JP7442763B2 - 離型フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、半導体装置を処理する技術分野に属する。本発明は、基板、半導体素子、および接続端子を備える構造体を金型内に設置し、当該構造体を硬化性樹脂で封止して封止体を製造する方法において、当該硬化性樹脂が接する面と金型との間に配置される離型フィルムに関するものである。
半導体モジュールの1つであるパワー半導体モジュールや自動車のECU(エンジンコントロールユニット)は、実装後の基板に耐熱性や信頼性が必要とされるため、その製造工程では、樹脂(封止樹脂)で基板自体が封止される。近年、その封止樹脂にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用い、トランスファ成形によって封止する方法が採用されている。
トランスファ成形による半導体モジュールの製造は一般に、半導体素子や受動部品が実装された基板やその他放熱板等の部品を金型内に配置し、熱硬化性樹脂を注入し、硬化することにより行われる。その後に金型との離型が必要となるため、熱硬化性樹脂には、離型性を確保するために、離型剤が配合される(特許文献1)。
しかし、離型剤を配合することは、封止樹脂と基板との密着性を損ない、半導体モジュールの信頼性を低下させる問題がある。
そこで、離型剤を使用しない金型との離型方法として、硬化性樹脂と金型との固着を防ぐために、硬化性樹脂と接する面に、フッ素樹脂等の樹脂から構成される離型フィルムを配置する方法が開示されている(特許文献2)。当該離型フィルムは一般に、真空吸引によって金型の表面に沿って引き延ばされ、金型に密着した状態とされる。
特許文献2の離型フィルムは、基板と半導体素子と接続端子とを備える構造体を、少なくとも一方の深さが3mm以上である上金型と下金型とを備える金型内に配置し、硬化性樹脂で封止して厚さ3mm以上の樹脂封止部を形成する封止体の製造方法において、前記上金型および下金型のうち深さが3mm以上であるものの前記硬化性樹脂が接する面に配置される離型フィルムであって、前記樹脂封止部の形成時に硬化性樹脂と接する第1の層と、第2の層とを有し、前記第1の層が、厚さ5~30μmであり、かつ、フッ素樹脂および融点200℃以上のポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種から構成され、前記第2の層が、厚さが38~100μmであり、180℃における引張貯蔵弾性率(MPa)と厚さ(μm)との積が18,000(MPa・μm)以下であり、かつ、180℃における引張破断応力(MPa)と厚さ(μm)との積が2,000(MPa・μm)以上であることを特徴とするものである。そして、特許文献2によれば、当該離型フィルムは、封止体の金型からの優れた離型性と、大変形を要する金型への優れた追従性とを備えるとされている。
特開2010-245188号公報 国際公開第2015/133634号
特許文献2の離型フィルムは、封止体の金型からの優れた離型性と、大変形を要する金型への優れた追従性とを備えていることから、半導体パッケージに比べて厚く、形状も複雑な半導体モジュールの製造に使用することができる。しかし、当該離型フィルムは、金型の深さが7mm程度であれば追従性を有し使用することができるが、それより深い金型では追従しきれず破断するおそれがある。近年の半導体モジュールは、より高度複雑化してきており、より厚みのあるものになってきていることから、そのような半導体モジュールには特許文献2の離型フィルムは使用できない可能性がある。
本発明は、金型壁面へのより優れた追従性を有し、より厚い半導体モジュールの封止体製造にも使用することができる新規な離型フィルムを提供することを主な課題とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、一定の樹脂組成からなる積層体フィルムにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに到った。
本発明としては、例えば、下記を挙げることができる。
[1]基板、半導体素子、および接続端子を備える構造体を金型内に設置し、当該構造体を硬化性樹脂で封止して封止体を製造する方法において、金型内壁と金型内に投入された硬化性樹脂との間に配置される離型フィルムであって、ポリメチルペンテン樹脂から主としてなる表面層と、ポリメチルペンテン樹脂および熱可塑性エラストマーから主としてなる中間層とが少なくとも積層されていることを特徴とする、離型フィルム。
[2]さらに、前記中間層を挟んで、前記表面層と対向する面側にポリメチルペンテン樹脂から主としてなる裏面層が積層されている、上記[1]に記載の離型フィルム。
[3]ポリメチルペンテン樹脂が、85~100モル%の4-メチル-1-ペンテンを含む重合体である、上記[1]または[2]に記載の離型フィルム。
[4]熱可塑性エラストマーが、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、またはポリアミド系エラストマーである、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の離型フィルム。
[5]前記中間層におけるポリメチルペンテン樹脂および熱可塑性エラストマーの配合割合が、ポリメチルペンテン樹脂が50~99質量%の範囲内に対して、熱可塑性エラストマーが1~50質量%の範囲内である、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の離型フィルム。
[6]金型内の深さが15mm以上でも金型壁面への追従性を有する、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の離型フィルム。
[7]フッ素樹脂から主としてなる樹脂層を有しない、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の離型フィルム。
本発明の離型フィルムは、基板、半導体素子、および接続端子を備える構造体を金型内に設置し、硬化性樹脂で封止して封止体を製造する場合において、金型内の深さが8mmから25mm程度であっても金型壁面への追従性を有する。そのため、例えば8mmより厚い半導体モジュール等の封止体を製造するのに用いることができる。
本発明の離型フィルムの一態様に係る層構造を示す断面概略図である。 離型フィルムの金型壁面への追従性を評価するためのフィルム絞り性評価用金型の概略図である。上図は平面図を、下図はB-B線に沿う正面断面図を、それぞれ表す。上図左側中央の点線部分は、真空ポンプに繋がる真空吸引溝が下部に存在することを示す。 フィルム絞り性評価用金型への試験用離型フィルムの設置方法と(上図)、当該フィルム設置後、吸引して金型壁面へ吸着させた状態を表す(下図)。
1 本発明の離型フィルムについて
本発明の離型フィルム(以下、「本発明フィルム」という。)は、基板、半導体素子、および接続端子を備える構造体を金型内に設置し、当該構造体を硬化性樹脂で封止して封止体を製造する方法において、金型内壁と金型内に投入された硬化性樹脂との間に配置される離型フィルムであって、ポリメチルペンテン樹脂から主としてなる表面層と、ポリメチルペンテン樹脂および熱可塑性エラストマーから主としてなる中間層とが少なくとも積層されていることを特徴とする。
また、本発明フィルムは、通常、前記中間層を挟んで、前記表面層と対向する面側に、ポリメチルペンテン樹脂から主としてなる裏面層が積層されている。このように、本発明フィルムは、通常、2層ないし3層構造であり、表面層/中間層/裏面層が直接積層されているが、各層の間の層間強度を高めるなどの目的で、例えば接着層を介して積層されていてもよい。
特許文献2の離型フィルムは、基本的には、フッ素樹脂から主としてなる樹脂層を有し、表面層とするものであるが、本発明フィルムは、基本的にフッ素樹脂から主としてなる樹脂層を有しなくてよい。
ここで、本発明において「表面層」は、金型内に投入された硬化性樹脂と接する側の層であり、「裏面層」は、金型内壁と接する側の層である。「主としてなる」とは、当該層が90質量%以上の当該成分樹脂で構成されていることをいう。好ましくは93質量%以上の当該成分で構成されていること、より好ましくは96質量%以上の当該成分で構成されていることをいう。
1.1 本発明に係る表面層および裏面層
本発明フィルムは、ポリメチルペンテン樹脂から主としてなる表面層が積層されており、また、通常、中間層を挟んで、当該表面層と対向する面側に、ポリメチルペンテン樹脂から主としてなる裏面層が積層されている。
表面層および裏面層を主として構成するポリメチルペンテン樹脂は、同じであっても異なっていてもよいが、両層のポリメチルペンテン樹脂が同じであることが好ましい。
本発明に係るポリメチルペンテン樹脂は、4-メチル-1-ペンテンの単独重合体、または4-メチル-1-ペンテンと、エチレンまたは4-メチル-1-ペンテン以外のα―オレフィンとの共重合体である。結晶性のものが好ましい。結晶性か否かは、常法(例えば、示差走査熱量測定(DSC)やX線回折測定)により確認することができる。
また本発明に係るポリメチルペンテン樹脂は、4-メチル-1-ペンテンを85~100モル%、好ましくは90~100モル%含む4-メチル-1-ペンテンを主体とした重合体であることが好ましい。4-メチル-1-ペンテンと共重合するエチレンまたは4-メチル-1-ペンテン以外のα-オレフィンとしては、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-テトラデセン、1-オクタデセンなどの炭素数3~20のα-オレフィンを挙げることができ、中でも4-メチル-1-ペンテンとの共重合性が良く、良好な靭性が得られることから、1-デセン、1-テトラデセンおよび1-オクタデセンが好ましい。
ポリメチルペンテンのメルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238に準じ、温度260℃、荷重5.0kgの測定条件で、0.5~200g/10分、好ましくは5~100g/10分の範囲である。メルトフローレートが200g/10分以下であれば、溶融粘度が十分高く成形性に優れ、一方メルトフローレートが0.5g/10分以上であると十分な機械的強度が得られることから好ましい。また融点は220~250℃、好ましくは225~240℃の範囲にあるものが好ましい。
本発明に係るポリメチルペンテン樹脂は、従来公知の方法で製造することができ、例えば特開昭59-206418号公報に記載されているように、触媒の存在下に4-メチル-1-ペンテンと上記のエチレンまたはα-オレフィンを重合することにより得ることができる。
当該表面層および裏面層には、必要に応じて耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の通常熱可塑性樹脂に用いる各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で適量配合することができる。また、必要に応じて後述の熱可塑性エラストマーを、通常、10質量%以下で配合することができる。
1.2 本発明に係る中間層
本発明フィルムは、ポリメチルペンテン樹脂および熱可塑性エラストマーから主としてなる中間層が積層されている。
当該ポリメチルペンテン樹脂と熱可塑性エラストマーとの配合割合は、例えば、ポリメチルペンテン樹脂が50~99質量%の範囲内に対して、熱可塑性エラストマーが1~50質量%の範囲内、好ましくは、ポリメチルペンテン樹脂が60~90質量%の範囲内に対して、熱可塑性エラストマーが10~40質量%の範囲内、より好ましくは、ポリメチルペンテン樹脂が65~85質量%の範囲内に対して、熱可塑性エラストマーが15~35質量%の範囲内である。
当該ポリメチルペンテン樹脂としては、例えば、上記1.1の項で述べたものを挙げることができる。当該熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーを挙げることができる。具体的には、それぞれ次のものを挙げることができる。
(1)ポリオレフィン系エラストマー
ポリオレフィン系エラストマーとしては、例えば融点が110℃以下、好ましくは融点が100℃以下、さらに好ましくは融点が80℃以下、または融点が観測されない炭素数2~20のα-オレフィン重合体または共重合体、ないしはエチレンと不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸エステルとの共重合体を挙げることができる。具体的には、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、プロピレン単独共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体、1-ブテン単独重合体、1-ブテン・エチレン共重合体、1-ブテン・プロピレン共重合体、4-メチルペンテン-1単独重合体、4-メチル-1-ペンテン・プロピレン共重合体、4-メチル-1-ペンテン・1-ブテン共重合体、4-メチル-1-ペンテン・プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等を挙げることができる。これら重合体は1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
熱可塑性ポリオレフィン系エラストマーの市販されているものとしては、例えば、三井化学社製「ミラストマー」(登録商標)、「タフマー」(登録商標)、エクソンモービル・ケミカル社製の「ビスタマックス」(登録商標)、ダウ・ケミカル社製の「バーシファイ」(登録商標)などが挙げられる。
(2)ポリエステル系エラストマー
ポリエステル系エラストマーとしては、例えば、芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエステルとのブロック共重合体、および、芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエーテルとのブロック共重合体が挙げられるが、芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエーテルとのブロック共重合体であることが好ましい。
ポリエステル系エラストマー中の芳香族ポリエステルとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレート系樹脂および/またはポリエチレンテレフタレート系樹脂であることが好ましい。ここで、「ポリブチレンテレフタレート系樹脂」とは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、またはテレフタル酸とイソフタル酸を組合せたものを用い、ジオール成分として1,4-ブタンジオールを用いたポリエステルをいうが、このジカルボン酸成分の一部(50モル%未満)を他のジカルボン酸成分やオキシカルボン酸成分で置き換えたり、ジオール成分の一部(50モル%未満)をブタンジオール成分以外の低分子ジオール成分で置き換えたりしたポリエステルであってもよい。また、「ポリエチレンテレフタレート系樹脂」とは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、またはテレフタル酸とイソフタル酸を組合せたジカルボン酸成分を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを用いたポリエステルをいうが、このジカルボン酸成分の一部(50モル%未満)を他のジカルボン酸成分やオキシカルボン酸成分で置き換えたり、ジオール成分の一部(50モル%未満)をエチレングリコール成分以外の低分子ジオール成分で置き換えたりしたポリエステルであってもよい。
ポリエステル系エラストマー中の脂肪族ポリエーテルとしては、ポリアルキレングリコール系樹脂であることが好ましく、そのなかでも、ポリテトラメチレングリコール系樹脂および/またはポリエチレングリコール系樹脂であることがさらに好ましい。ここで、「ポリアルキレングリコール系樹脂」とは、ポリアルキレングリコールを主たる成分とする脂肪族ポリエーテルをいうが、ポリエーテル部分の一部(50質量%未満)を、アルキレングリコール成分以外のジオキシ成分で置き換えた脂肪族ポリエーテルであってもよい。また、「ポリテトラメチレングリコール系樹脂」とは、ポリテトラメチレングリコールを主たる成分とするポリアルキレングリコールをいうが、脂肪族ポリエーテル部分の一部(50質量%未満)を、テトラメチレングリコール成分以外のジオキシ成分で置き換えた脂肪族ポリエーテルであってもよい。さらに、「ポリエチレングリコール系樹脂」とは、ポリエチレングリコールを主たる成分とするポリアルキレングリコールをいうが、脂肪族ポリエーテル部分の一部(50質量%未満)を、エチレングリコール成分以外のジオキシ成分で置き換えた脂肪族ポリエーテルであってもよい。ここで、「主たる」とは、脂肪族ポリエーテル部分全体を100質量%とした際、50質量%以上を占める場合をいう。
熱可塑性ポリエステル系エラストマーとして市販されているものとしては、東レ・デュポン社製の「ハイトレル」(登録商標)、東洋紡社製の「ペルプレン」(登録商標)、三菱化学社製の「テファブロック」(登録商標)などが挙げられる。
(3)ポリスチレン系エラストマー
ポリスチレン系エラストマーとしては、例えば、ポリスチレンとポリブタジエンとのブロック共重合体、ポリスチレンと水素添加ポリブタジエンとのブロック共重合体、ポリスチレンとポリイソプレンとのブロック共重合体、ポリスチレンと水素添加ポリイソプレンとのブロック共重合体、ポリスチレンとポリイソブチレンとのブロック共重合体を挙げることができる。また、本発明のポリスチレン系エラストマーは、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基、及びエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基で変性されていてもよい。
ポリスチレン系エラストマーとして、具体的には、SBS(スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー)、SEBS(スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンコポリマー)、SIS(スチレン-イソプレン-スチレンコポリマー)、SEPS(スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンコポリマー)などが挙げられる。
熱可塑性ポリスチレン系エラストマーとして市販されているものとしては、例えば、クレイトンポリマージャパン社製の「クレイトン」、JSR社製の「ダイナロン」(登録商標)、旭化成社製の「タフテック」(登録商標)、「S.O.E.」、「タフプレン」(登録商標)、「アサプレン」(登録商標)、クラレ社製の「セプトン」(登録商標)、アロン化成社製のAR-FLシリーズなどが挙げられる。
(4)ポリアミド系エラストマー
ポリアミド系エラストマーとしては、ポリアミドと脂肪族ポリエステルとのブロック共重合体、ポリアミドと脂肪族ポリエーテルとのブロック共重合体を挙げることができる。
熱可塑性ポリアミド系エラストマーとして市販されているものとしては、例えば、宇部興産社製の「UBESTA」(登録商標)、ダイセル・エボニック社製の「ダイアミド」(登録商標)、「ベスタミドE」(登録商標)などが挙げられる。
当該中間層には、必要に応じて耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の通常熱可塑性樹脂に用いる各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で適量配合することができる。
1.3 その他
離型フィルムの表面層および裏面層の面は、両方とも平滑でも、凹凸が形成されていてもよい。一方が平滑で他方に凹凸が形成されていてもよい。両方に凹凸が形成されている場合、各面のRa(算術平均粗さ)や表面形状は同じでも異なってもよい。表面層に凹凸が形成されていると、平滑である場合に比べて、封止体の金型からの離型性が向上する。
平滑である場合の面の算術平均粗さ(Ra)は、表面層および裏面層とも、0.01~1μmの範囲内が好ましく、0.05~0.5μmの範囲内がより好ましい。凹凸が形成されている場合の表面のRaは、0.5~5μmの範囲内が好ましく、1~4μmの範囲内がより好ましい。
凹凸が形成されている場合の表面形状は、複数の凸部および/または凹部がランダムに分布した形状でもよく、複数の凸部および/または凹部が規則的に配列した形状でもよい。また、複数の凸部および/または凹部の形状や大きさは、同じでもよく異なってもよい。
凸部としては、離型フィルムの表面に延在する長尺の凸条、点在する突起等が挙げられる。凹部としては、離型フィルムの表面に延在する長尺の溝、点在する穴等が挙げられる。
凸条または溝の形状としては、直線、曲線、折れ曲がり形状等が挙げられる。離型フィルム表面においては、複数の凸条または溝が平行に存在して縞状をなしていてもよい。凸条または溝の、長手方向に直交する方向の断面形状としては、三角形(V字形)等の多角形、半円形等が挙げられる。
突起または穴の形状としては、三角錐形、四角錐形、六角錐形等の多角錐形、円錐形、半球形、多面体形、その他各種不定形等が挙げられる。
本発明フィルムは、通常、表面層/中間層/裏面層で構成される。各層は、通常、直接積層されているが、接着層などを介して積層されていてもよい。
表面層および裏面層の厚みは、通常、0.5~80μmの範囲内であり、好ましくは3~50μmの範囲内であり、より好ましくは3~20μmの範囲内である。中間層の厚みは、通常、4~180μmの範囲内であり、好ましくは20~150μmの範囲内であり、より好ましくは30~100μmの範囲内である。
本発明フィルムの総厚みとしては、通常、30~250μmの範囲内であり、好ましくは40~200μmの範囲内であり、より好ましくは50~150μmの範囲内である。
本発明フィルムは、基板、半導体素子、および接続端子を備える構造体を金型内に設置し、硬化性樹脂で封止して封止体を製造するに際して、当該金型の深さが8mmないし12mm、15mmから25mm程度であっても金型壁面への追従性を有しうる。
2 本発明フィルムの製造方法
本発明フィルムの製造方法は、特に制限はなく積層樹脂フィルムにおける公知の方法を用いることができるが、生産性や出来上がったフィルムの物性等を考慮すると、フラット状シートを押出成形により製膜して製造するのが好ましい。
より具体的には、例えば、バレル温度160~280℃に設定された3台の押出機に、それぞれの層を構成する樹脂を投入し、当該押出機内で樹脂を溶融・混練した後、240℃~280℃のTダイスよりシート状に押出す。この場合、3層の積層構成を形成するのに、フィードブロック方式を用いても、マルチマニホールド方式を用いてもよい。押出されたシート(フィルム)は20~80℃の引き取りロールにて冷却固化される。冷却、固定されたのち、巻き取り機にて巻き取ってフィルムロールとなる。
さらに本発明フィルムは、引き取りロールにて冷却固化した後に延伸することにより製造してもよい。かかる延伸方法についても特に制限はなく、縦一軸延伸、横一軸延伸、同時二軸延伸、または逐次二軸延伸等公知の方法を用いることができる。具体的には、引き取りロールにて冷却固化した後、60~180℃の延伸温度にて、1.1~2.5倍の延伸倍率、1~150m/分の延伸速度で、縦一軸、横一軸、または縦横二軸の方向に延伸して本発明フィルムを製造することができる。
3 封止体の製造方法
本発明フィルムを用いて、半導体素子などを有する封止体を製造することができる。具体的には、基板、半導体素子、および接続端子を備える構造体を金型内に設置し、金型内壁と金型内に投入された硬化性樹脂との間に本発明フィルムを配置し、常法により樹脂封止部を形成することにより当該封止体を製造することができる。
樹脂封止部の形成方法としては、例えば、圧縮成形法またはトランスファ成形法が挙げられ、その際に使用する装置としては、公知の圧縮成形装置またはトランスファ成形装置を用いることができる。製造条件も、公知の半導体パッケージの製造方法における条件と同じ条件とすればよい。
本発明フィルムを用いて製造される封止体としては、基板と半導体素子と接続端子と樹脂封止部とを備えるものであれば特に制限されない。当該封止体としては、例えば、パワー半導体モジュール、ハイブリッドメモリキューブ(hybrid memory cube)等が挙げられる。樹脂封止部の厚さは、特に制限されないが、3~50mmの範囲内が好ましく、5~30mmの範囲内がより好ましい。本発明フィルムは、金型の深さが8~25mm程度であっても金型壁面への追従性を有しうることから、5mmより厚い樹脂封止部でも得ることができる。
圧縮成形法およびトランスファ成形法は、具体的には、例えば、次のような工程を含む。
[A]圧縮成形法
(1a)凹部を有する下金型と凹部を有しない上金型とを備える金型の下金型に、本発明フィルムが下金型の凹部を覆うように本発明フィルムを配置する工程、
(2a)本発明フィルムを下金型のキャビティ面の側に真空吸引する工程、
(3a)下金型の凹部内に硬化性樹脂を充填する工程、
(4a)基板と積層構造とシリコン貫通ビアとを備える構造体を上金型と下金型との間に設置し、上金型と下金型とを型締めし、上金型と下金型との間に形成されたキャビティを硬化性樹脂で満たして硬化させて樹脂封止部を形成することにより封止体を得る工程、
(5a)金型から封止体を取り出す工程。
金型としては、圧縮成形法に用いられる金型として公知のものを使用することができる。
金型の加熱温度、すなわち硬化性樹脂の加熱温度は、用いる硬化性樹脂の種類、硬化時間等によって異なるが、100~185℃の範囲内が好ましく、150~180℃の範囲内がより好ましい。加熱温度が当該範囲の下限値以上であれば、半導体パッケージの生産性に優れる。加熱温度が当該範囲の上限値以下であれば、硬化性樹脂の劣化が抑えられる。
硬化性樹脂の熱膨張率に起因する樹脂封止部の形状変化を抑制する点から、封止体の保護が特に求められる場合には、前記範囲内においてできるだけ低い温度で加熱することが好ましい。
硬化性樹脂としては、例えば、半導体モジュール等の製造に用いられている各種の硬化性の樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。
エポキシ樹脂は、その末端に反応性のエポキシ基を持つ熱硬化型の合成樹脂であり、例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの縮合反応により製造されるビスフェノールA型エポキシ樹脂や、ノボラック系エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、高分子型エポキシ樹脂およびグリシジルエステル型エポキシ樹脂などを挙げることができる。これらを単独で、もしくはビスフェノールA型エポキシ樹脂とその他の一種もしくは二種以上の樹脂を混合して使用することができる。
シリコーン樹脂としては、特に制限されないが、例えば、熱硬化性、またはUV硬化性のシリコーン樹脂等が挙げられる。特に、シリコーン樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物は付加硬化型シリコーン樹脂組成物を含むことが好ましい。具体的には、例えば、住友ベークライト社製のスミコンEME G770H type F ver.GR、ナガセケムテックス社製のT693/R4719-SP10等が挙げられる。
硬化性樹脂には、カーボンブラック、熔融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が含まれてもよい。また、硬化性樹脂は固体のものでも液状のものでもよく、特に制限されない。
[B]トランスファ成形法
(1b)凹部を有する上金型と凹部を有しない下金型とを備える金型の上金型に、本発明フィルムが上金型の凹部の開口を覆うように本発明フィルムを配置する工程、
(2b)本発明フィルムを上金型のキャビティ面の側に真空吸引する工程、
(3b)基板と積層構造とシリコン貫通ビアとを備える構造体を下金型の所定の位置に設置し、上金型と下金型とを型締めする工程、
(4b)上金型と下金型との間に形成されたキャビティ内に硬化性樹脂を充填し、硬化させることによって樹脂封止部を形成することにより封止体を得る工程、
(5b)金型内から封止体を取り出す工程。
金型としては、トンラスファ成形法に用いられる金型として公知のものを使用することができる。
金型の加熱温度、すなわち硬化性樹脂の加熱温度は、用いる硬化性樹脂の種類、硬化時間等によって異なるが、前記圧縮成型法における温度範囲と同じ範囲とすることができる。また、硬化性樹脂についても、前記と同様のものを使用することができる。
硬化性樹脂の充填時の樹脂圧は、2~30MPaの範囲内が好ましく、3~10MPaの範囲内がより好ましい。樹脂圧が当該範囲の下限値以上であれば、硬化性樹脂の充填不足等の欠点が生じにくい。樹脂圧が当該範囲の上限値以下であれば、優れた品質の封止体が得られやすい。硬化性樹脂の樹脂圧は、プランジャによって調整することができる。
封止体の製造方法は上記に何ら制限されず、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。例えば、本発明フィルムから封止体を剥離するタイミングは、金型から封止体を取り出す時に限定されず、金型から本発明フィルムとともに封止体を取り出し、その後、封止体から本発明フィルムを剥離してもよい。
個片化は、公知の方法により行うことができ、かかる個片化の方法として、例えばダイシング法が挙げられる。ダイシング法は、ダイシングブレードを回転させながら対象物を切断する方法である。ダイシングブレードとしては、典型的には、ダイヤモンド粉を円盤の外周に焼結した回転刃(ダイヤモンドカッター)が用いられる。ダイシング法による個片化は、例えば、切断対象物(封止体)を、治具を介して処理台上に固定し、切断対象物の切断領域と前記治具の間にダイシングブレードを挿入する空間がある状態で前記ダイシングブレードを走行させる方法により行うことができる。
個片化を行う場合、前記のように切断対象物を切断する工程(切断工程)の後、前記ダイシングブレードを覆うケースから離れた位置に配置されるノズルから切断対象物に向かって液体を供給しながら前記処理台を移動させる異物除去工程が含まれてもよい。
工程(5a)または工程(5b)の後、任意の情報を表示するために、樹脂封止部の表面にインクを塗布し、インク層を形成する工程を行ってもよい。
インク層によって表示される情報としては、特に制限されず、シリアルナンバー、製造メーカーに関する情報、部品の種別等が挙げられる。インクの塗布方法は、特に制限されず、例えばインクジェット法、スクリーン印刷、ゴム版からの転写等の各種印刷法を適用することができる。インクとしては、特に制限されず、公知のインクのなかから適宜選択される。
インク層の形成方法としては、硬化速度が速くパッケージ上での滲みが少ない、また熱風を当てないのでパッケージの位置ずれが少ない等の点で、光硬化型のインクを使用し、該インクをインクジェット法により樹脂封止部の表面に付着させ、該インクを光の照射により硬化させる方法が好ましい。
光硬化型のインクとしては、典型的には、重合性化合物(モノマー、オリゴマー等)を含むものを用いることができる。インクには、必要に応じて、顔料、染料等の色材、液体媒体(溶媒または分散媒)、重合禁止剤、光重合開始剤、その他各種添加剤等が添加される。その他の添加剤としては、たとえば、スリップ剤、重合促進剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、放射線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、増粘剤等が挙げられる。
光硬化型のインクを硬化する光としては、例えば、紫外線、可視光線、赤外線、電子線、放射線等が挙げられる。紫外線の光源としては、例えば、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧または高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、紫外線発光ダイオード、紫外線レーザーダイオード、自然光等が挙げられる。
光の照射は、常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。また、空気中で行ってもよく、窒素雰囲気、二酸化炭素雰囲気等の不活性ガス雰囲気で行ってもよい。
樹脂封止部の形状は、特に制限されない。例えば、樹脂封止部の上面や側面は平らではなく、段差があってもよい。
樹脂封止部を形成する際、半導体チップやその他部品が本発明フィルムに直接接していてもよい。この場合、本発明フィルムに直接接した部分は樹脂封止部から露出する。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
(1)原料
使用した原料は、次のとおりである。
TPX-1:ポリメチルペンテン樹脂(4-メチル-1-ペンテン重合体;密度:833kg/m、MFR:25g/10分(260℃、5kg荷重)、融点:228℃)
POS:ポリオレフィン系エラストマー(ミラストマー5031F、三井化学社製)
PSE:スチレン系エラストマー(ハイブラー7311F、クラレ社製)
PEE:ポリエステル系エラストマー(ハイトレル4057N、東レデュポン社製)
PAE:ポリアミド系エラストマー(ベスタミドE14-1、ダイセルエボニック社製)
(2)離型フィルムの金型壁面への追従性評価方法
離型フィルムの金型壁面への追従性を、中央部に40mm×40mmの正方形で、深さが50mmの凹部を有する図2に記載するようなフィルム絞り性評価用金型(アルミ製)により評価した。当該金型には、凹部の底の壁面に沿って、真空吸引用の孔が配設され、真空吸引溝4から真空ポンプ(図なし)に繋がっている。
金型を175℃に昇温し、図3の上図に示すように、昇温した金型の上部に110mm×110mmのサイズにカットした試験用離型フィルムをセットし、さらに、当該フィルムの上側に、アルミ製(厚さ3mm)の押さえ板を載せ、上部から100Nの荷重をかけ、当該フィルムを挟み込んだ。金型凹部の深さ調整は、底にアルミ製の底板(1~50mm)を設置することにより行った。
真空ポンプを稼働させ、0.02~0.05MPaで減圧吸引することで、図3の下図に示すように、試験用離型フィルムを金型壁面(凹部の側面と底面)に吸着させた。吸引時間は2分間とした。
試験用離型フィルムが破れずに金型壁面に密着して絞れた状態を問題なしとして、順次底板の厚さを変えて凹部の深さを適宜調整し、試験用離型フィルムが破れずに絞れた最大深さを求めた。
(3)離型フィルムの製造
バレル温度160~180℃に設定された3台の押出機に、表1に示すそれぞれの層を構成する樹脂を投入し、当該押出機内で樹脂を溶融・混練した後、240~280℃のTダイスよりシート状に押出し、押出されたシート(フィルム)を20~80℃の引き取りロールにて冷却固化し、表1に示す厚みの離型フィルムを製造した。
Figure 0007442763000001
本発明フィルム(実施例1~7)は、深さ15mm以上絞っても破れず、優れた追従性を有していた。一方、比較用フィルム(比較例1)では、深さ10mmまで破れずに絞ることができたが、それ以上深く絞ることはできなかった。
本発明フィルムは、基板、半導体素子、および接続端子を備える構造体を金型内に設置し、硬化性樹脂で封止して封止体を製造する場合において、優れた金型壁面への追従性を有するため、例えば5mmより厚い半導体モジュール等の封止体を製造するための離型フィルムとして有用である。
1 表面層
2 中間層
3 裏面層
4 真空吸引溝
5 底板
6 押さえ板
7 試験用離型フィルム

Claims (5)

  1. 基板、半導体素子、および接続端子を備える構造体を金型内に設置し、当該構造体を硬化性樹脂で封止して封止体を製造する方法において、金型内壁と金型内に投入された硬化性樹脂との間に配置される離型フィルムであって、ポリメチルペンテン樹脂から主としてなる表面層と、ポリメチルペンテン樹脂および熱可塑性エラストマーから主としてなる中間層(ポリプロピレン、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、またはポリアミド樹脂を含むものを除く。)と、前記中間層を挟んで前記表面層に対向する面側に、ポリメチルペンテン樹脂から主としてなる裏面層とが少なくとも積層され、前記中間層におけるポリメチルペンテン樹脂および熱可塑性エラストマーの配合割合が、ポリメチルペンテン樹脂が60~90質量%の範囲内に対して、熱可塑性エラストマーが10~40質量%の範囲内であることを特徴とする、離型フィルム。
  2. ポリメチルペンテン樹脂が、85~100モル%の4-メチル-1-ペンテンを含む重合体である、請求項1に記載の離型フィルム。
  3. 熱可塑性エラストマーが、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、またはポリアミド系エラストマーである、請求項1または2に記載の離型フィルム。
  4. 金型内の深さが15mm以上でも金型壁面への追従性を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の離型フィルム。
  5. フッ素樹脂から主としてなる樹脂層を有しない、請求項1~4のいずれか1項に記載の離型フィルム。
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