JP7439946B2 - 熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂成形体及び熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。
金属酸化物はその活性の高さから、各種用途として用いられている。しかしながら、金属酸化物を高分子複合材料に利用する場合、その凝集性が高いため金属酸化物の分散が困難なことが知られている。
これを解決するために、金属酸化物と分散剤とを混合した粉末状のドライカラー、常温で液状の分散剤中に顔料を分散させたリキッドカラーまたはペーストカラー、常温で固体の樹脂中に金属酸化物を分散させたペレット状、フレーク状あるいはビーズ状のマスターバッチなどがある。これらの組成物は、用途によって、その特徴を生かして使い分けられているが、これらのうち、取扱いの容易さ、使用時の作業環境保全の面からマスターバッチが好んで用いられている。マスターバッチにおける金属酸化物に分散性を付与するために、従来、分散剤として、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、エチレンビスアマイド、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、およびこれらの誘導体、例えば酸変性体からなるワックス等の1種または2種以上が用いられている。
しかし、例えば、熱可塑性樹脂を20μm径以下で高速紡糸したり、フィルム化するなど高度な顔料分散が求められる場合には、上記分散剤では満足されないことがある。すなわち、分散不良による紡糸時の糸切れ、溶融紡糸機のフィルターの目詰まり、フィルムでの成形不良などを起こす。これらの問題を解決するため、マスターバッチの加工方法の改良や強力混練機により分散性を向上させる努力が行われてきたが、十分な分散能を発揮するものではなかった。
これまで、分散性の向上を目的として、例えば合成樹脂水系分散体または水溶液(a)1~80重量%、顔料(b)1~90重量%および熱可塑性樹脂(c)1~90重量%を二軸押出機に供給し、相置換および脱水を行うマスターバッチの製造方法が提案されている(特許文献1)。
また、下記一般式(1)で表される分散剤を含有する顔料の水スラリーを製造する工程(A)と、下記一般式(1)で表される分散剤および溶剤を含むメタロセン系ポリオレフィンの溶融物を製造する工程(B)と、工程(A)で得られた水スラリーおよび工程(B)で得られた溶融物の混合物を撹拌して顔料をフラッシングせしめる工程(C)と、工程(C)で得られたフラッシング後の混合物から溶剤および水を除去する工程(D)とからなる着色樹脂組成物の製造方法が提案されている(特許文献2)。
2n+1(OCHCHOH ・・・(1)
(式中、 nは1~100の整数であり、 mは1~100の整数である。 )
更に、顔料含有水性スラリーおよび熱溶融性樹脂を混合して、水分、顔料および熱溶融性樹脂の混合物を調製し、前記混合物を脱水して前記混合物における水分の含有量が4~25質量%となるように調整し、かつ前記混合物を少なくとも1個のベント口を有する押出混練機に連続的に投入し、熱溶融性樹脂の溶融温度以上の温度で混練し、分離した水分および残存した水分の水蒸気をベント口から排出しつつ、熱溶融性樹脂の溶融温度以上の温度で混練して、溶融した前記熱溶融性樹脂中に顔料が分散された顔料・樹脂組成物を得ることを含む顔料・樹脂組成物の製造方法が提案されている(特許文献3)。
特許第3158847号公報 特許第3890985号公報 特開2014-98164号公報
しかしながら、金属酸化物分散水溶液を脱水乾燥すると金属酸化物の活性面の露出に因る二次凝集が発生し易く、金属酸化物が高分散したマスターバッチを作成することが困難であるため、上記従来の製造方法では金属酸化物の分散性が十分とは言えず、未だ改善の余地がある。また、繊維の更なる小径化やフィルムの更なる薄膜化等のニーズがあることから、繊維径のより小さい糸への加工や、より薄いフィルムへの加工時に、成形物の加工性、機械特性、外観品質の低下などが懸念される。
本発明の目的は、無機化合物の高分散を実現して、成形物の加工性、機械特性、外観品質を向上することができる熱可塑性樹脂組成物及び熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、発明者らは鋭意研究を重ねた結果、分散剤のTG5%減量温度に着目し、TG5%減量温度が250℃以上である両新媒性分子を含む水分散体を用いてマスターバッチを製造し、得られたマスターバッチとベース樹脂とを混合して熱可塑性樹脂組成物又は熱可塑性樹脂成形体を得ることで、ポリエステル樹脂の劣化を抑制しつつ、無機化合物スラリーとしての水分散体中での無機化合物の凝集が防止され、その結果マスターバッチ中で無機化合物が高分散し、熱可塑性樹脂成形体の加工性、機械特性、外観品質を向上できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の手段を提供する。
[1]ポリエステル樹脂(A)と、
金属酸化物を主成分とする無機化合物と、
熱重量分析による5%減量温度が250℃以上である両親媒性分子と、
を含有するマスターバッチ。
[2]前記マスターバッチ中の前記ポリエステル樹脂(A)、前記無機化合物及び前記両親媒性分子の合計の質量を100質量%としたときの、前記両親媒性分子の含有量が0.01質量%以上40質量%以下である、上記[1]に記載のマスターバッチ。
[3]前記両親媒性分子が、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミドから選択される1種又は2種以上からなる、上記[1]又は[2]に記載のマスターバッチ。
[4]前記両親媒性分子が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルから選択される1種又は2種以上からなる、上記[3]に記載のマスターバッチ。
[5]前記ポリエステル樹脂(A)が、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートから選択される1種又は2種からなる、上記[1]に記載のマスターバッチ。
[6]上記[1]~[5]のいずれかに記載のマスターバッチと、ポリエステル樹脂(B)とを配合してなる熱可塑性樹脂組成物。
[7]前記熱可塑性樹脂組成物中の前記マスターバッチ及び前記ポリエステル樹脂(B)の合計の質量を100質量%としたときの、前記マスターバッチの含有量が1質量%以上90質量%以下である、上記[5]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[8]前記ポリエステル樹脂(B)が、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートから選択される1種又は2種からなる、上記[6]又は[7]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[9]上記[6]~[8]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を溶融成形してなる熱可塑性樹脂成形体。
[10]上記[1]~[5]のいずれかに記載のマスターバッチと、ポリエステル樹脂(B)とを配合してなる熱可塑性樹脂成形体。
[11]前記熱可塑性樹脂成形体中の前記マスターバッチ及び前記ポリエステル樹脂(B)の合計の質量を100質量%としたときの、前記マスターバッチの含有量が1質量%以上90質量%以下である、上記[10]に記載の熱可塑性樹脂成形体。
[12]前記ポリエステル樹脂(B)が、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートから選択される1種又は2種からなる、上記[10]又は[11]に記載の熱可塑性樹脂成形体。
[13]前記熱可塑性樹脂成形体が、フィラメント、ステープル、不織布、中空糸及びフィルムから選択されるいずれかである、上記[9]~[12]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体。
[14]金属酸化物を主成分とする無機化合物と、
熱重量分析による5%減量温度が250℃以上である両親媒性分子と、
を含有する水分散体。
[15]前記水分散体中の前記無機化合物、前記両親媒性分子及び水の合計の質量を100質量%としたときの、前記両親媒性分子の含有量が0.01質量%以上40質量%以下である、上記[14]に記載の水分散体。
[16]金属酸化物を主成分とする無機化合物と、熱重量分析による5%減量温度が250℃以上である両親媒性分子とを混合して、前記無機化合物を1質量%以上80質量%以下含有する水分散体を準備する工程(I)と、
ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、前記水分散体を1質量部以上300質量部以下で供給し、溶融混合する工程(II)と、
を有する、マスターバッチの製造方法。
[17]上記[16]に記載の製造方法によって得られたマスターバッチと、ポリエステル樹脂(B)とを溶融混合する工程を有する、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
[18]前記マスターバッチ及び前記ポリエステル樹脂(B)の合計の質量を100質量%としたときの、前記マスターバッチの含有量が1質量%以上90質量%以下となるように、前記マスターバッチと前記ポリエステル樹脂(B)を溶融混合する、上記[17]に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
[19]上記[17]又は[18]に記載の製造方法によって得られた熱可塑性樹脂組成物を溶融成形する工程を有する、熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
[20]上記[16]に記載の製造方法によって得られたマスターバッチと、ポリエステル樹脂(B)とを溶融混合する工程を有する、熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
[21]前記マスターバッチ及び前記ポリエステル樹脂(B)の合計の質量を100質量%としたときの、前記マスターバッチの含有量が1質量%以上90質量%以下となるように、前記マスターバッチと前記ポリエステル樹脂(B)を溶融混合する、上記[20]に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
[22]前記マスターバッチ及び前記ポリエステル樹脂(B)を用いて、フィラメント、ステープル、不織布、中空糸及びフィルムから選択されるいずれかを成形する、上記[19]~[21]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
本発明によれば、無機化合物の高分散を実現して、成形物の加工性、機械特性、外観品質を向上することができる。
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。
<マスターバッチ>
本実施形態のマスターバッチ(熱可塑性樹脂組成物ともいう)は、ポリエステル樹脂(A)と、金属酸化物を主成分とする無機化合物と、熱重量分析(TGA:Thermogravimetric Analysis)による5%減量温度が250℃以上である両親媒性分子とを含有する。
[ポリエステル樹脂(A)]
上記マスターバッチ中のポリエステル樹脂(A)、無機化合物及び両親媒性分子の合計の質量を100質量%としたときの、ポリエステル樹脂(A)の含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上の範囲としてよく、また、好ましくは99質量%以下の範囲としてよい。ポリエステル樹脂(A)の含有量が30質量%以上であると、無機化合物に対するマトリックス樹脂としてのポリエステル樹脂(A)の含有量が適量となり、マスターバッチ中に上記無機化合物をより高分散し易くなり、99質量%以下であると無機化合物が適量となり、該無機化合物の所望の特性をより発現させ易くなる。したがってポリエステル樹脂(A)の含有量を上記範囲内の値とする。
上記ポリエステル樹脂(A)としては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリへキシレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリシクロヘキサンジメチルフタレート(PCN)、ポリトリメチレンナフタレート(PTN)、非晶性ポリエステル樹脂(PETG、PCTG)、ポリエチレン-1,2-ビス(フェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボキシレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート等が挙げられる。また、これらのポリエステル樹脂のうちから選択される1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ポリエステル樹脂(A)は、糸やフィルムへの成形の観点からは、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートから選択される1種又は2種からなるのが好ましい。
[無機化合物]
無機化合物は、上述のように金属酸化物を主成分とする。主成分とは、上記無機化合物全体の質量を100質量%としたときの、金属酸化物が50質量%よりも大きいことを意味する。また、無機化合物は1種又は2種以上の金属酸化物からなるものであってもよい。
上記マスターバッチ中のポリエステル樹脂(A)、無機化合物及び両親媒性分子の合計の質量を100質量%としたときの、無機化合物の含有量は、好ましくは1質量%以上の範囲としてよく、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下の範囲としてよい。無機化合物の含有量が1質量%以上であると無機化合物の所望の特性を発現し易くなり、70質量%以下であるとマスターバッチ中に無機化合物を均一分散し易くなる。
上記金属化合物としては、特に制限されないが、例えばチタン(Ti)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、ジルコニア(Zr)等の金属酸化物が挙げられる。また、これらの無機化合物のうちから選択される1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記金属の固溶体や、水に対して安定な無機物質等であってもよい。
[両親媒性分子]
両親媒性分子としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
・モノステアリン酸グリセリル(HLB値4.0)、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル(HLB値6.0)、モノオレイン酸グリセリル(HLB値2.5)などのグリセリン脂肪酸エステル類;
・ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6(HLB値3.9)、モノステアリン酸ジグリセリル(HLB値5.0)、モノオレイン酸ジグリセリル(HLB値6.5)、ジオレイン酸ジグリセリル(HLB値7.0)、モノイソステアリン酸ジグリセリル(HLB値5.5)、モノステアリン酸テトラグリセリル(HLB値6.0)、モノオレイン酸テトラグリセリル(HLB値6.0)、トリステアリン酸デカグリセリル(HLB値7.5)、トリオレイン酸デカグリセリル(HLB値7.0)、ペンタステアリン酸デカグリセリル(HLB値3.5)等のポリグリセリン脂肪酸エステル類(A);
・モノラウリン酸ヘキサグリセリル(HLB値14.5)、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル(HLB値11.0)、モノラウリン酸デカグリセリル(HLB値15.5)、モノミリスチン酸デカグリセリル(HLB値14.0)、モノステアリン酸デカグリセリル(HLB値12.0)、モノイソステアリン酸デカグリセリル(HLB値12.0)、モノオレイン酸デカグリセリル(HLB値12.0)、ジイソステアリン酸デカグリセリル(HLB値10.0)等のポリグリセリン脂肪酸エステル類(B);
・モノパルミチン酸ソルビタン(HLB値6.7)、モノステアリン酸ソルビタン(HLB値4.7)、セスキステアリン酸ソルビタン(HLB値4.2)、トリステアリン酸ソルビタン(HLB値2.1)、モノイソステアリン酸ソルビタン(HLB値5.0)、セスキイソステアリン酸ソルビタン(HLB値4.5)、モノオレイン酸ソルビタン(HLB値4.3)、セスキオレイン酸ソルビタン(HLB値3.7)等のソルビタン脂肪酸エステル類;
・POE(3)ラウリルエーテル(HLB値8.0)、POE(5)ラウリルエーテル(HLB値1.0)、POE(5)イソセチルエーテル(HLB値8.0)、POE(3)セチルエーテル(HLB値6.0)、POE(5)セチルエーテル(HLB値8.0)、POE(2)ステアリルエーテル(HLB値8.0)、POE(5)ステアリルエーテル(HLB値8.0)、POE(6)ステアリルエーテル(HLB値8.0)、POE(5)イソステアリルエーテル(HLB値8.0)、POE(2)オレイルエーテル(HLB値7.5)、POE(3)オレイルエーテル(HLB値6.0)、POE(5)オレイルエーテル(HLB値8.0)、POE(5)オクチルドデシルエーテル(HLB値7.0)、POE(5)ベヘニルエーテル(HLB値7.0)、POE(5)デシルテトラデシルエーテル(HLB値6.0)、POE(3)2級アルキルエーテル(HLB値8.0)、POE(5)コレステリルエーテル(HLB値7.0)等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類(A);
・POE(4.2)ラウリルエーテル(HLB値11.5)、POE(7)ラウリルエーテル(HLB値11.0)、POE(9)ラウリルエーテル(HLB値14.5)、POE(10)ラウリルエーテル(HLB値12.0)、POE(12)ラウリルエーテル(HLB値13.0)、POE(15)ラウリルエーテル(HLB値14.0)、POE(20)ラウリルエーテル(HLB値15.0)、POE(30)ラウリルエーテル(HLB値16.0)、POE(50)ラウリルエーテル(HLB値17.0)、POE(10)イソセチルエーテル(HLB値11.0)、POE(15)イソセチルエーテル(HLB値13.0)、POE(20)イソセチルエーテル(HLB値14.0)、POE(25)イソセチルエーテル(HLB値15.0)、POE(5.5)セチルエーテル(HLB値10.5)、POE(7)セチルエーテル(HLB値11.5)、POE(10)セチルエーテル(HLB値13.5)、POE(12)セチルエーテル(HLB値12.0)、POE(15)セチルエーテル(HLB値15.5)、POE(17)セチルエーテル(HLB値13.0)、POE(20)セチルエーテル(HLB値17.0)、POE(23)セチルエーテル(HLB値18.0)、POE(8)ステアリルエーテル(HLB値10.0)、POE(11)ステアリルエーテル(HLB値11.0)、POE(15)ステアリルエーテル(HLB値12.0)、POE(20)ステアリルエーテル(HLB値18.0)、POE(25)ステアリルエーテル(HLB値14.0)、POE(30)ステアリルエーテル(HLB値15.0)、POE(40)ステアリルエーテル(HLB値16.0)、POE(10)イソステアリルエーテル(HLB値11.0)、POE(15)イソステアリルエーテル(HLB値12.0)、POE(20)イソステアリルエーテル(HLB値13.0)、POE(25)イソステアリルエーテル(HLB値14.0)、POE(3)オレイルエーテル(HLB値6.0)、POE(7)オレイルエーテル(HLB値10.5)、POE(8)オレイルエーテル(HLB値10.0)、POE(10)オレイルエーテル(HLB値14.5)、POE(12)オレイルエーテル(HLB値11.0)、POE(15)オレイルエーテル(HLB値16.0)、POE(20)オレイルエーテル(HLB値17.0)、POE(23)オレイルエーテル(HLB値14.0)、POE(50)オレイルエーテル(HLB値18.0)、POE(10)オクチルドデシルエーテル(HLB値10.0)、POE(16)オクチルドデシルエーテル(HLB値12.0)、POE(20)オクチルドデシルエーテル(HLB値13.0)、POE(25)オクチルドデシルエーテル(HLB値14.0)、POE(25)オクチルドデシルエーテル(HLB値14.0)、POE(10)ベヘニルエーテル(HLB値10.0)、POE(20)ベヘニルエーテル(HLB値16.5)、POE(30)ベヘニルエーテル(HLB値18.0)、POE(15)デシルテトラデシルエーテル(HLB値11.0)、POE(20)デシルテトラデシルエーテル(HLB値12.0)、POE(25)デシルテトラデシルエーテル(HLB値13.0)、POE(4)(C12-15)アルキルエーテル(HLB値10.5)、POE(8)(C9-11)アルキルエーテル(HLB:13.9)、POE(10)(C12-15)アルキルエーテル(HLB値15.5)、POE(5)2級アルキルエーテル(HLB値10.5)、POE(7)2級アルキルエーテル(HLB値12.0)、POE(10)コレステリルエーテル(HLB値10.0)、POE(15)コレステリルエーテル(HLB値11.0)、POE(20)コレステリルエーテル(HLB値12.0)、POE(24)コレステリルエーテル(HLB値13.0)、POE(30)コレステリルエーテル(HLB値14.0)等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類(B);
・POE(2)ラウリルアミン(HLB値5.2)、POE(2)ステアリルアミン(HLB値5.1)、POE(3)牛脂プロピレンジアミン(HLB値5.9)、N-ビス-N-シクロへキシルアミン(HLB値4.8)、POE(2)メタキシレンジアミン(HLB値7.9)等のポリオキシエチレンアルキルアミン類(A);
・POE(5)ラウリルアミン(HLB値10.4)、POE(7)ラウリルアミン(HLB値12.1)、POE(10)ラウリルアミン(HLB値13.6)、POE(30)ラウリルアミン(HLB値17.5)、POE(7)エチレン牛脂アミン(HLB値11.0)、POE(8)エチレン牛脂アミン(HLB値11.9)、POE(10)エチレン牛脂アミン(HLB値12.7)、POE(13.5)エチレン牛脂アミン(HLB値11.0)、POE(20)エチレン牛脂アミン(HLB値15.5)、POE(30)エチレン牛脂アミン(HLB値16.7)、POE(40)エチレン牛脂アミン(HLB値17.4)、POE(7)ステアリルアミン(HLB値10.7)、POE(10)ステアリルアミン(HLB値12.8)、POE(15)ステアリルアミン(HLB値14.3)、POE(20)ステアリルアミン(HLB値15.3)、POE(30)ステアリルアミン(HLB値16.7)、POE(45)ステアリルアミン(HLB値17.6)、POE(15)牛脂プロピレンジアミン(HLB値13.4)、POE(50)ステアリルプロピレンジアミン(HLB値17.4)、POE(4)メタキシレンジアミン(HLB値11.3)等のポリオキシエチレンアルキルアミン類(B);
・POE(50)ステアリルアミド(HLB値17.8)等のポリオキシエチレンアルキルアミド類。
尚、例えば「POE(8)(C9-11)アルキルエーテル」を説明すると、「POE」はポリオキシエチレンを、「(8)」は下記一般式(2)中のmを、「アルキル(C9-11)アルキル」は炭素数9~11のアルキル混合物を意味する。
R-(CHCHO)-H ・・・(2)
本実施形態では、上記のような両親媒性分子のうち、熱重量分析による5%減量温度(以下、TG5%減量温度ともいう)が250℃以上である両親媒性分子が選択される。両親媒性分子の熱重量分析による5%減量温度は、好ましくは250℃以上、より好ましくは260℃以上の範囲としてよい。両親媒性分子のTG5%減量温度が250℃以上であると、マスターバッチの溶融混合時における熱安定性が向上し、両親媒性分子(A)に無機化合物を相溶化させつつ高分散させることができる。尚、熱重量分析による5%減量温度が250℃以上であれば、例示した上記化合物以外の両親媒性分子を用いてもよい。
熱重量分析による5%減量温度は、例えば熱重量分析装置を用い、昇温速度10℃/min、窒素雰囲気下の条件で測定することができる。
また、これらの両親媒性分子のうちから選択される1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記両親媒性分子のうち、高耐熱性の観点からは、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルから選択される1種又は2種以上が好ましく、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルから選択される1種又は2種がより好ましい。
上記マスターバッチ中のポリエステル樹脂(A)、無機化合物及び両親媒性分子の合計の質量を100質量%としたときの、両親媒性分子の含有量は、好ましくは0.01質量%以上の範囲としてよく、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下の範囲としてよい。両親媒性分子の含有量が0.01質量%以上40質量%以下であると、マスターバッチの溶融混合時における熱安定性が更に向上し、ポリエステル樹脂(A)中での無機化合物の分散をより安定させることができる。
上記両親媒性分子としてタイプ(例えば、HLB)の異なる2種類の両親媒性分子を用いる場合、マスターバッチにおける両親媒性分子(A)と両親媒性分子(B)の質量比は、両親媒性分子(A):両親媒性分子(B)=10~90:90~10であるのが好ましく、20~80:80~20であるのがより好ましい。これにより、ポリエステル樹脂(A)に無機化合物を相溶化させる作用と、ポリエステル樹脂(A)中で無機化合物の分散を安定させる作用との双方をバランス良く発現させることができる。
[その他の成分]
マスターバッチは、その機能の主旨を逸脱しない範囲において、上記ポリエステル樹脂(A)、無機化合物及び両親媒性分子以外の他の成分が含まれてもよい。
その他の成分としては、具体的には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、滑剤、難燃剤、充填材等が挙げられる。
<熱可塑性樹脂組成物および成形体>
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物および成形体は、マスターバッチと、ポリエステル樹脂(B)とを配合してなる。熱可塑性樹脂組成物または成形体は、上記マスターバッチと、ポリエステル樹脂(B)とを配合させたものの硬化物(加熱により軟化流動した状態が冷却により固化したもの)である。熱可塑性樹脂組成物は、特に制限されないが、例えばマスターバッチから熱可塑性樹脂成形体を得る際の中間成形体であり、ペレット状や粉末状等の所定形態を有する材料を意味する。
[ポリエステル樹脂(B)]
熱可塑性樹脂組成物または成形体中のマスターバッチ及びポリエステル樹脂(B)の合計の質量を100質量%としたときの、上記マスターバッチの含有量は、好ましくは1質量%以上の範囲としてよく、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下の範囲としてよい。
上記ポリエステル樹脂(B)としては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリへキシレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリシクロヘキサンジメチルフタレート(PCN)、ポリトリメチレンナフタレート(PTN)、非晶性ポリエステル樹脂(PETG、PCTG)、ポリエチレン-1,2-ビス(フェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボキシレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート等が挙げられる。また、これらのポリエステル樹脂のうちから選択される1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ポリエステル樹脂(B)は、糸やフィルムの成形の観点からは、ポリエチレンテレフタレート及び及びポリブチレンテレフタレートから選択される1種又は2種以上からなるのが好ましい。
熱可塑性樹脂組成物または成形体におけるポリエステル樹脂(B)は、上記ポリエステル樹脂(A)と同種であってもよいし、異種であってもよいが、相溶性の観点から同種の樹脂を用いることが好ましい。
[両親媒性分子]
また、熱可塑性樹脂組成物または成形体中のマスターバッチ及びポリエステル樹脂(B)の合計の質量を100質量%としたときの、両親媒性分子の含有量は、好ましくは0.01質量%以上の範囲としてよく、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下の範囲としてよい。
また、上記両親媒性分子としてタイプ(例えば、HLB)の異なる2種類の両親媒性分子を用いる場合、熱可塑性樹脂組成物または成形体における両親媒性分子(A)と両親媒性分子(B)の質量比は、両親媒性分子(A):両親媒性分子(B)=10~90:90~10であるのが好ましく、20~80:80~20であるのがより好ましい。
[その他の成分]
熱可塑性樹脂組成物または成形体は、その機能の主旨を逸脱しない範囲において、上記ポリエステル樹脂(A)、無機化合物、両親媒性分子(A)及び両親媒性分子(B)以外の他の成分が含まれてもよい。
その他の成分としては、具体的には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、滑剤、難燃剤、充填材等が挙げられる。
熱可塑性樹脂成形体は、その形態に制限は無いが、例えばフィラメント(長繊維)、ステープル(短繊維)、不織布及び中空糸から選択されるいずれかであってもよい。フィラメントは、数十本の単糸(単繊維)が撚り合わされてなるマルチフィラメントであってもよいし、単糸が一本であるモノフィラメントであってもよい。また、熱可塑性樹脂成形体はフィルムであってもよい。
<マスターバッチの製造方法>
本実施形態に係るマスターバッチの製造方法は、金属酸化物を主成分とする無機化合物と、熱重量分析による5%減量温度が250℃以上である両親媒性分子とを混合して、上記無機化合物を1質量%以上80質量%以下含有する水分散体を準備する工程(I)と、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、前記水分散体を1質量部以上300質量部以下で供給し、溶融混合する工程(II)とを有する。
工程(I)で使用される水分散体中の無機化合物、両親媒性分子及び水の合計の質量を100質量%としたときの、無機化合物の含有量は、1質量%以上80質量%以下であり、好ましくは1質量%以上70質量%以下、より好ましくは1質量%以上60質量%以下の範囲としてもよい。無機化合物の含有量が1質量%未満であると熱可塑性樹脂組成物または成形体において無機化合物による所望の特性が得難くなり、80質量%より大きいと無機化合物の高分散が得難くなり、また、機械特性の低下や外観不良が生じ易くなる。よって水分散体中の無機化合物の含有量を上記範囲内の値とする。
上記水分散体中の無機化合物、両親媒性分子及び水の合計の質量を100質量%としたときの、両親媒性分子の含有量は、好ましくは0.01質量%以上の範囲としてよく、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下の範囲としてよい。両親媒性分子剤の含有量が1質量%以上40質量%以下であると、ポリエステル樹脂(A)に無機化合物をより相溶化させることができる。
上記工程(I)において、金属酸化物を主成分とする無機化合物、両親媒性分子に、更に水溶性アルコールを混合して、水分散体を準備してもよい。
この場合、工程(I)で使用される水分散体中の無機化合物、両親媒性分子、水溶性アルコール及び水の合計の質量を100質量%としたときの、無機化合物の含有量は、好ましくは1質量%以上80質量%以下、上記無機化合物の含有量は、より好ましくは1質量%以上70質量%以下、更に好ましくは1質量%以上60質量%以下の範囲としてもよい。無機化合物の含有量が1質量%未満であると熱可塑性樹脂組成物または成形体において無機化合物による所望の特性が得難くなり、80質量%より大きいと無機化合物の高分散が得難くなり、また、機械特性の低下や外観不良が生じ易くなる。よって水分散体中の無機化合物の含有量を上記範囲内の値とする。
上記水分散体中の無機化合物、両親媒性分子、水溶性アルコール及び水の合計の質量を100質量%としたときの、両親媒性分子の含有量は、好ましくは0.01質量%以上の範囲としてよく、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下の範囲としてよい。両親媒性分子の含有量が0.01質量%以上40質量%以下であると、ポリエステル樹脂(A)に無機化合物をより相溶化させることができる。
上記水分散体中の無機化合物、両親媒性分子、水溶性アルコール及び水の合計の質量を100質量%としたときの、水溶性アルコールの含有量は、好ましくは0.01質量%以上の範囲としてよく、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下の範囲としてよい。水溶性アルコールの含有量が0.01質量%以上40質量%以下であると、系の安定性を向上することができる。
[その他の成分]
水分散体は、その機能の主旨を逸脱しない範囲において、上記無機化合物、両親媒性分子及び水溶性アルコール以外の他の成分が含まれてもよい。
その他の成分としては、具体的には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、滑剤、難燃剤、充填材等が挙げられる。
工程(II)では、工程(I)で調整した水分散体を、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して1質量部以上300質量部以下で供給し、溶融混合することにより、マスターバッチを得る。ポリエステル樹脂(A)に対する上記水分散体の供給量は、好ましくは1質量部以上200質量部以下の範囲としてもよい。水分散体の供給量が300質量部よりも大きいと溶融混合する装置内への注入が困難となり、また、ポリエステル樹脂(A)の溶融温度まで昇温し難く溶融混合が困難となる。一方、ポリエステル樹脂(A)に対する上記水分散体の供給量が1質量部以上300質量部以下であると、溶融混合の脱水乾燥時に無機化合物の二次凝集が防止され、マスターバッチ中で金属酸化物を均一分散することができる。よって水分散体の供給量を上記範囲内の値とする。
溶融混合の際には、押出機(単軸押出機、二軸押出機)、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を用いることができ、なかでも、連続的に混練できる点で、混錬押出機が好ましい。
溶融混合工程における加熱温度は、マトリックス樹脂であるポリエステル樹脂の溶融のし易さに応じて決定されるが、好ましくは260℃以上、より好ましくは270℃以上、更に好ましくは280℃以上の範囲としてよく、また、好ましくは320℃以下、より好ましくは310℃以下、更に好ましくは300℃以下の範囲としてよい。加熱温度が2600℃以上であると、ポリエステル樹脂を溶融し易くなり、該ポリエステル樹脂中に無機化合物を分散させやすくなり、320℃以下であれば、各成分の熱劣化を抑制することができる。
上記工程(II)において、水溶性アルコールを含有する水分散体を用いてもよい。この場合、工程(I)で調整した水分散体を、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上300質量部以下、より好ましくは1質量部以上200質量部以下、更に好ましくは1質量部以上150質量部以下で供給し、溶融混合してもよい。水溶性アルコールを含有する水分散体を用いることにより、(A)中での無機化合物の分散をより安定させることができる。
溶融混合した後には、マスターバッチの使用目的に応じた形状(例えば、ペレット状)に成形又は加工することができる。
マスターバッチをペレット状とする場合には、溶融混練後、ストランドを形成し、そのストランドを、ペレタイザを用いて切断してペレット状にする。ペレット状のマスターバッチは、さらなる成形を行うための材料として使用することができ、例えば熱可塑性樹脂組成物または成形体用の材料として用いることができる。ペレット状のマスターバッチは、成形機(例えば、射出成形機、押出成形機等)によって成形することができる。
<熱可塑性樹脂組成物および成形体の製造方法>
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物または成形体の製造方法は、上記製造方法によって得られたマスターバッチと、ポリエステル樹脂(B)とを溶融混合する。これにより、直接、上記熱可塑性樹脂成形体を得ることができるが、一旦、ペレット状または粉末状の熱可塑性樹脂組成物を得る工程を経てから、得られたペレット状または粉末状の熱可塑性樹脂組成物を溶融成形する工程を経て目的とする熱可塑性樹脂成形体を得ることもできる。このようにマスターバッチを経由して熱可塑性樹脂成形体を得ることで、熱可塑性樹脂成形体中で無機化合物を安定的に均一分散することができ、無機化合物による所望の機能、特性を熱可塑性樹脂成形体に十分に付与することができる。また、上記マスターバッチを経て熱可塑性樹脂成形体を成形することで、ポリエステル樹脂の加水分解が大幅に抑制され、成形性(加工性)、機械特性及び外観品質を向上することができる。
上記マスターバッチ及びポリエステル樹脂(B)の合計の質量を100質量%としたときの上記マスターバッチの含有量が、好ましくは1質量%以上90質量%以下、より好ましくは1質量%以上80質量%以下、更に好ましくは1質量%以上70質量%以下の範囲となるように、上記マスターバッチとポリエステル樹脂(B)を溶融混合するのが好ましい。上記マスターバッチの含有量が1質量%以上90質量%以下であると、無機化合物をより安定的に均一分散することができる。
溶融混合工程では、マスターバッチ及びポリエステル樹脂(B)以外の他の成分を更に混合してもよい。例えば、混合工程において、マスターバッチ及びポリエステル樹脂(B)と共に、酸化防止剤を混合することができる。
溶融混合した後には、熱可塑性樹脂成形体の使用目的に応じた形状(例えば、糸状、不織布状、フィルム状)に成形又は加工することができる。
熱可塑性樹脂成形体を糸状(フィラメント、ステープル、中空糸)とする場合には、溶融混練後、所定断面形状を有する一又は複数の孔から溶融樹脂を吐出させて糸状にすることができる。糸状の熱可塑性樹脂成形体は、更に延伸、熱処理、撚り合わせなどの後処理を経て成形されてもよいし、他の糸と混合して紡績して混紡糸や混繊糸を構成してもよい。
熱可塑性樹脂成形体を不織布状とする場合には、溶融混練後、溶融樹脂から成形された繊維をネット上で集積することにより不織布状にすることができる。不織布状の熱可塑性樹脂成形体は、更にバインダーによる繊維同士の結合や外力の付与によって繊維同士を絡めるなどの後処理を経て成形されてもよい。
熱可塑性樹脂成形体をフィルム状とする場合には、溶融混練後、溶融樹脂をスリット状の孔から吐出させる(押出す)ことによりフィルム状にすることができる。フィルム状の熱可塑性樹脂成形体は、更にプレス成形法又は真空成形法によって成形してもよいし、ベース層上に形成されて多層フィルムを構成してもよい。
以下、本発明の実施例を説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。実施例中、特段の記載がない限り、「部」は質量%を示し、表中の数値の単位は質量部である。
[実施例1]
(水分散体の製造)
酸化チタン粒子(石原産業株式会社製「ST-21」、平均粒子径20nm)30質量部、両親媒性分子としてポリオキシエチレンアルキルエーテル(三洋化成工業株式会社製「エマルミンNL110」、TG5%減量温度370℃、HLB値14.4)1質量部、水溶性アルコールとしてエタノール1質量部に、水68質量部を加え、ホモジナイザーを用い水分散体(1)を得た。
(マスターバッチの製造)
ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ株式会社製「MA-2101M」、極限粘度(IV)0.63))100質量部を30mmφの二軸ベント式押出機(設定温度280℃、捕捉粒子径40μmのメッシュフィルター)内で溶融混練し、押出機上流部から水分散体(1)30質量部を液添ノズルから注入し、水分をベント口から蒸発させながら溶融混練した。得られた熱可塑性樹脂組成物をペレット化してマスターバッチ(1)を得た。
(フィラメントの製造)
ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ株式会社製「SA-1206」、極限粘度(IV)1.07)90質量部にマスターバッチ(1)10質量部を混合し、150℃で12時間、真空乾燥し、次いで、紡糸機を用いて紡糸温度290℃で溶融紡糸を行い、3倍延伸により3dtex(繊維径約15μm)のフィラメント(1)を得た。
[実施例2]
(水分散体の製造)
両親媒性分子をソルビタン脂肪酸エステル(花王株式会社製「レオドールSP-30V」、TG5%減量温度300℃、HLB2.1)に変更したこと以外は実施例1と同様に行い、水分散体(2)を得た。
(マスターバッチの製造)
水分散体(1)を水分散体(2)に変更したこと以外は実施例1と同様に行い、マスターバッチ(2)を得た。
(フィラメントの製造)
マスターバッチ(1)をマスターバッチ(2)に変更したこと以外は実施例1と同様に行い、フィラメント(2)を得た。
[実施例3]
(水分散体の製造)
両親媒性分子をポリグリセリン脂肪酸エステル(阪本薬品工業株式会社製「SYグリスターML-500」、TG5%減量温度260℃、HLB13.4)に変更したこと以外は実施例1と同様に行い、水分散体(3)を得た。
(マスターバッチの製造)
水分散体(1)を水分散体(3)に変更したこと以外は実施例1と同様に行い、マスターバッチ(3)を得た。
(フィラメントの製造)
マスターバッチ(1)をマスターバッチ(3)に変更したこと以外は実施例1と同様に行い、フィラメント(3)を得た。
[実施例4]
(水分散体の製造)
両親媒性分子をポリオキシエチレンアルキルエーテル(三洋化成工業株式会社製「エマルミンNL110」TG5%減量温度370℃、HLB値14.4)及びソルビタン脂肪酸エステル(花王株式会社製「レオドールSP-30V」、TG5%減量温度300℃、HLB2.1)の2種類に変更したこと以外は実施例1と同様に行い、水分散体(4)を得た。
(マスターバッチの製造)
水分散体(1)を水分散体(4)に変更したこと以外は実施例1と同様に行い、マスターバッチ(4)を得た。
(フィラメントの製造)
マスターバッチ(1)をマスターバッチ(4)に変更したこと以外は実施例1と同様に行い、フィラメント(4)を得た。
[実施例5]
(水分散体の製造)
両親媒性分子をポリオキシエチレンアルキルエーテル(三洋化成工業株式会社製「エマルミンNL110」TG5%減量温度370℃、HLB値14.4)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(阪本薬品工業株式会社製「SYグリスターML-500」、TG5%減量温度260℃、HLB13.4)の2種類に変更したこと以外は実施例1と同様に行い、水分散体(5)を得た。
(マスターバッチの製造)
水分散体(1)を水分散体(5)に変更したこと以外は実施例1と同様に行い、マスターバッチ(5)を得た。
(フィラメントの製造)
マスターバッチ(1)をマスターバッチ(5)に変更したこと以外は実施例1と同様に行い、フィラメント(5)を得た。
[実施例6]
(水分散体の製造)
酸化チタン粒子を酸化ケイ素粒子(信越化学工業社株式会社製「QSG-30」、平均粒子径30nm)に変更したこと以外は実施例1と同様に行い、水分散体(6)を得た。
(マスターバッチの製造)
水分散体(1)を水分散体(6)に変更したこと以外は実施例1と同様に行い、マスターバッチ(6)を得た。
(フィラメントの製造)
マスターバッチ(1)をマスターバッチ(6)に変更したこと以外は実施例1と同様に行い、フィラメント(6)を得た。
[実施例7]
(水分散体の製造)
酸化チタン粒子を酸化ケイ素粒子(信越化学工業社株式会社製「QSG-30」、平均粒子径30nm)に変更したこと以外は実施例4と同様に行い、水分散体(7)を得た。
(マスターバッチの製造)
水分散体(1)を水分散体(7)に変更したこと以外は実施例4と同様に行い、マスターバッチ(7)を得た。
(フィラメントの製造)
マスターバッチ(1)をマスターバッチ(7)に変更したこと以外は実施例4と同様に行い、フィラメント(7)を得た。
[実施例8]
(水分散体の製造)
酸化チタン粒子を酸化亜鉛粒子(堺化学工業株式会社製「FINEX-30」、平均粒子径35nm)に変更したこと以外は実施例4と同様に行い、水分散体(8)を得た。
(マスターバッチの製造)
水分散体(4)を水分散体(8)に変更したこと以外は実施例4と同様に行い、マスターバッチ(8)を得た。
(フィラメントの製造)
マスターバッチ(4)をマスターバッチ(8)に変更したこと以外は実施例4と同様に行い、フィラメント(8)を得た。
[実施例9]
(水分散体の製造)
酸化チタン粒子を酸化アルミニウム粒子(住友化学株式会社製「AA-04」、平均粒子径300nm)に変更したこと以外は実施例4と同様に行い、水分散体(9)を得た。
(マスターバッチの製造)
水分散体(4)を水分散体(9)に変更したこと以外は実施例4と同様に行い、マスターバッチ(9)を得た。
(フィラメントの製造)
マスターバッチ(4)をマスターバッチ(9)に変更したこと以外は実施例4と同様に行い、フィラメント(9)を得た。
[実施例10]
(水分散体の製造)
酸化チタン粒子を亜酸化銅粒子(シグマアルドリッチ株式会社製、平均粒子径350nm)に変更したこと以外は実施例4と同様に行い、水分散体(10)を得た。
(マスターバッチの製造)
水分散体(4)を水分散体(10)に変更したこと以外は実施例4と同様に行い、マスターバッチ(10)を得た。
(フィラメントの製造)
マスターバッチ(1)をマスターバッチ(10)に変更したこと以外は実施例4と同様に行い、フィラメント(10)を得た。
[実施例11]
(マスターバッチの製造)
ポリエチレンテレフタレートをポリブチレンテレフタレート(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製「ノバデュラン(登録商標)5008」、IV0.85)に変更し、更に押出加工温度を260℃に変更したこと以外は実施例4と同様に行い、マスターバッチ(11)を得た。
(フィラメントの製造)
ポリエチレンテレフタレートから変更したポリブチレンテレフタレート(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製「ノバデュラン(登録商標)5010L」、IV1.00)90質量部にマスターバッチ(11)10質量部を混合し、120℃で12時間、真空乾燥し、次いで、紡糸機を用いて紡糸温度260℃で溶融紡糸を行い、3倍延伸により3dtexのフィラメント(11)を得た。
[実施例12]
(フィルムの製造)
ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ株式会社製「SA-1206」、極限粘度(IV)1.07)90質量部にマスターバッチ(4)10質量部を混合し、150℃で12時間、真空乾燥し、次いで、100mm幅のTダイを接続した20mm単軸押出機を用いて製膜温度280℃で溶融製膜を行い、厚さ10μmのフィルム(1)を得た。
[比較例1]
(水分散体、マスターバッチ及びフィラメントの製造)
両親媒性分子としてのポリオキシエチレンアルキルエーテルを不使用としたこと以外は実施例1と同様に行い、水分散体(11)、マスターバッチ(12)、フィラメント(12)を得た。
[比較例2]
(水分散体、マスターバッチ及びフィラメントの製造)
両親媒性分子としてポリオキシエチレンアルキルエーテルをプロピレングリコール脂肪酸エステル(花王株式会社製「カオーホモテックスPS-200SV」、TG5%減量温度220℃)に変更したこと以外は実施例1と同様に行い、水分散体(12)、マスターバッチ(13)及びフィラメント(13)を得た。
[比較例3]
(マスターバッチ及びフィラメントの製造)
水分散体を不使用とし、酸化チタン粒子9質量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.3質量部、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.3質量部及びエタノール0.3質量部を直接、ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ株式会社製「MA-2101M」、極限粘度(IV)0.63)90.1質量部と混合し、二軸押出機にて溶融混練して、マスターバッチ(14)を作成し、実施例1と同様の工程を経てフィラメント(14)を得た。
[比較例4]
(フィラメントの製造)
水分散体及びマスターバッチの双方を不使用とし、酸化チタン粒子0.9質量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.03質量部、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.03質量部及びエタノール0.03質量部を直接、ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ株式会社製「SA-1206」、極限粘度(IV)1.07)99.01質量部と混合し、紡糸機にて溶融混練して、実施例1と同様の工程を経てフィラメント(15)を得た。
[比較例5]
(フィルムの製造)
ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ株式会社製「SA-1206」、極限粘度(IV)1.07)90質量部にマスターバッチ(14)10質量部を混合し、150℃で12時間、真空乾燥し、次いで、100mm幅のTダイを接続した20mm単軸押出機を用いて製膜温度280℃で溶融製膜を行い、厚さ10μmのフィルム(2)を得た。
次に、実施例1~12及び比較例1~5で得られた各マスターバッチ、フィラメント及びフィルムについて、以下の方法にて測定、評価した。
1.マスターバッチ中の凝集粒子の評価(凝集防止性)
得られたマスターバッチ(1)~(14)について、25mm単軸押出機のスクリュ先端部位に濾過径25μmの焼結フィルターを設置し、マスターバッチを1kg通過させた際の差圧を計測し、差圧が1MPa以下である場合を非常に良好「◎」、1~5MPa以下を良好「〇」、5MPaを超え10MPa以下をやや不良「△」、通過しなかった場合を不良「×」とした。
2.フィラメント紡糸性の評価
得られたフィラメント(1)~(15)について、紡糸の際の糸切れ頻度を評価した。これを同一の試料について5回実施し、平均値とした。糸切れの発生が3回未満である場合を良好「○」、3回以上10回未満をやや不良「△」、10回以上を不良「×」とした。
3.フィラメント中の凝集粒子の評価(凝集防止性)
得られたフィラメント(1)~(15)を0.1g切り取り、プレパラートでフィルム状にプレスした後、光学顕微鏡観察(倍率200倍)により、粒子像を得て、無作為に選んだ少なくとも1000個の粒子(一次粒子であってもよいし、更に二次粒子が含まれていてもよい)それぞれについて粒子径(円相当径)を測定した。粒子径20μm以上の粒子が1個未満である場合を非常に良好「◎」、1~5個を良好「〇」、6~19個をやや不良「△」、20個以上を不良「×」とした。
4.フィルム成膜性の評価
得られたフィルム(1)~(2)について、製膜時の安定性を評価した。濾過径20μmの焼結フィルターを設置し、原料10kg分を製膜し加工性を評価した。昇圧することなく製膜終了した場合を良好「〇」、昇圧して製膜終了した場合をやや不良「△」、昇圧しても製膜できなかった場合を不良「×」とした。
5.フィルム中の凝集粒子の評価(凝集防止性)
得られたフィルム(1)~(2)を0.1g切り取り、プレパラートでフィルム状にプレスした後、光学顕微鏡観察(倍率200倍)により、粒子像を得て、無作為に選んだ少なくとも1000個の粒子(一次粒子であっても、さらに二次粒子が含まれていてもよい)それぞれについて粒子径(円相当径)を測定した。粒子径20μm以上の粒子が1個未満である場合を非常に良好「◎」、1~5個を良好「〇」、6~19個をやや不良「△」、20個以上を不良「×」とした。
上記の方法にて測定、評価した結果を、表1A~表2に示す。
Figure 0007439946000001
Figure 0007439946000002
Figure 0007439946000003
Figure 0007439946000004
表1A~表1Cの結果から、実施例1~11では、両親媒性分子としてポリオキシエチレンアルキルエーテル(TG5%減量温度370℃)、ソルビタン脂肪酸エステル(TG5%減量温度300℃)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(TG5%減量温度260℃)のうちの1種又は2種を含有する水分散体(1)~(10)を用いてマスターバッチ(1)~(11)を製造すると、マスターバッチの差圧が5MPa以下であり、マスターバッチ成形時に金属酸化物の二次凝集が防止され、金属酸化物の分散安定性が高いことが分かった。特に、実施例4~5,7~11では、両親媒性分子としてポリオキシエチレンアルキルエーテル(TG5%減量温度370℃)及びソルビタン脂肪酸エステル(TG5%減量温度300℃)の2種、又は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(TG5%減量温度370℃)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(TG5%減量温度260℃)の2種を用いると、マスターバッチの差圧が1MPa以下であり、マスターバッチ中で金属酸化物の二次凝集が十分に防止され、金属酸化物の分散安定性が極めて高いことが分かった。
また、実施例1~11では、水分散体(1)~(10)のいずれかを用いてマスターバッチ(1)~(11)を製造し、且つそのマスターバッチを用いてフィラメント(1)~(11)を製造すると、糸切れの発生が3回未満であり、フィラメントの紡糸性が良好であった。
更に、実施例1~11では、水分散体(1)~(10)のいずれかを用いてマスターバッチ(1)~(11)を製造し、且つそのマスターバッチを用いてフィラメント(1)~(11)を製造すると、フィラメント中の粒子径20μm以上の粒子が5個以下であり、フィラメント成形時に金属酸化物の二次凝集が防止され、金属酸化物の分散安定性が高いことが分かった。特に、実施例4~5,7~8では、両親媒性分子としてポリオキシエチレンアルキルエーテル(TG5%減量温度370℃)及びソルビタン脂肪酸エステル(TG5%減量温度300℃)の2種、又は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(TG5%減量温度370℃)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(TG5%減量温度260℃)の2種を用い、且つ、金属酸化物として酸化チタン粒子、酸化ケイ素粒子又は酸化亜鉛粒子を用いると、フィラメント中の粒子径20μm以上の粒子が1個未満であり、フィラメント成形時に金属酸化物の二次凝集が十分に防止され、金属酸化物の分散安定性が極めて高いことが分かった。
実施例12では、水分散体(4)を用いてマスターバッチ(4)を製造し、且つそのマスターバッチを用いてフィルム(1)を製造すると、昇圧することなく製膜終了し、フィルムの成膜性が良好であった。
また実施例12では、水分散体(4)を用いてマスターバッチ(4)を製造し、且つそのマスターバッチを用いてフィルム(1)を製造すると、粒子径20μm以上の粒子が1~5個であり、フィルム成形時に金属酸化物の二次凝集が防止され、金属酸化物の分散安定性が高いことが分かった。
一方、表2の結果から、比較例1では、両親媒性分子を含有しない水分散体(11)を用いてマスターバッチ(12)を製造すると、マスターバッチが焼結フィルターを通過せず、マスターバッチ中に凝集粒子が非常に多く存在しており、金属酸化物の凝集防止性が劣った。
また比較例1では、水分散体(11)を用いてマスターバッチ(12)を製造し、且つそのマスターバッチを用いてフィラメント(12)を製造すると、糸切れの発生が10回以上であり、フィラメントの紡糸性が不良であった。
更に、比較例1では、水分散体(11)を用いてマスターバッチ(12)を製造し、且つそのマスターバッチを用いてフィラメント(12)を製造すると、フィラメント中の粒子径20μm以上の粒子が20個以上であり、実施例1~11と比較してフィラメント中に凝集粒子が非常に多く存在しており、金属酸化物の凝集防止性が劣った。
比較例2では、両親媒性分子としてプロピレングリコール脂肪酸エステル(TG5%減量温度220℃)のみを含有する水分散体(12)を用いてマスターバッチ(13)を製造すると、マスターバッチの差圧が5MPaを超え10MPa以下の範囲となり、実施例1~11と比較してマスターバッチ中に凝集粒子が多く存在しており、金属酸化物の凝集防止性がやや劣った。
比較例2では、両親媒性分子としてプロピレングリコール脂肪酸エステル(TG5%減量温度220℃)のみを含有する水分散体(12)を用いてマスターバッチ(13)を製造し、且つそのマスターバッチを用いてフィラメント(13)を製造すると、糸切れの発生が3回以上10回未満であり、フィラメントの紡糸性がやや不良であった。
更に、比較例2では、水分散体(12)を用いてマスターバッチ(13)を製造し、且つそのマスターバッチを用いてフィラメント(13)を製造すると、フィラメント中の粒子径20μm以上の粒子が20個以上であり、実施例1~11と比較してフィラメント中に凝集粒子が多く存在しており、金属酸化物の凝集防止性が劣った。
比較例3では、水分散体を用いず、両親媒性分子としてポリオキシエチレンアルキルエーテル(TG5%減量温度370℃)及びソルビタン脂肪酸エステル(TG5%減量温度300℃)の双方を含有するマスターバッチ(14)を製造すると、マスターバッチが焼結フィルターを通過せず、マスターバッチ中に凝集粒子が非常に多く存在しており、金属酸化物の凝集防止性が劣った。
また比較例3では、水分散体を用いずにマスターバッチ(14)を製造し、且つそのマスターバッチを用いてフィラメント(14)を製造すると、糸切れの発生が10回以上であり、フィラメントの紡糸性が不良であった。
更に、比較例3では、水分散体を用いずにマスターバッチ(14)を製造し、且つそのマスターバッチを用いてフィラメント(14)を製造すると、フィラメント中の粒子径20μm以上の粒子が20個以上であり、実施例1~11と比較してフィラメント中に凝集粒子が非常に多く存在しており、金属酸化物の凝集防止性が劣った。
比較例4では、水分散体及びマスターバッチの双方を用いずにフィラメント(15)を製造すると、糸切れの発生が10回以上であり、フィラメントの紡糸性が不良であった。 また比較例4では、水分散体及びマスターバッチの双方を用いずにフィラメント(15)を製造すると、フィラメント中の粒子径20μm以上の粒子が20個以上であり、実施例1~11と比較してフィラメント中に凝集粒子が非常に多く存在しており、金属酸化物の凝集防止性が劣った。
比較例5では、水分散体を用いずにマスターバッチ(14)を製造し、且つそのマスターバッチを用いてフィルム(2)を製造すると、昇圧しても製膜できず、実施例12と比較してフィルムの成膜性が劣った。
また比較例5では、水分散体を用いずにマスターバッチ(14)を製造し、且つそのマスターバッチを用いてフィルム(2)を製造すると、フィルム中の粒子径20μm以上の粒子が20個以上であり、実施例12と比較してフィルム中に凝集粒子が非常に多く存在しており、金属酸化物の凝集防止性が劣った。

Claims (7)

  1. 金属酸化物を主成分とする無機化合物と、熱重量分析による5%減量温度が250℃以上である両親媒性分子とを混合して、前記無機化合物を1質量%以上80質量%以下含有する水分散体を準備する工程(I)と、
    ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、前記水分散体を1質量部以上300質量部以下で供給し、溶融混合する工程(II)と、
    を有する、マスターバッチの製造方法。
  2. 請求項に記載の製造方法によって得られたマスターバッチと、ポリエステル樹脂(B)とを溶融混合する工程を有する、熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
  3. 前記マスターバッチ及び前記ポリエステル樹脂(B)の合計の質量を100質量%としたときの、前記マスターバッチの含有量が1質量%以上90質量%以下となるように、前記マスターバッチと前記ポリエステル樹脂(B)を溶融混合する、請求項に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
  4. 請求項又はに記載の製造方法によって得られた熱可塑性樹脂組成物を溶融成形する工程を有する、熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
  5. 請求項に記載の製造方法によって得られたマスターバッチと、ポリエステル樹脂(B)とを溶融混合する工程を有する、熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
  6. 前記マスターバッチ及び前記ポリエステル樹脂(B)の合計の質量を100質量%としたときの、前記マスターバッチの含有量が1質量%以上90質量%以下となるように、前記マスターバッチと前記ポリエステル樹脂(B)を溶融混合する、請求項に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
  7. 前記マスターバッチ及び前記ポリエステル樹脂(B)を用いて、フィラメント、ステープル、不織布、中空糸及びフィルムから選択されるいずれかを成形する、請求項のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
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