JP2021085052A - 超硬合金及びそれを基材として含む切削工具 - Google Patents

超硬合金及びそれを基材として含む切削工具 Download PDF

Info

Publication number
JP2021085052A
JP2021085052A JP2019213274A JP2019213274A JP2021085052A JP 2021085052 A JP2021085052 A JP 2021085052A JP 2019213274 A JP2019213274 A JP 2019213274A JP 2019213274 A JP2019213274 A JP 2019213274A JP 2021085052 A JP2021085052 A JP 2021085052A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
region
cemented carbide
phase
particles
hard phase
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2019213274A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7392423B2 (ja
Inventor
聡 小野
Satoshi Ono
聡 小野
裕明 後藤
Hiroaki Goto
裕明 後藤
津田 圭一
Keiichi Tsuda
圭一 津田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Electric Industries Ltd filed Critical Sumitomo Electric Industries Ltd
Priority to JP2019213274A priority Critical patent/JP7392423B2/ja
Publication of JP2021085052A publication Critical patent/JP2021085052A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7392423B2 publication Critical patent/JP7392423B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
  • Powder Metallurgy (AREA)

Abstract

【課題】Coの含有割合が低くても靱性及び硬度に優れる超硬合金、並びに、それを基材として含む切削工具を提供すること。【解決手段】第一硬質相と結合相とを含む超硬合金であって、上記第一硬質相は、炭化タングステン粒子からなり、上記結合相は、構成元素としてCo及びNiを含み、上記超硬合金の任意の表面又は任意の断面における、上記炭化タングステン粒子と上記結合相との界面と、上記界面から上記結合相の側に向かって5nm離れた地点を示す仮想線Aとに挟まれた領域を領域R1とし、上記仮想線Aと、上記界面から上記結合相の側に向かって20nm離れた地点を示す仮想線Bとに挟まれた領域を領域R2とし、上記結合相における上記領域R1及び上記領域R2以外の領域を領域R3とした場合、上記領域R1におけるCoの最大原子濃度C5at%と、上記領域R3におけるCoの最大原子濃度C20at%との比C5/C20は、1を超える超硬合金。【選択図】なし

Description

本開示は、超硬合金及びそれを基材として含む切削工具に関する。
従来から、炭化タングステン(WC)を主成分とする硬質相と、鉄族元素(例えば、Fe、Co、Ni)を主成分とする結合相とを備える超硬合金が、切削工具の素材に利用されている。切削工具に求められる特性には、強度(例えば、抗折力)、靱性(例えば、破壊靭性)、硬度(例えば、ビッカース硬さ)、耐塑性変形性、耐摩耗性等がある。
特開2012−077352号公報
従来から、結合相にCoを多く含む超硬合金が強度、靱性に優れていることが知られている。一方で、Coは希少資源であるため、Coを原料に用いない超硬合金が検討されている。例えば、特開2012−077352号公報(特許文献1)には、炭化タングステン(WC)を含有する金属元素セラミックス粒子を分散させ、結合相が鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、及び不可避不純物から組成される超硬合金であって、前記結合相中のBの含有量が0.07質量%以上かつ0.28質量%以下であることを特徴とする超硬合金が開示されている。
近年、切削加工において被削材の難削化が進み、加工形状もより複雑化する等、切削工具の使用条件は過酷になっている。このため、切削工具の基材として用いられる超硬合金に対しても種々の特性の向上が求められており、とりわけ高い靱性及び高い硬度を備える超硬合金が望まれている。
また、上述したようにCoは希少資源であるため、Coの含有割合が抑えられた超硬合金が望まれている。
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、Coの含有割合が低くても靱性及び硬度に優れる超硬合金、並びに、それを基材として含む切削工具を提供することを目的とする。
本開示に係る超硬合金は、
第一硬質相と結合相とを含む超硬合金であって、
上記第一硬質相は、炭化タングステン粒子からなり、
上記結合相は、構成元素としてCo及びNiを含み、
上記超硬合金の任意の表面又は任意の断面における、
上記炭化タングステン粒子と上記結合相との界面と、上記界面から上記結合相の側に向かって5nm離れた地点を示す仮想線Aとに挟まれた領域を領域R1とし、
上記仮想線Aと、上記界面から上記結合相の側に向かって20nm離れた地点を示す仮想線Bとに挟まれた領域を領域R2とし、
上記結合相における上記領域R1及び上記領域R2以外の領域を領域R3とした場合、
上記領域R1におけるCoの最大原子濃度Cat%と、上記領域R3におけるCoの最大原子濃度C20at%との比C/C20は、1を超える。
本開示に係る切削工具は、上記本開示に係る超硬合金を基材として含む。
本開示によれば、Coの含有割合が低くても靱性及び硬度に優れる超硬合金、並びに、それを基材として含む切削工具を提供することが可能になる。
図1は、本実施形態に係る超硬合金の構造を示す模式断面図である。 図2は、本実施形態に係る超硬合金の構造を示す他の模式断面図である。 図3は、本実施形態に係る超硬合金の断面におけるSEM画像を示す写真である。 図4は、図3における領域4の拡大写真である。 図5は、実施例における切削試験1の結果と切削試験2の結果との相関関係を示すグラフである。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の一態様の内容を列記して説明する。
[1]本開示の一態様に係る超硬合金は、
第一硬質相と結合相とを含む超硬合金であって、
上記第一硬質相は、炭化タングステン粒子からなり、
上記結合相は、構成元素としてCo及びNiを含み、
上記超硬合金の任意の表面又は任意の断面における、
上記炭化タングステン粒子と上記結合相との界面と、上記界面から上記結合相の側に向かって5nm離れた地点を示す仮想線Aとに挟まれた領域を領域R1とし、
上記仮想線Aと、上記界面から上記結合相の側に向かって20nm離れた地点を示す仮想線Bとに挟まれた領域を領域R2とし、
上記結合相における上記領域R1及び上記領域R2以外の領域を領域R3とした場合、
上記領域R1におけるCoの最大原子濃度Cat%と、上記領域R3におけるCoの最大原子濃度C20at%との比C/C20は、1を超える。
上記超硬合金は、上述のような構成を備えることによって、炭化タングステン粒子近傍の結合相(すなわち、領域R1)にCoが局在する。その結果、上記超硬合金は、炭化タングステン粒子と結合相との密着力が向上し、Coの含有割合が低くてもCoを結合相とする超硬合金と同等の靱性及び硬度を有する超硬合金となる。
[2]上記比C/C20は、1.1以上2以下である。このように規定することで、更に靱性及び硬度に優れる超硬合金となる。
[3]上記超硬合金におけるCoの重量比率CCowt%と、上記超硬合金における上記結合相の重量比率Cbdrwt%との比CCo/Cbdrは、0.1以上0.5以下である。このように規定することで、Coの含有割合がより低い超硬合金となる。
[4]上記超硬合金は、タングステンを除く周期表4族元素、5族元素及び6族元素からなる群より選択される一種以上の金属元素と、C,N,O及びBからなる群より選択される一種以上の元素と、を含む化合物からなる第二硬質相を更に含む。このように規定することによって、上記超硬合金を切削工具の材料として用いた場合、切削工具としての耐摩耗性及び耐欠損性のバランスを確保できる。
[5]本開示の一態様に係る切削工具は、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の超硬合金を基材として含む。上記切削工具は、靱性及び硬度に優れる超硬合金を基材に備えることで、耐摩耗性及び耐欠損性のバランスを確保できる。
[6]上記切削工具は、上記基材上に設けられている被膜を更に備える。基材の表面に被膜を備えることで、切削工具の耐摩耗性等を改善できる。よって、上記切削工具は、更に厳しい切削条件への対応及び、更なる長寿命化等を実現できる。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の一実施形態(以下「本実施形態」と記す。)について説明する。ただし、本実施形態はこれに限定されるものではない。本明細書において「X〜Y」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちX以上Y以下)を意味し、Xにおいて単位の記載がなく、Yにおいてのみ単位が記載されている場合、Xの単位とYの単位とは同じである。さらに、本明細書において、例えば「TiC」等のように、構成元素の組成比が限定されていない化学式によって化合物が表された場合には、その化学式は従来公知のあらゆる組成比(元素比)を含むものとする。このとき上記化学式は、化学量論組成のみならず、非化学量論組成も含むものとする。例えば「TiC」の化学式には、化学量論組成「Ti」のみならず、例えば「Ti0.8」のような非化学量論組成も含まれる。このことは、「TiC」以外の化合物の記載についても同様である。本明細書において、元素記号又は元素名が記載されている場合は、その元素の単体を意味している場合もあるし、化合物中の構成元素を意味している場合もある。
≪超硬合金≫
本実施形態の超硬合金は、
第一硬質相と結合相とを含む超硬合金であって、
上記第一硬質相は、炭化タングステン粒子からなり、
上記結合相は、構成元素としてCo及びNiを含み、
上記超硬合金の任意の表面又は任意の断面における、
上記炭化タングステン粒子と上記結合相との界面と、上記界面から上記結合相の側に向かって5nm離れた地点を示す仮想線Aとに挟まれた領域を領域R1とし、
上記仮想線Aと、上記界面から上記結合相の側に向かって20nm離れた地点を示す仮想線Bとに挟まれた領域を領域R2とし、
上記結合相における上記領域R1及び上記領域R2以外の領域を領域R3とした場合、
上記領域R1におけるCoの最大原子濃度Cat%と、上記領域R3におけるCoの最大原子濃度C20at%との比C/C20は、1を超える。
<第一硬質相>
第一硬質相は、炭化タングステン(以下、「WC」と表記する場合がある。)粒子からなる。ここで、WCには、「純粋なWC(不純物元素が一切含有されないWC、不純物元素が検出限界未満となるWCも含む)」だけではなく、「本開示の効果を損なわない限りにおいて、その内部に他の不純物元素が意図的又は不可避的に含有されるWC」も含まれる。WCに含有される不純物の濃度(不純物を構成する元素が二種類以上の場合は、それらの合計濃度)は、上記WC及び上記不純物の総量に対して5質量%以下である。
(WC粒子の平均粒径)
超硬合金中における上記WC粒子の平均粒径は、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.5μm以上3μm以下であることがより好ましい。超硬合金中における上記WC粒子の平均粒径は、0.1μm以上であることで上記超硬合金の靱性が高くなる傾向がある。そのため、上記超硬合金を基材として含む切削工具は、機械的及び熱的な衝撃によるチッピング又は欠損を抑制できる。また、上記切削工具は耐亀裂伝播性が向上することから、亀裂の伝播が抑制され、チッピング又は欠損を抑制できる。一方、上記平均粒径は、10μm以下であることで上記超硬合金の硬度が高くなる傾向がある。そのため、上記超硬合金を基材として含む切削工具は、切削時の変形が抑制され、摩耗又は欠損を抑制できる。
ここで超硬合金中における上記WC粒子の平均粒径は、超硬合金の任意の表面又は任意の断面を鏡面加工し、その加工面を顕微鏡で撮影し、その撮影画像を画像解析することによって求められる。具体的には撮影画像から、個々のWC粒子の粒径(Heywood径:等面積円相当径)を算出し、その平均値をWC粒子の平均粒径とする。測定するWC粒子の数は、少なくとも100個以上とし、更に200個以上とすることが好ましい。また、同一の超硬合金において、複数の視野で上記画像解析を行い、その平均値をWC粒子の平均粒径とすることが好ましい。画像解析を行う視野の数は、5視野以上であることが好ましく、7視野以上であることがより好ましく、10視野以上であることが更に好ましく、20視野以上であることが更により好ましい。1つの視野は、例えば縦20μm×幅20μmの正方形であってもよい。
鏡面加工の方法としては、例えば、ダイヤモンドペーストで研磨する方法、集束イオンビーム装置(FIB装置)を用いる方法、クロスセクションポリッシャー装置(CP装置)を用いる方法、及びこれらを組み合わせる方法等が挙げられる。加工面を金属顕微鏡で撮影する場合には、加工面を村上試薬でエッチングすることが好ましい。顕微鏡の種類としては、金属顕微鏡、走査型透過電子顕微鏡(STEM)等が挙げられる。
(第一硬質相の面積比率)
本実施形態に係る超硬合金は、上記超硬合金の任意の表面又は任意の断面に対する、上記第一硬質相の面積比率が70%以上95%以下であることが好ましい。この場合、上記第一硬質相の面積比率及び後述する結合相の面積比率の和は、100%である(超硬合金が第二硬質相を含む場合は、後述する。)。上記第一硬質相の面積比率は、例えば、上述したWC粒子の平均粒径を求めるときと同様に、超硬合金の任意の加工面を顕微鏡で撮影し、その撮影画像を画像解析することによって求められる。すなわち、所定の視野中のWC粒子を特定し、画像処理により特定されたWC粒子の面積の和を算出し、これを視野の面積で割ることにより算出することが可能である。また、同一の超硬合金において、複数の視野(例えば、5視野以上)で上記画像解析を行い、その平均値を第一硬質相の面積比率とすることが好ましい。上記画像処理には、画像解析式粒度分布ソフトウェア(株式会社マウンテック社製「Mac−View」)を好適に用いることができる。
≪結合相≫
結合相は、第一硬質相を構成するWC粒子同士、後述する第二硬質相を構成する化合物同士、又は第一硬質相を構成するWC粒子と第二硬質相を構成する化合物と、を結合させる相である。結合相は、構成元素としてコバルト(Co)及びニッケル(Ni)を含む。
結合相中に含まれるNi又はCoの重量比率は、STEMに付帯するエネルギー分散型X線分光分析(EDS)装置により測定することができる。結合相中に含まれるNiの重量比率は、本開示の効果が奏される限りにおいて特に制限されないが、例えば、50wt%以上95wt%以下であってもよい。なお、結合相中に含まれるCoの重量比率は、「比CCo/Cbdr」として後述する。
(結合相の面積比率)
本実施形態に係る超硬合金の任意の表面又は任意の断面に対する、上記結合相の面積比率は、5%以上30%以下であることが好ましい。上記結合相の面積比率を上述の範囲とし、かつ後述する比C/C20を所定の範囲とすることにより、超硬合金に占める第一硬質相(結合相よりも高硬度の相)の体積比率を上昇させて超硬合金全体としての硬度を高くし、かつ、第一硬質相と結合相との密着強度を上昇させることができる。そのため、更に靱性に優れる超硬合金となる。
なお、上記結合相の面積比率は、第一硬質相の面積比率の測定と同様、所定の視野中の結合相を特定し、その結合相の面積の和を算出し、これを所定の視野の面積で割ることにより算出することが可能である。また、同一の超硬合金において、複数の視野(例えば、5視野以上)で上記画像解析を行い、その平均値を結合相の面積比率とすることが好ましい。
上記結合相を構成するその他の元素としては、例えば、鉄(Fe)、銅(Cu)等が挙げられる。上記その他の元素は単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。また、結合相は、第一硬質相の成分元素であるタングステン、炭素、その他の不可避的な成分元素を含んでいてもよい。上記結合相を構成するその他の元素は、上記結合相としての機能(第一硬質相を構成するWC粒子同士、第二硬質相を構成する化合物同士、又は第一硬質相を構成するWC粒子と第二硬質相を構成する化合物と、を結合させる機能)を損なわない範囲において、結合相に含まれることが許容される。本実施形態の一側面において、上記第一硬質相及び後述する第二硬質相以外の成分元素は、結合相に含まれると把握することができる。
(領域R1、領域R2及び領域R3)
本実施形態において、上記結合相は領域R1、領域R2及び領域R3からなる。すなわち、上記結合相は領域R1、領域R2及び領域R3に区分される。以下、図1を用いて詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る超硬合金の構造を示す模式断面図である。上記模式断面図は、上記超硬合金1の任意の表面を表していてもよい。大部分の炭化タングステン粒子2は、結合相3に囲まれている。本実施形態において、上記結合相3は領域R1、領域R2及び領域R3に区分される。上記領域R1は、上記炭化タングステン粒子2と上記結合相3との界面Sと、上記界面Sから上記結合相3の側に向かって5nm離れた地点を示す仮想線Aとに挟まれた領域である。上記仮想線Aは、上記界面Sから上記結合相3の側に向かって5nm離れた点の集合によって構成されていると把握することもできる。上記領域R2は、上記仮想線Aと、上記界面Sから上記結合相3の側に向かって20nm離れた地点を示す仮想線Bとに挟まれた領域である。上記仮想線Bは、上記界面Sから上記結合相3の側に向かって20nm離れた点の集合によって構成されていると把握することもできる。上記領域R3は、上記結合相3における上記領域R1及び上記領域R2以外の領域である。
上記結合相が上記領域R1、上記領域R2及び上記領域R3のいずれに区分されるかは、結合相に囲まれている複数の炭化タングステン粒子のうち最も近い炭化タングステン粒子を基準に、判断する。例えば、図2における点Pは、炭化タングステン粒子WC1を基準にすると領域R3に該当するが、炭化タングステン粒子WC3を基準にすると領域R2に該当する。点Pに最も近いのは炭化タングステン粒子WC3であるので、点Pは領域R2に含まれると判断できる。また、点Qは、炭化タングステン粒子WC1、WC2及びWC3のいずれを基準にしても領域R3に該当すると判断できる。
上記領域R1、上記領域R2及び上記領域R3は、以下の方法で求められる。
まず、上記超硬合金の任意の表面又は任意の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて低倍率で観察する(例えば、図3)。SEMの倍率は、例えば3000倍である。ここで、上記断面は、上記超硬合金の任意の位置を切断して、切断面に上述の鏡面加工を施すことで形成できる。低倍率の観察において、WC粒子、並びに、結合相の領域R1、領域R2及び領域R3のすべてが含まれる視野(例えば、図3における視野4)を選定する。選定した視野の1つに着目し、高倍率(例えば、2000000倍)で観察する(例えば、図4)。次に、観察したSEM像に基づいて第一硬質相と結合相との界面を特定する。SEM像においてWCからなる第一硬質相は白く観察され、結合相は黒く観察される。そのため、第一硬質相と結合相との界面は、明確に特定が可能であると本発明者らは考えている。さらに、特定した界面に基づいて、仮想線A及び仮想線Bを設定する。そして、上記界面、上記仮想線A及び上記仮想線Bに基づいて、結合相を領域R1、領域R2及び領域R3に区分する。
(比C/C20
本実施形態において、上記領域R1と、上記領域R2を介して上記領域R1と隣接している上記領域R3とを含む範囲で線分析を行った場合、上記領域R1におけるCoの最大原子濃度Cat%と、上記領域R3におけるCoの最大原子濃度C20at%との比C/C20は、1を超える。比C/C20は、1.1以上2以下であることが好ましく、1.2以上1.9以下であることがより好ましく、1.3以上1.8以下であることが更に好ましい。比C/C20は、以下のようにして求めることができる。
まず、上述したSEMによる超硬合金の断面観察で結合相の領域R1、領域R2及び領域R3のすべてが含まれる視野(例えば、図3における視野4)を選定する。このとき、上記領域R3は、上記領域R2を介して上記領域R1と隣接している。次に選定した視野について、界面S、仮想線A及び仮想線Bを通る方向に沿って、エネルギー分散分光分析法(EDS法)を用いて線分析を行う。上述の「界面S、仮想線A及び仮想線Bを通る方向」は、更に界面Sに対して垂直となる方向であることが好ましい。
上述の線分析の結果から上記領域R1に対応する範囲におけるCoの原子濃度の最大値を上記最大原子濃度Cとする。また、上記領域R3に対応する範囲におけるCoの原子濃度の最大値を上記最大原子濃度C20とする。なお、Coの最大原子濃度を求めるにあたっては、一見して異常値と思われる点は選択しないことにする。そして、得られた上記最大原子濃度Cと上記最大原子濃度C20とに基づいて、比C/C20を算出する。このような操作を少なくとも5視野について行い、各視野において求められた比C/C20の平均値を上記超硬合金における比C/C20とする。
(比CCo/Cbdr
本実施形態において、上記超硬合金におけるCoの重量比率CCowt%と、上記超硬合金における上記結合相の重量比率Cbdrwt%との比CCo/Cbdrは、0.5以下であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましい。上述の比CCo/Cbdrの下限は、特に制限されないが例えば、0.05以上であってもよいし、0.1以上であってもよい。上記CCoは、超硬合金の原料全体に対する原料として用いたCoの重量比率(wt%)を算出することで得られる。上記Cbdrは、超硬合金の原料全体に対する結合相の原料の重量比率(wt%)を算出することで得られる。
≪第二硬質相≫
本実施形態に係る超硬合金は、上記第一硬質相とは組成が異なる第二硬質相を更に有していてもよい。第二硬質相は、「タングステンを除く周期表4族元素、5族元素及び6族元素からなる群より選択される一種以上の金属元素」と、「C,N,O及びBからなる群より選択される一種以上の元素」とを含む化合物(複合化合物)からなることが好ましい。周期表4族元素としては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)等が挙げられる。周期表5族元素としては、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)等が挙げられる。周期表6族元素としては、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)等が挙げられる。化合物とは、主として、上述の金属元素の炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、硼化物等である。
上記第二硬質相は上述の化合物の粒子からなっていてもよい。当該粒子の平均粒径は、0.05μm以上2μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。
第二硬質相は、上記化合物の一種以上からなる化合物相又は固溶体相である。ここで「化合物相又は固溶体相」とは、かかる相を構成する化合物が固溶体を形成していてもよいし、固溶体を形成せず個々の化合物として存在していてもよいことを示す。本実施形態の一側面において、上記第二硬質相を囲む結合相は、Coを多く含んでいてもよい。すなわち、上記第二硬質相と上記結合相との界面を基準に、上述の領域R1、領域R2及び領域R3を設定した場合、上記領域R1におけるCoの最大原子濃度Cat%と、上記領域R3におけるCoの最大原子濃度C20at%との比C/C20が、1を超えていてもよい。
具体的な第二硬質相としては、例えば、TaC、NbC、TiC等が挙げられる。
上記超硬合金が第二硬質相を更に有する場合、上述の第一硬質相の面積比率は、第一硬質相(炭化タングステン粒子)と第二硬質相とを合わせた面積比率として設定される。すなわち、上記超硬合金が第二硬質相を更に有する場合、上記超硬合金の任意の表面又は任意の断面に対する、上記第一硬質相の面積比率及び第二硬質相の面積比率の和は、70%以上95%以下であることが好ましい。この場合、上記第一硬質相の面積比率、上記第二硬質相の面積比率及び上記結合相の面積比率の和は100%である。第二硬質相の面積比率は、第一硬質相の面積比率の測定と同様、所定の視野中の「第二硬質相」を特定し、その「第二硬質相」の面積の和を算出し、これを所定の視野の面積で割ることにより算出することが可能である。また、同一の超硬合金において、複数の視野(例えば、5視野以上)で上記画像解析を行い、その平均値を第二硬質相の面積比率とすることが好ましい。
超硬合金の任意の表面又は任意の断面に対する、第二硬質相の面積比率は、1%以上10%以下であることが好ましく、2%以上5%以下であることがより好ましい。第二硬質相の面積比率をこの範囲に収めることにより、超硬合金の硬度を維持しつつ、熱的又は機械的衝撃による亀裂の発生を抑制し且つ耐酸化性及び被削材との耐反応性を向上することができる。なお、第二硬質相の面積比率が上限値より大きくなった場合、超硬合金の強度が下がり、靭性が低下する。
≪超硬合金の製造方法≫
本実施形態の超硬合金は、代表的には、原料粉末の準備工程⇒混合工程⇒成形工程⇒焼結工程⇒冷却工程という工程を経て製造することができる。以下、各工程について説明する。
<準備工程>
準備工程は、超硬合金を構成する材料の全ての原料粉末を準備する工程である。原料粉末としては、例えば、第一硬質相となるWC粒子、結合相となるCoを含む粒子及びNiを含む粒子が挙げられる。本実施形態の一側面において、上記WC粒子及び上記Coを含む粒子を用いる代わりに、Coがめっきされた炭化タングステン粒子(以下、「CoめっきWC粒子」という場合がある。)を原料粉末として用いてもよい。なお、CoめっきWC粒子におけるCoめっき部分は、結合相の原料の一部であると本発明者らは考えている。また、必要に応じて第二硬質相となる化合物構成粉末、粒成長抑制剤等を準備してもよい。
(WC粒子)
原料としての上記WC粒子は、特に制限はなく、超硬合金の製造に通常用いられるWC粒子を用いればよい。上記WC粒子は、市販品を用いてもよい。市販されているWC粒子としては、例えばアライドマテリアル社製の「均粒タングステンカーバイド粉」シリーズ等が挙げられる。
原料としての上記WC粒子のメジアン径(D50)は、0.3μm以上10μm以下であることが好ましく、0.3μm以上5μm以下であることがより好ましい。原料としての上記WC粒子のメジアン径は、0.3μm以上であることで、超硬合金にした際、靱性が高くなる傾向がある。そのため上記超硬合金を基材として含む切削工具は、機械的及び熱的な衝撃によるチッピング及び欠損を抑制できる。また、上記切削工具は耐亀裂伝播性が向上することから、亀裂の伝播が抑制され、チッピング及び欠損を抑制できる。一方、上記メジアン径は、10μm以下であることで、超硬合金にした際、硬度が高くなる傾向がある。そのため上記超硬合金を基材として含む切削工具は、切削時の変形が抑制され、摩耗及び欠損を抑制できる。
原料としてCoめっきWC粒子を用いる場合、上記CoめっきWC粒子は、例えば以下のようにして製造することができる。まず、以下の組成を有するCoめっきをするための無電解めっき浴を調製する。上記無電解めっき浴は、40℃においてpHが9であることが好ましい。
無電解めっき浴(水溶液)の組成
クエン酸三ナトリウム・二水和物 0.3〜0.4mol%
三塩化チタン 0.08〜0.09mol%
塩化コバルト六水和物 0.04〜0.05mol%
調製された無電解めっき浴(40℃、pH9)に、WC粒子の原料粉末を0.1kg/Lとなるように投入する。その後、所定のめっき時間の間当該無電解めっき浴を攪拌し、無電解めっきによってWC粒子の表面にCoをめっきする。めっき時間は、例えば、10分間以上30分間以下である。次に、濾過によって当該WC粒子を回収して、水洗することで当該WC粒子に付着した無電解めっき浴を除去する。当該WC粒子を乾燥して、CoめっきWC粒子を得る。ここで、CoめっきWC粒子中のCoの重量比率(wt%)は、滴定法で測定できる。CoめっきWC粒子中のCoの重量比率は、特に制限は無いが、例えば1wt%以上5wt%以下であってもよい。
(Niを含む粒子)
原料としての上記Niを含む粒子(以下、「Ni含有粒子」という場合がある。)は、特に制限無く、超硬合金の製造に通常用いられるNi含有粒子を用いればよい。上記Ni含有粒子としては、例えば、Ni単体からなる粒子、Ni合金からなる粒子が挙げられる。上記Ni合金としては、一般的に知られているもの(例えば、インコネル(登録商標)、ハステロイ等)ならいずれのNi合金も用いることができる。上記Ni含有粒子は、市販品を用いてもよい。
(化合物構成粉末)
化合物構成粉末は、特に制限無く、超硬合金の製造に第二硬質相の原料として通常用いられる化合物構成粉末を用いればよい。そのような化合物構成粉末としては、例えば、TaC、TiC、NbC、Cr、ZrC、TiN等が挙げられる。
超硬合金中に粒度が均質な第二硬質相を均一的に分散する条件の一つとして、化合物構成粉末は、微粒、かつ粒度が均質な粉末を用いることが挙げられる。そうすることで、後述する焼結工程において、第二硬質相を微細かつ分散化できる。原料に用いる化合物構成粉末の平均粒径が小さい程、最終的に得られる超硬合金中の第二硬質相の平均粒径が小さくなり、原料に用いる化合物構成粉末の平均粒径が大きい程、最終的に得られる超硬合金中の第二硬質相の平均粒径が大きくなる。化合物構成粉末は、市販品を粉砕/分級することで、微粒かつ粒度が均質なものが得られる。
上記化合物構成粉末は、その粒子の表面にCoをめっきしていてもよい。Coをめっきする方法としては、上述した無電解めっき等が挙げられる。
<混合工程>
混合工程は、準備工程で準備した各原料粉末を混合する工程である。混合工程により、各原料粉末が混合された混合粉末が得られる。なお、混合する際の原料粉末(例えば、WC粒子、CoめっきWC粒子、Niを含む粒子等)の重量比率は、上述した第一硬質相の面積比率、第二硬質相の面積比率及び結合相の面積比率に対応する比率となっている。原料としてCoめっきWC粒子を用いる場合、混合工程に用いる装置はカルマンミキサであることが好ましい。カルマンミキサで混合すれば、混合中にCoめっきWC粒子からCoめっきが脱落することを抑制することができる。カルマンミキサを用いる場合の混合条件の一例は、流速:1m/s以上2m/s以下、混合時間:10時間以上12時間以下とすることが挙げられる。カルマンミキサによる混合は、湿式混合で、エタノール、アセトン、イソプロピルアルコール等の溶媒中で行う。混合は、ポリエチレングリコール、パラフィンワックス等のバインダーと共に行ってもよい。
混合工程の後、必要に応じて混合粉末を造粒してもよい。混合粉末を造粒することで、後述する成形工程の際にダイ又は金型へ混合粉末を充填し易い。造粒には、公知の造粒方法が適用でき、例えば、スプレードライヤー等の市販の造粒機を用いることができる。
<成形工程>
成形工程は、混合工程で得られた混合粉末を所定の形状に成形して、成形体を得る工程である。成形工程における成形方法及び成形条件は、一般的な方法及び条件を採用すればよく、特に問わない。所定の形状としては、例えば、切削工具形状(例えば、刃先交換型切削チップの形状)とすることが挙げられる。
<焼結工程>
焼結工程は、成形工程で得られた成形体を焼結して、焼結体を得る工程である。原料としてCoめっきWC粒子を用いる場合、上記焼結工程は通常採用される焼結温度より低い温度で、上記成形体を焼結することが好ましい。焼結温度が高いと、成形体を焼結する過程でWC粒子近傍に局在しているCoが熱拡散によって、結合相に均一に分布する傾向がある。言い換えると、通常採用される焼結温度より低い温度で上記成形体を焼結することで、上述の比C/C20を満たす超硬合金(焼結体)を得ることが可能になる。具体的には、焼結温度は、1300℃以上1400℃以下であることが好ましい。焼結時間は、30分間以上120分間以下であることが好ましい。
焼結時の雰囲気は、特に限定されず、Nガス雰囲気又はAr等の不活性ガス雰囲気とすることが挙げられる。また、焼結時の真空度(圧力)は、好ましくは10kPa以下、より好ましくは5kPa以下、更に好ましくは3kPa以下とすることが挙げられる。
なお、焼結工程は、焼結時に加圧できる焼結HIP(シンターヒップ)処理を行ってもよい。HIP条件は、例えば、Nガス雰囲気やAr等の不活性ガス雰囲気中、温度:1300℃以上1350℃以下、圧力:5MPa以上200MPa以下とすることが挙げられる。
<冷却工程>
冷却工程は、焼結完了後の焼結体を常温まで冷却する工程である。上記冷却工程は、特に制限されない。冷却時の雰囲気は、特に限定されず、Nガス雰囲気又はAr等の不活性ガス雰囲気とすることが挙げられる。冷却時の圧力は、特に限定されず、加圧してもよいし減圧してもよい。上記加圧のときの圧力は、例えば、400kPa以上500kPa以下とすることが挙げられる。また、上記減圧のときの圧力は、例えば、100kPa以下とし、好ましくは10kPa以上50kPa以下とすることが挙げられる。本実施形態の一側面において、上記冷却工程は、Arガス雰囲気中で、上記焼結体を常温にまで冷却することが挙げられる。
≪切削工具、耐摩工具及び研削工具≫
本実施形態の超硬合金は、前述のように優れた靱性及び硬度を有するため、切削工具、耐摩工具及び研削工具の基材として利用できる。すなわち、本実施形態の切削工具は、上記超硬合金を基材として含む。また、本実施形態の耐摩工具及び研削工具は、上記超硬合金を基材として含む。
本実施形態の超硬合金は、従来公知の切削工具、耐摩工具及び研削工具に幅広く適用可能である。こうした工具としては次のようなものを例示できる。切削工具としては、例えば、切削バイト、ドリル、エンドミル、フライス加工用刃先交換型切削チップ、旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切り工具、リーマ又はタップ等を例示できる。また耐摩工具としては、例えば、ダイス、スクライバー、スクライビングホイール又はドレッサー等を例示できる。さらに研削工具としては、例えば研削砥石等を例示できる。
本実施形態の超硬合金は、これらの工具の全体を構成していてもよい。上記超硬合金は、これらの工具の一部を構成していてもよい。ここで「一部を構成する」とは、例えば切削工具の場合に、任意の基材の所定位置に本実施形態の超硬合金をロウ付けして刃先部とする態様等を示している。
<被膜>
本実施形態に係る切削工具は、上記基材上に設けられている被膜を更に備えてもよい。本実施形態に係る耐摩工具及び研削工具は、上記基材上に設けられている被膜を更に備えてもよい。上記被膜の組成は、周期表4族の金属元素、周期表5族の金属元素、周期表6族の金属元素、アルミニウム(Al)及びシリコン(Si)からなる群より選択される一種以上の元素と、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)及びホウ素(B)からなる群より選択される一種以上の元素との化合物が挙げられる。例えば、TiCN、Al、TiAlN、TiN、TiC、AlCrN等が挙げられる。本実施形態において、上記被膜は金属単体であってもよい。その他、立方晶窒化硼素(cBN)、ダイヤモンドライクカーボン等も、被膜の組成として好適である。このような被膜は、化学的蒸着(CVD)法、物理的蒸着(PVD)法等の気相法により形成することができる。被膜がCVD法により形成されていると、基材との密着性に優れる被膜が得られ易い。CVD法としては、例えば、熱CVD法等が挙げられる。被膜がPVD法により形成されていると、圧縮残留応力が付与され、切削工具等の靱性を高め易い。
本実施形態に係る切削工具における被膜は、基材における刃先となる部分とその近傍に設けられていることが好ましい。上記被膜は、基材の表面全体に設けられていてもよい。また、被膜は、単層でも多層でもよい。被膜の厚みは、1μm以上20μm以下であってもよいし、1.5μm以上15μm以下であってもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
≪超硬合金の作製≫
<原料粉末の準備>
(CoめっきWC粒子の作製)
第一硬質相の原料である、Coがめっきされた炭化タングステン粒子(以下、「CoめっきWC粒子」という場合がある。)を以下の方法で作製した。まず、以下の組成を有するCoめっきをするための無電解めっき浴を調製した。調製された無電解めっき浴は、40℃においてpHが9であった。
無電解めっき浴(水溶液)の組成
クエン酸三ナトリウム・二水和物 0.3mol%
三塩化チタン 0.08mol%
塩化コバルト六水和物 0.04mol%
調製された無電解めっき浴(40℃、pH9)に、表1に記載の原料粉末を0.1kg/Lとなるように投入した。原料粉末には、アライドマテリアル社製の炭化タングステン粒子(WC粒子)(製品名:「均粒タングステンカーバイド粉」シリーズ)を用いた。その後、表1に記載の成膜時間の間当該無電解めっき浴を攪拌し、無電解めっきによってWC粒子の表面にCoをめっきした。濾過によって当該WC粒子を回収して、水洗することで当該WC粒子に付着した無電解めっき浴を除去した。当該WC粒子を乾燥して、CoめっきWC粒子を得た。CoめっきWC粒子中のCoの重量比率(wt%)は、滴定法で測定した。結果を表1に示す。
Figure 2021085052
(その他の原料粉末の準備)
原料粉末として、表2及び表3に示す組成及びメジアン径(D50)の粉末を準備した。表2及び表3中、第一硬質相の「組成」の欄のアルファベット表記は、表1に記載の識別記号に対応している。なお、「WC」と記載されている場合は、Coめっきを施していない炭化タングステン粒子を用いたことを意味する。なお、結合相の欄における括弧書きは、用いた原料粉末の重量比を示している。
Figure 2021085052
Figure 2021085052
<原料粉末の混合>
準備した各原料粉末を表4及び表5に記載の配合割合で加えて、表4及び表5に記載の混合手法で混合し、混合粉末を作製した。各混合手法における混合条件を以下に示す。混合後、混合粉末をスプレードライ乾燥して造粒粉末とした。
カルマンミキサの混合条件
流速 :2.0m/s
処理時間 :12時間
溶媒 :エタノール
アトライタの混合条件
攪拌子の回転速度:100rpm
処理時間 :12時間
<成形体の作製>
得られた造粒粉末をプレス成形して、型番CNMG120408(住友電工ハードメタル株式会社製)(刃先交換型切削チップ)の形状の成形体を作製した。
<成形体の焼結>
得られた成形体を焼結炉に入れ、Arガス雰囲気中(0.5kPa)、表4及び表5に記載の焼結温度及び焼結時間で焼結した。
焼結完了後、Arガス雰囲気中で常温にまで冷却した。以上より、試料No.1〜24の超硬合金及び試料No.101〜107の超硬合金を作製した。試料No.1〜24の超硬合金は、実施例に対応する。試料No.101〜103の超硬合金は、参考例に対応する。試料No.104〜107の超硬合金は、比較例に対応する。
Figure 2021085052
Figure 2021085052
≪試料の観察≫
<炭化タングステン粒子の平均粒径の算出>
作製した試料No.1〜24及び試料No.101〜107の超硬合金を切断して切断面を鏡面加工した。その後、鏡面加工した切断面をアルゴンイオンビームによってイオンミリング加工し、これらの断面を顕微鏡用観察試料とした。
この観察試料の加工面を、走査型透過電子顕微鏡(STEM)(日本電子社製)により2000倍程度の倍率で撮影した。この撮影は、各試料に対して、上記加工面の外側及び上記加工面の中心のそれぞれを10視野ずつ行った。
各試料において、1視野につき、炭化タングステン粒子300個以上について、画像解析式粒度分布ソフトウェア(株式会社マウンテック社製「Mac−View」)を用いて、個々の粒子の粒径(Heywood径)を求め、計10視野における焼結後の炭化タングステン粒子の平均粒径を算出した。その結果、焼結後の炭化タングステン粒子の平均粒径は、原料として用いたCoめっきWC粒子又はCoめっきを施していないWC粒子のメジアン径にほぼ等しいことが分かった。
<第一硬質相、第二硬質相及び結合相それぞれの面積比率の算出>
画像解析式粒度分布ソフトウェア(株式会社マウンテック社製「Mac−View」)を用いて、上記各試料の加工面における第一硬質相、第二硬質相及び結合相それぞれの面積比率を求めた。その結果、第一硬質相、第二硬質相及び結合相それぞれの面積比率は、第一硬質相、第二硬質相及び結合相それぞれに対応する原料粉末の混合比率に対応することが分かった。
<結合相におけるCoの原子濃度及び比C/C20の算出>
まず、上記各試料の加工面を、SEM(日本電子社製)を用いて3000倍の倍率で観察した(例えば、図3)。このとき縦4μm×幅4μmの正方形を1視野とした。また1視野内に第一硬質相と結合相(領域R1、領域R2及び領域R3)とが共に含まれるように視野を選択した(例えば、図4)。このときの倍率は2000000倍とした。選択した1視野において、第一硬質相と結合相との界面を特定した。さらに、特定した界面に基づいて、仮想線A及び仮想線Bを設定した。ここで、仮想線Aは、界面から上記結合相の側に向かって5nm離れた地点を示す線である。仮想線Bは、界面から上記結合相の側に向かって20nm離れた地点を示す線である。そして、上記界面、上記仮想線A及び上記仮想線Bに基づいて、結合相を領域R1、領域R2及び領域R3に区分した。
次に、上述の第一硬質相、並びに、上述の結合相の領域R1、領域R2及び領域R3の全てを通る方向に沿って、エネルギー分散分光分析法(EDS法)を用いて線分析を行った。線分析には、日本電子社製のSEMを用いた。
上述の線分析の結果から領域R1におけるCoの最大原子濃度C(at%)と、領域R3におけるCoの最大原子濃度C20(at%)とを求めた。さらに、上記Cと、上記C20との比C/C20を算出した。このような操作を5視野について行い、各視野において求められた比C/C20の平均値を当該試料における比C/C20とした。その結果を表6及び表7に示す。なお、Coの最大原子濃度を求めるにあたっては、一見して異常値と思われる点は選択しないことにした。
<比CCo/Cbdrの算出>
表2及び表3に記載の「Co重量比率」並びに表4及び表5の原料粉末の配合割合に基づいて、超硬合金におけるCoの重量比率CCo(wt%)と、超硬合金における結合相の重量比率Cbdr(wt%)との比CCo/Cbdrを算出した。その結果を表6及び表7に示す。
≪切削試験≫
各試料の表面に、公知のPVD法の一種であるイオンプレーティング法で被膜を形成して切削試験用の切削工具を作製した。被膜は、厚み1μmのTiCNからなる膜とした。以下、試料No.1の超硬合金を基材として用いた切削工具を「試料No.1の切削工具」等と表記する。試料No.1以外の試料についても同様である。
<切削試験1:耐摩耗性試験>
上述のようにして作製した試料No.1〜24及び試料No.101〜107の切削工具を用いて、以下の切削条件により、逃げ面摩耗量Vbが0.2mmになるまでの切削時間(分)を測定した。その結果を表6及び表7に示す。切削時間が長い程、耐摩耗性に優れる切削工具として評価できる。
耐摩耗性試験の条件
被削材 :S50C丸棒
切削速度 :250m/min
送り量 :0.15mm/rev
切込み量 :1.0mm
切削油: 有り
<切削試験2:耐欠損性試験>
上述のようにして作製した試料No.1〜24及び試料No.101〜107の切削工具を用いて、以下の切削条件により、切れ刃に欠損が発生するまでの切削時間(分)を測定した。その結果を表6及び表7に示す。切削時間が長い程、耐欠損性に優れる切削工具として評価することができる。
耐欠損性試験の条件
被削材: SCM435溝材
切削速度: 300m/min
送り量: 0.3mm/rev、
切込み量: 1.5mm、
切削油: 有り
Figure 2021085052
Figure 2021085052
上記切削試験1の結果と上記切削試験2の結果との相関関係をグラフにして検討した(図5)。上記グラフにおいて、白丸で示されている点は試料No.1〜24(実施例)の評価結果を示している。白三角で示されている点は試料No.101〜103(参考例)の評価結果を示している。黒四角で示されている点は試料No.104〜107(比較例)の評価結果を示している。
試料No.1と試料No.105とを比較すると、超硬合金中のCo重量比率はほぼ同一である。しかし、比C/C20が1を超える試料No.1の切削工具は、比C/C20が1未満である試料No.105の切削工具よりも、耐摩耗性及び耐欠損性に優れることが分かった。すなわち、比C/C20が1を超える試料No.1の超硬合金は、比C/C20が1未満である試料No.105の超硬合金よりも、硬度及び靱性に優れることが分かった。また、試料No.1〜24の超硬合金(実施例のグループ、図5の白丸)と、試料No.104〜107の超硬合金(比較例のグループ、図5の黒四角)とを比較すると、図5において実施例のグループは比較例のグループよりも右上に位置する傾向が見られた。このことは、実施例に係る超硬合金は、第一硬質相である炭化タングステン粒子の近傍に結合相の構成成分であるCoが局在することによって、比較例に係る超硬合金よりも、硬度及び靱性に優れることを示唆している。
試料No.101〜103の超硬合金は、従来と同程度のCoを結合相に含む超硬合金である。試料No.1〜24(実施例のグループ、白丸)の超硬合金は、結合相中に含まれるCoが、従来の1/2〜1/10であるにも関わらず、切削工具の基材として用いて切削試験を行うと、試料No.101〜103(参考例のグループ、白三角)の切削試験の結果と同程度かそれ以上であった(図5)。言い換えると、図5において、実施例のグループは、参考例を示すプロットから導き出せる近似直線の近傍または上記近似直線よりも右上に位置していた。このことは、実施例に係る超硬合金は、第一硬質相である炭化タングステン粒子の近傍に結合相の構成成分であるCoが局在することによって、Coの含有割合が低くても靱性及び硬度に優れることを示唆している。
以上のように本発明の実施形態及び実施例について説明を行なったが、上述の各実施形態及び各実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 超硬合金
2 炭化タングステン粒子
3 結合相
4 図4の写真に対応する領域
A 仮想線A
B 仮想線B
S 炭化タングステン粒子と結合相との界面
R1 領域R1
R2 領域R2
R3 領域R3

Claims (6)

  1. 第一硬質相と結合相とを含む超硬合金であって、
    前記第一硬質相は、炭化タングステン粒子からなり、
    前記結合相は、構成元素としてCo及びNiを含み、
    前記超硬合金の任意の表面又は任意の断面における、
    前記炭化タングステン粒子と前記結合相との界面と、前記界面から前記結合相の側に向かって5nm離れた地点を示す仮想線Aとに挟まれた領域を領域R1とし、
    前記仮想線Aと、前記界面から前記結合相の側に向かって20nm離れた地点を示す仮想線Bとに挟まれた領域を領域R2とし、
    前記結合相における前記領域R1及び前記領域R2以外の領域を領域R3とした場合、
    前記領域R1におけるCoの最大原子濃度Cat%と、前記領域R3におけるCoの最大原子濃度C20at%との比C/C20は、1を超える、超硬合金。
  2. 前記比C/C20は、1.1以上2以下である、請求項1に記載の超硬合金。
  3. 前記超硬合金におけるCoの重量比率CCowt%と、前記超硬合金における前記結合相の重量比率Cbdrwt%との比CCo/Cbdrは、0.5以下である、請求項1又は請求項2に記載の超硬合金。
  4. タングステンを除く周期表4族元素、5族元素及び6族元素からなる群より選択される一種以上の金属元素と、C,N,O及びBからなる群より選択される一種以上の元素と、を含む化合物からなる第二硬質相を更に含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の超硬合金。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の超硬合金を基材として含む切削工具。
  6. 前記基材上に設けられている被膜を更に備える請求項5に記載の切削工具。
JP2019213274A 2019-11-26 2019-11-26 超硬合金及びそれを基材として含む切削工具 Active JP7392423B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019213274A JP7392423B2 (ja) 2019-11-26 2019-11-26 超硬合金及びそれを基材として含む切削工具

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019213274A JP7392423B2 (ja) 2019-11-26 2019-11-26 超硬合金及びそれを基材として含む切削工具

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021085052A true JP2021085052A (ja) 2021-06-03
JP7392423B2 JP7392423B2 (ja) 2023-12-06

Family

ID=76086918

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019213274A Active JP7392423B2 (ja) 2019-11-26 2019-11-26 超硬合金及びそれを基材として含む切削工具

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7392423B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN115927941A (zh) * 2022-12-20 2023-04-07 天津市润博凯特石油机械制造有限公司 一种硬质合金复合材料及其制备方法

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001303256A (ja) 2000-04-25 2001-10-31 Noge Denki Kogyo:Kk 粉粒体メッキ品の製造方法および製造装置
JP2004083935A (ja) 2002-08-23 2004-03-18 Sumitomo Electric Ind Ltd 粉末のコーティング方法及びそれによる粉末
CN102534277B (zh) 2010-12-07 2014-01-08 北京有色金属研究总院 一种粗颗粒及超粗颗粒硬质合金的制备方法
CN105296834B (zh) 2015-11-04 2017-05-17 北京有色金属研究总院 一种高硬度、高韧性硬质合金及其制备方法
KR101676298B1 (ko) 2016-05-04 2016-11-15 주식회사 씨케이머티리얼즈랩 재분산성이 향상된 자기유변유체 평가방법
EP3502290A4 (en) 2016-08-22 2019-08-07 Sumitomo Electric Industries, Ltd. HARD MATERIAL AND CUTTING TOOL
CN110168121B (zh) 2017-12-11 2021-03-02 住友电工硬质合金株式会社 硬质合金和切削工具

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN115927941A (zh) * 2022-12-20 2023-04-07 天津市润博凯特石油机械制造有限公司 一种硬质合金复合材料及其制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP7392423B2 (ja) 2023-12-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6953674B2 (ja) 超硬合金及び切削工具
WO2019116614A1 (ja) 超硬合金及び切削工具
KR20190142310A (ko) 초경 합금, 그것을 포함하는 절삭 공구 및 초경 합금의 제조 방법
KR20210084337A (ko) 초경합금, 절삭 공구 및 초경합금의 제조 방법
JP7103565B1 (ja) 超硬合金およびそれを基材として含む切削工具
WO2022137399A1 (ja) 超硬合金およびそれを基材として含む切削工具
JP7392714B2 (ja) 超硬合金及びそれを基材として含む切削工具
JP7392423B2 (ja) 超硬合金及びそれを基材として含む切削工具
JP7388431B2 (ja) 超硬合金及びそれを基材として含む切削工具
JP7098969B2 (ja) 超硬合金、それを含む切削工具、超硬合金の製造方法および切削工具の製法方法
JP7013948B2 (ja) 基材および切削工具
JP7035820B2 (ja) 基材および切削工具
WO2022172729A1 (ja) 超硬合金及びそれを基材として含む切削工具
JP7494952B2 (ja) 超硬合金及びそれを基材として含む切削工具
JP5233124B2 (ja) 超硬合金および被覆超硬合金
WO2022172730A1 (ja) 超硬合金及びそれを基材として含む切削工具
JP7346751B1 (ja) 立方晶窒化硼素焼結体
JP6459106B1 (ja) 超硬合金及び切削工具
US12005507B2 (en) Cemented carbide and cutting tool including same as substrate
JP7251691B1 (ja) 超硬合金およびそれを含む工具
JP2023134938A (ja) 切削工具用超硬合金および該合金を用いた切削工具基体
JP2023134937A (ja) 切削工具用超硬合金および該合金を用いた切削工具基体
JP2022133540A (ja) 切削工具
JP2022130147A (ja) 切削工具

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220921

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230705

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230725

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230828

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20231024

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20231106

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7392423

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150