JP7452263B2 - 保存安定性に優れるアクリルゴム - Google Patents

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Description

本発明は、アクリルゴム、その製造方法、ゴム組成物及びゴム架橋物に関し、更に詳しくは、保存安定性に優れるアクリルゴム、その製造方法、該アクリルゴムを含むゴム組成物、それを架橋してなるゴム架橋物に関する。
アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とする重合体であり、一般に耐熱性、耐油性及び耐オゾン性に優れたゴムとして知られ、自動車関連の分野などで広く用いられ、必要に応じて老化防止剤を添加して用いられる。
例えば、特許文献1(国際公開第2018/139466号パンフレット)には、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、フマル酸モノブチルなどを含んでなる単量体成分を純水とラウリル硫酸ナトリウムとポリオキシエチレンドデシルエーテルとで撹拌し単量体乳化液を得、硫酸第一鉄とアルコルビン酸ナトリウム及び過硫酸カリウム水溶液を連続的に3時間かけて滴下し、重合転化率が95%に達した乳化重合液に、3-(3,5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリルの50重量%水分散液(0.2重量%のラウリル硫酸ナトリウムの水溶液50部に、(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル50部を添加混合したもの)又は2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-6-メチルフェノールの50重量%水分散液(0.2重量%のラウリル硫酸ナトリウムの水溶液50重量部に、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-6-メチルフェノール50重量部を添加・混合することにより調製したもの)を加えた後に、85℃に昇温し、硫酸ナトリウムで凝固して含水クラムを生成させ、次いで、生成した含水クラムを工業用水での水洗4回、pH3の酸洗浄1回、及び1回の純水洗浄を行った後に、熱風乾燥機にて160℃で10分間乾燥することにより重合時における重合装置の汚れを抑制することができ且つ初期機械強度に優れるクラム状のアクリルゴムの製造方法が開示されている。また、本方法によればスクリュー型押田乾燥機で洗浄した含水クラムを150℃以上で乾燥できることが記載されている。しかしながら、耐熱性のほかにも厳しい環境下における保存安定性を高めることが求められてきている。
国際公開第2018/139466号パンフレット
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、保存安定性に優れるアクリルゴム、その製造方法、該アクリルゴムを含むゴム組成物及びそれを架橋してなるゴム架橋物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究した結果、反応性基を有し、分子量が特定で特定構造の液状老化防止剤を含むアクリルゴムが、格段に優れる保存安定性を有することを見出した。
本発明者らは、また、反応性基量、特定構造液状老化防止剤の含有量、単量体組成、分子量、高分子量領域における分子量分布、特定温度における複素粘弾性、灰分量、灰分成分量及び灰分成分比を特定にすることでアクリルゴムの保存安定性を更に高められることを見出した。
本発明者らは、また、特定の単量体成分を乳化重合した後の乳化重合液に特定構造の液状老化防止剤を添加し凝固乾燥することで保存安定性に優れるアクリルゴムが製造できることを見出した。また、特定な凝固方法、凝固後に温水洗浄、及び洗浄後の含水クラムを脱水することで製造されるアクリルゴムの保存安定性と耐水性を更に高度に高められることを見出した。
本発明者らは、これらの知見に基づいて本発明を完成させるに至ったものである。
かくして本発明によれば、単量体組成が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル由来の結合単位50~99.9重量%、反応性基含有単量体由来の結合単位0.1~20重量%、並びにその他の単量体由来の結合単位0~30重量%からなるものであるアクリルゴムであって、その重量平均分子量(Mw)が100,000~5,000,000の範囲であり、かつ、ヒンダード構造の液状老化防止剤を0.001~15重量%含むアクリルゴムが提供される。
本発明のアクリルゴムにおいて、ヒンダード構造の液状老化防止剤が、ヒンダードフェノール系液状老化防止剤であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムにおいて、ヒンダード構造が、老化防止効果を発揮する官能基の両隣りに嵩高い置換基を有する構造であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムにおいて、両隣の嵩高い置換基が、t-ブチル基であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムにおいて、ヒンダード構造を有する液状老化防止剤が、35℃以下の融点を有するものであることが好ましい。
本発明のアクリルゴムにおいて、アクリルゴムの反応性基量が、0.001~5重量%の範囲であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムにおいて、アクリルゴムの反応性基が、カルボキシル基、エポキシ基及びハロゲン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムにおいて、重量平均分子量(Mw)が、1,000,000~5,000,000の範囲であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムにおいて、z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比(Mz/Mw)が1.3以上であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムにおいて、100℃における複素粘性率([η]100℃)が、1,500~6,000Pa・sの範囲であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムにおいて、100℃における複素粘性率([η]100℃)と60℃における複素粘性率([η]60℃)との比([η]100℃/[η]60℃)が、0.5以上であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムにおいて、100℃における複素粘性率([η]100℃)と60℃における複素粘性率([η]60℃)との比([η]100℃/[η]60℃)が、0.8以上であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムにおいて、灰分量が、0.5重量%以下であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムにおいて、灰分中にマグネシウムとリンを含み、灰分中のマグネシウムとリンとの合計量が、全灰分量 に対する割合で、30重量%以上であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムにおいて、灰分中にマグネシウムとリンを含み、灰分中のマグネシウムとリンとの比([Mg]/[P])が、0.4~2.5の範囲であることが好ましい。
本発明によれば、また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル50~99.9重量%、反応性基含有単量体0.1~20重量%、並びにこれらと共重合し得る他の単量体0~30重量%からなる単量体成分を水と乳化剤とでエマルジョン化し重合触媒存在下に乳化重合した乳化重合液にヒンダード構造を有する液状老化防止剤を、単量体成分100重量部に対して0.001~15重量部の割合で添加した後に、乳化重合液を凝固液と接触させて凝固させ、生成した含水クラムを含水量1重量%未満まで乾燥するアクリルゴムの製造方法が提供される。
本発明のアクリルゴムの製造方法において、ヒンダード構造を有する液状老化防止剤を添加した乳化重合液の凝固が、撹拌されている凝固液に該乳化重合液を添加して行うことが好ましい。
本発明のアクリルゴムの製造方法において、凝固時に生成した含水クラムを温水で洗浄
するものであることが好ましい。
本発明のアクリルゴムの製造方法において、洗浄後の含水クラムから脱水機を用いて水分を絞り出すものであることが好ましい。
本発明によれば、また、上記アクリルゴムを含むゴム成分、充填剤及び架橋剤を含んでなるゴム組成物が提供される。
本発明によれば、また、上記ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物が提供される。
本発明によれば、保存安定性に優れるアクリルゴム、その製造方法、該アクリルゴムを含むゴム組成物、及びそれを架橋してなるゴム架橋物が提供される。
本発明のアクリルゴムは、反応性基を有する重量平均分子量(Mw)が100,000~5,000,000の範囲でヒンダード構造の液状老化防止剤を含むことを特徴とする。
<アクリルゴム>
(反応性基)
本発明のアクリルゴムは、反応性基を有することを特徴とする。
反応性基としては、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されるが、好ましくは、カルボキシル基、エポキシ基及びハロゲン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基、より好ましくはカルボキシル基、エポキシ基及び塩素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基、特に好ましくはカルボキシル基、エポキシ基、最も好ましくはカルボキシル基であるときにアクリルゴムの架橋特性を高度に改善でき好適である。また、反応性基としては、カルボキシル基、エポキシ基などのイオン反応性基であるときに特に耐水性を向上させることができ好適である。
かかる反応性基を有するアクリルゴムとしては、アクリルゴムに後反応で反応性基を付与してもよいが、好ましくは反応性基含有単量体を共重合したものが好ましい。
アクリルゴム中の反応性基量は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、反応性基自体の重量割合で、通常0.001~5重量%、好ましくは0.01~3重量%、より好ましくは0.05~1重量%、特に好ましくは0.1~0.5重量%の範囲あるときに加工性、強度特性、耐圧縮永久歪み特性、耐油性、耐寒性、及び耐水性などの特性が高度にバランスされ好適である。
(単量体組成)
本発明のアクリルゴムの単量体組成は、格別限定されるものではないが、アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル由来の結合単位、反応性基含有単量体由来の結合単位、及び必要に応じてその他の単量体由来の結合単位からなるものが耐熱性、耐圧縮永久歪み特性、耐油性などの特性に優れ好適である。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、格別な限定はないが、通常炭素数が1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、好ましくは炭素数1~8のアルキルを有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、より好ましくは炭素数2~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。なお、本発明において「(メタ)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸のエステル類を総称する用語として使用される。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられ、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルが好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルがより好ましい。
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、格別な限定はないが、通常2~12のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、好ましくは2~8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、より好ましくは炭素数2~6のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシエステルである。
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチルなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどが好ましく、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチルがより好ましい。
これら(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で、あるいは2種以上が組み合わせて用いられ、アクリルゴム中の割合は、通常50~99.9重量%、好ましくは70~99.9重量%、より好ましくは80~99.5重量%、最も好ましくは87~99重量%である。単量体成分中の(メタ)アクリル酸エステル量が、過度に少ないと得られるアクリルゴムの耐候性、耐熱性、及び耐油性が低下するおそれがあり好ましくない。
反応性基含有単量体としては、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されるが、カルボキシル基、エポキシ基及びハロゲン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体が好ましく、カルボキシル基、エポキシ基及び塩素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体がより好ましく、カルボキシル基、エポキシ基などのイオン反応性基を有する単量体が特に好ましく、カルボキシル基を有する単量体が最も好ましい。
カルボキシル基を有する単量体としては、格別な限定はないが、エチレン性不飽和カルボン酸を好適に用いることができる。エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、エチレン性不飽和モノカルボン酸、エチレン性不飽和ジカルボン酸、エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルなどが挙げられ、これらの中でも特にエチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルがアクリルゴムをゴム架橋物とした場合の耐圧縮永久歪み特性をより高めることができ好ましい。
エチレン性不飽和モノカルボン酸としては、格別な限定はないが、炭素数3~12のエチレン性不飽和モノカルボン酸が好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などを挙げることができる。
エチレン性不飽和ジカルボン酸としては、格別な限定はないが、炭素数4~12のエチレン性不飽和ジカルボン酸が好ましく、例えば、フマル酸、マレイン酸などのブテンジオン酸、イタコン酸、シトラコン酸などを挙げることができる。なお、エチレン性不飽和ジカルボン酸は、無水物として存在しているものも含まれる。
エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルとしては、格別な限定はないが、通常、炭素数4~12のエチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1~12のアルキルモノエステル、好ましくは炭素数4~6のエチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数2~8のアルキルモノエステル、より好ましくは炭素数4のブテンジオン酸の炭素数2~6のアルキルモノエステルである。
エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルの具体例としては、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノn-ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノn-ブチル、フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘキセニル、マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシルなどのブテンジオン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノn-ブチル、イタコン酸モノシクロヘキシルなどのイタコン酸モノアルキルエステル;などが挙げられ、これらの中でもフマル酸モノn-ブチル、マレイン酸モノn-ブチルが好ましく、フマル酸モノn-ブチルが特に好ましい。
エポキシ基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有ビニルエーテル;などが挙げられる。
ハロゲン基を有する単量体としては、例えば、ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステル、(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステル、ハロゲン含有不飽和エーテル、ハロゲン含有不飽和ケトン、ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物、ハロゲン含有不飽和アミド、ハロアセチル基含有不飽和単量体などが挙げられる。
ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステルとしては、例えば、クロロ酢酸ビニル、2-クロロプロピオン酸ビニル、クロロ酢酸アリルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸1-クロロエチル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル、(メタ)アクリル酸1,2-ジクロロエチル、(メタ)アクリル酸2-クロロプロピル、(メタ)アクリル酸3-クロロプロピル、(メタ)アクリル酸2,3-ジクロロプロピルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(クロロアセトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセチルカルバモイルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3-(クロロアセチルカルバモイルオキシ)プロピルなどが挙げられる。ハロゲン含有不飽和エーテルとしては、例えば、クロロメチルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、3-クロロプロピルビニルエーテル、2-クロロエチルアリルエーテル、3-クロロプロピルアリルエーテルなどが挙げられる。ハロゲン含有不飽和ケトンとしては、例えば、2-クロロエチルビニルケトン、3-クロロプロピルビニルケトン、2-クロロエチルアリルケトンなどが挙げられる。ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物としては、例えば、p-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレン、o-クロロメチルスチレン、p-クロロメチル-α-メチルスチレンなどが挙げられる。ハロゲン含有不飽和アミドとしては、例えば、N-クロロメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。ハロアセチル基含有不飽和単量体としては、例えば、3-(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルアリルエーテル、p-ビニルベンジルクロロ酢酸エステルなどが挙げられる。
これらの反応性基含有単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上が組み合わせて用いられ、アクリルゴム中の割合は、通常0.1~20重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~5重量%、最も好ましくは1~3重量%である。
必要に応じて用いられるその他の単量体としては、上記単量体と共重合可能であれば格別な限定はなく、例えば、芳香族ビニル、エチレン性不飽和ニトリル、アクリルアミド系単量体、その他のオレフィン系単量体などが挙げられる。芳香族ビニルとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。エチレン性不飽和ニトリルとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。アクリルアミド系単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが挙げられる。その他のオレフィン系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
これらのその他の単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられ、アクリルゴム中の割合は、通常0~30重量%、好ましくは0~20重量%、より好ましくは0~15重量%、最も好ましくは0~10重量%の範囲である。
本発明のアクリルゴムは、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル、反応性基含有単量体、及び必要に応じてその他の共重合可能な単量体からなり、それぞれのアクリルゴム中の割合は、アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル由来の結合単位が、通常50~99.9重量%、好ましくは70~99.9重量%、より好ましくは80~99.5重量%、特に好ましくは87~99重量%の範囲であり、反応性基含有単量体由来の結合単位が、通常0.1~20重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~5重量%、特に好ましくは1~3重量%の範囲であり、その他の単量体由来の結合単位が、通常0~30重量%、好ましくは0~20重量%、より好ましくは0~15重量%、特に好ましくは0~10重量%の範囲である。
(含有老化防止剤)
本発明のアクリルゴムは、ヒンダード構造を有する液状老化防止剤を含むことを特徴とする。
ヒンダード構造を有する液状老化防止剤としては、通常使用される老化防止剤の中で、液状で且つヒンダード構造を有するものであれば格別な限定なく用いることができる。なお、ヒンダード構造とは、格別な限定はないが、通常老化防止効果を発揮する官能基、例えば、フェノール系老化防止剤であればフェノール基の両隣りに嵩高い置換基を有するものをいい、両隣の置換基としては、t-ブチル基またはイソブチル基が好ましく、t-ブチル基が最も好ましい。また、液状老化防止剤とは、常圧下40℃以下で液体である老化防止剤をいう。
ヒンダード構造を有する液状老化防止剤の融点は、格別限定されるものではないが、通常40℃以下、好ましくは35℃以下、より好ましくは30℃以下であるときにアクリルゴムの保存安定性と耐熱性を格段に向上させることができ好適である。
ヒンダード構造を有する液状老化防止剤の融点の下限値は、格別限定されるものではないが、通常-40℃以上、好ましくはー20℃以上、より好ましくは0℃以上であるときにアクリルゴムの保存安定性と耐熱性に優れ且つ液状老化防止剤のブリード性にも優れ好適である。
ヒンダード構造を有する使用する液状老化防止剤の種類は、格別な限定はないが、例えば、フェノール系老化防止剤、亜燐酸エステル系老化防止剤、硫黄エステル系老化防止剤、アミン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、キノリン系老化防止剤、ハイドロキノン系老化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系老化防止剤がアクリルゴムの保存安定性と耐熱性を高度に改善でき好適である。
ヒンダード構造を有する液状老化防止剤の分子量は、格別限定されるものではないが、通常100~800、好ましくは120~600、より好ましくは150~500、特に好ましくは200~400の範囲であるときにアクリルゴムシートの保存安定性と耐熱性を高度に改善でき好適である。
かかる好適なヒンダード構造を有する液状老化防止剤としては、例えば、一般式(1)
Figure 0007452263000001

(R1は、イソプロピル基又はt-ブチル基を示し、R2は、炭素数1~12のアルキル基を示す。)で表されるヒンダードフェノール系老化防止剤を挙げることができる。
式中のR1は、イソプロピル基又はt-ブチル基を示し、好ましくはt-ブチル基である。式中のR2は、炭素数1~12のアルキル基を示し、好ましくは炭素数4~10のアルキル基、より好ましくは炭素数6~10のアルキル基である。
かかる一般式(1)で表されるヒンダードフェノール系老化防止剤の具体例としては、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオン酸ブチル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオン酸ヘキシル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオン酸オクチル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオン酸デシル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジイソプロピルフェニル)プロピオン酸ヘプチル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジイソプロピルフェニル)プロピオン酸オクチル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジイソプロピルフェニル)プロピオン酸ドデシルなどが挙げられ、好ましくは、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオン酸オクチル又は3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジイソプロピルフェニル)プロピオン酸オクチルであり、より好ましくは3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオン酸オクチルである。
これらヒンダード構造を有する液状老化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、アクリルゴム中の含有量は、格別な限定は無く本発明の効果が発現できる範囲の中で適宜選択されればよいが、通常0.001~15重量%、好ましくは0.01~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%、特に好ましくは0.5~3重量%の範囲である。
本発明のアクリルゴムは、ヒンダード構造を有する液状老化防止剤を含むことを必須とするが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の老化防止剤を含むことができる。
(アクリルゴムの特性)
本発明のアクリルゴムは、前記反応性基を有し且つ上記老化防止剤を含むことを特徴とする。
本発明のアクリルゴムの重量平均分子量(Mw)は、GPC-MALSで測定される絶対分子量で、100,000~5,000,000、好ましくは500,000~4,000,000、より好ましくは700,000~3,000,000、最も好ましくは1,000,000~2,500,000の範囲であるときにアクリルゴムの混合時の加工性、強度特性、及び耐圧縮永久歪み特性が高度にバランスされ好適である。
本発明のアクリルゴムのz平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比(Mz/Mw)は、格別限定されるものではないが、GPC-MALSで測定される高分子領域を重点にした絶対分子量分布で、通常1.3以上、好ましくは1.4~5、より好ましくは1.5~2の範囲であるときにアクリルゴムの加工性と強度特性が高度にバランスされ且つ保存時の物性変化を緩和でき好適である。
本発明のアクリルゴムの反応性基の含有量は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、反応性基自体の重量割合で、通常0.001~5重量%、好ましくは0.01~3重量%、より好ましくは0.05~1重量%、特に好ましくは0.1~0.5重量%の範囲あるときに加工性、強度特性、耐圧縮永久歪み特性、耐油性、耐寒性、及び耐水性などの特性が高度にバランスされ好適である。
本発明のアクリルゴムのガラス転移温度(Tg)は、格別限定されるものではないが、通常20℃以下、好ましくは10℃以下、より好ましくは0℃以下である。アクリルゴムのガラス転移温度(Tg)の下限値は、格別限定されるものではないが、通常-80℃以上、好ましくは-60℃以上、より好ましくは-40℃以上である。ガラス転移温度を前記下限以上とすることにより耐油性と耐熱性により優れたものとすることができ、前記上限以下とすることにより耐寒性と加工性により優れたものとすることができる。
本発明のアクリルゴムの比重は、格別限定はないが、通常0.7以上、好ましくは0.8~1.4、より好ましくは0.9~1.3、特に好ましくは0.95~1.25、最も好ましくは1.0~1.2の範囲であるときに保存安定性が高度に優れ好適である。
本発明のアクリルゴムのゲル量は、メチルエチルケトンの不溶解分で、50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下、最も好ましくは5重量%以下であるときに、加工性が改善され好適である。
本発明のアクリルゴムのpHは、格別な限定はないが、通常6以下、好ましくは2~6、より好ましくは2.5~5.5、特に好ましくは3~5の範囲であるときに保存安定性が高度に改善され好適である。
本発明のアクリルゴムの含水量は、格別限定されるものではないが、通常1重量%未満、好ましくは0.8重量%以下、より好ましくは0.6重量%以下であるときに架橋特性が最適化され耐熱性や耐水性などの特性が高度に優れ好適である。
本発明のアクリルゴムの灰分量は.格別限定されるものではないが、通常0.5重量%以下、好ましくは0.3重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下、特に好ましくは0.15重量%以下、特に好ましくは0.12重量%以下であるときに、保存安定性や耐水性に優れ好適である。
本発明のアクリルゴムの灰分量の下限値は、格別限定されるものではないが、通常0.0001重量%以上、好ましくは0.0005重量%以上、より好ましくは0.001重量%以上、特に好ましくは0.005重量%以上、最も好ましくは0.01重量以上であるときに金属付着性が抑制され作業性に優れ好適である。
本発明のアクリルゴムの保存安定性、耐水性及び金属付着性が高度にバランスされる灰分量は、通常0.0001~0.5重量%、好ましくは0.0005~0.3重量%、より好ましくは0.001~0.2重量%、特に好ましくは0.005~0.15重量%、最も好ましくは0.01~0.12重量%の範囲である。
本発明のアクリルゴムの灰分中のナトリウム、イオウ、カルシウム、マグネシウム及びリンからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の含有量(合計量)は、格別な限定はないが、全灰分量に対する割合で、通常少なくとも30重量%、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上であるときに保存安定性と耐水性が高度に優れ好適である。
本発明のアクリルゴムの灰分中のナトリウムとイオウの合計量は、格別な限定は無いが、全灰分量に対する割合で、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上であるときに保存安定性と耐水性が高度に優れ好適である。
本発明のアクリルゴムの灰分中のナトリウムとイオウとの比([Na]/[S])は、重量比で、格別な限定はないが、通常0.4~2.5、好ましくは0.6~2、好ましくは0.8~1.7、より好ましくは1~1.5の範囲であるときに耐水性が高度に優れ好適である。
本発明のアクリルゴムの灰分中のマグネシウムとリンの合計量は、格別な限定はないが、全灰分量に対する割合で、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上であるときに保存安定性と耐水性が高度に優れ好適である。
本発明のアクリルゴムの灰分中のマグネシウムとリンとの比([Mg]/[P])は、重量比で、格別な限定は無いが、通常0.4~2.5、好ましくは0.4~1.3、より好ましくは0.4~1、特に好ましくは0.45~0.75、最も好ましくは0.5~0.7の範囲であるときに保存安定性や耐水性が高度に優れ好適である。
本発明のアクリルゴムの60℃における複素粘性率([η]60℃)は、格別限定されるものではないが、通常15,000Pa・s以下、好ましくは2,000~10,000Pa・s、より好ましくは2,500~7,000Pa・s、最も好ましくは2,700~5,500Pa・sの範囲にあるとき加工性、耐油性及び形状保持性に優れ好適である。
本発明のアクリルゴムの100℃における複素粘性率([η]100℃)は、格別限定されるものではないが、通常1,500~6,000Pa・s、好ましくは2,000~5,000Pa・s、より好ましくは2,500~4,000Pa・s、最も好ましくは2,500~3,500Pa・sの範囲であるときに加工性、耐油性、及び形状保持性に優れ好適である。
本発明のアクリルゴムの100℃における複素粘性率([η]100℃)と60℃における複素粘性率([η]60℃)との比([η]100℃/[η]60℃)は、格別限定はないが、通常0.5以上、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、特に好ましくは0.8以上、最も好ましくは0.83以上である。また、100℃における複素粘性率([η]100℃)と60℃における複素粘性率([η]60℃)との比([η]100℃/[η]60℃)が、通常0.5~0.99、好ましくは0.6~0.98、より好ましくは0.75~0.95、特に好ましくは0.8~0.94、最も好ましくは0.83~0.93の範囲であるときに加工性、耐油性、及び形状保持性が高度にバランスされ好適である。
本発明のアクリルゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、格別限定されるものではないが、通常10~150、好ましくは20~100、より好ましくは25~70の範囲であるときに加工性や強度特性が高度にバランスされ好適である。
<製造方法>
上記本発明のアクリルゴムの製造方法は、格別限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル、反応性基含有単量体、並びに必要に応じて共重合可能なその他の単量体からなる単量体成分を水と乳化剤とでエマルジョン化し重合触媒存在下に乳化重合した乳化重合液にヒンダード構造を有する老化防止剤を添加した後に凝固乾燥することで容易に製造することができる。
使用される単量体成分は、前記アクリルゴムの単量体成組成で記載されたものと同様であり、使用量は前記アクリルゴムの単量体組成になるように適宜選択されればよく、通常前記アクリルゴムの単量体組成と同じ量である。
(乳化剤)
使用される乳化剤としては、格別な限定はないが、例えば、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤などを挙げることができ、好ましくはアニオン性乳化剤を含むものであり、特に好ましくは硫酸エステル塩、リン酸エステル塩を含むものであり、最も好ましくはリン酸エステル塩を含むものである。
アニオン性乳化剤としては、格別な限定はなく、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノレン酸などの脂肪酸の塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸ナトリウムなどの硫酸エステル塩;ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸カリウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルナトリウムなどのリン酸エステル塩;アルキルスルホコハク酸塩などを挙げることができる。これらのアニオン性乳化剤の中でも、リン酸エステル塩、硫酸エステル塩が好ましく、リン酸エステル塩が特に好ましい。これらのアニオン性乳化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
カチオン性乳化剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライドなどを挙げることができる。
ノニオン性乳化剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンステアリン酸エステルなどのポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンドデシルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル;ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルなどを挙げることができ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテルが好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルがより好ましい。
これらの乳化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、単量体成分100重量部に対して、通常0.01~10重量部、好ましくは0.1~5重量部、より好ましくは1~3重量部の範囲である。
単量体成分と水と乳化剤を混合してエマルジョン化する方法としては、常法に従えばよく、単量体と乳化剤と水とをホモジナイザーやディスクタービンなどの撹拌機などを用いて撹拌する方法などが挙げられる。水の使用量は、単量体成分100重量部に対して、通常10~750重量部、好ましくは50~500重量部、より好ましくは100~400重量部の範囲である。
(重合触媒)
使用される重合触媒としては、乳化重合で通常使われるものであれば格別な限定はないが、例えば、ラジカル発生剤と還元剤とからなるレドックス触媒を用いることができる。
ラジカル発生剤としては、例えば、過酸化物、アゾ化合物などが挙げられ、好ましくは過酸化物である。過酸化物としては、無機系過酸化物や有機系過酸化物が用いられる。
無機系過酸化物としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過硫酸アンモニウムなどが挙げられ、これらの中でも過硫酸カリウム、過酸化水素、過硫酸アンモニウムが好ましく、過硫酸カリウムが特に好ましい。
有機系過酸化物としては、乳化重合で使用される公知のものであれば格別な限定は無く、例えば、2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、1-ジ-(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)吉草酸n-ブチル、2,2-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラエチルブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジコハク酸パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジイソブチリルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカネート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブイチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンなどが挙げられ、これらの中でもジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどが好ましい。
アゾ化合物としては、例えば、アゾビスイソプチロニトリル、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン、2,2'-アゾビス(プロパン-2-カルボアミジン)、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロパンアミド]、2,2'-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}、2,2'-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)及び2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロパンアミド}などが挙げられる。
これらのラジカル発生剤は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、単量体成分100重量部に対して、通常0.0001~5重量部、好ましくは0.0005~1重量部、より好ましくは0.001~0.5重量部の範囲である。
還元剤としては、乳化重合のレドックス触媒で使用されるものであれば格別な限定なく用いることができるが、本発明においては、特に少なくとも2種の還元剤を用いることが好ましい。少なくとも2種の還元剤としては、例えば、還元状態にある金属イオン化合物とそれ以外の還元剤の組み合わせが好適である。
還元状態にある金属イオン化合物としては、特に限定されないが、例えば、硫酸第一鉄、ヘキサメチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウム、ナフテン酸第一銅などが挙げられ、これらの中でも硫酸第一鉄が好ましい。これらの還元状態にある金属イオン化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、単量体成分100重量部に対して、通常0.000001~0.01重量部、好ましくは0.00001~0.001重量部、より好ましくは0.00005~0.0005重量部の範囲である。
それらの還元状態にある金属イオン化合物以外の還元剤としては、特に限定はないが、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウムなどのアスコルビン酸又はその塩;エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウムなどのエリソルビン酸又はその塩;ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムなどのスルフィン酸塩;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アルデヒド亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムの亜硫酸塩;ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸水素カリウムなどのピロ亜硫酸塩;チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウムなどのチオ硫酸塩;亜燐酸、亜燐酸ナトリウム、亜燐酸カリウム、亜燐酸水素ナトリウム、亜燐酸水素カリウムの亜燐酸又はその塩;ピロ亜燐酸、ピロ亜燐酸ナトリウム、ピロ亜燐酸カリウム、ピロ亜燐酸水素ナトリウム、ピロ亜燐酸水素カリウムなどのピロ亜燐酸又はその塩;ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどが挙げられる。これらの中でも、アルコルビン酸又はその塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどが好ましく、特にアスコルビン酸又はその塩が好ましい。
これらの還元状態にある金属イオン化合物以外の還元剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、単量体成分100重量部に対し、通常0.001~1重量部、好ましくは0.005~0.5重量部、より好ましくは0.01~0.3重量部の範囲である。
還元状態にある金属イオン化合物とそれ以外の還元剤との好ましい組み合わせは、硫酸第一鉄とアスコルビン酸若しくはその塩及び/又はナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートで、より好ましくは硫酸第一鉄とアスコルビン酸塩及び/又はナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、最も好ましくは硫酸第一鉄とアルコルビン酸塩の組み合わせである。この時の、硫酸第一鉄の使用量は、単量体成分100重量部に対して、通常0.000001~0.01重量部、好ましくは0.00001~0.001重量部、より好ましくは0.00005~0.0005重量部の範囲で、アスコルビン酸若しくはその塩及び/又はナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの使用量は、単量体成分100重量部に対し、通常0.001~1重量部、好ましくは0.005~0.5重量部、より好ましくは0.01~0.3重量部の範囲である。
(乳化重合)
乳化重合反応における水の使用量は、前記単量体成分エマルジョン化時に使用したものだけでもよいが、重合に用いる単量体成分100重量部に対して、通常10~1000重量部、好ましくは50~500重量部、より好ましくは80~400重量部、最も好ましくは100~300重量部の範囲になるように調整される。
乳化重合反応は、常法に従えばよく、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよい。重合温度及び重合時間は、特に限定されず、使用する重合開始剤の種類などから適宜選択できる。重合温度は、通常0~100℃、好ましくは5~80℃、より好ましくは10~50℃の範囲であり、重合時間は通常0.5~100時間、好ましくは1~10時間である。
乳化重合反応の重合転化率は、格別限定はないが、通常80重量%以上、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上であるときに製造されるアクリルゴムの強度特性に優れ且つ単量体臭も無く好適である。重合停止に当たっては、重合停止剤を使用してもよい。
(老化防止剤添加)
使用されるヒンダード構造を有する液状老化防止剤は、前記アクリルゴムの含有老化防止剤で記載されたものと同様であり、使用量は前記アクリルゴム中の含有量になるように適宜選択されればよく、単量体成分100重量部に対して、通常0.001~15重量部、好ましくは0.01~10重量部、より好ましくは0.1~5重量部、特に好ましくは0.3~3重量部、最も好ましくは0.5~2重量部の範囲である。
ヒンダード構造を有する液状老化防止剤の乳化重合液への添加方法は、格別限定されず常法に従えばよく、ヒンダード構造を有する液状老化防止剤をそのまま添加してもよいし、水と乳化剤とでエマルジョン化して添加してもよい。
(凝固工程)
上記一ヒンダード構造を有する液状老化防止剤を添加した乳化重合液の凝固は、常法に従えばよく、例えば、該乳化重合液と凝固液を接触して含水クラムを生成する方法で行うことができる。
使用される凝固剤としては、特に限定されないが、通常は金属塩が用いられる。金属塩としては、例えば、アルカリ金属、周期表第2族金属塩、その他の金属塩などが挙げられ、好ましくはアルカリ金属塩、周期表第2族金属塩、より好ましくは周期律表第2族金属塩、特に好ましくはマグネシウム塩である。
アルカリ金属塩としては、例えば、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウムなどのナトリウム塩;塩化カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウムなどのカリウム塩;塩化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウムなどのリチウム塩などが挙げられ、これらの中でもナトリウム塩が好ましく、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムが特に好ましい。
周期表第2族金属塩としては、例えば、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムなどが挙げられ、好ましくは塩化カルシウム、硫酸マグネシウムである。
その他の金属塩としては、例えば、塩化亜鉛、塩化チタン、塩化マンガン、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化アルミニウム、塩化スズ、硝酸亜鉛、硝酸チタン、硝酸マンガン、硝酸鉄、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硝酸アルミニウム、硝酸スズ、硫酸亜鉛、硫酸チタン、硫酸マンガン、硫酸鉄、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸アルミニウム、硫酸スズなどが挙げられる。
これらの凝固剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、単量体成分100重量部に対し、通常0.01~100重量部、好ましくは0.1~50重量部、より好ましくは1~30重量部の範囲である。凝固剤がこの範囲にあるときに、アクリルゴムの凝固を充分なものとしながら、アクリルゴムを架橋した場合の耐圧縮永久歪み特性や耐水性を高度に向上させることができるので好適である。
使用する凝固液の凝固剤濃度は、通常0.1~20重量%、好ましくは0.5~15重量%、より好ましくは1~10重量%、特に好ましくは1.5~5の範囲であるときに生成する含水クラムの粒径を特定の領域に且つ均一に集束でき好適である。
凝固液の温度は、格別限定はないが、通常40℃以上、好ましくは40~90℃、より好ましくは50~80℃の範囲であるときに均一な含水クラムが生成され好適である。
ヒンダード構造を有する液状老化防止剤を添加した乳化重液と凝固液を接触する方法としては、格別な限定はないが、例えば、該乳化重合液に凝固液を添加する方法、撹拌されている該乳化重合液に凝固液を添加する方法、凝固液に該乳化重合液を添加する方法、撹拌されている凝固液に該乳化重合液を添加する方法などいずれの方法でもよいが、撹拌されている凝固液に該乳化重合液を添加する方法が生成する含水クラムの洗浄効率及び脱水効率に優れ且つ得られるアクリルゴムの耐水性と保存安定性を格段に向上できるので好適である。
撹拌されている凝固液の撹拌数(回転数)は、すなわち、撹拌装置の撹拌翼の回転数で、格別な限定はないが、通常100rpm以上、好ましくは200~1000rpm、より好ましくは300~900rpm、特に好ましくは400~800rpmの範囲である。
回転数はある程度激しく撹拌される回転数である方が、生成する含水クラム粒径を小さく且つ均一にでき好適であり、前記下限以上とすることにより、クラム粒径が過度に大きいものと小さいものとが生成するのを抑制でき、前記上限以下とすることにより、凝固反応の制御をより容易にできる。
撹拌されている凝固液の周速は、すなわち、撹拌装置の撹拌翼の外周の速度は、格別な限定はないが、一定程度まで激しく撹拌されている方が生成する含水クラム粒径を小さく且つ均一にでき好適で、通常0.5m/s以上、好ましくは1m/s以上、より好ましくは1.5m/s以上、特に好ましくは2m/s以上最も好ましくは2.5m/s以上である。一方周速の上限値は、格別限定されるものではないが、通常50m/s以下、好ましくは30m/s以下、より好ましくは25m/s以下、最も好ましくは20m/s以下であるときに凝固反応の制御が容易になり好適である。
凝固工程における凝固反応の上記条件(接触方法、乳化重合液の固形分濃度、凝固液の濃度及び温度、凝固液の撹拌時の回転数及び周速、など)を特定範囲にすることで、生成する含水クラムの形状及びクラム径が均一で且つ集束化され、洗浄及び脱水時の乳化剤や凝固剤の除去が格段に向上し、結果として製造されるアクリルゴムの耐水性と保存安定性を高度に改善できるので好適である。
(洗浄工程)
上記生成した含水クラムの洗浄は、格別限定されるものでなく常法に従えばよいが、温水を用いて行うのが含水クラムからの乳化剤や凝固剤の除去効率を高め好適である。
使用する温水の量としては、特に限定されないが、前記単量体成分100重量部に対して、水洗1回当たりの量が、通常50重量部以上、好ましくは50~15,000重量部、より好ましくは100~10,000重量部、特に好ましくは150~5,000重量部の範囲であるときに、アクリルゴム中の灰分量を効果的に低減することができ好適である。
水洗する温水の温度としては、格別限定されるものではないが、通常40℃以上、好ましくは40~100℃、より好ましくは50~90℃、最も好ましくは60~80℃のときに洗浄効率を格段に上げることができ好適である。
洗浄水の温度を前記下限以上とすることにより、乳化剤や凝固剤が含水クラムから遊離して洗浄効率がより向上する。
洗浄時間としては、格別な限定はないが、通常1~120分、好ましくは2~60分、より好ましくは3~30分の範囲である。
洗浄回数としては、特に限定されず、通常1~10回、好ましくは複数回、より好ましくは2~3回である。なお、最終的に得られるアクリルゴム中の凝固剤の残留量を低減するという観点からは、水洗回数が多い方が望ましいが、前記含水クラムの形状及び含水クラム径を特定にすること及び/又は洗浄温度を前記範囲にすることで洗浄回数を格段に低減できる。
本発明においては、ヒンダード構造を有する液状老化防止剤を添加したアクリルゴムは、上記凝固して生成した含水クラムを洗浄を行っても殆ど添加したヒンダード構造を有する液状老化防止剤が含水クラムから抜け出さず好適である。
(脱水工程)
本発明においては、上記洗浄した含水クラムを乾燥する前に、脱水機を用いて含水クラムから水分を絞り出すのがアクリルゴム中の灰分量を格段に低減でき且つ添加したヒンダード構造を有する液状老化防止剤が抜け出さず好適である。
脱水機にかける含水クラムは、洗浄後に水切り機で遊離水を分離したものが好ましい。水切り機としては、公知のものを格別な限定なく用いることができ、例えば、金網、スクリーン、電動篩機などが挙げられ、好ましくは金網、スクリーンである。水切り後の含水クラムの含水量は、すなわち脱水・乾燥工程に投入される含水クラムの含水量は、格別限定されるものではないが、通常50~80重量%、好ましくは50~70重量%、より好ましくは50~60重量%の範囲である。
脱水機としては、格別な限定はなく常法に従えばよく、例えば、遠心分離機、スクイザー、スクリュー型押出機などを挙げることができ、特に、スクリュー型押出機が含水クラムからの水分除去を効率的に行い含水量を高度に下げることができ好適である。粘着性のアクリルゴムは、遠心分離機などでは壁面及びスリット間にアクリルゴムが付着して含水量が通常45~55重量%程度までしか脱水できず、スクリュー型押出機のように強制的に絞り出していく機構が好適である。
脱水機のスリット幅は、格別に限定はなく、通常0.1~1mm、好ましくは0.2~0.6mmの範囲であるときに、含水クラムからの凝固剤や乳化剤の除去効率と生産性が高度にバランスされ好適である。
含水クラムの水分を絞り出した脱水後の含水量は、格別な限定はないが、通常1~50重量%、好ましくは1~40重量%、より好ましくは5~40重量%、特に好ましくは10~35重量%、最も好ましくは15~35重量%の範囲である。脱水後の含水量を前記下限以上とすることにより、脱水時間を短縮できてアクリルゴムの変質を抑制でき、前記上限以下とすることにより灰分量を十分に低減することができる。
(乾燥工程)
乾燥方法は、格別限定されるものでなく常法に従えばよく、例えば、熱風乾燥機、減圧乾燥機、エキスパンダー乾燥機、ニーダー型乾燥機、スクリュー型押出機などの乾燥機を用いて行うことができる。
乾燥温度は、適宜選択されればよいが、通常100~250℃、好ましくは110~200℃、より好ましくは120~180℃の範囲であるときに、アクリルゴムのヤケや変質がなく効率よく乾燥ができ且つアクリルゴムシート中のゲル量を低減でき好適である。
乾燥時間は、格別限定されるものではなく、目標含水量及び乾燥方式に応じて適宜選択できる。
かくして得られるアクリルゴムは、保存安定性が格段に優れる。得られたアクリルゴムの含水量は、通常1重量%未満、好ましくは0.8重量%以下、より好ましくは0.6重量%以下である。また、アクリルゴムの形状は、格別限定されるものではなく、例えば、クラム状、粉体状、棒状、シート状などのいずれでもよい。
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上記アクリルゴムを含むゴム成分、充填剤、架橋剤を含んでなることを特徴とする。
ゴム成分中の本発明のアクリルゴムの含有量は、使用目的に応じて選択されればよく、例えば、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。
ゴム成分としては、前記本発明のアクリルゴム単独、あるいはその他のゴムと組み合わせて用いることができる。
その他のゴムとしては、本発明のアクリルゴム以外のアクリルゴム、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリシロキサン系エラストマーなどを挙げることができる。
これらのその他のゴムは、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。ゴム成分中のその他のゴムの含有量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択され、通常70重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。
充填剤としては、格別な限定はないが、例えば、補強性充填剤、非補強性充填剤などが挙げられ、好ましくは補強性充填剤である。
補強性充填剤としては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、及びグラファイトなどのカーボンブラック;湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカなどのシリカ;などを挙げることができる。非補強性充填剤としては、石英粉末、ケイソウ土、亜鉛華、塩基性炭酸マグネシウム、活性炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、タルク、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどを挙げることができる。
これらの充填剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択され、ゴム成分100重量部に対して、通常1~200重量部、好ましくは10~150重量部、より好ましくは20~100重量部の範囲である。
架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、ジアミン化合物などの多価アミン化合物、及びその炭酸塩;硫黄化合物;硫黄供与体;トリアジンチオール化合物;多価エポキシ化合物;有機カルボン酸アンモニウム塩;有機過酸化物;多価カルボン酸;四級オニウム塩;イミダゾール化合物;イソシアヌル酸化合物;有機過酸化物;トリアジン化合物;などの従来公知の架橋剤を用いることができる。これらの中でも、多価アミン化合物、トリアジン化合物が好ましく、多価アミン化合物が特に好ましい。
多価アミン化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N'-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミンなどの脂肪族多価アミン化合物;4,4'-メチレンジアニリン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4'-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2'-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4'-ジアミノベンズアニリド、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,3,5-ベンゼントリアミンなどの芳香族多価アミン化合物;などが挙げられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、2,2'-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンなどが好ましい。これらの多価アミン化合物は、特に、カルボキシル基含有のアクリルゴムと組み合わせて好適に用いられる。
トリアジン化合物としては、例えば、6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-アニリノ-4,6-ジチオール-s-トリアジン、1-ジブチルアミノ-3,5-ジメルカプトトリアジン、2-ジブチルアミノ-4,6-ジチオール-s-トリアジン、1-フェニルアミノ-3,5-ジメルカプトトリアジン、2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジン、1-ヘキシルアミノ-3,5-ジメルカプトトリアジンなどが挙げられる。これらのトリアジン化合物は、特に、ハロゲン基含有のアクリルゴムと組み合わせて好適に用いられる。
これらの架橋剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、ゴム成分100重量部に対し、通常0.001~20重量部、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.1~5重量部である。架橋剤の配合量をこの範囲とすることにより、ゴム弾性を充分なものとしながら、ゴム架橋物としての機械的強度を優れたものとすることができ好適である。
本発明のゴム組成物は、更に上記一般式(1)で表されるフェノール系老化防止剤以外のその他の老化防止剤を配合することができる。その他の老化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-α-ジメチルアミノ-p-クレゾール、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、スチレン化フェノール、2,2'-メチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)、4,4'-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-6-メチルフェノール、2,2'-チオビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-チオビス-(6-t-ブチル-o-クレゾール)、2,6-ジ-t-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノールなどのその他のフェノール系老化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコール・ジホスファイトなどの亜燐酸エステル系老化防止剤;チオジプロピオン酸ジラウリルなどの硫黄エステル系老化防止剤;フェニル-α-ナフチルアミン、フェニル-β-ナフチルアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)-ジフェニルアミン、4,4'-(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン、ブチルアルデヒド-アニリン縮合物などのアミン系老化防止剤;2-メルカプトベンズイミダゾールなどのイミダゾール系老化防止剤;6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンなどのキノリン系老化防止剤;2,5-ジ-(t-アミル)ハイドロキノンなどのハイドロキノン系老化防止剤;などが挙げられる。これらの中でも特に、アミン系老化防止剤が好ましい。
これらのその他の老化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、ゴム成分100重量部に対して、0,01~15重量部、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは1~5重量部の範囲である。
本発明のゴム組成物は、上記ゴム成分、充填剤、架橋剤及び必要に応じて上記一般式(1)以外のその他の老化防止剤を含んでなり、更に、必要に応じて当該技術分野で通常使用される他の添加剤、例えば、架橋助剤、架橋促進剤、架橋遅延剤、シランカップリング剤、可塑剤、加工助剤、滑材、顔料、着色剤、帯電防止剤、発泡剤などを任意に配合できる。
これらのその他の配合剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択される。
本発明のゴム組成物の混合方法としては、従来ゴム加工分野において利用されている任意の手段、例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー類などを利用することができる。その混合手順としては、例えば、熱で反応や分解しにくい成分を充分に混合した後、熱で反応や分解しやすい成分である架橋剤などを、反応や分解が起こらない温度で短時間に混合することが好ましい。
<ゴム架橋物>
本発明のゴム架橋物は、上記ゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明のゴム組成物を用い、所望の形状に対応した成形機、例えば、押出機、射出成形機、圧縮機、及びロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、ゴム架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常10~200℃、好ましくは25~150℃である。架橋温度は、通常100~250℃、好ましくは130~220℃、より好ましくは150~200℃であり、架橋時間は、通常0.1分~10時間、好ましくは1分~5時間である。加熱方法としては、プレス加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、及び熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる方法を適宜選択すればよい。
本発明のゴム架橋物は、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、更に加熱して二次架橋を行ってもよい。二次架橋は、加熱方法、架橋温度、形状などにより異なるが、好ましくは1~48時間行う。加熱方法、加熱温度は適宜選択すればよい。
本発明のゴム架橋物は、例えば、O-リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、バアリングシース、メカニカルシール、ウエルヘッドシール、電気・電子機器用シール、空気圧縮機器用シールなどのシール材;シリンダブロックとシリンダヘッドとの連結部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダヘッドあるいはトランスミッションケースとの連結部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板及び負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着された燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケット;緩衝材、防振材;電線被覆材;工業用ベルト類;チューブ・ホース類;シート類;などとして好適に用いられる。
本発明のゴム架橋物は、また、自動車用途に用いられる押し出し成形型品及び型架橋製品として、例えば、燃料ホース、フィラーネックホース、ベントホース、ペーパーホース、オイルホースなどの燃料タンクなわりの燃料油系ホース、ターボエアーホース、メミッションコントロールホースなどのエアー系ホース、ラジエターホース、ヒーターホース、ブレーキホース、エアコンホースなどの各種ホース類に好適に用いられる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の「部」、「%」及び「比」は、特に断りのない限り、重量基準である。
各種の物性については、以下の方法に従って評価した。
[単量体組成]
アクリルゴムにおける単量体組成に関して、アクリルゴム中の各単量体単位の単量体構成はH-NMRで確認し、アクリルゴム中に反応性基の活性が残存していること及びその各反応性基含有量は下記試験法で確認した。
また、各単量体単位のアクリルゴム中の含有割合は、各単量体の重合反応に用いた使用量及び重合転化率から算出した。具体的には、重合反応は乳化重合反応でその重合転化率は、未反応の単量体がいずれも確認できない略100%であったことから、各単量体単位の含有割合を各単量体の使用量と同一とした。
[反応性基含有量]
アクリルゴムの反応性基の含有量は、下記方法により含有量を測定した。
(1)カルボキシル基量は、アクリルゴムをアセトンに溶解し水酸化カリウム溶液で電位差滴定を行うことにより算出した。
(2)エポキシ基量は、アクリルゴムをメチルエチルケトンに溶解し、それに規定量の塩酸を加えてエポキシ基と反応させ、残留した塩酸量を水酸化カリウムで滴定することにより算出した。
(3)塩素量は、アクリルゴムを燃焼フラスコ中で完全燃焼させ、発生する塩素を水に吸収させ硝酸銀で滴定することにより算出した。
[老化防止剤含有量]
アクリルゴム中の老化防止剤含有量(%)は、アクリルゴムシート又はアクリルゴムベールをテトラヒドロフランに溶解しゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定を行い、同一老化防止剤の検量線の基づき算出した。
[灰分量]
アクリルゴム中に含まれる灰分量(%)は、JIS K6228 A法に準じて測定した。
[灰分成分量]
アクリルゴム灰分中の各成分量(ppm)は、上記の灰分量測定の差異に採取した灰分をΦ20mmの滴定濾紙に圧着し、ZSX Primus(Rigaku社製)を用いてXRF測定した。
[ガラス転移温度(Tg)]
アクリルゴムのガラス転移温度(Tg)は、示差走査型熱量計(DSC、製品名「X-DSC7000」、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて測定した。
[pH]
アクリルゴムのpHは、6g(±0.05g)のアクリルゴムをテトラヒドロフラン100gで溶解後、蒸留水2.0mlを添加し完全に溶解したことを確認後にpH電極で測定した。
[含水量]
アクリルゴムの含水量(%)は、JIS K6238-1:オーブンA(揮発分測定)法に準じて測定した。
[分子量及び分子量分布]
アクリルゴムの重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mz/Mw)は、溶媒としてジメチルホルムアミドに塩化リチウムが0.05mol/L、37%濃塩酸が0.01%の濃度でそれぞれ添加された溶液を用いた、GPC-MALS法により測定される絶対分子量及び絶対分子量分布である。具体的には、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置に多角度レーザ光散乱光度計(MALS)及び示差屈折率計(RI)を組み入れ、GPC装置でサイズ分別された分子鎖溶液の光散乱強度及び屈折率差を、溶出時間を追って測定することにより、溶質の分子量とその含有率を順次計算し求めた。GPC装置による測定条件及び測定方法は、以下のとおりである。
カラム:TSKgel α-M 2本(φ7.8mm×30cm、東ソー社製)
カラム温度:40℃
流速:0.8ml/mm
試料調整:試料10mgに溶媒5mlを加え、室温で緩やかに攪拌した(溶解を視認)。その後0.5μmフィルターを用いてろ過を行った。
[複素粘性率]
アクリルゴムの複素粘性率ηは、動的粘弾性測定装置「ラバープロセスアナライザRPA-2000」(アルファテクノロジー社製)を用いて、歪み473%、1Hzにて温度分散(40~120℃)を測定し、各温度における複素粘性率ηを求めた。ここでは、上述の動的粘弾性のうち60℃における動的粘弾性を複素粘性率η(60℃)とし、100℃における動的粘弾性を複素粘性率η(100℃)として、η(100℃)/η(60℃)、η(60℃)/η(100℃)の値を算出した。
[保存安定性評価]
ゴム試料の保存安定性は、ゴム試料のゴム混合物を45℃×80%RHの恒温恒湿度槽7日間投入し、試験前後のゴム試料をゴム混合物としてゴム加硫試験機(ムービングダイレオメータMDR;アルファテクノロジー社製)を用いて180℃で10分間の架橋試験を行い、最大トルク(MH)と最小トルク(ML)との差(MH-ML)である架橋密度の変化率を算出し、比較例1を100とする指数で評価した(指数は小さいほど保存安定性に優れる)。
[耐水性評価]
ゴム試料の耐水性は、JIS K6258に準拠してゴム試料の架橋物を温度85℃蒸留水中に100時間浸漬させて浸漬試験を行い、浸漬前後の体積変化率を下記式に従って算出し、比較例1を100とする指数で評価した(指数が小さいほど耐水性に優れる)。
浸漬前後の体積変化率(%)=((浸漬後の試験片体積-浸漬前の試験片体積)/浸漬前の試験片体積)×100
[常態物性評価]
ゴム試料の常態物性は、JIS K6251に従いゴム試料のゴム架橋物を破断強度、100%引張応力及び破断伸びを測定し以下の基準で評価した。
(1)破断強度は、10MPa以上を◎、10MPa未満を×として評価した。
(2)100%引張応力は、5MPa以上を◎、5MPa未満を×として評価した。
(3)破断伸びは、150%以上を◎、150%未満を×として評価した。
[実施例1]
ホモミキサーを備えた混合容器に、純水46部、アクリル酸エチル74.5部、アクリル酸n-ブチル17部、アクリル酸メトキシエチル7部、及びフマル酸モノn-ブチル1.5部、及び乳化剤としてオクチルオキシジオキシエチレンリン酸エステルナトリウム塩1.8部を仕込み撹拌して単量体エマルジョンを得た。
次いで、温度計、撹拌装置を備えた重合反応槽に、純水170部及び上記で得られた単量体エマルジョン3部を投入し、窒素気流下で12℃まで冷却した。次いで、重合反応槽中に、単量体エマルジョンの残部、硫酸第一鉄0.00033部、アスコルビン酸ナトリウム0.264部、及び過硫酸カリウム0.22部を3時間かけて連続的に滴下した。その後、重合反応内の温度を23℃に保った状態にて反応を継続し、重合転化率が略100%に達したことを確認し、重合停止剤としてのハイドロキノンを添加して重合反応を停止し、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオン酸オクチル(イルガノックス1135;BASF社製)1部を添加して乳化重合液を得た。
温度計と撹拌装置を備えた凝固槽で、80℃に加温した激しく撹拌(600回転:周速3.1m/s)した2%硫酸マグネシウム水溶液(凝固液)中に、上記老化防止剤が添加された乳化重合液を80℃に加温して連続的に添加して重合体を凝固させ濾別して含水クラムを得た。
次いで、凝固槽内に194部の温水(70℃)を添加して15分間撹拌した後に水分を排出させ、再度194部の温水(70℃)を添加して15分間撹拌して含水クラムの洗浄を行った。洗浄した含水クラム(含水クラム温度65℃)を、スクリュー型押出機を用いて含水量20重量%までの脱水(排水)を行った後に含水量が0.4重量%まで乾燥させてアクリルゴム(A)を得た。なお、スクリュー型押出機の乾燥バレル部の温度は、120~180℃まで傾斜して設定した。
得られたアクリルゴム(A)の反応性基含有量、灰分量、灰分成分量、ガラス転移温度(Tg)、pH、老化防止剤含有量、含水量、分子量、分子量分布及び複素粘性率を測定しそれらの結果を表2に示した。
次いで、バンバリーミキサーを用いて、アクリルゴム(A)100部と表1記載の「配合1」の配合剤Aを投入して、50℃で5分間混合した。
次いで、得られた混合物を50℃のロールに移して、表1記載の「配合1」の配合剤Bを配合し混合してゴム混合物を得た。保存安定性試験前後のアクリルゴム(A)を用いたゴム混合物の架橋試験を行い架橋密度(MH-ML)の変化を測定しその結果を表2に示した。
Figure 0007452263000002
得られたゴム混合物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら180℃で10分間プレスすることにより一次架橋し、次いで、得られた一次架橋物を、ギヤー式オーブンにて、更に180℃、2時間の条件で加熱して二次架橋させることにより、シート状のゴム架橋物を得た。そして、得られたシート状のゴム架橋物から3cm×2cm×0.2cmの試験片を切り取り耐水性評価及び常態物性を評価してそれらの結果を表2に示した。
[実施例2]
単量体成分を、アクリル酸エチル4.5部、アクリル酸n-ブチル64.5部、アクリル酸メトキシエチル29.5部及びフマル酸モノn-ブチル1.5部に、乳化剤をノニルフェニルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステルナトリウム塩に変更する以外は実施例1と同様に行いアクリルゴム(B)を得て各特性を評価した。それらの結果を表2に示した。
[実施例3]
単量体成分を、アクリル酸エチル48.25部、アクリル酸n-ブチル50部及びフマル酸モノn-ブチル1.75部に、乳化剤をトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステルナトリウム塩に変更する以外は実施例1と同様に行いアクリルゴム(C)を得て各特性(配合剤を「配合2」に変更して)を評価した。それらの結果を表2に示した。
[実施例4]
スクリュー型押出機内での脱水(排水)の含水量を30%に変更する以外は実施例3と同様に行いアクリルゴム(D)を得て各特性を評価した。それらの結果を表2に示した。
[実施例5]
単量体成分を、アクリル酸エチル28部、アクリル酸n-ブチル38部、アクリル酸メトキシエチル27部、アクリロニトリル5部及びアリルグリシジルエーテル2部に変更する以外は実施例4と同様に行いアクリルゴム(E)を得て各特性(配合剤を「配合3」に変更して)を評価した。それらの結果を表2に示した。
[実施例6]
単量体成分を、アクリル酸エチル42.5部、アクリル酸n-ブチル35部、アクリル酸メトキシエチル20部、アクリロニトリル1.5部及びクロロ酢酸ビニル1.3部に変更する以外は実施例4と同様に行いアクリルゴム(F)を得て各特性(配合剤を「配合4」に変更して)を評価した。それらの結果を表2に示した。
[比較例1]
ホモミキサーを備えた混合容器に、純水46部、アクリル酸エチル42.2部、アクリル酸n-ブチル35部、アクリル酸メトキシエチル20部、アクリロニトリル1.5部、クロロ酢酸ビニル1.3部、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.709部及びポリオキシエチレンドデシルエーテル(分子量1500)1.82部を仕込み撹拌して単量体エマルジョンを得た。
次いで、温度計、撹拌装置を備えた重合反応槽に、純水170部及び上記で得られた単量体エマルジョン3部を投入し、窒素気流下で12℃まで冷却した。次いで、重合反応槽中に、単量体エマルジョンの残部、硫酸第一鉄0.00033部、アスコルビン酸ナトリウム0.264部、及び過硫酸カリウム0.22部を3時間かけて連続的に滴下した。その後、重合反応内の温度を23℃に保った状態にて反応を継続し、重合転化率が略100%に達したことを確認し、重合停止剤としてのハイドロキノンを添加して重合反応を停止し、3-(3,5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル(イルガノックス1076;BASF社製)1部を50重量%水分散液(0.1重量%のラウリル硫酸ナトリウム分散液)として添加した乳化重合液を得た。
次いで、老化防止剤を添加した乳化重合液を80℃に加温した後、乳化重合液(回転数100rpm、周速0.5m/s)に0.7%硫酸ナトリウム水溶液(凝固液)を連続的に添加して重合体を凝固させ濾別して含水クラムを得た。得られた含水クラム100部に対し、工業用水194部を添加し、25℃、5分間撹拌した後、凝固槽から水分を排出する含水クラムの洗浄を4回行い、次いで、pH3の硫酸水溶液194部を添加して25℃で5分間撹拌した後、凝固槽から水分を排出させて酸洗浄を1回行った後、純水194部添加して純水洗浄を1回行った後に、160℃の熱風乾燥機で乾燥させて含水量0.4重量%のアクリルゴム(G)を得た。得られたアクリルゴム(G)の各特性を評価して表2に示した。
[比較例2]
乳化重合液に添加する老化防止剤を、4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(ノクラックCD;大内新興化学工業社製)に変更する以外は比較例1と同様に行いアクリルゴム(H)を得た。得られたアクリルゴム(H)の各特性を評価して表2に示した。
表2から、本発明の反応性基を有する重量平均分子量(Mw)が100,000~5,000,000の範囲でヒンダード構造の液状老化防止剤を含むアクリルゴム(A)~(F)は、保存安定性に優れ、且つ強度特性含む常態物性、耐水性にも優れていることがわかる(実施例1~6)。
保存安定性については、アクリルゴム(A)~(F)の老化防止剤含有量がアクリルゴム(G)と変わらないので、ヒンダード構造を有する老化防止剤はアクリルゴム(A)~(F)内で均一に微細分散され保存安定性の差になったと思われる(実施例1~6と比較例1との比較)。また、保存安定性試験後に、アクリルゴム(A)~(F)には色調の変化は見られなかったが、アクリルゴム(G)~(H)は黄ばんでいた。
耐水性については、表2から、本発明のアクリルゴム(A)~(F)がアクリルゴム(G)~(H)に比べて圧倒的に優れていることがわかる(実施例1~6と比較例1~2との比較)。これは、脱水工程で含水クラムから水分を特定含水量まで絞り出したことでアクリルゴム中の灰分量を低減させたこと、及び、乳化剤としてリン酸エステル塩を用い且つ凝固剤としてマグネシウム塩を用いた時のアクリルゴムに残存する灰分がマグネシウムとリンの含有量が多く且つ両者が特定比率であるときに耐水性に殆ど影響しないことによりアクリルゴム(A)~(F)の耐水性を格段に向上させ、強度特性含む常態物性及び保存安定性とも高度にバランスしている(実施例1~6)。
表2から、更に、上記一般式(1)で表されるフェノール老化防止剤を含み、反応性基量、ガラス転移温度(Tg)、pH、含水量、重量平均分子量(Mw)、z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比(Mz/Mw)、100℃における複素粘性率η(100℃)、60℃における複素粘性率η(60℃)及び100℃と60℃における複素粘性率の比(η100℃/η60℃)が特定値にあるアクリルゴム(A)~(F)は、保存安定性に優れ、且つ強度特性含む常態物性と耐水性にも優れていることがわかる(実施例1~6)。
[比較例3]
乳化重合液に添加する老化防止剤を、ヒンダード構造でないフェノール系液状老化防止剤である2,4-[(オクチルチオ)メチル]-6-メチルフェノール(イルガノックス1520L;BASF社製)に変更する以外は比較例1と同様に行いアクリルゴム(I)を得た。得られたアクリルゴム(I)の保存安定性、耐水性及び常態物性を評価した。結果は、保存安定性が「135」、耐水性が「101」、破断強度が「◎」、100%引張応力が「◎」、破断伸びが「◎」であった。ヒンダード構造でないフェノール系液状老化防止剤を含浸したアクリルゴム(I)は、強度特性含めた常態物性には優れるが、保存安定性や耐水性に劣ることがわかった。また、本願では耐熱性評価の結果は不表示だが、ヒンダード構造の液状老化防止剤を含む本願のアクリルゴム(A)~(F)に比して圧倒的に劣っていた。

Claims (21)

  1. 単量体組成が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル由来の結合単位50~99.9重量%、反応性基含有単量体由来の結合単位0.1~20重量%、並びにその他の単量体由来の結合単位0~30重量%からなるものであるアクリルゴムであって、その重量平均分子量(Mw)が100,000~5,000,000の範囲であり、かつ、ヒンダード構造の液状老化防止剤を0.001~15重量%含むアクリルゴム。
  2. ヒンダード構造の液状老化防止剤が、ヒンダードフェノール系液状老化防止剤である請求項1記載のアクリルゴム。
  3. ヒンダード構造が、老化防止効果を発揮する官能基の両隣りに嵩高い置換基を有する構造である請求項1又は2に記載のアクリルゴム。
  4. 両隣の嵩高い置換基が、t-ブチル基である請求項3記載のアクリルゴム。
  5. ヒンダード構造を有する液状老化防止剤が、35℃以下の融点を有するものである請求項1~4のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  6. アクリルゴムの反応性基量が、0.001~5重量%の範囲である請求項1~のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  7. アクリルゴムの反応性基が、カルボキシル基、エポキシ基及びハロゲン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基である請求項1~6のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  8. 重量平均分子量(Mw)が、1,000,000~5,000,000の範囲である請求項1~7のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  9. z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比(Mz/Mw)が1.3以上である請求項1~8のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  10. 100℃における複素粘性率([η]100℃)が、1,500~6,000Pa・sの範囲である請求項1~9のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  11. 100℃における複素粘性率([η]100℃)と60℃における複素粘性率([η]60℃)との比([η]100℃/[η]60℃)が、0.5以上である請求項1~10のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  12. 100℃における複素粘性率([η]100℃)と60℃における複素粘性率([η]60℃)との比([η]100℃/[η]60℃)が、0.8以上である請求項1~11のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  13. 灰分量が、0.5重量%以下である請求項1~12のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  14. 灰分中にマグネシウムとリンを含み、灰分中のマグネシウムとリンとの合計量が、全灰分量に対する割合で30重量%以上である請求項13記載のアクリルゴム。
  15. 灰分中にマグネシウムとリンを含み、灰分中のマグネシウムとリンとの比([Mg]/[P])が、0.4~2.5の範囲である請求項13又は14記載のアクリルゴム。
  16. (メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル50~99.9重量%、反応性基含有単量体0.1~20重量%、並びにこれらと共重合し得る他の単量体0~30重量%からなる単量体成分を水と乳化剤とでエマルジョン化し重合触媒存在下に乳化重合した乳化重合液にヒンダード構造を有する液状老化防止剤を、単量体成分100重量部に対して0.001~15重量部の割合で添加した後に、乳化重合液を凝固液と接触させて凝固させ、生成した含水クラムを含水量1重量%未満まで乾燥するアクリルゴムの製造方法。
  17. ヒンダード構造を有する液状老化防止剤を添加した乳化重合液の凝固が、撹拌されている凝固液に該乳化重合液を添加して行うものである請求項16記載のアクリルゴムの製造方法。
  18. 凝固時に生成した含水クラムを温水で洗浄するものである請求項16又は17に記載のアクリルゴムの製造方法。
  19. 洗浄後の含水クラムから脱水機を用いて水分を絞り出すものである請求項18記載のアクリルゴムの製造方法。
  20. 請求項1~15のいずれか1項に記載のアクリルゴムを含むゴム成分、充填剤及び架橋剤を含んでなるゴム組成物。
  21. 請求項20記載のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
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