JP7485936B2 - 低温用Ni鋼を用いた溶接継手の製造方法 - Google Patents

低温用Ni鋼を用いた溶接継手の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7485936B2
JP7485936B2 JP2020117967A JP2020117967A JP7485936B2 JP 7485936 B2 JP7485936 B2 JP 7485936B2 JP 2020117967 A JP2020117967 A JP 2020117967A JP 2020117967 A JP2020117967 A JP 2020117967A JP 7485936 B2 JP7485936 B2 JP 7485936B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel
welding
less
temperature
low
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020117967A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2022015256A (ja
Inventor
孝浩 加茂
周雄 猿渡
浩司 石田
基裕 奥島
元道 山本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2020117967A priority Critical patent/JP7485936B2/ja
Publication of JP2022015256A publication Critical patent/JP2022015256A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7485936B2 publication Critical patent/JP7485936B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Laser Beam Processing (AREA)

Description

本発明は、低温用Ni鋼を用いて溶接継手を製造する方法に関する。
液化温度が-162℃である液化天然ガス(LNG)は、クリーンなエネルギーとして知られており、環境問題への取り組みなどから、その需要は益々増加する傾向にある。このようなLNGを蓄える貯蔵タンクには、一般に、極低温での靱性を確保するために、6~9%程度のNiが添加された低温用Ni鋼が用いられる。同様に、LNG燃料のタンクや、エタン、エチレン、液化石油ガス(LPG)を輸送する船舶においても低温用Ni鋼が使用されている。
この低温用Ni鋼の溶接では、溶接継手を構成する溶接金属の極低温での強度と靱性確保のために、溶接材料としては、Niを50%以上含有したNi基合金(高Ni合金)が用いられており、また、溶接方法としては、ティグ(TIG)溶接やサブマージアーク溶接(SAW)やシールドメタルアーク溶接(SMAW)が一般に採用されている(例えば特許文献1参照)。ちなみに、このような溶接材料の使用については、Ni量が高いNi基合金はオーステナイト組織を有して、これが極低温において安定であり、脆性破壊を起こし難いためである。
そして、低温用Ni鋼を溶接するにあたっては、低温用Ni鋼が磁性を帯びやすく、溶接継手を形成する母材の溶接実施部での残留磁気が高いと磁気吹きを生じてしまうことから、十分な配慮が必要となる。すなわち、低温用Ni鋼は、保磁力、透磁率が高いため容易に残留磁気が形成され、この残留磁気の影響により溶接アークが乱れて溶接が困難となってしまい、また、溶接金属の品質劣化を招いてしまう。そのため、低温用Ni鋼では、鋼材の出荷時等に残留磁気を取るための脱磁処理を実施する必要がある。
この脱磁処理とは、一般に、鋼板をコイル内に通して、コイルに交番電流を流しつつ、徐々にその磁界を弱めることで残留磁気を低減させる方法が採用されている(例えば特許文献1参照)。このような方法は古くから用いられており、鋼材の残留磁気を一定水準まで(通常は30ガウス程度まで)低減した上で出荷しなければならない。
ところが、LNGのような貯蔵タンクを製造するためには、膨大な量の鋼材が使用される。特に、近年ではタンクの大型化が進み、それに伴って低温用Ni鋼の使用量も増加することから、脱磁処理だけでも多大なコストと労力が費やされることになる。加えて、低温用Ni鋼は、脱磁処理が済んだ後であっても、建造場所への運搬のほか、タンク製造現場での加工や組み立て時などでも着磁するおそれがある。そのため、例えば運搬時においては、他の鋼材で用いられるマグネットリフト等は使用することができず、運搬や加工、組み立てを経て貯蔵タンクを製造するまで、低温用Ni鋼を着磁させないための管理だけでも大きな負担になっている。
特開2015-123457号公報 特開昭59-184505号公報
LNG貯蔵タンク等を製造するにあたり、残留磁気の問題によりこれまで多くの負担を要していた低温用Ni鋼の溶接について、本発明者らはこれを改善する方法について鋭意検討した結果、レーザビームを照射して溶融させながら通電加熱した溶接ワイヤを供給するホットワイヤ・レーザ複合溶接を採用することで、低温用Ni鋼が残留磁気を有した状態であっても磁気吹き等の影響を受けずに溶接継手を製造することができ、しかも、信頼性に優れた高品質の溶接継手が得られるようになることを見出し、本発明を完成させた。
したがって、本発明の目的は、従来のように脱磁処理を行わなくても、低温用Ni鋼が残留磁気を有した状態で、高品質の溶接継手を製造することができる低温用Ni鋼を用いた溶接継手の製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)低温用Ni鋼を用いて溶接継手を製造する方法であって、
該低温用Ni鋼が30ガウス以上の残留磁気を有した状態で、レーザビームを照射して溶融させながら通電加熱した溶接ワイヤを供給するホットワイヤ・レーザ複合溶接により溶接継手を得ることを特徴とする、低温用Ni鋼を用いた溶接継手の製造方法。
(2)前記低温用Ni鋼の板厚が4~60mmである、(1)に記載の低温用Ni鋼を用いた溶接継手の製造方法。
(3)前記低温用Ni鋼は、化学組成が、質量%で、
C:0.03~0.10%、
Si:0.01~0.5%、
Mn:0.3~1.5%、
Ni:5~10%、
P:0.015%以下、
S:0.003%以下、
Al:0.005~0.08%、
B:0.001%以下、
Ti:0.010%以下、
Nb:0.010%以下、
V:0.010%以下、
N:0.010%以下、
O:0.005%以下、
Cu:1.0%以下、
Cr:1.0%以下、
Mo:1.0%以下、
残部:Fe及び不純物、
である、(1)又は(2)に記載の低温用Ni鋼を用いた溶接継手の製造方法。
本発明によれば、着磁しやすい低温用Ni鋼について、従来のように脱磁処理を行わなくても、磁気吹き等の影響を受けずに溶接継手を製造することができるようになり、しかも、信頼性に優れた高品質の溶接継手を得ることができる。
以下、本発明について詳しく説明する。
先ず、本発明における溶接継手の製造方法では、溶接手段として、レーザビームを照射して母材を溶融させながら、通電加熱した溶接ワイヤを供給して溶接継手を得るホットワイヤ・レーザ複合溶接を採用する。このホットワイヤ・レーザ複合溶接は、溶接ワイヤを溶融温度付近まで加熱して挿入するホットワイヤシステムとレーザ熱源を組み合わせた溶接法であり、レーザ熱源をホットワイヤシステムと併用することで、開先精度に対する裕度が小さく、しかも、継手の特性に対する母材成分の影響が大きいといったレーザ熱源を利用したレーザ溶接の短所を補いつつ、ホットワイヤから供給される溶着金属が融点直下まで加熱されることから、エネルギー密度の低いレーザビームの照射でも、十分な溶融金属を形成することができる。
このようなホットワイヤ・レーザ複合溶接であれば、レーザビームを照射して母材を溶融させるため、磁力によって溶接アークが偏向するような磁気吹きの発生を抑えることができ、特に脱磁処理を行わなくても低温用Ni鋼の溶接を安定して行うことができる。つまり、低温用Ni鋼が30ガウス以上の残留磁気を有した状態であっても、品質の良い溶接継手を安定して得ることができる。ただし、残留磁気が300ガウスを超えるような極端に着磁した状態であると溶接金属の健全性に影響を及ぼすおそれがあることから、好ましくは低温用Ni鋼が30ガウス以上300ガウス以下の状態でホットワイヤ・レーザ複合溶接により溶接継手を得るようにするのがよい。なお、低温用Ni鋼の残留磁気は、溶接時の影響を考慮するために、溶接継手を形成する母材(低温用Ni鋼)の溶接実施部での値を言うものとする。例えば、突合せ溶接の場合には、突合せ溶接向けに形成する開先での値であり、また、すみ肉溶接の場合には、溶接を実施する鋼板の角部における値とする。
また、このようなホットワイヤ・レーザ複合溶接の特徴が、高Ni合金からなる溶接材料を用いた低温用Ni鋼の溶接において有利に作用するため、溶接時の入熱をある程度制御しながらも、溶接パス数を減らして溶接継手を得ることができる。すなわち、高Ni合金の溶接材料では多量のNi添加に伴う高温割れの発生や、溶接熱影響部(HAZ)の靱性の劣化を抑制するために、一般に溶接時の入熱を制御する必要がある。一方で、溶接入熱を低減すると、所定の溶接継手を得るための溶接回数(溶接パス数)が必然的に増えてしまうために溶接効率が低下する。これに対して、ホットワイヤ・レーザ複合溶接では、エレクトロガスアーク溶接等の高効率溶接法に比べて溶接入熱を低減しながら、エネルギー密度の低いレーザビームの照射でも、十分な溶融金属を形成することができることから、好適には1パス溶接も可能であり、溶接効率を確保しつつ、高温割れの発生やHAZにおける靱性の低下を抑制することができる。
このホットワイヤ・レーザ複合溶接については、レーザビームを照射して母材を溶融すると共に、母材との間で溶接ワイヤに通電してホットワイヤとし、この通電加熱した溶接ワイヤを母材の溶融部分に供給して、溶融した母材と溶接ワイヤからなる溶融プールを形成しながらレーザビームを移動させて、溶接継手を得るようにすればよく、公知の方法と同様にすることができる。また、溶接継手の種類としては特に制限はなく、例えば、突合せ溶接やすみ肉溶接のほか、角継手、重ね継手、T字継手、十字継手等を挙げることができる。その際、融合不良や高温割れ等の溶接欠陥の抑制を考慮すると、好ましくは、ホットワイヤ・レーザ複合溶接における溶接条件について、エネルギー密度を300W/mm以下に制御するのがよい。ここで、エネルギー密度とはレーザ溶接における出力(kW)を溶接時のスポット面積(mm2)で割った値である。スポットの形状は円形、矩形等が一般に用いられるが、形状によらずエネルギー密度にて制御可能である。エネルギー密度の制御は、溶接変形の抑制、溶接継手靱性の低減に有効である。
また、本発明においては、例えば、LNGやLPGを蓄える貯蔵タンクやこれらを輸送するタンカー等のように、極低温での靱性を確保するために6~9%程度のNiが添加された低温用Ni鋼を母材として用いて溶接継手を得るようにする。この低温用Ni鋼については、所定の化学組成を有するものを用いるようにするのがよい。その化学組成を特定する理由については、以下に説明するとおりである。なお、これらの説明における「%」は、特に断りがない限り「質量%」を表す。
(C:0.03~0.10%)
Cは、強度確保の観点から0.03%以上含有させる必要がある。しかしながら、含有量が多くなり過ぎると靱性の低下をきたすことから、その上限は0.10%とする。好ましくは、Cの含有量は0.04%以上0.07%以下であるのがよい。
(Si:0.01~0.5%)
Siは脱酸作用を有するほか、強度を向上させる元素であり0.01%以上の含有量が必要である。しかしながら、その含有量が多過ぎると溶接継手靱性などの低下をきたすため、その上限は0.50%であり、好ましくは0.03~0.4%である。
(Mn:0.3~1.5%)
Mnは、強度及び靱性を向上させる元素であり、0.3%以上含有させる必要がある。しかしながら、その含有量が多過ぎると母材及びHAZの靱性劣化をきたすことから、その上限は1.5%である。好ましくは0.4~1.2%である。
(Ni:5.0~10.0%)
Niは、強度及び靱性を同時に向上させる作用を有し、低温の液体を貯蔵するためのタンク、なかでも-165℃という極低温のLNGを貯蔵するLNGタンクを製造するための母材に欠かせない元素であり、5.0%以上の含有量が必要である。しかしながら、10.0%を超えて含有させても、その効果は飽和してコストが嵩むばかりである。好ましくは5.5~9.5%である。
(P:0.015%以下)
Pは、鋼に不可避的に含有される不純物元素であり、粒界偏析元素であるためにHAZにおける粒界割れの原因となる。母材及びHAZの靱性を向上させるために、Pの含有量は0.015%以下にする。好ましくは0.010%以下である。Pの含有量は0であってもよいが、過度な低減はコストの増加を招くことなどから、0.003%以上とするのが好ましい。なお、Pは鉄鋼材料の製造において不可避的に混入される点で、後述する残部としての不純物と同じであるが、Pは、上記のとおりHAZの靭性向上の観点から、その含有量を別途規定している。
(S:0.003%以下)
Sは、多量に存在する場合、溶接割れ起点となるMnS単体の析出物を生成する。そのため、Sの含有量は0.003%以下にする必要がある。好ましくは0.002%以下である。Sの含有量は0であってもよいが、過度な低減はコストの増加を招くことなどから、0.0002%以上とするのが好ましい。なお、Sは鉄鋼材料の製造において不可避的に混入される点で、後述する残部としての不純物と同じであるが、Sは、上記のとおり溶接割れ抑制の観点から、その含有量を別途規定している。
(Al:0.005~0.08%)
Alは脱酸元素であり、鋼の清浄性を確保するために0.005%以上含有させる必要がある。しかしながら、その含有量が多過ぎると、粗大なAlを生成したり、溶接継手の靱性が低下するため、その上限は0.08%である。好ましくは0.01~0.05%である。
(B:0.001%以下)
Bは、強度を高める作用を有する。すなわち、Bは粒界に偏析して強度改善効果を有する。しかしながら、Bの含有量が0.001%を超えると、靱性が損なわれる。好ましくは0.0005%以下である。Bの含有量は0であってもよいが、上記の作用を発現させるためには0.0003%以上とするのがよい。
(Ti:0.010%以下)
Tiは、炭窒化物の形成を通じて破壊の起点増加による靱性劣化を招くため、0.010%以下に抑制する必要がある。好ましくは0.005%以下である。Tiの含有量は0であってもよいが、Tiは炭窒化物を形成し組織細粒化に寄与することから、このような作用を発現させるためには0.003%以上とするのがよい。
(Nb:0.010%以下)
Nbは、炭窒化物の形成を通じて破壊の起点増加による靱性劣化を招くため、0.010%以下に抑制する必要がある。好ましくは0.005%以下である。Nbの含有量は0であってもよいが、Nbは炭窒化物を形成し組織細粒化に寄与することから、このような作用を発現させるためには0.003%以上とするのがよい。
(V:0.010%以下)
Vは、炭窒化物の形成を通じて破壊の起点増加による靱性劣化を招くため、0.010%以下に抑制する必要がある。好ましくは0.005%以下である。Vの含有量は0であってもよいが、Vは炭窒化物を形成し組織細粒化に寄与することから、このような作用を発現させるためには0.005%以上とするのがよい。
(N:0.010%以下)
Nは不可避的不純物として混入する元素であり、靱性劣化を招く場合があるため0.010%以下に低減する。好ましくは0.006%以下である。Nの含有量は0であってもよいが、過度な低減はコストの増加を招くことなどから、0.002%以上とするのが好ましい。なお、Nは鉄鋼材料の製造において不可避的に混入される点で、後述する残部としての不純物と同じであるが、Nは、上記のとおり靱性劣化抑制の観点から、その含有量を別途規定している。
(O:0.005%以下)
Oは、酸化物の形成を通じて靱性劣化を招くため、0.005%以下とする必要がある。好ましくは0.003%以下である。Oの含有量は0であってもよいが、過度な低減はコストの増加を招くことなどから、0.001%以上とするのが好ましい。なお、Oは鉄鋼材料の製造において不可避的に混入される点で、後述する残部としての不純物と同じであるが、Oは、上記のとおり靱性劣化抑制の観点から、その含有量を別途規定している。
(Cu:1.0%以下)
Cuは、強度を高める作用を有する。しかしながら、その含有量が1.0%を超えるとHAZの靱性低下を招く。好ましくは0.5%以下である。Cuの含有量は0であってもよいが、上記の作用を発現させるためには0.02%以上とするのがよい。
(Cr:1.0%以下)
Crは、強度を高める作用を有する。しかしながら、その含有量が1.0%を超えるとHAZの靱性低下を招く。好ましくは0.8%以下である。Crの含有量は0であってもよいが、上記の作用を発現させるためには0.02%以上とするのがよい。
(Mo:1.0%以下)
Moは、強度を高める作用を有する。しかしながら、その含有量が1.0%を超えるとHAZの靱性低下を招く。好ましくは0.5%以下である。Moの含有量は0であってもよいが、上記の作用を発現させるためには0.02%以上とするのがよい。
上記成分の残部は、鉄(Fe)及び不純物である。ここで、「不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に、鉱石やスクラップ等のような原料を始めとして、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
本発明においては、ホットワイヤ・レーザ複合溶接を採用することで、エネルギー密度の低いレーザビームの照射でも、十分な溶融金属を形成することができることから、板厚Tが4~60mm、好ましくは10~50mmの低温用Ni鋼に対して、溶接継手を得るようにするのが望ましい。
また、溶接継手を得る際に用いる溶接材料については、ホットワイヤ・レーザ複合溶接において通電加熱しながら供給する溶接ワイヤとして用いることができるものであればよく、好ましくは、一般に、低温用Ni鋼の溶接で用いられるような高Ni合金の溶接材料であるのがよい。すなわち、Ni量が高いNi合金はオーステナイト組織を有して、これが極低温において安定であり、脆性破壊を起こし難い。そのため、例えば、質量割合でNiを50%以上、好ましくは55~75%含有するオーステナイト構造を有したNi基合金(高Ni合金)を用いるようにするのがよい。このような高Ni合金の溶接材料について、市販品の例としては、NITTETSU FILLER196(以上、日鉄溶接工業社製商品名)、TG-S709S(以上、神戸製鋼社製商品名)等を挙げることができる。
次に、実施例に基づいて本発明について説明するが、本発明はこれらの内容に制限されるものではない。
(試験例1)
表1に示す化学成分及び機械特性等を有した発明例1~10、比較例1~19に係る鋼板(低温用Ni鋼)を母材(被溶接材)として使用した。鋼板は焼入焼戻し(QT)若しくは熱加工制御圧延後焼戻し(TMCT)で製造した。このうち、QTは、鋳片を1000~1200℃に加熱した後、所定の寸法に圧延して冷却後、更に800~900℃に加熱して焼き入れした後に、更にまた560~600℃に加熱して焼戻しを行った。TMCTについては900~1200℃に加熱した後、700℃以上の温度で制御圧延を完了して冷却後、560~600℃に加熱して焼戻しを行った。QT、TMCTともに、必要に応じて焼き入れ前に605~750℃の中間熱処理を行った。なお、表1に示した各鋼板の化学組成は、それぞれの化学成分の残部がFe及び不純物である。
また、これらの鋼板の機械特性として、鋼板の引張特性については、板厚(T)が16mm以下の鋼板ではJIS Z2241:2011-5号試験片を全厚にて圧延方向と垂直方向に採取し、板厚(T)が16mmを超える鋼板ではJIS Z2241:2011-4号試験片を板厚1/4の位置(1/4t)から圧延方向と垂直方向に採取して、それぞれ室温にて試験して引張強さ(TS)を求めた。鋼板の衝撃特性については、全ての鋼板において板厚1/4の位置(1/4t)の位置、及び、圧延方向と並行に、JIS Z2242:2018に規定された2mmVノッチシャルピー試験片を採取し、-196℃の温度でシャルピー衝撃試験を実施して、吸収エネルギー値(svE-196℃)を求めた。
この試験例1では、表1に示した各鋼板について、それぞれ2枚並べて20°のV字(V形)開先を形成する突合せ溶接により溶接継手を得るようにし、その際にV字を形成して溶接実施部となる各鋼板の対向面(開先面)から溶接開始位置および任意の5箇所をそれぞれ選び出し、残留磁気をガウスメーターで測定して、これらのなかで最も大きな値(最大値)をその鋼板の溶接実施部における残留磁気として表1に示した。なお、溶接の際の裏当金には、母材である鋼板と同じものをそれぞれ使用した。なお、溶接継手の種類としては特に制限はなく、例えば、開先溶接やすみ肉溶接のほか、せん溶接やスロット溶接等を挙げることができる。
Figure 0007485936000001
また、溶接材料としては、JIS Z3332:2007に規定されるYGT9NI-2相当のニッケル(Ni)基合金ワイヤ(φ1.2mm)を使用し、ホットワイヤ・レーザ複合溶接で通電加熱する溶接ワイヤとして、表2に示す溶接条件で溶接継手を作製した。ここで、ホットワイヤ・レーザ複合溶接(HWL)では、レーザ溶接機とホットワーヤ用溶接電源を使用した。そして、表1に示した鋼板と上記のNi基合金ワイヤを用いて、ホットワイヤ・レーザ複合溶接方法により、溶接長500mmの溶接継手を作製した。その際、ホットワイヤ溶接はワイヤ加熱電流100~400A、ワイヤ供給速度は2~30m/min.とした。レーザ溶接におけるパラメータとして溶接速度1~5m/min.、レーザ出力3~20kWとし、溶接スポット径を調整することでエネルギー密度の制御を行った。また、シールドガスはAr(流量30L/min.)を用いた。
一方で、比較として、ガスタングステンアーク溶接(GTAW)による継手作成も行った。溶接材料はホットワイヤ・レーザ複合溶接と同じニッケル基合金とArシールドガスを用い、電流値280A、電圧値10V、目標入熱量18kJ/cmとした。
Figure 0007485936000002
このような試験例1について、表2には、表1に示した鋼板と溶接条件の組み合わせを示している。このうちの各評価について、先ず、磁気吹きの判定としては、溶接途中で溶融ビードが偏ったり蛇行する現象が発生した場合に×、それ以外を○と評価した。また、得られた溶接継手の衝撃特性を評価するために、母材である鋼板の板厚1/4の位置(1/4t)でのボンド部(溶接金属とHAZの厚みの比率が1:1)をノッチ位置としてJIS Z2242:2018に規定された2mmVノッチシャルピー試験片を採取し、-196℃の温度でシャルピー衝撃試験を実施し、吸収エネルギー値(継手シャルピー)を求めた。更にまた、得られた溶接継手について、放射線透過試験法により溶接欠陥の有無を調べた。JIS Z 3106:2001に準じて試験を行い、2種以上の欠陥が確認されたものを×、それ以外を○として判定した。
以上の結果から分かるように、本発明によれば、着磁しやすい低温用Ni鋼について、従来のように脱磁処理を行わなくても、磁気吹き等の影響を受けずに溶接継手を製造することができるようになり、しかも、信頼性に優れた高品質の溶接継手を得ることができる。

Claims (3)

  1. 低温用Ni鋼を用いて溶接継手を製造する方法であって、
    該低温用Ni鋼が30ガウス以上の残留磁気を有した状態で、レーザビームを照射して前記低温用Ni鋼を溶融させて溶融部分を形成しながら通電加熱した溶接ワイヤを前記溶融部分に供給するホットワイヤ・レーザ複合溶接により溶接継手を得ることを特徴とする、低温用Ni鋼を用いた溶接継手の製造方法。
  2. 前記低温用Ni鋼の板厚が4~60mmである、請求項1に記載の低温用Ni鋼を用いた溶接継手の製造方法。
  3. 前記低温用Ni鋼は、化学組成が、質量%で、
    C:0.03~0.10%、
    Si:0.01~0.5%、
    Mn:0.3~1.5%、
    Ni:5~10%、
    P:0.015%以下、
    S:0.003%以下、
    Al:0.005~0.08%、
    B:0.001%以下、
    Ti:0.010%以下、
    Nb:0.010%以下、
    V:0.010%以下、
    N:0.010%以下、
    O:0.005%以下、
    Cu:1.0%以下、
    Cr:1.0%以下、
    Mo:1.0%以下、
    残部:Fe及び不純物、
    である、請求項1又は2に記載の低温用Ni鋼を用いた溶接継手の製造方法。
JP2020117967A 2020-07-08 2020-07-08 低温用Ni鋼を用いた溶接継手の製造方法 Active JP7485936B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020117967A JP7485936B2 (ja) 2020-07-08 2020-07-08 低温用Ni鋼を用いた溶接継手の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020117967A JP7485936B2 (ja) 2020-07-08 2020-07-08 低温用Ni鋼を用いた溶接継手の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2022015256A JP2022015256A (ja) 2022-01-21
JP7485936B2 true JP7485936B2 (ja) 2024-05-17

Family

ID=80121379

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020117967A Active JP7485936B2 (ja) 2020-07-08 2020-07-08 低温用Ni鋼を用いた溶接継手の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7485936B2 (ja)

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000288754A (ja) 1999-04-07 2000-10-17 Nippon Steel Corp 低温靭性に優れたレーザビーム溶接方法および電子ビーム溶接方法
JP2001131679A (ja) 1999-11-09 2001-05-15 Nippon Steel Corp 超細粒鋼からなる継手及び構造体
US20070090167A1 (en) 2005-10-24 2007-04-26 Nikolai Arjakine Weld filler, use of the weld filler and welding process
JP2007190586A (ja) 2006-01-18 2007-08-02 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 溶接方法及び液化ガスタンクの製造方法
JP2019188473A (ja) 2018-04-23 2019-10-31 リンカーン グローバル,インコーポレイテッド 多層構造のレーザホットワイヤ溶接

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000288754A (ja) 1999-04-07 2000-10-17 Nippon Steel Corp 低温靭性に優れたレーザビーム溶接方法および電子ビーム溶接方法
JP2001131679A (ja) 1999-11-09 2001-05-15 Nippon Steel Corp 超細粒鋼からなる継手及び構造体
US20070090167A1 (en) 2005-10-24 2007-04-26 Nikolai Arjakine Weld filler, use of the weld filler and welding process
JP2007190586A (ja) 2006-01-18 2007-08-02 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 溶接方法及び液化ガスタンクの製造方法
JP2019188473A (ja) 2018-04-23 2019-10-31 リンカーン グローバル,インコーポレイテッド 多層構造のレーザホットワイヤ溶接

Also Published As

Publication number Publication date
JP2022015256A (ja) 2022-01-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3964467B2 (ja) 超高強度低温溶接物
JP2008161932A (ja) ワイヤ、フラックス及び高ニッケル含量を有している鋼を溶接するためのプロセス
JP6978613B2 (ja) 極低温用高強度溶接継手の製造方法
JP2007289965A (ja) ガスシールドアーク溶接フラックス入りワイヤ及び溶接方法
JP5244059B2 (ja) 溶接ソリッドワイヤおよび溶接金属
JP6063355B2 (ja) 溶接用ソリッドワイヤおよび溶接方法
CN111448029A (zh) 气体保护电弧焊焊丝和气体保护电弧焊方法
WO2018203513A1 (ja) アーク溶接方法及び溶接ワイヤ
KR20210143296A (ko) Tig 용접용 용가재
JP6235402B2 (ja) 強度、靭性および耐sr割れ性に優れた溶接金属
JP2016093823A (ja) 溶接用ソリッドワイヤおよび溶接方法、並びに溶接金属
KR20230098880A (ko) 서브 머지 아크 용접용 와이어 및 그것을 이용한 용접 조인트부의 제조 방법
JP6978614B2 (ja) ガスメタルアーク溶接用ソリッドワイヤおよびガスメタルアーク溶接方法
JP7485936B2 (ja) 低温用Ni鋼を用いた溶接継手の製造方法
JP2017074602A (ja) 球状黒鉛鋳鉄同士あるいは球状黒鉛鋳鉄と鋼の溶接部、および、当該溶接に用いる溶接材料と溶接部の熱処理方法
JP7410408B2 (ja) 隅肉溶接継手を備えた溶接構造体の製造方法及び隅肉溶接継手を備えた溶接構造体
JP7477763B2 (ja) 低温用Ni鋼を用いた溶接継手の製造方法及びこれにより得られた溶接継手
CN113490571A (zh) 高Cr铁素体系耐热钢用焊接材料
JP7494966B1 (ja) ガスメタルアーク溶接方法
JP7414126B2 (ja) Tig溶接用溶加材およびそれを用いた溶接継手部の製造方法
JP7279870B1 (ja) レーザー・アークハイブリッド溶接継手の製造方法
CN114850627B (zh) 药芯焊丝、焊接金属、气体保护电弧焊方法及焊接接头的制造方法
US20240009779A1 (en) Flux-cored wire
JP6950294B2 (ja) 多層盛り溶接による継手の製造方法
WO2021153559A1 (ja) 溶接鋼管およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20230317

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20231221

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20231226

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20240215

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20240402

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20240415

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7485936

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150