JP7485634B2 - 熱伝導性シリコーン組成物及びその硬化物 - Google Patents

熱伝導性シリコーン組成物及びその硬化物 Download PDF

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Description

本発明は、熱伝導性シリコーン組成物及びその硬化物に関する。
パーソナルコンピューター、デジタルビデオディスク、携帯電話等の電子機器に使用されるCPU、ドライバICやメモリー等のLSIチップは、高性能化・高速化・小型化・高集積化に伴い、それ自身が大量の熱を発生するようになり、その熱によるチップの温度上昇はチップの動作不良、破壊を引き起こす。そのため、動作中のチップの温度上昇を抑制するための多くの熱放散方法及びそれに使用する熱放散部材が提案されている。
従来、電子機器等においては、動作中のチップの温度上昇を抑えるために、アルミニウムや銅等の熱伝導率の高い金属板を用いたヒートシンクが使用されている。このヒートシンクは、そのチップが発生する熱を伝導し、その熱を外気との温度差によって表面から放出する。
チップから発生する熱をヒートシンクに効率よく伝えるために、ヒートシンクをチップに密着させる必要があるが、各チップの高さの違いや組み付け加工による公差があるため、柔軟性を有するシートや、グリースをチップとヒートシンクとの間に介装させ、これらの部材を介してチップからヒートシンクへの熱伝導を実現している。
シートはグリースに比べ、取り扱い性に優れており、熱伝導性シリコーンゴム等で形成された熱伝導性シート(熱伝導性シリコーンゴムシート)は様々な分野に用いられている。
例えば、シリコーンゴム等の合成ゴム100質量部に酸化ベリリウム、酸化アルミニウム、水和酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛から選ばれる少なくとも1種以上の金属酸化物を配合した絶縁性組成物が開示されている(特許文献1)。
一方、電子機器の高集積化が進み、装置内の集積回路素子の発熱量が増加したため、従来の冷却方法では不十分な場合がある。特に、モバイルノートパソコンやタブレットの場合、機器内部の空間が狭いため大きなヒートシンクや冷却ファンを取り付けることができない。更に、これらの機器では、プリント基板上に集積回路素子が搭載されており、基板の材質に熱伝導性の悪いガラス補強エポキシ樹脂やポリイミド樹脂が用いられているので、従来のように放熱絶縁シートを介して基板に熱を逃がすことができない。
そこで、このような場合には、集積回路素子の近傍に自然冷却タイプあるいは強制冷却タイプの放熱部品を設置し、素子で発生した熱を放熱部品に伝える方式が用いられる。この方式で素子と放熱部品を直接接触させると、表面の凹凸のため熱の伝わりが悪くなる。更に、放熱絶縁シートを介して取り付けても放熱絶縁シートの柔軟性がやや劣るため、熱膨張により素子と基板との間に応力がかかり、破損するおそれがある。
また、各回路素子に放熱部品を取り付けるには、広いスペースが必要となり、機器の小型化が難しくなる。そこで、いくつかの素子を1つの放熱部品に組み合わせて冷却する方式が採られることもある。
そこで、素子ごとに高さが異なることにより生じる種々の隙間を埋めることができる低硬度の高熱伝導性材が必要になる。このような課題に対して、熱伝導性に優れ、柔軟性があり、種々の隙間に対応できる熱伝導性シートが要望される。
この場合、シリコーン樹脂に金属酸化物等の熱伝導性材料を混入したものを成形したシートで、強度を持たせたシリコーン樹脂層の上に、変形し易いシリコーン層が積層されたシートが開示されている(特許文献2)。また、熱伝導性充填材を含有し、アスカーC硬度が5~50であるシリコーンゴム層と、直径0.3mm以上の孔を有する多孔性補強材層を組み合わせた熱伝導性複合シートが開示されている(特許文献3)。また、可とう性の三次元網状体又はフォーム体の骨格格子表面を熱伝導性シリコーンゴムで被覆したシートも提案されている(特許文献4)。さらに、補強性を有したシートあるいはクロスを内蔵し、少なくとも一方の面が粘着性を有しているような、アスカーC硬度が5~50で、厚さ0.4mm以下の熱伝導性複合シリコーンシートが開示されている(特許文献5)。そして、付加反応型液状シリコーンゴムと熱伝導性絶縁性セラミック粉末を含有し、その硬化物のアスカーC硬度が25以下で熱抵抗が3.0℃/W以下である放熱スペーサーも開示されている(特許文献6)。
これら熱伝導性シリコーン硬化物は、絶縁性も要求されることが多いため、熱伝導性充填材として酸化アルミニウム(アルミナ)が用いられることが多い。一般的に、不定形のアルミナは球状のアルミナに比べ、熱伝導率を向上させる効果が高い。しかし、シリコーンに対する充填性が悪く、充填率を上げると材料粘度が上昇し、加工性が悪くなるという欠点がある。また、アルミナはモース硬度が9と非常に硬い。そのために、特に粒子径が10μm以上である不定形アルミナを用いた熱伝導性シリコーン組成物は、製造時に反応釜の内壁や撹拌羽根を削ってしまうという問題があった。それにより、熱伝導性シリコーン組成物に反応釜や撹拌羽根の成分が混入し、熱伝導性シリコーン組成物、及びこれを用いた硬化物の絶縁性が低下する。また、反応釜と撹拌羽のクリアランスが広がるため、撹拌効率が落ちてしまい、同条件で製造しても一定の品質が得られなくなる。また、それを防ぐためには部品を頻繁に交換する必要がある、というような問題があった。
この問題を解決するために、球状アルミナ粉のみを使用する方法もあるが、高熱伝導化のためには、不定形アルミナに比べ、大量に充填する必要があり、組成物の粘度が上昇し、加工性が悪化する。また、相対的に組成物及びその硬化物におけるシリコーンの存在量が減少するため、硬度が上昇してしまい、圧縮性に劣るものになる。大粒径の球状アルミナを用いることで、充填量に対する熱伝導率向上効果を改善する方法もあるが、球状アルミナの粒子径が大きすぎると、プレス成形時に球状アルミナと樹脂の分離が発生し、シート端部がフィラーリッチ部となり脆化してしまう問題があった。この場合、シート成形における材料収率が大きく低下してしまう。
また、熱伝導率を上げるためには、一般的に熱伝導率の高い熱伝導性充填材、例えば窒化アルミニウムや窒化ホウ素等の熱伝導性充填材を使用する方法があるが、コストが高く、加工も難しい、というような問題があった。
また、シリコーン硬化物中のアルミナ粉の充填量が高くなると、高温で長時間使用した時に、硬化物の硬度が顕著に低下する傾向があり、振動が強いモジュール等、用途によっては復元性が不足することで密着不良が発生し、経時で熱抵抗が上昇する問題があった。
特開昭47-032400号公報 特開平02-196453号公報 特開平07-266356号公報 特開平08-238707号公報 特開平09-001738号公報 特開平09-296114号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、圧縮性、絶縁性、熱伝導性、加工性に優れた熱伝導性シリコーン組成物及びその硬化物を提供することを目的とする。特に、5.5W/m・K以上の熱伝導率を有し、熱伝導性シリコーン組成物及びその硬化物を提供することを目的とする。このような熱伝導性シリコーン組成物であれば、例えば電子機器内の発熱部品と放熱部品の間に設置されて放熱に用いられる熱伝導性樹脂成形体として好適に用いられる。
上記課題を解決するために、本発明では、熱伝導性シリコーン組成物であって、
(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)ケイ素原子に直接結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:ケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数が前記(A)成分由来のアルケニル基のモル数の0.1~5.0倍量となる量、
(C)下記(C-1)~(C-4)成分からなる熱伝導性充填材:3,900~6,000質量部、
(C-1)平均粒径が65μmを超えて135μm以下である球状アルミナフィラー:1,400~3,000質量部、
(C-2)平均粒径が30μmを超えて65μm以下である球状アルミナフィラー:500~1,500質量部、
(C-3)平均粒径が4μmを超えて30μm以下である球状アルミナフィラー:300~900質量部、
(C-4)平均粒径が0.4μmを超えて4μm以下である不定形アルミナフィラー:1,000~1,900質量部、
(D)白金族金属系硬化触媒:前記(A)成分に対して白金族金属元素質量換算で0.1~2,000ppm、及び
(E)付加反応制御剤:0.01~2.0質量部、
を含むものである熱伝導性シリコーン組成物を提供する。
このような熱伝導性シリコーン組成物であれば、圧縮性、絶縁性、熱伝導性、加工性に優れた熱伝導性シリコーン硬化物を与えるものとなる。
また、本発明では、23℃における粘度が2,000Pa・s以下のものであることが好ましい。
このような熱伝導シリコーン組成物であれば、成形性(加工性)に優れる。
また、本発明では、更に、(F)成分として、
(F-1)下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物、及び
Si(OR4-a-b (1)
(式中、Rは独立に炭素原子数6~15のアルキル基であり、Rは独立に非置換又は置換の炭素原子数1~12の1価炭化水素基であり、Rは独立に炭素原子数1~6のアルキル基であり、aは1~3の整数、bは0~2の整数であり、但しa+bは1~3の整数である。)
(F-2)下記一般式(2)で表される分子鎖片末端がトリアルコキシシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、
Figure 0007485634000001
(式中、Rは独立に炭素原子数1~6のアルキル基であり、cは5~100の整数である。)
からなる群から選ばれる少なくとも1種を前記(A)成分の100質量部に対して0.01~300質量部を含むものであることが好ましい。
このような熱伝導シリコーン組成物であれば、オイル分離を誘発しない。
また、本発明では、更に、(G)成分として、酸化セリウムを前記(A)成分の100質量部に対して6.5~25.0質量部を含有するものであることが好ましい。
このような熱伝導シリコーン組成物であれば、耐熱性が向上する。
また、本発明では、上記熱伝導性シリコーン組成物の硬化物である熱伝導性シリコーン硬化物を提供する。
このような熱伝導性シリコーン硬化物であれば、圧縮性、絶縁性、熱伝導性、加工性に優れたものとなる。
また、本発明では、上記熱伝導性シリコーン硬化物であって、アスカーC硬度計で測定した硬さにおいて、150℃で500時間保管後の硬さが、保管前の硬さに対して、-5ポイント以上、40ポイント以下のものであることが好ましい。
このような熱伝導性シリコーン硬化物であれば、高温で長時間使用しても高度の低下が小さいものとなる。
また、本発明では、23℃における熱伝導率が、5.5W/m・K以上のものであることが好ましい。
このような熱伝導性シリコーン硬化物であれば、熱伝導性に優れる。
また、本発明では、1mm厚における絶縁破壊電圧が10kV/mm以上のものであることが好ましい。
このような熱伝導性シリコーン硬化物であれば、使用時に安定的に絶縁を確保することができる。
また、本発明では、形状がシート状のものであることができる。
このような熱伝導性シリコーン硬化物であれば、取り扱い性に優れる。
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、平均粒径が65μmを超えて135μm以下である球状アルミナフィラー、平均粒径が30μmを超えて65μm以下である球状アルミナフィラー、平均粒径が4μmを超えて30μm以下である球状アルミナフィラー及び平均粒径が0.4μmを超えて4μm以下である不定形アルミナフィラーを特定の配合量で併用することで、粒径が小さい球状アルミナの欠点を大粒径球状アルミナが補い、大粒径球状アルミナの欠点を粒径が小さい球状アルミナが補うことで、圧縮性、絶縁性、熱伝導性、加工性に優れた、特に5.5W/m・K以上の熱伝導率を有する熱伝導性シリコーン硬化物を与える熱伝導性シリコーン組成物を提供することができる。
また、酸化セリウムの添加により、高温保存時における硬化物の硬度低下を抑制した熱伝導性シリコーン硬化物を与える熱伝導性シリコーン組成物を提供することができる。
上述のように、圧縮性、絶縁性、熱伝導性、加工性に優れた熱伝導性シリコーン組成物及び硬化物の開発が求められていた。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、平均粒径が0.4を超え65μm以下の球状アルミナ及び不定形アルミナと、平均粒径が65を超え135μm以下の球状アルミナとを特定割合で併用することで上記課題を解決することができることを見出した。即ち、比表面積が小さい平均粒径が65を超え135μm以下の球状アルミナを特定の配合量とすることで、効果的に熱伝導性を向上させることが可能であり、かつ粘度が低く加工性に優れたシリコーン組成物及びその硬化物を提供できる。
また、30μm以下の平均粒径を有する球状アルミナ及び不定形アルミナを併用することにより、組成物の流動性が向上し、加工性が改善する。更に平均粒径が4μmを超えた粒子には球状アルミナを使用するため、反応釜や撹拌羽の磨耗が抑えられ、絶縁性が向上する。
つまり、粒径が小さい球状アルミナ及び不定形アルミナの欠点を大粒径球状アルミナが補い、大粒径球状アルミナの欠点を粒径が小さい球状アルミナ及び不定形アルミナが補うことで、圧縮性、絶縁性、熱伝導性、加工性に優れた、特に5.5W/m・K以上の熱伝導率を有するコストの低い熱伝導性シリコーン組成物及び硬化物を与えることができることを見出した。
更に、上記熱伝導性シリコーン組成物に酸化セリウムを添加することにより、高温保存時における硬化物の硬度低下を抑制できることも見出した。
即ち、本発明は、熱伝導性シリコーン組成物であって、
(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)ケイ素原子に直接結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:ケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数が前記(A)成分由来のアルケニル基のモル数の0.1~5.0倍量となる量、
(C)下記(C-1)~(C-4)成分からなる熱伝導性充填材:3,900~6,000質量部、
(C-1)平均粒径が65μmを超えて135μm以下である球状アルミナフィラー:1,400~3,000質量部、
(C-2)平均粒径が30μmを超えて65μm以下である球状アルミナフィラー:500~1,500質量部、
(C-3)平均粒径が4μmを超えて30μm以下である球状アルミナフィラー:300~900質量部、
(C-4)平均粒径が0.4μmを超えて4μm以下である不定形アルミナフィラー:1,000~1,900質量部、
(D)白金族金属系硬化触媒:前記(A)成分に対して白金族金属元素質量換算で0.1~2,000ppm、及び
(E)付加反応制御剤:0.01~2.0質量部、
を含むものである熱伝導性シリコーン組成物である。
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、
(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)ケイ素原子に直接結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)下記(C-1)~(C-4)成分からなる熱伝導性充填材、
(C-1)平均粒径が65μmを超えて135μm以下である球状アルミナフィラー、
(C-2)平均粒径が30μmを超えて65μm以下である球状アルミナフィラー、
(C-3)平均粒径が4μmを超えて30μm以下である球状アルミナフィラー、
(C-4)平均粒径が0.4μmを超えて4μm以下である不定形アルミナフィラー、
(D)白金族金属系硬化触媒、
(E)付加反応制御剤、
を必須成分として含有する。また、この他に、(F)表面処理剤、(G)酸化セリウム、(H)オルガノポリシロキサン等の成分を含むことができる。以下、各成分について詳述する。
[(A)アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン]
(A)成分である1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサンであり、本発明の熱伝導性シリコーン組成物の主剤となるものである。通常は主鎖部分が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなるのが一般的であるが、これは分子構造の一部に分枝状の構造を含んだものであってもよく、また環状体であってもよいが、硬化物の機械的強度等、物性の点から直鎖状のジオルガノポリシロキサンが好ましい。
ケイ素原子に結合するアルケニル基以外の官能基としては、以下に例示する1価炭化水素基が挙げられる。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基等が挙げられる。これらの1価炭化水素基の中で、好ましくは炭素原子数が1~10、より好ましくは炭素原子数が1~6のものである。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素原子数1~3のアルキル基、及びフェニル基が好適に用いられる。また、ケイ素原子に結合したアルケニル基以外の官能基は全てが同一であることに限定するものではない。
また、アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等の通常炭素原子数が2~8程度のものが挙げられ、中でもビニル基、アリル基等の低級アルケニル基が好ましく、特に好ましくはビニル基である。なお、アルケニル基は、分子中に2個以上存在するが、得られる硬化物の柔軟性がよいものとするため、分子鎖末端のケイ素原子にのみ結合して存在することが好ましい。
この1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの23℃における動粘度は、通常、10~100,000mm/s、特に好ましくは500~50,000mm/sの範囲である。前記動粘度がこの範囲内であれば、得られる組成物の保存安定性が悪くならず、伸展性が悪くならない。なお、本明細書において、動粘度はJIS Z 8803:2011に記載の方法でキャノン・フェンスケ型粘度計を用いて23℃で測定した場合の値である。
この(A)成分の1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、1種単独でも、動粘度が異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、ケイ素原子に直接結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。即ち、1分子中に少なくとも2個以上、好ましくは2~100個のケイ素原子に直接結合する水素原子(ヒドロシリル基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、(A)成分の架橋剤として作用する成分である。即ち、(B)成分中のヒドロシリル基と(A)成分中のアルケニル基とが、後述する(D)成分の白金族金属系硬化触媒により促進されるヒドロシリル化反応により付加して、架橋構造を有する3次元網目構造を与える。なお、ヒドロシリル基の数が2個未満の場合、硬化しない。
ケイ素原子に直接結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均構造式(3)で示されるものが用いられるが、これに限定されるものではない。
Figure 0007485634000002
(式中、Rは独立に水素原子、又は炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、及び炭素数7~12のアラルキル基から選ばれる1価炭化水素基である。ただし、1分子中の2個以上、好ましくは2~10個のRは水素原子である。また、eは1以上の整数、好ましくは10~200の整数である。)
式(3)中、Rは独立に水素原子、又は炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、及び炭素数7~12のアラルキル基から選ばれる1価炭化水素基である。Rの水素原子以外の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基が挙げられる。これらの1価炭化水素基の中で、好ましくは炭素原子数が1~10、特に好ましくは炭素原子数が1~6のものであり、中でも、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素原子数1~3のアルキル基、及びフェニル基が好適に用いられる。また、Rは全てが同一であることに限定するものではない。また、eは1以上の整数、好ましくは10~200の整数である。
(B)成分の添加量は、(B)成分由来のヒドロシリル基が(A)成分由来のアルケニル基1モルに対して0.1~5.0モルとなる量、即ちケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数が前記(A)成分由来のアルケニル基のモル数の0.1~5.0倍量となる量であり、好ましくは0.3~2.0モルとなる量、更に好ましくは0.5~1.0モルとなる量である。(B)成分由来のSi-H基の量が(A)成分由来のアルケニル基1モルに対して0.1モル未満であると硬化しない、又は硬化物の強度が不十分で成形体としての形状を保持できず取り扱えない場合がある。また5.0モルを超えると硬化物の柔軟性がなくなり、硬化物が脆くなる。
[(C)熱伝導性充填材]
(C)成分である熱伝導性充填材は、下記(C-1)~(C-4)成分からなるものである。
(C-1)平均粒径が65μmを超えて135μm以下である球状アルミナフィラー、
(C-2)平均粒径が30μmを超えて65μm以下である球状アルミナフィラー、
(C-3)平均粒径が4μmを超えて30μm以下である球状アルミナフィラー、
(C-4)平均粒径が0.4μmを超えて4μm以下である不定形アルミナフィラー、
なお、本発明において、上記平均粒径は、日機装(株)製の粒度分析計であるマイクロトラックMT3300EXにより、レーザ回折・散乱法にて測定した体積基準の累積平均粒径(メディアン径)の値である。
(C-1)成分の球状アルミナフィラーは、熱伝導率を優位に向上させることができる。球状アルミナフィラーの平均粒径は65μmを超えて135μm以下であり、70~120μmであることが好ましい。(C-1)成分の球状アルミナフィラーの平均粒径が135μmより大きいと、反応釜や撹拌羽の磨耗が顕著となり、組成物の絶縁性が低下する。(C-1)成分の球状アルミナとしては1種又は2種以上を複合して用いてもよい。2種以上を複合して用いる場合は、それぞれ上記平均粒径の範囲を満たせばよい。
(C-2)成分及び(C-3)成分の球状アルミナフィラーは、組成物の熱伝導率を向上させるとともに、不定形アルミナフィラーと反応釜や撹拌羽の接触を抑制し、磨耗を抑えるバリア効果を提供する。平均粒径については、(C-2)成分は30μmを超えて65μm以下であり、35~60μmであることが好ましく、(C-3)成分は4μmを超えて30μm以下であり、7~25μmであることが好ましい。球状アルミナフィラーの平均粒径が4μm以下であると、バリア効果が低下し、不定形粒子による反応釜や撹拌羽の磨耗が顕著となる。(C-2)成分及び(C-3)成分の球状アルミナとしては1種又は2種以上を複合して用いてもよい。2種以上を複合して用いる場合は、それぞれ上記平均粒径の範囲を満たせばよい。
(C-4)成分の不定形アルミナフィラーは、組成物の熱伝導率を向上させる役割も担うが、その主な役割は組成物の粘度調整、滑らかさ向上、充填性向上である。(C-4)成分の平均粒径は0.4μmを超えて4μm以下であり、0.6~3μmであることが、上記した特性発現のためにより好ましい。
(C-1)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して1,400~3,000質量部であり、好ましくは1,800~2,500質量部である。(C-1)成分の配合量が少なすぎると熱伝導率の向上が困難であり、多すぎると反応釜や撹拌羽の磨耗が顕著となり、組成物の絶縁性が低下する。
(C-2)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して500~1,500質量部であり、好ましくは600~1,300質量部である。(C-2)成分の配合量が少なすぎると不定形粒子による反応釜や撹拌羽の磨耗が顕著となり、多すぎると組成物の流動性が失われ、成形性が損なわれる。
(C-3)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対し300~900質量部であり、好ましくは500~800質量部である。(C-3)成分の配合量が少なすぎると不定形粒子による反応釜や撹拌羽の磨耗が顕著となり、多すぎると組成物の流動性が失われ、成形性が損なわれる。
(C-4)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して1,000~1,900質量部であり、好ましくは1,100~1,500質量部である。(C-4)成分の配合量が少なすぎると組成物の流動性が失われ、成形性が損なわれる。(C-4)成分の配合量が多すぎると反応釜や撹拌羽の磨耗が顕著となる。
更に、(C)成分の配合量(即ち、上記(C-1)~(C-4)成分の合計配合量)は、(A)成分100質量部に対して3,900~6,000質量部であり、好ましくは4,000~5,500質量部である。この配合量が3,900質量部未満の場合には、得られる組成物の熱伝導率が悪くなり、6,000質量部を超える場合には、組成物の流動性が失われ、成形性が損なわれる。
上記配合割合で(C)成分を用いることで、上記した本発明の効果がより有利にかつ確実に達成できる。
[(D)白金族金属系硬化触媒]
(D)成分の白金族金属系硬化触媒は、(A)成分由来のアルケニル基と、(B)成分由来のヒドロシリル基の付加反応を促進するための触媒であり、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒として周知の触媒が挙げられる。その具体例としては、例えば、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体、HPtCl・nHO、HPtCl・nHO、NaHPtCl・nHO、KaHPtCl・nHO、NaPtCl・nHO、KPtCl・nHO、PtCl・nHO、PtCl、NaHPtCl・nHO(但し、式中、nは0~6の整数であり、好ましくは0又は6である。)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩、アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書参照)、塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス(米国特許第3,159,601号明細書、同第3,159,662号明細書、同第3,775,452号明細書参照)、白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの、ロジウム-オレフィンコンプレックス、クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒)、塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン、特にビニル基含有環状シロキサンとのコンプレックス等が挙げられる。
(D)成分の配合量は、(A)成分に対して白金族金属元素質量換算で0.1~2,000ppmであり、好ましくは50~1,000ppmである。(D)成分の配合量が少なすぎると付加反応が進まず、多すぎると経済的に不利であるため好ましくない。
[(E)付加反応制御剤]
(E)成分の付加反応制御剤は、通常の付加反応硬化型シリコーン組成物に用いられる公知の付加反応制御剤を全て用いることができる。例えば、1-エチニル-1-ヘキサノール、3-ブチン-1-オール、エチニルメチリデンカルビノール等のアセチレン化合物や各種窒素化合物、有機リン化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物等が挙げられる。
(E)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.01~2.0質量部であり、好ましくは0.1~1.2質量部である。(E)成分の配合量が少なすぎると付加反応の進行により組成物の取り扱い性に劣る場合があり、多すぎると付加反応が進まず、成形効率が損なわれる場合がある。
[(F)表面処理剤]
本発明の熱伝導性シリコーン組成物には、組成物調製時に(C)成分である熱伝導性充填材を疎水化処理し、(A)成分であるアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとの濡れ性を向上させ、(C)成分である熱伝導性充填材を(A)成分からなるマトリックス中に均一に分散させることを目的として、(F)成分の表面処理剤を配合することができる。該(F)成分としては、特に限定されないが、特に下記に示す(F-1)成分及び(F-2)成分が好ましい。
(F-1)成分は、下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物である。
Si(OR4-a-b (1)
(式中、Rは独立に炭素原子数6~15のアルキル基であり、Rは独立に非置換又は置換の炭素原子数1~12の1価炭化水素基であり、Rは独立に炭素原子数1~6のアルキル基であり、aは1~3の整数、bは0~2の整数であり、但しa+bは1~3の整数である。)
上記一般式(1)において、Rで表されるアルキル基としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基等が挙げられる。このRで表されるアルキル基の炭素原子数が6~15の範囲を満たすと(A)成分の濡れ性が十分に向上し、取り扱い性がよく、組成物の低温特性が良好なものとなる。
で表される非置換又は置換の炭素原子数1~12の1価炭化水素基としては、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数6~12のアリール基、及び炭素原子数7~12のアラルキル基から選ばれる基が好ましい。炭素原子数1~5のアルキル基の例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基が挙げられる。炭素原子数6~12のアリール基の例としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等が挙げられる。そして、炭素原子数7~12のアラルキル基の例としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等が挙げられる。中でも、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素原子数1~3のアルキル基、及びフェニル基が挙げられる。Rで表される炭素原子数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
(F-2)成分は、下記一般式(2)で表される分子鎖片末端がトリアルコキシシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサンである。
Figure 0007485634000003
(式中、Rは独立に炭素原子数1~6のアルキル基であり、cは5~100の整数である。)
で表される炭素原子数1~6のアルキル基としては、例えば、前記Rで例示されたアルキル基と同じものが例示できる。cは5~100、好ましくは5~70、特に好ましくは10~50の整数である。
(F)成分の表面処理剤としては、(F-1)成分及び(F-2)成分からなる群から選ばれる少なくとも1種を配合することができる。
(F)成分を配合する場合の配合量としては、(A)成分100質量部に対して0.01~300質量部であることが好ましく、0.1~200質量部であることがより好ましい。(F)成分の配合量が前記上限以下であるとオイル分離を誘発しない。
[(G)酸化セリウム]
本発明の熱伝導性シリコーン組成物には、(G)成分として酸化セリウムを配合することができる。(G)成分の酸化セリウムは、耐熱性を向上させる熱安定剤である。酸化セリウムとしては、BET比表面積が50m/g以上を有するものを用いることが好ましい。
(G)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、6.5~25.0質量部であり、より好ましくは8.0~13.0質量部である。(G)成分の配合量が上記範囲内であれば、高温保存時における硬化物の硬度低下が起こらず、組成物の流動性が失われず、成形性が損なわれることがない。
[(H)オルガノポリシロキサン]
本発明の熱伝導性シリコーン組成物には、熱伝導性シリコーン組成物の粘度調整剤等の特性付与を目的として、(H)成分として、下記一般式(4)で表される23℃における動粘度が10~100,000mm/sのオルガノポリシロキサンを添加することができる。(H)成分は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
Figure 0007485634000004
(式中、Rは独立に非置換又は置換の炭素原子数1~12の脂肪族不飽和結合を含まない1価炭化水素基、dは5~2,000の整数である。)
上記一般式(4)において、Rは独立に非置換又は置換の炭素原子数1~12の脂肪族不飽和結合を含まない1価炭化水素基である。Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基;並びにこれらの基の炭素原子が結合している水素原子の一部又は全部がフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換された基、例えば、クロロメチル基、2-ブロモエチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基等が挙げられ、代表的なものは炭素原子数が1~10、特に代表的なものは炭素原子数が1~6のものであり、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1~3の非置換又は置換のアルキル基、及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基が挙げられるが、メチル基、フェニル基がより好ましい。
上記dは要求される粘度の観点から、好ましくは5~2,000の整数で、より好ましくは10~1,000の整数である。
また、(H)成分の23℃における動粘度は、好ましくは10~100,000mm/sであり、100~10,000mm/sであることがより好ましい。該動粘度が10mm/s以上であると、得られる熱伝導性シリコーン硬化物がオイルブリードを発生させない。該動粘度が100,000mm/s以下であると、得られる熱伝導性シリコーン硬化物の柔軟性が十分である。
(H)成分を本発明の熱伝導性シリコーン組成物に配合する場合、その配合量は特に限定されず、所望の効果が得られる量であればよいが、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.1~100質量部、より好ましくは1~50質量部である。該配合量がこの範囲にあると、硬化前の熱伝導性シリコーン組成物に良好な流動性、作業性を維持し易く、また(C)成分の熱伝導性充填材を該組成物に充填するのが容易である。
[その他の成分]
本発明の熱伝導性シリコーン組成物には、本発明の目的および作用効果に応じて、更に他の成分を配合しても差し支えない。例えば、酸化鉄等の耐熱性向上剤;シリカ等の粘度調整剤;着色剤;離型剤等の任意成分を配合することができる。
[熱伝導性シリコーン組成物の粘度]
本発明の熱伝導性シリコーン組成物の粘度(絶対粘度)は、23℃において好ましくは2,000Pa・s以下、より好ましくは1,500Pa・s以下である。粘度が2,000Pa・s以下であると組成物の成形性(加工性)が損なわれない。なお、本発明において、この粘度はフローテスタ粘度計による測定に基づく。
[熱伝導性シリコーン組成物の調製]
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、上述した各成分を常法に準じて均一に混合することにより調製することができる。
[熱伝導性シリコーン硬化物]
本発明の熱伝導性シリコーン硬化物は、上述した本発明の熱伝導性シリコーン組成物を常法に準じて硬化したものである。本発明の熱伝導性シリコーン硬化物の形状は特に限定されないが、シート状であることが好ましい。
[熱伝導性シリコーン硬化物の製造方法]
熱伝導性シリコーン組成物を成形する硬化条件としては、公知の付加反応硬化型シリコーンゴム組成物と同様でよく、例えば、常温でも十分硬化するが、必要に応じて加熱してもよい。好ましくは100~120℃で8~12分で付加硬化させるのがよい。このようにして得られる本発明の熱伝導性シリコーン硬化物は熱伝導性に優れる。
[熱伝導性シリコーン硬化物の熱伝導率]
本発明の熱伝導性シリコーン硬化物の熱伝導率は、23℃における測定値が5.5W/m・K以上であることが好ましく、6.0W/m・K以上であることがより好ましい。なお、本発明において、熱伝導率はホットディスク法による測定に基づく。
[熱伝導性シリコーン硬化物の絶縁破壊電圧]
本発明の熱伝導性シリコーン硬化物の絶縁破壊電圧は、1mm厚の成形体の絶縁破壊電圧をJIS K 6249に準拠して測定したときの測定値であり、好ましくは10kV/mm以上、より好ましくは12kV/mm以上である。絶縁破壊電圧が10kV/mm以上のシートの場合、使用時に安定的に絶縁を確保することができる。なお、このような絶縁破壊電圧は、フィラーの種類や純度を調節することにより、調整することができる。
[熱伝導性シリコーン硬化物の硬度]
本発明における熱伝導性シリコーン硬化物の硬度は、アスカーC硬度計で測定した23℃における測定値が好ましくは60以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下であり、また5以上であることが好ましい。硬度が60以下である場合、被放熱体の形状に沿うように変形し、被放熱体に応力をかけることなく良好な放熱特性を示すことができる。なお、このような硬度は、(A)成分と(B)成分の比率を変えて、架橋密度を調節することにより、調整することができる。硬度が低いものであれば圧縮性に優れる。
本発明における熱伝導性シリコーン硬化物は、アスカーC硬度計で測定した硬さにおいて、150℃で500時間保管後の硬さが、保管前の硬さに対して、-5ポイント以上、40ポイント以下のものであることが好ましく、150℃で500時間保管後のアスカーC硬度の低下が5ポイント未満であることがより好ましい。この熱伝導性シリコーン硬化物のアスカーC硬度の低下が5ポイント以下であると、この硬化物は高温で長時間使用しても硬度の低下が小さいものとなる。保管前の硬さは、熱伝導性シリコーン組成物を、プレス成型機を用いて、120℃、10分間の条件で6mm厚のシート状に硬化させ、そのシートを2枚重ねてアスカーC硬度計で測定した値である。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、動粘度は23℃においてキャノン・フェンスケ型粘度計により測定した。また、平均粒径は日機装(株)製の粒度分析計であるマイクロトラックMT3300EXにより、レーザ回折・散乱法にて測定した体積基準の累積平均粒径(メディアン径)の値である。
下記実施例及び比較例に用いられる(A)~(G)成分を下記に示す。
(A)成分:下記の2種類のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン。
(A-1):下記式(5)で示される動粘度600mm/sのオルガノポリシロキサン。
(A-2):下記式(5)で示される動粘度30,000mm/sのオルガノポリシロキサン。
Figure 0007485634000005
(式中、Xはビニル基であり、fは上記粘度を与える数である。)
(B)成分:下記の2種類のオルガノハイドロジェンポリシロキサン。
(B-1):下記式(6-1)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン。
Figure 0007485634000006
(式中、gは27、hは3であり、括弧内のシロキサン単位の配列順は不定である。)
(B-2):下記式(6-2)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン。
Figure 0007485634000007
(式中、gは18である。)
(C)成分:平均粒径が下記の通りである球状アルミナ、不定形アルミナ。
(C-1):平均粒径が88.6μmの球状アルミナ。
(C-2):平均粒径が48.7μmの球状アルミナ。
(C-3):平均粒径が16.7μmの球状アルミナ。
(C-4):平均粒径が1.7μmの不定形アルミナ。
(D)成分:5質量%塩化白金酸2-エチルヘキサノール溶液。
(E)成分:エチニルメチリデンカルビノール。
(F)成分:下記式(7)で示される平均重合度が30の片末端がトリメトキシシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン。
Figure 0007485634000008
(G)成分:BET比表面積が140m/gの酸化セリウム粉末。
[実施例1~5、比較例1~2]
実施例1~5及び比較例1~2において、上記(A)~(G)成分を下記表1に示す所定の量を用いて下記のように熱伝導性シリコーン組成物を調製し、下記方法に従って熱伝導性シリコーン組成物の粘度を測定した。熱伝導性シリコーン組成物を成形、硬化させ、得られた熱伝導性シリコーン硬化物の熱伝導率、絶縁破壊電圧、硬度を下記方法に従って測定した。結果を表1に示す。
[熱伝導性シリコーン組成物の調製]
(A)、(C)、(F)、(G)成分を下記表1の実施例1~5及び比較例1~2に示す所定の配合量で加え、プラネタリーミキサーで60分間混練した。そこに(D)成分を下記表1の実施例1~5及び比較例1~2に示す所定の量で加え、更にセパレータとの離型を促す内添離型剤として、信越化学製のフェニル変性シリコーンオイルであるKF-54を有効量加え、30分間混練した。
そこに更に(B)、(E)成分を下記表1の実施例1~5及び比較例1~2に示す所定の量で加え、30分間混練し、熱伝導性シリコーン組成物を得た。
[評価方法]
熱伝導性シリコーン組成物の粘度:
実施例1~5及び比較例1で得られた熱伝導性シリコーン組成物の粘度を、23℃においてフローテスタ粘度計により測定した。測定装置としては島津製作所製のCFT-500EXを使用した。ダイ穴径をφ2mm、ダイ長さを2mm、試験荷重を10kgとして時間とストロークをプロットし、傾きから粘度を算出した。
熱伝導率:
実施例1~5及び比較例1で得られた熱伝導性シリコーン組成物を、プレス成型機を用いて、120℃、10分間の条件で6mm厚のシート状に硬化させ、そのシートを2枚用いて、熱伝導率計(商品名:TPS-2500S、京都電子工業(株)製)により該シートの熱伝導率を測定した。
絶縁破壊電圧:
実施例1~5及び比較例1で得られた熱伝導性シリコーン組成物を、プレス成型機を用いて、120℃、10分間の条件で1mm厚のシート状に硬化させ、JIS K 6249に準拠して絶縁破壊電圧を測定した。
硬度:
実施例1~5及び比較例1で得られた熱伝導性シリコーン組成物を上記と同様に6mm厚のシート状に硬化させ、そのシートを2枚重ねてアスカーC硬度計で測定した。
150℃、500時間保管後の硬度:
上記硬度測定後の熱伝導性シリコーン硬化物のシートを、150℃の高温炉に500時間保管した後、そのシートを2枚重ねてアスカーC硬度計で測定した。
Figure 0007485634000009
表中、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン中の全アルケニル基量に対するオルガノハイドロジェンポリシロキサン中の全ケイ素原子に直接結合した水素原子量を、H/Viとする。
実施例1~5では、熱伝導性シリコーン組成物の粘度、熱伝導性シリコーン硬化物の熱伝導率、絶縁破壊電圧、硬度とも良好な結果であった。実施例5では酸化セリウムを添加しなかったが、150℃の高温で保管しても、十分な硬度を有していた。また、酸化セリウムを添加した場合(実施例1~4)、150℃の高温で保管しても、硬度の低下はみられなかった。
比較例1のように(C-2)成分を含有せず、熱伝導性充填材の総質量部が3,900質量部より少なくなると、熱伝導性シリコーン硬化物中のフィラー充填率が小さくなり、熱伝導率が低下する。また、比較例2のように熱伝導性充填材の総質量部が6,000質量部を超えると、熱伝導性シリコーン組成物の濡れ性が不足し、グリース状の均一な熱伝導性シリコーン組成物を得ることができない。
また、実施例1~5では、熱伝導性シリコーン組成物の粘度が300~600Pa・s程度であり、加工性に優れていた。一方比較例1では粘度が200Pa・sであり、加工性が悪く、比較例2ではグリース状にならなかった。
さらに、実施例1~5では硬度が13~15であり、圧縮性に優れていた。一方比較例1では硬度が11であり、圧縮性が悪く、比較例2では測定不可であった。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

Claims (9)

  1. 熱伝導性シリコーン組成物であって、
    (A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
    (B)ケイ素原子に直接結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:ケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数が前記(A)成分由来のアルケニル基のモル数の0.1~5.0倍量となる量、
    (C)下記(C-1)~(C-4)成分からなる熱伝導性充填材:3,900~6,000質量部(ただし、3,900~4,000質量部であるものを除く)
    (C-1)平均粒径が65μmを超えて135μm以下である球状アルミナフィラー(ただし、平均粒径が100μmを超えて135μm以下であるものを除く):1,400~3,000質量部(ただし、1,400~1,500質量部であるものを除く)
    (C-2)平均粒径が30μmを超えて65μm以下である球状アルミナフィラー:500~1,500質量部、
    (C-3)平均粒径が4μmを超えて30μm以下である球状アルミナフィラー:300~900質量部、
    (C-4)平均粒径が0.4μmを超えて4μm以下である不定形アルミナフィラー:1,000~1,900質量部、
    (D)白金族金属系硬化触媒:前記(A)成分に対して白金族金属元素質量換算で0.1~2,000ppm、及び
    (E)付加反応制御剤:0.01~2.0質量部、
    を含むものであることを特徴とする熱伝導性シリコーン組成物。
  2. 23℃における粘度が2,000Pa・s以下のものであることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
  3. 更に、(F)成分として、
    (F-1)下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物、及び
    Si(OR4-a-b (1)
    (式中、Rは独立に炭素原子数6~15のアルキル基であり、Rは独立に非置換又は置換の炭素原子数1~12の1価炭化水素基であり、Rは独立に炭素原子数1~6のアルキル基であり、aは1~3の整数、bは0~2の整数であり、但しa+bは1~3の整数である。)
    (F-2)下記一般式(2)で表される分子鎖片末端がトリアルコキシシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、
    Figure 0007485634000010
    (式中、Rは独立に炭素原子数1~6のアルキル基であり、cは5~100の整数である。)
    からなる群から選ばれる少なくとも1種を前記(A)成分の100質量部に対して0.01~300質量部を含むものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
  4. 更に、(G)成分として、酸化セリウムを前記(A)成分の100質量部に対して6.5~25.0質量部を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン組成物の硬化物であることを特徴とする熱伝導性シリコーン硬化物。
  6. 請求項5に記載の熱伝導性シリコーン硬化物であって、アスカーC硬度計で測定した硬さにおいて、150℃で500時間保管後の硬さが、保管前の硬さに対して、-5ポイント以上、40ポイント以下のものであることを特徴とする熱伝導性シリコーン硬化物。
  7. 23℃における熱伝導率が、5.5W/m・K以上のものであることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の熱伝導性シリコーン硬化物。
  8. 1mm厚における絶縁破壊電圧が10kV/mm以上のものであることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン硬化物。
  9. 形状がシート状のものであることを特徴とする請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン硬化物。
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