以下であると、超硬合金の硬度が更に向上し、耐摩耗性が更に向上するため、超硬合金を材料として用いた切削工具の工具寿命が更に向上する。本実施形態の超硬合金のロックウェル硬さ(HRC)は、たとえば、90以上95以下でもよく、91以上95以下でもよい。
超硬合金の炭化タングステン粒子の含有率(体積%)および超硬合金の結合相の含有率(体積%)の測定方法は以下の通りである。
(A1)超硬合金の任意の位置を切り出して断面を露出させる。該断面をクロスセクションポリッシャ(日本電子社製)により鏡面加工する。
(B1)超硬合金の鏡面加工面に対して、走査電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)を用いて分析を行い(装置:Carl Zeiss社製 Gemini450(商標))、超硬合金に含まれる元素を特定する。
(C1)超硬合金の鏡面加工面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影して反射電子像を得る。撮影画像の撮影領域は、超硬合金の断面の中央部、すなわち、超硬合金の表面近傍などバルク部分とは明らかに性状が異なる部分を含まない位置(撮像領域がすべて超硬合金のバルク部分となる位置)に設定する。観察倍率は5000倍である。測定条件は、加速電圧3kV、電流値2nA、ワーキングディスタンス(WD)5mmである。
(D1)上記(C1)の撮影領域に対して、SEM付帯のエネルギー分散型X線分析装置(SEM-EDX)を用いて分析を行い、該撮影領域における上記(B1)で特定された元素の分布を特定し、元素マッピング像を得る。
(E1)上記(C1)で得られた反射電子像をコンピュータに取り込み、画像解析ソフトウェア(OpenCV、SciPy)を用いて二値化処理を行う。二値化処理後の画像において、炭化タングステン粒子は白色で示され、結合相は灰色~黒色で示される。なお、二値化の閾値はコントラストにより変化するため、画像ごとに設定する。
(F1)上記(D1)で得られた元素マッピング像と上記(E1)で得られた二値化処理後の画像とを重ねることにより、該二値化処理後の画像上で炭化タングステン粒子および結合相のそれぞれの存在領域を特定する。具体的には、二値化処理後の画像において白色で示され、元素マッピング像においてタングステン(W)および炭素(C)の存在する領域が、炭化タングステン粒子の存在領域に該当する。二値化処理後の画像において灰色~黒色で示され、元素マッピング像においてコバルト(Co)の存在する領域が、結合相の存在領域に該当する。
(G1)上記二値化処理後の画像中に、24.9μm×18.8μmの矩形の1つの測定視野を設定する。上記画像解析ソフトウェアを用いて、該測定視野全体の面積を分母として炭化タングステン粒子および結合相のそれぞれの面積百分率を測定する。
(H1)上記(G1)の測定を、5つの互いに重複しない異なる測定視野において行う。本明細書において、5つの測定視野における炭化タングステン粒子の面積百分率の平均が、超硬合金の炭化タングステン粒子の含有率(体積%)に相当し、5つの測定視野における結合相の面積百分率の平均が、超硬合金の結合相の含有率(体積%)に相当する。
超硬合金がWC粒子および結合相に加えて、他の相を含む場合は、超硬合金の他の相の含有率は、超硬合金全体(100体積%)から、上記の手順で測定された炭化タングステン粒子の含有率(体積%)および結合相の含有率(体積%)を減ずることにより得ることができる。
出願人が測定した限りでは、同一の試料において測定する限りにおいては、超硬合金の断面の切り出し箇所、上記(C1)に記載される撮影領域、上記(G1)に記載される測定視野を任意に設定し、上記の手順に従い、超硬合金の炭化タングステン粒子の含有率および結合相の含有率の測定を複数回行っても、測定結果のばらつきは少なく、超硬合金の断面の切り出し箇所、撮影領域、測定視野を任意に設定しても恣意的にはならないことが確認された。
<炭化タングステン粒子>
実施形態1において、炭化タングステン粒子は、「純粋なWC粒子(不純物元素が一切含有されないWC、不純物元素の含有量が検出限界未満であるWCも含む。)」および「本開示の効果を損なわない限りにおいて、その内部に不純物元素が意図的あるいは不可避的に含有されるWC粒子」の少なくともいずれかを含む。炭化タングステン粒子の不純物の含有率(不純物を構成する元素が2種類以上の場合は、それらの合計濃度。)は、0.1質量%未満である。炭化タングステン粒子の不純物元素の含有率は、ICP発光分析により測定される。
実施形態1において、炭化タングステン粒子の平均粒径は特に制限されない。炭化タングステン粒子の平均粒径は、例えば、0.1μm以上3.5μm以下とすることができる。実施形態1の超硬合金は、炭化タングステン粒子の平均粒径によらず、長い工具寿命を有することができることが確認されている。
<結合相>
実施形態1において、結合相は、コバルトを50質量%以上含む。これによって、超硬合金に優れた靱性を付与することができる。結合相のコバルト含有率の下限は、52質量%以上でもよく、57質量%以上でもよく、60質量%以上でもよく、63質量%以上でもよい。結合相のコバルト含有率の上限は100質量%以下でもよく、100質量%未満でもよく、99質量%以下でもよく、98質量%以下でもよく、95質量%以下でもよく、90質量%以下でもよい。結合相のコバルト含有率は、50質量%以上100質量%未満でもよく、60質量%以上99質量%以下でもよく、63質量%以上98質量%以下でもよい。
結合相のコバルトの含有率の測定方法は、以下の通りである。上記の超硬合金の炭化タングステン粒子の含有率および結合相の含有率の測定方法の(A1)~(F1)と同様の方法で、二値化処理後の画像上で結合相の存在領域を特定する。結合相の存在領域に対して、SEM-EDXを用いて分析を行い、結合相のコバルト含有率を測定する。
出願人が測定した限りでは、同一の試料において測定する限りにおいては、超硬合金の断面の切り出し箇所、上記(C1)に記載される撮影領域を任意に設定して、上記の手順に従い、結合相のコバルトの含有率の測定を複数回行っても、測定結果のばらつきは少なく、超硬合金の断面の切り出し箇所および撮影領域を任意に設定しても恣意的にはならないことが確認された。
実施形態1において、結合相は、コバルトに加えて、硼素、アルミニウム、珪素、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ルテニウム、レニウム、オスミウム、イリジウムおよび白金からなる群より選ばれる少なくとも1つの第1元素を含むことができる。該結合相は、コバルトおよび第1元素に加えて、さらに、クロム(Cr)などを含むことができる。該結合相は、コバルトと、第1元素と、からなることができる。該結合相は、コバルトと、第1元素と、クロムと、からなることができる。該結合相は、コバルトと、第1元素と、クロムと、不可避不純物と、からなることができる。該不可避不純物としては、例えば、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、硫黄(S)などが挙げられる。
<第1元素>
実施形態1の超硬合金は、硼素、アルミニウム、珪素、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ルテニウム、レニウム、オスミウム、イリジウムおよび白金からなる群より選ばれる少なくとも1つの第1元素を含み、該超硬合金は、第1元素を合計で0.01原子%以上10原子%以下含む。超硬合金の第1元素の含有率の下限は、工具寿命向上の観点から、0.01原子%以上であり、0.1原子%以上でもよく、0.9原子%以上でもよく、2原子%以上でもよく、2.5原子%以上でもよく、5原子%以上でもよく、5.2原子%以上でもよい。超硬合金の第1元素の含有率の上限は、強度維持の観点から、10原子%以下であり、9原子%以下でもよく、8.4原子%以下でもよく、8原子%以下でもよく、7.8原子%以下でもよく、7原子%以下でもよく、5原子%以下でもよく、4.5原子%以下でもよい。超硬合金の第1元素の含有率は、0.1原子%以上5原子%以下でもよく、2原子%以上4.5原子%以下でもよい。
超硬合金の第1元素の原子数基準の含有率は、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析(測定装置:島津製作所製「ICPS-8100」(商標))により測定される。
実施形態1の超硬合金では、互いに隣接する該炭化タングステン粒子同士の第1界面領域において、第1元素が偏析しており、かつ、第1界面領域において、第1元素は炭化タングステンのCサイトに存在する。これによると、炭化タングステン粒子同士の界面強度、および、炭化タングステン粒子と結合相との界面強度が向上し、超硬合金は優れた耐摩耗性および耐折損性を有することができる。
本開示において、超硬合金の互いに隣接する炭化タングステン粒子同士の第1界面領域において、第1元素が偏析していることの確認方法を図2を用いて説明する。
超硬合金をアルゴンイオンスライサー(日本電子社製の「クライオイオンスライサーIB-09060BCIS」(商標))を用いて、加速電圧6kV、仕上げ2kVの条件で、30~100nmの厚みに薄片化して測定用試料を作製する。次いで、該測定用試料をTEM(Transmission Electron Microscopy)(日本電子社製の「JEM-ARM300F2」(商標))を用いて、加速電圧200Vの条件で、20万倍で観察することにより、第1画像を得る(図示なし)。
第1画像において、炭化タングステン粒子は白色領域として観察され、結合相は黒色領域として観察され、界面は黒色領域として観察される。第1画像において、炭化タングステン粒子同士の界面を任意に選択する。本開示において、界面を形成する互いに隣接する炭化タングステン粒子を、第1炭化タングステン粒子および第2炭化タングステン粒子とも記す。
次に、選択された界面が、画像の中央付近を通るように位置決めを行い、視野サイズが5nm×5nmとなるように観察倍率を調整して観察することにより、第2画像を得る(図示なし)。第2画像において、界面の伸長する伸長方向を確認する。該伸長方向に垂直、かつ、第1炭化タングステン粒子から第2炭化タングステン粒子に向かう方向にライン分析を実施し、コバルト、タングステンおよび第1元素の分布を測定したグラフ(以下、第1グラフとも記す。)を得る。超硬合金が2種類以上の第1元素を含む場合は、各元素の分布を測定する。ここで、界面の伸長方向に対して垂直な方向とは、伸長方向の接線に対して90°±5°の角度で交差する直線に沿う方向を意味する。第2画像取得時の測定条件は、加速電圧200kV、カメラ長10cm、画素数128×128pixel、デュエルタイム0.02~3s/pixelである。
図2は、第1グラフの一例である。図2において、横軸(X軸)は、測定開始点からの距離(nm)を示し、縦軸(Y軸)はNET強度(単位なし)を示す。図2に示される超硬合金では、第1元素はルテニウム(Ru)である。
第1グラフにおいて、コバルトのピーク位置を特定する。本開示において、コバルトのピーク位置を第1界面と記す。第1界面は、互いに隣接する第1炭化タングステン粒子と、第2炭化タングステン粒子とにより形成される。図2の第1グラフにおいて、第1界面の位置は、X軸4.02nmである。
第1グラフにおいて、第1界面から第1炭化タングステン粒子側への距離が1.2nm以内の第1A領域と、第1界面から第2炭化タングステン粒子側への距離が1.2nm以内の第1B領域とを特定する。本開示において、第1A領域と第1B領域とからなる領域が第1界面領域である。図2の第1グラフにおいて、第1界面領域の位置は、X軸2.82~5.22nmである。
第1グラフにおいて、第1界面から第1炭化タングステン粒子側への距離が1.50nm以上3.50nm以下の第2A領域と、第1界面から第2炭化タングステン粒子側への距離が1.50nm以上3.50nm以下の第2B領域とを特定する。図2の第1グラフにおいて、第2A領域の位置は、X軸0.52~2.52nmであり、第2B領域の位置は、X軸5.52~7.52nmである。
第1グラフに基づき、第1元素の第2A領域と第2B領域とからなるベースライン領域でのNET強度の平均Bを算出する。第1グラフにおいて、第1元素の第1界面領域におけるNET強度の最大値Aを測定する。平均Bに対する最大値Aの割合A/Bが3以上の場合、超硬合金の互いに隣接する炭化タングステン粒子同士の第1界面領域において、第1元素が偏析していることが確認される。図2の第1グラフでは、ルテニウム(第1元素)の第2A領域と第2B領域とからなるベースライン領域でのNET強度の平均Bは13.5であり、ルテニウム(第1元素)の第1界面領域におけるNET強度の最大値Aは125.5である。図2に示される超硬合金では、A/Bが9.3であるため、超硬合金の互いに隣接する炭化タングステン粒子同士の第1界面領域において、第1元素が偏析していることが確認される。
超硬合金において、互いに重複しない5視野の第1画像を任意に取得し、それぞれの第1画像に基づき上述の分析を繰り返し実施し、4視野以上において、第1界面領域に第1元素の偏析が確認された場合、該超硬合金の互いに隣接する炭化タングステン粒子同士の第1界面領域において、第1元素が偏析していると判断される。
本開示において、第1界面領域において、第1元素は炭化タングステンのCサイトに存在することの確認方法を、図3を用いて説明する。
第1グラフを規格化して第2グラフを得る。規格化の方法は、第1グラフ(図2参照)に基づき、元素毎に最大値を1、最小値を0として、各元素の縦軸(Y軸)の値を拡大する。図2の第1グラフを規格化した第2グラフを図3に示す。図3において、横軸(X軸)は、測定開始点からの距離(nm)を示し、縦軸(Y軸)は規格化後の値(単位なし)を示す。
上記の規格化後の第2グラフの少なくとも一部において、タングステンのピークがX軸に沿って周期的に存在する。周期が明確に確認される部分に基づき、タングステンのピークの平均周期を求める。該平均周期に基づき、第2グラフにタングステンのピーク位置P3を記入する。本開示において、ピーク位置P3はWサイトの位置に該当する。本開示において、隣り合うピーク位置P3の間にCサイトが存在する。
第2グラフの第1界面領域内において、第1元素のピーク位置P1を特定する。第2グラフの第1界面領域の少なくとも一部において、第1元素のピーク位置P1と、タングステンのピーク位置P3とが異なる場合、第1界面領域において、第1元素は炭化タングステンのCサイトに存在することが確認される。
図3は、第2グラフに、第1元素(Ru)のピーク位置P1およびタングステンのピーク位置P3を記入した図である。図3では、第1元素のピーク位置P1と、タングステンのピーク位置P3とが異なる。よって、図3では、第1界面領域において、第1元素(Ru)は炭化タングステンのCサイトに存在することが確認される。
出願人が測定した限りでは、同一の試料において測定する限りにおいては、超硬合金の断面の切り出し箇所を任意に設定して、該断面上で第1画像を任意に取得し、上記の手順に従い、第1界面領域における第1元素の偏析の有無、および、第1界面領域における第1元素の位置の確認を、ライン分析の領域を変更して複数回行っても、測定結果のばらつきは少なく、超硬合金の断面の切り出し箇所、第1画像およびライン分析の領域を任意に設定しても恣意的にはならないことが確認された。よって、超硬合金に対して、上記の確認方法を行い、第1界面領域において第1元素が偏析していること、ならびに、第1界面領域において第1元素は炭化タングステンのCサイトに存在することが確認される限り、該超硬合金の炭化タングステン粒子同士の界面強度が向上していると推察される。
炭化タングステンのCサイトの位置について、超硬合金の断面のHAADF(high-angle annular dark field)像を用いて説明する。炭化タングステン粒子および結合相としてコバルトを含む超硬合金の断面のHAADF像を図4および図5に示す。図5は、図4の炭化タングステン粒子(WC)と結合相(Co)との界面部分の拡大図である。図5の右側(炭化タングステン粒子側)では、タングステン(W)の縦方向の列の間に炭素(C)の列が確認される。該炭素の位置がCサイトである。
本開示の超硬合金において、第1元素は、上記の他の相やコバルト中にも存在することができる。
<超硬合金の製造方法>
本実施形態の超硬合金は、原料粉末の準備工程、混合工程、成型工程、焼結工程、および冷却工程を前記の順で行うことにより製造することができる。以下、各工程について説明する。
<準備工程>
準備工程は、超硬合金素材を構成する材料の原料粉末を準備する工程である。原料粉末としては、炭化タングステン粉末(以下、「WC粉末」とも記す)、コバルト(Co)粉末、および第1金属元素含有粉末とが挙げられる。第1金属元素含有粉末としては、硼素(B)粉末、アルミニウム(Al)粉末、珪素(Si)粉末、鉄(Fe)粉末、ニッケル(Ni)粉末、ゲルマニウム(Ge)粉末、ルテニウム(Ru)粉末、レニウム(Re)粉末、オスミウム(Os)粉末、イリジウム(Ir)粉末および白金(Ot)粉末、第1金属元素とコバルトとの合金粉末が挙げられる。これらの原料粉末は、市販のものを用いることができる。これらの原料粉末の平均粒径は特に制限されず、例えば、0.1~3.0μmとすることができる。原料粉末の平均粒径とは、FSSS(Fisher Sub-Sieve Sizer)法により測定される平均粒径を意味する。該平均粒径は、Fisher Scientific社製の「Sub-Sieve Sizer モデル95」(商標)を用いて測定される。上記WC粉末の粒径の分布は、マイクロトラック社製の粒度分布測定装置(商品名:MT3300EX)を用いて測定される。
<混合工程>
混合工程は、準備工程で準備した各原料粉末を所定の割合で混合する工程である。混合工程により、各原料粉末が混合された混合粉末が得られる。各原料粉末の混合割合は、狙いとする超硬合金の組成に応じて適宜調整する。
各原料粉末の混合は、ボールミルで行う。混合条件は、例えば、メディア径φ6mm、回転数120rpm、充填率40%、混合時間8時間とすることができる。
混合工程の後、必要に応じて混合粉末を造粒してもよい。混合粉末を造粒することで、後述する成形工程の際にダイまたは金型へ混合粉末を充填し易い。造粒には、公知の造粒方法が適用でき、例えば、スプレードライヤー等の市販の造粒機を用いることができる。
<成形工程>
成形工程は、混合工程で得られた混合粉末を切削工具用の形状(例えば、丸棒形状)に成形して、成形体を得る工程である。成形工程における成形方法および成形条件は、一般的な方法および条件を採用すればよく、特に制限されない。
<焼結工程>
焼結工程は、成形工程を経て得られた成形体に対して、焼結と加圧を同時に行うことのできる焼結HIP(Hot Isostatic Pressing)(シンターヒップ)処理により焼結して、超硬合金中間体を得る工程である。
焼結条件は、例えば、温度1320~1340℃、圧力7MPa、焼結時間240分とすることができる。焼結時の雰囲気はArガスを用いることができる。
<冷却工程>
冷却工程は、焼結工程後の超硬合金中間体を冷却する工程である。例えばArガス中で上記超硬合金中間体を圧力100~400MPaGの条件下で急冷して、超硬合金を得ることができる。
<本実施形態の超硬合金の製造方法の特徴>
本実施形態における混合条件は、一般的な超硬合金の原料の混合条件とメディア径および混合時間が異なる。本実施形態における焼結条件は、一般的な超硬合金の焼結条件と圧力および焼結時間が異なる。これにより、均質かつ原子の拡散を促進でき、互いに隣接する炭化タングステン粒子同士の第1界面領域において、第1元素が偏析しており、第1界面領域において、第1元素は炭化タングステンのCサイトに存在する、本開示の超硬合金を得ることができると推察される。このような混合条件および焼結条件により、本開示の超硬合金を実現できることは、本発明者らが鋭意検討の結果、新たに見いだしたものである。なお、本実施形態で用いられる混合条件および焼結条件は、生産効率が低下するため、当業者が採用するものではなかった。
[実施形態2:切削工具]
本実施形態の切削工具は、実施形態1の超硬合金からなる刃先を含む。本開示において、刃先とは、切削に関与する部分を意味する。より具体的には、刃先とは、刃先稜線と、該刃先稜線から超硬合金側への距離が2mmである仮想の面と、に囲まれる領域を意味する。
切削工具としては、例えば、切削バイト、ドリル、エンドミル、フライス加工用刃先交換型切削チップ、旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切り工具、リーマまたはタップ等を例示できる。特に、図6に示されるように、本実施形態の切削工具10は、プリント回路基板加工用の小径ドリルの場合に、優れた効果を発揮することができる。図7に示される切削工具10の刃先11は、実施形態1の超硬合金からなる。
本実施形態の超硬合金は、これらの工具の全体を構成していてもよいし、一部を構成するものであってもよい。ここで「一部を構成する」とは、任意の基材の所定位置に本実施形態の超硬合金をロウ付けして刃先部とする態様等を示している。
本実施形態の切削工具は、超硬合金からなる基材の表面の少なくとも一部を被覆する硬質膜を更に備えてもよい。硬質膜としては、例えば、ダイヤモンドライクカーボンやダイヤモンドを用いることができる。
本実施形態の切削工具は、実施形態1の超硬合金を所望の形状に成形して得ることができる。
本実施の形態を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本実施の形態が限定されるものではない。
[超硬合金の作製]
以下の手順で各試料の超硬合金を作製した。
WC粉末(平均粒径0.3μm)、Co粉末(平均粒径1.0μm)、Re粉末(平均粒径1.0μm)、B粉末(平均粒径1.0μm)、Al粉末(平均粒径1.0μm)、Si粉末(平均粒径1.0μm)、Fe粉末(平均粒径1.0μm)、Ni粉末(平均粒径1.0μm)、Ge粉末(平均粒径1.0μm)、Ru粉末(平均粒径1.0μm)、Os粉末(平均粒径1.0μm)、Ir粉末(平均粒径1.0μm)、Pt粉末(平均粒径1.0μm)を、表1の「原料粉末」欄に記載の割合で準備し、ボールミルで混合して混合粉末を得た。例えば、試料1では、WC粉末とCo粉末とRe粉末とを質量比で91.9:7.8:0.3の割合で準備し、ボールミルで混合して混合粉末を得た。混合条件は表1の「混合条件」欄に記載の通りである。例えば、試料1では、ボールミルを用いて、メディア径φ6mm、回転数120rpm、充填率40%、混合時間8時間とした。
次に、混合粉末をプレス成形することにより、丸棒形状の成形体を作製した。次に、成形体を、Arガス中で表1の「焼結条件」欄に記載の温度、時間および圧力で焼結し、超硬合金中間体を得た。次に、超硬合金中間体をArガス中で圧力200MPaGの条件下で急冷して、各試料の超硬合金を得た。
Figure 0007501798000001
[切削工具の作製]
得られた超硬合金からなる丸棒を加工し、刃径φ0.2mmのプリント回路基板加工用ドリル(PCB(Printed Circuit Board)ドリル)を作製した。
[超硬合金の評価]
<超硬合金の炭化タングステン粒子の含有率(体積%)および超硬合金の結合相の含有率(体積%)>
各試料の超硬合金の炭化タングステン粒子の含有率(体積%)および超硬合金の結合相の含有率(体積%)を測定した。具体的な測定方法は実施形態1に記載の通りである。結果を表2の「超硬合金」の「WC粒子含有率」および「結合相含有率」欄に示す。更に、超硬合金の炭化タングステン粒子の含有率および結合相の含有率の合計を表2の「超硬合金」の「WC粒子+結合相含有率」欄に示す。
<結合相中のコバルト含有率>
各試料の超硬合金において、結合相中のコバルト含有率を測定した。具体的な測定方法は実施形態1に記載の通りである。結果を表2の「超硬合金」の「結合相中のCo含有率」欄に示す。
<超硬合金の第1元素の合計含有率>
各試料の超硬合金において、超硬合金に含まれる第1元素の種類および超硬合金の第1元素の合計含有率(原子%)を測定した。具体的な測定方法は実施形態1に記載の通りである。結果を表2の「超硬合金」の「第1元素」の「種類」および「含有率」欄に示す。第1元素の種類が1種類の場合は、「第1元素」の「含有率」は、1種類の第1元素の含有率を意味する。第1元素の種類が2種類の場合は、「第1元素」の「含有率」は、2種類の第1元素の合計含有率を意味する。
<第1界面領域における第1元素の偏析の有無および第1元素の存在サイト>
各試料の超硬合金において、互いに隣接する炭化タングステン粒子同士の第1界面領域における第1元素の偏析の有無および第1元素の存在サイトを確認した。具体的な確認方法は実施形態1に記載の通りである。結果を表2の「超硬合金」の「第1界面領域」の「第1元素の偏析」および「第1元素の存在サイト」欄に示す。
<ロックウェル硬さ>
各試料の超硬合金のロックウェル硬さ(HRC)を「JIS Z 2245:2016 ロックウェル硬さ試験-試験方法」に準拠して測定した。測定条件は、室温(23℃±5℃)にて、試験力60N、保持時間4秒である。結果を表2の「ロックウェル硬さ」欄に示す。
[切削工具の評価]
<切削試験>
各試料のPCBドリルを用いて、市販の半導体パッケージ用のプリント回路基板の穴開け加工を行い、穴位置精度を評価した。穴開け加工の条件は、回転数160krpm、送り速度3.2m/min、引抜速度25m/minとした。穴位置精度(ave+3σ(μm))が50μmを超えた時点での穴開けの回数(hit数)を測定した。結果を表2の「切削試験」欄に示す。表2の値は、実際の穴開け回数を十の位で切り捨てた値である。例えば、実際の穴開け回数が4650回の場合は、「切削試験」欄には4600回と記す。穴開け回数が多いほど、切削工具の穴位置精度が優れ、工具寿命が長いことを示す。
Figure 0007501798000002
<考察>
試料1~試料20の超硬合金および切削工具は実施例に該当する。試料1-1~試料1-9の超硬合金および切削工具は比較例に該当する。試料1~試料20(実施例)の切削工具は、試試料1-1~試料1-9(比較例)の切削工具よりも工具寿命が長いことが確認された。これは、試料1~試料19の超硬合金が、優れた耐摩耗性および耐折損性を有するためと推察される。
以上のように本開示の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせたり、様々に変形することも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 炭化タングステン粒子、2 結合相、3 超硬合金、10 切削工具、11 刃先。

Claims (5)

  1. 複数の炭化タングステン粒子と、結合相と、を備える超硬合金であって、
    前記超硬合金は、前記炭化タングステン粒子および前記結合相を合計で80体積%以上含み、
    前記超硬合金は、前記結合相を0.1体積%以上20体積%以下含み、
    前記超硬合金は、硼素、アルミニウム、珪素、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ルテニウム、レニウム、オスミウム、イリジウムおよび白金からなる群より選ばれる少なくとも1つの第1元素を含み、
    前記超硬合金は、前記第1元素を合計で0.01原子%以上10原子%以下含み、
    前記結合相は、コバルトを50質量%以上含み、
    互いに隣接する前記炭化タングステン粒子同士の第1界面領域において、前記第1元素が偏析しており、
    前記第1界面領域において、前記第1元素は炭化タングステンのCサイトに存在する、超硬合金。
  2. 前記超硬合金の前記第1元素の合計含有率は、0.1原子%以上5原子%以下である、請求項1に記載の超硬合金。
  3. 前記超硬合金は、前記結合相を18体積%以下含む、請求項1または請求項2に記載の超硬合金。
  4. 前記互いに隣接する前記炭化タングステン粒子を、第1炭化タングステン粒子および第2炭化タングステン粒子とした場合、前記第1炭化タングステン粒子と、前記第2炭化タングステン粒子とは、第1界面を形成し、
    前記第1界面領域は、前記第1界面から前記第1炭化タングステン粒子側への距離が1.2nm以内の第1A領域と、前記第1界面から前記第2炭化タングステン粒子側への距離が1.2nm以内の第1B領域と、からなる、請求項1または請求項2に記載の超硬合金。
  5. 請求項1または請求項2に記載の超硬合金からなる刃先を備える、切削工具。
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