JP7464782B1 - 積層シートとその製造方法、印刷物、及び成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】インクジェット印刷用及び/又はレーザー切削加工用等として好適で、持続可能性に優れた積層シートを提供する。【解決手段】本開示の積層シート(16X)は、基材層(21)と、基材層(21)の少なくとも片面上に積層された表面層(31)とを有し、基材層(21)は、メタクリル酸メチル単位を80~100質量%含むメタクリル系樹脂(M)を含み、表面層(31)は、溶離液としてn-ヘキサン及びクロロホルムの二液を用いてグラジエント高速液体クロマトグラフィー分析を実施したとき、溶出時間が9分以下である組成の共重合体の比率が0~5質量%であり、溶出時間が23分以上である組成の共重合体の比率が0~5質量%であり、クロマトグラムの最大ピークのピークトップの溶出時間が9~23分であるアクリロニトリル-スチレン系共重合体(AS-E)を含む。【選択図】図1

Description

本開示は、積層シートとその製造方法、印刷物、及び成形品に関する。
デジタル画像をコンピュータ処理して印刷媒体に記録することができるインクジェット印刷は、印刷可能な媒体の種類も増え、利用範囲が拡がっている。例えば、印刷、広告、サイン・ディスプレイ、イベント、アミューズメント、建築、及びインテリア等の種々の分野に広く利用されるようになっている。紙以外の印刷媒体として、樹脂シートが挙げられる。樹脂シートは、紙と異なり耐水性及び耐久性に優れ、透明化も可能である。
インクジェット印刷用樹脂シートは、インクジェット印刷を施した後、必要に応じてレーザー及びNCルーター等を用いて切削加工して、所望の形状に成形できる。このようにして得られる成形品は、キーホルダー等の雑貨及び什器等に好ましく用いることができる。なお、レーザーを用いた樹脂シートの切削方法は例えば、特許文献1の請求項1に開示されている。
特開2016-055348号公報 特開2018-094843号公報 特開2021-160119号公報
キーホルダー等の雑貨及び什器等の用途において、インクジェット印刷用樹脂シートの基材樹脂としては、透明性及びインク発色性等の観点から、メタクリル系樹脂が好ましく用いられる。インクジェット印刷用インクとしては、紫外線(UV)硬化性インク等が好ましく用いられる。インクジェット印刷用インクの密着性が良好な樹脂としては、スチレン系共重合体が挙げられる。
特許文献2、3には、メタクリル系樹脂を含む基材層と、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体(MS樹脂)等のスチレン系共重合体を含む表面層とを有し、インクジェット印刷用等として好適な積層シートが開示されている(特許文献2の請求項1、特許文献3の請求項1)。
一般的に、(共)押出成形シート及びそれを用いた成形品の製造においては、押出成形の製造ラインの立ち上げ時に生じる不良品、シートの両端部のトリミング処理によって発生する端材、欠点及び異物等の品質検査で製品規格を満たさないと判断された不良品、及びシートの切削加工によって生じる端材が存在する。近年、持続可能(サスティナブル)な社会に向けた取組みが進められており、上記の不良品及び端材は、リワーク材として、廃棄せずに再利用して有効活用することが好ましい。
しかしながら、一般的に、MS樹脂等のスチレン系共重合体は、メタクリル系樹脂との相溶性が良くなく、これらの樹脂の間に屈折率差があるため、基材層材料として上記リワーク材を用いた積層シートは、透明性が低下して白濁する恐れがある。実際、特許文献3には、「白濁発生を抑え、透明性を維持するために、基材層中のスチレン含有量は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.85質量%以下である。」ことが記載されており(段落0171)、基材層中に含有可能なスチレン量は非常に少ない。また、この文献は、メタクリル系樹脂とMS樹脂等のスチレン系共重合体とを含む過去に製造された積層シートをリワーク材として用いた実施例を開示していない。基材層材料として、より多くのリワーク材を使用できることが好ましい。
本開示は上記課題に鑑みてなされたものであり、インクジェット印刷用及び/又はレーザー切削加工用等として好適で、持続可能性に優れた積層シートを提供することを目的とする。
本開示は、以下の[1]~[13]の積層シートとその製造方法、印刷物、及び成形品を提供する。
[1] 基材層と、当該基材層の少なくとも片面上に積層された表面層とを有する積層シートであって、
前記基材層は、メタクリル酸メチル単位を80~100質量%含むメタクリル系樹脂(M)を含み、
前記表面層は、溶離液としてn-ヘキサン及びクロロホルムの二液を用いて、下記条件にてグラジエント高速液体クロマトグラフィー分析を実施したとき、溶出時間が9分以下である組成の共重合体の比率が0~5質量%であり、溶出時間が23分以上である組成の共重合体の比率が0~5質量%であり、クロマトグラムの最大ピークのピークトップの溶出時間が9~23分であるアクリロニトリル-スチレン共重合体(AS-E)を含む、積層シート。
<グラジエント高速液体クロマトグラフィー分析の条件>
カラムとして、粒径5μmの球状全多孔性シリカゲルが充填された、内径4.6mmφ、長さ25cmのシリカゲルカラムを用いる。カラム温度を40℃に設定する。溶媒としてクロロホルムを用いて、0.5mg/mLの濃度の試料溶液を調製する。
分析開始時点からの時間をT(分)としたときの、移動相のグラジエントプロファイルは、以下の通りとする。
T=0からT=5の間の前記移動相は、n-ヘキサン/クロロホルム混合溶液(50vol%/50vol%)とする。
T=5からT=20の間は、前記移動相中のクロロホルム濃度を一定速度で50vol%から100vol%まで増加させる。
T=20からT=25の間の前記移動相は、100vol%のクロロホルムとする。
前記移動相の流量は、0.8mL/minとする。
検出器として、検出波長260nmの吸光度検出器を用いる。
[2] アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS-E)の前記クロマトグラムの最大ピークは、ピークトップの溶出時間が15~22分であり、JIS K0124に準拠して測定される5%高さ位置におけるピーク幅(W0.05h)が1~5分であり、JIS K0124に準拠して測定されるシンメトリー係数(S)が1.2~3.4である、[1]の積層シート。
[3] 前記積層シート全体における平均スチレン系単量体単位濃度が0.1~20質量%である、[1]又は[2]の積層シート。
[4] 前記基材層が、メタクリル系樹脂(M)とアクリロニトリル-スチレン共重合体(AS-E)とを含むメタクリル系樹脂組成物(MR)からなる、[1]~[3]のいずれかの積層シート。
[5] 前記基材層の構成樹脂中のスチレン系単量体単位の含有量が0~10.0質量%である、[1]~[4]のいずれかの積層シート。
[6] 前記基材層の構成樹脂中のスチレン系単量体単位の含有量が1.2~10.0質量%である、[5]の積層シート。
[7] 前記基材層の全原料のうちの少なくとも一部が、過去に製造された前記積層シートの粉砕物又は当該粉砕物の加工物からなる再生樹脂組成物(R)である、[4]の積層シート。
[8] 前記積層シートの総厚みが1~10mmである、[1]~[7]のいずれかの積層シート。
[9] インクジェット印刷用及び/又はレーザー切削加工用である、[1]~[8]のいずれかの積層シート。
[10] 共押出成形シートである、[1]~[9]のいずれかの積層シート。
[11] [1]~[10]のいずれかの積層シートの前記表面層に対してインクジェット印刷が施された、印刷物。
[12] [1]~[10]のいずれかの積層シートに対してインクジェット印刷及びレーザー切削加工が施された、成形品。
[13] 前記基材層の全原料のうちの少なくとも一部として、過去に製造された前記積層シートの粉砕物又は当該粉砕物の加工物からなる再生樹脂組成物(R)を用いて、前記積層シートを共押出成形する、[4]の積層シートの製造方法。
本開示によれば、インクジェット印刷用及び/又はレーザー切削加工用等として好適で、持続可能性に優れた積層シートを提供することができる。
本発明に係る第1実施形態の積層シートの模式断面図である。 本発明に係る第2実施形態の積層シートの模式断面図である。 [実施例]の項で用いたアクリロニトリル-スチレン系共重合体(AS)のグラジエント高速液体クロマトグラフィー(グラジエントHPLC)分析で得られたクロマトグラムである。
[積層シート]
本開示の積層シートは、基材層と、この基材層の少なくとも片面上に積層された表面層とを有する。基材層は、メタクリル酸メチル(MMA)単位を80~100質量%含むメタクリル系樹脂(M)を含み、表面層は、スチレン系共重合体(S)を含む。本開示の積層シートは、インクジェット印刷用及び/又はレーザー切削加工用等として好適である。
本開示の積層シートの積層構造として、図1に示す第1実施形態の基材層の片面上に表面層を有する2層構造が挙げられる。図中、符号16Xは積層シート、符号21は基材層、符号31は表面層である。本開示の積層シートは必要に応じて、基材層及び表面層以外の他の任意の層を含むことができる。ただし、表面層31の基材層と反対側の表面31Sは、その上に他の層を有さず、露出面である。この露出面は、印刷が施される印刷面であることができる。
本開示の積層シートの積層構造として、図2に示す第2実施形態の基材層の両面上に表面層を有する3層構造が挙げられる。図中、符号16Yは積層シート、符号21は基材層、符合32は第1の表面層、符合33は第2の表面層である。本開示の第2の積層シートは必要に応じて、基材層及び表面層以外の他の任意の層を含むことができる。ただし、第1の表面層32の基材層と反対側の表面32S、及び/又は、第2の表面層33の基材層と反対側の表面33Sは、その上に他の層を有さず、露出面である。この露出面は、印刷が施される印刷面であることができる。3層構造の積層シートにおいて、2つの表面層の厚み及び組成は同一でも非同一でもよい。
本開示の積層シートは、インクジェット印刷用樹脂シートとして好適である。インクジェット印刷方式としては、静電吸引方式、ピエゾ素子等の圧電素子を用いてインクに機械的振動又は変位を与える方式、インクを加熱して発泡させ、その圧力を利用する方式、及び紫外線(UV)硬化性インクを使用する方式等が挙げられる。
本開示の積層シートは、表面層に対してインクジェット印刷を施すことができる。本開示の積層シートはまた、インクジェット印刷を施した後、必要に応じてレーザー及びNCルーター等を用いて切削加工して、所望の形状に成形できる。このようにして得られる成形品は、キーホルダー等の雑貨及び什器等に好ましく用いることができる。かかる用途において、インクジェット印刷用インクとしては、UV硬化性インク等が好ましく用いられる。
一般的に、分子内に芳香環構造を有するスチレン系共重合体は、UV硬化性インク等のインクジェット印刷用インクの浸透性が良好で、インクジェット印刷用インクの密着性が良好である。ただし、芳香環構造を有するスチレン系共重合体はレーザー切削加工性があまり良くなく、レーザー光照射により樹脂が溶融蒸発した際に、蒸発ガスによる異臭又は発煙が生じる場合がある。また、レーザー切削加工が終了した後、溶融部分が冷えて再び固化する際に蒸発ガスが切削面に付着し、切削面の外観不良が生じる場合がある。
一般的に、メタクリル系樹脂は、蒸発ガスによる上記問題(蒸発ガスによる異臭又は発煙、及び蒸発ガスの付着による切削面の外観不良)が抑制され、レーザー切削加工性が良好である。ただし、UV硬化性インク等のインクジェット印刷用インクの浸透性があまり良くなく、インクジェット印刷用インクの密着性があまり良くない傾向がある。
本開示の積層シートは、分子内に芳香環構造を有するスチレン系共重合体(S)を含む表面層を有するため、UV硬化性インク等のインクジェット印刷用インクの浸透性が良好で、インクジェット印刷用インクの密着性が良好である。
本開示の積層シートは、メタクリル系樹脂(M)を含む基材層と、スチレン系共重合体(S)を含む表面層との積層構造を有し、積層シート全体においてスチレン系単量体単位の占める割合が低減されるので、レーザー切削加工時の蒸発ガスによる上記問題(蒸発ガスによる異臭又は発煙、及び蒸発ガスの付着による切削面の外観不良)が抑制され、レーザー切削加工性が良好となる。
本開示の積層シートにおいて、積層シートの総厚みに対する表面層の総厚みの割合は特に制限されず、好ましくは1~20%である。下限値は、より好ましくは2%、特に好ましくは3%である。上限値は、より好ましくは15%、特に好ましくは10%である。表面層の総厚みの割合が上記下限値以上であると、スチレン系共重合体(S)を含む表面層の厚みが充分に確保され、良好なインク密着性を確保できる。また、表面層の総厚みの割合が上記上限値以下であると、積層シート中のスチレン系単量体単位の含有量を低減でき、レーザー切削加工時の蒸発ガスによる異臭又は発煙、及び蒸発ガスの付着による切削面の外観不良を抑制できる。
本明細書において、「積層シート全体における平均スチレン系単量体単位濃度」は、積層シートの総質量に対する積層シート中のスチレン系単量体単位の総質量の割合である。この平均スチレン系単量体単位濃度は特に制限されず、好ましくは0.1~20質量%である。下限値は、より好ましくは0.5質量%、特に好ましくは1.0質量%、最も好ましくは2.0質量%である。上限値は、より好ましくは15質量%、特に好ましくは10質量%である。積層シート全体における平均スチレン系単量体単位濃度が、上記下限値以上であると、良好なインク密着性を確保でき、上記上限値以下であると、レーザー切削加工時の蒸発ガスによる異臭又は発煙、及び蒸発ガスの付着による切削面の外観不良を抑制できる。
本開示の積層シートは、好ましくは共押出成形シートである。
本開示の積層シートにおいて、積層シートの総厚みは特に制限されず、インクジェット印刷性及びレーザー切削加工性が良好となることから、好ましくは1~10mm、より好ましくは1~5mmである。例えば積層シートの総厚みが3mmの場合、基材層の厚みは好ましくは2.4~2.9mmであり、1つの表面層の厚みは好ましくは30~300μmであり、表面層の総厚みは好ましくは30~600μmである。
本開示の積層シートの粉砕物の3.0mm厚の単層成形シートのヘイズ値は特に制限されず、好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは2%以下、最も好ましくは1%以下である。表面層に含まれるスチレン系共重合体(S)として、メタクリル系樹脂(M)との相溶性が良い特定のスチレン系共重合体を用いることで、上記の単層成形シートのヘイズ値を実現できる。上記の単層成形シートのヘイズ値が4%以下であれば、基材層の全原料のうちの少なくとも一部として、過去に製造された本開示の積層シートの粉砕物又は当該粉砕物の加工物からなる再生樹脂組成物(R)を用いて、透明性に優れる本開示の積層シートを製造できる。上記特性を有する本開示の積層シートは、リワーク材として使用できるか、リワーク材を含むことができ、持続可能性に優れたものである。
本明細書において、特に明記しない限り、「透明」はヘイズ値が4%以下であることと、定義する。
本開示の積層シートの粉砕物の3.0mm厚の単層成形シートは、公知方法にて得ることができ、例えば、以下のようにして得ることができる。
公知の樹脂粉砕用の粉砕機を用いて、本開示の積層シートを粉砕する。得られた粉砕物は、押出機及び混練・押出性試験装置(東洋精機社製「ラボプラストミル(登録商標)」)等を用いて溶融混練し、均一な樹脂組成物とする。得られた溶融混練物を、熱プレス成形等の公知方法にて成形して、3.0mm厚の単層成形シートを得る。
単層成形シートの成形における溶融混練温度及び成形温度は、本開示の積層シートの成形(好ましくは共押出成形)時の基材層材料の好適な溶融混練温度の範囲内が好ましく、例えば、本開示の積層シートの成形(好ましくは共押出成形)時の基材層材料の溶融混練に用いる押出機内の最高温度であることができる。単層成形シートの成形における溶融混練温度及び成形温度は、好ましくは190~280℃、より好ましくは210~270℃、特に好ましくは230~260℃であり、例えば250℃が好ましい。
本開示の積層シートのヘイズ値は特に制限されず、好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは2%以下、最も好ましくは1%以下である。表面層に含まれるスチレン系共重合体(S)として、メタクリル系樹脂(M)との相溶性が良い特定のスチレン系共重合体を用いることで、基材層の全原料のうちの少なくとも一部として、過去に製造された本開示の積層シートの粉砕物又は当該粉砕物の加工物からなる再生樹脂組成物(R)を用いても、ヘイズ値が低く、透明性に優れる本開示の積層シートを製造できる。
(表面層)
表面層は、1種以上のスチレン系共重合体(S)を含む。スチレン系共重合体(S)に含まれるスチレン系単量体単位としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-、m-又はp-メチルスチレン、及びこれらの組合せ等が挙げられ、スチレン(St)等が好ましい。
本開示の積層シートにおいて、1種以上のスチレン系共重合体(S)は、メタクリル系樹脂(M)との相溶性が良いアクリロニトリル-スチレン系共重合体(AS)を含む。
メタクリル系樹脂(M)との相溶性の観点から、アクリロニトリル-スチレン系共重合体(AS)中のスチレン単位の含有量は、好ましくは70~95質量%である。下限値は、より好ましくは73質量%、特に好ましくは76質量%である。上限値は、より好ましくは90質量%、特に好ましくは88質量%である。
本開示の積層シートにおいて、表面層は、アクリロニトリル-スチレン系共重合体(AS)の中でも、メタクリル系樹脂(M)との相溶性が良いことから、特定の特性を有するアクリロニトリル-スチレン系共重合体(AS-E)を含む。
アクリロニトリル-スチレン系共重合体(AS-E)は、溶離液としてn-ヘキサン及びクロロホルムの二液を用いて、下記条件にてグラジエント高速液体クロマトグラフィー(グラジエントHPLC)分析を実施したとき、溶出時間が9分以下である組成の共重合体の比率が0~5質量%であり、溶出時間が23分以上である組成の共重合体の比率が0~5質量%であり、クロマトグラムの最大ピークのピークトップの溶出時間が9~23分である。
<グラジエント高速液体クロマトグラフィー(グラジエントHPLC)分析の条件>
カラムとして、粒径5μmの球状全多孔性シリカゲルが充填された、内径4.6mmφ、長さ25cmのシリカゲルカラムを用いる。カラム温度を40℃に設定する。溶媒としてクロロホルムを用いて、0.5mg/mLの濃度の試料溶液を調製する。
分析開始時点からの時間をT(分)としたときの、移動相のグラジエントプロファイルは、以下の通りとする。
T=0からT=5の間の移動相は、n-ヘキサン/クロロホルム混合溶液(50vol%/50vol%)とする。
T=5からT=20の間は、移動相中のクロロホルム濃度を一定速度で50vol%から100vol%まで増加させる。
T=20からT=25の間の移動相は、100vol%のクロロホルムとする。
移動相の流量は、0.8mL/minとする。
検出器として、検出波長260nmの吸光度検出器を用いる。
本発明者らの研究によれば、上記グラジエントHPLC分析において、溶出時間が9分以下と非常に早く溶出される共重合体、及び、溶出時間が23分以上と非常に遅く溶出される共重合体はいずれも、メタクリル系樹脂(M)との相溶性が良くないことが分かった。上記グラジエントHPLC分析において、溶出時間が9分以下と非常に早く溶出される共重合体の比率が上記上限値以下であり、溶出時間が23分以上と非常に遅く溶出される共重合体の比率が上記上限値以下であり、クロマトグラムの最大ピークのピークトップの溶出時間が9~23分であるアクリロニトリル-スチレン系共重合体(AS-E)は、メタクリル系樹脂(M)との相溶性が優れ、好ましい。
メタクリル系樹脂(M)との相溶性の観点から、上記グラジエントHPLC分析において、溶出時間が9分以下である組成の共重合体の比率の上限値は、上限値は、好ましくは4質量%、より好ましくは3質量%、特に好ましくは2質量%、最も好ましくは1質量%である。
メタクリル系樹脂(M)との相溶性の観点から、上記グラジエントHPLC分析において、溶出時間が23分以上である組成の共重合体の比率の上限値は、好ましくは4質量%、より好ましくは3質量%である。
メタクリル系樹脂(M)との相溶性の観点から、上記グラジエントHPLC分析において得られるクロマトグラムの最大ピークのピークトップの溶出時間の下限値は、より好ましくは10分、特に好ましくは12分、最も好ましくは15分である。
メタクリル系樹脂(M)との相溶性の観点から、上記グラジエントHPLC分析において得られるクロマトグラムの最大ピークのピークトップの溶出時間の上限値は、より好ましくは22分、特に好ましくは21分、最も好ましくは20分である。
メタクリル系樹脂(M)との相溶性及び基材層の透明性の観点から、上記グラジエントHPLC分析において得られるクロマトグラムの最大ピークは、JIS K0124に準拠して測定される5%高さ位置におけるピーク幅(W0.05h)が1~5分であり、JIS K0124に準拠して測定されるシンメトリー係数(S)が1.2~3.4であることが好ましい。
5%高さ位置におけるピーク幅(W0.05h)の下限値は、より好ましくは2分、特に好ましくは3分、最も好ましくは4分である。
シンメトリー係数(S)の下限値は、より好ましくは1.3、特に好ましくは1.4、最も好ましくは1.5である。シンメトリー係数(S)の上限値は、より好ましくは3.2、さらに好ましくは3.0、さらに好ましくは2.8、特に好ましくは2.5、最も好ましくは2.0である。
グラジエントHPLC分析及び各種パラメータの測定の具体例については、後記[実施例]の項を参照されたい。
表面層は、上記特定の特性を有するアクリロニトリル-スチレン系共重合体(AS-E)以外の1種以上のアクリロニトリル-スチレン系共重合体(AS)を含むことができる。
表面層中のアクリロニトリル-スチレン系共重合体(AS-E)の含有量は、好ましくは90~100質量%である。下限値は、より好ましくは95質量%、特に好ましくは98質量%である。
アクリロニトリル-スチレン系共重合体(AS)の市販品としては、日本エイアンドエル社製「ライタック-A100PCF」、「120PCF」;テクノUMG社製「サンレックスSAN-C」、「SAN-R」、「SAN-H」;デンカ社製「デンカASAS-C-800」、「AS-C-820」;東レ社製「トヨラック」;ダイセルミライズ社製「セビアンN」等が挙げられる。
アクリロニトリル-スチレン系共重合体(AS-E)としては、上記市販品の中で上記特定の特性を有するものを選択でき、例えば、日本エイアンドエル社製「ライタック-A 100PCF」;テクノUMG社製「サンレックス SAN-C」;デンカ社製「デンカAS AS-C-820」等が挙げられる。
本開示の積層シートの粉砕物の3.0mm厚の単層成形シートのヘイズ値が4%以下である特性を充足する範囲内において、表面層は必要に応じて、アクリロニトリル-スチレン系共重合体(AS)の他に、メタクリル系樹脂(M)と相溶可能な1種以上の他のスチレン系共重合体(S)を含むことができる。
メタクリル系樹脂(M)と相溶可能な他のスチレン系共重合体(S)としては、スチレン-無水マレイン酸共重合体(SMA)及びメタクリル酸メチル-スチレン系共重合体(MS)等が挙げられる。中でも、メタクリル系樹脂(M)との相溶性の観点から、スチレン-無水マレイン酸共重合体(SMA)等が好ましい。
メタクリル系樹脂(M)との相溶性の観点から、スチレン-無水マレイン酸共重合体(SMA)中のスチレン単位濃度は、好ましくは60~95質量%である。下限値は、より好ましくは65質量%、特に好ましくは70質量%、最も好ましくは75質量%である。上限値は、より好ましくは90質量%、特に好ましくは85質量%、最も好ましくは80質量%である。
スチレン-無水マレイン酸共重合体(SMA)の市販品としては、Polyscope社製「XIRAN」、「XIBOND」;JiaxingHuawenChemical社製「SMA-700」;Fine-blendPolymer社製「SAM-020」等が挙げられる。
メタクリル酸メチル-スチレン系共重合体(MS)は、少量であれば、メタクリル系樹脂(M)と相溶でき、使用できる。
表面層中のメタクリル酸メチル-スチレン系共重合体(MS)の量は、好ましくは0~1.5質量%、より好ましくは0~1.2質量%、特に好ましくは0~1.0質量%、最も好ましくは0~0.85質量%である。メタクリル系樹脂(M)との相溶性の観点から、メタクリル酸メチル-スチレン系共重合体(MS)中のスチレン単位濃度は、好ましくは35~50質量%である。上限値は、より好ましくは45質量%である。
メタクリル酸メチル-スチレン系共重合体(MS)の市販品としては、東洋スチレン社製「トーヨーMS MS600」;デンカ社製「デンカTXポリマー TX-100S」;ダイセルミライズ社製「セビアンNAS」等が挙げられる。
アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系共重合体(ABS)、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン系共重合体(MBS)、及びブタジエンをグラフト共重合した耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)は、メタクリル系樹脂(M)との相溶性が良くないため、スチレン系共重合体(S)として使用しないことが好ましい。
本開示の積層シートの粉砕物の3.0mm厚の単層成形シートのヘイズ値が4%以下である特性を充足する範囲内において、表面層は必要に応じて、1種以上のメタクリル系樹脂(M)、及び/又は、メタクリル系樹脂(M)以外の1種以上の他のアクリル系樹脂(A)を含むことができる。任意成分の他のアクリル系樹脂(A)の例示は、基材層と同様である。なお、表面層中のメタクリル系樹脂(M)は、基材層中のメタクリル系樹脂(M)と同一でも非同一でもよい。任意成分の他のアクリル系樹脂(A)についても、同様である。表面層中のメタクリル系樹脂(M)及び/又は他のアクリル系樹脂(A)の含有量(特に明記しない限り、複数種の場合は合計量)は、好ましくは0~10質量%である。上限値は、より好ましくは5質量%、特に好ましくは2質量%である。
本開示の積層シートの粉砕物の3.0mm厚の単層成形シートのヘイズ値が4%以下である特性を充足する範囲内において、表面層は必要に応じて、スチレン系重合体(S)、メタクリル系樹脂(M)、及び他のアクリル系樹脂(A)以外の、1種以上の他の重合体を含むことができる。他の重合体としては特に制限されず、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、及びポリアセタール等の他の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、及びエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。表面層中の他の重合体の含有量(特に明記しない限り、複数種の場合は合計量)は、好ましくは0~10質量%である。上限値は、より好ましくは5質量%、特に好ましくは2質量%である。
本開示の積層シートの粉砕物の3.0mm厚の単層成形シートのヘイズ値が4%以下である特性を充足する範囲内において、表面層は必要に応じて、各種添加剤を含むことができる。添加剤としては、着色剤、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、光拡散剤、艶消し剤、コアシェル粒子及びブロック共重合体等のゴム成分(耐衝撃性改質剤)、及び蛍光体等が挙げられる。
添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定できる。表面層の構成樹脂100質量部(複数種の場合は、合計で100質量部)に対して、例えば、酸化防止剤の含有量は0.01~1質量部、紫外線吸収剤の含有量は0.01~3質量部、光安定剤の含有量は0.01~3質量部、滑剤の含有量は0.01~3質量部が好ましい。
表面層に他の重合体及び/又は添加剤を添加させる場合、添加タイミングは、スチレン系共重合体(S)の重合時でも重合後でもよい。
表面層の構成樹脂(複数種の場合は、混合樹脂組成物)のガラス転移温度(Tg)は特に制限されず、好ましくは80~160℃、より好ましくは100~110℃である。
(基材層)
基材層は、1種以上のメタクリル系樹脂(M)を含む。メタクリル系樹脂(M)は、メタクリル酸メチル(MMA)単位を含む単独重合体又は共重合体である。透明性の観点から、メタクリル系樹脂(M)中のMMA単位の含有量は、80~100質量%である。下限値は、好ましくは90質量%、より好ましくは95質量%である。
メタクリル系樹脂(M)は、MMA単位以外の1種以上の(メタ)アクリル酸エステル単位を含むことができる。MMA以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル(MA)、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ペンタフルオロエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、及び(メタ)アクリル酸3-ジメチルアミノエチル等が挙げられる。中でも、透明性の観点から、MAが好ましい。例えば、MMAとMAとの共重合体は、透明性に優れ、好ましい。
本明細書において、(メタ)アクリルは、アクリル及びメタクリルの総称であり、(メタ)アクリル酸、及び(メタ)アクリロニトリル等についても、同様である。
基材層は必要に応じて、メタクリル系樹脂(M)以外の1種以上の他のアクリル系樹脂(A)を含むことができる。本明細書で言う「他のアクリル系樹脂(A)」は、MMA単位の含有量が80質量%未満であるメタクリル系樹脂、及び/又は、MMA単位を含まず、MMA単位以外の1種以上の(メタ)アクリル酸エステル単位を含む(メタ)アクリル系樹脂である。
メタクリル系樹脂(M)及び他のアクリル系樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸エステル以外の1種以上の他の単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。他の単量体としては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸金属塩;(メタ)アクリロニトニル;(メタ)アクリルアミド;塩化ビニル及び酢酸ビニル等のビニル系単量体;無水マレイン酸等の酸無水物;フェニルマレイミド及びシクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類;スチレン、α-メチルスチレン、及びビニルトルエン等のスチレン系単量体等が挙げられる。
メタクリル系樹脂(M)及び他のアクリル系樹脂(A)中の(メタ)アクリル酸エステル以外の他の単量体に由来する構造単位の含有量(複数種の場合は、合計量)は、好ましくは0~10質量%である。上限値は、より好ましくは5質量%、特に好ましくは2質量%である。
メタクリル系樹脂(M)及び他のアクリル系樹脂(A)中のスチレン系単量体単位の(複数種の場合は、合計量)は、好ましくは0~1.5質量%である。上限値は、より好ましくは1.2質量%、特に好ましくは1.0質量%、最も好ましくは0.85質量%である。
メタクリル系樹脂(M)及び他のアクリル系樹脂(A)は、1種以上の(メタ)アクリル酸エステル、及び必要に応じて他の単量体を重合することで得られる。複数種の単量体を用いる場合は、通常、複数種の単量体を混合して単量体混合物を調製した後、重合を行う。重合方法としては特に制限されず、生産性の観点から、塊状重合法、懸濁重合法、溶液重合法、及び乳化重合法等のラジカル重合法が好ましい。
本開示の積層シートの粉砕物の3.0mm厚の単層成形シートのヘイズ値が4%以下である特性を充足する範囲内において、基材層は必要に応じて、1種以上のスチレン系共重合体(S)を含むことができる。基材層中のスチレン系共重合体(S)は、表面層中のスチレン系共重合体(S)と同一でも非同一でもよい。基材層は、メタクリル系樹脂(M)とアクリロニトリル-スチレン系共重合体(AS-E)とを含むメタクリル系樹脂組成物(MR)からなることができる。
基材層がスチレン系単量体単位を含む場合、高湿環境に静置した後の積層シートの反り変化量を効果的に低減できる傾向がある。
一般的に、(共)押出成形シート及びそれを用いた成形品の製造においては、押出成形の製造ラインの立ち上げ時に生じる不良品、シートの両端部のトリミング処理によって発生する端材、欠点及び異物等の品質検査で製品規格を満たさないと判断された不良品、及びシートの切削加工によって生じる端材が存在する。近年、持続可能(サスティナブル)な社会に向けた取組みが進められており、上記の不良品及び端材は、リワーク材として、廃棄せずに再利用して有効活用することが好ましい。
本明細書において、「バージン材」とは、過去に成形加工に供されたことが一度もない成形材料であり、「リワーク材」とは、過去に成形品として1回以上成形加工されたことのある成形材料である。
基材層の全原料のうちの少なくとも一部は、過去に製造された本開示の積層シートの粉砕物又は当該粉砕物の加工物からなる再生樹脂組成物(R)(リワーク材とも言う。)であることができる。上記加工物の形態としては、ストランドおよびペレット等が挙げられる。
上記したように、本開示の積層シートの粉砕物の3.0mm厚の単層成形シートのヘイズ値が4%以下であるので、基材層の全原料のうちの少なくとも一部として、過去に製造された本開示の積層シートの粉砕物又は当該粉砕物の加工物からなる再生樹脂組成物(R)を用いて、透明性に優れる本開示の積層シートを製造できる。
基材層の構成樹脂中のスチレン系単量体単位の含有量は特に制限されず、好ましくは0~10.0質量%である。
[背景技術]の項で挙げた特許文献3には、「白濁発生を抑え、透明性を維持するために、基材層の構成樹脂中のスチレン含有量は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.85質量%以下である。」ことが記載されている(段落0171)。
本開示の技術では、基材層の構成樹脂中のスチレン系単量体単位の含有量を、特許文献3に記載の範囲より多くでき、1.2質量%以上、1.5質量%以上、2.0質量%以上、2.5質量%以上、3.0質量%以上、3.5質量%以上、又は4.0質量%以上とすることができる。上限値は、より好ましくは9.0質量%、特に好ましくは8.5質量%、最も好ましくは8.0質量%である。
本開示の積層シートの粉砕物の3.0mm厚の単層成形シートのヘイズ値が4%以下である特性を充足する範囲内において、基材層は必要に応じて、メタクリル系樹脂(M)、他のアクリル系樹脂(A)、及びスチレン系重合体(S)以外の、1種以上の他の重合体を含むことができる。基材層は、必要に応じて、各種添加剤を含むことができる。他の重合体及び添加剤の種類の例示と好ましい添加量は、表面層と同様である。
基材層の構成樹脂(複数種の場合は、混合樹脂組成物)のガラス転移温度(Tg)は特に制限されず、好ましくは100~140℃、より好ましくは105~135℃、特に好ましくは105~125℃である。
[積層シートの製造方法]
本開示の積層シートは、公知のシート成形法により製造でき、生産効率及び層間接着性の観点から、押出成形法等が好ましい。押出成形法の場合、異なる押出機を用いて溶融混練された1種以上のメタクリル系樹脂(M)を含む基材層材料とアクリロニトリル-スチレン共重合体(AS-E)を含む1種以上のスチレン系共重合体(S)を含む表面層材料とを共通の押出ダイ(Tダイ等)から共押出する共押出成形が好ましい。
共押出ダイの方式としては、マルチマニホールドダイ方式及びフィールドブロック方式が挙げられる。フィードブロック方式では、メタクリル系樹脂(M)を含む溶融状態の基材層材料とスチレン系共重合体(S)を含む溶融状態の表面層材料とがフィードブロック内で積層された後、Tダイ等に導かれてシート状に成形され共押出される。マルチマニホールドダイ方式では、メタクリル系樹脂(M)を含む溶融状態の基材層材料とスチレン系共重合体(S)を含む溶融状態の表面層材料とがTダイ等に導かれシート状に成形された後、積層されて共押出される。本開示の積層シートでは、表面層が薄く設計される。この場合、マルチマニホールドダイ方式が好ましい。
いずれの方式でも、Tダイ等から押出された熱可塑性樹脂積層体は、少なくとも一対の冷却用加圧ロールの間隙を通過することで冷却された後、引取りロールに引き取られる。以上の共押出、冷却、及び引取りの工程は、連続的に実施される。なお、本明細書では、主に加熱溶融状態のものを「熱可塑性樹脂積層体」と表現し、固化したものを「積層シート」と表現しているが、両者の間に明確な境界はない。
本開示の積層シートの共押出成形において、Tダイ温度(Td)は、好ましくは190~280℃である。Tdが190℃未満では、メタクリル系樹脂(M)及びスチレン系共重合体(S)の溶融粘度が高くなりすぎて、これらの樹脂を良好に押出成形することができない恐れがある。Tdが280℃超では、高温によってスチレン系共重合体(S)が分解する恐れがある。Tdは、より好ましくは210~270℃、特に好ましくは230~260℃である。
Tダイのリップ厚は、所望の積層シートの総厚み(好ましくは1~10mm)に応じて設計される。
一対の引取りロールによる積層シートの引取速度(V)は特に制限されず、好ましくは0.5~2.0m/minである。
本開示の積層シートの製造方法では、基材層の全原料のうちの少なくとも一部として、過去に製造された本開示の積層シートの粉砕物又は当該粉砕物の加工物からなる再生樹脂組成物(R)を用いて、本開示の積層シートを共押出成形することができる。
基材層の全原料中の再生樹脂組成物(R)の割合は特に制限されず、例えば、1~100質量%であることができる。本開示の技術では、基材層の全原料中の再生樹脂組成物(R)の割合を多くでき、10~100質量%、20~100質量%、30~100質量%、40~100質量%、又は50~100質量%とすることができる。
一般的に、同じ材料のリワークを繰り返すと、リワーク材の質が低下し、これを用いた積層シートのヘイズ値が高くなる場合がある。リワーク回数又はリワーク材の質を考慮し、本開示の積層シートの粉砕物を基材層に用いた3.0mm厚の積層シートのヘイズ値が4%以下である特性を充足する範囲内において、リワーク材の使用割合を調整することが好ましい。
基材層の全原料のうちの少なくとも一部が、過去に製造された本開示の積層シートの粉砕物又は当該粉砕物の加工物からなる再生樹脂組成物(R)である場合でも、本開示の積層シートは、透明性に優れ、3.0mm厚でのヘイズ値が4%以下、3%以下、2%以下、又は1%以下であることができる。
[印刷物、成形品]
本開示の積層シートは、インクジェット印刷用樹脂シートとして好ましく用いることができる。本開示の積層シートに含まれるスチレン系共重合体(S)を含む表面層に対してインクジェット印刷を施すことで、印刷物を提供することができる。本開示の積層シートはまた、インクジェット印刷を施した後、必要に応じてレーザー及びNCルーター等を用いて切削加工して、所望の形状に成形することができる。
本開示の積層シートはレーザー切削加工性が良好であるため、微細な切削加工が可能である。例えば、半径0.5~2mmの曲線切削部を有する成形品を形状精度良く製造することができる。本開示の積層シートはレーザー切削加工性が良好であるため、高出力のレーザー加工機を用い、高速で生産性良く切削加工することができる。例えば、本開示の積層シートを、出力100W以上のレーザー加工機にて350cm/min以上の速度で切削加工して、成形品を製造することができる。
以上説明したように、本開示によれば、インクジェット印刷用及び/又はレーザー切削加工用等として好適で、持続可能性に優れた積層シートを提供することができる。
[用途]
本開示の積層シート、印刷物、及び成形品は、印刷、広告、サイン・ディスプレイ、イベント、アミューズメント、建築、及びインテリア等の種々の分野に用いることができる。
本開示の積層シート、印刷物、及び成形品は、キーホルダー、フィギュア、キャラクターパネル等の雑貨及び什器等に好ましく用いることができる。
以下、本発明に係る実施例及び比較例について、説明する。
[評価項目及び評価方法]
(アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)中のスチレン単位の含有量)
核磁気共鳴装置(Bruker社製「ULTRA SHIELD 400 PLUS」)を用いて、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)のH-NMRスペクトルを測定した。スチレンに含まれる芳香環の2~6位の炭素原子に結合した水素原子由来のピークの積分値から、スチレン単位濃度を求めた。
(グラジエント高速液体クロマトグラフィー(グラジエントHPLC)分析)
アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)のグラジエント高速液体クロマトグラフィー(グラジエントHPLC)分析を実施した。
分析装置として、島津製作所社製の高速液体クロマトグラフ(HPLCシステム「Prominence LC-20AD」)を用いた。カラムとして、粒径5μmの球状全多孔性シリカゲルが充填されたシリカゲルカラム(内径4.6mmφ、長さ25cm)を用いた。カラム温度を40℃に設定した。
溶媒としてクロロホルムを用いて、0.5mg/mLの濃度の試料溶液を調製した。装置内への試料溶液の注入量は2μLとした。
溶離液としてn-ヘキサン及びクロロホルムの二液を用いたグラジエント溶離によって、試料溶液中の成分を分離した。二液の混合方式として、二液を加圧下で混合する高圧混合方式を採用した。
分析開始時点(装置に試料溶液を注入した時点)からの時間をT(分)としたときの、移動相のグラジエントプロファイルは、以下の通りとした。
T=0からT=5の間の移動相は、n-ヘキサン/クロロホルム混合溶液(50vol%/50vol%、体積比1/1)とした。
T=5からT=20の間は、移動相中のクロロホルム濃度を一定速度(50vol%/15分)で、50vol%から100vol%まで増加させた(=移動相中のn-ヘキサンを一定速度(50vol%/15分)で、50vol%から0vol%まで減少させた)。
T=20からT=25の間の移動相は、100vol%のクロロホルム(純クロロホルムとも言う。)とした。
T=25からT=30の間は、移動相中のn-ヘキサン濃度を一定速度(100vol%/5分)で、0vol%から100vol%まで増加させた(=移動相中のクロロホルムを一定速度(100vol%/5分)で、100vol%から0vol%まで減少させた)。
T=30からT=60の間の移動相は、n-ヘキサン/クロロホルム混合溶液(50vol%/50vol%、体積比1/1)とした。
移動相の流量は、0.8mL/minとした。
検出器として、検出波長260nmの吸光度検出器(UV検出器とも言う。)又は蒸発光散乱(ELS)検出器(システムインスツルメンツ社製「ELSD-LTII」)を用いた。
ブランク試料として100vol%のクロロホルムを用いて、試料溶液を用いる場合と同じ条件でグラジエント高速液体クロマトグラフィー(グラジエントHPLC)分析を実施した。このブランク試料の測定データのベースライン勾配を基に、試料溶液の測定データに対してベースライン補正処理をして、試料溶液のクロマトグラムを得た。
ある成分の溶出時間は、分析開始時点(装置に試料溶液を注入した時点)から、ある成分が検出されるまでの時間(ある成分に由来するピークのピークトップまでの時間)であり、保持時間とも言う。
得られたクロマトグラムにおいて、溶出時間が9分以下であるピークの積分値と、溶出時間23分以上であるピークの積分値と、溶出時間が9~23分であるピークの積分値とを求め、これらのデータから、溶出時間が9分以下である組成の共重合体の比率と、溶出時間23分以上である組成の共重合体の比率とを求めた。
最大ピークのピークトップの溶出時間(単にピークトップの溶出時間とも言う。)と、ベースラインからの最大ピークのピークトップの高さ(h)(ピーク高さ(h)とも言う。)とを求めた。また、最大ピークのシンメトリー係数(S)をJIS K0124に準拠して、求めた。
シンメトリー係数(S)は、下記式で表されるパラメータである。
S=(W0.05h)/(2f)
上記式中、W0.05hは、ベースラインからピーク高さ(h)の5%(1/20)の高さ位置におけるピーク幅(5%高さでのピーク幅とも言う。)である。fは、このピーク幅(W0.05h)を、ピークトップを通り、クロマトグラムの横軸に対して垂直な垂線で二分し、二分されたピーク幅のうちのピークの立ち上がり側の幅である。シンメトリー係数(S)は、ピークの対称性の指標である。
なお、ピーク高さ(h)、5%高さでのピーク幅(W0.05h)、及びパラメータ(f)の関係については、特開2016-020435号公報の図1等を参照されたい。
(積層シートのヘイズ値)
3.0mm厚の積層シートの幅方向の中央部から50mm×50mmの試験片を切り出し、村上色彩技術研究所社製「HM-150」を用いて、ヘイズ値を測定した。
(インク密着性)
各例で得られた積層シートの一方の表面に対して以下の条件でインクジェット印刷を実施した。印刷パターンは、短径1.8cm×長径2.8cmの略楕円形ベタ印刷とした。
装置:ローランドディー.ジー.社製「LEF-300」、
温度:室温(20~25℃)、
UV硬化性インク(白):ローランドディー.ジー.社製EUV-BK、
UV硬化性インク(黒):ローランドディー.ジー.社製EUV-WH。
インクジェット印刷を施した積層シートに対して、インク密着性の評価を実施した。白及び黒のUV硬化性インクの硬化物からなる印刷層において10mm四方の評価領域を縦横1mm間隔で100マス(縦10マス×横10マス)にクロスカットした。この評価領域上に全体的にセロハンテープを貼り付け、その上から消しゴムでこすってセロハンテープを印刷面に充分に密着させた後、セロハンテープを90°方向に剥離させた。拡大倍率10倍のルーペで観察し、評価対象の100マスのうちインクが積層シートから剥離したマスの数を求めた。評価基準は以下の通りである。
A(優):すべてのマスにインク剥離が見られなかった。
B(良):1以上10未満のマスにインク剥離が見られた。
C(可):10以上50未満のマスにインク剥離が見られた。
D(不可):50以上のマスにインク剥離が見られた。
(レーザー切削加工性)
上記インクジェット印刷後の積層シートに対して以下の条件でレーザー切削加工を実施して、サイズが短径20mm×長径30mmで半径1mmの曲線切削部を有するテレビアニメのキャラクター形状の成形品を得た。
装置:SEI社製「MERCURY609」、
温度:室温(20~30℃)、
レーザー種別:炭酸ガスレーザー、
レーザー出力:200W、
切削速度:350~400cm/min。
下記評価を実施した。
<切削面の外観>
レーザー切削加工後に得られた10個の成形品について、30cm直線切削部の切削面の欠点の有無を光学顕微鏡観察及び指触検査により評価した。主な欠点は以下の通りである。
荒れ:切削面が全体的に一様でなく、触るとざらつきがあった。
角荒れ:切削面の角部に部分的に荒れがあり、触るとざらつきがあった。
樹脂溜り:切削面の一部に溶融した樹脂溜りが見られた。
異物:切削面に有色異物が見られた。
評価基準は以下の通りである。
A(優):欠点が見られた成形品の数が0~1個。
B(良):欠点が見られた成形品の数が2~4個。
C(不可):欠点が見られた成形品の数が5~10個。
<発煙又は臭気発生の有無>
レーザー切削加工時の発煙又は臭気発生の有無を官能評価した。評価基準は以下の通りである。
A(良):発煙又は臭気が少しあったが、気にならない程度であった。
B(可):AとCとの中間。
C(不良):発煙又は臭気が顕著にあった。
[材料]
用いた材料は、以下の通りである。
(メタクリル系樹脂(M))
<PMMA1>メタクリル酸メチル-アクリル酸メチル共重合体、クラレ社製「パラペット」、メタクリル酸メチル単位の含有量:94質量%、アクリル酸メチル単位の含有量:6質量%、スチレン単位の含有量:0質量%。
(アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS))
<AS1>日本エイアンドエル社製「ライタック-A 100PCF」、スチレン単位の含有量:77質量%、
<AS2>テクノUMG社製「サンレックス SAN-C」、スチレン単位の含有量:76質量%、
<AS3>デンカ社製「デンカAS AS-C-820」、スチレン単位の含有量:82質量%、
<ASC4>ダイセルミライズ社製「セビアン-N 020SF」、スチレン単位の含有量:74質量%。
グラジエント高速液体クロマトグラフィー(グラジエントHPLC)分析において、検出器として検出波長260nmのUV検出器を用いたときの、ベースライン補正処理後のアクリロニトリル-スチレン共重合体(AS1)~(AS3)、(ASC4)のクロマトグラムを図4に示す。
[積層シートの製造]
(実施例(EV1-1)~(EV3-1)、比較例(ECV11-1))
基材層材料として、バージン材のメタクリル系樹脂(M)を東芝機械社製150mmφ単軸押出機(シリンダー部の最高温度240℃)を用いて溶融した。表面層材料として、バージン材のアクリロニトリルースチレン共重合体(AS)を東芝機械社製65mmφ単軸押出機(シリンダー部の最高温度240℃を用いて溶融した。マルチマニホールド型ダイスを用いて、溶融状態のアクリロニトリルースチレン共重合体(AS)と溶融状態のメタクリル系樹脂(M)と溶融状態のアクリロニトリルースチレン共重合体(AS)とをこの順で積層し、Tダイから押出し、互いに隣接した4本の冷却ロールを用いて冷却し、引取りロールで引き取った。以上の共押出成形により、アクリロニトリルースチレン共重合体(AS)(第1の表面層、0.05mm厚)/メタクリル系樹脂(M)(基材層、2.9mm厚)/アクリロニトリルースチレン共重合体(AS)(第2の表面層、0.05mm厚)の2種3層の積層シート(LV1-1)~(LV3-1)、(LCV11-1)を製造した。第1の表面層と第2の表面層は、組成と厚みを同一条件とした。主な製造条件と各種パラメータ値を表1、表2に示す。表1~表4において、表に不記載の条件は共通条件とした。
(実施例(EV1-2)、比較例(ECV11-2))
第1の表面層及び第2の表面層の厚みを0.15mmに変更し、基材層の厚みを2.7mmに変更した以外は実施例(EV1-1)又は比較例(ECV11-1)と同様にして、積層シート(LV1-2)、(LCV11-2)を得た。主な製造条件と各種パラメータ値を表1、表2に示す。
(実施例(E1-1)~(E1-4))
基材層材料の少なくとも一部(30質量%、50質量%、又は100質量%)を、リワーク材としての積層シート(LV1-1)又は(LV1-2)の粉砕物に置き換えた以外は実施例(EV1-1)又は(EV1-2)と同様にして、積層シート(L1-1)~(L1-4)を得た。主な製造条件と各種パラメータ値を表3に示す。
なお、バージン材のメタクリル系樹脂(M)とリワーク材との混合は、ドライブレンドにより実施した。他の例でも、同様である。
(実施例(E2-1)、(E3-1))
基材層材料の一部(50質量%)を、リワーク材としての積層シート(LV2-1)又は(LV3-1)の粉砕物に置き換えた以外は実施例(EV2-1)又は(EV3-1)と同様にして、積層シート(L2-1)、(L3-1)を得た。主な製造条件と各種パラメータ値を表3に示す。
(比較例(EC11-1)~(EC11-4))
基材層材料の少なくとも一部(30質量%、50質量%、又は100質量%)を、リワーク材としての積層シート(LCV11-1)又は(LCV11-2)の粉砕物に置き換えた以外は比較例(ECV11-1)又は(ECV11-2)と同様にして、積層シート(LC11-1)~(LC11-4)を得た。主な製造条件と各種パラメータ値を表4に示す。
[評価結果]
評価結果を表1~表4に示す。
Figure 0007464782000002
Figure 0007464782000003
Figure 0007464782000004
Figure 0007464782000005
[結果のまとめ]
実施例(EV1-1)~(EV3-1)、(EV1-2)では、スチレン系共重合体(S)として、溶離液としてn-ヘキサン及びクロロホルムの二液を用いて、グラジエント高速液体クロマトグラフィー(グラジエントHPLC)分析を実施したとき、溶出時間が9分以下である組成の共重合体の比率が0~5質量%であり、溶出時間が23分以上である組成の共重合体の比率が0~5質量%であり、クロマトグラムの最大ピークのピークトップの溶出時間が9~23分であるアクリロニトリル-スチレン系共重合体(AS-E)を用いた。これら実施例では、基材層及び表面層の材料としてバージン材のみを用いて、メタクリル系樹脂(M)を含む基材層と、その両面上にアクリロニトリルースチレン共重合体(AS-E)を含む表面層が積層された積層シートを製造した。これらの例で得られた積層シートはいずれも、インク密着性及びレーザー切削加工性が良好であり、ヘイズ値が1%以下であり、透明性が良好であった。
実施例(E1-1)~(E1-4)では、基材層の全原料のうちの30~100質量%を積層シート(LV1-1)又は(LV1-2)の粉砕物からなるリワーク材に置き換えた以外は実施例(EV1-1)又は(EV1-2)と同様にして、積層シートを得た。得られた積層シートはいずれも、インク密着性及びレーザー切削加工性が良好であり、ヘイズ値が1%以下であり、透明性が良好であった。これらの例では、用いたアクリロニトリルースチレン共重合体(AS-E)とメタクリル系樹脂(M)との相溶性が良好で、リワーク材を多く使用しても、バージン材のみを用いた実施例と同様に、高品質な積層シートが得られた。これらの例では、リワーク材を含む、持続可能性に優れる積層シートが得られた。
実施例(E2-1)、(E3-1)においても、同様の結果が得られた。
比較例(ECV11-1)、(ECV11-2)では、スチレン系共重合体(S)として、溶離液としてn-ヘキサン及びクロロホルムの二液を用いて、グラジエント高速液体クロマトグラフィー(グラジエントHPLC)分析を実施したとき、溶出時間が23分以上である組成の共重合体の比率が5質量%超である比較用のアクリロニトリル-スチレン系共重合体(ASC)を用いた。これら比較例では、基材層及び表面層の材料としてバージン材のみを用いて、メタクリル系樹脂(M)を含む基材層と、その両面上に比較用のアクリロニトリル-スチレン系共重合体(ASC)を含む表面層が積層された積層シートを製造した。これらの例で得られた積層シートはいずれも、インク密着性及びレーザー切削加工性が良好であり、ヘイズ値が1%以下であり、透明性が良好であった。
比較例(EC11-1)~(EC11-4)では、基材層の全原料のうちの30~100質量%を積層シート(LCV11-1)又は(LCV11-2)の粉砕物からなるリワーク材に置き換えた以外は比較例(ECV11-1)又は(ECV11-2)と同様にして、積層シートを得た。得られた積層シートはいずれも、ヘイズ値が4.7~15.6%と著しく高く、透明性が不良であった。これらの例では、用いたスチレン系共重合体(S)とメタクリル系樹脂(M)との相溶性が不良で、リワーク材を含んでも透明性に優れる、持続可能性に優れる積層シートが得られなかった。
本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、適宜設計変更が可能である。
16X、16Y 積層シート
21 基材層
31、32、33 表面層

Claims (13)

  1. 基材層と、当該基材層の少なくとも片面上に積層された表面層とを有する積層シートであって、
    前記基材層は、メタクリル酸メチル単位を80~100質量%含むメタクリル系樹脂(M)を含み、
    前記表面層は、溶離液としてn-ヘキサン及びクロロホルムの二液を用いて、下記条件にてグラジエント高速液体クロマトグラフィー分析を実施したとき、溶出時間が9分以下である組成の共重合体の比率が0~5質量%であり、溶出時間が23分以上である組成の共重合体の比率が0~5質量%であり、クロマトグラムの最大ピークのピークトップの溶出時間が9~23分であるアクリロニトリル-スチレン共重合体(AS-E)を含む、積層シート。
    <グラジエント高速液体クロマトグラフィー分析の条件>
    カラムとして、粒径5μmの球状全多孔性シリカゲルが充填された、内径4.6mmφ、長さ25cmのシリカゲルカラムを用いる。カラム温度を40℃に設定する。溶媒としてクロロホルムを用いて、0.5mg/mLの濃度の試料溶液を調製する。
    分析開始時点からの時間をT(分)としたときの、移動相のグラジエントプロファイルは、以下の通りとする。
    T=0からT=5の間の前記移動相は、n-ヘキサン/クロロホルム混合溶液(50vol%/50vol%)とする。
    T=5からT=20の間は、前記移動相中のクロロホルム濃度を一定速度で50vol%から100vol%まで増加させる。
    T=20からT=25の間の前記移動相は、100vol%のクロロホルムとする。
    前記移動相の流量は、0.8mL/minとする。
    検出器として、検出波長260nmの吸光度検出器を用いる。
  2. アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS-E)の前記クロマトグラムの最大ピークは、ピークトップの溶出時間が15~22分であり、JIS K0124に準拠して測定される5%高さ位置におけるピーク幅(W0.05h)が1~5分であり、JIS K0124に準拠して測定されるシンメトリー係数(S)が1.2~3.4である、請求項1に記載の積層シート。
  3. 前記積層シート全体における平均スチレン系単量体単位濃度が0.1~20質量%である、請求項1に記載の積層シート。
  4. 前記基材層が、メタクリル系樹脂(M)とアクリロニトリル-スチレン共重合体(AS-E)とを含むメタクリル系樹脂組成物(MR)からなる、請求項1に記載の積層シート。
  5. 前記基材層の構成樹脂中のスチレン系単量体単位の含有量が0~10.0質量%である、請求項1に記載の積層シート。
  6. 前記基材層の構成樹脂中のスチレン系単量体単位の含有量が1.2~10.0質量%である、請求項5に記載の積層シート。
  7. 前記基材層の全原料のうちの少なくとも一部が、過去に製造された前記積層シートの粉砕物又は当該粉砕物の加工物からなる再生樹脂組成物(R)である、請求項4に記載の積層シート。
  8. 前記積層シートの総厚みが1~10mmである、請求項1に記載の積層シート。
  9. インクジェット印刷用及び/又はレーザー切削加工用である、請求項1に記載の積層シート。
  10. 共押出成形シートである、請求項1に記載の積層シート。
  11. 請求項1に記載の積層シートの前記表面層に対してインクジェット印刷が施された、印刷物。
  12. 請求項1に記載の積層シートに対してインクジェット印刷及びレーザー切削加工が施された、成形品。
  13. 前記基材層の全原料のうちの少なくとも一部として、過去に製造された前記積層シートの粉砕物又は当該粉砕物の加工物からなる再生樹脂組成物(R)を用いて、前記積層シートを共押出成形する、請求項4に記載の積層シートの製造方法。
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