以下、本開示の実施形態を図面に基づき説明する。なお、図中の矢印FRで示す方向が車体前方、矢印RRで示す方向が車体後方、矢印LHで示す方向が車体左方、矢印RHで示す方向が車体右方である。図1と図2とでは車体前後方向が逆となっている。以下の説明での「前後方向」及び「左右方向」は、特に断りがない限り、それぞれ「車体の前後方向」及び「車体の左右方向」に対応している。
また、以下では、ギヤボックス機構を備えるシートスライド装置として電動シートスライド装置を例示する。
[シートスライド装置の全体構成例]
まず、電動シートスライド装置(シートスライド装置)10の全体構成の一例を図1および図2を用いて説明する。
本実施形態にかかる電動シートスライド装置(シートスライド装置)10は、自動車に搭載される装置であり、図1に示すように、車体床面に設けられるスライドレール部2と、スライドレール部2を駆動させる駆動部25と、を備えている。
スライドレール部2は、図1及び図2に示すように、車両に固定されるロアレール1と、ロアレール1の長手方向に沿って相対移動するアッパレール3と、を備えている。
また、スライドレール部2は、ロアレール1及びアッパレール3のうちいずれか一方のレールであるアッパレール3に回転自在に取り付けられ、相対移動する方向に沿って延びるスクリュ軸17と、ロアレール1及びアッパレール3のうちいずれか他方のレールであるロアレール1に取り付けられ、スクリュ軸17に螺合するナット部材19と、を備えている。
一方、駆動部25は、モータ21及びギヤボックス機構23を備えており、モータ21を駆動させることで、ギヤボックス機構23が備えるウォームホイール(第1のギヤ)60を回転させることができるようになっている。ここで、本実施形態では、ウォームホイール60にスクリュ軸17が一体回転可能に連結されており、モータ21を駆動させてウォームホイール60を回転させると、このウォームホイール60の回転に連動してスクリュ軸17が回転するようになっている。そして、スクリュ軸17を回転させることで、アッパレール3がロアレール1に対して、ロアレール1の長手方向に沿って相対移動できるようにしている。
[スライドレール部の全体構成例]
次に、スライドレール部2の全体構成の一例を、図1~図4を用いて詳細に説明する。
スライドレール部2は、図1及び図2に示すように、車体床面に固定されて車両前後方向に沿って延設されるロアレール1と、ロアレール1の内部において長手方向に沿って相対移動するアッパレール3と、を備えている。アッパレール3は、図示しないシートの下面に取り付けられるものである。したがって、シートは、アッパレール3とともに、車体床面に取り付けられたロアレール1に対して前後方向に相対移動することになる。このように、本実施形態では、ロアレール1とアッパレール3とでレール体を構成している。
ロアレール1は、図3に示すように、底壁1aを備えており、この底壁1aの左右両端からは、外側斜め上方に延びる傾斜壁1b,1cが連設されている。また、傾斜壁1b,1cの上端からは、上方に向けて延びる左右の側壁1d,1eが連設されている。また、左右の側壁1d,1eの上端からは、内側に向けて延びる上壁1f,1gが連設されており、この上壁1f,1gの内側端部からは、下方に向けて、側壁1d,1eとほぼ平行に延びる内側壁1h,1iが連設されている。本実施形態では、ロアレール1は、底壁1aが図示しない複数の取付具を介して車体の床面に固定されている。
一方、アッパレール3は、天壁3aを備えており、この天壁3aの左右両側からは、下方に延びる左右の側壁3b,3cが連設されている。また、左右の側壁3b,3cの下端からは、外側に向けて屈曲する折り返し部3d,3eが連設されている。この折り返し部3d,3eは、側壁3b,3cの下端から外側上方に向けて延びる下ボール保持部3d1,3e1と、下ボール保持部3d1,3e1から外側斜め上方に向けて延びる傾斜部3d2,3e2と、傾斜部3d2,3e2から内側上方に向けて延びる上ボール保持部3d3,3e3と、を備えている。本実施形態では、アッパレール3は、天壁3aがシート側の図示しない複数の取付具を介してシートの下面に固定されている。
また、本実施形態では、アッパレール3の下ボール保持部3d1,3e1及び上ボール保持部3d3,3e3と、ロアレール1との間に、下ガイドボール5,7及び上ガイドボール9,11がそれぞれ転動自在に収容されている。この下ガイドボール5,7及び上ガイドボール9,11は、ボールリテーナ13,15に支持されている。本実施形態では、下ボール保持部3d1,3e1及び上ボール保持部3d3,3e3は、下ガイドボール5,7及び上ガイドボール9,11側が、凹状に湾曲している。こうすれば、アッパレール3がロアレール1に対して前後方向に移動する際に、下ガイドボール5,7及び上ガイドボール9,11が回転することになるため、レール相互間の摩擦が抑制されて円滑な移動が可能になる。
また、本実施形態では、図1及び図2に示すように、ロアレール1の前後両端部付近の左右及び、ロアレール1の中間部付近の左右に、固定ストッパ1sがそれぞれ形成されている。この固定ストッパ1sは、ボールリテーナ13,15に係合して、複数の下ガイドボール5,7及び上ガイドボール9,11の下ボール保持部3d1,3e1及び上ボール保持部3d3,3e3からの外れ及び前後方向の位置ずれを抑えるものである。
また、アッパレール3の内部には、アッパレール3の移動方向に沿って延びるスクリュ軸17が配置されている。このスクリュ軸17は、アッパレール3とほぼ同じ長さであり、アッパレール3に支持されている。一方、ロアレール1の長手方向中央よりやや後側の底壁1aには、ナット部材19が取り付けられている。このナット部材19は、スクリュ軸17の雄ねじ部17aが螺合する雌ねじ部19aを備えている。したがって、スクリュ軸17を回転させると、スクリュ軸17(アッパレール3)がナット部材19(ロアレール1)に対して前後方向に相対移動することになる。
スクリュ軸17は、図1及び図4に示すように、モータ21及びギヤボックス機構23を備える駆動部25によって回転駆動されるものである。本実施形態では、駆動部25は、図4に示すように、アッパレール3の長手方向の前側端部に形成された左右一対の取付板3fに、ギヤボックス機構23を間に配置した状態で取り付けられている。具体的には、取付板3fに形成された一対の取付孔3fh(図2参照)と2つの締結具27(かしめピンやボルトナット等)とによって、駆動部25(ギヤボックス機構23)が取付板3fに取り付けられるようになっている。
すなわち、本実施形態では、アッパレール(一方のレール)3が、後述するギヤボックス50を間に配置する一対の取付板3fを有している。各取付板3fには、ギヤボックス50の後述する固定孔520aに挿入される締結具27が貫通する一対の取付孔3fhがそれぞれ形成されている。そして、締結具27により、一対の取付板3f及びギヤボックス50を左右方向(ウォーム80の軸方向)に挟んで固定している。
また、スクリュ軸17の前側の端部には、図2に示すように、セレーション17bが形成されている。そして、このセレーション17bをギヤボックス機構23内に回転可能に支持されたウォームホイール(第1のギヤ)60にかみ合わせることで、スクリュ軸17を駆動部25に連結させている。
本実施形態では、モータ21を除く電動シートスライド装置10は、シートの左右位置にそれぞれ設けられている。そして、シートのいずれか一方の電動シートスライド装置に設けられた単一のモータ21の出力軸が、図示しない連結部材により他方の電動シートスライド装置のギヤボックス機構23のウォーム(第2のギヤ:入力軸)80に連結されている。こうすることで、左右の電動シートスライド装置のスクリュ軸17が同期して駆動されるようにしている。
また、本実施形態では、アッパレール3の前方側及び後方側には、補強部材としての補強プレート29,31が取り付けられている。この補強プレート29,31は、スクリュ軸17に直交するほぼ板状に形成されており、アッパレール3の左右の側壁3b,3c間を跨ぐようにしてアッパレール3の内部に取り付けられている。本実施形態では、補強プレート29,31は、アッパレール3の側壁3b,3cに形成された嵌合孔としてのスリット3gに、上端部の係止部としての左右のかしめ部29a,29bがかしめられて取り付けられている。このスリット3gは、上下方向に長く形成されており、上端が天壁3aの近くに位置し、下端が下ボール保持部3d1,3e1にまで達している。
ここで、本実施形態では、二つの補強プレート29,31は同一形状なので、以下では、補強プレート29についてのみ説明する。
補強プレート29は、板状部29cの中央に貫通孔29dが形成されており、この貫通孔29dにスクリュ軸17が挿通されるようになっている。本実施形態では、貫通孔29dの内径は、スクリュ軸17の外径よりも大きくなるように形成されている。したがって、スクリュ軸17は、貫通孔29dに挿通された状態で、補強プレート29に対して回転自在となっている。また、スクリュ軸17が、回転によってアッパレール3とともにナット部材19(ロアレール1)に対して前後に移動する際には、図3に示すアッパレール突起3pが、図2及び図3に示す前後一対のロアレール突起1pに当接するようにしている。こうすることで、アッパレール3の前後方向の移動が規制されるようにしている。
本実施形態では、アッパレール突起3pは、アッパレール3の前後方向中央よりやや後方側において、下方に向けて突出しており、左右側壁3b,3cと折り返し部3d,3eとの間の部分を曲げずに残すことによって、左右側壁3b,3cから連続するようにして下方に向けて突出している。このアッパレール突起3pは、図3に示すように、左右両側にそれぞれ形成されている。一方、前後に設けられたロアレール突起1pは、図2及び図3に示すように、ロアレール1の底壁1aを上方に向けて切り起こして形成したものであり、左右のアッパレール突起3pに対応して左右両側に形成されている。
また、本実施形態では、前方の補強プレート29の前方側には軸受けナット33が、後方の補強プレート31の後方側には軸受けナット35が、それぞれ配置されている。この軸受けナット33,35は、予めねじ山の一部を潰したロックナットであり、スクリュ軸17の雄ねじ部17aの所定位置までねじ込むことでその位置に固定されるようになっている。なお、通常のナットをスクリュ軸17の雄ねじ部17aの所定位置にねじ込んだ状態で、ナットの外周部から軸心へ向かって複数個所を押圧することで、ナットをスクリュ軸17にかしめにより固定するようにしてもよい。
このような補強プレート29を設ければ、車両の衝突等により車体前方へ向かう衝撃荷重がアッパレール3に作用した場合に、車体前方の補強プレート29が車体前方へ移動することになって、補強プレート29が車体前方の軸受けナット33に衝突することになる。したがって、アッパレール3から、アッパレール3に結合されたギヤボックス機構23へ直接に衝撃荷重が伝達することを抑制することができる。その結果、ギヤボックス機構23へ衝撃荷重が伝達されることによりギヤボックス機構23をスクリュ軸17から引き離す衝撃荷重が作用することを抑制することができるようになる。このとき、スクリュ軸17には引張力が作用することになる。
また、同一の形状をした補強プレート31を設ければ、車体後方へ向かう衝撃荷重がアッパレール3に作用した場合に、車体後方の補強プレート31が車体後方の軸受けナット35に衝突することになる。したがって、アッパレール3からアッパレール3に結合されたギヤボックス機構23へ直接に衝撃荷重が伝達されることを抑制することができる。その結果、ギヤボックス機構23へ衝撃荷重が伝達されてギヤボックス機構23がスクリュ軸17を押圧することが抑制されることになる。このときにも、スクリュ軸17には引張力が作用することになる。
また、本実施形態では、スクリュ軸17は、アッパレール3内に配置された状態で、後方側の後端部17cがエンドキャップ37の軸受け部37aに回転自在に支持されるようにしている。このエンドキャップ37は、軸受け部37aの外周部に設けてある左右一対の係合爪37bによって、アッパレール3の側壁3b,3cに形成してある係合孔3hに係合して取り付けられるようになっている。また、スクリュ軸17のセレーション17bよりもさらに前方側の前端部17dには、雄ねじが形成されている。図4に示すように、この雄ねじにナット36がねじ込まれることで、スクリュ軸17がギヤボックス機構23内のウォームホイール60に軸方向に対して固定されるようになっている。
また、補強プレート29には、板状部29cの左右方向両側の上部に、左右方向の外側に突出する突起部29e,29fが形成されている。この突起部29e,29fは、図3におけるかしめ部29a,29bとなる部分である。また、板状部29cの突起部29e,29fを含む左右方向の両側縁部には、後方に向けて屈曲する屈曲部29g,29hが形成されている。
さらに、補強プレート29は、板状部29cの前側から前方に向けて突出する規制部29iを備えている。この規制部29iは、屈曲部29g,29hが形成された部分より内側の板状部29cから前方に向けて突出している。規制部29iは、前方から見て矩形状であり、左右方向両側に規制面29i1,29i2が形成される。規制面29i1,29i2は、図3のように補強プレート29をアッパレール3に取り付けた状態で、アッパレール3の側壁3b,3cの内面にほぼ接触する。これにより、補強プレート29は、アッパレール3に対し左右方向の移動が規制される。
次に、ナット部材19のロアレール1に対する取付構造について説明する。
ナット部材19は、ブラケット39によりロアレール1に取り付けられるものである。本実施形態では、ブラケット39は、ナット部材19の上側を覆う第1ブラケット41と、ナット部材19の下側を覆う第2ブラケット43と、を備えている。また、第1ブラケット41及び第2ブラケット43と、ナット部材19との間には弾性部材45が介在されている。この弾性部材45は、ゴムなどの弾性変形可能な材料で構成されており、内部が空洞となっている。
ナット部材19は、上面19b、下面19c、左側面19d、右側面19e、前面19f及び後面19gを備えており、全体としてほぼ直方体形状をしている。また、ナット部材19には、前面19fと後面19gとの間を前後方向に貫通する雄ねじ部19aが形成されている。
さらに、左側面19dの前面19f側及び後面19g側には、前方及び後方に向けてそれぞれ突出する規制突起19hが形成されている。そして、右側面19eの前面19f側及び後面19g側には、前方及び後方に向けてそれぞれ突出する規制突起19iが形成されている。本実施形態では、各規制突起19h,19iは、ナット部材19の上下方向の全長にわたり形成されている。この規制突起19h,19iは、ナット部材19が弾性部材45の内部に配置された状態で、弾性部材45を左右両側から挟むようにして配置されている。
また、第1ブラケット41は、ナット部材19の上面に対向する第1平面41aと、第1平面41aの前後方向の両端から下方に延び、ナット部材19の前面及び後面にそれぞれ対向する一対の第1壁面41bと、を備えている。この第1ブラケット41は、一対の第1壁面41bの下端から互いに離れる方向(前後方向)に延びる一対の第1取付面41cを備えている。
そして、第1壁面41bには、スクリュ軸17が挿入される挿入孔41bhが形成されている。この挿入孔41bhの内径は、スクリュ軸17の外径よりも大きくなっている。一方、第1取付面41cには、第1ブラケット41を第2ブラケット43とともにロアレール1の底壁1aに取り付けるための取付孔41chが形成されている。
また、第2ブラケット43は、ナット部材19の下面に対向する第2平面43aと、第2平面43aの軸方向両端から下方に延びる一対の第2壁面43bと、を備えている。一対の第2壁面43bは、第1ブラケット41の一対の第1壁面41bの下部側の一部にそれぞれわずかな隙間を有して対向している(接触していていもよい)。さらに、第2ブラケット43は、一対の第2壁面43bの下端から互いに離れる方向(前後方向)に延びる一対の第2取付面43cを備えている。一対の第2取付面43cは、第1ブラケット41の一対の第1取付面41cとロアレール1の底壁1aとの間に位置している。
また、本実施形態では、第2平面43aに位置決め孔43ahが形成されており、位置決め孔43ahには、弾性部材45の図示しない一対の位置決め突起が嵌入されている。また、第2取付面43cには、第2ブラケット43を第1ブラケット41とともにロアレール1の底壁1aに取り付けるための取付孔43chが形成されている。本実施形態では、第2ブラケット43の第2取付面43cの上に、第1ブラケット41の第1取付面41cを重ねた状態で、固定具47としてのかしめピンを取付孔41ch及び取付孔43chに下方から挿入し、第1取付面41c側からかしめることで、第2ブラケット43が第1ブラケット41とともにロアレール1の底壁1aに固定されている。
なお、本実施形態では、第1ブラケット41及び第2ブラケット43は金属板で形成されており、第2ブラケット43の板厚は、第1ブラケット41の板厚よりも薄くなっている。また、図2に示すように、第2ブラケット43の第2平面43aと一対の第2壁面43bとの間の角部には、V字形状に凹ませた凹部43dを形成している。この凹部43dは補強部として機能するものである。また、本実施形態では、第1ブラケット41と第2ブラケット43とは、左右方向の幅寸法がほぼ同等である。
また、弾性部材45は、第1ブラケット41の第1平面41aとナット部材19の上面19bとの間に位置するダンパ上面45aを備えている。このダンパ上面45aの前側の端縁及び後側の端縁からは、それぞれ下方に向けて延びるダンパ前面45b及びダンパ後面45cが連設されている。また、ダンパ前面45b及びダンパ後面45cには、前後方向に貫通するダンパ貫通孔45bh及び45chがそれぞれ形成されている。このダンパ貫通孔45bh及び45chにはスクリュ軸17が挿入されている。ダンパ貫通孔45bh及び45chの内径は、スクリュ軸17の外径よりも大きく、第1ブラケット41の挿入孔41bhとほぼ同等である。
また、ダンパ前面45b及びダンパ後面45cの左右方向の端縁は、ダンパ上面45aの左右方向の端縁よりも左右方向の内側に位置している。換言すれば、ダンパ上面45aの左右両側の端縁は、ダンパ前面45b及びダンパ後面45cの左右両側の端縁よりも左右方向の外側にそれぞれ突出している。
また、弾性部材45には、ダンパ前面45b及びダンパ後面45cの下端から互いに対向する側に向けて延びる、ダンパ前側下面45d及びダンパ後側下面45eがそれぞれ形成されている。このダンパ前側下面45d及びダンパ後側下面45eの先端部相互は、僅かな隙間を有して離間している。また、本実施形態では、ダンパ前側下面45d及びダンパ後側下面45eの左右両側の端縁は、ダンパ上面45aの左右方向の端縁とほぼ同じ位置にある。そして、ダンパ前側下面45d及びダンパ後側下面45eの前後方向の先端部における左右方向の中央には、下方に向けて突出する位置決め突起(図示せず)が形成されている。
[ギヤボックス機構の全体構成例]
次に、ギヤボックス機構23の全体構成の一例を、図5~図12を用いて詳細に説明する。
ギヤボックス機構23は、図5に示すように、一方向(前後方向)を軸に回転可能に配置されるウォームホイール(第1のギヤ)60と、当該ウォームホイール60と交差してかみ合うウォーム(第2のギヤ)80と、ウォームホイール60及びウォーム80を回転可能に収容するギヤボックス50と、を備えている。
本実施形態では、ウォームホイール60は、前後方向(ウォームホイール60の軸方向)の中央部に配置されてウォーム80とかみ合う第1ギヤ部61と、第1ギヤ部61の外径よりも小径で、第1ギヤ部61の前後方向(ウォームホイール60の軸方向)の両側に配置される一対の第1軸部62と、を有している(図5参照)。
また、ウォームホイール60の軸心(中央部)には、セレーション孔63が、前後方向(ウォームホイール60の軸方向)に貫通するように設けられている。そして、このセレーション孔63にスクリュ軸17のセレーション17bを挿入してかみ合わせることで、スクリュ軸17がウォームホイール(第1のギヤ)60に一体回転可能に連結されるようになっている。
一方、ウォーム80は、左右方向(ウォーム80の軸方向)の中央部に配置されて第1ギヤ部61とかみ合う第2ギヤ部81と、第2ギヤ部81の外径よりも小径で、第2ギヤ部81の左右方向(ウォーム80の軸方向)の両側に配置される一対の第2軸部82と、を有している(図5参照)。このウォーム80にはモータ21の出力軸が直接または間接的に連結されており、モータ21を駆動させるとウォーム80が左右方向を軸に回転するようになっている。そして、ウォーム80の回転が第2ギヤ部81から第1ギヤ部61に伝達されて、ウォームホイール60が前後方向を軸に回転するようになっている。
また、ギヤボックス50は、図5~図9に示すように、ウォームホイール(第1のギヤ)60が収容されるウォームホイール収容部510を有している。本実施形態では、ウォームホイール収容部510は、第1ギヤ部61が収容される円柱状の第1ギヤ部収容部(第1収容部)511と、第1軸部62が収容される円柱状の前側軸孔部512及び後側軸孔部513(一対の軸孔部)と、を有している。
ここで、一対の軸孔部は、第1ギヤ部収容部511よりも小径となっている。そのため、第1ギヤ部収容部(第1収容部)511における軸孔部との境界部分には、前後方向(第1のギヤの軸方向)を画成する円環状の側面511bが形成されることになる。このように、本実施形態では、第1ギヤ部収容部511は、円柱の側面状の内周面511aと、この内周面511aの前後方向両端に形成される円環状の側面511bと、で画成される略円柱状の空間となっている。
一方、前側軸孔部512は、円柱の側面状の内周面512aで画成される略円柱状の空間となっており、後側軸孔部513は、円柱の側面状の内周面513aで画成される略円柱状の空間となっている。
さらに、本実施形態では、ウォームホイール収容部510は、前後方向(第1のギヤの軸方向)の後側(一方側)に形成された後側軸孔部513に後方から連通し、後側軸孔部513よりも小径でギヤボックス50の後方(外部)に開口するスクリュ軸挿入孔(導入孔)514を有している。また、前側軸孔部512は、ギヤボックス50の前方(外部)に開口するように形成されている。このように、本実施形態では、ギヤボックス50内には、前後方向に貫通する貫通孔としてのウォームホイール収容部510が形成されている。なお、スクリュ軸挿入孔(導入孔)514の内径は、スクリュ軸17を干渉させずに挿入することができる程度の大きさとするのが好ましい。
また、ギヤボックス50は、図5~図9に示すように、上下方向(第1のギヤの軸方向及び第2のギヤの軸方向と交差する交差方向)の上側(一方側)で第1ギヤ部収容部511に連通し、ウォーム80が収容されるウォーム収容部(第2収容部)515を有している。本実施形態では、ウォーム収容部515は、左右方向(第2のギヤの軸方向)に延在する円柱状をしており、ウォーム収容部515の左右方向の両側には挿入孔516が連設されている。
さらに、ギヤボックス機構23は、一対の軸受けブッシュ70と、一対の金属ワッシャ(ワッシャ)100と、を備えている。本実施形態では、両側の第1軸部62にウォームホイール(第1のギヤ)60の前後方向の両端から一対の金属ワッシャ(ワッシャ)100をそれぞれ挿入し、その後、一対の軸受けブッシュ70をそれぞれ挿入するようになっている。そして、一対の金属ワッシャ100および一対の軸受けブッシュ70を挿入した状態のウォームホイール60がウォームホイール収容部510に収容されるようにしている。なお、ギヤボックス50は、ウォームホイール(第1のギヤ)60の前側に配置される前側ワッシャ101および後側に配置される後側ワッシャ102も備えている。前側ワッシャ101はスクリュ軸17の先端に挿入されるものであり、後側ワッシャ102はスクリュ軸17の雄ねじ部17aおよびセレーション17bに挿入されるものであり、前端部17dにナット36をねじ込み固定することで、ウォームホイール60をスクリュ軸17のセレーション17bに前後方向で固定する。
ここで、本実施形態では、軸受けブッシュ70は、円筒部71と、当該円筒部71の端部から径方向外側に突出するフランジ部72と、を有している。この軸受けブッシュ70は、フランジ部72が、金属ワッシャ100側および第1ギヤ部61側に位置するようにした状態で、ウォームホイール(第1のギヤ)60に挿入されている。このとき、円筒部71が第1軸部62と軸孔部との間に配置され、フランジ部72が第1ギヤ部61の端面(側面)61aと第1ギヤ部収容部(第1収容部)511における前後方向(第1のギヤの軸方向)側の側面511bとの間に配置されることになる。
さらに、フランジ部72の外周には、周方向に等間隔で偶数個(本実施形態では、8個)の凹部72aが径方向内側にくぼむように形成されている。また、第1ギヤ部収容部(第1収容部)511の内周面511aにおける側面511bと接する位置には、フランジ部72に向かって突出し、フランジ部72に形成された凹部72aの1つに係合可能な回り止め突起511cが形成されている。
そして、フランジ部72に形成された凹部72aに回り止め突起511cを係合させた状態で、ウォームホイール60、一対の金属ワッシャ100および一対の軸受けブッシュ70をウォームホイール収容部510に収容させるようにしている。こうすることで、ウォームホイール60を回転可能にウォームホイール収容部510に収容させつつ、一対の軸受けブッシュ70を回転が抑制された状態でウォームホイール収容部510に収容させるようにしている。
さらに、本実施形態では、フランジ部72が、第1ギヤ部61の外径よりも大径となるように形成されている。そして、回り止め突起511cが、前後方向(第1のギヤの軸方向)に沿って視たときに、円筒部71及びフランジ部72のうちフランジ部72のみと重なる位置に形成されている(図11参照)。なお、本実施形態では、図11に示すように、回り止め突起511cは、前後方向(第1のギヤの軸方向)に沿って視たときに、円筒部71だけでなく金属ワッシャ100とも重ならない位置に形成されている。
また、本実施形態では、リング状の金属ワッシャ(ワッシャ)100の外径が第1ギヤ部61の外径よりも小径となるように形成されている。そして、図12に示すように、前後方向(第1のギヤの軸方向)に沿って視たときに、回り止め突起511cが金属ワッシャ(ワッシャ)100の外周面100aよりも外側に位置している。
また、ギヤボックス機構23は、一対の軸受けブッシュ90を備えており、第2軸部82にはウォーム(第2のギヤ)80の軸方向の両端から一対の軸受けブッシュ90をそれぞれ挿入するようになっている。そして、一対の軸受けブッシュ90を挿入した状態のウォーム80がウォーム収容部(第2収容部)515に収容されるようにしている。この軸受けブッシュ90は、円筒部91と、当該円筒部91の端部から径方向外側に突出するフランジ部92と、を有している。そして、一対の軸受けブッシュ90は、フランジ部92が、第2ギヤ部81側に位置するようにした状態で、ウォーム(第2のギヤ)80にそれぞれ挿入されている。
ここで、本実施形態では、ギヤボックス50は、左右方向(第2のギヤの軸方向)に分割された第1の分割体50R及び第2の分割体50Lを備えている。
具体的には、第1の分割体50Rは、図6及び図7に示すように、ウォームホイール(第1のギヤ)60の右半分が収容されるウォームホイール収容部510Rを有している。このウォームホイール収容部510Rは、第1ギヤ部61の右半分が収容される半円柱状の第1ギヤ部収容部511Rと、第1軸部62の右半分が収容される半円柱状の前側軸孔部512R及び後側軸孔部513Rと、を有している。
そして、第1ギヤ部収容部511Rにおける軸孔部との境界部分には側面511bRが形成されており、第1ギヤ部収容部511Rは、内周面511aRと、この内周面511aRの前後方向両端に形成される側面511bRと、で画成される略半円柱状の空間となっている。
一方、前側軸孔部512Rは内周面512aRで画成される略半円柱状の空間となっており、後側軸孔部513Rは内周面513aRで画成される略半円柱状の空間となっている。
さらに、ウォームホイール収容部510Rは、前後方向(第1のギヤの軸方向)の後側(一方側)に形成された後側軸孔部513Rに後方から連通し、後側軸孔部513Rよりも小径で第1の分割体50Rの後方(外部)に開口するスクリュ軸挿入孔514Rを有している。また、前側軸孔部512Rは、第1の分割体50Rの前方(外部)に開口するように形成されている。このように、第1の分割体50R内には、前後方向に貫通するウォームホイール収容部510Rが形成されている。
また、第1の分割体50Rは、図6及び図7に示すように、上下方向(第1のギヤの軸方向及び第2のギヤの軸方向と交差する交差方向)の上側(一方側)で第1ギヤ部収容部511Rに連通し、ウォーム80の右半分が収容されるウォーム収容部515Rを有している。このウォーム収容部515Rは、左右方向(第2のギヤの軸方向)に延在する円柱状をしており、ウォーム収容部515Rの右側には、第2軸部82が軸受けブッシュ90を介して回転可能に支持されるとともに、モータ21の出力軸または出力軸に連結された駆動部材が挿入される挿入孔516Rが連設されている。
そして、第1ギヤ部収容部511Rの内周面511aRにおける側面511bRと接する位置には、フランジ部72に向かって突出し、フランジ部72に形成された凹部72aの1つに係合可能な回り止め突起511cRが形成されている。
この回り止め突起511cRは、前後方向(第1のギヤの軸方向)に沿って視たときに、円筒部71及びフランジ部72のうちフランジ部72のみと重なる位置に形成されている。さらに、回り止め突起511cRは、前後方向(第1のギヤの軸方向)に沿って視たときに、円筒部71だけでなく金属ワッシャ100とも重ならない位置に形成されている。そして、回り止め突起511cRは、左右方向(第2のギヤの軸方向)に沿って視たときに、金属ワッシャ(ワッシャ)100の外周面100aよりも外側に位置している。
また、第1の分割体50Rは、モータ取付部550Rを備えており、このモータ取付部550Rにモータ21が取り付けられている。
一方、第2の分割体50Lは、図8及び図9に示すように、ウォームホイール(第1のギヤ)60の左半分が収容されるウォームホイール収容部510Lを有している。このウォームホイール収容部510Lは、第1ギヤ部61の左半分が収容される半円柱状の第1ギヤ部収容部511Lと、第1軸部62の左半分が収容される半円柱状の前側軸孔部512L及び後側軸孔部513Lと、を有している。
そして、第1ギヤ部収容部511Lにおける軸孔部との境界部分には側面511bLが形成されており、第1ギヤ部収容部511Lは、内周面511aLと、この内周面511aLの前後方向両端に形成される側面511bLと、で画成される略半円柱状の空間となっている。
一方、前側軸孔部512Lは内周面512aLで画成される略半円柱状の空間となっており、後側軸孔部513Lは内周面513aLで画成される略半円柱状の空間となっている。
さらに、ウォームホイール収容部510Lは、前後方向(第1のギヤの軸方向)の後側(一方側)に形成された後側軸孔部513Lに後方から連通し、後側軸孔部513Lよりも小径で第2の分割体50Lの後方(外部)に開口するスクリュ軸挿入孔514Lを有している。また、前側軸孔部512Lは、第2の分割体50Lの前方(外部)に開口するように形成されている。このように、第2の分割体50L内には、前後方向に貫通するウォームホイール収容部510Lが形成されている。
また、第2の分割体50Lは、図8及び図9に示すように、上下方向(第1のギヤの軸方向及び第2のギヤの軸方向と交差する交差方向)の上側(一方側)で第1ギヤ部収容部511Lに連通し、ウォーム80の左半分が収容されるウォーム収容部515Lを有している。このウォーム収容部515Lは、左右方向(第2のギヤの軸方向)に延在する円柱状をしており、ウォーム収容部515Lの左側には第2軸部82が軸受けブッシュ90を介して回転可能に支持される有底の軸受け孔516Lが連設されている。
そして、第1ギヤ部収容部511Lの内周面511aLにおける側面511bLと接する位置には、フランジ部72に向かって突出し、フランジ部72に形成された凹部72aの1つに係合可能な回り止め突起511cLが形成されている。
この回り止め突起511cLも、前後方向(第1のギヤの軸方向)に沿って視たときに、円筒部71及びフランジ部72のうちフランジ部72のみと重なる位置に形成されている。さらに、回り止め突起511cLは、前後方向(第1のギヤの軸方向)に沿って視たときに、円筒部71だけでなく金属ワッシャ100とも重ならない位置に形成されている。そして、回り止め突起511cLは、左右方向(第2のギヤの軸方向)に沿って視たときに、金属ワッシャ(ワッシャ)100の外周面100aよりも外側に位置している。
さらに、本実施形態では、第1の分割体50R及び第2の分割体50Lの対向面50aR,50aLに、相手側の分割体に向けて突出する軸突起530Rと当該軸突起530Rが挿入される貫通孔530Lの組が二組形成されている。
具体的には、第1の分割体50Rの対向面50aRに、第2の分割体50Lに向けて突出する軸突起530Rが形成されており、第2の分割体50Lの対向面50aLに、軸突起530Rが挿入される貫通孔530Lが形成されている。
そして、二組の軸突起530Rと貫通孔530Lの組は、軸孔部と上下方向(交差方向)で重畳するとともに、ウォーム収容部515と前後方向(第1のギヤの軸方向)で重畳する位置に、形成されている。本実施形態では、この軸突起530Rと貫通孔530Lの組は、ウォーム収容部515の前後方向(第1のギヤの軸方向)の両側に形成されている。すなわち、前側軸孔部512の上側かつウォーム収容部515の前側に、軸突起530Rと貫通孔530Lの組が一組形成されており、後側軸孔部513の上側かつウォーム収容部515の後側に、軸突起530Rと貫通孔530Lの組が一組形成されている。このように、本実施形態では、二組の軸突起530Rと貫通孔530Lの組が、軸孔部と上下方向(交差方向)で重畳するとともに、ウォーム収容部515と前後方向(第1のギヤの軸方向)で重畳する位置に、前後方向(ウォームホイール60の軸方向)においてウォーム80を間に介在させた状態で形成されている。
そして、第1の分割体50Rと第2の分割体50Lとを重ね合わせた後、軸突起530Rの先端をかしめ等により潰すことで、第1の分割体50Rと第2の分割体50Lとが結合されるようにしている。本実施形態では、軸突起530Rの先端をかしめてかしめ部530が形成されるようにしたものを例示しているが、ナット等を用いて結合させるようにすることも可能である。
なお、本実施形態では、第1の分割体50Rの後部の下方に、略楕円状の位置決め突起540Rが形成されており、第2の分割体50Lの後部の下方に、略楕円状の位置決め凹部540Lが形成されている。こうすることで、第1の分割体50Rと第2の分割体50Lとを上側だけで結合させた場合であっても、第1の分割体50Rと第2の分割体50Lとの位置ずれをより確実に抑制できるようにしている。
さらに、本実施形態では、ギヤボックス50の後端部に、アッパレール3に取り付けられる取付部520が形成されており、このギヤボックス50の取付部520には、左右方向に貫通する一対の固定孔520aが形成されている。すなわち、第1の分割体50Rの後端部に、アッパレール3の右側に取り付けられる取付部520Rが形成されており、第2の分割体50Lの後端部に、アッパレール3の左側に取り付けられる取付部520Lが形成されている。また、第1の分割体50Rの取付部520Rには、左右方向に貫通する固定孔520aRが形成されており、第2の分割体50Lの取付部520Lには、左右方向に貫通する固定孔520aLが形成されている。
そして、この固定孔520aを、アッパレール3の取付板3fに形成された取付孔3fhに連通させた状態で、ピン(締結具)27を取付孔3fh及び固定孔520aに挿入し、挿入先端をかしめることで、ギヤボックス50(ギヤボックス機構23)がアッパレール3(固定側部材としてのスライドレール部2)に固定されるようにしている。
また、固定孔520aは、ギヤボックス50におけるスクリュ軸挿入孔514と上下方向(交差方向)で重畳する位置に形成されている。本実施形態では、この固定孔520aは、上下方向(交差方向)の両側に形成されている。すなわち、ギヤボックス50におけるスクリュ軸挿入孔514と上下方向(交差方向)で重畳する位置には、ギヤボックス50をスライドレール部(固定側部材)2に固定するためのピン(締結具)27が挿入される一対の固定孔520aが、上下方向(交差方向)においてスクリュ軸挿入孔514を間に介在させた状態で形成されている。したがって、電動シートスライド装置10を組み立てた状態では、スクリュ軸17の上下両側に固定孔520aが形成されることになる。
[ギヤボックス機構の組み立て例]
次に、ギヤボックス機構23の組み立て方法の一例を説明する。
まず、ウォームホイール(第1のギヤ)60の前後方向の両端から一対の金属ワッシャ(ワッシャ)100をそれぞれ挿入する。その後、一対の軸受けブッシュ70をそれぞれ挿入する。
そして、一対の金属ワッシャ100および一対の軸受けブッシュ70を挿入した状態のウォームホイール60の右半分を、第1の分割体50Rのウォームホイール収容部510Rに収容する。このとき、ウォームホイール収容部510Rに形成された前後方向両側の回り止め突起511cRに、前後方向両側の軸受けブッシュ70のフランジ部72に形成された凹部72aの1つをそれぞれ係合させた状態で、ウォームホイール収容部510Rに収容する。
次に、一対の軸受けブッシュ90を挿入した状態のウォーム80の右半分を、第1の分割体50Rのウォーム収容部515Rに収容する。このとき、第2ギヤ部81が第1ギヤ部61とかみ合うようにした状態でウォーム収容部515Rに収容する。
その後、第1の分割体50Rの対向面50aRに形成された軸突起530Rを、第2の分割体50Lの対向面50aLに形成された貫通孔530Lに挿入しつつ、第1の分割体50Rの後部の下方に形成された位置決め突起540Rを、第2の分割体50Lの後部の下方に形成された位置決め凹部540Lに挿入して、第1の分割体50Rと第2の分割体50Lとを重ね合わせる。このとき、ウォームホイール収容部510Lに形成された前後方向両側の回り止め突起511cLが、前後方向両側の軸受けブッシュ70のフランジ部72に形成された凹部72aの反対側の1つに係合される。
次に、軸突起530Rの先端をかしめてかしめ部530が形成されるようにする。
こうすることで、ギヤボックス機構23が組み立てられることになる。
なお、ウォームホイール60およびウォーム80は、どちらか一方を先に収容させてもよいし、同時に収容させてもよい。
また、ウォームホイール60およびウォーム80を第2の分割体50Lに先に収容させるようにしてもよい。
[ギヤボックス機構のスライドレール部への組み付け例]
次に、組み立てられたギヤボックス機構23のスライドレール部2への組み付け方法の一例を説明する。くわしくは、図2に示すアッパレール3、ロアレール1、ナット部材19及びスクリュ軸17等のスライドレール部2が組み立て済みであり、このスライドレール部2にギヤボックス機構23を組み付ける方法の一例を説明する。
まず、予めアッパレール3(レール側)に組み付けられたスクリュ軸17の雄ねじ部17aおよびセレーション17bに後側ワッシャ102を挿入させる。
次に、後側ワッシャ102が挿入されたスクリュ軸17をウォームホイール60の軸心(中央部)に形成されたセレーション孔63に挿入させる。このとき、セレーション孔63にスクリュ軸17のセレーション17bをかみ合わせるようにする。
次に、固定孔520aを、アッパレール3の取付板3fに形成された取付孔3fhに連通させた状態で、ピン(締結具)27を取付孔3fh及び固定孔520aに挿入し、ピン27の先端をかしめて固定する。
次に、前側ワッシャ101をスクリュ軸17の雄ねじ部17aに挿入させて、ナット36を雄ねじ部17aにねじ込ませ、スクリュ軸17とウォームホイール60を前後方向で一体化するように固定する。
こうすることで、ギヤボックス50(ギヤボックス機構23)がアッパレール3(固定側部材としてのスライドレール部2)に固定される。なお、ピン(締結具)27によるアッパレール3への固定は、前側ワッシャ101をスクリュ軸17の雄ねじ部17aに挿入させて、ナット36を雄ねじ部17aにねじ込ませた後に行うことも可能である。
このように、本実施形態では、スクリュ軸17を予めアッパレール3(レール側)に組み付けた状態で、スクリュ軸17の先端にギヤボックス機構23を差し込むようにして組み付ける構成が採用されている。
[作用・効果]
以下では、上記実施形態で示したギヤボックス機構及びシートスライド装置の特徴的構成及びそれにより得られる効果を説明する。
本実施形態にかかるギヤボックス機構23は、ウォームホイール(第1のギヤ)60と、ウォームホイール60と交差するように配置され、当該ウォームホイール60とかみ合うウォーム(第2のギヤ)80と、ウォームホイール60及びウォーム80を回転可能に収容するギヤボックス50と、を備えている。
また、ウォームホイール60は、前後方向(ウォームホイール60の軸方向)の中央部に配置されてウォーム80とかみ合う第1ギヤ部61と、第1ギヤ部61の外径よりも小径で、第1ギヤ部61の前後方向(ウォームホイール60の軸方向)の両側に配置される一対の第1軸部62と、を有している。
また、ギヤボックス50は、第1ギヤ部61が収容される第1ギヤ部収容部(第1収容部)511と、第1ギヤ部収容部511よりも小径で、第1軸部62が収容される前側軸孔部512及び後側軸孔部513(一対の軸孔部)と、上下方向(第1のギヤの軸方向及び第2のギヤの軸方向と交差する交差方向)の上側(一方側)で第1ギヤ部収容部511に連通し、ウォーム80が収容されるウォーム収容部(第2収容部)515と、を有している。
また、ギヤボックス50は、左右方向(第2のギヤの軸方向)に分割された第1の分割体50R及び第2の分割体50Lを備えている。
この第1の分割体50R及び第2の分割体50Lの対向面50aR,50aLには、相手側の分割体に向けて突出する軸突起530Rと当該軸突起530Rが挿入される貫通孔530Lの組が二組形成されている。
また、二組の軸突起530Rと貫通孔530Lの組が、軸孔部と上下方向(交差方向)で重畳するとともに、ウォーム収容部515と前後方向(第1のギヤの軸方向)で重畳する位置に、前後方向(ウォームホイール60の軸方向)においてウォーム80を間に介在させた状態で形成されている。
さらに、前後方向(第1のギヤの軸方向)の後側(一方側)に形成された後側軸孔部513には、後側軸孔部513よりも小径でギヤボックス50の後方(外部)に開口するスクリュ軸挿入孔(導入孔)514が、前後方向(第1のギヤの軸方向)の後側(一方側)に連通するように形成されている。
そして、ギヤボックス50におけるスクリュ軸挿入孔514と上下方向(交差方向)で重畳する位置には、ギヤボックス50をスライドレール部(固定側部材)2に固定するためのピン(締結具)27が挿入される一対の固定孔520aが、上下方向(交差方向)においてスクリュ軸挿入孔514を間に介在させた状態で形成されている。
こうすれば、第1の分割体50Rと第2の分割体50Lとの結合やギヤボックス50のアッパレール3への固定のための構成をより簡素な構成とすることができるため、ギヤボックス機構23の小型化を図ることが可能になる。
特に、ギヤボックス機構23の前部や下部側の必要肉厚を薄くすることができるため、ギヤボックス機構23の前後方向の小型化や上下方向の小型化を図ることが可能になる。
さらに、ギヤボックス50の固定孔520aを外径が小さいスクリュ軸挿入孔(導入孔)514の上下方向に設けているため、ギヤボックス機構23を上下方向に大きくすることなく固定孔520aを設けることが可能になる。
また、軸突起530Rと貫通孔530Lの組が、前後方向(第1のギヤの軸方向)の両側に形成されていてもよい。
こうすれば、ウォーム収容部(第2収容部)515を前後方向に挟む位置で第1の分割体50Rと第2の分割体50Lとを結合させることができるため、ウォーム(第2のギヤ)80をより精度よくウォーム収容部(第2収容部)515に収容させることができるようになる。その結果、ギヤボックス機構23をより良好に動作させることが可能になる。さらに、第1の分割体50Rと第2の分割体50Lとのガタツキをより確実に抑制することができるようになる上、第1の分割体50Rと第2の分割体50Lとが左右方向に開いてしまうことをより確実に抑制することができるようになるという利点もある。
また、固定孔520aが、上下方向(交差方向)の両側に形成されていてもよい。
こうすれば、ギヤボックス50の固定孔520aを外径が小さいスクリュ軸挿入孔(導入孔)514の下方に下側の固定孔520aが形成されるため、ギヤボックス50を下方に大きくすることなく固定孔520aを設けることが可能になる。さらに、スクリュ軸挿入孔(導入孔)514の下方に下側の固定孔520aを形成すれば、下側における第1の分割体50Rと第2の分割体50Lとの左右方向への開きが、下側の固定孔520aに挿入されるピン(締結具)27によって規制されることになる。そのため、第1の分割体50Rと第2の分割体50Lとが左右方向に開いてしまうことをより確実に抑制することができるようになる。
また、ギヤボックス機構23が、第1軸部62と軸孔部との間に配置される円筒部71と、当該円筒部71の第1ギヤ部61側の端部から径方向外側に突出し、第1ギヤ部61の端面(側面)61aと第1ギヤ部収容部(第1収容部)511における前後方向(第1のギヤの軸方向)側の側面511bとの間に配置されるフランジ部72と、を有する軸受けブッシュ70をさらに備えていてもよい。さらに、フランジ部72が、第1ギヤ部61の外径よりも大径となるように形成されており、フランジ部72の外周に、周方向に等間隔で偶数個の凹部72aが径方向内側にくぼむように形成されていてもよい。また、第1ギヤ部収容部(第1収容部)511の内周面511aにおける側面511bと接する位置に、フランジ部72に向かって突出し、フランジ部72に形成された凹部72aの1つに係合可能な回り止め突起511cが形成されていてもよい。そして、回り止め突起511cは、前後方向(第1のギヤの軸方向)に沿って視たときに、円筒部71及びフランジ部72のうちフランジ部72のみと重なる位置に形成されていてもよい。
こうすれば、第1ギヤ部61の外周と第1ギヤ部収容部(第1収容部)511の内周面511aとの間のわずかな隙間に、ギヤボックス50側における軸受けブッシュ70の回り止め構造としての回り止め突起511cを配置することができる。その結果、ギヤボックス50に、軸受けブッシュ70の回り止め構造としてのくぼみ形状の凹部を設ける必要がなくなるため、ギヤボックス50が外側に膨らんでしまうことが抑制されて、ギヤボックス機構23のより一層の小型化を図ることが可能になる。さらに、フランジ部72の外周に、周方向に等間隔で偶数個の凹部72aを設けるようにすれば、ギヤボックス機構23を組み立てる際における凹部72aと回り止め突起511cとの位置合わせを容易に行うことができるため、より容易にギヤボックス機構23を組み立てることができるようになる。
また、軸受けブッシュ70のフランジ部72と第1ギヤ部61の端面(側面)61aとの間に配置されるリング状の金属ワッシャ(ワッシャ)100をさらに備えていてもよい。そして、金属ワッシャ(ワッシャ)100の外径が第1ギヤ部61の外径よりも小径となるように形成されており、左右方向(第2のギヤの軸方向)に沿って視たときに、回り止め突起511cが金属ワッシャ(ワッシャ)100の外周面100aよりも外側に位置していてもよい。
こうすれば、前後方向(第1のギヤの軸方向)に負荷が作用した状態でウォームホイール(第1のギヤ)60が回転した場合であっても、金属ワッシャ(ワッシャ)100やウォームホイール60の第1ギヤ部61が回り止め突起511cに接触してしまうことを抑制することができるようになる。その結果、ウォームホイール(第1のギヤ)60の回転が回り止め突起511cによって阻害されてしまうことをより確実に抑制することができるようになる。また、金属ワッシャ(ワッシャ)100の外径を第1ギヤ部61の外径よりも小さくすれば、第1ギヤ部61の外周と第1ギヤ部収容部(第1収容部)511の内周面511aとの間の隙間を小さくした場合であっても、回り止め突起511cの設定が可能となる。その結果、ギヤボックス機構23をよりコンパクトにすることが可能になる。
また、本実施形態にかかる電動シートスライド装置(シートスライド装置)10は、上記ギヤボックス機構23と、ギヤボックス機構23が固定される固定側部材としてのスライドレール部2と、を備えている。そして、スライドレール部2は、車両に固定されるロアレール1と、ロアレール1の長手方向(前後方向)に沿って相対移動するアッパレール3と、ロアレール1及びアッパレール3のうちいずれか一方のレール(アッパレール3)に回転自在に取り付けられ、前後方向(相対移動する方向)に沿って延びるとともに、ウォームホイール(第1のギヤ)60に一体回転可能に連結されるスクリュ軸17と、ロアレール1及びアッパレール3のうちいずれか他方のレール(ロアレール1)に取り付けられ、スクリュ軸17に螺合するナット部材19と、を備えている。また、一方のレール(アッパレール3)は、ギヤボックス50を間に配置する一対の取付板3fを有している。この取付板3fには、ギヤボックス50の固定孔520aに挿入されるピン(締結具)27が貫通する一対の取付孔3fhが形成されている。そして、ピン(締結具)27により、一対の取付板3f及びギヤボックス50を左右方向(第2のギヤの軸方向)に挟んで固定している。
こうすれば、シートスライド装置10の前後方向(ロアレール1の長手方向:相対移動する方向)の小型化を図ることが可能になる。また、上下方向(交差方向)の下側の固定孔520aに挿通されるピン27がギヤボックス50を左右(第2のギヤの軸方向)に挟んで固定しているため、下側に別に締結手段を設ける必要がなくなり、更なる小型化を図ることができる。
このように、本実施形態によれば、構成の簡素化を図りつつ小型化を図ることが可能なギヤボックス機構23及び当該ギヤボックス機構23を備えるシートスライド装置10を得ることができる。
[その他]
以上、本開示の実施形態について説明したが、これらの実施形態は本開示の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎず、本開示は当該実施形態に限定されるものではない。本開示の技術的範囲は、上記実施形態で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含む。
例えば、上記実施形態では、スクリュ軸17をアッパレール3に取り付け、ナット部材19をロアレール1に取り付けているが、スクリュ軸17をロアレール1に取り付け、ナット部材19をアッパレール3に取り付けてもよい。
また、上記実施形態では、第1の分割体50Rの対向面50aRに軸突起530Rが、第2の分割体50Lの対向面50aLに貫通孔530Lが形成されたものを例示したが、第1の分割体50Rの対向面50aRに貫通孔が、第2の分割体50Lの対向面50aLに軸突起が形成されるようにしてもよい。また、第1の分割体50Rの対向面50aRの前後方向の一方に軸突起が、他方に貫通孔が形成され、第2の分割体50Lの対向面50aLの前後方向の一方に貫通孔が、他方に軸突起が形成されるようにしてもよい。
また、シートスライド装置以外の装置に本開示にかかるギヤボックス機構23を組み付けることも可能である。
また、上記実施形態では、締結具としてピン27を例示したが、ピン27に限られるものではない。例えば、ボルト・ナットなど、左右方向(締結具の軸方向)でギヤボックス50及び取付板3fを挟むように固定する固定手段であってもよい。
また、ギヤボックスやスライドレール部、その他細部のスペック(形状、大きさ、レイアウト等)も適宜に変更可能である。