JP6755831B2 - 肌状態の評価方法 - Google Patents

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本発明は、肌状態の評価方法に関し、特に、メラニン量の指標であるメラニンインデックスを用いて肌の状態を評価する肌状態の評価方法に関する。
皮膚の色は、肌色の主たる構成色素であるメラニンの色素量及びヘモグロビンの色素量によって変化し、美容上の観点や、健康状態を診断するといった観点から、重要な特性である。また、例えば肌の美白の状態を適切に把握したり、健康状態を簡易に診断したりするためには、皮膚の色を、感覚的にではなく、客観的・定量的に評価できるようにする必要があることから、皮膚を採取することなく、皮膚に光をあてるだけで、メラニンの色素量やヘモグロビンの色素量を定量できるようにした、色彩計や反射分光光度計が種々開発され、市販されている。これらの色彩計や反射分光光度計では、皮膚の色を計測するのではなく、ランベルト−ベール(Lambert-Beer)の法則に基づいて皮膚の色素量を定量化したインデックスにより表示して、肌の状態を評価するようになっている。
一方、色彩計や反射分光光度計を用いて皮膚の色素量をインデックスにより定量化して表示する際に、メラニンの色素量とヘモグロビンの色素量とは、互いに影響を及ぼすものであるため、インデックスが増大又は低下した際に、メラニンの増加等によるものなのか、炎症等に起因するヘモグロビンの増大等によるものなのか、区別することが困難になる場合がある。このようなことから、皮膚の反射スペクトルから、吸光度モデルを置くことにより、皮膚の構成成分の吸光係数スペクトルを用いて重回帰分析を行い、皮膚中の成分量を求めるようにした皮膚中の成分の定量方法が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平11−299743号公報
日本香粧品学会誌Vol.28 No.1 (2004)pp18-22「皮膚色の計測」、瀧脇弘嗣著 Feather JW et al. Phys Med Biol 1988: 33: 711-722 Dawson JB et al. Phys Med Biol 1980: 25: 695-709
ここで、ランベルト−ベール(Lambert -Beer)の法則は、希薄溶液の吸光度(透過率の逆数の対数)はその濃度と比例するとするものであり、反射率を、見かけ上の吸光度(反射率の逆数の対数)に変換して演算することが可能である(例えば、非特許文献1参照)。
すなわち、真皮を溶液の下に置いた白い反射板と仮定すれば、反射率は透過率×透過率で代用でき、見かけ上の吸光度を測れば色素濃度(メラニン濃度及びヘモグロビン濃度)を推定できるという発想に基づく。皮膚は、表面から表皮、真皮、皮下組織の3層に分かれており、光学的な観点からみると、皮膚の色を決定するのは半透明な膜である角層、メラニン顆粒を含んだ表皮の基底層(メラニン層)、真皮最上層の毛細血管・小血管網(へモグロビン層)、及び白色の真皮層である。進入した光は角層では約90%が透過し、メラニン層及びヘモグロビン層では、それぞれの色素によって光は吸収されるが、散乱(乱反射)はほとんどなく、残りは透過して真皮では主として散乱が生じることになる。角層を省略した図2に示す皮膚の多層モデルでいえば、ある波長λでの反射率Rは、メラニン層m、へモグロビン層hでの透過率をそれぞれTm、Th、真皮層dでの反射率をRdとおくと、メラニン層m、へモグロビン層hでは光が往復することになり、下記の式(1)が得られる。
式(1)の両辺の逆数をとれば、下記の式(2)が得られる。
式(2)の左辺(見かけ上の吸光度)をAλと表すと、式(2)は、下記の式(3)のように変形できる。
mはメラニン量、Chはヘモグロビン量、MλとHλは波長λでのそれぞれの吸光度に対応した係数、Dは真皮の見かけ上の吸光度で、波長λによらずほぼ一定なので定数項とみなすことができる。いま二つの狭波長帯λ1、λ2における見かけ上の吸光度をA1、A2とおけば、下記の式(4)が得られる。
式(4)において、M1−M2が十分に小さく(理想的にはゼロ)、H1−H2が十分に大きい値になるようにλ1、λ2を選べば、A1−A2は、感度の良いヘモグロビン量Chに比例する指数となる。同様にH1−H2が十分に小さく、M1−M2が十分に大きい値になるλ1、λ2を選べば、A1−A2はメラニン量Cmに比例する最適な指数となる。得られたメラニン量Cmやヘモグロビン量ChのインデックスMI,EIは、このような考えに基づいて定義され、色を表すのではなく、理想的にはターゲットとした皮膚の色素量に線形に相関すると考えられる、1次元の数値となる。
また、反射分光光度計を用いれば、都合のよい波長の光を選んで照射できることから、メラニン量CmのインデックスMIやヘモグロビン量ChのインデックスEIを得るためのさまざまな公式が考案されている。インデックスメータとして販売されている機種では、メラニン量CmのインデックスMIやヘモグロビン量ChのインデックスEIを算定するのに適した、特定の狭波長域の光を出すLEDが備えられている。
例えば、ヘモグロビン量ChのインデックスであるエリスマインデックスEIを算定して得る際には、メラニンによる影響を軽減させるように、540〜570nmの波長と660nm付近の波長の光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の吸光度を用いて、吸光度の引き算(A1−A2)を行なう公式や、560nm、543nm、576nm、510nm、及び610nmの5波長の光を皮膚に照射した際に計測される、各々の見かけ上の吸光度を用いて引き算を行なう、下記の式(5)の公式によって、エリスマインデックスEIを算定することが提案されている。
また、メラニン量Cmの指標であるメラニンインデックスMIを算定して得る際には、ヘモグロビンによる影響を軽減させるように、ヘモグロビンによる影響を受け難い、長波長の波長として、例えば620〜650nmの波長と670〜700nmの波長の光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の吸光度を用いて、吸光度の引き算(A1−A2)を行なう公式や(例えば、非特許文献2参照)、620〜650nmの波長の光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の吸光度の平均値と、670〜700nmの波長の光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の吸光度の平均値とを用いて、吸光度の平均値の引き算(A1ave−A2ave)を行なう公式によって(例えば、非特許文献3参照)、メラニンインデックスMIを算定することが提案されている。
しかしながら、従来のメラニンインデックスMIやエリスマインデックスEIによりメラニンの色素量やヘモグロビンの色素量を定量して、肌の状態を評価する方法によれば、特にメラニンインデックスMIを算定する際に、ヘモグロビンによる影響を排除できるように、長波長の光を照射して計測される見かけ上の吸光度を用いてメラニンインデックスMIを算定しているが、ヘモグロビンは、長波長の領域においては、吸光度がそれほど高くないオキシヘモグロビンに対して、デオキシヘモグロビンの吸光度は高くなっており、実際の血液では、これらが混ざったスペクトルを示すため、血液の酸素飽和度の相違によってスペクトルが変化することになる。血液の酸素飽和度によって吸光係数スペクトルが変化すると、吸光度の高いデオキシヘモグロビンによる影響を十分に排除することができなくなって、メラニンインデックスMIを精度良く算定することが難しくなることから、このような酸素飽和度の相違による影響を受けないようにして、メラニンインデックスMIをさらに精度良く算定できるようにすることで、肌の状態をより一層適正に評価できるようにする方法の開発が望まれている。
本発明は、ヘモグロビンの酸素飽和度の相違による影響を受けないようにして、メラニンインデックスMIをさらに精度良く算定できるようにすることで、肌の状態をより一層適正に評価することを可能にする肌状態の評価方法に関する。
本発明は、皮膚に含まれるメラニン量を反映するメラニンインデックスを用いて肌の状態を評価する肌状態の評価方法であって、該メラニンインデックスを、オキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルとデオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルとが交わる第1等吸収点の波長の光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第1吸光度と、第2等吸収点の波長の光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第2吸光度とから求める肌状態の評価方法を提供する。
本発明の肌状態の評価方法によれば、ヘモグロビンの酸素飽和度の相違による影響を受けないようにして、メラニンインデックスをさらに精度良く算定できるようにすることで、肌の状態をより一層適正に評価することが可能になる。
皮膚の色の構成色素であるメラニン、オキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンの、吸光係数と波長との関係を示す吸光係数スペクトルのチャートである。 角層を省略した皮膚の多層モデルにおいて、照射された光が乱反射する状況の説明図である。 (a)〜(d)は、第1吸光度と第2吸光度との差を算定して得られるメラニンインデックスと、従来の公式から得られるメラニンインデックスとの相関関係を説明するチャートである。 (a)及び(b)は、肌の2次元画像を得るためのハイパースペクトラルイメージング装置を含む肌状態評価システムの説明図である。 第1等吸収点及び第2等吸収点の波長の光を照射して得られた画像を例示する、(a)はヘモグロビン画像、(b)はメラニン画像である。 第1等吸収点及び第2等吸収点の波長の光を照射して得られた画像を例示する、(a)はヘモグロビン画像、(b)はメラニン画像である。 血流促進効果を得た後の、(a)は実施例1のメラニン画像、(b)は比較例1のメラニン画像、(c)は参考例1のヘモグロビン画像である。 メラニン沈着を得た後の、(a)は実施例2のメラニン画像、(b)は比較例2のメラニン画像、(c)は参考例2のヘモグロビン画像である。 テープ止血することで鬱血させた後の、(a)は実施例3のメラニン画像、(b)は比較例3のメラニン画像、(c)は参考例3のヘモグロビン画像である。 (a)は、エリスマインデックス及びメラニンインデックスの平均をプロットしたチャート、(b)は、エリスマインデックス及びメラニンインデックスの分散をプロットしたチャートである。 専門評価者により理想肌を評価された被験者について、分光測色器により計測された色相を横軸に、明るさを縦軸に取ってプロットしたチャートである。 専門評価者により色むらを評価された被験者について、エリスマインデックス及びメラニンインデックスの分散をプロットしたチャートである。
本発明の好ましい一実施形態に係る肌状態の評価方法は、人の肌の状態として、例えば顔の肌の状態を適正に評価できるようにするための情報、より具体的には画像情報を評価者に提示する方法(肌状態の評価のための情報提示方法)として採用されたものである。本実施形態の肌状態の評価方法を用いることで、肌色の主たる構成色素であるメラニンの色素量に由来する、シミ、そばかす、くすみ等の美白効果に影響を及ぼす色素沈着の状態を、適正に把握することができる。すなわち、本実施形態の肌状態の評価方法は、皮膚のメラニン層m(図2参照)に含まれるメラニン量Cmを定量するメラニンインデックスMIを算定する際に、デオキシヘモグロビンによる影響を受けないようにして、精度良く算定できるようにすることで、肌の状態を一層適正に評価できるようにする機能を備えている。
そして、本実施形態の肌状態の評価方法は、皮膚に含まれるメラニン量を反映するメラニンインデックスMIを用いて肌の状態を評価する評価方法であって、メラニンインデックスMIを、オキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルとデオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルとが交わる第1等吸収点11(図1参照)の波長の光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第1吸光度Aλ11と、第2等吸収点12(図1参照)の波長の光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第2吸光度Aλ12とから求める。
すなわち、本実施形態では、メラニンインデックスMIは、オキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンの、吸光係数と波長との関係を示す図1の吸光係数スペクトルにおいて、例えばオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルとデオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルとが交わる第1等吸収点11の波長530nmの光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第1吸光度Aλ11(A530)と、第2等吸収点12の波長570nmの光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第2吸光度Aλ12(A570)との差を、下記の式(6)により算定することで求める。なお、第1等吸収点11の波長や第2等吸収点12の波長を、吸光係数スペクトルにおいて、オキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルとデオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルとが交わる等吸収点から選定する際に、これらの等吸収点の波長(530nm、570nm)は、正確な波長から±10nm程度ずれた値となっていても、実用上問題はないと考えられる。
また、本実施形態では、メラニンインデックスMIは、第1等吸収点11におけるオキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンの吸光係数と、第2等吸収点12におけるオキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンの吸光係数とを、同様の値とする所定の倍数として、好ましくは「1.2」を、第1吸光度A530に掛け合わせて、上記の式(6)によって、第1吸光度A530と第2吸光度A570との差を算定することで求める。
さらに、本実施形態の肌状態の評価方法では、メラニンインデックスMIと共に、皮膚に含まれるヘモグロビン量を反映するエリスマインデックスEIを用いて肌の状態を評価する。すなわち、皮膚のメラニン層mに含まれるメラニン量Cmを定量するメラニンインデックスMIと、皮膚のヘモグロビン層h(図2参照)に含まれるヘモグロビン量Cbを定量するエリスマインデックスEIとの、2つのインデックスを指標として、肌状態を評価する。エリスマインデックスEIは、見かけ上の吸光度から算定して求められる。
ランベルト−ベールの法則は、上述のように、反射率を、見かけ上の吸光度(反射率の逆数の対数)に変換して演算することを可能にする。本実施形態では、角層を省略した図2に示す皮膚の多層モデルを想定して、上記の式(1)を変形することで、上記の式(2)、式(3)から、さらに上記の式(4)を得ることができた。式(4)において、M1−M2が十分に小さく(理想的にはゼロ)、H1−H2が十分に大きい値になるように波長λ1、λ2を選べば、A1−A2は、感度の良いヘモグロビン量Cbに比例する指数(エリスマインデックスEI)となって、ヘモグロビンの色素量を精度良く定量することが可能になると考えられる。同様にH1−H2が十分に小さく、M1−M2が十分に大きい値になる波長λ1、λ2を選べば、A1−A2はメラニン量Cmに比例する最適な指数(メラニンインデックスMI)となって、メラニンの色素量を精度良く定量することが可能になると考えられる。本願の発明者は、これらの着想に基づいて、本願の発明を完成するに至った。
本実施形態では、H1−H2を十分に小さな値とし、且つM1−M2を十分に大きな値とする波長λ1、λ2として、図1に示すオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルとデオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルとが交わる等吸収点11,12の波長λ11、λ12の光を皮膚に照射した際に計測される、見かけ上の吸光度Aλ11(A530)、Aλ12(A570)から算定して、メラニンインデックスMIを得ている。
ここで、オキシヘモグロビンの吸光係数と波長との関係を示すオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトル、及びデオキシヘモグロビンの吸光係数と波長との関係を示すデオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルは、オキシヘモグロビンやデオキシヘモグロビンに特有の物性として、既に検証されている公知のスペクトルである。図1に示すように、オキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルは、410nm付近の波長で吸光係数のピークを有すると共に、ピークの波長の両側で吸光係数が波打った値となり、600nmを超える長波長の領域では、吸光係数は、波長の増加に伴って0に近い値でなだらかに減少する。デオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルは、430nm付近の波長で吸光係数のピークを有すると共に、ピークの波長の両側で吸光係数が波打った値となり、600nmを超える長波長の領域では、オキシヘモグロビンと比較すると吸光係数は高いままとなっている。このため、メラニンインデックスMIを算定する従来の公式では、オキシヘモグロビンによる影響を除くことができても、デオキシヘモグロビンによる影響を十分に排除できていなかった。
また、図1に示すオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルとデオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルとは、各々のスペクトルの波打った形状が異なっていることから、オキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルとデオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルとが交わる点である等吸収点が、複数箇所に現れるようになっている。本実施形態では、式(4)により見かけ上の吸光度A1(Aλ11)、A2(Aλ12)から算定してメラニンインデックスMIを得る際に、オキシヘモグロビンの吸光係数とデオキシヘモグロビンの吸光係数とが等しい値となるこれらの等吸収点の波長を、皮膚に照射すべき光の波長として用いる。見かけ上の吸光度A1、A2から算定してメラニンインデックスMIを得る際の波長として、等吸収点の波長λ11、λ12を用いることにより、オキシヘモグロビンやデオキシヘモグロビンの影響を抑制した、精度の良いメラニンインデックスMIを、効率良く得ることが可能になる。
さらに、本実施形態では、見かけ上の吸光度A1、A2から式(4)により算定してメラニンインデックスMIを得る際に用いる等吸収点の波長として、第1吸収点11の530nmの波長λ11と、第2吸収点12の570nmの波長λ12との、2箇所の等吸収点11,12における波長λ11、λ12が用いられている。これらの等吸収点11,12は、その波長λ11、λ12の差が、40nmという好ましい範囲に収まるように選ばれている。第1吸収点11の波長λ11と第2吸収点12の波長λ12との差を10〜200nmの範囲に収めることで、第1吸収点11の波長λ11と第2吸収点12の波長λ12とが、比較的近い値となるので、波長による真皮の反射特性の違いの影響や、波長による光の皮膚への浸透深さの違いの影響を受けずに、あるいは小さくして、メラニンインデックスMIを得ることが可能になる。
ここで、見かけ上の吸光度A1、A2から式(4)により算定してメラニンインデックスMI(A1−A2)を得る際の等吸収点の波長として、2箇所の等吸収点11,12における波長λ11、λ12を用いる必要は必ずしも無く、例えば第1吸収点11の波長λ11と第2吸収点12の波長λ12と第3吸収点13の波長λ13との、3箇所の等吸収点11,12,13における波長λ11、λ12、λ13を用いることもできる。例えば第1吸収点11の波長λ11と第2吸収点12の波長λ12との平均値を第1吸収点の波長とし、第3吸収点13の波長λ13を第2吸収点の波長として、これらの差から、式(4)によりメラニンインデックスMIを算定することもできる。
また、本実施形態では、メラニンインデックスMIは、第1等吸収点11におけるオキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンの吸光係数と、第2等吸収点12におけるオキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンの吸光係数とを、同様の値とする所定の倍数として、「1.2」を、第1吸光度Aλ11(A530)に掛け合わせて、上記の式(6)によって、第1吸光度Aλ11(A530)と第2吸光度Aλ12(A570)との差を算定する。
ここで、第1等吸収点11におけるオキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンの吸光係数と、第2等吸収点12におけるオキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンの吸光係数とを、同様の値とする所定の倍数は、例えば以下のようにして求めることができる。すなわち、第1等吸収点11でのヘモグロビンの吸光係数H11と、第2等吸収点でのヘモグロビンの吸光係数H12との比α=H11/H12を、2つの等吸収点におけるヘモグロビンの吸光度を同等とする所定の倍数とすることができる。
このようにして求めた、2つの等吸収点におけるヘモグロビンの吸光度を同等とする、所定の倍数を用いることの妥当性について、検証した結果を図3に示す。図3(a)に示すように、640nmの波長の光と670nmの波長の光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の吸光度(A640、A670)から得られる、従来の公式(A640−A670)によるメラニンインデックスMIを、横軸にとると共に、第1等吸収点11の530nmの波長の光と、第2等吸収点12の570nmの波長の光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の吸光度(A530、A570)から得られる、式(A530−A570)によるメラニンインデックスMIを、縦軸にとって、これらの相関関係を検証したところ、総相関係数がR2=0.4458となって、相関性は認められなかった。
これに対して、例えば図3(b)に示すように、640nmの波長の光と670nmの波長の光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の吸光度(A640、A670)から得られる、従来の公式(A640−A670)によるメラニンインデックスMIを、横軸にとると共に、第1等吸収点11の530nmの波長の光と、第2等吸収点12の570nmの波長の光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の吸光度(A530、A570)から得られる、所定の倍数として「1.2」を第1吸光度A530に掛け合わせた上記の式(6)によるメラニンインデックスMIを、縦軸にとって、これらの相関関係を検証したところ、総相関係数がR2=0.8705となって、高い相関性が認められた。
また、例えば図3(c)、(d)に示すように、640nmの波長の光と670nmの波長の光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の吸光度(A640、A670)から得られる、従来の公式(A640−A670)によるメラニンインデックスMIを、横軸にとると共に、第1等吸収点11の530nmの波長の光と、第2等吸収点12の570nmの波長の光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の吸光度(A530、A570)から得られる、所定の倍数として「1.5」を第1吸光度A530に掛け合わせた式(1.5×A530−A570)によるメラニンインデックスMI、及び所定の倍数として「2」を第1吸光度A530に掛け合わせた式(2×A530−A570)によるメラニンインデックスMIを、縦軸にとって、これらの相関関係を検証したところ、各々の総相関係数がR2=0.9207、及びR2=0.8988となって、さらに高い相関性が認められた。
これらによって、第1等吸収点11におけるオキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンの吸光係数と、第2等吸収点12におけるオキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンの吸光係数とを、同様の値とする所定の倍数として、例えば「1.2」、「1.5」、「2」の値を用いることによって、第1等吸収点11の両ヘモグロビンの吸光係数と、第2等吸収点12の両ヘモグロビンの吸光係数とを揃えるように補正することが可能になる。またこれによって、メラニン量Cmのみに比例するメラニン指数となるメラニンインデックスMIを、精度良く得ることが可能になる。
本実施形態では、所定の倍数を掛け合わせた第1等吸収点11における両ヘモグロビンの吸光係数と、第2等吸収点12における両ヘモグロビンの吸光係数とが、同じ値となるように精度良く補正して、オキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビン両者の影響を受けることなく、メラニンインデックスMIを精度良く得ることが出来るようにするために、所定の倍数として、好ましくは「1.2」が用いられている。
本実施形態では、更に、メラニンインデックスMIと共に、皮膚に含まれるヘモグロビン量を反映するエリスマインデックスEIを用いて、肌の状態を評価する。エリスマインデックスEIは、見かけ上の吸光度から算定して求められる。本実施形態では、エリスマインデックスEIは、上述のように、ヘモグロビン量Chのインデックスである当該エリスマインデックスEIを得るための式として考案された、公知のさまざまな公式のうち、より精度良くエリスマインデックスEIを算定できると考えられる、上記の式(5)を用いて算定することができる。すなわち、メラニンによる影響を軽減させるように、エリスマインデックスは、500nm以上700nm以下の少なくとも2波長の光の見かけ上の吸光度から算定して求めるのが好ましく、560nm、543nm、576nm、510nm、及び610nmの5波長の光を皮膚に照射した際に計測される、各々の見かけ上の吸光度を用いて引き算を行なう上記の式(5)によって、エリスマインデックスEIを算定して求めるのがより好ましい。本実施形態では、算定されたエリスマインデックスEIと、上述のメラニンインデックスMIに基づいて、メラニン画像及びヘモグロビン画像を作成すると共に、作成したメラニン画像及びヘモグロビン画像が提示され、あるいは統計処理などがなされることで、肌の状態を評価できるようになっている。
また、本実施形態では、肌の状態を評価するために、ハイパースペクトラルイメージング装置を用いて、例えば人の顔の部分の肌を撮影し、撮影された顔の部分の肌の2次元画像の各画素について、メラニンインデックス及びエリスマインデックスを算定する。なお、メラニンインデックスMI及びエリスマインデックスEIを用いた肌の状態の評価は、後述するハイパースペクトラルイメージング装置により撮像される画像を介して評価する方法に限定されることなく、例えば、一般的な分光測色器(例えば、商品名:CM−2600d、コニカミノルタ社製)を用いて、肌の特定領域における肌の状態を評価する方法やシステムに採用することもできる。
ここで、人の顔の肌をハイパースペクトラルイメージング装置を用いて撮影するためのシステムとして、図4に示す肌状態評価システム1を用いることができる。図4に示す肌状態評価システム1は、被写体である例えば人の顔の部分に所定の波長の光を照射する照明装置2と、照明装置2により光が照射された顔の部分を撮像するハイパースペクトラルイメージング装置3と、ハイパースペクトラルイメージング装置3により撮像された画像の各画素について、上記の式(5)及び式(6)を用いてヘモグロビン量及びメラニン量を定量して、ヘモグロビン画像及びメラニン画像を作成すると共に、定量した各画素のヘモグロビン量及びメラニン量から、肌の状態を評価可能とする肌状態評価装置4とを含んで構成されている。
照明装置2は、被写体である例えば人の顔を、A方向から内部に臨ませることが可能な開口部20a、及びハイパースペクトラルイメージング装置3のレンズ部を、B方向から内部に臨ませることが可能なレンズ挿入口20bを有する照明ボックス20と、照明ボックス20の内部に臨ませた例えば人の顔に向けて、所定の波長の光を照射する光源(図示せず)と、照明ボックス20の内部に臨ませた状態で例えば人の顔を位置決めする顎当て部21とを含んで構成されている。
照明ボックス20は、半球状に形成されており、その内側面には、白色の梨地面加工が施されている。梨地面加工は、表面に微細で均一なざらつき加工を施したものである。内側面に梨地面加工が施されることで、照明ボックス20の内部を無光沢にすることが可能になる。また光源から照射される光の拡散性を向上させることが可能になって、被写体である例えば顔に均一な光を照射することが可能になる。光源は、照明ボックス20の内部に配され、白色LEDが好ましく用いられる。
ハイパースペクトラルイメージング装置3は、バンド数(波長分解能)が数十バンド〜数百バンドとなっており、3バンドのRGB(人の目)や、数バンド〜数十バンドのマルチスペクトルカメラと比較して、物性のスペクトル形状を、より連続的に見ることが可能なカメラとして公知のものである。またハイパースペクトラルイメージング装置3は、色(RGB)では識別できない変化を可視化したり、目に見えない現象を可視化したり、スペクトルの変化を画像として捉えたりすることで、人の目と同等又はそれ以上の色変化を認識できる機能を備えている。このようなハイパースペクトラルイメージング装置3として、例えば製品名「ハイパースペクトルカメラNH−7」(エバ・ジャパン製、解像度:131.1万画素、波長範囲:400〜1000nm、波長分解能:5nm)を用いることができる。
本実施形態では、ハイパースペクトラルイメージング装置3は、撮像時には、B方向の直線上に配置されている照明ボックス20に形成されたレンズ挿入口20bに、レンズを挿入した状態で固定される。
肌状態評価装置4は、メラニンインデックスMIやエリスマインデックスEIを算出するCPUと、メラニンインデックスMIやエリスマインデックスEIを算出するためのプログラム等が記憶される揮発性のRAMと、算出したメラニンインデックスMIやエリスマインデックスEI等を一時的に記憶可能な不揮発性のROMと、算出したメラニンインデックスMIやエリスマインデックスEI等を画像として提示するモニターと、これらを操作するためのマウスやキーボードとを含んで構成されている。肌状態評価装置4としては、例えば、汎用のパーソナルコンピュータを用いることができる。
本実施形態では、例えば、汎用のパーソナルコンピュータによる肌状態評価装置4に、公知の各種の画像解析用のプログラムが組み込まれており、組み込まれた画像解析用のプログラムにおいて、上記の式(5)や式(6)を取り込むことによって、ハイパースペクトラルイメージング装置3で撮影された、被写体である人の顔の部分の画像の各画素について、エリスマインデックスEI及びメラニンインデックスMIを算定する。また算定したエリスマインデックスEI及びメラニンインデックスMIに基づいて、肌のヘモグロビン量やメラニン量を定量すると共に、図5(a)、(b)や図5(a)、(b)に示すようなメラニン画像及びヘモグロビン画像を作成する。作成したメラニン画像及びヘモグロビン画像が提示されることで、評価者が、メラニンの色素量に由来する、シミ、そばかす、くすみ等の美白効果に影響を及ぼす色素沈着の状態や、ヘモグロビンの色素量に由来する鬱血や炎症等の状態を把握して、肌の状態を評価することができるようになっている。
すなわち、本実施形態では、複数の画素からなる肌の画像を用い、肌の画像の各画素毎又は任意の領域毎に、メラニンインデックスMIやエリスマインデックスEIを求めて、肌の状態を評価することができる。また、算定された各画素又は各領域のメラニンインデックスMI及びエリスマインデックスEIに基づいて、メラニン画像及びヘモグロビン画像を作成し、作成したメラニン画像及びヘモグロビン画像から、肌の状態を評価することができる。
また、本実施形態では、後述する実施例において記載されるように、算定された各画素のメラニンインデックスMI及び/又はエリスマインデックスEIの均一性(分散)から、肌の状態を評価することができるようになっている。
そして、上述の構成を備える本実施形態の肌状態の評価方法によれば、ヘモグロビンの酸素飽和度の相違による影響を受けないようにして、メラニンインデックスMIをさらに精度良く算定できることで、肌の状態をより一層適正に評価することが可能になる。
すなわち、本実施形態によれば、メラニンインデックスMIを、オキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルとデオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルとが交わる第1等吸収点11の波長の光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第1吸光度と、第2等吸収点12の波長の光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第2吸光度とから求める。
これによって、本実施形態によれば、ランベルト−ベールの法則に基づいて得られた上記の式(4)において、H1−H2が十分に小さく(理想的にはゼロ)、M1−M2が十分に大きな値となるようにすることが可能になるので、ヘモグロビンの酸素飽和度の相違にかかわらず、特にデオキシヘモグロビンによる影響を受けないようにして、皮膚のメラニン層mに含まれるメラニン量Cmを反映するメラニンインデックスMIを、精度良く算定することが可能になり、これによって、肌の状態をより一層適正に評価することが可能になる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明の評価方法によって肌状態が評価される肌は、人の顔の部分の肌である必要は必ずしも無く、手や足やその他の部分の肌の状態を評価する方法として、本発明を採用することもできる。また、ハイパースペクトラルイメージング装置を用いて撮影された肌の2次元画像の各画素について、メラニンインデックス及びエリスマインデックスを算定して肌の状態を評価したり、作成したメラニン画像及びヘモグロビン画像から肌の状態を評価したりする必要は必ずしも無く、その他の種々の装置やシステムを用いて、メラニンインデックスを算定して、肌の状態を評価することもできる。例えば、2以上の特定の波長の光を皮膚に照射して、その反射波を計測する機能を備える反射率計測部と、反射率計測部により得られた反射率のデータから特定領域での平均値としての皮膚の反射係数を複数求め、所定の式を用いて、前記複数の波長の反射係数からメラニンインデックスやエリスマインデックスを算定して表示する機能を備える制御算定部とからなる、簡易な構成の定量装置を用いて、本発明を実施することもできる。
以下、実施例により、本発明の肌状態の評価方法をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例の記載によって何ら制限されるものではない。
〔実施例1〕
人の肌として、被験者の腕の内側部分の肌にニコチン酸メチルを塗布して血流促進効果を得た後に、ニコチン酸メチルを塗布した被験者の腕の内側部分の肌を、上記実施形態で用いた肌状態評価システム1と同様の構成を備える肌状態評価システムを用いて撮影した。撮影した被験者の腕の内側部分の肌の2次元画像の各画素についてメラニンインデックスMIを算定して、メラニン画像を作成した。メラニンインデックスMIの算定は、第1等吸収点11の530nmの波長の光と、第2等吸収点12の570nmの分光反射画像を用い、見かけ上の第1吸光度A530と、見かけ上の第2吸光度A570とを得て、上記の式(6)により各画素毎に行った。作成したメラニン画像を図7(a)に示す。
〔実施例2〕
人の肌として、被験者の腕の内側部分の肌にUV照射を行って、3カ月経過後にメラニン沈着を得た状態で、UV照射をした被験者の腕の内側部分の肌を、上記実施形態で用いた肌状態評価システム1と同様の構成を備える肌状態評価システムを用いて撮影した。撮影した被験者の腕の内側部分の肌の2次元画像の各画素についてメラニンインデックスMIを算定して、メラニン画像を作成した。メラニンインデックスMIの算定は、実施例1と同様に、第1等吸収点11の530nmの波長の光と、第2等吸収点12の570nmの分光反射画像を用い、見かけ上の第1吸光度A530と、見かけ上の第2吸光度A570とを得て、上記の式(6)により各画素毎に行った。作成したメラニン画像を図8(a)に示す。
〔実施例3〕
人の肌として、被験者の手の中指の第1関節よりも先の部分の指腹部の肌を、第1関節と第2関節との間をテープ止血することで鬱血させた後に、被験者の手の肌を、上記実施形態で用いた肌状態評価システム1と同様の構成を備える肌状態評価システムを用いて撮影した。撮影した被験者の手の肌の2次元画像の各画素についてメラニンインデックスMIを算定して、メラニン画像を作成した。メラニンインデックスMIの算定は、実施例1及び実施例2と同様に、第1等吸収点11の530nmの波長の光と、第2等吸収点12の570nmの分光反射画像を用い、見かけ上の第1吸光度A530と、見かけ上の第2吸光度A570とを得て、上記の式(6)により各画素毎に行った。作成したメラニン画像を図9(a)に示す。
〔比較例1〕
人の肌として、被験者の腕の内側部分の肌にニコチン酸メチルを塗布して血流促進効果を得た後に、ニコチン酸メチルを塗布した被験者の腕の内側部分の肌を、上記実施形態で用いた肌状態評価システム1と同様の構成を備える肌状態評価システムを用いて撮影した。撮影した被験者の腕の内側部分の肌の2次元画像の各画素についてメラニンインデックスMIを算定して、メラニン画像を作成した。メラニンインデックスMIの算定は、620〜640nmの分光画像の平均値と、670〜690nmの分光画像の平均値を用い、これらの光が反射した際に計測される見かけ上の吸光度の平均値(Aave620~640、Aave670~690)を得て、従来の公式(Aave620~640−Aave670~690)により各画素毎に行った。作成した比較例1のメラニン画像を、図7(b)示す。
〔比較例2〕
人の肌として、被験者の腕の内側部分の肌にUV照射を行って、3カ月経過後にメラニン沈着を得た状態で、UV照射をした被験者の腕の内側部分の肌を、上記実施形態で用いた肌状態評価システム1と同様の構成を備える肌状態評価システムを用いて撮影した。撮影した被験者の腕の内側部分の肌の2次元画像の各画素についてメラニンインデックスMIを算定して、メラニン画像を作成した。メラニンインデックスMIの算定は、比較例1と同様に、620〜640nmの分光画像の平均値と、670〜690nmの分光画像の平均値を用い、これらの光が反射した際に計測される見かけ上の吸光度の平均値(Aave620~640、Aave670~690)を得て、従来の公式(Aave620~640−Aave670~690)により各画素毎に行った。作成した比較例2のメラニン画像を、図8(b)示す。
〔比較例3〕
人の肌として、被験者の手の中指の第1関節よりも先の部分の指腹部の肌を、第1関節と第2関節との間をテープ止血することで鬱血させた後に、被験者の手の肌を、上記実施形態で用いた肌状態評価システム1と同様の構成を備える肌状態評価システムを用いて撮影した。被験者の手の肌の2次元画像の各画素についてメラニンインデックスMIを算定して、メラニン画像を作成した。メラニンインデックスMIの算定は、実施例1及び実施例2と同様に、620〜640nmの分光画像の平均値と、670〜690nmの分光画像の平均値を用い、これらの光が反射した際に計測される見かけ上の吸光度の平均値(Aave620~640、Aave670~690)を得て、従来の公式(Aave620~640−Aave670~690)により各画素毎に行った。作成した比較例2のメラニン画像を、図9(b)示す。
〔参考例1〕
人の肌として、被験者の腕の内側部分の肌にニコチン酸メチルを塗布して血流促進効果を得た後に、ニコチン酸メチルを塗布した被験者の腕の内側部分の肌を、上記実施形態で用いた肌状態評価システム1と同様の構成を備える肌状態評価システムを用いて撮影した。撮影した被験者の腕の内側部分の肌の2次元画像の各画素についてエリスマインデックスEIを算定して、ヘモグロビン画像を作成した。エリスマインデックスEIの算定は、560nm、543nm、576nm、510nm、及び610nmの5波長の光を皮膚に照射した際に計測される、各々の見かけ上の吸光度を用いて引き算を行なう、下記の式(5)の公式により各画素毎に行った。作成したヘモグロビン画像を図7(c)に示す。
〔参考例2〕
人の肌として、被験者の腕の内側部分の肌にUV照射を行って、3ヶ月経過後にメラニン沈着を得た状態で、UV照射をした被験者の腕の内側部分の肌を、上記実施形態で用いた肌状態評価システム1と同様の構成を備える肌状態評価システムを用いて撮影した。撮影した腕の内側部分の肌の2次元画像の各画素についてエリスマインデックスEIを算定して、ヘモグロビン画像を作成した。エリスマインデックスEIの算定は、参考例1と同様に、560nm、543nm、576nm、510nm、及び610nmの5波長の光を皮膚に照射した際に計測される、各々の見かけ上の吸光度を用いて引き算を行なう、下記の式(5)の公式により各画素毎に行った。作成したヘモグロビン画像を図8(c)に示す。
〔参考例3〕
人の肌として、被験者の手の中指の第1関節よりも先の部分の指腹部の肌を、第1関節と第2関節との間をテープ止血することで鬱血させた後に、被験者の手の肌を、上記実施形態で用いた肌状態評価システム1と同様の構成を備える肌状態評価システムを用いて撮影した。被験者の手の肌の2次元画像の各画素についてエリスマインデックスEIを算定して、ヘモグロビン画像を作成した。エリスマインデックスEIの算定は、参考例1及び参考例2と同様に、560nm、543nm、576nm、510nm、及び610nmの5波長の光を皮膚に照射した際に計測される、各々の見かけ上の吸光度を用いて引き算を行なう、下記の式(5)の公式により各画素毎に行った。作成したヘモグロビン画像を図9(c)に示す。
実施例1、実施例2、及び実施例3のメラニン画像によれば、比較例1、比較例2、及び比較例3のメラニン画像では排除できなかった、鬱血や静脈等のデオキシヘモグロビンの色素量に由来する部分を画像から排除できていることが判明する。これによって、本発明によれば、ヘモグロビンの酸素飽和度の相違による影響を受けないようにして、メラニンインデックスMIをさらに精度良く算定できることが判明する。
また、ニコチン酸メチルを皮膚に塗布することにより血流促進効果を得た後の画像(図7(a)〜(c))では、オキシヘモグロビンの増加は、ヘモグロビン画像(図7(c))にのみ反映されており、メラニン画像(図7(a)、(b))には反映されていないことが判明する。
さらに、UV照射を行って、3ヶ月経過後にメラニン沈着を得た状態の画像(図8(a)〜(c))では、メラニンの増加は、ヘモグロビン画像(図8(c))には反映されておらず、メラニン画像(図8(a)、(b))にのみ反映されていることや、従来の公式による比較例2のメラニン画像(図8(b))では、白矢印で示すデオキシヘモグロビンの色素量に由来する静脈の部分が映り込んでいるが、本発明に係る実施例2のメラニン画像(図8(a))では、このようなデオキシヘモグロビンの色素量に由来する部分が排除できていることが判明する。
さらにまた、第1関節と第2関節との間をテープ止血することで鬱血させた後の画像(図9(a)〜(c))では、比較例3のメラニン画像(図9(b))に、白矢印で示す鬱血によるデオキシヘモグロビンの増加部分が映り込んでいるが、本発明に係る実施例3のメラニン画像(図9(a))では、このようなデオキシヘモグロビンの増加部分が排除できていることが判明する。
〔実施例4〕
〔メラニンインデックスMI及びエリスマインデックスEIの均一性(分散)による肌の状態の評価〕
実施例4として、算定された各画素のメラニンインデックスMI及びエリスマインデックスEIの均一性(分散)から、肌の状態を評価した。すなわち、被験者80名の中から、3名の専門評価者の目視評価によって、理想肌色の被験者と、理想肌色ではない被験者とを選抜すると共に、各被験者について解析された、額の部分の所定の領域の画像における、各画素のエリスマインデックスEI及びメラニンインデックスMIの平均を、図10(a)に示すように、エリスマインデックスEIの平均を横軸に、メラニンインデックスMIの平均を縦軸に取ってプロットした。また各画素のエリスマインデックスEI及びメラニンインデックスMIの分散を、図10(b)に示すように、エリスマインデックスEIの分散を横軸に、メラニンインデックスMIの分散を縦軸に取ってプロットする。なお、図10(a)、(b)において、黒で塗り潰した四角は、目視評価によって理想肌色であるとされた複数の被験者の平均及び分散を示すものであり、白抜きの四角は、目視評価によって理想肌色ではないとされた複数の被験者の平均及び分散を示すものである。
〔比較例4〕
比較例4として、被験者80名の中から、3名の専門評価者の目視評価によって、理想肌色の被験者と、理想肌色ではない被験者とを選抜すると共に、その他の被験者を含めた80名の被験者について、分光測色器(CM−2600d、コニカミノルタ社製)を用いて肌色を評価した。理想肌色の被験者と理想肌色ではない被験者は実施例4と同一人物である。分光測色器による肌色の評価は、各被験者の額、頬、口元の計測値の平均値を、色相(hue)を横軸に、明るさ(L*)を縦軸に取ってプロットすることにより行った。分光測色器による肌色の評価結果を図11に示す。なお、図11において、黒で塗り潰した四角は、理想肌色であるとされた被験者を示すものであり、白抜きの四角は、理想肌色ではないとされた複数の被験者を示すものであり、×印は、その他の被験者を示すものである。図11の評価結果では、理想肌色の被験者と理想肌色ではない被験者に関して、分光測色器による肌色の評価は、同等の値となっている。
一方、図10(a)、(b)に示される、エリスマインデックスEI及びメラニンインデックスMIの平均、均一性(分散)によれば、同等の肌色平均値を持つ理想肌色の被験者と理想肌色ではない被験者に関して、エリスマインデックスEI及びメラニンインデックスMIの平均値は同等であるが、均一性(分散)においては、理想肌色の被験者と理想肌色ではない被験者が上手く分離できていることが判明する。このようなことから、肌色の好ましさには、エリスマインデックスEI及びメラニンインデックスMIの均一性が重要であることや、エリスマインデックスEIのむら、メラニンインデックスMIのむら、どちらがばらついているか等によって、肌色を好ましく見せていない、色素むらのタイプ分けをすることが可能であり、タイプに応じて対応方法が異なることが判明する。これらによって、肌の状態を評価することが可能になる。
〔実施例5〕
〔色むらの解析〕
実施例5として、色むらについて解析した。被験者80名の中から、3名の専門評価者の目視スコア平均によって分類された、肌に細かい色むらのないトップ6名の被験者、及び肌に細かい色むらのあるトップ5名の被験者について、図10(b)と同様に、額の部分の所定の領域における、各画素のエリスマインデックスEI及びメラニンインデックスMIの分散値を、図12に示すように、エリスマインデックスEIの分散値を横軸に、メラニンインデックスMIの分散値を縦軸に取ってプロットした。図12において、黒で塗り潰した四角は、細かい色むらがないと評価された被験者のもの分散値を示すものであり、白抜きの四角は、細かい色むらがあると評価された被験者の分散値を示すものである。
図12のチャートによれば、色むらが顕著な人の中には、メラニンのばらつきが高い人や、ヘモグロビンのばらつきの高い人が存在することが判明する。またこれによって、肌色の質感を評価することが可能になる。
1 肌状態評価システム
2 照明装置
3 ハイパースペクトラルイメージング装置
4 肌状態評価装置(パーソナルコンピュータ)
11 第1等吸収点
12 第2等吸収点
13 第3等吸収点
20 照明ボックス
20a 開口部
20b レンズ挿入口
21 顎当て部
MI メラニンインデックス
EI エリスマインデックス
m メラニン層
h ヘモグロビン層
d 真皮層

Claims (6)

  1. 肌の状態を評価するために、皮膚に含まれるメラニン量を反映するメラニンインデックスを求めるメラニンインデックスの算定方法であって、
    該メラニンインデックスを、オキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルとデオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルとが交わる第1等吸収点の波長の光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第1吸光度と、第2等吸収点の波長の光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第2吸光度とから求め、
    且つ複数の画素からなる肌の画像を用い、該画像の各画素毎又は任意の領域毎に、前記メラニンインデックスを求めるメラニンインデックスの算定方法
  2. 前記第1等吸収点におけるオキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンの吸光係数と、前記第2等吸収点におけるオキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンの吸光係数とを、同様の値とする所定の倍数を、前記第1吸光度又は前記第2吸光度に掛け合わせて、前記第1吸光度と前記第2吸光度との差を算定することで、前記メラニンインデックスを求める請求項1記載のメラニンインデックスの算定方法
  3. 前記第1等吸収点の波長と前記第2等吸収点の波長との差は、10〜200nmである請求項1又は2記載のメラニンインデックスの算定方法
  4. 肌の状態を評価するために、前記メラニンインデックスと共に、皮膚に含まれるヘモグロビン量を反映するエリスマインデックスを、見かけ上の吸光度から算定して求める請求項1〜3のいずれか1項記載のメラニンインデックスの算定方法
  5. 算定された各画素の前記メラニンインデックス及び前記エリスマインデックスに基づいて、メラニン画像及びヘモグロビン画像を作成する請求項4記載のメラニンインデックスの算定方法。
  6. 算定された各画素の前記メラニンインデックス及び/又は前記エリスマインデックスの均一性を評価する請求項5記載のメラニンインデックスの算定方法
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