JP7442700B1 - 樹脂組成物及び樹脂シート - Google Patents

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Abstract

【課題】高い白色度、及び優れた耐候性を付与した樹脂組成物、及び樹脂シートを提供する。【解決手段】 オレフィン系樹脂と、炭酸カルシウムと、を含有する樹脂組成物であって、前記炭酸カルシウムの粒子が、体積頻度粒度分布測定において、粒度分布(D90/D10)の値が1~5であり、かつ平均粒子径(D50)が2~10μmであることを特徴とする、樹脂組成物である。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物及び樹脂シートに関する。
環境負荷を考慮しつつ、外観が良く、タフな樹脂組成物及び樹脂シートが望まれている。例えば、オレフィン系樹脂に、充填剤として炭酸カルシウムを配合した樹脂組成物を延伸して得た樹脂シートは、オレフィン系樹脂単独で形成した樹脂シートと比較して、外観が良く、耐候性も向上する。
特許文献1は、オレフィン系樹脂に炭酸カルシウムを配合し、混練した樹脂組成物を延伸して樹脂シートを形成することにより、印刷性に優れた樹脂シートを提供する。また、オレフィン系樹脂単独で形成した樹脂シートと比較して、炭酸カルシウムの充填量分のオレフィン系樹脂を削減できるため環境負荷が低減できる。
特許3773439
しかしながら、屋外や店舗等で用いられる展示物、ポスター、電飾ポスター、ラベル用紙、又はポップ等の用途において、より優れた外観性(白色度)、及び耐候性を有する合成紙を提供するために、研究、開発する余地が残っていた。
そこで、本発明はこれらの課題を解決することを目的としている。すなわち、本発明の目的は、より優れた外観性、及び耐候性を付与した樹脂組成物、及びその樹脂シートを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の粒度分布、及び特定の平均粒径を有する炭酸カルシウムを、オレフィン系樹脂と配合して得た樹脂組成物及び樹脂シートが、より優れた外観性、及び耐候性を付与することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下に示す種々の具体的態様を提供する。
[1]オレフィン系樹脂と、炭酸カルシウムと、を含有する樹脂組成物であって、
前記炭酸カルシウムの粒子が、体積頻度粒度分布測定において、
粒度分布(D90/D10)の値が1~5であり、かつ
平均粒子径(D50)が2~10μmであることを特徴とする、樹脂組成物。
[2]前記樹脂組成物の白色度が、85以上である、上記[1]に記載の樹脂組成物。
[3] オレフィン系樹脂と、炭酸カルシウムと、を含有する樹脂組成物から成る樹脂シートであって、
前記炭酸カルシウムの粒子が、体積頻度粒度分布測定において、
粒度分布(D90/D10)の値が1~5であり、かつ
平均粒子径(D50)が2~10μmであることを特徴とする、
樹脂シート。
[4]前記樹脂シートの白色度が、90以上である、上記[3]に記載の樹脂シート。
[5]前記樹脂組成物における、前記オレフィン系樹脂の含有量が50~90質量%であり、かつ
前記炭酸カルシウムの含有量が10~50質量%である、
上記[3]に記載の樹脂シート。
[6]延伸シートである、上記[3]に記載の樹脂シート。
[7]色差ΔEが1.5以下である、上記[3]に記載の樹脂シート。
本発明によれば、より優れた外観性、及び耐候性を付与した樹脂組成物、及びその樹脂シートを提供することができる。
また、本発明によれば、特定の条件を満たす炭酸カルシウムを配合した樹脂組成物を延伸して樹脂シートを形成することにより、樹脂シートに均一なボイドが形成され、高強度かつ高い平滑性を有する樹脂シートを提供することができる。
また、本発明によれば、樹脂組成物の一部が炭酸カルシウムに置き換わることにより、炭酸カルシウムを充填しない場合の樹脂シートと比較して、樹脂原料の使用量が低減できるため、プラスチック生産の観点から環境負荷を低減することができる。
また、本発明に好適に使用される炭酸カルシウムは、セメント製造の過程で発生する廃棄物と排ガス(CO)から化学的に合成される炭酸カルシウムであるため、廃棄物及び大気中へ排出されるCO量の低減に貢献し、環境負荷を低減することができる。
本発明に係る炭酸カルシウムを走査電子顕微鏡(SEM)により撮像した写真図である。
以下、本発明の樹脂組成物、及び樹脂シートについて詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の一例(代表例)であり、これに限定されない。
実施形態及び実施例では、優れた外観性を示す指標として、白色度を評価している。更に、耐候性を示す指標として、ΔE及びヒビの有無を評価している。
(樹脂組成物)
まず、本発明の樹脂組成物の構成を簡単に説明する。
本発明の樹脂組成物は、樹脂としてオレフィン系樹脂と、充填剤としての炭酸カルシウムを含有する。
本発明に係る炭酸カルシウムの平均粒径、及び粒度分布は、体積頻度粒度分布測定における累積値で10%となる粒子径をD10、50%となる粒子径をD50、90%となる粒子径をD90としたとき、D90/D10の値が1~5であり、かつ平均粒子径 (D50)が2~10μmとなることを特徴とする。
上記の特徴を有することにより、本発明の樹脂組成物、及び該樹脂組成物から形成される樹脂シートは、高い白色度、及び優れた耐候性を有する。また、炭酸カルシウムは焼却灰等を原料として電気化学的に合成されたもの(副生炭酸カルシウム)であることが好ましい。これにより、製造時に以下の反応を介してCOを取り込むため、大気中のCO量の低減に貢献することができる。
CaO+CO→CaCO
次に、本発明の樹脂組成物に用いる原材料に関して説明する。
〈オレフィン系樹脂〉
オレフィン系樹脂は、樹脂組成物の主材料として用いられる。これにより、樹脂組成物を用いて形成される樹脂シートに耐水性、耐久性、軽量性、物理的強度など様々な利点を付与することができる。
オレフィン系樹脂は、例えば、プロピレン系樹脂、又はポリエチレン系樹脂を用いることができる。物理的強度の観点から、プロピレン系樹脂を用いることが好ましい。例えば、プロピレン系樹脂としては、プロピレンを単独重合させたアイソタクティック重合体又はシンジオタクティック重合体を用いることができる。またプロピレンを主成分とし、これとエチレン、1-ブテン等のα-オレフィンとを共重合させた様々なプロピレン系共重合体を使用することもできる。共重合体は2元系でも3元系以上の多元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。これらの中でも、取扱いの容易さの観点から、プロピレン単独重合体が樹脂シートの主原料として、好ましい。
〈オレフィン系樹脂の配合〉
樹脂組成物中へのオレフィン系樹脂の配合量は、物理的強度の観点から、下限として、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が特に好ましい。
また、白色度及び耐候性の観点から、上限として、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下が特に好ましい。
〈その他の樹脂〉
本発明の樹脂組成物は、上記オレフィン系樹脂に加えて、白色度、及び耐候性の効果を阻害しない範囲で、その他の熱可塑性樹脂を含有していてもよい。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等の結晶性エチレン系樹脂、ポリメチル-1-ペンテン等の結晶性オレフィン系樹脂、アミド系樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは2種以上混合して用いることもできる。
〈炭酸カルシウム〉
炭酸カルシウムは、充填剤として用いられ、樹脂組成物中に加えることで、白色度や耐候性を向上させるだけでなく、オレフィン系樹脂の配合量を減らすことができ、結果として環境負荷を低減できる。また、延伸樹脂シートを作成する場合は、炭酸カルシウムが核となって延伸時にボイドが形成され、更なる白色度および耐候性の向上が見込まれる。
〈〈平均粒径及び粒度分布〉〉
本願の炭酸カルシウムは、特定の平均粒子径と、特定の粒度分布を有する。
平均粒径、及び粒度分布に関しては、一般に、レーザー回折散乱法による体積頻度粒度分布測定により測定する。平均粒径、粒度分布等の特徴は、以下の様に一般式で示すことができる。
平均粒子径は、体積頻度粒度分布測定における累積値で50%となる粒子径であり、メジアン径とも称する。平均粒子径は、D50で表現され、粒度分布の真ん中の粒径を示す値である。
また、粒度分布は色々な指標で表現される。本願では平均粒子径、粒度分布、分級精度、及び半値幅の指標を用いる。
Figure 0007442700000001
Figure 0007442700000002
式中、D90は体積頻度粒度分布測定における累積値で90%となる粒子径を示している。D10は体積頻度粒度分布測定における累積値で10%となる粒子径を示している。同様に、D25、D75は、体積頻度粒度分布測定における累積値で25%、75%となる粒子径をそれぞれ示す。
数式1は、粒度分布を示し、D90/D10=1に近づく程、粒度分布がシャープであることを示す。1は理論値であり、1未満となることは理論上あり得ない。
数式2は、分級精度を示し、D75/D25=1に近づく程、分級精度が高いことを示す。1は理論値であり、1未満となることは理論上あり得ない。
本発明に係る樹脂組成物に優れた外観性、及び耐候性を付与する観点から、炭酸カルシウムは、D90/D10の値が、上限として、5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、2.5以下であることが更に好ましい。なお、下限としては、理論値としての1以上である。
本発明に係る樹脂組成物に優れた外観性、及び耐候性を付与する観点から、炭酸カルシウムは、D50の値が、下限として、2μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、4μm以上であることが更に好ましい。また、白色度、及び耐候性の観点から、上限として、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましく、6μm以下であることが更に好ましい。
上述した炭酸カルシウムは、鉱山から採掘した石灰石を直接粉砕して作製する方法よりも、化学合成により作製する方が得られやすく、品質的にもそちらが好ましい。後述する副生炭酸カルシウムも軽質炭酸カルシウムの一種に含まれる。鉱山への環境負荷低減の観点からは、軽質炭酸カルシウム、又は副生炭酸カルシウムを用いることが好ましい。
〈〈副生炭酸カルシウム〉〉
副生炭酸カルシウムは、後述する製法により、重質炭酸カルシウムと比較して、粒径が小さく、粒度分布が狭く、白色度が高く、また、不純物が少ないという特性を有する。発明者等は、鋭意研究した結果、これらの特性が樹脂組成物及び樹脂シートから形成される樹脂シートに優れた外観性、及び耐候性を付与することを見出した。
従って、外観性及び耐候性を付与する観点から、本発明に係る炭酸カルシウムとして、副生炭酸カルシウムを用いることが好ましい。また、これまで外観性及び耐候性を付与するために、従来技術では助剤として耐候剤や着色防止剤等の使用量を使用する必要があった。副生炭酸カルシウムを使用することにより、これらの助剤の使用量を低減することができる観点からも、副生炭酸カルシウムを用いることが好ましい。更に、後述するが、副生炭酸カルシウムは後述する製法により、CO取込を行うことができる。そのため、大気中へ排出されるCO量の低減に貢献できる点においても好ましい。
〈〈副生炭酸カルシウムの製造方法〉〉
副生炭酸カルシウムの製造方法は、カルシウム(Ca)含有廃棄物から炭酸カルシウムを生成する炭酸カルシウム生成方法において、カルシウム含有廃棄物に塩酸水を添加して、カルシウムを溶解させ、カルシウムイオンを含む水溶液を生成するカルシウム溶解工程(カルシウム溶解手段)と、前記カルシウムイオンを含有する水溶液の水素イオン濃度指数を調整し、Si、Al、Mg、及び重金属からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む成分を該水溶液から分離する分離工程(分離手段)と、該分離工程(分離手段)を経て得られた水溶液と、炭酸カリウム及び/又は炭酸ナトリウムを含む水溶液を用いて、炭酸カルシウムを調製する炭酸カルシウム調製工程(炭酸カルシウム調製手段)とを備える製造方法である。ここで、カルシウムを溶解させるための塩酸水は、例えばバイポーラ膜電気透析法(BMED)により生成されることができる。また、炭酸カリウム及び/又は炭酸ナトリウムを含む水溶液はバイポーラ膜電気透析法により生成させるアルカリ溶液に二酸化炭素を接触させて生成されることができる。当該二酸化炭素は、例えば、火力発電設備などの燃焼排ガスや、セメント製造設備での排ガスに含まれている二酸化炭素を使用することができ、また、大気中の二酸化炭素を直接吸収させて利用することも可能である。
〈〈炭酸カルシウムの配合〉〉
樹脂組成物中への炭酸カルシウムの配合量は、白色度、及び耐候性の観点から、下限として、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。また、耐候性及び強度の観点から、上限として、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。
〈〈炭酸カルシウムの純度〉〉
本発明に係る炭酸カルシウムは、純度に関して、白色度、及び耐候性の観点から、下限として、95%以上であることが好ましく、97%以上であることがより好ましく、99%以上であることが更に好ましい。なお、上限としては、理論値としての100%以下である。
本発明に係る炭酸カルシウムは、製造工程においてSi,Al、Fe、Mgなどをゲルや水和物として除去するため、SiO、Al、Fe、MgOの含有量が少ない特徴を有する。好ましくは、炭酸カルシウム中のSiO、Al、Fe、MgOの含有量がそれぞれ0.1%以下であり、より好ましくは、炭酸カルシウム中のSiO、Al、Fe、MgOの合計含有量が0.1%以下である。また、炭酸カルシウム中のFe2O3、SiO2、MgOの含有量がそれぞれ0.1%以下が好ましく、0.05%以下がより好ましく、0.01%以下が更に好ましい。また、一方、Ca溶液とNaCO3溶液を反応させて炭酸カルシウムを生成するため、Naを幾分か含有する。NaOの含有量は通常は0.1%以上である。他物質の影響を抑える観点から2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることが更に好ましい。
〈その他の添加剤〉
本発明に係る樹脂組成物は、白色度、及び耐候性の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて分散剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、ブロッキング防止剤、結晶核剤、滑剤等の公知の添加剤を配合してもよい。
〈樹脂組成物の特性〉
〈〈白色度〉〉
白色度は、樹脂組成物及び後述する樹脂シートの外観の白色の程度を示す指標であり、上限の理論値は100であり、白色度が高い程、外観の審美性は増す。白色度は、測定装置(スガ試験機(株)製:SM-5)を用いて、JIS-L1015の規格に準拠して測定される。樹脂組成物は、以下の様にして測定を行うことができる。
樹脂組成物の白色度は、下記の条件にて樹脂組成物を無延伸シート化した後に測定する。
(i)まず、15cm×15cmの外周、10cm×10cmの内部空洞、及び500μmの厚みを有し、カタカナのロの字の開口形状をした金属金型(以下、「スペーサー」と称することがある)を準備する。
(ii)次に、熱プレス機に間紙としてPETシート(下面に対応)を敷き、その上にスペーサーを配置し、スペーサ-内部の空洞に樹脂組成物のペレットを適量敷き詰める。(iii)その後、敷き詰めたペレットの上にPETシート(上面に対応)を被せ、最後に熱プレス機にて230℃、15MPaで1min挟み、厚み500μmの白色度測定用の無延伸シートを得る。
本発明に係る樹脂組成物の白色度は下限として、85以上であることが好ましく、90以上であることが更に好ましい。
〈樹脂組成物の製造方法〉
本発明に係る樹脂組成物は、従来公知の方法に従って製造することができる。
通常はポッパー等で予めオレフィン系樹脂と炭酸カルシウムを攪拌・混合し、次いでフィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練することで、樹脂組成物を製造することができる。溶融混練後に、ダイスやダイ等を用いてペレット状や平板状に成形してもよい。
なお、溶融混練に際しての加熱温度は、使用する樹脂の種類(融点)によって異なるが、オレフィン系樹脂を主成分として使用する際は、押出機のシリンダー温度として通常180~300℃程度、特に圧縮ゾーンでのシリンダー温度として通常200~250℃程度であり、吐出される樹脂温度は200~250℃程度である。
(樹脂シート)
〈層構成〉
本発明に係る樹脂シートは、上記樹脂組成物から形成される。
本発明の樹脂シートは、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。樹脂シートが多層構造である場合、各層を構成する樹脂組成物は同一であっても、異なっていてもよい。樹脂シートが多層構造であって、各層を構成する樹脂組成物が異なる場合には、少なくとも一層が本発明に係る樹脂組成物を用いて形成された層であればよい。
〈延伸処理〉
本発明に係る樹脂シートは、無延伸シートであってもよく、延伸シートであってもよい。白色度、耐候性、コシ及び品質安定性の観点から、本発明に係る樹脂シートは延伸シートであることが好ましい。延伸シートの場合、その延伸軸数は一方向であっても、二方向以上であってもよいが、生産工程簡略化の観点から一軸延伸が好ましい。
〈樹脂シートの特性〉
〈〈厚み〉〉
樹脂シートの厚みは、JIS K7130:1999に準拠して測定した値である。樹脂シートが多層構造の場合には、複数の層全体として測定した値である。
樹脂シートの厚みは、所望性能に応じて適宜設定すればよく、特に制限されないが、30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、70μm以上であることがさらに好ましい。また、樹脂シートの厚みは、300μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、120μm以下であることがさらに好ましい。樹脂シートの厚みが上記下限以上であると、樹脂シートは十分な機械的強度を有し、樹脂シートの延伸成形又は使用の際の破断を防止しやすい。また樹脂シートの厚みが上記上限以下であると、樹脂シートが重くなりすぎず、取り扱いが容易になる傾向にある。
〈〈白色度〉〉
本発明に係る樹脂シートの白色度は、樹脂組成物等に延伸処理を施して作製した延伸後の樹脂シートに対して測定する。延伸処理は、上述した通り、延伸軸数は一方向であっても、二方向以上であってもよい。
白色度は、測定装置(スガ試験機(株)製:SM-5)を用いて、JIS-L1015の規格に準拠して測定される。
本発明に係る樹脂シートの白色度は、樹脂組成物を延伸することにより、樹脂組成物と比較して多孔化するため、光散乱性が増して白色度が高くなる。そのため、下限として、88以上であることが好ましく、90以上であることがより好ましく、92以上であることが更に好ましく、95以上であることが特に好ましい。
〈〈耐候性〉〉
耐候性は、樹脂シートが、風雨、温度変化、太陽光等に対して、劣化や変質を生じにくい性質であり、本願発明の評価項目の1つである。耐候性は、後述する色差ΔE、及びヒビ割れに関する評価を樹脂シートに対して行うことにより判断する。
具体的には、(i)測定用のサンプル(3cm×3cm)を作成し、(ii)サンプルに対して、メタルウェザーを用いて紫外線を80時間照射して劣化処理を実施する。この劣化処理は、サンプルを野外で2年間放置した場合の劣化に相当する。(iii)その後、色差ΔE、及びヒビ割れに関する測定を行う。
〈〈〈色差ΔE〉〉〉
本発明において色差ΔEは、耐候性の特性値の1つとして用いられている。色差ΔEとは、樹脂シートの色相の変化を示す指標であり、この値が低いほど着色が少ないことを意味する。理論値の下限が0であり、着色が全く無いことを示す。
JIS-Z8730:2009に準拠して測定され、色彩色差計(機器名:カラーコンピューターSM-T、スガ試験機社製)を用いてC光源にて、加速劣化処理前後の試験片の 明度L値、色座標a値、b値をそれぞれ求めて、下記式(1)によりΔEを求める。
式(1) ΔE = {(L -L 2+(a -a 2+(b -b 21/2
本発明に係る樹脂シートの色差ΔEは、劣化着色が少ない商品を提供する観点から2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.0以下が特に好ましい。一方で、通常は0.1以上である。
〈〈〈ヒビ〉〉〉
本発明においてヒビの評価は、耐候性の特性値の1つとして用いられている。ヒビは目視で確認し、実施例に記載の基準に従って評価を行う。
〈〈引張弾性率〉〉
引張弾性率は、樹脂シートの使用時の強度やコシを表す指標であり、値が大きい程コシが強くハリのある樹脂シートとなる。引張弾性率は、JIS K 7162に準拠して求められる。実際の測定は、オリエンテック(株)製テンシロンにて、温度23℃、相対湿度50%の条件で、引張速度20mm/分で測定する。
〈〈ボイド率〉〉
樹脂シート断面において、ボイド(空孔)が占める面積の割合であり、値が大きい程ボイドが多いことを意味する。上記ボイド率(空孔率)は、電子顕微鏡で観察したフィルムの断面の一定領域において、空孔が占める面積の比率により求めることができる。
白色度及び耐候性の向上、軽量化の観点からは、基材層のボイド率(空孔率)は、0%を超えることが好ましい一方、50%以下が好ましく、40%以下がより好ましい。空孔率が50%以下であれば、隣接して形成される空孔同士が繋がりにくく、連通孔による基材層の防湿性の低下を抑えやすい。
〈〈結晶状況〉〉
図1は、本発明に係る炭酸カルシウムを走査電子顕微鏡(SEM)により撮像した写真図である。図1において、左側は重質炭酸カルシウムの写真、右側は副生炭酸カルシウムの写真であり、下段は上段の拡大図である。上段の目盛りは50μm、下段の目盛りは10μmを示す。写真図から、副生炭酸カルシウムは、重質炭酸カルシウムと比較して明らかに粒径が小さく、粒子が整っており、粒度分布が狭いことが確認できる。また、
本発明で得られた炭酸カルシウムは、立方体状の形態を有している。また、生成される鉱物はすべてカルサイト(XRD(X’PertPro MPD、マルバーン・パナリティカル社製)を用いて測定される鉱物定性結果)であることが好ましい。
〈樹脂シートの製造方法〉
本発明に係る樹脂シートは、従来公知の種々の方法に従って製造することができる。例えば、本発明に係る樹脂組成物をシート状に溶融押出しして、無延伸の樹脂シートを成形することができる。必要に応じて、無延伸の樹脂シートを少なくとも一方向に延伸する、さらに、必要に応じてアニーリング処理(熱処理)し、続いて耳部をスリットすることにより、延伸した樹脂シート(「延伸シート」、又は「延伸樹脂シート」ということがある。)を得てもよい。
また、樹脂シートが単層構造である場合は、上述した樹脂組成物を溶融混練し、単一のダイスから押し出して、必要に応じて延伸すればよい。また、多層構造の樹脂シートである場合は、フィードブロック又はマルチマニホールドを使用した多層ダイスを用いる共押出方式や、複数のダイスを使用する押出ラミネーション方式等により複数の樹脂シートが積層した多層樹脂シートを製造することができる。さらに多層ダイスによる共押出方式と押出ラミネーション方式を組み合わせる方法により樹脂シートを製造することもできる。
樹脂シートの延伸は、公知の種々の方法によって行うことができる。具体的には、ロール群の周速差を利用した縦延伸方法、テンターオーブンを使用した横延伸方法、上記縦延伸と横延伸とを正順又は逆順に行う逐次2軸延伸方法、等を挙げることができる。
延伸時の温度は、特に限定されず、オレフィン系樹脂の延伸に好適な温度範囲内で実施することができる。具体的には、オレフィン系樹脂の融点より、2~15℃以上低い温度で行うことが好ましい。
<延伸倍率>
樹脂シートの延伸倍率は、特に制限されず、得られる樹脂シートの特性等を考慮して、適宜決定すればよい。縦1軸延伸時の延伸倍率は2~8倍の範囲であることが好ましく、3~7倍の範囲であることがより好ましく、4~6倍の範囲であることがさらに好ましい。また、横1軸延伸時の延伸倍率は2~12倍の範囲であることが好ましく、4~10倍の範囲であることがより好ましく、6~9倍の範囲であることがさらに好ましい。また、2軸方向に延伸する場合には、面積延伸倍率(縦倍率と横倍率の積)で、4~70倍の範囲であることが好ましく、10~60倍の範囲であることがより好ましく、20~50倍の範囲であることがさらに好ましい。樹脂シートが多層構造である場合、各層を構成する樹脂シートの延伸軸数、延伸倍率は同一であっても異なっていてもよい。
以下に、単層構造の樹脂シートの好ましい製造方法について説明する。まず、樹脂組成物を、押出機を用いて溶融混練し、単一のダイスに供給して、シート状に押し出し、オレフィン系樹脂の融点より低い温度にまで冷却することで、無延伸樹脂シートが得られる。
次に、この無延伸樹脂シートを、オレフィン系樹脂の融点よりも2~15℃以上低い延伸温度で、縦方向に3~10倍延伸する。これにより、縦方向に配向した1軸延伸樹脂シートが得られる。続いて、この1軸延伸樹脂シートを、オレフィン系樹脂の融点よりも2℃~15℃以上低い延伸温度で、横方向に4~12倍延伸する。これにより、2軸延伸樹脂シートが得られる。
<熱処理>
延伸後の樹脂シートには、熱処理を行うことが好ましい。熱処理の温度は、オレフィン系樹脂の融点より、1~15℃以上高い温度で行うことが好ましい。熱処理を行うことにより、オレフィン系樹脂の非晶部分の結晶化が促進されて延伸方向への熱収縮率が低減し、樹脂シートの寸法変化が少なくなる。熱処理の方法はロール加熱又は熱オーブンで行うのが一般的であるが、これらを組み合わせてもよい。
<表面処理>
延伸後の樹脂シートには、表面処理を行ってもよい。表面処理を行うことにより、樹脂シートの二次加工適性を向上させることができる。表面処理としては、コロナ放電処理、フレーム処理等の酸化処理等が挙げられる。
〈樹脂シートの用途〉
本発明に係る樹脂シートの用途は特に限定されないが、例えば、屋外や店舗等で用いられるポスター、電飾ポスター、ラベル用紙、又はポップ等の用途に利用できる。また、樹脂シートに印刷を施す場合は、例えば、樹脂シート表面にインキ受理層を施してもよい。
〈リサイクルシステム〉
本発明に係る樹脂組成物又は樹脂シートを用いることにより、環境資源を無駄遣いしないリサイクルシステムを構築することができる。例えば、本発明に係るリサイクルシステムは、本発明に係る樹脂組成物又は樹脂シートを使用した製品を、ユーザが廃棄して、その廃棄物がごみ処理場等で燃焼されて燃焼灰となった場合に、その燃焼灰から上述してきた手法により副生炭酸カルシウムを合成する手段と、その副生炭酸カルシウムを使用して、本発明に係る樹脂組成物又は樹脂シートを作製する手段を備えることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〈炭酸カルシウムの粒度測定〉
レーザー回折散乱法による体積頻度粒度分布測定により、それぞれの実施例において使用する炭酸カルシウムの平均粒径(d50)、粒度分布(d90/d10)、粒度分布(d75/d25)、及び半値幅を測定した。結果を原料一覧である表1及び評価一覧である表2に併記する。
Figure 0007442700000003
<実施例1>
プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロピレン社製、MFR(230℃、2.16kg荷重):11g/10分)70質量部、及び炭酸カルシウム(セメント製造時に生じる廃棄物およびCOから合成した副生炭酸カルシウム(平均粒径d50:4.5μm、粒度分布d90/d10:2.1、粒度分布d75/d25:1.4、半値幅3.1μm))30質量部を、スーパーミキサーで混合し、230℃に設定した2軸混練機にて溶融混練し、混練物をダイよりストランド状に押し出し、これを水槽中で冷却した後にペレタイザーでカットして、樹脂組成物を得た。
次いで、得られた樹脂組成物を230℃に設定した押出機を用いて再び溶融混練し、混練物をTダイよりシート状に押し出し、これを冷却装置にて60℃まで冷却して単層の無延伸シートを得た。
なお、無延伸シートの評価試験の際には、後述するように、15cm×15cmの外周、10cm×10cmの内部空洞、及び500μmの厚みを有し、カタカナのロの字の開口形状をしたスペーサーを準備し、樹脂組成物のペレットをスペーサーからシート状に押出し、これを冷却装置にて60℃まで冷却して得た単層の無延伸シートを使用した。
次いで、この無延伸樹脂シートを143℃まで加熱した後、多数のロール群の周速差を利用したロール間延伸法にて樹脂シートの搬送方向(縦方向)に4.2倍の延伸倍率で1軸延伸し、その後60℃にて冷却して1軸延伸された樹脂シートを得た。
次いで、この1軸延伸された樹脂シートを、テンターオーブンを用いて160℃まで再加熱し、テンター延伸機を用いたクリップ延伸法にて樹脂シートの幅方向(横方向)に8.5倍の延伸倍率で延伸し、クリップで保持したままさらにオーブンで、160℃で2秒間アニーリング処理を行った。その後60℃まで冷却し、耳部をスリットして、逐次2軸延伸された単層の樹脂シートを得、これを実施例1の樹脂シートとした。
上記で得られた実施例1の樹脂組成物及び樹脂シートを用いて下記のとおり白色度及び耐候性の評価を行った。結果を表2にまとめて示す。
<実施例2、3、比較例1、2>
実施例2、及び3に関しては、実施例1から成分は変更せずに、配合量のみを表2に記載の値に変更して、実施例2、及び3の樹脂組成物及び樹脂シートを得た。
また、比較例1、及び2に関しては、実施例1から炭酸カルシウムの種類のみを変更して比較例1、及び2の樹脂組成物及び樹脂シートを得た。
また、得られたそれぞれの樹脂組成物及び樹脂シートに対して、同様の評価を行い、結果を表2にまとめて示した。
[評価方法]
上記の実施例及び比較例より得られた樹脂組成物及び樹脂シートについて、下記の評価手法及び評価基準に従って物性評価を行った。
<白色度>
<<延伸前>>
樹脂組成物の白色度は、延伸前の樹脂シート(無延伸シート)を使用して、下記の条件で測定した。
(i)まず、15cm×15cmの外周、10cm×10cmの内部空洞、及び500μmの厚みを有し、カタカナのロの字の開口形状をした金属金型(スペーサー)を準備し、(ii)次に、熱プレス機に間紙としてPETシート(下面に対応)を敷き、その上にスペーサーを配置し、スペーサ-内部の空洞に樹脂組成物のペレットを適量敷き詰めた。(iii)その後、敷き詰めたペレットの上にPETシート(上面に対応)を被せ、最後に熱プレス機にて230℃、15MPaで1min挟み、厚み500μmの白色度測定用の無延伸シートを得た後、測定装置(スガ試験機(株)製:SM-5)を用いて、JIS-L1015の規格に準拠して測定を行った。
<<延伸後>>
実施例1等で得た延伸後の樹脂シートを、測定装置(スガ試験機(株)製:SM-5)を用いて、JIS-L1015の規格に準拠して測定を行った。
また、白色度の評価は、延伸処理に基づくボイドの有無を考慮して、延伸前と延伸後のサンプルでそれぞれ下記の基準に従って評価を行った。
〈〈延伸前〉〉
〇 90以上
△ 85以上
× 85未満
〈〈延伸後〉〉
◎ 95以上
〇 92以上
△ 88以上
× 88未満
<耐候性(ΔE)>
耐候性の評価の前処理として、(i)測定用のサンプル(3cm×3cm)を作成し、(ii)サンプルに対して、メタルウェザーを用いて紫外線を80時間照射して劣化処理を実施した。その後、色差ΔE、及びヒビ割れに関する測定を行った。
色差ΔEに関して、JIS-Z8730:2009に準拠して測定を行い、色彩色差計(機器名:カラーコンピューターSM-T、スガ試験機社製)を用いてC光源にて、加速劣化処理前後の試験片の 明度L値、色座標a値、b値をそれぞれ求めて、下記式(1)によりΔEを求めた。
式(1) ΔE = {(L -L 2+(a -a 2+(b -b 21/2
色差ΔEは、延伸後に前処理されたサンプルに対し、下記の基準に従って評価を行った。
〇 1.0以下
△ 2.0以下
× 2.0超え
<耐候性(ヒビ)>
ヒビの目視による評価は、延伸後に前処理されたサンプルに対し、下記の基準に従って行った。
〇 ヒビなし
△ 軽微なヒビあり(肉眼で微かに確認できるレベル)
× ヒビあり(肉眼で容易に確認できるレベル)
<強度(弾性率)>
引張弾性率は、JIS K 7162に準拠して求めた。測定には、オリエンテック(株)製テンシロンにて、温度23℃、相対湿度50%の条件で、引張速度20mm/分で測定した。
測定した値を下記の基準に従って評価した。
◎ 3600以上
〇 3300以上
△ 2800以上
× 2800未満
Figure 0007442700000004
ここで、本発明に係る副生炭酸カルシウム(表1中の記号:CaCO-1)の化学分析値の一例を以下に示す。副生炭酸カルシウムは表3に示す様に、Si、Fe、Mgが少ないという特性を有していた。なお、表3中のlglossは強熱(灼熱)減量である。
Figure 0007442700000005
<総括>
実施例1~3、及び比較例1、2の樹脂組成物及び樹脂シートの評価結果から、本願発明の樹脂組成物及び樹脂シートは、高い白色度、及び優れた耐候性を備えていた。また、樹脂シートに関して、均一なボイドが形成され、高強度性を有していた。
本発明に係る炭酸カルシウムは、高い白色度を有しているため樹脂組成物の白色度が高くなる。また、粒径のばらつきがほとんどない立方体状の形態を有しているため、樹脂組成物中で均一に配列されるため、均一なボイドが形成され、耐候性、強度の向上が見られた。
また、炭酸カルシウムとして、特に、セメント製造時に発生する焼却灰とCOを原料として電気化学的に合成された炭酸カルシウムを用いることにより、焼却灰の再利用と、大気中へ排出されるCO量の低減に貢献できた。

Claims (5)

  1. オレフィン系樹脂と、炭酸カルシウムと、を含有する樹脂組成物であって、
    前記炭酸カルシウムの粒子が、体積頻度粒度分布測定において、
    粒度分布(D90/D10)の値が1~5であり、かつ
    平均粒子径(D50)が2~10μmであり、
    前記炭酸カルシウムが、副生炭酸カルシウムであり、
    前記炭酸カルシウム中のSiO 、Al 、Fe 、MgOの合計含有量が0.1%以下であり、
    前記炭酸カルシウム中のNa Oの含有量が0.1%以上2.0%以下であり、
    前記樹脂組成物の白色度が、85以上であることを特徴とする、
    樹脂組成物。
  2. オレフィン系樹脂と、炭酸カルシウムと、を含有する樹脂組成物から成る樹脂シートであって、
    前記炭酸カルシウムの粒子が、体積頻度粒度分布測定において、
    粒度分布(D90/D10)の値が1~5であり、かつ
    平均粒子径(D50)が2~10μmであり、
    前記炭酸カルシウムが、副生炭酸カルシウムであり、
    前記炭酸カルシウム中のSiO 、Al 、Fe 、MgOの合計含有量が0.1%以下であり、
    前記炭酸カルシウム中のNa Oの含有量が0.1%以上2.0%以下であり、
    前記樹脂シートの白色度が、90以上であることを特徴とする、
    樹脂シート。
  3. 前記樹脂組成物における、前記オレフィン系樹脂の含有量が50~90質量%であり、かつ
    前記炭酸カルシウムの含有量が10~50質量%である、
    請求項に記載の樹脂シート。
  4. 延伸シートである、請求項に記載の樹脂シート。
  5. 色差ΔEが1.5以下である、請求項に記載の樹脂シート。
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