JP7471890B2 - 曲げ加工方法 - Google Patents
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Description
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a/2<R≦b/2-(c/sinθ)・・・(1)
また、パンチPの先端部20の曲率半径Rは、ダイDのV溝30の溝幅bの1/2の値の10.0倍以下であることが好ましく、5.0倍以下であることが更に好ましく、また、2.0倍以上であることが好ましい。
具体的には、パンチPの先端部20の曲率半径Rは、例えば0.2mm~3.0mmであり、好ましくは1.5mm~3.0mmである。
実施例1,2では、検証実験1を実施した。この検証実験1では、比較例1,2及び実施例1,2共にワークWの材質及び板厚cを変えずに、金型であるパンチPとダイDの条件を変更することで、位置ズレの補正(位置ズレを許容すること)が可能であるか否かを検証した。なお、比較例1,2のパンチPc、ダイDc及びワークWcについては、図4に示す。この比較例1,2のパンチPcは、ワークWcのVカット溝10´の溝幅aよりも小さい先端部20´を有しており、具体的には、先端部20´の曲率半径Rが、ワークWcのVカット溝10´の溝幅aの1/2の値以下となるように形成されている。
検証実験1-1では、比較例1について実験を行った。まず、ワークWcのVカット溝10´を、2回彫り(2pas)の工法によって、溝幅aが0.8mm及び彫り量dが0.4mmで、角度θ1が90°となるように形成した。また、目標とするL軸値の寸法を50.00mmに設定し、正規の係合位置である基準位置を0mmとして、上記-方向に位置ズレを生じさせ、これを補正量(mm)として複数回曲げ加工を実施した。設定されたL軸値に対し、加工結果のL軸値が±0.3mm以内に収まると共に、角度が89度40分~90度20分の範囲なら良加工とし、それ以外は不良加工と判定した。なお、良加工及び不良加工の判定は、日本工業規格(JIS)の「金属プレス加工品の普通寸法公差」における「曲げ及び絞りの普通寸法許容差(JISB0408-1991)」と「角度寸法の許容差」に基づいて行った。この検証実験1-1の実験結果を図5に示す。
検証実験1-2では、比較例2について実験を行った。比較例2では、ワークWcのVカット溝10´を、3回彫り(3pas)の工法によって、溝幅aが1.2mm及び彫り量dが0.6mmとなるように形成した。それ以外の加工条件については、検証実験1-1と同様とした。この検証実験1-2の実験結果を図6に示す。
検証実験1-3では、実施例1について実験を行った。各加工条件については、検証実験1-1と同様とした。この検証実験1-3の実験結果を図7に示す。なお、検証実験1-3においては、所定の基準位置に合わせて、加工結果のL軸値が所定範囲内に収まると共に、角度が所定の範囲なら良加工とし、それ以外は不良加工と判定した。図7に示すように、補正量が+0.3mm~+1.0mmの範囲及び-0.3mm~-1.5mmの範囲においては、曲げ加工は1回目及び2回目共に良加工であったが、補正量が+1.5mmのときは、2回目が不良加工となった。
検証実験1-4では、実施例2について実験を行った。実施例2の各加工条件については、検証実験1-2と同様とした。この検証実験1-4の実験結果を図8に示す。なお、検証実験1-4においては、所定の基準位置に合わせて、加工結果のL軸値が所定範囲内に収まると共に、角度が所定の範囲なら良加工とし、それ以外は不良加工と判定した。図8に示すように、補正量が+0.3mm~+1.5mmの範囲及び-0.3mm~-1.5mmの範囲の全てにおいて、L軸値が所定範囲内に収まると共に、角度が所定の範囲内となったため、良加工と判定した。
上記検証実験1-1及び1-2によって、比較例1,2については、パンチPcの先端部20´の曲率半径Rが0.2mmであるため、パンチPcとダイDcの係合位置の位置ズレの基準位置に対する寸法ズレ量が、ワークWcのVカット溝10´の溝幅a以内であれば、位置ズレを補正することが可能であることが判明した。また、ワークWcのVカット溝10´の彫り量dによって、位置ズレの補正可能域を変えられることも判明した。
次に、検証実験1の検証結果を踏まえて、検証実験2を実施した。この検証実験2では、検証実験1に追加の加工条件として、ワークWのVカット溝10の彫り量dを1回彫り(1pas)の工法によって0.2mmとなるように形成した。また、ワークWの材質にステンレス鋼板(SUS304)を追加すると共に、板厚cをSECCの場合は1.0mm及び1.6mmとし、SUS304の場合は1.5mmとした。更に、パンチPの先端部20の曲率半径Rが1.5mmのものも追加した。
検証実験2-1では、検証実験1の検証結果に対して、まず、Vカット溝10の彫り量dの深さの違いによる効果を参考例1,2として検証した。この検証実験2-1の実験結果を図10及び図11に示す。なお、検証実験2-1においては、所定の基準位置に合わせて、加工結果のL軸値が所定範囲内に収まると共に、角度が所定の範囲なら良加工とし、それ以外は不良加工と判定した。検証実験2-1では、Vカット溝10の彫り量dを0.2mmとし、目標とするL軸値の寸法を50.00mmに設定し、正規の係合位置である基準位置を0mmとして、上記±方向に位置ズレを生じさせ、これを補正量(mm)として複数回曲げ加工を実施した。
次に、検証実験2-2では、実施例1,2のワークWの材質及び板厚c、パンチPの先端部20の曲率半径R、Vカット溝10の彫り量d等の各条件を変更することで、位置ズレの補正が可能な好ましい加工条件を実施例3~6として検証した。
次に、検証実験2-3では、検証実験2-2のものに比べて、ワークWの材質をSUS304で構成した場合の位置ズレの補正が可能な好ましい加工条件を検証した。検証実験2-3における加工条件は、ワークWの材質及び板厚c以外は図17のものと同じにした。板厚cは、1.2mmとした。この場合の実験結果(実施例7)を、図18に示す。なお、検証実験2-3においては、所定の基準位置に合わせて、加工結果のL軸値が所定範囲内に収まると共に、角度が所定の範囲なら良加工とし、それ以外は不良加工と判定した。このケースでは、補正量が-0.3mm~-1.0mmの範囲及び+0.3~+1.0の範囲の全てにおいて、寸法及び角度が許容範囲内となったので、曲げ加工は寸法及び角度共に良加工であると判定した。このような傾向は、彫り量d及び曲率半径Rを変更した場合であっても同様であった。
上記検証実験2-1,2-2によって、Vカット溝10の彫り量dが1回彫りの工法による0.2mmのものよりも、Vカット溝10の彫り量dが2回彫り又は3回彫りの工法による0.4mm又は0.6mmのものの方が位置ズレの寸法補正が優れていることが判明し、検証実験2-2~2-4によって、ワークWの材質によって補正能力に関する差異はほぼないことが判明した。また、ワークWの板厚c毎に、最適なVカット溝10の彫り量d(板厚cの40%~60%)があることが判明し、更に、パンチPの先端部20の曲率半径Rは、3.0mmの方が好ましいことが判明した。以上のように、検証実験2の検証結果からは、ワークWの板厚cに基づく最適なVカット溝10の彫り量dと、位置ズレの寸法補正がより容易なパンチP及びダイDの金型条件とが判明した。
次に、検証実験1及び検証実験2の検証結果を踏まえて、検証実験3を実施した。この検証実験3では、ワークWのフランジの目標曲げ長さをより実践的な300mmに設定することにした。従って、検証実験3における加工条件は、ワークWの材質をSECCとし、板厚cを1.6mm及びVカット溝10の彫り量dを0.6mmとした上で、目標曲げ長さが300mmに設定された。また、金型条件は、パンチPの先端部20の曲率半径Rを1.5mm又は3.0mmとし、ダイDのV溝30の溝幅bを14.0mmとして、ダイDの肩部32の肩半径rを2.5mmに設定された。
検証実験3-1では、曲率半径Rを1.5mmとしたパンチPを用い、V溝30のL軸を「中央」とし、左側を「左」及び右側を「右」の項目として寸法及び角度を検証する実験が行われた。その実験結果(実施例8)を図19に示す。なお、検証実験3-1においては、「中央」、「左」及び「右」の所定の基準位置のL軸値の寸法及び角度に合わせて、加工結果のL軸値が所定範囲内に収まると共に、角度が所定の範囲なら良加工とし、それ以外は不良加工と判定した。このケースでは、補正量が-0.7mm及び+0.7mmの範囲において、全ての項目で寸法及び角度が許容範囲内となったので、曲げ加工は寸法及び角度共に良加工であると判定した。
検証実験3-2では、曲率半径Rを3.0mmとしたパンチPを用いて、図19と同様に寸法及び角度を検証する実験が行われた。その実験結果(実施例9)を図20に示す。なお、検証実験3-2においては、「中央」、「左」及び「右」の所定の基準位置におけるL軸値の寸法及び角度に合わせて、加工結果のL軸値が所定範囲内に収まると共に、角度が所定の範囲なら良加工とし、それ以外は不良加工と判定した。このケースでは、補正量が-0.7mm~-0.3mm及び+0.3mm~+0.7mmの範囲において、全ての項目で寸法及び角度が許容範囲内となったので、曲げ加工は寸法及び角度共に良加工であると判定した。
上記検証実験3-1及び3-2によって、板厚cが1.6mmの場合はVカット溝10の彫り量dは0.6mmが好ましいことが判明した。なお、この場合の彫り量dは、板厚cの40%~60%であるとすると、0.6mm~0.9mmに設定されれば良い。また、パンチPの先端部20の曲率半径Rは1.5mm又は3.0mmが好ましいことが判明した。以上のように、検証実験3の検証結果からは、検証実験2の検証結果に示された彫り量d及び金型条件による曲げ加工に基づいて、位置ズレの補正可能域を広くとりながら、ワークWのフランジの目標曲げ長さの適用範囲を広くすることが可能となることが判明した。
2 板面(裏面)
10 Vカット溝
11 頂点
12 傾斜面
13,32 肩部
20 先端部
30 V溝
31 水平面(上面)
Claims (4)
- 相対的に移動可能に設けられたパンチとダイとを有する金型を備えた曲げ加工機によって、板状の被加工部材を曲げ加工する曲げ加工方法において、
前記被加工部材に設けられた溝部よりも大きい先端部を有する前記パンチの該先端部を、該溝部に押し当てて該溝部に沿って曲げ加工を行うことにより、前記溝部の中心が前記パンチの中心と一致するように前記被加工部材が位置決めされることを特徴とし、
前記溝部は、前記被加工部材の表面から該溝部の溝底部の頂点までの鉛直距離が該被加工部材の板厚の40%~60%の範囲となるように形成されており、
前記溝部は、V形断面形状を有するように、切削加工により形成されている
曲げ加工方法。 - 相対的に移動可能に設けられたパンチとダイとを有する金型を備えた曲げ加工機によって、板状の被加工部材を曲げ加工する曲げ加工方法において、
前記被加工部材に設けられた溝部よりも大きい先端部を有する前記パンチの該先端部を、該溝部に押し当てて該溝部に沿って曲げ加工を行うことにより、前記溝部の中心が前記パンチの中心と一致するように前記被加工部材が位置決めされることを特徴とし、
前記溝部は、前記被加工部材の表面から該溝部の溝底部の頂点までの鉛直距離が該被加工部材の板厚の40%~60%の範囲となるように形成されており、
前記先端部は、曲線断面形状を有し、前記溝部の溝幅をaとし、前記先端部の曲率半径をRとした場合、該曲率半径Rが前記溝幅aの1/2の値よりも大きくなる(a/2<R)ように形成されている
ことを特徴とする曲げ加工方法。 - 前記先端部は、前記ダイのダイ溝の溝幅をbとし、前記ダイ溝に押し込まれた前記被加工部材の裏面と水平面とのなす角度をθとし、前記被加工部材の板厚をcとした場合、前記曲率半径Rが前記溝幅bの1/2から前記板厚cをsinθで除算したものを減算した値以下となる(R≦b/2-(c/sinθ))ように形成されている
ことを特徴とする請求項2記載の曲げ加工方法。 - 前記溝部は、前記溝底部の前記頂点が尖るように形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の曲げ加工方法。
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