JP7476737B2 - エンジンの燃料改質システム - Google Patents

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Description

本発明は、エンジンに供される炭化水素燃料を改質する燃料改質システムに関する。
上記のような燃料改質システムが適用されたエンジンとして、下記特許文献1のエンジンが知られている。具体的に、この特許文献1のエンジンは、吸気通路と排気通路とを接続するEGR通路と、EGR通路に改質用の燃料を噴射する燃料噴射弁(改質燃料用燃料噴射弁)と、EGR通路における当該燃料噴射弁よりも下流側の位置に設けられた改質触媒(燃料改質触媒)とを備えている。改質触媒は、例えばロジウム系の触媒金属を含み、高温下で炭化水素燃料を改質して水素を生成する機能を有している。水素は燃焼速度が速いので、このような水素を含む改質後の燃料がエンジン本体(気筒)に供給されることにより、EGR率(吸気中に含まれるEGRガスの割合)が高い条件下でも安定した燃焼を実現することが可能になり、エンジンの燃費性能を改善する効果が得られるとされている。
特開2018-9492号公報
ここで、改質触媒の性能は、触媒内部に固形カーボン等の堆積物が堆積することにより、徐々に低下する。このため、触媒内部の堆積物を減少させる触媒再生制御を定期的に実行する必要がある。この触媒再生制御の要否を判断するべく、上記特許文献1では、触媒担体における特定の測定点での温度が測定される。燃料の改質反応は吸熱反応であるから、反応が活発であるほど触媒担体の温度は低下する傾向にある。言い換えると、反応が停滞しているほど触媒担体の温度は高くなる傾向にある。そこで、上記特許文献1では、上記測定点での温度が予め定められた劣化判定温度と比較され、当該劣化判定温度よりも測定温度が高い場合に上記触媒再生制御が実行されるようになっている。
ただし、触媒の温度はエンジンの運転条件によって変動するため、判定の精度を確保するには、少なくとも温度測定時の運転条件を統一する必要がある。しかしながら、触媒自身の蓄熱等による影響が存在することから、仮に温度測定時の運転条件(EGR率や燃料噴射量)を統一したとしても、測定の直前までの運転条件の相違(運転履歴の相違)等により上記測定点での温度が変動し、結果として触媒の性能を適切に反映した温度が上記測定点において測定されない可能性がある。このため、上記測定点での温度のみに基づいて触媒再生制御の要否を適切に判断することは、必ずしも容易ではなかった。
上記のような不具合を回避する方法として、改質触媒の前後差圧(改質触媒の上流側の圧力と下流側の圧力との差)を測定し、この前後差圧に基づいて触媒再生制御の要否を判定することが考えられる。改質触媒内の堆積物が多いほど前後差圧が大きくなると考えられるからである。しかしながら、本願発明者等の研究により、前後差圧がある程度増大しているにもかかわらず有意な触媒の性能低下が見られないケースがあることが判明した。このようなケースで触媒再生制御を実行すると、燃料を改質できない(燃費改善効果が得られない)触媒再生制御の頻度が高くなり、燃費性能を十分に改善することができなくなる。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、堆積物を原因とした改質触媒の性能低下が起きている状況で適切に触媒再生制御を実行することが可能なエンジンの燃料改質システムを提供することを目的とする。
前記課題を解決するためのものとして、本発明の一局面に係るシステムは、エンジンに供される炭化水素燃料を改質する燃料改質システムであって、前記燃料を改質して水素を生成可能な改質触媒と、前記改質触媒に導入されるガスが流通する導入通路と、前記改質触媒から導出されたガスが流通する導出通路と、前記導入通路の圧力から前記導出通路の圧力を減じた前後差圧を検出する差圧検出部と、前記導入通路に設けられ、当該導入通路に燃料を噴射可能な改質用インジェクタと、前記導出通路に設けられ、当該導出通路内のガスに含まれる水素を検出する水素センサと、前記改質触媒の内部に堆積している堆積物を減少させる触媒再生制御の要否を判定する判定部とを備え、前記判定部は、前記差圧検出部により検出された前後差圧が所定の閾値よりも大きいという第1の条件と、前記水素センサにより検出された水素が所定レベルよりも少ないという第2の条件とがともに成立した場合に、前記触媒再生制御が必要であると判定し、前記判定部は、前記水素センサによる検出値と、前記改質用インジェクタにより噴射された燃料量とに基づいて、前記改質触媒による燃料の改質率を算出し、算出した改質率が所定値よりも小さい場合に、前記第2の条件が成立したと判定する、ことを特徴とするものである(請求項1)。
本発明によれば、改質用インジェクタから噴射された炭化水素燃料を改質触媒に導入することにより、当該燃料を改質して水素を含む成分を生成することができる。水素を含む改質後の燃料は、改質前の燃料(炭化水素燃料)に比べて、燃焼速度が速く、かつ単位質量あたりの熱発生量が多くなる。このことは、同一の出力トルクを発生させるのに必要な燃料の総量を少なくする効果をもたらし、エンジンの燃費性能を向上させる。
ただし、改質触媒による燃料の改質が継続されると、改質触媒の内部に固形カーボン等の堆積物が多く堆積し、これによって改質触媒の性能が有意に低下することが懸念される。これに対し、本発明では、改質触媒の前後差圧(導入通路の圧力から導出通路の圧力を減じた値)が所定の閾値よりも大きいという条件(第1の条件)と、導出通路において検出された水素が所定レベルよりも少ないという条件(第2の条件)との双方が成立した場合に、改質触媒内の堆積物を減少させる触媒再生制御が実行されるので、堆積物を原因とした改質触媒の性能低下を精度よく判定することができ、その判定に応じた適切なタイミングで触媒再生制御を実行することができる。
改質触媒の前後差圧が閾値よりも大きいことは、改質触媒に堆積する固形カーボン等の堆積物が多いことを推定させる一要因ということができる。ただし、堆積物は必ずしも改質触媒の各所において一様に増えていくわけではないので、改質触媒の前後差圧が閾値を超えたことが、直ちに改質触媒の有意な性能低下に結びつくわけではない。したがって、前後差圧の大きさのみに基づいて触媒再生制御の要否を判定したのでは、改質触媒の性能が実際にはそれほど低下していないにもかかわらず触媒再生制御が実行される可能性がある。触媒再生制御の間は燃料改質による燃費改善効果が得られないので、改質触媒の性能低下度合いが小さい状況での触媒再生制御の実行は、燃費改善効果の減殺につながり、好ましくない。
一方で、改質触媒での燃料改質により生成される水素量の変化は、改質触媒の性能の変化を比較的よく表していると考えられる。そこで、水素センサにより検出される導出通路内の水素に基づいて触媒再生制御の要否を判定することが考えられる。しかしながら、水素の生成能力は改質触媒の経年劣化によっても低下するので、単に水素のみに基づいて触媒再生制御の要否を判定したのでは、特に改質触媒の使用年数が嵩んだ状況において、堆積物の堆積量が少ないにもかかわらず触媒再生制御が実行される可能性が高くなる。このことも、燃費改善効果の減殺につながり、好ましくない。
これに対し、本発明では、前後差圧が閾値よりも大きいという条件と水素が所定レベルよりも少ないという条件との双方が成立した場合にはじめて触媒再生制御が必要と判定されるので、堆積物をあえて減少させる必要性が薄い状況で無用に触媒再生制御が行われるのを回避でき、エンジンの燃費性能を十分に向上させることができる。すなわち、本発明によれば、(経年劣化ではなく)堆積物の増大によって改質触媒の性能が低下したことを精度よく判定できるとともに、その判定に基づいた適切なタイミングで触媒再生制御を実行することができる。これにより、触媒再生制御の実行頻度が必要最小限に留められるので、改質触媒を用いた燃料の改質による燃費改善効果を十分に発揮させることができる。
しかも、本発明では、水素センサによる検出値と、改質用インジェクタにより噴射された燃料量とに基づいて、改質触媒による燃料の改質率が算出されるので、算出された当該改質率に基づいて適切に前記第2の条件の成否を判定することができる。
本発明の他の局面に係るシステムは、炭化水素燃料の燃焼が行われるエンジン本体と、エンジン本体に導入される吸気が流通する吸気通路と、エンジン本体から排出される排気ガスが流通する排気通路と、排気通路と吸気通路とを連通するEGR通路と、を備えたエンジンに供される前記燃料を改質する燃料改質システムであって、前記EGR通路の途中部に設けられ、前記燃料を改質して水素を生成可能な改質触媒と、前記EGR通路における前記改質触媒よりも排気側の部分からなり、前記改質触媒に導入されるガスが流通する第1EGR通路部と、前記EGR通路における前記改質触媒よりも吸気側の部分からなり、前記改質触媒から導出されたガスが流通する第2EGR通路部と、前記第1EGR通路部の圧力から前記第2EGR通路部の圧力を減じた前後差圧を検出する差圧検出部と、前記第1EGR通路部に設けられ、当該第1EGR通路部に燃料を噴射可能な改質用インジェクタと、前記第2EGR通路部に設けられ、当該第2EGR通路部内のガスに含まれる水素を検出する水素センサと、前記改質触媒の内部に堆積している堆積物を減少させる触媒再生制御の要否を判定する判定部と、前記排気通路内の排気ガスを吸い込んで下流側に送り出す吸引装置と、前記判定部により前記触媒再生制御が必要と判定された場合に、当該触媒再生制御として、前記吸気通路から前記EGR通路を通って前記排気通路へと至る空気流が生成されるように前記吸引装置を作動させる制御部とを備え、前記判定部は、前記差圧検出部により検出された前後差圧が所定の閾値よりも大きいという第1の条件と、前記水素センサにより検出された水素が所定レベルよりも少ないという第2の条件とがともに成立した場合に、前記触媒再生制御が必要であると判定する、ことを特徴とするものである(請求項2)
本発明によれば、EGR通路を流れる高温の排気ガス(EGRガス)により改質触媒を加熱して活性化することができ、活性化された改質触媒により燃料を効率よく改質することができる。
また、排気通路に設けられた吸引装置を用いてEGR通路を吸気側から排気側へと流れる(つまりEGR通路を逆流する)空気流を生成できるので、当該空気流に含まれる酸素を改質触媒内の堆積物と反応させて当該堆積部を燃焼除去することができ、改質触媒の速やかな再生を図ることができる。
前記吸引装置は、好ましくは、前記排気通路に設けられたインペラと、インペラに連結されたモータジェネレータとを備え、前記モータジェネレータは、前記インペラを回転させるモータとしての作動と、前記インペラの回転エネルギーを電力に変換する発電機としての作動が可能であり、前記制御部は、前記触媒再生制御として、前記モータジェネレータをモータとして作動させて前記インペラを回転させることにより、前記空気流を生成する(請求項3)。
この構成によれば、触媒再生制御の実行時にモータジェネレータをモータとして作動させることにより、インペラを高速回転させて上述した空気流を生成することができる。一方、触媒再生制御が不要なときは、モータジェネレータを発電機として作動させることにより、排気ガスのエネルギーの一部を電力として回収することができる。このことは、改質触媒での吸熱反応による燃料改質の効果(燃焼性の改善)と相俟って、エンジンからの排出熱を出力に還元する排熱回収の効率を高める。これにより、エンジンの燃費性能を十分に向上させることができる。
好ましくは、前記燃料改質システムは、前記排気通路のうち前記第1EGR通路部と前記排気通路との接続部よりも下流側の部分、または前記第1EGR通路部に設けられた酸素センサをさらに備え、前記差圧検出部は、前記触媒再生制御の実行中に、前記第2EGR通路部の圧力から前記第1EGR通路部の圧力を減じた値である再生時差圧を検出可能であり、前記判定部は、前記触媒再生制御を終了するタイミングを、前記差圧検出部により検出される前記再生時差圧と、前記酸素センサにより検出される酸素濃度とに基づき決定する(請求項4)。
触媒再生制御によって改質触媒内の堆積物が十分に減少した場合には、再生時差圧(第2EGR通路部の圧力から第1EGR通路部の圧力を減じた値)が減少する現象に加えて、改質触媒を通過した後の空気に含まれる酸素の濃度が増大する現象が見られるはずである。これは、改質触媒内の堆積物が減少すると、堆積物の燃焼のために消費される酸素の量が減るからである。前記構成では、差圧検出部により検出される再生時差圧の大きさと酸素センサにより検出される酸素濃度との双方に基づいて触媒再生制御の終了タイミングが決定されるので、改質触媒内の堆積物が十分に減少した適切なタイミングで触媒再生制御を終了させることができる。
以上説明したように、本発明のエンジンの燃料改質システムによれば、堆積物を原因とした改質触媒の性能低下が起きている状況で適切に触媒再生制御を実行することができる。
本発明の一実施形態にかかる燃料改質システムが適用されたエンジンの全体構成を概略的に示す平面図である。 上記エンジンの制御系統を示すブロック図である。 上記エンジンの運転中に実行される制御の前半部を示すフローチャートである。 上記制御の後半部を示すフローチャートである。 図3のステップS13で行われる燃料改質制御の詳細を示すサブルーチンである。 図3のステップS15で行われる触媒再生制御の詳細を示すサブルーチンである。 図3のステップS9の判定で用いられる差圧の閾値とEGRガス流量との関係を示すグラフである。 エンジン負荷と目標EGR率との関係を示すグラフである。 EGR率と燃料改質率との関係を示すグラフである。 改質用燃料噴射量を決定するためのマップの傾向を示すグラフであり、グラフ(a)は触媒温度と改質用燃料噴射量との関係を、グラフ(b)はEGRガス流量と改質用燃料噴射量との関係をそれぞれ示している。 燃料割合(直噴燃料量と改質用燃料噴射量との比率)と触媒温度との関係を示すグラフである。 触媒再生制御時に改質触媒に導入される混合気の当量比と触媒温度との関係を示すグラフである。 燃料改質制御中の各通路内の流れを示す説明図である。 触媒再生制御中の各通路内の流れを示す説明図である。 改質触媒の拡大断面図であり、(a)は改質触媒の各セル壁に堆積物が分散して堆積しているときの状況を、(b)は各セル壁の一部に堆積物が集中的に堆積しているときの状況を、それぞれ示している。
(1)エンジンの全体構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる燃料改質システムが適用されたエンジンの全体構成を概略的に示す平面図である。本図に示されるエンジンは、走行用の動力源として車両に搭載された4サイクルのガソリンエンジンであり、エンジン本体1と、エンジン本体1に導入される吸気が流通する吸気通路10と、エンジン本体1から排出された排気ガス(既燃ガス)が流通する排気通路20と、吸気通路10と排気通路20とを接続するEGR通路30とを備えている。
エンジン本体1は、列状に並ぶ複数の(ここでは4つの)気筒2を含む直列多気筒型のものである。各気筒2には、図略のピストンが往復動可能に収容されている。
エンジン本体1の各気筒2には、直噴インジェクタ3、点火プラグ4、吸気弁5、および排気弁6がそれぞれ設けられている。直噴インジェクタ3は、ガソリンを含有する燃料(炭化水素燃料)を気筒2に噴射する噴射弁である。点火プラグ4は、燃料と空気とが混合した混合気に点火するプラグである。吸気弁5は、吸気通路10(後述する各独立吸気管11)と気筒2とを連通する図略の吸気ポートを開閉するバルブである。排気弁6は、排気通路20(後述する各独立排気管21)と気筒2とを連通する図略の排気ポートを開閉するバルブである。
直噴インジェクタ3から気筒2に供給された燃料は、気筒2の内部(燃焼室)において空気と混合されて混合気を形成する。混合気は点火プラグ4による点火をきっかけに燃焼し、当該燃焼による膨張力を受けてピストンが往復動する。ピストンの往復動は、図略のクランク機構を介してエンジン本体1の出力軸(クランク軸)に伝達され、当該出力軸を回転させる。エンジン本体1には、当該出力軸の回転角(クランク角)および回転数(エンジン回転数)を検出するクランク角センサSN1が設けられている。なお、当実施形態では、直噴インジェクタ3から供給される燃料に加えて(もしくはこれに代えて)、後述する改質用インジェクタ32からEGR通路30を通じて供給される燃料を気筒2で燃焼させることも可能である(詳しくは後述する)。
吸気通路10は、エンジン本体1の一側面に接続された複数(ここでは4つ)の独立吸気管11と、各独立吸気管11の上流側(エンジン本体1から遠い側)の端部が共通に接続されたサージタンク12と、サージタンク12から上流側に延びる単管状の共通吸気管13とを有している。各独立吸気管11は、上記吸気ポートを介して各気筒2に連通するようにエンジン本体1に接続されている。
共通吸気管13の途中部には、吸気流量を調整するためのスロットル弁15が開閉可能に設けられている。また、共通吸気管13におけるスロットル弁15よりも下流側の位置には、吸気の圧力を検出する吸気圧センサSN2が設けられている。吸気圧センサSN2は、EGRガスが混入する前の吸気(つまり新気)の圧力を検出し得るように、EGR通路30と吸気通路10(共通吸気管13)との接続部よりも上流側でかつスロットル弁15よりも下流側の位置に設けられている。なお、吸気圧センサSN2と後述する排気圧センサSN4との組合せは、本発明における「差圧検出部」に相当する。
サージタンク12には、当該サージタンク12を流通する吸気の流量を検出するエアフローセンサSN3が設けられている。ここで、吸気通路10にEGRガス(排気通路20からEGR通路30を通じて還流される排気ガス)が導入される場合、サージタンク12を流れる吸気は、共通吸気管13からの新気とEGR通路30からのEGRガスとが混じった混合ガスとなる。この場合、エアフローセンサSN3は、サージタンク12を流れる当該混合ガスの流量を検出する。
排気通路20は、エンジン本体1の他側面に接続された複数(ここでは4つ)の独立排気管21と、各独立排気管21の下流側(エンジン本体1から遠い側)の端部が集合した集合部22と、集合部22から下流側に延びる単管状の共通排気管23とを有している。各独立排気管21は、上記排気ポートを介して各気筒2に連通するようにエンジン本体1に接続されている。
共通排気管23の途中部には、排気タービン装置25が設けられている。排気タービン装置25は、共通排気管23の途中部に介設されたタービンケース26と、タービンケース26の内部に配置されたインペラ27と、インペラ27と連結軸27aを介して連結されたモータジェネレータ28とを有している。
モータジェネレータ28は、モータおよび発電機(ジェネレータ)の双方の機能を有する電気デバイスである。すなわち、モータジェネレータ28は、インペラ27の回転エネルギーを電力に変換する発電機としても作動可能であるし、インペラ27を回転駆動するモータとしても作動可能である。
インペラ27は、モータジェネレータ28の作動状況に応じて異なる機能を発揮する。すなわち、モータジェネレータ28が発電機として作動しているとき、インペラ27はタービンとして機能し、タービンケース26を通過する排気ガスのエネルギーを受けて受動的に回転する。インペラ27の回転はモータジェネレータ28に伝達され、モータジェネレータ28において電力に変換される。一方、モータジェネレータ28がモータとして作動しているとき、インペラ27はコンプレッサとして機能し、排気ガスを下流側に送り出すように能動的に回転する。
モータジェネレータ28はバッテリ40と電気的に接続されている。バッテリ40は、モータジェネレータ28が発電機として作動しているときに当該モータジェネレータ28で発電された電力を蓄えるとともに、モータジェネレータ28がモータとして作動しているときに当該モータジェネレータ28に電力を供給することが可能である。
共通排気管23における排気タービン装置25(タービンケース26)よりも上流側の位置には、排気ガスの圧力を検出する排気圧センサSN4と、排気ガスに含まれる酸素の濃度を検出するOセンサSN5(酸素センサ)とが設けられている。排気圧センサSN4およびOセンサSN5は、EGR通路30と排気通路20(共通排気管23)との接続部と排気タービン装置25との間において、排気圧センサSN4の方がOセンサSN5よりもやや上流側に位置する関係で並設されている。
EGR通路30は、共通排気管23における排気圧センサSN4よりも上流側の位置と、共通吸気管13における吸気圧センサSN2よりも下流側の位置とを互いに連結するように設けられている。EGR通路30には、EGR弁31、改質用インジェクタ32、触媒コンバータ33、および再生用インジェクタ34が、排気側(排気通路20に近い側)からこの順に並ぶように配設されている。以下では、EGR通路30における触媒コンバータ33よりも排気側の部分を第1EGR通路部30a、EGR通路30における触媒コンバータ33よりも吸気側(吸気通路10に近い側)の部分を第2EGR通路部30bと称する。
EGR弁31は、EGR通路30(第1・第2EGR通路部30a,30b)を通じて排気通路20から吸気通路10に還流される排気ガスであるEGRガスの流量を調整するために開閉可能に設けられたバルブである。EGR弁31は、触媒コンバータ33よりも排気側に位置する第1EGR通路部30aに設けられている。
触媒コンバータ33は、改質触媒41と、酸化触媒42と、両触媒41,42を収容する触媒ケース43とを有している。改質触媒41および酸化触媒42は、改質触媒41が酸化触媒42よりも吸気側(吸気通路10に近い側)に位置する関係で互いに近接配置されている。
改質用インジェクタ32および再生用インジェクタ34は、上述した直噴インジェクタ3が噴射する燃料と同じ燃料、つまりガソリンを含有する炭化水素燃料を噴射する噴射弁である。
改質用インジェクタ32は、触媒コンバータ33よりも排気側に位置する第1EGR通路部30aに設けられている。改質用インジェクタ32は、噴射した燃料を改質触媒41で改質するために第1EGR通路部30aに燃料を噴射する。詳細は後述するが、この改質用インジェクタ32による燃料噴射時には、EGR通路30を通じて排気通路20から吸気通路10へとEGRガスを流す操作(排気還流操作)が行われる(図13参照)。改質用インジェクタ32から第1EGR通路部30aに噴射された燃料は、当該第1EGR通路部30aを吸気側に向けて流れるEGRガスと共に改質触媒41に導入される。
再生用インジェクタ34は、触媒コンバータ33よりも吸気側に位置する第2EGR通路部30bに設けられている。再生用インジェクタ34は、改質触媒41内の堆積物を減少させる触媒再生を図るために第2EGR通路部30bに燃料を噴射する。詳細は後述するが、この再生用インジェクタ34による燃料噴射時には、EGR通路30を通じて吸気通路10から排気通路20へと(つまりEGRガスとは逆向きに)空気を流す操作が行われる(図14参照)。再生用インジェクタ34から第2EGR通路部30bに噴射された燃料は、当該第2EGR通路部30bを排気側に向けて流れる空気と共に酸化触媒42に導入される。
改質触媒41は、例えばハニカム構造を有する多孔質の担体(モノリス担体)と、燃料の改質のために当該担体の表面にコーティングされた触媒物質(改質触媒物質)とを有している。改質触媒物質は、例えばロジウム(Rh)系の触媒金属を含み、改質触媒41を通過する燃料を改質する機能を有している。具体的に、改質触媒物質は、改質用インジェクタ32による燃料噴射時に、当該改質用インジェクタ32から噴射されてEGRガスと共に改質触媒41に導入されるガソリン含有燃料(炭化水素燃料)を改質し、水素(H)および一酸化炭素(CO)を含む成分を生成する機能を有している。
酸化触媒42は、例えばハニカム構造を有する多孔質の担体(モノリス担体)と、燃料の酸化のために当該担体の表面にコーティングされた触媒物質(酸化触媒物質)とを有している。酸化触媒物質は、例えば白金(Pt)およびパラジウム(Pd)等の触媒金属を含み、酸化触媒42を通過する燃料を酸化する機能を有している。具体的に、酸化触媒物質は、再生用インジェクタ34による燃料噴射時に、当該再生用インジェクタ34から噴射されて酸化触媒42に導入される燃料の未燃成分を、当該未燃成分と共に酸化触媒42に導入される空気中の酸素と反応させて酸化する機能を有している。
触媒コンバータ33には、改質触媒41の温度を検出する触媒温度センサSN6が設けられている。触媒温度センサSN6は、改質触媒41における吸気側の端部に対応する位置に取り付けられている。この触媒温度センサSN6による温度検出位置は、排気側から吸気側へと流れるEGRガスが改質触媒41を抜け出る位置、つまり改質触媒41の出口部に相当する。
第2EGR通路部30bには、当該第2EGR通路部30bを流通するEGRガスに含まれる水素の濃度を検出する水素センサSN7が設けられている。水素センサSN7は、第2EGR通路部30bにおける再生用インジェクタ34よりも排気側の位置(再生用インジェクタ34と酸化触媒42との間)に取り付けられている。
(2)制御系統
図2は、当実施形態のエンジンの制御系統を示すブロック図である。本図に示されるECU50は、エンジンを統括的に制御するためのマイクロプロセッサであり、周知のCPU、ROM、RAM等から構成されている。
ECU50には、各種センサによる検出情報が入力される。例えば、ECU50は、上述したクランク角センサSN1、吸気圧センサSN2、エアフローセンサSN3、排気圧センサSN4、OセンサSN5、触媒温度センサSN6、および水素センサSN7と電気的に接続されており、これらのセンサにより検出された情報(つまりクランク角、エンジン回転数、吸気圧、吸気流量、排気圧、酸素濃度、触媒温度、水素濃度等の情報)がECU50に逐次入力されるようになっている。
また、車両には、当該車両を運転するドライバーにより操作されるアクセルペダルの開度(アクセル開度)を検出するアクセルセンサSN8が設けられており、当該アクセルセンサSN8による検出信号もECU50に逐次入力される。
ECU50は、上記各センサSN1~SN8からの入力信号に基づいて種々の判定や演算等を実行しつつエンジンの各部を制御する。すなわち、ECU50は、直噴インジェクタ3、点火プラグ4、スロットル弁15、排気タービン装置25のモータジェネレータ28、EGR弁31、改質用インジェクタ32、および再生用インジェクタ34等と電気的に接続されており、上記演算等の結果に基づいてこれらの機器にそれぞれ制御用の信号を出力する。
上記制御に関する機能的要素として、ECU50は、主制御部51と、改質制御部52と、再生制御部53とを有している。改質制御部52は、改質触媒41で改質された燃料をエンジン本体1に供給する燃料改質制御を司る制御モジュールである。再生制御部53は、改質触媒41内の堆積物を減少させる触媒再生制御を司る制御モジュールである。主制御部51は、燃焼改質制御および触媒再生制御以外の種々の制御や判定を司る制御モジュールである。なお、主制御部51は本発明における「判定部」に相当し、再生制御部53は本発明における「制御部」に相当する。
(3)制御動作
次に、エンジンの運転中にECU50により実行される制御動作の一例について、図3~図6のフローチャートを参照しつつ説明する。
図3に示す制御がスタートすると、ECU50の主制御部51は、触媒温度センサSN6により検出される改質触媒41の温度が予め定められた閾値Tx以下であるか否かを判定する(ステップS1)。閾値Txは、改質触媒41の活性温度(例えば約500℃)の近傍値に設定される。
上記ステップS1でYESと判定されて改質触媒41の温度が閾値Tx以下であることが確認された場合、主制御部51は、改質触媒41による燃料の改質を停止する非改質制御を実行する。この非改質制御は、次のステップS2,S3を含む。
まずステップS2において、主制御部51は、各気筒2に供給すべき燃料が全て直噴インジェクタ3からの噴射燃料で賄われるように、改質用インジェクタ32および直噴インジェクタ3を制御する。すなわち、ECU50は、各気筒2に供給される総燃料量と同量の燃料を各気筒2の直噴インジェクタ3から噴射させるとともに、改質用インジェクタ32による燃料噴射を停止する。
続くステップS3において、主制御部51は、各気筒2に導入される吸気(新気およびEGRガス)に対するEGRガスの割合であるEGR率が、必要な燃焼安定性が確保される範囲で最大になるように、EGR弁31を制御する。すなわち、気筒2への供給燃料が全て直噴インジェクタ3からのもの(つまり改質されていない燃料)である場合に設定し得るEGR率の上限は、燃焼安定性を損なわないことを条件として運転条件ごとに予め定めることができる。ECU50には、このようなEGR率の上限(全て直噴とした場合に設定可能なEGR率の上限)が運転条件ごとに予め記憶されている。ECU50は、この記憶された上限のEGR率が実現されるように、EGR弁31の開度を調整する。
次に、上記ステップS1での判定がNOであった場合、つまり改質触媒41の温度が閾値Txを超えている場合の制御について説明する。この場合、主制御部51は、目詰まり判定フラグF1の値が「0」であるか否かを判定する(ステップS5)。目詰まり判定フラグF1とは、改質触媒41に生じている目詰まりの度合いを表すフラグであり、後述するステップS9,S12での判定がともにYESの場合に「1」となり、それ以外の場合に「0」となる。目詰まり判定フラグF1が「1」であることは、改質触媒41の内部に堆積している固形カーボン等の堆積物の量が許容レベルを超えている(目詰まりが起きている)ことを意味し、同フラグF1が「0」であることは、堆積物の量が許容レベルを超えていない(目詰まりが起きていない)ことを意味する。
上記ステップS5でYESと判定されて目詰まり判定フラグF1=0であること(目詰まりが起きていないこと)が確認された場合、主制御部51は、改質触媒41を含む触媒コンバータ33(改質触媒41および酸化触媒42)の前後差圧を算出する(ステップS6)。すなわち、主制御部51は、排気圧センサSN4により検出される排気通路20(共通排気管23)の圧力から、吸気圧センサSN2により検出される吸気通路10(共通吸気管13)の圧力を減じ、当該減算により得られた値を触媒コンバータ33の前後差圧として特定する。
ここで、排気圧センサSN4による検出圧力は、第1EGR通路部30aにおける上流側(排気側)の端部の圧力と実質的に同一であり、吸気圧センサSN2による検出圧力は、第2EGR通路部30bにおける下流側(吸気側)の端部の圧力と実質的に同一である。このため、上記ステップS6において排気圧センサSN4による検出圧力から吸気圧センサSN2による検出圧力を減じた値を求めることは、第1EGR通路部30a(導入通路)の上流端の圧力から第2EGR通路部30b(導出通路)の下流端の圧力を減じた値、換言すればEGR通路30の入口/出口間の差圧を検出することに相当する。一方、上記ステップS6に至る前提条件、つまり上記ステップS1の判定がNOでかつ上記ステップS5の判定がYESである(触媒温度>Txでかつ目詰まり判定フラグF1=0である)条件では、後述するステップS13で燃料改質制御が実行されて、EGR弁31が全開の状態で排気側から吸気側へとEGRガスが流される。EGR弁31が全開であるため、EGRガスの圧力は、主に、触媒コンバータ33を通過することによって低下する。言い換えると、EGR通路30のうち触媒コンバータ33以外の部分で生じる圧損(圧力の低下量)は、触媒コンバータ33で生じる圧損よりも十分に小さい。このことは、EGR通路30の入口/出口間の差圧を、触媒コンバータ33での圧損(前後差圧)を代表する値として使用できることを意味する。そこで、当実施形態では、排気圧センサSN4による検出圧力から吸気圧センサSN2による検出圧力を減じた値(つまりEGR通路30の入口/出口間の差圧)を、触媒コンバータ33の前後差圧として特定している。
次いで、主制御部51は、EGR通路30を流れるEGRガスの流量を算出する(ステップS7)。具体的に、主制御部51は、吸気圧センサSN2による検出圧力に基づいて共通吸気管13を流れる吸気(新気)の流量である吸入空気量を推定するとともに、この推定した吸入空気量を、エアフローセンサSN3により検出されるサージタンク12内の流量から減じた値を、EGRガスの流量として特定する。すなわち、サージタンク12を流れるのは新気とEGRガスとが混じった混合ガスであるから、サージタンク12を流れる当該混合ガスの流量(エアフローセンサSN3による検出値)から共通吸気管13を流れる新気の流量(吸気圧センサSN2に基づく推定値)を減じた値は、EGRガスの流量に相当する。
次いで、主制御部51は、後述するステップS9において触媒コンバータ33の前後差圧と比較される閾値Dxを設定する(ステップS8)。図7は、この閾値Dxの傾向を示すグラフである。本図に示すように、差圧の閾値Dxは、EGR通路30を流れるEGRガスの流量が大きいほど大きくなるように設定される。すなわち、主制御部51は、上記ステップS7で算出されたEGRガスの流量を、図7のグラフ(実線の波形)に対応するマップに適用することにより、差圧の閾値Dxを決定する。ここで、閾値Dxは、触媒コンバータ33が新品同様のクリーン状態であるときに生じる前後差圧(破線の波形)よりも一定程度大きい値に設定される。触媒コンバータ33の前後差圧がクリーン状態のときの前後差圧よりも大きくなる主な原因は、改質触媒41での燃料の改質反応に伴い生じる固形カーボン等の堆積物の堆積である。このため、触媒コンバータ33の前後差圧を図7の閾値Dxと比較することは、改質触媒41にどの程度の堆積物が存在するかを判断することを意味する。
次いで、主制御部51は、上記ステップS6で算出された触媒コンバータ33の前後差圧が、上記ステップS8で設定された閾値Dxよりも大きいか否かを判定する(ステップS9)。
上記ステップS9でYESと判定されて触媒コンバータ33の前後差圧が閾値Dxより大きいことが確認された場合、主制御部51は、水素センサSN7により検出される水素濃度等に基づいて燃料改質率を算出する(ステップS10)。ここで、燃料改質率とは、改質用インジェクタ32から噴射された噴射のうち改質触媒41で改質される燃料の割合のことである。上述したとおり、改質用インジェクタ32から噴射された燃料は、改質触媒41での改質反応を経て水素(H)を含む成分に改質される。このため、改質触媒41の下流側(第2EGR通路部30b)を流れるEGRガス中の水素濃度、つまり水素センサSN7により検出される水素濃度は、改質触媒41による燃料改質率が大きいほど高くなり、かつ改質用インジェクタ32からの燃料噴射量が多いほど高くなる。そこで、主制御部51は、水素センサSN7による検出値と、改質用インジェクタ32からの燃料噴射量とに基づいて、燃料改質率を算出する。
次いで、主制御部51は、後述するステップS12において燃料改質率と比較される閾値Rxを設定する(ステップS11)。この燃料改質率の閾値Rxは、現在の運転条件において得ることが可能な燃料改質率の最大値である最大改質率に対し一定程度低い値に設定される。詳細は後述する燃料改質制御(ステップS13;もしくは図5のステップS30~S36)の中で説明するが、当実施形態では、運転条件ごとに、燃料改質率が上述した最大改質率となるようにEGR率が調整される。燃料改質率がこの最大改質率に対し低下する主な原因は、改質触媒41での燃料の改質反応に伴い生じる固形カーボン等の堆積物の堆積である。このため、燃料改質率を閾値Rxと比較することは、改質触媒41にどの程度の堆積物が存在するかを判断することを意味する。
上記ステップS12および上記ステップS9のいずれかの判定がNOであった場合、つまり触媒コンバータ33の前後差圧が閾値Dx以下であるか、または燃料改質率が閾値Rx以上であった場合、ECU50の改質制御部52は、燃料改質制御として、EGR通路30にEGRガス(排気ガス)を流通させつつ改質用インジェクタ32に燃料を噴射させる制御を実行する(ステップS13)。この燃料改質制御の詳細については後述する。
一方、上記ステップS12での判定がYESであった場合、主制御部51は、目詰まり判定フラグF1に「1」を入力する(ステップS14)。すなわち、上記ステップS12での判定がYESである(その前提として上記ステップS9での判定もYESである)ということは、燃料改質率が閾値Rx未満であり、かつ触媒コンバータ33の前後差圧が閾値Dxを超えていることを意味する。これらの事象は、いずれも、改質触媒41内の堆積物が多いと推定できる根拠になる。そこで、主制御部51は、上記ステップS14にて目詰まり判定フラグF1=1とし、改質触媒41内の堆積物の量が許容レベルを超えていることを記録する。
次いで、ECU50の再生制御部53は、触媒再生制御として、EGR通路30を通じて改質触媒41に空気を供給することにより当該改質触媒41内の堆積物を燃焼させる制御を実行する(ステップS15)。この触媒再生制御の詳細については後述する。
図5は、上記ステップS13の燃料改質制御の詳細を示すサブルーチンである。この図5に示す制御がスタートすると、改質制御部52は、EGR弁31を全開位置まで開く(ステップS30)。ここで、燃料改質制御では、後述するステップS32により、排気タービン装置25のモータジェネレータ28が発電機として作動する。これにより、排気タービン装置25のインペラ27が排気ガスの流通を阻害する抵抗要素となり、排気通路20の圧力が吸気通路10の圧力よりも十分に高くなる。そして、この状態で上記のとおりEGR弁31が全開とされることにより、図13に示すように、排気通路20からEGR通路30を通って吸気通路10へと流れる排気ガスの流れが生成される。すなわち、排気通路20を流れる排気ガスの一部をEGRガスとして吸気通路10に戻す排気還流操作が実現される。
次いで、改質制御部52は、EGR率(吸気に対するEGRガスの割合)の目標値である目標EGR率を決定する(ステップS31)。目標EGR率は、エンジンの運転条件(負荷および回転数)ごとに異なる値をとるように、例えばマップ形式で予め定められている。改質制御部52は、アクセルセンサSN8の検出値等から特定されるエンジン負荷と、クランク角センサSN1の検出値から特定されるエンジン回転数とに基づいて、現在の運転条件に適合する目標EGR率を決定する。
図8は、エンジン負荷と目標EGR率との関係を示すグラフである。本図に示すように、目標EGR率は、エンジン負荷が高いほど大きくなるように設定される。このような目標EGR率の傾向は、改質触媒41での効率的な燃料改質を目指して定められたものである。
図9は、上述した目標EGR率の傾向を定める基礎となった燃料改質率の特性を示すグラフである。燃料改質率とは、既に説明したとおり、改質用インジェクタ32から噴射された噴射のうち改質触媒41で改質される燃料の割合のことである。図9に示すように、EGR率以外の条件(負荷、回転数、触媒温度など)が同一である場合、燃料改質率は、EGR率に応じて増減する。すなわち、燃料改質率は、EGR率が所定値Wであるときに最大になり、所定値Wに対し増大方向および減少方向のいずれに変化しても低下する。EGR率が所定値Wに対し増大するほど燃料改質率が低下するのは、EGRガスの温度低下が原因である。具体的に、EGR率が所定値Wよりも大きくなると、気筒2での燃焼温度が有意に低下し、排気ガスひいてはEGRガスの温度が低下する。これにより、改質触媒41の温度が低下し、改質触媒41の活性が相対的に低下する結果、燃料改質率が低下する。また、EGR率が所定値Wに対し減少するほど燃料改質率が低下するのは、燃料の気化率の低下が原因である。具体的に、EGR率が所定値Wよりも小さくなると、EGR通路30を流通するEGRガスの流量が有意に減少し、改質用インジェクタ32から噴射された燃料のうちEGRガス中で気化する燃料の割合(気化率)が低下する。これにより、改質触媒41に十分に微粒化した状態で導入される燃料の量が減少する結果、燃料改質率が低下する。
以上のとおり、EGR率に対する燃料改質率の変化特性(図9)は、特定のEGR率(所定値W)において燃料改質率が最大になる山型の特性になる。そして、本願発明者の研究による知見として、燃料改質率が最大になるEGR率(所定値W)は、エンジン負荷が高いほど大きくなることが分かっている。そこで、当実施形態では、各運転条件において可及的に高い燃料改質率が得られるように(つまり図9の所定値Wに対応する燃料改質率が得られるように)、目標EGR率が高負荷側ほど大きい値に設定される。なお、目標EGR率はエンジン回転数によっても変動し得るが、ここではその傾向についての説明は省略する。
上記のようにして目標EGR率を決定した後、改質制御部52は、排気タービン装置25のモータジェネレータ28を発電機として作動させるとともに、当該モータジェネレータ28の発電量を、上記ステップS31で決定された目標EGR率が得られるような値に調整する(ステップS32)。モータジェネレータ28が発電機として作動すると、排気通路20(共通排気管23)内のインペラ27が排気ガスの流通を阻害する抵抗要素となり、排気通路20の圧力が増大する。これにより、排気通路20の圧力が吸気通路10の圧力よりも有意に高くなり、十分な量のEGRガスがEGR通路30を通じて排気通路20から吸気通路10へと流入するようになる。また、このときのEGRガスの流量は、モータジェネレータ28の発電量が増大するほど多くなる。上記ステップS32では、このような傾向に基づきモータジェネレータ28の発電量が調整されて、上記ステップS31で決定された目標EGR率に相当する量のEGRガスがEGR通路30に流される。
具体的に、目標EGR率に相当する量のEGRガスをEGR通路30に流すためのモータジェネレータ28の発電量は、エンジンの運転条件(負荷および回転数の組合せ)ごとに、数値シミュレーションや実験等によって予め知ることができる。上記ステップS32では、この既知のデータに基づいて予め定められたマップまたはモデル式を用いて、現在の運転条件下で目標EGR率(上記ステップS31で決定された目標EGR率)を達成するためのモータジェネレータ28の発電量が求められ、その発電量が得られるようにモータジェネレータ28が制御される。
次いで、改質制御部52は、各気筒2に供給すべき燃料の総量である総燃料量を決定する(ステップS33)。具体的に、改質制御部52は、各気筒2における混合気の空燃比(A/F)が理論空燃比(14.7)もしくはその近傍に設定された目標空燃比に一致するように、総燃料量を決定する。この総燃料量は、例えば吸気圧センサSN2の検出値に基づき決定することが可能である。すなわち、改質制御部52は、各気筒2に導入される空気(新気)の量である吸入空気量を、吸気圧センサSN2の検出値に基づき推定するとともに、推定した吸入空気量を目標空燃比(≒14.7)で除した値を、上記総燃料量として決定する。
次いで、改質制御部52は、改質用インジェクタ32から噴射すべき燃料の量である改質用燃料噴射量を決定する(ステップS34)。なお、ここでいう改質用燃料噴射量とは、エンジン本体1の各気筒2で繰り返される燃焼に供するべく改質用インジェクタ32から断続的に噴射される燃料の1回あたりの噴射量のことである。すなわち、改質用インジェクタ32は、当該インジェクタ32から噴射された燃料が各気筒2の吸気行程中に各気筒2にそれぞれ到達するように、各気筒2の吸気行程にリンクした適宜のタイミングで燃料を繰り返し噴射する。上記ステップS34における改質用燃料噴射量とは、このように改質用インジェクタ32から断続的に噴射される燃料の1回あたりの噴射量のことである。
上記ステップS34において、改質用燃料噴射量は、触媒温度センサSN6により検出される改質触媒41の温度と、上記ステップS7(図3)で算出されたEGRガス流量とをパラメータとしたマップに基づき決定される。図10は、このマップの傾向を示すグラフであり、グラフ(a)は改質触媒41の温度(触媒温度)と改質用燃料噴射量との関係を、グラフ(b)はEGRガス流量と改質用燃料噴射量との関係をそれぞれ示している。図10のグラフ(a)に示すように、改質用燃料噴射量は、改質触媒41の温度が上述した閾値Tx(ステップS1参照)に対し増大するほど多くなるように設定される。また、図10のグラフ(b)に示すように、改質用燃料噴射量は、EGRガス流量が増大するほど多くなるように設定される。なお、改質触媒41の温度と噴射量との関係を規定するグラフ(a)において、EGRガス流量は0より大きい値で一定であるものとし、EGRガス流量と噴射量との関係を規定するグラフ(b)において、改質触媒41の温度は閾値Txより高い値で一定であるものとする。
上記のような傾向で改質用燃料噴射量が決定されるのは、改質触媒41の出口温度が活性温度を下回らないようにするためである。すなわち、改質触媒41で燃料を改質させる反応は吸熱反応であるため、むやみに多くの燃料を改質触媒41に導入すると、改質触媒41の出口温度が活性温度(例えば約500℃)を下回り、改質触媒41での燃料改質率が低下するおそれがある。逆に言えば、改質触媒41の出口温度が活性温度に比して高いほど、当該出口温度が活性温度を下回らない条件で改質触媒41に導入し得る燃料量は多くなる。また、EGRガスは高温であるため、EGRガス流量が多いほど改質触媒41の保温が図られ、その温度低下が抑制される。このため、EGRガス流量が多いほど、改質触媒41の出口温度が活性温度を下回らない条件で当該改質触媒41に導入し得る燃料量は多くなる。図10のグラフ(a)(b)に示した改質用燃料噴射量の傾向は、このような観点から定められたものである。すなわち、当実施形態では、改質触媒41の出口温度が活性温度を下回らない範囲でできるだけ多くの燃料を改質触媒41に導入して改質するべく、改質用燃料噴射量が改質触媒41の温度およびEGRガス流量に応じて可変的に(各パラメータに比例するように)設定される。
上記のようにして改質用燃料噴射量を決定した後、改質制御部52は、エンジン本体1の各気筒2に各直噴インジェクタ3から噴射すべき燃料の量である直噴燃料量を決定する(ステップS35)。具体的に、直噴燃料量は、上記ステップS33においてエンジンの運転条件(負荷および回転数)に応じて決定された総燃料量、つまり現運転条件に適合したトルクを発生させるために各気筒2に噴射すべき燃料の量(所要燃料量)と、上記ステップS34で決定された改質用燃料噴射量とに基づき算出される。例えば、直噴燃料量をQf1、改質用燃料噴射量をQf2、各気筒2の総燃料量をQf0としたとき、直噴燃料量Qf1は、総燃料量Qf0から改質用燃料噴射量Qf2を減じた値(Qf0-Qf2)として算出することができる。
ここで、改質用燃料噴射量は、上述したとおり、改質触媒41の温度およびEGRガス流量に応じて変動するので、直噴燃料量も改質触媒41の温度およびEGRガス流量に応じて変動する。言い換えると、直噴燃料量と改質用燃料噴射量との比率(燃料割合)は、改質触媒41の温度およびEGRガス流量に応じて変動する。図11は、燃料割合と改質触媒41の温度(触媒温度)との関係を示すグラフである。このグラフにおいて、「直噴インジェクタ分担率」とは、総燃料量に対し直噴インジェクタ3からの噴射燃料が占める割合のことであり、「改質用インジェクタ分担率」とは、総燃料量に対し改質用インジェクタ32からの噴射燃料が占める割合のことである。図11に示すように、改質触媒41の温度が閾値Tx以下のとき、総燃料量はその全部(100%)が直噴インジェクタ3からの噴射燃料(直噴燃料量)によって賄われる。これに対し、改質触媒41の温度が閾値Txを超えると、当該閾値Txに対する超過量が大きくなるほど改質用インジェクタ32からの噴射燃料(改質用燃料噴射量)が占める割合が増大し、最大で100%に達する。このように、直噴燃料量および改質用燃料噴射量の割合は、改質触媒41の温度が高くなるほど改質用燃料噴射量の割合が大きくなるように調整される。また、図示は省略するが、同割合はEGRガス流量によっても変化し、EGRガス流量が多くなるほど改質用燃料噴射量の割合が大きくなるように調整される。なお、上記ステップS34,S35の前提として、改質触媒41の温度は閾値Txを超えているから、ここでの改質用燃料噴射量の割合(改質用インジェクタ分担率)は、少なくとも0%よりは大きい値に設定され、最大で100%まで上昇し得る。
次いで、改質制御部52は、上記ステップS34,S35で決定された各噴射量に従って改質用インジェクタ32および直噴インジェクタ3に燃料を噴射させる(ステップS36)。すなわち、改質制御部52は、上記ステップS34で決定された改質用燃料噴射量に相当する量の燃料が改質用インジェクタ32から噴射されるように同インジェクタ32を制御するとともに、上記ステップS35で決定された直噴燃料量に相当する量の燃料が直噴インジェクタ3から噴射されるように同インジェクタ3を制御する。
図6は、上記ステップS15(図3)の触媒再生制御の詳細を示すサブルーチンである。この図6に示す制御がスタートすると、再生制御部53は、EGR弁31を全開位置まで開く(ステップS40)。ここで、触媒再生制御では、後述するステップS43により、排気タービン装置25のモータジェネレータ28がモータとして作動する。これにより、インペラ27が高速で回転駆動されて、排気通路20内の排気ガスがインペラ27により下流側に送り出される結果、排気通路20の圧力が吸気通路10の圧力よりも低下する。そして、この状態で上記のとおりEGR弁31が全開とされることにより、図14に示すように、吸気通路10からEGR通路30を通って排気通路20へと至る空気の流れが生成される。すなわち、EGR通路30を通常とは逆向きに(吸気側から排気側へと)流れる空気流が生成される。
次いで、再生制御部53は、エンジン本体1に対し単位時間あたりに供給すべき空気の量である要求空気量を決定する(ステップS41)。要求空気量は、アクセルセンサSN8の検出値等から特定されるエンジン負荷と、クランク角センサSN1の検出値から特定されるエンジン回転数とに基づき決定される。具体的に、要求空気量は、エンジン負荷およびエンジン回転数が高いほど多くなるように決定される。
次いで、再生制御部53は、EGR通路30を介して触媒コンバータ33に導入すべき空気の量である目標触媒導入空気量を決定する(ステップS42)。目標触媒導入空気量は、換言すれば、図14のようにEGR通路30を吸気側から排気側へと流れる空気の目標流量のことである。当実施形態において、目標触媒導入空気量は、単位時間あたりに流れるガス量を改質触媒41の触媒体積で除した値であるガス毎時空間速度(GHSV)が所定値になるように設定される。GHSVの所定値は、例えば10000(1/h)とすることができる。
次いで、再生制御部53は、排気タービン装置25のモータジェネレータ28をモータとして作動させ、当該モータジェネレータ28によりインペラ27を回転駆動する(ステップS43)。すると、排気通路20内の排気ガスがインペラ27により吸引されて下流側に送り出され、排気通路20の圧力が低下する。これにより、吸気通路10の圧力が排気通路20の圧力よりも高くなり、吸気通路10からEGR通路30を通って排気通路20へと流れる(EGR通路30を逆流する)空気の流れが生成される。
上記ステップS43でモータジェネレータ28をモータとして作動させる際の駆動力(モータ駆動力)は、上記ステップS42で決定された目標触媒導入空気量に応じた値に設定される。すなわち、目標触媒導入空気量に相当する空気をEGR通路30に流すためのモータジェネレータ28の駆動力は、エンジンの運転条件(負荷および回転数の組合せ)ごとに、数値シミュレーションや実験等によって予め知ることができる。上記ステップS43では、この既知のデータに基づいて予め定められたマップまたはモデル式を用いて、現在の運転条件下で目標触媒導入空気量を達成するためのモータジェネレータ28の駆動力が求められ、その駆動力が得られるようにモータジェネレータ28が制御される。
次いで、再生制御部53は、スロットル弁15の開度を増大方向に補正する(ステップS44)。すなわち、触媒再生制御では上記のとおり、排気タービン装置25のモータ駆動(モータジェネレータ28をモータとして作動させてインペラ27を回転させる動作)によって空気がEGR通路30を逆流するので、この逆流空気(換言すれば吸気通路10からEGR通路30に分流する空気)の分だけ、エンジン本体1に導入される空気の量が減少する。そこで、上記ステップS44では、このような空気の減少分が補われて適切な量の空気(上記ステップS41で決定された要求空気量に相当する空気)がエンジン本体1に導入されるように、スロットル弁15の開度が通常よりも増大方向に補正される。
次いで、再生制御部53は、上記ステップS41で決定された要求空気量とエアフローセンサSN3によるサージタンク12内の検出流量(エンジン本体1に実際に導入される空気量)との差分である空気量偏差を算出する(ステップS45)。
次いで、再生制御部53は、モータとして作動するモータジェネレータ28の駆動力(モータ駆動力)を、上記ステップS45で算出された空気量偏差に応じて補正する(ステップS46)。例えば、エンジン本体1の要求空気量よりも実際の空気量が多い場合(つまり空気量偏差がプラスである場合)には、EGR通路30に分流する空気を増やして当該プラスの空気量偏差を解消するべく、モータジェネレータ28の駆動力が増大方向に補正される。逆に、エンジン本体1の要求空気量よりも実際の空気量が少ない場合(つまり空気量偏差がマイナスである場合)には、EGR通路30に分流する空気を減らして当該マイナスの空気量偏差を解消するべく、モータジェネレータ28の駆動力が減少方向に補正される。このような駆動力の補正は、例えば空気量偏差に基づくPID制御により実現される。
次いで、再生制御部53は、触媒コンバータ33に導入される空気(EGR通路30を通過する空気)の流量である触媒導入空気量を算出する(ステップS47)。具体的に、再生制御部53は、吸気圧センサSN2による検出圧力に基づいて共通吸気管13を流れる空気の流量を推定するとともに、この推定した流量から、エアフローセンサSN3により検出されるサージタンク12内の流量を減じた値を、触媒導入空気量として特定する。
次いで、再生制御部53は、再生用インジェクタ34からの噴射燃料により形成される混合気の当量比である触媒導入当量比を決定する(ステップS48)。すなわち、再生用インジェクタ34から第2EGR通路部30bに噴射された燃料は、第2EGR通路部30bを吸気側から排気側へと流れる空気と混じり合いながら触媒コンバータ33に導入される。再生制御部53は、このように触媒コンバータ33に導入される燃料と空気との混合気の当量比を、触媒導入当量比として決定する。なお、当量比とは、混合気中の燃料の濃度を表す指標であり、理論空燃比(A/F=14.7)を実際の空燃比で割った値のことである。当量比が1であることは、混合気の空燃比が理論空燃比であることを意味し、当量比が0であることは、混合気に燃料が含まれていない(噴射量ゼロ)であることを意味する。
図12に示すように、触媒導入当量比は、改質触媒41の温度に応じて可変的に設定される。具体的に、触媒導入当量比は、改質触媒41の温度が第1温度T1以下であるときは一律に1に設定され、改質触媒41の温度が第1温度T1よりも高い第2温度T2以上であるときは一律に0に設定される。また、第1温度T1から第2温度T2までの温度範囲では、触媒導入当量比は0超1未満の範囲で温度が低いほど大きくなるように設定される。なお、第1温度T1は500℃の近傍に設定することができ、第2温度T2は第1温度T1よりも50℃程度高い値に設定することができる。上記ステップS48において、再生制御部53は、触媒温度センサSN6により検出される改質触媒41の温度を、図12のグラフに対応するマップに適用することにより、触媒導入当量比を決定する。
触媒導入当量比が上記のような傾向で決定されるのは、改質触媒41の温度をできるだけ活性温度(約500℃)以上に保持するためである。すなわち、再生用インジェクタ34からの噴射燃料に基づく混合気が吸気側(第2EGR通路部30b)から触媒コンバータ33に導入されると、当該混合気中の燃料が酸化触媒42で酸化されて、当該酸化反応に伴う熱が発生する。この酸化触媒42での反応熱は、当該酸化触媒42に対し排気側(空気流の下流側)に隣接する改質触媒41を加熱し、改質触媒41を保温する効果をもたらす。この保温効果を利用して、改質触媒41の温度をできるだけ活性温度以上に保持するには、当該活性温度に対する温度の増分が小さいほど酸化触媒42での反応熱が大きくなるように構成すればよい。触媒導入当量比の上述した傾向(図12)は、このような事情から設定されたものである。
次いで、再生制御部53は、再生用インジェクタ34から噴射すべき燃料の量である再生用燃料噴射量を決定する(ステップS49)。具体的に、再生制御部53は、再生用インジェクタ34から噴射された燃料と第2EGR通路部30bを流通する空気とが混合されることにより、上記ステップS48で決定された触媒導入当量比に一致する当量比の混合気が形成されるように、上記再生用燃料噴射量を決定する。
次いで、再生制御部53は、エンジン本体1の各気筒2に各直噴インジェクタ3から噴射すべき燃料の量である直噴燃料量を決定する(ステップS50)。具体的に、再生制御部53は、各気筒2内の混合気の空燃比、つまり各直噴インジェクタ3から噴射された燃料と各気筒2に導入された空気との混合により形成される混合気の空燃比が理論空燃比もしくはその近傍に設定された目標空燃比に一致するように、上記直噴燃料量を決定する。
次いで、改質制御部52は、上記ステップS49,S50で決定された各噴射量に従って再生用インジェクタ34および直噴インジェクタ3に燃料を噴射させる(ステップS51)。すなわち、改質制御部52は、上記ステップS49で決定された再生用燃料噴射量に相当する量の燃料が再生用インジェクタ34から噴射されるように同インジェクタ34を制御するとともに、上記ステップS50で決定された直噴燃料量に相当する量の燃料が直噴インジェクタ3から噴射されるように同インジェクタ3を制御する。
次に、図4に示すメインのフローチャートに戻って、上記触媒再生制御に続けて実行される制御の内容について説明する。上記触媒再生制御のステップS51(図6)の実行後、主制御部51は、吸気圧センサSN2による検出圧力から排気圧センサSN4による検出圧力を減じた値である再生時差圧を算出する(ステップS17)。すなわち、触媒再生制御では、EGR通路30を吸気側から排気側に(通常とは逆向きに)空気が流れるので、触媒コンバータ33で生じる圧損は、触媒コンバータ33の吸気側(第2EGR通路部30b)を流れる空気の圧力から、触媒コンバータ33の排気側(第1EGR通路部30a)を流れる空気の圧力を減じた値に相当する。そこで、上記ステップS17では、吸気圧センサSN2による検出圧力(≒第2EGR通路部30bの吸気側の端部の圧力)から、排気圧センサSN4による検出圧力(≒第1EGR通路部30aの排気側の端部の圧力)を減じ、これを再生時差圧として算出する。
次いで、主制御部51は、上記ステップS17で算出された再生時差圧が、上述した図7のマップに基づき設定される閾値Dx(上記ステップS8参照)よりも小さいか否かを判定する(ステップS18)。
上記ステップS18でYESと判定されて触媒コンバータ33の前後差圧が閾値Dxより小さいことが確認された場合、主制御部51は、OセンサSN5により検出される排気ガス中の酸素濃度に基づいて、触媒コンバータ33を通過した後の空気に含まれる酸素量である触媒通過後酸素量を算出する(ステップS19)。ここでいう触媒通過後酸素量とは、触媒再生制御によりEGR通路30に吸気側から導入された空気が触媒コンバータ33を通過した後の時点で含有する酸素の量、より詳しくは、EGR通路30における触媒コンバータ33よりも排気側の部分(つまり第1EGR通路部30a)を単位時間あたりに流れる酸素の質量のことである。ここで、当実施形態では、エンジン本体1(各気筒2)において略理論空燃比の混合気を燃焼させるストイキ燃焼が実行されるので、エンジン本体1から排出される排気ガスには基本的に酸素が含まれない。このため、OセンサSN5により検出される酸素濃度は、実質的に、第1EGR通路部30aから排気通路20に導出される空気中の酸素のみに由来するといえる。言い換えると、第1EGR通路部30aを単位時間あたりに流れる酸素の質量つまり触媒通過後酸素量は、OセンサSN5の設置位置(つまり排気通路20のうち第1EGR通路部30aと排気通路20との接続部よりも下流側の部分)を単位時間あたりに流れる酸素の質量と実質的に同一である。また、OセンサSN5の設置位置を流れるガスの質量流量は、共通吸気管13を流れる空気の質量流量と、エンジン本体1に単位時間あたりに供給される燃料の質量との合計に相当する。このことから、主制御部51は、下式(1)を用いて触媒通過後酸素量を算出する。
Mo=Os×(Ma+Mf) ‥‥(1)
ここに、Moは触媒通過後酸素量(kg/s)、OsはOセンサSN5により検出される酸素濃度(質量%)、Maは吸気圧センサSN2の検出値から推定される共通吸気管13内の空気の質量流量(kg/s)、Mfはエンジン本体1に単位時間あたりに供給される燃料の質量(kg/s)である。
次いで、主制御部51は、後述するステップS21において触媒通過後酸素量と比較される閾値Qxを設定する(ステップS20)。この閾値Qxは、第1EGR通路部30aを通過する空気中に標準濃度(大気中に標準的に存在する酸素の濃度)に近い所定濃度(例えば20%)の酸素が含まれていた場合に当該第1EGR通路部30aを単位時間あたりに通過する酸素の質量に相当する値に設定される。すなわち、主制御部51は、第1EGR通路部30aを通過する空気の質量流量、つまり上記ステップS47(図6)で算出された触媒導入空気量(kg/s)に、上記所定濃度を掛けた値を、閾値Qxとして決定する。
次いで、主制御部51は、上記ステップS19で算出された触媒通過後酸素量が、上記ステップS20で設定された閾値Qxよりも大きいか否かを判定する(ステップS21)。
上記ステップS21および上記ステップS18のいずれかの判定がNOであった場合、つまり触媒コンバータ33の再生時差圧が閾値Dx以上であるか、または触媒通過後酸素量が閾値Qx以下であった場合、改質制御部52は、上述した触媒再生制御(図3のS15もしくは図6)を継続する。
一方、上記ステップS21での判定がYESであった場合、主制御部51は、目詰まり判定フラグF1に「0」を入力する(ステップS22)。すなわち、上記ステップS21での判定がYESである(その前提として上記ステップS18での判定もYESである)ということは、触媒コンバータ33の前後差圧が閾値Dx未満であり、かつ触媒通過後酸素量が閾値Qxを超えていること(換言すれば改質触媒41での酸素の消費量が減っていること)を意味する。これらの事象は、いずれも、改質触媒41内の堆積物が少ないと推定できる根拠になる。そこで、主制御部51は、上記ステップS22にて目詰まり判定フラグF1=0とし、改質触媒41内の堆積物の量が許容レベル以下であることを記録する。この処理の後、フローは上述した燃料改質制御(図3のS13もしくは図5)に移行する。
(4)作用
以上説明したとおり、上記実施形態では、EGR通路30の途中部に改質触媒41が設けられるとともに、このEGR通路30における改質触媒41よりも排気側の部分(第1EGR通路部30a)に改質用インジェクタ32が設けられるので、改質用インジェクタ32から噴射された炭化水素燃料(ガソリン含有燃料)をEGRガスとともに改質触媒41に導入することにより、当該燃料を改質して水素(H)を含む成分を生成することができる。水素を含む改質後の燃料は、改質前の燃料(炭化水素燃料)に比べて、燃焼速度が速く、かつ単位質量あたりの熱発生量が多くなる。このことは、同一の出力トルクを発生させるのに必要な燃料の総量を少なくする効果をもたらす。しかも、改質触媒41での改質反応は吸熱反応であるから、水素の生成にあたってEGRガス(排気ガス)の熱が利用されたことになり、エンジンからの排出熱を出力に還元する効果(排熱回収効果)が得られる。以上により、エンジンの燃費性能を効果的に向上させることができる。
ただし、改質触媒41による燃料の改質が継続されると、改質触媒41の内部に固形カーボン等の堆積物が多く堆積し、これによって改質触媒41の性能が有意に低下することが懸念される。これに対し、上記実施形態では、改質用インジェクタ32から噴射された燃料を改質触媒41で改質する上記の制御、つまり燃料改質制御(図3のS13もしくは図5)の実行中に、改質触媒41を含む触媒コンバータ33の前後差圧と、改質触媒41による燃料改質率とがそれぞれ調べられるとともに、前後差圧が閾値Dxよりも大きいという条件(第1の条件)と、燃料改質率が閾値Rxよりも小さいという条件(第2の条件)との双方が成立した場合に、改質触媒41内の堆積物を減少させる触媒再生制御(図3のS15もしくは図6)が実行される。このような構成によれば、堆積物を原因とした改質触媒41の性能低下を精度よく判定することができ、その判定に基づいた適切なタイミングで触媒再生制御を実行できるという利点がある。
改質触媒41を含む触媒コンバータ33の前後差圧、つまり排気圧センサSN4により検出される第1EGR通路部30aの圧力から吸気圧センサSN2により検出される第2EGR通路部30bの圧力を減じた圧力差が、閾値Dxよりも大きいことは、改質触媒41に堆積する固形カーボン等の堆積物が多いことを推定させる一要因ということができる。ただし、前後差圧が閾値Dxを超えたことが、直ちに改質触媒41の有意な性能低下に結びつくわけではない。このことを図15を用いて説明する。図15は、改質触媒41の断面の一部を拡大して示す図であり、六角形の各要素が改質触媒41のモノリス担体の各セルを表している。改質触媒41の内部に堆積物が堆積する場合、図15(a)のように各セル壁に堆積物が比較的分散して堆積するときもあれば、図15(b)のように各セルの内壁の一部に集中的に堆積物が堆積するときもある。堆積部の集中的な堆積(図15(b)参照)が生じた場合には、堆積物の分散的な堆積(図15(a)参照)が生じた場合に比べて、セル壁からの堆積物の突出量が大きい分、改質触媒41の前後差圧は大きくなる。一方で、堆積物がセル壁を覆う面積は少ないため、改質触媒41の性能低下の程度は小さくなる。このように、改質触媒41の前後差圧の大きさは、改質触媒41の性能低下度合いに必ずしも比例的に連動するわけではない。したがって、前後差圧の大きさのみに基づいて触媒再生制御の要否を判定したのでは、改質触媒41の性能が実際にはそれほど低下していないにもかかわらず触媒再生制御が実行される可能性がある。触媒再生制御の間は燃料改質による燃費改善効果が得られないので、改質触媒41の性能低下度合いが小さい状況での触媒再生制御の実行は、燃費改善効果の減殺につながり、好ましくない。
一方で、燃料改質率(改質用インジェクタ32から噴射された噴射のうち改質触媒41で改質される燃料の割合)の変化は、改質触媒41の性能の変化を比較的よく表していると考えられる。そこで、燃料の改質により生成される水素の濃度を水素センサSN7により検出し、検出した水素濃度から推定される燃料改質率に基づいて触媒再生制御の要否を判定することが考えられる。しかしながら、燃料改質率は改質触媒41の経年劣化によっても低下するので、単に燃料改質率のみに基づいて触媒再生制御の要否を判定したのでは、特に改質触媒41の使用年数が嵩んだ状況において、堆積物の堆積量が少ないにもかかわらず触媒再生制御が実行される可能性が高くなる。このことも、燃費改善効果の減殺につながり、好ましくない。
これに対し、上記実施形態では、前後差圧が閾値Dxよりも大きいという条件と燃料改質率が閾値Rxよりも小さいという条件との双方が成立した場合にはじめて触媒再生制御が必要と判定されるので、堆積物をあえて減少させる必要性が薄い状況で無用に触媒再生制御が行われるのを回避でき、エンジンの燃費性能を十分に向上させることができる。すなわち、上記実施形態によれば、(経年劣化ではなく)堆積物の増大によって改質触媒41の性能が低下したことを精度よく判定できるとともに、当該判定に基づいた適切なタイミングで触媒再生制御を実行することができる。これにより、触媒再生制御の実行頻度が必要最小限に留められるので、改質触媒41を用いた燃料の改質による燃費改善効果を十分に発揮させることができる。
また、上記実施形態では、触媒再生制御が必要と判定された場合に、排気タービン装置25のモータジェネレータ28をモータとして作動させて排気通路20内のインペラ27が高速回転させる制御が触媒再生制御として実行されるので、排気通路20内の排気ガスをインペラ27によって吸い込んで下流側に送り出すことにより、吸気通路10からEGR通路30を通って排気通路20へと至る(つまりEGR通路30を逆流する)空気流を生成することができる。これにより、当該空気流に含まれる酸素を改質触媒41内の堆積物と反応させて当該堆積部を燃焼除去することができ、改質触媒41の速やかな再生を図ることができる。
一方、触媒再生制御が不要なときは、モータジェネレータ28を発電機として作動させることにより、排気ガスのエネルギーの一部を電力として回収することができる。このことは、改質触媒41での吸熱反応による燃料改質の効果(燃焼性の改善)と相俟って、エンジンからの排出熱を出力に還元する排熱回収の効率を高める。これにより、エンジンの燃費性能を十分に向上させることができる。
また、上記実施形態では、触媒再生制御の実行中に、吸気圧センサSN2による検出圧力(第2EGR通路部30bの圧力)から排気圧センサSN4による検出圧力(第1EGR通路部30aの圧力)を減じた値が、改質触媒41の再生時差圧として算出されるとともに、OセンサSN5により検出される排気ガス中の酸素濃度に基づいて、改質触媒41を通過した後の空気に含まれる酸素の量である触媒通過後酸素量が算出される。そして、再生時差圧が閾値Dxより小さく、かつ触媒通過後酸素量が閾値Qxよりも大きいことが確認された場合に、触媒再生制御が終了される。このような構成によれば、改質触媒41内の堆積物が十分に減少したタイミングで適切に触媒再生制御を終了させることができるという利点がある。
すなわち、触媒再生制御によって改質触媒41内の堆積物が十分に減少した場合には、再生時差圧が減少する現象に加えて、触媒通過後酸素量が増大する現象が見られるはずである。これは、改質触媒41内の堆積物が減少すると、堆積物の燃焼のために消費される酸素の量が減るからである。上記実施形態では、再生時差圧が閾値Dx未満になりかつ触媒通過後酸素量が閾値Qxを超えたときにはじめて触媒再生制御が終了されるので、改質触媒41内の堆積物が十分に減少した適切なタイミングで触媒再生制御を終了させることができる。
(5)変形例
上記実施形態では、触媒再生制御の実行条件の1つ(第2の条件)として、水素センサSN7により検出された水素濃度から燃料改質率を推定し、この推定した燃料改質率が閾値Rxよりも小さいか否かを判定するようにしたが、これに代えて、水素センサSN7により検出された水素濃度を直接閾値と比較してもよい。すなわち、水素センサSN7により検出された水素濃度が所定の閾値よりも低いという条件を上記第2の条件として設定してもよい。このときの水素濃度の閾値は、例えば、次のように設定することができる。まず、改質触媒41の性能が良好であった場合に期待される水素濃度(これを最大水素濃度という)を、改質用インジェクタ32からの燃料噴射量やEGRガス流量等に基づき算出する。そして、この算出した最大水素濃度から一定程度低い値を上記水素濃度の閾値として設定する。このような方法も、水素センサSN7により検出された水素が所定レベルよりも少ないことを判定しているという意味において、上記実施形態の方法(水素濃度から燃料改質率を算出した上でこれを閾値と比較する方法)と等価である。言い換えると、上記第2の条件は、検出された水素が所定レベルよりも少ないことを表す条件であればよく、その範疇において適宜の条件を設定することが可能である。
上記実施形態では、インペラ27およびモータジェネレータ28を含む排気タービン装置25を排気通路20に設け、触媒再生制御の実行時にモータジェネレータ28をモータ駆動してインペラ27を回転させることにより、吸気通路10からEGR通路30を通って排気通路20に至る空気流を形成するようにしたが、当該空気流の形成のために排気通路20に設けられる装置は、少なくとも、排気通路20内の排気ガスを吸い込んで下流側に送り出すことが可能な装置(吸引装置)であればよい。例えば、吸引装置として、インペラの回転駆動のみが可能なモータと、当該モータに連結されたインペラとを備えた装置(いわゆる送気コンプレッサ)を排気通路に設けてもよい。
上記実施形態では、排気通路20(共通排気管23)のうちEGR通路30と排気通路20との接続部よりも下流側の部分にOセンサSN5(酸素センサ)を設け、当該OセンサSN5により検出される酸素濃度等に基づいて触媒再生制御の終了タイミングを決定するようにしたが、当該タイミングの決定のために検出が必要な酸素濃度は、少なくとも触媒コンバータ33(改質触媒41)を通過した後の空気に含まれる酸素の濃度であればよい。このため、同様のOセンサを、EGR通路30における触媒コンバータ33よりも排気側の部分(つまり第1EGR通路部30a)に設けてもよい。
上記実施形態では、吸気通路10(共通吸気管13)に設けられた吸気圧センサSN2と、排気通路20(共通排気管23)に設けられた排気圧センサSN4とを用いて、燃料改質制御の実行中に触媒コンバータ33の前後差圧(排気圧センサSN4による検出圧力から吸気圧センサSN2による検出圧力を減じた値)を算出するとともに、触媒再生制御の実行中に再生時差圧(吸気圧センサSN2による検出圧力から排気圧センサSN4による検出圧力を減じた値)を算出するようにしたが、各差圧を特定するための方法はこれに限られない。例えば、触媒コンバータ33に導入される直前のガスの圧力と触媒コンバータ33から導出された直後のガスの圧力との差(第1EGR通路部30aの圧力と第2EGR通路部30bの圧力との差)を直接的に検出するセンサを用いて、上記各差圧をそれぞれ特定するようにしてもよい。
1 :エンジン本体
10 :吸気通路
20 :排気通路
25 :排気タービン装置(吸引装置)
27 :インペラ
28 :モータジェネレータ
30 :EGR通路
30a :第1EGR通路部(導入通路)
30b :第2EGR通路部(導出通路)
32 :改質用インジェクタ
41 :改質触媒
51 :主制御部(判定部)
53 :再生制御部(制御部)
SN2 :吸気圧センサ(差圧検出部の一要素)
SN4 :排気圧センサ(差圧検出部の一要素)
SN5 :Oセンサ(酸素センサ)
SN7 :水素センサ

Claims (4)

  1. エンジンに供される炭化水素燃料を改質する燃料改質システムであって、
    前記燃料を改質して水素を生成可能な改質触媒と、
    前記改質触媒に導入されるガスが流通する導入通路と、
    前記改質触媒から導出されたガスが流通する導出通路と、
    前記導入通路の圧力から前記導出通路の圧力を減じた前後差圧を検出する差圧検出部と、
    前記導入通路に設けられ、当該導入通路に燃料を噴射可能な改質用インジェクタと、
    前記導出通路に設けられ、当該導出通路内のガスに含まれる水素を検出する水素センサと、
    前記改質触媒の内部に堆積している堆積物を減少させる触媒再生制御の要否を判定する判定部とを備え、
    前記判定部は、前記差圧検出部により検出された前後差圧が所定の閾値よりも大きいという第1の条件と、前記水素センサにより検出された水素が所定レベルよりも少ないという第2の条件とがともに成立した場合に、前記触媒再生制御が必要であると判定し、
    前記判定部は、前記水素センサによる検出値と、前記改質用インジェクタにより噴射された燃料量とに基づいて、前記改質触媒による燃料の改質率を算出し、算出した改質率が所定値よりも小さい場合に、前記第2の条件が成立したと判定する、ことを特徴とするエンジンの燃料改質システム。
  2. 炭化水素燃料の燃焼が行われるエンジン本体と、エンジン本体に導入される吸気が流通する吸気通路と、エンジン本体から排出される排気ガスが流通する排気通路と、排気通路と吸気通路とを連通するEGR通路と、を備えたエンジンに供される前記燃料を改質する燃料改質システムであって、
    前記EGR通路の途中部に設けられ、前記燃料を改質して水素を生成可能な改質触媒と、
    前記EGR通路における前記改質触媒よりも排気側の部分からなり、前記改質触媒に導入されるガスが流通する第1EGR通路部と、
    前記EGR通路における前記改質触媒よりも吸気側の部分からなり、前記改質触媒から導出されたガスが流通する第2EGR通路部と、
    前記第1EGR通路部の圧力から前記第2EGR通路部の圧力を減じた前後差圧を検出する差圧検出部と、
    前記第1EGR通路部に設けられ、当該第1EGR通路部に燃料を噴射可能な改質用インジェクタと、
    前記第2EGR通路部に設けられ、当該第2EGR通路部内のガスに含まれる水素を検出する水素センサと、
    前記改質触媒の内部に堆積している堆積物を減少させる触媒再生制御の要否を判定する判定部と、
    前記排気通路内の排気ガスを吸い込んで下流側に送り出す吸引装置と、
    前記判定部により前記触媒再生制御が必要と判定された場合に、当該触媒再生制御として、前記吸気通路から前記EGR通路を通って前記排気通路へと至る空気流が生成されるように前記吸引装置を作動させる制御部とを備え、
    前記判定部は、前記差圧検出部により検出された前後差圧が所定の閾値よりも大きいという第1の条件と、前記水素センサにより検出された水素が所定レベルよりも少ないという第2の条件とがともに成立した場合に、前記触媒再生制御が必要であると判定する、ことを特徴とするエンジンの燃料改質システム。
  3. 請求項2に記載のエンジンの燃料改質システムにおいて、
    前記吸引装置は、前記排気通路に設けられたインペラと、インペラに連結されたモータジェネレータとを備え、
    前記モータジェネレータは、前記インペラを回転させるモータとしての作動と、前記インペラの回転エネルギーを電力に変換する発電機としての作動が可能であり、
    前記制御部は、前記触媒再生制御として、前記モータジェネレータをモータとして作動させて前記インペラを回転させることにより、前記空気流を生成する、ことを特徴とするエンジンの燃料改質システム。
  4. 請求項2または3に記載のエンジンの燃料改質システムにおいて、
    前記排気通路のうち前記第1EGR通路部と前記排気通路との接続部よりも下流側の部分、または前記第1EGR通路部に設けられた酸素センサをさらに備え、
    前記差圧検出部は、前記触媒再生制御の実行中に、前記第2EGR通路部の圧力から前記第1EGR通路部の圧力を減じた値である再生時差圧を検出可能であり、
    前記判定部は、前記触媒再生制御を終了するタイミングを、前記差圧検出部により検出される前記再生時差圧と、前記酸素センサにより検出される酸素濃度とに基づき決定する、ことを特徴とするエンジンの燃料改質システム。
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