JP6183030B2 - 皮膚色素濃度測定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、皮膚の吸光度スペクトルから皮膚に含まれる色素の濃度を測定する方法に関する。
皮膚の見た目の色は、皮膚に含まれる色素の種類と濃度に依存する。そこで、従来より皮膚の色の観測に基づいて皮膚に含まれるメラニン、酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビンの濃度を測定する方法が提案されている。
例えば、特許文献1にはランベルト−ベールの法則を用いた方法が開示されている。ここでは、皮膚の吸光度スペクトルが皮膚に含まれるメラニン、酸化ヘモグロビン及び還元ヘモグロビンの吸光度スペクトル及び定数項の線形結合であり、各色素の吸光度スペクトルはそれぞれの吸光係数スペクトルと濃度の積で表せるとのモデルをたて、皮膚のある領域に光を入射させると共に、同領域からの反射光を受光することにより平均値として得た所謂一点計測の皮膚の吸光度スペクトルを、メラニン、酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビンの吸光度スペクトルを用いて重回帰分析することにより、皮膚中のメラニン濃度、酸化ヘモグロビン濃度、又は還元ヘモグロビン濃度を求めている。
しかしながら、このモデルで用いている吸光係数スペクトルは、無散乱透過光に対する吸光を表すものであり、皮膚を構成する表皮又は真皮における散乱や、表皮、真皮、皮下脂肪の各界面での散乱が考慮されていないため、色素濃度の測定精度が低い。
これに対し、皮膚における散乱を考慮したモンテカルロシミュレーションモデルで補われた重回帰分析法が提案されている(非特許文献1)。この分析法では、まず、モンテカルロシミュレーションモデルによる吸光度スペクトルを目的変数とし、メラニン、酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビンの吸光係数スペクトルεm(λ)、εoh(λ)、εdh(λ)を説明変数として重回帰分析することにより、次式(1')aの回帰パラメータの切片a0、メラニンの回帰パラメータam、酸化ヘモグロビンの回帰パラメータaoh、還元ヘモグロビンの回帰パラメータadhを得る。
これを種々の色素濃度の組み合せに対して行い、各色素濃度と各回帰パラメータとを対応付け、多項式近似により回帰パラメータの定数項a0、メラニンの回帰パラメータam、及び総ヘモグロビンの回帰パラメータath(但し、ath=aoh+adh)と、メラニン濃度Cm及び総ヘモグロビン濃度Cthとの関係式Cm=Fm(a0,am,ath)、Cth=Fth(a0,am,ath)を求めておく。
一方、任意の皮膚の吸光度スペクトルを、メラニン、酸化ヘモグロビン及び還元ヘモグロビンの吸光係数スペクトルεm(λ)、εoh(λ)及びεdh(λ)を説明変数として重回帰分析することにより回帰パラメータの定数項a0、メラニン吸光係数の回帰パラメータam、及び総ヘモグロビン吸光係数の回帰パラメータathを得、このa0、am、athと前述の関係式Cm=Fm(a0,am,ath)、Cth=Fth(a0,am,ath)とからメラニン濃度Cmと総ヘモグロビン濃度Cthを得る。
このモンテカルロシミュレーションモデルを用いた色素濃度測定方法では、皮膚の吸光度スペクトルについて散乱の影響が考慮されているので、特許文献1に記載の色素濃度の測定方法に比して測定精度が高い。しかしながら、モンテカルロシミュレーションモデルを用いた色素濃度測定方法を、所謂一点計測の吸光度スペクトル測定でなく、皮膚画像を用いた皮膚の色素濃度の測定方法に適用すると、肌の凹凸や照明ムラなどにより皮膚画像内に形成される陰影の影響により、色素濃度を正確に測定することができない。
特開平11−299743号公報
Journal of Biomedical Optics,9(4),700-710 (2004)
本発明者は、モンテカルロシミュレーションモデルを用いた皮膚の色素濃度測定を、皮膚画像を用いて行った場合に生じる陰影の影響の問題に対し、重回帰式(1')aの定数項aoを使用することなく、回帰パラメータと色素濃度との関係式をたてることを検討した。これは、重回帰式(1')aの定数項aoは、波長依存性がないことから、画像に陰影ができた場合に、陰影情報がこの定数項aoに集約されると考えられるからである。
重回帰式(1')aの定数項aoを使用することなく回帰パラメータと色素濃度との関係式を求める具体的手法としては、重回帰式(1')aで得られる定数項a0、メラニンの回帰パラメータam、酸化ヘモグロビンの回帰パラメータaoh、還元ヘモグロビンの回帰パラメータadhのうち、メラニンの回帰パラメータam、酸化ヘモグロビンの回帰パラメータaoh、及び還元ヘモグロビンの回帰パラメータadhから、メラニン濃度Cm、酸化ヘモグロビン濃度Coh及び還元ヘモグロビン濃度Cdhを得る次の関係式
m=Fm(am,aoh,adh)、Coh=Foh(am,aoh,adh)、Cdh=Foh(am,aoh,adh)
を、多項式近似などにより求めればよい。
重回帰式(1')aの定数項aoを使用しない上述の方法は、陰影の影響を除去することができるが、測定精度の低下を伴うこともわかった。そこで、本発明者は測定精度を向上させるため、吸光度スペクトルを目的変数とする重回帰分析の説明変数として、従前の吸光係数スペクトルに代えて、皮膚における反射光の見かけの吸光係数スペクトル(以下、実効吸光係数スペクトルともいう)を使用すること、そしてこの実効吸光係数スペクトルとして、吸光度の主成分分析により得られる主成分を使用することを検討した。即ち、吸光係数スペクトルは散乱の影響を含まないが、吸光度スペクトルの主成分分析により得られる主成分を実効吸光係数スペクトルとすると、実効吸光係数スペクトルには散乱の影響を反映させることができるので、回帰パラメータの説明率が改善し、色素濃度の測定精度を向上させることができる。
しかしながら、吸光係数スペクトルに代えて実効吸光係数スペクトルを用いても、十分な測定精度を得ることができなかった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、予め、皮膚のシミュレーションモデルで算出した吸光度スペクトルを重回帰分析することにより回帰パラメータを算出し、その回帰パラメータと色素濃度との関係式を求め、任意の皮膚の吸光度スペクトルから皮膚中の色素濃度を測定するにあたり、色素濃度の測定精度を十分に向上させることに関する。
本発明者は、複数の色素を含む皮膚のシミュレーションモデルの吸光度スペクトルを重回帰分析することにより回帰パラメータを求め、その回帰パラメータと色素濃度との関係式を算出し、その関係式を用いて実際の吸光度スペクトルから皮膚中の色素濃度を測定する従前の方法に対し、(i)重回帰式の定数項aoを使用しないことにより陰影の影響を除去できること、(ii)この場合の測定精度の低下を抑制するために重回帰分析の説明変数として、散乱の影響を含まない吸光係数スペクトルに代えて、散乱の影響が反映された実効吸光係数スペクトルを使用することが有効であり、この実効吸光係数スペクトルとして、吸光度スペクトルの主成分分析により得られる主成分を使用すると、回帰パラメータの説明率が改善し、任意の色素濃度の予測精度が高まること、(iii)さらに、皮膚の第1、第2の色素として、例えば、総ヘモグロビンとメラニンの濃度を求めるにあたり、総ヘモグロビンの回帰パラメータathとメラニンの回帰パラメータamとを直交座標athmにプロットすると、総ヘモグロビン濃度が一定の点を結んだ線と、メラニン濃度が一定の点を結んだ線とが直交しておらず、これらが直交するようにamth平面をbmth平面に座標変換し、座標変換後のこれらの回帰パラメータの関係図に基づいて総ヘモグロビン濃度を算出すると、総ヘモグロビン濃度やメラニン濃度の測定精度が著しく向上することを見出し、実効吸光係数スペクトルを使用し、かつ座標変換の手法を用いる本発明を完成させた。
即ち、本発明は、皮膚の色素濃度を変化させた複数の吸光度スペクトルを主成分分析し、得られた主成分から皮膚の色素の実効吸光係数スペクトルεi'(λ)(色素の種類をNとしてi=1,2,…,N、以下同じ)を定め、
複数の色素を含む皮膚のシミュレーションモデルで、各色素濃度Ci(i=1,2,…,N)の異なる組み合わせの複数の吸光度スペクトルを、各色素の実効吸光係数スペクトルεi'(λ)(i=1,2,…,N)を説明変数として重回帰分析することにより、複数の吸光度スペクトルごとに次式(1)の重回帰式を得、
式(1)の回帰パラメータai(i=1,2,…,N)から第1、第2の色素に対応する第1、第2の回帰パラメータax、ayを求め、第1、第2の回帰パラメータax、ayを直交座標のayx平面に表し、それをbyx平面に座標変換した場合に、座標変換後のbyx平面において第1の色素濃度Cxが一定の点を結んだ線とbx=0の直線とが平行となり、第2の色素濃度Cyが一定の点を結んだ線とby=0の直線とが平行となる座標変換の関係式(3)を取得し、
(bx,by)=h(ax,ay,・・・) (3)
座標変換後の回帰パラメータbxと第1の色素濃度Cxとの関係式(4)xを取得し、
x=gx(bx) (4)x
一方、被験者の皮膚の吸光度スペクトルを取得し、その吸光度スペクトルを、各色素の実効吸光係数スペクトルεi'(λ)(i=1,2,…,N)を説明変数として重回帰分析することにより式(1)と同様の重回帰式を得、その回帰パラメータai(i=1,2,…,N)から第1、第2の色素に対応する第1、第2の回帰パラメータax、ayを求め、第1、第2の回帰パラメータax、ayを前記式(3)によりbyx平面に座標変換し、座標変換後の第1の回帰パラメータから前記式(4)xにより被験者の皮膚の第1の色素の色素濃度を求める皮膚色素濃度測定方法を提供する。
本発明では、皮膚のシミュレーションモデルを用いて複数の色素を含む皮膚の吸光度スペクトルを求め、それを重回帰分析することにより回帰パラメータを求め、その回帰パラメータと色素濃度の関係を用いて実際の吸光度スペクトルから皮膚中の色素濃度を測定するにあたり、重回帰分析の説明変数として実効吸光係数スペクトルを使用し、この実効吸光係数スペクトルとして、吸光度スペクトルを主成分分析することにより得られた主成分を使用する。
皮膚の吸光度スペクトルを求めるためには、照度を正確に見積もる必要がある。しかし、所謂一点計測では照度の見積もりが可能であるが、画像から吸光度スペクトルを求める場合には、対象の形状などの影響で正確に見積もることは困難である。そして生じた照度の誤差は、吸光度スペクトルの重回帰分析においては定数項a0に伝播する。本発明によると、吸光度スペクトルの重回帰分析で得た回帰パラメータai(i=1,2,…,N)から色素濃度を求める際に、定数項a0を用いて多項式近似を行うことなく、第1、第2の回帰パラメータax、ayを座標変換し、座標変換後の第1の回帰パラメータbxから第1の色素の濃度を求める。このため、画像から求めた吸光度スペクトルから色素濃度を求める場合でも、照度の誤差の影響を受けない。
また、従前のランベルト−ベールの法則に基づいて得られた吸光係数スペクトルには、被験物質中での散乱の影響が考慮されていないが、本発明では、吸光度スペクトルの主成分分析から主成分を求め、それを実効吸光係数スペクトルとして使用するため、実効吸光係数スペクトルを、散乱の影響を反映したものとすることができる。したがって、本発明によれば、散乱の影響を含まない従前の吸光係数スペクトルを使用する場合に比して、回帰パラメータの説明率が改善し、色素濃度の推定精度を高めることができ、また、色素濃度から吸光度スペクトルないし反射スペクトルを推定する際の推定精度も高めることができる。
さらに、本発明では、皮膚の吸光度スペクトルの重回帰分析により得られた回帰パラメータから、第1、第2の色素に対応する回帰パラメータax、ayを求め、それらを直交座標のayx平面にプロットした場合に、第1の色素濃度が一定の点を結んだ線が第1の回帰パラメータがゼロの座標軸と平行となり、第2の色素濃度が一定の点を結んだ線が第2の回帰パラメータがゼロの座標軸と平行となるようにayx平面をbyx平面に座標変換し、座標変換後の第1の回帰パラメータbxと第1の色素濃度との関係を求める。このため、色素濃度の推定精度を広い濃度範囲において改善することができる。
よって、本発明によれば、個々の被験者の吸光度スペクトルから、皮膚のメラニン、酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビン、総ヘモグロビン等の各色素濃度を正確に求めることができる。これにより皮膚における酸素の消費状態、血行状態などを推定することが可能となる。さらに、化粧料を適用した皮膚について、本発明の方法により皮膚中の色素濃度を経時的に測定することにより、化粧料の有効性の評価を行うことが可能となる。また、本発明は、店頭での美容のための肌診断などでも有用となる。
図1Aは、実施例の方法の概略工程図である。 図1Bは実施例の方法の概略工程図である。 図1Cは実施例の方法の概略工程図である。 図2は、実施例で使用する皮膚のシミュレーションモデルの模式図である。 図3Aは、工程1(1-2)で得られた吸光度スペクトルの一例である。 図3Bは、吸光係数スペクトルと実効吸光係数スペクトルとの比較図である。 図4は、実効吸光係数スペクトルへの波長の影響を示す模式図である。 図5は、実効吸光係数スペクトルへ吸光係数スペクトル自身が及ぼす影響を示す模式図である。 図6は、総ヘモグロビンの回帰パラメータathとメラニンの回帰パラメータamとの関係図である。 図7は、総ヘモグロビンの回帰パラメータb'thとメラニンの回帰パラメータb'mとの関係図である。 図8は、総ヘモグロビンの回帰パラメータb''thとメラニンの回帰パラメータb''mとの関係図である。 図9は、総ヘモグロビンの回帰パラメータbthとメラニンの回帰パラメータbmとの関係図である。 図10は、座標変換後の総ヘモグロビンの回帰パラメータbthと総ヘモグロビン濃度Cthとの関係図である。 図11は、座標変換後のメラニンの回帰パラメータbmとメラニン濃度Cmとの関係図である。 図12は、被験者の皮膚の内部反射光画像から皮膚中の色素濃度を求めるシステムの一例である。 図13は、試験例1及び2における分光反射率の推定値と分光反射率の実測値のグラフである。 図14は、白色光による反射率画像及び回帰パラメータから作成した反射率画像である。 図15は、実施例1におけるメラニン濃度又はヘモグロビン濃度と、これらの推定値との関係図である。 図16は、実施例2におけるメラニン濃度又はヘモグロビン濃度と、これらの推定値との関係図である。 図17は、比較例1におけるメラニン濃度又はヘモグロビン濃度と、これらの推定値との関係図である。 図18は、比較例2におけるメラニン濃度又はヘモグロビン濃度と、これらの推定値との関係図である。 図19は、比較例3におけるメラニン濃度又はヘモグロビン濃度と、これらの推定値との関係図である。
以下、図面に基づき、本発明を詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は
同等の構成要素を表している。
図1A、図1B及び図1Cは、本発明の一実施例の方法の概略工程図である。
本発明の皮膚色素濃度測定方法では、被験者の皮膚の吸光度スペクトルA(λ)から被験者の皮膚中の色素濃度を精確に求められるようにするために、まず、皮膚における各色素の実効吸光係数スペクトルεi'(λ)を求める(工程1)。
従来、非特許文献1に記載されているように、吸光度スペクトルを目的変数とし、メラニン、酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビンの吸光係数スペクトルεm(λ)、εoh(λ)、εdh(λ)を説明変数とする重回帰分析により、回帰式(1')a の回帰パラメータam、aoh、adh及びその定数項aoを求めておき、任意の吸光度スペクトルからメラニン濃度、酸化ヘモグロビン濃度及び還元ヘモグロビン濃度を求める方法が知られている。
この従来法では、メラニン、酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビンの吸光係数スペクトルεm(λ)、εoh(λ)、εdh(λ)として文献値が使用される。これらの吸光係数スペクトルは、例えば生理食塩水に吸光係数スペクトルを求めたい色素を分散させ、その透過率スペクトルを分光器で計測し、吸光度スペクトルに変換した後、光路長と色素濃度を除することで得られる。
しかしながら、実際の皮膚では光の散乱が起こるため、散乱の影響を含まない吸光係数スペクトルεm(λ)、εoh(λ)、εdh(λ)と、皮膚における見かけの吸光係数スペクトルとは一致しない。両者が一致しない理由としては、まず、同じ皮膚に波長の異なる光を入射させ、その反射光を観察した場合に、図4の模式図に示すように、長波長側の光は短波長側の光よりも散乱を受けにくいことにより皮膚の深くにまで到達して散乱するため、色素で吸収される割合が高くなることがあげられる。
例えば、長波長側の光は真皮に到達し、短波長側の光は真皮に到達しない場合には、長波長側の光は真皮で酸化及び還元ヘモグロビンによって吸収されるのに対し、短波長側の光は真皮に到達しないことから酸化及び還元ヘモグロビンで吸収されない。このような場合、長波長側では吸収を受けるため酸化及び還元ヘモグロビンの見かけの吸光係数は有限の値を取るのに対して、短波長側では吸収を受けないため酸化及び還元ヘモグロビンの見かけの吸光係数は0となる。
見かけの吸光係数スペクトルと散乱の影響を含まない吸光係数スペクトルの不一致は、
吸光係数の値そのものによっても生じる。例えば、図5に示すように散乱程度が同じで吸光係数のみ異なる2種の皮膚モデルを考える。光は、光路長が長くなるほど吸収されやすくなるが、その程度は吸光係数が大きいほど強くなる。いいかえると、吸光係数が大きいと長い光路を経由する光が選択的に吸収され、その分平均的な光路長は短くなる。そして、光路長が短くなることで、実際の吸収は吸光係数が小さい値のときの吸収から想定されるほどは起こらない。つまり、見かけの吸光係数スペクトルは、散乱の影響を含まない吸光係数スペクトルと比較すると、変化が小さくなる。
このように、見かけの吸光係数は、波長が長いほど、また、吸光係数が小さいほど、相対的に光路長が長くなるために大きくなり、散乱の影響を含まない吸光係数スペクトルとの不一致が生じる。この影響は、色素濃度推定において陰影の影響を除くため、吸光度スペクトルの重回帰分析により得た回帰パラメータから色素濃度を求める関係式において、定数項aを除いたときに顕著に現れ、推定精度が悪化する。そこで、本発明では、従前の吸光係数スペクトルに代えて、皮膚内部での散乱を踏まえた見かけの吸光係数として、実効吸光係数スペクトルを使用する。
各色素の実効吸光係数スペクトルεi'(λ)は、次のようにして求めることができる。まず、皮膚の色素濃度を変化させた複数の吸光度スペクトルを求め、それを主成分分析する。そして、得られた主成分から各色素の実効吸光係数スペクトルεi'(λ)を定める(図1A、工程1)。
より具体的には、例えば、散乱の影響が考慮されている皮膚のシミュレーションモデルにおいて、色素ごとに濃度を変えた分光反射率R(λ)を取得し(図1A、工程1(1-1))、分光反射率R(λ)から吸光度スペクトルA(λ)を求め(図1A、工程1(1-2))、吸光度スペクトルA(λ)を主成分分析して得られる主成分を各色素の実効吸光係数スペクトルεi'(λ)とする(図1A、工程1(1-3))。
散乱の影響が考慮されている皮膚のシミュレーションモデルとしては、例えば、モンテカルロシミュレーションモデル(L.-H. Wang, S.L. Jacques, and L.-Q.Zheng,Computer Methods and Programs in Biomedicine 47, 131-146 (1995).)を使用することができる。このシミュレーションモデルでは、図2に示す皮膚の模式図のように、皮膚中の色素として表皮にメラニン、真皮に酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンを考える。色素ごとに濃度を変えた吸光度スペクトルとしては、例えば、まず、図3Aに示すように、(i)メラニン濃度Cm、還元ヘモグロビン濃度Cdhをゼロとし、酸化ヘモグロビン濃度Cohを種々変化させたときの分光反射率R(λ)を求め、
吸光度スペクトルA(λ)=log(1/R(λ))
により、分光反射率R(λ)を吸光度スペクトルA(λ)に変換する。同様に、(ii)メラニン濃度Cm、酸化ヘモグロビン濃度Cohをゼロとし、還元ヘモグロビン濃度Cdhを種々変化させたときの分光反射率R(λ)を求め、吸光度スペクトルA(λ)に変換し、(iii)酸化ヘモグロビン濃度Coh、還元ヘモグロビン濃度Cdhをゼロとし、メラニン濃度Cmを種々変化させたときの分光反射率R(λ)を求め、吸光度スペクトルA(λ)に変換する。なお、図3Aの各グラフ中の各線は下から濃度の低い順になっている。
ここで、皮膚のモンテカルロシミュレーションモデルは、コンピュータを用いて計算上多数の光を皮膚に入射させ、各光を実効散乱係数と吸収係数に従った確率で散乱、吸収させ、再び出てきた光の入射させた光の数に対する割合を反射率とする皮膚モデルである。皮膚中の色素として、メラニン、酸化ヘモグロビン及び還元ヘモグロビンを考える場合、実効散乱係数スペクトル(μs'(λ))と、メラニン、酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビンの各色素の吸光係数スペクトルεm(λ)、εoh(λ)、εdh(λ)と、各色素の濃度Cm、Coh、Cdhから分光反射率R(λ)を求めることが可能となる。
より具体的には、この皮膚モデルにおいて、
表皮の吸収係数は、Cm×εm(λ) で表され、
真皮の吸収係数は、Coh×εoh(λ)+Cdh×εdh(λ) で表される。
実効散乱係数スペクトル(μs'(λ))や各色素の吸光係数スペクトルεm(λ)、εoh(λ)、εdh(λ)は文献値を用いることができることから、任意に各色素の濃度Cm、Coh、Cdhを設定することにより、設定した色素濃度での分光反射率R(λ)を求めることができる。
モンテカルロシミュレーションで使用する実効散乱係数スペクトル(μs'(λ))と各色素の吸光係数スペクトルεm(λ)、εoh(λ)、εdh(λ)としては、以下の文献値を使用することができる。
IEEE Trans.Biomed.Eng.36(1989) 1146-1154
http://omlc.ogi.edu/news/jan98/skinoptics.html
http://omlc.ogi.edu/spectra/
SPIE Proc. 3252(1998) 70-82
J.Invest Dermatol 77,1(1981) 13-19
また、モンテカルロシミュレーションモデルで皮膚の分光反射率を求める場合、皮膚モデルとして、表皮、真皮、及び脂肪層が順次積層された皮膚構造を設定することが好ましい。表皮、真皮の2層のモデルも取りうるが、それに脂肪層を加えた方が、実際の皮膚構造に近く、また計算上、以下に述べるような利点もある。皮膚表面から白色光を入射させた場合に、長波長ほど表皮及び真皮を透過しやすいので、皮膚モデルで脂肪層を設定しないと、長波長は真皮を透過し、その分、反射光として観察されなくなる光が多くなり、皮膚内で波長依存性のある吸収がおきているようにシミュレーションされてしまう。これに対し、皮膚モデルで脂肪層を設定すると、その脂肪層に色素が無い場合でも、真皮を透過した光が脂肪層で反射されるので、皮膚内で波長依存性の吸収がおきているかのようなシミュレーションがされることを防止することができる。
上記(i)の酸化ヘモグロビン濃度を種々変化させた分光反射率R(λ)から吸光度スペクトルA(λ)を得た後は、その吸光度スペクトルA(λ)について主成分分析を行い、得られた第1主成分を酸化ヘモグロビンの実効吸光係数スペクトルε'oh(λ)とする(図1Aの工程1(1-3))。同様に、(ii)の分光反射率R(λ)から変換した吸光度スペクトルA(λ)から還元ヘモグロビンの実効吸光係数スペクトルε'dh(λ)を得、(iii)の分光反射率R(λ)から変換した吸光度スペクトルA(λ)からメラニンの実効吸光係数スペクトルε'm(λ)を得る。こうして得られた各色素の実効吸光係数スペクトルを図3Bに示す。同図には、比較のために吸光係数スペクトルも示す。なお、両者を比較するために、各スペクトルに対して標準化(平均値を0、分散を1とするアフィン変換)を行っている。
図3Bから、酸化ヘモグロビンの実効吸光係数スペクトルは、相対的に吸光係数スペクトルよりも長波長側で大きくなり、また、スペクトルのピーク付近で小さくなっていることがわかる。また、還元ヘモグロビンの実効吸収係数スペクトルも、相対的に吸光係数スペクトルよりも長波長側で大きくなっていることがわかる。
なお、上述のように、皮膚の色素ごとに濃度を変化させた吸光度スペクトルの主成分分析により各色素の実効吸光係数スペクトルεi'(λ)を得る方法は、重回帰分析の段階で特定の光路長を仮定しない点で、非特許文献1の解析方法と大きく異なる。
また、各色素の実効吸光係数スペクトルεi'(λ)を得るために使用する複数の吸光度スペクトルとしては、上述のように、特定の色素の濃度を変えるときに、それ以外の色素の濃度をゼロとした複数の吸光度スペクトルを使用してもよい。または、それ以外の色素の濃度をゼロ以外で一定とした複数の吸光度スペクトルを使用してもよい。
また、例えば、メラニン、還元ヘモグロビン、酸化ヘモグロビンの濃度を同時に変化させて複数の吸光度スペクトルを得、それを主成分分析し、3次までの主成分を各色素の実効吸光係数スペクトルεi'(λ)に対応させてもよい。この場合、図1Aの工程1で、各色素の実効吸光係数スペクトルεi'(λ)を得るために使用する吸光度スペクトルとして、後述する図1Aの工程2で算出した吸光度スペクトルを使用することができる。
また、ここで使用する皮膚のシミュレーションモデルとしては、色素濃度から分光反射率を算出することができ、また、散乱の影響が考慮されているものであればよく、モンテカルロシミュレーションモデルの他に、例えば、クベルカ-ムンクの式 (Kubelka-Munk formula)、Adding-Doubling法 (Adding-Doubling method)、拡散理論 (Diffusion theory)、擬似皮膚を使った実測値に基づくモデル等も使用することができる。また、皮膚の血流状態や日焼け状態などを変化させて皮膚の吸光度スペクトルを実測しても良い。現象記述の正確さと得られる複数のスペクトル間との整合性の高さからの点からは、モンテカルロシミュレーションモデルを使用することが好ましい。
また、得られた実効吸光係数スペクトルに対して、ここでゼロ点の移動やスペクトルの形の拡大/縮小などを行っても最終的な結果は影響を受けないので、扱う数字の桁数を揃えるためなどの理由から、標準化(平均値を0、分散を1とするアフィン変換)などを行っても構わない。
一方、複数の色素を含む皮膚のシミュレーションモデルを用いて、皮膚の吸光度スペクトルを取得する(図1A、工程2)。この場合、吸光度スペクトルは、各色素の濃度Ci(i=1,2,…,N)の組み合わせが異なる複数の場合について求める。ここで吸光度スペクトルをモンテカルロシミュレーションモデルにより算出する場合、その算出には、各色素の吸光係数スペクトルεi(λ)を使用する。
より具体的には、例えば皮膚中の色素として、メラニン、酸化ヘモグロビン及び還元ヘモグロビンを考える場合に、上記工程2においてモンテカルロシミュレーションモデルで各色素の吸光係数スペクトルεi (λ)を使用して皮膚の分光反射率R(λ)を求め、それを次式により吸光度スペクトルA(λ)に変換する。
吸光度スペクトルA(λ)=log(1/R(λ))
この工程2で使用する皮膚のシミュレーションモデルは、必ずしも前述の工程1で使用する皮膚のシミュレーションモデルと同一のものでなくてもよいが、実用的には、同一のものとすることが好ましい。より具体的には、工程1でモンテカルロシミュレーションモデルを使用した場合に、工程2で使用するシミュレーションモデルとしては、モンテカルロシミュレーションモデルに限らず、例えば、クベルカ-ムンクの式 (Kubelka-Munk formula)、Adding-Doubling法 (Adding-Doubling method)、拡散理論 (Diffusion theory)、擬似皮膚を使った実測値に基づくモデルなどを使用してもよい。現象記述の正確さと得られる複数のスペクトル間との整合性の高さから、モンテカルロシミュレーションに基づくモデルが好ましい。
また、吸光度スペクトルをモンテカルロシミュレーションモデルにより算出する場合、この工程2においても、皮膚モデルとしては、表皮、真皮、及び脂肪層が順次積層された皮膚構造を設定することが好ましい。
次に、複数の吸光度スペクトルA(λ)を、各色素の実効吸光係数スペクトルεi'(λ)(i=1,2,…,N)を説明変数として重回帰分析することにより式(1)の重回帰式を得る(図1A、工程3)。
(式中、a0は定数項、ai(i=1,2,…,N)は回帰パラメータである)
そして、濃度を測定しようとする第1の色素の回帰パラメータを第1の回帰パラメータaxとし、他の任意の色素の回帰パラメータを第2の回帰パラメータayとし、第1の回帰パラメータと第2の回帰パラメータを、重回帰分析により得られた回帰パラメータai(i=1,2,…,N)を用いて表す(図1A、工程4)。この場合、総ヘモグロビン等の色素を第1の色素とすると、本発明の意義が大きい。
以上の工程3及び工程4をより具体的に説明すると、まず、皮膚中の色素として、メラニン、酸化ヘモグロビン及び還元ヘモグロビンを考える場合に、皮膚のシミュレーションモデルに基づく吸光度スペクトルA(λ)を、メラニンの実効吸光係数スペクトルεm'(λ)、酸化ヘモグロビンの実効吸光係数スペクトルεoh'(λ)及び還元ヘモグロビンの実効吸光係数スペクトルεdh'(λ)を説明変数として重回帰分析して以下の重回帰式(1)aを得る(図1A、工程3)。
ここで、総ヘモグロビンを第1の色素とし、メラニンを第2の色素とすると、総ヘモグロビンに対応する回帰パラメータathは、
th=aoh+adh
で表される(図1A、工程4)。
また、ヘモグロビンの酸素飽和度を、工程3で得た複数の吸光度スペクトルの回帰パラメータai(i=1,2,…,N)から算出しておく(図1A、工程4)。
即ち、酸素飽和度CStO2は次式
StO2=aStO2=aoh/(aoh+adh) (2)
で表される。
なお、このように酸素飽和度CStO2を求める場合、酸化ヘモグロビンの回帰パラメータaohと還元ヘモグロビンの回帰パラメータadhのスケールを揃えておく必要があり、そのためには、工程1で実効吸光係数スペクトルを得る際に使用する、酸化ヘモグロビンの濃度と還元ヘモグロビンの濃度を揃えておくことが好ましい。
次に、第1、第2の色素に対応する回帰パラメータを直交座標のayx平面にプロットする(図1B、工程5)。例えば、平均的な30歳代の日本人女性の頬の皮膚の色素濃度を含む範囲で設定した各色素濃度(メラニン:0/1/2/4/6/8/12%;総ヘモグロビン:0/0.01/0.02/0.04/0.08/0.16/0.24/0.3/0.4/0.6/1%;酸素飽和度:0/20/40/60/80/100%)での吸光度スペクトルをモンテカルロシミュレーションモデルで得、それを実効吸光係数スペクトルεm'(λ)で重回帰分析してメラニンの回帰パラメータam、酸化ヘモグロビンの回帰パラメータaoh、還元ヘモグロビンの回帰パラメータadhを得る。その後、第1の色素を総ヘモグロビンとし、第2の色素をメラニンとし、総ヘモグロビンの回帰パラメータath=aoh+adhとメラニンの回帰パラメータamを直交座標amthにプロットすると図6を得られる。同図から、総ヘモグロビン濃度が一定の点を結んだ線が一定のathの直線とならず、メラニン濃度が一定の点を結んだ線が一定のamの直線とならないことがわかる。
そこで、本発明においては、第1、第2の回帰パラメータを直交座標にプロットした場合に、第1の色素濃度Cxが一定の点を結んだ線と、第1の回帰パラメータがゼロの直線とが平行となり、第2の色素濃度Cyが一定の点を結んだ線と第2の回帰パラメータがゼロの直線とが平行となるように、ayx平面をbyx平面に座標変換する次式(3)の関係式
(bx,by)=h(ax,ay,・・・) (3)
を取得する(図1B、工程6)。なお、(3)の座標変換においては、精度を上げるためにax,ay以外の重回帰係数の情報を用いても良い。
そのために、まず、第1、第2の色素濃度に適当な代表値を設定し、設定した第1の色素濃度に対応する第1の回帰パラメータaxが、座標変換後にはbx=0の直線と平行となり、設定した第2の色素濃度に対応する第2の回帰パラメータが、座標変換後にはby=0の直線と平行となるように座標変換する。
例えば、総ヘモグロビンとメラニンの濃度の代表値をCTH、C とする。まず、図6に示した総ヘモグロビンの回帰パラメータathとメラニンの回帰パラメータamのプロットについて、各酸素飽和度ごとに、(総ヘモグロビン濃度,メラニン濃度)が(0,0)、(CTH,0)、(0,C)に対応する各点がそれぞれ、(0,0)、(1,0)、(0,1)に射影されるように座標変換する。つまり、次式に示すように代表値のベクトルを成分分解し、図7に示すようにb'mb'th平面に射影した図を得る。
次に、各酸素飽和度ごとに、図7の(b0,th',b0,m')が(1,1)となるように座標変換する次式をたて、図8を得る。
更に、図8ではb''m=0.5付近で凹んでいる形状を矢印のように引き上げて形を整えるために、以下の変換を施す。
まず、
また、b''th=0.4付近で屈曲している形状を伸ばすために以下の変換を行う。
さらに、b''mが一定の値のプロットの配列が傾いているのをb''m軸に垂直にするために以下の変換を行う。
こうして、図9に示すように、bmth平面において、総ヘモグロビン濃度Cthがゼロでメラニン濃度Cmがゼロの場合に(0,0)であり、総ヘモグロビン濃度Cthが一定の点を結んだ線とbth=0の直線とが平行となり、メラニンの色素濃度Cmが一定の点を結んだ線とbm=0の直線とが平行となるように、言い換えると、総ヘモグロビン濃度が一定の点を結んだラインとメラニン濃度が一定の点を結んだラインとが直交するように、amth平面をbmth平面に座標変換することができる。以上の座標変換の工程は、次式にまとめることができる(図1B、工程6)
(bx,by)=h(ax,ay,・・・) (3)
より具体的には、(b,bth)=h(a,ath,aStO2,・・・) (3')
なお、本発明において、第1の色素濃度Cxが一定の点を結んだ線とbx=0の直線とは厳密に平行である必要はなく、ある程度の誤差は許容される。図9のように座標を選んだときに、Cxが一定の点群のbxの値の標準偏差が0.03以下であれば実用上問題ない。目的に応じて必要な精度が得られれば、簡略化のため例えば[数7]により図8に座標変換をした段階で計算を打ち切っても構わない。この場合にも、計算の煩雑さを抑えつつ実用上充分な精度を達成できる。一方、高い精度を求める場合は、CxまたはCx一定の点群をB−スプライン曲線やベジエ曲線などで表すことで達成することができる。
第2の色素濃度Cyが一定の点を結んだ線とby=0の直線とが平行となる場合についても同様である。
次に、座標変換後の回帰パラメータと色素濃度との関係を取得する(図1B、工程7)。図9に示したように、第1の色素濃度Cxが一定の点を結んだ線とbx=0の直線とが平行となり、第2の色素濃度Cyが定の点を結んだ線とby=0の直線とが平行となるように、工程6で座標変換したので、座標変換後の第1、第2の回帰パラメータbx,byと第1、第2の色素濃度Cx、Cyとの次の関係式は容易に求めることができる。
x=gx(bx) (4)x
y=gy(by) (4)y
例えば、図9における座標変換後の総ヘモグロビンの回帰パラメータbthと総ヘモグロビン濃度Cth(工程2における入力値)との関係について、横軸に座標変換後の総ヘモグロビンの回帰パラメータbthとをとり、縦軸に総ヘモグロビン濃度log10(Cth)をとると、図10に示すプロットとなる。そこで、総ヘモグロビンの回帰パラメータbthと総ヘモグロビン濃度Cthとの関係を次式(4)thの曲線で表すことができる。
y=10^(-1.4622x2+3.9761x-2.5168) (4)th
(決定係数R2=0.9965)
同様に、メラニンについても、横軸に回帰パラメータbmをとり、縦軸に濃度Cmをとる図11に示すように表され、メラニンの回帰パラメータbmとメラニン濃度Cmは次式(4)mの曲線で表すことができる。
y=0.8607x2+0.3399x (4)m
(決定係数R2=0.9989)
本発明において、ここまでに示した関係式の求め方は、さらに皮膚内に存在する他の色素、例えば、カロテン、ビリルビン、AGEsなどにも適用することができる。
本発明においては、以上のようにして、吸光度スペクトルA(λ)から得られる色素の回帰パラメータと色素濃度との関係式を得ておく一方で、被験者の皮膚の吸光度スペクトルA(λ)を取得する(図1C、工程9)。そのために、まず、被験者の皮膚の分光反射率R(λ)を求め(図1C、工程8)、それを前述のように吸光度スペクトルA(λ)に変換する。そして、吸光度スペクトルA(λ)を各色素の実効吸光係数スペクトルεi'(λ)(i=1,2,…,N)を説明変数として重回帰分析することにより前述の式(1)の重回帰係数を得る(図1C、工程10)。
次に、被験者の皮膚において濃度を測定しようとする第1の色素の回帰パラメータaxと、その他の第2の色素の回帰パラメータa(例えば、総ヘモグロビンの回帰パラメータathとメラニンの回帰パラメータam)を、被験者の皮膚の吸光度スペクトルの重回帰式の回帰パラメータで表す。そして、予め求めておいた式(3)の関係式により第1の回帰パラメータaxと第2の回帰パラメータayを座標変換し、座標変換後の第1の回帰パラメータbxと第2の回帰パラメータbyを求める(図1C、工程11)。なお座標変換の精度を上げるため、先に式(2)で求めた酸素飽和度CStO2も利用し、次式
(b,bth)=h(a,ath,aStO2,・・・) (3')
により酸素飽和度ごとに座標変換を行うことが好ましい。
次に、式(4)x、(4)yの関係式により、座標変換後の第1の回帰パラメータbxと第2の回帰パラメータbyから、第1の色素濃度Cxと第2の色素濃度Cyを求める(図1C、工程12)。こうして、例えば、座標変換後の総ヘモグロビンの回帰パラメータbthから総ヘモグロビン濃度Cthを求め、座標変換後のメラニンの回帰パラメータbmからメラニン濃度Cmを求めることができる(図1C、工程12(i))。
また、必要により、総ヘモグロビン濃度Cthから酸化ヘモグロビン濃度Cohと還元ヘモグロビン濃度Cdhを算出したい場合には、工程12の(i)で得た総ヘモグロビン濃度Cthと、工程11で得た酸素飽和度CStO2とから酸化ヘモグロビン濃度Cohと還元ヘモグロビン濃度Cdhを算出する(図1C、工程12(ii))。
なお、被験者の皮膚の分光反射率R(λ)の測定方法は、皮膚の狭い領域に所定波長の
光を入射させると共にその領域から受光した反射光の平均値を用いる、所謂一点計測の分光反射率測定装置を使用してもよく、皮膚の代謝や血行状態の観察のし易さの点から皮膚の内部反射光の撮像により求めてもよい。
図12は、被験者の皮膚の内部反射光画像から皮膚中の色素濃度を求めるシステムの構成例である。同図のシステムでは、被験者の皮膚の内部反射光画像を求めるために、被験者1に、第1の偏光フィルタ2aを通して光源3から光を入射させ、第2の偏光フィルタ2bを備えた波長可変フィルタ4を通してデジタルカメラ5で皮膚画像を撮る。この場合、第1の偏光フィルタ2aと第2の偏光フィルタ2bの偏光方向を直交させることにより、第2の偏光フィルタ2bで被験者1の皮膚からの表面反射光を遮光し、皮膚の色情報を担う内部反射光のみがデジタルカメラ5で受光されるようにする。
光源3としては、白色光を発するハロゲンランプ、メタルハロゲンランプ等を使用する。光源3は、平行光を発するものでも拡散光を発するものでもよい。光源としては、好ましくは、入射角0〜45°の範囲で被験者1の皮膚に光を出射するものを使用する。
波長可変フィルタ4は、コントローラ6の制御により透過波長を変更する。これにより、例えば、波長500nmから20nm間隔で600nmまで撮像波長をずらしながら、内部反射光画像を繰り返し撮る。波長可変フィルタ4で用いる分光方式は、液晶チューナブルフィルタ分光方式、回折格子分光方式、干渉フィルタ分光方式等を使用する。
デジタルカメラ5は、全測定波長領域に渡って感度を有するカメラであれば、モノクロカメラで充分であるが、カラーカメラでも差し支えない。
こうしてデジタルカメラ5で撮影した画像は、パーソナルコンピュータ等の演算装置7に保存する。演算装置7は、各ピクセルの画素値から、各ピクセルごとに反射率を算出する。撮影にカラーカメラを用いた場合は、画素値としてRGB各画素値の重み付き平均を用いればよく、測定波長に対する感度を有する特定の画素のみを用いても良い。演算装置7において、画素値から分光反射率を算出させるためには、画像処理が可能なプログラミング環境を用いて、反射率既知の白色板の波長ごとの画素値から、各波長の反射率に変換するための係数を求め、その係数を該波長画像全体に適用すればよい。このようなプログラミング環境としては、MATLAB(Mathworks社製)等を使用することができる。
演算装置7は、分光反射率を吸光度スペクトルに変換する。また、演算装置7には各色素の実効吸光係数スペクトルεi'(λ)(i=1,2,…,N)と前述の式(2)、(3)、(4)x、(4)yの関係式を記憶させておくことが好ましい。
StO2=aoh/(aoh+adh) (2)
(bx,by)=h(ax,ay,・・・) (3)
x=gx(bx) (4)x
y=gy(by) (4)y
そして、実効吸光係数スペクトルεi'(λ)を説明変数として被験者の吸光度スペクトルを重回帰分析することにより重回帰式(1)を得、
その回帰パラメータai(i=1,2,…,N)で第1の回帰パラメータaxと第2の回帰パラメータayを表す。次に、式(3)により座標変換し、座標変換後の第1の回帰パラメータbxと第2の回帰パラメータbyを得る。そして、式(4)xから第1の色素濃度Cxを得、式(4)yから第2の色素濃度Cyを得る。ここで、第1の色素として総ヘモグロビンの濃度を求める場合には、式(2)からヘモグロビンの酸素飽和度CStO2を求めておき、酸素飽和度ごとに式(3)により座標変換することが好ましい。こうして得た総ヘモグロビン濃度Cthとヘモグロビンの酸素飽和度CStO2とから酸化ヘモグロビン濃度Cohと還元ヘモグロビン濃度Cdhを算出することができる。
また、本発明においては、被験者の皮膚画像の各ピクセルについて算出した各色素濃度Ci(i=1,2,…,N)の一つ又は任意の組み合わせを全ピクセルで表示させ、皮膚色素画像を形成してもよい。こうして得られる皮膚色素画像は、色素の正確な濃度分布を示すものとなる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
試験例1、2(回帰パラメータの説明率)
分光反射率計CM2600−d(コニカミノルタ社製)を用いて、被験者の前腕内側の皮膚の分光反射率を、波長400nm〜700nmの間を10nm間隔で求めた。分光反射率の実測値を図13に示す。
得られた分光反射率を吸光度スペクトルに換算した後、メラニンの吸光係数スペクトルεm(λ)、酸化ヘモグロビンの吸光係数スペクトルεoh(λ)及び還元ヘモグロビンの吸光係数スペクトルεdh(λ)を説明変数として重回帰分析することにより回帰パラメータam、aoh、adh及び切片a0を算出した。この場合、メラニンの吸光係数スペクトルεm(λ)、酸化ヘモグロビンの吸光係数スペクトルεoh(λ)及び還元ヘモグロビンの吸光係数スペクトルεdh(λ)は、次の文献に記載されている値を用いた。
IEEE Trans.Biomed.Eng.36(1989) 1146-1154
http://omlc.ogi.edu/news/jan98/skinoptics.html
http://omlc.ogi.edu/spectra/
SPIE Proc. 3252(1998) 70-82
J.Invest Dermatol 77,1(1981) 13-19
こうして得た各回帰パラメータから次式(1')aの吸光度スペクトルA(λ)を得、分光反射率に換算し、図13にプロットした(試験例1)。
一方、計算ソフト「MCML」(Computer Methods and Programs in Biomedicine 47, 131-146 (1995))を使用し、モンテカルロシミュレーションモデル(Journal of Biomedical Optics,9(4),700-710 (2004))において、メラニン濃度Cm、還元ヘモグロビン濃度Cdhをゼロとし、酸化ヘモグロビン濃度Cohを0.2、0.4、0.6、0.8、1.0%の条件で変化させたときの分光反射率R(λ)を求めた。この場合、モンテカルロシミュレーションモデルでは、表皮厚0.006cm、真皮厚0.494cmとし、表皮にメラニンが含まれ、真皮にヘモグロビンが含まれるとし、表皮及び真皮の屈折率は1.4で一定とした。次に、酸化ヘモグロビン濃度を変えることにより得られた一連の分光反射率を主成分分析し、その第一主成分を酸化ヘモグロビンの実効吸光係数スペクトルεoh'(λ)とした。
同様に、メラニン濃度Cm、酸化ヘモグロビン濃度Cohをゼロとし、還元ヘモグロビン濃度Cdhを0.2、0.4、0.6、0.8、1.0%の条件で変化させたときの分光反射率R(λ)を求め、還元ヘモグロビンの実効吸光係数スペクトルεdh'(λ)を得、また、酸化ヘモグロビン濃度Coh、還元ヘモグロビン濃度Cdhをゼロとし、メラニン濃度Cmを1、2、3、4、5、6、7、8、9、10%の条件で変化させたときの分光反射率R(λ)を求め、メラニンの実効吸光係数スペクトルεm'(λ)を得た。ここで、メラニン濃度は、吸光度がJournal of Photochemistry and Photobiology Vol.53 No.6 769-775で与えられたメラノソームの吸光度と等しくなるときの濃度を100%としたときの比率である。また、酸化、還元ヘモグロビン濃度は、それぞれヘマトクリット45%の血液の酸素飽和度100%、0%のときの濃度を100%としたときの比率である。
こうして得た各色素の実効吸光係数スペクトルεm'(λ)、εoh'(λ)、εdh'(λ) を説明変数として、前記皮膚の吸光度スペクトルを重回帰分析することにより回帰パラメータam、aoh、adh及び切片a0を得た。こうして得た回帰パラメータから次式(1)aの吸光度スペクトルA(λ)を得、分光反射率に換算し、これを図13にプロットした(試験例2)。
図13から、文献値の吸光係数スペクトルを使用して得た試験例1の分光反射率の推定値は実測値との誤差が大きく、特に人の皮膚に特徴的な550 nm付近での凹みが完全に失われているが、本発明の方法にしたがって実効吸光係数スペクトルを使用して得た試験例2の分光反射率の推定値は、実測値と非常に良く一致しており、特に、皮膚に特徴的な550nm付近での凹みが再現できていることがわかる。
試験例1の方法による分光反射率の推定値の実測値に対する説明率(相関係数の二乗)が0.963であるのに対し、試験例2の方法による分光反射率の推定値の実測値に対する説明率は0.980であり、実効吸光係数スペクトルの使用により説明率が向上することが確認できた。
試験例3(照度誤差が各回帰パラメータに与える影響)
図12に示す装置を用いて波長500、520、540、560、580、600nmにおける人の腕の画像を撮影し、白色板で画素毎に補正し各波長における反射率画像に変換した後、吸光度画像に変換し、画素毎に試験例1の方法に従って回帰パラメータam、ath、及び切片a0を求め、反射率画像を作成した。その結果を図14に示す。同図において、(i)はこの腕の白色照明下での見えを表す画像であり、(ii)、(iii)及び(iv)は、それぞれ(i)の画像の白枠領域を、回帰パラメータam、ath、又は切片a0を用いて作成した反射率画像である。
反射率画像を作成する際には、考えうる最善の照度補正を行ったが、対象の形状などの影響により、実質的に相当量の誤差が避けられない。図14からわかるように、a0を用いて作成した(iv)画像には陰影のような濃淡が認められる一方で、このような濃淡は、amを用いて作成した(ii)画像及びathを用いて作成した(iii)画像には認められない。このことから、照度の誤差はa0のみに現れることがわかる。
実施例1
(実効吸光係数スペクトルの取得)
試験例2と同様の方法で実効吸光係数スペクトルを求めた。ただし、酸素化ヘモグロビンの実効吸光係数スペクトルを求める際の酸素化ヘモグロビン濃度の条件は、0.01、0.02、0.04、0.08、0.16、0.24、0.3、0.4、0.6、1%とした。また、還元ヘモグロビンの実効吸光係数スペクトルを求める際の還元ヘモグロビン濃度の条件は、0.01、0.02、0.04、0.08、0.16、0.24、0.3、0.4、0.6、1%とした。同様に、メラニンの実効吸光係数スペクトルを求める際のメラニン濃度の条件は、1、2、4、6、8、12%とした。
(回帰パラメータの取得と座標変換)
モンテカルロシミュレーションモデルにおける色素濃度Ciの設定値と、その色素濃度Ciの設定値で得られる吸光度スペクトルを、先に求めた実効吸光係数スペクトルを説明変数として重回帰分析することにより前述の式(1)aの回帰パラメータam、aoh、adh、及び定数項a0を取得し、さらに回帰パラメータam、athと、メラニン濃度Cm及びヘモグロビン濃度Cthとの関係式を本発明の座標変換を使用する方法で求めた。
ここで用いたモンテカルロシミュレーションモデルは、試験例2と同様の、表皮と真皮の2層モデルを用いた。また、ヘモグロビン濃度の条件は、0.01、0.02、0.04、0.08、0.16、0.24、0.3、0.4、0.6、1%、酸素飽和度の条件は、0、20、40、60、80、100%、メラニン濃度の条件は、1、2、4、6、8、12%とした。
そこで、上述の回帰パラメータam、athと、メラニン濃度Cm及びヘモグロビン濃度Cthとの関係式を用いて、モンテカルロシミュレーションモデルから得た吸光度スペクトルに対する回帰パラメータからメラニン濃度、ヘモグロビン濃度を推定した。この結果を図15に示す。なお、図15において、横軸は回帰パラメータを取得する際のモンテカルロシミュレーションモデルにおけるメラニン濃度及びヘモグロビン濃度入力値、縦軸は推定したメラニン濃度及びヘモグロビン濃度である。なお、或るメラニン濃度又はヘモグロビン濃度に対して、それらの推定値には幅が見られるが、この幅が推定精度の指標となる。推定したメラニン、ヘモグロビンの各色素濃度とモンテカルロシミュレーションモデルでの各色素濃度の設定値との間の説明率はそれぞれ、0.9980、0.9930となった。
実施例2(モンテカルロシミュレーションモデルにおいて脂肪層がある場合)
実施例1と同様の方法で実効吸光係数スペクトルを求め、さらに同様の方法で回帰パラメータam、athと、メラニン濃度Cm及びヘモグロビン濃度Cthとの関係式を本発明による方法で求めた。ただし、実効吸光係数スペクトルの算出及び回帰パラメータと各色素濃度の関係式の導出のために用いるモンテカルロシミュレーションモデルにおいて、真皮層の下に脂肪層を設けた。脂肪層では入った光が全て反射するものとした。そこで得られた関係式を用いて、モンテカルロシミュレーションモデルから得たスペクトルに対する重回帰係数からメラニン濃度、ヘモグロビン濃度を推定した。この結果を図16に示す。推定したメラニン、ヘモグロビンの各色素濃度とモンテカルロシミュレーションモデルでの各色素濃度の設定値との間の説明率はそれぞれ、0.9989、0.9974となった。
比較例1(回帰パラメータの定数項a0を抜いた場合)
モンテカルロシミュレーションモデルにおける色素濃度Ciの設定値と、その色素濃度Ciの設定値で得られる吸光度スペクトルを、吸光係数スペクトルを説明変数として重回帰分析したときの回帰パラメータとの関係から、回帰パラメータam、athと、メラニン濃度Cm及びヘモグロビン濃度Cthとの関係式を多項式近似で求めた。この場合、多項式近似の変数に定数項aは用いなかった。ここで用いたモンテカルロシミュレーションモデルは、実施例1と同じものである。こうして得られた関係式を用いて、重回帰係数からメラニン濃度、ヘモグロビン濃度を推定した。結果を図17に示す。推定したメラニン、ヘモグロビンの各色素濃度とモンテカルロシミュレーションモデルでの各色素濃度の設定値との間の説明率はそれぞれ、0.9813、0.7806となった。
比較例2
モンテカルロシミュレーションモデルにおける色素濃度Ciの設定値と、その色素濃度Ciの設定値で得られる吸光度スペクトルを、実施例1で求めた実効吸光係数スペクトルを説明変数として重回帰分析したときの回帰パラメータとの関係から、回帰パラメータam、athと、メラニン濃度Cm及びヘモグロビン濃度Cthとの関係式を多項式近似で求めた。ここで用いたモンテカルロシミュレーションモデルは、実施例1と同じものである。こうして得られた関係式を用いて、回帰パラメータからメラニン濃度、ヘモグロビン濃度を推定した。結果を図18に示す。推定したメラニン、ヘモグロビンの各色素濃度とモンテカルロシミュレーションモデルでの各色素濃度の設定値との間の説明率はそれぞれ、0.9989、0.9922となった。
比較例3(比較例2に対し、モンテカルロシミュレーションモデルにおいて脂肪層を加えた場合)
モンテカルロシミュレーションモデルにおける色素濃度Ciの設定値と、その色素濃度Ciの設定値で得られる吸光度スペクトルを、実施例2で求めた実効吸光係数スペクトルを説明変数として重回帰分析したときの回帰パラメータとの関係から、回帰パラメータam、athと、メラニン濃度Cm及びヘモグロビン濃度Cthとの関係式を多項式近似で求めた。ここで用いたモンテカルロシミュレーションモデルは、実施例2と同じものである。
こうして得られた関係式を用いて、重回帰係数からメラニン濃度、ヘモグロビン濃度を推定した。結果を図19に示す。推定したメラニン、ヘモグロビンの各色素濃度とモンテカルロシミュレーションモデルでの各色素濃度の設定値との間の説明率はそれぞれ、0.9979、0.9927となった。
以上の実施例1,2及び比較例1〜3において、推定したメラニン濃度及びヘモグロビン濃度の各色素濃度に対する説明率をまとめると表1を得られる。
モンテカルロシミュレーションモデル上では、非特許文献1による方法で色素濃度を推定すると、図14に示したように関係式に照度の誤差の影響を強く受けるaを含むため、色素濃度の推定精度が極端に悪化してしまう。この点を改善する方法として、関係式の引数から、照度の影響を強く受ける定数項aをはずすこと(比較例1)が考えられるが、説明率は大幅に悪化する。定数項aをはずしつつ精度を良く推定するために、重回帰分析において実効吸光係数を用いる方法(比較例2)が考えられ、この方法によると説明率は比較例1よりは改善するが、本発明の方法(実施例1)によれば、比較例1において説明率が低かったヘモグロビン濃度に対し、更なる改善を実現できた。この方法は、モンテカルロシミュレーションモデルにおいて、脂肪層を設けて計算したとき(実施例2)に、性能を一層発揮することができる。なお、比較例2に対しては、脂肪層を設ける改良(比較例3)を行っても、説明率はほとんど改善されなかった。
1 被験者
2a 第1の偏光フィルタ
2b 第2の偏光フィルタ
3 光源
4 波長可変フィルタ
5 デジタルカメラ
6 コントローラ
7 演算装置

Claims (7)

  1. 皮膚の色素濃度を変化させた複数の吸光度スペクトルを主成分分析し、得られた主成分から皮膚の色素の実効吸光係数スペクトルεi'(λ)(色素の種類をNとしてi=1,2,…,N、以下同じ)を定め、
    複数の色素を含む皮膚のシミュレーションモデルで各色素濃度Ci(i=1,2,…,N)の異なる組み合わせの複数の吸光度スペクトルを、各色素の実効吸光係数スペクトルεi'(λ)(i=1,2,…,N)を説明変数として重回帰分析することにより、複数の吸光度スペクトルごとに次式(1)の重回帰式を得、
    式(1)の回帰パラメータai(i=1,2,…,N)から第1、第2の色素に対応する第1、第2の回帰パラメータax、ayを求め、第1、第2の回帰パラメータax、ayを直交座標のayx平面に表し、それをbyx平面に座標変換した場合に、座標変換後のbyx平面において第1の色素濃度Cxが一定の点を結んだ線とbx=0の直線とが平行となり、第2の色素濃度Cyが一定の点を結んだ線とby=0の直線とが平行となる座標変換の関係式(3)を取得し、
    (bx,by)=h(ax,ay,・・・) (3)
    座標変換後の回帰パラメータbxと第1の色素濃度Cxとの関係式(4)xを取得し、
    x=gx(bx) (4)x
    一方、被験者の皮膚の吸光度スペクトルを取得し、その吸光度スペクトルを、各色素の実効吸光係数スペクトルεi'(λ)(i=1,2,…,N)を説明変数として重回帰分析することにより前記式(1)と同様の重回帰式を得、その回帰パラメータai(i=1,2,…,N)から第1、第2の色素に対応する第1、第2の回帰パラメータax、ayを求め、第1、第2の回帰パラメータax、ayを前記式(3)によりbyx平面に座標変換し、座標変換後の第1の回帰パラメータから前記式(4)xにより被験者の皮膚の第1の色素の色素濃度を求める皮膚色素濃度測定方法。
  2. 座標変換後に第2の色素に対応する第2の回帰パラメータbyと第2の色素濃度Cyとの関係式(4)yを取得し、
    y=gy(by) (4)y
    被験者の第2の回帰パラメータbyから式(4)yにより第2の色素濃度Cyを求める請求項1記載の皮膚色素濃度測定方法。
  3. 第1の色素が総ヘモグロビンであり、第2の色素がメラニンである請求項1又は2記載の皮膚色素濃度測定方法。
  4. 複数の吸光度スペクトルごとに得た重回帰式の酸化ヘモグロビンの回帰パラメータaoh及び還元ヘモグロビンの回帰パラメータadhから次の関係式(2)により酸素飽和度CStO2を求める請求項3記載の皮膚色素濃度測定方法。
    StO2=aStO2=aoh/(aoh+adh) (2)
  5. 前記式(3)の変換を、式(2)で表される酸素飽和度の値に応じて変える請求項4記載の皮膚色素濃度測定方法。
  6. 総ヘモグロビン濃度C th と酸素飽和度CStO2とから酸化ヘモグロビン濃度と還元ヘモグロビン濃度を求める請求項4記載の皮膚色素濃度測定方法。

  7. 皮膚の実効吸光係数スペクトルεi'(λ)を求めるために主成分分析する皮膚の吸光度スペクトルと、回帰パラメータを求めるために重回帰分析する吸光度スペクトルを、表皮、真皮及び脂肪層が順次積層した皮膚モデルでモンテカルロシュミレーションを行うことにより得る請求項1〜6のいずれかに記載の皮膚色素濃度測定方法。

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