JP7487918B2 - 飲料抽出用袋 - Google Patents

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Description

本発明は、茶葉、レギュラーコーヒー粉末、ハーブ、煮干し、鰹節等の被抽出物を収納した後に開口部を封止して、熱水に浸漬することで飲料を抽出することができる飲料抽出用袋に関するものである。
開口部から袋内に茶葉等の被抽出物を収納して、開口部の端縁に延設された外蓋片を折り返して開口部に被せることで開口部を封止した後に、熱水に浸漬したり、熱水中で煮出したりして飲料を抽出する飲料抽出用袋は、従来から知られている。
例えば、特許文献1(実開昭59-138568号公報)には、不織布等の耐水性薄片を二つ折りに折り畳んで一側面の一部を折り返したカバー片(外蓋片)と共に左右両端縁にシールを施して一方に開口部を設け、その開口部に対してカバー片を反対側に反転させて被蓋する構成のパック(飲料抽出用袋)が開示されている。
かかる特許文献1のパックでは、カバー片を単に反転させて開口部に被せているだけで、開口部が完全には封止されておらず、そのため、飲料の抽出中に被抽出物が開口部からバッグ外に漏れ出し易いという問題があった。特に、パックを沸騰している熱水中で煮たり、パックの上から熱水を勢いよく注いだりした場合には、カバー片がめくれ上がって多量の被抽出物が漏れ出してしまうことがあった。
そこで、飲料抽出用袋からの被抽出物の漏れ出しを防ぐための種々の技術が提案されている。
例えば、特許文献2(実用新案登録第2538933号公報)には、不織布等からなるティーバッグ(飲料抽出用袋)であって、開口部の前後の両縁部にそれぞれエンボス加工を施されているため、抽出中に熱水で不織布等が湿潤することにより、エンボス加工部が重なり合って一体化し、開口部の閉じ具合が良くなるという技術が開示されている。しかし、かかる技術では、ティーバッグの特定箇所にエンボス加工を施す必要があるため、製造コストが上昇するという問題があった。
また、特許文献3(実開平1-178038号公報)には、透水性シートからなる煎じ袋(飲料抽出用袋)であって、裏側面の開口部に二重に折り曲げられた内蓋片を設けたことで、煎じ袋の使用中に開口部が封止される技術が開示されている。しかし、この煎じ袋には、開口部から袋内に被抽出物を入れる際に、二重に折り曲げられた内蓋片がじゃまになって被抽出物を入れ難いという問題があり、また、内蓋片を形成するために製造コストが上昇するという問題もあった。
さらに、近年では、使用後の抽出用袋を廃棄する際の環境負荷を低減する観点から、生分解性の材質が望まれているという問題がある。
実開昭59-138568号公報 実用新案登録第2538933号公報 実開平1-178038号公報
そこで、本発明は、飲料の抽出時に被抽出物が開口部から漏れ出し難く、かつ、被抽出物を十分に膨潤させて美味しい飲料を抽出することができ、低コストで製造でき、さらに生分解性の材質からなる飲料抽出用袋を提供することを課題とする。
上記課題は、以下の手段により解決された。
〔1〕ポリ乳酸系樹脂からなり、MD方向における沸水収縮率が3~10%であり、CD方向における沸水収縮率が2%以下である長繊維不織布によって形成され、矩形の袋体と、該袋体の開口部の一方の端縁に延設して外側に折り曲げた外蓋片と、上記袋体の両側縁と上記外蓋片の両側縁を融着する融着部とを備え、上記長繊維不織布のMD方向と、上記袋体の両側縁に直交する方向とを一致させてあることを特徴とする飲料抽出用袋。
〔2〕上記長繊維不織布がスパンボンド不織布層とメルトブロー不織布層とを有する積層不織布であり、かつ該メルトブロー不織布層を上記袋体の内側に配してあることを特徴とする上記〔1〕に記載の飲料抽出用袋。
上記〔1〕に記載の飲料抽出用袋は、まず、開口部から袋体内に茶葉等の被抽出物を入れた後、外蓋片を、袋体の外蓋片が形成されていない面側に反転させるように折り返して開口部に被せて封止し、次に、この被抽出物を収納した飲料抽出用袋を、熱水に浸漬して被抽出物から飲料を抽出して使用するものである。
上記〔1〕に記載の飲料抽出用袋は、それを形成する長繊維不織布が一般に熱収縮し易く沸水収縮率が高いポリ乳酸系樹脂からなり、MD方向における沸水収縮率が3~10%であり、かつ、そのMD方向と、飲料抽出用袋の袋体の両側縁に直交する方向とを一致させてある。
そのため、飲料抽出用袋の袋体内に被抽出物を収納して90~100℃程度の高温の熱水に浸すと、長繊維不織布が熱水の熱によって袋体の両側縁に直交する方向に少し収縮することで、袋体の開口部に被せてある外蓋片が、開口部を縛って強く封止するような形態に変形するため、袋体内の被抽出物が袋体外に漏れ出し難くなるという効果を奏する。
また、かかる飲料抽出用袋を形成する長繊維不織布は、MD方向における沸水収縮率が10%以下であるため、飲料抽出用袋を熱水に浸した際に過度に収縮変形することがなく、袋体内の容積が小さくなり過ぎて、被抽出物の熱水による膨潤が妨げられるという不都合が生じ難い。
さらに、本発明の飲料抽出用袋は、生分解性樹脂であるポリ乳酸系樹脂からなるので、使用後の被抽出物が収納されたままの状態で土に埋めた場合には、被抽出物と一緒に微生物によって分解される。そのため、廃棄処理の際にガスや石油等の燃料を用いて焼却する必要がなく、環境負荷を低減することができる。
また、上記〔1〕に記載の飲料抽出用袋は、飲料用抽出用袋を形成する長繊維不織布のCD方向における沸水収縮率が2%以下であるため、飲料抽出用袋を熱水に浸した際に、袋体の両側縁に平行する方向には殆ど収縮しない。
したがって、飲料抽出用袋の過度の収縮変形を抑制できるため、袋体内の容積として、袋体内に収納されている被抽出物が熱水によって膨潤するために十分な容積を保持できるという効果を奏する。さらに飲料抽出用袋の過度の収縮変形を抑制して、飲料の抽出時の見栄えを良くできるという効果を奏する。
上記〔2〕に記載の飲料抽出用袋は、それを形成する長繊維不織布がスパンボンド不織布層とメルトブロー不織布層とを有する積層不織布であり、かつ、そのメルトブロー不織布層を袋体の内側に配している。
一般に、メルトブロー不織布はスパンボンド不織布よりも熱収縮し易く沸水収縮率が高い。そのため、メルトブロー不織布層を内側に配した飲料抽出用袋は、その使用のため熱水に浸した場合に、熱水は最初に外側のスパンボンド不織布層に触れることで熱を奪われて温度が速やかに低下し、次いで、その温度が低下した熱水が熱収縮し易いメルトブロー不織布層に接触するので、メルトブロー不織布層の過度の収縮が抑制されると考えられ、その結果、飲料抽出用袋の全体としての収縮変形の程度が緩和される。
そのため、飲料抽出用袋は、その袋体内の容積として、袋体内に収納されている被抽出物が熱水によって膨潤するために十分な容積を保持できるという効果を奏する。また、収縮変形し難いスパンボンド不織布が飲料抽出用袋の外側に配されることで、飲料抽出用袋の全体としての収縮変形の程度が視覚的に小さく感じられ、飲料の抽出時の飲料抽出用袋の見栄えがより美しくなるという効果を奏する。
本発明の飲料抽出用袋の一実施形態を示す正面図である。 図1の飲料抽出用袋のA-A矢視断面図である。 図1の飲料抽出用袋に被抽出物を収納して開口部を封止した状態を示す背面図である。 図3の飲料抽出用袋のB-B矢視断面図である。 図4の飲料抽出用袋の熱水に浸漬する前の状態を示す部分拡大説明図である。 図4の飲料抽出用袋の熱水に浸漬した後の状態を示す部分拡大説明図である。
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
図1および図2は飲料抽出用袋の一実施形態を示しており、図1は正面図であり、図2は図1のA-A矢視断面図である。
飲料抽出用袋Pは、ポリ乳酸系樹脂からなる長繊維不織布であるスパンボンド不織布層とメルトブロー不織布層とを有する積層不織布によって形成されており、袋体1と、袋体1の上部に設けた開口部2の前側(図2における右側)の端縁に延設して袋体1の外側に折り曲げた外蓋片3と、開口部2の後側(図2における左側)の端縁に延設して袋体1の内側に折り曲げた内側折り曲げ片4を備え、これら袋体1と外蓋片3と内側折り曲げ片4の左右の両側縁が、それぞれ加熱融着によって形成された融着部5において一体的に接合されている。
なお、本実施形態では、飲料抽出用袋Pを形成する長繊維不織布として二層の長繊維不織布層を有する積層不織布を採用しているが、これに限られず、単層の長繊維不織布や三層以上の長繊維不織布層を有する積層不織布を採用することもできる。
また、本実施形態の飲料抽出用袋Pには、開口部2の端縁を補強する目的で内側折り曲げ片4を設けてあるが、被抽出物6の漏れを防ぐという本発明の目的においては必要のない部分であるため、内側折り曲げ片4を設けておかなくても差し支えない。
さらに、本実施形態では、袋体1の底部は、不織布が下方に谷折りされた折り目部としてあるが、2つの谷折りとその中央部に山折りを形成することでマチを設けることもできる。
また、飲料抽出用袋Pの使用後の廃棄時の取り扱いを簡便にするために、袋体1にいずれかの位置に紐(図示せず)を取り付けておいても良い。
一般に、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布といった長繊維不織布は、高温で溶融した樹脂を紡糸ノズルから押し出し、これに高速の空気を吹き付けて牽引し延伸させて繊維状にしながら、コンベアなどのコレクター上に集積して長尺状のウェブを形成し、その後必要に応じて押圧して長尺シート状に整形して製造する。したがって、長繊維不織布は、それを構成する繊維が形成された方向に延びる長尺物であり、その長手方向は「MD方向」と称され、長手方向と直交する幅方向は「CD方向」と称される。
長繊維不織布を構成する繊維は、その多くがMD方向に延び、CD方向に略並列した状態になっているため、長繊維不織布が熱水に触れて収縮する場合には、一般に、MD方向において高い収縮率を示し、CD方向において低い収縮率を示す。
本実施形態の飲料抽出用袋Pでは、それを形成する積層不織布のMD方向と、袋体1の両側縁に直交する方向(以下、「左右方向」とも称する。)とを一致させてあり、そのMD方向における沸水収縮率は3~10%である。
また、飲料抽出用袋Pを形成する積層不織布は、そのCD方向における沸水収縮率が2%以下であることが好ましい。そうすると、飲料抽出用袋Pは、熱水に浸した際に、袋体1の両側縁に平行する方向(以下、「上下方向」とも称する。)には殆ど収縮しない。
積層不織布のMD方向の沸水収縮率を3~10%にしたり、CD方向の沸水収縮率を2%以下にしたりするには、スパンボンド不織布層やメルトブロー不織布層を構成するポリ乳酸系樹脂の結晶化度を適宜に調整すればよい。
ここで結晶化度とは、ポリ乳酸系樹脂が部分的に結晶化している場合における、樹脂全体に対する結晶化部分の比率であり、一般に、樹脂の結晶化度が低いと樹脂の軟化点が低くなり、熱による収縮が生じ易くなることが知られている。
ポリ乳酸系樹脂の結晶化度を調整するには、例えば、ポリ乳酸系樹脂のL体含有比率を調整したり、これらの不織布層を作成する際に、繊維の紡糸工程のポリ乳酸系樹脂を溶融させる温度を調整したり、繊維状の溶融樹脂に当てる空気流の速度や温度を調整したりすればよい。
また、積層不織布の沸水収縮率を調整する他の方法としては、沸水収縮率が低いスパンボンド不織布層と、沸水収縮率が高いメルトブロー不織布層の各目付の質量比率を適宜に変更するという方法がある。
図3および図4は、飲料抽出用袋Pの使用時の状態を示しており、図3は背面図であり、図4はB-B矢視断面図である。また、図5および図6は、飲料抽出用袋Pの使用時の状態を示しており、図5は飲料抽出用袋Pの熱水に浸漬する前の状態であり、図6は熱水に浸漬した後の状態である。
飲料抽出用袋Pを使用する際には、まず、開口部2から袋体1内に、茶葉、レギュラーコーヒー粉末、ハーブ、煮干し、鰹節等の被抽出物6を収納した後、袋体1の正面側にある外蓋片3を、袋体1の背面側に反転させるように折り返して、開口部2に被せて封止する。図3、図4および図5は、かかる封止後の状態である。
次に、被抽出物6を収納した飲料抽出用袋Pを熱水に浸漬すると、飲料抽出用袋Pを形成する積層不織布がそのMD方向に速やかに3~10%収縮する。そのため、袋体1の開口部2に被せてある外蓋片3が、左右方向に収縮変形して、図6に示すように、開口部2を強く封止するような形態に変形する。
したがって、かかる被抽出物6を封入した飲料抽出用袋Pは、沸騰している熱水中で煮たり、急須等に入れて熱水を上方から勢いよく注いだりしても、外蓋片3がめくれ上がり難く、被抽出物6の漏れ出しを防ぐことができる。
飲料抽出用袋Pの積層不織布のスパンボンド不織布層とメルトブロー不織布層を構成するポリ乳酸系樹脂としては、L-乳酸又はD-乳酸の重合体、L-乳酸及びD-乳酸の共重合体を使用することができ、さらに、L-乳酸、D-乳酸及びヒドロキシカルボン酸の共重合体や、これらの重合体を任意に比率で混合したものを使用することができる。
上述のとおり、各長繊維不織布層を構成するポリ乳酸系樹脂の結晶化度は、ポリ乳酸系樹脂のL体含有比率と関係がある。L体含有比率とは、ポリ乳酸を構成するL-乳酸とD-乳酸の合計質量に対するL-乳酸の質量の割合であり、一般に、L体含有比率が高い場合は結晶化度が高くなり、L体含有比率が低い場合は結晶化度が低くなる傾向がある。
なお、積層不織布のメルトブロー不織布層を構成するポリ乳酸系樹脂の結晶化度を10%以下にしておくと、そのポリ乳酸系樹脂の軟化点が下がり、80℃程度でメルトブロー不織布層を収縮変形させることができる。そのため、飲料抽出用袋Pを浸漬する熱水の温度が80℃程度と比較的に低い温度である場合でも、袋体1の開口部2を被う外蓋片3を、開口部2を強く封止するように左右方向に収縮変形させて、袋体1内の被抽出物6を袋体1外に漏れ出し難くすることができる。
ポリ乳酸系樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を添加することができる。例えば、各種エラストマー類等の衝撃性改良剤、結晶核剤、着色防止剤、艶消し剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、耐候剤、着色剤又は顔料などを適宜に添加することができる。さらに、本発明の効果を損なわない限り、積層不織布の材料として、ポリ乳酸系樹脂以外の樹脂の繊維を混入させることも可能である。かかる他の樹脂の繊維などの混入比率は、積層不織布に対して概ね10%以内であることが好ましい。
飲料抽出用袋Pを構成する積層不織布は、公知の方法で製造したスパンボンド不織布とメルトブロー不織布とを、公知の方法によって積層することで製造することができる。例えば、スパンボンド不織布とメルトブロー不織布とを個別に作成した後に、これらを重ね合わせて部分熱圧着処理等によって接合すればよい。また、スパンボンド不織布の表面に、加熱溶融したポリ乳酸系樹脂を繊維状にして吹き付けることで、メルトブロー不織布を作成しつつ積層してもよい。
スパンボンド不織布層の作成方法としては、例えば、原料のポリ乳酸系樹脂を加熱溶融して紡糸ノズルから押し出し、これに高速の空気を吹き付けることで牽引し延伸させつつ冷却して繊維を形成した後、コンベアなどのコレクター上に集積してウェブを形成し、次いで得られたウェブに対し、必要に応じて、加熱した、あるいは加熱していないフラットロールまたはエンボスロールなどを用いて、ウェブの厚さを調整したり部分熱圧着処理したりする作成方法を挙げることができる。
ウェブに対して部分熱圧着処理を行う場合には、例えば、凹凸の表面構造を有する加熱したエンボスロールと表面が平滑なフラットロールからなる一対のロール間に、上記ウェブを通過させ、スパンボンド不織布の全体に均等に分散された熱圧着部を形成すればよい。なお、熱圧着部の面積比率(熱圧着面積率)は、不織布表面の全体面積に対して5.0~30%であることが好ましい。
また、メルトブロー不織布層の作成方法としては、例えば、原料のポリ乳酸系樹脂を加熱溶融して紡糸ノズルから押し出し、これに高温かつ高速の空気を吹きつけることで牽引し延伸させて繊維状にして、スパンボンド不織布の表面に付着させつつ積層する作成方法を挙げることができる。
さらに、スパンボンド不織布層を作成する工程と、メルトブロー不織布層を作成する工程とを連続的に、いわゆるインラインで行うようにすれば、製造効率を向上できるので好ましい。
なお、飲料抽出用袋Pを構成する積層不織布は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、さらに他の不織布や織布などを積層して3層以上からなる積層不織布とすることができる。
また、スパンボンド不織布層およびメルトブロー不織布層を構成する各不織布の繊維の形態としては、モノフィラメント、マルチフィラメント、または2種類の樹脂を組み合わせた芯鞘構造の複合繊維などを使用することができる。さらに、これらの繊維の断面形状は、必ずしも丸形である必要はなく、楕丸形、三角形その他多角形などの異形状や、さらに中空状であってもよい。
飲料抽出用袋Pは、それを形成する積層不織布のMD方向と、袋体1の両側縁に直交する方向(左右方向)とを一致させてあり、かつ、そのMD方向における沸水収縮率が3~10%である。
そのため、飲料抽出用袋Pの袋体1内に被抽出物6を収納して90~100℃程度の高温の熱水に浸すと、積層不織布が熱水の熱によって袋体1の左右方向に少し収縮することで、袋体1の開口部2に被せてある外蓋片3が、開口部2を縛って強く封止するような形態に変形するため、袋体1内の被抽出物6が袋体1外に漏れ出し難くなるという効果を奏する。
また、飲料抽出用袋Pを形成する積層不織布は、MD方向における沸水収縮率が10%以下であるため、飲料抽出用袋Pを熱水に浸した際に過度に収縮変形することがなく、袋体1内の容積が小さくなり過ぎて、被抽出物6の熱水による膨潤が妨げられるという不都合が生じ難い。
さらに、飲料抽出用袋Pは、生分解性樹脂であるポリ乳酸系樹脂からなるので、使用後の被抽出物6が収納されたままの状態で土に埋めた場合には、被抽出物6と一緒に微生物によって分解される。そのため、廃棄処理の際にガスや石油等の燃料を用いて焼却する必要がなく、環境負荷を低減することができる。
また、飲料抽出用袋Pは、それを形成する積層不織布のCD方向における沸水収縮率が2%以下であることが好ましい。そうすると、飲料抽出用袋1は、熱水に浸した際に、袋体1の両側縁に平行する方向(上下方向)には殆ど収縮しない。
したがって、飲料抽出用袋Pの過度の収縮変形を抑制できるため、袋体1内の容積として、袋体1内に収納されている被抽出物6が熱水によって膨潤するために十分な容積を保持できるという効果を奏する。さらに飲料抽出用袋Pの過度の収縮変形を抑制して、飲料の抽出時の見栄えを良くできるという効果を奏する。
また、飲料抽出用袋Pは、それを形成する長繊維不織布がスパンボンド不織布層とメルトブロー不織布層とを有する積層不織布であり、かつ、そのメルトブロー不織布層を内側層7に配し、スパンボンド不織布層を外側層8に配することが好ましい。
そうすると、飲料抽出用袋Pを熱水に浸した際に、熱水は最初に外側層8のスパンボンド不織布層に触れることで熱を奪われて温度が速やかに低下し、次いで、その温度が低下した熱水が、内側層7の熱収縮し易いメルトブロー不織布層に接触するので、メルトブロー不織布層の過度の収縮が抑制されて、飲料抽出用袋Pの全体としての収縮変形の程度が緩和される。
そのため、飲料抽出用袋Pは、その袋体1内の容積として、袋体1内に収納されている被抽出物6が熱水によって膨潤するために十分な容積を保持できるという効果を奏する。また、収縮変形し難いスパンボンド不織布が飲料抽出用袋Pの外側に配されることで、飲料抽出用袋Pの全体としての収縮変形の程度が視覚的に小さく感じられ、飲料の抽出時の飲料抽出用袋Pの見栄えがより美しくなるという効果を奏する。
なお、飲料抽出用袋Pを構成する積層不織布の目付は、10~30g/mであることが好ましい。目付がかかる範囲であると、充分な強度を有し、飲料の抽出性に優れ、また、透明性が高いため、飲料抽出用袋Pに収納してある茶葉やハーブ等の状態を視認することができるからである。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
まず、本発明における各指標の測定方法を説明する。
(1)沸水収縮率(%)
試験対象の不織布から5cm四方の試験片を3点採取した。各試験片に不織布の製造時におけるMD方向(長手方向)、およびCD方向(幅方向)のそれぞれ3か所に3cmの長さを表す印を付けた。つぎに、各試験片を沸騰水中に3分間浸漬した後に自然乾燥後させた。その後、これら3点の試験片の上記長さを表す印の長さを測定して、MD方向の沸水収縮率の平均値と、CD方向の沸水収縮率の平均値を求めた。
(2)目付(g/m
JIS L-1906に準拠し、試験対象の不織布から10cm四方の試験片を採取して質量を測定して算出した。
(3)結晶化度(%)
試験対象の不織布から試験片を採取し、その試験片を示差走査熱量計にセットして、昇温速度を10℃/分として30℃から240℃まで昇温し、結晶化発熱量ΔHcと結晶融解熱量ΔHmを測定して、次の式によって算出した。なお、式中のQは完全結晶の融解熱量(単位:J/g)であり、ポリ乳酸の場合はQ=93である。
結晶化度χc(%)=(ΔHm-ΔHc)/Q×100
[実施例]
(1)積層不織布の作成
220℃で溶融したポリ乳酸(L体含有比率98%)を紡糸ノズルから押し出して繊維状とし、その繊維状の樹脂を、エジェクターを用いて紡糸速度3000m/分で延伸しつつ冷却して長繊維を形成し、その長繊維を一定速度で移動するベルトコンベア上に集積することで、長尺状の第1のウェブ層(スパンボンド不織布層)を得た。
次いで、250℃で溶融したポリ乳酸(L体含有比率98%)を紡糸ノズルから押し出して繊維状とし、その繊維状の樹脂に対して295℃に加熱した空気流を当てて飛散させ、一定速度で移動する上記第1のウェブの表面に吹き付け集積固化させていくことで、第2のウェブ層(メルトブロー不織布層)を形成するとともに、上記第1と第2のウェブ層を固着し、その後、フラットロールを通して厚さを0.075mmに調整して長尺状の積層不織布を作成した。
得られた積層不織布は、薄く丈夫で透明性が高いものであって、その沸水収縮率が最も高い方向はMD方向であり、そのMD方向の沸水収縮率値は5.3%であった。また、CD方向の沸水収縮率は1.2%であった。
そして、その積層不織布のスパンボンド不織布層の目付は12g/mであり、同層を構成するポリ乳酸の結晶化度は35%であった。さらに、メルトブロー不織布層の目付は6/mであり、同層を構成するポリ乳酸の結晶化度は3%であった。
(2)飲料抽出用袋の製造
上記(1)で作成した積層不織布を製袋機にセットし、所定形状に裁断して折り曲げを行った後、所定箇所を150℃に加熱したヒートシールバーで狭圧して面融着することで融着部5を形成して、飲料抽出用袋Pを製造した。
かかる飲料抽出用袋Pは、それを形成する積層不織布のMD方向と、袋体1の両側縁に直交する方向(左右方向)とが一致しており、また、積層不織布の内側層7としてメルトブロー不織布層が配してあり、外側層8としてスパンボンド不織布層が配してある。また、飲料抽出用袋Pは、左右の幅が95mmで上下の高さが70mmの矩形の平袋状であり、外蓋片3の高さは35mmで内側折り曲げ片4の高さは25mmであった。
(3)飲料抽出用袋によるウーロン茶の抽出
上記(2)で製造した飲料抽出用袋Pの開口部2から、袋体1内にウーロン茶の茶葉3gを収納した後、袋体1の正面側にある外蓋片3を、袋体1の背面側に反転させるように折り返して、開口部2に被せて封止した。
次に、茶葉を封入した飲料抽出用袋Pを、沸騰中の熱水中に浸漬してウーロン茶を煮出し、5分経過後に熱水中から取り出したところ、飲料抽出用袋Pからの茶葉の漏れ出しは無く、茶葉が十分に膨潤して美味しいウーロン茶を抽出することができた。
[試験例]
<試験用の不織布>
試験に用いる不織布として、「不織布A」~「不織布F」を用意した。これらの不織布を構成する各層の樹脂の種類、目付、MD方向およびCD方向の沸水収縮率は下記および表1に記載したとおりである。
不織布A: ポリ乳酸(L体含有比率99%)からなる単層のスパンボンド不織布(目付15g/m)であり、MD方向の沸水収縮率は2.3%で、CD方向の沸水収縮率は0.3%である。
不織布B: ポリ乳酸(L体含有比率99%)からなるスパンボンド不織布層(目付12g/m)と、メルトブロー不織布層(目付6g/m)によって構成される積層不織布であり、MD方向の沸水収縮率は3.4%で、CD方向の沸水収縮率は0.6%である。
不織布C: 上記実施例の「(1)積層不織布の作成」に記載の積層不織布である。
不織布D: ポリ乳酸(L体含有比率98%)からなるスパンボンド不織布層(目付8g/m)と、メルトブロー不織布層(目付8g/m)によって構成される積層不織布であり、MD方向の沸水収縮率は9.7%で、CD方向の沸水収縮率は2.3%である。
不織布E: ポリ乳酸(L体含有比率98%)からなる単層のメルトブロー不織布(目付15g/m)であり、MD方向の沸水収縮率は50%で、CD方向の沸水収縮率は49%である。
不織布F: ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるスパンボンド不織布層(目付12g/m)と、メルトブロー不織布層(目付6g/m)によって構成される積層不織布であり、沸水に浸漬しても収縮変形しない。
Figure 0007487918000001
<飲料抽出用袋のサンプルによる収縮変形試験>
(1)飲料抽出用袋のサンプルの作成
上記の「不織布A」~「不織布E」を用いて、次に示す飲料抽出用袋の「サンプル1」~「サンプル7」を作成した。
サンプル1: 上記実施例の「(2)飲料抽出用袋の製造」に記載の飲料抽出用袋Pと同じ形状および大きさであって、上記不織布Aを使用して作成したサンプルである。不織布AのMD方向を、袋体1の両側縁に直交する方向と一致させてある。
サンプル2: 上記実施例の「(2)飲料抽出用袋の製造」に記載の飲料抽出用袋Pと同じ形状および大きさであって、上記不織布Bを使用して作成したサンプルである。不織布Bのメルトブロー不織布層を、袋体1の内側層7として配してあり、また、不織布BのMD方向を、袋体1の両側縁に直交する方向と一致させてある。
サンプル3: 上記実施例の「(2)飲料抽出用袋の製造」に記載の飲料抽出用袋Pである。
サンプル4: 上記実施例の「(2)飲料抽出用袋の製造」に記載の飲料抽出用袋Pと同じ形状および大きさであって、上記不織布Dを使用して作成したサンプルである。不織布Dのメルトブロー不織布層を、袋体1の内側層7として配してあり、また、不織布DのMD方向を、袋体1の両側縁に直交する方向と一致させてある。
サンプル5: 上記実施例の「(2)飲料抽出用袋の製造」に記載の飲料抽出用袋Pと同じ形状および大きさであって、上記不織布Eを使用して作成したサンプルである。不織布EのMD方向を、袋体1の両側縁に直交する方向と一致させてある。
サンプル6: 上記実施例の「(2)飲料抽出用袋の製造」に記載の飲料抽出用袋Pと同じ形状および大きさであって、上記不織布Cを使用して作成したサンプルである。不織布Cのスパンボンド不織布層を、袋体1の内側層7として配してあり、また、不織布DのMD方向を、袋体1の両側縁に直交する方向と一致させてある。
サンプル7: 上記実施例の「(2)飲料抽出用袋の製造」に記載の飲料抽出用袋Pと同じ形状および大きさであって、上記不織布Cを使用して作成したサンプルである。不織布Cのメルトブロー不織布層を、袋体1の内側層7として配してあり、また、不織布CのMD方向を、袋体1の両側縁に平行する方向と一致させてある。
(2)試験方法
サンプル1~7の飲料抽出用袋Pの袋体1に、それぞれウーロン茶の茶葉3.0gを収納し、沸騰させた後に加熱を止めて1分以内の熱水に浸漬して、10秒後に熱水から取り出し、各サンプルの収縮変形の状態を観察して評価した。
評価基準は次のa~cのとおりである。
a: 飲料抽出用袋Pが少し収縮変形しており、開口部2が外蓋片3によって封止されている。
b: 飲料抽出用袋Pが少し収縮変形しており、開口部2と外蓋片3との間に少し隙間が存在し、封止が緩い状態である。
c: 飲料抽出用袋Pが全体的に大きく収縮変形している。
試験結果は下記の表2に示すとおりである。
Figure 0007487918000002
表2から、飲料抽出用袋Pを形成する長繊維不織布のMD方向と、袋体1の両側縁に直交する方向(左右方向)とが一致し、かつ、その長繊維不織布のMD方向の沸水収縮率が3~10%の範囲に属する場合(サンプル2、3、4、6)は、袋体1の開口部2が外蓋片3によって封止されており、かつ、飲料抽出用袋Pの収縮変形の度合いが小さいことが分かる。
また、飲料抽出用袋Pを形成する長繊維不織布のCD方向の沸水収縮率が2%以下である場合(サンプル2、3)と、このCD方向の沸水収縮率が2%を超える場合(サンプル4)とを比較すると、CD方向の沸水収縮率が2%以下である場合(サンプル2、3)の方が、熱水に浸漬した際に袋体1の容積が大きく保持され、収納されているウーロン茶の茶葉が十分に膨潤し易い状態であったことが分かる。
また、飲料抽出用袋Pの袋体1の内側層7としてメルトブロー不織布層を配した場合(サンプル3)と、スパンボンド不織布層を配した場合(サンプル6)とを比較すると、メルトブロー不織布層を配した場合(サンプル3)の方が、熱水に浸漬した際に袋体1の容積が大きく保持され、収納されているウーロン茶の茶葉が十分に膨潤し易い状態であったことが分かる。
さらに、積層不織布のMD方向、すなわち、沸水収縮率が3~10%である方向を、袋体1の両側縁に直交する方向と一致させた場合(サンプル3)と、積層不織布のMD方向を、袋体1の両側縁に平行する方向と一致させた場合(サンプル7)とを比較すると、袋体1の両側縁に直交する方向と一致させた場合(サンプル3)の方が、開口部2が外蓋片3によって、よりしっかりと封止された状態であったことが分かる。
<飲料抽出用袋のサンプルによる被抽出物の漏れ出し試験>
(1)飲料抽出用袋のサンプルの作成
サンプル8: 上記実施例の「(2)飲料抽出用袋の製造」に記載の飲料抽出用袋Pと同じ形状および大きさであって、上記不織布Fを使用して作成したサンプルである。不織布Fのメルトブロー不織布層を、袋体1の内側層7として配してあり、また、不織布FのMD方向を、袋体1の両側縁に直交する方向と一致させてある。
(2)試験方法
上記のサンプル2、3、4、8の飲料抽出用袋Pの袋体1内に、それぞれウーロン茶の茶葉3.0gを収納し、沸騰中で激しい対流が生じている熱水に浸漬した。そして、5分後に熱水から取り出し、煮出したウーロン茶を観察して、茶葉の漏れ出し状態について評価した。
評価基準は次のx、yのとおりである。
x: 茶葉が飲料抽出用袋の外に漏れ出していない。
y: 茶葉が飲料抽出用袋の外に漏れ出ている。
試験結果は下記の表3に示すとおりである。
Figure 0007487918000003
表3から、飲料抽出用袋Pを形成する長繊維不織布のMD方向と、袋体1の両側縁に直交する方向(左右方向)とが一致し、かつ、その長繊維不織布のMD方向の沸水収縮率が3~10%の範囲に属する場合(サンプル2、3、4)であれば、沸騰により激しく対流する熱水に長時間(5分間)浸漬しても、飲料抽出用袋Pから被抽出物(茶葉)が漏れ出さないことが分かる。
本発明にかかる飲料抽出用袋は、紅茶、緑茶、コーヒー、出汁などの飲料の抽出に用いる抽出用袋の分野に好適に利用できる。
1 袋体
2 開口部
3 外蓋片
4 内側折り曲げ片
5 融着部
6 被抽出物
7 内側層
8 外側層
P 飲料抽出用袋

Claims (2)

  1. ポリ乳酸系樹脂からなり、MD方向における沸水収縮率が3~10%であり、CD方向における沸水収縮率が2%以下である長繊維不織布によって形成され、
    矩形の袋体と、
    該袋体の開口部の一方の端縁に延設して外側に折り曲げた外蓋片と、
    上記袋体の両側縁と上記外蓋片の両側縁を融着する融着部とを備え、
    上記長繊維不織布のMD方向と、上記袋体の両側縁に直交する方向とを一致させてあることを特徴とする飲料抽出用袋。
  2. 上記長繊維不織布がスパンボンド不織布層とメルトブロー不織布層とを有する積層不織布であり、かつ該メルトブロー不織布層を上記袋体の内側に配してあることを特徴とする請求項1に記載の飲料抽出用袋。
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