この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態の乗降補助装置を備えた車両について図1から図14を用いて説明する。
また、図中において、矢印Fは車両前方向を、矢印Rは車両右方向を、矢印Lは車両左方向を、矢印Uは車両上方向を、矢印OUTは車幅方向外側を、矢印INは車幅方向内側を、夫々示している。
図1~図4に示すように、本実施形態の車両は、車室の下面に、車室のフロア(床面)を形成するフロアパネル100(図4参照)と、該フロアパネル100の車幅方向の中央位置の上方において車両前後に延びるフロアトンネル101(図4参照)と、フロアパネル100の側方にて車両前後方向に沿って延びるサイドシル102と、フロアトンネル101とサイドシル102とを車幅方向に連結する複数のフロアクロスメンバ(図示略)と、を備えている。
車室の前部には、フロントシートが車幅方向に並んだ状態で配設されている(運転席104のみ図示)。このフロントシートは、本実施形態のように右ハンドル車においてフロアトンネル101に対して右側に配設された運転席104と、フロアトンネル101に対して左側に配設された助手席(図示略)から成る。
すなわち、運転席104および助手席は、それぞれシートクッション104a、シートバック104b、ヘッドレスト104cを有する左右独立のセパレートシートで構成されている。
また、本実施形態の車両の側部は、図3に示すように、ルーフサイドレール105と、リヤピラー106と、サイドシル102と、車両前側のヒンジピラー108およびフロントピラー109とで囲繞されたドア開口部110が形成されている。
なお図示省略するが、これらルーフサイドレール105、リヤピラー106、サイドシル102、ヒンジピラー108およびフロントピラー109は、延在方向に延びる閉断面構造が構成された車体骨格部材である。
ドア開口部110は、乗員が乗降する乗降口であって、車両前側のヒンジピラー108(図示略)に上下一対のドアヒンジ(図示略)を介して開閉可能に取り付けられたサイドドア112(図9参照)を備えている。本実施形態の車両は、車体の左右各側の側部にサイドドア112(車両右側のみ図示)が1つずつ設けられた2ドアタイプの車両である。
なお、後述する乗降補助装置1は、本実施形態の車両のように、2ドアタイプの車両に限らず、4ドアタイプの車両、例えば所謂ピラーレスの観音ドアを備えた車両や、スライドドアを備えた車両等にも適用してもよい。
なお、本実施形態の車両は、車体側部に、ドア開口部110を前後に区分けするようなセンタピラーを有していないが、サイドドア112に、車両上下方向に延びる補強部材(所謂ドア内蔵センタピラー)が内蔵されている(図示略)。
図1、図3、図4に示すように、本実施形態の乗降補助装置1は、上述した車両における、車両右側のドア開口部110に隣接した運転席104の車幅方向外側位置に搭載されている。
図1~図5に示すように、乗降補助装置1は、下肢が不自由な乗員が車両に対して乗降する際、運転席104と車両外側の車椅子との間を移動時に乗員の臀部等を仮置きすることで乗員の運転席104と車椅子との間の移動を補助するための装置である。
図1、図5に示すように、乗降補助装置1は、ボード10と支持部20と基台30と連動機構50とを備えている。
さらに図5、図6に示すように、乗降補助装置1は、ボード10を支持部20に対して回動可能に軸支するボード用回動軸部15と、車体に対して支持部20を回動可能に軸支する支持部用回動軸部25とを備えている。
図1、図3、図4に示すように、ボード10は、支持部20が運転席104の車幅方向外側位置(P1)(以下、「シート側部位置(P1)」と称する)に位置するとき、略水平となる姿勢(P1)(以下、「水平姿勢(P1)」と称する)となるように配置可能に構成されている。
ボード10は、水平姿勢(P1)において乗員の臀部を仮置きしたり、乗員の上半身を腕で支持するために手を置く(つく)ことが可能な大きさおよび強度を有する板状に形成されている。
図1、図4、図6に示すように、ボード10は、水平姿勢(P1)における車両平面視で、前側部位に幅狭領域10Fを有して形成されるとともに、後側部位に幅狭領域10Fよりも幅広となる幅広領域10Rを有して形成されている。幅狭領域10Fは、乗員(例えば下肢障害者)が車椅子(図示略)と運転席104との各シートの間をボード10を介して移乗時に、乗員が手をついて自らの身体を支えるための手つき領域として必要十分な大きさを有して形成されている。
幅広領域10Rは、乗員の臀部(左右一対からなる坐骨間およびその周辺部)等を仮置き(支持)可能な大きさを有して形成されている。
具体的には図4に示すように、幅狭領域10Fは、直径が約80mmの仮想の円形領域CRを含むように該円形領域CRよりも若干大きく形成されるとともに、幅広領域10Rは、車両前後方向の長さが約220mmかつ車幅方向の長さが約110mmの仮想の長方形領域(「臀部一時預け領域」とも称する)SRを含むように該長方形領域SRを覆う形状として形成されている。
換言すると同図に示すように、ボード10は、水平姿勢(P1)における車両平面視で、幅狭領域10Fと幅広領域10Rとに亘って車幅方向内縁10aが車両前後方向と略一致する方向に略直線状に形成されているのに対して車幅方向外縁10bについては前方から後方へ向けて徐々に車幅方向外側へ位置するような傾斜状に形成されている。
さらにボード10は、水平姿勢(P1)における車両平面視で、ボード10の前縁10cが、車幅方向内縁10aと車幅方向外縁10bとの車幅方向の間に亘って車両前方へ突出する湾曲形状に形成されるとともに、ボード10の後縁10dが、車幅方向内縁10aと車幅方向外縁10bとの車幅方向の間に亘って車両後方へ突出する湾曲形状に形成されている。
図3、図5、図6に示すように、支持部20は、ボード10の車両前後方向における、少なくとも幅狭領域10Fに対応する箇所に設けられている。これにより、支持部20は、ボード10の車両前後方向における少なくとも幅狭領域10Fを、直下から支持する構成としている。当例では支持部20は、ボード10の幅狭領域10Fと幅広領域10Rとに亘る部位に対応して設けられている。
支持部20は、水平姿勢(P1)のボード10を、その少なくとも車幅方向の内縁10a側からボード用回動軸部15を介して片持ち状に支持する構成としている。ボード用回動軸部15は、水平姿勢(P1)のボード10における車幅方向の内縁10a側の直下に車両前後方向に沿って配設されている。
図5、図6に示すように、支持部20の前端20fは、ボード10(幅狭領域10F)の車幅方向内縁10aの前端10afに対応する位置まで設けられている。これにより、ボード10の少なくとも幅狭領域10Fは、該幅狭領域10Fの車両前後方向の略全体に亘って支持部20により支持されている。
図2、図6、図7に示すように、支持部20は基台30に対して、上方に配設されるともに、車両側面視で回動可能に、すなわち車幅方向に延びる軸(26)回りに回動可能に軸支されている。
図5~図7に示すように、支持部20は、シート側部位置(P1)において車両前後方向に略水平に延びる上辺部21aと、上辺部21aに対して下方へ離間した位置において該上辺部21aと略平行に車両前後方向に延びる下辺部21bと、上辺部21aと下辺部21bとの前端同士を車両上下方向に繋ぐ前辺部21cと、上辺部21aと下辺部21bとの後端同士を車両上下方向に繋ぐ後辺部21dとで、車両側面視で枠状(閉環状)に形成された枠状部材21を備えている。
当例では、上辺部21aが下辺部21bよりも車両前後方向に長く形成され、後辺部21dは、上方ほど後方に位置する傾斜形成に形成されている。これにより、枠状部材21は、車両側面視で台形形状に形成されている(図3、図7参照)。
図2、図5、図7に示すように、支持部20は、上辺部21aの車両前後方向の中間位置よりも若干後側の位置に、該後側の位置から車幅方向外側へ略水平に突出する支持突起29が一体形成されている。支持突起29は、その上面が水平姿勢(P1)のボード10の下面に当接することで、該ボード10を下側から支持する。すなわち、ボード10は、水平姿勢(P1)のとき、支持部20における、支持突起29と上述したボード用回動軸部15とによって下方から支持される。
図2、図5~図7に示すように、支持部20と基台30との間には、上述した支持部用回動軸部25を備えている。図2、図6、図10(a)(b)、図11に示すように、支持部用回動軸部25は、車幅方向と略平行に延びる軸26と、支持部20の側に設けられ軸26を介して基台30に軸支される支持部下側軸支部22と、基台30の側に設けられ軸26を介して支持部20に軸支される台座側軸支部33とで構成されている。なお、支持部下側軸支部22は、支持部20の前下端(前辺部21cと下辺部21bとのコーナー部)に設けられ、また、台座側軸支部33は基台30の前部に設けられている。
これにより、図7に示すように、支持部20は、支持部用回動軸部25において基台30に対して車幅方向に延びる軸(26)回りに回動可能に軸支されている。当例において支持部20は、シート側部位置(P1)から前方に跳ね上げられた位置(P2)(以下、「跳上げ位置(P2)」と称する)へ回動する際、車体(基台30)に対して車両右側面視で時計回りに略90度回動する。
要するに図2、図3、図7に示すように、支持部20は、シート側部位置(P1)と跳上げ位置(P2)との間で上記軸26を介して基台30に軸支されている。
図5~図7に示すように、ボード10と支持部20との間には、上述したボード用回動軸部15を備えている。ボード用回動軸部15は、ボード10が水平姿勢(P1)のとき車両前後方向(すなわち上辺部21a)と略平行に延びる軸16と、ボード10の車幅方向内縁10a(図4参照)側に設けられ軸16を介して支持部20に軸支されるボード側軸支部17と、支持部20の上辺部21aに設けられ軸16を介してボード10に軸支される支持部上側軸支部23とで構成されている。
ボード10は、ボード用回動軸部15において支持部20に対して車両前後方向に延びる軸(16)回りに回動可能に軸支されている。
要するにボード10は図7に示すように、支持部20がシート側部位置(P1)に位置するときには上記水平姿勢(P1)となるとともに、上記支持部20が跳上げ位置(P2)に位置するときには車幅方向に略直交する姿勢(以下、「直交姿勢(P2)」と称する)となるよう軸16を介して支持部20に軸支されている。
当例において上記直交姿勢(P2)とは、ボード10を、支持部20に対して水平姿勢(P1)から起立するように、該ボード10の車幅方向内縁10aに沿って延びるボード用回動軸部15を中心として略90度回動させた姿勢である。
本実施形態の乗降補助装置1は、支持部20がシート側部位置(P1)に位置するとともにボード10が水平姿勢(P1)となるとき、使用状態P1(使用可能な状態)となる。支持部20が跳上げ位置(P2)に位置するとともにボード10が直交姿勢(P2)となるとき、収納状態P2となる(図7参照)。
図1、図3に示すように、ボード10は、水平姿勢(P1)(乗降補助装置1が使用状態P1)のとき、幅広領域10Rの少なくとも車幅方向の外側部分が、サイドドア112(図9参照)の閉時の位置と重複する箇所、換言するとサイドシル102と車幅方向に重複する箇所まで車幅方向外側に迫り出した状態となる。
また図2、図9に示すように、乗降補助装置1は、収納状態P2のとき、閉時におけるサイドドア112の車幅方向内面(ドアトリム113)に対して車幅方向内側かつ、運転席104に足元の空間(ダッシュボード(「インストルメントパネル」とも称する)111の前方かつ下方の空間)の車幅方向外側、すなわち、閉時におけるサイドドア112の車幅方向内面近傍(図9参照)に位置する。
このため、収納状態P2の乗降補助装置1は、サイドドア112が閉時において該サイドドア112と干渉することがなく、しかも運転席104に着席した乗員の足元のスペースを確保することができる。
ところで図9に示すように、ボード10は、直交姿勢(P2)のとき、幅広領域10Rが幅狭領域10Fよりも上方に位置する起立した姿勢となる。このとき、跳上げ位置(P2)の支持部20は、上辺部21aが、略上下方向に沿って延びるとともに該支持部20の前端に位置する前傾姿勢となる。すなわち図2、図7、図9に示すように、直立姿勢のボード10は、略全体が支持部20の前端(上辺部21a)よりも前方に位置するとともに、該直交姿勢(P2)のボード10の上部が支持部20の上端(後辺部21d)よりも上方に突出する。この直交姿勢(P2)のボード10の上部の後方近傍には、図9に示すように、サイドドア112閉時において、サイドドア112の車幅方向内面を形成するドアトリム113から車幅方向内側へ突設されたアシストグリップ114aやアームレスト114b等の突設部114が位置する構成としている。
これにより、直立姿勢のボード10は、車両走行中や車両発進時等において、意に反して車両後方へ変位しようとした際に、該ボード10の上部が、サイドドア112に設けたアシストグリップ114aや、アームレスト114bの前部に、ドア閉時において当接することで車両後方へ変位することが規制される。
また図2、図5、図6に示すように、上述した支持部20には、乗員が乗降時に該跳上げ位置(P2)からシート側部位置(P1)へと車両後方へ回動する際に把持する把持部24が枠状部材21と一体に設けられている。
把持部24は、ボード10の支持部20に対する、水平姿勢(P1)と直交姿勢(P2)との間における回動範囲の外側に位置するとともに、直交姿勢(P2)のボード10の後端より後方位置に設けられている。
ここで、支持部20が跳上げ位置(P2)のとき、後辺部21dは支持部20の上部に位置する。このため、当例における把持部24は、運転席104に着席した乗員が把持し易いように支持部20の後辺部21dの長手方向の途中部(中間部)から車幅方向外側へ略水平に延びている(図9参照)。
図2に示すように、基台30は、車両右側のサイドシル102と運転席104との間に配設されており、図5、図6に示すように、支持部20の下辺部21bの全体を下側から支持可能に水平に形成された上面を有する台座部31と、台座部31の下部から車幅方向内側へ延び車体へ締結固定される車体取り付け部32とが設けられている。台座部31は、車体取り付け部32に対して段状に上方へ隆起するように形成されている。
ところで、フロアパネル100よりも上方には、図4に示すように、運転席104を前後方向にスライド可能に支持する左右一対のシートレール115が、運転席104を支持可能な車幅方向の間隔を有して配設されている。左右一対のシートレール115は共に図示省略するが、車両前後方向に延びるとともに、前端が前側シートブラケットに、後端が後側シートブラケットに夫々支持されている。
詳しくは左右一対のシートレール115は共に、左右夫々に対応する前後各部のシートブラケットに締結部材(ボルトおよびナット)を用いて締結されている(図示略)。
なお、前後各側のシートブラケットは、車両右側のサイドシル102(図4参照)とフロアトンネル101(同図参照)とを連結するように車幅方向に延びる前側フロアクロスメンバおよび後側フロアクロスメンバに夫々立設されている(図示略)。これら前後各側のフロアクロスメンバは共に、フロアパネル100との間に車幅方向に延びる閉断面が構成されるようにフロアパネル100に対して上方から接合された車体骨格部材である。
そして、左右一対のシートレール115のうち、車両右側(車幅方向外側)のシートレール115を、該シートレール115に対応する前後各側のシートブラケットへ締結する際に、基台30の車体取り付け部32(図5、図6参照)は、車両右側のシートレール115と共に締結されている。すなわち、車体取り付け部32は、車両右側のシートレール115と車体に対して共締めされている。
加えて、基台30の台座部31についても、サイドシル102等の車体骨格部材に締結部材により取り付けられている(図示略)。
また図5、図6に示すように、基台30には、台座部31における上面部よりも下方に慣性力緩和機構40を備えている。この慣性力緩和機構40については後で説明する。
図1~図3、図5、図6に示すように、連動機構50は、ボード10と台座部31(車体)との間に備えており、図2、図7、図8に示すように、シート側部位置(P1)から跳上げ位置(P2)への支持部20の支持部用回動軸部25の軸(26)回りの回動に連動して、ボード10が、支持部20に対してボード用回動軸部15の軸(16)回りに車幅方向内側へ回動して水平姿勢(P1)から直交姿勢(P2)となるように構成されている。
さらに、連動機構50は、跳上げ位置(P2)からシート側部位置(P1)への支持部20の支持部用回動軸部25の軸(26)回りの回動に連動して、ボード10が支持部20に対してボード用回動軸部15の軸(16)回りに車幅方向外側へ回動して直交姿勢(P2)から水平姿勢(P1)となるように構成されている。
詳しくは図5、図7、図8に示すように、連動機構50は、ボード10と台座部31の上面とを連結するリンク部材51と、リンク部材51とボード10との結合部52A(以下、「第1結合部52A」と称する)に設けられた第1自在継手52と、リンク部材51と台座部31の上面との結合部53A(以下、「第2結合部53A」と称する)に設けられた第2自在継手53とを備えている。
リンク部材51は図5に示すように、直線状に連結する直線部51aと、直線部51aの軸方向の一端部から略直角に屈曲する屈曲部51bを介して突出する第1軸部51cと、直線部51aの軸方向の他端側から略直角に屈曲する屈曲部51dを介して突出する第2軸部51eとを有して一体形成され、機能上必要な範囲を超えて撓み変形や屈曲変形することのない剛性を有している。
また、リンク部材51の直線部51aは、水平姿勢(P1)のボード10と台座部31の上面との車両上下方向の間隔よりも長尺に形成されている(図7参照)。
図5、図11、図12に示すように、第1結合部52Aは、第1自在継手52と、該第1自在継手52によって遊動可能に保持された第1軸部51cとを有している。第1結合部52Aは、水平姿勢(P1)のボード10の下面の平面視における前側位置(幅狭領域10Fの略中央位置)に設けられている(図5参照)。
図5、図11、図12に示すように、第2結合部53Aは、第2自在継手53と、該第2自在継手53によって遊動可能に保持された第2軸部51eとを有している。第2結合部53Aは、台座部31の上面における、支持部用回動軸部25に対して車両前方かつ車幅方向外側に離間して設けられている(図11、図12参照)。なお、第2結合部53Aは、水平姿勢のボード10の前端よりも前方に設けられている(図11参照)。
当例において、第1結合部52Aは、ボード10が水平姿勢(P1)のとき、第2結合部53Aよりも車両後方に位置するとともに(図11参照)、車両前後方向に沿って延びるボード用回動軸部15よりも車幅方向外側に位置し(図5参照)ている。さらに第1結合部52Aは、支持部用回動軸部25に対して車幅方向外側かつ車両後側に位置する(図11、図12参照)。なお当例において、第1自在継手52と第2自在継手53とは共に、ボールジョイントを採用している。
また、第2結合部53Aと支持部用回動軸部25とは、これらの車幅方向の間隔および車両前後方向の間隔が、リンク部材51の直線部51aの長さよりも短くなるように基台30の台座部31の上面において略同じ高さで配設されている。
さらにまた図7に示すように、支持部20が跳上げ位置(P2)の状態において、第1結合部52Aは、支持部上側軸支部23の軸16の位置X16よりも前方に位置するよう構成されている(特に、図7中の仮想線で示した収納状態P2における、第1結合部52Aと、支持部上側軸支部23の軸16の位置X16との関係参照)。
ここで、乗降補助装置1が使用状態P1(ボード10が水平姿勢(P1))のとき、図11に示すように、リンク部材51の直線部51aは、車両側面視で上方ほど車両後方に位置する姿勢、すなわち後傾姿勢となる。
乗降補助装置1が使用状態P1から収納状態P2(ボード10が起立姿勢)に変位するに従って、リンク部材51の直線部51aは、車両側面視で徐々に上部が車両前方に変位するように回動する(同図参照)。
そして、リンク部材51の直線部51aは、乗降補助装置1が収納状態P2のとき、車両側面視で上方ほど車両前方へ位置する姿勢、すなわち前傾姿勢となる(同図参照)。
さらに、リンク部材51の直線部51aは、このように車両側面視で徐々に上部が車両前方に変位するように回動するに従って、図8、図12に示すように、車両正面視で該直線部51aの上部が車幅方向外側から内側にも変位するように回動する。これにより、リンク部材51の直線部51aは、乗降補助装置1が収納状態P2のとき、上方ほど車幅方向内側へ位置するよう傾斜した姿勢となる(同図参照)。
さらに、乗降補助装置1が使用状態P1と収納状態P2との間で変位する際に、リンク部材51は、第1結合部52Aにおいて第1軸部51cが第1自在継手52に、第2結合部53Aにおいて第2軸部51eが第2自在継手53に、夫々保持されつつ3次元的に振れる(揺動する)ため、直線部51aの上部の車両前後のみならず車幅方向の上述した変位(揺動)を可能としている。
例えば、乗降補助装置1が使用状態P1のときには、第1結合部52Aは図11、図14(a1)(a2)に示すように、第1軸部51cの先端部(自由端部)が車両後方に対して若干車幅方向内側を向くように振られた姿勢で第1自在継手52に保持された状態となる。一方、第2結合部53Aは、乗降補助装置1が使用状態P1のとき、図12、図13(a)に示すように、第2軸部51eの先端部(由端部)が車幅方向外側に対して若干車両下方かつ後方を向くように振られた姿勢で第2自在継手53に保持された状態となる。
また例えば、乗降補助装置1が使用状態P1と収納状態P2の間における所定の移動過程の状態P3のとき、第1結合部52Aは図11、図14(b1)(b2)に示すように、第1軸部51cの先端部が車両後方に対して若干車両上方を向く姿勢で第1自在継手52に保持された状態となる。一方、第2結合部53Aは、乗降補助装置1が上記所定の移動過程の状態P3のとき、図12、図13(b)に示すように、第2軸部51eの先端部が車幅方向外側と略一致する方向を向くように振られた姿勢で第2自在継手53に保持された状態となる。
さらに例えば、乗降補助装置1が収納状態P2のとき、第1結合部52Aは図11、図14(c1)(c2)に示すように、第1軸部51cの先端部が車両上方に対して若干車両前方を向くように振られた姿勢で第1自在継手52に保持された状態となる。一方、第2結合部53Aは図12、図13(c)に示すように、乗降補助装置1が収納状態P2のとき、第2軸部51eの先端部が車幅方向外側に対して若干車両上方かつ前方を向くように振られた姿勢で第2自在継手53に保持された状態となる。
また図5、図6、図10(a)(b)に示すように、上述した慣性力緩和機構40は、揺動アーム41と引張りバネ42と圧縮バネ43とダンパ44とを備えている。
揺動アーム41は図6、図10(a)(b)に示すように、台座部31の上面における、支持部用回動軸部25の側方(当例では車幅方向の内側)に備え、台座部31の上面よりも下方へ延びている。
一方図12に示すように、上述した支持部用回動軸部25に備えた軸26は、支持部下側軸支部22および台座側軸支部33に対して揺動アーム41を有する側(当例では車幅方向の車幅方向内側)へ延設されている。そして図10(a)(b)、図12に示すように、支持部用回動軸部25に備えた軸26の延設部分26aは、該延設部分26aに対して揺動アーム41が軸(26)回りに相対変位不能に、該揺動アーム41の上端部41aに設けた貫通穴401ahに嵌合されている。
これにより、揺動アーム41の上端部41aは、支持部用回動軸部25に備えた軸(26)によって支持部20の車体に対する回動と同軸を成すとともに、該支持部20の車体に対する回動と同期して回動する。
具体的には、揺動アーム41の下端41b(揺動端)は、支持部20が支持部用回動軸部25を中心として前方(すなわち跳上げ位置(P2))へ回動するに伴って車両後方へ回動するとともに(図10(a)参照)、支持部20が支持部用回動軸部25を中心として後方(すなわちシート側部位置(P1))へ回動するに伴って車両前方へ回動するように揺動する。
図10(a)(b)に示すように、引張りバネ42は、揺動アーム41の下端41bより後方に、中心軸が車両前後方向と略一致するように配置されたコイルバネであって、前端が揺動アーム41の下端41bに車幅方向に延びる軸48を介して係止されるとともに後端が台座部31側へ固定されている。引張りバネ42は、揺動アーム41の車両前後方向へ揺動する下端41bが、その揺動範囲R41の後端に位置するとき(図10(a)に示すとき)に自然長となり、図10(b)に示すように、揺動アーム41の下端41bが揺動範囲R41の後端から前方へ回動するに伴って車両前方へ引張られることで車両後方へ付勢される。
ダンパ44は、台座部31に固定されたシリンダ45とシリンダ45に対して突出又は退避可能なピストン46とを備えている。ダンパ44は、中心軸が車両前後方向と略一致するように揺動アーム41の下端41bより前方に配置されている。
さらに、ピストン46の先端部(後端部)には、ピストン46と一体にスライドする可動部材47が一体に設けられており、図10(a)に示すように、ピストン46がシリンダ45に対して突出することで可動部材47が車両後方へスライドするとともに、図10(b)に示すように、ピストン46がシリンダ45内に退避することで可動部材47が車両前方へスライド可能に構成されている。
すなわち、揺動アーム41の下端41bは、その揺動範囲R41の後端から車両前方へ回動する際に、可動部材47を車両前方へ押圧する(図10(b)参照)。これによりダンパ44のピストン46がシリンダ45内に退避する方向にスライドし、結果としてダンパ44には車両後方への制動力が作用する。
圧縮バネ43は、可動部材47の前端とシリンダ45の外周側後端との間において、中心軸がピストン46の中心軸と同軸になるように張架されたコイルバネである。圧縮バネ43は、揺動アーム41の下端41bが、その揺動範囲R41の後端に位置するときに自然長となり、揺動アーム41の下端41bが揺動範囲R41の後端から前方へ回動するに伴って車両前方へ圧縮されることで車両後方へ付勢される。なお、上述した可動部材47は、揺動アーム41の下端41bによる前方への押圧と、圧縮状態の圧縮バネ43の後方への復元力(付勢力)とによって、揺動アーム41の下端41bと共に車両前後方向にスライドする。
慣性力緩和機構40は、上記構成により、跳上げ位置(P2)にある支持部20が支持部用回動軸部25を中心として後方(シート側部位置(P1)の側、すなわち、図10(a)から(b)に示す状態)へ回動しようとした際に、上述したように、揺動アーム41の下端41bが揺動範囲R41の後端位置から前方へ変位することで、引張りバネ42および圧縮バネ43の車両後方への付勢力と、ダンパ44の車両後方への制動力を作用させることができる。
これにより、慣性力緩和機構40は、乗降補助装置1(支持部20)が車両の急加速時の影響等により、収納状態P2(跳上げ位置(P2))にある状態から支持部用回動軸部25を中心として意に反して後方へ変位しないように、収納状態P2に安定して維持することができる。
さらに、慣性力緩和機構40は、乗降補助装置1が収納状態P2から使用状態P1へ移動時に、引張りバネ42および圧縮バネ43の車両後方への付勢力と、ダンパ44の車両後方への制動力を利用することで、乗降補助装置1を収納状態P2から使用状態P1へ移動させる際に乗員が感じる操作感をマイルドにすることができる。
例えば、乗降補助装置1が収納状態P2から使用状態P1へ移動時には、支持部20を、引張りバネ42および圧縮バネ43の付勢力(図10(b)中の太矢印F42,F43参照)に抗して支持部用回動軸部25を中心として後方へ回動させることになるため、乗降補助装置1の上記移動時における、ボード10や支持部20の質量(慣性)の影響を緩和することができる。
一方、慣性力緩和機構40は、乗降補助装置1が使用状態P1から収納状態P2へ移動時においては、引張りバネ42および圧縮バネ43の車両後方への付勢力(図10(b)中の太矢印F42,F43参照)を利用して支持部20を、その後方を持ち上げるようにして支持部用回動軸部25を中心として前方へ回動させることができる。
よって、この場合においても、乗降補助装置1を上述したように収納状態P2から使用状態P1へ移動させる際と同様に、乗員が感じる操作感をマイルドにすることができる。すなわち、引張りバネ42と圧縮バネ43との夫々の復元力(付勢力)によって、支持部20を、シート側部位置(P1)から跳上げ位置(P2)へ回動させる際における前傾姿勢とする動作(支持部20の後部の持ち上げ)を補助することができる。
続いて、本実施形態の乗降補助装置1を使用状態P1から収納状態P2へ移動する際の上述した連動機構50の作用について図7、図8、図11、図12を用いて説明する。
図7に示すように、乗降補助装置1を、使用状態P1から収納状態P2にする際には、支持部20を、支持部用回動軸部25を中心として前方へ、すなわちシート側部位置(P1)から跳上げ位置(P2)へ回動させる。
この支持部20の回動に連動してリンク部材51は、第2結合部53Aを中心として前方へ回動する(図7、図11参照)。
ここで、第2結合部53A(リンク部材51の車両に対する回動中心)と支持部用回動軸部25(支持部20の車両に対する回動中心)は、上述したように、第2結合部53Aが支持部用回動軸部25よりも車両前方に位置するように車両の前後各側にずらしたジオメトリーに設定している(図11参照)。
このため、リンク部材51は、支持部20を前方に倒す程、この支持部20の回動に連動して車両前方へ回動し、これに伴ってボード10を上方かつ車幅方向内方へ徐々に押す(図7、図8参照)。
具体的には図7、図11に示すように、リンク部材51は、支持部20を前方に倒す程、車両側面視で上方ほど車両後方に位置する傾斜姿勢から徐々に起立しようとするため、ボード10と車体との間で突張るように介在する。このようなリンク部材51によって、ボード10は図8、図12に示すように、ボード用回動軸部15を中心として支持部20に対して車幅方向内側に回動するように押し上げられる。
さらに上述したように、第1結合部52Aにおいてリンク部材51の第1軸部51cは、第1自在継手52を介してボード10に結合されるとともに、第2結合部53Aにおいてリンク部材51の第2軸部51eは、第2自在継手53を介して台座部31の上面に結合されている(図11、図12参照)。このため、リンク部材51は、支持部20を前方へ倒すほど車幅方向にも回動(揺動)することが可能となる。
すなわち、リンク部材51は、直線部51aの上部が車両後方から前方のみならず車幅方向の内側から外側へ変位するように回動することで、上述したように、ボード10を、ボード用回動軸部15を支点として支持部20に対して車幅方向内側へ回動するように押し上げることができる(同図参照)。
換言すると、第2結合部53A(リンク部材51の車体に対する回動中心)と支持部用回動軸部25(支持部20の車体に対する回動中心)は、上述したように、車両の前後各側にずらしたジオメトリーに設定されている。このため、乗降補助装置1を使用状態P1から収納状態P2へ移動させる際に、このようなジオメトリーに基づくリンク部材51と支持部20との夫々が車体に対して回動したときの回動軌跡の差異を、リンク部材51がボード10を押し上げつつ、該リンク部材51の直線部51aの上部が車幅方向内側から外側へ徐々に傾斜(変位)することにより吸収することができる。
従って、乗降補助装置1を使用状態P1から収納状態P2へ移動途中において、支持部20およびボード10とリンク部材51とが抉ることがなく連動し、スムーズにこれらが回動し、結果としてボード10を支持部20に対して車幅方向内側へ回動するように押し上げる。
なお、乗降補助装置1を収納状態P2から使用状態P1(上述とは逆方向)へ移動する際には、支持部20およびボード10とリンク部材51とは、夫々上述した使用状態P1から収納状態P2へ移動する際の動作と逆の動作をするため、その説明を省略する。
続いて、下肢が不自由な乗員が車両乗降時に、乗降補助装置1を用いて運転席104と車椅子(図示省略)との間で移乗する手順の一例について説明する。
特に、乗降補助装置1が収納状態P2であるとともにサイドドア112が閉まっている状態から乗員が車両乗降時に運転席104から車椅子へ移乗する手順の一例について主に図15(a)を用いて説明する。但し図15(a)中に示す乗員JMは、日本人の中でも体格の大きな人物を設定しており、乗員JMの胴体(臀部)と右脚のみを図示している。
運転席104に着席した状態の乗員は、サイドドア112を開け、車室内における、自身の手が届く場所に折り畳む等して収納していた車椅子を、乗車可能な形態にするとともに運転席104に対して車幅方向外側の車室外側へドア開口部110越しに横付けした状態にセットする。
ここで、サイドドア112閉時においては、乗降補助装置1は上述したように、収納状態P2でサイドドア112に設けたアシストグリップ114a等の突設部114により後方への変位が規制されているが(図9参照)、上述したように、サイドドア112を開けることで、突設部114による規制が解除される。
よって、乗員は、運転席104に着席した状態で、収納状態P2の乗降補助装置1の支持部20に設けた把持部24を把持し、後方へ倒すように回動させることで、乗降補助装置1を使用状態P1とすることができる。
具体的には、乗降補助装置1は、支持部20を、運転席104と車椅子との間の位置、すなわちシート側部位置(P1)に配置するとともに、ボード10を水平姿勢(P1)とすることができる(図1、図3、図4参照)。
そして、乗員JMは、身体(上半身)を図15(a)中において太仮想線に示した状態から運転席104のシートバック104bに預けた状態で、詳しくは、上半身をシートバック104bに沿わせながらシートクッション104aの座面の車幅方向の外側寄りの位置(ボード10を有する側)へ臀部を若干スライドさせ、シートバック104bの両サイドに備えたサイドサポート104baのうち、右側(車幅方向外側)に備えたサイドサポート104baに身体を預ける(図15(a)中の領域X参照)。
さらに乗員JMは、図15(a)中において実線で示したように、サイドサポート104baに身体を預けた状態で臀部を支点として略車両前方を向く脚部(大腿部)を、車両平面視で時計回りに回動させながら車室外側へと回動させる動作を行う(図15(a)中の白抜きの矢印参照)。
上述した一連の脚抜き動作の後、乗員JMは、ボード10における、手つき領域としての幅狭領域10Fに手をついた状態で運転席104から臀部を若干浮かせた状態で上半身をボード10の側へと移動させ、臀部をボード10の例えば幅広領域10Rに仮置きする(図示略)。
さらに、乗員JMは、ボード10における、手つき領域に手をついた(置いた)状態で、臀部をボード10の幅広領域10Rから車椅子のシートへと移動して該車椅子のシートに着席することができる。
ここで、図15(a)中の一点鎖線で示した軌道RJMは、乗員JMの脚抜き動作の際の膝裏JMaの平面視における軌道を示している。この軌道RJMから明らかなとおり、当例においてはボード10の前側部位を幅狭領域10Fとして形成したため、乗員JMがシートバック104bに身体を預けた(当接した)状態で上述した脚抜き動作を行っても乗員JMの膝裏JMaがボード10(特にボード10の前縁10cや車幅方向外縁10b(図4参照))に干渉することなくスムーズに行うことができる。
図15(b)は、日本人の中でも小柄な乗員JFが上述した脚抜き動作を行う様子を図15(a)に対応して示している。
図15(b)に示すように、小柄な乗員JFの場合、大柄な乗員JMと比して運転席104の位置(ドライビングポジション)が、より前方の位置に設定される。
なお、図15(b)中の仮想線で一部を示した運転席104の位置は、図15(a)の運転席104の位置を示している。
図15(b)に示すように、小柄な乗員JFの場合、上述した大柄な乗員JMの場合と比してドライビングポジションが前方に設定されるが、図15(b)中の、小柄な乗員JFが脚抜き動作を行った際の膝裏JFaの、平面視における軌跡RJFが示すように、この場合においても、小柄な乗員JFの脚抜き動作の際に、膝裏JFaがボード10に干渉することなくスムーズに行うことができる。
すなわち、乗員の体格や運転席104のドライビングポジションの違いに関わらず、脚抜き動作の際に、膝裏がボード10に干渉することなくスムーズに行うことができる。
なお、乗降補助装置1を使用状態P1から収納状態P2へ移動させた後は、乗員はサイドドア112を閉めることができる。
また図示省略するが、乗車時に乗降補助装置1が収納状態P2であるとともにサイドドア112が閉まっている状態から乗員が車椅子から運転席104へ移乗する手順の一例について説明する。
乗員は、サイドドア112を開け、運転席104に対して車幅方向外側へドア開口部110越しに横付けした車椅子に乗車した状態で、上述したように乗降補助装置1を収納状態P2から使用状態P1へ移動させる。
このような作業は、例えば、乗員が、車椅子に着席した状態で車両外側からドア開口部110越しに乗降補助装置1の側へと手を伸ばし、適宜、支持部20の枠状部材21の所定箇所を把持する等して支持部20を後方へ倒すように回動させることで行うことができる。
さらに、乗員は、水平姿勢(P1)のボード10における、幅狭領域10Fに手をついた状態で、手をついた側の腕で身体を支持しつつ、車椅子のシートからボード10の側へと上半身を移動させ、臀部をボード10の例えば幅広領域10Rに仮置きする。これにより、乗員は、脚部(大腿部)が車両前方かつ車幅方向外側を向いた姿勢で、臀部を、ボード10の幅広領域10Rにおける、臀部一時預け領域SR(図4参照)に仮置きすることができる。
その状態から乗員は、ボード10における、手置き領域としての幅狭領域10Fに手をついた状態でボード10から臀部を若干浮かせた状態で上半身を運転席104の座面の側へと移動させる。
さらにその状態から乗員は、運転席104の座面上に位置する臀部を支点として、脚部(大腿部)を車両平面視で反時計回りに回動させながら運転席104前方の空間に脚を入れ込む動作(以下、「脚入れ動作」と称する)を行うことで運転席104に着席することができる。
上述した本実施形態の乗降補助装置1は、図1~図4に示すように、車両のドア開口部110に隣接した運転席104のシートクッション104a(シート)の車幅方向外側に、略水平となる水平姿勢(P1)(使用状態P1)(図1参照)と、車室内で車幅方向に略直交する直交姿勢(P2)(収納状態P2)(図2参照)との間で移動可能なボード10を備えた車両用乗降補助装置であって、図1、図3に示すように、シートクッション104aの車幅方向外側に位置するシート側部位置(P1)においてボード10を下方から支持する支持部20を有し、図1、図4、図6に示すように、ボード10は、水平姿勢(P1)における車両平面視で、前側部位に後側部位よりも後方から前方にかけて車両前方に向かって幅狭となる幅狭領域10Fを有して形成され、図3~図7に示すように、支持部20は、ボード10の車両前後方向における少なくとも幅狭領域10Fに対応する箇所に設けたものである。
上記構成によれば、支持部20を、ボード10の車両前後方向における少なくとも幅狭領域10Fに対応する箇所に設けたため、支持部20は、ボード10の車両前後方向における少なくとも幅狭領域10Fを、直下から支持することができる。
よって、ボード10の前方部分の幅狭領域10Fは、乗員(例えば下肢障害者)が車椅子と運転席104との間をボード10を介して移乗時に、手つき領域として利用することができる。しかもその際、ボード10には、乗員の手から種々の方向から荷重が加わるが、該荷重に対する支持剛性を確保できる。
さらに上述したように、ボード10の幅狭領域10Fは、水平姿勢(P1)における車両平面視で、該幅狭領域10Fよりも後側に位置する部位と比して幅狭に形成したため、車両平面視でコンパクトであり、運転席104と車椅子との間の移乗時に、乗員の脚部の移動動作(所謂脚抜き動作や脚入れ動作)をスムーズに行うことができる(図15(a)(b)参照)。
要するに、ボード10の幅狭領域10Fを手つき領域としての支持剛性を確保できつつ、移乗時に、乗員の脚部の移動をスムーズに行うことができる。
加えて、ボード10は、支持部20に対してボード用回動軸部15を介して片持ち状に支持されるが、手つき領域を幅狭領域10Fとして形成することで、片持ち状の幅狭領域10Fからボード用回動軸部15に加わるモーメント荷重を抑制できる。従って、ボード10の車両前後方向の全体に亘ってボード用回動軸部15の支持剛性を高く形成する場合と比して重量増加を抑制することができる。
この発明の態様として図1~図7に示すように、支持部20は、運転席104のシートクッション104aの車幅方向外側に位置するシート側部位置(P1)(図1参照)と、該シート側部位置(P1)よりも前方に跳ね上げられた跳上げ位置(P2)(図3参照)との間で車幅方向に延びる軸(26)回りに回動可能に基台30に軸支され、ボード10は図1、図2、図6、図7に示すように、支持部20がシート側部位置(P1)に位置するときには水平姿勢(P1)となるとともに(図1参照)、支持部20が跳上げ位置(P2)に位置するときには直交姿勢(P2)となるよう(図2参照)車幅方向に直交する軸(16)回りに支持部20に対して回動可能に支持される構成としたものである。
上記構成によれば、乗降補助装置1を不使用時には車体から取り外すことなくサイドドア112の開閉を妨げないように収納状態P2とすることができる。
この発明の態様として図5、図6に示すように、支持部20の前端20fは、ボード10の車幅方向内縁10aの前端10afに対応する位置まで設けられたものである。
上記構成によれば、幅狭領域10Fには手つき領域として様々な方向からの荷重が加わるが、支持部20をボード10の前端10afに対応する位置まで設けることで、このような荷重に対してしっかりと支持することができる。
換言すると、支持部20は、ボード10の前端10afよりも前方へ突き出さないため、乗員の脚部の移動動作(所謂脚抜き動作や脚入れ動作)の際に、乗員の膝裏が支持部20に干渉することなくスムーズに移動させることができる(図15(a)(b)参照)。
この発明の態様として図1、図4、図6に示すように、ボード10は、後側部位に、水平姿勢(P1)における車両平面視で、幅狭領域10Fよりも幅広となる幅広領域10Rを有して形成され、図4に示すように、幅狭領域10Fは、直径が約80mmの円形領域CRが含まれるように該円形領域CRに対して若干大きな大きさで形成されるとともに、幅広領域10Rは、車両前後方向の長さが約220mmかつ車幅方向の長さが約110mmの長方形領域SRが含まれるように該長方形領域SRを覆う形状として形成されたものである。
上記構成によれば、ボード10の幅狭領域10Fを上記大きさで形成することで、上述したように、乗員(例えば下肢障害者)が車椅子と運転席104との間をボード10を介して移乗時に、乗員の手つき領域として必要十分な大きさを確保できつつ、膝裏等の脚がボード10に干渉することなく、スムーズに上述した所謂脚抜き動作や脚入れ動作を行うことができる。
しかも、ボード10の幅狭領域10Fを、上記大きさで形成することで、幅狭領域10Fに乗員が手をついたとき、手の平をボード10の上面で支持しつつ、ボード10の周縁(前縁10c、車幅方向内縁10a、或いは、車幅方向外縁10b)を指で掴むことができる大きさとすることができる。すなわち、幅狭領域10Fは、上記大きさで形成することで、乗員が様々な方向から安定して手をつくことができる。
一方、ボード10の幅広領域10Rを上記大きさで形成することで、上述したように、乗員(例えば下肢障害者)が車椅子と運転席104との間をボード10を介して移乗時に、乗員の臀部を仮置き可能な大きさを確保することができる。
具体的には、ボード10の幅広領域10Rを上記大きさで形成することで、乗員の臀部に有する左右一対からなる坐骨間の間隔よりも大きなスペースを確保できるため、幅広領域10Rは、乗員の臀部(左右一対からなる坐骨間およびその周辺部)をしっかりと支持することができる。
また、ボード10の幅広領域10Rを極力大きくするのではなく、上記大きさで形成することで、ボード10を直立姿勢とした際に、周辺に有するドアトリム113等と干渉することなくコンパクトに収納することができる。
この発明の態様として図9に示すように、直交姿勢(P2)のボード10に対して水平姿勢(P1)の側への近傍位置(すなわち後方近傍位置)に、ドア開口部110を開閉するサイドドア112(ドア)のドアトリム113(車幅方向の内壁)において車幅方向内側へ突設された例えば、アシストグリップ114a等の突設部114が、サイドドア112によってドア開口部110が閉時において配置される構成としたものである。
上記構成によれば、サイドドア112閉時において、跳上げ位置(P2)に位置する支持部20がシート側部位置(P1)へ回動する際に、直交姿勢(P2)のボード10がアシストグリップ114a等の突設部114に当接することにより、支持部20がシート側部位置(P1)へ意に反して回動することを規制することができる。
特に上述したように、ボード10は、水平姿勢(P1)における車両平面視で、前側部位に幅狭領域10Fを有するとともに後側部位に幅広領域10Rを有する構成としたため、ボード10を直交姿勢(P2)とした際には、幅狭領域10Fがボード10の下側部位、幅広領域10Rがボード10の上側部位に位置することになる(図2、図7、図9参照)。この場合、車両前後方向の全体を幅狭に形成する場合と比してボード10の重心が高くなりがちである。
これに対して本実施形態においては、上述したように、アシストグリップ114aにより、跳上げ位置(P2)に位置する支持部20がシート側部位置(P1)へ回動することを規制する構成としたため、走行中の車両前後方向の力(慣性力)により、意に反して支持部20がボード10共にシート側部位置(P1)へと回動することを確実に防ぐことができる。
この発明の態様として図5、図6、図10(a)(b)に示すように、支持部20と基台30(車体)との間に、慣性力緩和機構40、具体的には、支持部20をシート側部位置(P1)から跳上げ位置(P2)へ付勢する付勢手段としての引張りバネ42および圧縮バネ43と、跳上げ位置(P2)からシート側部位置(P1)への変位速度を制動する制動手段としてのダンパ44とを備えたものである。
上述したように、ボード10は、水平姿勢(P1)における車両平面視で、前側部位に幅狭領域10Fを有するとともに後側部位に幅広領域10Rを有する構成としたため、直交姿勢(P2)としたとき、重心が高くなりがちであるが、その場合においても、車両の急な加減速によって跳上げ位置(P2)に位置する支持部20が意に反してシート側部位置(P1)の側へ倒れないように支持部20を跳上げ位置(P2)に留めておくことができる。
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
例えば、本発明は、車両シートとして運転席104を採用したが、ドア開口部110に隣接するシートであれば、運転席104に限らず、助手席等他の車両シートを採用してもよい。
また、第1自在継手52および第2自在継手53として、当例ではボールジョイントを採用しているが、これに限らず、カルダンジョイント、ツェッパジョイントなどと称される公知の各種の自在継手(ユニバーサルジョイント)を採用しもてよい。
また上述した実施形態においては、支持部20は、跳上げ位置(P2)と、該跳上げ位置(P2)よりも前方に跳ね上げられた跳上げ位置(P2)との間で回動可能な実施形態であったが、本発明は、これに限定せず、跳上げ位置(P2)と、該跳上げ位置(P2)よりも後方に設定された跳上げ位置(P2)との間で回動可能な構成を採用してもよい。
また、この発明の上述した実施形態の変形例として図16に示すように、支持部20は、その車両前後方向の略全体が、ボード10の車両前後方向の幅狭領域10Fに対応する部位に設けられた構成としてもよい。
上記構成によれば、換言すると、支持部20は、ボード10の水平姿勢(P1)において、平面視したとき、幅狭領域10Fよりも後側部位(すなわち幅広領域10R)に対応する箇所に略設けない構成とすることができる。
これにより図16に示すように、ボード10を直交姿勢(P2)としたとき、ボード10の上部の直後方には、支持部20が存在しない。すなわちボード10を直交姿勢(P2)としたとき、ボード10の後方に位置する支持部20の高さが高くならないようにコンパクトにできるため、乗降補助装置1が収納状態P2において、乗員の足周りのスペースをより確保することができる。