JP7451000B2 - アルカリ蓄電池用水素吸蔵合金 - Google Patents

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Description

本発明は、アルカリ蓄電池に用いる水素吸蔵合金に関する。
近年、ニッケル水素二次電池は、ニッケルカドミウム電池に比べて高容量、かつ環境面でも有害物質を含まないため、例えば、携帯電話やパーソナルコンピュータ、電動工具、ハイブリッド自動車(HEV)などに幅広く使われるようになってきており、これらの用途には、主としてアルカリ蓄電池が用いられている。
従来、アルカリ蓄電池の負極には、AB型結晶構造の水素吸蔵合金が使用されていたが、該合金では、電池の小型軽量化には限界があり、小型で高容量を実現できる新たな水素吸蔵合金の開発が望まれていた。そこで、その解決策として、特許文献1や特許文献2は、Mgを含む希土類-Mg遷移金属系水素吸蔵合金を提案している。
また、小型化、軽量化の手法として、例えば負極に用いる水素吸蔵合金の量を削減することが考えられるが、水素吸蔵合金の量を削減すると、ニッケル活性点の減少による出力低下という新たな問題が生じる。これを改善するため、特許文献3には、高水素平衡圧の水素吸蔵合金を用いて作動電圧を高くする手法が提案されている。
また、水素吸蔵合金として、希土類-Mg-Ni系合金がいくつか提案されている。例えば、特許文献4には、耐食性、耐久性に優れた水素吸蔵合金、その水素吸蔵合金を用いたサイクル寿命の優れたニッケル水素蓄電池を提供することを目的として、具体的には、一般式(RE1-a-bSmMg)(Ni1-c-dAl(0.1≦a≦0.25;0.1<b<0.2;0.02<cx<0.2;0≦dx≦0.1;3.6≦x≦3.7;REはSm以外の希土類元素及びYより選択される1種以上の元素;Laを必須とし、MはMn及び/又はCo)で表される水素吸蔵合金が開示されている。
また、特許文献5には安価で、放電出力特性が良好であり、また高温耐久性に優れたアルカリ蓄電池を提供することが報告されている。その一実施形態として水素吸蔵合金負極には、Laを主要希土類元素とする一般式(LaLn1-zMgNit-u(T:Al、Co、Mn、Znから選択され、LnはLa以外の希土類元素及びYから選択された少なくとも1種であり、x>y、0.09≦z≦0.14、3.65≦t≦3.80、0.05≦u≦0.25)であって、六方晶系(2H)のA19型構造と、三方晶系(3R)のA19型構造と、A型構造とを含み、2H系のA19型結晶構造のCu-Kα線による粉末X線回折強度ピークは、3R系のA19型結晶構造のもの及びA型構造のものよりも大きいものを使用している。
また、特許文献6には、組成が、一般式:A(4-w)(1+w)19(但し、AはY(イットリウム)を含む希土類元素から選択される1種又は2種以上の元素、BはMg元素、CはNi、Co、MnおよびAlからなる群より選択される1種又は2種以上の元素、wは-0.1~0.8の範囲の数を表す)で表されるPrCo19型結晶構造からなる相を含有し、合金全体の組成が、一般式:R1R2R3(但し、15.8≦x≦17.8、3.4≦y≦5.0、78.8≦z≦79.6、x+y+z=100で表され、R1はY(イットリウム)を含む希土類元素から選択される1種又は2種以上の元素であり、R2はMgであり、R3はNi、Co、MnおよびAlからなる群より選択される1種又は2種以上の元素であり、前記zのうちMn+Alを示す値が0.5以上であり、Alを示す値が4.1以下である)で表されることを特徴とする水素吸蔵合金が開示されている。
また、特許文献7には、Lnで表される希土類元素とマグネシウムとからなるA成分と、少なくともニッケル、アルミニウムを含む元素からなるB成分とから構成される水素吸蔵合金であって、前記水素吸蔵合金の合金主相はA19型構造であるとともに、一般式はLnl-xMgNiy-a-bAl(式中、MはCo、Mn、Znから選択される少なくとも1種の元素であり、0.1≦x≦0.2、3.6≦y≦3.9、0.1≦a≦0.2、0≦b≦0.1)と表され、前記希土類元素(Ln)は少なくともランタン(La)を含む最大で二元素からなり、かつ40℃での水素吸蔵量H/M(原子比)が0.5のときの吸蔵水素平衡圧(Pa)が0.03~0.17MPaであることを特徴とする水素吸蔵合金が開示されている。
さらに特許文献8には、一般式:Ln1-xMgNi(式中、Lnは、Yを含む希士類元素とCaとZrとTiとから選択される少なくとも1種の元素であり、Aは、Co、Mn、V、Cr、Nb、Al、Ga、Zn、Sn、Cu、Si、PおよびBから選択される少なくとも1種の元素であり、添字x、yおよびzが、0.05≦x≦0.25、0<z≦1.5、2.8≦y+z≦4.0の条件を満たす)で表される水素吸蔵合金において、上記のLn中にSmが20mol%以上含まれるようにした水素吸蔵合金が開示されている。
さらに、特許文献9には、耐アルカリ性に優れた水素吸蔵合金として、一般式:(LaSm1-wMgNiAl(式中、AおよびTは、Pr、Nd等よりなる群およびV、Nb等よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素をそれぞれ表し、添字a、b、cはそれぞれ、a>0、b>0、0.1>c≧0、a+b+c=lで示される関係を満たし、添字w、x、y、zはそれぞれ0.1<w≦1、0.05≦y≦0.35、0≦z≦0.5、3.2≦x+y+z≦3.8で示される範囲にある)にて示される組成を有する水素吸蔵合金が開示されている。
また、特許文献10には、A構造とA19構造の構成比率を検討して、従来の範囲を遥かに越えた高出力特性を有することが可能なアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金およびその製造方法ならびにアルカリ蓄電池を提供することが報告されている。そして、具体的なアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金は、Laを除き、Yを含む希土類元素および4族から選ばれた元素Rと、Co、Mn、Znの少なくとも1つ以上からなる元素Mとを含有して一般式がLaα1-α-βMgβNiγ-η-εAlηε(α、β、γ、η、εは、0≦α≦0.5、0.1≦β≦0.2、3.7≦γ≦3.9、0.1≦η≦0.3、0≦ε≦0.2)と表され、かつ結晶構造においてA19型構造が40%以上であることを特徴とするが開示されている。
また、特許文献11は、高出力特性と出力安定性に優れたアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金及びその製造方法を提供するものである。具体的にはアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金として、AB(A:LaReMg1-x-y、B:Nin-z、Re:Yを含む希土類元素(Laを除く)から選択される少なくとも1種の元素、T:Co、Mn、Zn、Alから選択される少なくとも1種の元素、z>0)で表され、化学量論比nが3.5~3.8で、Reに対するLaの比(x/y)が3.5以下であって、少なくともA19型構造を有するとともに、結晶格子の平均C軸長さαが30~41Åであることが開示されている。
特許文献12には、ニッケル水素蓄電池のサイクル特性を優れたものとし得る水素吸蔵合金などを提供することを課題としている。具体的には、一般式LaSmM1M2M3で表される水素吸蔵合金であって、M1がPr及び/又はNdの元素であり、M2がMg及びCaのうち少なくともMgを含む元素であり、M3がNi又はNiの一部を6A族元素、7A族元素、8族元素(Ni及びPdを除く)、1B族元素、2B族元素、及び3B族元素からなる群より選択された1種又は2種以上の元素で置換したものであり、v、w、x、y及びzが、下記式(1)、式(2)及び式(3)
3.2≦z/(v+w+x+y)≦3.7 式(1)
0.60≦v/(v+w+x)≦0.85 式(2)
0.01≦w/(v+w+x)≦0.06 式(3)
を満たすことを特徴とする水素吸蔵合金が開示されている。
特許文献13には、組成式がLaReMg1-x-yNin-m-vAl(ただし、ReはYを含む希土類元素(Laを除く)から選択される少なくとも1種の元素、TはCo、Mn、Zn、Fe、Pb、Cu、Sn、Si、Bから選択される少なくとも1種の元素、0.17≦x≦0.64、3.5≦n≦3.8、0.10≦m+v≦0.22、v≧0)と表され、主相がA19型構造であり、表面層のニッケル(Ni)に対するアルミニウム(Al)の濃度比率X(Al/Ni)(%)とバルク層のニッケル(Ni)に対するアルミニウム(Al)の濃度比率Y(Al/Ni)(%)の比X/Yが0.36以上、0.84以下(0.36≦X/Y≦0.84)であることを特徴とするアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金が開示されている。
特許文献14には、組成式がLaReMg1-x-yNin-m-vAl(ただし、ReはYを含む希土類元素(Laを除く)から選択される少なくとも1種の元素、TはCo、Mn、Znから選択される少なくとも1種の元素、0.17≦x≦0.64、3.5≦n≦3.8、0.06≦m≦0.22、v≧0)と表され、主相の結晶構造がA19型構造であり、表面層のニッケル(Ni)に対するアルミニウム(Al)の濃度比率X(Al/Ni)(%)とバルク層のニッケル(Ni)に対するアルミニウム(Al)の濃度比率Y(Al/Ni)(%)の比X/Yが0.36以上、0.85以下(0.36≦X/Y≦0.85)であるアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金が開示されている。
特許文献15にはニッケル水素二次電池の負極に、一般式:(RE1-x1-yMgNiz-aAl(ただし、式中、REは、Y、Sc及び希土類元素から選ばれる少なくとも一つの元素、Tは、Zr、V及びCaから選ばれる少なくとも一つの元素、添字x、y、z、aは、それぞれ、0≦x、0.05≦y≦0.35、2.8≦z≦3.9、0.10≦a≦0.25を示す)で表される組成を有し、AB型サブユニット及びAB型サブユニットが積層された結晶構造を有し、前記Niの一部がCrで置換されてなる水素吸蔵合金を含むニッケル水素二次電池が開示されている。
一方、非特許文献1にはRE-Mg-Ni系水素吸蔵合金(RE:希土類元素)へのCeの影響に関する章が設定されている。この章では、
(La0.5Nd0.50.85Mg0.15Ni3.3Al0.2
(La0.45Nd0.45Ce0.10.85Mg0.15Ni3.3Al0.2
(La0.4Nd0.4Ce0.20.85Mg0.15Ni3.3Al0.2
(La0.3Nd0.3Ce0.40.85Mg0.15Ni3.3Al0.2
の合金が開示され、評価した結果が報告されている。
また、非特許文献2には、La0.78Mg0.22Ni3.67Al0.10からなる水素吸蔵合金の特性が報告されている。
さらに、非特許文献3には、995℃で24時間熱処理したLa0.64Sm0.07Nd0.08Mg0.21Ni3.57Al0.10からなる水素吸蔵合金が報告されている。
さらに、非特許文献4には、La0.63Nd0.16Mg0.21Ni3.53Al0.11からなる合金組成の特性が報告されている。
特開平11-323469号公報 国際公開第01/ 48841号 特開2005- 32573号公報 特開2016-69692号公報 特開2014-229593号公報 国際公開第2007/018292号 特開2009-176712号公報 特開2009-74164号公報 特開2009-108379号公報 特開2008-300108号公報 特開2011-023337号公報 特開2011-21262号公報 特開2011-82129号公報 特開2011-216467号公報 特開2014-26844号公報
S.Yasuoka et al.、 J. Power Sources 346 p.56(2017) L.Zhang et al.、 J. Power Sources 401 p.102(2018) W.Wang et al.、 J. Power Sources 465 228236(2020) W.Wang et al.、 Electrochimica Acta 317 211(2019)
しかしながら、上記特許文献1や特許文献2に開示の技術は、合金の最適化がなされず各種用途に実用化されるまでには至らなかった。
また、特許文献3に開示の技術では、高水素平衡圧の水素吸蔵合金を用いると、充放電サイクル寿命が低下するという新たな問題が生じた。
また、特許文献4に開示の水素吸蔵合金は、サイクル特性が改善しているもののさらなる向上とともに、放電容量の向上と特にレート特性の向上が実用には必要であった。
また、特許文献5に開示の技術は、適正な結晶相の構成をX線回折強度で示しているが、水素平衡圧(40℃における水素吸蔵量(H/M)が0.5の時の解離圧とする)が高すぎて、電池として使用する場合に問題が生じる場合がある。
特許文献6に開示されている技術の場合、高容量と長サイクル寿命特性の両立を目指しているが、評価が数10サイクルまでで判断しており、本来の寿命評価には至っていない。
さらに、特許文献7に開示されている技術では、特許文献5と同様に水素吸蔵合金の水素平衡圧(40℃における水素吸蔵量(H/M)が0.5の時の解離圧とする)が高すぎて、電池として使用する場合に問題が生じる場合がある。また、材料コストが高いことも課題であった。
特許文献8に開示された技術は、Smを比較的多く含んだ合金となっており、Pr、Ndよりは安価な元素を使用しているものの、材料コストは依然高く、また良好なレート特性が得られておらず、十分な水素吸蔵合金を供しえなかった。
特許文献9に開示された技術は、La、Smを比較的多く含んだ合金となっており、Pr、Ndよりは安価な元素を主体に使用しているものの、まだ安価で耐久性に優れた水素吸蔵合金を供しえない。また、レート特性の向上も必要であった。特に、実施例にはZrを必須としており、B/A比は3.6が開示されているのみである。また、La含有量増加で低下した水素平衡圧を電池で使用可能なレベルに上げるとしているが、安価なLaリッチ組成に設定すると不十分な場合が多い。
特許文献10に開示された技術は、低温での出力の向上はみられるものの、本質的な高容量とサイクル寿命特性は十分ではなかった。また、希土類元素のうちLaを除く合金となっており、Ndを多量に含む合金は高コストとなっている。
特許文献11に開示された技術は、高出力特性と出力安定性を目指したものであるが、本質的な高容量とサイクル寿命特性を満足するには至っていなかった。また、希土類元素の中でLaが含まれる量が比較的少なく、比較的高コストの合金であり、実用化できる安価な合金が望まれていた。
特許文献12に開示された技術は、サイクル特性の向上を図るとともに、電池使用時に電池内で発生する酸素ガスの吸収性能に着目しているが、さらなる高容量、サイクル特性向上が望まれていた。また、材料が高コストであることも大きな課題である。
特許文献13に開示された技術は、表面処理することで合金内部に対する表面のAl濃度比率を制御して、電池出力特性、出力安定性をよくするものであるが、基本となるサイクル寿命特性のさらなる向上が必要であるとともに、レート特性の向上が必要であった。また、比較的材料コストが高くなっていることも課題である。
特許文献14に開示された技術は、表面処理することでAl/Ni比を合金内部に比べて表面を所定の範囲にすることにして、電池出力の安定化を図るものであるが、基本となるサイクル特性の向上が必要であった。また、材料コストが比較的高くなっていることも課題であった。
特許文献15に開示された技術は、自己放電抑制とサイクル寿命特性向上狙いであったが、レート特性向上には至らず、さらなる高容量化も必要で、この点での特性向上が望まれていた。また、材料コストが高いという課題もあった。
一方、非特許文献1では結論として、Ceを含んだ希土類-Mg-Ni系合金は、水素吸蔵放出量が少なく、さらに水素吸蔵放出を繰り返すと微粉化しやすいことから、電池での劣化が大きいことが明らかとなったとしている。
また、非特許文献2では、高い放電容量は得られているが、200サイクル後の容量は約20%低下しており、実用化には特性向上が必要となっていた。
さらに、非特許文献3では370mAh/gの高い放電容量が得られているが、高価なNdが一定量含まれていることと、200サイクル後の放電容量は約20%低下するとともに、レート特性が十分ではなく、実用化に対してはさらなる特性向上が求められていた。
さらに、非特許文献4では、高い放電容量が得られているが、200サイクル後の放電容量は約20%低下しており、実用化に対してはさらなる特性向上が求められていた。
希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金では、水素吸蔵放出を繰り返すことにより合金に割れが生じて、微粉化が進展するとともに、新生面が生じるため、合金としての耐食性が低いと合金表面が反応して、希土類水酸化物を生成する。そして、電解液を消耗し、結果として電池の内部抵抗が高くなり、放電容量が低下することで、電池寿命が短くなる。一方で、水素の受け入れ性をよくするためには合金表面にNiが多く存在した方が好ましく、各種電池特性のバランスで決まる。
本発明は、従来技術が抱えるこれらの問題点に鑑みてなされたものであって、希土類-Mg-Ni系合金において、安価であるとともに、電池として重要な特性である放電容量、サイクル寿命およびレート特性のバランスがとれた、実用に供するアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、アルカリ蓄電池の負極用の水素吸蔵合金として、主にA19相およびA相の結晶相から構成されており、かつ、安価なCeを含む成分組成を有する合金を用いることで、放電容量特性、充放電サイクル寿命特性およびレート特性をバランスよく並立させることができることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の水素吸蔵合金は、主にA19相およびA相の2つの結晶相から構成されており、具体的にはPrCo19型、CeCo19型、CeNi型およびGdCo型であって、かつ、下記一般式(A)で表される成分組成を有することを特徴とする。
(La1-a-bCeSm1-cMgNi ・・・(A)
ここで、上記(A)式中のM,Tおよび添字a、b、c、d、eおよびfは、
M:Al、Zn、Sn、Siから選ばれる少なくとも1種、
T:Cr、Mo、Vから選ばれる少なくとも1種、
0<a≦0.10、
0≦b<0.15、
0.08≦c≦0.24、
0.03≦e≦0.14、
0≦f≦0.05、
3.55≦d+e+f≦3.80
の条件を満たす。
また、本発明にかかるアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金は、
(ア)前記一般式(A)において、さらに、0.08≦c≦0.18、および、3.70≦d+e+f≦3.80の条件を満たすこと、
(イ)前記一般式(A)において、さらに、MはAlであり、0<a≦0.08、0≦b≦0.08、0.14≦c≦0.24、および、0.03≦e<0.10の条件を満たすこと、
(ウ)水素吸蔵放出特性において、80℃での水素放出時の水素吸蔵量(H/M)が0.5のときの水素圧(P0.5)が0.02MPa以上、0.1MPa以下である、ここで、水素吸蔵量(H/M)は水素原子(H)と金属原子(M)の原子数比とすること、
(エ)水素吸蔵放出特性において、水素吸蔵後の放出時のプラトー傾きが、下記(B)式を満足する範囲にあること、
(オ)150μm以上1mm以下の範囲に粒度調整した水素吸蔵合金に対して、繰り返し水素吸蔵・放出後の体積平均粒径MVが75μm以上で、かつ、80℃で水素圧を1MPaまで加圧した時の水素吸蔵量(H/M;Hは水素原子数、Mは金属原子数)が0.92以上であること、ここで、水素吸蔵は80℃で水素圧を3MPaまで加圧して1時間保持し、水素放出は、真空排気し、80℃で0.01MPaまで減圧して1時間保持し、これを5回繰り返した後に体積平均粒径MVを測定すること、
(カ)7.15mol/Lの水酸化カリウム水溶液に80℃で8時間浸漬した後、25℃で10kOeの磁場を印加して測定した飽和磁化が60emu/m以下であること、
(キ)Cu-Kα線をX線源とするX線回折測定において、A19相の2H構造に基づく(109)面と3R構造に基づく(1013)面の回折強度の和(α)に対する、A相の2H構造に基づく(107)面と3R構造に基づく(1010)面の回折強度の和(β)の比が、β/α≦1であること、
(ク)Cu-Kα線をX線源とするX線回折測定において、回折角2θが40~45°の範囲にある最も強い回折ピークの回折強度(ε)に対するAB相の(101)面の回折強度(ζ)の比が、ζ/ε≦0.08であること、
などがより好ましい課題解決手段になりうるものと考えられる。
0.90≦log[(P0.7/P0.3)/0.4]≦3.00 ・・・(B)
ここで、P0.7は、水素吸蔵量(H/M)=0.7の時の水素圧[MPa]、
P0.3は、水素吸蔵量(H/M)=0.3の時の水素圧[MPa]
を表す。
本発明のアルカリ蓄電池用の水素吸蔵合金は、放電容量、サイクル寿命およびレート特性に優れており、これを用いたニッケル水素二次電池は高出力密度を有し、充放電サイクル寿命も優れているため、放電容量特性に優れ、各種用途、例えば民生用途、工業用途、車載用途など各種用途に利用できる。
本発明の水素吸蔵合金を用いたアルカリ蓄電池を例示する部分切欠斜視図である。 本発明にかかる水素吸蔵合金の水素吸蔵放出特性(PCT特性)の一例を水素吸蔵量H/Mと水素圧の関係で示し、水素平衡圧P0.5およびプラトーの傾きを求めるためのP0.7およびP0.3を説明するグラフである。 本発明にかかる水素吸蔵合金のX線回折測定結果の一例を示すグラフである。
本発明の水素吸蔵合金を用いたアルカリ蓄電池について、電池の一例を示す部分切欠斜視図である図1に基づいて説明する。アルカリ蓄電池10は、水酸化ニッケル(Ni(OH))を主正極活物質とするニッケル正極1と、本発明にかかる水素吸蔵合金(MH)を負極活物質とする水素吸蔵合金負極2と、セパレータ3とからなる電極群を、アルカリ電解液を充填した電解質層(図示せず)とともに筐体4内に備えた蓄電池である。
この電池10は、いわゆるニッケル-金属水素化物電池(Ni-MH電池)に該当し、以下の反応が生じる。
正極: NiOOH+HO+e=Ni(OH)+OH
負極: MH+OH=M+HO+e
<第一実施形態>
[水素吸蔵合金]
以下、第一実施形態にかかる、アルカリ蓄電池の負極に用いる水素吸蔵合金について説明する。
本実施形態の水素吸蔵合金は、主にA19相およびA相の結晶相から構成されており、具体的にはPrCo19型、CeCo19型、CeNi型およびGdCo型であって、かつ、下記一般式(A)で表される成分組成を有することが必要である。
(La1-a-bCeSm1-cMgNi ・・・(A)
ここで、上記(A)式中のM,Tおよび添字a、b、c、d、eおよびfは、
M:Al、Zn、Sn、Siから選ばれる少なくとも1種、
T:Cr、Mo、Vから選ばれる少なくとも1種、
0<a≦0.10、
0≦b<0.15、
0.08≦c≦0.24、
0.03≦e≦0.14、
0≦f≦0.05、
3.55≦d+e+f≦3.80
の条件を満たす。
この一般式(A)で表される合金は、アルカリ蓄電池の負極として用いたとき、電池に高い放電容量、サイクル寿命およびレート特性を付与するので、アルカリ蓄電池の小型化・軽量化や高耐久性の達成に寄与する。
以下、本実施形態の水素吸蔵合金の成分組成を限定する理由について説明する。
希土類元素:La1-a-bCeSm(ただし、0<a≦0.10、0≦b<0.15)
本実施形態の水素吸蔵合金は、主にA19相およびA相からなる合金のA成分の元素として、希土類元素を含有する。希土類元素としては、水素吸蔵能力をもたらす基本成分として、LaおよびCeの2つの元素を必須とする。また、LaとCeは原子半径が異なるため、この成分比率によって、水素平衡圧を制御することができ、電池に必要な平衡圧を任意に設定できる。希土類元素に占めるCeの原子比率a値で、0超え0.10以下の範囲であることが必要である。a値が0.10を超えると水素吸蔵放出にともなう割れが促進され、サイクル寿命の低下を招く。一方、a値が0、つまり、Ceを含まない場合には、十分な水素平衡圧の制御が困難となり、電池特性に悪影響を与える。この範囲であれば、電池に適した水素平衡圧に設定しやすい。Ceの原子比率a値は、好ましくは、0.005以上であり、好ましくは、0.08以下である。さらに好ましい上限値は0.07である。
LaおよびCe以外の希土類元素としてSmを任意に含有することができる。SmはLaやCeと同様に主にA19相およびA相からなる合金のA成分の元素として、希土類サイトを占める元素であり、これらの元素と同様に水素吸蔵能力をもたらす成分である。SmはCeに比べると平衡圧をあげる効果は低いが、CeとともにLaを置換することで耐久性が向上する。希土類元素中に占めるSmの原子比率を表すb値の上限は0.15未満であり、それ以上ではCe量とのバランスでサイクル寿命特性が低下してくる。好ましくは、b≦0.12である。
Laが多い組成では放電容量が高くなり、他の元素と組み合わせたときに、さらに放電容量特性が向上する。また、希土類元素としてのPrやNdは積極的に活用しないが、不可避不純物レベルで含有していてもよい。
Mg:Mg(ただし、0.08≦c≦0.24)
Mgは、主にA19相およびA相の結晶相からからなる合金のA成分の元素を構成する本実施形態では必須の元素であり、放電容量の向上およびサイクル寿命特性の向上に寄与する。A成分中のMgの原子比率を表すc値は、0.08以上0.24以下の範囲とする。c値が0.08未満では水素放出能力が低下するため、放電容量が低下してしまう。一方、0.24を超えると特に水素吸蔵放出に伴う割れが促進し、サイクル寿命特性すなわち耐久性が低下する。好ましくは、c値は0.09以上0.235以下の範囲である。
Ni:Ni
Niは主にA19相およびA相の結晶相からなる合金のB成分の主たる元素である。その原子比率d値は後述する。
M:M(0.03≦e≦0.14)
MはAl、Zn、Sn、Siから選ばれる少なくとも1種であり、主にA19相およびA相からなる合金のB成分の元素として含有する元素である。電池電圧に関係する水素平衡圧の調整に有効であるとともに、耐食性が向上できる。微粒の水素吸蔵合金の耐久性向上、すなわちサイクル寿命特性に効果がある。特にAlが好ましい。上記効果を確実に発現させるためには、A成分に対するMの原子比率を表すe値は、0.03以上0.14以下の範囲とする。e値が、0.03未満では耐食性が十分ではなくなり、その結果サイクル寿命が十分でなくなる。一方、e値が、0.14を超えると放電容量が低下してしまう。好ましいe値は、0.04以上であり、0.12以下である。さらに好ましい上限値は0.095である。
T:T(ただし、0≦f≦0.05)
TはCr、Mo、Vから選ばれる少なくとも1種であり、M元素と同様にA19相およびA相からなる合金のB成分の元素として含有する元素である。Tの含有は、電池電圧に関係する水素平衡圧の調整に有効であるとともに、M元素との相乗効果で耐食性が高まり、耐久性が向上する。特に、微粒の水素吸蔵合金の耐久性向上、すなわちサイクル寿命特性に効果がある。上記効果を確実に発現させるためには、A成分に対するTの原子比率を表すf値は、0.05以下とする。f値が0.05を超えると過剰なT元素によって水素の吸蔵放出に伴う割れが誘起され、結果として耐久性が低下して、サイクル寿命が十分ではなくなる。好ましいf値は、0.002以上0.04以下の範囲である。T元素のうち、特にCrが耐久性の観点から好ましい。
A成分とB成分の比率:3.55≦d+e+f≦3.80
19相およびA相からなる合金のA成分に対するB成分(Ni、MおよびT)の化学量論比、すなわち、一般式で表されるd+e+fの値は、3.55以上3.80以下の範囲であることが好ましい。3.55未満ではレート特性が徐々に低下する。一方、3.80超えではAB相が相当量増えるため、徐々に放電容量の低下が起きるとともに水素吸蔵放出に伴う割れが促進されるようになり、結果として耐久性、すなわちサイクル寿命が低下してしまう。好ましくは3.56以上3.79以下である。
本実施形態の水素吸蔵合金は、80℃での水素放出時の水素吸蔵量(H/M:水素原子(H)と金属原子(M)の原子数比)が0.5の時の水素圧(P0.5、以下、水素平衡圧と呼ぶ)が0.02MPa以上、0.1MPa以下であることが好ましい。この範囲であれば、各種温度条件で問題なく電池動作ができる。好ましくは、P0.5が0.025MPa以上、0.09MPa以下である。水素平衡圧の具体例を図2に示す。
また、本実施形態の水素吸蔵合金の水素吸蔵放出特性において、80℃で1MPa水素加圧時の水素吸蔵量(H/M;Hは水素原子数、Mは金属原子数)を0.92以上とすることが好ましい。また、図2に示すように、水素吸蔵後の放出時のプラトー 傾きを、水素吸蔵量H/M=0.3の時の水素圧P0.3(MPa)と、H/M=0.7の時の水素圧P0.7(MPa)をもとに算出した。すなわち、log[(P0.7/P0.3)/0.4](=B1)で算出した値が0.90以上3.00以下であることが好ましい。プラトーの傾きが0.90より小さいと、水素吸蔵時の格子の膨張が一方向に起こりやすく、言い換えると異方的に伸び縮みしやすいため、生じたひずみで割れが促進されるおそれがある。一方、3.00を超えたプラトーの傾きになると、水素圧をかけても水素吸蔵量が増えにくくなり、結果として電池の放電容量が低下するおそれがある。好ましくはB1の値が、0.92以上であり、2.98以下である。
ニッケル水素電池の特性を向上させるにあたり、放電容量は合金組成で決まる部分が多い。一方、耐久性に関しては水素吸蔵放出に伴う合金の微粉化の程度、あるいはアルカリ水溶液中への合金成分の溶出などに左右される。これは、合金組成と熱処理に基づき生成する合金相の割合や合金相の性質による。高耐久性の要求を満足する水素吸蔵合金の開発を進めるにあたり、鋭意研究した結果、水素吸蔵・放出の繰り返しによる合金の割れ性を評価する際に、150μm以上1mm以下にふるいわけした合金を用いて80℃で3MPaまで水素を加圧し、水素吸蔵、その後真空排気により水素を放出、これを5回繰り返した後の粒度分布を評価、体積平均粒径(MV)を代表値として表すことで、特に耐久性に優れた水素吸蔵合金を見出すに至った。詳細な条件は、以下の通りである。ここで、「150μm以上1mm以下にふるいわけ」とは、150μmの目開きのふるい上であって、1mm目開きのふるい下であることを表す。
具体的には、PCT(Pressure-Composition-Temperature)評価装置の測定ホルダーに水素吸蔵合金7gを充填、80℃で1時間真空排気(0.01MPa以下)を行った後、温度をキープして水素圧0.01~3MPaの範囲で水素吸蔵・放出測定(PCT特性評価)を行う。この後、1時間真空排気(0.01MPa)を行い、3MPaまで水素ガスを導入して1時間保持して、合金に水素をほぼフルに吸蔵させ、1時間真空排気(0.01MPa)して水素を放出させる。これを3回繰り返す。最後に1サイクル目と同様に水素圧0.01~3MPaの範囲で水素吸蔵・放出測定(PCT特性評価)を行う。1回目と5回目の水素吸蔵・放出と2~4回目の水素吸蔵・放出の違いは処理時間であり、2~4回目の水素吸蔵・放出は一気に3MPaまで水素圧をかけるため、所要時間が短い。このように水素吸蔵・放出サイクルを合計5回行った後、水素吸蔵合金粉を取り出し、粒度分布測定を行う。繰り返し水素吸蔵・放出後の体積平均粒径MVの範囲は、75μm以上であることが好ましく、さらに好ましくは80μm以上である。この範囲であれば、実際に電池に組み込んだ時の充放電に伴う水素吸蔵合金の微粉化が進んでおらず、アルカリ溶液中での良好な耐食性と相まって、耐久性に優れていることが判る。
なお、体積平均粒径MVはレーザー回折粒度分布測定装置で測定すればよく、測定装置としては、例えばマイクロトラック・ベル社製MT3300EXII型などを用いることができる。
水素吸蔵合金の割れは、水素吸蔵・放出に伴う結晶格子の膨張・収縮による歪みに起因すると考えられる。従って、水素吸蔵量が少ないと格子の膨張・収縮は少なくなり、結果として微粉化しにくい。しかし、一方で水素吸蔵量が少ないと電池材としての放電容量が小さくなり、一定の電池容量を得るには、電池の大型化や高コスト化につながるため、好ましくない。従って、上記繰り返し水素吸蔵・放出後の体積平均粒径MVを実現するのに必要な条件として、80℃でのPCT測定から得られる1MPaでの水素吸蔵量の指標H/M(水素Hと金属Mの原子比率)の値を0.92以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.93以上である。この範囲であれば、十分な放電容量を保持し、高耐久性の水素吸蔵合金が得られているといえる。
一方、水素吸蔵合金をアルカリ水溶液中に浸漬した時の合金成分の溶出度合いは耐食性に影響し、その結果として耐久性の良好な合金を実現することになる。このため、種々の条件で評価を重ねた結果、体積平均粒径MVが約35μmの合金粉に対して、アルカリ水溶液浸漬後の磁化を測定して、耐食性と結びつけた。具体的には、80℃で8時間、7.15mol/Lの水酸化カリウム水溶液に浸漬、洗浄乾燥後、得られたサンプルについて、試料振動型磁力計(VSM)を用いて温度25℃、磁場10kOeで飽和磁化を測定し、60emu/m以下である場合に耐久性に優れた合金が得られることを見出した。好ましくは55emu/m以下である。
なお、VSMで測定した試料の粒度分布を測定し、その結果に基づき算出される比表面積CS値(m/ml)と水素吸蔵合金の密度(8.31g/ml)の値から比表面積(m/g)を算出し、表面積当たりの飽和磁化(emu/m)を評価基準としている。これは飽和磁化の値が粒度分布の影響を受けにくくするためである。
上記した本実施形態にかかる水素吸蔵合金としては、主相がA19型結晶構造あるいはA型結晶構造からなる合金である。具体的にはA型結晶構造は六方晶系(2H)であるCeNi相と菱面体晶系(3R)のGdCo相が共存しても問題なくいずれかであるが、前者が多く含まれるほうが好ましい。また、A19型結晶構造(六方晶系であるGdCo19相あるいは菱面体晶系であるPrCo19相)では前者の方が多く含まれている方が好ましく、A型結晶構造とA19型結晶構造を合わせて少なくとも合わせて70mass%以上であることが好ましい。また、AB型結晶構造(六方晶系であるCeNi相あるいは菱面体晶系であるPuNi相)が5mass%まで副相として含まれていてもよいが、少ない方が好ましく、最も好ましいのは不含有である。さらには、AB型結晶構造(MgZn相)やAB型結晶構造(CaCu相)は含まれないことが、アルカリ蓄電池に用いて、放電容量、サイクル寿命特性の面から好ましいが、特性を低下させない程度、例えば5mass%以下程度、含まれていてもよい。
また、本実施形態の水素吸蔵合金は、Cu-Kα線をX線源とするX線回折測定において、A19相の2H構造に基づく(109)面と3R構造に基づく(1013)面の回折強度の和(α)に対する、A相の2H構造に基づく(107)面と3R構造に基づく(1010)面の回折強度の和(β)の比が、β/α≦1であることが好ましい。β/α比の値が1を超えると、上記した水素平衡圧が高くなりすぎ、電池として使用しにくくなるおそれがある。図3のXRDグラフで具体的に回折線を説明する。回折線の●で示すピークがA19相の3R構造に基づく(1013)面の回折線であり、▼で示すピークがA19相の2H構造に基づく(109)面の回折線であり、◆で示すピークがA相の2H構造に基づく(107)面の回折線である。なお、このグラフではA相の3R構造に基づく(1010)面の回折線は現れていないが、通常は、●と▼の間の回折角に見られる。
また、本実施形態の水素吸蔵合金は、Cu-Kα線をX線源とするX線回折測定において、回折角40~45°の範囲にある最強回折ピークの回折強度(ε)に対するAB相の(101)面の回折強度(ζ)の比が、ζ/ε≦0.08であることが好ましい。ζ/ε比が0.08を超えると、サイクル寿命特性が低下してしまうおそれがある。さらに好ましくは、0.05以下である。図3のXRDグラフで具体的に回折線を説明すると、*で示す最強回折ピークに対する■で示す回折ピークの高さ比である。
なお、X線回折測定条件は下記の通りである。粒径75μmアンダーに粉砕した粉末を試料フォルダにセットし、ターゲットをCuとして、管電圧40kV、管電流40mA、スキャンスピード0.5°/分、スキャンステップ0.02°、発散スリット(DS)1°、散乱スリット(SS)1°、受光スリット(RS)なしでkβフィルタのみ使用で測定する。
<第2実施形態>
第2実施形態は、上記第1実施形態において、Mgの比率を下げ、A成分に対するB成分の比率を上げることで、特性が向上することを見出して完成したものである。すなわち、上記一般式(A)において、0.08≦c≦0.18、および、3.70≦d+e+f≦3.80を満たす、アルカリ蓄電池用水素吸蔵合金とすることが好ましい。以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。
Mg:Mgc(ただし、0.08≦c≦0.18)
Mgは、本実施形態では、上限を0.18に制限することが好ましい。もって、サイクル寿命特性すなわち耐久性を向上させる。より好ましくは、c値は0.09以上であり、0.17以下である。
A成分とB成分の比率:3.70≦d+e+f≦3.80
本実施形態ではA成分に対するB成分(Ni、MおよびT)のモル比である化学量論比、すなわち、一般式で表されるd+e+fの値は、下限を3.70に制限することが好ましい。もって、レート特性を向上させる。合金表面のNi量が影響する可能性がある。より好ましくは3.70を超えて3.80未満であり、さらに好ましくは3.705以上であり、3.79以下である。
<第3実施形態>
第3実施形態は、希土類元素中のCeやSmの比率を下げ、Laの比率を上げ、Mgの比率を上げるとともに、M元素にAlを用い、Alの比率を下げることで、A成分に対するB成分の比率が広い範囲で特性が向上することを見出し完成した。すなわち、上記一般式(A)において、MはAlであり、0<a≦0.08、0≦b≦0.08、0.14≦c≦0.24、および、0.03≦e<0.10を満たすアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金とすることが好ましい。以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。
希土類元素:La1-a-bCeSm(ただし、0<a≦0.08、0≦b≦0.08)
本実施形態では、Ceの原子比率a値の上限を0.08に制限することが好ましい。もって、サイクル寿命特性を向上させる。また、CeとのバランスでSmの原子比率b値の上限を0.08に制限することが好ましい。Ceと同様にサイクル寿命特性を向上させる。このように、Laが多い組成では放電容量が高くなり、他の元素と組み合わせたときに、さらに放電容量特性が向上する。
Mg:Mgc(ただし、0.14≦c≦0.24)
Mgは、本実施形態では、下限を0.14に制限することが好ましい。もって、放電容量特性を向上させる。より好ましくは、c値は0.145以上であり、0.235以下である。
M:Me(ただし、MはAlであり、0.03≦e<0.10)
本実施形態では、MにAlを用いることが好ましい。また、Alの原子比率は、0.10未満に制限することが好ましい。もって、放電容量特性を向上させる。より好ましいe値は、0.04以上であり、0.095以下である。
[水素吸蔵合金の製造方法]
次に、上記各実施形態に共通する水素吸蔵合金の製造方法について説明する。
本実施形態の水素吸蔵合金は、希土類元素(Ce、Sm、Laなど)やマグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、シリコン(Si)、スズ(Sn)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)等の金属元素を所定の原子比になるように秤量後、高周波誘導炉に設置したアルミナるつぼに投入してアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で溶解した後、鋳型に鋳込んで水素吸蔵合金のインゴットを作製する。あるいは、ストリップキャスト法を用いて、200~500μm厚程度のフレーク状試料を直接作製してもよい。
なお、本実施形態の水素吸蔵合金は、主成分として、融点が低く高蒸気圧のMgを含有しているため、全合金成分の原料を一度に溶解すると、Mgが蒸発してしまい、目標とする化学組成の合金を得ることが困難となる場合がある。そこで、本実施形態の水素吸蔵合金を溶解法により製造するに当たっては、まず、Mgを除いた他の合金成分を溶解した後、その溶湯内に金属MgおよびMg合金などのMg原料を投入するのが好ましい。また、この溶解工程は、アルゴンまたはヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で行うのが望ましく、具体的には、アルゴンガスを80vol%以上含有した不活性ガスを0.05~0.2MPaに調整した雰囲気下で行うのが好ましい。
上記条件にて溶解した合金は、その後、水冷の鋳型に鋳造し、凝固させて水素吸蔵合金のインゴットとするのが好ましい。次いで、得られた各水素吸蔵合金のインゴットについて、DSC(示差走査熱量計)を用いて融点(T)を測定する。これは、本実施形態の水素吸蔵合金は、上記鋳造後のインゴットを、アルゴンまたはヘリウム等の不活性ガスまたは窒素ガスのいずれか、もしくは、それらの混合ガス雰囲気下で、700℃以上合金の融点(T)以下の温度で3~50時間保持する熱処理を施すことが好ましいからである。この熱処理により、主にA19相およびA相からなる水素吸蔵合金を作製することができる。得られた水素吸蔵合金が主にA19相およびA相であることは、Cu-Kα線を用いたX線回折測定により確認することができる。
上記熱処理温度が700℃未満では、元素の拡散が不十分であるため、AB相など副相が残留してしまい、電池の放電容量の低下やサイクル寿命特性の劣化を招いてしまうおそれがある。一方、熱処理温度が合金の融点Tより-20℃以上(T-20℃以上)となると、主相の結晶粒の粗大化や、Mg成分の蒸発が生じる結果、微粉化や化学組成の変化による水素吸蔵量の低下が起こってしまうおそれもある。したがって、熱処理温度は好ましくは750℃~(T-30℃)の範囲である。さらに好ましくは、770℃~(T-50℃)の範囲である。
また、熱処理の保持時間が2時間以下では、安定的に主相の比率を50mass%以上とすることができず、また、主相の化学成分の均質化が不十分となるため、水素吸蔵・放出時の膨張・収縮が不均一となり、発生する歪みや欠陥量が増大してサイクル寿命特性にも悪影響を与えるおそれがある。なお、上記熱処理の保持時間は3時間以上とするのが好ましく、主相の均質化や結晶性向上の観点からは、4時間以上とするのがより好ましい。ただし、保持時間が50時間を超えると、Mgの蒸発量が多くなって化学組成が変化し、その結果、AB型の副相が多く生成してくるおそれがある。さらに、製造コストの上昇や、蒸発したMg微粉末による粉塵爆発を招くおそれもあるため好ましくない。
熱処理した合金は、乾式法または湿式法で微粉化する。乾式法で微粉化する場合は、例えばハンマーミルやACMパルベライザーなどを用いて粉砕することで平均粒径が20~100μmの粉末を得ることができる。一方、湿式法で微粉化する場合は、ビーズミルやアトライターなどを用いて粉砕する。特に平均粒径が20μm以下の微粉を得る場合には、湿式粉砕の方が安全に作製できるため好ましい。粒径は用途によって適正な範囲、たとえばD50=8~100μmに設定すればよい。
ここで、上記した合金粒子の平均粒径D50は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置で測定した値を用いることとし、測定装置としては、例えば、マイクロトラック・ベル社製MT3300EXII型などを用いることができる。
なお、上記微粉化した合金粒子は、その後、KOHやNaOHなどのアルカリ水溶液を用いたアルカリ処理や、硝酸や硫酸、塩酸水溶液を用いた酸処理を行う表面処理を施してもよい。これらの表面処理を施すことで、合金粒子表面の少なくとも一部にNiからなる層(アルカリ処理層または酸処理層)を形成し、合金腐食の進行を抑制することができるとともに、耐久性を高めることができることから、電池のサイクル寿命特性や広い温度範囲での放電特性を向上することができる。特に、酸処理の場合には、合金表面のダメージを少なくしてNiを析出させることが可能であることから、塩酸を用いて行うことが好ましい。また、湿式法で合金を粉砕する場合には、表面処理を同時に行うこともできる。
以下に本発明を実施例に基づき説明する。
<実施例1>
下記の表1-1~1-3に示した成分組成を有するNo.1~57の水素吸蔵合金を負極活物質とする評価用セルを、以下に説明する要領で作製し、その特性を評価する実験を行った。なお、表1に示したNo.1~37の合金は、本発明の条件に適合する合金例(発明例)である。また、表1に示したNo.38~57は、本発明の条件を満たさない合金例(比較例)である。また、比較例のNo.38の合金は、セルの特性を評価するための基準合金に用いた。
(負極活物質の作製)
表1-1~1-3に示したNo.1~57の合金の原料(Sm、La、Ce、Mg、Ni、Al、Cr、MoおよびVで、それぞれ純度99%以上)を、高周波誘導加熱炉を用いてアルゴン雰囲気下(Ar:100vol%、0.1MPa)で溶解し、鋳造してインゴットとした。次いで、これらの合金インゴットを、アルゴン雰囲気下(Ar:90vol%、0.1MPa)で、各合金の融点T-50℃の温度(940~1130℃)で10時間保持する熱処理を施した後、粗粉砕し、ハンマーミルで、質量基準のD50で25μmになるまで微粉砕して、セル評価用の試料(負極活物質)とした。なお、No.1~57の合金は、熱処理後、粉砕した粉末をX線回折測定した。測定にはリガク(株)製UltimaIVを用いた。測定条件は、粒径75μmアンダーに粉砕した粉末を試料ホルダーにセットし、ターゲットをCuとして、管電圧40kV、管電流40mA、スキャンスピード0.5°/分、スキャンステップ0.02°、発散スリット(DS)1°、散乱スリット(SS)1°、受光スリット(RS)なしでkβフィルタのみ使用で測定した。その結果、発明例であるNo.1~37はいずれも本発明で好適な回折強度比の範囲内であることを確認した。表2-1~2-3に結果を示す。
<繰り返し水素吸蔵・放出に伴う割れ性評価>
水素吸蔵・放出繰り返しによる割れ性評価は以下のとおりである。
水素吸蔵合金塊を粉砕して150μm目開きのふるいのふるい上に残り、かつ1mm目開きのふるいのふるい下となるように粒度調整した。PCT(Pressure-Composition-Temperature)評価装置の測定ホルダーにその水素吸蔵合金7gを充填し、80℃で1時間真空排気(0.01MPa以下)を行った後、温度をキープして水素圧0.01~3MPaの範囲で水素吸蔵・放出測定(PCT特性評価)を行う。この後、1時間真空排気(0.01MPa以下)を行い、3MPaまで水素ガスを導入して1時間保持して、合金に水素をほぼフルに吸蔵させ、1時間真空排気(0.01MPa以下)して水素を放出させる。これを3回繰り返す。最後に1サイクル目と同様に水素圧0.01~3MPaの範囲で水素吸蔵・放出測定(PCT特性評価)を行う。この水素吸蔵・放出サイクルを5回行った後、水素吸蔵合金粉を取り出し、粒度分布測定を行った。その繰り返し水素吸蔵・放出後の体積平均粒径MVの値を表1-1~1-3に示す。
<飽和磁化>
アルカリ水溶液浸漬後の飽和磁化測定は下記の通りの手順で行う。
まず、80℃の7.15mol/L水酸化カリウム水溶液50gと体積平均径(MV)35μmに調整した水素吸蔵合金20gをガラス製ビーカーに入れる。次に、マグネチックスターラーで攪拌しながら、液温80℃を保持し8時間浸漬する。時間経過後、水洗浄を行い、洗浄水がpH12以下になるまで繰り返し、70℃で6時間真空乾燥させる。得られた試料から約200mgをはかりとり、測定容器内に固定し、試料振動型磁力計(VSM)を用いて、25℃で磁場10kOeを加えて、飽和磁化(emu/g)を測定する。一方、上記アルカリ水溶液に浸漬した試料について粒度分布を測定、その結果に基づき算出される比表面積CS値(m/ml)と水素吸蔵合金の密度(8.31g/ml)の値から比表面積(m/g)を算出し、表面積当たりの飽和磁化(emu/m)を評価基準として、表1-1~1-3に磁化量として示す。この処理は、飽和磁化を粒度分布に依存させないためである。
<PCT特性評価>
PCT特性評価は以下の手順で実施する。
水素吸蔵合金塊を粉砕して、上記と同様150μm以上1mm以下にふるいにて粒度調整して、PCT測定装置に充填し、80℃の下で1時間真空排気(0.01MPa以下)を行う。次に、温度を維持して3MPaの水素ガスを加圧して3.5時間保持し、水素吸蔵合金に水素を吸蔵させ、その後1時間真空排気して水素を放出させて活性化処理とする。その後、水素圧0.01~1MPaの範囲で水素吸蔵・放出測定(PCT特性評価)を行う。表1-1~1-3に80℃での水素放出時の水素吸蔵量(H/M)が0.5のときの水素圧(P0.5)を示し、1MPa加圧時の水素吸蔵量をH/Mとして示し、また、プラトー傾きとして、B1=log[(P0.7/P0.3)/0.4]の計算値を示す。
(評価用セルの作製)
<負極>
上記で調整した負極活物質と、導電助剤のNi粉末と、2種類のバインダー(スチレン・ブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロース(CMC))とを、重量比で、負極活物質:Ni粉末:SBR:CMC=95.5:3.0:1.0:0.5となるように混合し、混練してペースト状の組成物とした。このペースト状の組成物を、パンチングメタルに塗布し、80℃で乾燥した後、15kNの荷重でロールプレスして、負極を得た。
<正極>
水酸化ニッケル(Ni(OH))と、導電助剤の金属コバルト(Co)と、2種類のバインダー(スチレン・ブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロース(CMC))とを、質量比で、Ni(OH):Co:SBR:CMC=95.5:2.0:2.0:0.5となるように混合し、混練してペースト状の組成物とした。このペースト状の組成物を、多孔質ニッケルに塗布し、80℃で乾燥した後、15kNの荷重でロールプレスして、正極を得た。
<電解液>
電解液は、純水に、水酸化カリウム(KOH)を濃度が6mol/Lとなるよう混合したアルカリ水溶液を用いた。
<評価用セル>
アクリル製の筐体内に、上記の正極を対極、上記の負極を作用極として配設した後、上記電解液を注入して、Hg/HgO電極を参照極としたセルを作製し、評価試験に供した。この際、作用極と対極の容量比は、作用極:対極=1:3となるように調整した。
(セルの特性評価)
上記のようにして得た合金No.1~57にかかる評価用セルの評価試験は、以下の要領で行った。この際の評価温度はすべて40℃とした。
(1)電極の放電容量
下記の手順で作用極の電極の放電容量の確認を行った。作用極の活物質あたり80mA/gの電流値で定電流充電を10時間行った後、作用極の活物質あたり40mA/gの電流値で定電流放電を行った。放電の終了条件は、作用極電位が-0.5Vとした。上記の充放電を10回繰り返し、放電容量の最大値を、その作用極の電極の放電容量とした。なお、10回の充放電により作用極の放電容量が飽和し、安定したことを確認している。
測定した放電容量は、表2-2に示した合金No.38の放電容量を基準容量とし、それに対する比率を下記(C)式で算出し、この比率が1.15より大きいものを、合金No.38より放電容量が大きく、優れていると評価した。
放電容量=(評価合金の放電容量)/(合金No.38の放電容量)・・・(C)
(2)サイクル寿命特性
上記(1)電極の放電容量で作用極の電極の放電容量が確認されたセルを用いて、下記の手順で作用極のサイクル寿命特性を求めた。
上記(1)電極の放電容量で確認された作用極の電極の放電容量を、1時間で充電または放電を完了させる際に必要な電流値を1Cとしたとき、作用極の充電率が20-80%の範囲において、C/2の電流値で定電流充電および定電流放電を行うことを1サイクルとし、これを500サイクル繰り返して行い、500サイクル後の放電容量を測定し、下記(D)式で容量維持率を求めた。
容量維持率=(500サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)・・・(D)
サイクル寿命特性の評価は、表1-2に示した合金No.38の500サイクル後の容量維持率を基準容量維持率とし、それに対する比率を下記(E)式で算出し、この比率が1.15より大きいものを、合金No.38よりサイクル寿命特性が大きく、優れていると評価した。
サイクル寿命特性=(測定合金の500サイクル後の容量維持率)/(合金No.38の500サイクル後の容量維持率)・・・(E)
(3)レート特性
上記(1)電極の放電容量で作用極の電極の放電容量が確認されたセルを用いて、下記の手順で作用極のレート特性を求めた。
上記(1)電極の放電容量で作用極の電極の放電容量1時間で充電または放電を完了させる際に必要な電流値を1Cとしたとき、最初に、C/5で定電流充電を7.5時間行った後、C/5で定電流放電を作用極電位が-0.5Vになるまで行い、この時の放電容量を「C/5放電容量」とし、次いで、C/5で定電流充電を7.5時間行った後、5Cで定電流放電を作用極電位が-0.5Vになるまで行い、この時の放電容量を「5C放電容量」とし、下記(F)式で5C放電時の容量維持率を求めた。
5C放電時の容量維持率=(5C放電容量)/(C/5放電容量)・・・(F)
また、レート特性の評価結果は、表1-2に示した合金No.38の5C放電時の容量維持率を基準容量維持率とし、それに対する比率を下記(G)式で算出し、この比率が1.15より大きいものを、合金No.38よりレート特性が大きく、優れていると評価した。
レート特性=(測定合金の5C放電時の容量維持率)/(合金No.38の5C放電時の容量維持率)・・・(G)
(4)コスト
合金コストは、表1-1~1-3に記載の成分組成の合金を純度99%の金属から溶解して製造する原料コストを相対評価し、表2-1~2-3に示した。No.38の合金(基準コスト)と比較して20%以上高額のものを×とし、同額から20%未満高額のものを△、No.38の合金より廉価のものを〇とした。
表2-1~2-3から明らかなように、発明例のNo.1~37の合金は合金No.38に対して、放電容量、サイクル寿命特性、レート特性の評価値、および水素平衡圧がバランスよく向上しており、コスト的にも有利であることが明らかである。これに対して、比較例のNo.38~57の合金は、いずれかの特性の評価値が基準を下回る、あるいはコストが△、あるいは×となっていることがわかる。なお、平衡圧が本発明の範囲の値より高い場合、充電時に発生するガス吸収能力が低下してしまい、密閉した空間では膨れが生じて電池が膨張してしまい、場合によっては安全弁が作動して、電池としての機能が保てなくなる。
Figure 0007451000000001
Figure 0007451000000002
Figure 0007451000000003
Figure 0007451000000004
Figure 0007451000000005
Figure 0007451000000006
本発明の水素吸蔵合金は、放電容量、サイクル寿命およびレート特性のいずれも従来使用されていたAB型の水素吸蔵合金より優れているので、ハイブリッド自動車やアイドリングストップ車用途のアルカリ蓄電池の負極材として好適であるばかりでなく、電気自動車用のアルカリ蓄電池にも好適に用いることができる。
1:正極
2:負極
3:セパレータ
4:筐体(電池ケース)
10:アルカリ蓄電池

Claims (9)

  1. アルカリ蓄電池に用いる水素吸蔵合金であって、
    該水素吸蔵合金はA 19相およびA相の2つの結晶相の合計で70mass%以上、ならびに、AB 相、AB 相およびAB 相のそれぞれ5mass%以下から構成されており、かつ、下記一般式(A)で表されることを特徴とするアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金。
    (La1-a-bCeSm1-cMgNi ・・・(A)
    ここで、上記(A)式中のM、Tおよび添字a、b、c、d、eおよびfは、
    M:Al、Zn、Sn、Siから選ばれる少なくとも1種、
    T:Cr、Mo、Vから選ばれる少なくとも1種、
    0<a≦0.10、
    0≦b<0.15、
    0.08≦c≦0.24、
    0.03≦e≦0.14、
    0≦f≦0.05、
    3.55≦d+e+f≦3.80
    の条件を満たす。
  2. 前記一般式(A)において、さらに、0.08≦c≦0.18、および、3.70≦d+e+f≦3.80の条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金。
  3. 前記一般式(A)において、さらに、MはAlであり、0<a≦0.08、0≦b≦0.08、0.14≦c≦0.24、および、0.03≦e<0.10の条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金。
  4. 前記水素吸蔵合金は水素吸蔵放出特性において、80℃での水素放出時の水素吸蔵量(H/M)が0.5のときの水素圧(P0.5)が0.02MPa以上、0.1MPa以下である、ここで、水素吸蔵量(H/M)は水素原子(H)と金属原子(M)の原子数比とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金。
  5. 前記水素吸蔵合金は水素吸蔵放出特性において、水素吸蔵後の放出時のプラトー傾きが、下記(B)式を満足する範囲にあることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金。
    0.90≦log[(P0.7/P0.3)/0.4]≦3.00 ・・・(B)
    ここで、P0.7は、水素吸蔵量(H/M)=0.7の時の水素圧[MPa]、
    P0.3は、水素吸蔵量(H/M)=0.3の時の水素圧[MPa]
    を表す。
  6. 前記水素吸蔵合金は、150μm以上1mm以下の範囲に粒度調整した水素吸蔵合金に対して、繰り返し水素吸蔵・放出後の体積平均粒径MVが75μm以上で、かつ、80℃で水素圧を1MPaまで加圧した時の水素吸蔵量(H/M;Hは水素原子数、Mは金属原子数)が0.92以上である、
    ここで、水素吸蔵は80℃で水素圧を3MPaまで加圧して1時間保持し、水素放出は真空排気し、80℃で0.01MPa以下まで減圧して1時間保持し、これを5回繰り返した後に体積平均粒径MVを測定する、
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金。
  7. 前記水素吸蔵合金は、7.15mol/Lの水酸化カリウム水溶液に80℃で8時間浸漬した後、25℃で10kOeの磁場を印加して測定した飽和磁化が60emu/m以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金。
  8. 前記水素吸蔵合金は、Cu-Kα線をX線源とするX線回折測定において、A19相の2H構造に基づく(109)面と3R構造に基づく(1013)面の回折強度の和(α)に対する、A相の2H構造に基づく(107)面と3R構造に基づく(1010)面の回折強度の和(β)の比が、β/α≦1であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金。
  9. 前記水素吸蔵合金は、Cu-Kα線をX線源とするX線回折測定において、回折角2θが40~45°の範囲にある最も強い回折ピークの回折強度(ε)に対するAB相の(101)面の回折強度(ζ)の比が、ζ/ε≦0.08であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金。
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