JP7442960B2 - 肌状態の鑑別法 - Google Patents

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本発明は、筋肉量を指標として肌状態を鑑別する方法に関する。
素肌を美しく保ったり化粧を施したりするために、スキンケアやメークアップの方法を検討したり、化粧品を選択したりするに際して、肌の表面や内部の状態、例えば肌のハリ・弾力、色、角層の状態、老化度、キメ、シワ、毛穴、色素沈着等を的確に把握することは重要である。
これまでに、皮膚から得たレプリカ画像や皮膚の拡大写真を評価材料として、これらに画像処理を施して得た情報を利用して、シワやキメを鑑別する技術が開示されている(特許文献1、2)。
また、皮膚を直接的に計測して、その内部構造情報を得て、肌の状態の鑑別に供する方法も開発されている。例えば、厚みのある生体試料を非侵襲的に観察することを可能とした共焦点レーザー顕微鏡により得た画像等に基づいて、肌の状態を鑑別する方法が注目されている(特許文献3~6)。
特開2004-230117号公報 特開2008-61892号公報 特開2004-337317号公報 特開2004-97436号公報 国際公開2013/153959号 特開2014-064896号公報
本発明は、かかる状況に鑑み、より簡便かつ高精度に、また非侵襲的に、肌状態を推定することができる、肌状態の鑑別法を提供することを目的とする。
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、身体の筋肉量が多いと肌状態が良好であるという相関関係があることを見出した。そして、筋肉量を指標として肌状態を推定し、その推定結果に基づいて肌の状態の良し悪しを鑑別することができることに想到し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]筋肉量を指標として肌状態を推定することを特徴とする肌状態の鑑別法。
[2]前記肌状態が、毛穴、シワ、色素沈着、及び肌色から選択される一種又は二種以上である、[1]に記載の鑑別法。
[3]前記肌状態の推定が、多変量解析によって得られた推定式を用いて行われる、[1]又は[2]に記載の鑑別法。
本発明により、簡便かつ高精度に、また非侵襲的に、肌状態を鑑別する方法が提供される。これにより、個人に合わせた肌の手入れや化粧方法を検討・選択・決定する際に有用な情報を得ることができ、該情報を肌の手入れや化粧方法に関するカウンセリングにも利
用できる。
本発明の肌状態の鑑別法は、筋肉量を指標として肌状態を推定することを特徴とする。
本発明における筋肉量とは、通常は、体重当たりの筋肉重量、又は体積当たりの筋肉体積をいう。また、好ましくは、体全体に関する筋肉量を指すが、体幹(胸部及び腹部)、下半身、又は体幹と下半身との合計に関する筋肉量であってもよい。
後述の実施例に示される通り、筋肉量が多い人では肌状態が良好であり、筋肉量が少ない人では肌状態が不良であるという有意な傾向が認められる。本発明の鑑別方法は、かかる相関関係に基づいて、筋肉量が多い場合に肌状態が良く、筋肉量が少ない場合に肌状態が不良であると推定するものであり、かかる推定は例えば予め用意した基準に当てはめて行うことができる。
本発明の鑑別法により推定される肌状態は、好ましくは、毛穴、シワ、色素沈着、及び肌色であり、通常には、上記肌状態の一種または2種以上である。なお、ここでいう肌の部位は顔面、四肢、頸部、胴部等特に限定されないが、通常は顔面の肌状態について鑑別を行う。以下に種々の肌状態と、それらを表すパラメータについて説明する。
本明細書において「毛穴」は、毛穴の目立ちを示す概念であり、通常は毛穴の個数で表される。
目立つ毛穴が少ないことは、肌表面の均一性が高く、なめらかな好ましい状態を示す。一方、目立つ毛穴が多いことは、毛肌表面が不均一で、なめらかでなく、良好とは認識されない状態を示す。なお、「目立つ毛穴」とは、目視による認識の他、後述の解析プログラムにより認識されるものをいう。
毛穴の個数は、一般に、直接被験者の測定部位を観察してカウントする他、皮膚計測機器を用いて測定される。かかる皮膚計測機器としては例えば、VISIA-Evolution(Canfield Scientific Inc.)が例示でき、一定条件で撮影した写真に基づき、解析プログラムにより目立つ毛穴として認識される数を計測する。
例えば、毛穴に係る肌状態が良好であるというのは、片方の頬の範囲(30cm2)の毛穴個数が前記計測機器で測定したときに258個未満であることをいうと当てはめることができる。あるいは、毛穴に係る肌状態が良好であるというのは、測定対象者の毛穴個数は、40~50代女性100名以上の標準パネラーにおいて取得した毛穴数の少ない方からの順位付けに照らし合わせたときに、上位25%以上、より好ましくは20%以上に相当すると当てはめることができる。
なお、測定部位は特に限定されないが、頬が好ましい。
本明細書において「シワ」は、加齢シワや表情シワ等の皮溝の目立ちを示す概念であり、通常はシワの個数や任意の基準でスコア化した値で表される。
シワが少なかったり目立たないことは、肌表面の均一性が高く、なめらかで若々しい好ましい状態を示す。一方、シワが多かったり目立つことは、肌表面が不均一で、なめらかでなく、老いた印象を与え、良好とは認識されない状態を示す。なお、「シワ」とは、目視による認識の他、後述の解析プログラムにより認識されるものをいう。
シワの個数やスコアは、一般に、直接被験者の測定部位を観察してカウントする他、皮膚計測機器を用いて測定される。かかる皮膚計測機器としては例えば、VISIA-Evolution(Canfield Scientific Inc.)が例示でき、一定条件で撮影した写真に基づき、解析プログラムによりシワとして認識される数を計測したり、それに基づきスコア化する。
例えば、シワに係る肌状態が良好であるというのは、片方の頬の範囲(30cm2)のシワ個数が前記計測機器で測定したときに91個未満であることをいうと当てはめること
ができる。あるいは、シワに係る肌状態が良好であるというのは、測定対象者のシワ個数又はシワスコアは、40~50代女性100名以上の標準パネラーにおいて取得したシワ個数の少ない方又はシワスコアの良い方からの順位付けに照らし合わせたときに、上位25%以上、より好ましくは20%以上に相当すると当てはめることができる。
なお、測定部位は特に限定されないが、頬が好ましい。
本明細書において「色素沈着」は、メラニン色素が皮膚に沈着することにより生じるシミや肌の色ムラ等の状態を示す概念であり、通常はシミの個数や任意の基準でスコア化した値で表される。シミについては、メラニンシミと紫外線シミとを区別して表してもよい。
メラニンが目立たず、シミが少なかったり色ムラが小さいことは、美しく、若々しく、又は健康的で好ましい状態を示す。一方、メラニンが多いためにシミが多かったり色ムラが大きいことは、老いた印象を与えたり、良好とは認識されない状態を示す。なお、「色ムラ」とは、肌表面の色みの均一の程度をいう。
シミや色ムラ等の色素沈着パラメータは、一般に、直接被験者の測定部位を観察して評価する他、皮膚計測機器を用いて測定される。かかる皮膚計測機器としては例えば、VISIA-Evolution(Canfield Scientific Inc.)が例示でき、一定条件で撮影した写真に基づき、解析プログラムにより、メラニンシミ個数、メラニンシミスコア、紫外線シミ個数、紫外線シミスコア、色ムラ指数、色ムラスコア等を測定し算出する。
例えば、色素沈着に係る肌状態が良好であるというのは、片方の頬(30cm2)の範囲のシミ個数が前記計測機器で測定したときに60個未満であることをいう、あるいは色ムラスコアが841未満であることをいう、と当てはめることができる。あるいは、色素沈着に係る肌状態が良好であるというのは、測定対象者のシミや色ムラに係るパラメータは、40~50代女性100名以上の標準パネラーにおいて取得したパラメータの良い方からの順位付けに照らし合わせたときに、上位25%以上、より好ましくは20%以上に相当すると当てはめることができる。
なお、測定部位は特に限定されないが、頬が好ましい。
「肌色」は、肌の色味や明るさによって、若々しさや健康的な印象を左右する肌の状態の要素である。一般には、分光測色計や色彩色差計などで測定され、かかる測定機器としては、例えば分光測色計CM-2600d(コニカミノルタオプティクス)等が好ましく挙げられる。肌色は、例えばRGB、マンセル(明度、色相、彩度)、L*a*b*、XYZ、L*C*h、ハンターLab等の表色系で表示でき、これらのうち特にマンセルバリュー又はb*の測定値で表すことが好ましい。また、肌の色味には毛細血管の構造や分布が大きく影響するため、肌表面から観察されるヘモグロビンに係る指数や任意の基準でスコア化した値で表示することもできる。
肌色が明るい又は白側に近い色味であったりヘモグロビンが適度に少ないことは、美しく、若々しく、又は健康的で好ましい状態を示す。一方、肌色の明るさが乏しく赤みが強かったり、ヘモグロビンが過度に多いことは、老いた印象を与えたり、良好とは認識されない状態を示す。
例えば、肌色が良好であるというのは、頬のマンセルバリュー値が5.7未満であることをいう、あるいはヘモグロビンスコアが32未満であることをいう、と当てはめることができる。あるいは、肌色が良好であるというのは、測定対象者の肌色やヘモグロビンに係るパラメータは、40~50代女性100名以上の標準パネラーにおいて取得したパラメータの良い方からの順位付けに照らし合わせたときに、上位25%以上、より好ましくは20%以上に相当すると当てはめることができる。
なお、測定部位は特に限定されないが、頬が好ましい。
本発明の鑑別法では、測定により得た筋肉量を多変量解析によって得られた推定式に当
てはめることにより、肌状態を表すパラメータを導くことによって解析を行うことが好ましい。前記推定式は、多変量解析のソフトウェアを利用して、実測した筋肉量と肌状態パラメータとの相関分析及び回帰分析を行って作成できる。そのようなソフトウェアとして、装置に付属したソフトウェア、SPSS社やSAS社等の市販されているソフトウェアあるいはフリーソフトなどを用いることができ、特に制限されない。
また、推定式を作成するに際して測定標準となるパネラーは、特に限定されないが、好ましくは30名以上、より好ましくは50名以上、さらに好ましくは100名以上であることが、解析の正確性を確保するため好ましい。また、年齢は20~60代というように広範囲に偏りなく分布させることが好ましく、必要によっては年齢の要素を加味した推定式を作成してもよい。また、性別もそろえることが好ましい。
本発明の鑑別法の対象は、特に限定されず、人一般とすることができる。また、対象の性別は、特に限定されないが、美容カウンセリングの需要の観点から好ましくは女性である。また、対象の年齢は、特に限定されず、例えば20~70代とすることができる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>筋肉重量と肌状態との相関解析
(1)体重当たりの筋肉重量の測定
40代及び50代の日本人女性100名を対象に、マルチ周波数体組成計 MC-180(株式会社タニタ)を用いて、体幹及び下半身の合計部分に関する、体重当たりの筋肉重量を測定した。
(2)肌色及び肌状態の測定
(1)と同じ被験者について、下記の手順で種々の肌状態パラメータをそれぞれ測定した。
分光測色計CM-2600d(コニカミノルタオプティクス)を用いて、測定点4か所の色を、マンセル及びL*a*b*の表色系で各3回ずつ測定し、各平均値を算出した。4か所の測定点は、左目尻から垂直方向に下ろした線と鼻尖点から水平方向に延ばした線との交点、右目尻から垂直方向に下ろした線と鼻尖点から水平方向に延ばした線との交点、左目尻から垂直方向に下ろした線と左口角から水平方向に延ばした線との交点、及び右目尻から垂直方向に下ろした線と左口角から水平方向に延ばした線との交点、とした。なお、測定点が色素沈着部位である場合は、当該部位を外したすぐ右隣を測定部位とした。
皮膚計測機器VISIA-Evolution(Canfield Scientific Inc.)を用いて、被験者の顔写真を撮影した。被験者はグレーのケープを着用し、目を閉じた状態で、画像補正用カラーチャート(CASMATCH)と共に撮影した。撮影モードは標準光、UV、直交偏波(cross-polarization)の3種とし、各モードで正面左右1枚ずつ撮影した。得られた写真に基づいて、前記機器の解析プログラムにより被験者の両頬の、メラニン個数、毛穴個数、ヘモグロビン指数、シミ個数、色ムラ指数、紫外線シミ個数、しわ個数、メラニンスコア、毛穴スコア、ヘモグロビンスコア、シミスコア、色ムラスコア、紫外線シミスコア、及びシワスコアを算出した。
また、SKICON-200EX(株式会社ヤヨイ)を用いて角層水分量を、VAPO
SCAN AS-VT100RS(株式会社アサヒテクノラボ)を経表皮水分蒸散量(TEWL)を、Cutometer MPA580(Courage + Khazaka Electronic GmbH)を用いてハリ・弾力パラメータを、Sebumeter
SM810(Courage & Khazaka Electronic GmbH)を用いて皮脂量を、PeriCam PSI(PERIMED)を用いて血流量を、それぞれ測定した。
(3)解析
上記測定した筋肉重量と種々の肌状態パラメータとを用いて、JMP ver.13.0(SAS)を使用して、相関分析及び回帰分析を行った(表1)。その結果、体重当たりの筋肉重量と毛穴、シワ、色素沈着、及び肌色に関するパラメータとの間に有意な相関関係の存在が認められた。この結果から、筋肉重量を指標として肌の毛穴、シワ、色素沈着、及び肌色に関する肌状態を推定できることがわかる。
なお、角層水分量、TEWL、ハリ・弾力、及び血流量、については、筋肉重量との間に有意な相関関係は認められなかった。
Figure 0007442960000001
本発明により、簡便かつ高精度に、また非侵襲的に、肌状態を推定することができる。これにより、肌の手入れや化粧方法を検討・選択・決定する際に有用な情報を得ることができ、該情報を肌の手入れや化粧方法に関するカウンセリングにも利用できるため、産業上非常に有用である。

Claims (2)

  1. 筋肉量を指標として日本人女性の肌状態を推定することを特徴とし、
    前記肌状態が、毛穴、シワ、色素沈着、及び肌色から選択される一種又は二種以上であり、
    前記筋肉量は、体重当たりの筋肉重量又は体積当たりの筋肉体積であり、
    前記毛穴の状態は、毛穴個数で表され、
    前記シワの状態は、シワ個数、又はシワスコアで表され、
    前記色素沈着の状態は、メラニン個数、メラニンスコア、シミ個数、紫外線シミ個数、又は紫外線シミスコアで表され、
    前記肌色の状態は、ヘモグロビン指数、ヘモグロビンスコア、色ムラ指数、色ムラスコア、マンセルバリュー、又はb*で表される肌状態の鑑別法。
  2. 前記肌状態の推定が、多変量解析によって得られた推定式を用いて行われる、請求項1に記載の鑑別法。
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