JP7464899B1 - 溶接継手の製造方法、溶接継手、低温液化ガスタンクの設計方法、及び低温液化ガスタンク - Google Patents

溶接継手の製造方法、溶接継手、低温液化ガスタンクの設計方法、及び低温液化ガスタンク Download PDF

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Abstract

この溶接継手の製造方法は、温液化ガスタンクの使用温度において、溶接金属の線膨張係数と母材の線膨張係数との差に起因して溶接継手に生じる熱応力を求める熱応力算出工程と、溶接継手に欠陥を想定し、熱応力の影響を加味して、低温液化ガスタンクの運用中に低温液化ガスタンクが脆性破壊しないための必要CTOD値を求める必要CTOD値算出工程と、低温液化ガスタンクの使用温度における溶接継手の熱影響部のCTOD値を測定するCTOD値測定工程と、熱影響部のCTOD値が必要CTOD値以上であることが確認された厚鋼板を前記母材として使用して母材を溶接する溶接工程と、を含む。

Description

本発明は、溶接継手の製造方法、溶接継手、低温液化ガスタンクの設計方法、及び低温液化ガスタンクに関する。本願は、2022年06月21日に、日本に出願された特願2022-099498号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
低温液化ガスは極低温で取り扱われるため、これを貯蔵するタンクの内槽や移送する配管の冷却時には、それらを構成する母材と溶接金属の線膨張係数の差に起因した応力(熱応力)が生じることがある。この熱応力は、脆性破壊の原因になることがある。
特許文献1には、熱応力を低減する技術として、オーステナイト系ステンレス鋼からなる配管とインバーからなる配管との異種材料の接合が、線膨張係数が所定の関係を満たすような溶接材料を用いた溶接によって行われていることを特徴とする低温液化ガスの配管構造が開示されている。特許文献1には、55%以上のNiを含有する溶接材料が例示されている。
日本国特許第4578084号公報
大川 他:7%Ni-TMCP鋼の特性と大型LNGタンクへの適用性、圧力技術、第57巻、第4号、p.221-230、2019
低温液化ガスタンクの一種であるLNG(Liquefied Natural Gas;液化天然ガス)タンクの内槽には、例えば、極低温での靭性に優れるNi鋼、例えば、9%Ni鋼や7%Ni鋼等が使用され、Ni鋼の溶接にはNi基溶接材料が使用されている。しかしながら、Ni基溶接材料は、Niを多量に含有するため高価である。そのため、溶接材料ひいてはLNGタンクの低コスト化が求められている。溶接材料に含有されるNiの含有量を減少させることが低コスト化の一つの方法として考えられるが、その様な溶接材料では、LNGタンクの母材や従来のNi基溶接材料に比べて線膨張係数が高くなる傾向にある。LNGタンクにおいて母材と溶接金属の線膨張係数の差が大きくなると、熱応力が生じることが想定される。このような熱応力は従来の溶接構造物の設計において想定されておらず、脆性破壊の駆動力として付加的に作用する。したがって、線膨張係数の大きい溶接材料を使用した場合であっても脆性破壊を防止できる溶接継手及び溶接構造体が求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明は、低温液化ガスと接するタンクの内槽の製造に、低コストであり、線膨張係数の大きい溶接材料を使用した場合であっても、溶接部からの脆性破壊を抑制可能な、溶接継手の製造方法、溶接継手、低温液化ガスタンクの設計方法、及び低温液化ガスタンクを提供することを目的とする。
本発明の要旨は、以下の通りである。
[1] 本発明の一態様に係る溶接継手の製造方法は、低温液化ガスタンクの内槽に使用され、溶接金属の線膨張係数が母材の線膨張係数よりも大きい溶接継手の製造方法であって、上記低温液化ガスタンクの使用温度において、上記溶接金属の線膨張係数と上記母材の線膨張係数との差に起因して上記溶接継手に生じる熱応力を求める熱応力算出工程と、上記溶接継手に欠陥を想定し、上記熱応力の影響を加味して、上記低温液化ガスタンクの運用中に上記低温液化ガスタンクが脆性破壊しないための必要CTOD値を求める必要CTOD値算出工程と、上記低温液化ガスタンクの使用温度における上記溶接継手の熱影響部のCTOD値を測定するCTOD値測定工程と、上記熱影響部の上記CTOD値が上記必要CTOD値以上であることが確認された厚鋼板を上記母材として使用して、上記母材を溶接する溶接工程と、を含む。
[2] 本発明の別の態様に係る溶接継手は、上記溶接金属の線膨張係数が上記母材の線膨張係数よりも大きく、低温液化ガスタンクの内槽に使用される溶接継手であって、上記低温液化ガスタンクの使用温度におけるCTOD値が、上記溶接金属の線膨張係数と上記母材の線膨張係数の差に起因して生じる熱応力の影響を加味した必要CTOD値以上である。
[3] 上記[2]に記載の溶接継手では、上記低温液化ガスタンクの使用温度におけるCTOD値が、下記(1)式で計算される必要CTOD値δ0以上であってもよい。
Figure 0007464899000001
上記(1)式中、
:特性き裂寸法
εY:母材の降伏ひずみ
ε:評価ひずみ
である。
[4] 本発明の更に別の態様に係る低温液化ガスタンクの設計方法は、母材と溶接金属とで構成される突合せ溶接部を内槽に有する低温液化ガスタンクの設計方法であって、上記低温液化ガスタンクの使用温度において、上記溶接金属の線膨張係数と上記母材の線膨張係数との差に起因して上記突合せ溶接部に生じる熱応力を求める熱応力算出工程と、上記突合せ溶接部に欠陥を想定し、上記熱応力の影響を加味して、上記低温液化ガスタンクの運用中に上記低温液化ガスタンクが脆性破壊しないための必要CTOD値を求める必要CTOD値算出工程と、熱影響部のCTOD値が上記必要CTOD値以上となるように上記母材を選択する母材選択工程と、を含む。
[5] 本発明の更に別の態様に係る低温液化ガスタンクは、母材と溶接金属とで構成される突合せ溶接部を内槽に有する低温液化ガスタンクであって、上記低温液化ガスタンクの使用温度における上記突合せ溶接部のCTOD値が、上記溶接金属の線膨張係数と上記母材の線膨張係数との差に起因して上記突合せ溶接部に生じる熱応力の影響を加味した、下記(2)式で計算される必要CTOD値δ 0 以上である
Figure 0007464899000002
上記(2)式中、
:特性き裂寸法
ε Y :母材の降伏ひずみ
ε:評価ひずみ
である。
] 上記[5]に記載の低温液化ガスタンクは、LNGタンクであってもよい。
[7] 上記[5]に記載の低温液化ガスタンクでは、上記母材が、質量%で、Mn:0.1~5.0%、及び、Ni:6.0~16.0%を含有してもよい。
[8] 本発明の更に別の態様に係る低温液化ガスタンクは、母材と溶接金属とで構成される突合せ溶接部を内槽に有する低温液化ガスタンクであって、上記低温液化ガスタンクの使用温度における上記突合せ溶接部のCTOD値が、上記溶接金属の線膨張係数と上記母材の線膨張係数との差に起因して上記突合せ溶接部に生じる熱応力の影響を加味した必要CTOD値以上であり、上記低温液化ガスタンクは船舶用のLNGタンクであり、板厚が25mm以下の内槽材の上記突合せ溶接部の-165℃におけるCTOD値δが下記(3)式、及び(4)式を満足する
δ≧0.001×(Tw/Tb)2+0.057×(Tw/Tb)+0.0035 …(3)式
1<Tw/Tb<2.2 …(4)式
ただし、上記(3)式及び上記(4)式中、Twは上記溶接金属の線膨張係数[1/℃]であり、Tbは上記母材の線膨張係数[1/℃]である。
[9] 本発明の更に別の態様に係る低温液化ガスタンクは、母材と溶接金属とで構成される突合せ溶接部を内槽に有する低温液化ガスタンクであって、上記低温液化ガスタンクの使用温度における上記突合せ溶接部のCTOD値が、上記溶接金属の線膨張係数と上記母材の線膨張係数との差に起因して上記突合せ溶接部に生じる熱応力の影響を加味した必要CTOD値以上であり、上記低温液化ガスタンクは船舶用のLNGタンクであり、板厚25mm超40mm以下の内槽材の上記突合せ溶接部の-165℃におけるCTOD値δが下記(5)式、及び下記(6)式を満足する
δ≧0.0038×(Tw/Tb)2+0.074×(Tw/Tb)+0.003 …(5)式
1<Tw/Tb<2.2 …(6)式
ただし、上記(5)式及び上記(6)式中、Twは上記溶接金属の線膨張係数[1/℃]であり、Tbは上記母材の線膨張係数[1/℃]である。
[10] 本発明の更に別の態様に係る低温液化ガスタンクは、母材と溶接金属とで構成される突合せ溶接部を内槽に有する低温液化ガスタンクであって、上記低温液化ガスタンクの使用温度における上記突合せ溶接部のCTOD値が、上記溶接金属の線膨張係数と上記母材の線膨張係数との差に起因して上記突合せ溶接部に生じる熱応力の影響を加味した必要CTOD値以上であり、上記低温液化ガスタンクは地上式のLNGタンクであり、板厚25mm以下の内槽材の上記突合せ溶接部の-165℃におけるCTOD値δが下記(7)式、及び(8)式を満足する
δ≧0.0153×(Tw/Tb)2+0.0274×(Tw/Tb)+0.0135 …(7)式
1<Tw/Tb<2.2 …(8)式
ただし、上記(7)式及び上記(8)式中、Twは上記溶接金属の線膨張係数[1/℃]であり、Tbは上記母材の線膨張係数[1/℃]である。
[11] 本発明の更に別の態様に係る低温液化ガスタンクは、母材と溶接金属とで構成される突合せ溶接部を内槽に有する低温液化ガスタンクであって、上記低温液化ガスタンクの使用温度における上記突合せ溶接部のCTOD値が、上記溶接金属の線膨張係数と上記母材の線膨張係数との差に起因して上記突合せ溶接部に生じる熱応力の影響を加味した必要CTOD値以上であり、上記低温液化ガスタンクは地上式のLNGタンクであり、板厚25mm超50mm以下の内槽材の上記突合せ溶接部の-165℃におけるCTOD値δが下記(9)式、及び(10)式を満足する
δ≧0.03×(Tw/Tb)2-0.024×(Tw/Tb)+0.0694 …(9)式
1<Tw/Tb<2.2 …(10)式
ただし、上記(9)式及び上記(10)式中、Twは上記溶接金属の線膨張係数[1/℃]であり、Tbは上記母材の線膨張係数[1/℃]である
[12 発明の更に別の態様に係る低温液化ガスタンクは、母材と溶接金属とで構成される突合せ溶接部を内槽に有する低温液化ガスタンクであって、上記低温液化ガスタンクの使用温度における上記突合せ溶接部のCTOD値が、上記溶接金属の線膨張係数と上記母材の線膨張係数との差に起因して上記突合せ溶接部に生じる熱応力の影響を加味した必要CTOD値以上であり、上記溶接金属が、質量%で、Mn:5.0~20.0%、及び、Ni:5.0~30.0%を含有する
[13] 発明の更に別の態様に係る低温液化ガスタンクは、母材と溶接金属とで構成される突合せ溶接部を内槽に有する低温液化ガスタンクであって、上記低温液化ガスタンクの使用温度における上記突合せ溶接部のCTOD値が、上記溶接金属の線膨張係数と上記母材の線膨張係数との差に起因して上記突合せ溶接部に生じる熱応力の影響を加味した必要CTOD値以上であり、上記母材が、質量%で、Mn:0.1~5.0%、及び、Ni:6.0~16.0%を含有し、上記溶接金属が、質量%で、Mn:5.0~20.0%、及び、Ni:5.0~30.0%を含有する。
[14] 上記[8]~[13]のいずれかに記載の低温液化ガスタンクでは、上記低温液化ガスタンクの使用温度における上記突合せ溶接部のCTOD値が、下記(11)式で計算される必要CTOD値δ 0 以上であってもよい。
Figure 0007464899000003
上記(11)式中、
:特性き裂寸法
ε Y :母材の降伏ひずみ
ε:評価ひずみ
である。
本発明の上記態様によれば、低温液化ガスと接するタンクの内槽の製造に、低コストであり、線膨張係数の大きい溶接材料を使用した場合であっても、溶接部からの脆性破壊を抑制することができる。
FEM解析対象の溶接継手の解析モデルを示す模式図である。 FEM解析の各条件における-196℃での溶接線方向応力σxのコンター図である。 FEM解析の各条件における-196℃での溶接線直角方向応力σyのコンター図である。 FEM解析による、線膨張係数比Tw/Tbと-165℃での熱応力の関係を示すグラフである。 船舶用LNGタンク独立型Type Cのタンクにおける溶接継手の想定欠陥位置を示す模式図である。 船舶用LNGタンク独立型Type Cにおける溶接継手の想定欠陥寸法を説明するための模式図である。 目違い及び角変形を有する突合せ溶接継手の一例を示す模式図である。 船舶用LNGタンク独立型TypeCにおいて板厚が25mmの場合の、欠陥位置ごとの線膨張係数比Tw/Tbと必要CTOD値δ0との関係を示すグラフである。 船舶用LNGタンク独立型TypeCにおいて板厚が40mmの場合の、欠陥タイプ位置の線膨張係数比Tw/Tbと必要CTOD値δ0との関係を示すグラフである。 地上式LNGタンクの構造の一例を示す模式図である。 地上式LNGタンクにおける溶接継手の想定欠陥位置を示す模式図である。 地上式LNGタンクにおける溶接継手の想定欠陥寸法を説明するための模式図である。 地上式LNGタンクにおいて板厚が25mmの場合の、欠陥位置ごとの線膨張係数比Tw/Tbと必要CTOD値δ0との関係を示すグラフである。 地上式LNGタンクにおいて板厚が50mmの場合の、欠陥位置ごとの線膨張係数比Tw/Tbと必要CTOD値δ0との関係を示すグラフである。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
<溶接継手の製造方法>
本発明の一実施形態に係る溶接継手の製造方法を説明する。本実施形態に係る溶接継手の製造方法は、低温液化ガスタンクの内槽に使用され、溶接金属の線膨張係数が母材の線膨張係数よりも大きい溶接継手の製造方法であって、低温液化ガスタンクの使用温度において、溶接金属の線膨張係数と母材の線膨張係数との差に起因して溶接継手に生じる熱応力を求める熱応力算出工程と、溶接継手に欠陥を想定し、熱応力の影響を加味して、低温液化ガスタンクの運用中に低温液化ガスタンクが脆性破壊しないための必要CTOD値を求める必要CTOD値算出工程と、低温液化ガスタンクの使用温度における溶接継手の熱影響部のCTOD値を測定するCTOD値測定工程と、熱影響部のCTOD値が必要CTOD値以上であることが確認された厚鋼板を前記母材として使用して、母材を溶接する溶接工程と、を含む。
[熱応力算出工程]
本工程では、低温液化ガスタンクの使用温度において、溶接金属の線膨張係数と母材の線膨張係数の差に起因して溶接継手に生じる熱応力を求める。当該熱応力は、例えば、FEM(Finite Element Method;有限要素法)解析により求められる。FEM解析では、低温液化ガスタンクの使用温度を設計温度としてよい。例えば、LNGタンクの場合、低温液化ガスの温度は-162℃であるが、設計温度の-164℃または-165℃を想定してFEM解析を行ってもよい。以下に、図1~3を参照して、FEMによる溶接継手の熱応力解析を例に挙げて、上記熱応力の算出方法を説明する。図1は、FEM解析対象の溶接継手の解析モデルを示す模式図である。
図1に解析対象の溶接継手のFEM解析モデルを示し、表1にFEM解析に用いた母材と溶接金属の線膨張係数をそれぞれ示す。FEM解析モデルを、長さl=1000mm、幅w=1000mm、厚さt=30mmの溶接継手1とした。溶接継手1は、母材2A、2Bと、溶接金属3とで構成されるものとした。溶接金属3の幅hを30mmとし、溶接金属3は、溶接継手1の幅方向中央位置(w/2位置)に長さ方向(X方向)に沿って延在するとした。熱応力の解析範囲は、図1の二点鎖線で示される範囲であり、溶接継手1の一端から長さ方向(X方向)及び幅方向(Y方向)にそれぞれ1/2の位置までであり、溶接継手1の表面から厚さ方向(Z方向)に1/2の位置までとした。
Figure 0007464899000004
母材2A、2Bの線膨張係数Tbには、「LNG地上式貯槽指針」(一般社団法人日本ガス協会、2019年9月発行)に記載の9%Ni鋼の値(20℃から-162℃までの平均値)を用いた。溶接金属3の線膨張係数Twには、表1に示すように、3ケースの異なる値を設定した。ケース1における溶接金属3の線膨張係数Twは、母材2A、2Bの線膨張係数Tbと等しいものとした。線膨張係数が9.2×10-6[1/℃]程度である材料は、例えば、9%Ni鋼(JIS G 3127 SL9N590)や7%Ni鋼(JIS G 3127 SL7N590)である。また、LNG地上式貯槽指針におけるオーステナイト系ステンレス鋼(例えば、JIS G 4304:2021に記載された、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L)の線膨張係数(20℃から-162℃までの平均値)は15×10-6[1/℃]である。したがって、ケース2における溶接金属3の線膨張係数Twは15×10-6[1/℃]とした。ケース3においては、溶接金属3の線膨張係数Twが顕著に大きい場合を仮定し、溶接金属3の線膨張係数Twは20×10-6[1/℃]とした。FEM解析モデルは、対称条件を用いた1/8モデルとし、メッシュ寸法は5mmとした。端部は自由端とし、モデル全体の温度を25℃から-196℃に冷却した際に生じる熱応力を解析した。
図2に各条件での-196℃時点での溶接線方向応力σxのコンター図を示し、図3に溶接線直角方向応力σyのコンター図を示す。溶接線方向は長さ方向に平行な方向であり、溶接線直角方向は幅方向に平行な方向である。図2、3に示すように、溶接金属の線膨張係数Twが最も小さいケース1で熱応力が最も小さく、溶接金属の線膨張係数Twが最も大きいケース3で熱応力が最も大きかった。また、溶接線方向応力σxは、溶接金属3の幅方向中央位置で最大値を示し、溶接線直角方向応力σyは、溶接金属3近傍の母材部で最大値を示した。この結果は-165℃でも同様の傾向になると考えられる。そこで、母材2A、2Bの線膨張係数Tbに対する溶接金属3の線膨張係数Twの比である線膨張係数比Tw/Tbと、-165℃時点の熱応力の最大値の関係を整理した。図4は、線膨張係数比Tw/Tbと、-165℃での溶接線方向応力σx及び溶接線直角方向応力σyと、の関係を示すグラフである。図4に示すように-165℃での熱応力(溶接線方向応力σx及び溶接線直角方向応力σy)と線膨張係数比Tw/Tbは、概ね比例関係にある。したがって、FEM解析により、低温液化ガスタンクの使用温度において、溶接金属の線膨張係数と前記母材の線膨張係数との差に起因して前記溶接継手に生じる熱応力を算出することができる。
溶接金属の線膨張係数及び母材の線膨張係数は以下の方法で測定する。まず、溶接金属及び母材のそれぞれから直径4mm、長さ15mmの試料を採取する。縦型熱膨張計(真空理工株式会社製TM-7000型)を用いて、基準温度を20℃として、20℃から-190℃まで5℃/minの速度で降温し、降温中の試料の熱膨張率を測定する。このときの雰囲気はHeガスを使用する。上記の方法で測定された温度と熱膨張率の関係から、20℃から設計温度(例えば-165℃)までの線膨張係数の平均値を求めることができる。溶接金属の線膨張係数の平均値及び母材の線膨張係数の平均値をそれぞれ溶接金属の線膨張係数及び母材の線膨張係数とする。このようにして得られた溶接金属と母材の線膨張係数の測定値を用いてFEM解析を実施し、熱応力を算出しても良い。
[必要CTOD値算出工程]
本工程では、溶接継手に欠陥を想定し、熱応力の影響を加味して、低温液化ガスタンクの運用中に低温液化ガスタンクが脆性破壊しないための必要CTOD値δ0を求める。以下に、低温液化ガスタンクが、船舶用LNGタンク独立型Type Cである場合、及び、地上式LNGタンクである場合を例に挙げて、必要CTOD値δ0の算出方法を説明する。
(船舶用LNGタンク独立型Type Cの溶接継手の必要CTOD値δ0
まず、図5~9を参照して、突合せ溶接部に生じる熱応力の影響を加味し、国際海事機関により定められたIGCコードに適合したType Cのタンクにおける突合せ溶接部(溶接継手)に要求される必要CTOD値δ0の計算例を説明する。上記Type Cのタンクは、船舶用LNGタンクであり、独立型のタンクである。図5は、Type Cのタンクにおける突合せ溶接部の想定欠陥位置を示す模式図である。
図5に示すように、溶接継手1Aは、母材2Cと母材2D、母材2Dと母材2E、母材2Eと母材2Cが突合せ溶接されている。母材2Cと母材2D、及び、母材2Cと母材2Eは、それぞれ、フラックスコアードアーク溶接又はサブマージアーク溶接により周溶接(Girth Weld)されて溶接金属3Aが形成されている。母材2Dと母材2Eは、フラックスコアードアーク溶接により、シーム溶接(Seam weld)されて溶接金属3Bが形成されている。
WES2805-2011に基づく必要CTOD値δ0の計算において、図5に示すように、欠陥4A又は欠陥4Bを想定する。欠陥4Aは、溶接金属3Aと溶接金属3Bとの接点近傍における、母材2Dと溶接金属3Bとのフュージョンラインに位置する欠陥である。欠陥4Bは、溶接金属3Aから離れた(周溶接の影響を無視できる)位置における、母材2Dと溶接金属3Bとのフュージョンラインに位置する欠陥である。欠陥4A及び欠陥4Bの形状は、図6に示すような、鋼板表面における長さ(長軸)が2cであり、深さ(短軸半径)がaの半楕円状の表面き裂とする。計算の前提は以下の通りである。欠陥4A、及び欠陥4Bの位置は、Type CのLNGタンクの使用において、比較的大きな熱応力が生じやすい位置である。
板厚t:25mm又は40mm
欠陥:長軸2c=1.5t、短軸半径a=0.5t、tは板厚である。
評価温度(-165℃)での母材の降伏応力σ:853MPa
ヤング率E:206GPa
ポアソン比ν:0.3
溶接施工誤差(角変形W+目違いH);
欠陥A(板厚25mmの場合及び40mmの場合):W+H=3mm
欠陥B(板厚25mmの場合):W+H=10mm
欠陥B(板厚40mmの場合):W+H=12mm
評価温度での母材の降伏応力σの値853MPaは、7%Ni鋼を想定して設定される値である。
角変形量Wは、溶接継手1Aの屈曲量であり、図7に示すように、水平方向単位長さ(1m)あたりの、母材2D、2Eの板厚方向中央位置の最も高い位置から溶接継手1Aにおけるき裂までの長さである。目違い量Hは、図7に示すように、溶接継手1Aにおける、母材2Dの板厚方向中央位置と母材2Eの板厚方向中央位置の高さ方向のずれの大きさである。
上記を前提に表面き裂の特性き裂寸法cを次式により計算する。特性き裂寸法cは、WES 2805:2011における亀裂特性寸法に対応する。
Figure 0007464899000005
特性き裂寸法cとは、各種き裂をK値(応力拡大係数)の等しい板厚貫通き裂に置き換えた場合のき裂の半長である。上記(1)式中、Fは形状補正係数であり、形状補正係数Fは以下の(2)式にて求められる。
Figure 0007464899000006
上記(2)式中、Fは、下記(3)~(6)式にて求められる。
Figure 0007464899000007
Figure 0007464899000008
Figure 0007464899000009
Figure 0007464899000010
また、上記(2)式中、Φは、下記(7)式にて求められる。
Figure 0007464899000011
次に評価ひずみεを求める。評価ひずみεは、境界力によるひずみε、溶接残留応力によるひずみε、及び、応力集中によるひずみεの和として、下記(8)式により求められる。
Figure 0007464899000012
境界力によるひずみεは次式により求められる。
Figure 0007464899000013
上記(9)式中、Eはヤング率、νはポアソン比、σは境界力による応力である。境界力による応力σは、7%Ni鋼の許容応力230MPaに上記のFEM解析で求めた熱応力を加えた値とする。欠陥4Aには、周溶接による溶接線方向の熱応力が作用するため、図4に示す溶接線方向応力σxを加える。欠陥4Bの場合は、シーム溶接による溶接線直角方向の熱応力が作用するため、図4に示す溶接線直角方向応力σyを加える。
溶接残留応力によるひずみεは、鋼板(母材)の降伏ひずみεY(=σY×(1-ν2)/E)と、係数αRとを用いて下記(10)式により求められる。
Figure 0007464899000014
上記(10)式中の係数αRは、き裂の種類、及び溶接線とき裂の方向との関係により与えられる値である。欠陥4Aでは係数αR=0.6であり、欠陥4Bでは係数αR=0.36である。これらの値は、WES 2805:2011の表9.1に記載された値である。
上記(8)式中のひずみ集中によるひずみε3は、平均的ひずみ集中係数Kεと、境界力による歪みε1とにより、下記(11)式で表され、平均的ひずみ集中係数Kεは、下記(12)~(15)式により求められる。
Figure 0007464899000015
Figure 0007464899000016
Figure 0007464899000017
Figure 0007464899000018
Figure 0007464899000019
上記(12)式中のKtは平均的弾性応力集中係数であり、σnetはき裂寸法を除いた実断面に対する応力である。本実施形態では、欠陥は部材寸法に比べ十分小さいと見做せるため、σnet=σ1とする。したがって、上記(15)式において、λ=1となる。
目違いと角変形を有する突合せ溶接継手の平均的弾性応力集中係数Ktは、下記(16)式により求めることができる。
Figure 0007464899000020
以上より求められた特性き裂寸法c及び評価ひずみεを用いて、必要CTOD値δ0は下記(17)式で表される。
Figure 0007464899000021
このようにして、溶接継手に欠陥を想定し、熱応力の影響を加味して、Type CのLNGタンクの運用中に低温液化ガスタンクが脆性破壊しないための必要CTOD値δ0が算出される。したがって、必要CTOD値δ0は、上記(17)式で算出されればよい。
図8、9に、上記(17)から算出された必要CTOD値δ0を示す。図8は、船舶用LNGタンク独立型TypeCにおいて板厚が25mmの場合の、欠陥位置ごとの線膨張係数比Tw/Tbと必要CTOD値δ0との関係を示すグラフである。図9は、船舶用LNGタンク独立型TypeCにおいて板厚が40mmの場合の、欠陥位置ごとの線膨張係数比Tw/Tbと必要CTOD値δ0との関係を示すグラフである。図8、9に示すように、欠陥4Aの方が欠陥4Bよりも必要CTOD値δ0が大きい。そのため、欠陥4Aの必要CTOD値δ0を満足する母材と溶接金属の組み合わせを選定することで、溶接部からの脆性破壊を防止することが可能となる。したがって、板厚が25mmの場合、図8における欠陥4Aについての近似式を用い、CTOD値δが下記(18)式を満足することで、溶接部からの脆性破壊を防止することが可能となる。また、板厚が40mmの場合、図9における欠陥4Aについての近似式を用い、CTOD値δが下記(19)式を満足することで、溶接部からの脆性破壊を防止することが可能となる。
Figure 0007464899000022
Figure 0007464899000023
(地上式LNGタンクの溶接継手の必要CTOD値δ0
次に、図10~14を参照して、地上式LNGタンクにおける突合せ溶接部(溶接継手)に要求される必要CTOD値δ0の計算例を説明する。図10は、地上式LNGタンクの一例を示す模式図である。図10に示すように、地上式LNGタンクは地上に配された円筒状のタンクであり、上方が覆われて構成されたタンクである。地上式LNGタンクの内槽材は、溶接継手1Bを有している。溶接継手1Bでは、母材2Fと母材2G、母材2Gと母材2H、母材2Hと母材2Gが突合せ溶接されている。母材2Fと母材2G、及び、母材2Fと母材2Hは、それぞれ、サブマージアーク溶接により周溶接されて溶接金属3Cが形成されている。母材2Gと母材2Hは、シールドメタルアーク溶接又はガスタングステンアーク溶接により、鉛直方向に溶接されて溶接金属3Dが形成されている。
WES2805-2011に基づく必要CTOD値δ0の計算において、図11に示すように、欠陥4C又は欠陥4Dを想定した。欠陥4Cは、溶接金属3Cと溶接金属3Dとの接点近傍における、母材2Gと溶接金属3Dとのフュージョンラインに位置する欠陥である。欠陥4Dは、母材2Gと溶接金属3Dとのフュージョンラインにおいて、溶接金属3Cから離れた(周溶接の影響を無視できる)位置に配された欠陥である。欠陥4C及び欠陥4Dの形状は、図12に示すような、鋼板表面における長さ(長軸)が2c(=1.5t)であり、深さ(短軸半径)がa(=0.25t)の半楕円状の表面き裂とする。計算の前提は以下の通りである。
板厚t:25mm又は50mm
欠陥:長軸2c=1.5t、短軸半径a=0.25t、tは板厚である。
評価温度(-165℃)での母材の降伏応力σ:853MPa
ヤング率E:206GPa
ポアソン比ν:0.3
溶接施工誤差(角変形W+目違いH);
欠陥4C(板厚25mmの場合及び50mmの場合):W=3mm、H=0mm
欠陥4D(板厚25mmの場合):W=10mm、H=0mm
欠陥4D(板厚50mmの場合):W=12mm、H=0mm
評価温度での母材の降伏応力σの値853MPaは、7%Ni鋼を想定して設定される値である。
特性き裂寸法cは上記(1)~(7)式により算定される。評価ひずみεは上記(8)式により算定される。上記(8)式中、境界力によるひずみε1は上記(9)式により算定される。境界力による応力σは、非特許文献1を参考に、レベル2地震動に対する評価部の引張応力σt=352.5MPa、曲げ応力σb=51MPaを用いて下記(20)~(23)式により算定される。下記(20)式中、Hは1とした。下記(21)~(23)式中、aは欠陥の深さであり、tは板厚であり、cは板表面における欠陥の半長である。
Figure 0007464899000024
Figure 0007464899000025
Figure 0007464899000026
Figure 0007464899000027
(8)式中の溶接残留応力によるひずみεは、下記(24)式により求められる。
Figure 0007464899000028
上記(24)式中、σRは残留応力であり、欠陥4CではσR=280MPaとし、欠陥4DではσR=168MPaとする。
上記(8)式中の応力集中によるひずみε3は、上記(11)~(16)式により求められる。そして、上記(17)式より、LNGタンクにおける溶接継手1Bの必要CTOD値δ0が求められる。
このようにして、溶接継手に欠陥を想定し、熱応力の影響を加味して、地上式LNGタンクの運用中に低温液化ガスタンクが脆性破壊しないための必要CTOD値δ0が算出される。
図13、14に、上記(17)から算出された必要CTOD値δ0を示す。図13は、地上式LNGタンクにおいて板厚が25mmの場合の、欠陥位置ごとの線膨張係数比Tw/Tbと必要CTOD値δ0との関係を示すグラフである。図14は、地上式LNGタンクにおいて板厚が50mmの場合の、欠陥位置ごとの線膨張係数比Tw/Tbと必要CTOD値δ0との関係を示すグラフである。図13、14に示すように、欠陥4Cの方が欠陥4Dよりも必要CTOD値δ0が大きいため、欠陥4Dの必要CTOD値δ0を満足する母材と溶接金属の組み合わせを選定することで、溶接部からの脆性破壊を防止することが可能となる。したがって、板厚が25mmの場合、図13における欠陥4Dについての近似式を用い、CTOD値δが下記(25)式を満足することで、溶接部からの脆性破壊を防止することが可能となる。また、板厚が50mmの場合、図14における欠陥4Dについての近似式を用い、CTOD値δが下記(26)式を満足することで、溶接部からの脆性破壊を防止することが可能となる。
Figure 0007464899000029
Figure 0007464899000030
[CTOD値測定工程]
本工程では、低温液化ガスタンクの使用温度における溶接継手の熱影響部のCTOD値を測定する。CTOD試験は、ISO15653-2018に準拠して行う。具体的には、試験片の板厚がタンクの板厚t、試験片の幅がt~2tの3点曲げ試験片を使用することができる。切欠きをフュージョンライン及びフュージョンラインから母材側に1、3、5mmの位置に導入した試験片をそれぞれ3本ずつ準備する。試験片を低温液化ガスタンクの使用温度に冷却し、CTOD試験を実施する。測定された12個のCTOD値のうちの最小値を溶接継手の熱影響部のCTOD値とする。
[溶接工程]
本工程では、熱影響部のCTOD値δが必要CTOD値δ0以上であることが確認された厚鋼板を母材として使用して、母材を溶接する。例えば、CTOD値δが上記(18)式、(19)式、(25)式、又は(26)式を満足する厚鋼板を母材として使用する。
溶接材料は、上述した線膨張係数を考慮して選択される。例えば、線膨張係数比Tw/Tbが1超、2.2未満となるように溶接材料が選択される。溶接材料は、例えば、Ni基合金や、鋼等である。溶接材料は、好ましくは、質量%で、Mn:5.0~20.0%、Ni:5.0~30.0%、並びに、残部:Fe、任意元素、及び不純物を含有する。Mn:5.0~15.0%、Ni:5.0~20.0%、並びに、残部:Fe、任意元素、及び不純物を含有する溶接材料であれば、製造コストをより一層低減することができる。
溶接方法は特段制限されず、低温液化ガスタンクの内槽に使用される溶接継手の溶接方法が適宜採用されればよい。例えば、フラックス入りワイヤを用いたガスシールドアーク溶接、ソリッドワイヤ及びフラックスを用いたサブマージアーク溶接が採用される。この他、被覆アーク溶接、簡易エレクトロガスアーク溶接、エレクトロスラグ溶接、TIG溶接、ソリッドワイヤを用いたガスシールド溶接が採用される場合がある。
フラックス入りワイヤは、鋼帯をU型に成形したオープン管の内部に、開口部を通じてフラックスを供給した後、開口部を突合せ溶接し、伸線して製造される。伸線の途中に熱処理が施される場合がある。ソリッドワイヤは、溶解後、鍛造、圧延によって棒状に加工された鋼を伸線して製造される。
ここまで、本実施形態に係る溶接継手の製造方法を説明した。本実施形態によれば、熱影響部のCTOD値δが低温液化ガスタンクの運用中に低温液化ガスタンクが脆性破壊しないための必要CTOD値δ0以上である母材を使用するため、脆性破壊を防止することができる。また、母材の線膨張係数よりも大きい線膨張係数を有する溶接金属は、母材の線膨張係数よりも小さい線膨張係数を有する溶接金属よりも、高価な元素の含有量が少ない。そのため、溶接継手をより低コストで製造することができる。
<溶接継手>
本発明の一実施形態に係る溶接継手は、母材と溶接金属とを備え、溶接金属の線膨張係数が母材の線膨張係数よりも大きく、低温液化ガスタンクの内槽に使用される溶接継手であって、低温液化ガスタンクの使用温度におけるCTOD値が、溶接金属の線膨張係数と母材の線膨張係数との差に起因して生じる熱応力の影響を加味した必要CTOD値以上である。
[母材]
母材には、低温液化ガスタンクの使用温度におけるCTOD値が、溶接金属の線膨張係数と母材の線膨張係数との差に起因して生じる熱応力の影響を加味した必要CTOD値以上となる材料が使用される。母材がMnを0.1~5.0質量%、Niを6.0~16.0質量%含有することで、極低温での強度をより一層高めることができる。したがって、母材は、Mnを0.1~5.0質量%、Niを6.0~16.0質量%含有することが好ましい。母材のMn含有量は、より好ましくは0.3質量%以上、0.4質量%以上、又は、0.5質量%以上である。また、母材のMn含有量は、より好ましくは3.0質量%以下、2.0質量%以下、又は、1.5質量%以下である。母材のNi含有量は、より好ましくは7質量%以上である。また、母材のNi含有量は、より好ましくは10質量%以下である。母材の化学成分の残部は、Fe、任意元素、及び不純物である。
任意元素としては、C、Si、Cu、Cr、Mo、W、Co、B、Nb、V、Ti、Zr、N、Al、Ca、REM、Mg、Sn、Te、Se等が挙げられる。C、Si、Cu、Cr、Mo、W、Co、B、Nb、V、Ti、Zr、Nは強度を高める元素である。Al、Ca、REM、Mgは脱酸や介在物の形態制御に使用される元素である。Sn、Te、Seは耐食性を高める元素である。各含有量については、例えば、質量%で、C:0.08%以下、Si:0.5%以下、Cu:1%以下、Cr:1%以下、Mo:1%以下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Co:1%以下、Sn:、W:、Mg:、Al:0.1%以下、Ca:0.01%以下、Ti:0.1%以下、B:0.01%以下、REM:0.01%以下、Zr:0.01%以下、N:0.01%以下、Te:0.1%以下、Se:0.1%以下であればよい。任意元素は、含まれなくてもよいため、各含有量の下限値は0%である。
不純物としては、P、S、O、その他、スクラップ等から混入する可能性があるSb、As、Zn等が挙げられる。Pの含有量は0.05質量%以下、その他の不純物の各含有量は、0.01質量%以下であればよい。
母材の製造には、例えば、鋼の溶製及び連続鋳造によって製造された鋼片が使用される。母材は、例えば、鋼片に熱間圧延及び熱処理が施されて製造される。熱間圧延後、水冷などの加速冷却が行われる場合がある。
母材の厚さは、例えば、6~50mmである。船舶用のタンクの場合は、25mm以下、又は、25mm超、40mm以下であってよい。地上式のタンクの場合は、25mm以下、又は、25mm超、50mm以下であってよい。板厚はタンクのサイズや部位によって異なり、一般的に大型タンクの場合は25mm超、50mm以下の厚手材が主に使用され、小型タンクの場合は25mm以下の薄手材が主に使用される。したがって、母材の厚さは、50mm以下、40mm以下、又は25mm以下であってよい。また、母材の厚さは、6mm以上、10mm以上、15mm以上、又は25mm超であってよい。
[溶接金属]
溶接金属は、好ましくは、質量%で、Mn:5.0~20.0%、Ni:5.0~30.0%、並びに、残部:Fe、任意元素、及び不純物を含有する。Mn:5.0~20.0%、Ni:5.0~30.0%を含有する溶接材料であれば、製造コストをより一層低減することができる。溶接金属は、より好ましくは、Mn:5.0~15.0%、及び、Ni:5.0~20.0%を含有する。
任意元素としては、C、Mo、W、Nb、V、Co、Cu、Cr、B、N、Pb、Sn、Si、Al、Ti、Mg、Ca、REM、Zr等が挙げられる。C、Mo、W、Nb、V、Coは強度を高める元素である。Cu、Cr、B、Nはオーステナイトの安定性を高める元素である。Pbは切削性を高める元素である。Snは耐食性を高める元素である。Si、Al、Ti、Mg、Caは脱酸や介在物の形態制御に使用される元素である。REM、Zrは溶接作業性を高める元素である。各含有量については、例えば、質量%で、C:1%以下、Mo:22%以下、W:20%以下、Nb:3%以下、V:1%以下、Co:1%以下、Cu:5%以下、Cr:20%以下、B:0.5%以下、N:0.5%以下、Pb:1%以下、Sn:1%以下、Si:0.75%以下、Al:0.1%以下、Ti:0.1%以下、Mg:5%以下、Ca:5%以下、REM:0.5%以下、Zr:0.5%以下であればよい。任意元素は、含まれなくてもよいため、各含有量の下限値は0%である。
不純物としては、P、S、O等が挙げられる。各含有量は、P:0.05質量%以下、S:0.05質量%以下、O:0.15質量%以下であればよい。
本実施形態に係る溶接継手において、線膨張係数比Tw/Tbは、1超、2.2未満であることが好ましい。線膨張係数比Tw/Tbが1に近い程、生じる熱応力は小さくなるが、この場合の溶接継手は、Niを多量に含有する。Ni含有量を低減し、溶接継手の製造コストを低減するために、線膨張係数比Tw/Tbは1.2以上であることがより好ましく、1.3以上であることがさらに好ましい。一方、線膨張係数比Tw/Tbが大きすぎると、熱応力が大きくなり、必要CTOD値δ0が増大するため、熱影響部の靭性を確保するために母材にNiを多量に添加する等が必要となり、結果として溶接継手の製造コストが増加する。また、線膨張係数比Tw/Tbが2.2未満であれば、溶接部からの脆性破壊を十分に抑制することができる。そのため、線膨張係数比Tw/Tbは、好ましくは2.2未満であり、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.6以下である。母材が9%Ni鋼(線膨張係数は9.2×10-6)であり、溶接材料が13Mn%-13Ni%(線膨張係数は12.5×10-6)である場合、線膨張係数比Tw/Tbは1.4となる。
本実施形態に係る溶接継手は、上述した溶接継手の製造方法により製造することができる。
ここまで、本実施形態に係る溶接継手を説明した。本実施形態によれば、溶接継手の母材において、熱影響部のCTOD値δが、低温液化ガスタンクの運用中に低温液化ガスタンクが脆性破壊しないための必要CTOD値δ0以上であるため、脆性破壊を防止することができる。例えば、低温液化ガスタンクの使用温度におけるCTOD値は、上記(17)式で計算される必要CTOD値δ0以上であればよい。また、母材の線膨張係数よりも大きい線膨張係数を有する溶接金属は、母材の線膨張係数よりも小さい線膨張係数を有する溶接金属よりも、高価な元素の含有量が少ない。そのため、本実施形態に係る溶接継手は、従来のNi基溶接材料が使用された溶接継手よりも安価である。
<低温液化ガスタンクの設計方法>
上述した、溶接継手の設計方法は、低温液化ガスタンクの設計に適用することができる。したがって、本発明の一実施形態として、低温液化ガスタンクの設計方法があり、当該低温液化ガスタンクの設計方法は、母材と溶接金属とで構成される突合せ溶接部を内槽に有する低温液化ガスタンクの設計方法であって、低温液化ガスタンクの使用温度において、溶接金属の線膨張係数と母材の線膨張係数との差に起因して突合せ溶接部に生じる熱応力を求める熱応力算出工程と、突合せ溶接部に欠陥を想定し、熱応力の影響を加味して、低温液化ガスタンクの運用中に低温液化ガスタンクが脆性破壊しないための必要CTOD値を求める必要CTOD値算出工程と、熱影響部のCTOD値が必要CTOD値以上となるように母材を選択する母材選択工程と、を含む。
<低温液化ガスタンク>
上述した、溶接継手は、低温液化ガスタンクの内槽に適用することができる。したがって、本発明の一実施形態として、低温液化ガスタンクがあり、当該低温液化ガスタンクは、母材と溶接金属とで構成される突合せ溶接部を内槽に有する低温液化ガスタンクであって、低温液化ガスタンクの使用温度における突合せ溶接部のCTOD値が、溶接金属の線膨張係数と母材の線膨張係数との差に起因して突合せ溶接部に生じる熱応力の影響を加味した必要CTOD値以上である。本実施形態に係る低温液化ガスタンクは、LNGタンクであってもよい。
低温液化ガスタンクが船舶用のLNGタンクであり、内槽材の板厚が25mm以下である場合、当該内槽材の突合せ溶接部の-165℃におけるCTOD値δが上記(18)式、及び下記(27)式を満足することが好ましい。
Figure 0007464899000031
低温液化ガスタンクが船舶用のLNGタンクであり、内槽材の板厚が25mm超40mm以下である場合、当該内槽材の突合せ溶接部の-165℃におけるCTOD値δが上記(19)式、及び上記(27)式を満足することが好ましい。
低温液化ガスタンクが地上式のLNGタンクであり、内槽材の板厚が25mm以下である場合、当該内槽材の突合せ溶接部の-165℃におけるCTOD値δが上記(25)式、及び上記(27)式を満足することが好ましい。
低温液化ガスタンクが地上式のLNGタンクであり、内槽材の板厚が25mm超50mm以下である場合、当該内槽材の突合せ溶接部の-165℃におけるCTOD値δが上記(26)式、及び上記(27)式を満足することが好ましい。
以上、本発明の一実施形態に基づき、本発明を説明したが、本発明はこれに限定されない。上記はあくまでも例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
例えば、低温液化ガスタンクは、LNGタンクに限られず、LNG以外の低温液化ガスを貯蔵するガスタンクであってよい。低温液化ガスタンクは、例えば、液化水素を貯蔵する液化水素貯蔵タンクであってもよい。低温液化ガスタンクが液化水素貯蔵タンクである場合であっても、上述したとおり、突合せ溶接部の一部又は全部の使用温度における単位mmでのCTOD値δが、溶接金属の線膨張係数母材の線膨張係数との差に起因して突合せ溶接部に生じる熱応力の影響を加味した必要CTOD値δ0以上であればよい。例えば、低温液化ガスタンクの使用温度におけるCTOD値が、上記(17)式で計算される必要CTOD値δ0以上であればよい。これにより、液化水素貯蔵タンクにおいても、低コストであり、線膨張係数の大きい溶接材料を使用した場合であっても、溶接部からの脆性破壊を抑制することができる。
また、例えば、上述した溶接継手の製造方法における熱応力算出工程では、FEM解析により、低温液化ガスタンクの使用温度において、溶接金属の線膨張係数と母材の線膨張係数との差に起因して溶接継手に生じる熱応力を算出した。しかしながら、当該熱応力の算出は、FEM解析以外の方法で行われてもよい。
また、母材の線膨張係数及び溶接金属の線膨張係数は、それぞれの化学成分によって決まる値であり、公知の文献に記載された線膨張係数の値を採用してもよく、実験によって測定してもよい。
また、上述した溶接継手の製造方法における必要CTOD値算出工程で想定する欠陥の位置は、FEMによる熱応力解析等で、比較的大きな熱応力が生じる位置を予め解析し、その結果を基に定められればよい。
船舶用LNGタンク独立型Type Cにおける溶接継手の母材が7%Ni鋼(線膨張係数Tbは9.2×10-6[1/℃])であり、溶接材料が13Mn%-13Ni%(線膨張係数Twは12.5×10-6[1/℃])である場合を想定した。この場合の線膨張係数比Tw/Tbは1.4となった。図5に示すように、欠陥4A又は欠陥4Bを想定した。欠陥4A及び欠陥4Bの形状は、図6に示すような、鋼板表面における長さ(長軸)が2cであり、深さ(短軸半径)がaの半楕円状の表面き裂とした。以下の条件を想定し、線膨張係数を考慮した場合(本発明例)と線膨張係数を考慮しない場合(従来技術)にて必要CTOD値を求めた。
板厚t:40mm
欠陥:長軸2c=1.5t、短軸半径a=0.5t、tは板厚である。
評価温度(-165℃)での母材の降伏応力σ:853MPa
ヤング率E:206GPa
ポアソン比ν:0.3
溶接施工誤差(角変形W+目違いH);
欠陥A:W+H=3mm
欠陥B:W+H=12mm
作用応力:230MPa
必要CTOD値の計算結果を表2に示す。線膨張係数を考慮した本発明例による必要CTOD値は、線膨張係数を考慮しない従来技術による必要CTOD値に比べ33~41%高い値となった。すなわちNi含有量が低く線膨張係数が大きい溶接材料を使用すると、母材との線膨張係数差の影響により熱応力が発生するが、従来技術はその熱応力を考慮していないため、必要CTOD値を過少評価することがわかった。
Figure 0007464899000032
1、1A、1B 溶接継手
2A、2B、2C、2D、2E、2F、2G、2H 母材
3、3A、3B、3C、3D 溶接金属
4A、4B、4C、4D 欠陥

Claims (14)

  1. 低温液化ガスタンクの内槽に使用され、溶接金属の線膨張係数が母材の線膨張係数よりも大きい溶接継手の製造方法であって、
    前記低温液化ガスタンクの使用温度において、前記溶接金属の線膨張係数と前記母材の線膨張係数との差に起因して前記溶接継手に生じる熱応力を求める熱応力算出工程と、
    前記溶接継手に欠陥を想定し、前記熱応力の影響を加味して、前記低温液化ガスタンクの運用中に前記低温液化ガスタンクが脆性破壊しないための必要CTOD値を求める必要CTOD値算出工程と、
    前記低温液化ガスタンクの使用温度における前記溶接継手の熱影響部のCTOD値を測定するCTOD値測定工程と、
    前記熱影響部の前記CTOD値が前記必要CTOD値以上であることが確認された厚鋼板を前記母材として使用して、前記母材を溶接する溶接工程と、を含む、溶接継手の製造方法。
  2. 母材と溶接金属とを備え、前記溶接金属の線膨張係数が前記母材の線膨張係数よりも大きく、低温液化ガスタンクの内槽に使用される溶接継手であって、
    前記低温液化ガスタンクの使用温度におけるCTOD値が、前記溶接金属の線膨張係数と前記母材の線膨張係数との差に起因して生じる熱応力の影響を加味した必要CTOD値以上である、溶接継手。
  3. 前記低温液化ガスタンクの使用温度におけるCTOD値が、下記(1)式で計算される必要CTOD値δ0以上である、請求項2に記載の溶接継手。
    Figure 0007464899000033
    前記(1)式中、
    :特性き裂寸法
    εY:母材の降伏ひずみ
    ε:評価ひずみ
    である。
  4. 母材と溶接金属とで構成される突合せ溶接部を内槽に有する低温液化ガスタンクの設計方法であって、
    前記低温液化ガスタンクの使用温度において、前記溶接金属の線膨張係数と前記母材の線膨張係数との差に起因して前記突合せ溶接部に生じる熱応力を求める熱応力算出工程と、
    前記突合せ溶接部に欠陥を想定し、前記熱応力の影響を加味して、前記低温液化ガスタンクの運用中に前記低温液化ガスタンクが脆性破壊しないための必要CTOD値を求める必要CTOD値算出工程と、
    熱影響部のCTOD値が前記必要CTOD値以上となるように前記母材を選択する母材選択工程と、を含む、低温液化ガスタンクの設計方法。
  5. 母材と溶接金属とで構成される突合せ溶接部を内槽に有する低温液化ガスタンクであって、
    前記低温液化ガスタンクの使用温度における前記突合せ溶接部のCTOD値が、前記溶接金属の線膨張係数と前記母材の線膨張係数との差に起因して前記突合せ溶接部に生じる熱応力の影響を加味した、下記(2)式で計算される必要CTOD値δ 0 以上である、低温液化ガスタンク。
    Figure 0007464899000034
    前記(2)式中、
    :特性き裂寸法
    ε Y :母材の降伏ひずみ
    ε:評価ひずみ
    である。
  6. 前記低温液化ガスタンクが、LNGタンクである、請求項に記載の低温液化ガスタンク。
  7. 前記母材が、質量%で、Mn:0.1~5.0%、及び、Ni:6.0~16.0%を含有する、請求項5に記載の低温液化ガスタンク。
  8. 母材と溶接金属とで構成される突合せ溶接部を内槽に有する低温液化ガスタンクであって、
    前記低温液化ガスタンクの使用温度における前記突合せ溶接部のCTOD値が、前記溶接金属の線膨張係数と前記母材の線膨張係数との差に起因して前記突合せ溶接部に生じる熱応力の影響を加味した必要CTOD値以上であり、
    前記低温液化ガスタンクは船舶用のLNGタンクであり、
    板厚が25mm以下の内槽材の前記突合せ溶接部の-165℃におけるCTOD値δが下記(3)式、及び(4)式を満足する、低温液化ガスタンク。
    δ≧0.001×(Tw/Tb)2+0.057×(Tw/Tb)+0.0035 …(3)式
    1<Tw/Tb<2.2 …(4)式
    ただし、前記(3)式及び前記(4)式中、Twは前記溶接金属の線膨張係数[1/℃]であり、Tbは前記母材の線膨張係数[1/℃]である。
  9. 母材と溶接金属とで構成される突合せ溶接部を内槽に有する低温液化ガスタンクであって、
    前記低温液化ガスタンクの使用温度における前記突合せ溶接部のCTOD値が、前記溶接金属の線膨張係数と前記母材の線膨張係数との差に起因して前記突合せ溶接部に生じる熱応力の影響を加味した必要CTOD値以上であり、
    前記低温液化ガスタンクは船舶用のLNGタンクであり、
    板厚25mm超40mm以下の内槽材の前記突合せ溶接部の-165℃におけるCTOD値δが下記(5)式、及び下記(6)式を満足する、低温液化ガスタンク。
    δ≧0.0038×(Tw/Tb)2+0.074×(Tw/Tb)+0.003 …(5)式
    1<Tw/Tb<2.2 …(6)式
    ただし、前記(5)式及び前記(6)式中、Twは前記溶接金属の線膨張係数[1/℃]であり、Tbは前記母材の線膨張係数[1/℃]である。
  10. 母材と溶接金属とで構成される突合せ溶接部を内槽に有する低温液化ガスタンクであって、
    前記低温液化ガスタンクの使用温度における前記突合せ溶接部のCTOD値が、前記溶接金属の線膨張係数と前記母材の線膨張係数との差に起因して前記突合せ溶接部に生じる熱応力の影響を加味した必要CTOD値以上であり、
    前記低温液化ガスタンクは地上式のLNGタンクであり、
    板厚25mm以下の内槽材の前記突合せ溶接部の-165℃におけるCTOD値δが下記(7)式、及び(8)式を満足する、低温液化ガスタンク。
    δ≧0.0153×(Tw/Tb)2+0.0274×(Tw/Tb)+0.0135 …(7)式
    1<Tw/Tb<2.2 …(8)式
    ただし、前記(7)式及び前記(8)式中、Twは前記溶接金属の線膨張係数[1/℃]であり、Tbは前記母材の線膨張係数[1/℃]である。
  11. 母材と溶接金属とで構成される突合せ溶接部を内槽に有する低温液化ガスタンクであって、
    前記低温液化ガスタンクの使用温度における前記突合せ溶接部のCTOD値が、前記溶接金属の線膨張係数と前記母材の線膨張係数との差に起因して前記突合せ溶接部に生じる熱応力の影響を加味した必要CTOD値以上であり、
    前記低温液化ガスタンクは地上式のLNGタンクであり、
    板厚25mm超50mm以下の内槽材の前記突合せ溶接部の-165℃におけるCTOD値δが下記(9)式、及び(10)式を満足する、低温液化ガスタンク。
    δ≧0.03×(Tw/Tb)2-0.024×(Tw/Tb)+0.0694 …(9)式
    1<Tw/Tb<2.2 …(10)式
    ただし、前記(9)式及び前記(10)式中、Twは前記溶接金属の線膨張係数[1/℃]であり、Tbは前記母材の線膨張係数[1/℃]である。
  12. 母材と溶接金属とで構成される突合せ溶接部を内槽に有する低温液化ガスタンクであって、
    前記低温液化ガスタンクの使用温度における前記突合せ溶接部のCTOD値が、前記溶接金属の線膨張係数と前記母材の線膨張係数との差に起因して前記突合せ溶接部に生じる熱応力の影響を加味した必要CTOD値以上であり、
    前記溶接金属が、質量%で、Mn:5.0~20.0%、及び、Ni:5.0~30.0%を含有する、低温液化ガスタンク。
  13. 母材と溶接金属とで構成される突合せ溶接部を内槽に有する低温液化ガスタンクであって、
    前記低温液化ガスタンクの使用温度における前記突合せ溶接部のCTOD値が、前記溶接金属の線膨張係数と前記母材の線膨張係数との差に起因して前記突合せ溶接部に生じる熱応力の影響を加味した必要CTOD値以上であり、
    前記母材が、質量%で、Mn:0.1~5.0%、及び、Ni:6.0~16.0%を含有し、
    前記溶接金属が、質量%で、Mn:5.0~20.0%、及び、Ni:5.0~30.0%を含有する、低温液化ガスタンク。
  14. 前記低温液化ガスタンクの使用温度における前記突合せ溶接部のCTOD値が、下記(11)式で計算される必要CTOD値δ 0 以上である、請求項8~13のいずれか一項に記載の低温液化ガスタンク。
    Figure 0007464899000035
    前記(11)式中、
    :特性き裂寸法
    ε Y :母材の降伏ひずみ
    ε:評価ひずみ
    である。
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