JP7436976B2 - 変性脱脂大豆を有効成分とする胃排出速度抑制剤 - Google Patents

変性脱脂大豆を有効成分とする胃排出速度抑制剤 Download PDF

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特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの掲載日:令和1年7月8日 ウェブサイトのアドレス:https://confit.atlas.jp/guide/event/jsfst66/subject/3Ea-09/advanced https://confit.atlas.jp/guide/event/jsfst66/subject/P-30/advanced
本発明は、変性脱脂大豆を有効成分とする胃排出速度抑制剤に関する。
近年、肥満は様々な健康障害の原因となり得ることが明らかになっている。肥満の原因の一つとして、過度な飲食による過剰なカロリー摂取が挙げられる。したがって、肥満の予防のためには食事の摂取制限やカロリー摂取量を制御することが重要と考えられている。しかしながら、食事の摂取制限を自発的に行うことは強い意志を必要とし、空腹感によって活力が低下し、生活に支障をきたす場合がある。そこで、従来から、食事の摂取制限を行っても、満腹感を持続させて、空腹感を抑制する素材が開発されている。
一般に、食欲は、食欲を抑制する機能を有する消化管ホルモン(コレシストキニン等)の分泌や、胃内容量を迷走神経が食欲中枢に伝えることによって調節されるとされている。そのため、満腹感を持続させる方法として、その消化管ホルモンの分泌を促進する成分の利用や、食塊が胃から排出される速度を抑制する食品の利用が考えられる。また、空腹感の一因である血糖値の急激な上昇・下降を抑制するため、低GI(グリセミックインデックス)食品を利用することも考えられる。
消化管ホルモンの分泌を促進する成分の利用については、例えば、特許文献1では、経口的に投与または摂取可能であり、ヒトにも適用できる、摂食抑制作用を有するペプチド、特に、低コストで実用的な、苦みが少なく安全で摂取しやすいペプチド、およびこれを含有する摂食抑制剤、食品、医薬組成物、飼料等を提供する。具体的には、βコングリシニンを、アルギニン残基のカルボキシル基側のペプチド結合を優先的に切断する酵素によって分解して得られるペプチドであって、コレシストキニン分泌促進活性または摂食抑制活性を有するペプチドを含有する組成物が開示されている。特許文献2では、満腹を促進するために使用することができる、コレシストキニン(CCK)放出活性が増強されたタンパク質加水分解組成物を提供する。具体的には、 約100,000ダルトン未満の平均サイズを有するポリペプチド断片の混合物を含むタンパク質加水分解組成物の可溶性画分であって、少なくとも約0.5mg/mLの濃度の前記タンパク質加水分解組成物が、100nMのホルボール12-ミリスタート-13-アセタートで4時間刺激されたSTC-1細胞によって放出されるコレシストキニンの50%と実質的に同等以上の効力でコレシストキニン放出活性を刺激する、前記タンパク質加水分解組成物の可溶性画分が開示されている。
また、特許文献3では、食した食品の嵩以上の満腹感を感じさせる食材として、精製グルコマンナン、こんにゃく製粉またはこんにゃく飛び粉をチョコレート等の油脂分に練り込んだことを特徴とする膨満感食材が開示されている。
国際公開2006/132273号 特表2012-513771号公報 特開2008-278875号公報
本発明の目的は、たん白質素材を有効成分とする胃排出速度抑制剤を提供することである。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討したところ、水溶性窒素指数(NSI)が適切な範囲になるように変性させ、かつ、高い水中沈定体積(SV)を示す変性脱脂大豆が、胃排出速度抑制剤として特に優れていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、上記目的は、変性脱脂大豆を有効成分とする胃排出速度抑制剤であって、前記変性脱脂大豆のNSIが7.0~30.0であり、且つ前記変性脱脂大豆のSVが7.0mL/g以上である胃排出速度抑制剤によって達成される。
本発明により、食品として使用し易いたん白質素材を有効成分とする胃排出速度抑制剤が提供される。本発明の胃排出速度抑制剤により、満腹感を持続させて、空腹感を抑制し、食事の摂取制限が可能である。したがって、本発明に係る胃排出速度抑制剤により、例えば、過度な飲食による過剰なカロリー摂取を防ぐことができる。さらに、本発明に係る胃排出速度抑制剤により、例えば、過剰なカロリー摂取による肥満を防ぐことができる。そして、本発明に係る胃排出速度抑制剤により、例えば、肥満による健康障害を予防することができる。また、本発明は胃排出速度抑制剤の有効成分としてたん白質素材を利用するため、最終的にたん白質として栄養になり得るので、食品の栄養設計が容易になる。さらに、本発明に係る胃排出速度抑制剤を食品に加えることで、低糖質の低GI食品でも、通常の食品でも、満腹感を持続させることができる。
[変性脱脂大豆]
本発明の胃排出速度抑制剤は、変性脱脂大豆を有効成分とする。本発明に係る変性脱脂大豆は、NSIが7.0~30.0であり、且つ、SVが7.0mL/g以上であるものであれば特に制限されない。NSIは、総窒素量に対する水溶性窒素量を示す。例えば、水溶性たん白質が変性することで不溶化し、水溶性窒素量が減少するため、NSIが低くなる。このことから、NSIは、たん白質の変性度を示す指標となる。また、例えば、一般的に加熱温度が高い場合や加熱時間が長い場合、たん白質の変性度が高くなり、NSIは低くなる。このことから、NSIは加熱の程度の指標としても利用できる。本発明に係る変性脱脂大豆のNSIは、7.0~30.0であり、好ましくは7.0~25.0、より好ましくは7.0~20.0、さらに好ましくは7.2~20.0、よりさらに好ましくは7.4~20.0である。また、SVは、水中での膨潤性を示し、消化管内における不溶性食物繊維の嵩形成能の指標として利用されている。不溶性食物繊維では、SVが高いほど、消化管内での移動速度は低下すると報告がある。本発明に係る変性脱脂大豆のSVは、7.0mL/g以上であり、好ましくは7.2mL/g以上、より好ましくは7.5mL/g以上、さらに好ましくは7.8mL/g以上、よりさらに好ましくは8.0mL/g以上、8.2mL/g以上、8.4mL/g以上である。加えて、前記SVの上限は、特に制限されないが、SVが高いと、水に懸濁した際の粘度は一般的に高くなり、ハンドリングが悪くなるため、好ましくは15.0mL/g以下、より好ましくは12.0mL/g以下、さらに好ましくは11.0mL/g以下、よりさらに好ましくは10.5mL/g以下である。
本発明に係る変性脱脂大豆は、上記NSIの規定、及び、上記SVの規定を満たすものであればよく、好ましくは水に懸濁させた際にある程度高い粘度を示す。前記粘度は、例えば、固形分20質量%の懸濁液について、Perten Instrumentsのラピッドビスコアナライザーを用いて、25℃、500rpmの条件で測定を開始し、15分時点の粘度として、800mPa・s以上が好ましく、より好ましくは900mPa・s以上、さらに好ましくは1,000mPa・s以上である。また、前記粘度の上限は、特に制限されないが、粘性が高過ぎるとハンドリングが悪くなるため、5,000mPa・s以下が好ましく、より好ましくは4,000mPa・s以下、さらに好ましくは、3,500mPa・s以下である。
本発明に係る変性脱脂大豆は、少なくともたん白質を変性させる工程を含む処理をされて得られた脱脂大豆を含む。脱脂大豆は、特に制限されないが、例えば、一般的な方法によって大豆から油分を除去した脱脂大豆でもよい。脱脂大豆を製造する際、大豆から加工助剤を用いて油分を抽出したり、大豆を圧搾した後の圧搾粕から加工助剤を用いて油分を抽出したりすることができる。脱脂大豆は、特に制限されないが、油分が3%以下、2%以下や1%以下であってもよい。また、脱脂大豆は、たん白質含有量を高める処理をしたものであってもよい。脱脂大豆のたん白質含有量を高める処理をしたものとしては、例えば、濃縮大豆たん白質や分離大豆たん白質がある。前記濃縮大豆たん白質は、例えば、酸又はアルコールで処理して可溶性成分を除去した後、乾燥したものである。また、前記分離大豆たん白質は、例えば、中性~弱アルカリ性条件で抽出した後、pHを等電点付近(pH4.8程度)に調整してたん白質を沈殿させ分離し、水に懸濁してpHを中性~弱アルカリ性に調整してたん白質を溶解させ、得られたたん白質溶液を乾燥させる、等したものである。
本発明に係る変性脱脂大豆のたん白質を変性させる方法は、特に限定されず、例えば、酸処理、加熱処理、変性剤添加などの各種方法を1種単独で用いても、2種以上を組み合わせてもよい。また、たん白質を変性させる際は、大豆由来の成分以外を含んでいてもよい。前記たん白質を変性させる方法は、加熱処理が好ましく、加熱方法は、特に制限されないが、一般的な方法によって加熱すればよく、熱風加熱、真空加熱、湿熱加熱、赤外線加熱、マイクロ波加熱及び熱板等を用いた接触による加熱等が挙げられる。より好ましくは加熱処理が湿熱加熱であり、さらに好ましくはオートクレーブやエクストルーダーによる湿熱加熱がよく、よりさらに好ましくはエクストルーダーによる湿熱加熱がよい。加熱条件としては、変性脱脂大豆が上記NSIの規定を満たすものになればよく、特に制限されないが、例えば、加圧条件下で、加熱温度は100℃以上が好ましい。温度が高過ぎると焦げが発生するため、より好ましくは100~200℃、さらに好ましくは100~180℃である。また、加熱時間は、特に制限されないが、例えば、時間が長いと焦げが発生するため、20分以内が好ましく、より好ましくは10分以内、さらに好ましくは5分以内、よりさらに好ましくは90秒以内である。本発明に係る変性脱脂大豆のたん白質を変性させるタイミングは、特に限定されず、大豆から脱脂大豆を製造する途中、その前、その後、いずれでもよく、また、複数のタイミングで実施してもよい。好ましくは、少なくとも脱脂大豆を得た後、たん白質を変性させる工程を含み、より好ましくは、前記たん白質を変性させる工程が加熱処理である。
[胃排出速度抑制剤]
本発明の胃排出速度抑制剤は、前記変性脱脂大豆を1種単独で用いても、2種以上を組み合わせてもよい。本発明の胃排出速度抑制剤は、食塊が胃から排出される速度を抑制する効果を有しており、前記効果は、例えば、動物試験により試料投与後一定時間の胃排出率で評価することができる。本発明の胃排出速度抑制剤は、前記変性脱脂大豆のみを含んでもよいし、前記変性脱脂大豆に加えて、その他成分を含んでいてもよい。本発明の胃排出速度抑制剤の変性脱脂大豆の含有量は、特に制限されないが、例えば、80質量%以上であり、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。本発明の胃排出速度抑制剤は、例えば、賦形剤、結合剤、安定化剤、防腐剤等の各種添加物を含んでもよい。各種添加剤の配合量は、特に制限されず、適宜設定できる。また、本発明の胃排出速度抑制剤の形態は、特に制限されないが、例えば、粉状、粒状、タブレット状、塊状、液状、ペースト状等であってよく、用途に応じて適宜選択できる。後述するように、胃排出速度抑制剤は、満腹感維持組成物や飲食品に配合してもよく、また、サプリメントとして胃排出速度抑制剤をそのまま摂取してもよい。
[満腹感持続用組成物]
本発明の満腹感持続用組成物は、本発明の胃排出速度抑制剤を含む。すなわち、本発明の満腹感持続用組成物は、前記変性脱脂大豆を有効成分として含む。本発明の満腹感持続用組成物中の前記変性脱脂大豆の含有量は、満腹感を持続する効果が得られれば特に制限はなく、飲食品の種類や用途に応じて適宜選択することができる。本発明の満腹感持続用組成物中の前記変性脱脂大豆の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは30質量%以上、50質量%以上である。本発明の満腹感持続用組成物は、前記変性脱脂大豆のみで構成して飲食品の製造時に飲食品に必要な原料と混合して用いてもよいし、飲食品に必要な原料の一部または全部と混合した状態とすることもできる。前記原料は、例えば、穀粉類、澱粉類、加工澱粉類、蛋白素材、油脂類、食物繊維、糖質類、膨張剤、増粘剤、乳化剤、pH調整剤、食塩、甘味料、調味料、ビタミン類、ミネラル類、色素、香料等が挙げられ、1種又は2種以上、自由に組み合わせることができる。
[飲食品]
本発明の飲食品は、本発明の胃排出速度抑制剤または満腹感持続用組成物を含む。本発明の飲食品の例としては、ハンバーグ、肉団子、つくね、ソーセージ、そぼろ、肉みそ、ミートソース、麻婆豆腐、餃子等の畜肉加工食品;ツナフレーク、鮭フレーク等の魚肉加工食品;パン、ケーキ、ビスケット等の小麦粉製品;カレー、シチュー、ビーフシチュー、ハッシュドビーフ、パスタソース、トマトソース、デミグラスソース、ホワイトソース等のソース状食品;ミネストローネ、コーンポタージュスープ、中華風スープ、味噌汁等のスープ類;豆乳等の飲料;乳製品、調味料、カプセル状食品、粉末状食品等が挙げられる。本発明の飲食品に含まれるその他の材料としては、本発明の効果を阻害しない限り、通常その飲食品に含まれる材料であれば、特に制限はなく、飲食品の種類に応じて適宜選択して配合することができる。本発明の飲食品は、前記変性脱脂大豆を含み、前記変性脱脂大豆は胃排出速度抑制剤として機能するので、これを含む飲食品を摂取することで、食事の摂取制限を行っている場合も、空腹感を抑制することができる。また、前記変性脱脂大豆は、最終的にたん白質として栄養になるため、栄養設計が容易である。
なお、本発明は、上述の説明から理解できるように、本発明の胃排出速度抑制剤を摂取する、飲食品の胃排出速度を抑制する方法にもあり、その好ましい態様は、上述の胃排出速度抑制剤の場合と同様である。また、同様に、本発明の胃排出速度抑制剤または満腹感持続用組成物を含む飲食品を摂取する、満腹感を持続する方法にもあり、その好ましい態様は、上述の胃排出速度抑制剤、満腹感持続用組成物、飲食品の場合と同様である。前記満腹感を持続する効果は、例えば、動物試験により粉砕した飲食品を含む飼料を単回摂取させた後、通常飼料を自由摂取させた場合の摂取量で評価することができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
1.試験試料
試験で用いる素材は、以下の通り調製したものまたは市販品を用いた。
・脱脂大豆
市販の脱脂大豆粉「大豆粉88(昭和産業株式会社)」を用いた。
・変性脱脂大豆A
脱脂大豆粉「大豆粉88」を用い、オートクレーブ(LSX-100、株式会社トミー精工)を使用して105℃で1分間加熱した。具体的には、ステンレスバットに脱脂大豆粉を1cm以下になるようにうすく広げて、アルミホイルを被せて、オートクレーブ処理した。次いで、乾燥機(PH-4KT、エスペック)を用いて、80℃の熱風で水分約8質量%まで乾燥し、変性脱脂大豆Aを得た。
・変性脱脂大豆B
脱脂大豆粉「大豆粉88」を用い、オートクレーブを使用して加熱した。オートクレーブの条件及び乾燥条件は、オートクレーブの加熱時間を10分に変えた以外は、変性脱脂大豆Aと同様にして、変性脱脂大豆Bを得た。
・変性脱脂大豆C
脱脂大豆粉「大豆粉88」を用い、オートクレーブを使用して加熱した。オートクレーブの条件及び乾燥条件は、オートクレーブの加熱温度を120℃、加熱時間を20分に変えた以外は、変性脱脂大豆Aと同様にして、変性脱脂大豆Cを得た。
・変性脱脂大豆D、E、F、G、H
脱脂大豆粉「大豆粉88」を用い、二軸エクストルーダー(アルファライザEA-20、スエヒロEPM)を使用して膨化状況を観察しながら加圧加熱により組織化した。スクリュー回転数200~900rpm、先端バレル温度は約120~180℃、加熱時間は30~90秒の条件で、加水量は約30~40質量%の間で調整して、ダイから押出し、ダイ出口直後にカッター(回転数:3600rpm)で切断して直径約4~10mmの組織化物を得た。次いで、乾燥機(PH-4KT、エスペック)を用いて、80℃の熱風で組織化物を水分約8質量%まで乾燥し、変性脱脂大豆D、E、F、G、Hを得た。
・小麦粉
市販の小麦粉(強力粉)「キングスター(昭和産業株式会社)」を用いた。
2.NSIの測定
試験試料のNSIを評価した。本試験では、脱脂大豆、変性脱脂大豆A~HのNSIを測定した。変性脱脂大豆D~Hは組織化物のため、粉砕後目開き53μmの篩を用いてふるい分け、篩下の粉体を測定に供した。NSIは、下記の手順で測定した。すなわち、試験試料5.0gを秤量し、30℃の蒸留水200mLと消泡剤(シリコーンオイル)2~3滴を加えて撹拌し、30℃の振とう機で60分間振とうする。その後、30℃の蒸留水を加え250mLにメスアップし、さらに30℃の振とう機で60分間振とうし、3,000rpmで10分間遠心、上清を回収し抽出液とした。この抽出液の10mL及び試験試料0.5gの窒素量をケルダール法により定量し、下式のように試験試料の窒素量(N)に対する抽出液に含まれる窒素量(水溶性窒素量(Ns))を算出し、NSIとした。
NSI = Ns/N×100
その結果を表1に示す。変性脱脂大豆A~Hは、原料に用いた脱脂大豆と比較し、NSIが低くなった。加熱によりたん白質が変性したことが確認された。
Figure 0007436976000001
3.SVの測定
試験試料のSVを評価した。本試験では、脱脂大豆、変性脱脂大豆A~H及び小麦粉のSVを測定した。変性脱脂大豆D~Hは組織化物のため、粉砕後目開き53μmの篩を用いてふるい分け、篩下の粉体を測定に供した。なお、SV測定に供する各試験試料の中位径をレーザー回析式粒子径分布測定装置HELOS&RODOS(株式会社日本レーザー)を用いて測定し、すべて60μm以下であることを確認した。SVは、300mgを試験管に秤量し、純水6mLを加えて懸濁後室温で一晩静置し、沈殿した試験試料の嵩(mL)を測定、試験試料固形分1g当たりの沈澱した試験試料の嵩として算出した。なお、試験試料の水分は、基準油脂分析試験法(1.4.1-2013、日本油化学会)に基づいて測定した。
Figure 0007436976000002
表2に示す通り、脱脂大豆は、小麦粉と比較し、高いSVを示した。また、すべての変性脱脂大豆は、脱脂大豆と比較し、高いSVを示した。このことから、脱脂大豆は、変性させることで、SVが高まることが確認された。
一般的にたん白質は炭水化物より胃滞留時間が長いことが知られている。また、SVは、不溶性食物繊維において、消化管内での移動速度と相関があることが知られている。たん白質を多く含む脱脂大豆と炭水化物を多く含む小麦粉のSVの関係はこれらと矛盾がないことから、脱脂大豆は、変性させることで、胃滞留時間が長くなる可能性がある。
4.粘度測定
試験試料の粘度を評価した。本試験では、脱脂大豆、変性脱脂大豆A~F、小麦粉の粘度を測定した。各試験試料は、SV測定に使用したものを用いた。固形分6gに蒸留水を加えて30gとし、RVA4500(Perten Instruments)を用いて、25℃、500rpmの条件で測定を開始し、15分時点の粘度を、各試験試料の粘度とした。
Figure 0007436976000003
表3に示す通り、たん白質を多く含む脱脂大豆は、炭水化物を多く含む小麦粉と比較し、高い粘度であったことから、粘度は、胃滞留時間と相関があると考えられる。
また、変性脱脂大豆B、D、E、Fは、脱脂大豆より高い粘度を示し、変性脱脂大豆A、Cは、脱脂大豆より低い粘度を示した。SV測定の結果においては、すべての変性脱脂大豆は、脱脂大豆と比較して、高いSVを示しており、粘度とSVが比例関係にないことが確認された。ここで、表1に示すNSI測定の結果から、変性脱脂大豆B、D、E、Fと比べ、変性脱脂大豆AはNSIが高く、すなわち、たん白質の変性度が低く、また、変性脱脂大豆CはNSIが低い、すなわち、たん白質の変性度が高かったことが確認できる。これらのことから、脱脂大豆を、NSIが適切な範囲になるように変性させることで粘度が高くなり、胃滞留時間が長い素材になることが示唆された。
5.胃排出速度評価
試験試料の胃排出速度を動物試験により評価した。本試験では、変性脱脂大豆F及び小麦粉の胃排出速度を評価した。
(1)飼料の調製
変性脱脂大豆F、小麦粉は、SV測定及び粘度測定で使用したものを用いた。試験試料を蒸留水に溶解させ、0.1g/mLの飼料溶液を調製した。
(2)試験動物の飼育・群分け
7週齢のWistar系雄ラット(日本SLC株式会社)を午前7時から始まる12時間の明暗サイクルで制御された部屋に置いて金属製飼育ケージで固形飼料(CE-2、日本クレア株式会社)と水道水は自由摂取にて4日間予備飼育し、その後、群ごとの体重の平均と標準誤差が等しくなるように各試験試料群8匹とブランク群4匹に群分けした。
(3)胃排出率の測定
各試験試料群は、各飼料溶液を10mL/kg.B.Wの用量で投与した直後にマーカーとしてフェノールレッド溶液を1.5mL投与した。ブランク群は、飼料溶液として蒸留水を投与した。
各試験試料群は、投与30分後に3種混合麻酔下で開腹後、速やかに幽門及び噴門を結紮して胃を摘出した。摘出した胃の外側を生理食塩水で洗浄した後、胃全体をあらかじめ0.1N NaOHを20mL注いだポリプロピレンチューブに入れた。ブランク群は、フェノールレッド溶液投与後、直ちに胃を摘出した。
摘出した胃は、ハサミで細切した後、さらにポッター型ホモジナイザー(MIGHTY-STIRRER MT-2、中村科学器械工業株式会社)で完全に粉砕した。粉砕液を遠心分離機(KUBOTA 3617、SIGMA)により、4℃、5,000rpmで15分間遠心分離し、上清全量を0.1N NaOHで25mLにメスアップした。その後、20%トリクロロ酢酸溶液を5mL加えて十分に撹拌し、4℃、5,000rpmで再度10分間遠心分離した。得られた上清1mLに0.1N NaOHを3mL加えてアルカリ化し、フェノールレッドを発色させ、マイクロプレートリーダー(infinite F200 PRO、TECAN)で550nmの吸光度(OD550)を測定した。測定した吸光度から、以下の式によって胃排出率を算出した。
胃排出率(%)=(1-(各飼料群のOD550/ブランク群のOD550))×100
(4)統計処理
測定値は、それぞれ平均値と標準誤差を算出し、平均値±標準誤差で表した。また、各測定値を比較するためスチューデントのt検定を行い、5%以下の危険率で有意差の有無を判定した。結果を表4に示す。
Figure 0007436976000004
表4に示す通り、試験試料として変性脱脂大豆Fを用いた群は、試験試料として小麦粉を用いた群と比較し、胃排出率が有意に低かった。このことから、変性脱脂大豆Fの胃排出速度は、小麦粉より有意に遅いことが明らかになった。したがって、脱脂大豆をNSIが適切な範囲になるように変性させ、高いSVを示した変性脱脂大豆Fが、胃排出速度抑制剤として機能することが確認された。
6.満腹感持続効果の評価
試験試料の満腹感持続効果を動物試験により評価した。本試験では、変性脱脂大豆F及び小麦粉の満腹感持続効果を評価した。
(1)飼料の調製
変性脱脂大豆F、小麦粉は、SV測定、粘度測定及び胃排出速度評価で使用したものを用いた。飼料は、The Journal of Nutrition. 1993, Vol.123, No.11, p.1939-1951.の粉末飼料(AIN-93G)に各試験試料を50質量%混合した。
(2)試験動物の飼育
9週齢のWistar系雄ラット(日本SLC株式会社)を午前7時から始まる12時間の明暗サイクルで制御された部屋に置いて金属製飼育ケージで固形飼料(CE-2、日本クレア株式会社)と水道水は自由摂取にて1週間予備飼育し、その後、群ごとの体重の平均と標準誤差が等しくなるように各飼料群6匹に群分けした。
(3)単回摂取後の自由摂取量
各飼料を2g摂取させ、1時間後に各飼料を取り上げ、新たにAIN-93Gを与え自由摂取させた。満腹感持続効果は、与えてから2時間までのAIN-93Gの合計自由摂取量で評価した。
(4)統計処理
測定値はそれぞれ平均値と標準誤差を算出し、平均値±標準誤差で表した。また、単回摂取時もAIN-93Gを摂取させたコントロールを含めて、各測定値を比較するためテューキーの多重比較検定を行い、5%以下の危険率で有意差の有無を判定した。なお、スミルノフ・グラブスの棄却検定によって外れ値となった個体は検定から除外したため、変性脱脂大豆Fの試験区は5匹で評価した。結果を表5に示す。
Figure 0007436976000005
表5に示す通り、変性脱脂大豆Fを含む飼料を摂取した後の通常飼料の自由摂取量は、小麦粉を含む飼料を摂取した後の通常飼料の自由摂取量に比べて、有意に低下していた。したがって、脱脂大豆をNSIが適切な範囲になるように変性させ、高いSVを示した変性脱脂大豆Fを含むことで、満腹感持続効果を示すことが確認された。
以上により、脱脂大豆をNSIが適切な範囲になるように変性させ、高いSVを示す変性脱脂大豆が、胃排出抑速度抑制剤として機能し、それを含む組成物が、満腹感持続効果を示すことが確認された。
7.飲食品の作製
試験試料を用いて飲食品を作製した。
(1)ハンバーグ
表6に示す変性脱脂大豆Fを含む原材料を用いて、以下の手順にてハンバーグを作製した。まず玉ねぎをみじん切りし炒めた後、変性脱脂大豆F及び水戻し用の水以外の材料をミキサーで2分間混ぜた。2倍量の水で15分間水戻した変性脱脂大豆Fを加えてさらに混ぜた後、1個あたり約80gに分割し、厚さ約1cm、10cm×5cmの楕円形に成形した。成型後、コンベクションオーブン(株式会社エフ・エム・アイ)にて、180℃、10分間焼成し、良好なハンバーグを得た。
Figure 0007436976000006
(2)ホットケーキ
ホットケーキミックス(昭和産業株式会社)90質量%と変性脱脂大豆F10質量%を混ぜ、新たにミックス粉を調製し、以下の手順にてホットケーキを作製した。なお、本試験において、変性脱脂大豆Fは、SV測定、粘度測定、胃排出速度評価及び満腹感維持持続効果の評価で使用したに用いたものを用いた。まず、ボウルに全卵50gと牛乳200mLを入れて、泡だて器でよく混ぜ、調製したミックス粉200gを加えて、ダマがなくなるまで軽く混ぜた。フライパンを熱し、生地を流し入れ、弱火で約3分間焼き、表面に泡が出てきたら裏返して約2分間焼き、良好なホットケーキを得た。
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
本発明により、たん白質素材を有効成分とする胃排出速度抑制剤、前記胃排出速度抑制剤を含む満腹感持続用組成物、及び前記胃排出速度抑制剤または前記満腹感持続用組成物を含む飲食品を提供することができるので、満腹感を持続させて、空腹感を抑制し、食事の摂取制限が可能である。

Claims (7)

  1. 変性脱脂大豆を有効成分とする胃排出速度抑制剤であって、
    前記変性脱脂大豆の水溶性窒素指数(NSI)が7.0~30.0であり、且つ
    前記変性脱脂大豆の水中沈定体積(SV)が7.0mL/g以上である胃排出速度抑制剤。
  2. 前記変性脱脂大豆の水溶性窒素指数(NSI)が7.0~14.8である請求項1に記載の胃排出速度抑制剤
  3. 前記変性脱脂大豆の以下の方法で測定した粘度が、800mPa・s以上である請求項1又は2に記載の胃排出速度抑制剤。
    (粘度測定方法)
    固形分20質量%の懸濁液について、Perten Instrumentsのラピッドビスコアナライザーを用いて25℃、500rpmの条件で測定を開始し、15分時点の粘度を測定値とする
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の胃排出速度抑制剤を含む満腹感持続用組成物。
  5. 請求項1~3のいずれか1項に記載の胃排出速度抑制剤の製造方法であって、
    前記変性脱脂大豆が、原料脱脂大豆を、少なくとも加熱する工程を含む処理によって得られる、胃排出速度抑制剤の製造方法。
  6. 請求項1~3のいずれか1項に記載の胃排出速度抑制剤を摂取する、飲食品の胃排出速度を抑制する方法。
  7. 請求項に記載の満腹感持続用組成物を摂取する、満腹感を持続する方法。
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大豆に満腹効果 アサヒビール、タンパクに成分を発見 ダイエット食品開発,hisa,2008年03月25日,hisajp.info/2008/03/post_681.html,[検索日2023年8月29日]
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