JP7467904B2 - 焼結合金及び焼結合金の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明の一実施形態は、焼結合金及び焼結合金の製造方法に関する。
ターボチャージャー用ターボ部品、特に耐熱性、耐食性及び耐摩耗性が要求されるノズルボディ等の用途には、焼結合金を好ましく用いることができる。
一般に、内燃機関に付設されるターボチャージャーでは、内燃機関のエキゾーストマニホールドに接続されたタービンハウジングに、タービンが回転自在に支持され、タービンの外周側を囲うように複数のノズルベーンが回動可能に支持されている。タービンハウジングに流入した排気ガスは、外周側からタービンに流れ込んで軸方向へ排出され、その際にタービンを回転させる。そして、タービンの反対側で同じ軸に設けられたコンプレッサが回転することにより、内燃機関へ供給する空気を圧縮する。
ここで、ノズルベーンは、ノズルボディ又はマウントノズルといった名称で呼ばれるリング状の部品に回動可能に支持されている。ノズルベーンの軸はノズルボディを貫通し、そこでリンク機構に接続されている。そして、リンク機構が駆動されることによりノズルベーンが回動し、排気ガスがタービンに流れ込む流路の開度が調整される。本発明が対象とするのは、ノズルボディ(マウントノズル)あるいはこれに装着されるプレートノズルといった、タービンハウジング内に設けられるターボ部品である。
上記のようなターボチャージャー用ターボ部品は、高温の腐食性ガスである排気ガスと接触することから耐熱性と耐食性が要求されるとともに、ノズルベーンと摺接するために耐摩耗性も要求される。このため、従来、例えば高Cr鋳鋼、又はJIS規格で規定されているSCH22種に耐食性向上の目的でCr表面処理を施した耐摩耗材料等が使用されている。また、耐熱性とともに耐食性及び耐摩耗性に優れ、しかも価格が低廉な耐摩耗部品として、フェライト系ステンレス鋼の基地中に炭化物を分散させた耐摩耗性焼結部品が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、特許文献1の焼結部品は液相焼結により得られるため寸法精度の要求が厳しい場合に機械加工する必要があるが、硬い炭化物が多量に析出するため、被削性が悪く、被削性の改善が望まれている。さらに、ターボチャージャーの構成部品は、一般に、オーステナイト系耐熱材料で構成されるが、特許文献1に記載のターボチャージャー用ターボ部品はフェライト系の材料から構成されている。この場合、周囲の部材と熱膨張係数が異なるため、両者の材料からなる構成部品間に隙間が生じ、これらの接続が不十分となるなど、適用にあたっての部品設計が難しく、周囲のオーステナイト系耐熱材料と同等の熱膨張係数であることが望まれている。
特許文献2は、特定の全体組成を有し、サイズが比較的大きな金属炭化物が析出する相Aと、比較的小さな金属炭化物が析出する相Bとが斑状に分布する焼結合金を開示している。特許文献2の焼結合金は、耐熱性、耐食性及び耐摩耗性を備え、さらにNiが添加されることで熱膨張係数が周囲のオーステナイト系耐熱材料と同等となり、部品設計を簡単にすることができる。
特許第3784003号公報 特開2013-57094号公報
ターボチャージャー用ターボ部品は、上記した通り、高温環境下で使用されるため、耐熱層、耐食性及び耐摩耗性とともに、さらに高温強度が要求される。特許文献2では、鉄基地中に相A及び相Bの2相を形成するために、相Aと相Bとの間で炭素元素及び金属元素が拡散しないように、比較的低温で焼結を進行している。このような焼結過程を経て得られる焼結合金では、より高温の使用環境下において高温強度が低下する現象が問題になる。
本発明の一目的は、高温強度に優れる焼結合金及びその製造方法を提供することである。
一実施形態は、以下を要旨とする。
[1]全体組成が、質量%で、Cr:11.75~39.98%、Ni:5.58~24.98%、Si:0.16~2.54、P:0.1~1.5%、C:0.58~5.55%を含み、残部がFe及び不可避不純物からなり、平均結晶粒径が30μm~100μmである、焼結合金。
[2]質量%で、Mo、V、W、Nb、及びTiからなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに合計量で5%以下含む、[1]に記載の焼結合金。
[3]質量%で、Cr:25~45%、Ni:5~15%、Si:1.0~3.0%、C:0.5~4.0%を含み、残部がFe及び不可避不純物からなる組成の鉄合金粉末A、
質量%で、Cr:12~25%、Ni:5~15%を含み、残部がFe及び不可避不純物からなる組成の鉄合金粉末B、
質量%で、P:10~30%、残部がFe及び不可避不純物からなる組成の鉄-リン合金粉末、ニッケル粉末、及び黒鉛粉末を準備すること;
前記鉄合金粉末A及び前記鉄合金粉末Bを、前記鉄合金粉末A及び前記鉄合金粉末Bの合計量に対する前記鉄合金粉末Aの割合が20~80質量%となるように添加し、原料粉末全量に対し、前記鉄-リン合金粉末を1.0~5.0質量%、前記ニッケル粉末を1~12質量%、及び前記黒鉛粉末を0.5~2.5質量%で添加し原料粉末を得ること;
前記原料粉末を成形し成形体を得ること;及び
前記成形体を1200℃超過1250℃未満で焼結することを含む、焼結合金の製造方法。
[4]前記鉄合金粉末A及び前記鉄合金粉末Bのうち少なくとも一方は、Mo、V、W、Nb、及びTiからなる群から選択される少なくとも1種を、合計量で、原料粉末の全体組成に対し5質量%以下でさらに含む、[3]に記載の焼結合金の製造方法。
本発明の一実施形態によれば、高温強度に優れる焼結合金及びその製造方法を提供することができる。
図1(a)は、例5の結晶粒を顕微鏡を用いて観察した写真であり、図1(b)は、例3の結晶粒を顕微鏡を用いて観察した写真である。 図2は、例5と例3について、クリープ時間と歪みの関係を示すグラフである。
以下、本発明の一実施形態について説明するが、以下の例示によって本発明は限定されない。
一実施形態による焼結合金としては、全体組成が、質量%で、Cr:11.75~39.98%、Ni:5.58~24.98%、Si:0.16~2.54、P:0.1~1.5%、C:0.58~5.55%を含み、残部がFe及び不可避不純物からなり、平均結晶粒径が30μm~100μmである、ことを特徴とする。
これによれば、高温強度に優れる焼結合金及びその製造方法を提供することができる。
また、耐熱性、耐食性、耐摩耗性、及び被削性を求められる用途において、高温強度をより改善することができる。また、この焼結合金は、オーステナイト系耐熱材料と同等の熱膨張係数を有することができ、材料設計の範囲を広げることができる。
この焼結合金は、例えば、ターボチャージャー用ターボ部品、特に耐熱性、耐食性及び耐摩耗性が要求されるノズルボディ等に好ましく用いることができる。
一実施形態による焼結合金は、850℃以上の範囲、特に900℃以上の範囲、さらには950℃以上の範囲において、高温強度を改善することができる。
ターボチャージャー用ターボ部品は、高温の使用環境下において相手材からの応力が負荷されるが、この焼結合金を用いることで、高温環境下においても応力に対する歪み量をより低減することができる。ターボチャージャー用ターボ部品では、燃費向上にともなって、排気ガスが高温化しているため、より高温環境下での応力に対する歪み量を低減することが要求される。
一実施形態による焼結合金は、平均結晶粒径が30~100μmであることが好ましい。
通常の温度の使用環境では、焼結合金の結晶粒が大きくなると、強度が低下する傾向があるため、従来の焼結合金は結晶粒の粗大化を抑制するように作製されている。本発明は、高温の使用環境下では、焼結合金の結晶粒が小さい方から大きい方の間で強度のピークがあるという知見を得てなされた。より詳しくは、ターボチャージャー用ターボ部品に適応し得る高温の使用環境下では、焼結合金の結晶粒が30μm~100μmの範囲でより強度を高めることができる。
焼結合金の平均結晶粒径は、30μm以上が好ましく、35μm以上がより好ましい。これによって、結晶粒がある程度の大きさであることで、結晶粒間の界面によって応力を吸収する能力が高まり、応力に対して歪みの発生を抑制することができる。特に、高温環境において、この歪みの発生を抑制することができる。
焼結合金の平均結晶粒径は、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、50μm以下さらに好ましい。これによって、粗大な結晶粒の生成を防止して、粗大な結晶粒間で界面のズレが発生することを防止することができる。特に、高温環境において、この界面のズレの発生を防止して、応力に対して歪みの発生を抑制することができる。
ここで、焼結合金の平均結晶粒径は、以下の手順によって測定することができる。
焼結体試料の金属組織は、結晶粒界が見えるように光学顕微鏡を調整し、例えば500倍に拡大して観察することができる。所定の領域で焼結体試料の金属組織の写真を撮り、視野中に観察される任意の個数の結晶粒を無作為に抽出し、最長サイズaと最短サイズbを測定する。最長サイズaと最短サイズbの平均値が1個の結晶粒の粒径となると仮定し、任意の個数の結晶粒について測定した測定値の平均値を平均結晶粒径とする。視野領域は、例えば、例えば148μm×196μmとするとよい。測定する個数は、例えば5個とするとよい。この場合、一つの視野に所定の個数の結晶粒が観察されない場合は、視野を増やして測定するとよい。結晶粒のサイズの測定には、画像分析ソフトウエア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)等の市販品を用いることができる。
一実施形態による焼結合金の全体組成としては、例えば、質量%で、Cr:11.75~39.98%、Ni:5.58~24.98%、Si:0.16~2.54、P:0.1~1.5%、C:0.58~5.55%を含み、残部がFe及び不可避不純物からなることが好ましい。
なお、以下の説明において、特に説明のない箇所では、元素割合を示す「%」は「質量%」を表す。
一実施形態による焼結合金は、全体組成が均一であることが好ましく、複数の結晶粒の間において組成が均一であることが好ましい。
一実施形態による焼結合金は、金属炭化物を含んでもよい。この金属炭化物は、焼結合金中のCとCr等の金属元素とが結合して析出して、焼結合金中に含まれるようになる。金属炭化物は硬質であるため、焼結合金の耐摩耗性をより高めることができる。
焼結合金は、Cr:11.75~39.98%を含むことが好ましい。
Crは、鉄基地の耐熱性及び耐食性の向上に寄与するとともに、Cと結合して炭化物を形成し耐摩耗性を向上させる。例えば、Crは、Cと結合してクロム炭化物、クロムと鉄の複合炭化物等(以下、これらを単に「クロム炭化物」とも記す。)を形成する。Crは11.75%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましい。これによって、クロム炭化物の析出量を多くして耐摩耗性をより高めることができ、また、焼結合金の耐熱性及び耐食性をより改善することができる。Crは、原料粉末の圧縮性の観点から、39.98%以下が好ましく、35%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましい。また、Crが過剰に配合されるとクロム炭化物の析出量が過多となって、耐摩耗性が改善される一方で、被削性が低下する傾向がある。また、過剰のCrが焼結合金に固溶せずに残存すると、Crは酸化されやすい元素であるため、耐食性が低下する傾向がある。この観点からも、Crは、39.98%以下が好ましい。
このようなCrの効果を鉄基地中に均一に作用させるため、Crは鉄合金粉末の形態で付与することが好ましい。
焼結合金は、Ni:5.58~24.98%を含むことが好ましい。
Niは鉄基地に拡散して固溶強化するとともに、鉄基地をオーステナイト化して耐摩耗部品の高温強度を向上させる。Niは、5.58%以上が好ましく、8%以上がより好ましい。これによって、高温強度をより高め、また、耐食性をより改善することができる。Niは、24.98%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。これによって、高温強度を十分に得ることができる。
このようなNiの効果を鉄基地中に均一に作用させるため、Niは固溶させて鉄合金粉末の形態で付与することが好ましい。Niは鉄合金粉末に固溶させて与えても鉄合金粉末の硬さの増加は少ないので、この観点からも、Niは鉄合金粉末に固溶させて与えることが好ましい。また、焼結合金の緻密化を促進する観点から、Niはニッケル粉末として付与してもよい。
焼結合金は、Si:0.16~2.54%を含むことが好ましい。
Siは脱酸剤として配合することができる。また、Siは、焼結性を向上させることができる。焼結合金は、酸化されやすいCrを含むため、原料粉末にSiを脱酸剤として添加することが好ましい。Siは0.16%以上であることで、その作用を十分に得ることができる。Siは、原料粉末の圧縮性の観点から、2.54%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。
このようなSiの作用を鉄基地中に均一に与えるため、Siは鉄合金粉末の形態で付与することが好ましい。
焼結合金は、P:0.1~1.5%を含むことが好ましい。
Pは、Cとともに焼結においてFe-P-C液相を発生させて焼結体の緻密化を促進する。これにより、焼結合金の高密度比、特に90%以上の密度比が達成可能となる。Pは0.1%以上であることで、焼結において液相の発生を促進することができる。その作用を十分に得る観点から、Pは、1.5%以下が好ましく、好ましくは1%以下である。また、液相が過剰に発生すると焼結体に寸法誤差が発生する観点から、Pは1.5%以下が好ましい。
焼結において液相化を促進して緻密化を図るために、Pは鉄-リン合金粉末の形態で添加することが好ましい。鉄-リン合金粉末全体に対しP量は、10%以上であることで、十分な液相を発生させて焼結体の緻密化を促進することができる。鉄-リン合金粉末全量に対しP量は、鉄-リン合金粉末が硬くなりすぎて圧縮性が低下することを防止するため、30%以下が好ましい。
焼結合金は、C:0.58~5.55%を含むことが好ましい。
Cは、液相化温度を下げるため、焼結においてFe-P-C液相を発生させ、焼結体の緻密化を促進する。また、Cは、Cr等の金属元素と金属炭化物を生成して耐摩耗性に寄与する。Cは、0.58%以上であることで、焼結体の緻密化を促進し、また、耐摩耗性に寄与することができる。Cは、5.55%以下が好ましく、3.62%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。これによって、焼結合金に析出する金属炭化物の量を制限して、被削性の低下を防止することができる。また、Cが5.55%以下であることで、原料粉末の圧縮性をより改善することができる。
Cは黒鉛粉末の形態で付与することができる。Cの全量を黒鉛粉末の形態で付与すると、鉄合金粉末はCrが鉄基地中に固溶された状態の粉末となり、鉄合金粉末が硬くなり過ぎて圧縮性が損なわれることがある。また、多量の黒鉛粉末の使用も、混合粉末の圧縮性を損なう原因となる。この観点から、Cの一部を鉄合金粉末の形態で付与し、残りのCを黒鉛粉末の形態で付与することが好ましい。
焼結合金は、残部がFe及び不可避不純物からなる。
焼結合金は、Mo、V、W、Nb及びTiからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでもよい。
炭化物生成元素であるMo、V、W、Nb、TiはCrよりも炭化物生成能が強いため、Crよりも優先的に炭化物を形成する。これらの元素を含むことによって、鉄基地のCr濃度低下を防止する作用があるため、鉄基地の耐熱性及び耐食性の向上に寄与することができる。また、Cと結合して合金炭化物を形成し耐摩耗性を向上させることができる。この観点から、Mo、V、又はこれらの組み合わせがより好ましい。
ただし、Mo、V、W、Nb及びTiからなる群から選択される少なくとも1種の元素を純金属粉末の形態で原料粉末に添加すると、それぞれの合金は焼結において拡散が遅いため、鉄基地全体に均一に拡散しにくい。このため、これらの元素は、鉄合金粉末の形態で付与することが好ましい。Mo、V、W、Nb、及びTiを鉄合金粉末中に固溶させる量は、合計量で5%以下が好ましい。また、Mo、V、W、Nb、及びTiを鉄合金粉末中に固溶させる量は、それぞれの単独元素量で5%以下が好ましい。
上記した通り、焼結合金に耐摩耗性を向上するためにCが添加されることで、焼結合金の鉄基地中にはCとCr等の金属元素とが結合した金属炭化物が析出し得る。
炭化物の量及び大きさは耐摩耗性に大きく寄与する。耐摩耗性は炭化物の量が多くなるほど向上する。しかし、炭化物の量が多くなると、自己の耐摩耗性は向上するものの、相手材への攻撃性が増加し、全体としての摩耗量がかえって増加することがある。また、大きな炭化物のみを鉄基地中に分散させる場合、耐摩耗性向上のため、炭化物の分散頻度をある程度確保しようとすると、より多くのCが必要となり、硬質な炭化物がある程度の分散頻度で分散することから被削性が低下することがある。
そのため、一実施形態において、焼結合金には、全体組成の中にC:0.5~4.0%が含まれることで、金属炭化物の析出量を調節して、焼結合金の耐摩耗性とともに被削性を改善することができる。また、後述する焼結合金の製造方法を経ることで、金属炭化物の析出量をより適切に調節することが可能となる。
一実施形態において、焼結合金に析出する金属炭化物の平均粒子径は、3μm~50μmが好ましい。
ここで、金属炭化物の平均粒子径は、焼結体の断面を鏡面研磨し、王水で腐食してから、顕微鏡観察するとともに画像解析して、所定領域に観察される複数の金属炭化物の粒子径を測定し、その平均値から求めることができる。
以下、一実施形態による焼結合金の製造方法の一例について説明する。なお、一実施形態による焼結合金は、以下の製造方法によって製造されたものに限定されない。
一実施形態による焼結合金は、例えば、鉄合金粉末、質量%で、P:10~30%、残部がFe及び不可避不純物からなる組成の鉄-リン合金粉末、ニッケル粉末、及び黒鉛粉末を含み、全体組成が、質量%で、Cr:11.75~39.98%、Ni:5.58~24.98%、Si:0.16~2.54、P:0.1~1.5%、C:0.58~5.55%を含み、残部がFe及び不可避不純物からなる原料粉末を作製し、原料粉末を成形した後に1200℃超過1250℃未満で焼結することを含む。
この方法において、原料粉末は、鉄-リン合金粉末を1.0~5.0質量%、ニッケル粉末を1~12質量%、及び黒鉛粉末を0.5~2.5質量%で含み、残部が鉄合金粉末であることが好ましい。
この方法によれば、上記原料粉末を用いて1200℃超過1250℃未満で焼結することで、全体組成が上記範囲内であって、平均結晶粒径が30~100μmとなる焼結合金を得ることができる。
より詳しくは、一実施形態による焼結合金の製造方法としては、質量%で、Cr:25~45%、Ni:5~15%、Si:1.0~3.0%、C:0.5~4.0%を含み、残部がFe及び不可避不純物からなる組成の鉄合金粉末A、質量%で、Cr:12~25%、Ni:5~15%を含み、残部がFe及び不可避不純物からなる組成の鉄合金粉末B、質量%で、P:10~30%、残部がFe及び不可避不純物からなる組成の鉄-リン合金粉末、ニッケル粉末、及び黒鉛粉末を準備すること;鉄合金粉末A及び鉄合金粉末Bを、鉄合金粉末A及び鉄合金粉末Bの合計量に対する鉄合金粉末Aの割合が20~80質量%となるように添加し、原料粉末全量に対し、鉄-リン合金粉末を1.0~5.0質量%、ニッケル粉末を1~12質量%、及び黒鉛粉末を0.5~2.5質量%で添加し原料粉末を得ること;原料粉末を成形し成形体を得ること;及び成形体を1200℃超過1250℃未満で焼結することを含むことが好ましい。
鉄合金粉末Aは、質量%で、Cr:25~45%、及びC:0.5~4.0%を含むことが好ましい。
鉄合金粉末A中のCr量は、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。これによって、鉄基地部分のCr量が十分となって、鉄基地部分の耐熱性や耐食性をより改善することができる。鉄合金粉末A中のCr量は、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。これによって、原料粉末の圧縮性をより改善することができる。
鉄合金粉末A中のC量は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。これによって、焼結において核となる炭化物の生成を確保して、より好ましい大きさの炭化物を得ることができる。鉄合金粉末A中のC量は、4.0質量%以下が好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。これによって、鉄合金粉末Aの粉末硬さの上昇を防止して、原料粉末の圧縮性をより改善することができる。
鉄合金粉末Bは、質量%で、Cr:12~25%を含むことが好ましい。また、鉄合金粉末Bは、Cを含まないことが好ましい。なお、鉄合金粉末Bにおいて「Cを含まない」とは、積極的に添加しないことを意味し、不可避不純物として含有される程度の量は許容する。
鉄合金粉末B中のCr量は、12質量%以上が好ましい。これによって、焼結においてクロム炭化物の生成量を抑制して、鉄基地部分のCr量の低下を防止し、焼結合金の耐熱性及び耐食性をより改善することができる。鉄合金粉末B中のCr量は、25質量%以下が好ましい。Crは、耐摩耗性に寄与する炭化物を微細分散させるため、Cr量を25質量%以下で制限することが好ましい。
原料粉末は、黒鉛粉末を含むことが好ましい。原料粉末全体に対し黒鉛粉末は0.5~2.5質量%であることが好ましい。
焼結において炭化物を析出分散させるためのCは、鉄合金粉末Aと鉄合金粉末Bの混合粉末に黒鉛粉末の形態で付与されることが好ましい。黒鉛粉末の一部は、焼結において鉄合金粉末表面の酸化被膜の還元に費やされるため、その分を見込んで黒鉛粉末を添加することが好ましい。具体的には、鉄合金粉末A及び鉄合金粉末Bは、それぞれ上記のように易酸化元素であるCrを含むため、それぞれの粉末表面にCrの酸化被膜が形成されており、焼結においてそれぞれの粉末表面の酸化物の還元反応に黒鉛粉末が余剰に費やされる。焼結において還元等で失われる黒鉛は約0.2%程度であるため、黒鉛粉末の添加量はその分を見込んで0.5質量%以上であることが好ましい。この場合、黒鉛粉末から供給され鉄基地に固溶されるCは0.3質量%以上となり得る。一方で、黒鉛粉末を過度に添加すると、炭化物の析出量が過大となって、焼結合金が脆化するとともに、相手材への攻撃性が著しく増大して相手材を摩耗させたり、焼結合金の被削性を悪化させたりする。また、炭化物の析出量が過大となると、その分焼結合金の鉄基地に含有されるCr量が低下することとなり、焼結合金の耐熱性及び耐食性を低下させることがある。この観点から、黒鉛粉末は2.5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
なお、黒鉛粉末は上記の炭化物形成の作用の他、後述する、鉄-リン合金粉末とともに、焼結においてFe-P-C液相を発生させ、液相化温度を低減して、焼結合金の緻密化促進に寄与する作用も有する。
焼結合金の鉄基地は、耐熱性及び耐食性を備えるとともに、周囲のオーステナイト系耐熱材料と同等の熱膨張係数を備えることが好ましい。このため、鉄基地に固溶して鉄基地の耐熱性及び耐食性を向上させるとともに、鉄基地をオーステナイト化するために、鉄基地はNiを含むことが好ましい。一実施形態による焼結合金は、より均一なオーステナイト基地を得るために、鉄合金粉末A及び鉄合金粉末BがそれぞれNiを含むことが好ましく、さらに、原料粉末にニッケル粉末を別添加することが好ましい。
鉄合金粉末A及び鉄合金粉末Bは、それぞれNi:5~15質量%を含むことが好ましい。このNiは、鉄合金粉末に固溶して含まれることが好ましい。
鉄合金粉末がNiを含むことで、鉄合金粉末の鉄基地がオーステナイト基地となり、鉄合金粉末の硬さを低減して原料粉末の圧縮性が向上する作用も得ることができる。鉄合金粉末中のNi量は、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましい。これによって、鉄合金粉末のオーステナイト化を十分に得ることができる。一方、鉄合金粉末中のNi量が15質量%を超えても圧縮性のさらなる向上作用は期待しにくい。さらに、NiはFeやCrに比較して高価であり、近年、地金の価格も高騰している。これより、鉄合金粉末中のNi量は15質量%以下とするとよく、10質量%以下でもよい。
原料粉末は、原料粉末全量に対し1~12質量%のニッケル粉末を含むことが好ましい。
上記した鉄合金粉末A及び鉄合金粉末Bに含まれるNiに加えて、原料粉末にニッケル粉末が別添加されることが好ましい。これによって、焼結合金の緻密化を促進することができる。この緻密化促進の作用は、ニッケル粉末の添加量が1質量%以上であることで十分に得ることができる。一方、ニッケル粉末の添加量が過剰になると、粉末の形態で付与するNiが過大となり、鉄基地中に拡散しきらず、Niが単体で残留し易くなる。このようにニッケル粉末が残留して形成されるNi相には炭化物が析出しないことから、相手材に凝着し易く、そこから摩耗が進行して焼結合金の耐摩耗性が低下することがある。これより、原料粉末に添加するニッケル粉末は12質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
また、添加するニッケル粉末としては、ニッケル粉末の粒径が小さくなるほど、焼結後にNi相が残留し難くなるため好ましい。また、ニッケル粉末の粒径が小さくなるほど、粉末の比表面積が増大し、焼結時の拡散が促進されて焼結合金の緻密化の作用が大きくなる。このため、ニッケル粉末は、200メッシュの篩を通過する粉末、すなわち最大粒子径が74μm以下のニッケル粉末が好ましく、325メッシュの篩を通過する粉末、すなわち最大粒子径が43μm以下のニッケル粉末がより好ましい。
鉄合金粉末Aは、Si:1.0~3.0%を含むことが好ましい。
Cr等の易酸化元素を含む鉄合金粉末の製造において、Siは脱酸剤として添加される。また、Siは鉄基地中に固溶して与えられると鉄基地の耐酸化性、耐熱性を高める作用を有する。しかしながら、鉄基地中にSiが固溶すると鉄基地が硬化するという好ましくない作用を有する。ここで、上記の鉄合金粉末Aは、予め炭化物が析出することから、元々の粉末硬さが高いものであり、一方、上記の鉄合金粉末Bは、軟質であり、両者を混合することで原料粉末の圧縮性を確保するものである。このため、易酸化元素であるCrを多量に含むとともに、元々の粉末硬さが高い鉄合金粉末Aに、上記効果を有するSiを与えることで、上記のSiの作用を焼結合金に付与することができる。
鉄合金粉末A中のSi量が1.0質量%以上であることで、上記した作用をより十分に得ることができる。また、鉄合金粉末A中のSi量が3.0質量%を以下であることで、鉄合金粉末Aの粉末硬さの上昇を抑制して、原料粉末の圧縮性をより改善することができる。
鉄合金粉末Bは、Siを含まないことが好ましい。なお、鉄合金粉末Bは易酸化元素であるCrを含むことから、鉄合金粉末の製造において脱酸剤としてSiが使用されることもある。そのため、鉄合金粉末Bにおいて、1.0%未満のSiの混入は不可避不純物として許容され得る。
原料粉末は、鉄-リン合金粉末を含むことが好ましい。原料粉末全量に対し鉄-リン粉末は1.0~5.0質量%であることが好ましい。
また、鉄-リン合金粉末は、質量%で、P:10~30%、残部がFe及び不可避不純物からなる組成であることが好ましい。
原料粉末には、焼結において液相を発生させて焼結合金の緻密化を促進させるために、鉄-リン合金粉末の状態でPを含むことが好ましい。Pは、Cとともに焼結においてFe-P-C液相を発生させて焼結体の緻密化を促進することができる。これにより、高密度比の焼結合金を得ることが可能となり、特に密度比が90%以上の焼結合金を得ることが可能となる。
鉄-リン合金粉末中のP量が10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であることで、焼結において液相をより確実に発生させて、焼結体の緻密化をより促進することができる。鉄-リン合金粉末中のP量が30質量%以下、より好ましくは25質量%以下であることで、鉄-リン合金粉末の粉末硬さの上昇を防止して、原料粉末の圧縮性をより改善することができる。
原料粉末全量に対する鉄-リン合金粉末の添加量は、1.0質量%以上であることで、焼結において液相をより確実に発生させて、焼結合金の緻密化をより促進することができる。これによって、高密度比、特に90%以上の密度比を備える焼結合金を得ることが可能となる。原料粉末全量に対する鉄-リン合金粉末の添加量は、5.0質量%以下、より好ましくは3質量%以下であることで、焼結において液相の発生を適量として、焼結の際の型くずれの発生を防止することができる。
焼結において鉄-リン合金粉末に由来して発生するFe-P-C液相は、鉄合金粉末A及び鉄合金粉末Bによって形成される鉄基地に拡散して吸収される。これによって、得られる焼結合金において、Pが含まれることが好ましく、Pが0.1~1.5質量%で含まれることがより好ましい。
鉄合金粉末A及び鉄合金粉末Bは、それぞれMo、V、W、Nb及びTiからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでもよい。これらの元素は、鉄合金粉末A及び鉄合金粉末Bのそれぞれに固溶して含まれることが好ましい。
Mo、V、W、Nb及びTiの合計量は、原料粉末の全体組成に対し5質量%以下であることが好ましい。また、Mo、V、W、Nb及びTiのそれぞれ単独の元素が、原料粉末の全体組成に対し5質量%以下が好ましい。
Mo、V、W、Nb及びTiは、それぞれ原料粉末A及び原料粉末Bのうち少なくとも一方又は両方に含まれることが好ましい。この場合、Mo、V、W、Nb及びTiの合計量は、鉄合金粉末A全体に対して5質量%以下が好ましい。また、Mo、V、W、Nb及びTiのそれぞれ単独の元素が、鉄合金粉末A全体に対して5質量%以下が好ましい。Mo、V、W、Nb及びTiの合計量は、鉄合金粉末B全体に対して5質量%以下が好ましい。また、Mo、V、W、Nb及びTiのそれぞれ単独の元素が、鉄合金粉末B全体に対して5質量%以下が好ましい。
上記した原料粉末には、鉄合金粉末A及び鉄合金粉末Bの合計量に対する鉄合金粉末Aの割合が20~80質量%となるように、鉄合金粉末A及び鉄合金粉末Bを添加することが好ましい。この割合は、30~70質量%がより好ましく、40~60質量%がさらに好ましい。また、原料粉末には、原料粉末全量に対し、鉄-リン合金粉末を1.0~5.0質量%と、ニッケル粉末を1~12質量%と、黒鉛粉末を0.5~2.5質量%とを添加することが好ましい。原料粉末は、鉄-リン合金粉末、ニッケル粉末、及び黒鉛粉末以外の残部が鉄合金粉末A及び鉄合金粉末Bであることが好ましい。
上記した原料粉末を成形し、1200℃超過1250℃未満で焼結することで、上記した全体組成を有し、平均結晶粒径が30~100μmである焼結合金を得ることができる。
上記した原料粉末を成形する方法は特に限定されずに、通常の方法にしたがって成形体を作製することができる。例えば、製品の外周形状を造形する型孔を有する金型と、金型の型孔と摺動自在に嵌合し、製品の下端面を造形する下パンチと、場合によっては製品の内周形状もしくは肉抜き部を造形するコアロッドと、から形成されるキャビティに原料粉末を充填し、製品の上端面を造形する上パンチと、下パンチとにより原料粉末を圧縮成形した後、金型の型孔から抜き出す方法(いわゆる押型法)により成形体に成形することができる。
得られた成形体を焼結する方法は特に限定されずに、焼結炉を用いて焼結を行って焼結体を作製することができる。
焼結温度は、1200℃超過が好ましく、1210℃以上がより好ましい。この温度範囲で、焼結合金の結晶粒の成長が促進されて、焼結合金の平均結晶粒径を30μm以上として、高温強度をより高めることができる。
焼結温度は、1250℃未満が好ましく、1240℃以下がより好ましい。この温度範囲で、結晶粒の過剰な成長を抑制して、焼結合金の平均結晶粒径を100μm以下として、高温強度をより高めることができる。
焼結時間は特に限定されないが、焼結時間は最高温度での保持時間であり、例えば10min~120minであってよい。焼結後の冷却速度は特に限定されないが、5℃/分~10℃/分が好ましい。
焼結は、常圧雰囲気、真空雰囲気、減圧雰囲気等のいずれで行ってもよい。一実施形態による製造方法では、鉄-リン合金粉末を添加して焼結において液相を発生させて焼結を促進させることができるため、高価な真空雰囲気又は減圧雰囲気を用いなくてもよい。
焼結は、大気雰囲気、活性ガス、非還元性ガス、非酸化性ガス、非活性ガス等のいずれであってもよいが、酸化被膜の形成を抑制するために非酸化性ガスを好ましく用いることができる。非酸化性ガスとしては、例えば、窒素を10%以上含む窒素と水素との混合ガス、窒素ガス等が挙げられる。
(焼結体試料の作製)
表1に、原料粉末の配合割合、焼結体試料の全体組成を示す。表2に、焼結体試料の焼結温度及び評価結果を示す。
質量%で、Cr:34%、Ni:10%、Si:2%、C:2%、残部がFe及び不可避不純物からなる鉄合金粉末A、質量%で、Cr:18%、Ni:8%、残部がFe及び不可避不純物からなる鉄合金粉末B、質量%で、P:20%、残部がFe及び不可避不純物からなる鉄-リン合金粉末、ニッケル粉末及び黒鉛粉末を用意し、これらの粉末を表1に示す割合で添加、混合して原料粉末を得た。この原料粉末を、外径10mm、高さ10mmの柱状;JISG0567(1988)II-6型の棒状(平行部径6mm、標点距離30mm、平行部の長さ33~45mm、肩部の半径≧3mm);及び外径24mm、高さ8mmの薄板形状に成形し、非酸化性雰囲気中で表2に示す焼結温度(最高温度の保持時間)で30分間以上、焼結し、焼結体試料を作製した。得られた焼結体試料の全体組成を表1に併せて示す。
(評価)
得られた柱状の焼結体試料を用いて、焼結体の平均結晶粒径を次の手順で評価した。
焼結体試料の金属組織の結晶粒界が見えるように光学顕微鏡(株式会社ニコン製「ECLIPSE」)を調整し、500倍に拡大して観察した。148μm×196μmの焼結体試料の金属組織の写真を撮り、視野中に観察される5個の結晶粒を無作為に抽出し、最長サイズaと最短サイズbをソフト(三谷商事株式会社製「WinROOF」))で測定した。最長サイズaと最短サイズbの平均値が1個の結晶粒の粒径となると仮定し、5個の結晶粒について測定した合計10個の測定値の平均値を平均結晶粒径とした。なお、一つの視野に5個の結晶粒が観察されない場合は、視野を増やして、測定した。
得られた棒状の焼結体試料を用いて、焼結体の高温強度を加熱炉付きの引張強度試験機を用いて900℃で評価した。
装置名:株式会社島津製作所製の精密万能試験機「AG-100KNE/XR」
高温保持時間:10min以上
試験速度:耐力の取得まで0.09mm/min、以降2.25mm/min
得られた薄板形状の焼結体試料について、これをディスク材として用い、JIS規格のSUS316L相当材にクロマイズ処理を施した外径15mm、長さ22mmのロールを相手材として、試験温度700℃で15分間の往復摺動を行うロールオンディスク摩擦摩耗試験を行い、試験後のディスク材の摩耗深さを測定した。平均摩耗深さは、面荒さ測定器で描いた摺動面形状曲線の平均深さである。
Figure 0007467904000001
Figure 0007467904000002
各表に示す通り、全体組成が好ましい範囲内であり、かつ、焼結温度が1200℃超過1250℃未満である場合に、焼結体の平均結晶粒径が30~100μmであることが確認され、また、高温強度が優れる結果であった。
焼結温度が1250℃の例1では、結晶粒の成長が過剰に進行し、焼結中に焼結体が溶融し、サンプルの製造ができなかった。
焼結温度が1200℃及び1140℃の例4及び例5では、結晶粒の成長が十分に進行せずに、平均結晶粒径がそれぞれ26μm及び10μmであり、高温強度が低下した。
(結晶粒の観察)
例3と例5について、光学顕微鏡を用いて結晶粒を観察した。その結果を図1に示す。図1(a)は例5であり、図1(b)は例3である。この結果から、1200℃以下で焼結した例5では平均結晶粒径が30μm未満であるが、1200℃超過で焼結した例3では平均結晶粒径が30~100μmであることが確認された。
(応力と歪みの関係)
例5と例3について、950℃、荷重10MPa、試験時間最大24時間、試験片形状II-6型、平行部φ6~30mmmの条件で、クリープ時間と歪みの関係を測定した。結果を図2に示す。この結果から、より高温環境となる950℃では、結晶粒が30~100μmの例3の歪み量が少ないことがわかる。詳しくは、クリープ時間が15時間において、例5のひずみは26.4%であるが、例3のひずみは2.7%であった。
測定条件は、以下の通りとした。
試験温度:950℃、荷重:10MPa、試験時間:最大24Hr、試験片形状:II-6型、平行部φ6~30mm。
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
一実施形態による焼結合金は、高温における優れた耐熱性、耐食性及び耐摩耗性を有するとともに、優れた被削性を有し、鉄基地組織がオーステナイトであるため、オーステナイト系耐熱材料と同等の熱膨張係数を有し、さらに、優れた高温強度を有することから、例えばターボチャージャー用ターボ部品、特に耐熱性とともに耐食性及び耐摩耗性が要求されるノズルボディ等に好適に用いることができる。

Claims (4)

  1. 全体組成が、質量%で、Cr:11.75~39.98%、Ni:5.58~24.98%、Si:0.16~2.54、P:0.1~1.5%、C:0.58~5.55%を含み、残部がFe及び不可避不純物からなり、平均結晶粒径が30μm~100μmである、焼結合金。
  2. 質量%で、Mo、V、W、Nb、及びTiからなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに合計量で5%以下含む、請求項1に記載の焼結合金。
  3. 質量%で、Cr:25~45%、Ni:5~15%、Si:1.0~3.0%、C:0.5~4.0%を含み、残部がFe及び不可避不純物からなる組成の鉄合金粉末A、
    質量%で、Cr:12~25%、Ni:5~15%を含み、残部がFe及び不可避不純物からなる組成の鉄合金粉末B、
    質量%で、P:10~30%、残部がFe及び不可避不純物からなる組成の鉄-リン合金粉末、ニッケル粉末、及び黒鉛粉末を準備すること;
    前記鉄合金粉末A及び前記鉄合金粉末Bを、前記鉄合金粉末A及び前記鉄合金粉末Bの合計量に対する前記鉄合金粉末Aの割合が20~80質量%となるように添加し、原料粉末全量に対し、前記鉄-リン合金粉末を1.0~5.0質量%、前記ニッケル粉末を1~12質量%、及び前記黒鉛粉末を0.5~2.5質量%で添加し原料粉末を得ること;
    前記原料粉末を成形し成形体を得ること;及び
    前記成形体を1200℃超過1250℃未満で焼結することを含む、請求項1または2に記載の焼結合金の製造方法。
  4. 前記鉄合金粉末A及び前記鉄合金粉末Bのうち少なくとも一方は、Mo、V、W、Nb、及びTiからなる群から選択される少なくとも1種を、合計量で、原料粉末の全体組成に対し5質量%以下でさらに含む、請求項3に記載の焼結合金の製造方法。
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