以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。同一の部材を示す複数の図面同士においても、形状等を誇張するために、寸法比率等は互いに一致していないことがある。
第1実施形態以外の実施形態の説明においては、基本的に、先に説明された実施形態との相違点についてのみ述べる。特に言及が無い事項は、先に説明された実施形態と同様とされたり、先に説明された実施形態から類推されたりしてよい。
<第1実施形態>
(プリンタの全体構成)
図1Aは、第1実施形態に係る記録装置としてのカラーインクジェットプリンタ1(以下で単にプリンタと言うことがある。)の概略の側面図である。図1Bは、プリンタ1の概略の平面図である。プリンタ1は、第1実施形態に係る記録ヘッドとしての液体吐出ヘッド2(以下で単にヘッドということがある。)を含む。
プリンタ1は、記録媒体である印刷用紙Pを給紙ローラ80Aから回収ローラ80Bへと搬送することにより、印刷用紙Pをヘッド2に対して相対的に移動させる。なお、給紙ローラ80A及び回収ローラ80B並びに後述する各種のローラは、印刷用紙Pとヘッド2とを相対移動させる移動部85を構成している。制御装置88は、画像や文字等のデータである印刷データ等に基づいて、ヘッド2を制御して、印刷用紙Pに向けて液体を吐出させ、印刷用紙Pに液滴を着弾させて、印刷用紙Pに印刷などの記録を行なう。
本実施形態では、ヘッド2はプリンタ1に対して固定されており、プリンタ1はいわゆるラインプリンタとなっている。記録装置の他の実施形態としては、いわゆるシリアルプリンタが挙げられる。シリアルプリンタでは、例えば、ヘッド2を、印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向、例えば、ほぼ直交する方向に往復させる。その往復の途中では、液滴を吐出する動作と、印刷用紙Pの搬送とが交互に行なわれる。
プリンタ1には、印刷用紙Pとほぼ平行となるように、4つの平板状のヘッド搭載フレーム70(以下で単にフレームと言うことがある。)が固定されている。各フレーム70には図示しない5個の孔が設けられており、5個のヘッド2がそれぞれの孔の部分に搭載されている。1つのフレーム70に搭載されている5つのヘッド2は、1つのヘッド群72を構成している。プリンタ1は、4つのヘッド群72を有しており、合計20個のヘッド2が搭載されている。
フレーム70に搭載されたヘッド2は、液体を吐出する部位が印刷用紙Pに面するようになっている。ヘッド2と印刷用紙Pとの間の距離は、例えば0.5~20mm程度とされる。
20個のヘッド2は、制御装置88と直接繋がっていてもよいし、印刷データを分配する分配部を介して制御装置88と接続されていてもよい。例えば、制御装置88が印刷データを1つの分配部へ送付し、1つの分配部が印刷データを20個のヘッド2に分配してもよい。また、例えば、4つのヘッド群72に対応する4つの分配部へ制御装置88が印刷データを分配し、各分配部は、対応するヘッド群72内の5つのヘッド2に印刷データを分配してもよい。
ヘッド2は、図1Aの手前から奥へ向かう方向、図1Bの上下方向に細長い長尺形状を有している。1つのヘッド群72内において、3つのヘッド2は、印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向、例えば、ほぼ直交する方向に沿って並んでおり、他の2つのヘッド2は搬送方向に沿ってずれた位置で、3つのヘッド2の間にそれぞれ一つずつ並んでいる。別の表現をすれば、1つのヘッド群72において、ヘッド2は、千鳥状に配置されている。ヘッド2は、各ヘッド2で印刷可能な範囲が、印刷用紙Pの幅方向、すなわち、印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向に繋がるように、あるいは端が重複するように配置されており、印刷用紙Pの幅方向に隙間のない印刷が可能になっている。
4つのヘッド群72は、印刷用紙Pの搬送方向に沿って配置されている。各ヘッド2には、図示しない液体供給タンクから液体、例えば、インクが供給される。1つのヘッド群72に属するヘッド2には、同じ色のインクが供給されるようになっており、4つのヘッド群72で4色のインクが印刷できる。各ヘッド群72から吐出されるインクの色は、例えば、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)及びブラック(K)である。このようなインクを、制御装置88で制御して印刷すれば、カラー画像が印刷できる。
プリンタ1に搭載されているヘッド2の個数は、単色で、1つのヘッド2で印刷可能な範囲を印刷するのであれば、1つでもよい。ヘッド群72に含まれるヘッド2の個数、及び/又はヘッド群72の個数は、印刷する対象、及び/又は印刷条件により適宜変更できる。例えば、さらに多色の印刷を行うためにヘッド群72の個数を増やしてもよい。また、同色で印刷するヘッド群72を複数配置して、搬送方向に交互に印刷すれば、同じ性能のヘッド2を使用しても搬送速度を速くできる。これにより、時間当たりの印刷面積を大きくすることができる。また、同色で印刷するヘッド群72を複数準備して、搬送方向と交差する方向にずらして配置して、印刷用紙Pの幅方向の解像度を高くしてもよい。
さらに、色のあるインクを印刷する以外に、印刷用紙Pの表面処理を実行するために、コーティング剤などの液体を、ヘッド2で、一様に、あるいはパターンニングして印刷してもよい。コーティング剤としては、例えば、記録媒体として液体が浸み込み難いものを用いる場合において、液体が定着し易いように、液体受容層を形成するものが使用できる。他に、コーティング剤としては、記録媒体として液体が浸み込み易いものを用いる場合において、液体のにじみが大きくなり過ぎたり、隣に着弾した別の液体とあまり混じり合わないように、液体浸透抑制層を形成するものが使用できる。コーティング剤は、ヘッド2で印刷する以外に、制御装置88が制御する塗布機76で一様に塗布してもよい。
プリンタ1は、記録媒体である印刷用紙Pに印刷を行なう。印刷用紙Pは、給紙ローラ80Aに巻き取られた状態になっており、給紙ローラ80Aから送り出された印刷用紙Pは、フレーム70に搭載されているヘッド2の下側を通り、その後2つの搬送ローラ82Cの間を通り、最終的に回収ローラ80Bに回収される。印刷する際には、搬送ローラ82Cを回転させることで印刷用紙Pは、一定速度で搬送され、ヘッド2によって印刷される。
続いて、プリンタ1の詳細について、印刷用紙Pが搬送される順に説明する。給紙ローラ80Aから送り出された印刷用紙Pは、2つのガイドローラ82Aの間を通った後、塗布機76の下を通る。塗布機76は、印刷用紙Pに、上述のコーティング剤を塗布する。
印刷用紙Pは、続いて、ヘッド2が搭載されたフレーム70を収納した、ヘッド室74に入る。ヘッド室74は、印刷用紙Pが出入りする部分などの一部において外部と繋がっているが、概略、外部と隔離された空間である。ヘッド室74は、必要に応じて、制御装置88等によって、温度、湿度、及び気圧等の制御因子が制御される。ヘッド室74では、プリンタ1が設置されている外部と比較して、外乱の影響を少なくできるので、上述の制御因子の変動範囲を外部よりも狭くできる。
ヘッド室74には、5個のガイドローラ82Bが配置されており、印刷用紙Pは、ガイドローラ82Bの上を搬送される。5個のガイドローラ82Bは、側面から見て、フレーム70が配置されている方向に向けて、中央が凸になるように配置されている。これにより、5個のガイドローラ82Bの上を搬送される印刷用紙Pは、側面から見て円弧状になっており、印刷用紙Pに張力を加えることで、各ガイドローラ82B間の印刷用紙Pが平面状になるように張られる。2つのガイドローラ82Bの間には、1つのフレーム70が配置されている。各フレーム70は、その下を搬送される印刷用紙Pと平行になるように、設置される角度が少しずつ変えられている。
ヘッド室74から外に出た印刷用紙Pは、2つの搬送ローラ82Cの間を通り、乾燥機78の中を通り、2つのガイドローラ82Dの間を通り、回収ローラ80Bに回収される。印刷用紙Pの搬送速度は、例えば、100m/分とされる。各ローラは、制御装置88によって制御されてもよいし、人によって手動で操作されてもよい。
乾燥機78で乾燥することにより、回収ローラ80Bにおいて、重なって巻き取られる印刷用紙P同士が接着したり、未乾燥の液体が擦れることが起き難くできる。高速で印刷するためには、乾燥も速く行なう必要がある。乾燥を速くするため、乾燥機78では、複数の乾燥方式により順番に乾燥してもよいし、複数の乾燥方式を併用して乾燥してもよい。そのような際に用いられる乾燥方式としては、例えば、温風の吹き付け、赤外線の照射、加熱したローラへの接触などがある。赤外線を照射する場合は、印刷用紙Pへのダメージを少なくしつつ乾燥を速くできるように、特定の周波数範囲の赤外線を当ててもよい。印刷用紙Pを加熱したローラに接触させる場合は、印刷用紙Pをローラの円筒面に沿って搬送させことで、熱が伝わる時間を長くしてもよい。ローラの円筒面に沿って搬送させる範囲は、ローラの円筒面の1/4周以上がよく、さらにローラの円筒面の1/2周以上にするのがよい。UV硬化インク等を印刷する場合には、乾燥機78の代わりに、あるいは乾燥機78に追加してUV照射光源を配置してもよい。UV照射光源は、各フレーム70の間に配置してもよい。
プリンタ1は、ヘッド2をクリーニングするクリーニング部を備えていてもよい。クリーニング部は、例えば、ワイピング、及び/又はキャッピングしての洗浄を行なう。ワイピングは、例えば、柔軟性のあるワイパーで、液体が吐出される部位の面、例えば対向面3a(後述)を擦ることで、その面に付着していた液体を取り除く。キャッピングしての洗浄は、例えば、次のように行なう。まず、液体を吐出される部位、例えば対向面3aを覆うようにキャップを被せる(これをキャッピングと言う)ことで、対向面3aとキャップとで、ほぼ密閉されて空間が作られる。そのような状態で、液体の吐出を繰り返すことで、ノズル5(後述)に詰まっていた、標準状態よりも粘度が高くなっていた液体、及び/又は異物等を取り除く。キャッピングしてあることで、洗浄中の液体がプリンタ1に飛散し難く、液体が、印刷用紙Pやローラ等の搬送機構に付着し難くできる。洗浄を終えた対向面3aを、さらにワイピングしてもよい。ワイピング、及び/又はキャッピングしての洗浄は、プリンタ1に取り付けられているワイパー及び/又はキャップを人が手動で操作して行なってもよいし、制御装置88によって自動で行なってもよい。
記録媒体は、印刷用紙P以外に、ロール状の布などでもよい。また、プリンタ1は、印刷用紙Pを直接搬送する代わりに、搬送ベルトを直接搬送して、記録媒体を搬送ベルトに置いて搬送してもよい。そのようにすれば、枚葉紙、裁断された布、木材又はタイルなどを記録媒体にできる。さらに、ヘッド2から導電性の粒子を含む液体を吐出するようにして、電子機器の配線パターンなどを印刷してもよい。
また、プリンタ1に、位置センサ、速度センサ、温度センサなどを取り付けて、制御装置88が、各センサからの情報から分かるプリンタ1各部の状態に応じて、プリンタ1の各部を制御してもよい。例えば、ヘッド2の温度、ヘッド2に液体を供給する液体供給タンクの液体の温度、及び/又は液体供給タンクの液体がヘッド2に加えている圧力などが、吐出される液体の吐出特性、すなわち、吐出量及び/又は吐出速度などに影響を与えている場合などに、それらの情報に応じて、液体を吐出させる駆動信号を変えるようにしてもよい。
以下では、便宜上、基本的に、1つのヘッド2に着目して説明する。従って、例えば、以下において、全てのノズルという場合は、特に断りが無い限り、1つのヘッド2における全てのノズルを指す。全てのノズルという場合において、特に断りが無い限り、特異なノズルは、全てのノズルと言う用語が指定するノズルとは異なるノズルとして扱われてよい。例えば、ヘッド2の端部に位置するノズルにおける吐出特性をヘッド2の中央に位置するノズルにおける吐出特性に近づけるために、上記の端部に位置するノズルの更に外側に液滴を吐出しないダミーのノズルが設けられることがある。このようなダミーのノズルは全てのノズルという場合のノズルに含まれなくてよい。ノズル以外の構成要素についても同様である。
(ヘッド)
図2Aは、ヘッド2が有するヘッド本体3を記録媒体(印刷用紙P)とは反対側から見た斜視図である。図2Bは、ヘッド本体3を記録媒体の側から見た斜視図である。図2Cは、図2AのIIc-IIc線における断面図である。
これらの図では、便宜上、D1軸、D2軸及びD3軸等からなる直交座標系を付している。D1軸は、ヘッド本体3と記録媒体との相対移動の方向(図1Aにおける印刷用紙Pの搬送方向)に平行に定義されている。D1軸の正負と、ヘッド本体3に対する記録媒体の進行方向との関係は、本実施形態の説明では特に問わない。D2軸は、記録媒体に平行で、かつD1軸に直交するように定義されている。D2軸の正負も特に問わない。D3軸は、記録媒体に直交するように定義されている。-D3側は、ヘッド本体3から記録媒体への方向であるものとする。ヘッド本体3は、いずれの方向が上方又は下方として用いられてもよいが、便宜上、+D3側を上方として、下面等の用語を用いることがある。
1つのヘッド2は、1つのヘッド本体3を有している。ヘッド本体3は、液体の吐出を直接的に担う部分であり、記録媒体に対向する対向面3aを有している。対向面3aには、液体を吐出するための複数のノズル5が開口している。ヘッド2は、ヘッド本体3の他、例えば、ヘッド本体3と接続される回路基板、及び/又はヘッド本体3の上部を覆う筐体を有してよい。なお、ヘッド2がヘッド本体3以外の構成要素を有しているか否かに関わらず、ヘッド本体3が本開示の一実施形態に係るヘッドとして捉えられてもよい。
複数のノズル5は、D2方向の位置を互いに異ならせて配置されている。従って、移動部85によってヘッド2と記録媒体とをD1方向において相対移動させつつ、複数のノズル5からインク滴を吐出することにより、任意の2次元画像が形成される。複数のノズル5は、図示の例のように、2次元的に配置されていてもよいし、図示の例とは異なり、1次元的に配置されていてもよい。
複数のノズル5の具体的な大きさ、数、ピッチ及び配置パターン等は適宜に設定されてよい。図2Bは、模式図であることから、ヘッド本体3の大きさに対してノズル5が大きく示され、また、1つのヘッド本体3におけるノズル5の数が少なく示されている。一般には、図示の例よりも、ノズル5は小さく、かつノズル5の数は多い。例えば、1つのヘッド本体3において、ノズル5の数は、100個以上10000個以下とされてよい。また、例えば、1つのヘッド本体3は、D2方向のドット密度が800dpi以上1600dpi以下となるようなピッチ及び配置パターンで複数のノズル5を有してよい。
複数のノズル5の構成、及び複数のノズル5毎に設けられている構成要素(例えば後述のアクチュエータ17及び素子制御回路51)は、基本的に、複数のノズル5同士で同じ構成とされている。特に断りが無い限り、1つのノズル5又は1つのノズル5に対応する構成要素の説明は、他のノズル5に援用されてよい。
ヘッド本体3は、例えば、以下の構成要素を備えている。対向面3aを有している対向基板7。対向基板7の上方に固定されている背面部材9。対向基板7に電気的に接続されている1つ以上(図示の例では2つ)のフレキシブル基板11。各フレキシブル基板11に実装されている1つ以上(図示の例では2つ)のIC(Integrated Circuit)13。
対向基板7は、液滴の吐出に直接的に寄与する。後に詳述するように、対向基板7は、複数のノズル5に通じる流路、及び複数のノズル5内の液体に圧力を付与するアクチュエータを有している。対向基板7の形状及び大きさ等は適宜に設定されてよい。図示の例では、対向基板7は、概略、矩形の平板状である。その厚さ(D3方向)は、例えば、0.5mm以上2mm以下である。
背面部材9は、例えば、対向基板7と他の構成要素との仲介に寄与する。例えば、背面部材9は、対向基板7の上述したフレーム70に対する位置決めに寄与する。具体的には、例えば、背面部材9は、その下面が対向基板7の上面のうち外縁側の部分に接着され、また、下方の部分がフレーム70の孔に挿入されつつ上方のフランジ状部分がフレーム70に支持される。また、例えば、背面部材9は、インクの流れに関して不図示のインクタンクと対向基板7とを仲介する。具体的には、背面部材9は、上面に開口する開口9aと、下面のうち対向基板7と接着される面に開口する不図示の開口とを有している。上面の開口と下面の開口とは、背面部材9内の不図示の流路によってつながっている。開口9aは、不図示のチューブ等を介してインクタンクと接続される。
フレキシブル基板11は、対向基板7と、制御装置88との電気的接続に寄与する。具体的には、例えば、フレキシブル基板11は、背面部材9を上下に貫通するスリット9bに挿通されている。フレキシブル基板11のうちスリット9bから下方に延び出た部分は、対向基板7の上面に対向して配置され、不図示の導電性バンプ(例えば、はんだ)によって対向基板7の上面に接合されている。フレキシブル基板11のうちスリット9bから上方に延び出た部分は、当該部分に実装されたコネクタ、又はフレキシブル基板11と接続されているリジッド基板に実装されたコネクタを介して、制御装置88から延びる不図示のケーブルと接続される。
IC13は、例えば、対向基板7の後述するアクチュエータの駆動及び制御に寄与する。具体的には、例えば、IC13は、フレキシブル基板11を介して制御装置88からの制御信号が入力され、入力された制御信号に基づいて駆動電力(別の観点では信号)を生成し、生成した駆動電力をフレキシブル基板11を介して対向基板7のアクチュエータに入力する。IC13の形状、大きさ、数及び位置等は適宜に設定されてよい。
(記録素子の構成)
図3は、図2BのIII-III線における断面図である。すなわち、図3は、対向基板7の一部を拡大して示す模式的な断面図である。なお、D3軸の向きから理解されるように、図3における紙面上方は、図2Bの紙面下方である。
対向基板7は、ノズル5毎に設けられた複数の記録素子15(吐出素子)を有しており、図3では、1つの記録素子15が示されている。複数の記録素子15は、複数のノズル5と同様に、対向面3aに沿って2次元的(又は1次元的)に配置されている。記録素子15は、ノズル5と、ノズル5内の液体に圧力を付与するアクチュエータ17とを有している。アクチュエータ17は、圧電体の機械的歪によりインクに圧力を付与するピエゾ式のものである。
別の観点では、対向基板7は、液体(インク)が流れる流路が形成されている板状の流路部材19と、流路部材19内の液体に圧力を付与するためのアクチュエータ基板21とを有している。複数のノズル5は、流路部材19に形成されている。複数のアクチュエータ17は、アクチュエータ基板21に形成されている。すなわち、複数の記録素子15は、流路部材19及びアクチュエータ基板21によって構成されている。
流路部材19は、共通流路23と、共通流路23にそれぞれ接続されている複数の個別流路25(図3では1つを図示)とを有している。各個別流路25は、ノズル5を有しており、また、共通流路23からノズル5へ順に、接続流路25a、加圧室25b及び部分流路25c(ディセンダ)を有している。加圧室25bは、流路部材19の対向面3aとは反対側の面に開口している。部分流路25cは、加圧室25bから対向面3a側へ延びている。ノズル5は、部分流路25cの底面に開口している。各流路の具体的な形状及び大きさは適宜に設定されてよい。
複数の個別流路25及び共通流路23には液体が満たされている。複数の加圧室25bの容積が変化して液体に圧力が付与されることにより、複数の加圧室25bから複数の部分流路25cへ液体が送出され、複数のノズル5から複数の液滴が吐出される。また、複数の加圧室25bへは複数の接続流路25aを介して共通流路23から液体が補充される。
流路部材19は、例えば、複数のプレート27A~27J(以下、A~Jを省略することがある。)が積層されることにより構成されている。プレート27には、複数の個別流路25及び共通流路23を構成する複数の穴(主として貫通孔。凹部にすることも可)が形成されている。複数のプレート27の厚み及び積層数は、複数の個別流路25及び共通流路23の形状等に応じて適宜に設定されてよい。複数のプレート27は、適宜な材料により形成されてよい。例えば、複数のプレート27は、金属又は樹脂によって形成されている。プレート27の厚さは、例えば、10μm以上300μm以下である。
アクチュエータ基板21は、複数の加圧室25bに亘る広さを有する概略板状である。アクチュエータ基板21は、いわゆるユニモルフ型の圧電アクチュエータによって構成されている。なお、アクチュエータ基板21は、バイモルフ型等の他の形式の圧電アクチュエータによって構成されていてもよい。ユニモルフ型のアクチュエータ基板21(アクチュエータ17)は、例えば、流路部材19側から順に、振動板29、共通電極31、圧電体層33及び個別電極35を有している。
振動板29、共通電極31及び圧電体層33は、例えば、平面視において複数の加圧室25bに亘って広がっている。すなわち、これらは、複数の加圧室25bに共通に設けられている。個別電極35は、加圧室25b毎に設けられている。個別電極35は、加圧室25bに重なる本体部35aと、本体部35aから延び出ている引出電極35bとを有している。本体部35aは、例えば、概略、加圧室25bの形状及び大きさと同等の形状及び大きさを有している。
各層の具体的な材料及び厚さは適宜に設定されてよい。例えば、圧電体層33の材料は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等のセラミックとされてよい。振動板29の材料は、圧電性を有する、又は圧電性を有さないセラミックとされてよい。共通電極31及び個別電極35はAg系又はAu系等の金属とされてよい。振動板29及び圧電体層33の厚さは、それぞれ10μm以上40μm以下とされてよい。共通電極31の厚さは1μm以上3μm以下とされてよい。個別電極35の厚さは、0.5μm以上2μm以下とされてよい。
圧電体層33のうち、少なくとも、個別電極35の本体部35aと共通電極31とに挟まれている部分は、厚さ方向に分極されている。従って、例えば、本体部35a及び共通電極31によって圧電体層33の分極方向に電界(電圧)を印加すると、圧電体層33は当該層に沿う方向に収縮する。この収縮は、振動板29によって規制される。その結果、アクチュエータ17は加圧室25b側へ凸となるように撓み変形する。本体部35a及び共通電極31によって上記とは逆向きに電界(電圧)を印加すると、アクチュエータ17は加圧室25bとは反対側へ撓み変形する。このような撓み変形を利用することにより、上述のように、加圧室25bの容積を変化させ、加圧室25b内のインクに圧力を付与し、インクをノズル5から吐出させることができる。
共通電極31は、例えば、印刷中において、時間の経過に対して一定の電位が付与される。当該一定の電位は、例えば、基準電位である。一方、個別電極35は、例えば、時間の経過に対して電位が変化する信号が入力される。これにより、圧電体層33に印加される電界の強度が変化する。ひいては、上述のように、アクチュエータ17の撓み変形を生じさせることができる。また、複数の個別電極35に複数の信号を個別に入力することによって、複数のアクチュエータ17の撓み変形を個別に制御することができる。ひいては、印刷されることが意図されている画像の内容に応じて、複数のノズル5から吐出される液滴の量を個別に制御することができる。
アクチュエータ17は、適宜に外部の制御部(例えばIC13)と接続されてよい。例えば、フレキシブル基板11は、アクチュエータ基板21の上面と対向して配置されている。そして、フレキシブル基板11の不図示のパッドと、引出電極35bの端部とは、導電性のバンプを介して接合されている。これにより、フレキシブル基板11が有している不図示の信号線を介して、個別電極35とIC13とが接続されている。ひいては、IC13から個別電極35へ信号を入力することが可能になっている。
また、特に図示しないが、アクチュエータ基板21は、平面視における適宜な位置に、圧電体層33を貫通し、共通電極31と接続されているとともに圧電体層33の上面に露出しているビア導体を有している。そして、フレキシブル基板11の不図示のパッドと、上記ビア導体とは、導電性のバンプを介して接合されている。これにより、例えば、共通電極31は、フレキシブル基板11が有している不図示の基準電位配線と接続されている。ひいては、共通電極31に基準電位を付与することが可能になっている。
(個別電極に入力される信号)
上記のように、アクチュエータ17(より詳細には個別電極35)には、電位が波形状に変化する信号が入力される。信号の波形は、公知の様々な態様のものとされてよい。以下に一例を示す。なお、便宜上、本実施形態の説明では、ここで例示する信号の波形を前提とした説明を行うことがある。
図4は、プリンタ1によって画像を印刷するときに各個別電極35に入力される個別信号SgIの波形の一例を示す模式図である。この図において、横軸は時間tを示し、縦軸は個別信号SgIの電位Vを示している。
個別信号SgIは、例えば、1つの画像を印刷している期間に亘って個別電極35に入力される信号である。個別信号SgIは、所定の周期T1毎に個別電極35に入力される周期信号SgT(SgA及びSgN)を有している。周期信号SgTは、例えば、記録媒体(印刷用紙P)における1ドットの形成に対応する信号である。周期T1は、例えば、記録媒体(印刷用紙P)とヘッド2とが、両者の相対移動の方向(図2のD1方向)において、記録媒体に形成されるドットの上記方向における1ピッチに対応する距離を移動する時間である。
複数の周期信号SgTは、例えば、記録媒体にドットを形成するときに個別電極35に入力される駆動周期信号SgAと、記録媒体にドットを形成しないときに個別電極35に入力される非駆動周期信号SgNとを含んでいる。
駆動周期信号SgAは、例えば、1つ以上の駆動波形信号Sgaを有している。駆動波形信号Sgaは、時間の経過に伴って電位が所定の待機電位Vwに対して変化する信号である。駆動波形信号Sgaが個別電極35に入力されることによって、個別電極35と共通電極31との間の電界の強度が変化し、上述のようにノズル5から液滴が吐出される。
一方、非駆動周期信号SgNは、例えば、電位が周期T1に亘って待機電位Vw(換言すれば一定の電位)に維持される信号である。従って、個別電極35と共通電極31との間の電界の強度は変化せず、ノズル5から液滴は吐出されない。
なお、待機電位Vwは、共通電極31の電位に対して、高くてもよいし、同等でもよいし、低くてもよい。また、駆動波形信号Sgaは、電位が待機電位Vwに対して下降してもよいし(図示の例)、及び/又は上昇してもよい。これらは、アクチュエータ17の駆動方式に応じて適宜に設定されてよい。
プリンタ1(ヘッド2)は、互いに波形(厳密には後述する変位電位の大きさ及び時間的な配置)が異なる2種以上の駆動周期信号SgAを形成可能であってもよいし、1種の駆動周期信号SgAのみを形成可能であってもよい。前者の場合は、プリンタ1は、大きさが互いに異なる複数種類のドットを形成可能である。換言すれば、プリンタ1は、グレースケール画像のように、意図された濃淡を有する画像を印刷可能である。後者の場合は、プリンタ1は、大きさが一定の1種類のドットのみを形成する。換言すれば、プリンタ1は、モノクロ画像のように、意図された濃淡を有さない画像を印刷可能である。
2種以上の駆動周期信号SgAが形成される態様において、その相違の態様は適宜なものとされてよい。別の観点では、1つの駆動周期信号SgAにおいて、濃淡に応じた駆動波形信号Sgaの変化の態様は適宜なものとされてよい。
例えば、1つの駆動周期信号SgA内における駆動波形信号Sgaの数は増減されてよい。この場合、例えば、1つの駆動波形信号Sgaは、1つの液滴に対応している。そして、駆動波形信号Sgaの数の増減によって、周期T1に吐出される液滴の数(1ドットを形成する液滴の数)が増減される。なお、1ドットを形成する複数の液滴は、記録媒体上において、互いに結合していてもよいし、互いに離れていてもよい。
駆動波形信号Sgaの数の増減に加えて、又は代えて、駆動波形信号Sgaの振幅が増減されてよい。振幅は、別の観点では、駆動波形信号Sgaの待機電位Vwから最も離れる電位であり、図示の例では、最も低い電位である。この場合、例えば、振幅の増減によって、1つの液滴の大きさが増減される。
特に図示しないが、駆動波形信号Sgaの具体的な形状が調整されてもよい。例えば、電位の立下り及び立上りの傾きが調整されてもよい。また、待機電位Vwから最も離れる電位が維持される時間が調整されてもよい。
上記のような駆動周期信号SgAの波形の変化は、例えば、複数の駆動周期信号候補から実際に個別電極35に入力される駆動周期信号SgAが選択されることによって実現されてよい。複数の駆動周期信号候補は、上記の説明から理解されるように、例えば、駆動波形信号Sgaの数、振幅(電位)及び形状の少なくとも1つが互いに異なっている。なお、1つの駆動周期信号SgAに含まれる駆動波形信号Sgaの数が一定の場合等においては、複数の駆動周期信号候補からの駆動周期信号SgAの選択は、複数の駆動波形信号候補からの駆動波形信号Sgaの選択と捉えられてよい。
駆動周期信号SgAは、周期T1内の始期及び/又は終期において、電位が待機電位Vwに維持される非波形信号Sgnを有していてもよいし(図示の例)、有していなくてもよい。また、駆動周期信号SgAが2以上の駆動波形信号Sgaを有し得る態様において、駆動周期信号SgAは、互いに隣り合う駆動波形信号Sgaの間に非波形信号Sgnを有してよい(図示の例)。なお、互いに隣り合う駆動波形信号Sgaの間の信号は、待機電位Vwとは異なる電位とされてもよい。
非駆動周期信号SgNは、例えば、上記のように、周期T1に亘って電位が待機信号Vwに維持されてよい。換言すれば、非駆動周期信号SgNは、その全体が上記の非波形信号Sgnによって構成されてよい。
図4に点線で示すように、非駆動周期信号SgNは、電位が待機電位Vwから変化する非駆動波形信号Sgbを有していてもよい。このような非駆動波形信号Sgbは、例えば、液滴が吐出されない大きさの圧力変動をノズル5内のインクに付与する。その結果、例えば、ノズル5内のインクが凝固する蓋然性が低減されたり、及び/又は蒸発量に相当するインクがノズル5に補充されたりする。
(駆動波形信号の概要)
上述のように、待機電位Vw及び駆動波形信号Sgaの電位は、アクチュエータ17の駆動方式に応じて適宜に設定されてよい。また、駆動波形信号Sgaの具体的な形状も適宜に設定されてよい。以下に、一例を示す。
ここでは、アクチュエータ17の駆動方式が、いわゆる引き打ち式である態様を例に取る。また、圧電体層33の分極方向が、個別電極35から共通電極31への方向である場合を例に取る。この場合、例えば、共通電極31の電位よりも高い電位が個別電極35に付与されると、アクチュエータ17は加圧室25b側へ撓む。便宜上、本実施形態の説明では、ここで例示する駆動方式及び信号の波形を前提とした説明を行うことがある。
図5は、図4の一部の拡大図である。この図は、例えば、1つの駆動周期信号SgA内の駆動波形信号Sgaの数が増減されない態様における1つの駆動周期信号SgAの全体(又は、全体及びその周囲)を示す図として捉えられてもよいし、1つの駆動周期信号SgA内の駆動波形信号Sgaの数が増減される態様における1つの駆動周期信号SgAの一部を示す図として捉えられてもよい。
図5では、複数種類の非波形信号Sgn(別の観点では複数種類の待機電位Vw:V6_8等)が1つの実線及び複数の2点鎖線で示されている。ここでは、実線で示された1つの非波形信号Sgn(待機電位V6_8)にのみ着目する。待機電位Vwは、共通電極31の電位(例えば基準電位)よりも高い。
図5では、駆動波形信号Sgaとして、第1駆動波形信号Sga1と、これに続く第2駆動波形信号Sga2とが示されている。これらは、いずれも、電位が、待機電位Vwから変化し(より詳細には、低くなり)、その後、待機電位Vwに復帰する信号である。
時点t1の前において、個別信号SgIは、非波形信号Sgnとされている。すなわち、個別電極35には、共通電極31の電位よりも高い待機電位Vwが付与されている。これにより、アクチュエータ17は、加圧室25b側に撓んだ形状となっている。
時点t1では、第1駆動波形信号Sga1の入力が開始される。これにより、個別電極35の電位が低くなっていく。そして、時点t2では、個別電極35の電位が最も低くなる。個別電極35の電位の降下によって、アクチュエータ17が元の形状(例えば平らな形状)に戻り始め、加圧室25bの容積が増加する。ひいては、加圧室25b内の液体に負圧が与えられる。そうすると、加圧室25b内の液体が固有振動周期で振動し始める。次いで、加圧室25bの体積は最大になり、圧力はほぼゼロとなる。さらには、加圧室25bの体積は減少し始め、圧力は高くなっていく。
時点t3では、個別電極35の電位が上昇を開始する。そして、時点t4では、第1駆動波形信号Sga1の入力が終了し、非波形信号Sgnの入力が開始される。個別電極35の電位の上昇によって、アクチュエータ17は、再度、加圧室25b側へ撓み始める。最初に加えた振動と、次に加えた振動とが重なり、より大きい圧力が液体に加わる。この圧力が部分流路25c内を伝搬し、ノズル5から液体を吐出させる。
つまり、待機電位Vwを基準として、一定期間、低電位の第1駆動波形信号Sga1を個別電極35に供給することで、液滴を吐出できる。第1駆動波形信号Sga1のパルス幅(t2~t3又はt1~t4)が、加圧室25bの液体の固有振動周期の半分の時間、すなわち、AL(Acoustic Length)にされる場合、原理的には、液体の吐出速度及び吐出量が最大になる。
なお、パルス幅は、吐出される液滴を1つにまとめるようにするなど、他に考慮する要因もあるため、実際は、0.5AL~1.5AL程度の値にされてよい。また、パルス幅は、ALから外れた値にすることで、吐出量を少なくすることができるため、吐出量を少なくするためにALから外れた値にされてよい。
第2駆動波形信号Sga2は、液滴がノズル5から吐出されるタイミングで、加圧室25b内を一時的に負圧にする。これにより、ノズル5から吐出されたインクがノズル5内のインクから引きちぎられやすくなる。ひいては、液滴の大きさの精度を向上させることができる。なお、第2駆動波形信号Sga2は省略されてもよい。以下の説明では、第2駆動波形信号Sga2の存在を無視した表現を用いることがある。また、以下の説明において、第1駆動波形信号Sga1についての説明は、矛盾等が生じない限り、第2駆動波形信号Sga2に援用されてよい。
(駆動波形信号の変位電位)
駆動波形信号Sga(別の観点では駆動周期信号SgA)は、その電位が、待機電位Vwから、待機電位Vwとは異なる(例えば待機電位Vwよりも低い)1つ以上の変位電位(V0~V5)に遷移する信号であると捉えることができる。1つの駆動波形信号Sgaにおいて、電位が遷移する変位電位の数、大きさ、及び時間的な配置等は適宜に設定されてよい。すなわち、駆動波形信号Sgaの波形の具体的な形状は適宜に設定されてよい。
なお、変位電位の時間的な配置は、例えば、駆動波形信号Sgaに含まれる変位電位の数、並びに各変位電位についての始期及び終期(ひいては時間長さ)を含む概念である。変位電位の始期及び終期は、実際に電位が変位電位に保持されている時間を基準としてもよいし、変位電位を切り換えるスイッチ(後述)のタイミングを基準としてもよい。
図示の例では、第1駆動波形信号Sga1は、電位が遷移する変位電位として複数の変位電位が設定されており、電位が段階的に変化する多値のデジタル信号のような波形を有している。すなわち、第1駆動波形信号Sga1の電位は、複数の変位電位(より詳細には6個の変位電位V0~V5)に順に遷移している。図示の例とは異なり、駆動波形信号Sgaは、例えば、電位が遷移する変位電位として1つの変位電位のみが設定されることによって、2値のデジタル信号のような波形を有してもよい。
別の観点では、図示の例では、第1駆動波形信号Sga1においては、電位が複数の変位電位のそれぞれに維持される時間が設けられており、これにより、第1駆動波形信号Sga1は、多値(又は2値)のデジタル信号のような波形を有している。図示の例とは異なり、第1駆動波形信号Sga1は、立下り及び立上りにおいて電位が複数の変位電位のそれぞれに維持される時間が極めて短くされることによって、実質的に2値のデジタル信号のような波形を有してもよい。さらに、第1駆動波形信号Sga1は、全ての変位電位に関して電位が変位電位に維持される時間が極めて短くされることによって、実質的にアナログ信号のような波形を有してもよい。
1つの第1駆動波形信号Sga1において、変位電位の数、各変位電位の大きさ、及び時間的に連続する変位電位同士の電位差、各変位電位の時間的な配置は、任意に設定されてよい。また、これらのパラメータの少なくとも1つは、第1駆動波形信号Sga1における立下がりと立上りとで、異なっていてもよいし(図示の例)、同一であってもよい。なお、本実施形態の説明において、電位差は、特に断りが無い限りは、絶対値を指すものとする(他の電位に関する電位差も同様。)。
図示の例では、1つの第1駆動波形信号Sga1において、全ての変位電位は、待機電位Vwに対して縦軸の方向の一方側(図示の例では電位が低い側)に位置している。ただし、複数の変位電位は、待機電位Vwに対して縦軸の方向の両側に位置していてもよい。
上記の説明では、互いに態様が異なる駆動波形信号Sga(例えば多値デジタル信号及び2値のデジタル信号)について言及した。この互いに態様が異なる駆動波形信号Sgaは、互いに異なる種類のヘッドに着目したときに存在してよい。また、上記の互いに態様が異なる駆動波形信号Sgaは、1種類のヘッドにおいて濃淡を実現するために生成される複数種類の駆動波形信号Sgaに着目したときに存在してもよい。
既述のように、記録媒体上におけるドットに係る濃淡を実現するために、第1駆動波形信号Sga1の振幅(待機電位Vwから最も離れる電位)は増減されてよい。このとき、待機電位Vwから最も離れる電位(図示の例では最も低い電位)は、互いに大きさ(電位)が異なる複数の変位電位候補(例えば6個の変位電位候補V0~V5)から選択されてよい。例えば、図5の例では、待機電位Vwから最も離れる電位として変位電位候補V0が選択されている。
既述のように、記録媒体上におけるドットに係る濃淡を実現するために、第1駆動波形信号Sga1の形状が調整されてよい。このとき、立下り又は立上りのときに電位が一時的に保持される変位電位が、複数の変位電位候補V0~V5から選択されてよい。そして、選択される変位電位候補の大きさ、及び/又は選択された変位電位候補に電位が維持される時間の長さによって、第1駆動波形信号Sga1の形状が調整されてよい。例えば、図示の例では、立下りにおいて全ての変位電位候補V0~V5が電位が高い順に選択され、立ち上がりにおいては、変位電位候補V4及びV5のみが選択されている。
なお、複数の変位電位候補は、上記の2種の利用方法の組み合わせに利用されてよい。また、記録媒体上におけるドットに係る濃淡が、1つの駆動周期信号SgAが含む駆動波形信号Sgaの増減のみによって実現される態様においても、駆動波形信号Sgaは、その電位が遷移する1つ以上の変位電位が複数の変位電位候補から選択されることによって構成されてよい。
通常、変位電位候補は、全てが利用されることが想定されている。ただし、利用されない変位電位候補が存在しても構わない。例えば、IC13が、異なる種類のヘッドに対して利用可能な汎用品とされる場合において、IC13が生成可能な複数の変位電位候補は、利用されない候補を含み得る。
変位電位候補の数、大きさ、及び電位の大きさ順が互いに隣り合う候補の電位差等は適宜に設定されてよい。例えば、変位電位候補の数は2つであってもよいし、3つ以上であってもよい。変位電位候補の数が3つ以上である場合において、電位の大きさ順が互いに隣り合う候補の電位差(2以上)は、一定であってもよいし(図示の例)、一定でなくてもよい。一定でない場合のばらつきも任意に設定されてよい。
(濃淡の補正方法)
以上のプリンタ1においては、複数の記録素子15間で吐出特性がばらつくことがある。例えば、記録媒体上に同一の大きさのドットを形成することを意図していても、複数の記録素子15同士でドットの大きさに差が生じる。その理由としては、例えば、ノズル5の加工誤差、共通流路23に対する個別流路25の位置の相違、及び、第1駆動波形信号Sga1の電位のばらつきが挙げられる。そして、このようなドットの態様の差は、例えば、意図されていない濃淡(濃度斑)として画像に現れる。
図6は、上記のような濃度斑を補正する方法の概要を示す模式図である。
図6の上段では、意図されていない濃度斑が生じている状況が示されている。具体的には、図示の例では、2つのノズル5に係るアクチュエータ17に対して同一の駆動波形信号Sgaが入力されている。すなわち、一方のノズル5によってドットが形成される領域R1と、他方のノズル5によってドットが形成される領域R2とで、濃度値が同等とされることが意図されている。しかし、領域R1の濃度値は、領域R2の濃度値よりも高くなっている。なお、濃度値は、例えば、OD(optical density)値である。
図6の下段では、意図されていない濃度斑が補正されている状況が示されている。具体的には、濃度値が相対的に高くなるノズル5に係るアクチュエータ17に入力される非波形信号Sgnの電位(待機電位Vw)が低くされる。これにより、濃度値が相対的に高くなるノズル5に係るアクチュエータ17に入力される駆動波形信号Sgaの振幅が小さくされる。その結果、例えば、1つの液滴の大きさが小さくされ、領域R1及びR2の意図されていない濃淡が低減される。
上記の待機電位Vwの調整(別の観点では設定)は、例えば、記録素子15毎に行われる。換言すれば、待機電位Vwは、記録素子15によって異なっている。換言すれば、本実施形態では、少なくとも1つの記録素子15に係る待機電位Vwが、他の少なくとも1つの記録素子15の待機電位Vwと異なっている。待機電位Vwが記録素子15によって異なっているという場合において、意図されていない濃度斑が生じなかった結果、待機電位Vwが互いに同一の2以上の記録素子15が存在しても構わない。
なお、待機電位Vwの調整は、ヘッド本体3の対向面3aを複数に分割した分割領域毎に行われてもよい。このとき、各分割領域は、2以上のノズルを含んでよい。すなわち、2以上の記録素子15に対して共通して待機電位Vwが設定されてもよい。この場合であっても、少なくとも1つの記録素子15に係る待機電位Vwが、他の少なくとも1つの記録素子15の待機電位Vwと異なっていることに変わりはない。
図6では、濃度値が相対的に高い記録素子15について、濃度値を下げるように待機電位Vwを調整する(図示の例では待機電位Vwを低くする)態様について説明した。ただし、図示の例とは異なり、濃度値が相対的に低い記録素子15について、濃度値を上げるように待機電位Vwを調整してもよい(待機電位Vwを高くしてもよい。)。また、濃度値を下げる調整と、濃度値を上げる調整とを組み合わせてもよい。なお、本実施形態の説明では、便宜上、図6のように、濃度値が相対的に高い記録素子15について、濃度値を下げるように待機電位Vwを調整する(より詳細には低くする)態様を前提とした説明を行うことがある。
(濃淡の補正に利用される待機電位)
図5に戻る。図5では、待機電位Vwの大きさが互いに異なる複数種類の非波形信号Sgnが1つの実線及び複数の2点鎖線で示されている。すなわち、上記のように濃度値を調整するときに待機電位Vwが取り得る値が示されている。待機電位Vwが取り得る値は、適宜に設定されてよい。
例えば、待機電位Vwが取り得る値は、離散的であってもよいし(図示の例)、連続的であってもよい。別の観点では、待機電位Vwは、複数の待機電位候補から選択されてもよいし(図示の例)、所定の電位範囲内の任意の値とされてもよい。
待機電位Vwが複数の待機電位候補から選択される態様において、複数の待機電位候補の数は、適宜に設定されてよく、例えば、2つでもよいし、3つ以上であってもよい。本実施形態の説明では、待機電位候補は、V6_0~V6_8(符号は図8参照)までの9個である態様を例に取る。なお、図5では、便宜上、9個の待機電位候補のうち、6個のみを示している。また、9個の待機電位候補のうち、最も電位が高い待機電位候補V6_8、及び最も電位が低い待機電位候補V6_0のみ符号を付している。
駆動波形信号Sgaの電位が待機電位Vwに対して高電位側及び低電位側の一方のみ(図示の例では低電位側のみ)に変化することが意図されている場合、全ての待機電位候補は、全ての変位電位に対して高く(図示の例)、又は低くされてよい。また、駆動波形信号Sgaの電位が待機電位Vwに対して高電位側及び低電位側の両側に変化することが意図されている場合、全ての待機電位候補は、大きさ順が互いに隣り合う特定の2つの変位電位の間に収まってよい。
複数の待機電位候補の具体的な大きさは適宜に設定されてよい。
例えば、電位の大きさ順が互いに隣り合う待機電位候補と変位電位候補との電位差(図示の例ではV5とV6_0との電位差)は、電位の大きさ順が互いに隣り合う2つの変位電位候補の電位差(少なくとも1つ。例えば全て)に対して、大きくてもよいし、同等でもよいし、小さくてもよい(図示の例)。前者が後者に対して大きい場合又は小さい場合の両者の比率も任意である。例えば、前者は、後者の1/4以上1倍以下とされてよい。
また、例えば、電位の大きさ順が互いに隣り合う待機電位候補と変位電位候補との電位差(図示の例ではV5とV6_0との電位差)は、電位の大きさ順が互いに隣り合う2つの待機電位候補の電位差(少なくとも1つ。例えば全て)に対して、大きくてもよいし(図示の例)、同等でもよいし、小さくてもよい。前者が後者に対して大きい場合又は小さい場合の両者の比率も任意である。例えば、前者は、後者の5倍以上30倍以下とされてよい。
また、例えば、複数の待機電位候補に対して高電位側及び低電位側の一方(図示の例では低電位側)に位置する複数の変位電位候補に着目したときに、複数の変位電位から最も離れている待機電位候補(図示の例ではV6_8)と、複数の待機電位候補に最も近い変位電位候補(図示の例ではV5)との電位差は、電位の大きさ順が互いに隣り合う2つの変位電位候補の電位差(少なくとも1つ。例えば全て)に対して、大きくてもよいし、同等でもよいし(図示の例)、小さくてもよい。
また、例えば、複数の待機電位候補は、最も複数の待機電位候補に近い変位電位候補との電位差が、電位の大きさ順が互いに隣り合う変位電位候補の電位差(少なくとも1つ。例えば全て)と同じ待機電位候補(図示の例ではV6_8)を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
複数の待機電位候補の電位差は適宜に設定されてよい。
例えば、待機電位候補の数が3つ以上である場合において、電位の大きさ順が互いに隣り合う候補の電位差(2以上)は、一定であってもよいし(図示の例)、一定でなくてもよい。一定でない場合のばらつきも任意に設定されてよい。
また、例えば、電位の大きさ順が互いに隣り合う待機電位候補同士の電位差(少なくとも1つ。例えば全て)は、電位の大きさ順が互いに隣り合う複数の変位電位候補の電位差(少なくとも1つ。例えば全て)に対して、小さくてもよいし(図示の例)、同等でもよいし、大きくてもよい。前者が後者に対して小さい場合又は大きい場合の両者の比率も任意である。例えば、前者は、後者の1/2以下、1/5以下、1/10以下又は1/20以下とされてよい。また、前者は、後者の1/1000以上、1/100以上、1/50以上又は1/20以上とされてよい。上述の上限と下限とは、矛盾が生じない限り、適宜に組み合わされてよい。
電位の大きさ順が互いに隣り合う待機電位候補の電位差(少なくとも1つ。例えば全て)は、複数の待機電位候補のうち最も複数の変位電位候補から離れている候補(V6_8)と、複数の変位電位候補のうち最も複数の待機電位候補から離れている候補(V0)との電位差に対して当然に小さい。前者の後者に対する比率は適宜に設定されてよい。例えば、前者は、後者に対して、5%以下、2%以下、1%以下又は0.5%以下とされてよい。
変位電位の大きさ及び時間的な配置が互いに同一である駆動波形信号Sga(実質的に待機電位Vwのみが互いに異なる駆動波形信号Sga)は、待機信号Vwから最初の変位電位(図示の例ではV5)に向かって立ち下り始めるタイミング(周期T1内における時点)が、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。前者の場合においては、待機電位Vwの相違に伴って、駆動波形信号Sgaが最初の変位電位に到達するタイミングが相違する。また、後者の場合においては、例えば、上記のような駆動波形信号Sgaが最初の変位電位に到達するタイミングの相違を低減するように、立ち下り始めるタイミングが待機電位Vwによって調整されてもよいし、調整されなくてもよい。
図5では、便宜上、待機電位Vwの相違に関わらずに、駆動波形信号Sgaが最初の変位電位(V5)に到達するタイミングが互いに同一の態様(待機電位Vwによって立ち下がり始めるタイミングが異なる態様)が示されている。ただし、本実施形態の説明では、待機電位Vwの相違に関わらずに、立ち下がり始めるタイミングが同一である態様を例に取る。また、本実施形態のように、待機電位候補の電位差が駆動波形信号Sgaの振幅に対して十分に小さい場合においては、上記のような2つの態様における駆動波形信号Sgaの形状の相違は微差であり、2つの態様は必ずしも区別されなくてよい。
同様に、電位が遷移する予定の変位電位の大きさ及び時間的な配置が互いに同一である駆動波形信号Sga(実質的に待機電位Vwのみが互いに異なる駆動波形信号Sga)は、最後の変位電位(図示の例の第1駆動波形信号Sga1ではV5)から待機信号Vwへ上昇し始めるタイミングが、互いに同一であってもよいし(図示の例)、互いに異なっていてもよい。本実施形態の説明では、待機電位Vwの相違に関わらずに、最後の変位電位から待機電位Vwへ上昇し始めるタイミングが同一である態様を例に取る。また、本実施形態のように、待機電位候補の電位差が駆動波形信号Sgaの振幅に対して十分に小さい場合においては、上記のような2つの態様における駆動波形信号Sgaの形状の相違は微差であり、2つの態様は必ずしも区別されなくてよい。
(制御系の構成の概要)
図7は、プリンタ1の制御系に係る構成を模式的に示すブロック図である。
プリンタ1は、既述の制御装置88と、ヘッド2(又はヘッド本体3)に搭載されているヘッド制御部37とを有している。
制御装置88は、ヘッド2に搭載されておらず、例えば、プリンタ1の不動部分に設けられている。より詳細には、例えば、制御装置88は、移動部85及びヘッド2等の近くに配置されている制御盤に設けられている。また、例えば、プリンタ1が比較的小さいものである態様においては、プリンタ1の筐体に収容されている。
ヘッド制御部37は、例えば、既述のIC13によって構成されている。また、ヘッド制御部37は、IC13に加えて、フレキシブル基板11に接続されている他の回路基板(IC等が実装されたPCB(printed circuit board))によって構成されてよい。ヘッド制御部37と制御装置88とは、既述のように、フレキシブル基板11等を介して電気的に接続されている。
ここでは、制御装置88とヘッド制御部37との間に介在する既述の分配部は示されていない。分配部が設けられる場合、後述する制御装置88及びヘッド制御部37の構成の一部は、分配部に設けられてよい。
(制御装置)
制御装置88は、電源回路39と、各種の機能部とを有している。各種の機能部としては、図示されている制御信号出力部41の他、例えば、移動部85の速度を制御する制御部が挙げられる。
電源回路39は、例えば、プリンタ1の外部の電源からの電力(例えば商用電源からの交流電力)を所定の電圧を有する直流電圧に変換してヘッド制御部37へ供給する。なお、直流電圧への変換等は、ヘッド2において行われてもよい。電源回路39の構成は、公知の種々のものと同様とされてよい。
制御装置88の各種の機能部は、例えば、コンピュータによって構成されてよい。コンピュータは、特に図示しないが、CPU(central processing Unit)、ROM(read only memory)、RAM(random access memory)及び外部記憶装置を有している。そして、CPUがROM及び/又は外部記憶装置に記憶されているプログラムを実行することによって、各種の機能部が構築される。
制御信号出力部41は、RAM又は外部記憶装置に記憶されている画像データ43に基づいて制御信号Sgc1をヘッド制御部37に出力する。換言すれば、制御信号出力部41は、印刷される予定の画像の内容に応じて変化する信号を出力する。なお、ここでいう画像は、文字も含む概念である。
制御信号Sgc1は、例えば、周期T1(図4)における複数(全て)の記録素子15の動作を指定する情報を有している。記録素子15の動作を指定する情報は、例えば、記録媒体上にドットを形成するか否かの情報、及びドットを形成する場合におけるドットの大きさを指定する情報を含む。なお、データの形式上は、ドットを形成するか否かの情報と、ドットの大きさを指定する情報とは、同一の情報であってよい。例えば、ドットの大きさを0以外に指定する情報は、ドットを形成することを指定する情報として扱われてよい。制御信号Sgc1は、例えば、周期T1毎に出力される。
制御信号Sgc1の伝送方式は適宜なものとされてよい。例えば、1つの記録素子15の動作に係る情報は、所定のビット数(例えば3ビット)のデータとしてパラレルに出力されてよい。そして、複数の記録素子15に係るデータがシリアルに出力されてよい。
(ヘッド制御部)
ヘッド制御部37は、複数のアクチュエータ17に対して共通して設けられている構成要素と、アクチュエータ17毎に設けられている構成要素とを有している。前者は、例えば、定電圧源45、制御信号分配回路47及びパターン信号生成回路49である。後者は、例えば、複数の素子制御回路51である。ただし、複数のアクチュエータ17に個別に設けられている複数の構成要素は、その全体で1つの構成要素として概念されても構わない。これは、複数の素子制御回路51だけでなく、複数の素子制御回路51を構成する構成要素(後述)についても同様である。
定電圧源45は、電源回路39から供給される電力から、個別電極35に入力される個別信号SgIの生成に利用される直流電力(別の観点では一定の電位)を生成する。この一定の電位は、複数の素子制御回路51へ入力される。
なお、特に図示しないが、ヘッド制御部37は、定電圧源45の他に、各種の回路(47、49及び51)に、これらの回路の駆動に必要な電力を供給する電源回路を有していてよい。
ヘッド制御部37が有する各種の回路(47、49及び51)は、例えば、予め定められた動作を行う論理回路によって構成されている。論理回路を構成する要素としては、例えば、レジスタ、フリップフロップ、ラッチ、AND回路及びOR回路を挙げることができる。ただし、各種の回路の一部又は全部は、制御装置88と同様に、コンピュータによって構成されていてもよい。
制御信号分配回路47は、制御信号出力部41からの制御信号Sgc1を複数の素子制御回路51に分配する。具体的には、上述のように、制御信号Sgc1は、周期T1毎の複数(全て)の記録素子15の動作を指定する情報を含んでいる。そこで、制御信号分配回路47は、入力された制御信号Sgc1を記録素子15毎の制御信号Sgc2に分割して、対応する素子制御回路51に入力する。
具体的には、例えば、制御信号分配回路47には、周期T1毎に、制御信号Sgc1が含む複数の記録素子15に係るデータがシリアルに入力される。制御信号分配回路47は、入力されたシリアルなデータをシフトレジスタ及びラッチ回路によって複数の記録素子15と同数のパラレルなデータ(制御信号Sgc2)に変換する。1つの制御信号Sgc2は、例えば、1つの記録素子15の動作を指定する所定のビット数(例えば3ビット)のデータを含む。所定のビット数のデータは、シリアル又はパラレルに素子制御回路51に入力される。
パターン信号生成回路49は、個別電極35に入力される個別信号SgIの生成に利用される情報を有するパターン信号Sgp1を複数の素子制御回路51のそれぞれに入力する。個別信号SgIの生成に利用される情報は、例えば、2種以上の周期信号SgT(非駆動周期信号SgN及び1種以上の駆動周期信号SgA)それぞれの電位の変動のパターンを指定する情報である。
複数の素子制御回路51のそれぞれは、制御信号分配回路47からの制御信号Sgc2に基づいて、パターン信号Sgp1に含まれる2種以上の周期信号SgTの情報からいずれか1つの周期信号SgTの情報を選択する。そして、各素子制御回路51は、選択した周期信号SgTの情報に基づいて、定電圧源45から供給された電力(電位)を用いて、周期信号SgTを生成する。
複数の素子制御回路51のそれぞれにおいて生成された周期信号SgTは、対応するアクチュエータ17の個別電極35に入力される。このとき、周期信号SgTが駆動周期信号SgAの場合においては、ノズル5から液滴が吐出される。また、周期信号SgTが非駆動周期信号SgNの場合においては、ノズル5から液滴は吐出されない。
周期信号SgTは、図5及び図6を参照して説明したように、アクチュエータ17毎に待機電位Vwが適宜に設定され、これにより、例えば、濃淡斑が低減される。アクチュエータ17毎の待機電位Vwの設定は、例えば、素子制御回路51によって行われる。
(定電圧源)
図8は、ヘッド制御部37の定電圧源45の構成の一例を示す回路図である。
定電圧源45は、例えば、以下の端子を有している。基準電位とは異なる電位V6が入力される入力端子53。基準電位が入力される基準電位端子55。互いに大きさが異なる電位V0~V5及びV6_0~V6_8を出力する複数(図示の例では15個)の出力端子57。
入力端子53には、例えば、制御装置88の電源回路39から電位V6が付与される。電位V6は、時間の経過に対して一定の大きさを有する電位である。基準電位端子55には、電源回路39(又は他の適宜な基準電位部)から基準電位が付与される。すなわち、定電圧源45は、電源回路39によって基準電位端子55と入力端子53との間に電圧V6の直流電圧が印加される。特に図示しないが、入力端子53の前及び/又は後に、電源回路39からの電力を電圧V6の直流電力に変換する回路が設けられていてもよい。
複数の出力端子57は、例えば、いずれも、複数の素子制御回路51のそれぞれに接続されている。そして、各素子制御回路51には、複数の電位V0~V5及びV6_0~V6_8の全てが並行に入力される。複数の電位V0~V5及びV6_0~V6_8それぞれは、時間の経過に対して一定の大きさを有する電位であり、また、図5に示した個別信号SgIの変位電位候補V0~V5及び待機電位候補V6_0~V6_8に対応している。従って、各素子制御回路51は、並列に入力された複数の電位からいずれか1つを選択的にアクチュエータ17へ出力することによって、電位が待機電位から1つ以上の変位電位へ順に遷移する個別信号SgIを生成してアクチュエータ17に供給することができる。
入力された電位V6を複数の電位V0~V5及びV6_0~V6_8に変換して出力するための構成は、公知の構成を含む種々の構成とされてよい。図示の例では、分圧回路が用いられている。具体的には、定電圧源45は、入力端子53と基準電位端子55との間で直列に接続された複数(図示の例では14個)の抵抗体59を有している。複数の出力端子57は、複数の抵抗体59の間の位置、又は全ての抵抗体59の入力端子53側若しくは基準電位端子55側の位置に接続されており、かつ互いに接続位置が異なっている。そして、各抵抗体59における電圧降下によって互いに異なる接続位置に生じた互いに異なる電位が複数の出力端子57に付与される。
変位電位候補V0~V5及び待機電位候補V6_0~V6_8に関する既述の説明から理解されるように、抵抗体59の数及び各抵抗体59の抵抗値は適宜に設定されてよい。図示の例では、以下のとおりである。
図8では、基準となる所定の抵抗値Rに対する比率によって、抵抗体59の抵抗値が例示されている。電位V0~V5に保持される6個の出力端子57の間に位置する5個の抵抗体59の抵抗値は20Rとされている。電位V5に保持される出力端子57と電位V6_0に保持される出力端子57との間に位置する抵抗体59の抵抗値は12Rとされている。電位V6_0~V6_8に保持される9個の出力端子57の間に位置する8個の抵抗体59の抵抗値はRとされている。抵抗値が12Rの抵抗体59と、抵抗値がRの8個の抵抗体59との合成抵抗の値は20Rとなっている。
従って、例えば、6個の変位電位候補V0~V5において、電位の大きさ順が互いに隣り合う電位の電位差は一定である。9個の待機電位候補V6_0~V6_8において、電位の大きさ順が互いに隣り合う電位の電位差は一定である。後者の電位差は、前者の電位差の1/20である。電位の大きさが最も待機電位候補に近い変位電位候補V5と、電位の大きさが最も変位電位候補から離れている待機電位候補V6_8との電位差は、変位電位候補V0~V5における電位の大きさ順が互いに隣り合う電位の電位差と同じである。
図示の例では、待機電位候補V6_8は、入力端子53に入力される電位V6と同じとされている。ただし、入力端子53の直後(待機電位候補V6_8を保持する出力端子57のノードよりも入力端子53側)に抵抗体59を設け、待機電位候補V6_8を電位V6と異ならせてもよい。
図示の例では、変位電位候補V0は、基準電位端子55に入力される基準電位と同じとされている。ただし、基準電位端子55の直前(変位電位候補V0を保持する出力端子57のノードよりも基準電位端子55側)に抵抗体59を設け、変位電位V0を基準電位と異ならせてもよい。
定電圧源45は、ボルテージフォロア回路を有していてもよい。図示の例では、電位V0及び電位V6_8の出力端子57を除いて、出力端子57毎にボルテージフォロア回路が設けられている。ボルテージフォロア回路は、オペアンプ61を有している。オペアンプ61の非反転入力端子には、分圧によって生成された電位が付与されている。オペアンプ61の反転入力端子には、オペアンプ61が出力した電位が付与されている。ボルテージフォロア回路によって、例えば、所望の電位を安定して出力端子57に付与することができる。
(素子制御回路とその周囲の回路との接続)
図9は、素子制御回路51の構成要素、及び素子制御回路51に接続される既述の構成要素(45、47及び49等)を示すブロック図である。ここでは、複数の素子制御回路51のうち1つのみが図示されている。
図7を参照して説明したように、複数の素子制御回路51のそれぞれは、制御信号分配回路47からの制御信号Sgc2に基づいて、パターン信号生成回路49からのパターン信号Sgp1に含まれる複数種類の周期信号SgT(SgA及びSgN)の情報からいずれか1つの周期信号SgTの情報を選択する。そして、素子制御回路51は、選択した周期信号SgTの情報が指定する電位の変動パターンに基づいて、定電圧源45から供給された電力(電位)を用いて、周期信号SgTを生成する。
定電圧源45は、図8を参照して説明したように、複数の電位V0~V5及びV6_0~V6_8を複数の素子制御回路51のそれぞれに対して並列に入力する。例えば、定電圧源45の複数(図示の例では15個)の出力端子57(図8)には、紙面において上下に延びる複数の配線63が接続されている。定電圧源45は、複数の配線63を介して、複数の素子制御回路51のそれぞれに対して複数の電位を付与する。複数の配線63の下端に破断線を付しているように、複数の配線63は、複数(一部又は全て)の素子制御回路51に亘って延びており、複数の素子制御回路51に共用される。
制御信号分配回路47は、周期T1毎の各記録素子15の動作を指定する情報を含む制御信号Sgc2を、対応する素子制御回路51に入力する。図9では、1つの素子制御回路51に入力される制御信号Sgc2が図示されている。この信号は、画像データ43の内容に応じて(ドットの形成の要否及びドットの径に応じて)、保持される情報の内容が変化する信号であり、複数の素子制御回路51に対して個別に生成及び入力される。
パターン信号生成回路49は、複数種類の周期信号SgTのそれぞれにおける電位の変動パターンを指定する情報を有するパターン信号Sgp1を複数の素子制御回路51のそれぞれに入力する。図9では、1つの素子制御回路51に入力されるパターン信号Sgp1が図示されている。パターン信号Sgp1(Sgp2)を示す線に対して分岐する線と破断線とを付しているように、パターン信号Sgp1は、例えば、複数の素子制御回路51に共通に入力される。
パターン信号Sgp1は、例えば、周期信号SgTの種類の数(2以上)と同数の種類のパターン信号Sgp2を含んでいる。複数種類(図示の例では8種類)のパターン信号Sgp2は、例えば、周期T1毎に互いに並列にパターン信号生成回路49から出力される。複数種類のパターン信号Sgp2のうち、1つは、非駆動周期信号SgNに対応している。残りの7種類のパターン信号Sgp2は、例えば、電位の変動パターンが互いに異なる7種類の駆動周期信号SgAに対応している。
1種類の周期信号SgTにおける電位の変動パターンを指定する情報は、換言すれば、1種類の周期信号SgT内における電位の時系列の情報である。この時系列に含まれる電位は、例えば、変位電位候補V0~V5及び待機電位候補V6_0~V6_8に限定される。なお、後述するように、本実施形態では、パターン信号Sgp1における待機電位Vwの情報は、素子制御回路51によって修正される。従って、パターン信号Sgp2における待機電位の情報は、当該情報が指定している電位が待機電位であることが判別可能であればよく、待機電位候補V6_0~V6_8を区別している必要は無い。従って、例えば、時系列に含まれる電位は、変位電位候補V0~V5及び待機電位候補V6_0のみに限定されてもよい。
1種類のパターン信号Sgp2の伝送方式等は適宜に設定されてよい。例えば、1種類のパターン信号Sgp2は、複数種類(ここでは15種類)の電位のいずれか1つの電位をそれぞれ指定する複数のデータが、時系列順にシリアルに伝送されることによって形成されている。従って、複数のデータの伝送順は、時系列における複数種類の電位の時間的な配置を示す情報となっている。
上記のように1つのパターン信号Sgp2内の複数のデータをシリアルに送信する場合において、1つのデータを送信する周期T2(符号は図5)は、例えば、周期T1を1つのパターン信号Sgp2内のデータの数で均等に割った長さとされてよい。この場合、周期T2は、各データが指定している電位が維持されるべき時間を指定する情報として利用されてよい。
1つの電位を指定する1つのデータは、例えば、所定のビット数(例えば4ビット)の情報を含む。当該所定のビット数の情報は、シリアル又はパラレルにパターン信号生成回路49から各素子制御回路51に入力される。
パターン信号Sgp2(Sgp1)を生成するパターン信号生成回路49の構成は適宜なものとされてよい。例えば、特に図示しないが、パターン信号生成回路49は、以下の構成要素を有してよい。上記の周期T2毎にクロック信号を出力するクロック。複数種類(8種類)の周期信号SgTのそれぞれにおける複数種類(15種類)の電位の時系列の情報を有しているレジスタ。クロック信号に基づいて、レジスタが保持している電位のデータを順次読み出して出力する論理回路。
(素子制御回路)
素子制御回路51において、制御信号Sgc2及びパターン信号Sgp2に基づいて、定電圧源45の電位から周期信号SgTを生成して出力する動作を実現する構成は、適宜なものとされてよい。図示の例では、以下のとおりである。
素子制御回路51は、例えば、以下の構成要素を有している。制御信号Sgc2に基づいて複数のパターン信号Sgp2からいずれか1つのパターン信号Sgp2を選択するパターン信号選択回路65。選択されたパターン信号Sgp2における待機電位Vwの情報を修正する修正回路67。修正回路67によって修正された修正パターン信号Sgmに基づいて定電圧源45とアクチュエータ17との接続関係を切り換えるスイッチ回路69。
スイッチ回路69による接続関係の切り換えによって、既述のように、周期信号SgT(SgA又はSgN)が生成される。この切り換えが、待機電位Vwの情報が修正された修正パターン信号Sgmに基づいて行われることによって、図5及び図6を参照して説明したように、周期信号SgTの待機電位Vwが修正される。待機電位Vwの情報の修正が素子制御回路51毎に行われることによって、記録素子15に対して個別に待機電位Vwが設定される。すなわち、複数の記録素子15のうちの少なくとも1つに入力される待機電位Vwを、複数の記録素子15のうちの他の少なくとも1つに入力される待機電位Vwと異なるものとすることができる。
なお、修正回路67は、上記以外の構成要素を有してよい。例えば、パターン信号選択回路65と修正回路67との間に、パターン信号Sgp2の伝送のタイミングを遅延させる遅延回路が設けられたり、周期T2よりも短い形式(各電位の情報に対応する信号が維持される時間が、各電位が実際に維持される時間よりも短い形式)のパターン信号Sgp2を周期T2に亘る形式のパターン信号Sgp2に変換する回路が設けられたりしてよい。
(パターン信号選択回路)
パターン信号選択回路65は、例えば、制御信号Sgc2に基づいて、並列に入力されたパターン信号Sgp2のうち1つを選択して出力する。パターン信号選択回路65の出力における伝送方式等は、適宜に設定されてよい。パターン信号Sgp2は、その情報の内容が維持されていれば、伝送方式等は、パターン信号選択回路65への入力前とパターン信号選択回路65からの出力後とで異なっていても構わない。図示の例では、パターン信号選択回路65は、パターン信号Sgp2として4ビットのデータをパラレルに修正回路67へ出力する(1つの配線で1ビットのデータを出力する。)。また、パターン信号選択回路65は、例えば、入力されたパターン信号Sgp2の周期T2(及び各電位の情報に対応する信号が維持される時間)を維持しつつパターン信号Sgp2を出力する。
(修正回路)
修正回路67は、例えば、以下の構成要素を有している。対応するアクチュエータ17に設定されるべき待機電位Vwを指定する選択信号Sgsを出力するセレクタ71。選択信号Sgsに基づいてパターン信号Sgp2を修正して修正パターン信号Sgmを生成及び出力するデコーダ73。修正パターン信号Sgmの信号強度を高くするレベルシフタ75。
セレクタ71は、例えば、レジスタを含んで構成されており、対応するアクチュエータ17に設定されるべき待機電位Vwの値の情報を保持している。当該情報は、換言すれば、待機電位候補V6_0~V6_8のうちいずれか1つを指定する情報である。レジスタは、例えば、揮発性のものとされ、プリンタ1が稼働される度に、ヘッド2内の複数の素子制御回路51に共用される不図示のメモリ、又は制御装置88から、上記情報を取得してよい。上記メモリ又は制御装置88からの上記情報の取得は、所定の操作がプリンタ1になされたときなどの適宜な時期とされてもよい。また、レジスタは、不揮発性のものとされ、上記情報を常に保持していてもよい。上記情報の内容は、ヘッド2(又はプリンタ1)の製造者によって設定されてもよいし、プリンタ1によって設定されてもよい(後述する第5実施形態参照)。
そして、セレクタ71は、レジスタが保持している情報の内容に応じた選択信号Sgsを出力する。選択信号Sgsの伝送方式等は適宜なものとされてよい。例えば、選択信号Sgsは、4ビットのデータがシリアル又はパラレルに伝送されるものとされてよい。選択信号Sgsの出力の周期は、例えば、周期T2とされたり、周期T2を更に分割した周期とされたりしてよい。また、選択信号Sgsは、一定の電位を継続的に維持する信号(周期の概念を有さない信号)とされてもよい。
デコーダ73は、例えば、パターン信号Sgp2及び選択信号Sgsをデコードし、N進数の出力形式によって修正パターン信号Sgmを出力する。ここでNは、変位電位候補V0~V5及び待機電位候補V6_0~V6_8の総数であり、図示の例では15である。従って、デコーダ73は、少なくとも15個の出力端子を有しており、図9では、この15個の出力端子からレベルシフタ75へ延びる15本の配線が描かれている。
より詳細には、変位電位候補V0~V5及び待機電位候補V6_0~V6_8と、15個の出力端子とは1対1で対応している。デコーダ73には、1つのパターン信号Sgp2によって、変位電位候補V0~V5及び待機電位候補Vwのいずれか1つをそれぞれ指定する複数のデータがシリアルに入力される。デコーダ73は、データが入力される度に、そのデータが指定している電位に対応する出力端子から信号を出力する。他の出力端子からは信号は出力されない。この信号は、修正パターン信号Sgmを構成する。
パターン信号Sgp2によって入力されたデータが指定する電位が待機電位候補Vwであった場合においては、デコーダ73は、パターン信号Sgp2によって指定されている待機電位候補Vwに対応する出力端子ではなく、セレクタ71によって入力された選択信号Sgsによって指定されている待機電位候補Vw(V6_0~V6_8のいずれか1つ)に対応する出力端子から信号を出力する。これにより、パターン信号Sgp2における待機電位の情報が修正された修正パターン信号Sgmが出力されることになる。
上記の説明から理解されるように、修正パターン信号Sgmのデータ形式及び伝送方式等は、パターン信号Sgp2のデータ形式及び伝送方式等から異なっていてよい。修正パターン信号Sgmを構成する信号として、デコーダ73の複数の出力端子から選択的に順次出力される信号は、例えば、所定の電位(例えば基準電位)よりも高い、又は低い、一定の電位を有する信号である。出力端子は、上記信号を出力していないときは、上記の所定の電位に保持される。上記信号の電位及び所定の電位は、複数の出力端子に共通である。修正パターン信号Sgmを構成する上記信号は、例えば、パターン信号Sgp2内における各電位の情報に対応する信号の入力が維持される時間(周期T2)に亘って出力される。ひいては、修正パターン信号Sgmの全体は、例えば、周期T1に亘って出力される。
レベルシフタ75は、デコーダ73の複数(図示の例では15個)の出力端子と1対1で接続されている複数(15個)の入力端子と、当該複数の入力端子と1対1で対応している複数の出力端子とを有している。そして、レベルシフタ75は、入力端子に入力された信号の強度を高くして、対応する出力端子に出力する。例えば、レベルシフタ75は、デコーダ73からの信号が所定の電位よりも高電位のものであれば、さらに高電位の信号に変換し、デコーダ73からの信号が所定の電位よりも低電位のものであれば、さらに低電位の信号に変換する。信号の強度以外については、例えば、入力された信号と出力される信号とで同じである。修正パターン信号Sgmは、レベルシフタ75によって信号の強度が高くされることによって、スイッチ回路69の制御に十分な強度を有することになる。なお、レベルシフタ75は省略されても構わない。
(スイッチ回路)
スイッチ回路69には、修正パターン信号Sgm(周期T1)に含まれる、変位電位候補V0~V5及び待機電位候補V6_0~V6_8のいずれか1つをそれぞれ指定する信号(周期T2)が順次入力される。スイッチ回路69は、定電圧源45の複数の出力端子57(配線63)のうち、入力された周期T2の信号が指定している電位を保持している出力端子57をアクチュエータ17に接続する。これにより、修正パターン信号Sgmが指定している電位の変動パターンを有する周期信号SgT(SgA又はSgN)が生成されてアクチュエータ17に出力される。
上記の動作を実現するスイッチ回路69の構成は適宜なものとされてよい。図示の例では、スイッチ回路69は、定電圧源45の複数(15個)の出力端子57に1対1で設けられている複数(15個)のスイッチ77を有している。複数のスイッチ77のそれぞれは、対応する出力端子57と、アクチュエータ17(個別電極35)とを導通及び遮断可能である。また、複数のスイッチ77のそれぞれは、修正回路67(レベルシフタ75)の複数(15個)の出力端子のうち、対応する出力端子57が保持している電位(V0~V5及びV6_0~V6_8)に対応する出力端子に接続されている。そして、修正パターン信号Sgmに含まれる周期T2の信号が入力されているスイッチ77は、当該信号が入力されている期間(周期T2)に亘って、対応する出力端子57とアクチュエータ17とを接続する。それ以外のスイッチ77は、対応する出力端子57とアクチュエータ17とを非接続とする。
スイッチ77の構成も適宜なものとされてよい。図示の例では、スイッチ77として、電界効果トランジスタが例示されている。電界効果トランジスタの構成は適宜なものとされてよい。また、スイッチ77は、他のトランジスタであってもよい。
(スイッチ回路の動作の例)
図10は、スイッチ回路69の動作の具体例を示す模式図である。ここでは、複数のスイッチ77のうち、図示されている2つのスイッチ77が順にONされる状況を想定している。すなわち、図示の動作が行われている間、他のスイッチ77はOFFされている。
図10の最上段においては、2つのスイッチ77がOFFされている状況が示されている。次に、その下段に示すように、紙面上方のスイッチ77がONされる。次に、その下段に示すように、紙面上方のスイッチ77がOFFされ、ひいては、2つのスイッチ77がOFFされる。その後、最下段に示すように、紙面下方のスイッチ77がONされる。
このように、スイッチ回路69は、アクチュエータ17に接続される出力端子57を切り換えるときに、アクチュエータ17が複数の出力端子57のいずれにも接続されない期間(換言すればいずれのスイッチ77もOFFされる期間)を設けてよい。これにより、例えば、出力端子57同士で短絡が生じる蓋然性が低減される。なお、2つのスイッチ77を例に取ったが、全てのスイッチ77の切り換えに関して、上記の期間が設けられてよい。また、図示の例とは異なり、上記のような期間が設けられなくても構わない。
図示の動作は、適宜に実現されてよい。例えば、パターン信号生成回路49は、電位の時系列の情報が、第1の電位の情報と、時間的に第1の電位の次であって第1の電位とは異なる第2の電位の情報との間に、スイッチ77のOFFを指定する情報を有するようにパターン信号Sgp1を生成してよい。そして、修正回路67(デコーダ73)は、パターン信号Sgp2によって入力されるデータがスイッチ77のOFFを指定しているときは、複数(15個)のスイッチ77に接続されている複数の出力端子のいずれからも信号を出力しない(全ての出力端子をOFFに対応する電位に維持する)ように動作してよい。
図11Aは、スイッチ回路69の動作の具体例を示す他の模式図である。この図は、1つのスイッチ77が、OFF、ON、OFFと順に操作されるときに、1つのスイッチ77からアクチュエータ17に付与される電位の経時変化を示している。横軸tは時間であり、縦軸Vは電位である。
ここでは、他のスイッチ77の影響は無視して考えている。従って、スイッチ77がOFFされているとき(時点t11の前等)においては、スイッチ77の出力側(アクチュエータ17側)の電位は、仮想的な所定の電位(例えば基準電位)となる。また、スイッチ77がONされているとき、スイッチ77の出力側の電位は、スイッチ77の入力側の電位(対応する出力端子57が保持している電位)となる。
時点t11は、修正回路67からスイッチ77へ、修正パターン信号Sgmが含む周期T2の信号の入力が開始された時点(ONされた時点)である。この図に示されるように、スイッチ77においては、OFFからONにされてから出力側の電位が入力側の電位と同等の電位に遷移するまでには時間遅れ(遷移時間T11)が生じる。同様に、ONからOFFにされてから(修正パターン信号Sgmが含む周期T2の信号の入力が停止されてから)、出力側の電位が所定の電位に遷移するまでには時間遅れ(遷移時間T12)が生じる。
遷移時間T11及びT12は、適宜に設定されてよい。両者は、一方が他方よりも短くてもよいし、同等であってもよい。図示の例では、ONのときの遷移時間T11がOFFのときの遷移時間T12よりも長い。このときの両者の差の程度は適宜に設定されてよい。例えば、遷移時間T11は、遷移時間T12に対して、1.1倍以上、1.3倍以上、1.5倍以上又は2倍以上とされてよい。
遷移時間T11及びT12を調整するための構成は、公知の構成を含む種々の構成とされてよい。図11B~図11Dは、遷移時間T11及びT12を調整する構成の例を示している。
図11B~図11Dの例では、レベルシフタ75とスイッチ77との間に、互いに並列接続された抵抗体79A及び79Bと、抵抗体に対して直列接続されたダイオード81A及び/又は81Bが設けられている。これらは、スイッチ77毎に設けられていてもよいし、複数(一部又は全て)のスイッチ77に対して共用されていてもよい。
図11Bの例では、抵抗体79Aの抵抗値を大きくすることによって遷移時間T11を長くすることができ、抵抗体79Bの抵抗値を大きくすることによって遷移時間T12を長くすることができる。図11Cの例では、抵抗体79A及び79Bの抵抗値を大きくすることによって遷移時間T11を長くすることができ、抵抗体79Bの抵抗値を大きくすることによって遷移時間T12を長くすることができる。図11Dの例では、抵抗体79Bの抵抗値を大きくすることによって遷移時間T11を長くすることができ、抵抗体79A及び79Bの抵抗値を大きくすることによって遷移時間T12を長くすることができる。
なお、先に説明した図5では、遷移時間T11及びT12が個別信号SgIに及ぼす影響も示されている。すなわち、個別信号SgIの電位は、待機電位Vw又は変位電位V0~V6を順に遷移するとき、一の電位から次の電位へ直ちに遷移するのではなく、徐々に遷移している。また、周期T2は、遷移時間を含んでいる。その結果、個別信号SgIが待機電位Vw又は変位電位V0~V6のいずれか1つに保持される最小の時間は周期T2よりも短くなっている。
以上のとおり、記録ヘッド(液体吐出ヘッド2又はヘッド本体3)は、複数の記録素子15と、駆動制御部(ヘッド制御部37)とを有している。複数の記録素子15は、画像を構成するドットをそれぞれ形成する。ヘッド制御部37は、複数の記録素子15のそれぞれに対して動作信号(例えば個別信号SgI)を入力する。動作信号は、待機信号(例えば非波形信号Sgn又は非波形信号Sgnのみからなる非駆動周期信号SgN。以下、一方のみを参照することがある。)と、駆動信号(例えば駆動波形信号Sga、非駆動波形信号Sgb又は駆動周期信号SgA。以下、いずれか1つのみを参照することがある。)とを有している。非波形信号Sgnは、非駆動時の記録素子15に入力され、電位が待機電位Vwに保持される。駆動波形信号Sgaは、駆動時の記録素子15に入力され、電位が待機電位Vwから1つ以上の変位電位(V0~V6のいずれか1つ以上)に遷移する。複数の記録素子15のうちの少なくとも1つに入力される非波形信号Sgnの待機電位Vwが、複数の記録素子15のうちの他の少なくとも1つに入力される非波形信号Sgnの待機電位Vwと異なっている。
従って、例えば、待機電位Vwによって駆動波形信号Sgaの振幅を調整でき、かつ当該調整を互いに異なる記録素子15に対して別個に行うことができる。これにより、複数の記録素子15が形成するドットの態様(例えばドットの径)のばらつきに起因する濃淡斑(意図されていない濃淡)を低減することができる。この調整方法では、駆動波形信号Sgaの変位電位V0~V6は調整されなくてよい(ただし、調整されてもよい。)。その結果、例えば、変位電位候補V0~V6を複数の記録素子15に対して共通化できる。ひいては、ヘッド制御部37の構成を簡素化できる。例えば、本実施形態では、定電圧源45及びパターン信号生成回路49が複数の記録素子15によって共用されており、ヘッド制御部37の構成が簡素である。
駆動制御部(ヘッド制御部37)は、複数の記録素子15に対して個別(1つ1つ別個に)に待機電位Vwを設定してよい。例えば、本実施形態では、記録素子15毎に設けられたセレクタ71(記憶回路)が、待機電位Vwの情報を保持しており、この情報に基づいて各記録素子15に入力される待機電位Vwが生成される。
この場合、例えば、記録素子15毎に濃淡が調整される。その結果、ヘッド2の対向面3aを分割したブロック毎(2以上の記録素子15を含むブロック毎)に濃淡を調整する態様(既述のように当該態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)に比較して、濃淡の調整が高精度に行われる。ひいては、濃淡斑の低減の効果が向上する。また、ブロック毎の調整では、ブロック間の境界に位置する記録素子15同士において、却って濃度差が拡大する可能性があるが、そのような不都合が生じる蓋然性が低減される。
駆動制御部(ヘッド制御部37)は、画像データ43に応じた制御信号Sgc2(Sgc1)に基づいて、待機信号(例えば非波形信号Sgn)及び駆動信号(例えば駆動波形信号Sga)のいずれかを選択的に複数の記録素子15のそれぞれに繰り返し入力してよい。複数の記録素子15のそれぞれにおいて、繰り返し入力される複数の非波形信号Sgnは、制御信号Sgc2によらずに、互いに同一の待機電位Vw(V6_0~V6_8のいずれか1つ)を有してよい。例えば、実施形態では、1つの記録素子15に入力される非波形信号Sgnの待機電位Vwは、セレクタ71によって指定される電位であり、制御信号Sgc2の情報の内容によらずに一定である。また、複数の記録素子15のそれぞれにおいて、繰り返し入力される複数の駆動波形信号Sgaは、制御信号Sgc2に応じて、1つ以上の変位電位(V0~V5の1つ以上)の、大きさ及び時間的な配置の少なくとも1つが互いに異なってよい。例えば、実施形態では、パターン信号選択回路65によって、制御信号Sgc2の情報の内容に応じて、7種類のパターン信号Sgp2(別の観点では駆動波形信号Sga)から1種類のパターン信号Sgp2が選択される。
この場合、例えば、記録素子15において待機電位Vwが一定であるから、ヘッド制御部37の構成を簡素化する効果が向上する。また、1つ以上の変位電位の大きさ及び時間的な配置の少なくとも1つの相違によって複数の駆動波形信号Sgaが生成されるから、多様な濃淡(意図されたもの)を実現することができる。
駆動制御部(ヘッド制御部37)は、電位が互いに異なる複数の待機電位候補V6_0~V6_8から複数の記録素子15のそれぞれに対応する待機電位Vwを選択してよい。また、ヘッド制御部37は、画像データ43に応じた制御信号Sgc2(又はSgc1)に基づいて、1つ以上の変位電位(V0~V5の1つ以上)、大きさ及び時間的な配置の少なくとも1つが互いに異なる複数の駆動信号候補(例えば7種のパターン信号Sgp2から特定される候補)から、複数の記録素子15のそれぞれに入力する駆動信号(例えば駆動周期信号SgA(別の観点では駆動波形信号Sga))を選択してよい。複数の駆動信号候補のそれぞれは、電位が互いに異なる複数の変位電位候補V0~V5から選択された1つ以上の変位電位を含んでよい。複数の待機電位候補V6_0~V6_8において電位の大きさの順番が連続する2つの待機電位候補(例えばV6_8及びV6_7)の電位差(少なくとも1つ。例えば全て)は、複数の変位電位候補V0~V5において電位の大きさの順番が連続する2つの変位電位候補(例えばV5及びV4)の電位差(少なくとも1つ。例えば全て)よりも小さくされてよい。
この場合、例えば、電位差が相対的に大きい複数の変位電位によって、吐出される液滴の態様(例えば液滴量)の大きな変化を実現できる。すなわち、意図された濃淡の変化を大きくできる。一方で、電位差が相対的に小さい複数の待機電位によって、吐出される液滴の態様を微調整できる。すなわち、複数の記録素子15における相対的に小さい濃度差(意図されていないもの)を低減することができる。このように、意図された濃淡の実現と、意図されていない濃淡の低減との両立を図ることができる。
複数の待機電位候補V6_0~V6_8において電位の大きさの順番が連続する2つの待機電位候補の電位差(少なくとも1つ。例えば全て)は、複数の待機電位候補のうち最も複数の変位電位候補から離れている候補V6_8と、複数の変位電位候補のうち最も複数の待機電位候補から離れている候補V0との電位差に対して、2%以下とされてよい。
この場合、例えば、待機電位候補の電位差が変位電位候補の電位差に対して小さいことによる上述の効果が向上する。また、例えば、濃淡を表現する一般的なプリンタ1を想定したときに、待機電位Vwと、待機電位Vwから最も離れている変位電位候補V0との電位差に対して2%以下の電位差は、記録媒体上において人間の目で濃度差を判別することが難しい濃淡として現れる。従って、この2%以下の電位差で濃淡を調整することによって、人間の目で濃度斑を判別できないレベルまで濃度斑を低減できる。
駆動制御部(ヘッド制御部37)は、画像データ43に応じた制御信号Sgc2(Sgc1)に基づいて、1つ以上の変位電位(V0~V5の1つ以上)の、大きさ及び時間的な配置の少なくとも1つが互いに異なる複数の駆動波形候補(例えば7種のパターン信号Sgp2から特定される候補)から、複数の記録素子15のそれぞれに入力する駆動信号(例えば駆動周期信号SgA(別の観点では駆動波形信号Sga))を選択してよい。複数の駆動波形候補は、複数の記録素子15に対して共通に設定されている。例えば、本実施形態では、パターン信号生成回路49から出力される7種のパターン信号Sgp2が複数の記録素子15に共通して入力されることによって、複数の駆動波形候補が共通化されている。
換言すれば、駆動周期信号SgA(又は駆動波形信号Sga)における各変位電位の大きさ及び時間的な配置は、アクチュエータ17の動作の種類(別の観点では、吐出する液滴の態様(例えば液滴量)の種類)に応じて定められており、記録素子15に依存していない。従って、例えば、アクチュエータ17の動作の種類(待機も含む)と同数の電位の変動パターン(パターン信号Sgp2)を用意すればよい。その結果、パターン信号Sgp2の数を低減できる。なお、上記とは異なり、少なくとも一部の記録素子15に対して他の少なくとも一部の記録素子15とは異なる駆動波形候補が設定された態様も本開示に係る技術に含まれてよい。
記録ヘッド(ヘッド2又はヘッド本体3)は、パターン信号出力回路(パターン信号生成回路49及び複数のパターン信号選択回路65)と、修正回路(複数の修正回路67)と、動作信号生成回路(定電圧源45及び複数のスイッチ回路69)とを有してよい。パターン信号出力回路(49及び65)は、複数の記録素子15のそれぞれに入力される動作信号(例えば個別信号SgI)の電位が遷移する予定の待機電位Vw及び1つ以上の変位電位(V0~V5のいずれか1つ以上)の時系列を指定する情報を有しているパターン信号Sgp2を出力してよい。修正回路67は、パターン信号Sgp2における待機電位Vwを、対応する記録素子15に応じた待機電位Vw(V6_0~V6_8のいずれか1つ)に修正した修正パターン信号Sgmを出力してよい。動作信号生成回路(45及び69)は、修正パターン信号Sgmに基づいて個別信号SgIを生成して、対応する記録素子15に入力してよい。
この場合、例えば、互いに異なる待機電位Vw毎にパターン信号Sgp2を用意しなくてよいから、パターン信号Sgp2の種類を削減することができる。その結果、例えば、回路構成が簡素化される。
パターン信号出力回路は、生成回路(パターン信号生成回路49)と、選択回路(複数のパターン信号選択回路65)とを有してよい。パターン信号生成回路49は、1つ以上の変位電位の、大きさ及び時間的な配置の少なくとも1つに係る情報が互いに異なる複数種類のパターン信号Sgp2を生成してよい。複数のパターン信号選択回路65は、画像データ43に基づく制御信号Sgc1(Sgc2)に応じて、複数種類のパターン信号Sgp2の1つを複数の記録素子のそれぞれに対して選択してよい。
この場合、例えば、記録素子15毎にパターン信号Sgp2(Sgp1)を生成しなくてよい。従って、例えば、回路構成を簡素化する効果が向上する。
動作信号生成回路は、定電圧源45と、複数のスイッチ回路69とを有してよい。定電圧源45は、複数の待機電位V6_0~V6_8及び複数の変位電位V0~V5に保持された複数の端子(出力端子57)を有してよい。複数のスイッチ回路69は、複数の記録素子15のそれぞれに対応して設けられてよい。スイッチ回路69は、定電圧源45の複数の出力端子57と、対応する記録素子15との接続を切り替えてよい。
この場合、例えば、単純な回路で待機電位Vwが異なる動作信号(例えば個別信号SgI)を実現できる。具体的には、以下のとおりである。特許文献3では、信号の基準電位(待機電位に相当)を変化させるとき、信号の波形の振幅が変化後の基準電位に応じた大きさとなるように信号の波形の振幅を増幅させた後、変化後の基準電位を信号に加算して出力している。このような態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)に比較して、本実施形態では、基準電位の変化量に応じた振幅を算出したり、その算出結果に基づいて振幅を変更したりしなくてよい。
複数のスイッチ回路69のそれぞれは、対応する記録素子15に接続される出力端子57を複数の出力端子57内で切り換えるときに、記録素子15が複数の出力端子57のいずれにも接続されない期間(図10参照)を生じてよい。
この場合、例えば、既述のように、出力端子57同士が短絡する蓋然性が低減される。その結果、例えば、消費電力が低減される。消費電力の低減によって、例えば、IC13の温度上昇が低減される。その結果、例えば、温度変化に起因するインクの吐出特性の変動が低減される。
複数のスイッチ回路69のそれぞれは、複数の出力端子57それぞれに対して設けられているスイッチ77を有してよい。スイッチ77は、対応する出力端子57が入力側に接続され、対応する記録素子15が出力側に接続されてよい。スイッチ77がONされたときに出力側の電位が所定の電位(例えば基準電位)から入力側の電位(出力端子57の電位)と同等になるまでの時間(遷移時間T11)は、スイッチ77がOFFされたときに、入力側の電位と同等になっている出力側の電位が上記所定の電位になるまでの時間(遷移時間T12)よりも長くされてよい。
この場合、例えば、スイッチ77がONされたときに、対応する出力端子57の電位が他のスイッチ77の出力側に付与されるまでの時間を相対的に長くできる。一方で、スイッチ77がOFFされたときに、他のスイッチ77の出力側の電位が、対応する出力端子57に付与されるまでの時間を相対的に短くできる。従って、出力端子57同士が短絡する蓋然性が低減される。短絡の蓋然性を低減することによる効果は、上述のとおりである。また、このような遷移時間T11及びT12の調整によって、例えば、上述した記録素子15が複数の出力端子57のいずれにも接続されない期間(図10参照)を設ける動作を不要とすることも可能である。
<第2実施形態>
図12は、第2実施形態に係るヘッドの要部を示す図であり、第1実施形態の図8に対応している。
第2実施形態に係る定電圧源245は、待機電位V6_0~V6_8を保持する複数(図示の例では9個)の出力端子57のうち少なくとも1つ(図示の例では全部)について、待機電位Vwの大きさを変更可能である。これにより、例えば、記録素子15毎(又はブロック毎)の濃度差を測定した後に、その濃度差に適した待機電位候補V6_0~V6_8を設定することができる。換言すれば、ヘッド毎に、待機電位候補V6_0~V6_8を設定することができる。
出力端子57の保持する待機電位Vwの大きさを変更するための構成は、種々可能である。図示の例では、以下のとおりである。
入力端子53から基準電位端子55までの経路において、入力端子53と、最も待機電位に近い変位電位(図示の例ではV5)に対応するオペアンプ61の非反転入力のノードとの間には、抵抗値20Rの抵抗体59が設けられている。また、第1実施形態において、入力端子53と、変位電位V5に対応するオペアンプ61の非反転入力のノードとの間に設けられた構成(抵抗値Rの8個の抵抗体59、抵抗値12Rの1個の抵抗体59及び待機電位に対応する出力端子57が接続されるノード)が、入力端子53と、変位電位V5に対応するオペアンプ61の出力側との間に設けられている。ただし、第1実施形態における抵抗値が12Rの抵抗体59は、可変抵抗体259に置換されている。
このような構成においては、可変抵抗体259の抵抗値を変化させることによって、全ての待機電位V6_0~V6_8を可変抵抗体259の抵抗値の変化量に応じた比率で変化させることができる。このとき、変位電位V0~V5の大きさは変化しない。
特に図示しないが、可変抵抗体259の位置を抵抗値Rの抵抗体59が配置されているいずれかの位置としたり、2以上の可変抵抗体259を設けたりしてもよい。また、定電圧源245が、待機電位のための定電圧源と、変位電位の定電圧源とを別個に含んでいるといえるような態様で定電圧源245を構成し、待機電位の変化が変位電位に影響を及ぼさないようにしてもよい。
<第3実施形態>
図13は、第3実施形態に係るヘッドの要部を示す図であり、第1実施形態の図9の一部に対応している。
第3実施形態の修正回路367では、セレクタ371の選択信号Sgsは、デコーダ373を経由せずにレベルシフタ75に入力される。具体的には、以下のとおりである。
修正回路367は、第1実施形態と同様に、デコーダ373及びレベルシフタ75を有している。また、修正回路367は、デコーダ373及び/又はレベルシフタ75に直接又は間接に接続される、セレクタ371、OR回路83及び複数のAND回路86を有している。
デコーダ373は、選択信号Sgsに基づく待機電位Vwの情報の修正を行わない点を除いて、基本的に第1実施形態のデコーダ73と同様とされてよい。デコーダ373は、パターン信号Sgp2によって待機電位V6_0~V6_8のいずれかを指定するデータが入力されたとき、入力された待機電位に対応する出力端子から信号を出力してよい。すなわち、デコーダ373は、変位電位の情報と同様に待機電位の情報を扱ってよい。
なお、デコーダ373は、入力されたデータが指定する待機電位に関わらずに、待機電位V6_0~V6_8に対応する出力端子のうち、予め定められた出力端子からのみ信号を出力してもよい。また、図示の例とは異なり、デコーダ373は、待機電位V6_0~V6_8に対応する複数の出力端子を有さず、待機電位に対応して1つの出力端子のみを有していてもよい。
セレクタ371が出力する選択信号Sgsは、第1実施形態と同様に、対応するアクチュエータ17に設定されるべき待機電位Vwを指定する情報を含んでいる。第1実施形態では、選択信号Sgsのデータ形式及び伝送方式を問わなかった。本実施形態では、選択信号Sgsは、デコーダ73が出力する信号と同様に、N進数の出力形式でセレクタ371から出力される。ここでは、Nは、待機電位候補V6_0~V6_8の総数(9)である。
従って、セレクタ371は、待機電位候補V6_0~V6_8と1対1で対応している、待機電位候補の数と同数(9個)の出力端子を有している。セレクタ371は、対応するアクチュエータ17に設定されるべき待機電位Vwに対応する出力端子のみから信号を出力する。この信号は、例えば、デコーダ373から出力される信号(周期T2に亘って一定の電位を有する信号)と同一の種類の信号であってもよいし、異なる種類の信号であってもよい。後者の信号としては、例えば、デコーダ373から出力される信号と電位が異なる信号、及び/又は継続的に出力される信号(周期の概念を有さない信号)が挙げられる。
OR回路83は、その入力側が、デコーダ373の出力端子のうち、待機電位V6_0~V6_8に対応する複数(図示の例では9個)の出力端子に接続されている。そして、OR回路83は、例えば、上記9個の出力端子の少なくとも1つから信号が入力されている期間に亘って信号を出力し、上記9個の出力端子の全てから信号が入力されていない期間は信号を出力しない。OR回路83が出力する信号の電位は、デコーダ373が出力する信号の電位と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
複数のAND回路86の入力側と、セレクタ371の複数の出力端子とは、1対1で接続されている。また、複数のAND回路86の出力側と、レベルシフタ75の複数の入力端子とは、1対1で接続されている。各AND回路86が接続されるセレクタ371の出力端子及びレベルシフタ75の入力端子とは、対応する待機電位Vwが同じである。換言すれば、複数のAND回路86は、複数の待機電位候補V6_0~V6_8に対して1対1で設けられている。また、複数のAND回路86の入力には、OR回路83の出力が接続されている。各AND回路86は、例えば、セレクタ371及びOR回路83の双方から信号が入力されている期間に亘って信号を出力し、そうでない期間においては信号を出力しない。AND回路86が出力する信号の電位は、例えば、デコーダ373が出力する信号の電位と同じである。
上記のような構成においては、パターン信号Sgp2によってデコーダ373にシリアルに入力されたデータが待機電位Vwを指定するものであると、デコーダ373からOR回路83に信号が入力され、OR回路83から複数のAND回路86の全てに信号が入力される。そして、複数のAND回路86のうち、セレクタ371から信号が入力されているAND回路86からレベルシフタ75に信号が入力される。すなわち、第1実施形態と同様に、セレクタ371によって選択されている待機電位に対応する信号がレベルシフタ75に入力される。以後の動作、及びデコーダ373に入力されるデータが変位電位を指定するものである場合の動作は、第1実施形態と同様である。
このように、デコーダ373がパターン信号Sgp2を修正するのではなく、セレクタ371及びAND回路86がパターン信号Sgp2を修正してもよい。この場合においても、第1実施形態と同様の効果が奏される。
セレクタ371及びAND回路86によってパターン信号Sgp2を修正する場合、OR回路83は必須ではない。例えば、パターン信号Sgp2が指定する待機電位Vwは、待機電位候補V6_0~V6_8のうちの1種のみとし、この1種の待機電位に対応するデコーダ373の出力端子に全てのAND回路86の入力側を接続してよい。ただし、OR回路83を設けることによって、何らかの不具合によって他の出力端子から信号が出力された場合においても、セレクタ371が指定する待機電位の情報を含む修正パターン信号Sgmを生成することができる。
<第4実施形態>
図14は、第4実施形態に係るヘッドの要部を示す図であり、第1実施形態の図9の一部に対応している。
本実施形態に係る修正回路467は、パターン信号Sgp2における待機電位Vwを修正した修正パターン信号Sgmを出力する動作と、パターン信号Sgp2における待機電位Vwを修正していない非修正パターン信号Sgp3を出力する動作と、を選択的に実行可能に構成されている。すなわち、修正回路467は、待機電位Vwの修正のON及びOFFを切り換え可能となっている。
なお、非修正パターン信号Sgp3は、パターン信号Sgp2と同様の情報を有するものであり、パターン信号と捉えられてよい。ただし、図14では、非修正パターン信号Sgp3は、修正パターン信号Sgmと同様に、N進数(ここでは15進数)の出力形式であることから、便宜上、パターン信号Sgp2と異なる符号を付している。
上記のような動作を実現するための構成は種々可能である。図示の例では、以下のとおりである。
修正回路467は、第3実施形態と同様に、デコーダ373と、レベルシフタ75と、これらに直接又は間接に接続される、セレクタ471、OR回路83及び複数のAND回路86を有している。さらに、修正回路467は、複数のAND回路86とレベルシフタ75との間に、切換回路87を有している。
セレクタ471は、セレクタ371と同様に、対応するアクチュエータ17に設定されるべき待機電位Vwに応じた選択信号SgsをN進数(9進数)の出力形式でN個(9個)のAND回路86に出力する。また、セレクタ471は、待機電位Vwの修正のON又はOFFを指定する切換信号Sgwを切換回路87に出力する。切換信号Sgwは、ON及びOFFの双方において信号(例えば基準電位に対して高い又は低い電位を有する信号)が伝送されるものであってもよいし、一方のみにおいて信号が伝送されるものであってもよい。
切換回路87は、少なくとも、以下の端子を有している。デコーダ373の複数の待機電位候補V6_0~V6_8に対応する複数の出力端子に1対1で接続される複数(9個)の入力端子。複数のAND回路86の出力側に1対1で接続される複数(9個)の入力端子。切換信号Sgwが入力される入力端子。レベルシフタ75の複数の待機電位候補V6_0~V6_8に対応する複数の入力端子に1対1で接続される複数(9個)の出力端子。
切換回路87において、デコーダ373に接続される複数の入力端子と、レベルシフタ75に接続される複数の出力端子とは、同一の待機電位候補に対応するもの同士が1対1で導通可能となっている。同様に、切換回路87において、複数のAND回路86に接続される複数の入力端子と、レベルシフタ75に接続される複数の出力端子とは、同一の待機電位候補に対応するもの同士が1対1で導通可能となっている。
切換回路87は、切換信号SgwによってONが指定されているときは、複数のAND回路86に接続される複数の入力端子と、複数の出力端子とを接続し、デコーダ373に接続される複数の入力端子と、複数の出力端子とを遮断する。逆に、切換信号SgwによってOFFが指定されているときは、デコーダ373に接続される複数の入力端子と、複数の出力端子とを接続し、複数のAND回路86に接続される複数の入力端子と、複数の出力端子とを遮断する。
従って、切換信号SgwによってONが指定され、かつ複数のAND回路86から9進数の出力形式で待機電位を指定する信号が切換回路87に入力されたときは、この複数のAND回路86からの信号がレベルシフタ75に出力される。すなわち、第1実施形態と同様に、セレクタ471によって選択されている待機電位に対応する信号がレベルシフタ75に入力される。
また、切換信号SgwによってOFFが指定され、かつ複数のデコーダ373の待機電位に対応する出力端子から9進数の出力形式で待機電位を指定する信号が切換回路87に入力されたときは、このデコーダ373からの信号がレベルシフタ75に出力される。すなわち、パターン信号Sgp2で指定されている待機電位に対応する信号がレベルシフタ75に入力される。
切換信号SgwによってON又はOFFの場合の以後の動作、及びデコーダ373に入力されるデータが変位電位を指定するものである場合の動作は、第1実施形態と同様である。
切換回路87がレベルシフタ75に出力する信号は、例えば、デコーダ373の変位電位に対応する出力端子がレベルシフタ75に出力する信号と同一の信号である。デコーダ373の待機電位に対応する出力端子、セレクタ471の待機電位に対応する出力端子、及び複数のAND回路86から出力される信号は、デコーダ373の変位電位に対応する出力端子が出力する信号と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
セレクタ471が切換信号SgwによってON及びOFFのいずれを指定するかは、適宜に設定されてよい。例えば、セレクタ471は、揮発性のレジスタを有し、プリンタが稼働される度に、ヘッド2内の複数の素子制御回路51に共用される不図示のメモリ、又は制御装置88から、ON及びOFFのいずれを指定するかの情報を取得してよい。上記メモリ又は制御装置88からの上記情報の取得は、所定の操作がプリンタに対してなされたときなどの適宜な時期とされてもよい。また、例えば、セレクタ471は、不揮発性のレジスタを有し、上記情報を常に保持していてもよい。上記情報の内容は、ヘッド(又はプリンタ)の製造者によって設定されてもよいし、プリンタによって設定されてもよい(後述する第5実施形態参照)。
図15A及び図15Bは、第4実施形態に係る修正回路467の利用例を示すブロック図である。
図15Aでは、定電圧源45を有するプリンタ401Gと、定電圧源45とは異なる構成の定電圧源445を有するプリンタ401Aとが示されている。プリンタ401G及び401Aは、いずれも第4実施形態に係る修正回路467を有している。プリンタ401Gにおいては、修正回路467は、待機電位Vwを修正する機能がONされている。プリンタ401Aにおいては、修正回路467は、待機電位Vwを修正する機能がOFFされている。その結果、例えば、ヘッド制御部のうち、定電圧源を除く複数の構成要素の一部又は全部を互いに種類が異なるプリンタに対して共通化することができる。その結果、生産性が向上する。
図15Bでは、定電圧源45と、定電圧源445とを有するプリンタ401Bが示されている。プリンタ401Bは、使用する定電圧源を定電圧源45と445との間で切換可能な定電圧源選択部89を有している。定電圧源選択部89によって定電圧源45が選択されているときは、修正回路467は、待機電位Vwを修正する機能がONされている。定電圧源選択部89によって定電圧源445が選択されているときは、修正回路467は、待機電位Vwを修正する機能がOFFされている。このように、1つのプリンタ401Bで2種の定電圧源を用いて、異なる態様の印刷を実現することができる。
図16は、定電圧源445の一例を示す図であり、図8に対応している。
定電圧源445においては、定電圧源45と同様の構成において、全ての抵抗体59の抵抗値が互いに同一とされている。従って、複数の出力端子57に保持される複数の電位において、大きさ順が互いに隣り合う電位同士の電位差は、互いに同じである。
図17は、定電圧源445を利用して生成される個別信号SgIの波形の一例を示す図であり、図5に対応している。
修正回路467における待機電位Vwを修正する機能がOFFにされていることにより、パターン信号Sgp2に含まれる電位の情報に基づいて、定電圧源445の複数の電位を用いて、個別信号SgIの波形が形成される。図示の例では、複数の電位は、1つの待機電位V14と、複数の変位電位V0~V13として利用されている。
以上のとおり、修正回路467は、パターン信号Sgp2における待機電位Vwを修正した修正パターン信号Sgmを出力する動作と、パターン信号Sgp2における待機電位Vwを修正していない非修正パターン信号Sgp3を出力する動作と、を選択的に実行可能であってよい。
この場合、例えば、上述のように、ヘッド制御部のうちの定電圧源を除く部分を汎用化して生産性を向上させたり、1つのプリンタにおいて異なる印刷態様を可能にしたりできる。
<第5実施形態>
図18は、第5実施形態に係るプリンタ501の構成の概要を示すブロック図である。
プリンタ501は、各アクチュエータ17に対して設定される待機電位Vwを自ら設定可能に構成されている。具体的には、以下のとおりである。
プリンタ501は、第1実施形態のプリンタ1(又は他の実施形態のプリンタ)と同様の構成に加えて、スキャナ91を有している。スキャナ91は、ヘッド2によって記録媒体(例えば印刷用紙P)に印刷された画像を読み取って画像データを生成する。制御装置88の濃淡評価部93は、取得された画像データに基づいて、濃淡斑の有無及びその程度を特定(評価)する。制御装置88の待機電位設定部95は、濃淡評価部93による評価結果に基づいて、濃淡斑が低減されるように、複数の記録素子15それぞれにおける待機電位Vwを設定する。ヘッド2の待機電位選択部571は、待機電位設定部95によって設定された待機電位Vwを複数のセレクタ71(又は他の実施形態のセレクタ)に記憶させる。
濃淡評価部93は、例えば、記録素子15間の濃度差を評価する(換言すれば、記録素子毎に濃度を評価する。)。例えば、スキャナ91の読み取りによって生成される画像データのdpiを記録媒体上のdpiに換算したときに、その換算したdpiがプリンタ501によって印刷される画像のdpiよりも高くなるように画像データを生成する。濃淡評価部93は、その解像度が高い画像データに基づいて、各記録素子15によってドットが形成される領域の濃度を複数の記録素子15同士で比較して濃度差を評価する。そして、待機電位設定部95は、その記録素子15毎の濃度の評価に基づいて、各記録素子15の待機電位Vwを設定(例えば待機電位候補から選択)する。
なお、濃度差の評価に利用される画像は、濃度差の評価が好適に行われるように適宜なものとされてよい。上記においてプリンタ501が行う動作として説明した濃度の評価及び待機電位の設定は、プリンタの外部の機器によって行われて構わない。
以上の第1~第5実施形態において、プリンタ1、401G、401A及び401Bはそれぞれ記録装置の一例である。ヘッド制御部37は駆動制御部の一例である。個別信号SgI又は周期信号SgTは動作信号の一例であり、非波形信号Sgnは待機信号の一例であり、駆動波形信号Sga及び非駆動波形信号Sgbはそれぞれ駆動信号の一例である。ただし、非駆動波形信号Sgbを有さない非駆動周期信号SgNを待機信号の一例として捉えてもよい。また、電位が変位電位だけでなく、待機電位にも変位する駆動周期信号SgAを駆動信号の一例として捉えてもよい。パターン信号生成回路49と、少なくとも1つのパターン信号選択回路65との組み合わせは、パターン信号出力回路の一例である。少なくとも1つの修正回路67、367及び467はそれぞれ修正回路の一例である。定電圧源45と少なくとも1つのスイッチ回路69との組み合わせは、動作信号生成回路の一例である。パターン信号生成回路49は生成回路の一例である。パターン信号選択回路65は選択回路の一例である。
本開示に係る技術は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
記録装置は、インクジェットプリンタに限定されない。例えば、感熱紙又はインクフィルムに熱を付与するサーマルプリンタであってもよい。この場合、複数の記録素子は、感熱紙及びインクフィルムに熱を付与すべく配列されている複数の加熱部である。加熱部は、例えば、発熱体層と、発熱体層上に位置している共通電極と、発熱体層上に位置しており、共通電極と対向している個別電極とを有しており、個別電極に動作信号(待機信号及び駆動信号)が入力される。また、インクジェットプリンタは、ピエゾ式のものに限定されず、サーマル式のものであってもよい。
サーマルプリンタにおいては、例えば、待機電位と基準電位との電位差によって、ドットを形成する前に予め加熱部の温度を上昇させておくことができ、ひいては、濃度が高くなる。従って、濃度を高くしたいときは、実施形態のインクジェットプリンタとは逆に、待機電位が変位電位に近くなるように(駆動信号の振幅が小さくなるように)待機電位が設定されてよい。サーマル式のインクジェットプリンタにおいては、実施形態のインクジェットプリンタと同様に、濃度を高くしたいときに駆動信号の振幅が大きくなるように待機電位が設定されてよい。
また、記録装置は、記録媒体を搬送するものに限定されない。ロボットによってヘッドを車体(記録媒体)に対して相対移動させて、ヘッドから車体に向けて塗料を吐出するものであってもよい。また、記録装置は、人間の手によって把持されて記録媒体に対して移動される、いわゆるハンディプリンタであってもよい。このような記録装置においては、周期毎に信号(周期信号SgT)を出力してもよいし、周期信号SgTのような信号を所定の移動量毎に出力してもよい。
記録素子に動作信号を入力する駆動制御部は、その少なくとも一部がヘッドの外部に設けられてよい。例えば、定電圧源がヘッドの外部(例えば制御装置88)に設けられ、パターン信号出力回路等がヘッドに設けられてもよい。
実施形態の説明でも触れたように、待機電位の調整による濃度斑の低減は、2以上の記録素子をそれぞれ含むブロック毎に行われてよい。この場合の駆動制御部(例えばヘッド制御部37)の構成は、適宜なものとされてよい。例えば、待機電位を選択するセレクタ(71等)が複数の記録素子で共用されてよい。また、構成自体は実施形態と同様とされつつ、ブロック単位の濃度差に基づいて記録素子毎の待機電位が設定されてもよい。
本実施形態では、待機電位によって濃度斑を低減するから、濃度斑の低減のために変位電位は調整されなくてよい。ただし、濃度斑の低減のために変位電位が調整されても構わない。