以下に、実施の形態にかかる太陽光発電出力推定装置、太陽光発電出力推定方法および太陽光発電出力推定プログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる太陽光発電出力推定システムの構成例を示す図である。本実施の形態の太陽光発電出力推定システム10は、太陽光発電出力推定装置100と、複数の需要家の下に設置された各種の設備とが、通信ネットワーク50を介して接続された構成である。図1において実線は電力の流れを表し、破線は情報の流れを表している。
図1では、複数の需要家として需要家200-1、需要家200-2、需要家200-3、需要家200-4、・・・、需要家200-m、・・・、需要家200-nを図示している。需要家200-1~200-nのそれぞれには、負荷201および太陽光発電設備(図では、PV(PhotoVoltaic)と略す)202が接続されている。なお、図1に示した例では、nは6以上の整数であり、mは5以上n未満の整数であるが、n,mの値は、図1に示した例に限定されない。また、各需要家200-1~200-nの負荷201は、電力を消費する1つ以上の設備を示しており、一般には、負荷201を構成する具体的な設備は全需要家200-1~200-nで同一ではない。太陽光発電設備202についても、同様に、一般には、全需要家200-1~200-nで同一ではない。
需要家200-1に設けられている太陽光発電設備202は、全量買取契約対象の太陽光発電設備である。需要家200-2~200-nに設けられている太陽光発電設備202は、余剰買取契約対象の太陽光発電設備である。
太陽光発電設備202は、例えば、需要家200-1~200-nが有する建築物の屋根などに設置されている太陽光発電設備であり、小規模な太陽光発電設備のみならず、いわゆるメガソーラーなどの大規模太陽光発電所を含む。太陽光発電設備202は、電力系統20に連系されており、発電した電力を電力系統20に供給する。また、電力系統20には、図1に示すように、各需要家200-1~200-nの負荷201が接続されている。負荷201は電力系統20から電力供給を受け、電力を消費する。
負荷201および太陽光発電設備202が設けられている需要家200-1~200-nは、電力系統20からの電力供給を受けるとともに太陽光発電設備202によって発電された電力を電力系統20に供給することになる。このため、電力系統20から見た各需要家200-1~200-nの見かけ上の消費電力は、負荷201の実際の消費電力と太陽光発電設備202による発電出力との両方に依存することになる。なお、負荷201による消費電力を太陽光発電設備202による発電出力が上回る場合には、電力系統20からみると当該需要家の発電出力が電力系統20に供給されることになるため、見かけ上の消費電力は負の値になる。以下では、電力系統20から見た、各需要家200-1~200-nの見かけ上の消費電力を、残余需要と呼ぶ。
余剰買取契約を締結している需要家200-2~200-nには、スマートメータ(図では、SM(Smart Meter)と略す)205が設置されている。iを2からnまでの任意の整数とすると、需要家200-iのスマートメータ205は、時刻をtとするとき、需要家200-iの太陽光発電設備202の発電出力PPVi(t)と負荷201による消費電力PLi(t)とが合算された電力を計測する。すなわち、スマートメータ205が計測する電力は上述した残余需要であり、需要家200-2~200-nごとに、負荷201の消費電力から太陽光発電設備202の発電出力が差し引かれた量である。スマートメータ205が計測した残余需要の計測データは、通信網25と通信ネットワーク50を介して、太陽光発電出力推定装置100に送られる。
例えば、需要家200-2では、スマートメータ205が、太陽光発電設備202の発電出力PPV2(t)と負荷201による消費電力PL2(t)との合算値を残余需要として計測および記録する。そして、スマートメータ205は、需要家200-2の残余需要の計測データを、通信網25と通信ネットワーク50とを介して、太陽光発電出力推定装置100に送信する。このようにして太陽光発電出力推定装置100は、余剰買取契約対象の太陽光発電設備202を保有する需要家200-2~200-nに設置されたスマートメータ205の計測値である残余需要の計測データを取得する。
また、需要家200-3には、需要家200-3に設けられた太陽光発電設備202の発電出力PPV3(t)を計測する計測器206が設けられている。計測器206は、太陽光発電設備202を制御するパワーコンディショナなどの装置の一部であってもよいし、個別に設けられた計測器であってもよい。計測器206は、計測した発電出力PPV3(t)の計測データを、通信網25と通信ネットワーク50を介して、太陽光発電出力推定装置100に送る。なお、ここでは、需要家200-3に計測器206が設けられる例を説明するが、需要家200-2~200-nのうち計測器206が設けられる需要家は0軒であってもよいし、また、複数であってもよい。
全量買取契約を締結している需要家200-1には、スマートメータ203とスマートメータ204とが設置されている。スマートメータ203は、需要家200-1の負荷201の消費電力PL1(t)を計測および記録する。スマートメータ204は、需要家200-1の太陽光発電設備202の発電出力PPV1(t)を計測および記録する。スマートメータ204が計測した需要家200-1の太陽光発電設備202の発電出力の計測データは、通信網25と通信ネットワーク50とを介して太陽光発電出力推定装置100に送られる。このようにして太陽光発電出力推定装置100は、需要家200-1の太陽光発電設備202の発電出力PPV1(t)の計測データを取得する。スマートメータ203の計測データも、通信網25と通信ネットワーク50とを介して太陽光発電出力推定装置100に送られる。なお、スマートメータ203とスマートメータ204の少なくともどちらか一方の装置、あるいは、それらの装置の代わりに図示しない装置が、スマートメータ203の計測データとスマートメータ204の計測データとの合算である見かけ上の消費電力、つまり、残余需要を計測(あるいは、算出)し、計測(あるいは、算出)された残余需要を太陽光発電出力推定装置100に送信してもよい。
以上のように、需要家200-1~200-nのうち、需要家200-1,200-3については、スマートメータ204または計測器206により太陽光発電設備202の発電出力の計測データを得ることができる。スマートメータ204も計測器の一部であると考えることができるため、需要家200-1および需要家200-3はいずれも、太陽光発電設備202の発電出力の計測データを取得できる需要家である。一方、需要家200-1~200-nのうち、スマートメータ204および計測器206のいずれも設けられていない需要家では、消費電力と合算された残余需要は計測されているものの、太陽光発電設備202の発電出力は直接計測されていないため正確に発電出力を求めることが困難である。本実施の形態では、太陽光発電出力推定装置100が、需要家200-1および需要家200-3のうち少なくとも一方を用いて、スマートメータ204および計測器206のいずれも設けられていない需要家の発電出力を正確に推定する方法について説明する。以下、発電出力の推定において基準として用いられる需要家200-1,200-3の太陽光発電設備を第1太陽光発電設備とも呼び、発電出力の推定対象となる太陽光発電設備を第2太陽光発電設備とも呼ぶ。
太陽光発電出力推定装置100は、第1太陽光発電設備の発電出力である第1太陽光発電出力を利用して、第2太陽光発電設備の予め定められた時点(以下、「推定時点」と称する)の太陽光発電出力である第2太陽光発電出力を推定する。推定時点には、現在の時点のみならず、過去または未来の時点が含まれる。太陽光発電出力推定装置100は、パーソナルコンピュータなどの汎用のコンピュータシステムがプログラムを実行することによって実現されても良いし、専用のコンピュータシステムによって実現されても良い。太陽光発電出力推定装置100の詳細な構成については、後述する。なお、第1太陽光発電設備と第2太陽光発電設備との間の距離は、予め定められた値以下である。予め定められた値は、例えば数kmであるがこれに限定されない。
次に、太陽光発電出力推定装置100の機能について説明する。太陽光発電出力推定装置100は、基準となる第1太陽光発電出力と推定対象の需要家の残余需要とを用いて、推定対象の需要家の太陽光発電設備202の発電出力である第2太陽光発電出力を推定する。第1太陽光発電出力は、第1需要家に設けられる第1太陽光発電設備の発電出力であり、第2太陽光発電出力は、第2需要家に設けられる第2太陽光発電設備の発電出力である。なお、太陽光発電設備202の発電出力と負荷201の消費電力には、有効電力と無効電力とが存在する。しかし、一般的な太陽光発電設備、特に家庭用の太陽光発電設備は力率一定で運転されているため、有効電力を推定することで無効電力も容易に推定することが可能である。このため、以下に記載する、太陽光発電設備202の発電出力と負荷201の消費電力は、有効電力を指すものとする。
ここで、太陽光発電出力推定装置100における太陽光発電設備202の発電出力の推定方法の概要について説明する。ここでは、発電出力の推定対象として需要家200-2の太陽光発電設備202を例に挙げて説明し、また推定において基準として用いられる太陽光発電出力として需要家200-1の太陽光発電設備202の発電出力を例にあげて説明する。すなわち、この例において、第1太陽光発電出力は需要家200-1の太陽光発電設備202の発電出力であり、推定対象の第2太陽光発電出力は、需要家200-2の太陽光発電設備202の発電出力である。なお、推定対象が、需要家200-4~200-nのそれぞれの太陽光発電設備202の発電出力である場合、すなわち第2太陽光発電出力が需要家200-4~200-nのそれぞれの太陽光発電設備202の発電出力である場合も、残余需要としてそれぞれの需要家に対応する値を用いることで、同様に太陽光発電設備202の発電出力を推定することができる。また、基準として用いられる太陽光発電出力である第1太陽光発電出力として、需要家200-1の太陽光発電設備202の発電出力の代わりに、需要家200-3の太陽光発電設備202の発電出力、すなわち計測器206により計測される発電出力を用いる場合も、同様に、第2太陽光発電出力を推定することができる。
第2需要家である需要家200-2の残余需要をP2(t)、需要家200-2の負荷201の消費電力をPL2(t)、第2太陽光発電出力である需要家200-2の太陽光発電設備202の発電出力をPPV2(t)とする。また、第1需要家である需要家200-1の太陽光発電設備202の発電出力、すなわち第1太陽光発電出力をPPV1(t)とする。このとき、以下の式(1)のように、P2(t)に関する式が成り立ち、さらに、式(2)のように、PPV2(t)に関する式を仮定できる。
ここで、αは第1太陽光発電出力を第2太陽光発電出力に変換する係数である。ε12(t)は時間的外乱である。τsは遅延時間、すなわち、第1太陽光発電設備の設置地点と第2太陽光発電設備の設置地点との間を日射変動が伝播する時間である。第1太陽光発電設備の設置地点と第2太陽光発電設備の設置地点との間を日射変動が伝播する時間、すなわち第1太陽光発電設備と第2太陽光発電設備との間を日射変動が伝播する時間を、第1遅延時間とも呼ぶ。
そして、PL2(t)とε12(t)の変動が、それぞれ、PPV1(t)の変動と相関がないと仮定し、上記の式(1)、式(2)において、時間的な定常性が成立すると仮定すると、上記の式(1)と式(2)から、以下の式(3)が導かれる。
ここで、Covt[]は2つの量の共分散関数を計算する演算子を意味しており、上記の式(3)におけるCovt[PPV1(t),PPV1(t+τ+τs)]は、τ=-τsのときに最大値をとる。このため、第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要との時系列データの共分散関数Covt[PPV1(t),P2(t+τ)]が最小値(符号が「-」かつ絶対値が最大値)をとるときのタイムラグに-1を乗じた値が、遅延時間τsである。
また、上記の式(3)にτ=0を代入すると、以下の式(4)が得られる。
そして、上記の式(4)を以下の式(5)に変形することで、係数αの推定値を得ることができる。
Covt[PPV1(t),P2(t)]は、第1太陽光発電出力PPV1(t)と残余需要P2(t)との共分散であり、この共分散を第1共分散と呼ぶ。Covt[PPV1(t),PPV1(t+τs)]は、遅延時間τsずれた2つの第1太陽光発電出力であるPPV1(t)とPPV1(t+τs)との自己共分散であり、この自己共分散を第2共分散と呼ぶ。そして、αは、第1共分散Covt[PPV1(t),P2(t)]を第2共分散Covt[PPV1(t),PPV1(t+τs)]で除して-1を乗じて得られる係数である。
また、ε12(t+τ)は微小であり無視できると仮定すれば、上記の式(2)から、第2太陽光発電出力に関する近似式である以下の式(6)を得ることができる。
本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100は、以上で述べた推定方法を用いて第2太陽光発電出力を推定する。すなわち、太陽光発電出力推定装置100は、上述した第1共分散、第2共分散を算出し、算出した第1共分散、第2共分散を用いて式(5)により、係数αの推定値を求める。係数αを求める処理は、第2太陽光発電出力の推定対象の時刻である推定時点より前に行われていればよい。ただし、推定時点が過去の場合は、推定時点の未来にあたる推定時点から現在までに行うことでもよい。上述したように、係数αの算出には、各計測データの時系列データを用いるため、ある程度の期間の計測データが必要である。この期間は、推定時点以前であって、かつ推定時点から時間的に離れすぎていない範囲で設定される。例えば、この期間は、第2太陽光発電出力を推定する推定時点から1,2週間程度遡った期間までの間の任意の期間である。例えば、係数αの推定値を求める処理は、第2太陽光発電出力を推定する日の前日などに行われるが、係数αの推定値を求める処理を行うタイミングはこの例に限定されない。そして、太陽光発電出力推定装置100は、係数αの推定値に、推定時点tから遅延時間τsずれた時点における第1太陽光発電出力PPV1(t+τs)を乗じることで、第2太陽光発電出力PPV2(t)の推定値を算出することができる。
なお、上記の算出方法では、PL2(t)とPPV1(t)の相関が無い、すなわち、Covt[PPV1(t),PL2(t)]は、極めて小さく0に近似できると仮定したが、この仮定が成り立たない場合がある。例えば、日射強度が弱く第1太陽光発電出力が小さい値の場合や、日射強度の変動が少なく第1太陽光発電出力の変動が小さい場合には、Covt[PPV1(t),PPV1(t+τs)]が小さくなるため、相対的にCovt[PPV1(t),PL2(t)]の値を0と近似して無視することができなくなり、上記の過程が成り立たず、このような場合、係数αの推定精度が低下することから第2太陽光発電出力PPV2(t)の推定精度も低下する。したがって、上記仮定が成り立たない条件の期間は、係数αの推定に適さない期間すなわち推定精度が低下する期間であると言える。
本実施の形態では、係数αの推定に適さない期間の計測データを用いて推定されたαの推定値が第2太陽光発電出力PPV2(t)の推定に用いられることを避けるため、推定値に適している期間であるか否かを判定し、係数αの推定に適さない期間である場合には、当該期間の計測データを用いて算出されたαの推定値を採用しない。後述するように、例えば、係数αの初期値が予め定められ、係数αを求める処理が行われると、当該処理により推定された係数αの値で更新されていくが、係数αの推定に適さない期間であると判定された場合は、係数αを求める処理が行われないまたは係数αを求める処理により算出された値での更新が行われない。
具体的には、太陽光発電出力推定装置100は、上記式(5)に示した係数αと同様の算出方法で、第1太陽光発電出力を推定するための係数である自己係数λを算出する。自己係数λは推定精度の検証に用いる検証係数である。詳細には、式(5)の分子の第1共分散として、第1太陽光発電出力PPV1(t)と第2需要家の残余需要P2(t)との共分散の代わりに、第1太陽光発電出力PPV1(t)と第1需要家の残余需要P1(t)との共分散を用い、式(5)の分母における遅延時間τsを除いた以下の式(7)により、自己係数λを算出する。なお、本実施の形態では、このような、第1太陽光発電出力PPV1(t)と第1需要家の残余需要P1(t)との共分散についても、第1共分散と呼ぶ。すなわち、第1共分散は、第1太陽光発電出力と残余需要との共分散であり、この残余需要は、第1需要家以外の需要家の残余需要の場合もあり第1需要家の残余需要の場合もある。また、式(5)における分母には遅延時間τsが含まれ、式(7)における分母には遅延時間τsが含まれないが、遅延時間τsを0とすれば両者は同じとなるため、以下では、式(7)における分母も、式(5)における分母と同様に第2共分散と呼ぶ。
このように、自己係数λは、第1太陽光発電出力の計測データから第1太陽光発電出力自身を推定するための変換係数に相当する。理想的にはλは1である。実際にはλは各種の誤差等により1にはならないがλが1に近いほど誤差は少ないと考えられる。したがって、λと1の差の絶対値である|λ-1|が0に近いと、λの誤差は少ないと考えられ、λと同様の手法により推定される係数αについても、|λ-1|が0に近いと推定誤差は少ないと考えられる。このため、本実施の形態では、|λ-1|を用いて、係数αの推定に適さない期間であるか否かを判定する。このように、本実施の形態では、係数αの推定に適さない期間であるか否かの判定を行い、係数αの推定に適さない期間と判定された場合、当該期間の計測データを用いた係数αを採用しないため、第2太陽光発電出力PPV2(t)の推定精度の低下を防ぐことができる。太陽光発電出力推定装置100の処理の詳細については後述する。
次に、太陽光発電出力推定装置100の機能構成例について説明する。図2は、本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100の機能構成例を示すブロック図である。太陽光発電出力推定装置100は、太陽光発電設備202の推定時点の発電出力である第2太陽光発電出力を推定する装置である。図2に示すように、太陽光発電出力推定装置100は、データ取得部110と、第1共分散算出部120と、第2共分散算出部130と、推定精度検証部140と、推定部150と、表示部160と、入力受付部170と、記憶部180とを備える。
データ取得部110は、通信網25と通信ネットワーク50とを介して、スマートメータ203~205および計測器206から計測データを受信し、受信した計測データを記憶部180に格納する。詳細には、スマートメータ204および計測器206から受け取った計測データは太陽光発電出力データ182として記憶部180に格納され、スマートメータ205から受け取った計測データは残余需要データ183として記憶部180に格納される。これらの計測データは、計測値ごとに時刻と対応づけられている。なお、記憶部180に格納されるこれらの計測データの各計測値の時間間隔は、例えば1秒、10秒、1分、30分、または1時間などであるが、特にこれらには限定されず、ユーザによって適切な数値が定められる。また、これらの計測データは、需要家200-1~200-nの識別情報または太陽光発電設備202の識別情報とともに格納される。また、データ取得部110は、需要家200-1のスマートメータ203の計測データとスマートメータ204の計測データとを受信した場合は、これらの計測データを用いて需要家200-1の残余需要を算出して残余需要データ183として記憶部180に格納する。
なお、ここでは、太陽光発電出力推定装置100が、通信網25と通信ネットワーク50とを介してスマートメータ203~205および計測器206から計測データを取得する例を示すが、スマートメータ203~205の計測データは、いわゆる集約装置またはヘッドエンドシステムなどにより収集され、収集した装置から太陽光発電出力推定装置100へ送信されてもよい。すなわち、通信網25および通信ネットワーク50内に、計測データを収集する装置が存在し、当該装置から太陽光発電出力推定装置100が計測データを取得してもよい。また、太陽光発電出力推定装置100とスマートメータ203~205および計測器206との間の通信ルートは図1および図2に示した例に限定されず、太陽光発電出力推定装置100が計測器206を受信する通信ルートと、太陽光発電出力推定装置100がスマートメータ203~205の計測データを受信する通信ルートとは異なっていてもよい。また、太陽光発電出力推定装置100とスマートメータ203~205および計測器206との間の通信ネットワークは、通信網25と通信ネットワーク50とに分離されていなくてもよい。また、太陽光発電出力推定装置100は、複数の通信ルートでスマートメータ203~205の計測データを受信してもよい。
記憶部180は、上述した太陽光発電出力データ182および残余需要データ183を格納するとともに、太陽光発電出力推定装置100において算出された各種のデータを算出データ185として記憶する。また、記憶部180には、例えば、ユーザにより入力受付部170を介して入力された場所情報データ181、係数初期値データ184が格納される。なお、場所情報データ181、係数初期値データ184は、入力受付部170を介して入力される代わりに他の装置から送信され、データ取得部110によって取得されて記憶部180に格納されてもよい。場所情報データ181は、太陽光発電設備202を保有する需要家200-1~200-nの住所または緯度経度などの場所情報のデータである。
第1共分散算出部120は、記憶部180の場所情報データ181を参照して、発電出力の推定対象の需要家である第2需要家との距離が、予め定められた距離以内であって推定の際に基準となる太陽光発電設備202を有する第1需要家を選択する。第1需要家は、上述したように、全量買取契約の対象の太陽光発電設備202を有する需要家200-1、または計測器206により太陽光発電設備202の発電出力が計測されている需要家200-3である。第1共分散算出部120は、第1需要家の太陽光発電設備202の発電出力である第1太陽光発電出力と残余需要との共分散である第1共分散を算出し、算出した第1共分散を記憶部180に算出データ185として格納する。第1共分散は、上述したとおり、第1需要家以外の需要家すなわち発電出力の推定対象の需要家の残余需要の場合もあり、第1需要家の残余需要の場合もある。発電出力の推定対象の需要家は、上述したように例えば需要家200-2であるが、需要家200-4~200-nであってもよい。需要家200-2,200-4~200-nの全てを順次推定対象として、需要家200-2,200-4~200-nごとに推定が行われてもよいし、その合計値が必要な場合はその合計値を一括で推定することにしてもよい。
具体的には、第1共分散算出部120は、まず、上述した自己係数λの算出のために、第1期間における第1太陽光発電出力を記憶部180の太陽光発電出力データ182から抽出して読み出し、第1需要家の残余需要を記憶部180の残余需要データ183から抽出して読み出す。第1共分散算出部120は、読み出したデータを用いて第1太陽光発電出力と第1需要家の残余需要との共分散である第1共分散を算出して、記憶部180に算出データ185として格納する。第1期間は、推定時点から1,2週間程度遡った期間内の、例えば、6時間から10時間程度の期間であり、好ましくは8時間である。第1期間は、日射強度が強く、かつ日射強度の変動が大きい期間であるのが好ましい。ただし、本実施の形態では、第1期間が係数αの算出に適した期間であるか否かを判定するため、第1期間を日射強度によらずに選択したとしても、日射強度が弱い期間、日射強度の変動が小さい期間などが第1期間として設定されても、当該第1期間に対応する係数αは用いられないため、係数αの推定精度の低下を抑制することができる。このため、第1期間の設定時に、日射強度が考慮されていなくてもよい。
また、第1共分散算出部120は、推定精度検証部140から係数αの算出のための第1共分散の算出を指示されると、第1期間の第2需要家の残余需要を記憶部180の残余需要データ183から抽出して読み出す。第1共分散算出部120は、読み出し済の第1太陽光発電出力と読み出した第2需要家の残余需要とを用いて、第1期間における第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要との共分散である第1共分散を算出して、記憶部180に算出データ185として格納する。さらに、第1共分散算出部120は、読み出し済の第1太陽光発電出力と、同じく読み出し済の第2需要家の残余需要とを用いて、第1期間における遅延時間τsを算出し、記憶部180に算出データ185として格納する。なお、遅延時間は算出せずに、0と近似することにしてもよい。
第2共分散算出部130は、自己係数λの算出のための第2共分散の算出では、第1期間における第1太陽光発電出力の時系列データを記憶部180の算出データ185から抽出して読み出し、読み出した第1太陽光発電出力の時系列データの分散を、第2共分散として算出する。
また、第2共分散算出部130は、係数αの算出のための第2共分散の算出処理では、遅延時間τsを記憶部180の算出データ185から抽出して読み出し、第1期間における第1太陽光発電出力と、第1期間より遅延時間τsずれた第2期間における第1太陽光発電出力とを記憶部180の太陽光発電出力データ182から抽出して読み出す。そして、第2共分散算出部130は、遅延時間τsずれた2つの第1太陽光発電出力の自己共分散である第2共分散を算出し、算出した第2共分散を記憶部180に算出データ185として格納する。詳細には、第2共分散算出部130は、記憶部180の太陽光発電出力データ182から、第1期間の第1太陽光発電出力の時系列データと、第1期間より遅延時間τsずれた第2期間の第1太陽光発電出力の時系列データとを読み出す。そして、第2共分散算出部130は、第1期間における第1太陽光発電出力の時系列データと第2期間の第1太陽光発電出力の時系列データとの自己共分散である第2共分散を算出し、算出した第2共分散を記憶部180に算出データ185として格納する。なお、係数αの算出のための処理であって遅延時間τsを0と近似する場合は、自己係数λの算出のための第2共分散の算出処理と同様に、第2共分散算出部130は、第1期間における第1太陽光発電出力の時系列データの分散を、第2共分散として算出する。
推定精度検証部140は、第2太陽光発電出力の推定精度が定められた精度を満たすか否かを判定する。詳細には、推定精度検証部140は、記憶部180に格納されている自己係数λの算出のための第1共分散および第2共分散を用いて、上述した自己係数λを算出し、自己係数λを用いて第1期間が係数αの算出に適した期間であるか否かを判定する。推定精度検証部140は、第1期間が係数αの算出に適した期間であると判定した場合、第1共分散算出部120へ係数αの算出のための第1共分散の算出を指示する。
推定部150は、第1共分散および第2共分散を用いて第1太陽光発電出力と第2太陽光発電出力との比の推定値である係数αを算出し、係数αを推定時点から遅延時間ずれた第1太陽光発電出力に乗じることで第2太陽光発電出力を推定する。詳細には、推定部150は、記憶部180に算出データ185として格納されている係数αの算出のための第1共分散および第2共分散を読み出し、読み出した第1共分散および第2共分散を用いて発電出力の推定対象の需要家ごとの係数αを上記式(5)により推定する。推定部150は、算出データ185として格納されている係数αの値を推定値で更新する。また、推定部150は、推定時点から遅延時間τsずれた時点の第1太陽光発電出力を記憶部180の太陽光発電出力データ182から抽出して読み出し、第1太陽光発電出力に係数αを乗じることで、推定対象の需要家の太陽光発電出力である第2太陽光発電出力を推定し、推定結果を算出データ185として記憶部180に格納する。なお、係数αは1,2週間などの短期間では変化しにくいものの、遅延時間τsは風向または風速の変化によって短期間で変化しやすい。従って、この第2太陽光発電出力を推定する際の遅延時間τsは、気象データなどを考慮してリアルタイムで変更されたものが用いられるのが好ましい。
表示部160は、記憶部180に格納された各種データを表示する。入力受付部170は、ユーザからの入力を受け付ける。
ここで、太陽光発電出力推定装置100のハードウェア構成について説明する。本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100は、コンピュータシステム上で、太陽光発電出力推定装置100における処理が記述されたプログラムである太陽光発電出力推定プログラムが実行されることにより、コンピュータシステムが太陽光発電出力推定装置100として機能する。図3は、本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100を実現するコンピュータシステムの構成例を示す図である。図3に示すように、このコンピュータシステムは、制御部101と入力部102と記憶部103と表示部104と通信部105と出力部106とを備え、これらはシステムバス107を介して接続されている。
図3において、制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100における処理が記述された太陽光発電出力推定プログラムを実行する。入力部102は、たとえばキーボード、マウスなどで構成され、コンピュータシステムの使用者が、各種情報の入力を行うために使用する。記憶部103は、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)などの各種メモリおよびハードディスクなどのストレージデバイスを含み、上記制御部101が実行すべきプログラム、処理の過程で得られた必要なデータ、などを記憶する。また、記憶部103は、プログラムの一時的な記憶領域としても使用される。表示部104は、ディスプレイ、LCD(液晶表示パネル)などで構成され、コンピュータシステムの使用者に対して各種画面を表示する。通信部105は、通信処理を実施する受信機および送信機である。出力部106は、プリンタなどである。なお、図3は、一例であり、コンピュータシステムの構成は図3の例に限定されない。
ここで、本実施の形態の太陽光発電出力推定プログラムが実行可能な状態になるまでのコンピュータシステムの動作例について説明する。上述した構成をとるコンピュータシステムには、たとえば、図示しないCD(Compact Disc)-ROMドライブまたはDVD(Digital Versatile Disc)-ROMドライブにセットされたCD-ROMまたはDVD-ROMから、太陽光発電出力推定プログラムが記憶部103にインストールされる。そして、太陽光発電出力推定プログラムの実行時に、記憶部103から読み出された太陽光発電出力推定プログラムが記憶部103に格納される。この状態で、制御部101は、記憶部103に格納されたプログラムに従って、本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100としての処理を実行する。
なお、上記の説明においては、CD-ROMまたはDVD-ROMを記録媒体として、太陽光発電出力推定装置100における処理を記述したプログラムを提供しているが、これに限らず、コンピュータシステムの構成、提供するプログラムの容量などに応じて、たとえば、通信部105を経由してインターネットなどの伝送媒体により提供されたプログラムを用いることとしてもよい。
図2に示した第1共分散算出部120、第2共分散算出部130、推定精度検証部140および推定部150は、図3に示した記憶部103に記憶された太陽光発電出力推定プログラムが図3に示した制御部101により実行されることにより実現される。図2に示した記憶部180は、図3に示した記憶部103の一部である。図2に示したデータ取得部110は、図3に示した通信部105および制御部101により実現される。図2に示した表示部160は、図3に示した表示部104により実現され、図2に示した入力受付部170は、図3に示した入力部102により実現される。太陽光発電出力推定装置100は複数のコンピュータシステムにより実現されてもよい。
例えば、本実施の形態の太陽光発電出力推定プログラムは、第1太陽光発電設備から予め定められた距離内に設置された第2太陽光発電設備の発電出力である第2太陽光発電出力を、第1太陽光発電設備の発電出力である第1太陽光発電出力と第2太陽光発電設備が設置された需要家のみかけ上の消費電力である残余需要とを用いて推定するステップをコンピュータに実行させる。さらに、本実施の形態の太陽光発電出力推定プログラムは、第1太陽光発電設備の発電出力と第1太陽光発電設備が設置された需要家のみかけ上の消費電力である残余需要とを用いて第2太陽光発電出力の推定精度が定められた精度を満たすか否かを判定するステップ(判定ステップ)、をコンピュータに実行させる。
次に、本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100の動作の詳細について説明する。図4は、本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100による係数αの推定処理手順の一例を示すフローチャートである。以下、図4のフローに沿って、太陽光発電出力推定装置100が第2太陽光発電出力を推定する処理について説明する。まず、第1共分散算出部120は、係数αの推定対象の太陽光発電設備202を設定し、発電出力を用いる太陽光発電設備を選択する(ステップS1)。係数αの推定対象の太陽光発電設備202が複数存在する場合は、複数の太陽光発電設備202の中から1つの太陽光発電設備202を選択する。なお、2回目以降のステップS1では、複数の太陽光発電設備202の中から、ステップS2~ステップS6の処理が行われていない太陽光発電設備202を、係数αの推定対象の太陽光発電設備202として設定する。なお、このステップS1は、推定部150により行われて、結果が第1共分散算出部120に通知されてもよい。
ステップS1では、具体的には、第1共分散算出部120は、記憶部180の場所情報データ181を参照して、発電出力の推定対象の需要家である第2需要家との距離が、予め定められた距離以内であって推定の際に基準となる太陽光発電設備202を有する第1需要家を選択する。
図5は、本実施の形態の場所情報データ181により示される各需要家の太陽光発電設備202の地理的位置を模式的に示す図である。図5では、各需要家の太陽光発電設備202の地理的位置が当該需要家の地理的位置と一致すると仮定している。図5では、需要家200-i(i=1,2,…,8)の太陽光発電設備202を、PViとして示している。例えば、PV1は、需要家200-1の太陽光発電設備202であり、PV2は、需要家200-2の太陽光発電設備202である。実線の枠で示したPV1,PV3は、それぞれ需要家200-1,200-3の太陽光発電設備202であり、発電出力が計測されている。破線の枠で示したPV2などは、それぞれ需要家200-2など発電出力が計測されていない太陽光発電設備202である。
図5の範囲301は、需要家200-1の太陽光発電設備202であるPV1を中心とした上記予め定められた距離を半径とする円であり、範囲301内の需要家の太陽光発電設備202の発電出力の推定に、PV1の発電出力を用いることができる。同様に、図5の範囲302は、需要家200-3の太陽光発電設備202であるPV3を中心とした上記予め定められた距離を半径とする円であり、範囲302内の需要家の太陽光発電設備202の発電出力の推定に、PV3の発電出力を用いることができる。したがって、例えば、需要家200-2の太陽光発電設備202であるPV2が発電出力の推定対象として設定されている場合、PV2は範囲301内でありかつ範囲302内であるため、PV1に対応する需要家200-1とPV3に対応する需要家200-3との両方が第1需要家の候補となる。このように、複数の第1需要家の候補が存在する場合には、推定対象のPV2に近い方の需要家である需要家200-2が第1需要家として選択される。あるいは、複数の第1需要家の候補の計測データを合算して使うことにしてもよく、その場合は、複数の需要家が第1需要家として選択される。
図4の説明に戻る。ステップS1の後、第1共分散算出部120は、第1期間を設定する(ステップS2)。詳細には、第1共分散算出部120は、記憶部180に格納されている太陽光発電出力データ182内の第1需要家の太陽光発電設備202の発電出力である第1太陽光発電出力の時系列データを参照し、日射強度が強くかつ日射強度の変動が大きい期間を探索する。例えば、第1共分散算出部120は、第2太陽光発電出力を推定する日の前日のうち、第1太陽光発電出力が大きくかつ第1太陽光発電出力の変動が大きい6時間から10時間程度の期間を探索する。そして、第1共分散算出部120は、探索した期間を第1期間として設定する。なお、第1共分散算出部120は、上記の期間(例えば、第2太陽光発電出力を推定する日の前日)の中から、第1期間を探索するのではなく、上記の期間自体を探索してから、当該期間の中から第1期間を探索することにしてもよい。なお、上述したとおり、この第1太陽光発電出力が大きくかつ第1太陽光発電出力の変動が大きい6時間から10時間程度の期間の探索を行わずに任意の方法で第1期間を設定してもよい。
次に、第1共分散算出部120は、自己係数λを算出するための第1共分散を算出する(ステップS3)。第1共分散算出部120は、算出した第1共分散を記憶部180に算出データ185として格納する。第1共分散の算出の詳細については後述する。
次に、第2共分散算出部130は、自己係数λを算出するための第2共分散を算出する(ステップS4)。第2共分散算出部130は、算出した第2共分散を記憶部180に算出データ185として格納する。第2共分散の算出の詳細については後述する。
次に、推定精度検証部140は、自己係数λを算出する(ステップS5)。具体的には、推定精度検証部140は、記憶部180に格納されている自己係数λを算出するための第1共分散および第2共分散を用いて、上述した式(7)により自己係数λを算出する。
次に、推定精度検証部140は、|λ-1|が閾値u以下であるか否かを判定する(ステップS6)。|λ-1|が閾値u以下である場合(ステップS6 Yes)、係数αの算出が行われ(ステップS7)、係数αの推定を終了するか否かの判定が行われる(ステップS8)。係数αの算出処理の詳細については後述する。ステップS8の処理は第1共分散算出部120または推定部150により行われる。ステップS8の係数αの推定を終了するか否かの判定は、係数αの推定対象の全ての太陽光発電設備202に関してステップS2~ステップS6の処理が行われたか否かの判定である。係数αの推定対象の全ての太陽光発電設備202に関してステップS2~ステップS6の処理が行われた場合、ステップS8では、Yesと判定され、係数αの推定処理は終了する。係数αの推定対象の太陽光発電設備202のうちステップS2~ステップS6の処理が行われていない太陽光発電設備202がある場合、ステップS8ではNoと判定され、ステップS1からの処理が繰り返される。
一方、|λ-1|が閾値uを超える場合(ステップS6 No)、ステップS7は実施されず、処理はステップS8へ進む。上述したように、自己係数λは、第1需要家の残余需要を用いて、係数αと同様の手法で算出された値であり、理想的には、第1太陽光発電出力にλを乗じると第1太陽光発電出力に一致する。したがって、自己係数λが1から離れるにつれて自己係数λの誤差が大きくなることになる。自己係数λは係数αと同様の手法により算出されているため、自己係数λの誤差が大きいときには係数αの誤差も大きいと想定でき、自己係数λの算出に用いた第1期間は、係数αの算出に適していない期間であると推定される。このため、本実施の形態では、|λ-1|が閾値uを超える場合に、係数αの算出を行わないことで係数αの推定精度の低下を抑制することができる。ここでは、|λ-1|が閾値uを超える場合に、係数αの算出を行わないようにしたが、ステップS6の前に係数αの算出は行った上で、ステップS6でNoと判定された場合に、係数αの更新を行わないようにしてもよい。
なお、推定精度検証部140は、係数αの推定を行わない場合、すなわちステップS6でNoの場合、推定対象の第2需要家の推定がその時点までに一度も行われていないときには、記憶部180の算出データ185内の係数αとして、係数初期値データ184として格納されている値を格納する。なお、係数初期値データ184は、第2需要家ごとの係数αの初期値である。係数αの初期値は、第2需要家ごとに対応する第1需要家が予め定められている場合には、第2需要家の太陽光発電設備202と第1需要家の太陽光発電設備202との定格容量の比であってもよい。第2需要家ごとに対応する第1需要家が予め定められていない場合、第1需要家の候補となる全ての需要家ごとに、第2需要家の太陽光発電設備202と第1需要家の候補の太陽光発電設備202との定格容量の比が初期値として格納されていてもよい。
図6は、本実施の形態の記憶部180に格納される算出データ185内のデータの一例を示す図である。図6に示すように、記憶部180には、算出データ185として、第1共分散、第2共分散、係数α、遅延時間、発電出力推定値が格納される。算出データ185内の第1共分散は、ステップS3で算出された第1共分散と、ステップS7の係数αの推定の過程で算出される第1共分散とを含む。算出データ185内の第2共分散は、ステップS4で算出された第2共分散と、ステップS7の係数αの推定の過程で算出される第2共分散とを含む。第1共分散、第2共分散については、一時的に記憶されていればよいため、発電出力推定対象の各需要家に対応する係数αの推定が終了するたびに消去されてもよい。係数αは、ステップS7の係数αの推定処理が行われると、推定値で更新される。係数αおよび遅延時間は、第2需要家と第1需要家との組み合わせごと、すなわち第2太陽光発電設備と第1太陽光発電設備との組み合わせごとに異なるため、この組み合わせごとに算出データ185として記憶部180に格納される。
図7は、本実施の形態の記憶部180に格納される、太陽光発電設備202の組み合わせごとの係数αの一例を示す図である。図7に示すように、ステップS7の係数αの推定が行われると、発電出力推定対象の太陽光発電設備202である第2太陽光発電設備と、推定に使用する太陽光発電設備202である第1太陽光発電設備との組み合わせごとに記憶部180の算出データ185として係数αの推定値が格納される。例えば、需要家200-2の太陽光発電設備202であるPV2は、需要家200-1の太陽光発電設備202であるPV1の発電出力を用いて発電出力の推定が行われ、推定に用いられる係数αの推定値はα1である。上述したように、係数αの推定が一度も行われておらず、上述したステップS6でNoと判定された場合には、算出データ185の係数αには、係数初期値データ184内の対応する初期値が格納される。
図4のステップS3の処理である第1共分散の算出処理について説明する。図8は、本実施の形態の第1共分散算出部120による第1共分散の算出処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、ステップS3およびステップS4は、自己係数λを算出するための処理であるが、上述した式(5)に示したように係数αの算出にも第1共分散および第2共分散が用いられる。図8では、自己係数λの算出のための第1共分散を算出する処理と係数αの算出のための第1共分散を算出する処理とで共用されるフローチャートを示す。同様に、後述する図9においても、自己係数λの算出のための第2共分散を算出する処理と係数αの算出のための第2共分散を算出する処理とで共用されるフローチャートを示す。なお、上述した式(5)および式(7)に示したように、係数αの算出には遅延時間が用いられるのに対し、自己係数λの算出には遅延時間が用いられない。このため、図8および図9に示す処理では、遅延時間を考慮するか否かの判断が行われる。
図8に示すように、まず、第1共分散算出部120は、第1期間での第1太陽光発電出力の時系列データと残余需要の時系列データとを取得する(ステップS11)。具体的には、第1共分散算出部120は、記憶部180の太陽光発電出力データ182のうち第1期間における第1太陽光発電出力を読み出すことで、第1期間での第1太陽光発電出力の時系列データを取得する。また、第1共分散算出部120は、自己係数λの算出のための第1共分散を算出するときには、記憶部180の残余需要データ183のうち第1期間における第1需要家の残余需要を読み出すことで、第1期間での残余需要の時系列データを取得する。また、係数αの算出のための第1共分散を算出するときには、記憶部180の残余需要データ183のうち第1期間における第2需要家の残余需要を読み出すことで、第1期間での残余需要の時系列データを取得する。なお、第1期間での第1太陽光発電出力の時系列データは、自己係数λの算出のための処理と係数αの算出のため処理との両方で用いられるため、第1共分散算出部120は、自己係数λの算出のために読み出した第1期間での第1太陽光発電出力の時系列データを、係数αの算出のため処理が行われるまで保持することで、係数αの算出のためのステップS11において、第1太陽光発電電力を記憶部180の太陽光発電出力データ182内から抽出して読み出す処理を省略してもよい。
なお、太陽光発電出力データ182は、上述したようにスマートメータ204および計測器206により計測された計測データであるが、これらの計測データの代わりに推定値が用いられてもよい。例えば、太陽光発電出力推定装置100が、本実施の形態の手法または他の手法を用いて太陽光発電出力を推定し、推定した太陽光発電出力を太陽光発電出力データ182として記憶しておいてもよい。または、ユーザから、太陽光発電出力の推定値または実測値が入力され、この入力された推定値または実測値が太陽光発電出力データ182として記憶されてもよい。
第1共分散算出部120は、第1太陽光発電出力の時系列データと残余需要の時系列データとの共分散を第1共分散として算出する(ステップS12)。第1共分散算出部120は、算出した第1共分散を、記憶部180に算出データ185として書き込む。
さらに、第1共分散算出部120は、遅延時間を算出するか否かを判断し(ステップS13)、遅延時間を算出すると判断した場合(ステップS13 Yes)、読み出し済の第1太陽光発電出力と、同じく読み出し済の第2需要家の残余需要とを用いて、第1期間における遅延時間τsを算出し(ステップS14)、記憶部180に算出データ185として格納し、第1共分散の算出処理を、終了する。ステップS13では、第1共分散算出部120は、自己係数λの算出のための処理すなわち図4に示したステップS3の処理である場合は遅延時間を算出しないと判断し、係数αの算出のための処理すなわち図4に示したステップS7における第1共分散の算出処理である場合は遅延時間を算出すると判断する。なお、係数αの算出のための処理である場合も、遅延時間は算出せずに、0と近似することにしてもよい。
ステップS14では、詳細には、第1共分散算出部120は、発電出力の推定対象である第2太陽光発電設備の設置地点と、第1太陽光発電設備の設置地点との間の遅延時間を算出し、記憶部180に算出データ185として格納する。この遅延時間は、上述したように第1太陽光発電設備の設置地点と第2太陽光発電設備の設置地点との間を日射変動が伝播する時間である。第1共分散算出部120は、例えば、第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要との時系列データの共分散関数Covt[PPV1(t),P2(t+τ)]が最小値(符号が「-」かつ絶対値が最大値)をとるときのタイムラグに-1を乗じて遅延時間τsを算出する。
ステップS13において遅延時間を算出しないと判断した場合(ステップS13 No)、第1共分散算出部120は、第1共分散の算出処理を、終了する。
図4のステップS4の処理である第2共分散の算出処理について説明する。図9は、本実施の形態の第2共分散算出部130による第2共分散の算出処理手順の一例を示すフローチャートである。
第2共分散算出部130は、遅延時間を使用するか否かを判断し(ステップS21)、遅延時間を使用しないと判断した場合(ステップS21 No)、遅延時間τsを0とし、ステップS22を実施せずに、後述するステップS23以降の処理を実施する。遅延時間を使用すると判断した場合(ステップS21 Yes)、第2共分散算出部130は、記憶部180に格納されている算出データ185内の遅延時間τsを読み出すことで遅延時間τsを取得する(ステップS22)。なお、ステップS21では、第2共分散算出部130は、自己係数λの算出のための処理すなわち図4に示したステップS4の処理である場合は遅延時間を使用しないと判断し、係数αの算出のための処理すなわち図4に示したステップS7における第2共分散の算出処理である場合は遅延時間を使用すると判断する。
次に、第2共分散算出部130は、遅延時間τsずれた2つの第1太陽光発電出力の時系列データを取得する(ステップS23)。つまり、第2共分散算出部130は、第1期間における第1太陽光発電出力の時系列データと、第1期間より遅延時間τsずれた第2期間における第1太陽光発電出力の時系列データとを、記憶部180の太陽光発電出力データ182から抽出して読み出して取得する。遅延時間τsが0の場合は、遅延時間τsずれた2つの第1太陽光発電出力は同一となるため、第2共分散算出部130は、記憶部180の太陽光発電出力データ182から第1期間の第1太陽光発電出力を読み出せばよい。なお、第1期間での第1太陽光発電出力の時系列データは、自己係数λの算出のための処理と係数αの算出のため処理との両方で用いられるため、第2共分散算出部130は、自己係数λの算出のために読み出した第1期間での第1太陽光発電出力の時系列データを、係数αの算出のため処理が行われるまで保持することで、係数αの算出のためのステップS23において、第1期間における第1太陽光発電電力を記憶部180の太陽光発電出力データ182内から抽出して読み出す処理を省略してもよい。
次に、第2共分散算出部130は、取得したデータを用いて、第2共分散を算出する(ステップS24)。詳細には、第2共分散算出部130は、遅延時間τsずれた2つの第1太陽光発電出力の時系列データの自己共分散である第2共分散を算出する。具体的には、第2共分散算出部130は、第1期間における第1太陽光発電出力の時系列データと、第2期間における第1太陽光発電出力の時系列データとの自己共分散を第2共分散として算出する。なお、遅延時間τsが0の場合は、第2共分散算出部130は、第1期間における第1太陽光発電出力の時系列データの分散を第2共分散として算出する。第2共分散算出部130は、算出した第2共分散を算出データ185に書き込み、第2共分散の算出処理を終了する。
図4のステップS7の処理である係数αの算出処理について説明する。図10は、本実施の形態の係数αの算出処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、第1共分散算出部120は、係数αを算出するための第1共分散を算出する(ステップS31)。詳細には、推定精度検証部140が、図4のステップS6でYesと判定すると、第1共分散算出部120へ、係数αの算出のための第1共分散の算出を指示し、第1共分散算出部120が、図8に示した処理により、第1共分散および遅延時間τsを算出し、記憶部180に算出データ185として格納する。なお、係数αの算出のための第1共分散を算出するときには、第1共分散算出部120は、図8に示したステップS11において、記憶部180の残余需要データ183のうち第1期間における第2需要家の残余需要を読み出すことで、第1期間での残余需要の時系列データを取得する。これにより、第1太陽光発電出力の時系列データと第2需要家の残余需要の時系列データとの共分散が第1共分散として算出される。なお、上述したように、遅延時間τsを0と近似し遅延時間τsの算出を省いてもよい。
次に、第2共分散算出部130は、係数αを算出するための第2共分散を算出する(ステップS32)。詳細には、第2共分散算出部130は、図9に示した手順により、第1期間における第1太陽光発電出力の時系列データと、第1期間より遅延時間τsずれた第2期間における第1太陽光発電出力の時系列データとの自己共分散を第2共分散として算出し、記憶部180に算出データ185として格納する。
次に、推定部150は、係数αを算出して更新する(ステップS33)。詳細には、推定部150は、記憶部180の算出データ185内の係数αの算出のための第1共分散および第2共分散を読み出し、読み出した第1共分散を第2共分散で除して-1を乗じることで、係数αを算出する。そして、推定部150は、記憶部180の算出データ185内の係数αを、算出した値で更新する。以上により、係数αの推定処理が終了する。
図4および図8~図10を用いて説明した処理により、係数αの推定値が算出される。また、図4に示したように、自己係数λを用いて係数αの推定に適していないと判断された場合には、係数αの算出は行われない。なお、以上述べた例では、自己係数λを用いて係数αの推定に適していないと判断された場合には、係数αの算出を行わないようにしたが、自己係数λの算出とともに、推定部150が係数αについても算出して一時的に保持しておき、自己係数λを用いて係数αの推定に適していると判断された場合に、記憶部180の算出データ185内の係数αを算出した値で更新するようにしてもよい。この場合、推定精度検証部140は、自己係数λを用いて係数αの推定に適していないと判断すると係数αの更新を行わないように推定部150に指示し、推定部150はこの指示を受けると記憶部180の算出データ185内の係数αの更新は行わない。
次に、係数αを用いた太陽光発電出力の推定処理について説明する。図11は、本実施の形態の太陽光発電出力の推定処理手順の一例を示すフローチャートである。推定部150は、推定対象の太陽光発電設備である第2太陽光発電設備を決めると、推定時点における第2太陽光発電設備の発電出力の推定のために図11に示す処理を実施する。推定時点は、上述した第1期間内であってもよいし、第1期間と異なっていてもよい。なお、第2太陽光発電設備に対応する第1太陽光発電設備は、係数αの推定処理で選択されており、第2太陽光発電設備および第1太陽光発電設備の組み合わせごとに係数αが算出されているので、太陽光発電出力の推定処理においても、第2太陽光発電設備および第1太陽光発電設備の組み合わせは係数αの算出において用いられた組み合わせを用いる。例えば、図7に示すような組み合わせで係数αが算出されている場合、需要家200-2の太陽光発電設備202の発電出力の推定では、需要家200-1の太陽光発電設備202が第1太陽光発電設備として用いられる。
図11に示すように、推定部150は、まず、遅延時間を算出する(ステップS41)。詳細には、推定部150は、推定時点における第1太陽光発電設備の設置地点と第2太陽光発電設備の設置地点との遅延時間を算出する。推定部150は、記憶部180に算出データ185として格納されている遅延時間を推定時点における遅延時間として利用してもよいし、推定時点における気象データなどを反映して遅延時間を更新することにしてもよい。例えば、推定部150は、気象データに含まれる風向風速データから雲が通過する時間を算出して算出した値を用いて遅延時間を更新してもよいし、衛星画像等を用いて遅延時間を更新してもよいし、これら以外の方法により気象データを用いた更新を行ってもよい。また、遅延時間を0と近似することにしてもよい。
次に、推定部150は、推定時点から遅延時間ずれた時刻の太陽光発電出力計測データを取得する(ステップS42)。詳細には、推定部150は、記憶部180の太陽光発電出力データ182内の第1太陽光発電設備に対応するデータのうち推定時点から遅延時間ずれた時刻のデータを取得する。なお、ここでは、太陽光発電出力データ182が計測データであるとして説明するが、上述したように、計測データのかわりに推定値が用いられてもよい。
次に、推定部150は、係数αを取得する(ステップS43)。詳細には、推定部150は、記憶部180に算出データ185として格納されている係数αを読み出すことで、係数αを取得する。
次に、推定部150は、係数αと太陽光発電出力計測データを用いて推定対象の太陽光発電設備の発電出力を推定し(ステップS44)、処理を終了する。詳細には、ステップS44では、第1太陽光発電出力であるステップS42で取得した太陽光発電出力計測データを用いて上記式(6)により第2太陽光発電出力を推定し、推定した結果である発電出力推定値を記憶部180の算出データ185として格納する。
本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100は、以上の処理により、太陽光発電出力を取得可能な太陽光発電設備が少なくとも1つあれば、当該太陽光発電設備の発電出力を用いることで、日射計および高い時間分解能を有する計測器を設置することなく、他の所望の太陽光発電設備の太陽光発電出力を個別に推定することが可能である。さらに、本実施の形態では、上述したように、自己係数λを用いて係数αの検証を行うことにより係数αの推定精度の低下を防ぐことができるため、第2太陽光発電出力を高精度に推定することができる。
なお、1つの第2需要家の第2太陽光発電設備の発電出力を1つの第1需要家の第1太陽光発電設備の発電出力を用いて推定する例を説明したが、複数の第2太陽光発電設備の発電出力の総量(合算値)を1つの第1需要家の第1太陽光発電設備の発電出力を用いて推定してもよい。また、複数の第2太陽光発電設備の発電出力の総量(合算値)を複数の第1需要家の第1太陽光発電設備の発電出力の総量(合算値)を用いて推定してもよい。例えば、柱上トランス単位などの配電区間単位、配電線単位、送電線単位などのように、複数の需要家の太陽光発電設備の発電出力の総量を推定する必要がある場合、発電出力の計測が行われていない需要家の発電出力の総量を、同様に推定することができる。
図12は、複数の需要家の太陽光発電設備を推定対象とする場合の第1太陽光発電設備および第2太陽光発電設備の一例を示す図である。図12に示した例では、図5に示した例と同様に、需要家200-i(i=1,2,…,8)の太陽光発電設備202を、PViとして示している。実線の枠で示したPV1,PV3は、発電出力が計測されており、破線の枠で示したPV2などは、発電出力が計測されていない太陽光発電設備202である。図12に示した例では、PV2,4~8は発電出力の推定対象の第2太陽光発電設備であり、PV1,3は発電出力が計測される第1太陽光発電設備である。この場合、PV2,4~8の発電出力の総量を推定対象の第2太陽光発電出力とし、PV1,3の発電出力の総量を第1太陽光発電出力として、1つの第2需要家の第2太陽光発電設備の発電出力を1つの第1需要家の第1太陽光発電設備の発電出力を用いて推定する例と同様に発電出力の推定を行うことができる。この場合も、PV1~PV8が予め定められた距離を半径とする範囲303内に存在すれば、第1太陽光発電設備と第2太陽光発電設備との間の距離は予め定められた距離以下となる。
図13は、複数の需要家の太陽光発電設備を推定対象とする場合の係数αの一例を示す図である。図13に示したように、複数の第2太陽光発電設備の発電出力を複数の第1需要家の第1太陽光発電設備の発電出力を用いて推定する場合、複数の太陽光発電設備の組み合わせごとに係数αが算出される。なお、このような場合には、遅延時間は、第1太陽光発電設備の設置地点の重心的位置と第2太陽光発電設備の設置地点の重心的位置との間を日射変動が伝播する時間となる。なお、遅延時間を0としてもよい。図13では、配電区間ごとに係数αを定めて配電区間ごとに発電出力を推定する例を示しているが、需要家を統合する単位はこれに限定されない。
次に、太陽光発電出力推定装置100が奏する効果の検証結果を説明する。図14は、本実施の形態の発電出力の推定方法の検証結果の一例を示す図である。図14において、横軸は時刻を示しており、縦軸は第2太陽光発電出力(有効電力)を示している。破線は、本実施の形態で述べた推定方法により推定された第2太陽光発電出力の推定値を示し、実線は、実測値を示している。図14に示した例では、複数軒の全量買取契約の対象である需要家の太陽光発電設備を第1太陽光発電設備とし、複数軒の余剰買取契約の対象である需要家の太陽光発電設備を第2太陽光発電設備として、第2太陽光発電設備の発電出力の総量を推定した結果を示している。つまり、図14に示した例では、第1太陽光発電設備のスマートメータ204による計測データを第1太陽光発電出力として用い、第2太陽光発電設備を有する第2需要家のスマートメータ205の計測データを残余需要として用いて、第2太陽光発電設備の発電出力の総量を推定している。また、図14に示した例では、過去のある日の8時から16時までの30単位の16点をそれぞれ推定時点として、当該推定時点の日の前日に係数αを求め、推定時点の当日の第1太陽光発電出力の計測データを用いて第2太陽光発電出力を推定した。この検証では、第2太陽光発電設備の発電出力を別途特別に計測することで図14に求めた実測値を算出している。図14からわかるように、本実施の形態の発電出力の推定方法により、第2太陽光発電出力を高精度に推定できることが確認できた。
図15は、推定精度の検証を行わない場合の本実施の形態の発電出力の推定方法の検証結果の一例を示す図である。図15において、図14と同様に、破線は、本実施の形態で述べた推定方法により推定された第2太陽光発電出力の推定値を示し、実線は、実測値を示している。図15に示した例では、図14に示した例と同様の検証を別の日に行っている。ただし、図15に示した例では、自己係数λを用いた推定精度の検証を行っていない。このように、自己係数λを用いた推定精度の検証を行わない場合、第2太陽光発電出力の推定精度が低下する場合がある。
ここで、推定精度の低下の要因について説明する。図16は、図14に検証結果が示された日の前日の検証結果の一例を示す図であり、図17は、図15に検証結果が示された日の前日の検証結果の一例を示す図である。図14および図15に結果を示した検証では、上述したように前日に係数αの推定を行っている。図16と図17を比較するとわかるように、図17に対応する日は、図16に対応する日に比べ、日射強度が非常に弱い。このため、図15に示した推定値を求めるために使用された係数αの算出に用いられる第1太陽光発電出力、すなわち図17に対応する日の第1太陽光発電出力も非常に小さくなる。したがって、Covt[PPV1(t),PPV1(t+τs)]が小さくなるため、相対的に、Covt[PPV1(t),PL2(t)]の値を0と近似して無視することができず、上述した式(5)の導出時に前提とされた仮定が成り立たたなくなり、係数αの推定精度が低下する。これにより、図15に示した例では、第2太陽光発電出力の推定精度が低下することになる。本実施の形態では、自己係数λを用いて、|λ-1|が閾値uを超える場合には、係数αの推定値を採用しないようにしているため、図15に示すような推定精度の低下を防ぐことができる。
図18は、|λ-1|と第2太陽光発電出力の推定誤差との散布図の一例を示す図である。図18において、横軸は|λ-1|を示しており、縦軸は、第2太陽光発電出力の推定値の2乗平均平方根誤差(RMSE:Root Mean Squared Error)を示している。図18に示した散布図は、図14および図15に示した例と同様の検証を複数の日に関して実施し、複数の日に関してそれぞれ推定値の実測値に対するRMSEと|λ-1|を算出して得られた結果を示している。誤差が大きく推定精度が低い日は、図18に示すように|λ-1|も大きくなってなり、推定精度が高くなる日は|λ-1|が0に近い値になる。したがって、|λ-1|が閾値uを超える場合に、係数αの算出を行わないことで推定精度の低下を防ぐことができる。図18に示した例では、閾値uを0.5に設定している。閾値uは、第2太陽光発電出力の推定精度が所望の精度すなわち定められた精度を満たすように決定される。これにより、図4に示したステップS6の判定でYesと判定された場合に、第2太陽光発電出力の推定精度が所望の精度を満たすようになる。
閾値uの決定方法に特に制約はないが、例えば、推定精度検証部140が、検証により得られたRMSEと|λ-1|とを記憶部180に格納しておき、表示部160が、これらを散布図として表示する。すなわち、表示部16が、図18に例示した散布図を表示する。なお、このときのRMSEは、|λ-1|を用いた推定精度の検証を行わず、自己係数λの値によらずに全ての場合で係数αを更新して発電出力を推定して得られた結果とする。そして、ユーザがこの散布図を確認しながら、推定誤差であるRMSEが大きいグループと小さいグループとを適切に分離できるように閾値uを決定し、決定した閾値uを、入力受付部170を介して入力する。例えば、図18に示した閾値uの直線を入力受付部170の一例であるマウスなどにより左右に動かすことでユーザが閾値uを調整する。そして、例えば、図18に例示した散布図に確定ボタンを表示しておき、ユーザが、閾値uを示す直線を所望の位置に移動させて確定ボタンを押下することで閾値uが設定されるようにしてもよい。なお、閾値uの決定に利用する需要家は、太陽光発電出力を計測している第1需要家にしてもよいし、第2需要家に仮設的に計測器を設置して、太陽光発電出力を計測することでもよい。さらには、第2需要家に設置された太陽光発電出力の推定値を利用してもよい。ユーザによる閾値uの設定方法はこの例に限定されない。また、検証結果の代わりにシミュレーション結果などが用いられてもよい。
閾値uは、機械学習などの計算により、太陽光発電出力推定装置100または他の装置により算出されてもよい。例えば、推定精度検証部140が、検証により得られたRMSEと|λ-1|とを用いて、機械学習により閾値uを決定してもよい。すなわち、推定精度検証部140は、第2太陽光発電出力の実測値に対する、推定部150により推定された第2太陽光発電出力の推定値の誤差(RMSE)を複数取得し、誤差と誤差に対応する自己係数λとで構成されるデータセットを複数用いて、|λ-1|が閾値u未満である場合の誤差が定められた値以下となるように機械学習により閾値を算出してもよい。機械学習としては、最大エントロピー法、決定木などを用いてもよいし、クラスタリングを行う手法により結果を分類することで閾値uを求めてもよく、どのような手法を用いてもよい。表示部160は、上述した散布図、すなわち第2太陽光発電出力の実測値に対する推定部150により推定された第2太陽光発電出力の推定値の誤差との関係を示す散布図を表示してもよい。さらに、表示部160は、この散布図に、計算により算出された閾値uを重畳させて例えば図18のように表示してもよい。これにより、ユーザが、閾値uが正しく設定されていかを確認することができる。また、ユーザが、計算により算出された閾値uを変更できるようにしてもよい。例えば、ユーザが閾値uを設定するときと同様に、計算により算出された閾値uを示す直線を左右にずらすことで、閾値uを変更できるようにしてもよい。
上記の例では、自己係数λを用いて推定精度の検証を行ったが、第1太陽光発電設備以外の太陽光発電設備202の残余需要を用いて係数αに相当する係数λ´を計算し、係数λ´を自己係数λの代わりに用いて係数αの推定に適しているか否かを判定してもよい。係数λ´も推定精度の検証に用いられる検証係数である。例えば、図1に示した需要家200-1の太陽光発電設備202が第1太陽光発電設備であり、図1に示した需要家200-2の太陽光発電設備202が第2太陽光発電設備であるとする。このとき、需要家200-3の太陽光発電設備202も計測器206により計測されており、需要家200-3の太陽光発電設備202の発電出力も記憶部180に、太陽光発電出力データ182として格納されている。需要家200-3の太陽光発電設備202を第3太陽光発電設備とし、需要家200-3を第3需要家とし、第3需要家の見かけ上の消費電力である残余需要をP3(t)とすると、係数λ´は、以下の式(8)により算出することができる。
係数λ´は、第1太陽光発電出力を第3太陽光発電設備の発電出力である第3太陽光発電出力に変換するための係数であるため、第1太陽光発電出力に係数λ´を乗じると、第3太陽光発電出力の推定値が得られる。一方、第3太陽光発電出力は、需要家200-3において計測器206により計測されており、理想的には、この計測データと推定値とが一致することになる。したがって、係数λ´は、理想的には第3太陽光発電出力(計測データ)であるPPV3(t)を、第1太陽光発電出力PPV1(t)で割った値になる。このため、図4のステップS6では、第3太陽光発電出力を第1太陽光発電出力で除した値を検証係数から減じた結果の絶対値である|λ´-PPV3(t)/PPV1(t)|が閾値u以下であるか否かを判定することで、自己係数λを用いた場合と同様に、推定精度が低下している場合の係数αの採用を防ぐことができる。PPV3(t)/PPV1(t)は、第1期間において複数得られるため平均値を用いてもよいし中央値を用いてもよい。また、以下の式(9)で計算できるPPV3(t)とPPV1(t)の回帰係数ρを利用してもよい。
このように、第3太陽光発電設備の発電出力である第3太陽光発電出力を用いて第2太陽光発電出力の推定精度が高いか否かを判定することができる。第2太陽光発電設備および第3太陽光発電設備は、第1太陽光発電設備と予め定められた距離内に設置されている。
すなわち、本実施の形態の推定部150は、第1太陽光発電設備から予め定められた距離内に設置された第2太陽光発電設備の発電出力である第2太陽光発電出力を、第1太陽光発電設備の発電出力である第1太陽光発電出力と第2太陽光発電設備が設置された需要家のみかけ上の消費電力である残余需要とを用いて推定する。そして、推定精度検証部140は、第1太陽光発電設備から予め定められた距離内に設置された第3太陽光発電設備の発電出力と第3太陽光発電設備が設置された需要家のみかけ上の消費電力である残余需要とを用いて第2太陽光発電出力の推定精度が定められた精度を満たすか否かを判定する。
詳細には、第1共分散算出部120は、検証係数である係数λ´の算出のために、第1期間における、第1太陽光発電出力の時系列データと第3太陽光発電設備が設置された需要家のみかけ上の消費電力である残余需要の時系列データとの共分散である第3共分散を算出する。このとき、係数αの算出時と同様に、遅延時間も算出される。この遅延時間は、第1太陽光発電設備の設置地点と第3太陽光発電設備の設置地点との間を日射変動が伝播する時間であり、第2遅延時間とも呼ぶ。第2共分散算出部130は、第2遅延時間を用いて、係数αの算出時と同様に、第1期間における第1太陽光発電出力の時系列データと第1期間から第2遅延時間だけずれた第3期間の第1太陽光発電出力の時系列データとの自己共分散である第4共分散を算出する。第3共分散および第4共分散は、第3太陽光発電設備を第2太陽光発電設備としたときの係数αの算出における第1共分散および第2共分散にそれぞれ相当する。したがって、第3共分散を第1共分散ということもでき、第4共分散を第2共分散ということもできる。推定精度検証部140は、第3共分散および第4共分散を用いて第1太陽光発電出力と第3太陽光発電出力との比の推定値に相当する検証係数である係数λ´を算出し、係数λ´と、第3太陽光発電出力の第1太陽光発電出力に対する比、あるいは、回帰係数とを用いて、第2太陽光発電出力の推定精度が定められた精度を満たすか否かを判定する。そして、推定部150は、推定精度検証部140によって第2太陽光発電出力の推定精度が定められた精度を満たすと判定された場合は係数αを用いた第2太陽光発電出力の推定を行い、推定精度検証部140によって第2太陽光発電出力の推定精度が定められた精度を満たさないと判定された場合は、係数の初期値または過去に算出された係数αを用いて第2太陽光発電出力の推定を行う。第3太陽光発電設備は、第1太陽光発電設備であってもよいし第1太陽光発電設備とは異なる太陽光発電設備であってもよい。
図4を用いて説明した自己係数λを用いる例は、第3太陽光発電設備が第1太陽光発電設備である場合ということになり、自己係数λは、係数λ´の一例である。ここでは、第1太陽光発電設備が需要家200-1の太陽光発電設備202であり、第3太陽光発電設備が需要家200-3の太陽光発電設備202である例を説明したが、この逆に、第1太陽光発電設備が需要家200-3の太陽光発電設備202であり、第3太陽光発電設備が需要家200-1の太陽光発電設備202であってもよい。なお、第3太陽光発電設備と第1太陽光発電設備が同一の場合、第2遅延時間は0である。また、第3太陽光発電設備が第1太陽光発電設備と異なる場合に、第2遅延時間を0と近似してもよい。また、第1太陽光発電設備が需要家200-1の太陽光発電設備202である場合に、第1太陽光発電設備と予め定められた距離内に他の全量買取契約の対象の太陽光発電設備がある場合には、当該太陽光発電設備を第3太陽光発電設備としてもよい。さらに、複数の需要家の第1太陽光発電出力の総量を用いて第2太陽光発電出力を推定する場合、1つの第3需要家の第3太陽光発電出力および残余需要を用いて推定精度の検証を行ってもよいし、複数の第3需要家の第3太陽光発電出力の総量および残余需要の総量を用いて推定精度の検証を行ってもよい。
このように、図4を用いて説明した例は、第3太陽光発電設備が第1太陽光発電設備である場合すなわち第3太陽光発電設備と第1太陽光発電設備とが同一の場合であり、本実施の形態の太陽光発電出力推定プログラムがコンピュータに実行させる上述した判定ステップは、第3太陽光発電設備の発電出力と第3太陽光発電設備が設置された需要家のみかけ上の消費電力である残余需要とを用いて第2太陽光発電出力の推定精度が定められた精度を満たすか否かを判定するステップ、の一例である。
上述した例では、計測データである第1太陽光発電出力を用いて第2太陽光発電出力を推定するようにしたが、第2太陽光発電出力の推定後、推定された第2太陽光発電出力を第1太陽光発電出力として用いて、さらに別の太陽光発電設備の発電出力を推定してもよい。これを繰り返すことで、例えば、推定対象の太陽光発電設備202から予め定められた距離内に発電出力が計測されている太陽光発電設備202が存在しない場合であっても、推定対象の太陽光発電設備202の発電出力を推定することができる。
図19は、発電出力の推定の順序の一例を示す模式図である。図19では、需要家200-i(i=1,2,…,10)の太陽光発電設備202を、PViとして示している。実線の枠で示したPV1,PV3は、それぞれ需要家200-1,200-3の太陽光発電設備202であり、発電出力が計測されている。破線の枠で示したPV2などは、それぞれ需要家200-2など発電出力が計測されていない太陽光発電設備202である。範囲301,302は、図5に示した例と同様である。図19に示した黒矢印は発電出力の計測データを用いた推定を示し、白矢印は他の太陽光発電設備202の発電出力の推定結果を用いた発電出力の推定を示す。図5に示すように、PV2,PV5,PV6は、PV1の発電出力の計測データを用いて発電出力の推定が行われ、PV4,PV7,PV8は、PV3の発電出力の計測データを用いて発電出力の推定が行われる。その後、PV6の発電出力の推定値を第1太陽光発電出力として用いて、第2太陽光発電設備であるPV8の発電出力の推定が行われ、PV4の発電出力の推定値を第1太陽光発電出力として用いて、第2太陽光発電設備であるPV10の発電出力の推定が行われる。さらに、PV8の発電出力の推定値を第1太陽光発電出力として用いて、第2太陽光発電設備であるPV9の発電出力の推定が行われる。
PV8,PV9,PV10は、PV1から予め定められた距離内に位置せず、PV3から予め定められた距離内に位置しないが、推定値を用いた発電出力の推定が順次行われることで、PV8,PV9,PV10の発電出力の推定を行うことができる。
また、スマートメータ203,204,205の計測データは、例えば30分の積算値などの積算値であってもよいし、瞬時値であってもよい。例えば、係数αの算出処理では、積算値が用いられ、推定時点における係数αを用いた第2太陽光発電出力の推定時に第1太陽光発電出力の瞬時値が用いられてもよい。
以上に説明したように、実施の形態1の太陽光発電出力推定装置100は、第1太陽光発電設備から予め定められた距離内に設置された第2太陽光発電設備の発電出力である第2太陽光発電出力を、第1太陽光発電設備の発電出力である第1太陽光発電出力と第2太陽光発電設備が設置された需要家の残余需要とを用いて推定する推定部150を備える。従って、実施の形態1の太陽光発電出力推定装置100によれば、太陽光発電出力を取得可能な太陽光発電設備が少なくとも1つあれば、当該太陽光発電設備を第1太陽光発電設備とすることで、日射計および高い時間分解能を有する計測器を設置することなく、他の所望の太陽光発電設備の太陽光発電出力を個別に推定することが可能である。
さらに、太陽光発電出力推定装置100は、第1太陽光発電設備から予め定められた距離内に設置された第3太陽光発電設備の発電出力と第3太陽光発電設備が設置された需要家の残余需要とを用いて第2太陽光発電出力の推定精度が定められた精度を満たすか否かを判定する推定精度検証部140を備える。このため、推定精度が定められた精度を満たさないと判定された場合に、対策を講じることができる。この対策の一例は、算出された係数αを採用せず初期値または前回算出された係数αを用いることであるが、対策はこれに限定されない。例えば、推定精度が定められた精度を満たさないと判定された場合に別の推定方法により第2太陽光発電出力を推定するなどであってもよい。推定精度が定められた精度を満たさないと判定された場合に、対策を行うことで、第2太陽光発電出力の推定精度の低下を防ぐことができる。
実施の形態2.
次に、実施の形態2にかかる太陽光発電出力推定装置100について説明する。本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100の機能構成およびハードウェア構成は、実施の形態1の太陽光発電出力推定装置100と同様の構成である。ただし、第1共分散算出部120および推定精度検証部140の動作が一部実施の形態1と異なる。実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は実施の形態1と同一の符号を付して説明し、実施の形態1と重複する説明を省略する。以下、実施の形態1と異なる点を主に説明する。
実施の形態2にかかる太陽光発電出力推定装置100は、実施の形態1と同様に図4に示した手順で係数αの推定処理を実施するが、実施の形態2では、ステップS7の係数αの算出処理において、αが正の値であるかの判定が追加される。
図20は、実施の形態2の係数αの算出処理手順の一例を示すフローチャートである。図20に示したステップS31~ステップS32は、実施の形態1と同様である。ステップS33aでは、実施の形態1とステップS33と同様に係数αの算出が行われる(ステップS33a)。この時点で係数αの更新は行わない。ステップS33aの係数αの算出の後に、推定部150は係数αが正の値であるか否かを判定する(ステップS34)。係数αは、第2太陽光発電出力と第1太陽光発電出力との比であるため、正の値になるはずである。係数αが正の値にならない場合には、係数αの推定精度が低下していると考えられる。このため、係数αが正の値でない場合(ステップS34 No)、推定部150は、係数αの更新を行わずに、処理を終了する。係数αが正の値である場合(ステップS34 Yes)、推定部150は、記憶部180の算出データ185内の係数αを、算出した係数αで更新し(ステップS35)、処理を終了する。
また、上記の例では、ステップS34で係数αが0より大きいか否かを判定しているが、この代わりに、ステップS34において、係数αが0より大きくかつ定格容量比×k以下であるかを判定してもよい。定格容量比は、第1太陽光発電設備の定格容量に対する第2太陽光発電設備の定格容量の比である。kは、1より大きく、例えば1.5程度とすることができるが、検証などによって適宜定められればよくこの値に限定されない。係数αは、第1太陽光発電出力に乗算することで第2太陽光発電出力を求めるための変換係数であることから、係数αが定格比と大きく異なる場合には、係数αの精度が低下している可能性がある。このため、ステップS34において、係数αが0より大きくかつ定格容量比×k以下となるかを判定し、係数αが0より大きくかつ定格容量比×k以下となる場合にステップS35を実施することで、第2太陽光発電出力の推定精度の劣化を防ぐことができる。また、ステップS34で、係数αが定格容量比×k1以上でありかつ定格容量比×k2以下であるかを判定するようにしてもよい。k1は1より小さく、k2は1より大きい。k2は、例えば、1.5程度であり、k1は例えば0.5程度であるが、k1,k2は、検証などによって適宜定められていればよくこれらの値に限定されない。
すなわち、推定部150は、係数αが定格比に第1値であるk1を乗算した値より小さい場合、および係数αが定格比に第2値であるk2を乗算した値より大きい場合に、係数の初期値または過去に算出された係数αを用いて第2太陽光発電出力の推定を行ってもよい。
以上述べた以外の本実施の形態の動作は実施の形態1と同様である。本実施の形態では、実施の形態1と同様に、自己係数λを用いた推定精度の検証を行うとともに、係数αの値に基づいた推定精度の検証も実施する。これにより、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらなる推定精度の向上を図ることができる。
実施の形態3.
次に、実施の形態3にかかる太陽光発電出力推定装置100について説明する。本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100の機能構成およびハードウェア構成は、実施の形態1の太陽光発電出力推定装置100と同様の構成である。ただし、推定部150の動作が一部実施の形態1と異なる。実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は実施の形態1と同一の符号を付して説明し、実施の形態1と重複する説明を省略する。以下、実施の形態1と異なる点を主に説明する。
図21は、本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100による係数αの推定処理手順の一例を示すフローチャートである。ステップS1は、実施の形態1の図4に示したステップS1と同様である。ステップS1の後、第1共分散算出部120は、複数の第1期間を設定する(ステップS2a)。その後、複数の第1期間のうちの1つの期間に関して、実施の形態1と同様に、ステップS3~ステップS6が行われる。ステップS7aでは、実施の形態1と同様に係数αの算出が行われるが、算出された係数αは推定部150または記憶部180に一時的に記憶され、記憶部180の算出データ内の係数αの更新はこの時点では行われない。ステップS7aの後、第1共分散算出部120は、全ての第1期間の係数αの算出が行われたか否かを判断し(ステップS9)、係数αの算出が行われていない第1期間がある場合(ステップS9 No)には、係数αの算出が行われていない第1期間のうちの1つを選択する。以降、選択された第1期間に関してステップS3からの処理が繰り返される。
全ての第1期間の係数αの算出が行われた場合(ステップS9 Yes)、第1共分散算出部120は推定部150に代表値の算出を指示し、推定部150は、係数αの代表値を算出し、記憶されている係数αを算出した値で更新する(ステップS10)。詳細には、推定部150は、一時的に保持されている第1期間ごとの係数αを用いて、係数αの代表値を算出する。係数αの代表値は、算出された複数の係数αの中央値であることが望ましいが、平均値または最頻値のような統計量であってもよい。ステップS8は、実施の形態1と同様である。
なお、ステップS7aの前にステップS6において、第1期間が係数αの算出に適しているかすなわち推定精度は所望の精度を満たすかの判定が行われている。第1期間が係数αの算出に適していないと判定されると、係数αが算出されないため、この場合、算出される係数αの数は、ステップS2aで設定された第1期間の数より少なくなる。例えば、ステップS2aで10個の第1期間が設定され、そのうち1つの期間で係数αの算出に適していないという判定が行われたとする。この場合、推定部150は、ステップS10では、9つの係数αを保持していることになるため、9つの係数αを用いて代表値を決定する。このように複数の第1期間を設定して、第1期間が係数αの算出に適している場合に対応する係数αを算出し、算出した係数αを用いて代表値を算出し、算出した代表値を採用するようにした。このため、稀に発生する係数αの外れ値、すなわち推定誤差が大きい係数αの影響により発生する、第2太陽光発電出力の推定精度の低下を軽減することができる。
このように、第1期間は複数設定されてもよく少なくとも1つ設定されればよい。すなわち、第1共分散算出部120は、第2太陽光発電出力の推定時点より前の少なくとも1つの第1期間における、第1太陽光発電出力の時系列データと第2需要家の残余需要の時系列データとの共分散である第1共分散を算出すればよい。第2共分散算出部130、推定部150、推定精度検証部140は、各第1期間に関して実施の形態1に述べた動作を実施する。第1期間が複数設定されるときには、推定部150は、|λ-1|が閾値u未満であると判定された第1期間に対応する係数αを用いて係数αの代表値を算出し、代表値を用いて第2太陽光発電出力を推定する。
なお、実施の形態2と本実施の形態を組み合わせて、さらに、係数αが正の値でない場合に係数αを更新しないようにしてもよい。この場合、推定部150は、係数αが正の値の場合のみ係数αを保持し、ステップS10で保持している係数αの代表値を求めてもよいし、係数αが負の値であっても一時的に保持しておき、ステップS10において正の値の係数αを用いて代表値を求めてもよい。すなわち、推定部150は、|λ-1|が閾値u未満であると判定された第1期間に対応する係数αのうち正の値の係数αを用いて係数αの代表値を算出し、代表値を用いて第2太陽光発電出力を推定することになる。同様に、係数αが0より大きくかつ定格容量比×k以下であるかの判定と組み合わせてもよいし、係数αが定格容量比×k1以上でありかつ定格容量比×k2以下であるかの判定と組み合わせてもよい。また、図21では、自己係数λを使用して係数αを採用するか否かを判定する例を示したが、実施の形態1で述べたように係数λ´を用いて係数αを採用するか否かを判定してもよい。
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。