JP7473406B2 - SiC/SiC複合材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、SiC繊維により強化されたSiC/SiC複合材の製造方法に関する。
SiC/SiC複合材は、耐熱性、強度、靱性を備えているので、高温炉、原子炉、ガスタービンの部材など、様々な分野で利用が期待されている。
SiC/SiC複合材は、SiCからなる母材(マトリックス)と、SiC繊維を含む骨材とを組み合わせた部材である。母材として使用されるSiCは、耐熱性、強度を備えているものの、弾性率が高いという特徴を有しているため、脆い素材である。そこで、セラミックよりなる母材(マトリックス)に、骨材としてセラミック繊維を複合させることにより、セラミックの母材の弱点である脆性を改良した種々のSiC/SiC複合材が提案されている。
このようなSiC/SiC複合材の製造方法の1つとして、ポリマー含浸法(PIP法:Polymer Infiltration and Pyrolysis)がある。PIP法とは、SiC繊維からなる骨材に、SiC前駆体を含浸し、焼成する方法である。PIP法によると、液状のSiC前駆体を骨材に含浸させるため、厚さがある骨材であっても液状のSiC前駆体を内部まで浸透させることができ、所望の厚さを有するSiC/SiC複合材を得ることができる。
例えば、特許文献1には、酸素含有量が1.0wt%以下の炭化ケイ素系セラミック繊維の織布等の構成体に、ポリカルボシランのキシレン等の有機溶剤にSiC粉末を混合した組成物を含浸した後、ハンドレイアップ法で成形するか又は加熱加圧成形した後、10~15MGyの電子線を照射し、含浸充填物を不融化して、焼成し、さらに、緻密化のために溶融ポリカルボシランを含浸し、又はポリカルボシランのキシレン等の有機溶剤にSiC粉末を混合した組成物を含浸し、電子線照射、焼成する工程を繰り返す酸素含有量が1.0wt%以下のSiC繊維強化SiC複合材料の製造方法が提案されている。上記特許文献によると、緻密化のための効率を高め、マトリックス成分の不融化、焼成の工程での吹き出しも生じない、工程上のメリットが高いSiC/SiC複合材料を得ることができることが記載されている。
特開平11-12038号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載のSiC/SiC複合材料の製造方法によると、固体であるポリカルボシランをキシレンに溶かした溶液を骨材に含浸させるため、この溶液が高濃度であると、不融化に先立ってキシレンを乾燥させる際に、溶媒の蒸発とともに溶液の粘度が上昇し、含浸されたポリカルボシランが吹き出して流出しやすくなるという問題点がある。
一方、溶液が低濃度であると、歩留まりが悪く、骨材内部に含浸させる溶液中のポリカルボシランが少量となる。
本発明は、上記課題を鑑み、SiC繊維からなる骨材の内部に効率よくSiC前駆体を含浸させることができるとともに、硬化工程等の工程において、骨材の外部にSiC前駆体が吹き出すことなく、高い効率で緻密なSiC/SiC複合材を得ることができるSiC/SiC複合材の製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的は、本発明に係る下記(1)のSiC/SiC複合材の製造方法により達成される。
(1) SiC繊維を含む骨材を、アリルハイドライドポリカルボシランと、SiC粒子とを含有するスラリーに含浸させて第1含浸体を得る第1含浸工程と、
前記第1含浸体を加熱し、硬化させて第1硬化体を得る第1硬化工程と、
前記第1硬化体を焼成する第1焼成工程と、
を有することを特徴とするSiC/SiC複合材の製造方法。
本発明のSiC/SiC複合材の製造方法によれば、骨材に含浸させるスラリーとして、アリルハイドライドポリカルボシランと、SiC粒子とを含有するスラリーを使用している。アリルハイドライドポリカルボシランは、もともと液状であり希釈するための溶媒が不要である上に、SiC粒子とともにマトリックスを生成するため、少量のアリルハイドライドポリカルボシランで含浸しやすい粘度でありながら歩留まりの高いスラリーを得ることができる。
また、スラリーは、アリルハイドライドポリカルボシランの数平均分子量、並びにSiC粒子の含有量及び平均粒子径等を調整するのみで、所望の粘度に調整することができるため、スラリーを骨材の内部に容易に含浸させることができる。
さらに、アリルハイドライドポリカルボシランは重合反応において、水や炭酸ガスなどの副生成物を生じないため、第1硬化工程等において、溶媒及び副生成物等の蒸発によって、骨材からスラリーが噴出することを抑制することができるとともに、製造されるSiC/SiC複合材の内部に気泡が残存することを抑制することができ、緻密なSiCマトリックスを得ることができる。
また、アリルハイドライドポリカルボシランは、ポリカルボシランと比較して焼成後の歩留まりが高いため、骨材に含浸された前駆体から効率よくSiCマトリックスを得ることができる。
また、本発明に係るSiC/SiC複合材の製造方法は、下記(2)~(13)であることが好ましい。
(2) 前記SiC粒子の平均粒子径は0.1μm以上10μm以下である(1)に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
SiC粒子の平均粒子径が0.1μm以上であると、少量のアリルハイドライドポリカルボシランで含浸しやすい粘度のスラリー1aが得られるため、焼成後の歩留まりを高めることができる。一方、SiC粒子の平均粒子径が10μm以下であると、含浸工程において、骨材2を構成するSiC繊維にトラップされることなく、骨材2の内部までスラリー1aを含浸させやすくすることができる。
(3) 前記スラリーの質量に対する前記SiC粒子の含有量は、5質量%以上70質量%以下であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
スラリーの質量に対するSiC粒子の含有量を70質量%以下とすることにより、スラリーの粘度を下げることができ、骨材の内部までスラリーを含浸させやすくすることができる。一方、スラリーの質量に対するSiC粒子の含有量を5質量%以上とすることにより、焼成により重量が減少するアリルハイドライドポリカルボシランの含有量を減らすことができるので、マトリックス前駆体の歩留まりを高めることができる。
(4) 前記第1硬化工程は、前記第1含浸体を150℃以上400℃以下の温度まで加熱する工程であることを特徴とする(1)~(3)のいずれか1つに記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
第1硬化工程の加熱温度を150℃以上とすることにより、アリルハイドライドポリカルボシランの重合反応が促進され、後の第1焼成工程において、骨材から低分子量成分、溶存ガスの気化によってスラリーが噴出することを防止することができる。一方、第1硬化工程における加熱温度を400℃以下とすることにより、脱水素反応などの急激なガス発生を伴う反応が起こりにくいので、骨材からスラリーが噴出することを防止することができる。
(5) 前記第1焼成工程における焼成温度は、1000℃以上1500℃以下であることを特徴とする(1)~(4)のいずれか1つに記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
焼成温度を1000℃以上とすることにより、アリルハイドライドポリカルボシランの分解反応が十分に起こり、焼成反応による変形を防止することができる。一方、焼成温度を1500℃以下とすることにより、得られる焼成体の熱による損傷を防止することができる。
(6) 前記スラリーは重合禁止剤を含有することを特徴とする(1)~(5)のいずれか1つに記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
スラリーが重合禁止剤を含有していると、アリルハイドライドポリカルボシランに含有されるラジカル種を安定化させ、酸化反応を防止することができるので、加熱による重合が進行し始めるまで酸化反応を抑制し、副反応による気泡の発生を防止することができる。
(7) 前記重合禁止剤の含有量は、前記スラリー中におけるアリルハイドライドポリカルボシランの質量に対して、0.1質量%以上2質量%以下である(6)に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
重合禁止剤の含有量が、スラリー中におけるアリルハイドライドポリカルボシランの質量に対して0.1質量%以上であると、アリルハイドライドポリカルボシランに発生するラジカル種を十分に除去することができる。一方、重合禁止剤の含有量が、スラリー中におけるアリルハイドライドポリカルボシランの質量の2質量%以下であると、重合禁止剤自体は歩留まりの向上に寄与しないため、歩留まり低下への影響を少なくすることができる。
(8) 前記第1焼成工程の後に、前記第1焼成工程により得られた焼成体を、アリルハイドライドポリカルボシランを含有する含浸液に含浸させて第2含浸体を得る第2含浸工程と、
前記第2含浸体を加熱し硬化させて第2硬化体を得る第2硬化工程と、
前記第2硬化体を焼成する第2焼成工程と、
を有することを特徴とする(1)~(7)のいずれか1つに記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
第1焼成工程により得られた焼成体を、アリルハイドライドポリカルボシランを含有する含浸液に含浸させる第2含浸工程を実施することにより、第1焼成工程により得られた焼成体に残存する気孔に、アリルハイドライドポリカルボシランを充填することができるため、第2硬化工程及び第2焼成工程においてアリルハイドライドポリカルボシランが噴出することなく、更に緻密で高強度のSiC/SiC複合材を製造することができる。
(9) 前記第2硬化工程における加熱温度は、150℃以上400℃以下であることを特徴とする(8)に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
第2硬化工程における加熱温度を、第1硬化工程における加熱温度と同じ温度領域で実施することにより、同様の効果を得ることができる。
(10) 前記第2焼成工程における焼成温度は、1000℃以上1500℃以下であることを特徴とする(8)又は(9)に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
前記第2焼成工程における焼成温度を、第1焼成工程における焼成温度と同じ温度領域で実施することにより、同様の効果を得ることができる。
(11) 前記含浸液は重合禁止剤を含有することを特徴とする(8)~(10)のいずれか1つに記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
含浸液もアリルハイドライドポリカルボシランを含有しているため、含浸液が重合禁止剤を含有していると、第1含浸工程におけるスラリーが重合禁止剤を含有している場合と同様の効果を得ることができる。
(12) 前記重合禁止剤の含有量は、前記含浸液中におけるアリルハイドライドポリカルボシランの質量に対して、0.1質量%以上2質量%以下である(11)に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
第2含浸工程において含浸液が重合禁止剤を含有する場合に、重合禁止剤の好ましい含有量は、含浸液中のアリルハイドライドポリカルボシランの質量によって決定される。重合禁止剤の含有量が上記範囲内であると、アリルハイドライドポリカルボシランに発生するラジカル種を十分に除去することができるとともに、歩留まり低下への影響を少なくすることができる。
(13) 前記重合禁止剤は、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤及びヒンダートアミン系光安定剤から選択された少なくとも1種であることを特徴とする(6)、(7)、(11)及び(12)のいずれか1つに記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
上記の重合禁止剤は、アリルハイドライドポリカルボシランのラジカル種の安定に好適に利用することができる。
本発明に係るSiC/SiC複合材の製造方法によれば、骨材に含浸させるスラリーとして、アリルハイドライドポリカルボシランと、SiC粒子とを含有するスラリーを使用しているため、溶媒が不要である上に、容易に所望の粘度に調整することができるため、スラリーを骨材の内部に容易に含浸させることができる。
また、アリルハイドライドポリカルボシランを硬化させる第1硬化工程等において、溶媒及び副生成物等の蒸発によって、骨材からスラリーが噴出することを抑制することができるとともに、製造されるSiC/SiC複合材の内部に気泡が残存することを抑制することができ、緻密なSiCマトリックスを得ることができる。更に、アリルハイドライドポリカルボシランは、焼成後の歩留まりが高いため、骨材に含浸された前駆体から効率よくSiCマトリックスを得ることができる。
図1は、本発明の第1実施形態に係るSiC/SiC複合材の製造方法を示す工程フロー図である。 図2は、本発明の第1実施形態に係るSiC/SiC複合材の製造方法を模式的に示す断面図である。 図3は、本発明において使用されるアリルハイドライドポリカルボシランの化学構造を示す図である。 図4は、アリルハイドライドポリカルボシランが重合する反応式を示す図である。 図5は、従来のSiC/SiC複合材の製造方法を模式的に示す断面図である。 図6は、本発明の第2実施形態に係るSiC/SiC複合材の製造方法を示す工程フロー図である。 図7は、実施例1に係る製造方法により得られたSiC/SiC複合材の断面を示す図面代用写真である。 図8は、比較例1に係る製造方法により得られたSiC/SiC複合材の断面を示す図面代用写真である。
本発明者は、SiC繊維を含む骨材の内部に、効率よくSiC前駆体を含浸させることができるとともに、硬化工程等の工程において、骨材の外部にSiC前駆体が吹き出すことなく、高い効率で緻密なSiC/SiC複合材を得ることができるSiC/SiC複合材の製造方法を得るために鋭意検討を行った。その結果、SiC繊維を含む骨材を、アリルハイドライドポリカルボシランと、SiC粒子とを含有するスラリーに含浸させた含浸体を得ることが重要であることを見出した。すなわち、上記スラリーは粘度の調整が容易であるとともに、溶媒を含有させる必要がないため、硬化工程等において骨材の内部のスラリーを外部に流出させることなく硬化させることができる。
本発明はこのような知見に基づくものであり、以下において本発明の実施形態に係るSiC/SiC複合材の製造方法について詳細に説明する。
なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。また、本願明細書において、数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
〔SiC/SiC複合材の製造方法〕
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るSiC/SiC複合材の製造方法を示す工程フロー図である。また、図2は、本発明の第1実施形態に係るSiC/SiC複合材の製造方法を模式的に示す断面図である。
<STEP1:骨材の準備>
STEP1において、骨材を準備する。骨材2は、SiC繊維4を束ねたストランド5を、縦糸及び横糸として織り込むことにより織布6を形成し、得られた織布6を複数枚積層することにより構成されている。
<STEP2:第1含浸工程>
STEP2において、骨材2を、アリルハイドライドポリカルボシランと、SiC粒子とを含有するスラリー1aに含浸させて、第1含浸体3を得る。本実施形態において、スラリー1aの質量に対するSiC粒子の含有量は、例えば60質量%とし、重合禁止剤の含有量は、例えば1.0質量%とし、SiC粒子の平均粒子径は、例えば0.6μmとする。
SiC前駆体であるアリルハイドライドポリカルボシランはもともと液状であり、希釈するための溶媒が不要であるとともに、SiC粒子とともにマトリックスを生成するため、少量のアリルハイドライドポリカルボシランで含浸しやすい粘度でありながら歩留まりの高いスラリー1aを得ることができる。また、後の焼成工程において、分解された低分子量成分の蒸発によって、スラリー1aが骨材2から噴出することを抑制することができる。なお、アリルハイドライドポリカルボシラン及びSiC粒子については、後に詳述する。
なお、スラリー1aを骨材2の内部まで含浸させる方法としては、骨材2を真空雰囲気下に配置し、骨材2の内部のガスを除いた後、加圧によりスラリー1aを骨材2の内部まで浸透させる減圧加圧含浸法を使用することが好ましい。減圧加圧含浸法を適用することにより、骨材2の内部に容易に隙間なくスラリー1aを含浸させることができる。
<STEP3:第1硬化工程>
次に、STEP3において、第1含浸体3を加熱して、骨材2に含浸されたスラリー1a中のアリルハイドライドポリカルボシランの重合を促進し、重合体1bを生成させて、第1硬化体7を得る。この第1硬化工程を実施することにより、後の焼成工程でアリルハイドライドポリカルボシランの分解ガスが発生して、内圧が上がった場合であっても、スラリー1aが骨材2の外部に流出しないようにすることができる。
第1硬化工程における加熱条件としては、昇温速度を例えば、60℃/分とし、加熱温度(保持温度)を200℃とする。ただし、第1硬化工程における加熱温度はこれに限定されず、150℃以上400℃以下の温度まで加熱することが好ましい。
第1硬化工程の加熱温度を150℃以上とすることにより、アリルハイドライドポリカルボシランの重合反応が促進され、後の第1焼成工程において、骨材2から低分子量成分、溶存ガスの気化によってスラリー1aが噴出することを防止することができる。一方、第1硬化工程における加熱温度を400℃以下とすることにより、脱水素反応などの急激なガス発生を伴う反応が起こりにくいので、骨材2からスラリー1aが噴出することを防止することができる。
<STEP4:第1焼成工程>
次に、STEP4において、第1硬化体7を焼成することにより、上記第1硬化工程により硬化したアリルハイドライドポリカルボシランの重合体1bをセラミック化して、SiC粒子とともにSiCマトリックス1cを形成し、目的とするSiC/SiC複合材(第1焼成体8)を得る。
上記第1焼成工程では、温度の上昇に伴って、アリルハイドライドポリカルボシランの重合体1bの熱分解反応が起こり、モノマー、炭化水素及び水素等の低分子量成分が生成される。
第1焼成工程における焼成温度は、例えば、1200℃とする。ただし、第1焼成工程における焼成温度はこれに限定されず、例えば1000℃以上1500℃以下とすることが好ましい。焼成温度を1000℃以上とすることにより、アリルハイドライドポリカルボシランの分解反応が十分に起こり、焼成反応による変形を防止することができる。一方、焼成温度を1500℃以下とすることにより、得られる焼成体の熱による損傷を防止することができる。
なお、上記第1含浸工程、第1硬化工程、第1焼成工程の後に、第1焼成工程により得られた焼成体に、更に上記第1含浸工程、第1硬化工程、第1焼成工程を複数回繰り返して実施してもよい。含浸工程、硬化工程及び焼成工程を繰り返すことにより、SiCマトリックスをより緻密化することができる。
続いて、上記第1実施形態における第1含浸工程で使用されるスラリー1aについて、詳細に説明する。
<スラリー>
スラリー1aは、アリルハイドライドポリカルボシランと、SiC粒子と、を含有する。
本実施形態において、スラリー1aの質量に対するSiC粒子の含有量は特に限定されないが、例えば5質量%以上70質量%以下とすることが好ましい。
スラリー1aの質量に対するSiC粒子の含有量を70質量%以下とすることにより、スラリーの粘度を下げることができ、骨材2の内部までスラリー1aを含浸させやすくすることができる。一方、スラリー1aの質量に対するSiC粒子の含有量を5質量%以上とすることにより、焼成により重量が減少するアリルハイドライドポリカルボシランの含有量を減らすことができるので、マトリックス前駆体の歩留まりを高めることができる。
(アリルハイドライドポリカルボシラン)
図3は、本発明において使用されるアリルハイドライドポリカルボシランの化学構造を示す図である。
アリルハイドライドポリカルボシランは、[SiH-CH]の繰り返しからなる構造単位U1と、構造単位U1におけるSiに結合する水素をアリル基に置換した構造単位U2との共重合体である。全体に占める構造単位U2の比率はkであり、nは重合度(重合したモノマーの数)である。例えば、k=0.1、n=100であれば、構造単位U2が10個、構造単位U1が90個であって、重合度が100であるアリルハイドライドポリカルボシランを表す。
なお、側鎖にアリル基を有する構造単位U2は、重合の過程でゲル化を進行させる。このため、構造単位U2が多いほどゲル化しやすくなる。
図4は、アリルハイドライドポリカルボシランが重合する反応式を示す図である。
硬化工程におけるアリルハイドライドポリカルボシランの硬化は、図4に示す重合反応によって起こる。硬化工程において第1含浸体3を加熱することにより、図3に示す構造単位U2の側鎖であるアリル基がラジカル重合し、アリルハイドライドポリカルボシランの側鎖が架橋した構造となってゲル化する。なお、アリルハイドライドポリカルボシランは、図4に示す重合反応において、水や炭酸ガスなどの副生成物を生じないので、重合に伴って、骨材2に含浸されたスラリー1aが骨材の外に噴出する吹き出す作用は生じにくい。
上記第1実施形態において、全体に占める構造単位U2の比率kは0.1としたが、本発明においては特に限定されず、例えば構造単位U2の比率kが0.03~0.3であるアリルハイドライドポリカルボシランを使用することが好ましく、比率kが0.08~0.12であるアリルハイドライドポリカルボシランを使用することがより好ましい。比率kが上記範囲であると、後の焼成工程を経て得られるSiCマトリックスのC/Siを好適な範囲に調整することができる。
構造単位U1と構造単位U2の共重合の形態は特に限定されず、交互共重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体などどのようなものであってもよい。
本発明において、アリルハイドライドポリカルボシランの数平均分子量は特に限定されないが、例えば800~2000の数平均分子量を有するアリルハイドライドポリカルボシランを使用することが好ましい。数平均分子量が800以上であると、スラリー1aの粘度を所望の値以上となるように調整することができ、後の硬化工程において加熱しても、スラリー1aが骨材から流出しにくい。また、アリルハイドライドポリカルボシランの分子量分布は一定の範囲を持っているので、数平均分子量が800以上であると、後の硬化工程において、揮発により骨材から流出する低分子量成分の量を少なくすることができる。一方、数平均分子量が2000以下であると、スラリー1aの流動性を確保でき、骨材2にスラリー1aを含浸させやすくすることができる。
(SiC粒子)
本発明の含浸工程において、スラリー1aを構成するSiC粒子の平均粒子径は特に限定されないが、例えば0.1μm以上10μm以下の平均粒子径を有するSiC粒子を使用することが好ましい。SiC粒子の平均粒子径が0.1μm以上であると、少量のアリルハイドライドポリカルボシランで含浸しやすい粘度のスラリー1aが得られるため、焼成後の歩留まりを高めることができる。一方、SiC粒子の平均粒子径が10μm以下であると、含浸工程において、骨材2を構成するSiC繊維にトラップされることなく、骨材2の内部までスラリー1aを含浸させやすくすることができる。
なお、SiC粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定器を用いて測定することができる。
なお、本発明において使用することができるスラリー1aは、アリルハイドライドポリカルボシランとSiC粒子のみによって構成されていてもよいが、更に添加物を有していてもよい。
添加物としては、ラジカル開始剤、酸化防止剤、重合禁止剤などが挙げられる。
アリルハイドライドポリカルボシランの分子量が低い場合には、第1含浸工程の後の第1硬化工程までの間において、副反応でできる低分子量成分の発泡によって、骨材2の外部にスラリー1aが流出することを防止するために、スラリー1aに重合禁止剤を添加することが好ましい。スラリー1aに重合禁止剤を添加することにより、アリルハイドライドポリカルボシランに含有されるラジカル種を安定化させ、酸化反応を防止することができるので、加熱による重合が進行し始めるまで酸化反応など余分な副反応を抑制し、気泡の発生を防止することができる。
また、アリルハイドライドポリカルボシランを長期間貯蔵して使用する場合には、劣化を防止するために、酸化防止剤が添加されていてもよい。
重合禁止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤及びヒンダートアミン系光安定剤から選択された少なくとも1種を使用することができる。これらの重合禁止剤は、アリルハイドライドポリカルボシランのラジカル種の安定に好適に利用することができる。
また、重合禁止剤の含有量は、第1含浸工程において使用されるスラリー中におけるアリルハイドライドポリカルボシランの質量に対して、0.1質量%以上2質量%以下であることが好ましい。重合禁止剤の含有量が、スラリー中におけるアリルハイドライドポリカルボシランの質量に対して0.1質量%以上であると、アリルハイドライドポリカルボシランに発生するラジカル種を十分に除去することができる。一方、重合禁止剤の含有量が、スラリー中におけるアリルハイドライドポリカルボシランの質量の2質量%以下であると、重合禁止剤自体は歩留まりの向上に寄与しないため、歩留まり低下への影響を少なくすることができる。
続いて、本実施形態に係るSiC/SiC複合材の製造方法による効果をより詳細に説明するため、従来のSiC/SiC複合材の製造方法について、図5を参照して以下に説明する。なお、図5において、上記図1に示す実施形態と同一又は同等部分については、図面に同一符号を付してその説明を省略又は簡略化する。
<STEP1:骨材の準備>
STEP1において、骨材2を準備する。骨材2の構成については、上記第1実施形態と同様である。
<STEP2:含浸工程>
STEP2において、真空加圧含浸によって、スラリー11aを骨材に含浸させて、含浸体13を得る。なお、スラリー11aとしては、ポリカルボシランとSiC粒子とをキシレンに混合させたものを使用する。
<STEP3:乾燥工程>
次に、STEP3において、含浸体13を自然乾燥させた後、例えば、60℃/分で昇温し、110℃で13時間保持することによって、スラリー11a中に含まれるキシレンを揮発させ、乾燥した含浸体13aを得る。このとき、スラリー11aの内部でキシレンが気泡9となり、この気泡9の骨材2の外部への噴出に伴って、スラリー11aも骨材2の外部に流出する。
<STEP4:硬化工程>
次に、上記第1実施形態における第1硬化工程と同様にして、含浸体13aを加熱し、硬化体17を得る。
<STEP5:焼成工程>
次に、上記第1実施形態における第1焼成工程と同様にして、硬化体17を焼成することにより、SiC/SiC複合材18を得る。
このように、従来の製造方法では、SiCマトリックスの前駆体としてポリカルボシランを使用している。ポリカルボシランは固体であり、骨材2に含浸させるためには、キシレン等の溶媒に混合させることが必要であるため、上記乾燥工程及び硬化工程において、キシレンが気泡9となり、この気泡9の骨材2の外部への噴出に伴って、スラリー11aも骨材2の外部に流出する。
また、上記乾燥工程及び硬化工程によっても、気泡9は完全には外部に排出されず、SiC/SiC複合材18の内部に残存するため、SiC/SiC複合材18の強度の低下の原因となる。
これに対し、上記第1実施形態では、骨材2に、アリルハイドライドポリカルボシランと、SiC粒子とを含有するスラリー1aを含浸させて含浸体を得ている。アリルハイドライドポリカルボシランは、もともと液状であり希釈するための溶媒が不要である上に、SiC粒子とともにマトリックスを生成するため、少量のアリルハイドライドポリカルボシランで含浸しやすい粘度でありながら歩留まりの高いスラリー1aを得ることができる。また、スラリー1aは、アリルハイドライドポリカルボシランの数平均分子量、並びにSiC粒子の含有量及び平均粒子径等を調整するのみで、所望の粘度に調整することができるため、スラリー1aを骨材2の内部に容易に含浸させることができる。
さらに、上述の通り、アリルハイドライドポリカルボシランは重合反応において、水や炭酸ガスなどの副生成物を生じない。したがって、第1硬化工程等において、溶媒及び副生成物の蒸発によって、骨材2からスラリー1aが噴出することを抑制することができるとともに、製造されたSiC/SiC複合材の内部に気泡が残存することを抑制することができ、緻密なSiCマトリックスを得ることができる。
また、アリルハイドライドポリカルボシランは、従来のポリカルボシランと比較して焼成後の歩留まりが高いため、骨材2に含浸された前駆体から効率よくSiCマトリックスを得ることができる。
[第2実施形態]
図6は、本発明の第2実施形態に係るSiC/SiC複合材の製造方法を示す工程フロー図である。図6に示すSTEP1の骨材の準備からSTEP4の第1焼成工程までは、上記第1実施形態と同じ工程であるため、説明を省略する。
<STEP5:第2含浸工程>
上記第1実施形態において、第1硬化工程までは、SiCマトリックスの前駆体であるアリルハイドライドポリカルボシランに大きな体積収縮は生じないが、第1焼成工程において、分解ガスの発生とともに、マトリックスの内部に細かな気孔が多数形成されることがある。
第2実施形態では、STEP5の第2含浸工程において、上記第1焼成工程により得られた第1焼成体8を、アリルハイドライドポリカルボシランを含む含浸液に含浸させて、第2含浸体を得る。この第2含浸工程により、上記焼成体の内部の気孔に含浸液を含浸させることができる。
なお、含浸液を焼成体の内部まで含浸させる方法としては、焼成体を真空雰囲気下に配置し、焼成体の内部の気孔におけるガスを除いた後、加圧により含浸液を焼成体の内部まで浸透させる減圧加圧含浸法を使用することが好ましい。減圧加圧含浸法を適用することにより、焼成体の内部の気孔まで含浸液を含浸させることができる。
含浸液に含有されるアリルハイドライドポリカルボシランの重合度及び構造単位の比率等については、特に限定されないが、第1含浸工程において使用したアリルハイドライドポリカルボシランと同じものを使用することが好ましい。第1含浸工程と同じアリルハイドライドポリカルボシランを使用することによって、第2含浸工程のために特別にアリルハイドライドポリカルボシランを準備する必要がないため、製造コストを下げることができる。
<STEP6:第2硬化工程>
次に、STEP6において、上記第2含浸体を加熱して、気孔に含浸された含浸液の重合を促進し、硬化させることにより、第2硬化体を得る。第2硬化工程における好ましい加熱条件及びその効果等はSTEP3の第1硬化工程と同様である。
<STEP7:第2焼成工程>
次に、STEP7において、上記第2硬化体を焼成することにより、上記第2硬化工程により硬化したアリルハイドライドポリカルボシランの重合体をセラミック化して、目的とするSiC/SiC複合材を得る。第2焼成工程における好ましい焼成温度及びその効果等はSTEP4の第1焼成工程と同様である。
上述の第2実施形態によると、第1実施形態における焼成工程後に形成された気孔にアリルハイドライドポリカルボシランを充填するため、第2硬化工程及び第2焼成工程においてアリルハイドライドポリカルボシランが噴出することなく、更に緻密で高強度のSiC/SiC複合材を製造することができる。
なお、第2含浸工程、第2硬化工程、第2焼成工程は、直前に得られた焼成体に対して複数回繰り返して実施してもよい。含浸工程、硬化工程及び焼成工程を繰り返すことにより、SiCマトリックスをより緻密化することができる。
なお、上記第1硬化工程及び第2硬化工程を含む全ての硬化工程においては、昇温速度等を適切に調整することにより、その直後の焼成工程の一部として同時に行うことができる。硬化工程と焼成工程とを同時に実施することにより、工程数を減らすことができる。
続いて、本実施形態の製造方法において使用することができるSiC繊維4及び骨材2の形態について、以下に説明する。
(SiC繊維)
SiC繊維4の太さは、特に限定されないが、例えば平均径が7.5~15μmのものを使用することができる。SiC繊維4の太さが7.5μm以上であると、表面に傷又は欠陥等があっても、強度の低下を防止することができ、高い強度のSiC繊維4が得られる。一方、SiC繊維4の太さが15μm以下であると、曲げたときに表面に発生する引張応力を小さくすることができるため、高い強度のSiC繊維4を得ることができる。
さらに、本発明においては、骨材2を形成する繊維として、上記SiC繊維4だけでなく、表面にコーティング層を有するSiC繊維を使用してもよい。コーティング層としては、炭素層、BN層などのように、SiCと異なる成分からなるコーティング層のほか、SiCと異なる成分からなるコーティング層の上に更にSiCからなるコーティング層がSiC繊維の表面に形成されていてもよい。
これらのコーティング層は、どのような方法で形成されていてもよく、特に限定されないが、例えばCVI(気相成長含浸)法や、SiC繊維を溶媒で薄められた希薄な前駆体に含浸させた後、乾燥、硬化、焼成する方法により形成することができる。コーティング層を形成するために前駆体を用いる場合は、マトリックスを形成するほどの含浸量を確保する必要はない。このようなコーティング層を用いると、骨材の形状をあらかじめ固定することができる。また、異なる成分のコーティング層を形成すると、SiC繊維とマトリックスとの一体化を防止することができる。
(骨材)
本実施形態において使用することができる骨材2の形態としては特に限定されず、種々の形態の骨材2を用いることができる。例えば、SiC繊維4を複数本束ねて形成されたストランドを織り込むことにより得られるクロス(織布6)、上記ストランドをマンドレルに巻回することにより得られるフィラメントワインディング体、及び上記ストランドを組紐状に編んだブレーディング体等の連続繊維を使用した骨材のほか、短繊維を積層させることにより得られる抄造体、不織布及びマット等を骨材として利用することができる。
織布6は、どのような織り方であってもよく、平織、綾織、朱子織、3D織など特に限定されない。
ストランド1本あたりのSiC繊維4の本数は特に限定されないが、例えば100~10000本とすることができる。上記範囲であると、適度なストランドの太さとなるので、これを使用して、例えば織布6を形成した場合に、所望の厚さにすることができる。
以下に、本実施形態に係るSiC/SiC複合材の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(骨材の準備)
SiC繊維を織り込むことにより得た織布を6枚積層して骨材を形成した。
なお、SiC繊維には、BNからなるコーティング層及びSiCからなるコーティング層をCVI法により形成した。これらのコーティング層は、積層した後に形成されている
ため、6枚重なった状態で板状の形状が保持されている。骨材の大きさは70mm×70mm×2mmとした。
(第1含浸工程)
真空加圧含浸法を使用し、得られたSiC繊維を含む骨材を、アリルハイドライドポリカルボシランと、SiC粒子と、重合禁止剤(トリフェニルフォスファイト)とからなるスラリーに含浸させて、第1含浸体を得た。SiC粒子の平均粒子径は0.6μm、スラリー全質量に対するSiC粒子の含有量は60質量%、重合禁止剤の含有量は1.0質量%とした。なお、スラリーは、アリルハイドライドポリカルボシラン、重合禁止剤及びSiC粒子を混合し、混錬した後、脱泡することにより得た。重合禁止剤を加えたスラリーは、ラジカル種が安定しているので酸化が起こりにくく気泡の発生は見られなかった。
なお、真空加圧含浸における加圧圧力は0.9MPaとした。また、使用したアリルハイドライドポリカルボシランの構造単位U2の比率kは0.1、数平均分子量は1400であった。
(第1硬化工程)
得られた第1含浸体を、60℃/分の昇温速度で昇温し、200℃の温度で3時間保持することにより、骨材に含浸されたスラリーに含まれるアリルハイドライドポリカルボシランを硬化し、第1硬化体を得た。このとき、骨材に含浸されたスラリーの吹き出しは確認されなかった。
(第1焼成工程)
次に、第1硬化体を1200℃の温度で1時間保持することによって焼成した。
(第1含浸工程~第1焼成工程の繰り返し工程)
上記第1焼成工程により得られた焼成体に対して、上記第1含浸工程~第1焼成工程の工程を更に2回繰り返して実施した。なお、2回目以降の第1含浸工程ではスラリーの質量に対するSiC粒子の含有量を25質量%とした。
(第2含浸工程)
その後、第1含浸工程と同様にして、真空加圧含浸法を使用し、上記繰り返し工程により得られた焼成体を、アリルハイドライドポリカルボシランと重合禁止剤とを含有する含浸体に含浸させ、第2含浸体を得た。なお、アリルハイドライドポリカルボシランは上記第1含浸工程で使用したものと同一のものを使用した。
(第2硬化工程、第2焼成工程)
上記第1硬化工程及び第1焼成工程と同様にして、上記第2含浸体を硬化・焼成した。
(第2含浸工程~第2焼成工程の繰り返し工程)
上記第2焼成工程により得られた焼成体に対して、上記第2含浸工程~第2焼成工程の工程を更に2回繰り返すことにより、実施例1のSiC/SiC複合材を得た。得られたSiC/SiC複合材のかさ密度は2.55g/cmであった。
図7は、実施例1に係る製造方法により得られたSiC/SiC複合材の断面を示す図面代用写真である。図7に示すように、実施例1に係る製造方法によると、骨材を浸漬させるスラリー中のSiC前駆体であるアリルハイドライドポリカルボシランは、硬化工程において気泡を発生しないので、骨材の内部はSiC粒子21とアリルハイドライドポリカルボシランの焼成体22とで隙間なく充填され、緻密なSiC/SiC複合材を得ることができた。
<実施例2>
アリルハイドライドポリカルボシラン及びSiC粒子を混合し、混錬した後、脱泡することにより、重合禁止剤を含有しないスラリーを得た。
その後、上記実施例1と同様にして、含浸工程、硬化工程及び焼成工程を合計6回繰り返して実施することにより、実施例2のSiC/SiC複合材を製造した。
上述の実施例2に係る製造方法によると、混錬脱泡した後のスラリーからは少しずつ気泡の発生が見られた。したがって、骨材をスラリーに含浸させ、硬化工程及び焼成工程を速やかに実施することにより、気泡の形成が抑制されたSiC/SiC複合材を得ることができた。
なお、アリルハイドライドポリカルボシランの酸化を防止するために重合禁止剤が添加されたスラリーを用いた実施例1は、実施例2と比較して気泡の発生をより一層抑制することができ、緻密なSiC/SiC複合材を得ることができた。この結果から、スラリーに重合禁止剤を添加することは有効であることが確認できた。
<比較例1>
図5に示す従来のSiC/SiC複合材の製造方法と同様にして、比較例1のSiC/SiC複合材を製造した。
(骨材の準備)
骨材は実施例1と同一のものを準備した。
(含浸工程)
固体であるポリカルボシランをキシレンに溶解させ、SiC粒子とともに混合することにより含浸液を得た。なお、SiC粒子の平均粒子径は0.6μmであった。また、懸濁液の質量に対するSiC粒子の含有量を60質量%とし、ポリカルボシランの含有量を18質量%とした。したがって、残部は溶媒であるキシレンである。
その後、真空加圧含浸法を使用し、上記骨材を含浸液に含浸させることにより、含浸体を得た。
その後、得られた含浸体を60℃/分の昇温速度で昇温し、110℃で13時間保持することにより、スラリー中に含まれるキシレンを揮発させた。このとき、骨材に含浸されたスラリーの一部が吹き出していることが確認された。
(硬化工程・焼成工程)
その後、実施例1の第1含浸工程及び第1焼成工程と同様にして、硬化工程及び焼成工程を実施した。硬化工程における昇温速度及び加熱温度、並びに焼成工程における焼成温度等の条件は、上記実施例1と同一とした。
(含浸工程~焼成工程の繰り返し工程)
上記焼成工程により得られた焼成体に対して、上記含浸工程~焼成工程の工程を更に5回実施し、合計6回の含浸工程~焼成工程を繰り返すことにより、比較例1のSiC/SiC複合材を得た。得られたSiC/SiC複合材のかさ密度は2.25g/cmであった。
図8は、比較例1に係る製造方法により得られたSiC/SiC複合材の断面を示す図面代用写真である。比較例1と実施例1との大きな相違点は、実施例1では溶媒を含有していないのに対し、比較例では溶媒としてキシレンを用いている。したがって、比較例1に係る製造方法によると、図8に示すように、骨材を浸漬させる含浸液中の溶媒が硬化工程等において気泡9となり、この気泡9がSiC粒子21とポリカルボシランの焼成体23との間に残存した。
1a,11a スラリー
1b 重合体
1c SiCマトリックス
2 骨材
3 第1含浸体
4 SiC繊維
5 ストランド
6 織布
7 第1硬化体
8 第1焼成体
9 気泡
13,13a 含浸体
17 硬化体
18 SiC/SiC複合材
21 SiC粒子
22 アリルハイドライドポリカルボシランの焼成体
23 ポリカルボシランの焼成体

Claims (13)

  1. SiC繊維を含む骨材を、アリルハイドライドポリカルボシランと、SiC粒子とを含有するスラリーに含浸させて第1含浸体を得る第1含浸工程と、
    前記第1含浸体を加熱し、硬化させて第1硬化体を得る第1硬化工程と、
    前記第1硬化体を焼成する第1焼成工程と、
    を有し、
    前記スラリーは、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤及びヒンダートアミン系光安定剤から選択された少なくとも1種である重合禁止剤を含有することを特徴とするSiC/SiC複合材の製造方法。
  2. 前記重合禁止剤の含有量は、前記スラリー中におけるアリルハイドライドポリカルボシランの質量に対して、0.1質量%以上2質量%以下である請求項に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
  3. 前記第1焼成工程の後に、前記第1焼成工程により得られた焼成体を、アリルハイドライドポリカルボシランを含有する含浸液に含浸させて第2含浸体を得る第2含浸工程と、
    前記第2含浸体を加熱し硬化させて第2硬化体を得る第2硬化工程と、
    前記第2硬化体を焼成する第2焼成工程と、
    を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
  4. SiC繊維を含む骨材を、アリルハイドライドポリカルボシランと、SiC粒子とを含有するスラリーに含浸させて第1含浸体を得る第1含浸工程と、
    前記第1含浸体を加熱し、硬化させて第1硬化体を得る第1硬化工程と、
    前記第1硬化体を焼成する第1焼成工程と、
    を有し、
    前記第1焼成工程の後に、前記第1焼成工程により得られた焼成体を、アリルハイドライドポリカルボシランを含有する含浸液に含浸させて第2含浸体を得る第2含浸工程と、
    前記第2含浸体を加熱し硬化させて第2硬化体を得る第2硬化工程と、
    前記第2硬化体を焼成する第2焼成工程と、
    を有し、
    前記含浸液は、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤及びヒンダートアミン系光安定剤から選択された少なくとも1種である重合禁止剤を含有することを特徴とするSiC/SiC複合材の製造方法。
  5. 前記重合禁止剤の含有量は、前記含浸液中におけるアリルハイドライドポリカルボシランの質量に対して、0.1質量%以上2質量%以下である請求項に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
  6. 前記SiC粒子の平均粒子径は0.1μm以上10μm以下である請求項1~5のいずれか1項
    に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
  7. 前記スラリーの質量に対する前記SiC粒子の含有量は、5質量%以上70質量%以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
  8. 前記第1硬化工程は、前記第1含浸体を150℃以上400℃以下の温度まで加熱する工程であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
  9. 前記第1焼成工程における焼成温度は、1000℃以上1500℃以下であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
  10. 前記第2硬化工程における加熱温度は、150℃以上400℃以下であることを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
  11. 前記第2焼成工程における焼成温度は、1000℃以上1500℃以下であることを特徴とする請求項3~5及び10のいずれか1項に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
  12. 前記含浸液はフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤及びヒンダートアミン系光安定剤から選択された少なくとも1種である重合禁止剤を含有することを特徴とする請求項3、10及び11のいずれか1項に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
  13. 前記重合禁止剤の含有量は、前記含浸液中におけるアリルハイドライドポリカルボシランの質量に対して、0.1質量%以上2質量%以下である請求項12に記載のSiC/SiC複合材の製造方法。
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