JP7485936B2 - 低温用Ni鋼を用いた溶接継手の製造方法 - Google Patents
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Description
(1)低温用Ni鋼を用いて溶接継手を製造する方法であって、
該低温用Ni鋼が30ガウス以上の残留磁気を有した状態で、レーザビームを照射して溶融させながら通電加熱した溶接ワイヤを供給するホットワイヤ・レーザ複合溶接により溶接継手を得ることを特徴とする、低温用Ni鋼を用いた溶接継手の製造方法。
(2)前記低温用Ni鋼の板厚が4~60mmである、(1)に記載の低温用Ni鋼を用いた溶接継手の製造方法。
(3)前記低温用Ni鋼は、化学組成が、質量%で、
C:0.03~0.10%、
Si:0.01~0.5%、
Mn:0.3~1.5%、
Ni:5~10%、
P:0.015%以下、
S:0.003%以下、
Al:0.005~0.08%、
B:0.001%以下、
Ti:0.010%以下、
Nb:0.010%以下、
V:0.010%以下、
N:0.010%以下、
O:0.005%以下、
Cu:1.0%以下、
Cr:1.0%以下、
Mo:1.0%以下、
残部:Fe及び不純物、
である、(1)又は(2)に記載の低温用Ni鋼を用いた溶接継手の製造方法。
先ず、本発明における溶接継手の製造方法では、溶接手段として、レーザビームを照射して母材を溶融させながら、通電加熱した溶接ワイヤを供給して溶接継手を得るホットワイヤ・レーザ複合溶接を採用する。このホットワイヤ・レーザ複合溶接は、溶接ワイヤを溶融温度付近まで加熱して挿入するホットワイヤシステムとレーザ熱源を組み合わせた溶接法であり、レーザ熱源をホットワイヤシステムと併用することで、開先精度に対する裕度が小さく、しかも、継手の特性に対する母材成分の影響が大きいといったレーザ熱源を利用したレーザ溶接の短所を補いつつ、ホットワイヤから供給される溶着金属が融点直下まで加熱されることから、エネルギー密度の低いレーザビームの照射でも、十分な溶融金属を形成することができる。
Cは、強度確保の観点から0.03%以上含有させる必要がある。しかしながら、含有量が多くなり過ぎると靱性の低下をきたすことから、その上限は0.10%とする。好ましくは、Cの含有量は0.04%以上0.07%以下であるのがよい。
Siは脱酸作用を有するほか、強度を向上させる元素であり0.01%以上の含有量が必要である。しかしながら、その含有量が多過ぎると溶接継手靱性などの低下をきたすため、その上限は0.50%であり、好ましくは0.03~0.4%である。
Mnは、強度及び靱性を向上させる元素であり、0.3%以上含有させる必要がある。しかしながら、その含有量が多過ぎると母材及びHAZの靱性劣化をきたすことから、その上限は1.5%である。好ましくは0.4~1.2%である。
Niは、強度及び靱性を同時に向上させる作用を有し、低温の液体を貯蔵するためのタンク、なかでも-165℃という極低温のLNGを貯蔵するLNGタンクを製造するための母材に欠かせない元素であり、5.0%以上の含有量が必要である。しかしながら、10.0%を超えて含有させても、その効果は飽和してコストが嵩むばかりである。好ましくは5.5~9.5%である。
Pは、鋼に不可避的に含有される不純物元素であり、粒界偏析元素であるためにHAZにおける粒界割れの原因となる。母材及びHAZの靱性を向上させるために、Pの含有量は0.015%以下にする。好ましくは0.010%以下である。Pの含有量は0であってもよいが、過度な低減はコストの増加を招くことなどから、0.003%以上とするのが好ましい。なお、Pは鉄鋼材料の製造において不可避的に混入される点で、後述する残部としての不純物と同じであるが、Pは、上記のとおりHAZの靭性向上の観点から、その含有量を別途規定している。
Sは、多量に存在する場合、溶接割れ起点となるMnS単体の析出物を生成する。そのため、Sの含有量は0.003%以下にする必要がある。好ましくは0.002%以下である。Sの含有量は0であってもよいが、過度な低減はコストの増加を招くことなどから、0.0002%以上とするのが好ましい。なお、Sは鉄鋼材料の製造において不可避的に混入される点で、後述する残部としての不純物と同じであるが、Sは、上記のとおり溶接割れ抑制の観点から、その含有量を別途規定している。
Alは脱酸元素であり、鋼の清浄性を確保するために0.005%以上含有させる必要がある。しかしながら、その含有量が多過ぎると、粗大なAl2O3を生成したり、溶接継手の靱性が低下するため、その上限は0.08%である。好ましくは0.01~0.05%である。
Bは、強度を高める作用を有する。すなわち、Bは粒界に偏析して強度改善効果を有する。しかしながら、Bの含有量が0.001%を超えると、靱性が損なわれる。好ましくは0.0005%以下である。Bの含有量は0であってもよいが、上記の作用を発現させるためには0.0003%以上とするのがよい。
Tiは、炭窒化物の形成を通じて破壊の起点増加による靱性劣化を招くため、0.010%以下に抑制する必要がある。好ましくは0.005%以下である。Tiの含有量は0であってもよいが、Tiは炭窒化物を形成し組織細粒化に寄与することから、このような作用を発現させるためには0.003%以上とするのがよい。
Nbは、炭窒化物の形成を通じて破壊の起点増加による靱性劣化を招くため、0.010%以下に抑制する必要がある。好ましくは0.005%以下である。Nbの含有量は0であってもよいが、Nbは炭窒化物を形成し組織細粒化に寄与することから、このような作用を発現させるためには0.003%以上とするのがよい。
Vは、炭窒化物の形成を通じて破壊の起点増加による靱性劣化を招くため、0.010%以下に抑制する必要がある。好ましくは0.005%以下である。Vの含有量は0であってもよいが、Vは炭窒化物を形成し組織細粒化に寄与することから、このような作用を発現させるためには0.005%以上とするのがよい。
Nは不可避的不純物として混入する元素であり、靱性劣化を招く場合があるため0.010%以下に低減する。好ましくは0.006%以下である。Nの含有量は0であってもよいが、過度な低減はコストの増加を招くことなどから、0.002%以上とするのが好ましい。なお、Nは鉄鋼材料の製造において不可避的に混入される点で、後述する残部としての不純物と同じであるが、Nは、上記のとおり靱性劣化抑制の観点から、その含有量を別途規定している。
Oは、酸化物の形成を通じて靱性劣化を招くため、0.005%以下とする必要がある。好ましくは0.003%以下である。Oの含有量は0であってもよいが、過度な低減はコストの増加を招くことなどから、0.001%以上とするのが好ましい。なお、Oは鉄鋼材料の製造において不可避的に混入される点で、後述する残部としての不純物と同じであるが、Oは、上記のとおり靱性劣化抑制の観点から、その含有量を別途規定している。
Cuは、強度を高める作用を有する。しかしながら、その含有量が1.0%を超えるとHAZの靱性低下を招く。好ましくは0.5%以下である。Cuの含有量は0であってもよいが、上記の作用を発現させるためには0.02%以上とするのがよい。
Crは、強度を高める作用を有する。しかしながら、その含有量が1.0%を超えるとHAZの靱性低下を招く。好ましくは0.8%以下である。Crの含有量は0であってもよいが、上記の作用を発現させるためには0.02%以上とするのがよい。
Moは、強度を高める作用を有する。しかしながら、その含有量が1.0%を超えるとHAZの靱性低下を招く。好ましくは0.5%以下である。Moの含有量は0であってもよいが、上記の作用を発現させるためには0.02%以上とするのがよい。
表1に示す化学成分及び機械特性等を有した発明例1~10、比較例1~19に係る鋼板(低温用Ni鋼)を母材(被溶接材)として使用した。鋼板は焼入焼戻し(QT)若しくは熱加工制御圧延後焼戻し(TMCT)で製造した。このうち、QTは、鋳片を1000~1200℃に加熱した後、所定の寸法に圧延して冷却後、更に800~900℃に加熱して焼き入れした後に、更にまた560~600℃に加熱して焼戻しを行った。TMCTについては900~1200℃に加熱した後、700℃以上の温度で制御圧延を完了して冷却後、560~600℃に加熱して焼戻しを行った。QT、TMCTともに、必要に応じて焼き入れ前に605~750℃の中間熱処理を行った。なお、表1に示した各鋼板の化学組成は、それぞれの化学成分の残部がFe及び不純物である。
一方で、比較として、ガスタングステンアーク溶接(GTAW)による継手作成も行った。溶接材料はホットワイヤ・レーザ複合溶接と同じニッケル基合金とArシールドガスを用い、電流値280A、電圧値10V、目標入熱量18kJ/cmとした。
Claims (3)
- 低温用Ni鋼を用いて溶接継手を製造する方法であって、
該低温用Ni鋼が30ガウス以上の残留磁気を有した状態で、レーザビームを照射して前記低温用Ni鋼を溶融させて溶融部分を形成しながら、通電加熱した溶接ワイヤを前記溶融部分に供給するホットワイヤ・レーザ複合溶接により溶接継手を得ることを特徴とする、低温用Ni鋼を用いた溶接継手の製造方法。 - 前記低温用Ni鋼の板厚が4~60mmである、請求項1に記載の低温用Ni鋼を用いた溶接継手の製造方法。
- 前記低温用Ni鋼は、化学組成が、質量%で、
C:0.03~0.10%、
Si:0.01~0.5%、
Mn:0.3~1.5%、
Ni:5~10%、
P:0.015%以下、
S:0.003%以下、
Al:0.005~0.08%、
B:0.001%以下、
Ti:0.010%以下、
Nb:0.010%以下、
V:0.010%以下、
N:0.010%以下、
O:0.005%以下、
Cu:1.0%以下、
Cr:1.0%以下、
Mo:1.0%以下、
残部:Fe及び不純物、
である、請求項1又は2に記載の低温用Ni鋼を用いた溶接継手の製造方法。
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