実施の形態1.
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。本実施形態では、管理対象の作業として農作業を例とし、農作業に用いられる車両の情報を収集、解析して管理することにより農作業を管理する作業管理システムを例として説明する。このようなシステムによれば、運営する農場において必要な作業の情報が詳細に蓄積され、それぞれの作業内容について要する時間や車両などのリソースを可視化することができる。そのようなシステムにおいて、車両が農作業において移動した経路の位置情報を取得し、予め設定された耕作エリア毎の目的を示す情報と照合して解析することにより、それぞれの車両の作業内容を高精度に取得することが可能であり、かつ車両自体に機能を追加する必要もないために容易に実現することが可能であることが本実施形態に係る要旨である。
図1は本実施形態に係るシステムの全体構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るシステムは、サービス利用者が操作するユーザ端末1、サービス提供者が運営するシステムサーバ2、サービス利用者が農作業にて運用している作業車両3、作業車両3のシガーソケットから給電を受けて動作するロガー端末4、現場で作業する作業者が携帯する携帯端末5を含む。ユーザ端末1、システムサーバ2、ロガー端末4および携帯端末5はネットワークAを介して相互に通信可能である。ネットワークAはインターネットを始めとした広域通信回線によって実現されるが、各端末の通信機能に応じて有線/無線LAN(Local Area Network)ルーター、LTE(Long Term Evolution)、LPWA(Low Power Wide Area-network)等のモバイル通信機能を含む。
図2は、本実施形態に係るユーザ端末1、システムサーバ2、ロガー端末4および携帯端末5等の情報処理機器の一般的なハードウェア構成を示す図である。本実施形態に係るシステムは一般的な情報処理機器のハードウェア構成によって実現可能であり、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)20、ROM(Read Only Memory)30、HDD(Hard Disk Drive)40およびI/F50がバス80を介して接続されている。また、I/F50にはLCD(Liquid Crystal Display)60および操作部70が接続されている。
CPU10は演算手段であり、情報処理機器全体の動作を制御する。RAM20は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU10が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM30は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD40は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム等が格納される。
I/F50は、バス80と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。LCD60は視覚的ユーザインタフェースである。操作部70は、キーボード、マウス、各種のハードボタン、タッチパネル等、ユーザが情報機器に情報を入力するためのユーザインタフェースである。操作部70としては、マイクに音声解析、言語解析機能を組み合わせた音声入力デバイスや、カメラに視線解析機能を組み合わせた視線入力デバイス等を用いることも可能である。尚、システムサーバ2やロガー端末4は直接的なUI(User Interface)を必要としない構成であるため、LCD60や操作部70等は省略可能である。
このようなハードウェア構成において、ROM30やHDD40若しくは図示しない他の記憶媒体に格納されたプログラムがRAM20に読み出され、CPU10がそれらのプログラムに従って演算を行うことによりソフトウェアの機能が構成される。このようにして構成されたソフトウェアの機能と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係るシステムを構成する各機器の機能を実現する機能ブロックが構成される。
図3は、本実施形態に係るシステムサーバ2の機能構成を示すブロック図である。図3に示すように、本実施形態に係るシステムサーバ2は、通信モジュール201、UI処理部202、設定情報記憶部203、ロガー情報記憶部204、整形処理部205、整形情報記憶部206、解析処理部207、解析結果情報記憶部208、シミュレーション部209及びオートメーション部210を含む。システムサーバ2が、本実施形態に係る作業管理システムにおいて中枢となる作業管理装置として機能し、システムサーバ2を動作させるためのプログラムが作業管理プログラムとして用いられる。
通信モジュール201は、システムサーバ2が外部と情報をやり取りするための通信機能を担い、例えばイーサネットによって構成される。UI処理部202は、ユーザがシステムサーバ2を操作するための構成であり、GUI(Graphical User Interface)を提供するための機能や、通信モジュール201を介して情報をやり取りする機能を担う。本実施形態に係るシステムサーバ2をユーザが操作するための手段はウェブアプリケーションとして提供されるため、UI処理部202は、GUI用のウェブサイトを提供するウェブサーバの機能も含む。
設定情報記憶部203は、ユーザによって事前に設定される情報を記憶する。ロガー情報記憶部204は、ロガー端末4からシステムサーバ2に所定間隔で送信されるロガー情報を、通信モジュール201を介して取得して蓄積する。整形処理部205は、設定情報記憶部203及びロガー情報記憶部204に記憶された情報に基づいて整形情報を生成する。整形情報記憶部206は、整形処理部205が生成した整形情報を記憶する。
解析処理部207は、整形情報記憶部206に記憶された整形情報及びその元となるロガー情報に対して作業内容の解析処理を行い、解析結果情報を生成する。解析結果情報記憶部208は、解析処理部207によって生成された解析結果情報を記憶する。シミュレーション部209は、解析結果情報記憶部208に記憶された情報及びその元となるロガー情報に基づき、作業のシミュレーション処理を行う。オートメーション部210は、シミュレーション部209によるシミュレーション結果に基づき、作業のオートメーション制御を行う。
図4は、本実施形態に係るユーザ端末1の機能構成を示すブロック図である。図4に示すように、本実施形態に係るユーザ端末1は操作デバイス101、表示デバイス102、ウェブブラウザ103および通信モジュール104を含む。上述した通り本実施形態に係るユーザ端末1は一般的なPCやモバイルデバイス等によって構成される。そのため、操作デバイス101は、PCであればキーボードやマウスであり、モバイルデバイスであればタッチパネル等である。また、表示デバイス102は液晶ディスプレイ等である。
ウェブブラウザ103は、一般的なウェブブラウジング機能を提供するソフトウェア・アプリケーションがユーザ端末1上で動作することにより構成される。本実施形態に係るシステムのユーザインタフェースはウェブアプリとして提供されるため、ユーザ端末1においてはウェブブラウザ103と、それを表示する表示デバイス102およびそれを操作する操作デバイス101がシステムのGUIとして機能するが、ウェブアプリではなくネイティブアプリであっても同様に適用可能であり、その場合には専用のアプリケーションがユーザ端末1にインストールされて動作する。通信モジュール104としては、イーサネット、無線LAN、LTEをはじめとしたモバイル通信機能等が、ユーザ端末1のハードウェア環境およびそれぞれのユーザの通信環境に応じて選択されて用いられる。
図5は、本実施形態に係るロガー端末4および携帯端末5が本実施携帯に係るシステムの一部として機能するために最低限有する機能構成を示すブロック図である。図5に示すように、本実施形態に係るロガー端末4、携帯端末5は端末制御部401、測位モジュール402、通信モジュール403を含む、端末制御部401は端末全体の動作を制御する制御部である。測位モジュール402は、GNSS(Global Navigation Satellite System)機能を担う。通信モジュール403は、LTE等のモバイル通信機能を担う。
端末制御部401は、測位モジュール402によって取得される測位データと時刻の情報とを関連付けて1秒毎に保存する。そして、そのように保存した情報にロガー端末4または携帯端末5を識別するためのロガーIDを付し、通信モジュール403を介して30秒間隔でシステムサーバ2に送信する。尚、測位モジュール402として代表的なのはGPS(Global Positioning System)モジュールであるが、RTK(Real Time Kinematic)等、既存のものや将来的なものも含めて位置情報を取得するためのモジュールであれば採用可能である。また、測位データの取得間隔(1秒毎)及びシステムサーバ2への送信間隔(30秒毎)は一例であり、管理対象に応じて適宜変更可能である。
上述したように、本実施形態においてはシステムによって管理する作業主体として作業車両が用いられる場合を例として説明する。そのために各作業車両に挿入されて一体として動作するのがロガー端末4であり、これにより各作業車両の位置情報が時系列に取得される。しかしながら、一般的なスマートフォンである携帯端末5に専用のアプリケーションをインストールすることにより、携帯端末5にロガー端末4と同様の機能を担わせることも可能である。即ち、ロガー端末4および携帯端末5が位置情報発信端末として機能する。
従って、作業者が携帯端末5を作業中に携帯することによって、一般的に普及しているスマートフォンによってシステムを実現することが可能であることに加えて、車両を伴わない人員のみによる作業についてもシステムの管理対象とすることが可能となる。尚、以降の説明においては、作業車両3およびロガー端末4が用いられる場合を例として説明する。
次に、本実施形態に係るシステムの動作について図6を参照して説明する。図6は、本実施形態に係るシステムの動作を示すシーケンス図である。図6に示すように、本実施形態に係るシステムの動作に際しては、まずユーザ端末1からシステムサーバ2に対して事前設定処理が行われる(S601)。図7は、S601の処理においてユーザ端末1からシステムサーバ2に対して送信され、システムサーバ2に記録される設定情報を示す図である。
図7に示すように、S601における設定情報には、「ロガーID」、「車両情報」、「労働者情報」、「付属機」、「色設定」、「作業内容」が含まれる。「ロガーID」は、位置情報の発信元であるロガー端末4や携帯端末5を識別する発信元識別子である。「車両情報」は、対象となるロガー端末4や携帯端末5が適用される車両を示す情報である。「労働者情報」は。対象となるロガー端末4や携帯端末5が適用される車両を操縦する作業者を示す情報である。
「付属機」は、対象となるロガー端末4や携帯端末5が適用される車両に付属して機能する機器を示す情報である。「色設定」は、対象となるロガー端末4や携帯端末5の作業実績をGUI上に表示する際の色の設定情報である。「作業内容」は、対象となるロガー端末4や携帯端末5が適用される車両や人員が担う作業の内容を示す情報である。尚、作業車両の種類と作業内容とは1対1で対応する場合も多いため、管理対象の作業によっては、「車両情報」を「作業内容」として用いることも可能である。図7に示す情報が、位置情報の発信元であるロガー端末4や携帯端末5を示す発信元識別子に対して、行う作業を示す情報が関連付けられた作業設定情報として用いられる。
S601における事前設定処理は、ユーザ端末1において動作するウェブブラウザ103に表示されたシステムサーバ2のGUIを介してユーザが図7に示す各種の情報を選択、若しくは入力することにより実行される。ユーザ端末1のウェブブラウザ103に対して入力された情報はシステムサーバ2において通信モジュール201を介してUI処理部202が取得し、設定情報記憶部203に記憶される。
このような事前設定が行われた上で、シガーソケットにロガー端末4が差し込まれた作業車両により農作業が開始される。シガーソケットから通電されたロガー端末4は、システムサーバ2に対して所定頻度でのデータ送信を開始する(S602)。図8は、S602の処理によりロガー端末4からシステムサーバ2に送信されるロガー情報を示す図である。
図8に示すように、S602において送信されるロガー情報は、「時刻」と「測位データ」とが関連付けられた複数のレコードに、「ロガーID」が付された情報である。これはそれぞれの作業主体の作業実績に関する情報であり、ログ情報として用いられる。上述した通り、「時刻」と「測位データ」とが関連付けられたレコードは1秒間隔のデータであり、かつ1つのロガー情報には上述した通り30秒分のレコードが含まれる。即ち、S602のデータ送信処理は30秒間隔で実行される。
このようにしてロガー情報がシステムサーバ2に送信されると、システムサーバ2においては通信モジュール201がロガー端末4から送信されるロガー情報を都度受信し、ロガー情報記憶部204が記憶する。即ち、通信モジュール201およびロガー情報記憶部204が、ログ情報記憶部として機能する。そのように記憶されたロガー情報に基づき、整形処理部205がデータ整形処理を行う(S603)。図9は、S603の処理の結果生成される整形結果情報を示す図である。
図9に示すように、S603の処理の結果生成される整形結果情報は、「ブロックID」、「ロガーID」、「時刻範囲」、「作業内容」、「車両情報」、「労働者情報」、「付属機」、「色設定」の情報を含む。ここで、図10を参照して、S603の処理の詳細について説明する。図10は、S603の処理の詳細を示すフローチャートである。
図10に示すように、処理を開始した整形処理部205は、まずロガー情報記憶部204に記憶されているロガー情報のうちまだ整形処理の対象となっていないものを選択し(S1001)、選択したロガー情報の「ロガーID」をキーとして、既に生成されている整形情報を整形情報記憶部206から検索する(S1002)。S1002の検索の結果、ヒットするものがなければ(S1003/NO)、整形処理部205は新規の整形情報のレコードを生成する(S1006)。
S1006において整形処理部205は、S1001において選択したロガー情報の「ロガーID」をキーとして設定情報記憶部203を検索し、その結果抽出された設定情報から「車両情報」、「労働者情報」、「付属機」、「色設定」、「作業内容」を抽出する。また、S1001において選択したロガー情報の「時刻」を参照し、最も古い時刻と最も新しい時刻から「時刻範囲」を生成する。そして他のレコードと重複しない一意となる「ブロックID」を生成して、図9に示すようなレコードを生成する。
他方、S1002の検索の結果、ヒットするものがあった場合、(S1003/YES)、整形処理部205はヒットした整形情報のレコードの「時刻範囲」を参照し、S1001において選択したロガー情報の「時刻」のうち最も古い時刻と、時刻範囲との差が所定の範囲内であるか否かを判断する(S1004)。
本実施形態に係る整形処理部205は、S1004の処理において、時刻範囲の終端とロガー情報の「時刻」のうち最も古い時刻との差が15分以内であれば、所定の範囲内であると判断する。S1004の判断の結果、所定の範囲を超えていた場合には(S1004/NO)、既存の整形情報のレコードと新たなロガー情報のレコードとは異なるブロックであると判断し、S1006の新規レコードの生成処理に進む。
他方、S1004の判断の結果、所定の範囲内であった場合(S1004/YES)、選択中のロガー情報は既存のレコードと連続したものであると判断し、既存のレコードの「時刻範囲」の終端を選択中のロガー情報の「時刻」のうち最も新しいもので更新する(S1005)。整形処理部205は、ロガー情報記憶部204に記憶されているロガー情報のうちS1001において選択されていないものがなくなるまでS1001からの処理を繰り返し(S1007/NO)、ロガー情報記憶部204に記憶されているすべてのロガー情報を選択して処理し終わったら(S1007/YES)、処理を終了する。
このような処理により、図9に示すような整形情報が整形情報記憶部206に記憶される。本実施形態に係る整形情報は、S1004、S1005の処理により、同一の作業車両によって行われた継続した一の作業に関して、一つのレコードとして整形情報を生成する。即ち、S1002、S1003の処理により同一の作業車両によって行われた作業であることが確認される。その上で、S1004の判断は、継続した一の作業であるか否かを確認する処理であり、本実施形態においては、測位データに関連付けられた時刻が15分以内であれば正であると判断する。
尚、上記の15分という閾値は一例であり、実情に応じて様々な数値を用いることができる。また、この値は予め定められた単一の値である必要はなく、例えば、S1002において抽出した整形情報に含まれる「作業内容」、「車両情報」、「労働者情報」、「付属機」等の情報に応じた値を採用しても良い。これにより、随時受信して蓄積されるロガー情報が継続した一の作業に関するものであるか否かをより実情に即して判断することが可能となる。
このようにしてデータ整形処理が完了すると、ユーザはユーザ端末1のウェブブラウザに表示されるシステムサーバ2のGUIを介して、それを確認することが可能となる。図11は、整形結果情報のリスト表示画面の例を示す図である。図11に示すように、整形情報のリスト表示画面においては、図10において説明した処理により生成された整形情報が、それぞれのレコードを一行としてリスト表示されている。また、それぞれのレコードごとに「詳細表示」を要求するための操作部が表示されている。更に、整形情報を詳細に解析する解析処理を命令するための「解析実行」と表示された操作部と、その解析処理の対象とする時刻の範囲の指定欄が表示されている。
図12は、図11に示す「詳細表示」がタップまたはクリックされることにより表示される、整形情報の詳細表示画面の例を示す図である。図12に示すように、整形情報の詳細表示画面においては、そのレコードに対応する測位データがロガー情報記憶部204から読み出され、地図上に時系列にプロットされた上で、始点には「S」、終点には「E」のマークが表示される。これにより、対象の整形情報における作業車両の軌跡を地図上で視覚的に確認することができる。
このように整形情報を確認したユーザが、図11に示す画面において時刻の範囲を改めて指定して「解析実行」をタップまたはクリックすることにより、ユーザ端末1のウェブブラウザ103がユーザの操作を認識し、通信モジュール104を介してシステムサーバ2に対して解析命令を送信する(S604)。S604において送信される解析命令には、解析命令であることを示す識別子の他、対象となる整形情報を指定するための情報が含まれる。その情報としては、図11に示す画面において入力された時刻範囲の情報のほか、図9に示すブロックIDやロガーIDを用いることができる。
ユーザ端末1から解析命令を受けたシステムサーバ2においては、解析処理部207が、指定された解析対象の整形情報、ひいてはロガー情報に対して解析処理を実行する(S605)。これにより解析結果情報が生成され、解析結果情報記憶部208に記憶される。図13は、S605の解析処理の結果生成される解析結果情報を視覚的に表示する画面(以降、「解析結果表示画面」とする)の例を示す図である。
図13に示す画面は、図11に示す時刻範囲の指定欄によって指定された範囲、即ち1回の解析処理によって生成される情報に基づいて表示される画面である。図13の例においては、作業内容として「牧草運搬」が設定されたロガー端末4が装着された作業車両3の一日の作業内容が表示されており、日報としての役割を果たす。即ち、本実施形態に係るS605の解析処理は、ロガーIDによって識別される作業主体の時系列の作業内容を判定して作業車両や作業者の行動推定を行い、日報を表示するための情報を生成する処理であり、解析処理部207が情報解析部として機能する。
図13に示すように、本実施形態に係る解析結果情報の表示画面においては、「日付」、「作業内容」、「車両」、「付属機械」等の整形結果情報から取得可能な情報に加え、作業を行っていた時間を示す「運転時間」、作業エリア間を移動していた時間を示す「移動時間」、ロガー端末4に通電されていなかった、即ち車両のエンジンが停止していた時間を示す「電源OFF時間」といった情報が解析により得られて表示される。また、作業内容である「牧草運搬」についての作業の詳細に関する情報が表示される。
図13に示すような画面を表示するための解析結果情報を生成する処理、即ちS605における解析処理の詳細について説明する。上述したように、S604において送信された解析命令はシステムサーバ2において通信モジュール201、UI処理部202を介して解析処理部207に伝えられ、解析処理部207は、受信した解析命令に含まれる解析対象を特定するための情報に従って解析処理を開始する。
図14は、S605における解析処理の詳細を示すフローチャートである。図14に示すように、解析処理部207は、まずエリア判定処理を行う(S1401)。S1401の処理は、解析対象となるロガー情報のレコードを1レコードずつ参照し、それぞれの測位データが属するエリアを判定する処理である。そのため、S1401において解析処理部207は、測位データによって示される位置がどのエリアに属するかを判定するためのエリア設定情報を参照する。
図15は、解析処理部207がS1401において参照するエリア設定情報の例を示す図である。図15に示すように、本実施形態に係るエリア設定情報は、それぞれのエリアを識別する「エリアID」ごとに、測位データによって示される位置の範囲を示す「測位データ範囲」、それぞれのエリアが何に用いられているエリアであるかを示す「エリア種類」、そのエリアで作業を行ったことを認定するための最低限の滞留時間を示す閾値である「最低作業時間」の情報が関連付けられた情報である。
即ち、「測位データ範囲」が、作業が行われる場所の範囲をロガー端末4が発信する位置情報に対応して示す作業区画情報であり、「エリア種類」が、作業区画の属性を示す区画属性情報であり、図15に示すエリア設定情報が、作業範囲属性情報として用いられる。
S1401において解析処理部207は、図15に示すようなエリア設定情報を参照し、ロガー情報の「測位データ」と、エリア設定情報の「測位データ範囲」とを対比し、ロガー情報のそれぞれのレコード、すなわち1秒毎のロガー端末の位置がどのエリアに属していたかを判定する。その結果、図16に示すように、ロガー情報のそれぞれのレコードに対して「エリア判定結果」が追記される。
ここで、解析処理部207は、解析対象となるデータについて設定されている「作業内容」と、エリア設定情報における「エリア種類」に応じて、エリア判定の要否を判断する。例えば、「牧草運搬」が設定されているデータについて、「コーン畑」に属するエリアの測位データがあったとしても、それは作業を行ったのではなく、単に通っただけであるとして、エリア判定の対象外とする。
続いて、解析処理部207は、エリア判定結果に対してノイズ判定処理を行う(S1402)。S1402の処理は、エリア判定のノイズを除去する処理である。図17は、エリア判定にノイズが出る場合の作業車両の軌跡の例を示す図である。図17の例では、作業車両はエリアJ-1において作業をしている。しかし、作業の終盤にエリアJ-2との境界ギリギリを移動することとなり、結果として、図18に示すように、J-1に属する測位データとJ-2に属する測位データとが短時間で行ったり来たりするような形で記録されることが起こりうる。図18の例は、J-2と判定されているエリア判定結果が、本来はJ-1と判定されるべき例である。
S1402の処理は、このようなエリア判定のノイズを除去する処理であり、所定の時間以下の短い滞留時間のエリア判定結果を対象として、その前の時間のエリア判定結果が、その後の時間のエリア判定結果と同一であれば、対象としたエリア判定結果を前後のエリア判定結果に修正する修正処理である。図18の例においては、3秒間のみである「J-2」という判定結果を対象として、その前後が「J-1」で共通していることをもって「J-1」に修正する。この他、上述したように「作業内容」と「エリア種類」とのミスマッチによってエリア判定不要と判断され、「エリア判定結果」が空白となったレコードについても、同様にノイズ除去の対象となる。
S1402において滞留時間が短くノイズであると判定するための閾値は、対象とするロガー情報について設定されている作業内容や、対象とするエリアに設定されているエリア種類に応じて適切な値が設定される。その趣旨は上記の通り、作業対象のエリアとロガー端末によって記録される測位データとに生じるズレの修正である。閾値の例としては例えば1分(60秒)である。即ち、解析処理部207は、図18に示すエリア判定結果が「J-2」であるレコードが1秒単位で連続する数が60個以下であればノイズであるとして、その前後のエリア判定結果を参照する。
次に、解析処理部207は、それぞれのエリア判定結果について、有効作業時間判定処理を行う(S1403)。図15において説明したように、エリア設定情報においては、それぞれのエリアで作業を行ったことを判定するための最低限の滞留時間の閾値として「最低作業時間」が設定されている。解析処理部207は、S1402までの処理で生成したエリア判定結果として同一の判定結果が連続する時間を集計して、対象の作業車両がそれぞれのエリア内に属していた、即ち作業をしていたと考えられる時間を算出し、それを図15にしめす「最低作業時間」と比較する。
その結果、算出した時間が「最低作業時間」よりも短ければ、そのデータについては作業をした記録ではなく単に通っただけ、すなわち移動期間と判断して、「エリア判定結果」を削除する。S1403までの処理により、ロガー情報の各レコードうち何らかの作業を行っていた期間に属すると判定され得るレコードには「エリア判定結果」が付される事となる。その結果、図19に示すように、解析対象のロガー情報のレコードについて、時間範囲毎にエリア判定結果が付された形式の情報(以降、「時系列エリア判定結果情報」とする)を生成することが可能となる。また、「エリア判定結果」が付されなかった期間は、図13において示す「移動」として認識される。この情報が、時間の範囲と作業区画の判定結果とが関連付けられた作業区画判定結果情報として用いられる。
図19に示す時系列エリア判定結果情報は、情報記録の効率化の観点においては、図16や図18に示すようにロガー情報の各レコードにエリア判定結果が付された情報からその都度生成しても良い。しかしながら、図19に示す情報、即ち、時間範囲毎にエリア判定結果が関連付けられたエリア判定結果情報が、本実施形態に係る解析処理によって生成される最も重要な情報であり、以降の他の機能、特にシミュレーション機能においてもこの情報が用いられることが要旨なる。
従って、エリア判定結果情報は、解析結果として解析処理部207によりロガー情報とは別に生成され、解析結果情報記憶部208に記憶されることが好ましい。このエリア判定結果情報が、図13に示す画面に表示された「行動ログ」を表示するための元の情報となる。尚、図19においては図示されていないが、図19に示すエリア判定結果情報は、図9において説明した整形結果情報に関連付けられており、図9に示す各種の情報に関連付けられているため、図19に示すような時系列により、誰が、どんな車両で、どんな作業を行ったかを把握することが可能な情報となっている。
尚、上述したように、S1401、S1402、S1403の処理によりエリアが認定された時刻範囲のレコードにのみエリア判定結果が付与され、認定されなかった時刻範囲のエリア判定結果はデータ無しとなる。これは、基本的には移動時間を示すものとして扱われ、図13に示す「行動ログ」において「移動」と表示されることになる。測位データの存在しない時刻範囲についてはロガー端末4への給電が停止されていたものとして、「電源OFF」等と表示される。
尚、図14においては、ノイズ判定(S1402)の後に有効作業時間判定(S1403)を実行しているが、S1402とS1403の順番を逆にしても良いし、S1402及びS1403の処理を複数回繰り返すことで精度を上げても良い。
次に、解析処理部207は、対象となるデータに設定されている作業内容に応じて、必要な場合には受取判定処理を行う(S1404)。受取判定処理とは、最終的に収穫物の集積所(下ろし場)に投入する収穫物をどのように受け取ったかを判定する処理である。例えば「牧草運搬」の場合、作業車両はダンプであることが一般的であるが、運搬する牧草の受け取り方が様々である。一つの態様としては収穫を行うハーベスターにダンプが併走し、ハーベスターが収穫しながらリアルタイムにダンプに牧草を投入する。他の態様としては、ダンプは所定の位置で待機し、ハーベスターと並走する中間運搬機械が牧草を中継してダンプに投入する態様である。
このような収穫物の受け取り方を判定するのがS1404の処理である。すなわち、S1404の処理は、作業内容が「牧草運搬」である場合など、収穫物の受け取りを行う可能性のある作業内容が設定されている場合にのみ実行される。解析処理部207は、S1404の処理において図20に示すような受取対応情報を参照する。図20に示すように、受取対応情報は、「牧草運搬」と「収穫作業」等、収穫物の受け渡しが行われる関係性の作業内容が関連付けられた情報である。
尚、本実施形態においては図20に示す受取対応情報を例としたが、受取作業以外にも、複数の作業主体が連動して実施する作業については、同様の構成により判定が可能である。即ち、複数の作業内容を関連付けることにより、複数の作業主体が連動して行う作業を示す作業関連付け情報を用いることにより、連動して作業が行われたか否かの判断の前提として用いることが可能であり、図20に示す受取対応情報は、作業関連付け情報の一例である。
S1404において解析処理部207は、解析対象となっているロガー情報のうちS1403までの処理においてエリア判定結果が付与されているレコード(以降、「有効レコード」とする)を選択し、続いてそのレコードとの間で受取判定の対象となる他のロガーIDのレコードを抽出する。ここで、受取判定の対象となる他のロガーIDのレコードとは、選択中の解析対象のレコードの日付時刻と同一の日付時刻であることを前提として、付されている「作業内容」が、解析対象となっているレコードに付されている「作業内容」と、図20に示す受取対応情報において関連付けられているレコードである。尚、上記の通り、ロガー情報に対して直接「作業内容」が付されているわけではないが、図7、図9において説明した通り「ロガーID」を介してロガー情報に「作業内容」が付される事となる。
また、受取判定の対象となる他のロガーIDのレコードの絞り込み態様として、上記の受取対応情報の他、S1403までの処理で「エリア判定結果」が付されているか否か、解析対象のレコードの「エリア判定結果」と同一の「エリア判定結果」が付されているか否か等の条件を用いることができる。このようにして受取判定の対象となる他のロガーIDのレコードを抽出すると、解析処理部207は、両レコードの測位データの差分を算出する。
解析処理部207は、解析対象のロガー情報のうち有効レコードの全てについて上記の処理を行い、他のロガーIDのロガー情報との測位データの差分を算出し、その算出結果の時系列から収穫物の受取態様を判定する。図21は、収穫作業に対して伴走により収穫物を受け取った場合の測位データの軌跡の例を示す図である。図21に示すように、作業内容が「牧草運搬」と「収穫作業」である場合において、上記算出した測位データの差分が一定の値の範囲内で所定の期間以上継続する場合、解析処理部207は、伴走により受け取ったことを判断する。
図22は、中間運搬作業に対して待機により収穫物を受け取った場合の測位データの軌跡の例を示す図である。図22に示すように、作業内容が「牧草運搬」と「中間運搬」である場合において、「牧草運搬」側が所定期間同位置(図中の黒丸の位置)で待機したり電源OFF(即ち、ロガー情報のレコードが存在しない)であったりし、「中間運搬」側がその待機位置に向かって移動した上で所定期間以上近傍位置(図中の白丸の位置)に停止した場合、解析処理部207は、中間運搬により受け取ったことを判断する。
このように受取判定処理を行った解析処理部207は、それぞれの判定結果について図23に示すような受取判定結果情報を生成し、解析結果情報記憶部208に記憶させる。図23に示すように、本実施形態に係る受取判定結果情報は、「判定ID」、「ロガーID」、「時刻範囲」、「エリア」、「相手情報」、「受取り方」の情報を含む。
このように、受取判定処理においては、同時刻の他のロガー情報のレコードとの測位データの差分を算出するため、管理する作業車両の台数が増え、同時刻のロガー情報のレコードが増えると、乗算的に計算量が増えることとなる。これに対して、上述したように、図20に示すような受取対応情報や、図16に示すような「エリア判定結果」を用いて測位データの差分を算出する対象のデータを絞り込むことにより、計算量を最低限にすることができる。
尚、上述したように「エリア判定結果」を用いて対象のレコードを絞り込むためには、S1403までの処理において解析対象のレコードについてエリア判定結果を生成する処理が完了しているだけでなく、測位データの差分を算出する対象となる相手方のレコードについてもエリア判定結果を生成する処理が完了している必要がある。これについて、図6のS605の解析処理においては、解析対象となる全レコードについて先にS1403までの処理を完了してから、受取判定が必要なレコードについてのみS1404の処理に進むようにすれば、目的を達することができる。その他、S1404以降の処理が必要ない「作業内容」が設定されたレコードから優先的に解析処理を行うようにしても良い。そのような「作業内容」の代表的な例としては収穫作業等である。
S1404の処理が完了すると、次に解析処理部207は、対象となるデータに設定されている作業内容に応じて、必要な場合には下ろし場処理を行う(S1405)。下ろし場処理とは、運搬した収穫物を集積する下ろし場への収穫物の下ろし作業を判定する処理である。そのため、下ろし場への収穫物の下ろし作業が行われる可能性がある作業内容が設定されているレコードの解析処理の場合にのみ実行される。
図15に示すように、下ろし場の情報もエリア設定情報に含まれる。解析処理部207は、S1405の処理において、解析対象の各レコードに付されたエリア判定結果を参照し、図15の「C」のような、エリア種類が下ろし場であるエリアIDが付されたレコードを抽出し、その軌跡を解析する。図24は、エリア判定結果として下ろし場に対応するエリアIDが付されたレコードの測位データの軌跡を示す図である。
図24に示す軌跡は、図中「3」と示されている位置に行く前に一度前を通り過ぎ、戻って「3」の位置に到達している。これは、収穫物を積んだダンプが後ろから下ろし場に侵入して収穫物をおろすために、切り返してバックで進入した軌跡である。S1405において解析処理部207は、このような切り返しが行われているか否かを判断し、最終的に下ろし場内で収穫物が下ろされた位置を判定する。尚、図24の例は判断の一例であり、切り返すことなく直進のまま下ろす場合もある。様々なパターンが下ろし場判定のパターンとして用意されており、解析処理部207は、対象となる測位データの軌跡が用意されたパターンにマッチするか否かを判定する。
図25は、下ろし場内の更に細かい区分を示す下ろし場情報を示す図である。図25に示すように、本実施形態に係る下ろし場情報は、図15において説明したエリア情報の「エリアID」に対応している「エリアID」、下ろし場内の細かい区分を示す「下ろし場ID」、それぞれの下ろし場の区分の詳細な位置を示す「測位データ」、それぞれの下ろし場番号が現在有効な集積場か否かを示す「有効」の情報を含む。
解析処理部207は、S1405の処理において、図24に示すようにバックで進入した位置を図25に示す「測位データ」に基づいて判定し、その位置において収穫物を下ろすのに十分な期間滞留したか否か、その区分が有効か否かを確認して下ろし場での積み下ろし判定を行う。その結果、図26に示すような下ろし場判定情報を生成し、解析結果情報記憶部208に記憶させる。
図26に示すように、本実施形態に係る下ろし場判定情報には、「判定ID」、「ロガーID」、「時刻範囲」、「下ろし場ID」、「収穫物エリアID」の情報を含む。尚、「収穫物エリアID」は、その下ろし場判定情報に対応する下ろし場作業で積み下ろした収穫物の収穫元のエリアを示す情報であり、下ろし場判定処理において対象となっているレコードの直前において「エリア判定結果」が付されているレコードの「エリア判定結果」が採用される。図19の例においては、1つ目の「C」というエリア判定結果が付されている時間範囲が下ろし場判定処理の対象であれば、その直前に付されているエリア判定結果、すなわち「J-1」が採用される。
このような処理により、図6のS605に示す解析処理が完了する。解析処理の結果として、上述したように、図19に示すような時刻範囲とエリア判定結果が関連付けられた情報(若しくはそれを生成可能な情報)、図23に示す受取判定結果の情報、図26に示す下ろし場判定情報が生成される。これらの解析結果情報により、図13に示すような画面を表示するための情報が生成される。
以上説明したように、本実施形態に係るシステムによれば、それぞれの作業車両3が農作業において移動した軌跡を示す位置情報が図8に示すようにロガー情報としてシステムサーバ2に収集される。システムサーバ2においては、そのように収集された各作業車両3の移動軌跡を、図15に示すように予め設定されたエリア設定情報と照合することにより、各作業車両3の作業内容を推定する。これにより、それぞれの作業車両3の作業実績を高精度に推定して記録することができる。
このような形で情報を蓄積することにより、運営する農場において必要な作業について要する時間や車両等のリソースが可視化することができる。そして、本実施携帯に係るシステムによれば、作業車両3側に求められるのは位置情報の継続的な発信のみであるため、作業車両3側に特に機能を追加することなく、容易に実現することが可能である。
そのようなシステムにおいてより行動推定の制度を高めるため、本実施形態においては、図15に示す「最低作業時間」による判定や、図14のS1402におけるノイズ判定等が行われる。これらの処理により、自動的な行動推定結果の制度をより高めることが可能となる。
尚、本実施形態においては作業車両3に位置情報を発信させるための構成としてシガーソケットタイプのロガー端末4を用いる場合を例として説明した。これにより、一般的な車両に搭載されている給電機能を用いて容易に実現することが可能である。ただしこれは一例であり、作業車両3自体に機能を追加することなく実現可能な他の様々な態様を用いることが可能である。例えば、上述したように、作業車両を操作する作業者が携帯するスマートフォン等の携帯端末5により代用することができる。
また、シガーソケットタイプであることの意義の一つは、車体への固定方法と給電方法とが一体化している点である。従って、シガーソケットタイプに代わる他の例として、USB(Universal Serial Bus)タイプを用いることが可能である。即ち、ロガー端末4としてUSBスティックタイプのものや、USBケーブルを介して給電可能な小型の端末を用いても良い。
また、上記実施形態においては図示していないが、図12、図21、図22、図24に示すような測位データの軌跡として、特定のロガーIDに関連付けられた測位データの軌跡のみでなく、異なる複数のロガーIDに対応する測位データの軌跡を一括して表示することも可能である。これにより、例えば、特定の日付における管理対象の作業車両の実績を地図上で一覧することが可能となる。その際、図7において説明した「色設定」により、それぞれのロガーIDに対応する軌跡を容易に識別することが可能となる。
実施の形態2.
上述した実施形態においては、図15に示すようにエリア設定情報が予め保存されている場合を例として説明した。このようなエリア設定情報は、手動により「測位データ範囲」を指定し、それに対して「エリア種類」や「最低作業時間」を関連付けることで生成することができるが、ロガー端末4から受信した測位データの軌跡に基づいて自動的に「測位データ範囲」を指定することも可能である。
例えば、図27は、「測位データ範囲」として設定すべき境界に沿って作業車両3を走らせた場合に取得されるロガー情報の測位データの軌跡を示す図である。このように、本システムのロガー端末4の仕組みを用いることにより、本システムの主要構成であるエリア設定情報の生成を簡易化することも可能である。
測位データを用いたエリア設定情報の生成に際しては、図27に示すような境界に沿って作業車両3を走行させる場合の他、実際に作業を行った際に取得される測位データの軌跡を用いることも可能である。図28は、測位データを用いたエリア設定情報の生成機能を実現する際のGUIの例を示す図である。図28に示す画面は、ユーザ端末1からシステムサーバ2に要求されることにより、UI処理部202が画面を表示するための情報を用意し、通信モジュール201を介してユーザ端末1に送信されることで、ユーザ端末1においてウェブブラウザ103により表示される。上記と同様、ネイティブアプリによっても実現可能である。
図28に示すように、測位データを用いたエリア設定情報の生成画面においては、対象のロガー情報、即ち測位データの軌跡を指定するための情報として、「ロガーID」、「日付」、「時刻範囲」が求められる。ユーザがそれぞれの情報を指定することにより、指定された情報がユーザ端末1からシステムサーバ2に送信される。システムサーバ2においては、UI処理部202が指定された情報に従ってロガー情報記憶部204からロガー情報を読み出し、要求元であるユーザ端末1に応答する形で送信する。これにより、図28に示すように、指定されたロガー情報に含まれる測位データの軌跡が画面上に表示される。
このようにロガー情報が指定されてその即位データの軌跡が画面上に表示された状態において、ユーザは「判定方法」、「エリア種類」、「最低作業時間」を指定する。「判定方法」は、軌跡に基づいて測位データ範囲を判定するための方法を指定する項目であり、例えば、図27に示すような境界に沿って移動した軌跡であれば、「軌跡を境界に指定」といった内容で指定される。
他方、実際に作業を行った際に取得される測位データの軌跡を用いて測位データ範囲を抽出する場合、例えば「外周抽出(単純地形)」、「外周抽出(複雑地形)」といった指定が行われる。図28の例は、「外周抽出(複雑地形)」の場合を示している。図28においては、作業を行った区画が旗竿地形のような、複雑な形状である。このような、対象のエリアの外周の形状が180°を超える内角を含むような複雑な地形の場合には、「外周抽出(複雑地形)」といった指定が行われる。これにより、図28において点線で示されるような、旗竿地形の外周が抽出される。
図29は、図28と同様の軌跡に対して「判定方法」として「外周抽出(単純地形)」が指定された場合の外周の判定結果の例を示す図である。「外周抽出(単純地形)」の場合、外周の形状が180°を超える内角を含まない、単純な地形であることを前提として外周の判定が行われる。その結果、図29において点線で囲まれたように、旗竿地形のうち面積の小さい方の凸部が除外され、単純な矩形として判定されている。
このような外周判定の手法としては、点の集合に対して外周を判定する手法として公知の様々な手法を採用することが可能であるが、上記の通り「外周抽出(単純地形)」、「外周抽出(複雑地形)」といった選択項目を設けることにより、自動判定の精度を向上することが可能となる。また、図27に示すように、境界に沿って作業車両を移動させた軌跡を用い、「軌跡を境界に指定」として測位データ範囲を取得することで、より簡易な方法で高精度に情報を取得することが可能となる。
このようにして取得された測位データ範囲とともに、図28、図29に示す画面において指定された「エリア種類」、「最低作業時間」がシステムサーバ2に送信されることにより、その情報を取得したUI処理部202によって、図15に示すようなエリア設定情報がシステムサーバ2の設定情報記憶部203に記憶される。即ち、UI処理部202が、作業範囲属性情報生成部として機能する。このような処理により、本システムの主要な構成となるエリア設定情報を容易に生成することが可能となる。
尚、上記の処理は上記の通りユーザ端末1のウェブブラウザ103において実行されるが、その機能は例えばjs(JavaScript)によって実現され、システムサーバ2からユーザ端末1に対して提供される。その他、ユーザ端末1においては情報の指定と処理結果の提示のみを行い、ユーザ端末1のウェブブラウザ103において指定された情報がその都度システムサーバ2に送信されることにより、システムサーバ2側において処理される態様でも可能である。また、上述した通りネイティブアプリによってユーザ端末1側で実現することも可能である。
また、図28、図29においては、「最低作業時間」がユーザによってその都度指定される場合を例としているが、「最低作業時間」は「エリア種類」ごとにシステムサーバ2において予め定められていても良い。
実施の形態3.
本実施形態においては、図14において説明した解析処理において、測位データの軌跡の解析結果等を用いて実際に行われている作業の内容を推定し、図7において説明した設定情報に含まれる「作業内容」が正しく設定されているかチェックする機能について説明する。本実施形態に係る機能は、実施の形態1において説明した解析処理部207により、図14の解析処理の中で実行される。
図30は、本実施形態に係る解析処理の詳細を示すフローチャートである。図30に示す通り、本実施形態に係る解析処理は実施の形態1と概ね同様であるが、S1403における有効作業時間判定とS1404における受取判定との間に、作業内容チェック(S3001)が実行される点が異なる。S3001の作業内容チェック処理は、測位データの軌跡から算出される作業車両の移動態様の特徴や、そのエリアで栽培されている作物の種類、作業を行った時期、地域等の情報に基づいて作業内容を推定し、図7において説明した設定情報に含まれる「作業内容」が正しく設定されているかをチェックする処理である。
図31は、本実施形態に係る作業内容チェック処理の詳細を示すフローチャートである。図31に示すように、作業内容チェック処理において解析処理部207は、S1403の有効作業時間判定までの処理により図19に示すように生成された時系列エリア判定結果情報に基づき、エリアが判定された時間の範囲(以降、「エリア判定期間」とする)を1つ選択し(S3101)、その時間範囲のロガー情報のレコードから作業車両の移動態様の特徴として車速及び旋回幅を算出する(S3102)。
図32(a)は、S3101において選択されたエリア判定期間のロガー情報に含まれる測位データの時系列の軌跡の例を示す図である。S3103において解析処理部207は、図32に示すように図示される軌跡のうち、直線となる部分である直線軌跡のデータを判定して抽出する。図32(b)は図32(a)の例における直線部分の抽出結果を示す図である。このような直線軌跡の算出に際しては最小二乗法による直線フィッティング等の既知の様々な手法を用いることが可能である。
図32(b)に示すように直線部分を抽出すると、解析処理部207はそれぞれの直線における測位データの日付時刻の範囲に基づいてその軌跡における作業車両の車速を算出すると共に、それぞれの直線の間隔に基づいて作業車両の旋回幅を算出する。車速とは、作業車両の移動速度であり、上述した直線の長さとその軌跡における日付時刻の期間とに基づいて算出可能である。また、旋回幅とは、作業車両がそれぞれの作業区画においてまんべんなく作業するために一定の間隔を空けて往復して移動する際の間隔の幅であり、上述した直線同士の間隔に基づいて算出可能である。
車速及び旋回幅の算出処理に際しては、既知の様々な方法を用いることが可能である。また、それぞれの直線について算出された車速および隣接する直線の組ごとに算出された旋回幅について平均値を算出しても良いし、すべての算出結果を保持しても良い。これらの処理により、S3102における車速及び旋回幅の算出処理が完了する。
車速・旋回幅を算出すると、解析処理部207は、算出した車速・旋回幅に加えて対象となっているエリア判定期間に関する他の情報をキーとして、作業の詳細を判定するための情報である作業詳細判定情報を検索する(S3103)。図33は、S3103において解析処理部207がキーとする情報の例を示す図である。図33に示すように、S3103でキーとなる情報には、上述した「車速」、「旋回幅」の他、対象となる「作物」、作業が行われた「時期」、作業が行われた「地域」の情報が含まれる。
「作物」及び「地域」の情報は、選択中のエリア判定期間に対応するエリアIDに基づき、図15において説明したエリア設定情報から抽出される。「地域」の情報については、図15に示す測位データ範囲の情報をそのまま用いても良いし、測位データ範囲の情報から地域を示す情報を判定しても良い。また、ユーザによって予め設定されていても良い。「時期」の情報は、選択中のエリア判定期間が示す日付時刻から抽出可能である。
図34は、S3103において解析処理部207が検索を行う作業詳細判定情報を示す図である。図34に示すように、作業詳細判定情報においては、作業の内容を示す情報である「作業名」と「作物」との組み合わせに対して、「車速」、「旋回幅」、「時期」及び「地域」が関連付けられている。S3103においては、図33に示す情報をキーとして図34に示すテーブルを検索することにより、作業詳細判定情報のテーブルを絞り込む。
尚、S3103における検索処理において、特に「車速」、「旋回幅」のキーについては測位データの軌跡に基づいて算出された値であるため、必ずしも作業詳細判定情報に含まれる値と完全に一致するとは限らない。そのため、検索に際しては完全な一致ではなくキーとなる情報と検索対象の情報との差分を算出し、その差分が所定のしきい値以下であれば一致とみなすような処理が行われる。その他、作業詳細判定情報に含まれる値が単一の値ではなく一致とみなす範囲で指定されていても良い。
S3103の検索処理の結果、作業詳細判定情報から単一のテーブルのみが抽出された場合(S3104/YES)、解析処理部207は、抽出されたテーブルの「作業名」が、解析中の整形情報に含まれる「作業内容」の設定と一致しているか否か判定する(S3105)。その結果、一致していた場合には(S3105/YES)、設定されている「作業内容」が正しいと判断する。
S3103の検索処理において抽出されたレコードが複数であった場合や、逆に一つも抽出されなかった場合(S3104/NO)、解析処理部207は、解析中の整形情報に対して警告を表示するための情報を生成する(S3107)。また、S3105における一致判定において不一致であった場合(S3105/NO)も、解析処理部207は、解析中の整形情報に対して警告を表示するための情報を生成する(S3107)。S3107において解析処理部207が設定する警告の詳細については後述する。
そして、解析処理部207は、解析中の時系列エリア判定結果情報に含まれるエリア判定期間をすべて選択し終えるまでS3101からの処理を繰り返し(S3106/NO)、すべてのエリア判定期間をすべて選択し終えたら(S3106/YES)、作業内容チェックの処理を完了する。
次に、図35(a)、(b)を用いて、S3107において解析処理部207が設定するアラートの表示態様について説明する。図35(a)、(b)は、本実施形態に係る作業内容チェック処理が含まれる解析処理の結果として表示される解析結果表示画面のうち作業内容に対するアラートの表示部分を示す図である。
例えばS3103の検索処理により抽出されたレコードが複数あった場合には、図35(a)に示すように、「作業内容」の項目が太字下線により強調表示された上で、「※複数候補あり」という文字列が表示される。他方、S3103の検索処理によりレコードが一つも抽出されなかった場合や、S3105の一致判定において不一致となった場合には、図35(b)に示すように、「作業内容」の項目が太字下線により強調表示された上で、「※条件不一致」という文字列が表示される。即ち、解析処理部207は、図35(a)、(b)に示すような表示を行うための情報をS3107において生成する。
以上説明したように、本実施形態に係る解析処理に含まれる作業内容チェック処理においては、ロガー情報に含まれる測位データの時系列の軌跡に基づいて作業車両の車速及び旋回幅を算出する。そして、それらの情報に加えて作物、時期、地域等の情報をキーとして図34に示す作業詳細判定情報を検索することにより、そのロガー情報の蓄積に際して稼働した作業車両の作業内容を判断する。これにより、図7に示すようにユーザによって設定された「作業内容」の正確性をチェックすることが可能となる。
尚、本実施形態においては、実施の形態1のように設定情報において「作業内容」がユーザによって設定されるシステムを前提とし、図30のS3001の処理においては、その設定が正確であるか否かをチェックする態様を例として説明した。しかしながらこれは一例であり、本実施形態に係る要旨は、ロガー情報に含まれる測位データの時系列の軌跡に基づいて算出された作業車両の移動態様の特徴と他の情報(本実施形態においては「作物」、「時期」、「地域」等の情報)に基づいて対象となるロガー情報に対応する作業内容を推定することにある。
従って、上記の態様の他、図7に示す設定情報には「作業内容」の情報が含まれず、図30の処理により作業詳細判定情報から抽出された「作業名」が採用されて図13に示すような解析結果表示画面を表示するための情報を生成する態様を用いることも可能である。この場合において、図31のS3103の検索により複数のレコードが抽出された場合には、図35(a)に示すような画面において、抽出された複数の候補を選択肢としてユーザに提示する機能とすることができる。
また、図31のS31023の検索により一つもレコードが抽出されなかった場合には、ユーザによる任意の入力を求める機能や、全候補を選択肢として提示する機能とすることができる。また、全候補を選択肢として提示する場合であっても、S3103の検索処理において各データの一致度に基づくレコードの順位付けを行い、その順位に基づいて選択肢を表示する順序を並べ替えるようにしても良いし、「作物」、「時期」、「地域」等の明らかな項目については絞り込みを行っても良い。
尚、本実施形態に係る作業内容のチェック機能の実現に際しては、図34に示す作業詳細判定情報が高精度に構築されていることが不可欠である。この作業詳細判定情報の構築については、ユーザによる手入力によって実現することも可能であるし、まずは本実施形態に係る機能が存在しない実施の形態1のようなシステムを相当の期間運用し、その運用によって蓄積された解析結果情報に基づいて自動的に生成することも可能である。
蓄積された解析結果情報に基づいて作業詳細判定情報を自動的に生成する場合、「車速」及び「旋回幅」の情報は、単一の値ではなく、それぞれの「収穫」及び「作物」の組み合わせに対応する全データの値の最小値および最大値に基づいて検索によりヒットする値の幅を設定することができる。その場合、上記最小値および最大値をそのまま値の幅としても良いし、最小値及び最大値に対して更にギャップを設け、最小値及び最大値を包摂する更に広い範囲を設定することも可能である。
また、上記実施形態においては、図30に示すように、S3001の作業内容チェック処理をS1403の有効作業時間判定処理の後に行う場合を例として説明した。しかしながら、S1403の処理を実行する前にS3001の処理を実行しても良い。この場合において、単に特定のエリアを通過しただけの場合には、S3103の処理において基本的に直線が1本しか抽出されず、旋回幅を算出することが不可能となる。そのような結果をもって、そのエリア判定期間については単に対象のエリアを通過したのみであるとの判定を行っても良い。
また、図30のS3001における作業内容チェックの処理が完了すると、実施の形態1と同様に、受取判定処理(S1404)及び下ろし場判定処理(S1405)が実行されるが、S3001の処理において作業内容が確定された場合、作業内容によってはS1404及びS1405の処理を省略することが可能である。
また、上記実施形態においては、測位データの軌跡から算出される作業車両の移動態様の特徴に加えて、作物、時期、地域の情報に基づいて作業内容を判定する場合を例として説明した。この他、作業が行われていた期間の天候情報や、周辺で稼働している他の作業車両の情報を用いることも可能である。
他の作業車両の情報としては、解析処理の対象となっているロガーIDとは異なるロガーIDのロガー情報に含まれる測位データに基づき、他の作業車両が解析対象の作業車両からどのくらい離れた位置で作業を行っていたかを確認することができる。これにより、解析対象の作業車両から特定の範囲内に何台の他の作業車両がいたかの情報を得ることが可能であり、そのようにして得られた情報を図34に示す作業詳細判定情報に含めることにより、作業内容の判定処理に活用することができる。
また、上記実施形態においては、図31において説明したように、それぞれのエリア判定期間に対して測位データの軌跡に基づく作業内容のチェック処理を行い、結果に応じて警告表示を行う場合を例として説明した。ここで、図13において説明したように、解析結果表示画面は、複数のエリア判定結果を含みつつ、「作業内容」の表示は一つである。これは、図11において説明した整形情報のリスト表示画面において、同様の作業を行った一の作業車両の整形情報が「開始時刻」および「終了時刻」において指定された上で解析が実行されることが想定されているからである。
従って、図31のフローにおいてS3106でYESとなった後に、それぞれのエリア判定期間に対して行われた作業内容チェックの結果を統合して判断する処理を行っても良い。例えば、解析処理部207は、すべてのエリア判定期間に対して警告が生成されていない場合には、最終的に作業内容は正しく設定されていると判断する。他方、一つでも警告が生成されていれば、生成された警告表示の情報に従い、図35(a)、(b)に示すような警告表示を行う。
その他の実施形態.
実施の形態3においては、図31において説明したように、単一のエリア判定期間のそれぞれについて作業車両の移動態様の特徴を算出して作業の内容を判定する場合を例として説明した。そのような判定処理に加えて、それぞれの作業エリアを時系列に遷移する態様に基づいて判断することも可能である。このような判断もまた、作業車両の移動態様の特徴による判断である。
例えば、堆肥散布等の散布処理においては、散布対象の農場エリアで作業が行われながら、定期的に肥料等の材料が貯蔵されているエリアに材料を補充しに戻ることとなる。従って、時系列エリア判定結果情報が示すエリアの遷移態様として、散布すべき材料が貯蔵されているエリアと農場エリアとを交互に移動しているような場合には、作業としては散布作業が行われていると判定する事が可能である。
このような判定処理についても、実施の形態3において説明した処理と同様に、図34において説明した作業詳細判定情報のように、「作業名」に対して、その作業であると判定するための条件が関連付けられた情報を用いることで実施の形態3と同様に実現可能である。例えば、堆肥散布を判定するための条件は、上述したように、散布すべき材料が貯蔵されているエリアと農場エリアとを交互に移動していることを示す情報である。