JP7455776B2 - 液輸送管および液輸送管の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、管路更新のために既設管に挿入される内挿管となる液輸送管および液輸送管の製造方法に関する。
地上に敷設された通水用の既存管を新たな管に更新する管路更新方法がある(特許文献1参照)。このような更新方法では、既設管に新たな内挿管としての液輸送管を挿入し水輸送管同士を接続することによって管路更新が行われる。
特許第6644344号公報
管路更新方法において、既設管に挿入される液輸送管は、既設管に対して挿入されるものである。したがって、管路の内径は、更新されることで更新前より小径となり、流量も減少してしまう。このため、液輸送管には、管路更新に伴う流量減少を抑えるため、できるだけ内径の大きい管の使用が求められる。
上記課題を解決するための液輸送管は、既設管に挿入される内挿管となる液輸送管であって、熱可塑性樹脂により成形された管本体と、前記管本体の一端において、差口部が挿入される受口部とを備え、前記受口部は、前記管本体と一体の樹脂部と、前記樹脂部の外周において、前記樹脂部を補強する補強部とを備える。
上記構成によれば、受口部において、補強部が設けられることで、樹脂部の薄肉化が可能となる。これにより、受口外径が小径化されることで、より内径の大きい液輸送管の既設管への挿入が可能となる。
上記液輸送管において、前記樹脂部の管厚は、前記管本体の管厚より薄く構成してもよい。上記構成によれば、樹脂部の管厚を管本体の管厚より薄くすることで、受口部における受口外径を小径化できる。
上記液輸送管において、前記補強部は、少なくとも引張強度およびヤング係数のうちの1つが前記管本体よりも高く構成してもよい。上記構成によれば、樹脂部を薄肉化しても、受口部を高強度に維持できる。
上記液輸送管において、前記補強部は、高強度繊維シートを前記樹脂部に巻回して構成してもよい。上記構成によれば、樹脂部を薄肉化しても、少なくともその分の樹脂部の強度低下を高強度繊維シートを巻回して構成された補強部で補うことができる。
上記液輸送管において、前記高強度繊維シートは、前記樹脂部に対して固定のための含浸剤が含浸されているようにしてもよい。上記構成によれば、補強部を接着剤によって樹脂部に対して強固に固定される。
上記液輸送管において、前記樹脂部は、ポリエチレン樹脂とし、前記含浸剤は、エポキシ樹脂としてもよい。上記構成によれば、高強度繊維シートを、ポリエチレン管に対して補強部を強固に固定できる。
上記液輸送管において、前記樹脂部は、発熱体を備え、前記受口部は、前記差口部と電気融着される構成としてもよい。上記構成によれば、液輸送管の接続を電気融着継手とすることができる。
上記課題を解決するための液輸送管の製造方法は、既設管に挿入される内挿管となる液輸送管の製造方法であって、熱可塑性樹脂により成形された前記液輸送管の受口部となる部分を外周から薄肉化し、薄肉化された前記部分の外周に補強部を形成するものである。
本発明によれば、受口部外径が小径化される分、内径の大きい液輸送管を、既設管に対する内挿管として使用できる。
傾斜地に敷設された、水源側の水を発電所の発電設備に供給する輸送管の管路更新工事を示す図。 管路更新工事の工程図。 水輸送管の断面図。 受口部の拡大断面図。 受口部の加工前の状態を示す断面図。 輸送管の製造方法を示す工程図。 受口部外面加工の工程図。 (a)は、接着剤の塗布ノズルの正面図、(b)は、側面図。 受口部を構成する樹脂部に補強部を固定する状態を示す斜視図。
以下、本発明が適用された水輸送管路およびその製造方法について図面を参照して説明する。
<管路更新工事>
本発明が適用された水輸送管4は、既設管3の管路に内挿管を挿入し管路更新を行うための内挿管である。図1に示すように、管路更新工事としては、一例として、水力発電所において水輸送管として使用されてきた既設管3の管路更新工事が挙げられる。水力発電では、貯水池、調整池などの水源地1から発電設備2が設置された発電所まで水を供給するため管路で繋ぎ、水源地1と発電設備2との落差によって発電設備2を構成する水車を回して発電を行う。水源地1と発電設備2とを繋ぐ管路を構成する既設管3は、傾斜地に敷設された露出管である。既設管3には、水圧鉄管などが用いられている。
既設管3は、複数箇所に設けられたコンクリート構造物である固定台5によって傾斜地に固定されている。管路更新工事は、既設管3が耐用年数を向かえたとき、または、老朽化したとき、または、破損したときに行われる。管路更新工事では、既設管3を撤去することなく再利用する。管路更新工事では、内挿管である新たな水輸送管4を既設管3に対して挿入する。
図2は、管路更新工事の工程図である。管路更新工事では、工程P1において、既設管3の上側部分を除去し、開口部6を形成する。開口部6は、液輸送管としての水輸送管4を挿入し、さらに水輸送管4同士の連結作業を行うためのものである。既設管3の管路上には、ケーブルクレーン7が設置されている。既設管3の内周面は、内周面に付着した付着物を除去するなどの清掃が行われる。なお、開口部6は、既設管3の下側部分にまで及ぶ範囲に設けるようにしてもよい。
工程P2において、水輸送管4は、ケーブルクレーン7によって開口部6まで搬送され、開口部6より既設管3内に挿入される。水輸送管4は、例えば外周部にスペーサが設けられている。スペーサは、既設管3の内周面の水輸送管4の外周面との間に一定の間隙を構成するための部材である。
工程P3において、既設管3に挿入された水輸送管4同士は接続される。具体的には、水輸送管4同士は、一方の水輸送管4の受口部13に対して他方の水輸送管4の差口部12を挿入し、電気融着などで接続される。
工程P4において、水輸送管4を既設管3に挿入する作業が終了すると、工程P1で設けた開口部6を閉塞する。一例として、開口部6を形成するために除去した既設管3の一部である除去部は、補強などされた後、閉塞部材8として用いられる。閉塞部材8は、開口部6を閉塞するように取り付けられる。また、開口部6は、新たな閉塞部材8で閉塞される。
工程P5において、既設管3の内周面の水輸送管4の外周面との間に形成された隙間には、固化材が注入される。固化材は、一例として、流動性のある無収縮モルタル、エアモルタルなどである。例えば、固化材を下流側の部分から注入すると、固化材は隙間内の空気を押し上げるようにして充填される。これにより、隙間は、固化材により埋められる。
<水輸送管>
図3は、水輸送管4の断面図である。水輸送管4は、熱可塑性樹脂として高密度ポリエチレン材料を使用した成形体であって、耐薬品性、耐腐食性、耐摩耗性、耐衝撃性、および軽量性に優れた管である。なお、水輸送管4の成形樹脂には、顔料、酸化防止剤、安定剤などの添加剤などを含んでいてもよい。また、水輸送管4の成形樹脂には、カップリング材が含まれていてもよい。さらに、水輸送管4の成形樹脂には、強度を高めるためにガラス繊維を含んでいてもよい。水輸送管4は、例えば口径が450mm程度から2000mm程度の管である。また、1本の水輸送管4における管軸方向の有効長Lは、1000mm程度から5000mm程度である。
水輸送管4は、管本体11と、管本体11における管軸方向の一方の端部に設けられる差口部12と、他方の管端部に設けられる受口部13とを備える。管本体11は、直管を構成する筒状部であって、管厚tを有している。さらに、管本体11は、管外径Dと管内径dとを有している。
差口部12は、管内径dと同じ差口内径d1を有している(管内径d=差口内径d1)。一例として、管内径dは、450mm~2000mmである。また、差口部12は、管外径Dより大径の差口外径D1を有している(管外径D<差口外径D1)。さらに、差口部12は、管厚tより厚い差口管厚t1を有している(管厚t<差口管厚t1)。すなわち、管本体11と差口部12は、内周面は同一面を構成し、外周面が膨らんでいる。
図4に示すように、受口部13は、管外径Dおよび差口外径D1より大径の受口外径D2を有している(管外径D,差口外径D1<受口外径D2)。また、受口部13は、管内径dより大径の受口内径d2を有している(管内径d<受口内径d2)。すなわち、受口部13は、管軸方向に延びる外周面および内周面において、管本体11、受口部13、および、差口部12の中で最も太い部分となる。
図4に示すように、受口部13は、樹脂部14と、補強部15とを備えている。受口部13は、差口部12が挿入される部分である。このため、受口部13の樹脂部14は、管本体11と一体の部分であって、受口部13の内周面を構成する部分である。樹脂部14は、管本体11の管厚tよりも薄い樹脂部厚t2を有している(管厚t>樹脂部厚t2)。図5に示すように、加工前の受口部13xは、本来、加工前管厚t3を有しているところ、外周面を切削などの加工をすることによって樹脂部厚t2にされる(樹脂部厚t2<加工前管厚t3)。樹脂部厚t2は、一例として、少なくとも補強部15を次工程で設けることができる程度の最低限の強度を有する厚さである。
加工前の受口部13xは、外周面形状が外周側直線部13aと外周側傾斜部13bとを備え、外周側直線部13aは、外周側傾斜部13bを介して管本体11の外周面に繋がっている。また、内周面形状は、内周側直線部13cと内周側傾斜部13dとを備え、内周側直線部13cは、内周側傾斜部13dを介して管本体11の内周面に繋がっている。受口部13xは、外周面から切削されるので、その加工面13eは、内周面に近づき、外周側直線部13aは、若干長くなり、外周側傾斜部13bは、若干短くなる(図5参照)。
図4に示すように、補強部15は、樹脂部14の外周に設けられるものであって、薄肉化された樹脂部14を補強するとともに受口部13の外周面を構成する。具体的に、補強部15は、樹脂部14よりも引張強度およびヤング係数が高い部分である。
一例として、水輸送管4として使用されるガラス繊維入りのポリエチレン管の引張強度とヤング率は以下の通りである。
引張強度:周方向…40MPa以上
軸方向…24MPa以上
ヤング係数:周方向…2500MPa以上
軸方向…1300MPa以上
また、水輸送管4として使用される高密度ポリエチレン管の引張強度とヤング率は以下の通りである。
引張強度:27MPa以上
ヤング係数:980MPa以上
これに対して、一例として、補強部15を構成する高強度繊維シート15aである炭素繊維クロスシートの引張強度とヤング率は以下の通りである。
引張強度(平均値):3400MPa
ヤング係数(平均値:)245000MPa
このように、補強部15は、樹脂部14よりも明らかに引張強度およびヤング係数が高い部分となっている。
補強部15は、一例として、シート材を樹脂部14の外周面に巻回して構成されている。更に具体的に、補強部15は、高強度繊維シート15aを樹脂部14の外周面に巻回して構成されている。補強材としての高強度繊維シート15aは、炭素繊維クロスシート、アラミド繊維シートなどである。高強度繊維シート15aの樹脂部14に対する巻き数は、受口部13に対して求められる強度や水輸送管4の口径にもよるが、1周~10周程度である。
高強度繊維シート15aとして、ここでは、炭素繊維クロスシートが用いられている。補強部15は、高強度繊維シート15aに対して含浸剤を含浸させた状態で、接着剤が塗布された樹脂部14の外周面に巻回される。ここで、樹脂部14と補強部15とを合わせた受口部13の全体厚さは受口管厚t4である。
一例として、補強部15の厚さである補強部厚t5は、受口部13xの切削分より薄くする。この場合、受口管厚t4は、加工前管厚t3より薄くなり(受口管厚t4<加工前管厚t3)、受口部13の受口外径D2は小径化される。一例として、図4に示すように、受口管厚t4は、管本体11の管厚tよりも薄くすることもできる(受口管厚t4<管厚t)。このように、受口部13は、受口管厚t4を加工前管厚t3より薄くしても、その強度を、補強部15の存在により受口部13xの強度と同程度またはそれよりも高くできる。
そして、受口部13の外周面と管本体11の外周面との段差は小さくなっている。これにより、既設管3内に挿入する際、段差が既設管3に引っかかりにくくなり円滑に挿入できる。
補強部15は、少なくとも外周側直線部13a上の一部に設けられる。好ましくは、補強部15は、受口部13の先端S1から外周側直線部13aと外周側傾斜部13bとの境界位置S2までの範囲(薄肉化のための加工面13e)に設けられる。このような範囲は、受口部13xが薄肉化され、強度が低くなった範囲なので、少なくとも当該範囲に補強部15が設けられる。図4の例では、さらに補強強度を高めるべく、外周側直線部13aの先端S1から外周側傾斜部13bと管本体11の外周面との境界位置S3まで設けられている。
ここで、樹脂部14は、ポリエチレンであるとき接着剤によって高強度繊維シート15aを接着しにくい。そこで、高強度繊維シート15aは、含浸剤を含浸させることで接着剤によって樹脂部14に強固に固定されるようにしている。また、含浸剤は、補強部15として外周面にも臨むものであり、既設管3と水輸送管4との隙間を埋める固化材とも接する。そこで、含浸剤としては、固化材の主成分である水酸化カルシウムに対して耐薬品性に優れるエポキシ樹脂が用いられる。より具体的には、エポキシ樹脂としては、熱硬化性樹脂である2液型エポキシ樹脂が用いられる。補強部15は、発熱体16によって加熱される部分でもあることから、発熱体16の加熱によっても劣化が生じないように熱硬化性樹脂が用いられる。
また、接着剤には、樹脂部14と補強部15とを強固に接着できるものが選択され、一例として、スチレンブタジエンゴム系溶剤形接着剤が用いられる。
樹脂部14には、発熱体16が配置されている。発熱体16は、コイル形状を有し、樹脂部14の内周面に固定されている。そして、発熱体16の接続端子が受口部13の外方に導出されている。発熱体16は、接続端子を介して制御装置に接続され、設定された通電条件で発熱し、樹脂部14を溶融する。樹脂部14の内径、すなわち受口部13の受口内径d2は、差口外径D1と同じ、または、ほぼ同じである。また、差口部12における管軸方向の差口長さは、受口部13における管軸方向の受口長さと同じ、または、ほぼ同じである。
<水輸送管の製造方法>
次に、以上のように構成された水輸送管4の製造方法について説明する。図6は、水輸送管4の製造方法の工程図である。水輸送管4は、一例として、巻付押出成形によって製造される。すなわち、溶融状態にある熱可塑性樹脂材料を押出機から押し出された帯状の面状樹脂を、回転している円筒形状を有した金型に対して螺旋状に一層または複数層、巻き付け、冷却固化させることによって成形される。
そして、工程P11では、図5に示す加工前の受口部13xを備える水輸送管4の受口部13xのバリの除去などの仕上げ処理がされる。工程P12において、受口部13xの反対側の差口部12のバリの除去などの仕上げ処理がされる。
工程P13において、受口部13の内周面、すなわち樹脂部14の内周面に発熱体16を配置する。工程P14において、発熱体16を覆うようにシートの貼り付けを行う。このシートは、差口部12の外周面と対向する受口部13の内周面を構成する。シートは、発熱体16を覆うことで、発熱体16表面の凹凸が受口部13の内周面に現れないようにする。これにより、受口部13には、内周面が平滑化されることで差口部12を円滑に挿入することができる。そして、工程P15において、発熱体16を発熱させて、発熱体16を樹脂部14の内周面に仮融着する。工程P16において、受口部13xの外周面を切削し、薄肉化する加工を行う。具体的に、加工前の受口部13xを切削し、加工前管厚t3が樹脂部厚t2になるまで切削する。ここで、補強部15を設ける前の樹脂部14の外径が寸法規格値以内かなどを検査する。
<補強部の固定方法>
工程P17において、樹脂部14の外周面には、補強部15が設けられる。ここで、図7は、工程P17における補強部15の固定方法を示す工程図である。
工程P21において、補強部15を設ける領域の周辺などを養生する。例えば、受口部13の内周面を養生テープで養生する。これにより、補強部15を樹脂部14の外周面に塗布するための接着剤が受口部13の内周面などに付着しないようにする。
工程P22において、補強部15を構成する補強材としての高強度繊維シート15aを所定長にカットする。高強度繊維シート15aは、一例として、炭素繊維クロスシートである。炭素繊維クロスシートは、一例として、次のような物性を有している。
・1方向高強度クロス
・繊維重量 200g/m
・シート厚さ 0.111mm
・密度 1.80g/cm
・引張強度(平均値) 3400MPa
・ヤング係数(平均値) 245000MPa
次いで、工程P23において、樹脂部14の外周面には、接着剤を塗布する。図8(a)および(b)は、接着剤を樹脂部14の外周面に塗布するための塗布ノズル21である。塗布ノズル21は、接着剤22を吐出するノズル部21aを有している。ノズル部21aの幅は、一例として、樹脂部14の外周面における管軸方向の長さに対応している。または、樹脂部14の外周面における管軸方向の長さよりも短い。
水輸送管4は、水輸送管4の管軸と回転軸が一致した回転軸体にセットされ管軸を中心に回転される(図8(b)中、矢印方向)。回転する水輸送管4の樹脂部14には、塗布ノズル21によって接着剤が塗布される。これにより、樹脂部14の外周面には、周回方向に接着剤22が塗布される。ノズル部21aは、均し部21bを備えている。接着剤22の塗工時、ノズル部21aは、樹脂部14の外周面に近づき、接着剤22を樹脂部14の外周面に塗工する。均し部21bは、樹脂部14の回転方向の下流側に位置して、樹脂部14の外周面に近接し、塗布される接着剤22の塗布厚を一定する。なお、接着剤の塗布量の目安は、70~100g/mである。
工程P24において、高強度繊維シート15aに含浸剤を含浸させる。含浸剤としては、一例として2液型エポキシ樹脂である。高強度繊維シート15aに対して含浸剤を含浸させる含浸装置は、2液の混合比率を管理し、混合されたエポキシ樹脂を高強度繊維シート15aに含浸させる。図9に示すように、工程P25において、樹脂部14の外周面に接着剤22が塗布された水輸送管4は、管軸を中心に回転され、回転する樹脂部14の外周面に対して、含浸剤23が含浸された高強度繊維シート15aが巻回される。工程P26において、補強部15は乾燥される。
そして、工程P18において、水輸送管4の検査を行う。具体的に、寸法検査と品質検査を行う。一例として、寸法検査では、受口内径d2が寸法規格値以内か、補強部15を設けた後の受口部13の受口外径D2が寸法規格値以内かなどを検査する。品質検査としては、受口部13に径方向の荷重を加え、例えば5%偏平で補強部15が剥がれていないかなどを検査する。
<水輸送管の接続方法>
以上のように製造された水輸送管4は、上記図1および図2に示すように、既設管3に設けられた開口部6から既設管3内に挿入される。水輸送管4は、管本体11の外周面と受口部13の外周面の段差も小さいことから、開口部6から既設管3内に円滑に挿入され、既設管3内を所定位置まで円滑に移動させることができる。
そして、既設管3内では、先に挿入された水輸送管4の差口部12または受口部13と、これの相手となる次に挿入された水輸送管4の受口部13または差口部12とが嵌合される。そして、接続される差口部12と受口部13とは、芯出しおよび仮固定され、さらに、固定具で固定される。次いで、外方に臨まされた発熱体16の接続端子に対して制御装置が接続される。制御装置は、設定された通電条件で発熱体16を所定時間発熱する。これにより、受口部13の内周面と差口部12の外周面は溶融され、その後、所定時間冷却されることによって固化され、両者は一体化される。その後、他の水輸送管4を接続していくことで、水輸送管路を構成することができる。
<実施形態の効果>
以上のような水輸送管4は、以下のように列挙する効果を得ることができる。
(1-1)受口部13において、樹脂部14の外周に補強部15が設けられることで、樹脂部14の薄肉化が可能となる。結果として、受口外径D2が小径化されることで、より管内径dの大きい水輸送管4の既設管3への挿入が可能となる。
(1-2)水輸送管4は、管本体11の外周面と受口部13の外周面の段差も小さいことから、開口部6から既設管3内に円滑に挿入し、既設管3内を所定位置まで円滑に移動させることができる。したがって、傾斜地における管路更新工事の作業が容易となる。
(1-3)樹脂部14の樹脂部厚t2は、管本体11の管厚tより薄くなるので(管厚t>樹脂部厚t2)、その分、受口外径D2を小径化できる。一例として、樹脂部14および補強部15を合わせた受口部13の受口管厚t4を、管本体11の管厚tより薄くすることで(受口管厚t4<管厚t)、さらに受口外径D2を小径化できる。
(1-4)補強部15は、管本体11や樹脂部14よりも引張強度およびヤング係数が高いので、樹脂部14を薄肉化しても、受口部13を高強度に維持できる。
(1-5)補強部15は、高強度繊維シート15aを樹脂部14に巻回して構成されている。高強度繊維シート15aは、管本体11や樹脂部14よりも引張強度およびヤング係数が高い。したがって、樹脂部14を薄肉化しても、その分の樹脂部14の強度低下を補強部15で補うことができる。例えば、受口管厚t4を管本体11の管厚tより薄くしても、その強度を、受口部13xの強度と同程度またはそれよりも高くできる。
(1-6)高強度繊維シート15aは、樹脂部14に対して固定のための含浸剤23が含浸されている。したがって、補強部15が接着剤22によって樹脂部14に対して強固に固定できる。
(1-7)水輸送管4は、ポリエチレン管であり、含浸剤23は、エポキシ樹脂である。したがって、ポリエチレン樹脂で構成された樹脂部14に対して補強部15を接着剤で強固に固定できる。
(1-8)水輸送管4は、受口部13の樹脂部14に発熱体16を備えている。したがって、受口部13は、差口部12と電気融着が可能となる。これにより、水輸送管4同士が電気融着継手で接続できる。
なお、以上のような水輸送管4は、さらに、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・水輸送管4の製造方法は、図6および図7の工程に限定されるものではない。一例として、図7における、補強材である高強度繊維シート15aを所定長にカットし(工程P22)、含浸剤23を高強度繊維シート15aに含浸させる(工程P24)。そして、樹脂部14の外周面に接着剤22を塗布し(工程P23)、樹脂部14の外周面に含浸剤23が含浸された高強度繊維シート15aを巻回する(工程P25)ようにしてもよい。
・発熱体16は、差口部12の外周面に配置するようにしてもよい。この場合、差口部12の外周面に配置した発熱体16をシートで覆い表面を平滑にし、仮融着するようにしてもよい(工程P13~工程P14参照)。これにより、差口部12は、受口部13に対して円滑に挿入できる。
・2つの水輸送管4を接続するにあたっては、電気融着継手に限定されるものではない。例えば、発熱体16を設けることなく、差口部12と受口部13とを接着剤で固定してもよいし、水膨張ゴムで構成された止水栓を差口部12の周囲に設けて差口部12と受口部13とを接続してもよい。また、止水栓は、水膨張機能を有しないスチレン・ブタジエンゴムやエチレン・プロピレン・ジエンゴムなどであってもよい。
・水輸送管4を構成する熱可塑性樹脂は、高密度ポリエチレン以外に、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂、アクリル樹脂(PMMA)などであってもよい。
・高強度繊維シート15aとしては、炭素繊維クロスシート、アラミド繊維シート以外であってもよい。一例として、超高分子ポリエチレンシートなどであってもよい。
・高強度繊維シート15aに含浸される含浸剤23は、エポキシ樹脂に限定されるものではなく、他の熱硬化性樹脂(フェノール樹脂、メラミン樹脂など)でもよい。
・高強度繊維シート15aは、含浸剤23を含浸させながら樹脂部14に巻回するのではなく、予め熱硬化性樹脂が含浸された高強度繊維シート15aを接着剤22が塗布された樹脂部14に巻回するようにしてもよい。
・補強部15は、高強度繊維シート15aよりも強度の低い通常のシートを樹脂部14に巻回して構成してもよい。さらに、シート材以外のもの、例えば樹脂部14と異なる樹脂によって補強部15を構成してもよい。
・水輸送管4として必要な強度が得られるのであれば、補強部15は、管本体11や樹脂部14よりも、引張強度およびヤング係数のうち何れか1つが高ければよい。また、水輸送管4として必要な強度が巻き数を増やすことなどで得られるのであれば、補強部15は、管本体11や樹脂部14よりも、引張強度およびヤング係数が低くてもよい。
・受口管厚t4は、加工前の受口部13xの加工前管厚t3より薄ければよい。したがって、受口管厚t4は、管本体11の管厚tより厚くてもよい。
・補強部15は、受口部13の先端S1から境界位置S3を過ぎ管本体11の外周面と重なる位置まで設けるようにし、受口部13および管本体11の強度を高めるようにしてもよい。
・差口部12は、外周面に止水材を追加してもよい。止水材としては、水膨張ゴムや水膨張機能を有しないスチレン・ブタジエンゴムやエチレン・プロピレン・ジエンゴムなどを使用するとよい。具体的に、差口部12の外周面には、その周回方向に凹溝を設け、凹溝にゴムを周回方向に配置すればよい。
・管路更新を行う管路としては、農業用水管路、水処理施設の管路、下水道施設の管路、工場内循環水管の管路、上水道の管路などに適用することも可能である。
・輸送する液体としては、水や海水の他に、下水であってもよいし、薬液であってもよい。
4…水輸送管
11…管本体
12…差口部
13…受口部
14…樹脂部
15…補強部
15a…高強度繊維シート
16…発熱体
22…接着剤
23…含浸剤

Claims (8)

  1. 既設管に挿入される内挿管となる液輸送管であって、
    熱可塑性樹脂により成形された管本体と、
    前記管本体の端部において、差口部が挿入される受口部とを備え、
    前記受口部は、前記管本体と一体の樹脂部と、前記樹脂部の外周において、前記樹脂部を補強する補強部とを備え
    前記受口部は、外周面形状が、外周側直線部と外周側傾斜部とを備え、前記外周側直線部が前記外周側傾斜部を介して前記管本体の外周面に繋がっており、
    前記外周側直線部における受口外径は、前記管本体の管外径より大径であるとともに、前記外周側直線部における受口内径は、前記管本体の管内径より大径であり、
    前記外周側直線部における前記樹脂部の管厚は、前記管本体の管厚より薄く構成され、
    前記補強部は、前記外周側直線部の先端から前記外周側直線部と前記外周側傾斜部との境界位置までの範囲に設けられている
    液輸送管。
  2. 前記補強部は、前記外周側直線部の先端から前記外周側傾斜部と前記管本体の外周面との境界位置まで設けられている
    請求項1に記載の液輸送管。
  3. 前記補強部は、少なくとも引張強度およびヤング係数のうちの1つが前記管本体よりも高く構成されている
    請求項1または2に記載の液輸送管。
  4. 前記補強部は、高強度繊維シートを前記樹脂部に巻回して構成されている
    請求項1ないし3のうち何れか1項に記載の液輸送管。
  5. 前記高強度繊維シートは、前記樹脂部に対して固定のための含浸剤が含浸されている
    請求項4に記載の液輸送管。
  6. 前記樹脂部は、ポリエチレン樹脂であり、
    前記含浸剤は、エポキシ樹脂である
    請求項5に記載の液輸送管。
  7. 前記樹脂部は、発熱体を備え、
    前記受口部は、前記差口部と電気融着される
    請求項1ないし6のうち何れか1項に記載の液輸送管。
  8. 既設管に挿入される内挿管となる液輸送管の製造方法であって、
    熱可塑性樹脂により成形された前記液輸送管の受口部となる部分を外周から薄肉化し、
    薄肉化された前記部分の外周に補強部を形成する
    液輸送管の製造方法。
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