図1(a)は、半導体ウェハ上に形成されたパターンの電子顕微鏡画像の一例を示す図である。また、図1(b)は、図1(a)のA-A断面を示す図である。図1は半導体ウェハ上に形成されたトランジスタの簡単な構造を示している。ウェル101上には、拡散層102、103が積層され、更にその上方にはゲート酸化膜104を介して、ゲート電極105が形成されている。また、ゲート電極105の側壁には、サイドウォール106が形成されている。更に、層間酸化膜107を介在させつつ、拡散層102、ゲート電極105、拡散層103のそれぞれにコンタクトする電極(ソースコンタクト108(第1の端子)、ゲートコンタクト109(第2の端子)、ドレインコンタクト110(第2の端子))が形成されている。
図1に例示するような試料に走査軌道111に沿って電子ビームを走査すると、まずソースコンタクト108を通過し、次にゲートコンタクト109を通過し、最後にドレインコンタクト110に到達する。このように、各パターンは異なる場所に存在するが故に、異なるタイミングで順次ビームが照射されることになる。
トランジスタの端子である各コンタクトの内、ソースコンタクト108にビームが照射されている間、ソースコンタクト108から2次電子が放出される。この2次電子の量が、入射する電子の量より多いと、ソースコンタクト108は正に帯電し、正帯電によってソースコンタクト108から放出された電子は、試料側に引き戻され、ソースコンタクト108は導通した電極と比較すると、相対的に暗くなる。次に、ゲートコンタクト109にビームが照射されると、ゲートに電荷が蓄積されるため、やはり導通した電極と比較して、相対的に暗くなる。
そしてドレインコンタクト110にビームが照射されると、その前にゲートコンタクト109にビームが照射され、電荷が蓄積されているため、ゲートが開いた状態となり、ドレインコンタクト110はソースコンタクト108と導通し、電荷が蓄積されることなく、結果として、ソースコンタクト108より相対的に明るくなる。
また、本来接続されているべきゲート電極105とゲートコンタクト109が、接続されていない状態(オープン欠陥)の場合、ゲートコンタクト109に電荷が蓄積してもゲートは開かないので、ソースコンタクト108と同様に、ドレインコンタクト110も暗くなる。
ビームの照射条件によって、輝度条件は大きく変わるため、上記は1つの例を説明するものであるが、半導体素子に接続する複数の素子(本例ではコンタクト)に対し、特定の方向に向かって、或いは特定の順番でビームを照射すると、半導体素子の欠陥の種類に応じた画像となる。
以下に説明する実施例では、半導体素子を構成する複数のパターンに対して順次ビームが照射されるように、ビームを走査したときに得られる画像から、複数の特徴(輝度情報、コントラスト情報等)を抽出し、その複数の特徴を、当該複数の特徴と欠陥の種類が関連付けて記憶された関連情報に参照することによって、欠陥の種類を導出するシステム、及び非一時的コンピューター可読媒体について説明する。
図2は画像データを取得する画像取得ツールの一態様である走査電子顕微鏡を含むシステムの一例を示す図である。
走査電子顕微鏡は断続照射系、電子光学系、二次電子検出系、ステージ機構系、画像処理系、制御系、操作系により構成されている。断続照射系は電子線源1(荷電粒子源)、パルス電子生成器4により構成されている。本発明では、別途パルス電子生成器4を設ける構成としたが、パルス電子を照射可能な電子線源を用いても実施可能である。また本実施例では、パルス電子生成器4をビームの試料への照射を遮断する偏向器とし、偏向器を用いて間欠的にビームを遮断することによってパルスビームを発生させたが、例えば可動絞りの位置を高速に変化させることでパルスビームを発生させても実施可能である。
電子光学系はコンデンサレンズ2、絞り3、偏向器5、対物レンズ6、試料電界制御器7により構成されている。偏向器5は、電子線を試料上で一次元的、或いは二次元的に走査するために設けられており、後述するような制御の対象となる。
二次電子検出系は検出器8、出力調整回路9により構成されている。ステージ機構系は試料ステージ10、試料11により構成されている。制御系は加速電圧制御部21、照射電流制御部22、パルス照射制御部23、偏向制御部24、集束制御部25、試料電界制御部26、ステージ位置制御部27、制御伝令部28、により構成されている。制御伝令部28は、操作インターフェース41から入力された入力情報に基づき、各制御部へ制御値を書き込み制御する。
ここで、パルス照射制御部23は、電子線を連続して照射する時間である照射時間、或いは電子線を連続して照射する距離である照射距離、或いは電子線の照射と照射の間の時間である遮断時間、或いは電子線の照射と照射の間の距離間隔である照射点間距離を制御する。本実施例では、電子線を連続して照射する時間である照射時間と電子線の照射と照射の間の時間である遮断時間を制御した。
画像処理系は、検出信号処理部31、検出信号解析部32、画像または電気特性表示部33、データベース34により構成されている。画像処理系の検出信号処理部31また検出信号解析部32には1つ以上のプロセッサを備え、指定された検査パターンの明度の演算、或いは複数の検査パターン間の明度差の演算、或いは明度、或いは明度差に基づき電気特性を解析する演算や電気特性を分類する演算等を実行する。画像処理系のデータベース34は、電気特性を解析する演算等を実行する際に、校正データを格納する記憶媒体であり、演算時に読み出して利用する。
後述するような制御や画像処理等は、1以上のプロセッサを備えた1以上のコンピューターシステムで実行される。1以上のコンピューターシステムは、予め所定の記憶媒体(コンピューター可読媒体)に記憶された演算モジュールを実行するように構成されており、後述するような処理を自動的、或いは半自動的に実行する。更に、1以上のコンピューターシステムは、画像取得ツールと通信可能に構成されている。
図3は、電気特性導出システムの一例を示す図である。図3に例示するシステムには、走査電子顕微鏡のような画像取得ツール301、ネットリスト記憶媒体302、及びコンピューターシステム303が含まれている。ネットリスト記憶媒体302に記憶されているネットリストは、等価回路を構成する回路素子の電気的特性、及び等価回路における端子間の接続情報を含むデータである。本実施例ではこのネットリストを用いて、検査すべき位置や領域の特定を行い、欠陥が検出された場合、ネットリストにその情報を記録する例を説明する。システムを構成する各構成要素は、バス、或いはネットワークを介して接続されている。
コンピューターシステム303には、欠陥検査に要するモジュール(アプリケーション)が記憶されたメモリ306、及び当該メモリ306内に記憶されたモジュールやアプリケーションを実行する1以上のプロセッサ305が内蔵されている。更に、コンピューターシステム303には、検査に要する情報の入力や検査結果等の出力を行う入出力装置304が備えられている。
メモリ306には、入出力装置304から入力された試料条件や検査条件、及びネットリストから得られる情報に基づいて、半導体ウェハ等の試料を検査する際の画像取得ツール301の動作プログラム(検査レシピ)を生成するレシピ生成アプリケーション307(コンポーネントと称する場合もある)が記憶されている。また、ネットリスト上で、入力装置304によって指定された半導体素子(例えばCMOSやSTT-MRAMのような素子)と、実際の半導体ウェハ上の座標との対応表(データベース)に基づいて、指定された半導体素子を構成する素子、或いは当該素子の端子を含む領域の座標を導き出すネットリスト-座標変換アプリケーション308が記憶されている。
図4は、検査レシピの生成工程を示すフローチャートである。図5は、検査レシピ設定画面の一例を示す図である。GUI画面501は例えば入出力装置304に備えられた表示装置に表示される。GUI画面501内には、検査対象となる半導体素子(ターゲット)の種類(試料情報)を設定する表示欄と、画像取得ツールの装置条件(検査条件)を入力する入力欄が設けられている。本実施例では、画像取得ツールとして走査電子顕微鏡を採用しているので、検査条件としてSEM conditionの欄が設けられている。
試料情報の入力欄には、試料(半導体ウェハ等)の情報を入力する入力欄502、半導体素子の種類を入力する入力欄503、半導体ウェハのレイヤ情報を入力する入力欄504、及びネットリストの種類を入力する入力欄505が設けられている。レシピ生成アプリケーション307は、入力された試料情報とレイヤ情報に基づいて、対応するネットリストをネットリスト記憶媒体302から読み出す(ステップ401、402、403)。
更に、ネットリスト-座標変換アプリケーション308は、読み出されたネットリスト内に含まれる入力された半導体素子を探索し、その半導体素子の半導体ウェハ上の座標を特定する(ステップ404、405)。レシピ生成アプリケーション307は、特定された座標に走査電子顕微鏡の視野(Field Of View:FOV)が位置づけられるようなレシピを生成する(ステップ406)。具体的には、選択された素子が電子ビームの直下に位置付けられるような、走査電子顕微鏡に設けられた試料ステージの駆動条件等が設定される。
また、検査条件の入力欄には、FOVの大きさを設定する入力欄506、電子ビームの加速電圧を入力する入力欄507、電子ビームのプローブ電流を入力する入力欄508、フレーム数(画像の積算枚数)を入力する入力欄509、ビームの走査方向を設定する入力欄510、ビームの走査速度を設定する入力欄511、及びパルスビームの遮断時間を設定する入力欄512が設けられている。
レシピ生成アプリケーション307は、上記特定された座標へ、検査条件の入力欄に入力された検査条件のビームが照射されるようにレシピを生成する(ステップ406)。より具体的には、入力された検査条件に基づいて、走査電子顕微鏡内の引き出し電極、加速電極への印加電圧、及び走査偏向器に供給する走査信号等が設定される。
図6は、上述のようにして生成されたレシピを用いた検査工程を示すフローチャートである。走査電子顕微鏡はまず、レシピに登録された視野位置にビームが照射されるよう検査対象である半導体ウェハを載せた試料ステージを動作させる(ステップ601)。次に、走査偏向器を制御し、ビームを試料上に一次元的、或いは二次元的に走査することによって、信号波形、或いは画像を取得する(ステップ602)。この際、検査対象となる素子の複数の端子が視野内に含まれるようにビーム走査を行う。また、パターンの配列に対し、設定された方向からビームが走査されるようにビーム走査すると共に、設定された走査速度、及び設定された遮断時間のパルスビームが走査されるように、走査電子顕微鏡に設けられた制御装置は、走査偏向器、及びブランキング偏向器を制御する。
なお、本実施例ではパターンの配列方向に沿って、その配列順にビームが照射されるような走査軌道でビームを走査する例について説明するが、これに限られることはなく、ある素子、或いはその端子を構成するパターンに異なるタイミングでビームが照射する他のビーム照射法であっても良い。
次に図3に例示する特徴抽出アプリケーション311は、信号波形、或いは画像データから、複数のパターンの特徴を抽出する(ステップ603)。特徴とは複数のパターンの輝度、基準明るさに対するコントラスト(輝度比)、走査回数に対する輝度の上昇率、パターン寸法や形状等が考えられる。検査アプリケーション310は、信号波形や画像から抽出される複数の特徴の組み合わせを、欠陥の種類と複数の特徴の組み合わせが関連付けて記憶されたデータベースに参照することによって、欠陥分類を実行する(ステップ604、605)。
欠陥特徴データベース309には、試料条件や検査条件に応じて複数の異なるデータベースが記憶され、検査アプリケーション310はレシピ生成時に設定された試料条件や検査条件に応じた適切なデータベースを選択し、選択したデータベースに抽出された複数の特徴を参照することによって、欠陥分類、或いは欠陥の種類を特定する。
上述したように複数のパターンに対し、順次ビームを照射することで、半導体素子を機能させると共に、その状態を評価することによって、欠陥の有無の特定や欠陥分類を行うことが可能となる。
本実施例では、走査方向を可変にすることによって、複数のパターンに対し、所望の順番でビームを照射する例について説明するが、これに限られることはなく、走査方向が固定であっても、その方向故のパターンの特徴の出方を予めデータベースに記憶しておけば、欠陥の有無の判定や欠陥の分類が可能となる。複数のパターンに対して異なるタイミングでビームが照射されるような構成であれば、上述の欠陥分類を実現することが可能となる。
図7は、電気特性導出システムの他の一例を示す図である。図3に例示したシステムとの相違点は、正常電子デバイス等価回路ネットリストの記憶媒体(正常等価回路ネットリスト記憶媒体7022)、欠陥電子デバイス等価回路ネットリスト1の記憶媒体(欠陥等価回路ネットリスト1記憶媒体704)、及び欠陥電子デバイス等価回路ネットリスト2の記憶媒体(欠陥等価回路ネットリスト2記憶媒体705)がコンピューターシステム303と通信可能に接続されている点にある。欠陥電子デバイス等価回路ネットリストには、欠陥を含む等価回路を構成する回路素子の電気的特性、及び接続関係情報が記録されており、また、欠陥電子デバイス等価回路ネットリストは、欠陥の種類に応じて複数設けることができる。なお本実施例では、欠陥電子デバイス等価回路ネットリストに記録される回路素子の電気的特性、及び接続関係情報を、一意に指定したが、回路素子の電気的特性、及び接続関係の範囲を指定してもよい。更に、メモリ306には画像間や、ネットリスト間の一致度を判定するデータ比較アプリケーション701、及び画像シミュレーション用アプリケーション702が記憶されている。
電気特性導出システムは、図8に例示するフローチャートに従って、電気特性を導出する。図6のフローチャートと同様に画像を取得し、複数パターンの輝度情報を取得した後、コンピューターシステム303は、各ネットリストの記憶媒体から、正常等価回路のネットリスト、及び1以上の欠陥等価回路ネットリストを読み出す。画像シミュレーション用アプリケーション702は、ネットリストに含まれる欠陥情報(正常情報)及び検査情報から、検査対象となるパターンの輝度情報をシミュレーションする(ステップ801)。
欠陥等価回路のネットリストには、例えば等価回路中のある接続部分の電気特性の違い等が情報として記述されており、画像シミュレーション用アプリケーション702は、正常な回路に対して電気特性の違い分、輝度を調整するシミュレーションを実行する。また、ビームを照射したときのパターンの輝度は、ビームの照射条件(ビームの走査速度やパルスビームの遮断時間等)のような検査条件によっても変化するため、画像シミュレーション用アプリケーション702は、これらの輝度変調要因の入力に応じて、各パターンの輝度のシミュレーションを実行する。なお、パターンの形状や配置は、レイアウトデータまたはステップ602で取得した画像から決定する。当該形状からセグメンテーションされた各領域の輝度情報をシミュレーションによって推定し、それぞれの領域にシミュレーションによって得られた輝度情報を割り当てる。
上記シミュレーションをネットリスト単位で実行し、データ比較アプリケーション701は、ネットリストごとに得られた輝度情報と、ステップ603で得られた輝度情報を比較する(ステップ802)。データ比較アプリケーション701は、複数のネットリストごとに求められた輝度情報と、ステップ603で得られた輝度情報を比較し、差分が最も小さい、或いは所定の条件を満たす(例えばステップ603で得られた輝度情報との違いが所定値以下)輝度情報を選択する(ステップ803)。コンピューターシステム303は、選択された輝度情報に対応するネットリストが持つ欠陥情報(或いは正常情報)を検査結果として出力する(ステップ804)。
上述のように欠陥ネットリストには、欠陥情報が記述されているため、実画像との比較に基づく選択によって、正確に欠陥を特定することが可能となる。また、出力は「正常」、「欠陥種A」、「欠陥種B」のように欠陥名ではなく、異種欠陥が分離できる程度の分類であっても良い。更に欠陥種Aと欠陥種Bとして、ネットリストのある個所の電気特性(抵抗、容量、半導体特性)の大きさの差や、複数パターン間の接続有無を出力するようにしても良い。
なお、上述の実施例ではシミュレーションによって輝度情報(特徴)を求める例について説明したが、予めネットリストと輝度情報(電子顕微鏡画像)との関係がわかっている場合には、ネットリストと電子顕微鏡画像を関連付けて記憶するデータベースを用意し、実画像とデータベースに記憶された電子顕微鏡画像を比較することで、欠陥分類を行うようにしても良い。
また、本実施例ではシミュレーションによってネットリストから輝度情報を演算し、それを実画像の輝度情報と比較する例について説明したが、実画像から得られる輝度情報を、シミュレーション等によってネットリスト化し、ネットリスト同士を比較することによって、欠陥分類を行うようにしても良い。
図9は欠陥検査(欠陥分類)を行う際の検査条件と、導出された検査結果(分類結果)を表示するGUI(Graphical User Interface)画面の一例を示す図である。検査条件の入力欄には、光学条件や変調条件等の装置条件の入力欄、対象となる半導体デバイスの設計データ(レイアウトデータ)の選択欄、正常デバイスのネットリストの選択欄、及び欠陥種毎の複数の欠陥デバイスネットリストの選択欄が設けられている。光学条件や変調条件等の装置条件の入力欄からは、FOVの大きさ、電子ビームの加速電圧、電子ビームのプローブ電流、フレーム数(画像の積算枚数)、ビームの走査方向、ビームの走査速度、パルスビームの遮断時間、パルスビームの照射時間等を入力できる。画像シミュレーション用アプリケーション702は、これらの入力に基づいて、輝度情報(電子顕微鏡画像)を求める。また、検査結果の表示欄には分類された欠陥分布を表示することができる。
図10は、実画像(電子線照射結果)とシミュレーションによって推定された推定画像(推定照射結果)を表示するGUI画面の一例を示す図である。図10の例では、データ比較アプリケーション701から出力される画像の一致度を表示している。このような表示を行うことによって、オペレータは分類の結果を検証することが可能となる。
図11は、ビーム条件(ビームの走査速度やパルスビームの遮断時間)を変えてビーム走査をすることによって得られる複数の画像から、欠陥種を推定する工程を示すフローチャートである。本実施例では、ビーム条件を複数設定(ステップ1101)することによって、複数の画像を取得する(ステップ602)。本実施例では照射電荷量を変えて、ゲートコンタクト109にビームを照射したときのドレインコンタクト110の輝度の推移をモニタする。照射電荷量は例えば照射時間やビームの電流量を調整することによって変化させる。
本実施例では、ゲートコンタクト109に電荷を蓄積するためのビームを照射した後に、ドレインコンタクト110に画像形成のためのビームを照射する工程を繰り返す例について説明する。
図12は、ゲートコンタクト109に照射されるビームの照射電荷量を変化させたときの、ドレインコンタクト110の輝度の推移を示すグラフを表示するGUI画面の一例を示す図である。先に説明したように、ゲート電極に電荷が蓄積し、ゲートが開放されると、ソース、ドレイン間が導通する。正常な回路であればある程度、ゲートに電荷が蓄積するとゲートが開放され、ソースドレイン間が導通するため、ドレインコンタクト110は明るくなる。図12のNo.0は正常な等価回路の輝度の推移を示しており、電荷がある程度蓄積したときに、ドレインコンタクトが高輝度になる様子を示している。
一方、図12のNo.1は、ゲートに電荷を蓄積してもソースドレイン間が導通しないため、低輝度状態が維持された状態を示している。これはゲートコンタクト109とゲート電極105が接触していないが故に、ゲートが開かないオープン欠陥である可能性があることを示している。また、図12のNo.2は、正常な回路に対して、ゲート電極に多くの電荷を供給しないとゲートが開かない状態を示している。これは、ゲート電極109からウェル101に電荷がリークし、ゲート電極109に電荷が蓄積しづらい状態を示している。更に、図12のNo.3は、ゲート電極への電荷の蓄積に関わらず、ドレインコンタクトが高輝度である状態を示している。これは、ドレインからウェルに電荷がリークし、ゲートの開放に関わらずドレインコンタクトが高輝度となっていることが考えられる。
上述のような輝度の推移は、欠陥種に応じて変化するため、輝度の推移を評価することによって、欠陥種の分類を行うことが可能となる。図11に例示するフローチャートでは、コンピューターシステム303は、図12に例示するようなカーブ(第1のSカーブ)を生成(ステップ1103)し、その後、正常等価回路ネットリストと、1以上の欠陥等価回路ネットリストから複数のカーブ(第2のSカーブ)を生成する(ステップ1104)。そして、第1のSカーブと第2のSカーブを比較(ステップ1105)し、一致度の高い第2のSカーブに対応するネットリストの欠陥情報(或いは正常情報)を出力する(ステップ1106、1107)。
以上のような構成によれば、半導体素子の電気特性評価を行うことが可能となる。なお、図12では正常を示すSカーブに対する一致率を求める例について説明しているが、欠陥等価回路ネットリストからSカーブを生成しなくても、一致率から欠陥の有無を判定するようにしても良い。また、欠陥種に応じてSカーブの形状に特徴があるので、欠陥種に応じたSカーブの形状情報を予め取得しておき、それぞれの一致度に応じて欠陥種を判定するようにしても良い。
図13は、複数のネットリストを含むネットリスト群が、半導体の製造工程単位で用意された電気特性導出システムの一例を示す図である。図13に例示するようなシステムによれば、実画像から得られた輝度情報と、ネットリスト群から得られた輝度情報を比較することによって、欠陥種だけではなく欠陥をもたらす製造工程を特定することが可能となる。
例えば、工程A異常等価回路ネットリスト群の記憶媒体1301には、STT-MRAMの磁気トンネル接合(Magnetic Tunnel Junction:MTJ)の膜質不良系欠陥を含む複数のネットリストが記憶されている。MTJの膜質不良系欠陥が、主に工程Aの製造条件の調整不足に起因して発生することが判明している場合に、当該欠陥を含むネットリストを複数記憶しておき、当該ネットリストから導き出される輝度情報群と、実画像から抽出される輝度情報を比較することによって、工程Aの調整不足か否かを判定する。
より具体的には、工程A、工程B、工程Cのそれぞれについて、ネットリスト群を記憶しておき、それぞれの群から導き出される輝度情報群を、実画像から導き出される輝度情報と比較し、実画像から導き出された輝度情報が、どの工程の群に近いかを判定することによって、欠陥をもたらす工程を判定する。
コンピューターシステム303は、例えば図8に例示したフローチャートに沿って上記判定を行う。ステップ802ではネットリスト群ごとの輝度情報群と、実画像から得られた輝度情報との比較を行い、ステップ803では、実画像から得られた輝度情報が、いずれの群に近い或いは属するべきかを選択し、ステップ804では、選択された群に対応する工程名を出力する。また、各郡に対する近さに応じて、工程の確からしさを出力するようにしても良い。更に該当する工程がない場合は、「その他」と判定するようにしても良い。
以上のようなコンピューターシステムによれば、欠陥をもたらす製造工程を特定することが可能となる。なお、STT-MRAMを対象とする場合、工程B異常等価回路ネットリスト群の記憶媒体1302に、キャリア欠損系の欠陥を含む複数のネットリストを記憶させ、工程C異常等価回路ネットリスト群の記憶媒体1303に、ゲート絶縁膜質系の欠陥を含む複数のネットリストを記憶させることが考えられる。
図14は、GUI画面の一例を示す図であり、図8に例示したGUI画面との相違点は、検査条件として、異なる工程毎のネットリスト群が選択できるようになっている点である。工程単位で管理されたネットリスト群の選択を可能とすると共に、そのネットリスト群から導き出される特徴と、実画像から導き出される特徴の比較を可能とすることによって、異常工程の特定を容易に実現することができる。
実施例4で説明したように、画像データや画像データから抽出される特徴(輝度情報等)から、異常工程、或いは異常工程に係る製造装置の調整パラメータがわかれば、速やかに製造条件の調整を行うことができる。本実施例では、画像データ、或いは画像データから抽出される特徴を入力することにより、異常工程、或いは異常工程に係る製造装置の調整パラメータを特定するシステムについて説明する。
図15は、異常工程等を推定するシステムの一例を示す図である。図15は機能ブロック図で表現されている。図15に例示するコンピューターシステム1501は、機械学習システムであり、1以上のプロセッサを含み、所定の記憶媒体に記憶された1以上の演算モジュールを実行するように構成されている。また、後述するような推定処理を、AIアクセラレータを用いて行うようにしても良い。図15に例示するコンピューターシステム1501には、学習に供される教師データや推定処理に必要なデータが、記憶媒体1502や入力装置1503から入力される入力部1503が備えられている。
コンピューターシステム1501に内蔵される学習器1504は、入力部1503から入力される画像データ、及び図示しない画像処理装置等で抽出された画像の特徴の少なくとも一方、荷電粒子線装置のビームの照射条件(検査条件)、試料の種類と試料上に形成された素子の情報(試料情報)の組を教師データとして受け付ける。更に学習器1504は、工程異常情報も併せて受け付ける。工程異常情報とは、過去、欠陥と判定され、その欠陥を是正するために製造装置にフィードバックした工程、或いはそのフィードバックしたパラメータ等である。これらの情報は、学習器を学習させるための教師データとすべく、所定の記憶媒体にデータセットとして記憶しておく。
画像の特徴とは、例えば、特定パターンの輝度やコントラスト等であり、パターンマッチング等で特定されたパターンや、セマンティックセグメンテーション等でセグメント化された特定パターンの輝度情報を抽出することによって取得することができる。学習器としては、例えば、ニューラルネットワーク、回帰木、ベイズ識別器等を用いることができる。
また、ビームの照射条件とは、パルスビームの遮断時間や照射時間等であり、学習器1504は、荷電粒子線装置の検査レシピからの読み出し、或いは入力装置1505からの入力等によって、これらのデータを教師データの一部として受け付ける。
学習器1504は、受け付けた教師データを用いて機械学習を実行する。学習モデル記憶部1506は、学習器1504が構築した学習モデルを記憶する。学習器1504で構築された学習モデルは、異常工程推定部1507に送信され、異常工程推定に用いられる。
異常工程推定部1507では、学習器1504で構築された学習モデルに基づいて、入力された画像データ、或いは画像データから抽出される特徴と、同じく入力された試料、検査情報から、異常工程、或いはフィードバックすべきパラメータを推定する。
上述のように学習された学習モデルを用いた推定を行うことによって、速やかに製造装置の調整を行うことが可能となる。
図16は、試料の電気特性を導出する他のシステムを示す図である。図17は、検査対象となる半導体素子の一種であるDRAMが形成された試料のトップビューを示す図である。DRAMは、ワードライン1702への印加電圧を上げてトランジスタにゲート電圧をかけた状態とすることで、ビットライン1703に印加された電圧により、キャパシタ(ストレージノード)を充電する素子である。ここで、図17に例示する画像には、ワードラインコンタクト1701(WLC)とストレージノードコンタクト1705(SNC)が見えた状態にあり、拡散層1704等の点線で表した部分は見えないものとして説明する。
本実施例では、ワードラインコンタクト1701を介して、トランジスタに複数回ストレスを印加することによって、DRAMの耐久性(信頼性)を評価する例について説明する。図18は、DRAMの信頼性評価工程を示すフローチャートである。
まず、レシピに登録された座標に試料移動し、WLC、SNCの双方を含むように画像を取得する(ステップ601、602)。ステップ602で取得した画像を用いて、WLC(第1の端子)とSNC(第2の端子)の位置を特定し、その上でWLCにストレス印加用のビームを照射する(ステップ1801)。本実施例ではストレス印加用のビームとして、走査電子顕微鏡の電子源から放出されるビームを用いる例を説明するが、ストレス印加用の他の電子源やストレス印加用の光を放出する光源を、走査電子顕微鏡の試料室内に設置し、これらのビーム源を用いてストレスを与えるようにしても良い。
次に、SNCに画像取得用のビームを照射し、画像を取得する(ステップ1802)。このストレス印加と画像取得を繰り返し、図19のNo.1に例示するようなSカーブを生成する(ステップ1803)。図19は、半導体素子の信頼性判定結果を検査結果として表示するGUI画面の一例を示す図である。WLCを介してゲートに印加される電圧が閾値を超えると、ゲートは開くためSNCが明るい状態となる一方で、ホットキャリア効果による特性劣化が発生すると、ゲートに印加される電圧が実効的に下がって閾値以下となり、ゲートが閉じたままであるため、SNCは暗くなる。
ストレスを印加する回数とパラメータ(輝度)の変化から、素子の信頼性を評価すべく、ある閾値を設定しておき、信頼性保証時間(回数)に達する前に、特性劣化が発生する(特徴が閾値を超える或いは下回る)か否かを判定する。コンピューターシステム303は、信頼性データベース1601より、半導体素子の種類や検査条件に応じた閾値を読み出し、当該閾値を超える(或いは下回る)か否かを判定し、閾値を超えている(下回っている)場合には、検査対象素子は正常と判定し、閾値を下回っている(超えている)場合には、欠陥と判定する(ステップ1804、1805、1806)。
図19のNo.2は、例えば本来、導通している端子であり、通常であれば明るく見える端子が、ストレス印加用ビーム照射に起因するエレクトロマイグレーション現象により、端子内の空孔が移動し、コンタクトが断線した結果、暗く表示される例を示している。このように欠陥を誘発させる現象に応じた適切な閾値を設定し、所定数或いは所定量のストレス印加を行ったときの特徴を評価することによって、半導体素子の信頼性を評価することが可能となる。
さらに、ストレスを印可する回数と輝度の関係から抽出された特徴量を用いて、欠陥種を判定することができる。例えば、図19のNo.1とNo.2に例示するSカーブの形状の違いから、ホットキャリア効果とエレクトロマイグレーション現象を判別することができる。
本実施例では、パターンの輝度情報とパターンの寸法や形状情報を組み合わせて、欠陥の種類を特定(分類)するシステムについて説明する。図20(a)は、下層配線2005と当該下層配線に接続される4つのプラグの断面図を示す図であり、図20(b)は、4つのプラグのトップビューを示す図である。4つのプラグの内、プラグ2001及びプラグ2002と比べ、プラグ2003及びプラグ2004は、トップビューのパターン寸法が小さい、寸法欠陥である。またプラグ2001及びプラグ2003と比べ、プラグ2002及びプラグ2004は、テーパが大きい、テーパ欠陥である。このような試料にビームを照射した場合のプラグの輝度は、プラグの帯電量に反比例する。またプラグの帯電量は、プラグと下層配線との接合面積に反比例する。さらにプラグと下層配線との接合面積は、最上面のパターン寸法に比例し、テーパに反比例する。以上から、プラグの輝度はトップビューのパターン寸法に比例し、テーパに反比例する。例えば図20の4つのプラグでは、トップビューのパターン寸法が大きくテーパ角が小さいプラグ2001の輝度が最も大きく、トップビューのパターン寸法もテーパ角も大きいプラグ2002とトップビューのパターン寸法もテーパ角も小さいプラグ2003の輝度が次に大きく、トップビューのパターン寸法が小さくテーパ角が大きいプラグ2004の輝度が最も小さい。従って最上面のパターンの輝度情報と寸法情報を組み合わせることで、寸法欠陥と、テーパ欠陥と、寸法及びテーパの複合欠陥とを分類することが可能である。
図21はパターンの輝度情報とパターンの寸法や形状情報に基づいて、欠陥の種類を分類するシステムの一例を示す図である。コンピューターシステム303は、半導体デバイスの設計データ(レイアウトデータ)が記憶された設計データ記憶媒体2101と通信可能に接続されている。メモリ306に記憶されたパターン形状評価アプリケーション2102は例えば、設計データ記憶媒体2101から読み出されたレイアウトデータと、実画像に含まれるパターンとを比較し、形状情報(パターンサイズ、寸法、レイアウトデータに対するサイズの比率、レイアウトデータに対する大小関係等)を算出する。
欠陥分類アプリケーション2103は、例えばパターンの形状情報と輝度情報の組み合わせと、欠陥の種類とを関連付けて記憶したデータベースを参照して、欠陥種を特定する。例えば図20に示したように、プラグ2002とプラグ2003の輝度が同程度であり、トップビューのパターン寸法が異なることから、プラグ2002はテーパ欠陥、プラグ2003は寸法欠陥であると特定される。
このように輝度だけではなく、寸法や形状のような他の特徴も参照することで、欠陥分類のカテゴリーを増やすことが可能となる。
図1を用いて説明したように、欠陥の種類に応じて、複数のパターンに対するビームの走査方向や照射順序固有の輝度情報を得ることができる。図1に例示したように1方向からビームを走査した場合、ゲートコンタクトのオープン欠陥等を特定することはできるが、例えばドレインのジャンクションリーク欠陥の場合、左側から右側に走査しただけでは、ゲートにビームが照射され、ゲートが開放されたことによってドレインコンタクトが明るくなるのか、リークによって電荷が蓄積せず明るくなるのかを判別することが困難である。
そこで本実施例では、図22に例示するように1方向の走査だけではなく、複数方向(本実施例では双方向)にビームを走査し、複数のパターンの輝度の組み合わせを、当該輝度の組み合わせと欠陥の種類の関係情報を記憶するデータベースに参照することによって、欠陥の種類を特定するシステム等について説明する。
図22に例示するように、走査軌道111の走査(第1の方向に照射点を移動させて複数のパターンに順次ビームを照射)に加えて、走査軌道2201の走査(第2の方向に照射点を移動させて複数のパターンに順次ビームを照射)を行うことによって、例えばドレインのジャンクションリークが発生している場合、ゲートコンタクト109にビームを照射する前であるにも関わらず、リークが発生しているが故にドレインコンタクト110は明るくなる。ここで、走査軌道2201の走査は、走査軌道111の走査によって試料に生じた帯電が緩和した後に行うことが望ましい。
コンピューターシステム303は、複数のパターンに対し、複数方向にビームを走査したときの輝度情報の組み合わせと、欠陥の種類との関連を記憶するデータベースを予め記憶しておき、複数方向にビームを走査することによって得られる実画像から抽出される輝度情報の組み合わせを上記データベースに参照することによって、欠陥の種類を特定する。このように複数方向に走査することによって、1方向だけでは特定できなかった、欠陥の種類をも特定することが可能となる。