以下、図面を参照して実施形態について説明する。
[モータ制御システムの構成]
最初に、図1を参照して、モータ制御システム1について説明する。
図1は、本実施形態に係るモータ制御システム1の構成の一例を示す図である。
モータ制御システム1は、制御装置500によりクローポールモータ100の駆動制御を行う。
図1に示すように、モータ制御システム1は、クローポールモータ100と、電力変換装置200と、電流センサ300と、温度センサ400と、制御装置500とを含む。
クローポールモータ(「クローポール電動機」とも称する)100(回転電機の一例)は、モータ制御システム1の制御対象の同期電動機(SM:Synchronous Motor)である。クローポールモータ100は、例えば、空気調和機の圧縮機、ファン等に搭載され、これらを駆動する。
電力変換装置200は、制御装置500の制御下で、交流電源PSから供給される三相交流電力(R相、S相、及びT相)に基づき、所定の電圧及び周波数の三相交流電力(U相、V相、及びW相)を生成し、クローポールモータ100に供給する。
電力変換装置200は、整流回路202と、平滑回路204と、インバータ回路206とを含む。
整流回路202は、交流電源PSから供給されるR相、S相、及びT相の三相交流電力を整流し、所定の直流電力を平滑回路204に出力する。整流回路202は、例えば、6つのダイオードがブリッジ接続されるブリッジ型全波整流回路である。
平滑回路204は、整流回路202から出力される直流電力やインバータ回路206から回生される直流電力の脈動を抑制し、平滑化する。平滑回路204は、例えば、整流回路202とインバータ回路206との間を接続する正ライン及び負ラインの間を接続する経路に設けられる平滑コンデンサを含む。また、平滑回路204は、例えば、正ライン或いは負ラインに設けられる直流リアクトルを含む。
インバータ回路206は、平滑回路204から出力される直流電力を所定の周波数や所定の電圧を有する、U相、V相、及びW相の三相交流電力に変換してクローポールモータ100に出力する。インバータ回路206は、例えば、6つのスイッチング素子を含み、2つのスイッチング素子により構成される、上下アーム(スイッチレグ)の組み合わせが、正ライン及び負ラインの間に3組並列接続される。そして、インバータ回路206は、U相、V相、及びW相のそれぞれに対応する上下アームの中間点からU相、V相、及びW相の交流電力を出力する。また、インバータ回路206は、例えば、6つの環流ダイオードを含み、6つのスイッチング素子には、それぞれ、環流ダイオードが並列接続される。
電流センサ300は、クローポールモータ100(コイル212)に流れる電流を検出する。電流センサ300は、クローポールモータ100(コイル212)に流れる電流に関する信号を出力し、その出力信号は、所定の通信回線を通じて、制御装置500に取り込まれる。
所定の通信回線は、例えば、一対一の通信線である。また、所定の通信回線には、例えば、クローポールモータ100が搭載される所定の機器(例えば、上述のファンや圧縮機尾が搭載される空気調和機)が設置される施設内のローカルネットワーク(LAN:Local Area Network)が含まれてもよい。この場合、ローカルネットワークは、有線であってもよいし、無線であってもよいし、その双方を含む態様であってもよい。また、所定の通信回線には、例えば、広域ネットワーク(WAN:Wide Area Network)が含まれてもよい。この場合、広域ネットワークには、例えば、基地局を末端とする移動体通信網、通信衛星を利用する衛星通信網、インターネット網等が含まれてよい。また、所定の通信回線には、例えば、WiFiやブルートゥース(登録商標)等の所定の無線通信規格に基づく近距離通信回線が含まれてもよい。また、所定の通信回路の規格に応じて、電流センサ300の出力信号が演算処理され、演算処理後の信号が、所定の通信回路を通じて制御装置500に取り込まれてもよい。以下、温度センサ400の出力信号についても同様であってよい。例えば、電流センサ300の出力信号を電流振幅に換算した信号が、所定の通信回路を通じて制御装置500に取り込まれてもよい。
電流センサ300は、U相(後述のクローポール型固定子ユニット21A)のコイル212の電流を検出するU相電流センサ300uと、W相(後述のクローポール型固定子ユニット21C)のコイル212の電流を検出するW相電流センサ300wとを含む。また、電流センサ300は、U相電流センサ300u或いはW相電流センサ300wに代えて、V相(後述のクローポール型固定子ユニット21B)のコイル212の電流を検出するV相電流センサを含んでもよい。
温度センサ400は、コイル212の温度を測定する。また、温度センサ400は、コイル212の温度を推定するために必要なクローポールモータ100の部位等の温度を測定してもよい。例えば、温度センサ400は、コイル212の温度状態との相関が高いクローポールモータ100の部位の温度を測定する温度センサと、外気温を測定する温度センサとを含んでもよい。コイル212の温度状態との相関が高いクローポールモータ100の部位は、例えば、後述のステータコア211やクローポールモータ100の筐体(ヒートシンク)等である。温度センサ400は、温度の測定値に関する信号を出力し、その出力信号は、所定の通信回線を通じて、制御装置500に取り込まれる。
制御装置500は、電力変換装置200を制御し、電力変換装置200を用いて、クローポールモータ100の駆動制御を行う。具体的には、制御装置500は、電力変換装置200を用いて、所定の運転条件(負荷条件)を満足するようにクローポールモータ100の動作点(例えば、後述の電流振幅Ia及び電流位相β等)を制御する。
制御装置500は、例えば、クローポールモータ100と共に所定の機器(例えば、クローポールモータ100により駆動されるファンや圧縮機が搭載される空気調和機)に搭載される。また、制御装置500は、例えば、クローポールモータ100が搭載される所定の機器から離れた場所に配置されてもよい。具体的には、制御装置500は、クローポールモータ100が搭載される所定の機器と同じ施設内に配置されるコンピュータ端末であってよい。また、制御装置500は、クローポールモータ100が搭載される所定の機器が設置される施設とは異なる場所に配置されるサーバ装置であってもよい。この場合、サーバ装置は、例えば、クローポールモータ100が搭載される所定の機器が設置される施設の遠隔に配置される管理センタ等に設けられるクラウドサーバであってよい。また、サーバ装置は、例えば、クローポールモータ100が搭載される所定の機器が設置される施設内或いは当該施設から相対的に近い施設(例えば、基地局や局舎等の通信施設)に設けられるエッジサーバであってもよい。
[クローポールモータの構成]
次に、図2~図7を参照して、本実施形態に係るクローポールモータ100について説明する。
図2は、本実施形態に係るクローポールモータ100(回転子10)の一例を示す斜視図である。図3は、本実施形態に係るクローポールモータ100の固定子20の一例を示す斜視図である。具体的には、図3は、図2において、回転子10(ロータコア11、永久磁石12、及び回転軸部材13)の図示を省略した図である。図4は、クローポールモータ100の一例を示す縦断面図である。図5は、回転子10の他の例を示す横断面図である。図6、図7は、本実施形態に係る固定子ユニット21の構成の一例及び他の例を示す分解図である。
尚、図2では、簡単のため、後述する連結部材14の図示が省略されている。また、図3では、簡単のため、爪磁極部211B2の図示が省略されている。
図2に示すように、クローポールモータ100は、アウタロータ型であり、複数相(本例では、3相)の電機子電流で駆動される。
図2~図4に示すように、クローポールモータ100は、回転子10と、固定子20と、固定部材30とを含む。
図2、図4に示すように、回転子(「ロータ」とも称する)10は、固定子20に対して、クローポールモータ100の径方向(以下、単に「径方向」)の外側に配置され、回転軸心AXまわりに回転可能に構成される。回転子10は、永久磁石界磁であり、ロータコア11と、複数(本例では、20個)の永久磁石12と、回転軸部材13とを含む。
尚、回転子10は、クローポールモータ100が同期電動機として機能することが可能であれば、任意の形態であってよい。
ロータコア(「回転子鉄心」とも称する)11は、例えば、略円筒形状を有し、クローポールモータ100の回転軸心AXと円筒形状の軸心とが略一致するように配置される。"略"は、例えば、製造上の誤差等を許容する意図であり、以下、同様の意図で用いる。また、ロータコア11は、クローポールモータ100の軸方向(以下、単に「軸方向」)において、固定子20と略同等の長さを有する。ロータコア11は、例えば、電磁鋼板、鋳鉄、圧粉磁心等の軟磁性体により形成される。ロータコア11は、例えば、図2に示すように、軸方向において、一の部材で構成される。また、ロータコア11は、例えば、軸方向に積層される複数のロータコア(例えば、後述する固定子ユニット21A~21Cのそれぞれに対応する3つのロータコア)で構成されてもよい。
複数の永久磁石12は、電機子としての固定子20と鎖交する磁界を発生させる。
図2に示すように、永久磁石12は、例えば、ロータコア11の内周面において、周方向に略等間隔で複数(本例では、20個)並べられてよい。つまり、クローポールモータ100は、表面磁石型(SPM:Surface Permanent Magnet)であってよい。
また、図5に示すように、永久磁石12は、例えば、ロータコア11に埋設される形で、周方向に略等間隔で複数(本例では、16個)並べられてもよい。つまり、クローポールモータ100は、埋込磁石型(IPM:Interior permanent Magnet)であってもよい。
複数の永久磁石12は、それぞれ、ロータコア11の軸方向の略一端から略他端までの間に存在するように形成されている。永久磁石12は、例えば、ネオジム焼結磁石やフェライト磁石である。
複数の永久磁石12は、それぞれ、径方向の両端に異なる磁極が着磁されている。また、複数の永久磁石12のうちの周方向で隣接する二つの永久磁石12は、固定子20に面する径方向の内側に互いに異なる磁極が着磁されている。そのため、固定子20の径方向の外側には、周方向で、径方向の内側にN極が着磁された永久磁石12と、径方向の内側にS極が着磁された永久磁石12とが交互に配置される。
複数の永久磁石12は、それぞれ、軸方向において、一の磁石部材で構成されていてもよいし、軸方向に分割される複数(例えば、積層されるロータコア11の部材の数に対応する3つ)の磁石部材で構成されていてもよい。この場合、軸方向に分割される永久磁石12を構成する複数の磁石部材は、固定子20に面する径方向の内側に全て同じ磁極が着磁される。
尚、周方向に配置される複数の永久磁石12は、例えば、周方向で異なる磁極が交互に着磁される円環状のリング磁石やプラスチック磁石等、周方向において、一の部材で構成される永久磁石に置換されてもよい。この場合、周方向において、一の部材で構成される永久磁石は、軸方向においても、一の部材で構成され、全体として、一の部材で構成されてもよい。また、周方向において、一の部材で構成される永久磁石は、複数の永久磁石12の場合と同様、軸方向において、複数の部材に分割されていてもよい。また、周方向において、一の部材で構成されるプラスチック磁石が採用される場合、ロータコア11は、省略されてもよい。
回転軸部材13は、例えば、略円柱形状を有し、クローポールモータ100の回転軸心AXと円柱形状の軸心とが略一致するように配置される。回転軸部材13は、例えば、挿通部材24の軸方向の両端部に設けられるベアリング25,26(図4参照)によって回転可能に支持される。後述の如く、挿通部材24は、固定部材30に固定される。これにより、回転軸部材13は、固定部材30に対して回転軸心AX回りで回転することができる。回転軸部材13は、例えば、軸方向において、クローポールモータ100の固定部材30側の端部とは反対側の端部(以下、便宜的に「クローポールモータ100の先端部」)で、連結部材14(図4参照)を介して、ロータコア11と連結される。
連結部材14は、例えば、ロータコア11の略円筒形状の開放端を閉塞する形の略円板形状を有してよい。これにより、ロータコア11及びロータコア11の内周面に固定される複数の永久磁石12は、回転軸部材13の回転に合わせて、固定部材30に対してクローポールモータ100の回転軸心AXまわりに回転することができる。
尚、回転軸部材13は、固定部材30に代えて、クローポールモータ100の先端部側において、図示しない筐体にベアリング等を介して回転可能に支持されてもよい。この場合、挿通部材24において、回転軸部材13を挿通する挿通孔24H(図3参照)が省略される。
図3、図4に示すように、固定子(「ステータ」とも称する)20は、回転子10(ロータコア11及び永久磁石12)の径方向の内側に配置される。固定子20は、電機子であり、複数(本例では、3つ)のクローポール型固定子ユニット(以下、単に「固定子ユニット」)21と、複数(本例では、2つ)の相間部材22と、端部部材23と、挿通部材24とを含む。
尚、相間部材22、端部部材23、挿通部材24は、いずれも必須ではなく、適宜省略されてもよい。
図5、図6に示すように、固定子ユニット21は、一対のステータコア211と、コイル212とを含む。
一対のステータコア(「固定子鉄心」とも称する)211は、コイル212の周囲を取り囲むように設けられる。ステータコア211は、例えば、圧粉磁心等の軟磁性体で形成される。ステータコア211は、ヨーク部211Aと、複数の爪磁極(「クローポール」とも称する)211Bと、ヨーク部211Cと、挿通孔211Dとを含む。
ヨーク部211Aは、軸方向視で略円環形状を有すると共に、軸方向に所定の厚みを有する。
複数の爪磁極211Bは、ヨーク部211Aの外周面において、周方向に等間隔で配置され、それぞれは、ヨーク部211Aの外周面から径方向の外側に向かって突出する。爪磁極211Bは、爪磁極部211B1を含む。
爪磁極部211B1は、所定の幅を有し、ヨーク部211Aの外周面から所定の長さだけ延び出す形で突出する。
また、爪磁極211Bは、更に、爪磁極部211B2を含む。これにより、コイル212の電機子電流により磁化される爪磁極211Bの磁極面と回転子10との対向面積を相対的に広く確保することができる。そのため、クローポールモータ100の出力トルクを相対的に増加させ、クローポールモータ100の出力を向上させることができる。
爪磁極部211B2は、爪磁極部211B1の先端から一対のステータコア211の他方に向かって軸方向に所定の長さだけ延び出す形で突出する。例えば、図6に示すように、爪磁極部211B2は、爪磁極部211B1からの距離に依らず幅が一定であってよい。また、例えば、図7に示すように、爪磁極部211B2は、爪磁極部211B1から軸方向で離れるにつれて幅が狭くなるテーパ形状を有してもよい。
尚、爪磁極部211B2は、省略されてもよい。
ヨーク部211Cは、ヨーク部211Aの内周面付近の部分が一対のステータコア211の他方に向かって所定量だけ突出する形で構成され、例えば、軸方向視でヨーク部211Aより外径が小さい円環形状を有する。これにより、一対のステータコア211は、互いのヨーク部211Cの先端部で当接し、一対のステータコア211に対応する一対のヨーク部211Aや爪磁極211B(爪磁極部211B1)の間にコイル212を収容する空間が生成される。
挿通孔211Dには、挿通部材24が挿通される。挿通孔211Dは、ヨーク部211A及びヨーク部211Cの内周面によって実現される。
コイル(「巻線」とも称する)212は、固定子20の軸心(即ち、クローポールモータ100の回転軸心AX)を略中心として、軸方向視で導線が円環状に巻き回されることにより構成される。コイル212の導線は、例えば、軸方向で複数の層を成すように巻き回されてもよいし、径方向で複数の列を成すように巻き回されてもよいし、軸方向で複数の層を成し且つ径方向で複数の列を成すように巻き回されてもよい。また、コイル212の導線は、例えば、断面が円形の丸線である。また、コイル212の導線は、例えば、断面が矩形の角線や平角線であってもよい。複数相(本例では、3相)のコイル212同士がY結線(スター結線)で接続される場合、コイル212は、その一端が外部端子に電気的に繋がっており、その他端が中性点に電気的に繋がっている。また、例えば、複数相のコイル212同士がΔ結線(デルタ結線)で接続される場合、コイル212は、その一端がクローポールモータ100の一の外部端子(同じ相の外部端子)に電気的に繋がっており、その他端がクローポールモータ100の他の外部端子(異なる相の外部端子)に電気的に繋がっている。コイル212は、軸方向において、一対のステータコア211(ヨーク部211A)の間に配置される。また、コイル212は、内周部が一対のステータコア211のヨーク部211Cよりも径方向で外側になるように巻き回されている。
尚、ステータコア211とコイル212の導線との間には、ステータコア211とコイル212の導線との間を電気的に絶縁する絶縁部が配置される。絶縁部は、例えば、ステータコア211とコイル212との間に配置される、絶縁紙、樹脂成形されたインシュレータ、シリコンゴム、ステータコア211或いはコイル212に対する樹脂モールド等である。また、絶縁部は、例えば、コイル212の導線の表面に設けられる樹脂の絶縁皮膜であってもよい。
図2に示すように、一対のステータコア211は、一方のステータコア211の爪磁極211Bと他方のステータコア211の爪磁極211Bとが周方向で交互に配置されるように組み合わせられる。また、円環状のコイル212に電機子電流が流れると、一対のステータコア211のうちの一方に形成される爪磁極211Bと他方に形成される爪磁極211Bとは、互いに異なる磁極に磁化される。これにより、一対のステータコア211において、一方のステータコア211から突出する一の爪磁極211Bは、周方向で隣接し、他方のステータコア211から突出する他の爪磁極211Bと異なる磁極を有する。そのため、コイル212に流れる電機子電流により、一対のステータコア211の周方向には、N極の爪磁極211B及びS極の爪磁極211Bが交互に配置される。
図3、図4に示すように、複数の固定子ユニット21は、軸方向に積層される。
複数の固定子ユニット21には、複数相(本例では、3相)分の固定子ユニット21が含まれる。具体的には、複数の固定子ユニット21は、U相に対応する固定子ユニット21Aと、V相に対応する固定子ユニット21Bと、W相に対応する固定子ユニット21Cとを含む。複数の固定子ユニット21は、クローポールモータ100の先端部から、U相に対応する固定子ユニット21A、V相に対応する固定子ユニット21B、及びW相に対応する固定子ユニット21Cの順で積層される。固定子ユニット21A~21Cは、互いに、周方向の位置が電気角で120°異なるように配置される。
尚、クローポールモータ100は、2相の電機子電流で駆動されてもよいし、4相以上の電機子電流で駆動されてもよい。
相間部材22は、軸方向で隣接する異なる相の固定子ユニット21の間に設けられる。相間部材22は、例えば、非磁性体である。これにより、異なる相の二つの固定子ユニット21の間に所定の距離を確保し、異なる相の二つの固定子ユニット21の間での磁束漏れを抑制することができる。相間部材22は、UV相間部材22Aと、VW相間部材22Bとを含む。
UV相間部材22Aは、軸方向で隣接する、U相の固定子ユニット21AとV相の固定子ユニット21Bとの間に設けられる。UV相間部材22Aは、例えば、所定の厚みを有する略円柱形状(略円板形状)を有し、中心部分に挿通部材24が挿通される挿通孔が形成される。以下、VW相間部材22Bについても同様であってよい。
VW相間部材22Bは、軸方向で隣接する、V相の固定子ユニット21BとW相の固定子ユニット21Cとの間に設けられる。
端部部材23は、積層される複数の固定子ユニット21のクローポールモータ100の先端部側の端部に設けられる。具体的には、端部部材23は、軸方向において、固定子ユニット21Aの固定子ユニット21Bに面する側と反対側の端面に接するように設けられる。端部部材23は、例えば、所定の厚みを有する略円柱形状(略円板形状)を有し、中心部分に挿通部材24が挿通される挿通孔が形成される。端部部材23は、例えば、非磁性体である。これにより、固定子ユニット21A(具体的には、クローポールモータ100の先端部側のステータコア211)からの磁束漏れを抑制することができる。
尚、複数の固定子ユニット21のクローポールモータ100の基端側(即ち、固定部材30側)の端部に端部部材23が設けられてもよい。この場合、クローポールモータ100の基端側の端部部材23は、固定子ユニット21Cと固定部材30との間に配置される。
挿通部材24は、クローポールモータ100の先端部側から順に、端部部材23、固定子ユニット21A、UV相間部材22A、固定子ユニット21B、VW相間部材22B、固定子ユニット21Cを挿通した状態で、先端部が固定部材30に固定される。挿通部材24は、例えば、先端部に雄ねじ部を有し、固定部材30の対応する雌ネジ部に締め込まれることにより固定部材30に固定される。また、挿通部材24は、例えば、略円筒形状を有し、内周面により実現される挿通孔24Hに回転軸部材13が回転可能に配置される。また、挿通部材24は、クローポールモータ100の先端側において、固定子ユニット21の挿通孔211Dの内径よりも相対的に大きい外径を有する頭部を有する。これにより、例えば、挿通部材24が固定部材30にある程度締め込まれることで、頭部から端部部材23に軸方向で固定部材30に向かう方向の力を作用させることができる。そのため、複数の固定子ユニット21(固定子ユニット21A~21C)及び相間部材22(UV相間部材22A、VW相間部材22B)を端部部材23及び固定部材30で挟み込む形で固定部材30に固定することができる。圧粉磁心は、引張応力に対する強度が相対的に低い一方、圧縮応力に対する強度が相対的に高い。よって、圧粉磁心で形成されるステータコア211に圧縮応力が作用する形で、固定子ユニット21A~21Cに固定することができる。
尚、挿通部材24以外の部材により、複数の固定子ユニット21及び相間部材22を端部部材23及び固定部材30で挟み込む形で固定部材30に固定することが可能であれば、挿通部材24は、固定部材30と一体化され、一の部材として構成されてもよい。
固定部材30は、例えば、軸方向視で回転子10(ロータコア11)よりも大きい外径の略円板形状を有する。固定部材30には、上述の如く、挿通部材24を介して、回転子10が回転可能に支持され、固定子20が固定される。
固定部材30は、例えば、軸方向で固定子20と面する領域以外の領域において、段差形状、フィン形状、ピン形状等を有してもよい。これにより、固定部材30は、その表面積が相対的に大きくなり、外気への放熱を促進することができる。そのため、コイル212で発生する熱が伝導される際の固定部材30の温度上昇を更に抑制し、コイル212で発生する熱を確実に固定部材30に移動させ、コイル212の冷却を促進させることができる。
[制御装置の構成]
次に、図8を参照して、本実施形態に係る制御装置500について説明する。
図8は、本実施形態に係る制御装置500の構成の一例を示す機能ブロック図である。
尚、図8では、位置及び回転数に関するブロックや信号線の図示が省略される。以下、位置及び回転数に関するブロックや信号線の説明を省略する。また、以下の説明において、d軸は、界磁(回転子10)の磁極中心軸を意味し、q軸は、d軸に対して、電気角での直角方向を意味する。また、電流位相βは、q軸電流に対する進み位相角度を意味する。
制御装置500は、温度情報取得部501と、モータ制御部502と、電流検出部504と、変換部506と、PI(Proportional Integral)制御部508と、変換部510と、駆動指令生成部512とを含む。
温度情報取得部501は、温度センサ400の出力信号に基づき、コイル212の温度に関する情報を取得する。
温度情報取得部501は、例えば、温度センサ400の出力信号に基づき、温度センサ400によるコイル212の温度の測定値を取得する。また、温度情報取得部501は、例えば、温度センサ400の出力信号に基づき、温度センサ400によるコイル212の温度状態との相関が高いクローポールモータ100の部位の温度の測定値を取得し、当該部位の温度をコイル212の温度として取得してもよい。当該部位の温度とコイル212の温度との間の差が小さいとみなすことが可能な場合があるからである。また、温度情報取得部501は、温度センサ400の出力信号に基づき、コイル212の温度の推定値を取得してよい。具体的には、温度情報取得部501は、温度センサ400の出力信号に基づき、温度センサ400によるコイル212の温度状態との相関が高いクローポールモータ100の部位の温度等の測定値を取得し、この測定値からコイル212の温度を推定してもよい。また、温度情報取得部501は、コイル212の温度上昇の傾き等から、将来のコイル212の温度を推定してもよい。
また、温度情報取得部501は、温度センサ400の出力信号に依らず、クローポールモータ100の運転状態等から、既知のアルゴリズムを用いて、コイル212の温度を推定し、その推定値を取得してもよい。クローポールモータ100の運転状態には、例えば、回転数、電流、電圧、電力等が含まれる。
モータ制御部502は、温度情報取得部501により取得されるコイル温度情報、及び入力される運転条件を示す制御指令(以下、「運転指令」)に基づき、クローポールモータ100のd軸電流及びq軸電流に関する制御指令i*
d,i*
qを生成し出力する。
電流検出部504は、電流センサ300(U相電流センサ300u、W相電流センサ300w)から取り込まれる信号に基づき、クローポールモータ100(コイル212)のU相、V相、及びW相のうちの少なくとも2相の電流を検出する。そして、電流検出部504は、検出したU相、V相、及びW相のうちの少なくとも2相の電流に関する信号を出力する。電流検出部504から出力される信号には、例えば、U相及びW相のそれぞれの電流検出値i^u,i^wが含まれる。
変換部506は、電流検出部504から出力される、U相、V相、及びW相の少なくとも2相の電流検出値、例えば、電流検出値i^u,i^wを、磁極位置の情報に基づき、dq座標系の電流検出値i^d,i^qに変換し出力する。
PI制御部508は、モータ制御部502及び変換部506から出力される制御指令i*
d,i*
q及び電流検出値i^d,i^qの偏差に基づき、PI制御を行う。そして、PI制御部508は、クローポールモータ100のd軸及びq軸の電圧に関する制御指令v*
d,v*
qを出力する。
変換部510は、PI制御部508から出力される、クローポールモータ100のd軸及びq軸の電圧に関する制御指令v*
d,v*
qを、磁極位置の情報に基づき、クローポールモータ100のU相、V相、及びW相のそれぞれの電圧に関する制御指令v*
u,v*
v,v*
wに変換し出力する。
駆動指令生成部512は、変換部510から出力される、クローポールモータ100のU相、V相、及びW相のそれぞれの電圧に関する制御指令v*
u,v*
v,v*
wに基づき、インバータ回路206を駆動する駆動指令を生成する。具体的には、駆動指令生成部512は、インバータ回路206の6つのスイッチング素子のそれぞれのゲートを駆動するPWM(Pulse Width Modulation)波形を生成し、各ゲートに出力する。これにより、インバータ回路206は、制御装置500の制御下で、クローポールモータ100を制御し、力行運転させたり、回生運転させたりすることができる。
[電流位相と出力トルク及び運転効率と関係]
次に、図9、図10を参照して、本実施形態に係るクローポールモータ100に流れる電流の電流位相βと出力トルク及び運転効率との間の関係について説明する。
図9、図10は、クローポールモータ100に流れる電流の電流位相と出力トルク及び運転効率との関係の一例及び他の例を示す図である。具体的には、図9、図10は、同じ出力トルクを前提としたときの、最大トルク運転時の鉄損が銅損の3倍及び10倍のクローポールモータ100に流れる電流の電流位相と電流振幅及び運転効率との関係の具体例を示す図である。
尚、図9、図10では、クローポールモータ100がSPM(表面磁石型)の場合を例示している。
クローポールモータ100では、コイル212は、上述の如く、円環状であるため、導線の整列巻きが比較的容易に実現可能である。また、コイル212の周長も相対的に短くなる。そのため、クローポールモータ100の銅損は、相対的に小さくなる。
一方、ステータコア211は、コイル212の周囲を取り囲むように設けられるため、磁路が相対的に長くなる。そのため、ステータコア211の鉄損は、相対的に大きくなる。よって、クローポールモータ100では、極数や回転数によっては、鉄損が銅損の数倍になり、10倍以上に至る場合もあり得る。
例えば、図9、図10に示すように、SPMのクローポールモータ100では、電流位相βが0度~5度のときに同じ出力トルクに対して、電機子電流が最小となり、最大トルク運転が実現されている。
クローポールモータ100の銅損は、電気子電流の二乗に比例するので、最大トルク運転時の位相角βtqで銅損は最小となる。一方、クローポールモータ100の鉄損は、最大トルク運転時の位相角βtqより電流位相βを進めると低減する。そして、図9、図10の例では、クローポールモータ100の最大トルク運転時の鉄損が銅損の3倍或いは10倍であることから、電流位相βを位相角βtqよりある程度進めた位相角βeffのときに、同じ出力トルクに対して全損失(鉄損及び銅損の合計)が最小となる最大効率運転が実現される。具体的には、図9の例では、電流位相βが20度~25度のときに最大効率運転が実現されている。また、図10の例では、30度~35度のときに最大効率運転が実現されている。
このように、クローポールモータ100では、最大トルク運転時の鉄損が銅損の数倍から十倍以上に及ぶ場合がある。そのため、仮に、クローポールモータ100の最大トルク運転を前提とすると、クローポールモータ100の銅損は最小になるものの、鉄損が非常に大きくなる。その結果、最大トルク運転時の運転効率と、最大効率運転のときの運転効率とが大きく解離し、クローポールモータ100の運転効率が相対的に低くなる可能性がある。
尚、最大効率運転及び最大トルク運転のそれぞれに対応する位相角βeff,βtqは、クローポールモータ100の形状や損失比、運転条件(動作点)によって異なる。クローポールモータ100がSPMの場合、概ね、位相角βeffは、20°~50°程度となり、位相角βtqは、0°~10°程度となる。
[クローポールモータの制御方法の概要]
図11、図12を参照して、制御装置500によるクローポールモータ100の制御方法の概要について説明する。
<制御方法の一例>
図11は、クローポールモータ100の制御方法の一例の概要を説明する図である。具体的には、図11は、同じ運転条件下(具体的には、同じ出力トルクの条件下)での表面磁石型同期電動機(SPMSM)としてのクローポールモータ100の電流位相βと電機子電流(電流振幅Ia)及び全損失との関係を示す図である。クローポールモータ100の全損失は、クローポールモータ100の鉄損及び銅損の合計である。
SPMSMの出力トルクTは、クローポールモータ100に固有の定数である、極対数Pn及び永久磁石12の磁束Φa、並びにq軸電流iqを用いて、以下の式(1)で表される。
また、d軸電流id及びq軸電流iqは、電流振幅ia(電流ベクトルの大きさ)及び電流位相βを用いて、以下の式(2),(3)で表される。
そのため、クローポールモータ100の出力トルクTは、cosβが1のとき、即ち、電流位相βが0度のときに最大になり、電流位相βが0度から外れると、相対的に小さくなる。よって、図11に示すように、同じ運転条件(同じ出力トルクの条件)下で、SPMSMのクローポールモータ100は、電流位相βが0度のときに、電機子電流(電流振幅ia)が最小の最大トルク運転となる。そして、電流位相βが0度から外れると、電機子電流(電流振幅ia)は、相対的に大きくなる。
但し、電機子反作用等の影響などもあるため、上述の図9、図10の場合のように、最大トルク運転に対応する電流位相β(位相角βtq)が0度よりも大きい角度に外れる場合もあり得る。そのため、SPMSMのクローポールモータ100の最大トルク運転に対応する位相角βtqは、例えば、0度~10度の範囲と想定される。
一方、クローポールモータ100は、上述の如く、最大トルク運転時の鉄損が銅損の数倍から10倍以上に至る場合がある。そのため、図11に示すように、クローポールモータ100は、最大トルク運転時の全損失が相対的に大きく、最大トルク運転時よりも電流位相βがある程度進められた角度(位相角βeff)で、全損失が最小の最大効率運転が実現される。
制御装置500(モータ制御部502)は、電力変換装置200(インバータ回路206)に出力する駆動指令を調整することにより、ある運転条件において、電流振幅ia及び電流位相βを図11の実線上で移行させることができる。これにより、制御装置500は、電力変換装置200を用いて、図11の実線上の複数の動作点でクローポールモータ100を駆動制御することができる。
そこで、本例では、制御装置500は、最大トルク運転時(位相角βtq)よりも電流位相βをある程度進角させた第1の動作点(位相角β1及び電流振幅I1)でクローポールモータ100を運転させる。これにより、制御装置500は、クローポールモータ100の運転効率を相対的に高くすることができる。
但し、第1の動作点では、最大トルク運転時よりも電流振幅Iaが相対的に大きくなるため、コイル212の温度が相対的に高くなる可能性がある。
そこで、本例では、制御装置500は、コイル212の温度が相対的に高い状態では、第1の動作点よりも電流位相βを遅角させ、電流振幅を相対的に小さくした第2の動作点(位相角β2及び電流振幅I2)でクローポールモータ100を運転する。
第1の動作点の位相角β1は、第2の動作点でクローポールモータ100が運転される場合よりも全損失が相対的に小さくなるような電流位相βであればよい。図11に示すように、位相角β1は、例えば、20度~50度の範囲であってよい。また、位相角β1は、例えば、最大効率運転に対応する位相角βeff或いはその近傍の位相角であってもよい。"近傍"は、制御時の目標に対する誤差を許容する意図であり、電力変換装置200を用いるクローポールモータ100の制御上で想定される誤差の範囲と等価であってよい。これにより、制御装置500は、クローポールモータ100は、略最大効率で運転することができる。
第2の動作点の位相角β2は、第1の動作点でクローポールモータ100が運転される場合よりも電流振幅Iaが相対的に小さくなるような電流位相βであればよい。位相角β2は、例えば、0度~10度の範囲であってよい。また、位相角β2は、例えば、最大トルク運転に対応する位相角βtq或いはその近傍の位相角であってよい。これにより、制御装置500は、電機子電流(電流振幅ia)を略最小に抑制し、コイル212の温度上昇を抑制することができる。
また、位相角β1,β2の差は、20度以上であってよい。例えば、電力変換装置200を用いるクローポールモータ100の制御の精度によっては、目標の電流位相βに対して実際の電流位相βが10度程度ずれるような場合もあり、制御上のずれ(ふらつき)を超える差を設けることが好ましいからである。
このように、本例では、制御装置500は、コイル212の温度が相対的に低い場合、電流位相βが相対的に進角され且つ電流振幅Iaが相対的に大きい第1の動作点(位相角β1及び電流振幅I1)でSPMSMのクローポールモータ100を運転する。一方、制御装置500は、コイル212の温度が相対的に高い場合、電流位相βが相対的に遅角され且つ電流振幅Iaが相対的に小さい第2の動作点(位相角β2及び電流振幅I2)でSPMSMのクローポールモータ100を運転する。
これにより、制御装置500は、SPMSMのクローポールモータ100の運転効率の向上と、コイル212の温度上昇の抑制とを両立させることができる。
<制御方法の他の例>
図12は、クローポールモータ100の制御方法の他の例の概要を説明する図である。具体的には、図12は、同じ運転条件下(具体的には、同じ出力トルクの条件下)での埋込磁石型同期電動機(IPMSM)としてのクローポールモータ100の電流位相βと電機子電流(電流振幅Ia)及び全損失との関係を示す図である。
IPMSMの出力トルクTは、クローポールモータ100の固有の定数である、極対数Pn、永久磁石12の磁束Φa、d軸インダクタンスLd、及びq軸インダクタンスLq、並びにd軸電流id及びq軸電流iqを用いて、以下の式(4)で表される。
d軸電流id及びq軸電流iqは、上述の式(2),(3)で表される。そのため、IPMSMの出力トルクTは、式(2),(3)を用いることで、以下の式(5)で表される。
式(5)の第1項は、マグネットトルクを表し、第2項は、突極性によるリラクタンストルクを表す。第1項のマグネットルクは、SPMSMの場合と同様、電流位相βが0度のときに最大になる。第2項のリラクタンストルクは、45度のときに最大になる。そして、第1項及び第2項の和としてのIPMSMの出力トルクTは、0度~45度の範囲で最大になる。よって、図12に示すように、同じ運転条件(同じ出力トルクの条件)下で、IPMSMのクローポールモータ100は、電流位相βが0度~45度の範囲の位相角βtqで、電機子電流(電流振幅ia)が最小の最大トルク運転となる。そして、電流位相βが位相角βtqを外れると、電機子電流(電流振幅ia)は、相対的に大きくなる。具体的には、一般的に、IPSMSのクローポールモータ100の最大トルク運転時の位相角βtqは、以下の式(6)で表される。
一方、クローポールモータ100は、上述の如く、最大トルク運転時の鉄損が銅損の数倍から10倍以上に至る場合がある。そのため、図12に示すように、クローポールモータ100は、SPMSMの場合と同様、最大トルク運転時の全損失が相対的に大きく、最大トルク運転時よりも電流位相βがある程度進められた位相角βeffで、全損失が最小の最大効率運転が実現される。
本例では、制御装置500は、上述の一例と同様、最大トルク運転時(位相角βtq)よりも電流位相βをある程度進角させた第1の動作点(位相角β1及び電流振幅I1)でクローポールモータ100を運転させる。これにより、制御装置500は、クローポールモータ100の運転効率を相対的に高くすることができる。
一方、制御装置500は、上述の一例と同様、コイル212の温度が相対的に高い状態では、第1の動作点よりも電流位相βを遅角させ、電流振幅を相対的に小さくした第2の動作点(位相角β2及び電流振幅I2)でクローポールモータ100を運転する。
第1の動作点の位相角β1は、上述の一例と同様、第2の動作点でクローポールモータ100が運転される場合よりも全損失が相対的に小さくなるような電流位相βであればよい。図12に示すように、位相角β1は、例えば、30度~70度の範囲であってよい。また、位相角β1は、例えば、最大効率運転に対応する位相角βeff或いはその近傍の位相角であってもよい。これにより、制御装置500は、クローポールモータ100を略最大効率で運転することができる。
第2の動作点の位相角β2は、上述の一例と同様、第1の動作点でクローポールモータ100が運転される場合よりも電流振幅Iaが相対的に小さくなるような電流位相βであればよい。位相角β2は、例えば、10度~40度の範囲であってよい。また、位相角β2は、例えば、上述の一例の場合と同様、最大トルク運転に対応する位相角βtq或いはその近傍の位相角であってもよい。これにより、制御装置500は、電機子電流(電流振幅ia)を略最小に抑制し、コイル212の温度上昇を抑制することができる。
また、位相角β1,β2の差は、上述の一例と同様、20度以上であってよい。
このように、本例では、制御装置500は、コイル212の温度が相対的に低い場合、電流位相βが相対的に進角され且つ電流振幅Iaが相対的に大きい第1の動作点(位相角β1及び電流振幅I1)でIPMSMのクローポールモータ100を運転する。一方、制御装置500は、コイル212の温度が相対的に高い場合、電流位相βが相対的に遅角され且つ電流振幅Iaが相対的に小さい第2の動作点(位相角β2及び電流振幅I2)でIPMSMのクローポールモータ100を運転する。
これにより、制御装置500は、IPMSMのクローポールモータ100の運転効率の向上と、コイル212の温度上昇の抑制とを両立させることができる。
[クローポールモータの制御方法の詳細]
次に、図13~図15を参照して、制御装置500によるクローポールモータ100の制御方法の詳細について説明する。
<制御方法の第1例>
図13は、制御装置500によるクローポールモータ100の動作点の移行に関する制御処理(以下、「動作点移行制御処理」)の第1例を示す図である。具体的には、コイル212の温度と動作点(電流位相β)との間の関係を示す図である。
図13に示すように、制御装置500は、コイル212の温度が所定値T11(所定の温度の一例)以下である場合、電流位相βが位相角β1になるように制御し、クローポールモータ100を第1の動作点(電流振幅I1及び位相角β1)で運転する。具体的には、モータ制御部502は、温度情報取得部501により取得されるコイル212の温度が所定値T11以下である場合、第1の動作点に対応するクローポールモータ100のd軸電流及びq軸電流に関する制御指令i*
d,i*
qを生成し出力する。これにより、上述の如く、クローポールモータ100の運転効率を高い状態を維持できる。
また、制御装置500は、コイル212の温度が所定値T11より高い場合、電流位相βが位相角β1より遅角させた位相角β2になるように制御し、クローポールモータ100を第2の動作点(電流振幅I2及び位相角β2)で運転する。具体的には、モータ制御部502は、温度情報取得部501により取得されるコイル212の温度が所定値T11より高い場合、第2の動作点に対応するクローポールモータ100のd軸電流及びq軸電流に関する制御指令i*
d,i*
qを生成し出力する。これにより、上述の如く、コイル212の温度が相対的に高い状態で、電流振幅Iaを低減し、コイル212の温度上昇を抑制することができる。
このように、本例(第1例)では、制御装置500は、所定値T11をコイル212の温度に関する境界にして、クローポールモータ100の動作点を第1の動作点及び第2の動作点の間で切り替えることができる。
尚、クローポールモータ100の動作点の切り替えは、電流位相βに関する制御指令を、位相角β1と位相角β1との間で不連続的に切り替える方法で実現されてよい。また、クローポールモータ100の動作点の切り替えは、電流位相βに関する制御指令を、ステップ状に、或いは、徐々に、位相角β1と位相角β2との間で切り替える方法等で実現されてもよい。
<制御方法の第2例>
図14は、制御装置500による動作点移行制御処理の第2例を説明する図である。具体的には、コイル212の温度とクローポールモータ100の動作点(電流位相β)との間の関係を示す図である。
図14に示すように、制御装置500は、コイル212の温度が所定値T21(所定の温度の一例)以下である場合、電流位相βが位相角β1になるように制御し、クローポールモータ100を第1の動作点で運転する。具体的には、モータ制御部502は、温度情報取得部501により取得されるコイル212の温度が所定値T21以下である場合、第1の動作点に対応するクローポールモータ100のd軸電流及びq軸電流に関する制御指令i*
d,i*
qを生成し出力する。これにより、上述の如く、クローポールモータ100の運転効率を高い状態を維持できる。
また、制御装置500は、コイル212の温度が所定値T21より大きい所定値T22以上である場合、電流位相βが位相角β1より遅角させた位相角β2になるように制御し、クローポールモータ100を第2の動作点(電流振幅I2及び位相角β2)で運転する。具体的には、モータ制御部502は、温度情報取得部501により取得されるコイル212の温度が所定値T22以上である場合、第2の動作点に対応するクローポールモータ100のd軸電流及びq軸電流に関する制御指令i*
d,i*
qを生成し出力する。これにより、上述の如く、コイル212の温度が相対的に高い状態で、電流振幅Iaを低減し、コイル212の温度上昇を抑制することができる。
また、制御装置500は、コイル212の温度が所定値T21と所定値T22との間にある場合、電流位相βが位相角β1と位相角β2との間の位相角になるようにクローポールモータ100のd軸電流及びq軸電流に関する制御指令i*
d,i*
qを生成し出力する。具体的には、制御装置500は、コイル212の温度が所定値T21と所定値T22との間にある場合、コイル212の温度の上昇に合わせて、電流位相βが位相角β1から位相角β2に向かって略線形的に変化するように、電流位相βを制御する。また、制御装置500は、コイル212の温度が所定値T21と所定値T22との間にある場合、コイル212の温度の下降に合わせて、電流位相βが位相角β2から位相角β1に向かって略線形的に変化するように、電流位相βを制御する。
このように、本例では、制御装置500は、所定値T21と所定値T22との間の温度範囲をコイル212の温度に関する境界にして、クローポールモータ100の動作点を第1の動作点及び第2の動作点の間で略線形的に移行させることができる。
<制御方法の第3例>
図15は、制御装置500による動作点移行制御処理の第3例を説明する図である。具体的には、コイル212の温度とクローポールモータ100の動作点(電流位相β)との間の関係を示す図である。
まず、コイル212の温度が上昇している状態(図15の一点鎖線の矢印)を考える。
制御装置500は、コイル212の温度が所定値T31a(所定の温度の一例)以下である場合、電流位相βが位相角β1になるように制御し、クローポールモータ100を第1の動作点(電流振幅I1及び位相角β1)で運転する。具体的には、モータ制御部502は、温度情報取得部501により取得されるコイル212の温度が所定値T31a以下である場合、第1の動作点に対応するクローポールモータ100のd軸電流及びq軸電流に関する制御指令i*
d,i*
qを生成し出力する。これにより、上述の如く、クローポールモータ100の運転効率を高い状態を維持できる。
また、制御装置500は、コイル212の温度が所定値T31aより高い場合、電流位相βが位相角β1より遅角させた位相角β2になるように制御し、クローポールモータ100を第2の動作点(電流振幅I2及び位相角β2)で運転する。具体的には、モータ制御部502は、温度情報取得部501により取得されるコイル212の温度が所定値T31aより高い場合、第2の動作点に対応するクローポールモータ100のd軸電流及びq軸電流に関する制御指令i*
d,i*
qを生成し出力する。これにより、上述の如く、コイル212の温度が相対的に高い状態で、電流振幅Iaを低減し、コイル212の温度上昇を抑制することができる。
続いて、コイル212の温度が下降している状態(図15の二点鎖線の矢印)を考える。
制御装置500は、コイル212の温度が所定値T31aより低い(小さい)所定値T31b(所定の温度の一例)より高い場合、電流位相βが位相角β2になるように制御し、クローポールモータ100を第2の動作点(電流振幅I2及び位相角β2)で運転する。これにより、上述の如く、コイル212の温度が相対的に高い状態で、電流振幅Iaを低減し、コイル212の温度上昇を抑制することができる。
また、制御装置500は、コイル212の温度が所定値T31b以下である場合、電流位相βが位相角β1になるように制御し、クローポールモータ100を第1の動作点(電流振幅I1及び位相角β1)で運転する。これにより、制御装置500は、コイル212の温度の低下に合わせて、クローポールモータ100の運転効率を高い状態に復帰させることができる。
このように、本例(第3例)では、制御装置500は、クローポールモータ100の動作点を第2の動作点から第1の動作点に切り替える温度条件(所定値T31b)よりも逆に切り替える温度条件(所定値T31a)を高くすることができる。そのため、例えば、第1の動作点に対応する温度条件と第2の動作点に対応する温度条件との間をコイル212の温度が行ったり来たりして、クローポールモータ100の動作点が頻繁に切り替わるような事態を抑制することができる。
尚、上述の第2例のように、クローポールモータ100の動作点を第1の動作点及び第2の動作点の間で線形的に移行させる温度範囲が設けられる場合についても、本例と同様の制御方法が採用されてよい。具体的には、クローポールモータ100の動作点を第2の動作点から第1の動作点に移行させる温度範囲よりも逆に切り替える温度範囲が高くなるように設定されるとよい。これにより、同様の作用・効果を奏する。
<制御方法の第4例>
本例では、制御装置500は、コイル212の温度に関する情報を用いずに、動作点移行制御処理を行う。そのため、本例の場合、温度情報取得部501は、省略されてもよい。
本例では、制御装置500は、クローポールモータ100の運転状態やコイル212の温度以外の温度に関する情報に基づき、制御マップを用いて、クローポールモータ100の動作点を第1の動作点及び第2の動作点の間で移行させる。クローポールモータ100の運転状態は、例えば、回転数、電流、電圧、電力等を含む。コイル212の温度以外の温度に関する情報は、例えば、外気温やクローポールモータ100のコイル212以外の部位の温度等である。
制御マップは、例えば、上述の第1例~第3例の何れかのコイル212の温度とクローポールモータ100の動作点(電流位相β)との関係を満足するように、実験やシミュレーションを通じて予め規定される。これにより、制御装置500は、制御マップを用いて、コイル212の温度が相対的に低い場合、クローポールモータ100を第1の動作点で制御し、コイル212の温度が相対的に高い場合、クローポールモータ100を第2の動作点で制御することができる。そのため、制御装置500は、クローポールモータ100の運転効率の向上と、コイル212の温度上昇の抑制とを両立させることができる。
このように、本例(第4例)では、制御装置500は、制御マップを用いることで、コイル212の温度状態に合わせて、クローポールモータ100の動作点を第1の動作点及び第2の動作点の間で移行させることができる。
[作用]
次に、本実施形態に係るモータ制御システム1(制御装置500)の作用について説明する。
本実施形態では、制御装置500は、電力変換装置200を用いてクローポールモータ100の動作点を制御し、クローポールモータ100の同じ負荷条件を少なくとも2以上の動作点により制御可能に構成されるモータ制御部502を備える。そして、モータ制御部502は、クローポールモータ100のコイル212の温度が所定の温度以下の場合、第1の動作点(電流振幅I1、位相角β1)でクローポールモータ100を制御する。一方、コイル212の温度が第1の温度より高い第2の温度以上の場合、第1の動作点の場合よりも電流振幅Iaが小さく且つ電流位相βが遅角された第2の動作点(電流振幅I2、位相角β2)でクローポールモータ100を制御する。
これにより、制御装置500は、コイル212の温度が相対的に低い状況において、電流振幅Iaが相対的に小さくなるような電流位相β(第2の動作点)から進角された電流位相β(第1の動作点)でクローポールモータ100を運転することができる。そのため、制御装置500は、銅損よりも鉄損が大きいクローポールモータ100について、鉄損を相対的に低減させることで、鉄損及び銅損を合わせた全損失を低減させ、クローポールモータ100の運転効率を向上させることができる。
また、制御装置500は、コイル212の温度が相対的に高い状況において、電流振幅Iaが相対的に小さくなるような電流位相β(第2の動作点)でクローポールモータ100を運転することができる。そのため、制御装置500は、コイル212の温度上昇を抑制し、コイル212の温度を低下させることができる。よって、制御装置500は、クローポールモータ100の運転効率の向上と、コイル212の温度上昇の抑制とを両立させることができる。
また、本実施形態では、第2の動作点において、第1の動作点よりもクローポールモータ100の鉄損が大きく、且つ、クローポールモータ100の銅損が小さく、且つ、鉄損及び銅損を合わせたクローポールモータ100の全損失が大きくてよい。
これにより、制御装置500は、コイル212の温度が相対的に低い状況において、クローポールモータ100の鉄損(全損失)が相対的に小さくなるように、具体的に、クローポールモータ100を運転することができる。また、制御装置500は、コイル212の温度が相対的に低い状況では、コイル212の温度が相対的に高い状況において、クローポールモータ100の銅損(電流振幅Ia)が相対的に小さくなるように、具体的に、クローポールモータ100を運転することができる。そのため、制御装置500は、具体的に、クローポールモータ100の運転効率の向上と、コイル212の温度上昇の抑制とを両立させることができる。
また、本実施形態では、クローポールモータ100は、コイル212の温度に関する情報を取得する温度情報取得部501を備える。そして、モータ制御部502は、温度情報取得部501により取得される情報に基づき、クローポールモータ100の動作点を決定してよい。
これにより、制御装置500は、コイル212の温度状態を把握しながら、第1の動作点と第2の動作点との間でクローポールモータ100の動作点を移行させることができる。
また、本実施形態では、クローポールモータ100の動作点を第1の動作点から第2の動作点に移行させる場合の上記の所定の温度は、クローポールモータ100の動作点を第2の動作点から第1の動作点に移行させる場合の上記の所定の温度よりも高くてよい。
これにより、例えば、第1の動作点と第2の動作点との間で動作点が頻繁に行ったり来たりするような事態を抑制することができる。
また、本実施形態では、クローポールモータ100は、電流振幅Iaに対して出力トルクTが最大になる所定の電流位相(位相角βtq)での運転時(即ち、最大トルク運転時)に鉄損が銅損の3倍以上であってよい。
この場合、例えば、位相角βtq或いは位相角βtqの近傍でクローポールモータ100を運転しても、鉄損の影響で全損失が非常に大きくなり、クローポールモータ100の運転効率が最も良い状態から大きく解離してしまう可能性が高い。
これに対して、本実施形態では、制御装置500は、コイル212の温度が相対的に低い状況において、電流位相βが位相角βtqよりも進角した第1の動作点でクローポールモータ100を運転することができる。そのため、制御装置500は、最大トルク運転時の鉄損が銅損の3倍以上もあるようなクローポールモータ100が制御対象の場合に、クローポールモータ100の運転効率を適切に向上させることができる。
また、本実施形態では、クローポールモータ100は、表面磁石同期電動機(SPMSM)であってよい。そして、第1の動作点の電流位相は、20°~50°の範囲にあってよく、第2の動作点の電流位相は、0°~10°の範囲にあってよく、第1の動作点と第2の動作点との間の電流位相の差は、20°以上であってよい。
これにより、制御装置500は、クローポールモータ100がSPMSMである場合に、クローポールモータ100の運転効率の向上と、コイル212の温度上昇の抑制とを具体的に両立させることができる。
また、本実施形態では、クローポールモータ100は、磁石埋込同期電動機(IPMSM)であってよい。そして、第1の動作点の電流位相は、30°~70°の範囲にあってよく、第2の動作点の電流位相は、10°~40°の範囲にあってよく、第1の動作点と第2の動作点との間の電流位相の差は、20°以上であってよい。
これにより、制御装置500は、クローポールモータ100がIPMSMである場合に、クローポールモータ100の運転効率の向上と、コイル212の温度上昇の抑制とを具体的に両立させることができる。
また、本実施形態では、第1の動作点において、電流位相βは、クローポールモータ100の効率が最大になる位相角βeff(第1の位相角の一例)或いはその近傍であってよい。
これにより、制御装置500は、クローポールモータ100の運転効率を最大化し、運転効率を更に向上させることができる。
また、本実施形態では、第2の動作点において、電流位相βは、電流振幅Iaに対してクローポールモータ100の出力トルクTが最大になる位相角βtq(第2の位相角の一例)或いはその近傍であってよい。
これにより、制御装置500は、コイル212の温度が相対的に高い状況において、要求される運転条件(負荷条件)に対して、電流振幅Iaを最小化し、コイル212の温度上昇を更に抑制することができる。
また、本実施形態では、クローポールモータ100は、クローポール型の電機子を含む。そして、コイル212の軸方向の一端部、軸方向の他端部、径方向の内端部、及び径方向の外端部のうちの少なくとも3つは、ステータコア211に覆われる。
この場合、コイル212が外気に触れにくく、コイル212の冷却性能が相対的に低くなる可能性がある。
これに対して、本実施形態では、制御装置500は、コイル212の温度が相対的に高い状況において、コイル212の運転効率を優先する第1の動作点よりも電流位相を遅角させて、電流振幅を相対的に低くすることができる。そのため、制御装置500は、コイル212が外気に触れにくい構造のクローポールモータ100が制御対象の場合に、クローポールモータ100の運転効率の向上と、コイル212の温度上昇の抑制とを適切に両立させることができる。
また、本実施形態では、クローポールモータ100は、アウタロータ型であり、固定子20が電機子である。
この場合、固定子20が回転子10に覆われるため、固定子20の銅損や鉄損による熱を外気に放熱しにくく、コイル212の冷却性能が相対的に低くなる可能性がある。
これに対して、本実施形態では、制御装置500は、コイル212の温度が相対的に高い状況において、コイル212の運転効率を優先する第1の動作点よりも電流位相を遅角させて、電流振幅を相対的に低くすることができる。そのため、制御装置500は、固定子20の熱を外気に放熱しにくい構造のクローポールモータ100が制御対象の場合に、クローポールモータ100の運転効率の向上と、コイル212の温度上昇の抑制とを適切に両立させることができる。
[変形・変更]
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
例えば、上述の実施形態において、クローポールモータ100は、アウタロータ型であるが、インナロータ型であってもよい。
また、例えば、上述の実施形態におけるクローポールモータ100の制御方法は、クローポールモータ100とは異なる種類の他の回転電機に関する制御に採用されてもよい。具体的には、上述の制御方法は、クローポールモータ100と同様、銅損よりも鉄損のほうが大きい他の回転電機に採用されてよい。これにより、上述の実施形態と同様の作用・効果を奏する。