JP7438117B2 - 新しい高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪及びその調製 - Google Patents

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Description

本発明は、新しい高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪、及びオレイン酸のリノール酸に対する比が1よりも大きい、部分ランダムエステル交換高ステアリン種子油(partially random interesterified high stearic seed oils)の分別による、その調整方法に関する。
油糧種子は、通常、成長し、粉砕されて、油が得られる。その油は、不飽和脂肪酸のレベルが高いため、標準の室温で液体である。大豆、菜種、ヒマワリ、綿、トウモロコシ、ベニバナ又はピーナッツなどのこれらの油糧種子作物には、オレイン酸、リノール酸、又はリノレン酸の脂肪酸が豊富であるため、低い融点をもたらす。
しかし、ベーカリー、スプレッド、マーガリン、菓子、アイスクリーム、コーティングコンパウンドなどの多くの食品用途や配合には、固体脂肪が必要である。これらの食品用途における固形脂肪の典型的な供給源は、動物性脂肪、水素化植物油、熱帯植物油脂であり、主にパーム、パーム核若しくはココナッツ、又は、少ないが、シアーバターノキ(shea)、コクム(kokum)、イリペ(illipe)、マンゴー核、サラ(sal)、ペンタデスマ(pentadesma)、アランブラッキア(allanblackia)及びアセイチュノ(aceituno)である。望ましい供給源は、健康的な脂肪を生成する油糧種子作物である。液体の植物種子油は、それらの不飽和脂肪酸の水素化による固体脂肪の生産に使用できる。この方法では、高温で金属触媒を使用して、不飽和脂肪酸の二重結合に水素を添加し、飽和鎖を生成し、脂肪の融点を高める。しかし、この触媒は、シスからトランスへと構造を変化させ、他のいくつかの脂肪酸の二重結合の異性化も引き起こす。この人工トランス脂肪酸の摂取は、ヒトのコレステロール代謝を変化させ、アテローム性動脈硬化症を誘発する。したがって、それらは、健康的な食事から完全に除外することが推奨される。
パーム油は、パルミチン酸が豊富な半固体脂肪である。パーム油自体はほとんど用途がなく、従来アジアやアフリカの一部の地域では調理油や揚げ物用油として使用されている。しかし、この油は乾式分別して、食品産業で広く使用されているさまざまな組成及び固形分の脂肪を生成できる。したがって、最も飽和したフラクションは、「パームステアリン」と呼ばれ、パルミチン酸が73.8%まで含まれ、トリパルミチン(60%まで)、乳児用脂肪ミルクやマーガリンのハードストック(hardstock)として使用される三飽和(trisaturated)トリアシルグリセロール(TAG)、が豊富である。二飽和(disaturated)TAGが豊富なパームフラクションは、「パームミッドフラクション(palm mid fractions)」と呼ばれる。両フラクションは、その物理的特性により、スプレッド、ベーカリー、製菓用脂肪などの配合に使用される。液体のフラクションは、二不飽和(diunsaturated)及び三不飽和(triunsaturated)のTAGが豊富で、主に揚げ物に使用されるパームオレインである。
食品の配合に使用されるほとんどの固体脂肪は、それぞれパルミチン酸又はミリスチン酸及びラウリン酸に富む、パーム油、パーム核油又はココナッツ油から分離されたフラクションから得られる。これらの脂肪の摂取は、人間にとって健康的でないと見なされている。それは、血液中の内容物やコレステロールの割合を悪く変化させ、世界保健機関(WHO)が2003年のテクニカルレポートシリーズ916の食事療法、栄養及び慢性疾患の予防で報告したように、心血管疾患のリスクを増加させるからである。このレポートによると、より健康的な代替物は、ステアリン酸が豊富な油である。
このため、過去数十年で、ヒマワリ、綿、大豆、アブラナ属、ピーナッツ、又はトウモロコシなどのいくつかの油糧種子は、種子油により多くの量のステアリン酸を生成するように遺伝子組み換えされている。これらの栽培品種は、突然変異誘発又は遺伝子工学の技術によって生産された。これらの油はすべて、sn-2 TAG位置の飽和脂肪酸の割合が非常に低いため、非対称の二飽和及び三飽和TAGの割合が低い。
Reskeらは、「Triglyceride composition and structure in genetically modified sunflower and soybean oils」, (1997), JAOCS 74, 989-998において、35.0%の飽和脂肪酸を含む高ステアリンダイズ油ではTAGのsn-2位置の飽和脂肪酸の割合が2.5%であることを示した。Neffらは、「Analysis of Genetically Modified Canola Varieties by Atmospheric Pressure Chemical Ionization Mass Spectrometric and Flame Ionization Detection」, Journal of Liquid Chromatography & Related Technologies (1996), 19:2203-2225によれば、飽和脂肪酸が40.4%の高ステアリンキャノーラ油では、sn-2位置にあるこれらの脂肪酸の割合は3.7%に過ぎないことを発見した。Fernandez-Moyaらは、「Oils from improved high stearic acid sunflower seeds」, (2005) J. Agric. Food Chem., 53. 5326-5330によれば、高ステアリンヒマワリのsn-2 TAG位置にあるステアリン酸の含有量は、飽和脂肪酸が最大45.3%の油でも常に3.6%未満であることを発見した。特に、22%のステアリン酸と63%のオレイン酸とを含む大豆油、24%のステアリン酸と58%のオレイン酸とを含むヒマワリ油、又は、20%のステアリン酸と62%のオレイン酸とを含むアブラナ属などの、多価不飽和脂肪酸の量が少ない高ステアリン-高オレイン(HSHO)種子油は、飽和脂肪の代替供給源である。
WHOが2010年に発表した「Fats and fatty acids in human nutrition Expert and consultation report」で報告されているように、ステアリン酸は心血管疾患と関係がないため、ステアリン酸が豊富な脂肪は健康的と見なされている。
HSHO種子油は、飽和脂肪酸の含有量に応じて、液体、半液体、又は半固体である。それらは、ステアリン酸の含有量が多いステアリン(stearins)と呼ばれる固体フラクション及びオレイン(oleins)と呼ばれる液体フラクションを得るために、分別する必要がある。ステアリンはまた、原料よりも多くの固形分を含み、ハードストックの使用を要求する食品配合物で使用される。これらの油は、一定レベルの天然のろうも含む。
HSHO種子油の溶媒又は乾式分別法など、さまざまな分別方法が過去に報告されている。
溶媒分別は、予めヘキサン又はアセトンなどの有機溶媒に溶解した油の低温での結晶化に基づく。得られた結晶を濾過して、ステアリンフラクションを得る。溶媒分別法は効率的で、固形分が非常に高レベルのフラクションを与える。それにもかかわらず、得られるHSHO種子油のステアリンフラクションは、主に対称な二飽和TAG(SUS)を有するが、元の油のsn-2位置における飽和脂肪酸の量が少ないため、非対称な二飽和TAG(SSU及びUSS)並びに三飽和TAG(SSS)が非常に少量であり、天然のカカオバターに近い。
乾式分別は、溶媒を添加せずに油を結晶化すること、及び、その後、得られた脂肪結晶を濾過することを含む。濾過中、固体フラクションに捕捉されたオレインは排出される必要があり、これは、例えば、ステアリン固形物を高圧でメンブレンフィルタで圧搾することによりなされる。この方法は、より低コストで実施でき、広範囲にわたって研究されてきたが、分別を実行するため温度幅が15~18℃と狭いなどの難点がある。それは、18℃よりも高い温度ではステアリンの収率が非常に低く、15℃未満では得られるステアリンの固体脂肪含有量が少なく、用途に使用するには軟らかすぎるからである。さらに、これらの油の濾過速度は、濾布を詰まらせる小さな結晶の存在のため、通常、他の油よりも遅い。オレインをステアリンから完全に排出することはできず、ステアリン中の飽和脂肪酸のレベルが低くなる。したがって、このプロセスの能率は低く、最後に、大量の二飽和TAGがオレインフラクションに残る。
非改質高ステアリン種子油のフラクションからのステアリンは、元の高ステアリン植物種子油においてsn-2位置の飽和脂肪酸の割合が低いため、ほとんどの場合、一般構造「SUS」の対称な二飽和TAG及び非常に少ない三飽和TAG(「SSS」)を有する。大豆、ヒマワリ及びキャノーラから報告されている高ステアリン酸種子油は、ステアリン酸並びにその誘導体、アラキジン酸及びベヘン酸の含有量が多く、パルミチン酸の量は標準の油と同じである。それにもかかわらず、これらの油とそれらに由来するステアリンは、TAGのsn-2位置にあるステアリン酸、アラキジン酸及びベヘン酸の含有量が少ない。
全脂肪酸組成並びに脂肪中の飽和及び不飽和アシル基の分布の計算は、例えば、国際標準化機構(ISO)からの標準的な方法によって行うことができる。標準的な方法ISO 12966-2:2017「脂肪酸のメチルエステルの調製」及びISO 12966-4:2015「脂肪酸メチルエステルのキャピラリーガスクロマトグラフィーによる測定」により、パーセンテージで表される脂肪の脂肪酸の全組成、特に、全脂肪の飽和脂肪酸の組成(Stotal)を決定できる。さらに、標準的な方法ISO 6800:1997「トリグリセリド分子の2位置における脂肪酸の組成の決定」は、脂肪のsn-2位置の脂肪酸組成を決定する方法を示す。これには、膵リパーゼによる不完全な加水分解によって生じる、TAGのsn-2の脂肪酸組成を表すsn-2モノグリセリド、並びにTAGのsn-1及びsn-3位置から放出される遊離脂肪酸が含まれる。sn-2モノグリセリドは薄層クロマトグラフィー(TLC)で分離され、メチルエステルに変換され、その脂肪酸組成はキャピラリー気液クロマトグラフィーで分析されるので、sn-2位置の飽和脂肪酸の割合(Ssn-2)を知ることができる。
油中の全飽和脂肪酸に対するsn-2の飽和脂肪酸の割合(%)は、Ssn-2/Stotal×100の値として定義される。この値により、TAG分子内に、完全にランダムの、部分的にランダムの、又は非改質の飽和脂肪酸の分布があるかどうかを判断できる。sn-2位置に飽和脂肪酸がない場合(つまり、Ssn-2はゼロになる)、Ssn-2/Stotal×100の値はゼロになる。その場合、三飽和TAG(SSS)は脂肪に存在せず、すべての二飽和TAGはSUSタイプでなければならない(これは対称なTAGである)。飽和脂肪酸がTAGの3つの位置に均等に分布している脂肪(これは化学的にエステル交換された脂肪の場合である)は、飽和脂肪酸の組成がすべての位置で同じで、sn-2の値が脂肪におけるそれに等しい。例として、飽和脂肪酸が40%の完全にランダムに(化学的)エステル交換された脂肪では、Stotalは40%、Ssn-2は40%である。この場合、Ssn-2/Stotal×100の計算結果は100、((Ssn-2=40/Stotal=40)×100)=100になる。膵リパーゼの加水分解後に分析されたsn-2における飽和脂肪酸の割合が3.6%であり、全脂肪における飽和脂肪酸の割合が34.0%である、非改質脂肪では、Ssn-2/Stotalx100の値は(3.6/34.0)x100=10.6となる。
sn-2/Stotal×100の値は、全飽和を考慮しないsn-2位置での飽和脂肪酸の単純な組成よりも、TAGへの脂肪酸の分布のより完全な情報を提供するので、油及びステアリンのランダム化の度合いを定量化する。非改質の植物性HSHO種子油では、この値は通常11未満であり、そのHSHO種子油の三飽和TAG(SSS)は1%未満である。
従来技術では、油及び脂肪の固形分を増やすために、TAG分子内の脂肪酸の再編成(rearrangement)が行われてきた。これは一般的に、植物油と、時には、他の油であり得る飽和脂肪酸の供給源との、水素化油との、又は単なる飽和脂肪酸若しくはエステルとの、反応を伴う。これについて、WO-A-97/28695は、高ステアリン酸及び高リノール酸の大豆油及び菜種油のランダムエステル交換によりスプレッドを製造するのに適した食用脂肪組成物を製造する方法に関する。この油は、ランダムエステル交換がなされ、得られた脂肪は、オレイン酸を有する二飽和TAGよりも主にリノール酸を不飽和脂肪酸として有する二飽和TAGを多く含む、大きな二飽和TAG量を示した。それは、それ以上の水素化又は分別なしでスプレッド製造に使用された。リノール酸の量が多いのは、酸化安定性が低いため望ましくない。
脂肪の全ランダム化は、その固体脂肪含有量を増加させるために、高飽和植物油に適用された。ここで、すべての飽和脂肪酸がTAGの3つの位置に均等に分配された。HSHOヒマワリ油などをさらに分別せずにランダムにエステル交換することは、WO-A-2014/016245に示されている。SSS、SUS、SSUの割合が、固体脂肪含有量と同様に増加し、10℃で最大18.2%、20℃で3.7%である。
今日、固形分含有量がより多い、油糧種子のステアリンフラクション及びその調製方法の需要が残っている。
今回、驚くべきことに、大幅に増加した二飽和と三飽和TAG、及び、より多くのステアリン酸とアラキジン酸とベヘン酸とを含有する固体ステアリンの生成を可能にする、油の部分ランダムエステル交換、及び、それに続く分別を含む、新しい方法が発見された。
したがって、本発明は、以下を含む高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪に関する:
- 1つのオレイン酸を含む二飽和トリグリセリドの、1つのリノール酸を含む二飽和トリグリセリドに対する(w/w)比(SOS/SLS)が1より大きい、19~95%の二飽和トリグリセリドと、
- 少なくとも1%の三飽和トリグリセリドとを含み、
sn-2/Stotal×100の値が11~98である。
この分別からの本発明に係るステアリン脂肪は、sn-1,3-特異的酵素エステル交換、乾式分別、又は従来技術の同じ最初の油から一緒に両方の方法によって製造されたステアリンよりも多くの固形分量を示し、またより広い溶融間隔(melting intervals)も示す。そして、これは、ベーキング、フィリング用脂肪、菓子、スプレッド、コーティングコンパウンド、アイスクリーム、マーガリン配合物及びショートニング用脂肪での使用に適している。さらに、本発明に係るステアリン脂肪は、sn-2位置における飽和脂肪酸の量の増加により、二飽和TAG、対称(SUS)並びに非対称(SSU及びUSS)の混合物を含む。したがって、本発明に係るステアリン脂肪は、低温での固体脂肪含有量の増加に起因する改善された結晶化特性及び機能性を有し、これにより、幅広い製品用途でのそれらの使用が可能になる。
本発明の文脈において:
- 「高ステアリン」は、ステアリン酸の含有量が11%を超える種子、油糧種子、油、脂肪又はステアリンを指す;
- 「高ステアリン油糧種子」は、ヒマワリ、アブラナ属、綿、トウモロコシ、ピーナッツ、大豆、ベニバナ等の、ステアリン酸の含有量が11%を超える一年生の油糧種子作物を指す;
- 「HSHO種子油」は、オレイン酸のリノール酸に対する比が1よりも大きい、高ステアリン油糧種子から得られる高ステアリン高オレイン種子油を指す;
- 「S」は、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の飽和脂肪酸を指す;
- 「U」は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸を指す;
- 「TAG」は、グリセロール骨格とそれにエステル化された3つの脂肪酸とを含む、トリアシルグリセロール分子を指す。TAGは、グリセロール分子の異なる3つの位置でエステル化されている脂肪酸を表す3つの文字で名前が付けられている。この脂肪酸は飽和(「S」)又は不飽和(「U」)である;
- 「UUU」は、三不飽和TAGを指す。
- 「USU」及び「SUU」又は「UUS」は、二不飽和TAGを指す(SUU及びUUSは同一であり、いずれもSUUで示される。);
- 「SUS」は、飽和脂肪酸の対称的な立体化学位置を持つ二飽和TAGを指す;
- 「SSU」又は「USS」は、飽和脂肪酸の非対称な立体化学位置を持つ二飽和TAGを指す(SSU及びUSSは同一であり、いずれもSSUで示される。)。
「SSS」は、三飽和TAGを指す;
- 「sn-1」、「sn-2」及び「sn-3」は、TAG分子内の脂肪酸の3つの立体化学位置を指す;
- 「ハードストック」は、スプレッドやマーガリンなどの構造を与えるための、食品用途における固相として使用される脂肪を指す;
- 「SFC」は、pNMR(パルス核磁気共鳴)により測定された固体脂肪含有量を指し、ISO 8292-1:2008の非安定脂肪の方法に準拠した固体状脂肪の質量分率として示す;
- 「ppm」は、重量で100万分の1を指す;そして、
- 特に指定のない限り、すべての%値は重量%である。
本発明は、二飽和及び三飽和トリグリセリドを含み、特定のSsn-2/Stotal×100の値を有する、高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪に関する。
好ましくは、本発明は、以下の特徴を個々に又は組み合わせて有する高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪に関する。
- 高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪は、ヒマワリ、アブラナ属、綿、トウモロコシ、ピーナッツ、大豆若しくはベニバナ油糧種子から選択される種子油又はそれらの混合物から得られ、前記油は、以下を含み:
・リノール酸よりも多くのオレイン酸、より好ましくは、オレイン酸のリノール酸に対する(w/w)比が2よりも大きく、さらに好ましくは、オレイン酸のリノール酸に対する(w/w)比が5よりも大きい;
・11%以上のステアリン酸、より好ましくは12%以上、さらに好ましくは14%以上のステアリン酸、さらに好ましくは16%以上のステアリン酸;
・並びに、最大24%のリノール酸、好ましくは最大20%のリノール酸、より好ましくは最大15%のリノール酸;
- 高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪は、19~89%の二飽和トリグリセリド、より好ましくは19.5~84.5%の二飽和トリグリセリド、さらに好ましくは24.4~76.8%の二飽和トリグリセリド、さらに好ましくは28.1~52.6%の二飽和トリグリセリドを含み;
- 1つのオレイン酸を有する二飽和トリグリセリドの、1つのリノール酸を有する二飽和トリグリセリドに対する比(SOS/SLS)が2.3よりも大きく、より好ましくは16.9よりも大きく、さらに好ましくは108.7よりも大きく;
- 三飽和トリグリセリドの全量が1.3%よりも多く、より好ましくは3.6%よりも多く、さらに好ましくは8.7%よりも多く、さらに好ましくは22.6%よりも多く;
- Ssn-2/Stotal×100の値が13.5~95.6、より好ましくは27.2~92.2、さらに好ましくは41.0~77.0であり;
- 三不飽和トリグリセリドの全量が2.2%よりも多く、より好ましくは6.8%よりも多く、さらに好ましくは13.6%よりも多く、及び/又は、
- 高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪は、少なくとも625ppmのろう、より好ましくは少なくとも785ppmのろうを含有する。
本発明に係る高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪は、10~90%のエステル交換された高ステアリン種子油を含有する、エステル交換された高ステアリン種子油、脂肪又はステアリンと、エステル交換されていない水素化されていない高ステアリン油、脂肪又はステアリンとの混合物の、分別によって調製し得る。したがって、本発明は、前記で定義した高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪を調製する方法にも関し、前記方法は以下のステップを含む:
a)任意の市販のリパーゼを使用してHSHO種子油をエステル交換し、飽和脂肪酸をトリグリセリド分子に部分ランダム再編成すること(partial random rearrangement);及び
b)前記の部分ランダムエステル交換されたHSHO種子油(partial random interesterified HSHO seed oils)又はそれらのステアリンの少なくとも1つの分別をすること。
本発明に係る方法では、既知の方法とは異なり、出発HSHO油を脱ろうする必要はない。今日まで、油は、ろうの結晶が分別スラリーの結晶化されたTAGと相互作用して濾過のステップを妨げることを回避するために、脱ろうを行う必要があった。しかし、脱ろうは、油を長時間(少なくとも24時間)冷たく保つ必要があるため、コストがかかり、濾過助剤を使用して油を濾過する必要があるため、この操作で油の損失が起こり得る。失われた油には、ハードストックとして収集する主に対象生成物である三飽和及び二飽和TAGが含まれているため、脱ろうはハードストックの収率に悪影響を及ぼす。脱ろうはまた、管理する必要がある残留物(ろう及び残留油を含む使用済み濾過助剤)を生成する。本発明によれば、対称及び非対称の二飽和並びに三飽和TAGの新しい混合物から得られる改善された結晶化及び濾過特性により、脱ろうは不要であり、最初の油は脱ろうされないので、ステアリン生成物は、固形分を増加させるろうも含み、油の結晶化及び/又は濾過には影響しない。油は、温度を下げるだけで結晶化する。最終的なステアリンの特性を改善することに加えて、脱ろうのステップがないことは、コストも削減する。
さらに、本発明に係る方法において、HSHO油の脂肪酸は、飽和脂肪酸の一部をTAG分子においてsn-1,3からsn-2の位置に移動させ、飽和脂肪酸の部分ランダムエステル交換がされるように、再編成される。より対称的なTAG構造を持つ、非改質高ステアリン種子油の乾式分別及び結晶化とは対照的に、これらの部分ランダムエステル交換油の濾過は、6℃、2℃、又はさらに低い-2℃の低温で行われ得る。この方法は、メンブレンプレスフィルタですばやく簡単に濾過でき、結果として、ステアリンと呼ばれる固体脂肪及びオレインと呼ばれる液体油の2つの生成物を得ることができる、結晶化されたスラリーを与える。ステアリンフラクションは、標準(2~10bar)又はより高い圧力(10~30bar、又は50bar)で圧搾でき、同じ非改質の分別について従来技術又はsn-1,3-特異的酵素エステル化油で説明されているよりも高い収率で生成される。
本発明は、高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪を調製するための方法に関し、前記方法は、エステル交換のステップ及び分別のステップを含む。好ましくは、本発明は、以下の条件下で、個々に又は組み合わせて行われる、高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪を調製する方法に関する:
- 本発明に係る方法で使用される原料は、ヒマワリ、アブラナ属、綿、トウモロコシ、ピーナッツ、大豆又はベニバナなどの油糧種子から粉砕されたHSHO油であり、WO-A-00/74470に開示され又はFernandez-Moyaらによって「Oils from Improved High Stearic Acid Sunflower Seeds」, J. Agric. Food Chem. 2005, 53: 5326-5330に報告されているように、種子から抽出できるヒマワリ油などである;
- エステル交換(ステップa))は、0.1~10.0%の任意の市販のリパーゼ、より好ましくは0.5~8%の任意の市販のリパーゼ、さらに好ましくは1~5%の任意の市販のリパーゼを使用して行われる;
- 市販のリパーゼは、Lipozyme TL IMが選択される;
- エステル交換(ステップa))は、50~80℃の温度で実行される;
- エステル交換(ステップa))は、20分~30時間、より好ましくは2~30時間、さらに好ましくは2~24時間、さらに好ましくは2~18時間、最も好ましくは5~12時間の間、実行される;
- 分別(ステップb))は、乾式分別である。より好ましくは、乾式分別は、以下のステップを含む:
以下によって結晶化する:
・完全に溶けた油を、20分~15時間の間、5~25℃の範囲の温度に冷却し、
・その後、最終温度が-10~22℃、より好ましくは-2~16℃、さらに好ましくは2~6℃の範囲になるまで、10分~48時間の一定時間、冷却する;そして、
加圧濾過、減圧濾過又は遠心分離により、固体ステアリンと液体オレインとを分離する;
- 分別(ステップb))は、溶媒分別である。溶媒分別では、脂肪は有機溶媒に溶解され、選択された温度及び時間で保たれてミセル構造が形成される。この結晶化ステップが整ったら、ミセルを減圧で濾過し、得られたステアリン濾液を新鮮な溶媒で洗浄して、捕捉されたオレインを除去する。濾過後、ステアリンから溶媒を蒸発させる。より好ましくは、溶媒フラクションは、油の溶媒に対する比(v/v)を1/0.2~1/11とした有機溶媒又は混合溶媒を、25~-20℃の温度で使用することにより行われる。
代替的な実施形態では、この方法は、エステル交換された高ステアリン種子油、脂肪又はステアリンと、エステル交換されていない水素化されていない高ステアリン油、脂肪又はステアリンとの混合物の、分別によって実行できる。ここで、混合物は10~90%のエステル交換された、高ステアリン種子油、脂肪又はステアリンから構成されている。
それらの酵素エステル交換条件下では、飽和脂肪酸の一部がTAG分子のsn-1及びsn-3位置からsn-2位置に移動し、その結果、sn-2飽和TAGが増加する。これらの部分ランダムエステル交換油は、TAGのsn-2位置にある飽和脂肪酸の量が増えるため、対称及び非対称の二飽和並びに三飽和TAGを含む。
この実施形態では、分別は、結晶化ステップ及び、例えば、エステル交換された高ステアリン種子油、脂肪又はステアリンと、エステル交換されていない水素化されていない高ステアリン油、脂肪又はステアリンとの混合物を含む原料から得られる脂肪の濾過による、その後の分離を含む。
結晶化のステップは、攪拌と温度とを制御しながら、任意の反応器又は晶析装置で実行し得る。結晶化のために、部分ランダムHSHO油を最初に少なくとも60℃まで加熱する。温度は、油中のすべての結晶構造及び結晶構造記憶を破壊するのに十分な高さに選択されている。加熱された油は、35~-5℃の結晶化温度に冷却され、ここで結晶化時間は1~48時間である。好ましくは、結晶化は温度プログラムを使用して行われ、最初の結晶化温度を35~16℃として30分~15時間維持され、その後温度は15.9~-5℃に低下され、10分~16時間継続して結晶化が行われる。さらに好ましくは、結晶化は、温度プログラムを使用して行われ、最初の結晶化温度を25~18℃として1~6時間維持され、その後、温度は16~-2℃に下げられ、2~16時間継続して結晶化が行われる。結晶化が一定(等温)温度で行われる状況では、この温度は好ましくは16~4℃であり、結晶化時間は2~24時間である。
結晶化が完了すると、得られたスラリーはステアリン及びオレインの2つのフラクションに分離される。この分離は、遠心分離、後の固形物圧搾の有無にかかわらず減圧濾過によって、又は好ましくは加圧濾過によって行ってもよい。加圧濾過では、ステアリン固形物は濾過を標準(2~10bar)及び高圧(10~50bar)に増やすことで形成される。液体オレイン相は、フィルタを通過するが、ステアリンは前記フィルタから収集し得る。濾過は18~-2℃の温度で、好ましくは結晶化と同じ温度で行われる。
得られたステアリン脂肪に対して行われる第2の分別ステップでは、二飽和及び三飽和TAGの量を増やすために、最終結晶化温度を最大30℃として、行ってもよい。
本発明に係る方法は、ランダム化されていないHSHO種子油の分別で見られるものよりも高いステアリン収率をもたらす。他の利点は、非改質HSHO油の分別で見られるものよりも濾過速度がはるかに速く、プロセスが高速になり、したがって大幅に改善されることである。示された低温でさえ、ステアリン固形物は、固形物を壊すことなく、10~30barの高圧で圧搾でき、従来技術よりも高い分別ステアリン収率をもたらす。
好ましくはその天然のろうが含まれる、得られるステアリンの異なる化学構造は、対称なTAG(SUS)及び非対称なTAG(SSU+USS)の混合物であるニ飽和TAGをより多く含み、同時に三飽和TAGの含有量が増加した、という事実により、非改質HSHO種子油から生成された以前のステアリンよりも優れた技術的特性をもたらす。改良に関していえば、これらのステアリンは、改質したTAG構造により、10~30℃の温度で以前のステアリンよりも大きなのSFCを示す。
本発明に係る高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪は、食品用途及び配合物に使用し得る。したがって、本発明はまた、本発明に係る高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪を含む、ショートニング、マーガリン、スプレッド、ブレンドスプレッド、ベーカリー用脂肪、揚げ物用脂肪、フィリング用脂肪、コーティングコンパウンド、製菓用脂肪又はアイスクリーム用脂肪に関する。
最後に、本発明に係る高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪は、食品を調製するために使用し得る。したがって、本発明はまた、ショートニング、マーガリン、スプレッド、ブレンドスプレッド、ベーカリー用脂肪、揚げ物用脂肪、フィリング用脂肪、コーティングコンパウンド、製菓用脂肪又はアイスクリーム用脂肪を調製するための、本発明に係る高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪の使用に関する。
本発明は、以下の例により非限定的に説明される。
非実例-先行技術のステアリン
表A
下記の表Aは、大豆、ヒマワリ、キャノーラの非改質高ステアリン種子油、並びに、以下の先行技術文献に開示されている非改質高ステアリン及び高オレインヒマワリ油の乾式分別から得られる3つのステアリンの、脂肪酸組成、TAGクラス、sn-2の飽和含有量、全飽和含有量Stotal及びそれらから得られた比Ssn-2/Stotalx100の値を示す:
- Reskeらによる「Triglyceride composition and structure in genetically modified sunflower and soybean oils」(1997) JAOCS 74, 989-998;
- Fernandez-Moyaらによる、2005, J. Agric. Food Chem. 53, 5326-5330;
- Neffらによる、1997, Lebensm.-Wiss. u.-Technol. 30, 793-799;そして、
- Byrdwell及びNeffによる、1996, J. Liq. Chrom. & Rel. Technol. 19, 2203-2225.。
データは%(w/w)で示される。
Figure 0007438117000001
表Aに示されている油は、高ステアリン変異体すなわち遺伝子組み換え油糧種子から抽出されたもので、ステアリン酸、ステアリン酸の伸長によって酵素的に生成される20及び22炭素の脂肪酸であるアラキジン酸及びベヘン酸、の量が増加している。これらの油では、標準の種子油と同様の含有量の、パルミチン酸など、炭素数16やそれ以下の、炭素数が18未満の脂肪酸は重要ではない。
表B
表Bは、2つの高ステアリン高オレイン油、HS 4及びHS 5油、並びに、アシル再編成後の対応する油、EIE HS 4及びEIE HS 5の、TAGクラス組成とオレイン酸1分子を含む二飽和TAGのリノール酸1分子を含む二飽和TAGに対する比とを示す。S:飽和脂肪酸、U:不飽和脂肪酸、O:オレイン酸、L:リノール酸である。
データは%(w/w)で示される。
Figure 0007438117000002
表C
表Cは、本発明及び以下の先行技術文献における、同じ品質のHSHO油を使用した、ステアリンの二飽和及び三飽和TAGの最終分別温度、収率及び含有量の比較表である:
- Bootelloらによる、「Dry Fractionation and Crystallization Kinetics of High-Oleic High-Stearic Sunflower Oil」, JAOCS 88:1511-1519;
- WO-A-2011/048169。
データは%(w/w)で示される。
Figure 0007438117000003
表Cに示すように、結果として2倍以上の高い収率で得られる高ステアリンは、また、一般式SUS(SUS+SSU)及びSSSのTAGのレベルも、最大39.4%と先行技術のステアリンよりも高く、より多くの固体を与える。説明された分別プロセスから生じるステアリンは、主にオレイン酸である不飽和脂肪酸を含む健康的な脂肪であり、健康的なステアリン酸の量が増加している。結果として得られるステアリンのTAG組成及び収率は、原料の組成、最終的な結晶化温度、及び分別中に適用される傾斜(ramps)によって異なる。
例1-油の破砕と精製
試験のために、エキスペラープレスで種子を粉砕し、さらに溶媒抽出することにより、油を得た。抽出された油は、精製及び漂白された。圧搾により得られた油は、リンの含有量が少ないため、脱ガムは行われなかった。遊離脂肪酸の除去は、ボーメライ(Baume lye)(12°、2.8M)15℃で40分間化学中和して行った。中和により生じたソープ(soap)を遠心分離により除去し、数回水洗してから遠心分離した。70℃で10分間、トンシル漂白土(Tonsil bleaching earth)(1%w/w)で漂白することにより、過剰な色素を除去した。次いで、中和/漂白された油を、連続的な蒸気流を作用させながら、減圧下で200℃で3時間かけて脱臭した。油は脱ろうしてもよく、しなくてもよい。
例2-結果の分析と計算
2.1.TAGの分析
TAG種の組成は、Fernandez-Moyaらによる、J. Agr. Food Chem. 2000, 48:764-769にしたがい、キャリアガスとしての水素及びFID検出器を使用し、0.25mmID、0.1ミクロンの膜厚、30m.Quadrex社製アルミニウム被覆メチル65%フェニルシリコーンキャピラリーカラム(30m. Quadrex aluminium-clad bonded methyl 65% phenyl silicone capillary column)を備えたAgilent 7890ガスクロマトグラフのガスクロマトグラフィーによって分析した。TAGクラス(SSS、SUS、SUU、UUU)の結果は、詳細なTAG種の結果から計算された。
2.2.脂肪酸組成の分析とS total の計算
脂肪酸組成分析は、ISO/TS 12966-4:2015標準メソッドに基づく。脂肪、油及び脂肪酸からのエステル交換又はエステル化によって得られた脂肪酸メチルエステルは、Supelco SP-2380フューズドシリカキャピラリーカラムを備えたHewlett-Packard 6890ガスクロマトグラフィー装置でキャピラリーガスクロマトグラフィーによって分析される。保持時間を既知の標準の保持時間と比較することにより、また、ISO/TS 12966-4:2015標準メソッドで提供されている付録Bのクロマトグラムの例を使用することにより、さまざまなメチルエステルを特定した。
全飽和脂肪酸含有量Stotal(%)は、前記油に含まれるすべての飽和脂肪酸を加算した油の脂肪酸組成から計算される。したがって、HSHO油の場合、Stotalはパルミチン酸(16:0)、ステアリン酸(18:0)、アラキジン酸(20:0)、及びベヘン酸(22:0)の加算である。
2.3.トリグリセリド分子のsn-2位置の脂肪酸組成の分析及びS sn-2 の計算
TAGのsn-2位置の脂肪酸組成は、ISO/TS 6800:1997標準メソッドに基づくプロトコルを使用して決定される。この方法では、脂肪は膵リパーゼで加水分解され、sn-2モノグリセリド及びTAGのsn-1及びsn-3の位置から放出される遊離脂肪酸を生成する。sn-2モノグリセリドは薄層クロマトグラフィーで分離され、その脂肪酸組成はキャピラリーガスクロマトグラフィーでメチルエステルとして分析される。
sn-2位置の全飽和脂肪酸含有量、Ssn-2(%)は、対応するsn-2モノグリセリドの脂肪酸組成から、前記sn-2モノグリセリドに存在するすべての飽和脂肪酸の加算として計算される。
2.4.S sn-2 /S total x100の比の値の計算
sn-2/Stotalx100の比の値は、TAGのsn-2位置の全飽和脂肪酸含有量(ISO/TS 6800:1997標準メソッドによる2.3セクションで得られる)を、油の飽和脂肪酸含有量(ISO/TS 12966-4:2015標準メソッドによって2.2セクションで得られる)で割り、100を掛けて得られる。
2.5.ステアリン収率の測定
ステアリン収率(%)は、ステアリンフラクションの質量をステアリン+オレインの質量で割って100を掛けることにより計算された。
2.6.油、脂肪又はステアリンの固体脂肪含有量の決定
pNMR(AOCS公式メソッドCd 16b-93)に基づく固体脂肪含有量の直接測定のためのAOCS公式メソッドが使用された。
例3-HSHO種子油の部分ランダムエステル交換及び分別
HSHOの、精製され、脱ろうされ又は好ましくは脱ろうされていないヒマワリ油に、酵素反応による部分ランダムエステル交換、及び、分別、乾燥又は溶媒分別を行った。以下を参照されたい。この反応は、湿気を除去しTAGの加水分解を防止するために同じ油で1時間減圧で調整した、5%w/wの市販のLipozyme TL IM(Novozymes)の存在する反応器内で実行した。この再編成の反応は、撹拌速度を150r.p.mに保ちながら撹拌バッチ反応器内で70℃で10時間行った。反応が完了すると、固定化酵素は、多孔性プレートを介した減圧濾過により分離された。酵素はその後の再編成の反応に再利用できる。酵素反応前後の油組成を表1に示す。次いで、改質油を分別した。ジャケット付き晶析装置はプレスメンブレンフィルタに接続されている。再編成されたHSHO油を晶析装置に入れ、40r.p.m.の攪拌速度で60℃まで加熱した。このステップにより、油内の以前の固体構造が破壊され、プロセスが再生可能になった。その温度に達したら、同じ攪拌速度を維持しながら、油を22~16℃(この例では18℃)の温度まで冷却した。油がその温度に達したら、撹拌は10r.p.mに速度を落とした。油をその温度で5~8時間かけて結晶化させた。次いで、スラリーの温度を、最終的な結晶化温度である14~-2℃に到達するまで5時間の冷却率で、ゆっくりと下げ、さらに12時間保持した。この例では、最終的な結晶化及び濾過温度は12℃であった。攪拌速度は、結晶化プロセス全体の間、10r.p.m.であった。この時点で、晶析装置に圧力を加えることにより、スラリーをプレスフィルタに投入した。圧力は50分で0から1.5barに徐々に増加させた。オレインの流量が減少したら、油圧ポンプでフィルタへの圧力を増加させることにより、フィルタ内のステアリンを圧搾した。圧搾圧力は、30分~4時間の間に1.5barから最大30barまで徐々に増加させた。このステップでは、ステアリン固形分に捕捉されたオレインを排出して、飽和脂肪酸が豊富なステアリンを生成した。オレインの流れが止まったら、フィルタを取り外してステアリンを得た。最初の分別プロセスの後、最終的なプロセス温度が異なることを除いて、同じ分別条件で分別の第2のステップを行ってもよい。この例では、ステアリン22からのサンプルに対して第2のプロセスを実施し、ステアリン22-1及び22-2の、結晶化及び濾過温度は、それぞれ12.8℃及び30.0℃であった。この第2の分別ステップでは、二飽和及び三飽和TAGの量が増加するため、最終的なステアリンの固形分が増える。得られたステアリン脂肪の組成を表1に示す。
Figure 0007438117000004
ステアリン7、22-1及び22-2では、Ssn-2値はそれぞれ36.9%、42.0%及び25.3%、Stotalはそれぞれ41.1%、52.6%及び61.6%であった。したがって、部分ランダムSsn-2/Stotalx100の値は89.8、79.8及び41.0であり、1つのオレイン酸を含む二飽和TAGの1つのリノール酸を含む二飽和TAGに対する比、SOS/SLSは、それぞれ14.7、5.5及び114.8であった。
これらのステアリンの予期せぬ改善された特性は、ステアリンに蓄積したステアリン酸少なくとも1分子を含む非対称及び対称の二飽和及び三飽和TAG種の混合物、並びに高融点で多量の天然ヒマワリのろうによるものである。この脱ろうされていない油糧種子ステアリンのろう含有量は、920~1171ppmの範囲である。この例では、少なくとも1分子のステアリン酸を含むこれらのTAG種は平均2.6倍増加し、他のTAG種は平均0.8倍減少する。これらのステアリン脂肪では、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸の飽和脂肪酸は、元の油に比べて1.9倍増加したが、パルミチン酸は1.3倍しか増加せず、これらの油糧種子ステアリンでの18以上の炭素の飽和脂肪酸の重要性を示している。
例4-HSHO油の乾式分別に対する最終結晶化温度の影響
例3で示したプロセスは、ステアリン生成物においてより高い収率又は異なるTAG組成を得るために、操作パラメーターが変動され得る。このため、例3で示した部分ランダムエステル交換油に、その例に記載されているものと同じ条件で異なる分別試験を行った。脱ろうしていない部分ランダムエステル交換油を晶析装置に投入し、60℃で加熱することにより、以前の固体構造を破壊した。この時点で、油の温度は18℃に冷却され、油を10r.p.mで撹拌して5時間にわたって結晶化させた。その後、晶析装置への温度を下げ、5時間の温度勾配を適用して結晶化温度を下げた(5つの異なるプログラム)。これらの温度は14℃、12℃、10℃、8℃及び6℃であった。これらの温度に達したら、さらに12時間かけてスラリーを結晶化した。次いで、スラリーをメンブレンプレスフィルタに供給して濾過した。プレスフィルタの温度は、最後の結晶化ステップと同じになるように設定した。濾過の圧力は、35~40分間で2.5~3.0barまで着実に増加させ、オレインの流れを監視した。オレインの流れが減少し始めたら、スラリー供給パイプラインを閉じ、フィルタ内の圧力を上げることにより、濾過されたステアリンを圧搾した。フィルタ内の圧力は、20~30分間で最大20barまで着実に増加させた。最後に、フィルタを開き、ステアリンを収集して特性を調べた(表2)。
Figure 0007438117000005
ステアリンの収率は低温で増加し、6℃で最大28.6%であった。このような低温でスラリーが濾過可能であり、ステアリンが圧搾可能であったことは注目に値する。得られたフラクションの組成も表2に示す。ステアリンは、より高温(12℃、14℃)で生成された場合、より多くの三飽和TAGを示した。この効果は、これらの温度でのSSS TAGの迅速かつ完全な沈殿によるものであった。分別の温度を下げると、二飽和TAGのステアリンへの取り込みが多くなり、オレインに残ったこれらの二飽和TAGの量がそれぞれ少なくなった。ステアリンにおける二飽和TAGの含有量は、全TAGの33.5~38.1%の範囲であり(表2)、二飽和TAG及び三飽和TAGの含有量は、全TAGの37.0~41.7%の範囲であった。これは、この方法により、ステアリン生成物の変化を最小限に抑えた非常に低温の油を分別して、最終ステアリン中の三飽和(SSS)及び二飽和(SUS、SSU)トリグリセリドの量の変動が小さいステアリンの製造が可能になることを示している。これらの新しいステアリンは、非改質HSHO油から得られるステアリン(表A、ステアリンA、ステアリンB及びステアリンC:三飽和TAGs 0.1~0.4%及びSsn-2/Stotalx100値:7.0~8.9)と比較して、顕著に大きな含有量の三飽和TAG(3.5~5.7%)及びsn-2位置の飽和脂肪酸(Ssn-2/Stotalx100比は88.5~95.6)を示す。これは、これらの新しいステアリンは固形分の含有量が増加していることを明確に示している。非脱ろうHSHOヒマワリ油から得られるステアリン4及び6は、それぞれ745及び1353ppmのろうを含んでいる。初期のHSHO油には平均で759~920ppmのろうが含まれており、脱ろうしたHSHO油には366~624ppmのろうが含まれている。ステアリンの結果は、脱ろうされていない油の分別がうまく機能し、ステアリンフラクションにろうが見られることを示している。ろうの分別プロセスへの悪影響は見られなかった。得られるステアリンは構造が改善されており、食品用途のハードストックとして使用できる。
例5-HSHO油の乾式分別に対する初期ステアリンの含有量の影響
この特許に記載されている方法は、ステアリン酸の初期濃度が異なる油で使用できる。したがって、ステアリン酸の濃度が11%の油は、本発明に係る方法を適用して分別できる。11%のステアリン酸を含む精製された非脱ろうヒマワリ油に、例3及び4に示した部分ランダムエステル交換を行った。このステップ後の油のTAG組成の変化を表3に示す。部分ランダムエステル交換されたHSHO油スラリーの三飽和及び二飽和TAGの量は、前の例よりも低かったため、適用した結晶化条件は最終温度6℃で48時間であった。次いで、部分ランダムエステル交換油に、例3及び4で示した分別を行った。再編成及び分別により、ステアリン酸の含有量が少ない油の結晶化が可能になり、25%に近い収率、及び、ステアリン酸の初期含有量が多いHSHOヒマワリ油を用いて得られたステアリン組成に類似したステアリン組成が得られる(例3及び4)。得られたステアリンにおける二飽和及び三飽和の含有量は、ステアリン酸の初期量がより多い以前の例よりも少なかった。これらのステアリンの予期せぬ改善された特性は、ステアリン酸なしの二飽和TAGは1.5倍だけしか増加しなかったが、ステアリンに蓄積されたステアリン酸少なくとも1分子を含む二飽和及び三飽和TAG種がこの場合3倍以上増加したことによる。
Figure 0007438117000006
この例では、ステアリン11は6℃の最終結晶化及び濾過温度で得られ、Ssn-2値は23.6%、Stotalは26.6%であり、部分ランダムSsn-2/Stotalx100の値は23.6/26.6X100=88.8であった。また、1つのオレイン酸を含む二飽和TAGの1つのリノール酸を含む二飽和TAGに対する比SOS/SLSは、20.7であった。
例6-異なるレベルの部分ランダムエステル交換による混合油の分別
本発明で説明される方法を適用してHSHO油から得られるステアリンの組成及び特性は、エステル交換ステップの条件を変更することにより、又はエステル交換油の混合物若しくはエステル交換油及び非改質油、脂肪若しくはステアリンから得られるステアリンを分別することにより、変えることができる。最初のケースでは、より短い反応時間で、異なる程度の部分ランダムエステル交換が得られる。その場合、油中の三飽和及び二飽和非対称TAGのレベルは低くなり、ステアリン脂肪の部分ランダム値Ssn-2/Stotalx100は小さくなる。これらの部分ランダム油は、本発明で報告されているように分別でき、脱ろうなしで、ステアリン生成物の高収率が得られる。さらに、これらの油の分別は、異なる溶融プロファイルを持つステアリンを生成する。これは、硬い、中程度の、又は軟らかい食品用途にそれらをより適切にするために興味深い。同じ効果を得るための他の方法は、ランダムな酵素的にエステル交換された油及び/又は化学的にエステル交換された油と、非改質HSHO油又はsn-1,3が特異的に酵素的エステル交換された油との混合物を作ることである。この例では、HSHOヒマワリ油を例3及び4に記載されているように16時間エステル交換して、完全エステル交換油が得られた。この油を、最初の非改質油、例えば表AのHSHOヒマワリ油又は表BのHS 4若しくはHS 5と混合して、非改質油を20~90%に割合を増やし、異なるレベルの三飽和及び二飽和ランダムTAGの油をとした、異なる油の混合物、すなわちHS 16、HS 12、HS 18、HS 13、HS 14及びHS 15(表4A及び4B)を得た。また、HS 17は、部分ランダムステアリン(10%)、例えば表Cのステアリンと、90%の非改質HOHS油との混合物である。
Figure 0007438117000007
Figure 0007438117000008
三飽和及び二飽和TAGの含有量が多い部分ランダムエステル交換油混合物を、前の例で示したように分別した。以前の分別と同じように、低温での結晶化及び簡単で迅速な濾過を、結晶化及び濾過温度を6~14℃の範囲として、行った。これらの一連の分別に対応するステアリンを表4Bに示す。以前に示されたように、主にステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸がこれらのステアリンで増え、この例では、1.7~2.4倍でステアリンが20.6~34.5%の範囲の収率で得られた。主に、ステアリン酸、アラキジン酸及びベヘン酸の飽和脂肪酸の割合が増加し、混合物中のランダムエステル交換油の含有量が多くなると、ステアリンの収率が高くなり、この場合は10~90%であった。ステアリンのSsn-2/Stotalx100の値は13.5~77.0の範囲であった。これにより、ステアリンに、さまざまな食品用途に適したさまざまな物理的特性を持たせることができる。
予想通り、ステアリンのSsn-2/Stotalx100の値は、前の例で見られた値よりも小さかった。この例は、非改質油と比率の異なるランダム化油又はステアリンとの混合物を分別することにより、生成物中の飽和脂肪酸のランダム化のレベルを制御できることを示している。
例7-高レベルのリノール酸を含む部分再編成されたHSHO油から得られるステアリン
リノール酸の含有量を増加させ、それぞれ14.2%、21.4%、21.4%及び16.3%のリノール酸を含む、いくつかの異なるHSHO油、HS 20、HS 23、HS 25及びHS 26を、部分ランダムエステル交換し、分別した。得られたステアリンを表5に示す。
Figure 0007438117000009
これらの部分ランダムエステル交換ステアリンの三飽和TAGは3.5~10.6%変化し、二飽和TAG(SUS+SSU)は33.2~52.6%変化した。リノール酸の含有量が多い部分ランダムエステル交換油から得られたステアリン(ステアリン20、ステアリン23、ステアリン25及びステアリン26)は、それぞれ18.4、63.7、35.5及び21.0の収率で得られ、リノール酸の含有量がより少ない油から得られたものと同様の組成を示した。したがって、この例で示されるステアリンは、リノール酸のより多い初期含有量を、SOS/SLS比が2よりも大きいステアリン特性に影響を与えずに、変えることができることを示している。これらの結果は、不飽和脂肪酸の種類がエステル交換及び分別の手順に影響を与えないこと、並びに、元の油中の不飽和脂肪酸の組み合わせを自由に変えることができることを示している。飽和脂肪酸、主にステアリン酸、アラキジン酸及びベヘン酸の比率により、ステアリンの特性は大きく異なる。
例8-部分ランダムHSHO脂肪の溶媒分別
HSHO油糧種子部分ランダムエステル交換油又は脂肪は、この例のように、アセトン又はヘキサンなどの溶媒で分別して、飽和脂肪酸が豊富なステアリン脂肪を得ることができる。
溶媒分別は、特定の比率の溶媒に脂肪を溶解し、ミセルを、ゆっくりと振りながら又は振らずに、数時間適切な温度で保持することにより、HSHO油又は脂肪に適用でき、濾過後にTAGの飽和脂肪酸の含有量が出発物質よりも多いステアリン脂肪が得られる。溶媒分別温度は25~-20℃であってもよく、油又は脂肪の溶媒に対するいくつかの比率、例えば1/0.2~1/11を適用してもよい。この例では、部分ランダム化の値がそれぞれ26.3及び43.59である2つのHSHO脂肪、ステアリン30及びステアリン32を、アセトンで、ステアリンのアセトンに対する比を1~4として、12℃、24時間で分別した。部分ランダム化の値が19.9であるステアリン33をヘキサンで、ステアリンのヘキサンに対する比を1~2に設定して、0℃で48時間分別した。結晶化ステップが終了したら、ミセルを減圧濾過し、得られた濾液を新鮮な溶媒で洗浄して、捕捉されたオレインを除去した。次いで、得られた3つのステアリン、ステアリン30-1、ステアリン32-1、ステアリン33-1を溶融し、減圧で蒸留して溶媒を除去した。
Figure 0007438117000010
ステアリン30-1、32-1及び33-1について、Ssn-2値はそれぞれ19.2%、39.7%及び15.9%、Stotalはそれぞれ64.0%、67.2%及び70.9%であった。したがって、部分ランダムSsn-2/Stotalx100の値は30.1、59.2及び22.4であり、1つのオレイン酸を含む二飽和TAGの1つのリノール酸を含む二飽和TAGに対する比、SOS/SLSは、それぞれ167.4、108.7及び117.0であった。これらの部分ランダムエステル交換ステアリンの三飽和TAGは、5.5~10.3%で、乾燥分別サンプルと同様であったが、二飽和TAG(SUS+SSU)は76.8~84.5%で、乾式分別サンプルよりもはるかに高かった。ステアリンは19.0~29.0の収率で得られた。
例9-非改質油及び完全ランダムエステル交換油からのものと比較した、部分ランダムエステル交換されたHSHO油から得られたステアリンの固体脂肪含有量
この特許で示す方法は、部分ランダムエステル交換HSHO油の分別を含み、以前に開示されたHSHO種子油ステアリンとは異なるTAG及びTAG上の脂肪酸分布を有するステアリンの生成を可能にする。さらに、部分ランダムエステル交換HSHOステアリンは、非改質HSHOの分別によって得られた、又は完全にランダムなエステル交換油から得られたステアリンよりも高い収率で得ることができ、より優れた固形脂肪含量を示した。表7は、10~40℃の範囲を含む4つの温度における6つのステアリンの、pNMRによって測定された固形脂肪含有量を示している。これらのステアリンのうち3つは、部分ランダムエステル交換及び分別によって得られ(ステアリン13、ステアリン20及びステアリン14)、2つは完全ランダムエステル交換及び分別によって得られ(ステアリン27及びステアリン28)、及びこれらのうち1つは非改質HSHO油の分別によって得られた(ステアリン3)。
Figure 0007438117000011
それらはすべて、同様の量の飽和脂肪酸を含むHSHO種子油から得られた。部分ランダムエステル交換油から得られたステアリンは、調べられたすべての温度で同等の非改質ステアリンよりも多くの固体脂肪含有量を示し、塑性脂肪(plastic fats)を必要とする配合物に、より適したものになる。さらに、それらは、10℃及び20℃で完全ランダムエステル交換脂肪から得られた同等のステアリンよりも多くの固形脂肪含量を示し、30℃のものよりもわずかに少なく、40℃のものと同様のレベルであった。したがって、部分ランダムエステル交換HSHOから得られたステアリンは、ベーカリー、マーガリン、菓子、コーティングコンパウンド、アイスクリーム、フィリング用脂肪又はスプレッド配合に適した、幅広い温度範囲で適切な量の固形分の脂肪を必要とする用途に、以前のものよりも多くの固体脂肪を提供する。

Claims (13)

  1. ステアリン酸の含有量が11質量%よりも多い、高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪であって、
    - 1つのオレイン酸を含む二飽和トリグリセリドの、1つのリノール酸を含む二飽和トリグリセリドに対する質量比(SOS/SLS)が1より大きい、19~95%の二飽和トリグリセリドと、
    - 少なくとも1%の三飽和トリグリセリドと
    を含み、
    sn-2/Stotal×100の値が11~98であり、
    三不飽和トリグリセリドの全量が6.8%よりも多い、高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪。
  2. 19~89%の二飽和トリグリセリドを含む、請求項1に記載の高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪。
  3. 請求項1又は2に記載の高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪において、
    1つのオレイン酸を有する二飽和トリグリセリドの、1つのリノール酸を有する二飽和トリグリセリドに対する比(SOS/SLS)が2.3よりも大きい、高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪。
  4. 三飽和トリグリセリドの全量が1.3%よりも多い、請求項1~3のいずれか1項に記載の高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪。
  5. sn-2/Stotal×100の値が13.5~95.6である、請求項1~4のいずれか1項に記載の高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪。
  6. 少なくとも625ppmのろうを含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪。
  7. 請求項1~のいずれか1項に記載の高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪を調製する方法であって、
    前記方法は、
    a)任意のリパーゼを使用して高ステアリン高オレイン(HSHO)種子油をエステル交換し、飽和脂肪酸をトリグリセリド分子に部分ランダム再編成することと、
    b)部分ランダムエステル交換された前記HSHO種子油又はそれらのステアリンの少なくとも1回の分別をすることと、
    を含む、方法。
  8. 前記エステル交換は、任意のリパーゼ0.1~10.0%を用いて、50~80℃の温度で、20分~30時間の間で実行する、請求項に記載の方法。
  9. 請求項又はに記載の方法において、
    前記分別をすることは、
    ・完全に溶けた油を、20分~15時間の間、5~25℃の範囲の温度に冷却し、
    ・その後、最終温度が-10~22℃の範囲になるまで、10分~48時間の一定時間、冷却すること
    により、結晶化することと、
    加圧濾過、減圧濾過又は遠心分離により、固体ステアリンと液体オレインとを分離することと、を含む乾式分別である、方法。
  10. 2番目の前記冷却することによって、前記最終温度は-2~16℃の範囲になる、請求項に記載の方法。
  11. 2番目の前記冷却することによって、前記最終温度は2~6℃の範囲になる、請求項10に記載の方法。
  12. 請求項7~11のいずれか1項に記載の方法において、
    前記分別をすることは、油の溶媒に対する体積比が1/0.2~1/11で、有機溶媒又は混合溶媒を、25~-20℃の温度で使用することにより行われる溶媒分別である、方法。
  13. 請求項1~のいずれか1項に記載の高ステアリン油糧種子ステアリン脂肪を調製する方法であって、
    前記方法は、エステル交換された高ステアリン種子油、脂肪又はステアリンと、エステル交換されていない水素化されていない高ステアリン油、脂肪又はステアリンとの混合物の、少なくとも1回の分別を含み、前記混合物は10~90%のエステル交換された高ステアリン種子油、脂肪又はステアリンから構成された、方法。
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