JP7443039B2 - 黒酢分画及び黒酢メラノイジン、並びにその製造方法 - Google Patents

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本発明は、黒酢から得られる生理活性を有する分画や新規のメラノイジンおよびその製造方法、ならびに体脂肪低減剤、前駆脂肪細胞の分化抑制剤に関する。
玄米を主原料とする黒酢は、栄養素としてアミノ酸、有機酸、ビタミン、ミネラル等を有し、特に必須アミノ酸をバランスよく含んでおり栄養的に優れた液状組成物である。
黒酢やこれを濃縮した黒酢濃縮物には、様々な薬効作用があることが知られており、古来より食用のみならず、漢方薬としても用いられている(例えば、特許文献1)。例えば、非特許文献1,2では、黒酢含有食品の摂取により軽度肥満成人の体脂肪面積低減が確認されており、黒酢の経口摂取による抗肥満作用は明らかになっている。肥満は、糖尿病、脂質代謝異常症、高血圧等の生活習慣病のリスクファクターであることは広く知られている。
脂肪細胞形成抑制を有する成分として、これまでに、アカモクの抽出物(特許文献2)、アカザ科アルトロクネヌム属植物抽出物(特許文献3)、ハス胚芽および/またはヤーコンの抽出物(特許文献4)、カワラタケの抽出物(特許文献5)等が報告されている。
特開2012-135229号公報 特開2015-183002号公報 特開2011-6347号公報 特許第4363825号公報 特開2007-186427号公報
Hamadate et al., Effect of a dietary supplement containing kurozu (a Japanese traditional health drink) concentrate on several obesity-related parameters in obese Japanese adults: a randomized double-blind, placebo-controlled trial 2013, 3(8):310 濱舘直史他,黒酢含有食品の体脂肪及びエネルギー代謝へおよぼす影響,日本補完代替医療学会誌 2014, 11(1):67
天然物由来成分は、夾雑成分によっても薬理作用の発現が異なることが当業者の通常の理解であり、黒酢においても網羅的にその含有成分の機能性を探索した例は少なく、含有成分のうち、実際にどの成分が有効であるかについては、あまり知られていなかった。上述した黒酢の経口摂取による抗肥満作用についても、黒酢中の有効成分について報告例はなかった。
一部前述したように、玄米を主原料とする黒酢は、栄養素としてアミノ酸、有機酸、ビタミン、ミネラル等を有し、特に必須アミノ酸を、バランスよく含んでおり、栄養的に優れており、様々な黒酢含有品が開発されている。黒酢は、長い時間をかけることで、より熟成させることが出来るため、タンパク質を構成すると言われている20種類のアミノ酸(必須アミノ酸を多く含む)の他に、クエン酸やコハク酸、有機酸やビタミン、ミネラルも一般の米酢に比べて多く含まれている。そのため、最近では、黒酢が有する、疲労回復効果、糖尿病及び肥満防止効果、血圧上昇防止効果、老化防止効果を初め、認知症に対する脳機能改善効果も着目されてきている。
このように黒酢は有益な効能を有しているが、黒酢に含まれる成分のうち、具体的にどの成分にどのような作用があるかについては未だ判明していないことが多いのが実状である。
ところで、メラノイジンは、還元糖とアミノ化合物を加熱したときなどにメイラード反応によって生じる褐色物質などをいう。メラノイジンは、肉やたまねぎなどの食物を加熱したときの褐変や、豆の焙煎、チョコレートの色素形成、みそ・醤油の色素形成等に関与していると考えられている。このメラノイジンは、食品工業において、食品の加工や貯蔵、香気成分の精製、抗酸化成分の生成に関わる重要なものと考えられている。しかし、メラノイジンは、多様な高分子化合物等の混合物と考えられ、その種類や性質は未知の部分が多い。
また、脂肪細胞形成抑制を有するものとして特許文献2~5等が開示されているが、効能やコスト等の面で更なる選択肢が求められている。
かかる状況下、本発明の目的は、有益な生理活性を有する、黒酢由来の分画を提供することにある。また、本発明の目的は、有益な生理活性を有する、メラノイジンを提供することにある。また、本発明は、黒酢に由来する成分を含む新規の前駆脂肪細胞の分化抑制剤などを提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、黒酢中の特定の分画が、優れた脂肪細胞分化抑制作用を有することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
(A1) アセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒に不溶であり、かつ、水に可溶である黒酢分画。
(B1) 黒酢由来のメラノイジンである黒酢メラノイジン
(B2) アセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒に不溶であり、かつ、水に可溶である前記の黒酢メラノイジン。
(B3) グルコースを標準としたフェノール硫酸法により呈色する物質と、ローリー法により呈色する物質とで構成される前記の黒酢メラノイジン。
(B4) ポリエチレングリコールを標準としたTSKゲルを用いたクロマトグラフィー法による分子量のピークが、300~14,000g/molである前記の記載の黒酢メラノイジン。
(B5) ローリー法により呈色する物質に対する、グルコースを標準としたフェノール硫酸法により呈色する物質の質量比率(「グルコースを標準としたフェノール硫酸法によって測定した呈色物質の質量」/「ローリー法により呈色する物質の質量」)が、1.30~2.25である前記の黒酢メラノイジン。
(B6) ローリー法により呈色する物質の質量が10~50%である前記の黒酢メラノイジン。
(B7) 構成する糖を主としてグルコースとする前記の黒酢メラノイジン。
(C1) 前記(A1)の黒酢分画または前記(B1)~(B7)の黒酢メラノイジンを有効成分として含有する体脂肪低減剤。
(C2) 前記(A1)の黒酢分画または前記(B1)~(B7)の黒酢メラノイジンを有効成分とする前駆脂肪細胞の分化抑制剤。
(D1) 以下の工程を有する黒酢分画の製造方法。
工程(1):黒酢濃縮物と、アセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒を混合した後にろ過を行い、アセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒に可溶の分画と不溶の分画とを分離する工程
工程(2):工程(1)で得られたアセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒に不溶の分画を乾燥後、得られる乾燥物と、水とを混合してろ過を行い、水に可溶の分画と不溶の分画とを分離する工程
工程(3):工程(2)で得られた水に可溶の分画を濃縮し、乾燥して、目的とする黒酢分画を得る工程
(D2) 以下の工程を有する黒酢メラノイジンの製造方法。
工程(1):黒酢濃縮物と、アセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒を混合した後にろ過を行い、アセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒に可溶の分画と不溶の分画とを分離する工程
工程(2):工程(1)で得られたアセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒に不溶の分画を乾燥後、得られる乾燥物と、水とを混合してろ過を行い、水に可溶の分画と不溶の分画とを分離する工程
工程(3):工程(2)で得られた水に可溶の分画を濃縮し、乾燥して、黒酢分画を得る工程
工程(4):工程(3)で得られた黒酢分画と、アセトニトリル40容積部と水60容積部との混合溶媒を混合した後にろ過を行い、アセトニトリル40容積部と水60容積部との混合溶媒に可溶の分画と不溶の分画とを分離する工程
工程(5):工程(4)で得られたアセトニトリル40容積部と水60容積部との混合溶媒に可溶の分画と、アセトニトリル50容積部と水50容積部との混合溶媒を混合した後に相分離を行い、アセトニトリル可溶部と水可溶部とを分離する工程
工程(6):工程(5)で得られた水可溶の分画を、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて黒酢メラノイジンを分離する工程
本発明によれば、前駆脂肪細胞の分化抑制作用等の生理活性を有する黒酢由来の生理活性分画が提供される。本発明によれば、有益な生理活性を有する新規のメラノイジンが提供される。本発明の製造方法によれば、原料となる黒酢濃縮物から安定的に分画を得ることができる。また、本発明の体脂肪低減剤によれば体脂肪を低減することができる。また、本発明の前駆脂肪細胞の分化抑制剤によれば、前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化を効果的に抑制することができる。
Control群、試験群(分画1~4)、参考群(塩化リチウム)及びにおける、前駆脂肪細胞(3T3―L1)の脂肪細胞分化誘導後のOil Red O染色の結果である。 黒酢濃縮末の分画の精製工程を説明するためのフロー図である。 分画3の3T3-L1細胞の脂肪蓄積の阻害活性を評価したグラフである。 分画3の溶解性を評価したグラフである。 黒酢濃縮末の分画の精製工程を説明するためのフロー図である。 黒酢濃縮末の分画の精製工程を説明するためのフロー図である。 分画6の分取クロマトグラフィーの分析結果を示すグラフである。 分画6のサイズ排除クロマトグラフィーによる分析結果を示すグラフである。 サイズ排除クロマトグラフィーでの分画で得られた精製物の脂肪細胞分化抑制活性物質の活性評価の結果を示す図である。
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
(本発明の黒酢分画)
本発明は、アセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒(80%アセトニトリル/水)に不溶であり、かつ、水に可溶である黒酢分画(以下、「本発明の黒酢分画」または単に「本発明の分画」と称す場合がある。)に関する。なお、本願において、「X%アセトニトリル/水」と記載する場合、アセトニトリルと水との混合溶媒であり、混合溶媒におけるアセトニトリルの質量濃度がX%であることを示す。例えば、前述のように80%アセトニトリル/水と記載する場合、アセトニトリル濃度が80質量%のアセトニトリルと水の混合溶媒である。
本発明の黒酢分画は、以下の工程を有する方法によって好適に製造することができる。
工程(1):黒酢濃縮物と80%アセトニトリル/水を混合した後にろ過を行い、80%アセトニトリル/水に可溶の分画と不溶の分画とを分離する工程
工程(2):工程(1)で得られた80%アセトニトリル/水に不溶の分画を乾燥後、得られる乾燥物と、水とを混合してろ過を行い、水に可溶の分画と不溶の分画とを分離する工程
工程(3):工程(2)で得られた水に可溶の分画を濃縮し、乾燥して、目的とする黒酢分画を得る工程
なお、工程(1)において、黒酢濃縮物に代えて、黒酢(液状組成物)を原料としても目的とする黒酢分画して得ることもできるが、製造効率の点で、濃縮した黒酢濃縮物を原料とすることが好ましい。
本発明の黒酢分画の具体的な製造方法については、後述する[実施例]で詳述する。なお、[実施例]における分画3が、本発明の黒酢分画に相当する。
本発明は、アセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒(80%アセトニトリル/水)に不溶であり、かつ、水に可溶である黒酢分画を有効成分として含有する前駆脂肪細胞の分化抑制剤(以下、「本発明の前駆脂肪細胞の分化抑制剤」又は単に「本発明の分化抑制剤」と称す。)に関する。
以下、本発明の黒酢分画の原料となる黒酢濃縮物、及びその原料となる黒酢(液状組成物)について説明する。
本発明において、「黒酢」とは、栄養素としてアミノ酸、有機酸、ビタミン、ミネラル等を含む液状組成物であり、2003年JAS「食酢品質表示基準」により規定された、1リットルあたり180g以上の原料を使用し、熟成によって自然に褐色したもの(着色度0.3以上)であることという基準を満たす製品であればよい。すなわち、従来の伝統的な醸造法「壺づくり」でつくられる黒酢だけでなく、連続法と呼ばれる発酵方法によって、比較的短時間に(24~48時間程度)に造られる黒酢も含まれる。
黒酢の原料としては、米(玄米、白米等)及び水を基本とするが、小麦、大麦、玄麦、ヒエ、アワ、キビ、大豆、酵母、こうじ、たね酢等を添加することもある。
本発明は、これら黒酢の製法等に限定されるものではなく一般的に黒酢として市販されているものを用いることができる。
本発明において「黒酢濃縮物」とは、上述した黒酢(液状組成物)の水分量を減少させて濃縮したものを意味し、形態としてはスラリー、固形物(粉末である場合を含む)のいずれも含む概念である。
黒酢の濃縮は、加熱濃縮、減圧濃縮のいずれでもよいが、黒酢の有効成分の熱劣化を避ける観点から、減圧濃縮が好ましい。なお、減圧濃縮の場合には、細菌が死滅しないため、減圧濃縮後に得られるスラリー状の黒酢濃縮物を加熱して滅菌処理を行うことが好ましい。
スラリー状の黒酢濃縮物は、乾燥処理により、さらに水分を減少させて固形物とすることもできる。乾燥方法は、通常行われ得る乾燥方法、例えば常圧、減圧乾燥、加熱乾燥のいずれでもよく、何れの方法でも目的とする固形物(乾燥物)を得ることができる。
本発明の黒酢分画は、工程(1)において、原料となる黒酢濃縮物が、黒酢の水分量を、初期値の1/30から1/50にまで減少させて得られる固形物であることが好ましい。黒酢(液状組成物)から水分を減少させる方法(濃縮方法)は任意であり、原料となる黒酢の量や、最終的な水分量等に応じて適宜選択することができるが、上述の通り、減圧濃縮が好ましい。
なお、黒酢濃縮物が固形物である場合には、必要に応じて、分画方法に適した大きさになるまで粉砕処理を行い、粉末化してもよい。
「黒酢濃縮物の抽出物」は、黒酢濃縮物を適切な溶媒で抽出することによって得ることができ、抽出成分と溶媒を含む液状組成物だけでなく、これから溶媒を留去して得られる固形物も含む概念である。抽出溶媒としては、例えば、水、エタノール、酢酸エチル、酢酸メチル、アセトニトリル等や、これらの任意の割合の混合物が挙げられる。
本発明の黒酢分画は、様々な有効な生理活性が期待され、有効な生理活性に基づいて、疾病の予防や治療用の経口用組成物や非経口用組成物(以下、総称して「予防治療用薬剤」)の有効成分になりうる。例えば、本発明の黒酢分画は、前駆脂肪細胞の分化抑制作用を有効な生理活性のひとつとして有するため、前駆脂肪細胞の分化抑制剤の有効成分として用いることができる。
(本発明の黒酢メラノイジン)
本発明の黒酢メラノイジンは、黒酢由来のメラノイジンである。また、本発明にかかる黒酢メラノイジンは、アセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒に不溶であり、かつ、水に可溶であるものとすることができる。また、本発明にかかる黒酢メラノイジンは、グルコースを標準としたフェノール硫酸法により呈色する物質と、ローリー法により呈色する物質とで構成されるものとすることができる。また、本発明にかかる黒酢メラノイジンは、ポリエチレングリコールを標準としたTSKゲルを用いたクロマトグラフィー法による推定分子量が、300~14,000g/molであるものとすることができる。
また、本発明にかかる黒酢メラノイジンは、ローリー法により呈色する物質に対するグルコースを標準としたフェノール硫酸法により呈色する物質の質量比率(グルコースを標準としたフェノール硫酸法によって測定した呈色物質の質量/ローリー法により呈色する物質の質量)が、1.30~2.25であるものとすることができる。また、本発明にかかる黒酢メラノイジンは、ローリー法により呈色する物質の質量が10~50%であるものとすることができる。また、本発明にかかる黒酢メラノイジンは、構成する糖を主としてグルコースとするものとすることができる。
この黒酢メラノイジンは、新たに分取され発見されたメラノイジンである。この黒酢メラノイジンは、脂肪細胞分化抑制効果を示す。また、体脂肪低減剤等の有効成分としても有用である。
メラノイジンは、アミノ酸と還元糖の反応により生じる化合物の混合物である。なお、メラノイジンと混合性が高い物質も含む混合物の状態で本発明の黒酢メラノイジンとして用いることができる。
本発明にかかる黒酢メラノイジンは、ポリエチレングリコールを標準としたTSKゲルを用いたクロマトグラフィー法による推定分子量が、300~14,000g/molである。この分子量は、モル質量(g/mol)としてあらわしたものであり、推定分子量のピーク値である。分子量の下限は、340g/mol以上が好ましく、380g/mol以上がより好ましい。分子量の上限は、9,000g/mol以下が好ましく、6,000g/mol以下がより好ましく、3,000g/mol以下がさらに好ましい。
本発明にかかる黒酢メラノイジンは、グルコースを標準としたフェノール硫酸法により呈色する物質と、ローリー法により呈色する物質とで構成されるものとすることができる。
この糖とペプチドの比は、メラノイジンに含まれる糖の質量濃度と、メラノイジンに含まれるペプチドの質量濃度を比較することで求めることができる。ここで、糖の質量濃度は、フェノール硫酸(フェノール硫酸法によって測定した呈色物質)により、D-グルコースを標準として求める濃度は、オリゴ糖や多糖に相当すると考えられ、本願ではフェノール硫酸法により呈色するものを「糖」として説明する場合がある。ペプチドの質量濃度は、Lowry硫酸法(ローリー法)により、bovine serum albumin(ウシ血清アルブミン)を標準として求める濃度は、アミノ酸化合物やペプチドに相当すると考えられ、本願ではこのローリー法により呈色するものを「ペプチド」として説明する場合がある。
本発明にかかる黒酢メラノイジンは、前述のフェノール硫酸法やローリー法により呈色するものを基準として、糖とペプチドとの質量比(糖/ペプチド)が、1.3:1~2.25:1のものとすることができる。すなわち、ペプチドに対する糖の比率(糖/ペプチド)は、1.30~2.25である。例えば、メラノイジンの糖の質量濃度が40質量%であり、ペプチドの質量濃度が20質量%のとき、このメラノイジンの糖:ペプチドの質量比は40:20であり、ペプチドに対する糖の質量比(糖/ペプチド)は、2.0である。
このペプチドに対する糖の質量比の下限は、1.40以上が好ましく、1.50以上がより好ましく、1.60以上がさらに好ましく、1.70以上が特に好ましい。このペプチドに対する糖の質量比の上限は、2.10以下が好ましく、2.00以下がより好ましく、1.90以下がさらに好ましく、1.80以下が特に好ましい。
また、本発明にかかる黒酢メラノイジンは、ローリー法により呈色する物質の質量が10~50%であるものとすることができる。これは、ペプチドやペプチド様物質に相当する濃度と解することもできる。なお、本発明にかかる黒酢メラノイジンは、「グルコースを標準としたフェノール硫酸法により呈色する物質」(糖など)と、「ローリー法により呈色する物質」(ペプチドなど)からなるものとしてもよいし、他の物質を含むものであってもよい。
本発明にかかる黒酢メラノイジンは、酸加水分解したときに5-ヒドロキシメチルフルフラールが生じる。HMFの測定は、次のように行うことができる。まず、測定対象とするメラノイジンを塩酸等と混合し、適宜加熱して、所定の時間、加水分解する。加水分解後、適宜精製水などで希釈して、HMF含量の測定(J Agric Food Chem 58, 2513-2519.)を行う。
本発明にかかる黒酢メラノイジンは、糖成分の単純糖質を主としてグルコースとすることができる。例えばメラノイジンの糖成分におけるグルコースの占める割合(「グルコースの質量/メラノイジンの単純糖質の糖成分の全量」×100)が、70質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上である。また、好ましくは、97.0~99.0質量%がグルコースとしてもよい。このとき、他の糖などを糖成分の残部として含んでもよい。例えば、マンノースを含むものとすることができる。マンノースの占める割合は1.0~3.0質量%含んでもよい。
本発明にかかる黒酢メラノイジンは、黒酢由来である。この黒酢メラノイジンは、アセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒に不溶であり、かつ、水に可溶である。また、この黒酢メラノイジンは、アセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒に不溶であり、かつ、水に可溶である黒酢分画から効率的に得ることができる。
本発明にかかる黒酢メラノイジンは、前駆脂肪細胞の分化抑制活性を有する。前駆脂肪細胞の分化抑制活性は、メラノイジンを100~300μg/mLで3T3-L1細胞の脂肪蓄積の有無から評価することができる。なお、このとき細胞生存率低下は認められないことが求められる。脂肪蓄積が確認されないとき、3T3-L1前駆脂肪細胞の脂肪細胞への分化の抑制によるものと判断することができる。
本発明にかかる黒酢メラノイジンは、アセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒に不溶である。また、本発明の黒酢メラノイジンは、水に可溶であることが好ましい。これらの溶解性は常温常圧におけるものであり、例えば、20℃大気圧下で評価することができる。
本発明にかかる黒酢メラノイジンは、前駆脂肪細胞の分化を抑制する性質を持つことから、体脂肪を低減する効果を有する。一般的に、メラノイジンは、抗酸化作用を奏することが知られている。さらに、体脂肪低減効果を示すメラノイジンは知られておらず、本発明の黒酢メラノイジン特有の性質と考えられる。本発明の黒酢メラノイジンは、黒酢から得ることができるが、黒酢特有の酸味やにおいなどが酢独特の風味が弱い。そして、本発明の黒酢メラノイジンは、体脂肪低減効果を示す有効成分が選択的に含まれる。このため、継続した摂取に適しており、高濃度の成分として摂取することでより高い効果を得ることができ、有効成分としての摂取量を任意に調整しやすい。
本明細書において、「予防治療用薬剤」には、医薬品のみならず、医薬部外品も含む。本明細書において、「予防治療用」とは、対象となる疾患の予防、治療、症状の改善の少なくともひとつに対して有用であることを意味する。すなわち、「予防」には、当該疾患または症状の発症の抑制および遅延が含まれる。また、「治療」には、当該疾患または症状の病態の改善および寛解、並びに当該疾患または症状の進展の抑制が含まれる。
本発明の黒酢メラノイジンや黒酢分画は、その有効量を薬学的に許容される担体とともに配合し、固形製剤又は液状製剤として経口又は非経口的に投与することができる。本発明の黒酢分画を含有する予防治療薬剤の剤形は通常の経口投与または非経口投与に使用されるものならどのような剤形でもよい。
経口投与または非経口投与に利用される剤形としては、具体的には、固形製剤として、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、トローチ等が挙げられる。また、液状製剤として内用液剤、外用液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、注射液、輸液等が例示され、これら剤形やその他の剤形が目的に応じて適宜選択される。
上記固形製剤や液状製剤の製法は、一般的な医薬品や医薬部外品の製法を適用することができる。
予防治療薬剤は剤形、投与量、投与方法を適宜選択すれることができる。また、予防治療薬剤の投与方法は任意であり、経口投与、非経口投与の選択も含めて、対象となる疾患に応じて適宜決定され、制限的であるものではない。
予防治療薬剤の使用量は、体重、年齢、性別、投与形態、所望する効果の程度等によって適宜設定すればよい。
本発明の黒酢分画を予防治療薬剤に使用する場合、有効成分として含有される本発明の黒酢分画の割合は、予防治療薬剤の形態や、用途等に応じて適宜調整すればよく、通常、予防治療薬剤の総量に対して、本発明の黒酢分画が0.001~50質量%程度である。
予防治療薬剤は、有効成分である本発明の黒酢分画が、その生理活性のひとつとして、前駆脂肪細胞の分化抑制作用を有するため、本発明の黒酢分画が有する生理活性に関連する疾患の予防、治療、症状の改善の少なくともひとつに対して有用である。
予防治療用薬剤の対象となる、本発明の黒酢メラノイジンや黒酢分画が有する生理活性に関連する疾患の例としては、肥満及び肥満が直接的、間接的に関係する脂肪肝、糖尿病、脂質代謝異常症、高血圧等の生活習慣病が挙げられる。予防治療用薬剤が含有する本発明の黒酢分画は前駆脂肪細胞の分化抑制作用を有するため、これらの疾病の予防や治療に有用である。肥満は、前駆脂肪細胞が脂肪細胞(成熟脂肪細胞)へと分化し、その数が増加すること、又は脂肪細胞に脂肪が蓄積されることにより形成される。肥満を抑制するには、前駆脂肪細胞の脂肪細胞(成熟脂肪細胞)への分化を抑制することが効果的な方法のひとつであり、前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化を抑制する作用を有する脂肪細胞分化抑制剤が抗肥満にも有効と考えられる。
なお、前駆脂肪細胞の脂肪細胞への分化の抑制作用の機序は特に限定はされない。例えば、PPARγを介した脂肪への分化を抑制する機序、インスリンによる誘発される脂肪への分化を抑制する機序等が想定される。
本発明の分化抑制剤や体脂肪低減剤は、有効成分として、アセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒(80%アセトニトリル/水)に不溶であり、かつ、水に可溶である黒酢分画(以下、「本発明の黒酢分画」又は単に「本発明の分画」と称す場合がある。)を含有するものとすることができる。また、本発明の分化抑制剤や体脂肪低減剤は、本発明の黒酢メラノイジンを含有するものとすることができる。また、本発明の分化抑制剤について、これに関する製品には、本品には黒酢メラノイジンが含まれていますなどの表記をおこなってもよい。また、本発明の分化抑制剤について、これに関する製品には、体重を減らす機能があることや、お腹の脂肪を減らす機能があることに関する表記を行ってもよい。
本発明の黒酢メラノイジンや本発明の黒酢分画は、より優れた前駆脂肪細胞の分化抑制作用を示すため、黒酢濃縮物又は分画していない黒酢濃縮物の抽出物と比較して、少量の配合により前駆脂肪細胞の分化抑制作用を示す。
本発明の分化抑制剤において、前駆脂肪細胞の脂肪細胞への分化の抑制作用の機序は特に限定はされない。また体脂肪低減剤において、体脂肪低減の機序は特に限定されない。例えば、PPARγを介した脂肪への分化を抑制する機序、インスリンによる誘発される脂肪への分化を抑制する機序等が想定される。
本発明の分化抑制剤等は、ヒトのみならず、ヒト以外の動物を対象として使用することもできる。
本発明の分化抑制剤において、有効成分として含有される本発明の黒酢分画の割合は、前駆脂肪細胞が脂肪細胞へ分化することを抑制できる量であればよく、分化抑制剤の形態や、用途等に応じて適宜調整すればよく、通常、分化抑制剤の総量に対して、本発明の黒酢メラノイジンや本発明の黒酢分画が0.001~50質量%程度である。
本発明の分化抑制剤等は、本発明の黒酢メラノイジンや本発明の黒酢分画の有効量を薬学的に許容される担体とともに配合し、固形製剤又は液状製剤として経口又は非経口的に投与することができる。剤形は通常の経口投与または非経口投与に使用されるものならどのような剤形でもよい。
経口投与または非経口投与に利用される剤形としては、具体的には、固形製剤として、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、トローチ等が挙げられる。また、液状製剤として内用液剤、外用液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、注射液、輸液等が例示され、これら剤形やその他の剤形が目的に応じて適宜選択される。
固形製剤において、主剤である本発明の分化抑制剤に、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、矯味剤、安定化剤などの補助剤を用いてもよい。主剤と補助剤の比率は目的に応じて適宜選択される。
また、液状製剤として用いる場合、溶媒としては有効成分である上記化合物の分散性を有し、生体安全性があるものが選択される。溶媒の好適な例としては、例えば、注射用水、エタノール、プロピレングリコールなどが挙げられる。また、液状製剤は、主剤である本発明の分化抑制剤と共に、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、抗酸化剤等の補助成分を含んでいてもよい。
また、本発明の分化抑制剤等には、その作用を抑制しない範囲で、公知の任意の成分を含有してもよい。例えば、安定剤や湿潤剤や乳化剤を加えたり、浸透圧調製剤またはpH調製剤として塩を補助薬として、適宜用いることができる。
上記固形製剤や液状製剤の製法は、一般的な医薬品や医薬部外品の製法を適用することができる。
本発明の分化抑制剤等は剤形、投与量、投与方法を適宜選択すれることができる。また、本発明の分化抑制剤の投与方法は任意であり、経口投与、非経口投与の選択も含めて、対象となる疾患に応じて適宜決定され、制限的であるものではない。
本発明の分化抑制剤等の使用量は、体重、年齢、性別、投与形態、所望する効果の程度等によって適宜設定すればよい。
本発明の分化抑制剤等は、本発明の黒酢分画と共に、薬学的に許容される担体や添加剤を配合することにより、前駆脂肪細胞分化抑制用等の医薬組成物として用いることができる。なお、当該医薬組成物には、医薬品及び医薬部外品の双方が含まれる。
当該医薬組成物は、前駆脂肪細胞の分化抑制作用を有するため、前駆脂肪細胞から脂肪細胞へ分化することにより基づく疾病や症状の予防や治療に有用である。
当該医薬組成物の剤形は、適用形態に応じて適宜設定されるが、一例として、錠剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤等の固形製剤;液剤、乳剤、懸濁剤等の液状製剤;軟膏剤、ゲル剤等の半固形製剤が挙げられる。
当該医薬組成物の適用量は、適用対象者の性別や年齢、該組成物の適用形態、期待される効果等に基づいて適宜設定することができ、0.1~100mg/kg/日程度の量で適用すればよい。
また、本発明の黒酢メラノイジンや本発明の黒酢分画、本発明の分化抑制剤は、医薬品、医薬部外品以外の製品に配合してもよい。
そのような用途のうち、好適な具体例としては、サプリメント、機能性食品、食品添加物、化粧料組成物等が挙げられる。
本発明のメラノジンや本発明の黒酢分画、本発明の分化抑制剤を含有するサプリメントの形態は、特に制限されず、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、糖衣錠、フィルム剤、トローチ剤、チュアブル剤、溶液、乳濁液、懸濁液等の任意の形態でよい。
サプリメントは、本発明の黒酢メラノイジンや本発明の黒酢分画、本発明の分化抑制剤以外に、サプリメントとして通常使用される任意の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、アミノ酸,ペプチド;ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンB、葉酸等のビタミン類;ミネラル類;糖類;無機塩類;クエン酸またはその塩;茶エキス;油脂;プロポリス、ローヤルゼリー、タウリン等の滋養強壮成分;ショウガエキス、高麗人参エキス等の生薬エキス;ハーブ類:コラーゲン等が挙げられる。
本発明の黒酢メラノイジンや本発明の黒酢分画、本発明の分化抑制剤は、日常的に経口摂取しやいように、各種の食品、飲料と混ぜて機能性食品とすることで、長期的に摂取することも容易である。
ここでいう「機能性食品」とは、一般食品に加えて、健康の維持の目的で摂取する食品および/又は飲料を意味し、保健機能食品である特定保健用食品や栄養機能食品や、健康食品、栄養補助食品、栄養保険食品、機能性表示食品、特別用途食品等を含む概念である。この中でも保健機能食品である特定保健用食品や栄養機能食品、機能性表示食品が好ましい機能性食品の態様である。なお、機能性食品として製品化する場合には、食品に用いられる様々な添加剤、具体的には、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤漂白剤、防菌防黴剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料等を添加していてもよい。
機能性食品の対象となる、食品、飲料は特に限定されるものではない。例えば、食品として、ソーセージ、ハム、魚介加工品、ゼリー、キャンディー、チューインガムなどの食品類が挙げられる。また、飲料としては、各種の茶類、清涼飲料水、酒類、栄養ドリンクなどが挙げられる。
また、本発明の黒酢メラノイジンや本発明の黒酢分画、本発明の分化抑制剤は、それ自体またはこれに他の成分を添加して食品添加剤として使用することも可能である。他の成分は、飲食品添加剤として使用可能であるならば特に制限はない。食品添加剤の添加対象となる飲料、食品についても任意であり、特に制限はない。
本発明の黒酢メラノイジンや本発明の黒酢分画、本発明の分化抑制剤等は、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。そのため、動物用の予防治療用薬剤やサプリメントとして使用してもよく、また、ペットフード等の動物用のサプリメントや機能性食品へ添加することもできる。
本発明のメラノジンや本発明の黒酢分画は、各種化粧料基材及び化粧料添加物に対して任意に配合して、化粧料組成物として用いることもできる。
化粧料組成物は、慣用の化粧料基材を適宜配合し、所望の剤形とすることができる。その形態は特に制限はないが、化粧水、乳液、ジェル、クリーム、パック、ヘアトニック、ヘアクリームファンデーション、水性軟膏、スプレー等の形態が挙げられる。また、本発明において、化粧料組成物は、入浴剤、ボディーソープ、シャンプー等の入浴用組成物も含む概念である。
また、化粧料組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で通常化粧料や皮膚外用医薬、入浴用製品で使用される任意の成分を添加することができる。かかる任意成分の具体例としては、増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素剤、金属封鎖剤、防腐剤、pH調整剤、香料、ミツロウ等が挙げられる。これら任意成分の配合割合は、その目的に応じて適宜選択して決定することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
I.黒酢の分画の評価
使用した分析装置および測定条件は以下の通りである。
(1)水素核磁気共鳴分析(1H-NMR)
装置:Bruker BioSpin製 AVANCE500型(Cryo Probe)
測定核:1H 測定溶媒:重水
(2)赤外分光分析(FT-IR)
装置:Agilent technologies社製 3100型
測定方法:KBr錠剤透過法
(3)高速液体クロマトグラフ分析(HPLC)
装置:日本分光社製 PU―2085Plus型、SOFTA社製 Model 300s型(ELSD)
カラム:Imtact社製 Unison UK-c18(4.6 mmID×100mm,3μm)
カラム温度:40℃
溶離液:A=20mMりん酸水溶液・・・(条件1)、超純水・・・(条件2)
B=アセトニトリル
0- 5min;A/B=100/0
5-40min;A/B=100/0-0/100
流速:0.8 mL/min
検出:UV(210nmおよび254nm)・・・(条件1)および(条件2)
ELSD(DT:45℃,SC:10℃)・・・(条件2)
注入量:10μL
1.黒酢分画の製造
1-1.黒酢濃縮物
原料となる黒酢(液状組成物)として、JAS「食酢品質表示基準」により規定される、1リットルあたり180g以上の原料として玄米を使用し、熟成によって自然に褐色したもの(着色度0.3以上)であることという基準を満たす液状組成物の米黒酢を使用した。
まず、黒酢(液状組成物)を蒸発残分が10%となるまで減圧濃縮し、次いで、95℃にて3時間滅菌処理を行い、黒酢濃縮物(固形物)を得た。得られた黒酢濃縮物を、粉砕機にて粉砕処理し、1mm以下の黒酢濃縮粉末とした。
1-2.分画
上記黒酢濃縮粉末1gに20mLの水を加え、超音波分散し、次いで、アセトニトリル80mLを加え懸濁液を得た。得られた懸濁液をメンブランフィルター(ADVANTEC、品番:T050A047A、材質:PTFE、0.5μm)にてろ過し、80%アセトニトリル可溶部(ろ液)と不溶部(ろ残)に分けた。
得られたろ液をロータリーエバポレータにて濃縮(アセトニトリル除去)したものを、C18の固相抽出カートリッジ(Waters,Sep-Pak Vac 20cc(5g) C18 Cartridges,WAT036905)にて水溶出部(分画1)とアセトニトリル溶出部(分画2)に分離した。
また、ろ残は数時間自然乾燥後、真空乾燥を行った(約40℃,約3時間)。得られた乾燥物に超純水約100mLを加え、超音波分散後、メンブランフィルター(ADVANTEC、品番:T050A047A、材質:PTFE、0.5μm)にてろ過、可溶部(分画3)と不溶部(分画4)に分けた。
分画1~3はロータリーエバポレータにて濃縮後、凍結乾燥した。分画4は真空乾燥を行った(約40℃,一晩)。
上記を分画の必要量に応じて繰り返した。最終的に得られた分画(固形物)の質量比は、分画1は1.10質量部、分画2は0.12質量部、分画3は0.28質量部、分画4は1.47質量部の比率となった。
分取によって得られた分画1~4をまとめると、以下の通りである。
[分画1]分取方法:80%アセトニトリルに可溶-SPE(C18)水溶出、外観:茶褐色の固形物
[分画2]分取方法:80%アセトニトリルに可溶-SPE(C18)アセトニトリル溶出、外観:黒褐色の固形
[分画3]分取方法:80%アセトニトリルに不溶-水に可溶、外観:淡褐色の固形物(粉末状)
[分画4]分取方法:80%アセトニトリルに不溶-水に不溶、外観:白色の固形物(粉末状)
2.被験物質、細胞の調製
2-1.使用した細胞、測定キット、機器、試薬
(1)細胞 :3T3-L1、Cell No.JCRB9014
(2)測定キット:Adipogenesis Assay Kit, MILLIPORE, Lot No.2490373
(3)機器
・CO2インキュベーター(MCO-345、パナソニックヘルスケア株式会社)
・クリーンベンチ(MCV―16、パナソニックヘルスケア株式会社)
・培養倒立顕微鏡(TMS、株式会社ニコン)
・冷却遠心機(KUBOTA1710、株式会社久保田製作所)
・バイオシェーカー(BR-15、タイテック)
・マイクロプレートリーダー(iMarkマイクロプレートリーダー、BIO RAD)
(4)試薬
・Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium[DMEM(×1)],Life Technologies,Lot No.1509655
・200mM Glutamine,SIGMA,Lot No.RNBC6816
・Penicillin-Streptomycin,Invitrogen,Lot No.1509759
・HEPES Buffer Solution (1M),Life Technologies,Lot No.1445669
・Calf Serum (CS),SIGMA,Lot No.11M025
・Fetal Bovine Serum (FBS),エムピーバイオジャパン,Lot No.M7729
・0.02%-EDTA Solution,ナカライテスク,Lot No.L3K7724
・2.5%-Trypsin Solution,Life Technologies,Lot No.1349891
・Dulbecco´s Phosphate―Buffered Saline (D-PBS) ,Life Technologies,Lot No.1349891
・Dimethyl Sulfoxide (DMSO),ナカライテスク,Lot No.L2E2656
・Lithium Chloride,和光純薬工業,Lot No.WEE5757
・Premix WST-1, TAKARA, Lot No.AE2p001
試験区を表1にまとめて示す。
2-2.被験物質調製
分画1溶液は、分画1の固形物をDMSOに溶解した後、DMEMで希釈した。分画1の最終濃度が0.01%及び0.1%になるように調製した。
分画2溶液は、分画2の固形物をDMSOに溶解した後、DMEMで希釈した。分画2の最終濃度が0.01%及び0.1%になるように調製した。
分画3溶液は、分画3の固形物をDMSOに溶解した後、DMEMで希釈した。分画3の最終濃度が0.01%及び0.1%になるように調製した。
分画4溶液は、分画4の固形物をDMSOに溶解した後、DMEMで希釈した。分画4の最終濃度が0.01%及び0.1%になるように調製した。
塩化リチウム溶液は、塩化リチウムの原末をDMSOに溶解した後、DMEMで希釈した。塩化リチウムの最終濃度が25mM(0.1%)になるように調製した。
脂質代謝改善試験は、2mLの分化誘導培地及び分化培地に対して200μL添加し、細胞障害性試験は、80μLのDMEM(10%FBS含有)に対して20μL添加した。
用時に調製し、調製後は使用時まで室温保管し、使用時には遠心分離(1000rpm、3分分)後、上清を使用した。
2-3.細胞の増殖及び継代
細胞の解凍は、凍結細胞を約37℃の温湯で融解し、あらかじめ37℃でインキュベートした培養液の入った遠沈管に移し取った。遠心分離(1000rpm、3分)後、上清を捨て、培養液を加えピペッティングでよく懸濁後、培養フラスコに移し、温度37℃、CO2濃度5%に設定した炭酸ガス培養器で培養した。
細胞の継代培養は、細胞密度が過剰になる前に、培養容器から培養液を除き、0.25% trypsin・0.02% EDTA溶液で細胞表面を洗浄後、再度0.25% trypsin・0.02% EDTA溶液を加えて炭酸ガス培養器に入れ、細胞を完全に剥離、剥離した細胞を適量の培養液で回収し、遠心分離(1000rpm、3分)後、上清を除き、培養液を添加しピペッティング(20回以内)した後、培養液を入れた新しい培養フラスコに細胞を播種した。継代を2~4日に1回の頻度で行い、1回以上継代したものを使用した。
培地として。表2に示す組成比(単位:mL)で調製した培地を使用した。
3.生理活性評価
3-1.前駆脂肪細胞(3T3-L1)から脂肪細胞への分化誘導評価
前駆脂肪細胞(3T3-L1)から脂肪細胞への分化誘導に対する黒酢濃縮粉末の分画1~4の影響を評価した。
評価は、「前駆脂肪細胞分化誘導試験-前駆脂肪細胞(3T3-L1)を用いた脂質代謝改善評価法-「食品の機能性評価マニュアル集第1集(改定2版)」,社団法人日本食品科学工学会,pp.115-122(2009)」に準じる方法で行い、Adipogenesis Assay Kitによる脂肪細胞の分化誘導時に分画1~4を添加し、脂肪細胞分化誘導後のOil Red O染色写真及び検出された吸光度を指標にして行った。
まず、上記方法で培養した細胞を3×104cell/mLになるようDMEM(10%FBS含有)を用いて調製し、ウェルプレートに播種した(1日目)。次いで、コンフルエントになった培地を分化誘導培地に交換し、被験物質を添加後に培養した(3日目)。次いで、分化誘導培地を分化培地に交換し、2回目の被験物質を添加後に再び培養した(5日目)。次いで、7日目に分化培地を継代培地に交換し培養し、9日目に検出操作を行った。
上記の培地を除去し、PBSで細胞表面を洗浄する操作を2回繰り返した。洗浄後、Oil Red Solutionを加え、室温で15分インキュベートし、上澄みを除去し、Washing Solutionを加え洗浄する操作を3回繰り返した。
上澄みを除去した試料の写真撮影を行ったのち、Dye Extraction Solutionを加え、バイオシェーカーで15分振とうした。振とう後、マイクロプレートリーダーを用いて吸光度(520nm/ref.630nm)を測定した(N=2)。
評価はControl群の吸光度を100%として、試験群(分画1~4)との対比を行った。また、陽性対照として塩化リチウム群についても評価した。なお、吸光度が小さいほど脂肪細胞への分化が抑制されていることを意味する。表3に結果を示す。
表3に示す通り、分画1、分画2及び分画4の試験群では、被験物質最終濃度0.01%及び0.1%のいずれにおいても、Control群と比較して、吸光度の有意な減少は認められなかった。
これに対し、分画3の試験群では、被験物質最終濃度0.01%及び0.1%においてControl群と比較して、吸光度が68%及び48%と吸光度が大きく減少し、用量依存的な抑制作用を示した。
図1にControl群、試験群(分画1~4)、参考群(塩化リチウム)及びにおける、前駆脂肪細胞(3T3―L1)の脂肪細胞分化誘導後のOil Red O染色の結果を示す。
Control群は、脂肪細胞の分化誘導後にOil red Oにより染色したところ、赤染する脂肪滴の沈着が認められ、成熟脂肪細胞が形成されていることが示された。
分画1、分画2及び分画4の試験群は、Control群と同様であった。これに対し、分画3の試験群では、最終濃度0.01%では確認できる赤染がControl群より明らかに少ななり、0.1%では赤染が確認できなかった。
以上の結果から、分画3には、前駆脂肪細胞(3T3-L1)から脂肪細胞への分化抑制作用があることが確認された。
3-2.細胞障害性試験
分画1~4の細胞障害を確認するため、WST-1を用いて細胞播種と同時添加24時間後に検出された吸光度により細胞増殖への影響も確認した。
上記で培養した細胞を2×104cell/wellになるようDMEM(10%FBS含有)を用いて調製し、96ウェルプレートに播種した。播種と同時に37℃で5分間加温した被験物質を、試験区に従い添加した。被験物質投与後、24時間インキュベーションした後、WST―1を10μL加え30分間インキュベーションした。インキュベート後、十分に浸透させマイクロプレートリーダーを用いて吸光度(450nm/ref.630nm)を測定した(N=2)。
評価はControl群の吸光度を100%として、試験群(分画1~4)との対比を行った。なお、吸光度が小さいほど細胞生存率が低下していることを意味する。表4に結果を示す。
表4に示す通り、以上の結果から、細胞障害性試験においては、細胞播種と同時添加24時間後の分画1~4及び塩化リチウムと全ての被験物質でControl群とほぼ同等の数値を示し、障害性は確認されなかった。
II.黒酢メラノイジンの精製と評価
1.黒酢メラノイジンの精製
1)アセトニトリル分画の採取法
黒酢濃縮末の約1gに約20mLの純水を加え、超音波分散し、続いてアセトニトリル約80mLを加えた。この懸濁液をメンブランフィルターにてろ過し、80%アセトニトリル可溶部(濾液)と不溶部(濾残)に分けた。
濾液をロータリーエバポレータにて濃縮(アセトニトリル除去)したものを逆相固相抽出カートリッジにて水溶出部(分画(II-1)(fraction 1))とアセトニトリル溶出部(分画(II-2)(fraction 2))に分けた。濾残は数時間自然乾燥後、真空乾燥を行った(約40℃、約3時間)。
これに超純水約100mLを加え、超音波分散後、濾過、可溶部(分画(II-3)(fraction3))と不溶部(分画(II-4)(fraction4))に分けた(図2)。
分画(II-3)の大量調製には、この操作をスケールアップした。分画(II-3)はロータリーエバポレータにて濃縮、凍結乾燥した後にさらなる分画に用いた。
次いで、分画(II-3)凍結乾燥粉末を、濃度の異なるアセトニトリル水溶液に懸濁、超音波分散後に遠心分離、濾過し、濾液を活性測定に用いた(図2)。
さらに、分画(II-3)(5.26g)を28.6mLの純水に懸濁後に19.1mLのアセトニトリルと混合し40%(v/v)アセトニトリル懸濁液(110mg/mL)を作成した。これを遠心分離、濾過し、可溶画分を得た(分画(II-5)(fraction 5))(図5)。また、分画(II-5)の10mLに2mLのアセトニトリルを添加し50%(v/v)アセトニトリル懸濁液(100mg/mL)を作成した。これを遠心分離したところ、相分離が起こった。この下層(水層)を分画(II-6)(fraction 6)とした(図6)。
3) サイズ排除クロマトグラフィー(分取)
Superdex 75 10/300 GL(GEヘルスケア)を用いて、以下の条件で、fraction 6の分取クロマトグラフィーを行った(図6)。分画(II-6)は、図7におけるFraction collectedの保持時間の試料を収集したものである。
システム:AKTA(GEヘルスケア)、カラム温度:4℃、移動相:精製水、流速:0.25mL、サンプル注入量:0.9mL、検出器:UV-900モニター(GEヘルスケア)、モニター波長:215,254,280nm)
2.1 分子量(ポリエチレングリコールを標準としたTSKゲルを用いたクロマトグラフィー法)
サイズ排除クロマトグラフィー(分析)により、以下の条件で、分析した。
TSKgel G5000PW(7.5×600mmに、TSKgel guard column PWH (7.5×75mm)を連結,Tosoh,Tokyo,Japan)を用いて、以下の条件で分析を行った。
システム:L2000(日立)、カラム温度:20℃、移動相:0.2Mリン酸ナトリウムpH6.8、流速:0.5mL/min、検出波長:205nm
分子量は、ポリエチレングリコールを標準として換算した。
2.2.1 糖含有量(グルコースを標準としたフェノール硫酸法)
全糖含量の測定にはフェノール硫酸法を用いた。標準としてはD-glucoseを用いた。この方法で測定される濃度を、便宜上、糖として説明する。
2.2.2 ペプチド含有量(ローリー法)
ペプチド含量の測定にはLowry硫酸法を用いた。標準としてはbovine serum albuminを用いた。この方法で測定される濃度を、便宜上、ペプチドとして説明する。
2.3 HMF
(100μL、10mg/mL)を100μLの2M・HClと混合し、減圧封管した後に105℃、2時間加水分解した。得られた分解物は10倍量の精製水で希釈した後にHMF含量の測定(J Agric Food Chem 58, 2513-2519.)に供した。
2.4 部分メチル化アルジトールアセテートの調製
(1)試料3mgを真空下で乾燥した。
(2)無水DMSOを添加して攪拌後、粉末水酸化ナトリウムを添加し、ヨウ化メチルにより完全メチル化した。
(3)ギ酸及び硫酸により加水分解した.
(4)水素化ホウ素ナトリウムで還元後、ピリジン/無水酢酸混液によりアセチル化した(部分メチル化アルジトールアセテート).
2.4.1 GCによる測定
部分メチル化アルジトールアセテートを、以下の条件でのガスクロマトグラフィー分析に供した。
機器: ガスクロマトグラフ 7890A(アジレント・テクノロジー株式会社)
カラム:HP-5MS(アジレント・テクノロジー株式会社)
タイプ:fused silica capillary 30m×0.25mm I.D.
キャリヤーガス:ヘリウム(定流量モード)
カラム温度:100℃、1分 → 280℃(昇温速度6度/min)1分保持
注入口温度:280℃
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)280℃
注入量:1μL(splitless注入)
2.4.2 GC-MSによる分析
部分メチル化アルジトールアセテートを、以下の条件でのガスクロマトグラフィー質量分析に供した。
・ガスクロマトグラフ
ガスクロマトグラフ:6890 Series GC System(アジレント・テクノロジー株式会社)
カラム:HP-5MS(アジレント・テクノロジー株式会社)
タイプ:fused silica capillary 30m×0.25mm I.D.
キャリヤーガス:ヘリウム(定流量モード)
カラム温度:100℃、1分 → 280℃(昇温速度6度/min)1分保持
注入口温度:280℃
注入量:1μL(splitless注入)
・MS
質量分析計:JMS-700V(日本電子株式会社)
イオン化法:電子イオン化(EI)法
測定イオン:正イオン
MS測定部:二重収束型(逆配置)、加速電圧 10kV
イオン化電圧:70eV
イオン化電流:300μA
イオン化室温度:280℃
全質量範囲スキャン時間:1.0秒(m/z 35~500)
繰り返し時間:1.0秒
加速電圧のON時間:5分
2.5 単純糖質
試料の1.0mgに、100μLの4M trifluoroacetic acidを添加し、100℃で3時間の加水分解処理を行った。加水分解物を遠心濃縮機(室温、2hr)で乾固させた後、超純水100μLに溶解した。これを遠心分離(10,000×g、4℃、10分)し、上清を回収した。超純水にて10倍希釈した上清の50μLを用いて、ピリジン/MeOH(10/90、v/v)40μL及び無水酢酸10μL添加後、30分間室温静置した。その後遠心濃縮機にて乾固してN-アセチル化を行い、4-aminobenzoic acid ethyl ester(ABEE)反応試薬で蛍光標識を行った。その後、水/クロロホルム抽出により水層から蛍光標識化単糖を回収し、以下の分析に供した。
装置 :BioAssist eZ (Tosoh)
カラム:PN-PAK c18 (3.0×75mm)
溶媒:0.2Mホウ酸バッファー pH8.9/アセトニトリル93/7、v/v)
流速:0.5 mL / min
検出:蛍光 (Ex:305nm, Em:360nm)
2.6 前駆脂肪細胞の分化抑制について
細胞:3T3-L1 (JCRB9014)
1)脂肪細胞への分化誘導:
3T3-L1細胞を3×104cell/mLになるように10%FBS含有DMEM培地(継代培地)を用いて調製し、その0.5mLを24ウェルプレートに播種した(1日目)。培地を、被験物質を含む分化誘導培地(0.5mM IBMX/1μM dexamethasoneを含む継代培地)に交換し、培養を継続した(3日目)。培地を、被験物質を含む分化培地(10μg/mL insulinを含む継代培地)に交換し、再び培養した(5日目)。培地を、被験物質を含む継代培地に交換し、再び培養した(7日目)。なお、培地交換の際には、古い培地を取り除き、直ちに新しい培地を加えており、PBSによる洗浄は行っていない。
2)Oil Red O染色:
培養9日目に培地を除去し、PBSで細胞を洗浄した(2回)。
洗浄後、Oil Red Solution(Adipogenesis Assay Kit, MILLIPORE, Lot No.2490373)を加え、室温で15分インキュベートした。
上澄みを除去し、Washing Solution(Adipogenesis Assay Kit, MILLIPORE, Lot No.2490373)を加え洗浄した(3回)。
上澄みを除去し、写真撮影を行った。
Dye Extraction Solutionを加え、バイオシェーカーで15分振とうした。抽出液の吸光度(490nm)を、マイクロプレートリーダーを用いて測定した。
3.1 精製物について(製造)
アセトニトリルへの溶解性をもとに黒酢濃縮粉末中の脂肪細胞分化抑制活性物質の分画を行った(図2)。その結果、活性は80%アセトニトリルに不溶で、水に可溶であり、図2の分画(II-3)に活性を回収した。分画(II-3)は100から300μg/mLで3T3-L1細胞の脂肪蓄積を阻害した(図3)。一方、分画(II-3)による細胞生存率低下は認められなかった。従って、分画(II-3)による脂肪蓄積の阻害は、3T3-L1前駆脂肪細胞の脂肪細胞への分化の抑制に伴うものと推測される。
次いで、分画(II-3)を大量調製し、段階的に濃度を変化させたアセトニトリル水溶液への活性の溶解性を検討した。それぞれの画分の100μg/mL相当量を用いた測定の結果、活性物質は60%(v/v)までのアセトニトリルに可溶、それ以上では不溶であることが分かった(図4)。
分画(II-3)のNMRスペクトルでは、糖およびアミノ酸に由来するシグナルが観察され、活性物質は多糖、ペプチド、あるいはその複合体と推測された。
3.2 クロマトグラフィーによる活性成分の精製
図5に示す方法で、分画(II-3)を処理し、40%アセトニトリル可溶画分(分画(II-5))を調製した。
図6に示す方法で、分画(II-5)を50%アセトニトリルとして相分離を行い、下層(分画(II-6)(fraction 6))を調製した。
これを、Superdex 75 10/300 GLカラムを用いたサイズ排除クロマトグラフィーに供した結果、図7に図示する活性画分を回収し、淡黄色粉末得た。
4.1 精製物の物性について
(1)分子量
この活性画分(分画(II-6))を、TSKgel G5000PWカラムを用いたサイズ排除クロマトグラフィーにより分析した結果、活性画分は主に、ポリエチレングリコールを標準として推定した分子量のピーク値は1090±30g/molの成分から構成されることが示された(図8)。
(2)ペプチド
Lowry法によるペプチド含量分析では、精製標品の重量当たりのペプチド含量は23.5% (w/w)と推定された。
(3)HMF濃度
精製物中の5-hydroxymethylfurfural(HMF)含量を測定した結果、1.23%(w/w)であった。
(4)部分化メチルアルジトールアセテート
メチル化分析では、試料の完全メチル化を行い、加水分解してメチル化単糖に分解した後、還元アセチル化し、部分メチル化糖アルコールのアセチル誘導体(部分メチル化アルジトールアセテート)とした。得られた部分メチル化アルジトールアセテートをGC及びGC-MSを用いて測定した。主なピーク9本で観測されたマススペクトルを、部分メチル化アルジトールアセテートの標準マススペクトルと比較して、それぞれの帰属を行った(表6)。試料に含まれる糖は、ほぼグルコースであることを基にして結合様式を推定した。主なピーク2本の結合様式は、それぞれGlc 1→及び→4 Glc 1→と推定した(表6)。
(5)糖
フェノール硫酸法による全糖含量分析では、精製標品の重量当たりの糖含量は40.2%(w/w)と推定された。組成分析では、含有される単純糖質の98.1%がグルコース、1.9%がマンノースとの結果が得られた。
(6)その他の物性
IRスペクトルでは、多糖に特徴的なシグナルが観察された。典型的なシアル酸である、N-acetylneuraminic acid (Neu5Ac)、N-glycolylneuraminic acid (Neu5Gc)、2-keto-3-deoxy-D-glycero-D-galacto-nonulosonic acid (KDN) は観察されなかった
(7)成分比率
分画(II-6)の精製標品の糖含量は40.2質量%であった。ペプチド含量は23.5質量%であった。よって、ペプチドに対する糖の質量比率は、1.74であった。
HMFは1.23質量%であった。よって、ペプチドおよび糖の合計質量に対する酸加水分解したときの5-ヒドロキシメチルフルフラールの質量濃度は、1.93質量%であった。
(8) 活性成分の分析
サイズ排除クロマトグラフィーでの分画で得られた精製物の脂肪細胞分化抑制活性物質の活性評価の結果を図9に示す。精製物は、110から330μg/mLで3T3-L1細胞の脂肪蓄積を阻害した。Oil Red O染色では、分化脂肪細胞は細胞質に脂質滴を大量に蓄積し、大型化することが観察される。黒酢濃縮末由来の精製物の添加により、大型の細胞の減少が見られた。
(9)その他の成分について
脂肪細胞分化抑制活性を構成する最小単位を検討した。サイズ排除クロマトグラフィーで得られた画分を濃縮する方法を検討する過程で、アセトニトリルを50%(v/v)となるように精製試料に添加すると、試料濃度によって、二相に液液分離する場合と、相分離ではなく、多糖成分と思われる物質が白色沈殿として分離する。
また、塩析・MeOH抽出により色素成分を調製可能であり、これと上記多糖成分を用いて、これらの画分に活性があるのか検討した。その結果、いずれの画分にも活性は認められない。よって、前駆脂肪細胞の分化を抑制する活性物質は多糖色素複合体であるメラノイジンであると考えられることが裏付けられた。
本発明の黒酢分画やメラノイジンは体脂肪低減剤や前駆脂肪細胞の分化抑制作用等の有益な作用を有する。また本発明の体脂肪低減剤は体脂肪低減作用を有し、本発明の前駆脂肪細胞の分化抑制剤は優れた前駆脂肪細胞の分化抑制作用を有する。このため、医薬組成物、サプリメント、機能性食品及び化粧料組成物等への応用が可能であり、日常的に使用することが期待できる。

Claims (8)

  1. アセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒に不溶であり、かつ、水に可溶である黒酢分画。
  2. アセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒に不溶であり、かつ、水に可溶である黒酢メラノイジン。
  3. グルコースを標準としたフェノール硫酸法により呈色する物質と、ローリー法により呈色する物質とで構成される請求項2記載の黒酢メラノイジン。
  4. ポリエチレングリコールを標準としたTSKゲルを用いたクロマトグラフィー法による分子量のピークが、300~14,000g/molである請求項2または3に記載の黒酢メラノイジン。
  5. ローリー法により呈色する物質に対する、グルコースを標準としたフェノール硫酸法により呈色する物質の質量比率(「グルコースを標準としたフェノール硫酸法によって測定した呈色物質の質量」/「ローリー法により呈色する物質の質量」)が、1.30~2.25である請求項2~4のいずれかに記載の黒酢メラノイジン。
  6. ローリー法により呈色する物質の質量が10~50%である請求項2~5のいずれかに記載の黒酢メラノイジン。
  7. 以下の工程を有するアセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒に不溶であり、かつ、水に可溶である黒酢分画の製造方法。
    工程(1):黒酢濃縮物と、アセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒を混合した後にろ過を行い、アセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒に可溶の分画と不溶の分画とを分離する工程
    工程(2):工程(1)で得られたアセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒に不溶の分画を乾燥後、得られる乾燥物と、水とを混合してろ過を行い、水に可溶の分画と不溶の分画とを分離する工程
    工程(3):工程(2)で得られた水に可溶の分画を濃縮し、乾燥して、目的とする黒酢分画を得る工程
  8. 以下の工程を有するアセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒に不溶であり、かつ、水に可溶である黒酢メラノイジンの製造方法。
    工程(1):黒酢濃縮物と、アセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒を混合した後にろ過を行い、アセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒に可溶の分画と不溶の分画とを分離する工程
    工程(2):工程(1)で得られたアセトニトリル80容積部と水20容積部との混合溶媒に不溶の分画を乾燥後、得られる乾燥物と、水とを混合してろ過を行い、水に可溶の分画と不溶の分画とを分離する工程
    工程(3):工程(2)で得られた水に可溶の分画を濃縮し、乾燥して、黒酢分画を得る工程
    工程(4):工程(3)で得られた黒酢分画と、アセトニトリル40容積部と水60容積部との混合溶媒を混合した後にろ過を行い、アセトニトリル40容積部と水60容積部との混合溶媒に可溶の分画と不溶の分画とを分離する工程
    工程(5):工程(4)で得られたアセトニトリル40容積部と水60容積部との混合溶媒に可溶の分画と、アセトニトリル50容積部と水50容積部との混合溶媒を混合した後に相分離を行い、アセトニトリル可溶部と水可溶部とを分離する工程
    工程(6):工程(5)で得られた水可溶の分画を、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて黒酢メラノイジンを分離する工程
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