JP7483217B2 - 被覆電線、端子付き電線、銅合金線、及び銅合金撚線 - Google Patents

被覆電線、端子付き電線、銅合金線、及び銅合金撚線 Download PDF

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Description

本開示は、被覆電線、端子付き電線、銅合金線、及び銅合金撚線に関する。
本出願は、2018年8月21日付の日本国出願の特願2018-154530号に基づく優先権を主張し、前記日本国出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
従来、自動車や産業用ロボットなどの配線構造に複数の端子付き電線を束ねたワイヤーハーネスが利用されている。端子付き電線は、電線の端部において絶縁被覆層から露出させた導体に圧着端子などの端子が取り付けられたものである。代表的には、各端子は、コネクタハウジングに設けられた複数の端子孔にそれぞれ挿入されて、コネクタハウジングに機械的に接続される。このコネクタハウジングを介して、機器本体に電線が接続される。コネクタハウジング同士が接続されて、電線同士が接続されることもある。上記導体の構成材料には、銅などの銅系材料が主流である(例えば、特許文献1、2参照)。
特開2014-156617号公報 特開2018-77941号公報
本開示の被覆電線は、
導体と、前記導体の外側に設けられた絶縁被覆層とを備える被覆電線であって、
前記導体は、
銅合金からなる銅合金線が複数撚り合わされてなる撚線であり、
前記銅合金線の線径は0.5mm以下であり、
前記銅合金は、
Ni又はNi及びFeを合計で0.1質量%以上1.6質量%以下、
Pを0.05質量%以上0.7質量%以下含有し、
残部がCu及び不純物からなり、
前記銅合金中のPの析出固溶割合が1.1以上である。
本開示の端子付き電線は、
上記本開示の被覆電線と、前記被覆電線の端部に取り付けられた端子とを備える。
本開示の銅合金線は、
Ni又はNi及びFeを合計で0.1質量%以上1.6質量%以下、
Pを0.05質量%以上0.7質量%以下含有し、
残部がCu及び不純物からなる銅合金から構成され、
前記銅合金中のPの析出固溶割合が1.1以上であり、
線径が0.5mm以下である。
本開示の銅合金撚線は、
上記本開示の銅合金線が複数撚り合わされてなる。
図1は、実施形態の被覆電線を示す概略斜視図である。 図2は、実施形態の端子付き電線について、端子近傍を示す概略側面図である。 図3は、図2に示す端子付き電線を(III)-(III)切断線で切断した横断面図である。 図4は、実施形態での銅合金中のPの析出固溶割合の測定方法を説明する図であり、銅合金線のPのK吸収端XANESスペクトルの一例を示す図である。 図5は、試験例1での端子装着状態の耐衝撃エネルギーの測定方法を説明する説明図である。
[本開示が解決しようとする課題]
導電性及び強度に優れる上に、耐衝撃性にも優れる電線が望まれている。特に、導体を構成する銅合金線が細くても、衝撃を受けた場合に破断し難い電線が望まれる。
昨今、自動車の高性能化や高機能化などに伴って、車載される各種の電気機器、制御機器などが増加し、これらの機器に使用される電線も増加傾向にある。従って、電線の重量も増加傾向にある。一方で、環境保全のため、自動車の燃費の向上などを目的として、電線の軽量化が望まれる。特許文献1、2に記載される銅系材料で構成される線材は、高い導電率を有し易いものの、重量が大きくなり易い。例えば、線径0.5mm以下の細い銅合金線を導体に用いれば、加工硬化による高強度化、細径による軽量化が期待できる。しかし、上述のように線径0.5mm以下の細い銅合金線では、断面積が小さく、耐衝撃力が小さくなり易いため、衝撃を受けると破断し易い。従って、上述のように細くても、耐衝撃性に優れる銅合金線が望まれる。
上述のように圧着端子などの端子が取り付けられた状態で使用される電線は、導体における圧縮加工が施された端子取付箇所の断面積が、その他の箇所(以下、本線箇所と呼ぶことがある)の断面積よりも小さい。このことから、導体における端子取付箇所は、衝撃を受けた場合に破断し易い箇所となり易い。従って、上述のような細い銅合金線であっても、衝撃を受けた場合に端子取付箇所近傍が破断し難いこと、即ち、端子装着状態での耐衝撃性にも優れることが望まれる。
更に、車載用途などの電線では、配策時や、コネクタハウジングとの接続時などで引っ張られたり、曲げや捻回が加えられたり、使用時に振動が与えられたりすることが考えられる。ロボット用途などの電線では、使用時に曲げや捻回が与えられることが考えられる。このような繰り返しの曲げや捻回などの動作によっても破断し難く、耐疲労性に優れる電線や、圧着端子などの端子との固着性に優れる電線がより好ましい。
本開示は、導電性及び強度に優れる上に、耐衝撃性にも優れる被覆電線、端子付き電線、銅合金線、及び銅合金撚線を提供することを目的の一つとする。
[本開示の効果]
本開示の被覆電線、端子付き電線、銅合金線、及び銅合金撚線は、導電性及び強度に優れる上に、耐衝撃性にも優れる。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の被覆電線は、
導体と、前記導体の外側に設けられた絶縁被覆層とを備える被覆電線であって、
前記導体は、
銅合金からなる銅合金線が複数撚り合わされてなる撚線であり、
前記銅合金線の線径は0.5mm以下であり、
前記銅合金は、
Ni又はNi及びFeを合計で0.1質量%以上1.6質量%以下、
Pを0.05質量%以上0.7質量%以下含有し、
残部がCu及び不純物からなり、
前記銅合金中のPの析出固溶割合が1.1以上である。
上記の撚線は、複数の銅合金線を単に撚り合わせたものの他、撚り合わせた後に圧縮成形された、いわゆる圧縮撚線を含む。後述の(12)に記載される銅合金撚線についても同様である。代表的な撚り方法として、同心撚りが挙げられる。
線径とは、銅合金線が丸線の場合には直径とし、横断面の形状が円形以外の異形線である場合には、横断面における等価面積の円の直径とする。
本開示の被覆電線は、銅系材料から構成される細径の線材(銅合金線)を導体に備えるため、導電性及び強度に優れる上に軽量である。この銅合金線は、Ni又はNi及びFe、Pを特定の範囲で含む特定の組成の銅合金から構成される。本開示の被覆電線は、以下に説明するように、導電性及び強度により優れる上に、耐衝撃性にも優れる。上記銅合金においてNi、Fe及びPは、代表的には、NiP、FePなどの化合物といったPを含む析出物や晶出物として母相(Cu)に存在し、析出強化による強度向上効果とCuへの固溶低減による高い導電率の維持効果とを有する。上記銅合金から構成される銅合金線は、これらの元素による析出強化によって高い強度を有する。そのため、上記銅合金線は、熱処理によって伸びなどを高めた場合にも高い強度を有しつつ、高い靭性も有して耐衝撃性にも優れる。このような本開示の被覆電線、この被覆電線の導体を構成する銅合金撚線、この銅合金撚線の各素線である銅合金線は、高導電率、高強度、高靭性をバランスよく備えるといえる。
また、本開示の被覆電線は、上述のように高強度、高靭性の銅合金線の撚線を導体とする。撚線を導体とする被覆電線は、同一断面積の単線を導体とする場合に比較して、導体(撚線)全体として屈曲性や捻回性といった機械的特性により優れる傾向にある。従って、本開示の被覆電線は耐疲労性に優れる。更に、上記撚線や銅合金線は、圧縮加工などの断面減少を伴う塑性加工を施した場合に加工硬化し易い傾向にある。そのため、本開示の被覆電線は、圧着端子などの端子が取り付けられた場合に、加工硬化によって、上記端子を強固に固着できる。従って、本開示の被覆電線は上記端子との固着性にも優れる。本開示の被覆電線は、この加工硬化によって導体(撚線)における端子接続箇所の強度を高められるので、衝撃を受けた場合に端子接続箇所で破断し難い。よって、本開示の被覆電線は、端子装着状態での耐衝撃性にも優れる。
更に、銅合金中のPの析出固溶割合が1.1以上であり、銅合金中に析出状態で存在するPの割合が比較的多い、換言すれば固溶状態で存在するPの割合が比較的少ない。そのため、析出強化による強度向上効果が良好に得られると共に、Pが母相に固溶することによる導電率の低下を抑制して、高い導電率の維持効果が良好に得られる。「Pの析出固溶割合」とは、析出状態で存在するPの割合(析出割合)と固溶状態で存在するPの割合(固溶割合)との比率を意味する。Pの析出固溶割合の測定方法は後述する。
(2)本開示の被覆電線の一例として、
前記銅合金は、Snを0.05質量%以上0.7質量%以下含む形態が挙げられる。
上記形態は、Snを特定の範囲で含有することで、Snの固溶強化による強度向上効果が得られ、強度により優れる。
(3)本開示の被覆電線の一例として、
NiとFeとの合計量とPの含有量との質量比が3以上である形態が挙げられる。
上記形態は、Ni又はNi及びFeをPに対して多めに含むため、Ni又はNi及びFeがPと過不足なく化合物を形成し易く、Pを析出状態で存在させ易い。その結果、析出強化による強度向上効果が適切に得られる。また、過剰のPが母相に固溶することによる導電率の低下を抑制して、高い導電率の維持効果を適切に得ることができる。
(4)本開示の被覆電線の一例として、
前記銅合金は、C、Si及びMnから選択される1種以上の元素を合計で10質量ppm以上500質量ppm以下含む形態が挙げられる。
C、Si、Mnは、特定の範囲で含むことで、Ni、Fe、P、Snなどの脱酸剤として機能し、これらの元素の酸化を抑制する。これにより、これらの元素の含有による高導電率及び高強度という効果を適切に得られる。また、上記形態は、C、Si、Mnの過剰含有による導電率の低下を抑制できることからも、導電性に優れる。従って、上記形態は、導電性及び強度により優れる。
(5)本開示の被覆電線の一例として、
前記銅合金線の引張強さが385MPa以上である形態が挙げられる。
上記形態は、引張強さが高い銅合金線を導体に備えるため、強度に優れる。
(6)本開示の被覆電線の一例として、
前記銅合金線の破断伸びが5%以上である形態が挙げられる。
上記形態は、破断伸びが高い銅合金線を導体に備えるため、耐衝撃性に優れる。その上、銅合金線の破断伸びが高いため、曲げや捻回によっても破断し難く、屈曲性、捻回性にも優れる。
(7)本開示の被覆電線の一例として、
前記銅合金線の導電率が60%IACS以上である形態が挙げられる。
上記形態は、導電率が高い銅合金線を導体に備えるため、導電性に優れる。
(8)本開示の被覆電線の一例として、
前記銅合金線の加工硬化指数が0.1以上である形態が挙げられる。
上記形態は、銅合金線の加工硬化指数が0.1以上と大きい。そのため、上記形態は、圧縮加工などの断面減少を伴う塑性加工が施された場合に、加工硬化によって塑性加工箇所の強度を高められる。ここで、本開示の被覆電線は、上述のように銅合金線自体が高強度であるため、圧着端子などの端子が取り付けられた場合に上記端子との固着力が高い(後述の(9)参照)。このことに加えて、加工硬化指数が上述のように大きいため、加工硬化によって導体(撚線)における端子接続箇所の強度を高められる。従って、上記形態は、上記端子をより強固に固着できる。このような被覆電線は、上記端子との固着性により優れる上、衝撃を受けた場合に端子接続箇所で破断し難く、端子装着状態での耐衝撃性にも優れる。
(9)本開示の被覆電線の一例として、
端子固着力が45N以上である形態が挙げられる。
端子固着力、後述の(10)、(15)に記載される端子装着状態での耐衝撃エネルギー、後述の(11)、(16)に記載される耐衝撃エネルギーの測定方法は後述する。
上記形態は、圧着端子などの端子が取り付けられた場合に端子を強固に固着できる。そのため、上記形態は上記端子との固着性に優れる。従って、上記形態は、導電性及び強度並びに耐衝撃性に優れる上に、端子固着性にも優れる。上記形態は、上述の端子付き電線などに好適に利用できる。
(10)本開示の被覆電線の一例として、
端子が取り付けられた状態での耐衝撃エネルギーが3J/m以上である形態が挙げられる。
上記形態は、圧着端子などの端子が取り付けられた端子装着状態での耐衝撃エネルギーが高い。そのため、上記形態は、端子装着状態で衝撃を受けた場合でも端子取付箇所で破断し難い。従って、上記形態は、導電性及び強度並びに耐衝撃性に優れる上に、端子装着状態での耐衝撃性にも優れる。上記形態は、上述の端子付き電線などに好適に利用できる。
(11)本開示の被覆電線の一例として、
前記被覆電線のみの耐衝撃エネルギーが6J/m以上である形態が挙げられる。
上記形態は、被覆電線自体の耐衝撃エネルギーが高い。そのため、上記形態は、衝撃を受けた場合でも破断し難く、耐衝撃性に優れる。
(12)本開示の端子付き電線は、
上記(1)から(11)のいずれか1つに記載の被覆電線と、前記被覆電線の端部に取り付けられた端子とを備える。
本開示の端子付き電線は、本開示の被覆電線を備える。従って、本開示の端子付き電線は、上述のように導電性及び強度に優れる上に、耐衝撃性にも優れる。また、本開示の端子付き電線は、本開示の被覆電線を備えるため、上述のように耐疲労性、被覆電線と圧着端子などの端子との固着性、端子装着状態での耐衝撃性にも優れる。
(13)本開示の銅合金線は、
Ni又はNi及びFeを合計で0.1質量%以上1.6質量%以下、
Pを0.05質量%以上0.7質量%以下含有し、
残部がCu及び不純物からなる銅合金から構成され、
前記銅合金中のPの析出固溶割合が1.1以上であり、
線径が0.5mm以下である。
本開示の銅合金線は、銅系材料から構成される細径の線材である。そのため、本開示の銅合金線は、単線又は撚線の状態で電線などの導体に利用される場合に、導電性及び強度に優れる上に電線などの軽量化に寄与する。特に、本開示の銅合金線は、Ni又はNi及びFe、Pを特定の範囲で含む特定の組成の銅合金から構成されている。よって、本開示の銅合金線は、上述のように導電性及び強度により優れる上に耐衝撃性にも優れる。従って、本開示の銅合金線を電線の導体に利用することで、導電性及び強度に優れる上に耐衝撃性にも優れる電線、更には耐疲労性、圧着端子などの端子との固着性、端子装着状態での耐衝撃性にも優れる電線を構築できる。
更に、本開示の銅合金線は、銅合金中のPの析出固溶割合が1.1以上であり、上述のように銅合金中に析出状態で存在するPの比率が高い。よって、本開示の銅合金線は、高強度化を図りつつ、高導電性を確保できる。
(14)本開示の銅合金撚線は、
上記(13)に記載の銅合金線が複数撚り合わされてなる。
本開示の銅合金撚線は、上記(13)に記載される銅合金線の組成及び特性を実質的に維持している。そのため、本開示の銅合金撚線は、導電性及び強度に優れる上に耐衝撃性にも優れる。従って、本開示の銅合金撚線を電線の導体に利用することで、導電性及び強度に優れる上に耐衝撃性にも優れる電線、更には耐疲労性、圧着端子などの端子との固着性、端子装着状態での耐衝撃性にも優れる電線を構築できる。
(15)本開示の銅合金撚線の一例として、
端子が取り付けられた状態での耐衝撃エネルギーが1.5J/m以上である形態が挙げられる。
上記形態は、端子装着状態での耐衝撃エネルギーが高い。このような上記形態の銅合金撚線を導体とし、絶縁被覆層を備える被覆電線とすれば、端子装着状態での耐衝撃エネルギーがより高い被覆電線、代表的には上述の(10)に記載される被覆電線を構築できる。従って、上記形態は、導電性及び強度並びに耐衝撃性に優れる上に、端子装着状態での耐衝撃性により優れる被覆電線や端子付き電線などの導体に好適に利用できる。
(16)本開示の銅合金撚線の一例として、
前記銅合金撚線のみの耐衝撃エネルギーが4J/m以上である形態が挙げられる。
上記形態は、銅合金撚線自体の耐衝撃エネルギーが高い。このような上記形態の銅合金撚線を導体とし、絶縁被覆層を備える被覆電線とすれば、耐衝撃エネルギーがより高い被覆電線、代表的には上述の(11)に記載される被覆電線を構築できる。従って、上記形態は、導電性及び強度に優れる上に、耐衝撃性により優れる被覆電線や端子付き電線などの導体に好適に利用できる。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、適宜、図面を参照して、本開示に係る実施形態を詳細に説明する。図中、同一符号は同一名称物を示す。元素の含有量は、断りが無い限り質量割合(質量%又は質量ppm)とする。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
[銅合金線]
(組成)
実施形態の銅合金線1は、被覆電線3などの電線の導体に利用されるものである(図1)。銅合金線1は、特定の添加元素を特定の範囲で含む銅合金から構成される。上記銅合金は、Ni又はNi及びFeを合計で0.1%以上1.6%以下、Pを0.05%以上0.7%以下含有するCu-Ni-(Fe)-P系のCu(銅)合金である。更に、Snを0.05%以上0.7%以下含んでもよい。上記銅合金は、不純物を含むことを許容する。「不純物」とは主として不可避なものをいう。以下、元素ごとに詳細に説明する。
・Ni(ニッケル)、Fe(鉄)
Ni、Feは、主として、Pと化合することにより母相であるCuに析出して存在し、引張強さといった強度の向上に寄与する。
Ni又はNi及びFeを合計で0.1%以上含有すると、Ni、FeがPと化合することにより析出物などを良好に生成でき、析出強化によって強度に優れる銅合金線1とすることができる。かつ、上記の析出によってPの母相への固溶を抑制して、高い導電率を有する銅合金線1とすることができる。P量や製造条件にもよるが、Ni、Feの含有量が多いほど、銅合金線1の強度が高くなり易い。高強度化などを望む場合には、Ni含有量又はNi及びFeの合計含有量(これらをまとめて「NiとFeとの合計量」という場合がある)を0.2%以上、更に0.35%超、0.4%以上、0.45%以上とすることができる。
Ni又はNi及びFeを合計で1.6%以下の範囲で含有すると、析出物などの粗大化を抑制し易い。析出物などの粗大化が抑制される結果、粗大な析出物を起点とする破断を低減できて強度に優れる上に、製造過程では伸線加工時などに断線し難く、製造性にも優れる。P量や製造条件にもよるが、Ni、Feの含有量が少ないほど、上述の析出物の粗大化などを抑制し易い。析出物の粗大化の抑制(破断、断線の低減)などを望む場合には、Ni含有量又はNi及びFeの合計含有量を1.5%以下、更に1.2%以下、1.0%以下、0.9%未満とすることができる。
NiとFeとの合計量の範囲は、0.1%以上1.6%以下であり、更に0.2%以上1.5%以下、0.35%超1.2%以下、0.4%以上1.0%以下、0.45%以上0.9%未満が挙げられる。
・P(リン)
Pは、主としてNi、Feと共に析出して存在し、引張強さといった強度の向上に寄与する、即ち主として析出強化元素として機能する。
Pを0.05%以上含有すると、Ni、Feと化合して析出物などを良好に生成でき、析出強化によって強度に優れる銅合金線1とすることができる。Fe量や製造条件にもよるが、Pの含有量が多いほど、銅合金線1の強度が高くなり易い。高強度化などを望む場合には、Pの含有量を0.1%超、更に0.11%以上、0.12%以上とすることができる。なお、含有するPのうちの一部が脱酸剤として機能し、母相に酸化物として存在することを許容する。
Pを0.7%以下の範囲で含有すると、析出物などの粗大化を抑制し易く、破断や断線を低減することができる。Fe量や製造条件にもよるが、Pの含有量が少ないほど、上述の析出物の粗大化を抑制し易い。析出物の粗大化の抑制(破断、断線の低減)などを望む場合には、Pの含有量を0.6%以下、更に0.5%以下、0.35%以下、更に0.3%以下、0.25%以下とすることができる。
Pの含有量の範囲は、0.05%以上0.7%以下であり、更に0.1%超0.6%以下、0.11%以上0.5%以下、0.11%以上0.3%以下、0.12%以上0.25%以下が挙げられる。
・(Ni+Fe)/P
Ni、Fe及びPを上述の特定の範囲で含有することに加えて、Pに対してNi又はNi及びFeを適切に含むことが好ましい。Ni又はNi及びFeをPに対して多めに含むことで、Ni又はNi及びFeがPと過不足なく化合物を形成し易い。その結果、析出強化による強度向上効果が適切に得られる。また、過剰のPが母相に固溶することによる導電率の低下を抑制して、高い導電率の維持効果を適切に得ることができる。よって、導電性に優れる上に高強度な銅合金線1とすることができる。
具体的には、NiとFeとの合計量とPの含有量との質量比(Ni+Fe)/Pが3以上であることが挙げられる。(Ni+Fe)/Pが3以上であれば、上述のように析出強化による強度向上効果を良好に得られて強度により優れると共に、導電性に優れる傾向にある。(Ni+Fe)/Pが大きいほど、導電性により優れる傾向にあり、(Ni+Fe)/Pを3超、3.1以上、更に4.0以上とすることができる。(Ni+Fe)/Pは例えば30以下の範囲で選択できる。(Ni+Fe)/Pが20以下、更に10以下であると、過剰なNi、Feによる析出物の粗大化などを抑制し易い。
(Ni+Fe)/Pは、例えば3以上30以下であり、更に3超20以下、3.1以上20以下、4.0以上10以下が挙げられる。
・Sn(スズ)
実施形態の銅合金線1を構成する銅合金は、Snを0.05%以上0.7%以下含むことができる。
Snは、主として、母相であるCuに固溶して存在し、引張強さといった強度の向上に寄与する、即ち主として固溶強化元素として機能する。
Snを0.05%以上含有すると、Snの固溶強化による強度向上効果が得られ、強度により優れる銅合金線1とすることができる。Snの含有量が多いほど、強度が高くなり易い。高強度化を望む場合には、Snの含有量を0.08%以上、更に0.1%以上、0.12%以上とすることができる。
Snを0.7%以下の範囲で含有すると、Snが母相に過剰に固溶することによる導電率の低下を抑制して、導電率が高い銅合金線1とすることができる。また、Snの過剰固溶に起因する加工性の低下を抑制することができる。よって、伸線加工などの塑性加工が行い易く、製造性にも優れる。高導電性、良好な加工性などを望む場合には、Snの含有量を0.6%以下、更に0.55%以下、0.5%以下とすることができる。
Snの含有量の範囲は、例えば0.05%以上0.7%以下であり、更に0.08%以上0.6%以下、0.1%以上0.55%以下、0.12%以上0.5%以下が挙げられる。
実施形態の銅合金線1は、上述のように析出強化や固溶強化によって高強度である。そのため、製造過程で人工時効と軟化とを行った場合にも、高い強度を有しながら高い伸びなども有して、高強度、高靭性な銅合金線1とすることができる。
・C(炭素)、Si(ケイ素)、Mn(マンガン)
実施形態の銅合金線1を構成する銅合金は、Ni、Fe、P、Snなどに対して脱酸剤として機能する脱酸元素を含むことができる。具体的には、脱酸元素としてC、Si、Mnが挙げられる。銅合金は、C、Si及びMnから選択される1種以上の元素を合計で10ppm以上500ppm以下含むことが挙げられる。
ここで、製造過程(例えば鋳造工程)での雰囲気を大気雰囲気などの酸素含有雰囲気とすると、Ni、Fe、P、Snなどの元素が酸化する恐れがある。これらの元素が酸化物となると、上述の析出物などを適切に形成できなかったり、母相に固溶できなかったりする。結果的に、Ni、Fe及びPの含有による高導電性及び高強度化、並びにSnの含有による固溶強化という効果を適切に得られない恐れがある。これらの酸化物が伸線加工時などに破断の起点となり、製造性の低下を招く恐れもある。上述の脱酸元素を少なくとも1種、好ましくは2種(この場合、CとMn又はCとSiが好ましい)、より好ましくは3種全てを特定の範囲で含むとよい。そうすることで、NiやFe及びPの析出による析出強化と高導電性の確保、Snの固溶強化をより確実に図り、導電性に優れ、高強度な銅合金線1とすることができる。
上述の脱酸元素の合計含有量が10ppm以上であれば、上述のNi、Fe、Snなどの元素の酸化を抑制できる。合計含有量が多いほど、脱酸効果を得易く、20ppm以上、更に30ppm以上とすることができる。
合計含有量が500ppm以下であれば、脱酸元素の過剰含有による導電性の低下を招き難く、導電性に優れる。合計含有量が少ないほど、導電性の低下を抑制し易いことから、300ppm以下、更に200ppm以下、150ppm以下とすることができる。
上述の脱酸元素の合計含有量の範囲は、例えば10ppm以上500ppm以下であり、更に20ppm以上300ppm以下、30ppm以上200ppm以下が挙げられる。
Cのみの含有量は、10ppm以上300ppm以下、更に10ppm以上200ppm以下、特に30ppm以上150ppm以下が好ましい。
Mnのみの含有量、又はSiのみの含有量は、5ppm以上100ppm以下、更に5ppm超50ppm以下が好ましい。Mn及びSiの合計含有量は、10ppm以上200ppm以下、更に10ppm超100ppm以下が好ましい。
C、Mn、Siをそれぞれ上述の範囲で含有すると、脱酸効果を良好に得易い。例えば、銅合金中の酸素の含有量を20ppm以下、15ppm以下、更に10ppm以下とすることができる。
(組織)
実施形態の銅合金線1を構成する銅合金の組織として、Ni、FeとPとの析出物や晶出物が分散する組織が挙げられる。銅合金が析出物などの分散組織、好ましくは微細な析出物などが均一的に分散する組織を有することで、析出強化による高強度化、Pなどの母相への固溶低減による高い導電率の確保を期待できる。
(銅合金中のPの析出固溶割合)
上記銅合金中のPの析出固溶割合が1.1以上であることが挙げられる。Pの析出固溶割合とは、Pの析出割合と固溶割合との比率を意味し、この値が高いほど、銅合金中に析出状態で存在するPの比率が高いことを表す。Pの存在状態はX線吸収分光(XAS)測定により調べることが可能である。XASを用いてPの析出固溶割合を推定できる。
Pの析出固溶割合の測定方法を説明する。銅合金線1を試料として、銅合金線1のPのK吸収端近傍におけるXASのスペクトル(以下、XANESスペクトルと呼ぶことがある)を測定する。PのK吸収端XANESスペクトルの一例を図4に示す。図4に示すXANESスペクトルは、規格化したものであり、横軸がX線エネルギー(eV)、縦軸がX線吸収(任意単位a.u.)である。 ここでは、横軸は、標準試料として測定されるリン酸三カルシウム(化学式:Ca(PO)において観測される最大ピークのピークトップをゼロeVとした場合における相対的なX線エネルギーを示している。標準試料としては、リン酸三カルシウムに代えてリン酸水素カルシウム(化学式:CaHPO)を用いてもよい。縦軸のX線吸収の規格化は、測定試料である銅合金線のXANESスペクトルを解析ソフトで解析する。例えば、銅合金線にX線を照射して得られた蛍光X線の強度をX線エネルギー毎にプロットし、最低-32.1eVから最高-13.5eVまでの任意の範囲をバックグラウンド領域として差し引き、最低+13.4eVから最高+57.4eVまでの任意の範囲を規格化領域として設定する。但し、バックグラウンド領域を定める上記二点間は最低でも10eV以上離れているものとし、規格化領域を定める上記二点間は最低でも20eV以上離れているものとする。解析に用いるソフトウェアとしては、例えば、株式会社リガク製のREX2000などの市販のソフトウェアや、AthenaなどのXANESスペクトルの解析に特化したフリーのソフトウェアを利用できる。このような解析ソフトを用いて、上述の解析手順に基づき、図4に示すような銅合金線のPのK吸収端XANESスペクトルを取得する。図4では、銅合金線の規格化したXANESスペクトルを実線で示し、リン酸三カルシウムのXANESスペクトルを点線で付記した。そして、得られたXANESスペクトルにおいて、横軸が-8.0eVから-7.0eVの範囲においてX線吸収が最大となる値を析出度I、横軸が-5.5eVから-4.5eVの範囲においてX線吸収が最小となる値を固溶度Iとし、析出度Iと固溶度Iとの比I/IをPの析出固溶割合とする。なお、上述のREX2000やAthenaと同様のXANESスペクトルの解析が可能なソフトウェアを用いることによっても、上述の解析手順に基づいてPの析出固溶割合を求めることが可能である。
Pの析出固溶割合は、製造条件、例えば、伸線後に行う熱処理の条件によって変えることが可能である。具体的には、熱処理温度を高くしたり、保持時間を長くすると、Pの析出割合が増え、Pの析出固溶割合が高くなる傾向にある。Pの析出固溶割合は、1.2以上、1.3以上、1.4以上、更に1.5以上とすることができる。Pの析出固溶割合の上限は、例えば2.5以下、更に2.0以下である。
更に、上記銅合金の組織として、微細な結晶組織が挙げられる。この場合、上述の析出物などが均一的に分散して存在し易く、更なる高強度化が期待できる。また、破断の起点となり得る粗大結晶粒が少なく破断し難い。そのため、伸びといった靭性も高くなり易く、耐衝撃性により優れると期待される。更に、この場合、実施形態の銅合金線1を被覆電線3などの電線の導体とし、この導体に圧着端子などの端子を取り付けると、端子を強固に固着できて、端子固着力を高め易い。
具体的には、銅合金線1の平均結晶粒径が10μm以下であると、上述の効果を得易く、7μm以下、更に5μm以下とすることができる。結晶粒径は、例えば、組成(Ni、Fe、P、Snの含有量、(Ni+Fe)/Pの値など、以下同様)に応じて製造条件(加工度や熱処理温度など、以下同様)を調整することで、所定の大きさにすることができる。
銅合金線の平均結晶粒径は、以下のように測定する。銅合金線の長手方向に直交する横断面にクロスセクションポリッシャ(CP)加工を施し、この横断面を金属顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する。観察像から、所定の面積の観察範囲をとり、観察範囲内に存在する全ての結晶粒について個々の面積を測定する。各々の結晶粒の面積と等価面積を有する円の直径を結晶粒径として算出し、その平均値を平均結晶粒径とする。この結晶粒径の算出は、市販の画像処理装置を利用できる。観察範囲は、結晶粒が50個以上含まれる範囲、又は横断面の全体とすることができる。このように観察範囲を十分に広くすることで、結晶以外のもの(析出物など)に起因する誤差を十分に小さくすることができる。
(線径)
実施形態の銅合金線1は、製造過程で伸線加工時の加工度(断面減少率)などを調整することで、その線径を所定の大きさにすることができる。特に、銅合金線1が線径0.5mm以下の細線であれば、軽量化が望まれる電線の導体、例えば自動車に配線される電線用導体などに好適に利用できる。上記線径を0.35mm以下、更に0.25mm以下とすることができる。
(断面形状)
実施形態の銅合金線1の横断面の形状は、適宜選択できる。銅合金線1の代表例として、横断面の形状が円形状の丸線が挙げられる。横断面の形状は、伸線加工に用いるダイスの形状や、銅合金線1を圧縮撚線とする場合には成形金型の形状などによって変化する。銅合金線1を、例えば、横断面の形状が長方形などの四角形状の角線、六角形といった多角形状や楕円形状などの異形線とすることができる。圧縮撚線を構成する銅合金線1では、代表的にはその横断面の形状が不定形な異形線である。
(特性)
・引張強さ、破断伸び、導電率
実施形態の銅合金線1は、上述の特定の組成の銅合金で構成されることで、導電性に優れる上に、高強度である。また、実施形態の銅合金線1は、適宜な熱処理が施されて製造されることで、高強度、高靭性、高導電率をバランスよく備える。このような実施形態の銅合金線1は、被覆電線3などの導体に好適に利用できる。銅合金線1は、引張強さが385MPa以上であること、破断伸びが5%以上であること、及び導電率が60%IACS以上であることの少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つ全てを満たすことが挙げられる。銅合金線1の一例として、導電率が60%IACS以上であり、引張強さが385MPa以上であるものが挙げられる。又は、銅合金線1の一例として、破断伸びが5%以上であるものが挙げられる。引張強さが390MPa以上、更に395MPa以上、特に400MPa以上であると、より高強度である。
より高強度を望む場合には、引張強さを405MPa以上、410MPa以上、更に415MPa以上とすることができる。
より高靭性を望む場合には、破断伸びを6%以上、7%以上、8%以上、9.5%以上、更に10%以上とすることができる。
より高導電率を望む場合には、導電率を62%IACS以上、63%IACS以上、更に65%IACS以上とすることができる。
・加工硬化指数
実施形態の銅合金線1の一例として、加工硬化指数が0.1以上であるものが挙げられる。
加工硬化指数とは、引張試験の試験力を単軸方向に適用したときの塑性ひずみ域における真応力σと真ひずみεとの式σ=C×εにおいて、真ひずみεの指数nとして定義される。上記式において、Cは強度定数である。
上記の指数nは、市販の引張試験機を用いて引張試験を行い、S-S曲線を作成することで求められる(JIS G 2253(2011)も参照)。
加工硬化指数が大きいほど、加工硬化し易く、加工部分では、加工硬化による強度向上効果を得られる。例えば、銅合金線1を被覆電線3などの電線の導体に用いて、この導体に圧着端子などの端子を取り付けた場合、導体における端子取付箇所は、圧縮加工などの塑性加工が施された加工部分となる。この加工部分は、圧縮加工などの断面減少を伴う塑性加工が施されているものの、上記塑性加工前よりも硬くなっており、強度が高められている。従って、この加工部分、即ち上記導体における端子取付箇所及びその近傍が強度の弱点となることを低減できる。加工硬化指数が0.11以上、更に0.12以上、0.13以上であると、加工硬化による強度向上効果を得易い。組成や製造条件によっては、導体における端子取付箇所は、導体における本線箇所と同等程度の強度を維持することが期待できる。加工硬化指数は、組成や製造条件で変わるため、上限は特に定めない。
引張強さ、破断伸び、導電率、加工硬化指数は、組成や製造条件を調整することで所定の大きさにすることができる。例えば、Ni、Fe、P、適宜Snの含有量を多くしたり、伸線加工度を高めたり(線径を小さくしたり)すると、引張強さが高くなる傾向にある。例えば、伸線後に熱処理を行う場合に熱処理温度を高めると、破断伸び及び導電率が高く、引張強さが低くなる傾向にある。
・溶接性
実施形態の銅合金線1は、溶接性に優れるという効果も奏する。例えば、銅合金線1や後述の銅合金撚線10を電線の導体に利用して、この導体から分岐をとるために別の導体線などを溶接した場合に溶接箇所が破断し難く、溶接強度が高い。
[銅合金撚線]
実施形態の銅合金撚線10は、実施形態の銅合金線1を素線とするものであり、銅合金線1が複数撚り合わされてなる。銅合金撚線10は、素線である銅合金線1の組成や組織、特性を実質的に維持している。銅合金撚線10は、その断面積が素線1本の場合よりも大きくなり易いため、耐衝撃力を増大できて耐衝撃性により優れる。また、銅合金撚線10は、同じ断面積を有する単線と比較して、曲げや捻じりなどを行い易く、屈曲性、捻回性にも優れている。そのため、銅合金撚線10を電線の導体に用いると配策時や繰り返しの曲げなどで断線し難い。更に、銅合金撚線10は、上述のように加工硬化し易い銅合金線1が複数撚り合わされている。そのため、銅合金撚線10を被覆電線3などの電線の導体に用いて、この導体に圧着端子などの端子を取り付けた場合に、上記端子をより強固に固着することができる。図1では、7本の同心撚りの銅合金撚線10を例示するが、銅合金線1の撚り合わせ本数、撚り方法は適宜変更できる。
銅合金撚線10は、撚り合わせた後に圧縮成形された圧縮撚線(図示せず)とすることができる。圧縮撚線は、撚り合わせ状態の安定性に優れるため、圧縮撚線を被覆電線3などの電線の導体とする場合、導体の外周に絶縁被覆層2などを形成し易い。また、圧縮撚線は、単に撚り合わせた場合よりも機械的特性により優れる傾向にある上に小径にできる。
銅合金撚線10の線径、断面積、撚りピッチなどは、銅合金線1の線径や断面積、撚り合わせ本数などに応じて適宜選択できる。
銅合金撚線10の断面積が例えば0.03mm以上であれば、導体断面積が大きいため、電気抵抗が小さく導電性に優れる。また、銅合金撚線10を被覆電線3などの電線の導体に用いて、この導体に圧着端子などの端子を取り付ける場合に断面積がある程度大きいため、上記端子を取り付け易い。更に、上述のように銅合金撚線10に上記端子を強固に固着できる上に、端子装着状態での耐衝撃性にも優れる。上記断面積を0.1mm以上とすることができる。上記断面積が例えば0.5mm以下であれば、軽量な銅合金撚線10とすることができる。
銅合金撚線10の撚りピッチが例えば10mm以上であれば、素線(銅合金線1)が線径0.5mm以下の細線であっても撚り合わせ易く、銅合金撚線10の製造性に優れる。上記撚りピッチが例えば20mm以下であれば、曲げなどを行った場合にも撚りがほぐれず、屈曲性に優れる。
・端子装着状態での耐衝撃エネルギー
実施形態の銅合金撚線10は、上述のように特定の銅合金から構成される銅合金線1を素線とする。従って、銅合金撚線10は、被覆電線などの導体に利用されて、この導体の端部に圧着端子などの端子が取り付けられた状態で衝撃を受けた場合に端子取付箇所近傍で破断し難い。定量的には、銅合金撚線10において、上記端子が取り付けられた状態での耐衝撃エネルギー(端子装着状態での耐衝撃エネルギー)が1.5J/m以上であることが挙げられる。端子装着状態での耐衝撃エネルギーが大きいほど、衝撃を受けた場合に上述の端子取付箇所近傍で破断し難い。このような銅合金撚線10を導体とすれば、端子装着状態での耐衝撃性に優れる被覆電線などを構築できる。銅合金撚線10における端子装着状態での耐衝撃エネルギーは、1.6J/m以上、更に1.7J/m以上が好ましく、上限は特に定めない。
・耐衝撃エネルギー
実施形態の銅合金撚線10は、上述のように特定の銅合金から構成される銅合金線1を素線とするため、衝撃などを受けた場合に破断し難い。定量的には、銅合金撚線10のみの耐衝撃エネルギーが4J/m以上であることが挙げられる。耐衝撃エネルギーが大きいほど、衝撃を受けた場合に銅合金撚線10自体が破断し難い。このような銅合金撚線10を導体とすれば、耐衝撃性に優れる被覆電線などを構築できる。銅合金撚線10における耐衝撃エネルギーは、4.2J/m以上、更に4.5J/m以上が好ましく、上限は特に定めない。
なお、単線の銅合金線1についても、端子装着状態での耐衝撃エネルギーや端子が取り付けられてない銅合金線1のみの耐衝撃エネルギーが上述の範囲を満たすことが好ましい。実施形態の銅合金撚線10は、単線の銅合金線1と比較して、端子装着状態での耐衝撃エネルギーや耐衝撃エネルギーが高い傾向にある。
[被覆電線]
実施形態の銅合金線1や銅合金撚線10は、そのままでも導体に利用できるが、外周に絶縁被覆層を備えると、絶縁性に優れる。実施形態の被覆電線3は、導体と、導体の外側に設けられた絶縁被覆層2とを備え、導体が実施形態の銅合金撚線10である。別の実施形態の被覆電線として、導体が銅合金線1(単線)であるものが挙げられる。図1では、導体に銅合金撚線10を備える場合を例示する。
絶縁被覆層2を構成する絶縁材料は、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)やノンハロゲン樹脂(例えば、ポリプロピレン(PP))、難燃性に優れる材料などが挙げられる。公知の絶縁材料が利用できる。
絶縁被覆層2の厚さは、所定の絶縁強度に応じて適宜選択でき、特に限定されない。
・端子固着力
実施形態の被覆電線3は、上述のように特定の銅合金から構成される銅合金線1を素線とする銅合金撚線10を導体に備える。従って、圧着端子などの端子を取り付けた状態において、端子を強固に固着することができる。定量的には、端子固着力が45N以上であることが挙げられる。端子固着力が大きいほど、端子を強固に固着でき、被覆電線3(導体)と端子との接続状態を維持し易く好ましい。端子固着力は50N以上、55N超、更に58N以上が好ましく、上限は特に定めない。
・端子装着状態での耐衝撃エネルギー
実施形態の被覆電線3における端子装着状態での耐衝撃エネルギー、被覆電線3のみの耐衝撃エネルギーは、絶縁被覆層2を備えていない裸の導体、即ち実施形態の銅合金撚線10に比較して高い傾向にある。絶縁被覆層2の構成材料や厚さなどによっては、上記裸の導体と比較して、被覆電線3における端子装着状態での耐衝撃エネルギー、被覆電線3のみの耐衝撃エネルギーを更に高められる場合がある。定量的には、被覆電線3における端子装着状態での耐衝撃エネルギーが3J/m以上であることが挙げられる。被覆電線3における端子装着状態での耐衝撃エネルギーは、大きいほど衝撃を受けた場合に端子取付箇所近傍で破断し難く、3.2J/m以上、更に3.5J/m以上が好ましく、上限は特に定めない。
・耐衝撃エネルギー
また、定量的には、被覆電線3のみの耐衝撃エネルギー(以下、本線の耐衝撃エネルギーと呼ぶことがある)が6J/m以上であることが挙げられる。本線の耐衝撃エネルギーは、大きいほど衝撃を受けた場合に破断し難く、6.5J/m以上、更に7J/m以上、8J/m以上が好ましく、上限は特に定めない。
被覆電線3から絶縁被覆層2を除去して導体のみの状態、即ち銅合金撚線10のみの状態とし、この導体における端子装着状態での耐衝撃エネルギー、導体のみの耐衝撃エネルギーを測定した場合、上述の銅合金撚線10と実質的に同様の値をとる。具体的には、被覆電線3に備える導体の端子装着状態での耐衝撃エネルギーが1.5J/m以上である形態、被覆電線3に備える導体の耐衝撃エネルギーが4J/m以上である形態が挙げられる。
なお、単線の銅合金線1を導体に備える被覆電線においても、端子固着力、端子装着状態での耐衝撃エネルギー、本線の耐衝撃エネルギーの少なくとも一つが上述の範囲を満たすことが好ましい。導体を銅合金撚線10とする実施形態の被覆電線3は、単線の銅合金線1を導体とする被覆電線よりも、端子固着力、端子装着状態での耐衝撃エネルギー、本線の耐衝撃エネルギーがより高い傾向にある。
実施形態の被覆電線3などにおける端子固着力、端子装着状態での耐衝撃エネルギー、本線の耐衝撃エネルギーは、銅合金線1の組成や製造条件、絶縁被覆層2の構成材料や厚さなどを調整することで、所定の大きさにすることができる。例えば、上述の引張強さ、破断伸び、導電率、加工硬化指数などの特性が上述の特定の範囲を満たすように、銅合金線1の組成や製造条件を調整することが挙げられる。
[端子付き電線]
実施形態の端子付き電線4は、図2に示すように、実施形態の被覆電線3と、被覆電線3の端部に取り付けられた端子5とを備える。ここでは、端子5として、一端に雌型又は雄型の嵌合部52を備え、他端に絶縁被覆層2を把持するインシュレーションバレル部54を備え、中間部に導体(図2では銅合金撚線10)を把持するワイヤバレル部50を備える圧着端子を例示する。圧着端子は、被覆電線3の端部において絶縁被覆層2が除去されて露出された導体の端部に圧着されて、導体と電気的及び機械的に接続される。端子5は、圧着端子などの圧着型の他、溶融した導体が接続される溶融型などが挙げられる。別の実施形態の端子付き電線として、上述の銅合金線1(単線)を導体とする被覆電線を備えるものが挙げられる。
端子付き電線4は、被覆電線3ごとに一つの端子5が取り付けられた形態(図2参照)の他、複数の被覆電線3に対して一つの端子5を備える形態が挙げられる。即ち、端子付き電線4は、被覆電線3を一つ、及び端子5を一つ備える形態の他、複数の被覆電線3と一つの端子5とを備える形態、複数の被覆電線3と複数の端子5とを備える形態が挙げられる。複数の電線を備える場合は、結束具などによって複数の電線を束ねると、端子付き電線4を取り扱い易い。
[銅合金線、銅合金撚線、被覆電線、端子付き電線の特性]
実施形態の銅合金撚線10の各素線、被覆電線3の導体を構成する各素線、端子付き電線4の導体を構成する各素線は、いずれも銅合金線1の組成、組織、特性を維持する、又は同等程度の特性を有する。そのため、上記の各素線の一例として、引張強さが385MPa以上であること、破断伸びが5%以上であること、及び導電率が60%IACS以上であることの少なくとも1つを満たす形態が挙げられる。
端子付き電線4の端子固着力、端子装着状態での耐衝撃エネルギーの測定に用いる端子として、端子付き電線4自体に備える圧着端子などの端子5を利用することができる。
[銅合金線、銅合金撚線、被覆電線、端子付き電線の用途]
実施形態の被覆電線3は、各種の電気機器の配線部分などに利用できる。特に、実施形態の被覆電線3は、端部に端子5が取り付けられた状態で使用される用途、例えば、自動車や飛行機等の搬送機器、産業用ロボット等の制御機器などの配線に好適に利用できる。実施形態の端子付き電線4は、上記搬送機器、制御機器といった各種の電気機器の配線に利用できる。このような実施形態の被覆電線3や端子付き電線4は、自動車用ワイヤーハーネスなどの各種のワイヤーハーネスの構成要素に好適に利用できる。実施形態の被覆電線3や端子付き電線4を備えるワイヤーハーネスは、端子5との接続状態を良好に維持し易く、信頼性を高められる。実施形態の銅合金線1、実施形態の銅合金撚線10は、被覆電線3や端子付き電線4などの電線の導体に利用できる。
[効果]
実施形態の銅合金線1は、Ni又はNi及びFe、Pを特定の範囲で含む特定の組成の銅合金から構成されている。よって、銅合金線1は、導電性及び強度に優れる上に、耐衝撃性にも優れる。更に、銅合金中のPの析出固溶割合が1.1以上であることで、銅合金中に析出状態で存在するPの比率が高いため、高強度化を図りつつ、高導電性を確保できる。このような銅合金線1を素線とする実施形態の銅合金撚線10も同様に、導電性及び強度に優れる上に、耐衝撃性にも優れる。
実施形態の被覆電線3は、導体に、実施形態の銅合金線1を素線とする実施形態の銅合金撚線10を備える。そのため、被覆電線3は、導電性及び強度に優れる上に耐衝撃性にも優れる。また、被覆電線3は、圧着端子などの端子5が取り付けられた場合に、端子5を強固に固着できる上に、端子5の装着状態での耐衝撃性にも優れる。
実施形態の端子付き電線4は、実施形態の被覆電線3を備える。そのため、端子付き電線4は、導電性及び強度に優れる上に耐衝撃性にも優れる。更に、端子付き電線4は、端子5を強固に固着できる上に、端子5の装着状態での耐衝撃性にも優れる。
[製造方法]
実施形態の銅合金線1、銅合金撚線10、被覆電線3、端子付き電線4は、例えば、以下の工程を備える製造方法によって製造できる。以下、各工程の概要を列挙する。
(銅合金線)
<鋳造工程>上述の特定の組成の銅合金の溶湯を連続鋳造して鋳造材を作製する。
<伸線工程>上記鋳造材に伸線加工を施して伸線材を作製する。
<熱処理工程>上記伸線材に熱処理を施す。
この熱処理は、代表的にはNi、Fe及びPが固溶状態である銅合金からNi、Feと共にPを析出させる人工時効と、最終線径までの伸線加工によって加工硬化された伸線材の伸びを改善する軟化とを含むものとする。以下、この熱処理を時効・軟化処理と呼ぶ。
時効・軟化処理以外の熱処理として、以下の溶体化処理及び中間熱処理の少なくとも一方を含むことができる。
溶体化処理は、過飽和固溶体を形成することを目的の一つとする熱処理であり、鋳造工程以降、時効・軟化処理前の任意の時期に施すことができる。
中間熱処理は、鋳造工程以降に塑性加工(伸線加工以外に圧延や押出等を含む)が施された場合に、加工に伴う歪みを除去して、加工性の向上を目的の一つとする熱処理であり、条件によってはある程度の時効や軟化も期待できる。中間熱処理は、伸線加工前に鋳造材に加工を施した加工材、伸線加工途中の中間伸線材などに施すことが挙げられる。
(銅合金撚線)
銅合金撚線10を製造する場合は、上述の<鋳造工程>、<伸線工程>、<熱処理工程>に加えて、以下の撚線工程を備える。圧縮撚線とする場合は、以下の圧縮工程を更に備える。
<撚線工程>複数の上記伸線材を撚り合わせて、撚線を作製する。又は上記伸線材に熱処理を施した複数の熱処理材を撚り合わせて、撚線を作製する。
<圧縮工程>上記撚線を所定の形状に圧縮成形して、圧縮撚線を製造する。
上記<撚線工程>,<圧縮工程>を備える場合、上記<熱処理工程>では上記撚線又は上記圧縮撚線に時効・軟化熱処理を施すことが挙げられる。上記熱処理材の撚線又は圧縮撚線とする場合には、この撚線又は圧縮撚線に更に時効・軟化処理を施す第二の熱処理工程を備えてもよいし、第二の熱処理工程を省略してもよい。時効・軟化処理を複数回行う場合には、上述の特性が特定の範囲を満たすように熱処理条件を調整できる。熱処理条件を調整することで、例えば結晶粒の成長を抑制して微細な結晶組織とし易く、高い強度と高い伸びとを有し易い。
(被覆電線)
被覆電線3や単線の銅合金線1を備える被覆電線を製造する場合は、上述の銅合金線の製造方法によって製造された銅合金線(実施形態の銅合金線1)、又は上述の銅合金撚線の製造方法によって製造された銅合金撚線(実施形態の銅合金撚線10)の外周に絶縁被覆層を形成する被覆工程を備える。絶縁被覆層の形成は、押出被覆や粉体塗装など、公知の手法を利用できる。
(端子付き電線)
端子付き電線4を製造する場合は、上述の被覆電線の製造方法によって製造された被覆電線(実施形態の被覆電線3など)の端部において、絶縁被覆層を除去して露出した導体に端子を取り付ける圧着工程を備える。
以下、鋳造工程、伸線工程、熱処理工程を詳細に説明する。
<鋳造工程>
この工程では、上述したNi又はNi及びFe、Pを特定の範囲で含む特定の組成の銅合金の溶湯を連続鋳造して鋳造材を作製する。更に、銅合金には、上述したSnなどを特定の範囲で含んでもよい。ここで、溶解時の雰囲気を真空雰囲気とすると、Ni、Fe、P、Snを含有する場合にはSnなどの元素の酸化を防止することができる。一方、溶解時の雰囲気を大気雰囲気とすると、雰囲気制御が不要であり、生産性を向上できる。この場合、雰囲気中の酸素による上記元素の酸化を抑制するために、上述の脱酸元素(C、Mn、Si)を添加することが好ましい。
C(炭素)の添加方法は、例えば、上記溶湯の湯面を木炭片や木炭粉などで覆うことが挙げられる。この場合、湯面近傍の木炭片や木炭粉などから溶湯中にCを供給することができる。
MnやSiは、これらを含む原料を別途用意して、上記溶湯中に混合することが挙げられる。この場合、上記湯面における木炭片や木炭粉などがつくる隙間から露出する箇所が雰囲気中の酸素に接触しても、湯面近傍での酸化を抑制できる。上記原料には、MnやSiの単体、MnやSiとFeとの合金などが挙げられる。
上述の脱酸元素の添加に加えて、坩堝や鋳型として、不純物が少ない高純度カーボン製のものを利用すると、溶湯に不純物が混入され難く、好ましい。
ここで、実施形態の銅合金線1は、代表的には、Ni、Fe及びPを析出状態で存在させ、Snを含有する場合はSnを固溶状態で存在させる。そのため、銅合金線1の製造過程では過飽和固溶体を形成する過程を備えることが好ましい。例えば、溶体化処理を行う溶体化工程を別途設けることができる。この場合、任意の時期に過飽和固溶体を形成することができる。一方、連続鋳造を行う場合に冷却速度を大きくして過飽和固溶体の鋳造材を作製すれば、別途、溶体化工程を設けることなく、最終的に電気的特性及び機械的特性に優れて、被覆電線3などの導体に適した銅合金線1を製造できる。そこで、銅合金線1の製造方法として、連続鋳造を行うこと、特に冷却過程で冷却速度を大きくして急冷することを提案する。
連続鋳造には、ベルトアンドホイール法、双ベルト法、アップキャスト法などの各種鋳造法が利用できる。特に、アップキャスト法は、酸素などの不純物を低減できて、CuやFe、P、Snなどの酸化を抑制し易く好ましい。鋳造速度は、0.5m/min以上、更に1m/min以上が好ましい。冷却過程の冷却速度は、5℃/sec超、更に10℃/sec超、15℃/sec以上が好ましい。
鋳造材には、各種の塑性加工、切削加工などの加工を施すことができる。塑性加工は、コンフォーム押出、圧延(熱間、温間、冷間)などが挙げられる。切削加工は、皮剥ぎなどが挙げられる。鋳造材に加工を施すことで、鋳造材の表面欠陥を低減することができて、伸線加工時に断線などを低減して、生産性を向上することができる。特に、アップキャスト材には、これらの加工を施すと断線などし難い。
<伸線工程>
この工程では、上記鋳造材(鋳造材に加工を施した上記加工材を含む)に、少なくとも1パス、代表的には複数パスの伸線加工(冷間)を施して、所定の最終線径の伸線材を作製する。複数パスを行う場合、パスごとの加工度は、組成や最終線径などに応じて適宜調整するとよい。伸線加工前に中間熱処理を行ったり、複数パスを行う場合、パス間に中間熱処理を行うと、加工性を高めることができる。この中間熱処理の条件は、所望の加工性が得られるように適宜選択できる。
<熱処理工程>
この工程では、上記伸線材に熱処理として、上述のように人工時効と軟化とを目的とした時効・軟化処理を施す。この時効・軟化処理によって、銅合金中のPの析出固溶割合を1.1以上とすることができ、上記の析出物などの析出強化による強度向上効果と、Cuへの固溶低減による高い導電率の維持効果とを良好に図ることができる。よって、導電性及び強度に優れる銅合金線1や銅合金撚線10が得られる。また、時効・軟化処理によって、高い強度を維持しつつ、伸びなどを向上でき、靭性にも優れる銅合金線1や銅合金撚線10が得られる。
時効・軟化処理の条件は、バッチ処理であれば、例えば、以下が挙げられる。
(熱処理温度)300℃以上700℃未満、好ましくは400℃以上600℃以下、更に500℃以下
(保持時間)4時間以上40時間以下、好ましくは5時間以上20時間以下
ここでの保持時間とは、上記熱処理温度に保持する時間とし、昇温時間及び降温時間は含まない。
上記の範囲から、組成、加工状態などに応じて選択するとよい。なお、炉式や通電式などの連続処理を利用してもよい。
同じ組成の場合に上記の範囲で熱処理温度が高いと、導電率、破断伸び、端子装着状態での耐衝撃エネルギー、本線の耐衝撃エネルギーが向上する傾向にある。上記熱処理温度が低いと、結晶粒の成長を抑制できると共に、引張強さが向上する傾向にある。上述の析出物を十分に析出させると、高強度である上に、導電率が向上する傾向にある。また、熱処理温度を高くしたり、保持時間を長くすると、Pを析出させ易く、Pの析出固溶割合が向上する傾向にある。熱処理の条件によっては、Pの析出固溶割合を1.2以上、1.3以上、1.4以上、更に1.5以上とすることができる。
その他、伸線加工の途中に主として時効処理を行って、最終的な撚線に主として軟化処理を行うことなどができる。時効処理の条件、軟化処理の条件は、上述の時効・軟化処理の条件から選択するとよい。
銅合金線及び被覆電線の製造工程の具体例を表1に例示する。
Figure 0007483217000001
[試験例1]
種々の組成の銅合金線、及び得られた銅合金線を導体に用いた被覆電線を種々の製造条件で作製して、特性を調べた。
銅合金線は、表1に示す製造パターン(B)によって製造した(最終線径は表3に示す線径(mm)参照)。被覆電線は、表1に示す製造パターン(b)によって製造した。
いずれの製造パターンにおいても、以下の鋳造材を用意した。
(鋳造材)
電気銅(純度99.99%以上)と、表2に示す各元素を含有する母合金、又は元素単体とを原料として用意した。用意した原料を高純度カーボン製の坩堝(不純物量が20質量ppm以下)を用いて、銅合金の溶湯を作製した。銅合金の組成(残部Cu及び不可避不純物)を表2に示す。
上記の銅合金の溶湯と、高純度カーボン製鋳型(不純物量が20質量ppm以下)とを用いて、アップキャスト法によって連続鋳造を行って、断面円形状の鋳造材(線径φ12.5mm)を作製した。鋳造速度は1m/min、冷却速度は、10℃/sec超とした。
(銅合金線)
銅合金線の製造パターン(B)において、伸線材に施す熱処理の条件は、表2に示す熱処理温度及び保持時間とした。
(被覆電線)
被覆電線の製造パターン(b)では、銅合金線の製造パターン(B)に示す工程と同様にして、線径φ0.16mmの伸線材を作製した。7本の伸線材を撚り合わせて撚線を作製した。その後、撚線を圧縮成形して横断面積0.13mm(0.13sq)の圧縮撚線を作製し、圧縮撚線に熱処理を施した。熱処理の条件は、表2に示す熱処理温度及び保持時間とした。熱処理を施した熱処理材の外周にポリ塩化ビニル(PVC)を押出被覆して、厚さ2mmの絶縁被覆層を形成した。以上により、上記熱処理材を導体とする被覆電線を作製した。
(Pの析出固溶割合)
製造パターン(B)によって製造した銅合金線(φ0.35mm又はφ0.16mm)について、XAS測定を行い、銅合金中のPの析出固溶割合を調べた。結果を表2に示す。
XAS測定は、銅合金線の測定用の試料を作製し、その試料について、あいちシンクロトロン光センターのBL6N1のXAS測定装置を用いて、部分蛍光収量法によるPのK吸収端XANESスペクトルを測定した。試料は、銅合金線の表面を機械研磨で10μm以上削ることにより準備した。部分蛍光収量法では、試料中のPから発生する蛍光X線の強度を半導体検出器により測定した。分光器にはInSb(111)の2結晶分光器を用い、測定雰囲気はHe雰囲気の大気圧条件とした。図4を参照して説明したように、測定したXAFSスペクトルについて、解析ソフトで解析を行い、上述の解析手順に基づいて規格化した。規格化には、標準試料としてCa(POを用いた。そして、得られたXANESスペクトルにおいて、横軸が-8.0eVから-7.0eVの範囲においてX線吸収が最大となる値と、横軸が-5.5eVから-4.5eVの範囲においてX線吸収が最小となる値とをそれぞれ読み取った。そして、-8.0eVから-7.0eVの範囲において最大となるX線吸収の値を析出度I、-5.5eVから-4.5eVの範囲において最小となるX線吸収の値を固溶度Iとし、両者の比(I/I)をPの析出固溶割合とした。なお、XASの測定は、九州シンクロトロン光研究センターのBL16のXAS測定装置を用いて行ってもよく、測定したXANESスペクトルから、同様にPの析出固溶割合を求めることも可能である。
Figure 0007483217000002
(特性の測定)
製造パターン(B)によって製造した銅合金線(φ0.35mm又はφ0.16mm)について、引張強さ(MPa)、破断伸び(%)、導電率(%IACS)、加工硬化指数を調べた。結果を表3に示す。
導電率(%IACS)は、ブリッジ法によって測定した。引張強さ(MPa)、破断伸び(%)、加工硬化指数は、JIS Z 2241(金属材料引張試験方法、1998)に準拠して、汎用の引張試験機を用いて測定した。
製造パターン(b)によって製造した被覆電線(導体断面積0.13mm)について端子固着力(N)を調べた。また、製造パターン(b)によって製造した圧縮撚線を対象として導体の端子装着状態での耐衝撃エネルギー(J/m、端子装着耐衝撃E)、導体の耐衝撃エネルギー(J/m、耐衝撃E)を調べた。結果を表3に示す。
端子固着力(N)は、以下のように測定する。被覆電線の一端部において絶縁被覆層を剥いで導体である圧縮撚線を露出させ、この圧縮撚線の一端部に端子を取り付ける。ここでは、端子として市販の圧着端子を用いて、上記圧縮撚線に圧着する。また、ここでは、図3に示すように、導体(圧縮撚線)における端子取付箇所12の横断面積が、端子取付箇所以外の本線箇所の横断面積に対して、表3に示す値(導体残存率、70%又は80%)となるように、取付高さ(クリンプハイトC/H)を調整した。
汎用の引張試験機を用いて、端子を100mm/minで引っ張ったときに端子が抜けない最大荷重(N)を測定した。この最大荷重を端子固着力とする。
導体の耐衝撃エネルギー(J/m又は(N/m)/m)は、以下のように測定する。絶縁材の押出前の熱処理材(圧縮撚線の導体)について、その先端に錘を取り付け、この錘を1m上方に持ち上げた後、自由落下させる。導体が断線しない最大の錘の重量(kg)を測定し、この重量に重力加速度(9.8m/s)と落下距離との積値を落下距離で除した値((錘重量×9.8×1)/1)を導体の耐衝撃エネルギーとする。
導体の端子装着状態の耐衝撃エネルギー(J/m又は(N/m)/m)は、以下のように測定する。ここでは、絶縁材の押出前の熱処理材(圧縮撚線の導体)について、上述の端子固着力の測定と同様に、導体10の一端部に端子5(ここでは圧着端子)を取り付けた試料100(ここでは長さ1m)を用意し、図5に示すように端子5を治具200によって固定する。試料100の他端部に錘300を取り付け、この錘300を端子5の固定位置まで持ち上げた後、自由落下させる。上述の導体の耐衝撃エネルギーと同様に、導体10が破断しない最大の錘300の重量を測定し、((錘重量×9.8×1)/1)を端子装着状態の耐衝撃エネルギーとする。
Figure 0007483217000003
表3に示すように、試料No.1-1~No.1-5はいずれも、試料No.1-101、1-102と比較して、導電性と強度と耐衝撃性との三者のバランスに優れることが分かる。更に、試料No.1-1~No.1-5はいずれも、端子装着状態での耐衝撃性にも優れることが分かる。定量的には、以下の通りである。
試料No.1-1~No.1-5はいずれも、引張強さが385MPa以上、更に420MPa以上であり、中には430MPa以上の試料もある。
試料No.1-1~No.1-5はいずれも、導電率が60%IACS以上であり、中には62%IACS以上、更に64%IACS以上の試料もある。
試料No.1-1~No.1-5はいずれも、導体の耐衝撃エネルギーが4J/m以上、更に5J/m以上であり、中には6J/m以上、更に7J/m以上の試料もある。
試料No.1-1~No.1-5はいずれも、導体の端子装着状態での耐衝撃エネルギーが1.5J/m以上、更に2J/m以上であり、中には2.5J/m以上の試料もある。
このような導体を備える試料No.1-1~No.1-5の被覆電線は、被覆電線自体の耐衝撃エネルギー、端子装着状態での耐衝撃エネルギーが高いと期待される。
更に、試料No.1-1~No.1-5はいずれも、破断伸びが高く、高強度、高靭性、高導電率をバランスよく備えることが分かる。定量的には、破断伸びが5%以上、更に8%以上であり、中には10%以上の試料もある。
また、試料No.1-1~No.1-5はいずれも、端子固着力が45N以上、更に50N以上であり、端子固着力が大きいことから、端子との固着性に優れる。
加えて、試料No.1-1~No.1-5はいずれも、加工硬化指数が0.1以上、更に0.12以上であり、中には0.15以上、更に0.16以上の試料もある。これらの試料は加工硬化指数が大きいため、加工硬化による強度向上効果を得易い。
上述の結果が得られた理由の一つとして、以下のことが考えれる。Ni又はNi及びFe、Pを上述の特定の範囲で含む特定の組成の銅合金から構成される銅合金線を導体に備えることで、Ni、Fe及びPの析出強化による強度向上効果と、Pなどの固溶低減によるCuの高い導電率の維持効果とが良好に得られたため、と考えられる。特に、銅合金中のPの析出固溶割合が1.1以上であり、銅合金中に析出状態で存在するPの割合が比較的多いため、析出強化による強度向上効果と、Cuへの固溶低減による高い導電率の維持効果とがより高められていると考えられる。また、上記特定の組成と適切な熱処理によって、Ni、Fe及びPの析出強化とCuへの固溶低減による効果を得つつ、結晶の粗大化防止や過度の軟化防止とを図ることができ、高強度で高導電率でありながら、破断伸びも高く靭性にも優れた、と考えられる。更に、高強度でありながら、靭性にも優れることから、衝撃を受けた場合でも破断し難く、耐衝撃性に優れた、と考えられる。ここでは、質量比(Ni+Fe)/Pが3以上、更に4以上であり、Pに対してNi又はNi及びFeを多めに含むことで、Ni又はNi及びFeがPと化合物を適切に形成し易く、過剰のPがCuに固溶することによる導電率の低下をより抑制できていると考えられる。
その他、端子装着状態での耐衝撃エネルギーが高い理由の一つとして、加工硬化指数が0.1以上であり、加工硬化による強度向上効果が得られたため、と考えられる。例えば、加工硬化指数が異なり、端子の取付条件(導体残存率)が同じである試料No.1-1、No.1-2を比較すると、試料No.1-2は試料No.1-1よりも引張強さが低いものの、端子装着状態での耐衝撃エネルギーが大きい。これは、試料No.1-2では、引張強さが小さい分を加工硬化によって補っていると考えられる。この試験では、引張強さと端子固着力との関係に着目すると、引張強さが大きいほど端子固着力も大きくなる傾向があり、両者にはおおよそ相関があるといえる。
この試験から、Ni又はNi及びFe、Pを含む特定の組成の銅合金に、伸線加工などの塑性加工と、時効・軟化処理などの熱処理とを施すことで、上述のように導電性及び強度に優れる上に、耐衝撃性にも優れる銅合金線や銅合金撚線、これらを導体とする被覆電線や端子付き電線が得られることが示された。また、同じ組成であっても、熱処理温度によって、Pの析出固溶割合、引張強さや導電率、耐衝撃エネルギーなどを異ならせられることが分かる(例えば、試料No.1-1とNo.1-2との比較)。熱処理温度を高くすると、Pの析出固溶割合を高めたり、導電率や破断伸び、導体の耐衝撃エネルギーが高くなる傾向がある。
1 銅合金線
10 銅合金撚線(導体)
12 端子取付箇所
2 絶縁被覆層
3 被覆電線
4 端子付き電線
5 端子
50 ワイヤバレル部
52 嵌合部
54 インシュレーションバレル部
100 試料
200 治具
300 錘

Claims (16)

  1. 導体と、前記導体の外側に設けられた絶縁被覆層とを備える被覆電線であって、
    前記導体は、
    銅合金からなる銅合金線が複数撚り合わされてなる撚線であり、
    前記銅合金線の線径は0.5mm以下であり、
    前記銅合金は、
    Ni又はNi及びFeを合計で0.1質量%以上1.6質量%以下、
    Pを0.05質量%以上0.7質量%以下含有し、
    残部がCu及び不純物からなり、
    前記銅合金中のPの析出固溶割合が1.1以上であり、
    前記析出固溶割合は、
    X線吸収分光法により測定されたPのK吸収端近傍におけるXANESスペクトルにおいて、析出度I と固溶度I との比I /I であり、
    前記析出度I は、X線エネルギーが-8.0eVから-7.0eVの範囲においてX線吸収が最大となる値であり、
    前記固溶度I は、X線エネルギーが-5.5eVから-4.5eVの範囲においてX線吸収が最小となる値であり、
    前記XANESスペクトルは、規格化前のXANESスペクトルからバックグラウンド領域を差し引いたXANESスペクトルに対して規格化領域におけるX線吸収の規格化を行ったものであり、
    前記X線エネルギーは、リン酸三カルシウムにおいて観測される最大ピークのピークトップをゼロeVとした場合における相対的なX線エネルギーを示し、
    前記バックグラウンド領域は、前記X線エネルギーのゼロeVに対する相対値で-32.1eVから-13.5eVまでの任意の範囲であり、
    前記バックグラウンド領域を定める二点間は最低でも10eV以上離れており、
    前記規格化領域は、前記X線エネルギーのゼロeVに対する相対値で+13.4eVから+57.4eVまでの任意の範囲であり、
    前記規格化領域を定める二点間は最低でも20eV以上離れている、
    被覆電線。
  2. 前記銅合金は、Snを0.05質量%以上0.7質量%以下含む請求項1に記載の被覆電線。
  3. NiとFeとの合計量とPの含有量との質量比が3以上である請求項1又は請求項2に記載の被覆電線。
  4. 前記銅合金は、C、Si及びMnから選択される1種以上の元素を合計で10質量ppm以上500質量ppm以下含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の被覆電線。
  5. 前記銅合金線の引張強さが385MPa以上である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の被覆電線。
  6. 前記銅合金線の破断伸びが5%以上である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の被覆電線。
  7. 前記銅合金線の導電率が60%IACS以上である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の被覆電線。
  8. 前記銅合金線の加工硬化指数が0.1以上である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の被覆電線。
  9. 端子固着力が45N以上である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の被覆電線。
  10. 端子が取り付けられた状態での耐衝撃エネルギーが3J/m以上である請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の被覆電線。
  11. 前記被覆電線のみの耐衝撃エネルギーが6J/m以上である請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の被覆電線。
  12. 請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の被覆電線と、前記被覆電線の端部に取り付けられた端子とを備える、
    端子付き電線。
  13. Ni又はNi及びFeを合計で0.1質量%以上1.6質量%以下、
    Pを0.05質量%以上0.7質量%以下含有し、
    残部がCu及び不純物からなる銅合金から構成され、
    前記銅合金中のPの析出固溶割合が1.1以上であり、
    線径が0.5mm以下であり、
    前記析出固溶割合は、
    X線吸収分光法により測定されたPのK吸収端近傍におけるXANESスペクトルにおいて、析出度I と固溶度I との比I /I であり、
    前記析出度I は、X線エネルギーが-8.0eVから-7.0eVの範囲においてX線吸収が最大となる値であり、
    前記固溶度I は、X線エネルギーが-5.5eVから-4.5eVの範囲においてX線吸収が最小となる値であり、
    前記XANESスペクトルは、規格化前のXANESスペクトルからバックグラウンド領域を差し引いたXANESスペクトルに対して規格化領域におけるX線吸収の規格化を行ったものであり、
    前記X線エネルギーは、リン酸三カルシウムにおいて観測される最大ピークのピークトップをゼロeVとした場合における相対的なX線エネルギーを示し、
    前記バックグラウンド領域は、前記X線エネルギーのゼロeVに対する相対値で-32.1eVから-13.5eVまでの任意の範囲であり、
    前記バックグラウンド領域を定める二点間は最低でも10eV以上離れており、
    前記規格化領域は、前記X線エネルギーのゼロeVに対する相対値で+13.4eVから+57.4eVまでの任意の範囲であり、
    前記規格化領域を定める二点間は最低でも20eV以上離れている、
    銅合金線。
  14. 請求項13に記載の銅合金線が複数撚り合わされてなる、
    銅合金撚線。
  15. 端子が取り付けられた状態での耐衝撃エネルギーが1.5J/m以上である請求項14に記載の銅合金撚線。
  16. 前記銅合金撚線のみの耐衝撃エネルギーが4J/m以上である請求項14又は請求項15に記載の銅合金撚線。
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