以下に、図示した一実施の形態に基づいて、この発明を説明する。一実施の形態における減衰バルブ1は、図1に示すように、ポート2aとポート2aを取り囲む弁座2bとを有するディスク2と、正面側を弁座2bに離着座させてポート2aを開閉するリーフバルブ3と、リーフバルブ3の背面側に設けられた筒状のハウジング4と、リーフバルブ3の背面に当接するとともにハウジング4の内周に摺動自在に挿入されてハウジング4とともに内方にリーフバルブ3に背圧を作用させる背圧室5を形成する環状のスプール6と、リーフバルブ3の背面側であって背圧室5内に臨むとともにスプール6より外径が小径な環状のばね支持部4gと、スプール6の反リーフバルブ側端となる一端とばね支持部4gとの間に介装されてスプール6をリーフバルブ3に当接させる方向へ付勢する環状のリーフスプリング7とを備えて構成されている。
この減衰バルブ1は、緩衝器100に適用されており、緩衝器100は、主として伸縮時にポート2aを通過する液体に抵抗を与えることによって減衰力を発生するようになっている。
この減衰バルブ1が適用される緩衝器100は、たとえば、図2に示すように、シリンダ101と、シリンダ101内に摺動自在に挿入されるピストン102と、シリンダ101内に移動挿入されてピストン102に連結されるロッド103と、シリンダ101内に挿入したピストン102で区画した伸側室104と圧側室105と、シリンダ101の外周を覆ってシリンダ101との間に排出通路106を形成する中間筒107と、さらに、中間筒107の外周を覆って中間筒107との間にリザーバ108を形成する外筒109とを備えて構成されており、伸側室104と圧側室105とには液体が充填されており、リザーバ108内には液体が貯留される他に気体も封入されている。なお、本実施の形態の緩衝器100では、液体として作動油を用いているが、液体は、作動油以外にも、減衰バルブ1を利用して減衰力を発揮可能な液体であれば使用可能である。
そして、この緩衝器100の場合、リザーバ108から圧側室105へ向かう作動油の流れのみを許容する吸込通路110と、ピストン102に設けられて圧側室105から伸側室104へ向かう作動油の流れのみを許容する整流通路111とを備え、排出通路106は伸側室104とリザーバ108とを連通し、減衰バルブ1は、ポート2aを排出通路106に接続して当該排出通路106の途中に設けられている。
したがって、この緩衝器100は、圧縮作動する際には、ピストン102が図2中下方へ移動して圧側室105が圧縮され、圧側室105内の作動油が整流通路111を介して伸側室104へ移動する。この圧縮作動時には、ロッド103がシリンダ101内に侵入するためシリンダ101内でロッド侵入体積分の作動油が過剰となり、過剰分の作動油がシリンダ101から押し出されて排出通路106を介してリザーバ108へ排出される。緩衝器100は、排出通路106を通過してリザーバ108へ移動する作動油の流れに減衰バルブ1で抵抗を与えて、シリンダ101内の圧力を上昇させて圧側減衰力を発揮する。
反対に、緩衝器100が伸長作動する際には、ピストン102が図2中上方へ移動して伸側室104が圧縮され、伸側室104内の作動油が排出通路106を介してリザーバ108へ移動する。この伸長作動時には、ピストン102が上方へ移動して圧側室105の容積が拡大して、この拡大分に見合った作動油が吸込通路110を介してリザーバ108から供給される。そして、緩衝器100は、排出通路106を通過してリザーバ108へ移動する作動油の流れに減衰バルブ1で抵抗を与えて伸側室104内の圧力を上昇させて伸側減衰力を発揮する。
前述したところから理解できるように、緩衝器100は、伸縮作動を呈すると、必ずシリンダ101内から排出通路106を介して作動油をリザーバ108へ排出し、作動油が圧側室105、伸側室104、リザーバ108を順に一方通行で循環するユニフロー型の緩衝器に設定され、伸圧両側の減衰力を単一の減衰バルブ1によって発生するようになっている。
つづいて、減衰バルブ1は、前述したように、ポート2aとポート2aを取り囲む弁座2bとを有するディスク2と、正面側を弁座2bに離着座させてポート2aを開閉するリーフバルブ3と、リーフバルブ3の背面側に設けられた筒状のハウジング4と、リーフバルブ3の背面に当接するとともにハウジング4の内周に摺動自在に挿入されてハウジング4とともに内方にリーフバルブ3に背圧を作用させる背圧室5を形成する環状のスプール6と、リーフバルブ3の背面側であって背圧室5内に臨むとともにスプール6より外径が小径な環状のばね支持部4gと、スプール6の反リーフバルブ側端となる一端とばね支持部4gとの間に介装されてスプール6をリーフバルブ3に当接させる方向へ付勢する環状のリーフスプリング7とを備える他にも、本実施の形態では、中間筒107の開口部に設けたスリーブ107aに嵌合されるバルブ保持部材10と、バルブ保持部材10とハウジング4の内部に設けられて背圧室5にポート2aの上流側の圧力を導くパイロット通路23と、パイロット通路23に設けた制御弁24と、制御弁24に推力を与えるソレノイド40とを備えている。
以下、減衰バルブ1の各部について詳細に説明する。バルブ保持部材10は、図3に示すように、スリーブ107a内に嵌合される大径の基部10aと、基部10aから図3中右方へ突出するとともに図3中で右端外周に螺子部(符示せず)を有する軸部10bと、基部10aと軸部10bとを軸方向に貫くように形成されてパイロット通路23の一部を形成する中空部10cと、中空部10cの途中に設けたオリフィス10dと、基部10aの図3中左端から右端へ貫く複数の通路10eとを備えて構成されている。
通路10eは、前記したように基部10aを貫いていて中空部10cに通じており、さらに、中空部10cを介して中間筒107で形成した排出通路106を介して伸側室104内に連通される。また、通路10eにおける基部10aの図3中右端側の開口は、リザーバ108に連通されている。つまり、この緩衝器100の場合、伸縮時に伸側室104から排出通路106および通路10eを介してリザーバ108へ作動油を排出するようになっていて、通路10eの上流は伸側室104となる。また、中空部10cの図3中左端側の開口も、通路10eと同様に、排出通路106を介して伸側室104内に連通されている。
なお、このバルブ保持部材10の基部10aの図3中左方側を小径にして形成した小径部10gをスリーブ107a内に嵌合しており、この小径部10gの外周には、シールリング10fが装着されてスリーブ107aとの間がシールされ、基部10aの外周を介して排出通路106がリザーバ108へ通じてしまうことが無いようになっている。
つづいて、バルブ保持部材10の基部10aの図3中右端には、基部10aに離着座して通路10eを開閉するディスク2が積層されている。このディスク2は、環状であって、肉厚を軸方向に貫く複数のポート2aと、反バルブ保持部材側となる背面側に設けられてポート2aの外周を取り囲んで背面側に突出する環状の弁座2bとを備えている。さらに、ディスク2は、バルブ保持部材10の基部10aに対向する端部から基部10a側に突出する環状凸部2cを備えている。環状凸部2cは、基部10aにおける通路10eより外周側に対向しており、ディスク2が基部10aに当接すると、基部10aの通路10eの外周側に環状凸部2cが着座する。よって、ディスク2が基部10aに当接すると、ディスク2によって通路10eの出口端が閉塞される。また、ポート2aは、通過する作動油の流れに対して抵抗を与えるようになっており、詳しくは後述するが、通路10eを通過した作動油が、ポート2aを通過してディスク2の背面側へ移動すると、ディスク2の正面側であるバルブ保持部材側と背面側とでは圧力に差が生じるようになっている。なお、本実施の形態の減衰バルブ1では、ディスク2に環状凸部2cを設けているが、バルブ保持部材10の基部10aに通路10eの外周を取り囲む弁座を設けてもよい。
そして、このディスク2は、バルブ保持部材10の軸部10bの外周に装着した環状のスペーサ25の外周に摺動自在に装着されている。スペーサ25は、その軸方向の厚みがディスク2の内周の軸方向の厚みよりも厚く、ディスク2は、スペーサ25の外周を軸方向である図3中左右方向へ移動することができるようになっている。したがって、ディスク2は、バルブ保持部材10に対して浮動状態に組付けられていて、バルブ保持部材10に対して遠近することで基部10aに離着座することができるようになっていて、基部10aから離座すると通路10eを開放する。また、弁座2bには、切欠オリフィス2dが設けられている。オリフィスは、切欠オリフィス2dに代えて、バルブ保持部材10やディスク2の環状凸部2cに設けられてもよい。
さらに、このディスク2の背面側には、リーフバルブ3が積層されている。このリーフバルブ3は、複数の環状板を積層して構成される積層リーフバルブとされており、内周が軸部10bに組付けられてスペーサ25と軸部10bに螺子締結されるハウジング4とで挟持されている。したがって、リーフバルブ3は、外周側の撓みが許容されてディスク2の弁座2bに離着座することができるようになっている。リーフバルブ3における環状板の外径は、背面側へ積層されるに従って段階的に小さくなっている。
また、リーフバルブ3の内周はスペーサ25に積層され、外周はディスク2の背面からリーフバルブ3側へ突出する弁座2bに着座するようになっているので、このリーフバルブ3とディスク2との間には空間があり、この空間で中間室9が形成されている。なお、中間室9は、ポート2aを介して通路10eに連通されている。そして、リーフバルブ3がポート2aを介して中間室9内に作用する圧力を受けて撓んで弁座2bから離座すると、ディスク2との間に環状隙間が形成されて、通路10eおよびポート2aを通過した作動油がリーフバルブ3とディスク2の間を抜けてリザーバ108へ移動できる。つまり、ディスク2が基部10aに着座していてもリーフバルブ3が撓むことで弁座2bから離座すると、ポート2aが開放されて作動油が伸側室104からリザーバ108へ移動できる。
さらに、リーフバルブ3が撓むとともに、ディスク2が通路10eから受ける圧力で押し上げられると、ディスク2の全体がスペーサ25上をスライドして基部10aから離座し、この場合には、通路10eを通過した作動油は、ディスク2と基部10aとの間に生じる環状隙間を介してリザーバ108へ排出される。なお、リーフバルブ3は、複数の環状板を積層した積層リーフバルブとして構成されているが、環状板の枚数は任意である。
そして、軸部10bの先端である図1中右端には、ハウジング4が螺着される。すると、軸部10bに組み付けられたスペーサ25およびリーフバルブ3がバルブ保持部材10の基部10aとハウジング4とで挟持されて固定される。なお、前述したように、スペーサ25の外周に装着されるディスク2は、スペーサ25の外周で固定される浮動状態とされており、軸方向に移動可能である。
ハウジング4は、図3に示すように、内周に螺子部(符示せず)を有してバルブ保持部材10の軸部10bに螺着される内筒4aと、内筒4aに対して環状の隙間を開けて対向する外筒4bと、内筒4aの図3中右端外周から径方向へ突出して外筒4bの図3中右端に接続されるフランジ状の底部4cと、筒状であって底部4cの反内筒側から立ち上がるとともに外周に螺子部(符示せず)を有するソケット4dと、底部4cを貫いて内筒4aと外筒4bとの間の環状隙間とソケット4d内とを連通する孔4eと、ソケット4dの外周に軸方向沿って設けられた切欠溝4fとを備えている。
ハウジング4の内筒4aは、バルブ保持部材10の軸部10bに螺着されると、バルブ保持部材10の基部10aと協働してスペーサ25およびリーフバルブ3を挟持する。また、ハウジング4における内筒4aの外周であって基端となる図3中右端の外径が大きくなっていて段部が形成されており、当該段部でリーフバルブ3の背面に対向する環状面でなるばね支持部4gが設けられている。このばね支持部4gは、リーフスプリング7の内周を支持するばね受として機能する。また、ハウジング4内は、バルブ保持部材10の中空部10cに通じており、オリフィス10dを介して通路10eの上流である伸側室104内に連通されている。
また、図3に示すように、外筒4bの内周には、スプール6が摺動自在に挿入されている。スプール6は、環状であって、反リーフバルブ側端となる一端(図3中右端)の外周部を一端外周部6aとして、この一端外周部6aの内側に他端側へ傾斜するテーパ部6bを有するととともに、リーフバルブ側端となる他端(図3中左端)の外周部を他端外周部6cとして、この他端外周部6cの内側に一端側へ傾斜するテーパ部6dを有している。また、スプール6は、図4に示すように、一端外周部6aを径方向に貫く複数の溝6eを備えている。なお、本実施の形態の減衰バルブ1では、溝6eは、スプール6の周方向に等間隔を以て3つ設けられている。
スプール6は、ハウジング4に対して軸方向へ移動可能であるとともに、他端外周部6cをリーフバルブ3の背面の外周部に当接させていて、ハウジング4と協働して背圧室5を形成している。背圧室5は、ハウジング4の底部4cに設けられた孔4eを介してソケット4d内に連通されている。前述した通り、ハウジング4内が伸側室104内に連通されているので、伸側室104から排出された作動油は、オリフィス10dおよび孔4eを介して背圧室5に導かれる。このようにして、通路10eの上流の圧力がオリフィス10dによって減圧されて背圧室5に導入される。
また、スプール6は、リーフバルブ3の外周が当接するスプール6の他端外周部6cより内側にテーパ部6dを有しているので、リーフバルブ3を背面側へ向かうほど外径が段階的に小さくなる積層リーフバルブとしてもスプール6が干渉しない。リーフバルブ3における環状板の枚数および外径については任意に設計変更できるが、スプール6のリーフバルブ側端となる他端側にテーパ部6dを設けることで、リーフバルブ3の環状板の枚数や外径の大きさの選択の自由度が向上する。
リーフスプリング7は、本実施の形態の減衰バルブ1では、環状の皿ばねとされており、反リーフバルブ側の内周がハウジング4に設けられたばね支持部4gによって支持されるとともにリーフバルブ側の外周がスプール6の一端外周部6aによって支持されている。ばね支持部4gの外径は、スプール6の内径よりも小径とされており、また、リーフバルブ3がディスク2の弁座2bに着座し、ディスク2がバルブ保持部材10の基部10aに着座し、且つ、スプール6がリーフバルブ3に当接している状態において、スプール6の軸方向で、スプール6の一端外周部6aのリーフスプリング7の支持面よりばね支持部4gのリーフスプリング7の支持面の方がリーフバルブ側に配置されている。つまり、図3中で、スプール6の一端外周部6aよりハウジング4のばね支持部4gの方が左方に配置されている。
よって、リーフスプリング7は、初期撓みが与えられて撓んだ状態でスプール6とばね支持部4gとの間に介装されていて、スプール6を常時リーフバルブ3へ当接させる方向へ付勢している。スプール6の軸方向長さとばね支持部4gの軸方向の位置の設定によってリーフスプリング7の初期撓み量を設定できる。リーフスプリング7は、スプール6を常にリーフバルブ3から離間しないように付勢する必要があるので、軸方向でスプール6の一端外周部6aよりハウジング4のばね支持部4gがリーフバルブ3に近くなるように設定すればよい。ただし、リーフスプリング7の付勢力は減衰バルブ1の開弁圧に影響するため、リーフスプリング7がスプール6を付勢する付勢力は、なるべく小さい方が好ましいので、リーフスプリング7の初期撓み量を小さくする方が望ましい。
また、リーフスプリング7の反リーフバルブ側の内周のみがリーフバルブ3の背面に対向するばね支持部4gに当接しており、リーフスプリング7の内周がハウジング4に固定的に支持されていない。よって、スプール6がディスク2から軸方向であって離間する方向へ移動した際に、このように固定的に支持されていないリーフスプリング7がスプール6に与える付勢力は、内周固定された場合のリーフスプリングの付勢力よりも小さくなる。したがって、このようにリーフスプリング7がばね支持部4gによって支持される構造を採用すると、リーフスプリング7の見掛け上のばね定数が低くなるので、スプール6のディスク2から離間する方向へ移動した時にリーフスプリング7がスプール6へ与える付勢力の増加を抑制できる。
さらに、スプール6の一端外周部6aの内側にテーパ部6bが設けられているため、一端外周部6aの内径を大きくできる。リーフスプリング7の外周側の支持径は、スプール6の一端外周部6aの内径で決せられ、前記支持径が大きくなればなるほど、スプール6の前記移動に伴うリーフスプリング7の撓み量を低減できる。したがって、このようにスプール6の一端外周部6aの内側にテーパ部6bを設けると、リーフスプリング7の見掛け上のばね定数を低くできるため、スプール6のディスク2から離間する方向へ移動した時にリーフスプリング7がスプール6へ与える付勢力の増加を抑制できる。
なお、スプール6の一端外周部6aには溝6eが設けられており、リーフスプリング7が孔や溝を一切備えていなくともリーフスプリング7の図3中左方のリーフバルブ側の部屋と図3中右方の反リーフバルブ側の部屋とが溝6eによって連通されるので、リーフスプリング7が背圧室5を分断しない。溝6eは、背圧室5内のリーフスプリング7のリーフバルブ側の部屋と反リーフバルブ側の部屋とで差圧が生じない程度の流路面積を確保できるように設けられている。また、溝6eの周方向幅の設定によって、図5に示すように、スプール6の移動量に対してリーフスプリング7がスプール6に与える付勢力の大きさの特性を変更できる。溝6eの幅を狭くする場合、図5中の特性線Aで示すように、リーフスプリング7の見掛け上のばね定数が大きくなる傾向を示すとともに特性線Aの途中に現れる線形域(スプール6の移動量にリーフスプリング7の付勢力が比例する領域)が狭くなる。溝6eの幅を広くする場合、図5中の特性線Bで示すように、リーフスプリング7の見掛け上のばね定数が小さくなる傾向を示すとともに特性線Bの途中に現れる線形域(スプール6の移動量にリーフスプリング7の付勢力が比例する領域)が広くなる。溝6eの流路面積を前述のように確保する必要があるので、溝6eの幅を狭くしたい場合には、溝6eの設置数を少なくすればよく、溝6eの幅を広くしたい場合には、溝6eの設置数を多くすればよい。したがって、減衰バルブ1に求められる要求仕様により、リーフスプリング7がスプール6に与えるべき付勢力の特性を決定して溝6eの設置数と幅とを適宜設定すればよい。なお、溝6eをスプール6に設けて背圧室5の分断を回避するのに代えて、リーフスプリング7を孔あきのリーフスプリングとしてもよい。
また、前述した通り、伸側室104から排出された作動油は、オリフィス10dおよび孔4eを介して背圧室5に導かれるため、リーフバルブ3の背面には、スプール6を付勢するリーフスプリング7による付勢力以外に、背圧室5の内部圧力によってリーフバルブ3をディスク2へ向けて押しつける付勢力が作用する。すなわち、緩衝器100の伸縮作動する際に、ディスク2には、正面側から通路10eを介して伸側室104内の圧力が作用するとともに、背面側からはリーフバルブ3を介して背圧室5の内部圧力とリーフスプリング7による付勢力が作用することになる。
なお、スプール6の外径を直径とした円の面積からリーフバルブ3の最上段に積層される最小径の環状板の外径を直径とした円の面積を引いた背面側受圧面積に背圧室5の圧力を乗じた値の力がリーフバルブ3にディスク2へ押しつけるように作用し、弁座2bの内径を直径とした円の面積からスペーサ25の外径を直径とした円の面積を引いた正面側受圧面積に中間室9の圧力を乗じた値の力がリーフバルブ3にディスク2から離間する方向へ作用する。よって、リーフバルブ3の背面側受圧面積と正面側受圧面積との比が、背圧室5内の圧力に対するリーフバルブ3の開弁圧の比である増圧比を決定づけている。
そして、伸側室104内の圧力によって、中間室9内の圧力が高まりリーフバルブ3の外周を図3中右方へ撓ませようとする力が、背圧室5の内部圧力とリーフスプリング7による付勢力に打ち勝つと、リーフバルブ3が撓んで弁座2bから離座してリーフバルブ3とディスク2との間に隙間が形成されて通路10eが開放される。この実施の形態では、環状凸部2cの内径より弁座2bの内径を大きくしていて、ディスク2が通路10e側の圧力を受ける受圧面積と、ディスク2が中間室9側の圧力を受ける受圧面積に差をもたせていて、ポート2aによって生じる差圧がディスク2をバルブ保持部材10の基部10aから離座させる開弁圧に達しないと、ディスク2は基部10aに着座したままとなる。他方、リーフバルブ3が撓んで開弁状態にあり、ポート2aによって生じる差圧がディスク2を基部10aから離座させる開弁圧に達すると、ディスク2も基部10aから離座して通路10eを開放するようになる。つまり、中間室9の圧力に対するディスク2の開弁圧の比であるディスク2における増圧比より、リーフバルブ3における増圧比を小さく設定しており、ディスク2が開弁する際の伸側室104内の圧力よりもリーフバルブ3が開弁する際の伸側室104内の圧力の方が低くなるようになっている。すなわち、ディスク2の開弁圧よりもリーフバルブ3の開弁圧が低くなるように設定している。
つづいて、ハウジング4内のソケット4dおよび内筒4aの図3中右端部の内側には、筒状の弁座部材21が収容されている。この弁座部材21は、有底筒状の小径筒部21aと、小径筒部21aの図3中右端である端部の外周から外方へ向けて突出するフランジ部21bと、フランジ部21bの外周から小径筒部21aとは反対側へ向けて延びる大径筒部21cと、小径筒部21aの側方からフランジ部21bの内周に向けて斜めに開口する透孔21dと、大径筒部21cを径方向に貫いて大径筒部21cの内外を連通する切欠21eと、フランジ部21bの図3中右端内周から軸方向に突出する環状の制御弁弁座21fとを備えて構成されている。
弁座部材21は、大径筒部21cをハウジング4のソケット4d内に嵌合させてハウジング4内に収容されている。なお、弁座部材21内は、切欠21eおよびソケット4dに設けた切欠溝4fを介してリザーバ108に連通されている。また、小径筒部21aの外径は、ハウジング4の内筒4aの内径より小径とされており、弁座部材21内は、透孔21dおよびバルブ保持部材10の中空部10cおよびオリフィス10dを介して伸側室104に連通されている。
つづいて、弁座部材21の小径筒部21a内には、制御弁体22が摺動自在に挿入されている。詳しくは、制御弁体22は、小径筒部21a内に摺動自在に挿入される弁座部材側である図3中左端側の小径部22aと、反弁座部材側である図3中右端側の大径部22bと、小径部22aと大径部22bとの間に設けた環状の凹部22cと、反弁座部材側端の外周に設けたフランジ状のばね受部22dと、制御弁体22の先端から後端へ貫通する連通路22e、連通路22eの途中に設けたオリフィス22fとを備えて構成されている。
そして、制御弁体22の凹部22cは、制御弁体22が弁座部材21に対して軸方向へ許容される範囲内で移動する際、常に、透孔21dに対向して、制御弁体22が透孔21dを閉塞することが無いようになっている。
また、制御弁体22にあっては、前述のように、凹部22cを境にして反弁座部材側の外径が大径になっており、大径部22bの図3中左端に弁座部材21の制御弁弁座21fに対向する環状の弁部22gを備え、制御弁体22が弁座部材21に対して軸方向へ移動することで弁部22gが制御弁弁座21fに離着座するようになっている。
さらに、ばね受部22dとフランジ部21bとの間には、制御弁体22を反弁座部材側へ付勢するコイルばね33が介装されている。制御弁体22は、コイルばね33によって常に反弁座部材側へ付勢されている。このように、制御弁体22は、コイルばね33によって弁座部材21から離間する方向へ付勢される一方、ソレノイド40から弁座部材21に着座する方向へ向けて推力を受けるようになっている。
このように、制御弁体22、弁座部材21、コイルばね33およびソレノイド40とで制御弁24を構成しており、弁部22gが制御弁弁座21fに着座すると制御弁24が閉弁するようになっている。制御弁24は、閉弁状態では、バルブ保持部材10の中空部10cと弁座部材21内との連通を断ち、開弁状態では、中空部10cを弁座部材21内に連通する。よって、制御弁24が開弁すると、伸側室104は、中空部10c、オリフィス10d、透孔21d、弁座部材21内、切欠21eおよび切欠溝4fを介してリザーバ108に連通される。このように、本実施の形態では、中空部10c、オリフィス10d、透孔21d、弁座部材21内、切欠21eおよび切欠溝4fにてパイロット通路23を形成している。パイロット通路23のオリフィス10dより下流は、ハウジング4の孔4eを介して背圧室5に通じており、パイロット通路23のオリフィス10dの下流の圧力は制御弁24の開弁圧の制御によって調節できる。
制御弁24の開弁圧は、後述するソレノイド40によって制御され、ソレノイド40に与える電流量によって背圧室5内の圧力を調整できる。背圧室5内の圧力は、リーフバルブ3の背面に作用しているので、本実施の形態の減衰バルブ1では、ソレノイド40へ与える電流量の調節によってリーフバルブ3の開弁圧を調節でき、これによって、緩衝器100が発生する減衰力を大小変化させ得る。
なお、この場合、コイルばね33を利用して、制御弁体22を弁座部材21から遠ざかる方向へ付勢するようにしているが、コイルばね33以外にも付勢力を発揮することができる弾性体を使用することができる。さらに、制御弁体22の大径部22b内には、プランジャ34が嵌合されている。
また、制御弁体22は、弁座部材21の小径筒部21a内に挿入されると、小径筒部21a内であって透孔21dより先端側に空間26を形成する。この空間26は、制御弁体22に設けた連通路22e、オリフィス22fおよびプランジャ34に設けた通孔34aを介して制御弁24外に連通されている。これにより、制御弁体22が弁座部材21に対して図1中左右方向である軸方向に移動する際、前記空間26がダッシュポットとして機能して、制御弁体22の急峻な変位を抑制するとともに、制御弁体22の振動的な動きを抑制することができる。
このように構成された減衰バルブ1における各部は、緩衝器100の外筒109に設けた開口に取り付けたスリーブ109a内に収容されるとともに、ソレノイド40をスリーブ109aに回転可能に装着されたナット120に螺着することで緩衝器100に固定される。
ソレノイド40は、図6に示すように、樹脂モールドされた筒状のコイル41と、コイル41の内周に嵌合される筒状の非磁性体でなるフィラーリング42と、コイル41の図6中右端に当接するともにフィラーリング42の図6中右端の内周に嵌合される第一固定鉄心43と、コイル41の図6中左端に当接するとともに第一固定鉄心43と空隙をもってフィラーリング42の図6中左端の内周に嵌合される第二固定鉄心44と、第一固定鉄心43と第二固定鉄心44との間に上下動可能に配置される第一可動鉄心45及び第二可動鉄心46と、第一可動鉄心45を制御弁側へ向けて図6中左向きに付勢するばね47と、第一可動鉄心45の第二可動鉄心46に対する下方への移動量を制限する皿ばね48と、第二可動鉄心46の下方への移動量を制限する皿ばね49を備えている。
コイル41は、筒状に樹脂モールドされて第一可動鉄心45および第二可動鉄心46の外周に配置されている。コイル41の内周には、非磁性体で形成された筒状のフィラーリング42が嵌合されている。フィラーリング42は、図6中の左端側の内周から内側向けて突出する環状のフランジ42aと、図6中右端内周に設けられた環状溝42bとを備えている。
第一固定鉄心43は、磁性体で形成されており、樹脂モールドされたコイル41の図6中右端に当接する円盤状のベース43aと、ベース43aから立ち上がりフィラーリング42の内周に嵌合する筒状の嵌合部43bとを備えている。
第二固定鉄心44は、磁性体で形成されており、樹脂モールドされたコイル41の図6中左端に当接する環状のベース44aと、ベース44aの外周から立ち上がる筒状のケース部44bと、ベース44aの内周側から立ち上がりフィラーリング42の内周に嵌合する筒状の嵌合部44cとを備えている。
ケース部44bの内周には、コイル41およびコイル41の内周に嵌合されるフィラーリング42が収容されるとともに、ケース部44bの図6中右端側内周には、第一固定鉄心43が収容されている。そして、ケース部44bの図6中右端を外周から加締めることで第一固定鉄心43がケース部44bに把持されて固定される。第一固定鉄心43がケース部44bに固定されると、コイル41とフィラーリング42とが第一固定鉄心43のベース43aと第二固定鉄心44のベース44aとで挟持されるとともに、各嵌合部43b,44cがフィラーリング42の内周に嵌合されコイル41がケース部44b内に嵌合されているのでコイル41とフィラーリング42とが軸方向および径方向に拘束された状態で第一固定鉄心43と第二固定鉄心44との間に収容される。
また、第二固定鉄心44の嵌合部44cの先端となる図6中右端外周には、テーパ状の面取り部44dが設けられていて、フィラーリング42との間に環状隙間が形成されている。この環状隙間には、シールリング50が収容されている。シールリング50は、フィラーリング42の内周に設けたフランジ42aと嵌合部44cの面取り部44dとに密着して第二固定鉄心44とフィラーリング42との間をシールしている。さらに、フィラーリング42の図6中右端内周に設けられた環状溝42b内には、第一固定鉄心43の嵌合部43bの外周に密着するシールリング51が装着されている。シールリング51は、第一固定鉄心43とフィラーリング42との間をシールしている。
フィラーリング42の内周であって、第一固定鉄心43の嵌合部43bと第二固定鉄心44の嵌合部44cとの間には、第一可動鉄心45が摺動自在に挿入されている。
また、第二固定鉄心44のベース44aの図1中左端には、左方へ向けて突出するとともに、減衰バルブ1におけるハウジング4のソケット4dの外周に螺合する接続筒44eが設けられている。
第一可動鉄心45は、磁性体で形成されており、フィラーリング42の内周に摺接する摺接筒45aと、筒状であって摺接筒45aの内側に配置されるとともに内周に向けて突出する環状のばね受45cを有するばね支持筒45bと、摺接筒45aとばね支持筒45bの図6中端同士を接続する環状部45dとを備えている。第一可動鉄心45の摺接筒45aの軸方向長さは、第一固定鉄心43の嵌合部43bと第二固定鉄心44の嵌合部44cとの間の軸方向の距離よりも短い。よって、第一可動鉄心45は、第一固定鉄心43と第二固定鉄心44との間でフィラーリング42に移動を案内されつつ軸方向に変位できる。そして、第一可動鉄心45は、環状部45dを第一固定鉄心43の嵌合部43bの図6中で左端面に対向させている。
また、ばね支持筒45bの内周に設けられたばね受45cと第一固定鉄心43のベース43aとの間には、第一可動鉄心45を常時第一固定鉄心43から軸方向であって離間する方向へ付勢するばね47が介装されている。ばね47は、一端が嵌合部43bの内周に挿入されるとともに、他端側がばね支持筒45b内に挿入されており、ばね47の径方向への位置ずれが防止されている。
第二可動鉄心46は、磁性体で形成されており、筒部46aと筒部46aの図6中左端を閉塞する底部46bとを備えて有底筒状とされており、筒部46aの外周を第一可動鉄心45の摺接筒45aの内周に摺接させている。なお、筒部46aの内径は、第一可動鉄心45のばね支持筒45bの外径より大径とされている。よって、第二可動鉄心46は、筒部46aが摺接する第一可動鉄心45の摺接筒45aに移動が案内されて第一可動鉄心45に対して軸方向へ相対移動できる。第一可動鉄心45は、摺接筒45aの外周をフィラーリング42に摺接させているので、第一可動鉄心45および第二可動鉄心46は、ともにフィラーリング42に軸ぶれせずに軸方向へ移動できる。なお、第二可動鉄心46の底部46bの外周は、常に、第二固定鉄心44の嵌合部44cの内周に接している。
また、筒部46aとばね支持筒45bとの間には、環状隙間が形成されているので、第二可動鉄心46の筒部46aと、第一可動鉄心45の摺接筒45a、ばね支持筒45bおよび環状部45dとで囲まれる空間が密閉されない。また、第二可動鉄心46の底部46bには、第二可動鉄心46の内外を連通する連通孔46cが設けられており、ばね支持筒45b内に連通される第二可動鉄心46内も密閉されないようになっている。
よって、第二可動鉄心46は、第一可動鉄心45に対して軸方向にスムーズに移動できるとともに、第一可動鉄心45もフィラーリング42および第二可動鉄心46に対して軸方向へスムーズに移動できる。
また、ばね47は、第一可動鉄心45を第二固定鉄心側へ付勢している。皿ばね48は、第一可動鉄心45と第二可動鉄心46とが軸方向にて接近して圧縮されると弾発力を発揮して第一可動鉄心45と第二固定鉄心44とのそれ以上の接近を規制する。皿ばね49は、第二可動鉄心46が第二固定鉄心44に軸方向で接近して圧縮されると弾発力を発揮して第二可動鉄心46の第二固定鉄心44へ向けてそれ以上接近するのを規制する。なお、皿ばね48,49に代えて、ウェーブワッシャやゴム等といった弾性体を設けてもよいし、第一可動鉄心45と第二可動鉄心46との接近、第二可動鉄心46と第二固定鉄心44との接近を規制できれば弾性体以外の部材を設けてもよい。
第一固定鉄心43、第二固定鉄心44、第一可動鉄心45および第二可動鉄心46は、前述したように、それぞれ磁性体で形成されていて、ソレノイド40において磁路Pを形成している。よって、コイル41に通電すると、コイル41にて発生する磁界が第一固定鉄心43、第二固定鉄心44、第一可動鉄心45および第二可動鉄心46を通ってコイル41へ戻る。したがって、コイル41へ通電すると、第一可動鉄心45が図6中右方に配置されている第一固定鉄心43に吸引されるとともに、第二可動鉄心46が図6中左方に配置されている第二固定鉄心44に吸引される。つまり、ソレノイド40におけるコイル41に通電すると、第一可動鉄心45と第二可動鉄心46とが互いに軸方向で離間する方向へ吸引される。
このように構成されたソレノイド40は、第二固定鉄心44にハウジング4を螺着することによって減衰バルブ1に組み付けられた後、第二固定鉄心44の図6中左端の外周に設けられた螺子部(符示せず)が緩衝器100の外筒109のスリーブ109aに装着されたナット120に螺着されて緩衝器100に取り付けられる。このように第二固定鉄心44を取り付けると、第二固定鉄心44内にソレノイド40の構成全部品が収容されているので、ソレノイド40を緩衝器100に装着できる。
このようにソレノイド40を緩衝器100に装着すると、第二可動鉄心46の底部46bが制御弁24における制御弁体22の後端に装着されたプランジャ34に当接する。よって、ソレノイド40が発生する推力は、プランジャ34を介して制御弁体22に伝達される。制御弁体22は、コイルばね33によって開弁方向に付勢される一方、ソレノイド40の推力を閉弁方向に受けるため、ソレノイド40の推力を調整すると、制御弁体22がパイロット通路23から受ける圧力で弁座部材21から離間するときの圧力、つまり、制御弁24の開弁圧を調節できる。パイロット通路23の制御弁24の上流であってオリフィス10dより下流の圧力は、制御弁24の開弁圧に等しくなるため、背圧室5の圧力も制御弁24の開弁圧に等しくなる。よって、ソレノイド40の推力の調整によって、背圧室5内の圧力を制御できる。
つづいて、図7には、ソレノイド40へ供給する電流量と、ソレノイド40が制御弁24における制御弁体22に与える力との関係を示している。この図7中、電流量Iaは、第一固定鉄心43から離れた状態にある第一可動鉄心45を第一固定鉄心43に吸着させるのに最低限必要な電流量であり、電流量Ibは、第一可動鉄心45が第一固定鉄心43に吸着された後に第一固定鉄心43と第一可動鉄心45の吸着状態を維持するのに最低限必要な電流量である。なお、電流量Icについては、後述する。なお、ソレノイド40が示されている各図は、コイル41へ電流供給して第一可動鉄心45を第一固定鉄心43に吸着させた状態を示している。
まず、コイル41へ供給する電流量がゼロの場合、つまり、ソレノイド40の非通電時には、ばね47の付勢力により第一可動鉄心45が図6中左方へ押されて皿ばね48を介して第二可動鉄心46に突き当たり、第二可動鉄心46は、制御弁体22とともに左方へ押される。このように、ソレノイド40の非通電時には、制御弁体22は、第二可動鉄心46、皿ばね48および第一可動鉄心45を介してばね47による左向きの力を受ける。つまり、ソレノイド40の非通電時には、ソレノイド40は制御弁体22に、ばね47の付勢力に起因する左向きの力を与える。
次に、ソレノイド40へ供給する電流量を増やしていく場合、第一可動鉄心45を第一固定鉄心43へ吸引する図6中右向きの力が大きくなるとともに、第二可動鉄心46を第二固定鉄心44へ吸引する図6中左向きの力も大きくなる。このような場合、ソレノイド40へ供給する電流量が電流量Ia未満の領域では、制御弁体22にばね47の付勢力が伝わるものの、第一可動鉄心45を左方へ付勢するばね47の力の一部が第一可動鉄心45を右方(第一固定鉄心43側)へ吸引する力により相殺される。このため、電流量が電流量Ia未満の領域では、ソレノイド40へ供給する電流量を増やすほどソレノイド40が制御弁体22に与える左向きの力が減少する。
その一方、ソレノイド40へ供給する電流量を増やしていく場合であって、その電流量が電流量Ia以上の領域では、ばね47の付勢力に抗して第一可動鉄心45が第一固定鉄心43に引き寄せられて吸着される。このような状態では、ばね47の付勢力が第二可動鉄心46へ伝わらなくなって、第二可動鉄心46を第二固定鉄心44へ吸引する力のみが制御弁体22を押し下げる方向へ作用する。この第二可動鉄心46を吸引する図6中左向きの力は、ソレノイド40へ供給する電流量に比例して大きくなるので、ソレノイド40へ供給する電流量が電流量Ia以上の領域では、ソレノイド40へ供給する電流量を増やすほど、その電流量に比例してソレノイド40が制御弁体22に与える左向きの力が増加する。
反対に、第一可動鉄心45が第一固定鉄心43に吸着してばね47の付勢力が第二可動鉄心46に伝わらない状態から、ソレノイド40へ供給する電流量を減らしていく場合、第一可動鉄心45を第一固定鉄心43へ吸引する図6中右向きの力が小さくなるとともに、第二可動鉄心46を第二固定鉄心44へ吸引する図6中左向きの力も小さくなる。このような場合であっても、ソレノイド40へ供給する電流量が電流量Ib以上の領域では、第一可動鉄心45が第一固定鉄心43に吸着されて、ばね47の付勢力が第二可動鉄心46へ伝わらない状態が維持される。このため、ソレノイド40へ供給する電流量が電流量Ib以上の領域では、ソレノイド40へ供給する電流量を減らすほど、その電流量に比例してソレノイド40が制御弁体22に与える左向きの力が減少する。
その一方、第一可動鉄心45が第一固定鉄心43に吸着してばね47の付勢力が第二可動鉄心46に伝わらない状態から、ソレノイド40へ供給する電流量を減らしていく場合であって、その電流量が電流量Ib未満の領域になると、ばね47の付勢力によって第一可動鉄心45と第一固定鉄心43との吸着状態が解除されて、ばね47の付勢力が第二可動鉄心46へ伝わるようになる。このため、電流量が電流量Ib未満の領域では、ソレノイド40へ供給する電流量を減らすほどソレノイド40が制御弁体22に与える図6中左向きの力が増加する。
図7からもわかるように、第一可動鉄心45と第一固定鉄心43の吸着を維持するのに最低限必要な電流量であるIbは、離間した状態にある第一可動鉄心45を第一固定鉄心43に吸着させるのに最低限必要な電流量である電流量Iaより小さい(Ia>Ib)。このため、ソレノイド40に供給する電流量に対するソレノイド40が制御弁体22に与える力の特性は、ヒステリシスをもった特性となる。なお、図7では、理解を容易にするため、ソレノイド40へ供給される電流量が小さい領域を誇張して記載している。
そして、本実施の形態では、ソレノイド40へ供給する電流量を制御して、ソレノイド40が制御弁体22に与える力を制御しようとする場合、一旦電流量Ia以上の電流供給をして第一可動鉄心45を第一固定鉄心43に吸着させた後、ソレノイド40へ供給する電流量は、電流量Ibより大きな電流量Ic以上となる範囲で制御される。第一可動鉄心45が第一固定鉄心43に一度吸着されれば、ソレノイド40へ供給する電流量がIb未満にならなければ、第一可動鉄心45が第一固定鉄心43から離間しないので、電流量Icは、電流量Ibよりも大きければ電流量Iaよりも小さくて良い。これにより、ソレノイド40への通電量を制御する正常時には、第一可動鉄心45が第一固定鉄心43に吸着された状態が維持されるので、ソレノイド40へ供給する電流量と、ソレノイド40が制御弁体22に与える図6中左向きの力が比例関係となり、その力はソレノイド40へ供給する電流量を増やすほど大きくなる。
その正常時(制御時)において、ソレノイド40への通電によって生じる磁力に起因してソレノイド40が制御弁体22に与える力をソレノイド40の「推力」という。つまり、ソレノイド40の推力は、ソレノイド40へ供給する電流量の制御によって制御される。また、本実施の形態では、ソレノイド40へ供給する電流量とソレノイド40が制御弁体22に与える推力との関係が比例関係となり、供給電流量を増やすほど推力が大きくなり、供給電流量を減らすほど推力が小さくなる。
その一方、ソレノイド40への通電が断たれるフェール時においては、非通電時と同じ状況となるので、ソレノイド40のばね47によって制御弁体22が図6中左向きに付勢され、その付勢力は、ばね定数等のばね47の仕様に応じて予め決められる。また、フェール時(非通電時)に制御弁体22を付勢するばね47の付勢力の方向は、正常時に制御弁体22に付与される推力の方向と同じである。なお、ソレノイド40への通電を断った状態でのばね47の付勢力は、コイルばね33が制御弁体22を弁座部材21から離間させる付勢力よりも大きくしてある。よって、ソレノイド40は、非通電時であっても制御弁体22をコイルばね33に抗して弁座部材21に着座させる推力を発揮できる。
このようにソレノイド40の推力は、正常時には、ソレノイド40のコイル41へ供給される電流量が電流量Ic以上に制御され、通電量が大きくなればなるほど大きくなる。つまり、ソレノイド40への通電量が大きくなると、制御弁体22をコイルばね33に対向して閉弁方向へ押すソレノイド40の推力が大きくなるので、制御弁24の開弁圧は高くなる。よって、正常時において、ソレノイド40への通電量を電流量Icとすると制御弁24の開弁圧が最小となり、背圧室5の圧力が最も低くなり、リーフバルブ3の開弁圧が最小となる。他方、ソレノイド40への通電量を最大にすると制御弁24の開弁圧が最大となり、背圧室5の圧力が最も高くなって、リーフバルブ3の開弁圧が最大となる。なお、ソレノイド40への通電量の最大値は、コイル41や電源の仕様などによって適宜決定される。
また、フェール時には、前述した通りソレノイド40は、ばね47の付勢力を制御弁体22に伝達してコイルばね33に対向する推力を与える。よって、フェール時には、制御弁体22は、ばね47の付勢力からコイルばね33の付勢力を差し引いた力で弁座部材21に押し付けられるので、制御弁24の開弁圧はばね47とコイルばね33のばね定数等の仕様に応じて決せられる。よって、フェール時であっても、制御弁24の開弁圧を予め設定でき、背圧室5の圧力を予め設定される前記開弁圧にしてリーフバルブ3の開弁圧を任意に設定できる。
以下に、本実施の形態に係る減衰バルブ1と減衰バルブ1を備えた緩衝器100の作動について説明する。緩衝器100が伸縮して伸側室104から作動油が減衰バルブ1を経てリザーバ108へ排出されると、減衰バルブ1が正常動作する場合には、通路10eおよびパイロット通路23の上流の圧力が高まり、ソレノイド40に電流を供給して、制御弁24の開弁圧を調節するようにすると、パイロット通路23におけるオリフィス10dと制御弁24との間の圧力が背圧室5に導かれる。
背圧室5の内部圧力は、制御弁24の開弁圧に制御され、当該開弁圧をソレノイド40で調節することによりリーフバルブ3の背面に作用する圧力を調節することができ、ひいては、リーフバルブ3が通路10eを開放する開弁圧をコントロールすることができる。
より詳細には、伸側室104内の圧力によって、中間室9内の圧力が高まりリーフバルブ3の外周を図3中右方へ撓ませようとする力が、背圧室5の内部圧力とリーフスプリング7による付勢力に打ち勝つと、リーフバルブ3が撓んで弁座2bから離座してリーフバルブ3とディスク2との間に隙間が形成されて通路10eが開放される。よって、背圧室5内の圧力を制御弁24によって大小調節すると、リーフバルブ3を弁座2bから離座させ得る中間室9の圧力を大小調節できる。つまり、ソレノイド40へ与える電流量によってリーフバルブ3の開弁圧を制御できる。したがって、緩衝器100の減衰力特性(ピストン速度に対する減衰力の特性)は、図8に示すように、リーフバルブ3が開弁するまでは、減衰バルブ1の摺動隙間および切欠オリフィス2dを作動油が通過するので、減衰係数が大きな特性(図8中線X部分)となるが、リーフバルブ3が弁座2bから離座して通路10eを開くと、図8中線Yで示すように傾きが小さくなる、つまり、減衰係数が小さくなる特性となる。
また、先に述べたように、リーフバルブ3における増圧比をディスク2における増圧比よりも小さくしているので、リーフバルブ3の開弁圧はディスク2の開弁圧よりも小さいので、ポート2aによって生じる差圧がディスク2を基部10aから離座させる開弁圧に達しないと、ディスク2は基部10aに着座したままとなる。他方、リーフバルブ3が撓んで開弁状態にあり、緩衝器100のピストン速度が速くなり、ポート2aによって生じる差圧がディスク2を基部10aから離座させる開弁圧に達すると、ディスク2も基部10aから離座して通路10eを開放するようになる。すると、リーフバルブ3のみが開弁状態にあって、通路10eがポート2aのみを介してリザーバ108に連通される場合に対し、ディスク2が基部10aから離座すると、通路10eがポート2aを介さず直接にリザーバ108に連通され流路面積が大きくなるため、緩衝器100の減衰力特性は、図8中線Zに示すように、リーフバルブ3のみが開弁状態にある場合に比較して傾きが小さくなる、つまり、減衰係数がさらに小さくなる特性となる。
そして、ソレノイド40への通電量を調節して、制御弁24の開弁圧を大小させると、図8中の破線で示す範囲で、線Yおよび線Zを上下に移動させるように緩衝器100の減衰力特性を変化させることできる。
また、リーフバルブ3における増圧比をディスク2における増圧比よりも小さくすることができ、そうすることでリーフバルブ3の開弁圧はディスク2の開弁圧よりも小さくなり、二段階に通路10eをリリーフするので、この減衰バルブ1にあっては、制御弁24の開弁圧を最少にするフルソフト時における減衰力を小さくすることができるとともに、減衰力の可変範囲を大きくすることができる。
したがって、本実施の形態の減衰バルブ1によれば、緩衝器100のピストン速度が低速域にある際に小さな減衰力を出力でき減衰力過多となることがなく、ピストン速度が高速域になった際に要望されるハードな減衰力の上限も高めることができ減衰力不足を招くこともない。そのため、この減衰バルブ1を緩衝器100に適用すれば、減衰力可変範囲を大きくとることができ、車両における乗り心地を向上させることができる。
なお、本実施の形態の場合、制御弁24が、筒状であって内外を連通する透孔21dを有する小径筒部21aと、当該小径筒部21aの端部に設けられた環状の制御弁弁座21fとを備えた弁座部材21と、小径筒部21a内に摺動自在に挿入される小径部22aと、大径部22bと、小径部22aと大径部22bとの間に設けられて透孔21dに対向する凹部22cとを備えた制御弁体22とを備え、制御弁弁座21fに制御弁体22における大径部22bの端部を離着座させるようにしている。よって、この制御弁24は、制御弁体22を弁座部材21から抜け出る方向へ圧力が作用する受圧面積を小さくすることができ、受圧面積を小さくしながら、開弁時の流路面積を大きくすることができる。このようにすると、制御弁体22の受圧面積を減らしてソレノイド40が出力するべき推力を低減できるとともに、開弁時の流路面積を大きくすることで制御弁体22の移動量を低減して制御弁24が過剰に開弁するオーバーシュートを低減できる。
また、フェール時には、ソレノイド40へ電流供給が断たれるが、ソレノイド40は、第一可動鉄心45と第二可動鉄心46とを備えており、非通電時であってもばね47によって、通電時と同様の方向の推力を制御弁体22へ与えることができる。よって、本実施の形態の減衰バルブ1によれば、フェール時にもソレノイド40に推力を発揮させてリーフバルブ3の開弁圧を予め任意に設定される値に設定して、緩衝器100に十分な減衰力を発揮させ得る。
なお、フェール時に、制御弁体22に推力を与えられない一般的なプル型のソレノイドでは、背圧室5内の圧力が非常に低くなってしまって、リーフバルブ3の開弁圧も非常に低くなり、緩衝器の減衰力不足を招いてしまう。よって、このようなソレノイドを利用する場合、別途、フェール時に背圧室5の圧力を上昇させるためのフェール弁が必要となるなど、減衰バルブの構造が複雑となってしまう。これに対して、本実施の形態の減衰バルブ1では、別途のフェール弁の設置を要せずに、フェール時に緩衝器100に予め設定した減衰力を発揮させ得る。
また、フェール時に、制御弁体22に最大推力を与えてしまう一般的なプッシュ型のソレノイドでは、背圧室5内の圧力が最大となってしまって、リーフバルブ3の開弁圧が最大となり、緩衝器の減衰力過多を招いてしまう。よって、このようなソレノイドを利用する場合も、別途、フェール時に背圧室5の圧力を適正にするフェール弁が必要となるなど、減衰バルブの構造が複雑となってしまう。これに対して、本実施の形態の減衰バルブ1では、別途のフェール弁の設置を要せずに、フェール時に緩衝器100に予め設定した減衰力を発揮させ得る。
減衰バルブ1および緩衝器100は以上のように動作する。そして、本実施の形態の減衰バルブ1は、ポート2aとポート2aを取り囲む弁座2bとを有するディスク2と、正面側を弁座2bに離着座させてポート2aを開閉するリーフバルブ3と、リーフバルブ3の背面側に設けられた筒状のハウジング4と、リーフバルブ3の背面に当接するとともにハウジング4の内周に摺動自在に挿入されてハウジング4とともに内方にリーフバルブ3に背圧を作用させる背圧室5を形成する環状のスプール6と、リーフバルブ3の背面側であって背圧室5内に臨むとともにスプール6の内径より外径が小径な環状のばね支持部4gと、スプール6の反リーフバルブ側端となる一端とばね支持部4gとの間に介装されてスプール6をリーフバルブ3に当接させる方向へ付勢する環状のリーフスプリング7とを備えている。
このように構成された減衰バルブ1では、スプール6がハウジング4の内周に配置されており、スプール6の内外径を小さくできるとともに、スプール6を付勢するリーフスプリング7がスプール6の反リーフバルブ側端によって支持されるから、スプール6の内周にリーフスプリング7を支持するばね受を設ける必要が無くなる。よって、本実施の形態の減衰バルブ1によれば、スプール6の体積を小さくしてスプール6の慣性質量を低減できるから、リーフバルブ3の開閉時にスプール6の慣性の影響が小さくなるので、リーフバルブ3の開閉動作について応答性を向上できる。
また、本実施の形態の減衰バルブ1では、ばね支持部4gがリーフバルブ3の背面に対向してリーフスプリング7の内周端の反リーフバルブ側のみに当接するようになっている。このように構成された減衰バルブ1では、リーフスプリング7の反リーフバルブ側の内周のみがリーフバルブ3の背面に対向するばね支持部4gに当接しているためリーフスプリング7の内周がハウジング4に固定的に支持されていないので、スプール6の移動量に対するリーフスプリング7の全体の撓み量を低減でき、リーフスプリング7の見掛け上のばね定数を低くできる。ここで、一層スプール6の慣性質量を低減しようとする場合、スプール6の内外径を小さくすることになるが、そうするとリーフスプリング7の内外径差が小さくなってばね定数が大きくなり、製品毎にリーフバルブ3の開弁圧がばらつくという背反がある。ところが、本実施の形態の減衰バルブ1では、リーフスプリング7の見掛け上のばね定数を低減でき、リーフバルブ3の開弁圧に与えるリーフスプリング7の影響を低減できるから、これによってスプール6の内外径をより小径にして慣性質量をより小さくしても減衰力のばらつきが生じてしまうのを防止できる。つまり、このように構成された減衰バルブ1によれば、スプール6の慣性質量をより一層低減でき、リーフバルブ3の開閉動作において応答性をより一層向上できる。
さらに、本実施の形態の減衰バルブ1は、スプール6が一端の外周部となる一端外周部6aの内側にテーパ部6bを有し、リーフスプリング7がスプール6に対して一端外周部6aのみに当接するように構成されている。このように構成された減衰バルブ1では、リーフスプリング7の外周側の支持径を大きくでき、リーフスプリング7の撓み量を低減できる。したがって、このようにスプール6の一端外周部6aの内側にテーパ部6bを設けると、リーフスプリング7の見掛け上のばね定数を低くできる。そのため、このように構成された減衰バルブ1によれば、前述したリーフスプリング7の内周を固定的に支持しない場合と同様に、スプール6の慣性質量をより一層低減でき、リーフバルブ3の開閉動作において応答性をより一層向上できる。
加えて、本実施の形態の減衰バルブ1は、スプール6がリーフバルブ側端となる他端における外周部である他端外周部6cの内側にテーパ部6dを有し、リーフバルブ3がスプール6の他端外周部6cのみに当接するように構成されている。このように構成された減衰バルブ1によれば、スプール6のテーパ部6dによってリーフバルブ3が撓んでもスプール6がリーフバルブ3に干渉しないので、リーフバルブ3における環状板の枚数や外径の大きさの選択の自由度が向上する。
また、本実施の形態の減衰バルブ1は、背圧室5内とポート2aの上流側とを連通するパイロット通路23と、背圧室5内の圧力を制御する制御弁24とを備えている。このように構成された減衰バルブ1によれば、制御弁24によって背圧室5内の圧力を調整してリーフバルブ3の開弁圧を変更して緩衝器100の減衰力を調整できる。この実施の形態の場合、パイロット通路23にオリフィス10dを設けて通路10eの圧力を減圧して背圧室5へ導入しているが、オリフィス以外にもチョーク等の他の弁で減圧するようにしてもよい。
なお、本実施の形態の減衰バルブ1の場合、背圧室5の圧力をソレノイド40で制御するようにして、ディスク2およびリーフバルブ3の開弁圧を制御するようにしているが、ソレノイド40で制御弁24の開弁圧を制御せず、制御弁24がパッシブな圧力制御弁として背圧室5の圧力制御を行わなくとも、リーフバルブ3における増圧比をディスク2における増圧比よりも小さくすることができるから、減衰特性が二段階に変化するようにでき、ピストン速度が低速域にある際に小さな減衰力を出力でき減衰力過多となることがなく、ピストン速度が高速域になった際に大きな減衰力を出力させることができ、減衰力不足を解消することができる。
さらに、ディスク2は、バルブ保持部材10に対し浮動状態で積層されているので、通路10eを大きく開放することができ、ディスク2の開弁時における減衰係数を小さくすることができるようになって、ソレノイド40による減衰力制御が非常に容易となる。また、リーフバルブ3は、環状であって内周がバルブ保持部材10に固定されて、外周が弁座2bに離着座するリーフバルブであるので、ディスク2を設けて、減衰力を二段階に変化させるようにしても、リーフバルブ3でディスク2を付勢してディスク2が通路10eを開放した後で、基部10aへ着座する位置への復帰を助けるため、緩衝器100の伸縮方向の切り替わり時などで、通路10eの閉じ遅れを生じさせることがなく、減衰力発生応答性を損なわない。
また、本実施の形態の緩衝器100は、シリンダ101と、シリンダ101内に移動自在に挿入されるとともにシリンダ101内を液体が充填される伸側室104と圧側室105とに区画するピストン102と、ピストン102に連結されるロッド103と、液体を貯留するリザーバ108と、リザーバ108から圧側室105へ向かう作動油の流れのみを許容する吸込通路110と、圧側室105から伸側室104へ向かう作動油の流れのみを許容する整流通路111と、伸側室104とリザーバ108とを連通する排出通路106と、伸側室104をポート2aの上流としてリザーバ108をポート2aの下流として排出通路106に設けられる減衰バルブ1とを備えて構成されている。
このように構成された緩衝器100によれば、伸縮する際にシリンダ101内から排出通路106を通じてリザーバ108へ必ず液体が排出されるユニフロー型の緩衝器として構成され、この液体の流れに対して一つの応答性の良い減衰バルブ1で抵抗を与えるので、減衰力発生応答性が向上する。
なお、減衰バルブ1は、このようにユニフロー型の緩衝器100に適用されると、緩衝器100の伸縮の方向によらず減衰力発生の応答性を向上できるが、バイフロー型の緩衝器に適用されてもよい。バイフロー型の緩衝器には、シリンダ内に気室を備えた単筒型緩衝器とシリンダの外方にリザーバを複筒型緩衝器とがある。単筒型緩衝器の場合には、ピストンに伸側室から圧側室へ向かう液体の流れを許容する伸側通路と圧側室から伸側室へ向かう液体の流れを許容する圧側通路とを備えており、複筒型緩衝器の場合には、これらの伸側通路と圧側通路に加えて、シリンダ外に設けたリザーバから圧側室へ向かう液体の流れを許容する吸込通路と、圧側室からリザーバへ向かう液体の流れを許容する排出通路とを備えている。ソレノイド40を備えた減衰バルブ1は、伸側通路、圧側通路および排出通路の何れにも設置でき、このように減衰バルブ1を備えた緩衝器は、ソレノイド40へ供給する電流量の変更により発生する減衰力を大小調節できるとともに減衰力発生の応答性を向上できる。
また、本実施の形態の減衰バルブ1では、バルブ保持部材10の基部10aに設けた通路10eを開閉するディスク2のポート2aをリーフバルブ3で開閉するようにして、減衰力を二段階に変化させるようにしているが、減衰力を二段階に変化させる必要がない場合には、ディスク2を廃止して、バルブ保持部材10の基部10aをディスクとして用い、基部10aの通路10eをポートとし、基部10aに通路10eを取り囲む弁座を設けて通路10eをリーフバルブ3で開閉する構造を採用してもよい。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形および変更が可能である。