JP7435880B2 - n型SiC単結晶基板及びSiCエピタキシャルウェハ - Google Patents

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Description

本発明は、n型SiC単結晶基板及びSiCエピタキシャルウェハに関する。
炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に比べて絶縁破壊電界が1桁大きく、バンドギャップが3倍大きい。また、炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に比べて熱伝導率が3倍程度高い等の特性を有する。そのため炭化珪素(SiC)は、パワーデバイス、高周波デバイス、高温動作デバイス等への応用が期待されている。このため、近年、上記のような半導体デバイスにSiCエピタキシャルウェハが用いられるようになっている。
SiCエピタキシャルウェハは、SiC単結晶基板の表面にSiCエピタキシャル層を積層することで得られる。以下、SiCエピタキシャル層を積層前の基板をSiC単結晶基板と称し、SiCエピタキシャル層を積層後の基板をSiCエピタキシャルウェハと称する。SiC単結晶基板は、SiC単結晶インゴットから切り出される。
SiC単結晶基板の現在の市場の主流は直径6インチ(150mm)のSiC単結晶基板であるが、8インチ(200mm)のSiC単結晶基板の量産化に向けた開発も進んでおり、本格的な量産が始まりつつある状況である。6インチから8インチへの大口径化による生産効率の向上とコスト低減によって、省エネ技術の切り札としてSiCパワーデバイスのさらなる普及が期待されている。
次の世代の大口径化されたSiC単結晶基板の製造に際して、現行の口径のSiC単結晶基板の製造で最適化された製造条件を適用しても同程度の品質は得られない。新たなサイズに応じて新たな課題が発生するからである。例えば、特許文献1には、6インチのSiC単結晶基板の製造に際して、4インチのSiC単結晶基板の製造技術を適用すると、種結晶の外周側周辺での熱分解が頻発し、その熱分解が起因となってマクロ欠陥が発生するため、高い結晶品質の単結晶が歩留まり良く得られないという課題が記載されている。特許文献1では、所定の厚みの種結晶を用いることによってその課題を解決する発明が記載されている。このように、新たなサイズに応じて発生した新たな課題を解決しながら、新たなサイズのSiC単結晶基板の製造条件を確立していくことが必要になる。
パワー半導体としてSiCデバイスにおいて、低損失化のためにドーピング濃度を高くして低抵抗化することは非常に重要である。また、SiCデバイスのデバイス間の特性ばらつきの低減のためには、ドーパント濃度のばらつきを極力少なくすることが求められる。
特許第6594146号公報 特許第6598150号公報 特開2020-17627号公報 特開2019-189499号公報
SiC単結晶基板は、SiC単結晶インゴット作製工程と、そのSiC単結晶インゴットからSiC単結晶基板を作製するSiC単結晶基板工程とを経て得られる。8インチのSiC単結晶基板の製造技術の確立には、SiC単結晶インゴット作製工程及びSiC単結晶基板工程のそれぞれについて、8インチ基板ならではの新たな課題を解決していくことが必要である。
ここで8インチ基板ならではの新たな課題には、SiC単結晶インゴット作製工程では例えば、6インチ基板での転位密度と同じ転位密度の8インチ基板を得ることも含まれる。6インチ基板の製造に最適化されたSiC単結晶基板の製造技術を単に適用して、8インチ基板を製造した場合、6インチ基板での転位密度よりも大きな転位密度の8インチ基板が出来てしまう。サイズが大きくなると同じ品質を得るためのハードルが大幅に上がるからである。従って、8インチのSiC単結晶基板の製造技術の評価にあたっては、6インチ基板の製造に最適化されたSiC単結晶基板の製造技術を単に適用して得られた8インチ基板の転位密度が出発点であり、その出発点の転位密度を基準にしてどの程度改善されたのかによって、技術価値が評価されるべきものである。
一方で、量産における8インチのSiC単結晶基板の歩留まりは、6インチのSiC単結晶基板と同程度の評価基準又はそれ以上に厳しい評価基準によって決まるものである。一歩一歩の改良が8インチのSiC単結晶基板の製造技術の確立につながっていく。
また、パワー半導体の需要増大に応えていくためには、8インチのSiC単結晶基板の製造技術の確立と併せて、高いドーパント濃度でかつ濃度分布ばらつきを抑える技術の確立が不可欠である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、8インチのSiC単結晶基板であって、高いドーパント濃度でかつ濃度分布ばらつきが抑制されたn型SiC単結晶基板及びSiCエピタキシャルウェハを提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
本発明の態様1は、8インチのn型SiC単結晶基板であって、直径が195~205mmの範囲であり、厚みが300~650μmの範囲であり、表裏両面の加工変質層の厚さが0.1nm以下であり、ドーパント濃度が2×1018/cm以上、6×1019/cm以下である、n型SiC単結晶基板。
本発明の態様2は、態様1のn型SiC単結晶基板であって、主面から深さ方向で板厚に対して5%以内の面内の、任意に選択された少なくとも5点において、前記ドーパント濃度が2×1018/cm以上、6×1019/cm以下である。
本発明の態様3は、態様1又は態様2のn型SiC単結晶基板であって、主面から同一深さにおける面内中心でのドーパント濃度に対して、最外周から1mm以内の点を含む、半径方向の少なくとも5点のドーパント濃度が±20%以内である。
本発明の態様4は、態様1~態様3のいずれか一つのn型SiC単結晶基板であって、主面から同一深さにおける面を10mm角のメッシュに分割し、各メッシュ内の任意の点でのドーパント濃度をそのメッシュのドーパント濃度とした場合に、ドーパント濃度が、面内中心を含むメッシュのドーパント濃度に対して±20%以内であるメッシュの割合が80%以上である。
本発明のn型SiC単結晶基板によれば、8インチのSiC単結晶基板であって、高いドーパント濃度でかつ濃度分布ばらつきが抑制されたn型SiC単結晶基板を提供できる。
(a)は本実施形態に係るSiC単結晶基板の断面模式図であり、(b)は平面模式図である。 (a)は本実施形態に係るSiC単結晶基板の断面模式図であり、(b)は平面模式図である。 SORIの定義を示す概念図である。 機械的加工によって加工変質層深さが低減する過程を示す概念図である。 SiC単結晶製造装置の断面模式図である。 SiC単結晶製造長装置の別の例の断面模式図である。 SiC単結晶製造装置において断熱材を上下動させる駆動手段の断面模式図である。 断熱材の下面と単結晶の表面との位置関係と、単結晶の近傍の等温面との関係を示す。 結晶成長中の単結晶の近傍の等温面の形状を模式的に示した図である。 10mm角メッシュの一例を示す平面模式図である。
以下、本発明について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。また、各図において、その図で説明する構成要素以外の当業者に周知の構成要素については省略している場合がある。
(SiC単結晶基板)
図1(a)は本実施形態に係るSiC単結晶基板の断面模式図であり、(b)は平面模式図である。
図1に示すSiC単結晶基板1は、8インチのn型SiC単結晶基板であって、直径が195~205mmの範囲であり、厚みが300~650μmの範囲であり、表裏両面の加工変質層の厚さが0.1nm以下であり、ドーパント濃度が2×1018/cm以上、6×1019/cm以下である。
SiC単結晶基板1の外形に特に制限はないが、種々の平板形状、厚さのものを用いることができるが、典型的には円板状である。SiC単結晶基板の厚みは例えば、300~650μmの範囲のものとすることができる。
SiC単結晶基板1は4H-SiCであることが好ましい。SiCは種々のポリタイプがあるが、実用的なSiCデバイスを作製するために主に使用されているのは4H-SiCだからである。
SiC単結晶基板1の一方の面はSiCエピタキシャル層が形成される面(主面)であるが、主面が、c面(4H-SiC結晶の(0001)面)、またはc面を0度超10度未満の傾斜角度(オフ角)で傾斜させた面であるものとすることが好ましい。4H-SiC型の単結晶ウェハである。オフ角は、c面を<11-20>方向に0度超10度未満であることが好ましい。
オフ角が大きいほどSiC単結晶インゴットから得られるウェハ枚数が少なくなるため、コスト削減の観点からはオフ角が小さいことが好ましい。SiC単結晶基板のオフ角が例えば、0.4°~5°のものを用いることができる。0.4°はステップフロー成長をさせることが可能なオフ角として下限といえるものである。
n型ドーパントとしては一般的な窒素を用いることができるが、窒素に限定されない。
SiC単結晶基板1のドーパント濃度は2×1018/cm以上、6×1019/cm以下である。
SiC単結晶基板のドーパント濃度が2×1018/cm未満の場合SiC単結晶基板の抵抗率が大きくなり過ぎるからであり、また、ドーパント濃度が6×1019/cmを超えると、SiC単結晶基板における積層欠陥の抑制が困難となるからである。SiC単結晶基板のドーパント濃度を2×1018/cm以上、6×1019/cm以下の範囲内にすることにより、SiC単結晶基板の積層欠陥を抑制しつつ、抵抗率を低減することができる。
ドーパント濃度の大きさは公知の方法で調整することができる。例えば、結晶成長中に坩堝(図5の符号10参照)内に導入するドーパントガスの量を、導入時間や分圧等で調整することによってドーパント濃度の大きさを調整することができる。
SiC単結晶基板1の主面1aから深さ方向で板厚に対して5%以内の面1A内において、任意に選択された少なくとも5点において、ドーパント濃度2×1018/cm以上、6×1019/cm以下であることが好ましい。
図1では、面1A内におけるドーパント濃度の測定点として、面内中心Oを含む、9点を図示している。
SiC単結晶基板1において、主面1aから同一深さにおける面内中心でのドーパント濃度に対して、最外周1bから1mm以内の点p1を含む、半径方向の少なくとも5点のドーパント濃度が±20%以内であることが好ましく、±15%以下であることがより好ましく、±10%以下であることがさらに好ましい。
図1において、符号1bbは最外周1bから1mmの円を示す。
ドーパント濃度の面内分布を公知の方法で調整することができる。例えば、外周部へのドーパントの供給量を内周部へのドーパントの供給量より高くするためには、坩堝(図5の符号10参照)にドーパントガスの流路を設け、坩堝のガス透過率を調整することで、外周部へのドーパントの供給量を内周部へのドーパントの供給量より高くできる。また例えば、ガイド部材(図5の符号20、図6の符号25参照)に開口を設けたり、ガイド部材の厚みを調整することで、外周部に供給されるドーパント量を調整することもできる。
図2(a)は本実施形態に係るSiC単結晶基板の断面模式図であり、(b)は平面模式図である。
図2に示すSiC単結晶基板1において、主面1aから主面から同一深さにおける面1AAを10mm角のメッシュMに分割し、各メッシュ内の任意の点でのドーパント濃度をそのメッシュのドーパント濃度とした場合に、ドーパント濃度が、面内中心を含むメッシュMのドーパント濃度に対して±20%以内であるメッシュの割合が80%以上であることが好ましい。
ドーパント濃度は二次イオン質量分析法(SIMS)によって測定できる。
SiC単結晶基板1は、表裏両面の加工変質層の厚さが0.1nm以下である。
SiC単結晶基板1の主面(以下、「おもて面」ということがある。)は鏡面である。SiC単結晶基板のおもて面は、各種のSiCデバイスを作製するためにSiCの単結晶をエピタキシャル成長させてSiCエピタキシャル層を形成する必要があるからである。従って、昇華法等を用いて製造されたSiC単結晶インゴットから基板(となる部分)を切断し、切断された基板の表面を鏡面加工することによって形成されるものである。
他方の面(以下、「裏面」ということがある。)は鏡面でなくてもよいが、おもて面が鏡面であり裏面が鏡面ではないSiC単結晶基板はおもて面と裏面とで残留応力の差異が生じ、残留応力を補償するように基板が反り返ってしまう(トワイマン効果)という問題がある。裏面も鏡面とすることでトワイマン効果に起因する基板の反りを抑制することができる。おもて面は鏡面でかつ裏面は非鏡面である場合でも、反りが小さいSiC単結晶基板を作製する方法が開発されている(例えば、特許文献2参照)。
SiC単結晶基板1は、結晶方位の指標になるノッチ2を有するが、ノッチ2の代わりにOF(オリフラ、オリエーション・フラット)を有していてもよい。
SiC単結晶基板1はSORIが50μm以下であることが好ましく、SORIは40μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましく、20μm以下であることがもっと好ましい。
SORIは、基板の反り具合を示すパラメータの一つであり、基板の裏面を支持し元の形状を変えないように測定した場合において、基板表面上の全データを用いて最小二乗法により計算される最小二乗平面から、基板表面上の最高点と最低点までの法線距離の合計で表される。すなわち、図3に示すように、基板表面の最小二乗平面を基準の高さ(最小二乗平面高さ)とした場合、基板表面の最高点における高さと基準の高さとの距離(a)と、最低点における高さと基準の高さとの距離(b)の合計値((a)+(b))を表すものである。
<加工変質層とSORIの関係>
SiC単結晶基板は、SiC単結晶インゴットをスライスし、表面を平坦化することによって作製される。このような機械的加工を施すと基板の表面に加工歪みが導入されてしまう。SiC単結晶基板の表面において加工歪みが生じている部分を加工変質層という。おもて面、裏面に加工変質層を有する場合、おもて面及び裏面で加工歪みの差異を生じ、残留応力にも差異を生じて、トワイマン効果によって基板の反りが発生する。基板両面における加工変質層が発する応力状態のバランスで基板の形状(反り)が決定される。
図4は、機械的加工によって加工変質層深さd(d1、d2、d3、d4)が低減する過程を示す概念図である。例えば、(a)はラッピング、(b)はポリッシング、(c)は仕上げ研削、(d)はCMPの各工程後の表面近傍の断面である。
特許文献3の図14に、単結晶SiCウェハの加工変質層深さとSORIとの関係が示されている。このグラフによれば、加工変質層深さが深いほど、SORIの値が大きくなっている。また、6インチのSiC単結晶基板と4インチのSiC単結晶基板を比較した場合、6インチのSiC単結晶基板の方が加工変質層の影響を受けやすく、SORIが大きくなっている。このことから、8インチのSiC単結晶基板と6インチのSiC単結晶基板を比較した場合、8インチのSiC単結晶基板の方が加工変質層の影響をさらに受けやすく、さらにSORIが大きくなるものと推測される。従って、8インチのSiC単結晶基板については6インチのSiC単結晶基板よりも、反り低減のために加工変質層を除去することがより重要になる。
SiC単結晶基板1は基板厚みの面内ばらつきが2.0μm以下である。厚みの面内ばらつきは1.5μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましい。
本実施形態に係るSiC単結晶基板では、新規なラッピング加工用スラリーを用いてラッピングを行うことによって、厚みの面内ばらつきの低減が実現している。
本明細書において「基板厚みの面内ばらつき」は、SiC単結晶基板の厚みをダイヤルゲージなどで5点(中心1点、及び、(1/2)半径の円周上の4点(0°、90°、180°、270°の円周角の位置)を測定し、最大値と最小値の差で示したものである。
特許文献3の図14に示されているのは、加工変質層についての一パラメータである加工変質層の深さとSORIとの関係であるが、本発明者は、歩留まりが高い8インチのSiC単結晶基板の開発にあたって、残留した加工変質層の深さの面内ばらつきに注目した。研究室レベルでは十分に時間をかけて平坦化処理を行う場合には加工変質層をほぼ完全に除去することができるとしても、実用的な時間で平坦化工程を行う場合には多少なりとも加工変質層が残ることが想定される。また、残留した加工変質層について、図3に概念的に示した加工変質層の深さdは平均的な深さを想定して描いているが、実際には厳密に均一な深さで残留しているわけでなく、多少なりとも面内で深さのばらつき有するように面全体に薄く加工変質層が残留していたり、あるいは、面内で局所的に加工変質層が残留していたりすると思われる。このような場合に、加工変質層の深さの面内ばらつきのSORIへの影響は、6インチのSiC単結晶基板の場合より、8インチのSiC単結晶基板の場合でより大きくなるものと推察される。
SiC単結晶基板1の基板厚みの面内ばらつきは、加工変質層の深さの面内ばらつきを反映したものと考えている。
SiC単結晶基板1は、マイクロパイプ欠陥の密度が1個/cm以下であることが好ましい。
SiC単結晶基板1は、KOHエッチングによって現れるエッチピットの総数が5×10個以下であることが好ましく、5×10個以下であることがより好ましく、5×10個以下であることがさらに好ましい。この場合、KOHエッチングは550℃で10分間行ったものである。
なお、エッチピットの総数は転位の総数に相当する。
SiC単結晶基板1は、エッチピットのうち、貫通転位(TD)に同定されるエッチピットの密度が2×10個/cm以下であり、基底面転位に同定されるエッチピットの密度が5×10個/cm以下であることが好ましい。
貫通転位(TD)に同定されるエッチピットの密度は、1×10個/cm以下であることがより好ましく、5×10個/cm以下であることがさらに好ましい。
基底面転位に同定されるエッチピットの密度は、2×10個/cm以下であることがより好ましく、1×10個/cm以下であることがさらに好ましく、5×10個/cm以下であることがもっと好ましい。
ここで、貫通転位は、貫通らせん転位(TSD)及び貫通刃状転位(TED)を合わせたものである。
なお、転位の種類は光学顕微鏡等を用いて、KOHエッチングによって現れたエッチピットの形状から判別することができ、単位面積当たりのエッチピットの数をカウントすることができる。一般には、中型六角形状を有するエッチピットは貫通らせん転位(TSD)に相当し、小型六角形状を有するエッチピットは貫通刃状転位(TED)に相当し、楕円形状(貝殻形状)を有するエッチピットが基底面転位(BPD)に相当する。また、大型六角形状を有するエッチピットはマイクロパイプ(MP)に相当する。
(SiC単結晶基板の製造方法)
本実施形態に係るSiC単結晶基板の製造方法について、n型SiC単結晶インゴットの作製工程と、インゴットからのSiC単結晶基板の作製工程に分けて説明する。以下では、ドーパントとして窒素が導入されたn型SiC単結晶インゴットの作製工程を例として説明する。
<n型SiC単結晶インゴットの作製工程>
鋭意研究を続ける中で、本発明者は、8インチ径のSiC単結晶インゴットの作製にあたっては、6インチ径のSiC単結晶インゴットに対して、径方向及び垂直方向(結晶成長方向)の温度勾配についてより厳密な制御がキーポイントになることを見出した。そして、特許文献4で開示された方法を適用することによって、径方向及び垂直方向(結晶成長方向)の温度勾配についてより厳密な制御を実現できることを見出した。具体的には、結晶成長をガイドするガイド部材の外側を、ガイド部材の延在方向に沿って移動できる断熱材を備えたSiC単結晶製造装置を用いることができる。なお、径方向及び垂直方向(結晶成長方向)の温度勾配についてより厳密な制御する方法として、特許文献4で開示された方法に限定されない。
SiC単結晶インゴットの大口径化の移行期においてはそれまでの口径のSiC単結晶インゴットの作製方法の適用では同様な結晶品質の大口径SiC単結晶インゴットが得られないという問題に突き当たる。4インチ径のSiC単結晶インゴットから6インチ径のSiC単結晶インゴットへの移行期においては例えば、以下のような問題があった(特許文献1参照)。
種結晶を用いた昇華再結晶法によるSiC単結晶の成長において、高い結晶品質を実現するための成長条件の一つとして、成長時の単結晶インゴットの表面形状を成長方向に略凸状となるようにすることが必要である。これは、例えば、パワーデバイスに用いられる4H型SiC単結晶の場合、<0001>軸、すなわち結晶のc軸方向に概略平行に成長を行う際には、SiC単結晶は貫通らせん転位から繰り出される渦巻き状ステップの進展によって単結晶成長が行われる。そのため、略凸状にすることによって、成長表面上のステップ供給源が実質的に1箇所となってポリタイプ安定性を向上することが可能になると言われている。仮に、成長表面が凹面、或いは複数の頂部を有する場合には、成長ステップの供給源が複数箇所となり、これによってそれぞれの供給源から繰り出される異なるステップがぶつかり合う部分が生じる。このような場合、ぶつかり合う部分から転位等の欠陥が発生するばかりでなく、4H型ポリタイプに特有のc軸方向の原子積層状態が乱れやすくなるため、6H型や15R型等のような積層構造が異なる異種ポリタイプが発生し、マイクロパイプ欠陥が生成してしまう。
従って、例えば、パワーデバイスに好適な4H型ポリタイプを安定化させて、4H型ポリタイプのみからなる、いわゆるシングルポリタイプ結晶を成長させるためには、成長結晶の成長表面形状を概略凸状とすることが重要となる。具体的には、成長結晶の中心部の温度を成長速度等の観点で最適化しつつ、かつ成長時の温度分布、すなわち等温線形状を制御して概略凸状になるようにすることで成長結晶の凸形状が実現される。このような、概略凸状の等温線が実現されている成長条件下で成長するSiC単結晶インゴットは、概ね等温線に平行になるように成長するようになり、上記したポリタイプ安定性が確保されるようになると考えられていた。
しかしながら、成長結晶の口径が150mm(6インチ)以上に大口径化する場合、成長結晶の中心部の温度を成長速度等の観点で従来の100mm(4インチ)口径の単結晶成長と同等に最適化しつつ、成長時の温度勾配を制御して成長結晶の成長表面形状が成長方向に概略凸状になるようにすると、どうしても種結晶の周辺部が小口径結晶成長の場合と比較して温度が高くなってしまう。その結果、種結晶自体のSiC単結晶が、その外周側の周辺部で熱分解しやすくなるという問題があった。この問題に対して、特許文献1では、厚さが2.0mm以上の炭化珪素単結晶からなる種結晶を用いることを主な解決手段によって問題を解決した。
本発明では、8インチ径のn型SiC単結晶インゴットの作製にあたっては、特許文献1に示されているような典型的な6インチ径のn型SiC単結晶インゴットの作製方法では行わない手法として、結晶成長をガイドするガイド部材の外側をガイド部材の延在方向に沿って移動できる断熱材を用い、径方向の温度勾配だけではく、垂直方向(結晶成長方向)の温度勾配をも制御することによって、6インチ径のn型SiC単結晶インゴットに匹敵する特性を有する8インチ径のn型SiC単結晶インゴットを作製することに成功した。以下、SiC単結晶製造装置及びSiC単結晶インゴットの作製工程について説明する。
図5は、n型SiC単結晶インゴットの作製工程を実施するためのSiC単結晶製造装置の一例の断面模式図である。
図5に示すSiC単結晶製造装置100は、種結晶設置部11、ガイド部材20及び断熱材30を備える坩堝10と、これらを収容するチャンバー(不図示)と、チャンバーに接続され、窒素ガスを導入するガス導入管(不図示)と、を有する。図5では、理解を容易にするために、原料G、種結晶S、種結晶S上に結晶成長した単結晶Cを同時に図示している。
以下図示において、種結晶設置部11と原料Gとが対向する方向を上下方向とし、上下方向に対して垂直な方向を左右方向とする。
坩堝10は、単結晶Cを結晶成長させる成膜空間Kを囲む。坩堝10は、単結晶Cを昇華法により作製するための坩堝であれば、公知の物を用いることができる。例えば、黒鉛、炭化タンタル等を用いることができる。坩堝10は、成長時に高温となる。そのため、高温に耐えることのできる材料によって形成されている必要がある。例えば、黒鉛は昇華温度が3550℃と極めて高く、成長時の高温にも耐えることができる。
種結晶設置部11は、坩堝10内の原料Gと対向する位置に設けられる。種結晶設置部11が原料Gに対して対向した位置にあることで、種結晶S及び単結晶Cへ原料ガスを効率的に供給できる。
ガイド部材20は、種結晶設置部11の周囲から原料Gに向かって延在する。すなわち、ガイド部材20は、単結晶Cの結晶成長方向に沿って配設されている。そのため、ガイド部材20は、単結晶Cが種結晶Sから結晶成長する際のガイドとして機能する。
ガイド部材20の下端は、支持体21によって支持されている。支持体21は、ガイド部材20の下端と坩堝10との間を塞ぎ、ガイド部材20の外側の領域への原料ガスの侵入を抑制する。当該領域に原料ガスが侵入すると、ガイド部材20と断熱材30との間に多結晶が成長し、断熱材30の自由な移動を阻害する。
ガイド部材20と支持体21の接続部は、かしめ構造であることが好ましい。かしめ構造とは、ガイド部材20に物理的な力が加わった際に、ガイド部材20と支持体21の接続部が締まるように設計された構造をいう。例えば接続部がネジ切加工されたネジ構造は、かしめ構造の一例である。ガイド部材20は、結晶成長する単結晶Cと物理的に接触する場合があり、その場合にガイド部材20の脱落を防ぐことができる。
図5におけるガイド部材20は、上下方向に鉛直に延在している。ガイド部材20の形状は、当該形状に限られない。図6は、本実施形態にかかるSiC単結晶製造装置101の別の例の断面模式図である。図6におけるガイド部材25は、種結晶設置部11から原料Gに向かって拡径する。ガイド部材25が拡径することで、単結晶Cの口径を拡大することができる。
また図5におけるガイド部材20は上端が開口しているが、ガイド部材20の上端を坩堝10の内面と接続して、断熱材30が存在する空間を閉空間としてもよい。
ガイド部材20の表面は、炭化タンタルでコーティングされていることが好ましい。ガイド部材20は、原料ガスの流れを制御するため、常に原料ガスに晒されている。ガイド部材20を黒鉛むき出しで使用すると、黒鉛が原料ガスと反応し、劣化損傷することがある。劣化損傷すると、ガイド部材20に穴あきが発生することが生じる。また劣化によって剥離したカーボン粉が単結晶C内に取り込まれ、単結晶Cの品質を劣化させる原因にも繋がる。これに対し、炭化タンタルは、高温に耐えることができると共に、原料ガスと不要な反応を生じることもない。したがって、安定的に高品質なSiC単結晶成長を行うことができる。
断熱材30は、ガイド部材20の外側を、ガイド部材20の延在方向に沿って移動する。断熱材30が移動することで、断熱材30の原料G側の端面(以下、下面30aと言う)と単結晶Cの表面Caとの位置関係を制御できる。そのため、単結晶Cの表面Ca近傍における温度分布を自由に制御することができ、結晶成長する単結晶Cの表面形状を自由に制御できる。
結晶成長の過程において、断熱材30の原料側の端面30aと単結晶Cの表面Caとの位置関係を制御することができる。
また、結晶成長の過程において、断熱材30の原料側の端面30aが単結晶Cの表面Caから20mm以内に位置することができる。
また、結晶成長の過程において、断熱材30の原料側の端面30aが、単結晶Cの表面Caかより種結晶設置部11側に配置するようにすることができる。
また、断熱材30の厚みが0.2mm以上製造されるSiC単結晶インゴットの成長量の半分以下とすることができる。
図6は、断熱材30を上下動させる駆動手段の断面模式図である。駆動手段は、断熱材30を上下方向に移動させることができるものであれば、特に問わない。例えば図6(a)に示すように、断熱材30の上部から坩堝10の外部へ延在する駆動部材31を設け、駆動部材を上下に押引きすることで断熱材30を移動させてもよい。また例えば図6(b)に示すように、断熱材30の下部から断熱材を支持し、昇降式の駆動部材32を設けてもよい。さらに例えば図6(c)に示すように、坩堝10の側面の一部に切込を設け、この切込を介して坩堝10の外部へ延在する駆動部材33を設け、駆動部材を上げ下げすることで断熱材30を移動させてもよい。
断熱材30は、2000℃以上の高温で熱伝導率が40W/mk以下である材料により構成されていることが好ましい。2000℃以上の高温で熱伝導率が40W/mk以下の材料としては、常温時の熱伝導率が120W/mk以下の黒鉛部材等が挙げられる。また、断熱材30は2000℃以上の高温において5W/mk以下である材料で構成されることがより好ましい。2000℃以上の高温で熱伝導率が5W/mk以下の材料としては黒鉛、炭素を主成分としたフェルト材があげられる。
断熱材30の形状は、ガイド部材20と坩堝10の内面に挟まれた領域の形状にあわせて適宜設計する。図5に示すように、ガイド部材20と坩堝10の内面との距離が一定の場合は、これらの間を埋めるように断熱材30を配置する。また図5に示すように、ガイド部材25と坩堝10の内面との距離が変化する場合は、これらの間が最も狭くなる位置に合せて断熱材35の形状を設計する。このように設計することで、断熱材35がガイド部材25と坩堝10の内面と間で詰まり、動かなくなることを避けることができる。
断熱材30の厚みは、0.2mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましく、20mm以上がより好ましい。断熱材30の厚みが薄すぎると、十分な断熱効果を発揮できない場合がある。また、断熱材30の厚みは、最終的製造される単結晶長さの半分以下であることが好ましい。ここで単結晶長さとは、結晶成長後の単結晶Cの上下方向の長さ(単結晶Cの成長量)を意味する。単結晶の成長量が100mmの場合、断熱材30の厚みは50mm以下が好ましく、単結晶の成長量が50mmの場合内であれば、断熱材30の厚みは25mm以下が好ましい。断熱材30の厚みが厚すぎると、断熱材30の移動が阻害される。また断熱材30の厚みが当該範囲内であれば、断熱材30を介して単結晶C内の上下方向に温度差を形成できる。そのため、単結晶Cの表面Ca以外の部分で原料ガスが再結晶化することを防ぐことができる。
上述のように、上記SiC単結晶製造装置によれば、結晶成長する単結晶に対して断熱材の位置を相対的に制御できる。断熱材の位置を制御することで、結晶成長時の単結晶Cの表面近傍の温度分布を自由に制御できる。単結晶Cは、等温面に沿って成長するため、単結晶Cの表面近傍の温度分布を制御することは、単結晶Cの形状を制御することに繋がる。
n型SiC単結晶インゴットの作製にあたっては、上述のSiC単結晶製造装置を用いることができる。以下、図5に示すSiC単結晶製造装置100を用いた場合を例に説明する。
n型SiC単結晶インゴットの作製工程では、種結晶設置部11に設置した種結晶Sから単結晶Cを結晶成長させる。n型単結晶Cは、窒素ガスを導入しながら、原料Gから昇華した原料ガスが種結晶Sの表面で再結晶化することで成長する。窒素ガスは高温で結晶表面において反応し、窒素原子がSiC単結晶中にドーピングされる。この窒素ドーピング濃度は窒素ガス濃度に依存し、窒素ガス濃度が高ければドーピング濃度も高くなる。得られるSiC単結晶はこのドーピング濃度に応じた導電率(抵抗率)を発現する。原料Gは、外部に設けた加熱手段によって坩堝10を加熱することで昇華する。昇華した原料ガスは、ガイド部材20に沿って種結晶Sに向って供給される。
SiC単結晶インゴットの作製工程では、種結晶Sから単結晶Cを結晶成長する過程において、断熱材30の下面30aと単結晶Cの表面Caとの位置関係を制御する。これらの位置関係を制御することで、単結晶Cの表面Caの形状を自由に制御できる。
図8は、断熱材30の下面30aと単結晶Cの表面Caとの位置関係と、単結晶Cの近傍の等温面との関係を示す。図8(a)は、単結晶Cの表面Ca(結晶成長面)がフラットになっている場合の例であり、図8(b)は、単結晶Cの表面Ca(結晶成長面)が凹状になっている場合の例であり、図8(c)は、単結晶Cの表面Ca(結晶成長面)が凸状になっている場合の例である。
図8(a)~(c)に示すように、単結晶Cの表面Caの形状は、単結晶Cの表面Caに対する断熱材30の位置によって変化する。図8(a)に示すように、単結晶Cの表面Caと断熱材30の下面30aの位置が略同一の場合は、単結晶Cの表面Caはフラットになる。これに対し図8(b)に示すように、断熱材30の下面30aが単結晶Cの表面Caより原料G側にある場合は、単結晶Cの表面Caは凹状になり、図8(c)に示すように、単結晶Cの表面Caが断熱材30の下面30aより原料G側にある場合は、単結晶Cの表面Caは凸状になる。
単結晶Cの表面Caの形状が、単結晶Cの表面Caに対する断熱材30の位置により変化するのは、成膜空間K内の等温面Tの形状が変化するためである。図9は、結晶成長中の単結晶Cの近傍の等温面Tの形状を模式的に示した図である。図9(a)は断熱材30を設けていない場合の図であり、図9(b)は断熱材30を設けた場合の図である。
SiCの単結晶Cは、熱伝導率の低さからそれ自体が断熱効果を有する。一方で、ガイド部材20の熱伝導性は単結晶Cよりは高い。そのため、図9(a)のように断熱材30を有さない場合の等温面Tは、単結晶Cから広がるように形成される。単結晶Cの結晶成長面は、等温面Tに沿って成長する。そのため、断熱材30を有さない場合、単結晶Cの表面Ca(結晶成長面)の形状は凹状に固定される。
これに対し、図9(b)に示すように断熱材30を設けると、等温面Tの形状が変化する。等温面Tの形状は、断熱材30の単結晶Cに対する位置を制御することで自由に設計できる。等温面Tの形状の設計は、シミュレーション等により事前に確認することで、精度よく行うことができる。このように断熱材30の単結晶Cに対する位置を制御することで、単結晶Cの表面Caの形状を自由に設計できる。
また断熱材30の単結晶Cに対する位置を制御すると、ガイド部材20への多結晶の付着を抑制する効果、及び、単結晶C内の面内方向の温度差を小さくできるという効果も奏する。
多結晶は、単結晶Cの結晶成長面近傍で温度の低い部分に形成される。例えば図9(a)に示すように、単結晶Cとガイド部材20との温度差が大きい場合、ガイド部材20に多結晶が成長する。ガイド部材20に成長した多結晶が単結晶Cと接触すると、単結晶Cの結晶性を乱し欠陥の原因となる。これに対し、図9(b)に示すように、単結晶Cの表面Ca近傍に断熱材30があると、単結晶Cとガイド部材20との温度差を小さくでき、多結晶の成長を抑制できる。
また単結晶C内の面内方向の温度差が大きいと、単結晶Cの成長過程で応力が生じる。
単結晶C内に生じる応力は、結晶面の歪、ズレ等を生み出す。単結晶C内の歪や格子面のズレは、基底面転位(BPD)等のキラー欠陥の発生原因となりうる。
ここまで単結晶Cの表面Caの形状を制御できることについて説明した。単結晶Cの表面Caの形状は、フラット又は原料Gに向かって凸形状であることが好ましい。単結晶Cの表面Caの形状が原料Gに向かって凹形状の場合は、品質が劣るためである。単結晶Cの表面Caの形状をフラット又は凸形状とするためには、単結晶Cの表面Caと断熱材30の下面30aの位置を略同一にする、又は、単結晶Cの表面Caを断熱材30の下面30aより原料G側に設ける。
ここで「略同一」とは、単結晶Cの表面Caと断熱材30の下面30aの位置が完全に同一高さにあることを意味せず、等温面Tに大きな影響を及ぼさない範囲での位置ずれを許容することを意味する。具体的には、断熱材30の下面30aが、単結晶Cの表面Caから30mm以内に位置すれば、単結晶Cの表面Caと断熱材30の下面30aとが略同一の位置関係にあると言える。一方で、単結晶Cの表面Caの形状をフラットにするためには、単結晶Cの表面Caと断熱材30の下面30aとの位置関係は完全同一に近い方が好ましく、断熱材30の下面30aは単結晶Cの表面Caから20mm以内の位置にあることが好ましく、10mm以内の位置にあることがより好ましい。
また単結晶Cの表面Caは断熱材30の下面30aより原料G側にあることが好ましい。すなわち、断熱材30の下面30aは、単結晶Cの表面Caより種結晶設置部11側に存在することが好ましい。成膜空間K内の温度揺らぎ等の外的な要因が発生した場合でも、単結晶Cの表面Caが凹形状になることを抑制できる。
また断熱材30の位置は、結晶成長の開始時から制御することが好ましい。すなわち、結晶成長の開始時において、断熱材30の下面30aと種結晶Sの表面との位置関係を制御することが好ましい。
結晶成長の開始直後は、種結晶設置部11が種結晶Sの周囲に存在し、種結晶Sと坩堝10との距離も近い。そのため、成膜空間K内の等温面Tは、これらの部材の温度(熱伝導率)の影響も受ける。つまり断熱材30を用いることによる効果は、種結晶Sから単結晶Cが30mm以上成長した領域で最も発揮される。一方で、結晶成長の開始直後において断熱材30の効果が発揮されないというわけではない。
例えば、断熱材30を設けずに、結晶成長直後の単結晶Cの結晶成長面の形状が凹状になった場合、その後の成長過程で単結晶Cの結晶成長面の形状を凸状に戻す必要が生じる。結晶成長面の形状が成長過程で、凹状から凸状に変化すると単結晶C内に応力が蓄積し、欠陥が生じやすくなる。従って、断熱材30の位置は、結晶成長の開始時から制御することが好ましい。断熱材30の種結晶Sに対する位置関係は、結晶成長過程における断熱材30と単結晶Cとの位置関係と同様に設計できる。
<SiC単結晶基板の作製工程>
得られたn型SiC単結晶インゴットからSiC単結晶基板を作製する工程においては、所定の研磨スラリーを用いてラッピングを含む平坦化工程と、加工変質層除去工程と、を含む。SiC単結晶基板の作製において、ラッピング加工において特徴的なスラリーを用いてラッピング加工を行うことができる。それ以外は、SiC単結晶インゴットから、SiC単結晶基板を得るまでの加工については公知の方法を用いることができる。以下、ラッピング加工工程について説明する。
次に、使用可能なラッピング加工用スラリーについて詳述する。
遊離砥粒方式の加工工程では、例えば水と、炭化ホウ素砥粒と、炭化ホウ素砥粒を分散させる添加剤と、を含むスラリーを上定盤と下定盤との間にかけ流すとともに上定盤21と下定盤によりSiC基板1に圧力を加え、SiC基板1の表面を平坦化する。加工工程で用いるスラリーは、例えば水を主成分として含むスラリーである。水を主成分として含むスラリーを用いる場合、炭化ホウ素砥粒の分散性を高められ、加工工程において二次凝集が生じづらい。また、水を主成分として含むスラリーを用いる場合、SiC基板のうち、スラリー供給孔が設けられた上定盤側の面は、水の直接供給により、表面を洗浄され、スラリー供給孔が設けられていない下定盤側の面は、SiC基板とキャリアプレートとの隙間から供給された水によって洗浄される。ラッピング加工で用いられたスラリーは、タンクに回収され、当該タンクから再度供給される。
炭化ホウ素砥粒の修正モース硬度(14)は、非研磨対象としてのSiC基板の修正モース硬度(13)よりもやや大きく、ダイヤモンドの修正モース硬度(15)よりも小さい。そのため、このようなスラリーを用いることで、修正モース硬度(13)であるSiC基板へのクラックの発生を抑制しつつ加工速度を比較的高められ、且つ炭化ホウ素砥粒の粒径の減少を抑制できる。
スラリーにおける炭化ホウ素砥粒の割合は、例えば15質量%以上45質量%以下であり、20質量%以上40質量%以下であることが好ましく、25質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。スラリーにおける炭化ホウ素砥粒の割合が15質量%以上であることで、スラリーの炭化ホウ素砥粒の含有量を高くすることができ、ラッピング加工の加工速度を高められる。また、スラリーにおける炭化ホウ素砥粒の割合が45質量%以下であることで、炭化ホウ素砥粒同士の接触の頻度および面積を抑えられ、炭化ホウ素砥粒の粒径の減少および炭化ホウ素砥粒の磨滅を抑制しやすい。
加工工程において用いるスラリー中の炭化ホウ素砥粒は、例えば平均粒径が15μm以上40μm以下であり、25μm以上35μm以下であることが好ましい。平均粒径が15μm以上の炭化ホウ素砥粒を用いることで、SiC基板1の表面をラッピング加工する加工速度を高めやすく、さらに表面に十分に後述する添加剤を付着させることができ、分散性の向上や粒径減少の抑制につながる。また、平均粒径を40μm以下にすることで、SiC基板にクラックを発生させることおよびSiC基板の割れを抑制する効果を得やすく、さらに後述する添加材が表面に過剰に付着することを抑制し、被加工物としてのSiC基板との接触面積低下による加工速度の低下を抑制できる。また、このような炭化ホウ素砥粒を用いることで、ラッピング加工前後での粒径の変化を抑制しやすい。ここで、上記炭化ホウ素砥粒の平均粒径は、加工前の炭化ホウ素砥粒の平均粒径であり、加工後の炭化ホウ素砥粒の平均粒径は、加工前後の炭化ホウ素砥粒の平均粒径の比が0.91以上1.2以下であるので、例えば14μm以上48μm以下であり、23μm以上42μm以下であることが好ましい。
ここで、炭化ホウ素砥粒の平均粒径は、粒度分布測定装置マスターサイザーHydro 2000MU(スペクトリス株式会社)あるいはMT3000II型(マイクロトラック・ベル株式会社)を用いたレーザー散乱光測定で測定した粒度分布に基づき、測定される。
添加剤としては、多価アルコールや、エステルおよびその塩、ホモポリマーおよびその塩、コポリマーなどを用いることができる。具体的な例としては、グリセリン、1-ビニルイミダゾール、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウリン酸アミドエーテル硫酸エステルナトリウム塩、ミリスチン酸アミドエーテル硫酸エステルナトリウム塩、ポリアクリル酸、アクリル酸-マレイン酸共重合体からなる群から選択される1種又は2種以上を用いることができる。
これらの添加剤は、スラリー中の炭化ホウ素砥粒の分散性を高められると考えられる。
添加剤は、炭化ホウ素砥粒の表面に付着し、炭化ホウ素砥粒同士が直接接触することを抑制する。このようにして、添加剤は、スラリー中の炭化ホウ素砥粒の分散性を高め、且つ加工工程における砥粒の粒径減少を抑制する。
スラリー中の添加剤の割合は、例えば3体積%以上20体積%以下であり、5体積%以上15体積%以下であることが好ましく、10体積%以上15体積%以下であることが好ましい。ここで、スラリー中の添加剤の割合とは、グリセリン等の添加剤(添加剤成分)の体積をスラリーの体積で除した割合を指す。スラリー中の添加剤が、上記範囲内であることで、スラリー中の炭化ホウ素の表面に必要十分に付着し、スラリー中における炭化ホウ素砥粒の好ましい分散度を得られ、加工工程において炭化ホウ素砥粒の粒径が減少することを抑制しやすい。
このラッピング加工では、加工工程において、SiC基板の表面を加工する加工速度が、例えば14μm/h以上45μm/h以下であり、16μm/h以上40μm/h以下であることが好ましく、18μm/h以上25μm/h以下であることがより好ましい。加工速度は、先に記載した加工圧力や炭化ホウ素砥粒の平均粒径に依存する。加工速度を45μm/h以下にすることで、炭化ホウ素砥粒の粒径の減少および炭化ホウ素砥粒の磨滅を抑制する効果を得られやすい。加工速度を14μm/h以上にすることで、スループットを高められる。ラッピング加工を複数回に分けて行う場合、SiC基板の板厚の総変化量を加工時間の合計で除すことで求められた加工速度が上記範囲内であればよく、いずれのタイミングにおける加工速度も上記範囲内であることが好ましい。すなわち、複数回に分けてラッピング加工を行う場合、各回で算出した加工速度がいずれも上記範囲内であることが好ましい。
ここで、加工速度は、ラッピング加工前後のSiC基板1の板厚の差及び加工時間から算出される。具体的には、加工速度は以下の方法で算出される。SiC基板1の板厚の測定位置は、SiC基板1にオリフラOFが形成される前の状態におけるSiC基板の中心に対応する位置1cと、オリフラOFの中点から位置1cに向かって5~10mm離れた位置1aと、位置1a、1cと同一直線c上であって、SiC基板1の外周から位置1a方向に5~10mm離れた位置1bと、直線cに対して垂直な直線上であって、SiC基板1の外周から位置1a方向に5~10mm離れた位置1d,1eである。この5つの位置1a~1eにおけるSiC基板1の板厚をインジケータ(ID-C150XB、ミツトヨ製)で測定し、求めた板厚をSiC基板1の板厚として扱う。このようにして求めた加工前後におけるSiC基板1の板厚(μm)の差を加工時間(h)で除することで、加工速度は算出される。
加工工程において用いるスラリー中の炭化ホウ素砥粒の表面に添加剤を付着させ、炭化ホウ素砥粒の分散性を高めるとともに、炭化ホウ素砥粒の接触を抑制できるため、炭化ホウ素砥粒の粒径の減少を抑制できる。
具体的には、加工工程において加工前の炭化ホウ素砥粒の平均粒径に対する加工後の炭化ホウ素砥粒の平均粒径の比が0.91以上1.2以下である程度に、炭化ホウ素砥粒の粒径の変化を抑制できる。ここで、該比に1より大きい数値が含まれる理由は、加工工程において、炭化ホウ素砥粒が二次凝集し、一部の炭化ホウ素砥粒の粒径が加工前よりも大きくなる場合があるためである。
従来のこのラッピング加工では、ラッピング加工によりスラリー中の炭化ホウ素砥粒の粒径が大きく減少するため、再度ラッピング加工を行う場合、その都度スラリーに砥粒を追加する必要があり、また、その都度ラッピング加工に用いた回数に依存するスラリー中の砥粒の粒径の分布などを求める煩雑な管理が必要であった。
このように、このラッピング加工では、炭化ホウ素砥粒の粒径の管理を容易にすると共に、コスト削減を実現することができ、加えて環境負荷を低減することができるとともにクラックの発生を抑制できる。
また、このラッピング加工では、炭化ホウ素砥粒の粒径があまり変化しないため、ラッピング加工中に加工速度が変化することを抑制し、同じ条件でラッピング加工を継続することができる。このラッピング加工は、非研磨対象としての炭化ケイ素よりも修正モース硬度のやや大きい炭化ホウ素を砥粒として用いる場合に特に有効である。このラッピング加工は、このような砥粒および基板を用いているため、砥粒としてダイヤモンドを用い、被研磨対象としてSiC基板を用いる場合に多発するようなクラックを抑制することも可能である。
また、このラッピング加工では、炭化ホウ素砥粒の粒径の減少や磨滅を抑制できるため、ラッピング加工中のスラリーにおける炭化ホウ素砥粒の粒径のばらつきが小さくなる。ラッピング加工の加工速度は、用いる砥粒の粒径に依存するところ、このラッピング加工では、砥粒の粒径のばらつきを抑制できるため、SiC基板の表面全体が概ね均等な粒径の砥粒により加工され、加工後のSiC基板の基板厚さの面内ばらつきが小さくなる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、図5に示したSiC単結晶製造装置を用いてn型SiC単結晶インゴットを作製した。
まず、種結晶Sとして、(0001)面を主面とし、オフ角4°で、直径200mm、厚さ5.0mmの4H-SiC単結晶を用いた。結晶成長初期においては、坩堝本体側壁の種結晶表面と同一高さ近傍の温度(Tr)が30~150℃で、坩堝蓋部外壁の平面視して種結晶中央部の温度(Tg)が50~250℃であって、かつ、TrとTgとの温度差(ΔT)が20~100℃となるように坩堝温度を制御した。結晶成長に合わせて、断熱材30を、断熱材30の原料側端面(下面)が単結晶の表面より蓋部側であってかつ断熱材30の原料側端面と単結晶の表面との成長方向の距離が10mm以内になるように段階的に移動しながら、結晶成長を行った。また、窒素ガスは、成長開始から1時間が経過した時点で、分圧554Paで45分間導入した。
こうして得られたn型SiC単結晶インゴットは、直径が208mm、高さが20.2mmであった。
次いで、n型SiC単結晶インゴットを公知の加工方法によって、オフ角度4°の(0001)面を有し、厚さ0.9mmの8インチのSiC基板を得た。
このSiC基板について、板厚を測定した。
次いで、板厚を測定したSiC基板を研磨装置のキャリアプレートに載置し、ラッピング加工を行った。ラッピング加工用スラリーは、水に所定量の炭化ホウ素砥粒および添加剤としてのAD8(10体積%)を添加し、分散することにより得られた。炭化ホウ素砥粒としては、粒度F320(JIS R6001)を用いた。ここで、スラリー中の添加剤としてのグリセリン(アイケミテクノ社製)の割合は、6体積%とした。
ラッピング加工は、ラッピング加工用スラリーを供給量16L/minで供給しながら遊離砥粒方式で行った。ラッピング加工用スラリーは、循環して使用した。
ラッピング加工における研磨装置の駆動条件は、加工圧力160g/cm、下定盤回転数16rpm、上定盤回転数5.5rpm、中心ギア回転数2.8rpm、インターナルギア回転数6.0rpm、加工時間40分とした。
ラッピング加工後、加工前と同様の方法でスラリー中炭化ホウ素砥粒の粒径分布の測定を行うとともに加工前と同様の方法で板厚の測定を行い、加工速度の算出も行った。このラッピング加工において、15枚のSiC基板の加工速度の平均は、18μm/hであった。
測定を行った後に、先のラッピング加工で用いたスラリーを供給し、スラリーを循環させながら2回目のラッピング加工および測定を行った。また、実施例1では、これを繰り返し、合計8回のラッピング加工および測定を行った。
次いで、加工変質層を除去するためのエッチング工程、鏡面研磨のためのCMP工程を行って、実施例1のSiC単結晶基板を得た。
(実施例2)
SiC単結晶インゴットの作製において、原料最高温度点の温度を20℃上昇させる変更を行うと共に、ラッピング後の基板厚みの面内ばらつきが実施例1より小さくなるようにラッピング加工における研磨装置の駆動条件を調整し、さらに窒素ガスの導入量を変えた以外は、実施例と同様な条件にてSiC単結晶基板を得た。
(比較例1)
断熱材30を有さないSiC単結晶製造装置を用い、種結晶Sとして直径150mmのものを用い、結晶成長中にTr、Tg、及び、ΔTを制御せず、ラッピング工程において、添加剤(AD8)を含まないラッピング加工用スラリーを用いると共に、窒素ガスの導入量を変えた以外は実施例と同様な条件にてSiC単結晶基板を得た。
(比較例2)
原料最高温度点の温度を10℃上昇させる変更を行うと共に、窒素ガスの導入量を変えた以外は比較例1と同様な条件にてSiC単結晶基板を得た。
(比較例3)
断熱材30を有さないSiC単結晶製造装置を用いてSiC単結晶インゴットを作製し、ラッピング工程において、添加剤(AD8)を含まないラッピング加工用スラリーを用いると共に、窒素ガスの導入量を変えた以外は、実施例1と同様な条件にてSiC単結晶基板を得た。
(評価)
実施例1、実施例2、比較例1~3のSiC単結晶基板について、所定の点のドーパントである窒素の濃度を、積層面から厚み方向に向かってSIMSを用いて測定した。表1に結果を示す。表1中の各点の窒素濃度はそれぞれ、深さ3μmの面における中心点Oと、外周から1.0mmの点p1と、それらの間を4等分した3点(p2、p3、p4)である(図1参照)。また、表1中の面内平均窒素濃度はそれら5点の平均窒素濃度であり、5点の窒素濃度分布は中心の窒素濃度に対する、他の4点のうち、中心の窒素濃度との差が最も大きい点の窒素濃度の差の割合を示すものである。また、表1中の所定のメッシュ数の割合〔%〕は、基板を10mm角のメッシュに分けて、各メッシュ内の中心点でのドーパント濃度が、面内中心を含むメッシュMのドーパント濃度に対して±20%以内にあるメッシュの割合である。図10に10mm角のメッシュに分け方を模式的に示す。図10は10mm角のメッシュの分け方の一例であってこれに限定されない。
Figure 0007435880000001

表1に示した結果に基づくと、実施例1及び2は比較例1~3に比べて、5点の窒素濃度分布が低減されていることがわかる。また、実施例1及び2は比較例1~3に比べて、面内中心を含むメッシュMのドーパント濃度に対して±20%以内にあるメッシュの割合が大きいことがわかる。このように、実施例1及び2は比較例1~3に比べて、面内全体で良好な窒素濃度分布が得られている。これらの結果は、実施例1及び2が比較例1~3に比べて、より精密な温度制御を行って高品質なSiC単結晶が得られた効果であると考えている。
また、実施例1.実施例2、比較例1、比較例2、比較例3のn型SiC単結晶基板について、SORI、基板厚みの面内ばらつき、マイクロパイプの個数、転位の総数、貫通転位密度、基底面転位密度を評価した。マイクロパイプの個数、転位の総数、貫通転位密度、及び、基底面転位密度は、550℃、10分間のKOHエッチングによって現われるエッチピットによって評価した。表2に結果を示す。表2中のTDエッチピット密度はTSDエッチピット密度とTEDエッチピット密度を合わせたものである。
Figure 0007435880000002

マイクロパイプ密度は実施例1、2及び比較例1~3のいずれも、1個/cm以下だった。
実施例1及び2は、比較例1~3に比べて、SORI及び基板厚みのいずれも大幅に低減されていた。
また、実施例1及び2(8インチ基板)は、比較例1及び2(6インチ基板)に匹敵する程度を超え、エッチピット総数も十分に低減されており、かつ、TDエッチピット密度及びBPDエッチピット密度のいずれについても大幅に低減されていた。この結果は、実施例1及び2において、より精密な温度制御を行った効果であると考えられる。
また、実施例1及び2(8インチ基板)は、比較例3(8インチ基板)に比べて、エッチピット総数、TDエッチピット密度及びBPDエッチピット密度のいずれについても大幅に低減されていた。この結果から、8インチのSiC単結晶基板の作製においては、6インチのSiC単結晶基板の作製に比べて、より精密な温度制御の影響が大きいことが分かった。
1 SiC単結晶基板

Claims (6)

  1. 8インチのn型SiC単結晶基板であって、
    直径が195~205mmの範囲であり、
    板厚が300~650μmの範囲であり、
    主面から深さ方向で板厚に対して5%以内の面内の、任意に選択された少なくとも5点において、ドーパント濃度が2×1018/cm以上、6×1019/cm以下である、n型SiC単結晶基板。
  2. 主面から同一深さにおける面内中心でのドーパント濃度に対して、最外周から1mm以内の点を含む、半径方向の少なくとも5点のドーパント濃度が±20%以内である、請求項1に記載のn型SiC単結晶基板。
  3. 主面から同一深さにおける面内中心でのドーパント濃度に対して、最外周から1mm以内の点を含む、半径方向の少なくとも5点のドーパント濃度が±15%以内である、請求項1に記載のn型SiC単結晶基板。
  4. 主面から同一深さにおける面内中心でのドーパント濃度に対して、最外周から1mm以内の点を含む、半径方向の少なくとも5点のドーパント濃度が±10%以内である、請求項1に記載のn型SiC単結晶基板。
  5. 8インチのn型SiC単結晶基板であって、
    直径が195~205mmの範囲であり、
    ドーパント濃度が2×1018/cm以上、6×1019/cm以下であり、
    主面から同一深さにおける面を10mm角のメッシュに分割し、各メッシュ内の任意の点でのドーパント濃度をそのメッシュのドーパント濃度とした場合に、ドーパント濃度が、面内中心を含むメッシュのドーパント濃度に対して±20%以内であるメッシュの割合が80%以上である、n型SiC単結晶基板。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載のn型SiC単結晶基板と、
    前記n型SiC単結晶基板の表面に積層されたSiCエピタキシャル層と、を有する、SiCエピタキシャルウェハ。
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