JP7448800B2 - 乗物用シート - Google Patents

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Description

本発明は、乗物用シートに係り、特に、衝突時の変位が抑制される乗物用シートに関する。
自動車等の車両にチャイルドシートを取り付ける機構として、ISOFIXという国際標準規格により定められた機構がある。例えば、特許文献1に記載されるように、ISOFIXの機構においては、座席に設けられたロアアンカと呼ばれる取付金具にチャイルドシートのコネクタを接続して、チャイルドシートをシートに固定するようになっている。
特許文献1に記載される従来技術では、チャイルドシートの下部を係止用アームでシートに取付けている。例えば、図示されていないが、ロアアンカはシートクッションフレームの左右に架け渡されたパイプに取り付けられたU字状の取付金具として構成されている。シートバックにチャイルドシートを取付け、テザーアンカをシートバック背面に係合することにより、チャイルドシートとシートバックとが一体的に固定されるようになる。ロアアンカはチャイルドシートの固定部としてのみ機能していて、シートフレームの剛性の確保や変形に対する対策は、別途シートフレームの機構や材料により実現する必要がある。
テザーアンカを用いてチャイルドシートをシートバックに一体的に取付けた状態で、前面衝突等に伴い前方から過大な衝撃荷重が入力されると、チャイルドシート及びシートクッションに作用する慣性力により、チャイルドシート及びシートクッションを前方に移動させようとする力が生じる。そのため、チャイルドシートと一体的に固定されたシートバックに負荷がかかり、シートバックが前方向に傾斜して大きく変位する場合があった。
特許文献2には、前面衝突時に作用する力によるシートクッションの離脱を防止するための構造が開示されている。具体的には、支持フレームの後部に立設された一対のブラケットの後方側にある係合孔の周縁部が、案内フックの係止面によって確実に係止され、衝突時に前方移動するシートクッションが案内フックにより係止されるよう構成されている。
特許第5248093号公報 特許第6544636号公報
特許文献2に開示された発明では、シートクッションの前方移動は案内フックにより係止されるものの、シートバックにかかる負荷は軽減されないため、衝突時にシートバックが前方向に傾斜して大きく変位する可能性があった。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、衝突時の過大な荷重による変位が抑制される乗物用シートを提供することにある。
前記課題は、乗物用シートであって、シート本体と、該シート本体の骨格となるシートフレームと、前記シート本体を前記乗物用シートの前後方向に沿ってスライド移動させるスライドレールと、前記シートフレームに設けられるシートフレーム側部材と、前記シート本体が前記スライド移動の最後方位置から前方に移動した位置にある場合に、前記シートフレーム側部材の近傍に位置すると共に前記シートフレーム側部材との間に隙間をあけて前記スライドレールに設けられるレール側部材と、を備え、前記シート本体に所定の負荷がかかった場合に、前記シートフレーム側部材が移動して、前記シートフレーム側部材と前記レール側部材とが当接し、前記シートフレーム側部材と前記レール側部材のうち少なくとも一方は、前記乗物用シートの前後方向に延びる切欠きが形成された鉤状部を有し、
前記切欠きは少なくとも二つの辺を有し、前記二つの辺のうち一方の辺の長さは他方の辺の長さより長いことにより解決される。
また、前記課題は、乗物用シートであって、シート本体と、該シート本体の骨格となるシートフレームと、前記シート本体を前記乗物用シートの前後方向に沿ってスライド移動させるスライドレールと、前記シートフレームに設けられるシートフレーム側部材と、前記シート本体が前記スライド移動の最後方位置から前方に移動した位置にある場合に、前記シートフレーム側部材の近傍に位置すると共に前記シートフレーム側部材との間に隙間をあけて前記スライドレールに設けられるレール側部材と、を備え、前記シート本体に所定の負荷がかかった場合に、前記シートフレーム側部材が移動して、前記シートフレーム側部材と前記レール側部材とが当接し、前記シートフレーム側部材は、前記乗物用シートの前後方向に延びる切欠きが形成された鉤状部を有し、前記シートフレーム側部材に形成された前記切欠きは上辺と下辺とを有し、前記上辺の長さは前記下辺の長さより長いことにより解決される。
シート本体に所定の負荷、例えば衝突時の前方荷重がかかった場合、シートフレーム側部材がシート本体と移動することにより、シートフレーム側部材とレール側部材とが当接し、それにより、シート本体の変位が抑制される。簡素な構造により、衝突時の過大な荷重による変位を抑制することができる。
また、上記乗物用シートにおいて、シートフレーム側部材とレール側部材のうち少なくとも一方は、乗物用シートの前後方向に延びる切欠きが形成された鉤状部を有することで、スライドレールの前後移動と協調して容易に可動し、過剰な負荷がかかった場合にも確実にシート本体の変位を抑制できる。
また、上記乗物用シートにおいて、切欠きは少なくとも二つの辺を有し、二つの辺のうち一方の辺の長さを他方の辺の長さより長くすることで、スライドレールの前後移動と協調して容易に可動し、過剰な負荷がかかった場合にも確実にシート本体の変位を抑制できる。
また、上記乗物用シートにおいて、シートフレーム側部材に形成された切欠きは上辺と下辺とを有し、上辺の長さを下辺の長さより長くすることで、過剰な負荷がかかった場合、長い方の上辺がレール側部材に当接することにより確実にシート本体の変位を抑制できる。
上記乗物用シートにおいて、前記シートフレーム側部材と前記レール側部材とは、前記隙間を挟んで対向配置されると共に互いに交差するよう配置され、前記シート本体に所定の負荷がかかった場合に互いに当接する第一当接面と第二当接面とを有するとよい。
シートフレーム側部材の第一当接面とレール側部材の第二当接面とが交差するよう配置された状態で当接するため、シート本体に負荷がかかった場合、その負荷を確実に受け止めることが可能である。
上記乗物用シートにおいて、前記シート本体に所定の負荷がかかった場合、前記切欠きの前記上辺及び前記下辺が、前記レール側部材に当接するとよい。
上辺及び下辺がレール側部材に当接することで、過剰な負荷がかかった場合でも効率的に最小変位で移動を抑制できる。
上記乗物用シートにおいて、前記シートフレーム側部材と前記レール側部材とは、前記シート本体が前記最後方位置から前方に移動した位置にある場合に、前記乗物用シートの上下方向及び幅方向において均等な距離の隙間をあけて配置されるとよい。
シートフレーム側部材とレール側部材とがバランス良く配置されることで、効率的にシート本体の変位を抑制できる。
上記乗物用シートにおいて、前記シートフレーム側部材及び前記レール側部材は、それぞれに前記乗物用シートの前後方向に延びる切欠きが形成され、前記シート本体が前記最後方位置から前方に移動した位置にある場合に、互いに噛み合う第一鉤状部及び第二鉤状部を有するとよい。
前後方向に延びる切欠きが形成された第一鉤状部及び第二鉤状部により噛み合うことで、簡易な構造によりシート本体の変位を抑制できる。
上記乗物用シートにおいて、前記シート本体は、シートバックと該シートバックを前記乗物用シートの前後方向に回動させるリクライニング機構とを有し、前記シートフレーム側部材は、前記リクライニング機構に取り付けられるとよい。
比較的強固であるリクライニング機構に、シートフレーム側部材が取り付けられることにより、より強固にシート本体の変位を抑制できる。
上記乗物用シートにおいて、前記シートフレーム側部材及び前記レール側部材は、前記シート本体に所定の負荷がかかった場合、前記リクライニング機構の回転中心を軸に複数の位置で当接するとよい。
複数の位置で当接することにより、効率的にシート本体の変位を抑制できる。
上記乗物用シートにおいて、前記シートフレーム側部材及び前記レール側部材は、前記シート本体に所定の負荷がかかった場合、前記リクライニング機構の回転中心よりも外側後方の位置で当接するとよい。
当接する位置が、過剰な負荷の入力位置及び変位の起点に近いため、シート本体の変位を更に抑制する。
シート本体に所定の負荷、例えば衝突時の前方荷重がかかった場合、シートフレーム側部材が移動することで、シートフレーム側部材とレール側部材とが当接して、それにより、シート本体の変位が抑制される。簡素な構造により、衝突時の過大な荷重による変位を抑制することができる。
シートフレーム側部材の第一当接面とレール側部材の第二当接面とが交差する方向に配置された状態で当接するため、シート本体に負荷がかかった場合、その負荷を確実に受け止めることが可能である。
スライドレールの前後移動と強調して容易に可動し、過剰な負荷がかかった場合にも確実にシート本体の変位を抑制できる。
過剰な負荷かかかった場合、長い方の辺が他方の部材に当接することにより確実にシート本体の変位を抑制できる。
過剰な負荷がかかった場合、長い方の上辺がレール側部材に当接することにより確実にシート本体の変位を抑制できる。
上辺及び下辺がレール側部材に当接することで、過剰な負荷がかかった場合でも効率的に最小変位で移動を抑制できる。
シートフレーム側部材とレール側部材とがバランス良く配置されることで、効率的にシート本体の変位を抑制できる。
また、シートフレーム側部材及びレール側部材のうち少なくとも一方の断面をJ字形状に形成することで、当接する箇所の周辺部の剛性を向上させることができ、より確実にシート本体の変位の抑制できる。
前後方向に延びる切欠きが形成された第一鉤状部及び第二鉤状部により噛み合うことで、簡易な構造によりシート本体の変位を抑制できる。
比較的強固であるリクライニング機構に、シートフレーム側部材が取り付けられることにより、より強固にシート本体の変位を抑制できる。
また、複数の位置で当接することにより、効率的にシート本体の変位を抑制できる。
また、当接する位置が、過剰な負荷の入力位置及び変位の起点に近いため、シート本体の変位を更に抑制する。
本発明の一実施形態に係る車両用シートの外観を示す斜視図である。 車両用シートが備えるシートフレームの斜視図である。 車両用シートの一部を拡大して示す説明図である。 図3のIV-IV線に沿った断面図である。 図3のV-V線に沿った断面図である。 シートに負荷がかかった場合の状態を示す説明図である。 シートフレーム側ブラケット及びレール側ブラケットの別例を示す説明図である。 図7のVIII-VIII線に沿った断面図である。 シートフレーム側ブラケット及びレール側ブラケットの別例を示す説明図である。 シートフレーム側ブラケット及びレール側ブラケットの別例を示す説明図である。
以下、本発明の一実施形態に係る乗物用シートの構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、以下の説明中、シート構成部品の材質、形状及び大きさに関する内容は、あくまでも具体例の一つに過ぎず、本発明を限定するものではない。
なお、以下では、乗物用シートの一例として車両に搭載される車両用シートを挙げ、その構成例について説明することとする。ただし、本発明は、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物に搭載される車両用シートに限定されるものではなく、例えば、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載されるシートにも適用され得る。
また、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートの前後方向(換言すると、シート本体の前後方向)であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「シート幅方向」とは、車両用シートの横幅方向(換言すると、シート本体の幅方向)であり、車両用シートに着座した乗員から見た左右方向と一致する方向である。また、「上下方向」とは、車両用シートの上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。
また、シート幅方向の「車外側」とは、車体の外側により近い方(分かり易くは、最寄りのドアに近い側)を意味し、「車内側」とは、車体の内側により近い方(分かり易くは、最寄りのドアから離れている側)を意味している。
また、以下の説明中、「回動」は、特に断る場合を除き、シート幅方向に沿う軸を中心とした回動動作を意味する。
なお、以下に説明する車両用シート各部の形状、位置及び姿勢等については、特に断る場合を除き、車両用シートが着座状態にあるケースを想定して説明することとする。
本実施形態に係る車両用シート(以下、車両用シートS)の基本構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、車両用シートSの斜視図である。図1中、車両用シートSの一部については、図示の都合上、トリムカバーTを外した構成にて図示している。
車両用シートSは、車体フロアの上に載置され、車両の乗員が着座するシートである。本実施形態において、車両用シートSは、車両の後部座席に相当するリアシートとして利用される。ただし、これに限定されるものではなく、車両用シートSは、前席シートとしても利用可能であり、また、前後方向に三列のシートを備える車両において二列目のミドルシートや三列目のリアシートとしても利用可能である。
車両用シートSは、図1に示すように、その本体部分をなすシート本体Shを有する。シート本体Shは、図1に示すように、着座者の背部を支える背もたれ部分となるシートバック1、着座者の臀部を支える着座部分となるシートクッション2、及び、シートバック1の上部に配され、着座者の頭部を支えるヘッドレスト3を主な構成要素とする。シートバック1とシートクッション2とは後述するリクライニング機構19を挟み込むように連結されている。シートバック1は、後述のベースフレーム12を介して、車体フロアに対して回動可能な状態で取り付けられている。
車両用シートSの中には、図2に示すように、シートフレームFが設けられており、シートフレームFは、シートバック1のフレームであるシートバックフレーム10と、シートクッション2のフレームであるシートクッションフレーム20と、ベースフレーム12と、から構成されている。ベースフレーム12は、シートバックフレーム10のバックサイドフレーム11の下端とリクライニング機構19を介して接続されている。
シートバックフレーム10及びシートクッションフレーム20の外側には、パッド部材P及びトリムカバーTが設けられることで、シートバック1及びシートクッション2が構成されている。パッド部材Pは、例えばウレタン発泡材を用いて、発泡成型により成型されたウレタン基材であり、トリムカバーTは、例えばクロスや革等の素材からなる。
また、シートクッション2は、その後端部がシートバック1の側部に連結されている。なお、シートクッション2の後端部とシートバック1の下端部との間には、図1、図2に示すように後述のクッションサイドフレーム21が介在している。このクッションサイドフレーム21は、シートバック1に対して回動可能な状態で取り付けられている。これにより、シートクッション2はシートバック1と共に回動することが可能である。
また、シート本体Shの下部には、一対のスライドレール4が左右に設置されている。一対のスライドレール4により、シート本体Shは、前後方向にスライド移動可能な状態で車体フロアに取り付けられている。
また、シート本体Shは、その前方に形成された収納フロアに折り畳んだ状態で収納することが可能である。収納フロアは、車体フロアの一部(具体的には、車体フロア中、シート本体Shが着座状態にあるときにシート本体Shの前方に位置する部分)を下方に窪ませることで形成された凹型スペースである。
図2に示すように、シートフレームFは、シートフレームFにおける背もたれ部分の骨格をなすシートバックフレーム10と、シートフレームFにおける着座部分の骨格をなすシートクッションフレーム20と、を主たる構成要素とする。
シートバックフレーム10は、主に、方形枠状に加工されたパイプからなるパイプフレーム18と、バックパネル22と、バックサイドフレーム11と、を備える。
バックサイドフレーム11は、パイプフレーム18の左右の側部にそれぞれ取り付けられた、上下方向に延出するフレームである。換言すれば、バックサイドフレーム11は、パイプフレーム18のシート外側に配置され、パイプフレーム18の側部と共にシートバックフレーム10の左右端部を構成するフレームである。バックサイドフレーム11は、断面がシート内側に向けて開口したUの字状の板状フレームである。バックサイドフレーム11は、上部がパイプフレーム18の側部の中央部に溶接されており、ベースフレーム12に対して回動可能に取り付けられている。
ベースフレーム12は、その上部においてバックサイドフレーム11に、リクライニング機構19を介して接続されている。また、ベースフレーム12は、その下部においてスライドレール4のアッパーレール6に固定されている。
一対のスライドレール4は、前後方向に沿ってシート本体Shをスライド移動させるための機器であり、公知の構造(一般的なスライドレール機構の構造)となっている。スライドレール4は、車体フロア上に固定されるロアレール5と、ロアレール5に対してスライド移動可能なアッパーレール6とを備えている(図1及び図2参照)。車体に固定されたロアレール5に対してアッパーレール6が摺動可能となっている。そして、シートバックフレーム10が、ベースフレーム12を介してアッパーレール6に取り付けられ、シートバックフレーム10はアッパーレール6と一体にロアレール5に対して前後することが可能となっている。したがって、アッパーレール6に取り付けられたシート本体Shが、アッパーレール6のスライド移動に伴って前後移動する。
また、スライドレール4は、アッパーレール6のスライド移動をロックする不図示のロック装置を備える。アッパーレール6は、通常時、ロック装置によってスライド移動不能な状態でロックされており、乗員が所定の操作を行うと、ロック解除されてスライド移動可能な状態となる。ロック装置によりロックされる位置は、スライドレール4によるスライド移動が可能な範囲内であればどこでもよく、例えば、シート本体Shがスライドレール4の最前方位置にあるとき、ロック装置はアッパーレール6を最前方位置でスライド移動不能にロックすることができる。ロック装置については、アッパーレール6をロックするための一般的な機器が利用可能であるため、詳細な説明を省略する。
図1から図9を参照して、本実施形態の車両用シートSに設けられるシートフレーム側ブラケット30と、レール側ブラケット40について説明する。
シートフレーム側ブラケット30(シートフレーム側部材の一例)は、シートフレームFに設けられる部材である。更に詳しく述べるとシートフレーム側ブラケット30は、シートフレームFのシートバックフレーム10の下端に配置されていて、シートバック1を前後方向に回動させるリクライニング機構19の外側端部に設けられている。
レール側ブラケット40(レール側部材の一例)は、スライドレール4に設けられる部材である。更に詳しく述べるとレール側ブラケット40は、シート本体Shが、スライドレール4により前方にスライド移動して最も前方に配置された位置(最後方位置から前方に移動した位置の一例)にある場合に、シートフレーム側ブラケット30の近傍に位置するようスライドレール4のロアレール5の外側側部に設けられている。なお、図3では、シート本体Shが最前方位置にある場合のシートフレーム側ブラケット30の位置が実線で示されていて、シート本体Shが最後方位置にある場合のシートフレーム側ブラケット30の位置が二点鎖線で示されている。
シートフレーム側ブラケット30は、その下端において車両用シートSの前後方向に延びる切欠き33が形成された第一鉤状部32を有する。また、レール側ブラケット40は、その上端において車両用シートSの前後方向に延びる切欠き43が形成された第二鉤状部42を有する(図5参照)。本実施形態では、シート本体Shが前方にスライド移動することにより、シートフレーム側ブラケット30の第一鉤状部32と、レール側ブラケット40の第二鉤状部42とが図3から図5に示すように噛み合うように配置される。ただし、シート本体Shが最前方位置にスライド移動したとき、シートフレーム側ブラケット30とレール側ブラケット40との間には隙間K1、K2、K3、M1、M2、M3があり、シートフレーム側ブラケット30とレール側ブラケット40とは直接接触していない。直接接触させるのではなく隙間を設けることで、シート本体Shをスライド移動させた場合に異音の発生を抑止する。
近年では車両用シートSにチャイルドシートが、ISOFIXの機構であるロアアンカ51(図2参照)とテザーアンカ52(図2参照)により固定されるようになった。チャイルドシートは、ロアアンカ51及びテザーアンカ52によりシートバック1に直接固定されることから、衝突等により前方から過大な衝撃荷重を入力されると、チャイルドシートが慣性力により前方に移動し、それに引かれてシートバック1が図2の矢印B方向に傾斜する。また、衝突等による過大な負荷がシートバック1にかかると、アッパーレール6が浮き上がるように前側方向に変位する。
シート本体Shが最前方位置にある状態で、車両が衝突した場合、車両用シートSには、上述したようにチャイルドシートが取り付けられていると過大な前方荷重(負荷)がかかり、シート本体Shが前方に倒れようとする。このとき、図6に示すように、リクライニング機構19に取り付けられたシートフレーム側ブラケット30が矢印B方向に回転移動して、シートフレーム側ブラケット30の第一鉤状部32と、レール側ブラケット40の第二鉤状部42とが当接する。第一鉤状部32が当接することにより、シート本体Shの回動移動(変位)が抑制される。二つの部材を噛み合せるという簡素な構造により、衝突時の過大な荷重によるシート本体Shの変位を抑制することができる。
より詳しくシートフレーム側ブラケット30及びレール側ブラケット40について説明する。
シートフレーム側ブラケット30と、レール側ブラケット40とは、シート本体Shが最前方位置にある状態で近接して配置され、このとき、隙間K3、M3を挟んで対向配置される第一当接面31と第二当接面41とを有する(図3、図5参照)。第一当接面31と第二当接面41とは図5に示すように、互いに直角に交差するように配置されている。
シート本体Shに矢印A方向に負荷がかかった場合、シートフレーム側ブラケット30が前方に移動して、第一当接面31と第二当接面41とが当接する。第一当接面31と第二当接面41とは互いに交差する方向に配置されているため、シートフレーム側ブラケット30とレール側ブラケット40が、上下方向又は幅方向にずれた場合でも当接することができる。そのため、シート本体Shが受けた負荷を確実に受け止めることができる。
また、シートフレーム側ブラケット30の第一鉤状部32に形成された切欠き33に上辺33aと下辺33bとを有する。上辺33aの長さL1は、下辺33bの長さL2より長く形成されている。そして、シート本体Shに矢印B方向に負荷がかかった場合、図6に示すように、シートフレーム側ブラケット30は回転して、上辺33aが、レール側ブラケット40の第二鉤状部42の上面42aに当接し、下辺33bが、第二鉤状部42の下面42bに当接する。二か所(当接箇所T1、T2)で当接することによりシートフレーム側ブラケット30の移動が効率的に最小変位で抑制される。
本実施形態のレール側ブラケット40の切欠き43は外側辺43aと内側辺43bとを有する。内側辺43bの長さL4は、外側辺43aの長さL3よりも長くなっている。車両の幅方向から負荷を受けた場合、シート本体Shは幅方向に移動するか上下方向の軸を中心として回転する。それにより、シートフレーム側ブラケット30が幅方向に移動して、レール側ブラケット40の外側辺43a及び内側辺43bに当接する。それにより、シート本体Shの移動が効率的に最小変位で抑制される。
また、シート本体Shが最前方位置にある場合、シートの上下方向において隙間があけられているが、この隙間K1、K2の大きさ(間隔KL1、KL2)は略均等な大きさになるよう設定されている(図4参照)。また、シートの幅方向においても隙間M1、M2があけられているが、この隙間M1、M2の大きさ(間隔ML1、ML2)も略均等な大きさになるよう設定されている(図5参照)。均等に隙間をあけることで、シートフレーム側ブラケット30とレール側ブラケット40とがバランスよく配置され、それにより効率的にシート本体Shの変位を抑制できる。なお、シートフレーム側ブラケット30がレール側ブラケット40と向かい合う長さL5と、レール側ブラケット40がシートフレーム側ブラケット30に向かい合う長さL6は、隙間K1、K2、M1、M2より十分に長くなるように形成されている(図5参照)。
また、上述したようにシート本体Shは、シートバック1を車両用シートSの前後方向に回動させるリクライニング機構19を有する。シートフレーム側ブラケット30は、リクライニング機構19の外側端部に取り付けられている。また、シートフレーム側ブラケット30は、シート本体Shに負荷がかかった場合、図6に示すように、リクライニング機構19の回転中心19aを軸に複数の当接箇所T1、T2で当接する。複数の位置で当接すると共にリクライニング機構19にシートフレーム側ブラケット30を設けることでより強固にシート本体Shの変位を抑制できる。
また、このとき、リクライニング機構19の回転中心19aよりも外側後方の位置で当接している(当接箇所T2)。この当接箇所T2が過剰な負荷の入力位置及び変位の起点と近いため、シート本体Shの変位を更に抑制できる。
なお、図1から図6に示すレール側ブラケット40は、シート本体Shが最前方位置にある場合に、シートフレーム側ブラケット30と当接可能なように、スライドレール4に設けられていた。しかしながら、これは一例であり、スライドレール4のスライド移動の最後方位置から前方に移動した位置であれば任意の位置で設けられてよい。
図7から図10を参照して、シートフレーム側ブラケット30及びレール側ブラケット40の変形例について説明する。図1から図6のシートフレーム側ブラケット30及びレール側ブラケット40の第一鉤状部32及び第二鉤状部42は、前後方向に噛み合うように形成されていたが、図7から図10に示すシートフレーム側ブラケット130A、130B及びレール側ブラケット140A~140Dの第一鉤状部132A、132B及び第二鉤状部142A~142Dは上下方向に噛み合うように形成されている。なお、図7、図9、図10では、シート本体Shが最前方位置にある場合のシートフレーム側ブラケット130A、130Bの位置が実線で示されていて、シート本体Shが最後方位置にある場合のシートフレーム側ブラケット130A、130Bの位置が二点鎖線で示されている。
図8に示すように、シートフレーム側ブラケット130Aの第一鉤状部132Aの断面はJ字形状に形成され、レール側ブラケット140Aの第二鉤状部142Aの断面は逆J字形状に形成されている。第一鉤状部132Aと第二鉤状部142Aは隙間をあけて配置されていて、過大な負荷がかかった場合に、例えば第一当接面131と第二当接面141が当接することで、シート本体Shの変位を抑制できる。断面がJ字形状に形成されることで、当接する箇所、例えば第一当接面131、第二当接面141の主変部の剛性を向上させることができ、当接したときも変形しにくく、より確実にシート本体Shの変位を抑制できる。
また、図7に示すように、レール側ブラケット140Aとは別に、同形状のレール側ブラケット140Bをレール側ブラケット140Aの後方の位置、例えばスライド移動範囲の中央の位置に配置してもよい。複数のレール側ブラケット140A、140Bをスライドレール4に設置することにより、シートフレーム側ブラケット130Aの第一鉤状部132Aと当接する当接位置となる第二鉤状部142A、142Bを複数設けることができる。複数配置することで、シート本体Shが最前方位置以外にある場合でも、過剰な負荷がかかった場合にシートフレーム側ブラケット130Aがレール側ブラケット140Bと当接して、シート本体Shの変位を抑制することができる。
レール側ブラケット140A、140Bを設置する位置は最後方位置から前方に移動した位置であれば、任意の位置であってもよい。また、二つのレール側ブラケット140A、140Bの間に更に別のレール側ブラケットを設けてもよい。このように複数のレール側ブラケット140A、140Bをスライドレール4に設けることにより、分割された複数の位置で、シートフレーム側ブラケット130Aがレール側ブラケット140A、140Bに当接可能又は係合可能である。
また、図9に示すように、シートフレーム側ブラケット130Aより、前後方向に長いレール側ブラケット140Cをスライドレール4のロアレール5に設けてもよい。レール側ブラケット140Cでは、シートフレーム側ブラケット130Aの第一鉤状部132Aと当接する第二鉤状部142Cが二つに分割して形成されている。具体的には、第二鉤状部142Cが、最前方位置とその後方にある中間位置の二箇所で当接可能になるよう分割されている。このように複数に分割された第二鉤状部142Cを有するレール側ブラケット140Cをスライドレール4に設けることにより、分割された複数の位置で、シートフレーム側ブラケット130Aがレール側ブラケット140Cに当接可能又は係合可能である。また、レール側ブラケット140Cの第二鉤状部142Cを分割することで、一つの部材で複数の位置において当接可能にすることができるため、部品数を削減することができる。
なお、第二鉤状部142Cは、図8に示す第二鉤状部142Aと同様、断面が逆J字形状に形成されている。
図7に示すシートフレーム側ブラケット130Aは、リクライニング機構19の回転中心19aを含む線を対象軸線にして前後に均等の長さとなるよう形成されているが、図10に示すシートフレーム側ブラケット130Bの第一鉤状部132B及び、レール側ブラケット140Dの第二鉤状部142Dは、回転中心19aよりも後方側に延びるよう形成されている。また、レール側ブラケット140Dの第二鉤状部142Dの長さL8は、シートフレーム側ブラケット130Bの第一鉤状部132Bの長さL7より更に長く形成されている。第二鉤状部142Bが後方に延びることで、過剰な負荷がかかった場合、その入力位置及び変位の起点と近くなるため、シート本体Shの変位を更に抑制することができる。
また、第二鉤状部142Dの長さL8を第一鉤状部132Bの長さL7より長くすることにより、スライド移動の最前方位置だけでなく、最前方位置を含む任意の範囲でシート本体Shの変位を抑制することができる。
なお、第一鉤状部132Bは、図8に示す第一鉤状部132Aと同様、断面がJ字形状に形成され、第二鉤状部142Dは、図8に示す第二鉤状部142Aと同様、断面が逆J字形状に形成されている。
以上、図を用いて本実施形態の車両用シートSについて説明した。なお、上記説明ではシートバック1が起立した状態(着座可能な状態)の場合について説明した。しかしながら、シートフレーム側ブラケット30及びレール側ブラケット40による変位の抑制は、起立時だけでなく、シートバック1を前方に倒伏させてシートクッション2に重なる位置に配置されている場合(荷台状態)であっても、変位を抑制させることができる。簡易な部材追加により過剰な負荷がかかった場合でも、リクライニング機構19のシート中心側への倒れや上方での移動を抑制することができる。
S 車両用シート(乗物用シート)
Sh シート本体
T トリムカバー
P パッド部材
1 シートバック
2 シートクッション
3 ヘッドレスト
4 スライドレール
5 ロアレール
6 アッパーレール
F シートフレーム
10 シートバックフレーム
11 バックサイドフレーム
12 ベースフレーム
18 パイプフレーム
19 リクライニング機構
19a 回転中心
20 シートクッションフレーム
21 クッションサイドフレーム
22 バックパネル
30、130A、130B シートフレーム側ブラケット(シートフレーム側部材)
31、131 第一当接面
32、132A、132B 第一鉤状部
33 切欠き
33a 上辺
33b 下辺
40、140A、140B、140C、140D レール側ブラケット(レール側部材)
41、141 第二当接面
42、142A、142B、142C、142D 第二鉤状部
42a 上面
42b 下面
43 切欠き
43a 外側辺
43b 内側辺
51 ロアアンカ
52 テザーアンカ
K1、K2、K3、M1、M2、M3 隙間
KL1、KL2、ML1、ML2 間隔
T1、T2 当接箇所

Claims (10)

  1. 乗物用シートであって、
    シート本体と、
    該シート本体の骨格となるシートフレームと、
    前記シート本体を前記乗物用シートの前後方向に沿ってスライド移動させるスライドレールと、
    前記シートフレームに設けられるシートフレーム側部材と、
    前記シート本体が前記スライド移動の最後方位置から前方に移動した位置にある場合に、前記シートフレーム側部材の近傍に位置すると共に前記シートフレーム側部材との間に隙間をあけて前記スライドレールに設けられるレール側部材と、を備え、
    前記シート本体に所定の負荷がかかった場合に、前記シートフレーム側部材が移動して、前記シートフレーム側部材と前記レール側部材とが当接し、
    前記シートフレーム側部材と前記レール側部材のうち少なくとも一方は、前記乗物用シートの前後方向に延びる切欠きが形成された鉤状部を有し、
    前記切欠きは少なくとも二つの辺を有し、前記二つの辺のうち一方の辺の長さは他方の辺の長さより長いことを特徴とする乗物用シート。
  2. 乗物用シートであって、
    シート本体と、
    該シート本体の骨格となるシートフレームと、
    前記シート本体を前記乗物用シートの前後方向に沿ってスライド移動させるスライドレールと、
    前記シートフレームに設けられるシートフレーム側部材と、
    前記シート本体が前記スライド移動の最後方位置から前方に移動した位置にある場合に、前記シートフレーム側部材の近傍に位置すると共に前記シートフレーム側部材との間に隙間をあけて前記スライドレールに設けられるレール側部材と、を備え、
    前記シート本体に所定の負荷がかかった場合に、前記シートフレーム側部材が移動して、前記シートフレーム側部材と前記レール側部材とが当接し、
    前記シートフレーム側部材は、前記乗物用シートの前後方向に延びる切欠きが形成された鉤状部を有し、
    前記シートフレーム側部材に形成された前記切欠きは上辺と下辺とを有し、前記上辺の長さは前記下辺の長さより長いことを特徴とする乗物用シート。
  3. 前記シートフレーム側部材と前記レール側部材とは、前記隙間を挟んで対向配置されると共に互いに交差するよう配置され、前記シート本体に所定の負荷がかかった場合に互いに当接する第一当接面と第二当接面とを有することを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
  4. 前記シートフレーム側部材は、前記乗物用シートの前後方向に延びる切欠きが形成された前記鉤状部を有し、
    前記シートフレーム側部材に形成された前記切欠きは上辺と下辺とを有し、前記上辺の長さは前記下辺の長さより長いことを特徴とする請求項に記載の乗物用シート。
  5. 前記シート本体に所定の負荷がかかった場合、前記切欠きの前記上辺及び前記下辺が、前記レール側部材に当接することを特徴とする請求項に記載の乗物用シート。
  6. 前記シートフレーム側部材と前記レール側部材とは、前記シート本体が前記最後方位置から前方に移動した位置にある場合に、前記乗物用シートの上下方向及び幅方向において均等な距離の隙間をあけて配置されることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の乗物用シート。
  7. 前記シートフレーム側部材及び前記レール側部材は、それぞれに前記乗物用シートの前後方向に延びる切欠きが形成され、前記シート本体が前記最後方位置から前方に移動した位置にある場合に、互いに噛み合う第一鉤状部及び第二鉤状部を有することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の乗物用シート。
  8. 前記シート本体は、シートバックと該シートバックを前記乗物用シートの前後方向に回動させるリクライニング機構とを有し、
    前記シートフレーム側部材は、前記リクライニング機構に取り付けられることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の乗物用シート。
  9. 前記シートフレーム側部材及び前記レール側部材は、前記シート本体に所定の負荷がかかった場合、前記リクライニング機構の回転中心を軸に複数の位置で当接することを特徴とする請求項に記載の乗物用シート。
  10. 前記シートフレーム側部材及び前記レール側部材は、前記シート本体に所定の負荷がかかった場合、前記リクライニング機構の回転中心よりも外側後方の位置で当接することを特徴とする請求項又はに記載の乗物用シート。
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