JP7466028B2 - 液体濃縮方法および薄膜蒸発装置 - Google Patents

液体濃縮方法および薄膜蒸発装置 Download PDF

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Description

本発明は、液体濃縮方法と薄膜蒸発装置とに関する。
従来、溶液中の易蒸発成分と難蒸発成分とを分離して、難蒸発成分を含む濃縮液を回収したり、易蒸発成分を蒸留して回収したりするために薄膜蒸発装置が用いられている。前者を目的とした薄膜蒸発装置での液体濃縮方法としては、ポリマー溶液の濃縮に関する方法が広く知られている(下記特許文献1、2など参照)。
この種の薄膜蒸発装置としては、縦型円筒状の内周面を有する装置本体を備えたものが知られている。該薄膜蒸発装置では、前記内周面の上部側に処理対象となる液(被処理液)を供給して内周面に液膜を形成し、該液膜から蒸発成分を蒸発させるとともに濃縮液を下方で回収する形式のものが知られている。
薄膜蒸発装置では、液膜の厚さ方向に濃度勾配が生じ易い。液膜に濃度のバラツキが生じると処理効率を低下させる原因にもなるため従来の薄膜蒸発装置では液膜を内周面から掻き取るように内周面に沿って周回するワイパーが用いられている。該ワイパーとしては、内周面との摺接面より凹入し、周回における前方側と後方側とのそれぞれに開口した複数の溝を有する溝付ワイパーが用いられる場合がある。
溝付ワイパーを用いる場合はワイパー通過後に溝出口の通過後に液膜の盛り上がりによる筋が形成される。そして、この筋状の液膜の盛り上がりが次回のワイパーの通過に際して均されることになるので溝付ワイパーを用いることで溝の無いワイパーを用いる場合に比べて液膜の濃度バラツキが抑制される。
ところで所定量の被処理液を処理することを考えると単位時間あたりに装置本体に供給する被処理液の量を多くする方が処理速度は増大する。しかし、そうすると液膜の厚さが増してしまい、過剰な蒸発が生じたり、単位時間あたりにワイパーと衝突する液量が増大したりする結果、飛沫を発生させることにもなり得る。該飛沫は、薄膜蒸発装置に問題を生じさせる要因ともなり得る(下記特許文献1、段落0036など参照)。
特開2000-300901号公報 特表2016-518821号公報
前記の通り溝付ワイパーを用いることで液膜の濃度バラツキの改善が図られるものの濃度バラツキについては改善の余地が残されている。蒸発成分と濃縮液との分離性能を勘案すると液膜での濃度バラツキを抑制させることが望ましい。本発明は薄膜蒸発装置を用いた液体濃縮方法での分離性能の向上を図るとともに優れた分離性能を発揮させるのに適した薄膜蒸発装置を提供することを課題としている。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、分離性能を向上させる上においては溝付ワイパーを通過する間も液膜を内部空間に晒した方がよいと考えられるところを敢えて溝が被処理液で充満されるようにすることで上記課題が解決され得ることを見出して本発明を完成させるにいたった。
上記課題を解決するために本発明は、
薄膜蒸発装置で被処理液を濃縮する液体濃縮方法であって、
前記薄膜蒸発装置は、縦型円筒状の内周面を有する装置本体を有し、
該装置本体では前記内周面が前記被処理液の濃縮に用いられる蒸発部となっており、
前記薄膜蒸発装置には、前記内周面に沿って周回して前記被処理液の液膜を該内周面上に形成するための溝付ワイパーが更に備えられ、
該溝付ワイパーが、前記内周面に対向する面より凹入し、且つ、前記周回における前方側と後方側とのそれぞれに開口した複数の溝を有し、
前記複数の溝は、前記溝付ワイパーの前記周回に際して前方側の前記開口を入口とし、後方側の前記開口を出口として前記被処理液が通り抜けられるように設けられており、
前記複数の溝の内の少なくとも一つが前記被処理液で充満された状態で前記溝付ワイパーを周回させて前記被処理液を濃縮する液体濃縮方法、を提供する。
上記課題を解決するために本発明は、
被処理液の濃縮に用いられる薄膜蒸発装置であって、
縦型円筒状の内周面を有する装置本体を有し、該装置本体では前記内周面が前記被処理液の濃縮に用いられる蒸発部となっており、
前記内周面に沿って周回して前記被処理液の液膜を該内周面上に形成するための溝付ワイパーが更に備えられ、
該溝付ワイパーが、前記内周面に対向する面より凹入し、且つ、前記周回における前方側と後方側とのそれぞれに開口した複数の溝を有し、
前記複数の溝は、前記溝付ワイパーの上下方向に間隔を設けて配置され、前記溝付ワイパーの前記周回に際して前方側の前記開口を入口とし、後方側の前記開口を出口として前記被処理液が通り抜けられるように設けられており、
前記複数の溝には、
前記入口の上端部から前記出口の上端部へと至る上壁面と、前記入口の下端部から前記出口の下端部へと至る下壁面とを備え、且つ、前記溝付ワイパーの周回方向と対向する方向から前記入口を見た時に前記上壁面と前記下壁面との何れかに遮られて前記出口が見通せない形状を有する溝が含まれており、
前記複数の溝のそれぞれについて前記入口の上下方向における長さ(L2)を求め、該長さ(L2)の合計値(L2total)を求めて前記溝付ワイパーの上下方向における長さ(L0)との比(L2total/L0)を求めた際に下記式(1)及び下記式(2)を満たす薄膜蒸発装置、を提供する。
0.4 ≦ (L2total / L0) ・・・(1)
L2 ≦ 30mm ・・・(2)
本発明によれば薄膜蒸発装置を用いた液体濃縮方法での分離性能が向上され、優れた分離性を発揮させるのに適した薄膜蒸発装置が提供され得る。
図1は、一実施形態の薄膜蒸発装置を備えた分離設備の装置構成を示した概略図である。 図2は、薄膜蒸発装置の内部構造を示した断面図(図1のII-II線矢視断面図)である。 図3は、一態様の溝付ワイパーの一例を示す概略斜視図である。 図4aは、薄膜蒸発装置における配置において径方向外側から内向きとなる方向に溝付ワイパーを見た様子を示す概略図(溝付ワイパーの概略正面図)である。 図4bは、薄膜蒸発装置での周回方向と対向する方向(図4aのブロック矢印Bの方向)から溝付ワイパーを見た様子を示す概略図(溝付ワイパーの概略側面図)である。 図5aは、他態様の溝付ワイパーの概略正面図であり、薄膜蒸発装置における配置において径方向外側から内向きとなる方向に溝付ワイパーを見た様子を示す概略図である。 図5bは、他態様の溝付ワイパーの概略側面図であり、薄膜蒸発装置での周回方向と対向する方向(図5aのブロック矢印Bの方向)から溝付ワイパーを見た様子を示す概略図である。 図6は、溝付ワイパーの溝に被処理液が流入する様子を示した概略図である。 図7は、溝付ワイパーの溝内での被処理液の充満の程度を示した概略断面図(図6でのVII-VII線矢視断面図)である。 図8は、溝付ワイパーの溝内での被処理液の充満の程度を示した概略断面図(図6でのIIX-IIX線矢視断面図)である。 図9は、溝付ワイパーの入口の長さの合計値を算出する方法を説明する概略図である。 図10aは、他態様の溝付ワイパーの溝形状を表した概略斜視図である。 図10bは、他態様の溝付ワイパーの溝形状を表した概略正面図である。 図10cは、他態様の溝付ワイパーの溝形状を表した概略側面図である(図10bのブロック矢印Cの方向から見た様子を示した概略側面図)。 図10dは、他態様の溝付ワイパーの概略正面図であり、溝付ワイパーを垂直方向に対して傾けて配置した場合の溝の状態を表した概略正面図である。 図11aは、他態様の溝付ワイパーの溝形状を表した概略斜視図である。 図11bは、他態様の溝付ワイパーの溝形状を表した概略正面図である。 図11cは、他態様の溝付ワイパーの概略側面図であり、薄膜蒸発装置での周回方向と対向する方向(図11bのブロック矢印Cの方向)から溝付ワイパーを見た様子を示す概略図である。 図12は、溝付ワイパーによる液膜の形成状況を表した概略図である。 図13は、溝付ワイパーの溝の寸法に関する概略図である。 図14は、溝付ワイパーの運転状況を観察するための薄膜蒸発装置を表した概略図である。 図15は、溝付ワイパーの溝に被処理液が充満する状況を観察した図である。 図16は、溝付ワイパーの溝への被処理液の充填率の予測値と実測値とを示した図である。 図17は、溝付ワイパーの溝への被処理液の充填率、及び、溝の充満の発生状況を表した図である。 図18は、溝付ワイパーの溝への被処理液の充填率が被処理液の混合性能に与える影響を示した図である。 図19Aは、溝付ワイパーの溝の違いによるシリコーンオイルの濃縮性能の違いを検証した結果を示した図である。 図19Bは、溝付ワイパーの溝の違いによるエポキシ樹脂溶液の濃縮性能の違いを検証した結果を示した図である。 図20は、溝付ワイパーの溝の違いによる伝熱効率の違いを検証した結果を示した図である。
以下に本実施形態での薄膜蒸発装置と当該薄膜蒸発装置を用いた液体濃縮方法とについて説明する。本実施形態での薄膜蒸発装置や当該薄膜蒸発装置を用いた液体濃縮方法では、溝付ワイパーの溝が被処理液で充満されることで液膜の濃度バラツキの改善が図られる。本実施形態では、薄膜蒸発装置での液膜の濃度バラツキが抑制されることで蒸発物と濃縮物との分離性能が向上されるばかりでなく、液膜への伝熱効率の向上効果も期待でき、装置のコンパクト化や省エネルギー化においても有利な効果が発揮される。従って、本実施形態での薄膜蒸発装置や当該薄膜蒸発装置を用いた液体濃縮方法は、そのような目的においても実施され得る。本実施形態の薄膜蒸発装置は、蒸発物の回収と濃縮物の回収との一方、又は、両方に用いられ得る。薄膜蒸発装置により回収される濃縮物は液状であってもよく、固体状であってもよい。
以下に図を参照しつつまずは薄膜蒸発装置について説明する。尚、以下においては被処理液を濃縮して濃縮液を回収するとともに蒸発物を回収するように構成された薄膜蒸発装置を例にして説明する。
図1は、薄膜蒸発装置1が配され、該薄膜蒸発装置1によって被処理液の濃縮が実施される分離設備100の構成を示した概略図である。分離設備100は、薄膜蒸発装置1以外に、該薄膜蒸発装置1に被処理液を供給する供給装置2と、前記薄膜蒸発装置1で濃縮された濃縮液を回収するための濃縮液回収装置3と、前記薄膜蒸発装置1で蒸発した成分を凝縮して凝縮液を回収する凝縮液回収装置4とを備える。
本実施形態の薄膜蒸発装置1は、縦型円筒状の内周面11aを有する装置本体11を有し、該装置本体11では前記内周面11aが前記被処理液の濃縮に用いられる蒸発部となっている。該装置本体11は、その上下方向が垂直方向となるように薄膜蒸発装置1に設けられている。該装置本体11は、前記内周面11aを備えた円筒体111と、該円筒体111を外側から覆って前記円筒体111の内周面11aを加熱したり冷却したりするためのジャケット部112とを備えている。
本実施形態の装置本体11は、円筒体111の底部を塞ぐ底壁部113と、円筒体111の頂部を塞ぐ天壁部114とを備え、前記円筒体111の内側に円柱状の閉じた空間を形成し得るように構成されている。前記円筒体111は、全長に亘って前記ジャケット部112で覆われているわけではなく、その上端部が前記ジャケット部112の上端縁よりも上方に突出しているとともに下端部(底部)が前記ジャケット部112の下端縁よりも下方に突出している。
前記ジャケット部112は、前記円筒体111の外周面との間に空間部を設けるように構成され、該空間部に熱媒(温熱媒や冷熱媒)を流通させて前記内周面11aの温度調整を実施し得るように構成されている。
本実施形態の薄膜蒸発装置1は、装置本体11の内部を減圧状態にしたり、前記ジャケット部112で前記内周面11aを加熱したりして前記被処理液から易蒸発成分を蒸発させ得るように構成されている。
本実施形態の供給装置2は、薄膜蒸発装置1に供給する被処理液を貯留する被処理液貯留部21と、該被処理液貯留部21から薄膜蒸発装置1に被処理液を搬送するための被処理液搬送部22とを備えている。被処理液搬送部22は、搬送ポンプを備え、前記装置本体11に被処理液を供給すべく構成されている。本実施形態の供給装置2は、単位時間あたりに薄膜蒸発装置1に供給する被処理液の量を変更できるように構成されている。
本実施形態の被処理液は、濃縮される成分よりも蒸発し易い易蒸発成分を含んだ溶液やスラリーとすることができる。本実施形態の被処理液で濃縮される成分は、前記易蒸発成分よりも蒸発し難い難蒸発成分である。難蒸発成分は、前記易蒸発成分が可溶な固体であってもよく液体であってもよい。被処理液に含まれる易蒸発成分や難蒸発成分については、それぞれ1種類の物質であっても複数種類の物質であってもよい。本実施形態の難蒸発成分は、易蒸発成分よりも蒸発し難い液体と、該液体に高い溶解度を示す気体との組み合わせであってもよい。即ち、難蒸発成分は、常温・常圧(例えば、23℃、1気圧)において単独で固体となるものであっても液体となるものであってもよく、単独では気体となるものであってもよい。
薄膜蒸発装置1は、被処理液搬送部22から供給された被処理液を装置本体11の内周面11aの上端部に供給し、該内周面11aを伝って装置本体11の上部から下方に向かって被処理液を移動させ、該移動の途中で前記被処理液から易蒸発成分の一部又は全部を除去して濃縮液を形成させ得るように構成されている。本実施形態の薄膜蒸発装置1は、重力の作用によって装置本体11の底部に集合した濃縮液を該底部より抜き出して濃縮液回収装置3に供給し得るように構成されている。また、本実施形態の薄膜蒸発装置1は、蒸発部において蒸発された易蒸発成分を装置本体11の上端部より排出して前記凝縮液回収装置4に供給し得るように構成されている。
前記濃縮液回収装置3は、濃縮液を貯留する濃縮液貯留槽31を有し、装置本体11から排出される濃縮液を該濃縮液貯留槽31に貯留し得るように構成されている。前記凝縮液回収装置4は、前記易蒸発成分の蒸気を冷却して凝縮させる熱交換器(図示せず)を備えた凝縮器41と、該凝縮器41で得られる凝縮液を貯留する凝縮液貯留槽42とを備えている。
薄膜蒸発装置1は、前記内周面11aに被処理液の液膜を形成するための液膜形成機12をさらに備える。液膜形成機12は、図1、図2に示すように装置本体11を構成する円筒体111の中心軸に沿って延びる軸体121を備える。軸体121は、前記中心軸周りに回転可能に備えられている。液膜形成機12は、該軸体121に固定されていて該軸体121の回転によって前記内周面11aに沿って周回する溝付ワイパー122を更に備える。
前記溝付ワイパー122は、前記軸体121から径方向Dに延びる支持材123の先端部に着脱自在に設けられている。本実施形態の液膜形成機12は、前記軸体121を回転させることで前記溝付ワイパー122を装置本体11の内周面11aに摺接させ得るように構成されている。即ち、溝付ワイパー122の周回方向Rは円筒体111の周方向に一致している。液膜形成機12は、前記軸体121を軸周りに回転させるためのモーター(図示せず)と、前記軸体121の回転速度(溝付ワイパー122の移動速度)を変化させるための変速機(図示せず)とを備えている。即ち、本実施形態の液膜形成機12では、溝付ワイパー122の周回速度が変更可能となっている。
被処理液の攪拌性の観点からは、単位時間当たりの溝付ワイパー122の周回数を増やす方が好ましい。そのため、溝付ワイパー122は、被処理液の濃縮に際し、例えば、100rpm以上の回転数で周回される。溝付ワイパー122の回転数は、150rpm以上であってもよい。尚、過度に回転数を上げてしまうと溝付ワイパー122との衝突によって生じる衝撃力や溝付ワイパー122によるせん断応力が過剰になって液膜から飛沫が発生してしまう可能性がある。そのため、溝付ワイパー122は、被処理液の濃縮に際し、例えば、400rpm以下の回転数で周回される。溝付ワイパー122の回転数は、300rpm以下であってもよい。従って、液膜形成機12は、そのような回転数で溝付ワイパー122を周回させることができるように構成されていることが好ましい。即ち、液膜形成機12は、溝付ワイパー122の回転数を上記のような回転数に調整可能な前記変速機を有していることが好ましい。
本実施形態の液膜形成機12は、円筒体111の径方向D外向きに向かって軸体121から放射状になって延びる複数の支持材123を備えている。従って、本実施形態の液膜形成機12では、周方向での複数箇所に溝付ワイパー122が配されている。本実施形態の液膜形成機12では、上下方向においても溝付ワイパー122が複数並んだ状態になっている。本実施形態では、溝付ワイパー122どうしが上下方向で隣り合って上段側の溝付ワイパー122と下段側の溝付ワイパー122とが上下方向に延びる一つの直線上に並ぶように配されている。上段側の溝付ワイパー122は、下段側の溝付ワイパー122の真上に設けられなくてもよく、斜め上に位置するように設けられてもよい。即ち、上段側の溝付ワイパー122と下段側の溝付ワイパー122とは周方向に離れた位置に設けられてもよい。
本実施形態の溝付ワイパー122は、複数の溝を備える。本実施形態の溝付ワイパー122は、図3、図4a、図4bに示すように扁平な直方体形状を有する。本実施形態の溝付ワイパー122は、厚さ方向Tに直交する長さ方向Lと、該長さ方向Lと前記厚さ方向Tとの両方に直交する幅方向Wとを有し、該幅方向Wが前記装置本体11での径方向Dとなるように配されている。即ち、本実施形態の溝付ワイパー122は、幅方向Wにおける端面を内周面11aと摺接させ得るように配されている。溝付ワイパー122は、厚さ方向Tでの両端面の内の周回方向での前方側の面(前面)と摺接面(幅方向Wの端面)との角部が主として被処理液の掻き取りに用いられるようになっている。本実施形態での溝付ワイパー122の前面は、径方向Dに平行し、且つ、垂直方向(上下方向)にも平行な面となっている。
本実施形態の溝付ワイパー122は、前記長さ方向Lが前記装置本体11での上下方向となり、前記厚さ方向Tが前記装置本体11での周方向となるように配されている。溝付ワイパー122の内周面11aと対向している面では、前記長さ方向Lが溝付ワイパー122の長手方向で、前記厚さ方向Tが溝付ワイパー122の短手方向となっていて本実施形態の溝付ワイパー122は、内周面11aと摺接される縦長長方形の領域での短手方向(厚さ方向T)が周回方向Rとなるように設けられている。
溝付ワイパー122は、装置本体11の内周面11aと対向する幅方向Wでの端面より径方向D内向きに凹入した複数の溝Cを有している。該溝Cは、周回方向Rにおける前方側と後方側とのそれぞれに開口している。即ち、前記溝Cは、溝付ワイパー122を厚さ方向Tに通り抜けるように設けられている。
本実施形態の液膜形成機12は、前記のように溝付ワイパー122と装置本体11の内周面11aとが面接触する領域が縦長長方形となるように構成されており、該縦長長方形の領域を周方向に移動させて液膜を形成し得るように構成されている。本実施形態の液膜形成機12では、この縦長長方形の領域を前記被処理液が短手方向に通過するように前記溝付ワイパー122の周回が行われる。
本実施形態の溝付ワイパー122では、複数の溝が長さ方向L(装置本体の上下方向)に所定の間隔を設けて配されている。即ち、溝付ワイパー122では、上下方向に隣り合う溝Cの間が径方向D外向きに突出した歯のようになっており、前記溝Cの形成された溝部1221と、溝部1221間で外向きに突出した形状となっている歯部1222とが上下方向に交互に並んだ状態になっている。
溝付ワイパー122での複数の溝Cは、前記のように溝付ワイパー122の上下方向に間隔を設けて配置されている。該溝Cは、前記溝付ワイパー122の前記周回に際して前方側の前記開口を入口CIとし、後方側の前記開口を出口COとして前記被処理液が通り抜けられるように設けられている。そのため、溝付ワイパー122が通過した後の内周面11aには、溝付ワイパー122が通過する前の液膜に比べて厚さの薄い液膜が前記歯部1222の通過地点に形成されるとともに溝付ワイパー122が通過する前の液膜が筋状に盛り上げられて通過前よりも厚い液膜が溝部1221の通過地点に形成される。
前記複数の溝Cは、周回方向Rの前端に設けた前記入口CI、周回方向Rの末端に設けた前記出口CO、及び、径方向D外側(内周面11a)に向けた方向での3方に開放された状態になっている。言い換えると前記複数の溝Cは、上方、下方、及び、径方向D内側に設けられた壁面によって被処理液の通過する空間部が画定されている。それぞれの溝Cは、前記入口CIの上端部から前記出口COの上端部へと至る上壁面CW1と、前記入口の下端部から前記出口の下端部へと至る下壁面CW2と、該下壁面CW2の径方向D内側の端縁部と前記上壁面CW1の径方向D内側の端縁部とを結ぶ側壁面CW3とを備えている。
本実施形態での上壁面CW1と、下壁面CW2とは、何れも内周面11aに対して垂直となるように設けられている。また、上壁面CW1と、下壁面CW2とは、互いに平行となるように設けられている。径方向D(溝付ワイパー122の幅方向W)での溝Cの奥行寸法(以下「溝深さ」ともいう)を決定する上壁面CW1と下壁面CW2との幅方向Wでの寸法は共通している。従って、側壁面CW3は内周面11aの接線方向と平行となるように設けられている。即ち、本実施形態での溝Cは、断面形状が矩形である。
複数の溝Cは、前記溝付ワイパー122の周回方向Rと対向する方向(図4aでの矢印B方向)から前記入口CIを見た時に前記上壁面CW1と前記下壁面CW2との何れかに遮られて前記出口COが見通せない形状を有している。尚、ここでは複数の溝Cのそれぞれが共通する形状を有する場合を例示しているが、本実施形態の溝付ワイパー122は、形状の異なる複数種類の溝Cを有していてもよい。そして、前記出口COが見通せない形状を有している溝Cは、溝付ワイパー122に設けられている全ての溝Cの内、半数以上であることが好ましく、8割以上であることがより好ましい。本実施形態の溝付ワイパー122は、図3、図4a、図4bに示すように複数の溝Cの全てが前記出口COの見通せない形状を有していることが更に好ましい。
図3、図4a、図4bに示す溝付ワイパー122は、液膜を下方に押し下げるように機能させるべく前記溝Cの出口COが入口CIよりも下方に位置しており、且つ、出口COの上端縁が入口CIの下端縁よりも下方に位置しているため、周回方向Rと対向する方向より前記入口CIを見た時には前記上壁面CW1に遮られて前記出口COが見通せない状態になっている。
上壁面CW1は、被処理液を充満させて溝Cの内部で被処理液を十分混合させ得る点から俯角が一定以上となるように先下がり傾斜していることが好ましい。上壁面CW1の水平面に対する俯角は、例えば、10度以上とすることができる。上壁面CW1の俯角は、20度以上であってもよく、30度以上であってもよく、35度以上であってもよい。上壁面CW1の俯角は、40度以上であってもよい。俯角は、例えば、60度以下であってもよく50度以下であってもよい。俯角は、40度以下であってもよい。上壁面CW1は、入口CIから出口COまでの1以上の箇所に上記のような好ましい俯角を有する箇所が設けられているだけであってもよいが、入口CIから出口COまでの全区間において上記のような俯角を有していることが好ましい。
溝Cに入り込んだ被処理液は、上壁面CW1に浅い角度で衝突するよりも90度に近い角度で衝突する方が溝Cの内部で良好な攪拌が行われ得る。尚、上壁面CW1は、被処理液に対して真正面から衝突するように配されるのではなく、ある程度の逃げ角を有するように設けられることが好ましい。即ち、前記溝Cは、前記溝付ワイパー122の周回方向Rと対向する方向から前記入口CIを見た時に前記上壁面CW1に遮られて前記出口COが見通せない形状を有している場合、前記出口COを見通せないように遮っている部位での前記上壁面CW1の水平面に対する俯角は上記のような角度であることが好ましい。
このような好ましい俯角となる箇所を備えた溝Cは、前記入口CIから前記出口COへの見通しを前記上壁面CW1が遮っている全ての溝Cの内の半数以上であることが好ましく、8割以上であることがより好ましい。本実施形態の溝付ワイパー122は、前記出口COへの見通しを前記上壁面CW1が遮っている全ての溝Cが上記のような俯角となる箇所を備えていることが更に好ましい。
溝付ワイパー122は、液膜を下方に押し下げるものではなく、液膜を上方に押し上げるように機能するものであってもよい。その場合、前記溝Cの出口COを入口CIよりも上方に位置させ、且つ、出口COの下端縁が入口CIの上端縁よりも上方に位置させることで前記下壁面CW2に遮られて前記入口CIから前記出口COが見通せない状態にすることができる。この場合も前記出口COが見通せない形状を有している溝Cは、溝付ワイパー122の全ての溝Cの内、半数以上であることが好ましく、8割以上であることがより好ましい。また、溝付ワイパー122は、複数の溝Cの全てが下壁面CW2に遮られて前記出口COが見通せない状態になっていることが更に好ましい。
下壁面CW2は、被処理液を充満させて溝Cの内部で被処理液を十分混合させ得る点から仰角が一定以上となるように先上り傾斜していることが好ましい。下壁面CW2の水平面に対する仰角は、例えば、10度以上とすることができる。下壁面CW2の仰角は、20度以上であってもよく、30度以上であってもよく、35度以上であってもよい。下壁面CW2の仰角は、40度以上であってもよい。仰角は、例えば、60度以下であってもよく50度以下であってもよい。仰角は、40度以下であってもよい。下壁面CW2は、入口CIから出口COまでの1以上の箇所に上記のような好ましい仰角を有する箇所が設けられているだけであってもよいが、入口CIから出口COまでの全区間において上記のような仰角を有していることが好ましい。
溝Cに入り込んだ被処理液が浅い角度で衝突するよりも90度に近い角度で衝突する方が溝Cの内部で良好な攪拌が行われ得る点については上壁面CW1が出口COを遮っている場合と同じである。したがって、前記溝Cは、前記溝付ワイパー122の周回方向Rと対向する方向から前記入口CIを見た時に前記下壁面CW2に遮られて前記出口COが見通せない形状を有する場合、前記出口COを見通せないように遮っている部位での前記下壁面CW2の水平面に対する仰角は上記のような角度であることが好ましい。
このような好ましい仰角となる箇所を備えた溝Cは、前記入口CIから前記出口COへの見通しを前記下壁面CW2が遮っている全ての溝Cの内の半数以上であることが好ましく、8割以上であることがより好ましい。本実施形態の溝付ワイパー122は、前記出口COへの見通しを前記下壁面CW2が遮っている全ての溝Cが上記のような仰角となる箇所を備えていることが更に好ましい。
図5a、図5bに示す態様では、前記溝Cの通過方向を直線的なものとせずに少なくとも1箇所において上下何れかの方向に曲がった状態にすることで前記入口CIから前記出口COが見通せないようにしている。図5a、図5bに示す態様では、入口CIから被処理液を一旦上昇方向に移動させた後に被処理液の移動方向を下方に向けて曲げるような溝を形成している。そのため、図5a、図5bに示す態様で前記入口CIを見た場合、手前側では下壁面CW2に遮られ、その奥では上壁面CW1に遮られて前記出口COが見通せない状態になっている。即ち、この図に例示の態様では、上壁面CW1と下壁面CW2との両方に遮られて周回方向Rと対向する方向より前記入口CIを見た時に出口COが見通せない状態になっている。
図5a、図5bに示す態様では、出口COの位置を入口CIより下方に設けたり、出口COの位置を入口CIより上方に設けたりしなくてもよいので液膜の下方への押し下げや液膜の上方への押し上げの程度を調整し易い。このように通過方向を直線的なものとせずに少なくとも1箇所において上下何れかの方向に曲がった状態にすることで前記入口CIから前記出口COが見通せないようにしている溝Cも、溝付ワイパー122の全ての溝Cの内、半数以上であることが好ましく、8割以上であることがより好ましい。また、溝付ワイパー122は、複数の溝Cの全てが上下何れかの方向に曲がった状態になっていることが更に好ましい。
図3に例示の前記溝付ワイパー122は、長さ方向Lと、該長さ方向Lに直交する厚さ方向Tとを有している。そして、当該溝付ワイパー122での前記溝Cは、前記長さ方向Lを垂直方向に向けて前記溝付ワイパー122を配した時に前記入口CIが前記出口よりも上方に位置するように傾斜し、前記厚さ方向Tへ斜めに前記被処理液が通り抜けられるようになっている。この図3に例示しているような溝付ワイパー122で液膜の押し下げの程度を調整するためには、例えば、前記溝付ワイパー122を傾けて配置してもよい。
溝付ワイパー122は、下端部が上端部よりも周回方向Rでの前方に位置するように傾けて配置したり、逆に、上端部が下端部よりも周回方向Rでの前方に位置するように傾けて配置すると溝付ワイパー122の進む力を溝付ワイパー122の前面側で被処理液を上方に押し上げたり下方に押し下げたりする力として作用させることができる。溝付ワイパー122の全面を垂直方向に対して傾斜させる角度(上端部が下端部より前進する角度や上端部が下端部より後退する角度)は、例えば、30度以下とすることができる。該角度は、20度以下であってもよく、15度以下であってもよく、10度以下であってもよい。該角度は、5度以下であってもよい。該角度は、例えば、1度以上とすることができる。
長さ方向Lが垂直方向に対して傾斜するように溝付ワイパー122を配置すると周回における推進力を溝付ワイパー122の前面側に滞留する被処理液の流動に作用させることができ、該被処理液を溝付ワイパー122の長さ方向Lに移動させ易くなる。溝付ワイパー122が垂直に配されている場合には歯部1222の前方に留まり易い状況であった被処理液は、溝付ワイパー122が傾斜した配置にされることで溝Cへと流入し易くなる。そのため溝付ワイパー122を傾斜させることは、溝Cに被処理液を充満させるのに有効に機能する。
図3に例示の溝付ワイパー122で下端部が上端部よりも周回方向Rでの前方に位置するように傾けると、前記入口CIと前記出口COとの高低差がより大きくなるので前記溝Cでの被処理液の移動抵抗が増大されることになる。一方で図3に例示の溝付ワイパー122を上端部が下端部よりも周回方向Rにおいて先行するように傾けると前記入口CIと前記出口COとの高低差が少なくなるので前記溝Cでの被処理液の移動抵抗も緩和されることになる。尚、この場合の傾斜は、周回方向Rと対向する方向より前記入口CIを見た時に出口COが見通せない状態が維持される程度に留めることが望ましい。
溝付ワイパー122の周回に際しては、図6、図7、図8に示すように溝Cに導入される被処理液Fには、入口CIの前方で液膜を形成している被処理液だけでなく歯部1222で掻き取られた被処理液も含まれる。
装置本体11に新たに供給される被処理液は既に内周面11aの上に形成されている液膜の表面を伝って流下し易いため、周回する溝付ワイパー122の前面側に溜まる被処理液は内周面11aに近い部分での被処理液よりも濃縮が遅れた状態になっている。この内周面11aに近い濃縮の進んだ被処理液は、溝付ワイパー122の周回に際して前記歯部1222で掻き取られる。歯部1222で掻き取られた濃縮の進んだ被処理液は、濃縮の遅れている被処理液とともに入口CIから溝Cに導入される。
歯部1222の前面では濃縮の進んだ被処理液の掻き取りが行われるのに対し、溝部1221の前面ではそのような掻き取りが行われないので濃縮の進んだ被処理液が内周面11aの近くに留まった状態のままで入口CIから溝Cへと導入される。入口CIから出口COが見通せる状態であると、内周面11aの近くに留まった濃度の高い被処理液がそのまま溝付ワイパーを通過してしまうことにもなり得るが、本実施形態では、内周面11aの近くに留まった濃度の高い被処理液が溝Cの奥で上壁面CW1と下壁面CW2との何れかで掻き取られることになる。そのため、本実施形態の薄膜蒸発装置1では濃縮の進んだ部分と濃縮の遅れた部分とが溝Cの内部で良好な混合状態となり溝付ワイパー122を通過した後に形成される液膜での濃度のバラツキが抑制されることになる。
本実施形態では、後段において詳述するように、溝Cが被処理液Fで充満させるように溝付ワイパー122が周回される。溝Cが被処理液Fで充満することで内周面11aの近くに留まった濃度の高い被処理液を流動させるように圧力が作用し、上壁面CW1や下壁面CW2での掻き取りと同程度の効果を得ることができる。したがって、本実施形態の薄膜蒸発装置1では溝付ワイパー122の上壁面CW1や下壁面CW2による掻き取り効果だけでなく、溝Cを被処理液Fで充満させることによる攪拌効果により液膜の濃度バラツキが抑制されることになる。上記のように濃度バラツキの抑制が可能な本実施形態の薄膜蒸発装置1では液膜からの易蒸発成分の脱離が進行し易くなり、優れた分離性能が発揮される。
濃縮の進んだ被処理液は、濃縮が進んでいない被処理液に比べて流動性が低く、歯部1222の前面側などに留まり易いため、濃縮の進んだ被処理液をより多く溝Cに導入して濃縮の進んでいない被処理液と混合する上では上下方向における歯部1222の長さ以上の溝Cを設けることが望ましい。
溝付ワイパー122は、前記溝付ワイパーの上下方向における長さ(L0)と、当該溝付ワイパー122で上下に隣り合う2つの前記入口CIの間のそれぞれの長さ(L1)と、複数の溝Cのそれぞれの前記入口CIの上下方向における長さ(L2)とが所定の関係性を有していることが望ましい。本実施形態の溝付ワイパー122は、全ての溝Cの前記入口CIの長さ(L2)について合計した合計値(L2total)を求めた際に、下記式(1)及び下記式(2)を満たすことが好ましい。
0.4 ≦ (L2total / L0) ・・・(1)
L2 ≦ 30mm ・・・(2)
入口CIの長さ(L2)の合計値(L2total)は、例えば、図9に示すように、溝付ワイパー122の上端側から、第1番目の溝C1、第2番目の溝C2といったように下端部に位置する第n番目の溝Cnまで合計n個の溝Cを有する場合、第1番目の溝C1の入口CIの長さ(L21)から第n番目の溝Cnの入口CIの長さ(L2n)までを全て合計して求めることができる。
溝付ワイパー122の上下方向における長さ(L0)に対する入口CIの長さ(L2)の合計値(L2total)の比率(L2total/L0)は、0.5以上であってもよく、0.6以上であってもよい。該比率(L2total/L0)は、0.9以下であってもよく、0.8以下であってもよい。
それぞれの入口CIの上下方向における長さ(L2)は、20mm以下であってもよく、15mm以下であってもよく、12mm以下であってもよい。入口CIの上下方向における長さ(L2)は、10mm以下であってもよく、9.5mm以下であってもよい。入口CIの上下方向における長さ(L2)は、例えば、0.5mm以上、更には3mm以上とすることができる。
上下に隣り合う2つの前記入口CIの間のそれぞれの長さ(L1)は、例えば、30mm以下とすることができる。20mm以下であってもよく、15mm以下であってもよく、12mm以下であってもよい。入口CI間の長さ(L1)は、後述するように実質的に0mmであってもよい。即ち、溝付ワイパー122は、前面側において溝Cの入口CIが隙間なく上下に並んだ状態になっていてもよい。尚、上下において隣り合う入口CIの間に隔たりを設ける場合は、例えば、その長さ(L1)を0.5mm以上とすることができる。
溝付ワイパー122の溝Cの入口CIの上下方向の長さ(L2)は、全ての溝Cにおいて共通していてもよく異なっていてもよい。溝付ワイパー122に設けられる複数の溝Cには、図10a、図10b、図10cに示すように、入口CIの長さ(L2)が長い広溝C’と、該広溝C’よりも前記入口CIの長さ(L2)の短い狭溝C”とが含まれていてもよい。
前記広溝C’での前記入口CI’の長さ(L2’)は、例えば、5mm以上とすることができる。広溝C’での前記入口CI’の長さ(L2’)は、6mm以上であってもよく、7mm以上であってもよい。広溝C’での前記入口CI’の長さ(L2’)は、8mm以上であってもよく、10mm以上であってもよい。広溝C’での前記入口CI’の長さ(L2’)は、例えば、30mm以下とすることができる。広溝C’での前記入口CI’の長さ(L2’)は、28mm以下であってもよく、26mm以下であってもよい。
前記狭溝C”での前記入口CI”の長さ(L2”)は、例えば、0.5mm以上とすることができる。狭溝C”での前記入口CI”の長さ(L2”)は、1mm以上であってもよく、1.5mm以上であってもよい。狭溝C”での前記入口CI”の長さ(L2”)は、例えば、9.5mm以下とすることができる。狭溝C”での前記入口CI”の長さ(L2”)は、9mm以下であってもよく、8mm以下であってもよい。
前記狭溝C”での前記入口CI”の長さ(L2”)に対する前記広溝C’での前記入口CI’の長さ(L2’)の比率(L2’/L2”)は、例えば、1.2以上10以下とすることができる。該比率(L2’/L2”)は、1.4以上であってもよく、1.6以上であってもよい。前記比率(L2’/L2”)は、8以下であってもよく、6以下であってもよい。
前記広溝C’は、溝付ワイパー122を周回させる際に溝付ワイパー122の前面側に被処理液が溜まることを抑制するのに有効である。また、溝付ワイパー122の前面側に被処理液が溜まることを抑制するのに有効であることから、前記広溝C’は、溝付ワイパー122を回転させるための動力負荷を軽減したり、溝付ワイパー122に大きな力が加わることを回避したりするのにも有効である。さらには、周方向に配されている複数の溝付ワイパー122の間での負荷を均等化する上でも前記広溝C’は、有効に機能する。
前記狭溝C”は、被処理液を充満させて良好な攪拌効果を発揮する上で有効である。そして、本実施形態では、一つの溝付ワイパー122に両者が組み合わされて備えられることで更に良好な攪拌効果が発揮され得る。
前記広溝C’において前記上壁面CW1と前記下壁面CW2との何れかによって前記出口CO’までの見通し(溝付ワイパー122の周回方向Rと対向する方向から入口CI’を見た時の出口CO’までの見通し)を遮らせる場合、溝Cの流通方向が水平方向に対して大きな角度となるようにすればよい。尚、水平方向に対して大きな角度で溝Cを設けると、周回時に被処理液の液膜を下方に押し下げるタイプのものでは、溝付ワイパー122の最も下位の入口CIから溝付ワイパー122の下端までの距離が長くなる。逆に、液膜を上方に押し上げるタイプのものでは、溝付ワイパー122の最も上位に位置する入口CIから溝付ワイパー122の上端までの距離が長くなる。即ち、これらの場合は、溝付ワイパー122の上端部や下端部において被処理液が溜まり易くなる。
広溝C’で出口CO’への見通しを上壁面CW1で遮らせつつ溝付ワイパー122の下端部において溝付ワイパー122の前面側に被処理液が溜まることを抑制するには、例えば、図10dに示すように、上端部よりも下端部側の方が周回方向Rに向けて先行するように溝付ワイパー122を傾ければよい。直立姿勢の溝付ワイパー122で、出口CO’の上端縁を通る水平線LCOが入口CI’の下端縁を通る水平線LCIよりも上方に位置し、入口CI’側から出口CO’の一部が見通せてしまう場合、これらの水平線の間を被処理液が単に通過するだけになりかねない。この場合、溝付ワイパー122の長さ方向Lに対する溝Cの傾きを大きくすることで出口CO’の上端縁を通る水平線LCOを入口CI’の下端縁を通る水平線LCIよりも下方に位置させることができ、周回時に被処理液を広溝C’の上壁面CW1に衝突させるようにすることができる。しかし、先のように溝付ワイパー122を傾斜姿勢にすると、溝Cの傾きがそのままでも、図10dの右図のように出口CO’の上端縁を通る水平線LCOを入口CI’の下端縁を通る水平線LCIよりも下方に位置させることができる。しかも、この場合は、歯部1222の前面が垂直方向に対して傾いた状態になるために被処理液を溝Cに誘導し易くなり、液溜りの形成を防止することができる。広溝C’で出口CO’への見通しを下壁面CW2で遮らせる場合は、これとは反対に溝付ワイパー122を上端部が周回方向Rに向けて先行するように傾ければよい。
広溝C’で出口CO’への見通しを上壁面CW1や下壁面CW2で遮らせることが難しい場合、見通しを一部遮るように突出した突起1223を設けるようにしてもよい。前記のように出口CO’の上端縁を通る水平線LCOが入口CI’の下端縁を通る水平線LCIよりも上方に位置する場合、これらの水平線の間に突起1223を設けることで良好な攪拌性を発揮させ得る。突起1223は、例えば、図10a、図10b、図10cに示すように突出形状が球面状であってもよい。これらの図に示した突起1223は、側壁面CWより前記内周面11aに向けて突出するように形成されているが、本実施形態では、上壁面CW1や下壁面CW2から長さ方向Lに突出する突起を設けてもよい。また、突起1223は、広溝C’に対してのみ設けられるものではなく、狭溝C”に設けてもよく、図3、図5aに示したような全ての溝Cの形状が共通している場合に設けてもよい。突起1223は、一つの溝付ワイパー122において複数箇所に設けてもよく、一つの溝Cに複数設けてもよい。
図10a、図10b、図10cに示す溝付ワイパー122は、突起1223を着脱自在に備えている。より詳しくは、図10a、図10b、図10cに示す溝付ワイパー122は、突起1223を形成するのに用いるピン1223xと該ピン1223xを装着させる溝付ワイパー本体122zとの複合体である。
溝付ワイパー本体122zは、溝付ワイパー122での突起1223以外の部位を構成している。溝付ワイパー本体122zは、溝Cを画定する壁面に前記ピン1223xを装着するためのピン装着孔1223hを有する。図に例示の溝付ワイパー本体122zは、内周面11aから遠ざかるように側壁面CW3より円柱状に凹入したピン装着孔1223hを有する。
前記ピン1223xは、円柱状の軸部1223x1と、該軸部1223x1の一端側に設けられた頭部1223x2とを備えている。前記軸部1223x1は、前記ピン装着孔1223hに対応する径を有し、該頭部1223x2が前記軸部1223x1よりも径大となっている。言い換えると前記ピン装着孔1223hは、前記軸部1223x1を挿入可能で、且つ、前記頭部1223x2よりも小径となっている。図に例示の前記ピン1223xは、前記頭部1223x2を残して前記軸部1223x1を前記ピン装着孔1223hに収容して前記溝付ワイパー本体122zに固定されるように構成されている。即ち、溝付ワイパー122は、前記頭部1223x2が突起1223となって溝Cに備えられるようになっている。
前記ピン装着孔1223hは、前記溝付ワイパー本体122zを幅方向W(装置での径方向D)に貫通するように設けられてもよい。図に例示の溝付ワイパー122では、前記ピン装着孔1223hの内周面と前記軸部1223x1の外周面とに螺子山を設けて螺合によりピン装着孔1223hにピン1223xを止着させるようにしてもよい。
図に例示の溝付ワイパー122では、軸部1223x1を前記支持材123に到達可能な長さとし、軸部1223x1をピン装着孔1223hに対して遊嵌させ、前記頭部1223x2とは反対側となる軸部1223x1の先端部を前記支持材123に係止させるようにしてもよい。図に例示の溝付ワイパー122では、頭部1223x2の形状が異なる複数種類のピン1223x,1223x’,1223x”を用意し、これらのピン1223x,1223x’,1223x”を取り換え自在に備えていてもよい。尚、本実施形態においては、前記軸部1223x1を前記ピン装着孔1223hに収容させた際に溝Cを画定する壁面と面一となる頭部1223x2を備えたピン1223x”を含んでいてもよい。
突起1223を備える溝Cでは、被処理液の流れが突起1223によって乱され良好な攪拌性が発揮され得る。また、突起1223を設けると、その箇所で溝Cの流路が狭くなり、溝Cの途中で被処理液を充満させ易くなる。
突起1223の突出高さは、溝深さ未満とすることができ、溝深さの0.1倍~0.9倍とすることができる。突起1223の突出高さは、溝深さの0.2倍~0.8倍であってもよい。
前記入口CIでの溝深さ(W1)に対する上下方向における入口CI間の長さ(L1)の比(L1/W1)は、0.4以上であることが好ましい。該比(L1/W1)は、0.5以上であってもよい。当該比率は、溝付ワイパー122の前面だけでなく、溝付ワイパー122の厚さ方向Tにも連続的に保たれていることが好ましい。即ち、厚さ方向Tに直交する平面で溝付ワイパー122を切断した時の溝Cの深さ方向での寸法に対する歯部1222の上下方向での寸法の比率は、0.4以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。入口CIでの溝深さ(W1)は、上下方向における長さ(L2)と同等の寸法とすることができる。溝深さや上下方向での溝長さは入口CIから出口COまで一定であってもよく途中でこれらの寸法に変化が生じていてもよい。
溝付ワイパー122の長さ方向の寸法(L0)は、例えば、50mm以上とされる。該寸法は、80mm以上であってもよく、100mm以上であってもよい。前記寸法(L0)は、例えば、300mm以下とすることができる。該寸法(L0)は、250mm以下であってもよい。
入口CIの上下方向における長さ(L2)と入口CIの間の長さ(L1)との比率(L2/L1)は、例えば、0.7以上とされる。該比率(L2/L1)は、0.9以上であってもよく、1以上であってもよい。該比率(L2/L1)は、1.1以上であってもよく、1.2以上であってもよい。該比率(L2/L1)は、1.3以上であってもよく、1.5以上であってもよい。該比率(L2/L1)は、例えば、5以下とすることができる。比率(L2/L1)は、4以下であってもよく、3以下であってもよい。
一つの溝付ワイパーに設けられている全ての入口CIの長さ(L2)の合計値(L2total)が、溝付ワイパー122の長さ方向Lでの寸法(L0)に占める割合(L2total/L0×100(%))は、例えば、30%以上とすることができる。該割合は、40%以上であってもよく、50%以上であってもよく、60%以上であってもよい。該割合は、例えば、95%以下とされる。該割合は90%以下であってもよい。
溝付ワイパー122の厚さ方向Tに直交する平面で切断した時の溝Cの断面形状は、溝Cの深さ方向での寸法(LW)が溝付ワイパー122の長さ方向Lでの寸法(LL)よりも大きな(LL<LW)ものであってもよい。溝Cの深さ方向での寸法(LW)は長さ方向Lでの寸法(LL)と同じ(LL=LW)であってもよい。溝Cの深さ方向での寸法(LW)の長さ方向Lでの寸法(LL)に対する比率(LW/LL)は、0.9以下であってもよく、0.8以下であってもよい。該比率(LW/LL)は、0.7以下であってもよく、0.6以下であってもよく、0.5以下であってもよい。該比率(LW/LL)は、例えば、0.1以上とすることができる。
溝付ワイパー122は、被処理液を充満させ易くする上で、例えば、前記入口CIから前記出口COに至る間に前記入口CIよりも狭くなる箇所を溝Cに設けるようにしてもよい。その場合、図11aに示すように前記入口CIから前記出口COに向けて連続的に溝Cを狭くするようにしてもよい。また、上壁面CW1、下壁面CW2、及び、側壁面CW3の何れかを階段状にして前記入口CIから前記出口COに向けて段階的に溝Cを狭くするようにしてもよい。さらには、前記入口CIの外縁においてC面取りやR面取りを行って入口CIよりも狭い箇所を設けるようにしてもよい。尚、入口CIよりも狭い箇所とは、周回方向Rに直交する平面での断面積の大きさが、該平面に入口CIを投影した時の投影面積よりも狭い箇所のことを意味する。
C面取りやR面取りは、歯部1222にも設けることができ、歯部1222の前面と摺接面との角部にも設けることができる。そのような面取りが行われていると歯部1222と内周面11aとの間の距離(クリアランス)が溝付ワイパー122の周回方向Rに向かうに従って広がることになる。C面取りをして溝付ワイパー122の前面側で歯部1222の端面を傾斜面にしたり、R面取りをして溝付ワイパー122の前面側で歯部1222の端面を曲面にしたりすることで歯部1222の前面側での被処理液の滞留を抑制することができ、当該被処理液が溝Cに流入し易くなる。
溝Cの入口CIでのC面取りやR面取りは、例えば、上壁面CW1と溝付ワイパー122の前面との角部、下壁面CW2と溝付ワイパー122の前面との角部、及び、側壁面CW3と溝付ワイパー122の前面との角部の内の一部又は全部に施すことができる。それぞれでのC面取りやR面取りは、部分的なものであってもよい。例えば、上壁面CW1と溝付ワイパー122の前面との角部での面取りや下壁面CW2と溝付ワイパー122の前面との角部での面取りは、内周面11aに近い部分にだけに施して側壁面CW3に近い部分は角を残したままの状態にしてもよい。これらの面取りは、被処理液を溝Cに流入させ易くする上で有効であるばかりでなく、溝Cを出口COに向けて狭めることにもなるので溝Cに被処理液を充満させる上でも有利となる。
溝Cの入口CIでの上壁面CW1や下壁面CW2での面取りは、隣の溝Cに至るまで広範囲に設けてもよい。そのようにすると溝付ワイパー122の前面では、上下に隣り合う溝Cの入口CIが隙間なく上下に並んだ状態になる。図11b、図11cは、前面側において溝Cの入口CIが隙間なく上下に並んだ状態にして入口CI間の長さ(L1)を実質的に0mmとした溝付ワイパー122を示している。そして、該溝付ワイパー122では、出口COから入口CIに向かう方向(周回方向R)での途中から上壁面CW1と下壁面CW2とが入口CIに向かうに従って離れるようにし、上下に隣り合う2つの溝Cの内の上側の溝Cの下壁面CW2と下側の溝Cの上壁面CW1とがそれぞれの入口CIにおいて交わるようにしている。そのため、両者の間の歯部1222の前面側での端面の形状は、図4a,4b、図5a,5bに例示の溝付ワイパー122のように矩形にはなっておらず、実質的に面積を有さない細い線状になっている。
図11b、図11cに例示の溝付ワイパー122は、歯部1222の前面側での面積が実質的にゼロなので、当該溝付ワイパー122を周回させた際に濃縮の進んだ被処理液も濃縮の進んでいない被処理液もその前面に溜まり難い。しかも、図11b、図11cに例示の溝付ワイパー122は、入口CIから出口COに向けて溝Cが狭くなっている。そのために当該溝付ワイパー122を周回させることで被処理液が良好に混合される。
溝付ワイパー122が、例えば、液膜を下方に押し下げるようにするためのものである場合、周回方向Rに向けて上壁面CW1と下壁面CW2とを登り傾斜とし、且つ、上壁面CW1の傾斜角度を下壁面CW2より大きくしたり、下壁面CW2の傾斜角度を上壁面CW1よりも小さくしたりすると溝Cを出口COに向けて狭めることができる。溝付ワイパー122が、例えば、液膜を上方に押し上げるようにするためのものである場合、周回方向Rに向けて上壁面CW1と下壁面CW2とを下り傾斜とし、且つ、上壁面CW1の傾斜角度を下壁面CW2より小さくしたり、下壁面CW2の傾斜角度を上壁面CW1よりも大きくしたりすると溝Cを出口COに向けて狭めることができる。また、液膜の押し下げ、押し上げに関係なく側壁面CW3を出口COに向かうに従って内周面11aに接近するように傾斜させると溝Cを出口COに向けて狭めることができる。即ち、上壁面CW1と下壁面CW2とが出口COに向かうに従って接近している第1の状態と、側壁面CW3が出口COに向かうに従って内周面11aに接近している第2の状態との2つの状態の内の少なくとも一方の状態になっている区間を入口CIから出口COまでの全区間又は一部区間に設けることで出口に向けて狭くなる形状とすることができる。溝Cは、入口CIから出口COに向けて途中で狭くなった後に出口に向けて広がるように設けられてもよい。即ち、溝Cは、入口CIから出口COまでの途中で括れた形状になっていてもよい。
入口CIよりも狭い箇所での溝の断面積(S1)と入口CIの面積(S2)との比率(S1/S2×100(%))は、例えば、95%以下とすることができる。前記比率(S1/S2×100(%))は、90%以下であってもよく、85%以下であってもよい。前記比率(S1/S2×100(%))は、80%以下であってもよく、75%以下であってもよい。前記比率(S1/S2×100(%))は、例えば、50%以上とすることができる。
本実施形態では、全ての溝Cが入口CIから出口COを見通せない溝付ワイパー122を例示しているが、出口COを見通せない溝Cは、1つの溝付ワイパー122に設けられている複数の溝Cの内の一部であってもよい。また、本実施形態では、全ての溝付ワイパー122を同じ形状のものとする必要はなく、出口COを見通せない溝Cを備えた溝付ワイパー122とそうではない溝付ワイパーとが混在していてもよい。なお、出口COを見通せない溝Cは、薄膜蒸発装置1全体での50%以上を占めていることが好ましい。出口COを見通せない溝Cの割合は、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、99%以上であることが特に好ましい。
本実施形態では、前記式(1)(0.4 ≦ (L2total / L0))と前記式(2)(L2 ≦ 30mm)との両方を満たす溝付ワイパー122と、そうではない溝付ワイパーとを併用してもよい。式(1)と式(2)との両方を満たす溝付ワイパー122も薄膜蒸発装置1全体での50%以上を占めていることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、99%以上であることが特に好ましい。
尚、その他の好ましい態様での溝付ワイパーについても上記と同様の割合で薄膜蒸発装置1に設けることができる。
次いで、このような薄膜蒸発装置1を用いた被処理液の濃縮方法(液体濃縮方法)について説明する。
本実施形態での液体濃縮方法は、上記のような薄膜蒸発装置1で被処理液を濃縮する液体濃縮方法であって、前記薄膜蒸発装置1は、縦型円筒状の内周面11aを有する装置本体11を有し、該装置本体11では前記内周面11aが前記被処理液の濃縮に用いられる蒸発部となっており、前記薄膜蒸発装置1には、前記内周面11aに沿って周回して前記被処理液の液膜を該内周面11a上に形成するための溝付ワイパー122が更に備えられ、該溝付ワイパー122が、前記内周面11aに対向する面より凹入し、且つ、前記周回における前方側と後方側とのそれぞれに開口した複数の溝Cを有し、前記複数の溝Cは、前記溝付ワイパー122の前記周回に際して前方側の前記開口を入口CIとし、後方側の前記開口を出口COとして前記被処理液が通り抜けられるように設けられており、前記複数の溝Cの内の少なくとも一つが前記被処理液で充満された状態で前記溝付ワイパー122を周回させて前記被処理液を濃縮する方法である。
本実施形態での液体濃縮方法では、前記薄膜蒸発装置1で前記被処理液を濃縮する濃縮工程を実施し、前記複数の溝Cの内の少なくとも一つが前記被処理液で充満される前記溝付ワイパー122の運転条件を算出する算出工程を更に実施し、前記算出工程では、前記濃縮工程で用いる前記溝付ワイパー122の、数((A)前記薄膜蒸発装置1で用いる前記溝付ワイパー122の数)、形状((B)前記薄膜蒸発装置1で用いる前記溝付ワイパーの形状(溝の大きさや形、溝の深さ、単位長さ当たりの溝数など))、前記装置本体11での配置((C)前記装置本体での前記溝付ワイパーの配置(周方向での設置位置や上下方向での設置位置))、及び、速度((D)前記溝付ワイパーの周回速度)の何れかを決定するようにしてもよい。
被処理液で溝Cの内部が充満されるかどうかは、上下方向での溝の長さ(L2)、内周面11aを流れる被処理液の流量(V)と粘度(η)とをパラメータとした重回帰分析を実施して予測することができる。
薄膜蒸発装置1で用いる被処理液は、特に限定されないが例えば、常温(23℃)において0mPa・sより大きく50000mPa・s以下の粘度(η)のものを用いることができる。被処理液の粘度は、0.1mPa・s以上であってもよく、500mPa・s以上であってもよい。被処理液の粘度は、30000mPa・s以下であってもよい。被処理液は、動粘度が0cStより大きく50000cSt以下のものを用いることができる。被処理液の動粘度は0.1cSt以上であってもよく500cSt以上であってもよい。被処理液の動粘度は30000cSt以下であってもよい。
被処理液は、溝付ワイパー122装置本体11の内周面11aに液膜を形成させる際において加熱されるなどして上記よりも低粘度化して用いられてもよい。実使用時(液膜形成時)の被処理液の粘度(ηr)は、例えば、30000mPa・s以下であってもよく、10000mPa・s以下であってもよく、5000mPa・s以下であってもよく、3000mPa・s以下であってもよい。実使用時の被処理液の粘度は、0.1mPa・s以上であってもよく、100mPa・s以上であってもよい。実使用時の被処理液の動粘度、例えば、30000cSt以下であってもよく、10000cSt以下であってもよく、5000cSt以下であってもよく、3000cSt以下であってもよい。被処理液の動粘度は、0.1cSt以上であってもよく、100cSt以上であってもよい。被処理液の粘度は一般的な方法で測定することができ、例えばB型粘度計(例えば、BL型、12rpm)にて測定することができる。
溝付ワイパー122の周回時には、図12に示すように内周面11aの上に形成された被処理液の液膜FMが歯部1222で内周面11aから掻き取られ、歯部1222で掻き取られた被処理液が溝部1221側に移動し、入口CIから溝Cに流入されて斜め下方に位置する出口COへと誘導される。本実施形態では、溝Cの入口CIから出口COに至るまでの何れかで溝Cに被処理液を充満させることで当該被処理液を十分に攪拌し、攪拌後の被処理液で溝付ワイパー122の通過後に筋状に盛り上がった液膜FM1を形成するようにしている。
上下方向での溝の長さ(L2)が短い場合、内周面11aを流れる被処理液の流量(V)が多い場合、及び、被処理液の粘度(η)が高い場合は、溝Cが被処理液で充満され易くなる。また、溝付ワイパー122の周回速度を上げると内周面11aを流れる被処理液の流量(V)を増加させた場合と同様の効果が生じるとともに溝Cの内部で当該溝Cの壁面(主として上壁面CW1)に対して被処理液が強く衝突されることになり攪拌性が向上する。
上記のような観点から上下方向での溝の長さ(L2)は、0.5mm以上15mm以下であることが好ましい。上下方向での溝の長さ(L2)は、1mm以上であってもよく、2mm以上であってもよく、3mm以上であってもよい。上下方向での溝の長さ(L2)は、12mm以下であってもよく、10mm以下、更には9.5mm以下であってもよい。上下方向での溝の長さ(L2)は、8mm以下であることがより好ましく、7mm以下であることが特に好ましい。
溝付ワイパー122の通過に際して被処理液を十分に攪拌し、溝付ワイパー122が通過した後の液膜に濃度の偏りが生じないようにするためには、全ての溝付ワイパー122の全ての溝Cが入口CIから出口COまでの全区間において被処理液で充満されるようにすることが特に好ましい。しかしながら、溝付ワイパー122が通過した後の液膜に濃度の偏りが生じないようにするためには、過度な充満は要しない。被処理液に対する攪拌効果は、複数の溝付ワイパー122の一つ以上で溝Cに被処理液を充満させることによって得ることができる。また、被処理液の充満は、一つの溝付ワイパー122における全ての溝Cで生じるようにしなくてもよい。また、被処理液の充満は、溝Cの入口CIから出口COまでの全区間に及ぶようにしなくてもよい。さらに、被処理液の充満する溝Cは、充満した状態が常に継続される必要はなく、断続的であってもよい。本実施形態では、充満されている状態とそうでない状態とが少なくとも一つの溝Cにおいて繰り返されることで被処理液に対する優れた攪拌性能が発揮され得る。
図13に示すように、溝Cの流通方向DCに直交する仮想平面Pxに沿って上下方向に溝Cを測定した際の寸法を溝巾Lcとした時に、被処理液を充満させ易くすることを考慮すると、該溝巾Lcは、例えば、12mm以下とすることができる。該溝巾Lcは、10mm以下であってもよく、8mm以下であってもよい。該溝巾Lcは、6mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。該溝巾Lcは、例えば、0.5mm以上とすることができる。該溝巾Lcは、1mm以上であってもよく、2mm以上であってもよく3mm以上であってもよい。
本実施形態の溝Cは、入口CIから出口COに至るまでの少なくとも1箇所に上記のような溝巾(Lc)が設けられることが好ましい。本実施形態の溝Cは、周回方向Rと対向する方向から前記入口CIを見た時に前記上壁面CW1や前記下壁面CW2によって遮られて出口COが見通せないようになっている場合、前記上壁面CW1や前記下壁面CW2で出口COへの見通しが遮られている部位において上記のような溝巾を有していることが好ましい。本実施形態の溝Cは、入口CIから出口COに至る全区間が上記のような溝巾(Lc)であることが好ましい。
溝Cの深さ方向での寸法(LW)は、この溝巾Lcよりも大きな(Lc<LW)ものであってもよい。溝Cの深さ方向での寸法(LW)は溝巾Lcと同じ(Lc=LW)であってもよい。溝Cの深さ方向での寸法(LW)の溝巾Lcに対する比率(LW/Lc)は、0.9以下であってもよく、0.8以下であってもよい。該比率(LW/Lc)は、0.7以下であってもよく、0.6以下であってもよく、0.5以下であってもよい。該比率(LW/Lc)は、例えば、0.1以上とすることができる。
溝付ワイパー122の周回時には、歯部1222の前面と内周面11aとが直角に交わるエッジ部に被処理液が肉盛りされた状態になり、フィレット状の盛り上がりが歯部1222の前方に形成される。この被処理液のフィレット状の盛り上がり(以下、単に「フィレットFL」ともいう)は、歯部1222の前面だけでなく溝部1221においても形成される。即ち、歯部1222で次々と形成されるフィレットFLは、上下に延びて溝部1221にまで形成される。さらに、フィレットFLが生じ易い条件で薄膜蒸発装置1による被処理液の濃縮を実施すると溝部1221の上方の歯部1222から下方に延びてきたフィレットFLと当該溝部1221の下方の歯部1222から上方に延びてきたフィレットFLとがつながった状態になる。
このフィレットFLは、上下方向での溝の長さ(L2)が短い場合、内周面11aを流れる被処理液の流量(V)が多い場合、及び、被処理液の粘度(η)が高い場合にはより高く盛り上がって溝部1221の前方でつながり易くなる。そのため、フィレットFLの形成状況は、溝Cにおける被処理液の充満状況の指標となり得る。尚、以下においては、溝付ワイパー122の前面側での被処理液の径方向D内向きへの盛り上がり高さを“フィレットFLの高さ”などともいう。
内周面11aから溝付ワイパー122までの径方向Dでの距離(溝付ワイパー122と内周面11aとの間のクリアランス)を除外したフィレットFLの高さ(溝付ワイパー122の外側の端縁からのフィレットFLの高さ)は、入口CIでの溝深さ(W1)の20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることが特に好ましい。フィレットFLの高さは、溝深さ(W1)以上であってもよく、溝深さ(W1)を超える(100%超)ものであってもよい。フィレットFLの高さは、例えば、溝深さ(W1)の300%以下とされる。フィレットFLの高さは、例えば、溝深さ(W1)の100%以下であってもよく、溝深さ(W1)の100%未満であってもよい。歯部1222でのフィレットFLの高さは、フィレットFLの形成状況を写真撮影するなどして算出することができ、歯部1222の前面での平均高さを算出することで求めることができる。溝部1221でのフィレットFLの高さは、上下に隣り合う歯部1222の前面を延長した平面における平均高さとして算出することができる。
上記のようなフィレットFLは、溝部1221で途切れて溝付ワイパー122の上下方向に断続的に形成されてもよいが、溝部1221において繋がっていることが好ましい。上下の歯部1222で形成されたフィレットFLが繋がっている溝部1221は、溝付ワイパー122に1以上設けられることが好ましく、複数設けられることが好ましい。溝付ワイパー122では、全ての溝部1221でフィレットFLが繋がっていることが好ましい。
上記のような好ましいフィレットFLが形成されるように溝付ワイパー122の数、形状、装置本体11での配置、及び、周回速度を決定することで溝Cが被処理液で充満され易くなり、被処理液に対する攪拌効果が向上される結果として、被処理液の濃度バラツキが抑制される。従って、本実施形態の液体濃縮方法では、薄膜蒸発装置1を利用して効率良く被処理液の濃縮が行われることになる。
上記のように濃度バラツキの抑制が可能な本実施形態の薄膜蒸発装置1や該薄膜蒸発装置1を用いた濃縮方法では液膜からの易蒸発成分の脱離が進行し易くなり、優れた分離性能が発揮される。易蒸発成分が脱離し易い本実施形態の液膜は、蒸発熱などによって表層部の被処理液が温度低下し易くなる。本実施形態では液膜に対して良好な攪拌が行われるため、温度低下した被処理液が素早く液膜全体に拡散され、液膜での温度バラツキも抑制されるとともに、液膜が装置本体の内周面から熱エネルギーを受け取り易くなる。従って、本実施形態においては装置本体の内周面から液膜への伝熱効率が向上され得る。
前記のように溝Cにおける被処理液の充満の程度はフィレットFLの形成状況から確認することができるだけでなく、前記算出工程での重回帰分析によっても予測することができる。以下にその一例について説明する。
(検証例1)
まず、算出工程で利用する関数を検証するために本実施形態では図14に示すような透明なガラス製の装置本体10を備えた薄膜蒸発装置1を用いた。また、被処理液には、装置本体10の外側からも存在が確認できるように赤色に着色したカルボキシメチルセルロース溶液(CMC溶液)を用いた。そして、この時には内周面11aでの液膜の形成状況や溝の充満状況を撮像装置CMで撮影した。
図15に撮像装置CMで撮影された画像(装置本体10のガラス壁面を通して溝付ワイパー122の摺接面を撮影した画像)の一例を示す。尚、同図の右側は、歯部と溝部との境界、及び、溝付ワイパーの輪郭を強調するために白線を記入したものである。図の溝部での白色部は、溝の側壁面であり、濃色(灰色)部がCMC溶液の存在する部分である。この図では、最上段の溝においてCMC溶液が充満していることが把握できる。
CMC溶液は、150mPa・sの粘度のものと1500mPa・sの粘度のものと2種類用いた。また、液供給量は50L/h、100L/h、150L/h、200L/hの4条件とした。溝の寸法(所定位置における上下方向の寸法)が異なる複数種類の溝付ワイパー122を用いて溝内にCMC溶液が充満される割合を測定した。
用いた溝付ワイパーは、次の通り。
溝付ワイパーA:溝の入口から出口を見た時の上壁面、下壁面の俯角が40度で、溝巾(Lc)12mm、上下方向溝長さ(L2)15.7mm
溝付ワイパーB:溝の入口から出口を見た時の上壁面、下壁面の俯角が40度で、溝巾(Lc)6mm、上下方向溝長さ(L2)7.8mm
溝付ワイパーC:溝の入口から出口を見た時の上壁面、下壁面の俯角が40度で、溝巾(Lc)3mm、上下方向溝長さ(L2)3.9mm
測定結果を元に重回帰分析をしたところ得られた近似直線での決定係数(R2)の値が0.936となり、良好な一致が見られることが確認できた。
重回帰分析で求められた関数は、溝の寸法を(-3/4)乗じた値を「x」、溝付ワイパーの1列当りのCMC溶液の流量を(1/4)乗じた値を「y」、CMC溶液の粘度を(1/4)乗じた値を「z」とした場合、下記の式(X)で示される。
f(x,y,z)=-215.2+400.2x+102.0y+32.5z-141.9xy-15.3yz-91.7zx+49.1xyz ・・・(X)
上記の式(X)のグラフに実際に測定された充填率をプロット(×、〇)したところ図16に示すような結果となり、充填率が高い精度で予測可能であることがわかる。尚、図16のプロットでの凡例「×」「〇」は、溝の充満が生じていたかどうか(充満無し:×、充満有り:〇)を示している。
次に、同様の装置を用い、食塩水をギアポンプGPで装置本体11に供給し、該装置本体11の内周面11aに食塩水による液膜を形成させるとともに上下2段に配置した溝付ワイパー122を内周面11aに沿って周回させ、ギアポンプGPで装置本体11に供給する液を途中で食塩水から純水に切り替えた。そして、図の装置で地点a、bのそれぞれで電気伝導度を測定して塩分濃度を算出した。
電気伝導度は、液膜がフィレットを構成している時(第1測定値)と、液膜が極薄く延ばされた時(第2測定値)とで測定した。そして、第1測定値と第2測定値との値が完全に一致している場合、食塩水と純水との混合度が100%に達していると判断し、地点a、bのそれぞれの混合度を評価した。得られた結果と先の関数での算出結果とに基づいて食塩水と純水との混合度と溝の充填率との関係を求めた。結果は図17、図18に示す通りとなった。
図17は、径方向視での複数の溝の合計面積に対し、被処理液が存在している部分の面積割合(充填率)を、式(X)に基づいて予測した予測値と、実測値とを対比した結果とを対比した表である。また、図17には、全ての溝がCMC溶液で充満されている様子が観察された場合に「溝充満」の項での判定結果として「◎」を記し、溝の半数以上がCMC溶液で充満されている場合を「〇」と判定した。また、図17では、半数未満の溝で充満している場合を「△」、充満が観察されなかった場合を「×」として判定結果を示している。
図16、図17、図18からもわかるように、食塩水や純水が溝に充満されるように条件設定することで高い混合度が得られ、しかも、充填率が40%以上になると特に優れた混合度となっている。充填率が40%を超えるとワイパーに形成された溝の少なくとも1つが充満された状態となっており、逆に充填率が40%に満たない場合は溝が充満状態となっていないことが図からも分かる。つまり、充填率を所定の値以上とすることで溝が充満される状態となり、溝部における液の混合性を高めることができるということがこれらの図から把握できる。以上のことからも本発明によれば被処理液に濃度バラツキが生じることを抑制しつつ被処理液の濃縮が可能になることがわかる。
(検証例2)
また、上記のような検証とは別に、モノマーを重合した後の粘度が処理時の温度で約1000mPa・s~2000mPa・sであるポリマー溶液を被処理液として用い、当該被処理液の濃縮状況についての検証を行った。検証は、先の「溝付ワイパーA」と溝巾が同じで、俯角が20度で入口側から溝を見た時に出口の上部が見通せる溝付きワイパーを用いて実施した。その結果、出口の見通せてしまう溝付ワイパーを用いた場合に比べ、「溝付ワイパーA」の方が残留モノマーが減少する傾向が見られた。
(検証例3)
更に、下記のようなシリコーンオイルとエポキシ樹脂溶液とを用いて濃縮後の残留モノマーや残留溶剤について検証を行った。
(a)シリコーンオイル:
処理温度(供給時温度と濃縮後の温度との中間温度)での粘度が約1500mPa・sであり、シリコーンモノマーを6220ppm含有するシリコーンオイル
(b)エポキシ樹脂溶液:
処理温度(供給時温度と濃縮後の温度との中間温度)での粘度が約1mPa・sでありエポキシ樹脂を70質量%、メチルエチルケトンを30質量%含有するエポキシ樹脂溶液
ここでは、検証例1での「溝付ワイパーA」と「溝付ワイパーC」とを用いて(a)シリコーンオイルと(b)エポキシ樹脂溶液とを濃縮し、残留モノマーや残留溶剤の量の違いを確認した。
・溝付ワイパーA:
溝の入口から出口を見た時の上壁面、下壁面の俯角が40度で、溝巾(Lc)12mm、上下方向溝長さ(L2)15.7mm
・溝付ワイパーC:
溝の入口から出口を見た時の上壁面、下壁面の俯角が40度で、溝巾(Lc)3mm、上下方向溝長さ(L2)3.9mm
検証は、図1、図2に示すように周方向に90度の間隔を設けて薄膜蒸発装置の装置本体にワイパーを4列配置した場合と、図1、図2よりも列数を増やして45度間隔でワイパーを8列配置した場合とで実施した。
<シリコーンオイルの濃縮>
(濃縮方法1-1)
溝付ワイパーAを4列配置し、装置本体の内周面(蒸発部)に沿って250rpmの回転数で溝付ワイパーAが周回するように薄膜蒸発装置を運転し、50L/hの供給量でシリコーンオイルを装置本体の内周面に供給し、ジャケット部の温度を240℃に保ちつつ装置本体の内部を20Paの真空度に保ってシリコーンオイルの濃縮を実施した。
このとき溝付ワイパーAの溝は、シリコーンオイルで充満されない状況であった。
(濃縮方法1-2)
溝付ワイパーCを8列配置した以外は、濃縮方法1-1と同じ条件でシリコーンオイルの濃縮を実施した。
このとき溝付ワイパーCの溝は、シリコーンオイルで充満される状況であった。
<エポキシ樹脂溶液の濃縮>
(濃縮方法2-1)
溝付ワイパーAを4列配置し、装置本体の内周面(蒸発部)に沿って250rpmの回転数で溝付ワイパーAが周回するように薄膜蒸発装置を運転し、50L/hの供給量でエポキシ樹脂溶液を装置本体の内周面に供給し、ジャケット部の温度を110℃に保ちつつ装置本体の内部を大気圧に保ってエポキシ樹脂溶液の濃縮を実施した。
このとき溝付ワイパーAの溝は、エポキシ樹脂溶液で充満されない状況であった。
(濃縮方法2-2)
用いる溝付ワイパーを溝付ワイパーCに変更した以外は、濃縮方法2-1と同じ条件でエポキシ樹脂溶液の濃縮を実施した。
このとき溝付ワイパーCの溝は、エポキシ樹脂溶液で充満される状況であった。
(濃縮方法2-3)
溝付ワイパーCを4列増やして8列配置した以外は、濃縮方法2-2と同じ条件でエポキシ樹脂溶液の濃縮を実施した。
このとき溝付ワイパーCの溝は、エポキシ樹脂溶液で充満される状況であった。
上記検証の結果、「濃縮方法1-1(溝付ワイパーA、溝充満なし)」で濃縮されたシリコーンオイルでは、980ppmの残留モノマーが確認されたのに対し、「濃縮方法1-2(溝付ワイパーC、溝充満あり)」で濃縮されたシリコーンオイルでは、残留モノマーが420ppmと、半分以下となることが確認できた。
「濃縮方法2-1(溝付ワイパーA、溝充満なし)」、「濃縮方法2-3(溝付ワイパーC、溝充満あり)」では、2回ずつエポキシ樹脂溶液の濃縮を実施し、「濃縮方法2-1(溝付ワイパーA、溝充満なし)」では、1回目に8.27質量%の残留溶剤が観測され、2回目に8.32質量%の残留溶剤が観測され、平均して8.30質量%の残留溶剤が観測された。また、「濃縮方法2-3(溝付ワイパーC、溝充満あり)」では、1回目に4.66質量%の残留溶剤が観測され、2回目に4.62質量%の残留溶剤が観測され、平均して4.64質量%の残留溶剤が観測された。また、「濃縮方法2-2(溝付ワイパーC、溝充満あり)」では6.23質量%の残留溶剤が観測された。更に、「濃縮方法2-1(溝付ワイパーA、溝充満なし)」では、ジャケット部の温度を110℃に代えて140℃とした以外は同条件でエポキシ樹脂溶液の濃縮を実施した。その場合も、溝付きワイパーAでは、溝の充満が確認できなかった。この140℃での濃縮の結果、残留溶剤が3.8質量%となることが確認できた。即ち、溝付きワイパーAでジャケット温度を140℃にした場合に近い状態での濃縮が溝付ワイパーCを用いて列数を増やすと110℃程度の温度で実施可能になることが確認できた。
結果を、図19A、図19Bに示す。
(検証例4)
薄膜蒸発装置として検証例3と同様のものを用い、装置本体の内周面(蒸発部)に水を供給して伝熱係数の評価を実施した。
尚、該薄膜蒸発装置の伝熱面積は、0.4m2であった。
まず、溝付ワイパーは、4列配置し、回転数を250rpmとした。
ジャケット部の温度を150℃に保ちつつ装置本体の内部を大気圧に保って水を蒸発させた。
水の供給量を約40kg/hとし、伝熱係数を確認した。
溝付ワイパーA(溝巾(Lc)12mm)を用いた場合、溝が水で充満されることは無かった。
一方で、溝付ワイパーC(溝巾(Lc)3mm)を用いた場合は、溝が水で充満されていた。
検証の結果、図20に示すように、溝付ワイパーCを用いた場合は、溝付ワイパーAを用いた場合に比べて約19%伝熱効率が向上することが分かった。また、溝付ワイパーC(溝巾(Lc)3mm)を8列とした場合、更に伝熱効率が向上し、溝付ワイパーAを用いた場合に比べて約30%伝熱効率が向上することが分かった。尚、溝付ワイパーC(溝巾(Lc)3mm)を8列配置した場合も溝が水で充満されることが確認された。
上記より、溝幅の変更によって伝熱効率の向上が期待されることが分かった。
上記の検証1で示した通り、算出工程では、濃縮する被処理液の供給量や粘度と、用いる溝付ワイパーの形状とに基づいて充填率を予め算出することができる。しかも、図16、図17に示す通り、それらをファクターとする関数を用いると実測値に近い予測値を算出することができる。従って、算出工程を実施することで濃縮工程で望ましい結果がより確実に得られることになる。また、上記の検証2、検証3で示した通り、本実施形態の液体濃縮方法では効率良く被処理液の濃縮が行われることがわかる。
本実施形態の薄膜蒸発装置は、例えば、ポリマーから、当該ポリマーを構成する構成単位を分離するために用いられる。構成単位は、モノマー、又は、該モノマーが多量体化した(例えば100以下の重合度の)オリゴマーとして分離することができる。該ポリマーの具体例としては、シリコーンオイル(ポリジメチルシロキサン)、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。
本実施形態の薄膜蒸発装置によるポリマーの構成単位の分離は、ポリマーの重合プロセスや解重合プロセスにおいて実施され得る。ポリマーの重合プロセスにおける薄膜蒸発装置の使用例を挙げると、本実施形態の薄膜蒸発装置は、例えば、重合されたシリコーンオイルからオリゴマーやモノマーを分離してシリコーンオイルを濃縮(高純度化)するために用いられる。
ポリマーの重合プロセスにおける薄膜蒸発装置の更なる使用例を挙げると、本実施形態の薄膜蒸発装置は、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとによりウレタンプレポリマーを作製し、該ウレタンプレポリマーをポリオール又はポリイソシアネートで架橋してポリウレタン樹脂を得るプロセスにおいてウレタンプレポリマーからポリオールやポリイソシアネートを分離・回収するために利用され得る。
解重合プロセスにおける薄膜蒸発装置の使用例を挙げると、本実施形態の薄膜蒸発装置は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂をエチレングリコールの存在下で解重合してビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートを得る解重合プロセスでエチレングリコールの分離・回収やビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートの分離・回収に用いられ得る。
解重合プロセスにおける薄膜蒸発装置の更なる使用例を挙げると、本実施形態の薄膜蒸発装置は、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂の熱分解によりメタクリル酸メチルモノマーを回収するのに用いられ得る。
本実施形態の薄膜蒸発装置は、上記のようなプロセス以外に、例えば、第1の炭化水素系化合物と、該第1の炭化水素系化合物よりも分子量の低い(沸点の低い)第2の炭化水素系化合物とを含む複数の炭化水素系化合物の混合物から、第1の炭化水素系化合物や第2の炭化水素系化合物を分離するために用いられる。
上記のような使用方法の具体例を挙げると、本実施形態の薄膜蒸発装置は、ポリマーと有機溶剤とを含むポリマー溶液からの有機溶剤の分離・回収などが挙げられる。該ポリマー溶液としては、例えば、エポキシ樹脂溶液などが挙げられる。前記有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)などが挙げられる。エポキシ樹脂溶液からの有機溶剤の分離では、例えば、有機溶剤の含有量が1000ppm以下(数百ppm)に低減された純度に優れたエポキシ樹脂を得ることができる。
上記のような使用方法の更なる具体例を挙げると、本実施形態の薄膜蒸発装置は、潤滑油、廃油、重油からの再生油を得るためにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を用いて溶剤抽出する際に、得られた再生油からNMPを分離するためなどに利用され得る。
上記のように本実施形態の薄膜蒸発装置は、種々の用途において利用可能であり、しかも、優れた攪拌効果を示すことで、分離性能の向上や伝熱係数を高めることが可能である。そのため、本実施形態の薄膜蒸発装置は、装置サイズをコンパクトなものにすることも容易となる。また、本実施形態の薄膜蒸発装置は、ユーティリティ設備から供給される熱量を少なくすることが可能で、消費エネルギーを低減することが可能であり、二酸化炭素の排出量削減にも貢献できる。また、優れた分離性と優れた伝熱効率とが発揮される本実施形態の薄膜蒸発装置や濃縮方法では、濃縮液や濃縮液を利用して作製される二次製品からの揮発性有機成分(VOC)の発生を抑制できる点において環境負荷軽減が図られるばかりでなく、伝熱効率を向上させて省エネルギー化することが可能になる点でも環境負荷軽減が可能となる。
本実施形態の液体濃縮方法やその具体的な用途については、上記例示のものに限定されず、従来公知の事項を適宜採用することができる。本実施形態での液体濃縮方法や薄膜蒸発装置についての上記例示はあくまでも限定的なものであり、本発明は上記例示に適宜変更を加え得る。即ち、本発明は上記例示に何等限定されるものではない。
上記の通り本明細書には以下の開示を含む。
(1)
薄膜蒸発装置で被処理液を濃縮する液体濃縮方法であって、
前記薄膜蒸発装置は、縦型円筒状の内周面を有する装置本体を有し、
該装置本体では前記内周面が前記被処理液の濃縮に用いられる蒸発部となっており、
前記薄膜蒸発装置には、前記内周面に沿って周回して前記被処理液の液膜を該内周面上に形成するための溝付ワイパーが更に備えられ、
該溝付ワイパーが、前記内周面に対向する面より凹入し、且つ、前記周回における前方側と後方側とのそれぞれに開口した複数の溝を有し、
前記複数の溝は、前記溝付ワイパーの前記周回に際して前方側の前記開口を入口とし、後方側の前記開口を出口として前記被処理液が通り抜けられるように設けられており、
前記複数の溝の内の少なくとも一つが前記被処理液で充満された状態で前記溝付ワイパーを周回させて前記被処理液を濃縮する液体濃縮方法。
(2)
前記薄膜蒸発装置で前記被処理液を濃縮する濃縮工程を実施し、
前記複数の溝の内の少なくとも一つが前記被処理液で充満される前記溝付ワイパーの運転条件を算出する算出工程を更に実施し、
前記算出工程では、前記濃縮工程で用いる前記溝付ワイパーについて、下記(A)~(D)の何れか1つ以上が決定される(1)記載の液体濃縮方法。
(A)前記薄膜蒸発装置で用いる前記溝付ワイパーの数
(B)前記薄膜蒸発装置で用いる前記溝付ワイパーの形状
(C)前記装置本体での前記溝付ワイパーの配置
(D)前記溝付ワイパーの周回速度
(3)
前記溝付ワイパーの前記溝は、前記入口での上下方向における長さ(L2)が、0.5mm以上9.5mm以下である(1)又は(2)記載の液体濃縮方法。
(4)
前記複数の溝には、
前記入口の上端部から前記出口の上端部へと至る上壁面と、前記入口の下端部から前記出口の下端部へと至る下壁面とを備え、且つ、前記溝付ワイパーの周回方向と対向する方向から前記入口を見た時に前記上壁面に遮られて前記出口が見通せない形状を有する溝が含まれており、
該溝において前記出口を見通せないように遮っている部位での前記上壁面の水平面に対する俯角は、10度以上60度以下である(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の液体濃縮方法。
(5)
前記複数の溝には、
前記入口の上端部から前記出口の上端部へと至る上壁面と、前記入口の下端部から前記出口の下端部へと至る下壁面とを備え、且つ、前記溝付ワイパーの周回方向と対向する方向から前記入口を見た時に前記下壁面に遮られて前記出口が見通せない形状を有する溝が含まれており、
該溝において前記出口を見通せないように遮っている部位での前記下壁面の水平面に対する仰角は、10度以上60度以下である(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の液体濃縮方法。
(6)
被処理液の濃縮に用いられる薄膜蒸発装置であって、
縦型円筒状の内周面を有する装置本体を有し、該装置本体では前記内周面が前記被処理液の濃縮に用いられる蒸発部となっており、
前記内周面に沿って周回して前記被処理液の液膜を該内周面上に形成するための溝付ワイパーが更に備えられ、
該溝付ワイパーが、前記内周面に対向する面より凹入し、且つ、前記周回における前方側と後方側とのそれぞれに開口した複数の溝を有し、
前記複数の溝は、前記溝付ワイパーの上下方向に間隔を設けて配置され、前記溝付ワイパーの前記周回に際して前方側の前記開口を入口とし、後方側の前記開口を出口として前記被処理液が通り抜けられるように設けられており、
前記複数の溝には、
前記入口の上端部から前記出口の上端部へと至る上壁面と、前記入口の下端部から前記出口の下端部へと至る下壁面とを備え、且つ、前記溝付ワイパーの周回方向と対向する方向から前記入口を見た時に前記上壁面と前記下壁面との何れかに遮られて前記出口が見通せない形状を有する溝が含まれており、
前記複数の溝のそれぞれについて前記入口の上下方向における長さ(L2)を求め、該長さ(L2)の合計値(L2total)を求めて前記溝付ワイパーの上下方向における長さ(L0)との比(L2total/L0)を求めた際に下記式(1)及び下記式(2)を満たす薄膜蒸発装置。
0.4 ≦ (L2total / L0) ・・・(1)
L2 ≦ 30mm ・・・(2)
(7)
前記複数の溝には、
前記入口から前記出口に至る間に前記入口よりも狭くなる箇所が設けられた溝が含まれている(6)記載の薄膜蒸発装置。
(8)
前記溝付ワイパーが長さ方向と、該長さ方向に直交する厚さ方向とを有し、
前記複数の溝のそれぞれは、前記長さ方向を垂直方向に向けて前記溝付ワイパーを配した時に前記入口が前記出口よりも上方に位置するように傾斜し、前記厚さ方向へ斜めに前記被処理液が通り抜けられるように設けられており、
前記溝付ワイパーは、前記長さ方向が垂直方向となるように配した時よりも前記入口と前記出口との高低差が少なくなるように傾けて配されている(6)又は(7)記載の薄膜蒸発装置。
(9)
前記溝付ワイパーが長さ方向と、該長さ方向に直交する厚さ方向とを有し、
前記複数の溝のそれぞれは、前記長さ方向を垂直方向に向けて前記溝付ワイパーを配した時に前記入口が前記出口よりも上方に位置するように傾斜し、前記厚さ方向へ斜めに前記被処理液が通り抜けられるように設けられており、
前記溝付ワイパーは、前記長さ方向が垂直方向となるように配した時よりも前記入口と前記出口との高低差が大きくなるように傾けて配されている(6)又は(7)記載の薄膜蒸発装置。
(10)
前記複数の溝のそれぞれの前記入口の上下方向における長さ(L2)が、0.5mm以上9.5mm以下である(6)乃至(9)の何れか1つに記載の薄膜蒸発装置。
(11)
前記上壁面が、前記入口から前記出口への見通しを遮る部位を有し、該部位での前記上壁面の水平面に対する俯角は、10度以上60度以下である(6)乃至(10)の何れか1つに記載の薄膜蒸発装置。
(12)
前記下壁面が、前記入口から前記出口への見通しを遮る部位を有し、該部位での前記下壁面の水平面に対する仰角は、10度以上60度以下である(6)乃至(10)の何れか1つに記載の薄膜蒸発装置。
(13)
前記複数の溝には、前記入口の長さ(L2)が長い広溝と、該広溝よりも前記入口の長さ(L2)の短い狭溝とが含まれている(6)乃至(12)の何れか1つに記載の薄膜蒸発装置。
(14)
前記広溝での前記入口の長さが5mm以上30mm以下で、
前記狭溝での前記入口の長さが0.5mm以上9.5mm以下である(13)記載の薄膜蒸発装置。
(15)
前記広溝には、前記内周面から離れる方向での前記下壁面の端縁部と前記上壁面の端縁部とを結ぶ側壁面より前記内周面に向けて突出する突起が設けられている(13)又は(14)記載の薄膜蒸発装置。
上記の発明によれば薄膜蒸発装置を用いた液体濃縮方法において液膜に濃度バラツキが生じることを抑制することができる。
1:薄膜蒸発装置、2:供給装置、3:濃縮液回収装置、4:凝縮液回収装置、
11:装置本体、11a 内周面、12:液膜形成機、
21:被処理液貯留部、22:被処理液搬送部、
31:濃縮液貯留槽、
41:凝縮器、42:凝縮液貯留槽、
100:分離設備、
111:円筒体、112:ジャケット部、113:底壁部、114:天壁部、
121:軸体、122:溝付ワイパー、123:支持材、
1221:溝部、1222:歯部、1223:突起、
C:溝、CI:入口、CO:出口、CW1:上壁面、CW2:下壁面、CW3:側壁面、
D:径方向、
F:被処理液、FL:フィレット、
L:長さ方向、
R:周回方向、
T:厚さ方向、
W:幅方向。

Claims (9)

  1. 薄膜蒸発装置で被処理液を濃縮する液体濃縮方法であって、
    前記薄膜蒸発装置は、縦型円筒状の内周面を有する装置本体を有し、
    該装置本体では前記内周面が前記被処理液の濃縮に用いられる蒸発部となっており、
    前記薄膜蒸発装置には、前記内周面に沿って周回して前記被処理液の液膜を該内周面上に形成するための溝付ワイパーが更に備えられ、
    該溝付ワイパーが、前記内周面に対向する面より凹入し、且つ、前記周回における前方側と後方側とのそれぞれに開口した複数の溝を有し、
    前記複数の溝は、前記溝付ワイパーの前記周回に際して前方側の前記開口を入口とし、後方側の前記開口を出口として前記被処理液が通り抜けられるように設けられており、
    前記複数の溝の内の少なくとも一つが前記入口から前記出口までの全区間にわたって前記被処理液で充満された状態で前記溝付ワイパーを周回させて前記被処理液を濃縮する液体濃縮方法。
  2. 前記薄膜蒸発装置で前記被処理液を濃縮する濃縮工程を実施し、
    前記複数の溝の内の少なくとも一つが前記被処理液で充満される前記溝付ワイパーの運転条件を算出する算出工程を更に実施し、
    前記算出工程では、前記濃縮工程で用いる前記溝付ワイパーについて、下記(A)~(D)の何れか1つ以上が決定される請求項1記載の液体濃縮方法。
    (A)前記薄膜蒸発装置で用いる前記溝付ワイパーの数
    (B)前記薄膜蒸発装置で用いる前記溝付ワイパーの形状
    (C)前記装置本体での前記溝付ワイパーの配置
    (D)前記溝付ワイパーの周回速度
  3. 前記溝付ワイパーの前記溝は、前記入口での上下方向における長さ(L2)が、0.5mm以上9.5mm以下である請求項1又は2記載の液体濃縮方法。
  4. 前記複数の溝には、
    前記入口の上端部から前記出口の上端部へと至る上壁面と、前記入口の下端部から前記出口の下端部へと至る下壁面とを備え、且つ、前記溝付ワイパーの周回方向と対向する方向から前記入口を見た時に前記上壁面に遮られて前記出口が見通せない形状を有する溝が含まれており、
    該溝において前記出口を見通せないように遮っている部位での前記上壁面の水平面に対する俯角は、10度以上60度以下である請求項1又は2記載の液体濃縮方法。
  5. 前記複数の溝には、
    前記入口の上端部から前記出口の上端部へと至る上壁面と、前記入口の下端部から前記出口の下端部へと至る下壁面とを備え、且つ、前記溝付ワイパーの周回方向と対向する方向から前記入口を見た時に前記下壁面に遮られて前記出口が見通せない形状を有する溝が含まれており、
    該溝において前記出口を見通せないように遮っている部位での前記下壁面の水平面に対する仰角は、10度以上60度以下である請求項1又は2記載の液体濃縮方法。
  6. 被処理液の濃縮に用いられる薄膜蒸発装置であって、
    縦型円筒状の内周面を有する装置本体を有し、該装置本体では前記内周面が前記被処理液の濃縮に用いられる蒸発部となっており、
    前記内周面に沿って周回して前記被処理液の液膜を該内周面上に形成するための溝付ワイパーが更に備えられ、
    該溝付ワイパーが、前記内周面に対向する面より凹入し、且つ、前記周回における前方側と後方側とのそれぞれに開口した複数の溝を有し、
    前記複数の溝が前記溝付ワイパーの上下方向に間隔を設けて配置され、
    該溝付ワイパーでは、該溝の間が前記内周面に向けて突出した歯部となっており、
    前記複数の溝は、
    前記溝付ワイパーの前記周回に際して前方側の前記開口を入口とし、後方側の前記開口を出口として前記被処理液が通り抜けられるように設けられ、
    前記入口の上端部から前記出口の上端部へと至る上壁面と、前記入口の下端部から前記出口の下端部へと至る下壁面とを備え、該上壁面と該下壁面とが互いに平行し、且つ、前記溝付ワイパーの周回方向と対向する方向から前記入口を見た時に前記上壁面と前記下壁面との何れかに遮られて前記出口が見通せない形状を有し、
    上下方向における長さが前記歯部の上下方向での長さ以上であり、
    前記溝付きワイパーは、該複数の溝の内の少なくとも一つが前記入口から前記出口までの全区間にわたって前記被処理液で充満された状態で周回するように使用される薄膜蒸発装置。
  7. 前記複数の溝のそれぞれの前記入口の上下方向における長さが、0.5mm以上9.5mm以下である請求項6記載の薄膜蒸発装置。
  8. 前記上壁面が、前記入口から前記出口への見通しを遮る部位を有し、該部位での前記上壁面の水平面に対する俯角は、10度以上60度以下である請求項6記載の薄膜蒸発装置。
  9. 前記下壁面が、前記入口から前記出口への見通しを遮る部位を有し、該部位での前記下壁面の水平面に対する仰角は、10度以上60度以下である請求項6記載の薄膜蒸発装置。
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