JP7453937B2 - 鉄骨梁 - Google Patents
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Description
特に、鉄骨造においては、梁材を、梁端部としてのブラケットと、ブラケットよりも板厚が小さくなるように製造した梁中央部により実現し、柱に接合されたブラケットに梁中央部をボルト接手で接合すること等により、上記のような構造が実現され得る。
図11は、梁材に作用する曲げモーメントの説明図である。上記のような状況においては、図11に示されるように、梁端部に作用する曲げモーメント300が、梁材が柱に接合される接合面における最大曲げ耐力Mmaxに到達する前に、梁中央部と梁端部の断面切り替え位置301に作用する曲げモーメント302が、梁中央部を形成する鋼材の降伏曲げモーメント303を超え、これにより、梁中央部の、断面切り替え位置301近傍において、曲げ降伏ヒンジが形成されるという状況が生じ得る。
特に、梁スパンが長い構造物を施工する場合には、図11に示すようにモーメント勾配が緩やかになるために、板厚が僅かに薄い梁中央部において曲げ降伏ヒンジが形成されるという、上記のような状況が生じる可能性が高まることになる。
このような状況においては、板厚が小さい梁中央部に降伏領域が形成され、これを中心として局部座屈や横座屈が生じるため、変形性能が著しく低くなる。また、曲げ耐力も降伏ヒンジが形成される位置で決定づけられるので、梁端部で負担できる最大曲げモーメントも低くなる。
特許文献1に開示された構成においては、曲げ降伏ヒンジ形成領域における梁中央部材のウェブやフランジの板厚は、梁端部材のウェブやフランジの板厚よりも小さくなっているため、曲げ耐力が十分に確保されているわけではない。
また、特許文献2には、H形断面の梁の梁端部のウェブに、梁の軸方向と直交し、かつ軸方向に所定間隔で配置された複数の縦補剛部材を備える構成が開示されている。
特許文献3には、H形断面の梁端部の一方のフランジに、他方のフランジ側に向けて延び、かつ梁の軸方向に所定の長さを有する一方の補剛部材が設けられ、他方のフランジに、一方のフランジ側に向けて延び、かつ梁の軸方向に所定の長さを有する他方の補剛部材が設けられた構成が開示されている。
特許文献2、3に開示されたような構成においても、特許文献1と同様であり、曲げ耐力が十分に確保されているわけではない。
梁中央部に位置する鋼材の板厚を薄くして鋼材に要するコストを抑えつつも、座屈を抑制して曲げ耐力を効率的に確保することが、望まれている。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の鉄骨梁は、鋼製柱に接合され、フランジ及びウェブを有するH形断面またはI形断面の鉄骨梁であって、前記鋼製柱に接合される梁端部と、当該梁端部に接合される梁中央部と、を備え、前記フランジ及び前記ウェブのいずれか一方においては、前記梁端部の板厚が前記梁中央部の板厚よりも大きく、他方においては、前記梁端部の板厚が前記梁中央部の板厚以上であり、前記梁端部は、前記鋼製柱に接合される第1梁端部と、一方端が前記第1梁端部に接合され、他方端が前記梁中央部に接合される第2梁端部とを備え、前記第1梁端部と前記第2梁端部とは高力ボルトで接合されていることを特徴とする。
このような構成によれば、地震時に作用する曲げモーメントが小さい梁中央部において、梁端部に比べて、フランジやウェブの板厚が小さくなるように設計することができる。
また、地震発生時には、鉄骨梁において、フランジまたはウェブの各板厚が小さくなり、断面積が最小化される梁端部と梁中央部の断面切り替え位置で曲げ降伏ヒンジは形成されず、曲げ耐力を決定づける梁端部では断面切り替え位置より鉄骨梁の断面積が大きいために、急激な耐力低下を防止しつつ、変形性能を維持することが可能となる。このため、板厚が小さい梁中央部に曲げ降伏ヒンジが形成される場合に比べると、鉄骨梁の最大曲げ耐力は大きい。
また、第1梁端部を鋼製柱に接合することで、いわゆる鋼製ブラケット付の鋼製柱を構成することができる。このような鋼製ブラケット付の鋼製柱を鉄骨製作工場から施工現場に搬入する際、鋼製柱の表面から突出する鋼製ブラケット(第1梁端部)の長さが短くて済むので、車両による運搬性が高まる。また、施工現場では、第1梁端部と第2梁端部とを高力ボルトで接合することで、梁端部を形成することができる。さらに、梁端部の第2梁端部と梁中央部とを、ボルト継手または溶接継手等の既往の手法で接合することで、梁端部と梁中央部とを確実に接合し、曲げモーメントやせん断力を確実に伝達可能な鉄骨梁を実現できる。
このようにして、鋼材に要するコストを抑えつつ、座屈を抑制して曲げ耐力を確保することが可能な、鉄骨梁を実現することができる。
このような構成によれば、地震が発生して、鉄骨梁に曲げモーメントが作用した際に、梁端部に作用する曲げモーメントが、鉄骨梁が鋼製柱と接合される接合面において最大曲げモーメントに到達する場合であっても、梁中央部と梁端部との断面が切り替わる位置及び当該位置よりも梁中央部側に作用する曲げモーメントは、梁中央部を形成する鋼材の降伏耐力より小さくなる。これにより、梁中央部で曲げ降伏ヒンジが形成されることが抑制され、梁中央部における弾性が保たれて、局部座屈や横座屈の急激な進展が抑制され、変形性能が確保される。
このため、座屈を抑制して曲げ耐力を確保することが可能な、鉄骨梁を実現することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明による鉄骨梁を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態に係る鉄骨梁の構成を示す斜視図を図1に示す。
図1に示されるように、本実施形態に係る鉄骨梁3は、建物の躯体を構成する柱梁架構1において、互いに隣り合う鋼製柱2同士の間に架設される。この鉄骨梁3は、梁端部4と、梁中央部5と、を備える。
梁端部4は、鉄骨梁3の延伸方向の両端部に設けられている。梁端部4は、鋼製柱2に接合されている。梁端部4は、H形断面またはI形断面を有した鋼材からなり、上下方向に間隔をあけて設けられたフランジ41、42と、フランジ41、42の間に設けられたウェブ43と、を一体に有している。フランジ41、42は、それぞれ水平面に沿って形成され、鉄骨梁3の延伸方向に帯状に延びている。ウェブ43は、鉄骨梁3の延伸方向を含む鉛直面に沿って形成され、フランジ41とフランジ42とを接続する。
本実施形態において、梁端部4は、第1梁端部4Aと、第2梁端部4Bと、を備えている。第1梁端部4Aは、フランジ41、42、及びウェブ43の一部を形成するフランジ41A、42A、及びウェブ43Aを有している。第2梁端部4Bは、フランジ41、42、及びウェブ43の一部(残部)を形成するフランジ41B、42B、及びウェブ43Bを有している。第1梁端部4Aと第2梁端部4Bとは、同一断面形状、同一断面積で形成されている。第1梁端部4Aのフランジ41A、42A、及びウェブ43Aと、第2梁端部4Bのフランジ41B、42B、及びウェブ43Bとは、それぞれ同一の板厚を有している。
第1梁端部4Aは、鋼製柱2の表面2sに、溶接により一体に接合されている。第2梁端部4Bは、一方端が第1梁端部4Aに接合され、他方端が梁中央部5に接合されている。第1梁端部4Aと第2梁端部4Bとは、ジョイントプレート71、高力ボルト72を用いたボルト継手によって、フランジ41Aとフランジ41B、フランジ42Aとフランジ42B、ウェブ43Aとウェブ43Bとが、それぞれ接合されている。高力ボルト72は通常のボルトよりも高い強度を有するため、第1梁端部4Aと第2梁端部4Bを強固に接合して応力を十分に伝達することができる。
梁中央部5と、第2梁端部4Bの、第1梁端部4Aとは反対側の端部(他方端)とは、溶接継手によって、フランジ51とフランジ41B、フランジ52とフランジ42B、ウェブ53とウェブ43Bとが、それぞれ接合されている。
施工現場では、第1梁端部4Aと第2梁端部4Bとを高力ボルト72で接合することで、梁端部4を形成する。さらに、梁端部4の第2梁端部4Bと梁中央部5とを、溶接継手で接合することで、鉄骨梁3が架設される。このとき、第2梁端部4Bと梁中央部5とを、工場や施工現場の低所で予め接合しておき、梁中央部5に第2梁端部4Bが一体に接合された梁ユニット9を形成するようにしてもよい。この場合には、この梁ユニット9を吊り上げ、その端部(第2梁端部4B)を第1梁端部4Aに高力ボルト72で接合すればよい。これにより、第2梁端部4Bに梁中央部5を接合する作業を高所で行わなくて済む。
本実施形態の鉄骨梁3においては、梁端部4のフランジ41、42、及びウェブ43の板厚が、梁中央部5のフランジ51、52、及びウェブ53の板厚よりもそれぞれ大きい。また、図3に示すように、梁端部4が延在して設けられる、鋼製柱2の表面2sからの材軸区間Aは、鉄骨梁3に作用する曲げモーメントKが、梁中央部5における降伏耐力E5に比べて同等以上となるような区間として、設定されている。換言すれば、地震時に梁中央部5に作用する曲げモーメントが、梁中央部5の梁断面形状と鋼材強度から算定される梁中央部5における降伏耐力に比べて同等以下となるように、梁端部4が延在する鋼製柱2の表面2sからの材軸区間Aが設定されている。
鉄骨梁3においては、地震時に作用する最大曲げ耐力Mmaxは、梁端部4において鋼製柱2の表面2sに接合される柱接合部4j(図3参照)に生じる。このため、梁端部4のフランジ41、42、及びウェブ43の板厚を梁中央部5のフランジ51、52、及びウェブ53の板厚よりも大きくすることで、梁端部4に作用する曲げモーメントKに対する曲げ耐力が確保される。梁中央部5においては、地震時に作用する曲げモーメントKが、梁端部4に作用する曲げモーメントKよりも小さい。このため、梁中央部5のフランジ51、52、及びウェブ53の板厚を梁端部4のフランジ41、42、及びウェブ43の板厚よりも小さくしても、梁中央部5に作用する曲げモーメントKによって降伏・座屈しないように梁端部4の曲げ耐力E4と梁中央部5の降伏耐力E5を設定することで、梁中央部5に作用する曲げモーメントKに対する曲げ耐力が確保される。
そこで、地震時に梁中央部5(端部に限らず梁中央部5の全体)で曲げ降伏ヒンジが形成されず、弾性域に保つことで、梁中央部5の局部座屈や横座屈の急激な伸展を抑制する必要がある。これには、梁端部4の鋼製柱2との柱接合部4jに作用する曲げモーメントKが梁端部4の最大曲げ耐力Mmaxに達した状態であっても、梁端部4と梁中央部5との接合部Jに作用する曲げモーメントKが梁中央部5の降伏耐力E5より小さくなるように、鋼製柱2の表面2sから、梁端部4と梁中央部5との接合部Jまでの長さ、すなわち梁端部4の鋼製柱2の表面2sからの材軸区間Aを設定するのが好ましい。
すなわち、曲げモーメントKを、梁端部4の梁断面形状と鋼材強度から算定して、図3に示されるように柱接合部4jから梁中央部5に向かうにつれ漸次小さくなるような直線による分布として表したときに、曲げモーメントKが、梁中央部5の梁断面形状と鋼材強度から算定される梁中央部5における降伏耐力E5よりも同等以上となる部分を少なくとも含むように、材軸区間Aは設定されている。
これにより、梁端部4と梁中央部5との接合部Jで曲げ降伏ヒンジを形成させず、鋼製柱2に接合される鉄骨梁3の梁端に作用する曲げモーメントKが、鋼製柱2との柱接合部4jの梁端面で最大曲げ耐力Mmaxに達するまで耐力上昇を可能とする。
上記のように、曲げ降伏ヒンジでは、部材断面が降伏し、ヒンジのように回転剛性を失うと定義して、地震発生時には、鉄骨梁において断面切り替え位置より梁中央部側では降伏耐力を超える曲げが作用しないように定める。
図4は、本実施形態における材軸区間の設定方法の流れを示すフローチャートである。図5は、鉄骨梁の各部の寸法を示す図である。
図4に示すように、本実施形態における材軸区間Aの設定方法は、梁端部4と梁中央部5の鋼材諸元を決定する工程S11と、梁端部4における最大曲げ耐力Mmaxを算出する工程S12と、梁中央部5における降伏耐力Myを算出する工程S13と、材軸区間Aの長さを決定する工程S14と、を備える。
梁端部4における最大曲げ耐力Mmaxを算出する工程S12では、工程S11で決定した梁端部4の鋼材諸元を基に、次式(1)、(2)を用いて、梁端部4における最大曲げ耐力Mmaxを算出する。
Mmax=α・Mp …(1)
Mp=Zpx・σy …(2)
ここで、Mpは全塑性モーメントであり、σyは使用する鋼材の降伏応力度であり、係数αは鋼材のひずみ硬化による耐力上昇を見込んだ値として設定され、例えば1.1とする。
Zpxは、次式(3)で表される。
My=Zx・σy …(4)
Zxは、次式(5)により表される。
Zx=(Af+Aw/6)(H―tf) …(5)
材軸区間Aの長さを決定する工程S14では、次式(6)を用い、図3に示す梁端部4の材軸区間Aの最低限の長さを算出する。
y=-(Mmax/0.5L)x + Mmax …(6)
ここで、上式(6)は、図2に示した鉄骨梁3における曲げモーメントKの分布を示す線を一次関数式として表したものである。上式(6)において、Lは鉄骨梁3の全長であり、xは、鉄骨梁3における鋼製柱2の表面2sからの距離、yは距離xの位置における曲げモーメントである。これにより、梁端部4の鋼製柱2との柱接合部4jに作用する曲げモーメントが梁端部4の最大曲げ耐力(Mmax)に達した状態で、梁端部4と梁中央部5との接合部Jに作用する曲げモーメントが梁中央部5の降伏耐力(My)となる、材軸区間Aの長さがxとして算出される。
この工程S14では、材軸区間Aの長さを、x以上となるように決定する。
上記のような材軸区間Aの設定方法の計算例を以下に示す。
例えば、鉄骨梁3を構成する梁端部4、梁中央部5を、490N級鋼の鋼材を用いて形成し、鉄骨梁3の全長Lを15000mmとする。
このような鉄骨梁3の梁端部4を、高さH=700mm、フランジ41、42の幅B=300mm、ウェブ43の板厚tw=16mm、フランジ41、42の板厚tf=22mmとすると、上式(1)で求められる梁端部4における最大曲げ耐力Mmaxは、2437kNmとなる。
また、梁中央部5の高さH=700mm、フランジ51、52の幅B=300mm、ウェブ53の板厚tw=12mm、フランジ51、52の板厚tf=19mmとすると、上式(4)で求められる梁中央部5における降伏耐力Myは、1647kNmとなる。
得られた降伏耐力My=1647kNmを、上式(6)のyに代入すると、材軸区間Aの最低限の長さ(x)は、2431mmと算出される。したがって、この場合、材軸区間Aの長さを、2431mm以上と設定する。
鉄骨梁3の高さH=700mm、幅B=300mm、全長Lを18000mmとした場合、梁端部4の材軸区間Aの長さは、例えば3000mm以上とするのが好ましい。
ここで、上記のような各例において、全長Lが10000mmの場合、細長比λは150程度、全長Lが15000mmの場合、細長比λは230程度、全長Lが18000mmの場合、細長比λは280程度、である。細長比λは、鉄骨梁3の断面と全長Lとの相関に基づいて、横座屈の起こりやすさ等を考慮するために用いられる。
このような構成によれば、地震時に作用する曲げモーメントKが小さい梁中央部5において、梁端部4に比べて、フランジ51、52やウェブ53の板厚が小さくなるように設計することができる。このため、鋼材に要するコストを低減可能である。
また、地震発生時には、鉄骨梁3において、フランジまたはウェブの各板厚が小さくなり、断面積が最小化される梁端部4と梁中央部5の断面切り替え位置で曲げ降伏ヒンジは形成されず、曲げ耐力を決定づける梁端部4では断面切り替え位置より鉄骨梁3の断面積が大きいために、急激な耐力低下を防止しつつ、変形性能を維持することが可能となる。また、板厚が小さい梁中央部5に曲げ降伏ヒンジが形成される場合に比べると、鉄骨梁3の最大曲げ耐力は大きい。
また、第1梁端部4Aを鋼製柱2に接合することで、いわゆる鋼製ブラケット付の鋼製柱2を構成することができる。このような鋼製ブラケット付の鋼製柱2を鉄骨製作工場から施工現場に搬入する際、鋼製柱2の表面から突出する鋼製ブラケット(第1梁端部4A)の長さが短くて済むので、車両による運搬性が高まる。また、施工現場では、第1梁端部4Aと第2梁端部4Bとを高力ボルト72で接合することで、梁端部4を形成することができる。さらに、梁端部4の第2梁端部4Bと梁中央部5とを、溶接継手で接合することで、梁端部4と梁中央部5とを確実に接合し、曲げモーメントやせん断力を確実に伝達可能な鉄骨梁を実現できる。
このようにして、鋼材に要するコストを抑えつつ、座屈を抑制して曲げ耐力を確保することが可能な、鉄骨梁3を実現することができる。
このような構成によれば、地震発生時には、鉄骨梁3に曲げモーメントが作用した際に、梁端部4に作用する曲げモーメントKが、鉄骨梁3が鋼製柱2に接合される接合面2sにおける最大曲げ耐力Mmaxに到達した場合であっても、梁中央部5と梁端部4の、板厚が切り替わる位置J及び当該位置Jよりも梁中央部5側に作用する曲げモーメントKは、梁中央部5を形成する鋼材の降伏耐力より小さくなる。これにより、梁中央部5で曲げ降伏ヒンジが形成されることが抑制され、梁中央部5における弾性が保たれて、局部座屈や横座屈の急激な進展が抑制され、変形性能が確保される。
このため、座屈を抑制して曲げ耐力を確保することが可能な、鉄骨梁3を実現することができる。
上記したような鋼製の鉄骨梁3について有限要素解析による検討を行ったので、その結果を以下に示す。
ここでは、図6Aに示すように、検討対象の鉄骨梁3の梁端部4を、材軸区間Aの長さ2500mm、高さH=900mm、フランジ41、42の幅B=300mm、ウェブ43の板厚tw=22mm、フランジ41、42の板厚tf=28mmとした。梁中央部5を、高さH=900mm、フランジ51、52の幅B=300mm、ウェブ53の板厚tw=19mm、フランジ51、52の板厚tf=25mmとした。
比較のため、図6Bに示すような鉄骨梁100と、図6Cに示すような鉄骨梁200と、を用いた。鉄骨梁100は、図6Bに示すように、ウェブ103の両側面に、上下に延びてフランジ101、102同士を連結する補剛プレート105を設けた。鉄骨梁200は、図6Cに示すように、ウェブ203の両側面に、フランジ201、202の中間部において、鉄骨梁200の延伸方向に延びる補剛プレート206を設けた。
これらの鉄骨梁3、100、200について、梁端部に曲げモーメントを作用させる有限要素解析を行った。その結果を図7に示す。
この図7に示すように、本実施形態の構成を適用した鉄骨梁3においては、比較例としての鉄骨梁100、200と同等以上の曲げ耐力と変形性能が得られることが確認された。
なお、本発明の鉄骨梁は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、第2梁端部4Bと梁中央部5とを溶接継手で接合するにようにしたが、これに限られない。
図8は、本発明の実施形態の第1変形例に係る鉄骨梁の構成を示す斜視図である。
例えば、図8に示すように、鉄骨梁3Bを構成する第2梁端部4Bと梁中央部5とを、ボルト継手により接合するようにしてもよい。
より詳細には本変形例の鉄骨梁3Bにおいては、梁中央部5と、第2梁端部4Bの、第1梁端部4Aとは反対側の端部(他方端)とは、ジョイントプレート81、ボルト82を用いたボルト継手によって、フランジ51とフランジ41B、フランジ52とフランジ42B、ウェブ53とウェブ43Bとが、それぞれ接合されている。
また、上記実施形態、及び第1変形例では、梁端部4を構築するに際し、フランジ41、42及びウェブ43の板厚が、梁中央部5のフランジ51、52及びウェブ53の板厚より大きい鋼材を用いたが、これに限らない。
図9は、本発明の実施形態の第2変形例に係る鉄骨梁の構成を示す斜視図である。
例えば、図9に示すように、鉄骨梁3Cの梁端部4を構成する第2梁端部4Bを、梁中央部5と同一の鋼材により梁中央部5と一体に形成したうえで、これに当て板90を溶接して板厚が厚くなるようにフランジ41B、42B及びウェブ43Bを形成することで、構築してもよい。このようにすることで、梁端部4と梁中央部5の間で、曲げモーメントやせん断力を確実に伝達することができる。
また、上記実施形態では、梁端部4のフランジ41、42、及びウェブ43の各々の板厚が、梁中央部5のフランジ51、52、及びウェブ53の板厚よりもそれぞれ大きくしたが、これに限らない。
図10は、本発明の実施形態の第3変形例に係る鉄骨梁の構成を示す斜視図である。
例えば、図10に示すように、鉄骨梁3Dの梁端部4のウェブ43の板厚が梁中央部5のウェブ53の板厚よりも大きく、梁端部4のフランジ41、42の板厚が梁中央部5のフランジ51、52の板厚と同じであってもよい。この場合には、例えば第2梁端部4Bのフランジ41B、42Bを梁中央部5のフランジ51、52と同一の鋼材によりそれぞれ一体に形成し、第2梁端部4Bのウェブ43Bと梁中央部5のウェブ53を溶接接合したウェブ63と溶接組立することで、第2梁端部4Bと梁中央部5を構築してもよい。
あるいは、上記実施形態において説明したように、梁端部4のフランジ41、42の板厚が梁中央部5のフランジ51、52の板厚よりも大きく、梁端部4のウェブ43の板厚が梁中央部5のウェブ53の板厚と同じであってもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
2s 表面 51、52 梁中央部のフランジ
3、3B、3C、3D 鉄骨梁 53 梁中央部のウェブ
4 梁端部 72 高力ボルト
4A 第1梁端部 A 材軸区間
4B 第2梁端部 E4 梁端部の曲げ耐力
5 梁中央部 E5 梁中央部の降伏耐力
41、42 梁端部のフランジ K 曲げモーメント
Claims (2)
- 鋼製柱に接合され、フランジ及びウェブを有するH形断面またはI形断面の鉄骨梁であって、
前記鋼製柱に接合される梁端部と、当該梁端部に接合される梁中央部と、を備え、
前記フランジ及び前記ウェブのいずれか一方においては、前記梁端部の板厚が前記梁中央部の板厚よりも大きく、他方においては、前記梁端部の板厚が前記梁中央部の板厚以上であり、
前記梁端部は、前記鋼製柱に接合される第1梁端部と、一方端が前記第1梁端部に接合され、他方端が前記梁中央部に接合される第2梁端部とを備え、
前記第1梁端部と前記第2梁端部とは高力ボルトで接合されていることを特徴とする鉄骨梁。 - 前記梁端部は、地震時に前記梁中央部に作用する曲げモーメントが、前記梁中央部の梁断面形状と鋼材強度から算定される前記梁中央部における降伏耐力に比べて同等以下となるように、前記鋼製柱の表面からの材軸区間にわたって延在して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の鉄骨梁。
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