JP7433611B2 - トレンチmos型ショットキーダイオード - Google Patents

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Description

本発明は、トレンチMOS型ショットキーダイオードに関する。
従来、Gaを半導体層に用いたショットキーバリアダイオード(ショットキーダイオード)が知られている(例えば、特許文献1)。
特許文献1には、例えば、nGa層の電子キャリア濃度と厚さがそれぞれ9.95×1016cm-3、3.3μmのときの、ショットキーダイオードの耐圧が1000Vであることが記載されている。
また、Siを半導体層に用いたトレンチMOS型ショットキーダイオード、及びSiCを半導体層に用いたトレンチMOS型ショットキーダイオードが知られている(例えば、非特許文献1、2)。
非特許文献1には、nSi層のドーピング濃度と厚さがそれぞれ1×1016cm-3、9μmのときの、半導体層にSiを用いたトレンチMOS型ショットキーダイオードの耐圧が107Vであることが記載されている。
非特許文献2に記載された逆方向電圧-逆方向電流特性からは、nSiC層のドーピング濃度と厚さがそれぞれ6×1015cm-3、4μmのときの、半導体層にSiCを用いたトレンチMOS型ショットキーダイオードの耐圧が数十V程度であることが読み取れる。
特開2013-102081号公報
T. Shimizu et al., Proceedings of 2001 International Symposium on Power Semiconductor Devices & ICs, Osaka, pp.243-246 (2001). V. Khemka, et al., IEEE ELECTRON DEVICE LETTERS, VOL. 21, NO. 5, MAY 2000, pp.286-288
特許文献1においては、ショットキーダイオードの耐圧がGaの絶縁破壊電界強度により定義されている。しかしながら、Ga等の絶縁破壊電界強度の大きな材料を用いたショットキーダイオードにおいては、逆方向電圧を増加させると、Ga層が絶縁破壊を起こす前にアノード電極とGa層との間のリーク電流が極めて大きくなり、ショットキーダイオードが燃え尽きてしまう。
このため、Gaを半導体層に用いたショットキーダイオードについては、所定の大きさ(例えば1μA)のリーク電流が流れるときの逆方向電圧を耐圧として定義するのが適切といえる。なお、特許文献1のショットキーダイオードは、リーク電流を抑制するための特別な構造を有さず、nGa層のキャリア濃度が9.95×1016cm-3であるときの、1μAのリーク電流が流れるときの逆方向電圧を概算すると、およそ64Vとなる。
本発明の目的は、高耐圧かつ低損失のトレンチMOS型ショットキーダイオードを提供することにある。
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記[1]~[]のトレンチMOS型ショットキーダイオードを提供する。
[1]Ga系単結晶からなる第1の半導体層と、前記第1の半導体層に積層される層であって、その前記第1の半導体層と反対側の面に開口するトレンチを有する、Ga系単結晶からなる第2の半導体層と、前記第2の半導体層の前記第1の半導体層と反対側の面上に形成されたアノード電極と、前記第1の半導体層の前記第2の半導体層と反対側の面上に形成されたカソード電極と、前記第2の半導体層の前記トレンチの内面を覆う絶縁膜と、前記第2の半導体層の前記トレンチ内に前記絶縁膜に覆われるように埋め込まれ、前記アノード電極に接触するトレンチMOSゲートと、を有し、前記絶縁膜の材料がAl又はHfOであり、前記トレンチの深さが6μm以下であり、前記第2の半導体層のドナー濃度が6.0×1016cm-3以下であり、前記第2の半導体層の厚さが5.5μm以上であ1μAのリーク電流が流れるときの逆方向電圧が300V以上10kV以下である、トレンチMOS型ショットキーダイオード。
[2]前記絶縁膜の材料がHfOであり、前記絶縁膜の厚さが300nm以上である、上記[1]に記載のトレンチMOS型ショットキーダイオード。
[3]前記トレンチの深さが2μm以上である、上記[1]又は[2]に記載のトレンチMOS型ショットキーダイオード。
[4]前記第2の半導体層のドナー濃度が1.0×1016cm-3以上である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載のトレンチMOS型ショットキーダイオード。
[5]前記第2の半導体層の厚さが9μm以下である、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のトレンチMOS型ショットキーダイオード。
本発明によれば、高耐圧かつ低損失のトレンチMOS型ショットキーダイオードを提供することができる。
図1は、第1の実施の形態に係るトレンチMOS型ショットキーダイオードの垂直断面図である。 図2(a)、(b)は、それぞれトレンチの平面パターンの典型例を示す、第2の半導体層の上面図である。 図3は、第1の実施の形態に係るトレンチMOS型ショットキーダイオードの変形例の垂直断面図である。 図4は、第2の実施の形態に係るトレンチMOS型ショットキーダイオードの垂直断面図である。 図5(a)、(b)は、第3の実施の形態に係るトレンチMOS型ショットキーダイオードの垂直断面図である。 図6は、実施例のシミュレーションにおける、トレンチMOS型ショットキーダイオード中の点P、P、Pの位置を概略的に表す。 図7(a)、(b)は、絶縁膜の比誘電率と点P、P、Pにおける電界強度Eとの関係を示す。 図8(a)、(b)は、絶縁膜の厚さTと点P、P、Pにおける電界強度Eとの関係を示す。 図9(a)、(b)は、トレンチの深さDと点P、P、Pにおける電界強度Eとの関係を示す。 図10(a)、(b)は、第2の半導体層の厚さTと点P、P、Pにおける電界強度Eとの関係を示す。 図11(a)、(b)は、第2の半導体層のドナー濃度Nと点P、P、Pにおける電界強度Eとの関係を示す。 図12(a)、(b)は、隣接するトレンチの間のメサ形状部分の1/2幅Wと点P、P、Pにおける電界強度Eとの関係を示す。 図13は、アノード電極と第2の半導体層との界面のバリアハイトと点P、P、Pにおける電界強度Eとの関係を示す。 図14は、アノード電極と第2の半導体層との界面のバリアハイトと逆方向リーク電流との関係を示す。 図15は、シミュレーションにより導かれたオン抵抗とバリアハイトを用いて計算した、耐圧1200VのトレンチMOS型ショットキーダイオードの順方向特性を示す。 図16は、アノード電極と第2の半導体層との界面のバリアハイトと逆方向リーク電流との関係を示す。 図17は、シミュレーションにより導かれたオン抵抗とバリアハイトを用いて計算した、耐圧600VのトレンチMOS型ショットキーダイオードの順方向特性を示す。 図18(a)、(b)、(c)は、絶縁膜の最下部の直下における絶縁体の厚さTと点P、P、P、Pにおける電界強度Eとの関係を示す。
〔第1の実施の形態〕
(トレンチMOS型ショットキーダイオードの構成)
図1は、第1の実施の形態に係るトレンチMOS型ショットキーダイオード1の垂直断面図である。トレンチMOS型ショットキーダイオード1は、トレンチMOS領域を有する縦型のショットキーダイオードである。
トレンチMOS型ショットキーダイオード1は、第1の半導体層10と、第1の半導体層10に積層される層であって、その第1の半導体層10と反対側の面17に開口するトレンチ12を有する第2の半導体層11と、第2の半導体層11の面17上に形成されたアノード電極13と、第1の半導体層10の第2の半導体層11と反対側の面上に形成されたカソード電極14と、第2の半導体層11のトレンチ12の内面を覆う絶縁膜15と、第2の半導体層11のトレンチ12内に絶縁膜15に覆われるように埋め込まれ、アノード電極13に接触するトレンチMOSゲート16と、を有する。
トレンチMOS型ショットキーダイオード1においては、アノード電極13とカソード電極14との間に順方向電圧(アノード電極13側が正電位)を印加することにより、第2の半導体層11から見たアノード電極13と第2の半導体層11との界面のエネルギー障壁が低下し、アノード電極13からカソード電極14へ電流が流れる。
一方、アノード電極13とカソード電極14との間に逆方向電圧(アノード電極13側が負電位)を印加したときは、ショットキー障壁により、電流は流れない。アノード電極13とカソード電極14との間に逆方向電圧を印加すると、アノード電極13と第2の半導体層11との界面及び絶縁膜15と第2の半導体層11との界面から空乏層が拡がる。
一般的に、ショットキーダイオードの逆方向リーク電流の上限は1μAとされている。本実施の形態では、1μAのリーク電流が流れるときの逆方向電圧を耐圧と定義する。
例えば、“松波弘之、大谷昇、木本恒暢、中村孝著、「半導体SiC技術と応用」、第2版、日刊工業新聞社、2011年9月30日、p.355”に記載された、SiCを半導体層とするショットキーダイオードにおける逆方向リーク電流のショットキー界面電界強度依存性のデータによれば、逆方向リーク電流の電流密度が0.0001A/cmのときのショットキー電極直下の電界強度は、およそ0.8MV/cmである。ここで、0.0001A/cmは、サイズが1mm×1mmであるショットキー電極に1μAの電流が流れたときのショットキー電極直下の電流密度である。
このため、半導体材料自体の絶縁破壊電界強度が数MV/cmあったとしても、ショットキー電極直下の電界強度が0.8MV/cmを超えると、1μAを超えるリーク電流が流れることになる。
例えば、ショットキー電極直下の電界強度を抑制するための特別な構造を有さない従来のショットキーダイオードにおいて1200Vの耐圧を得るためには、ショットキー電極直下の電界強度を0.8MV/cm以下に抑えるために、半導体層のドナー濃度を1015cm-3台にまで下げ、かつ半導体層を非常に厚くする必要がある。そのため、導通損失が非常に大きくなり、高耐圧かつ低損失のショットキーバリアダイオードを作製することは困難である。
本実施の形態に係るトレンチMOS型ショットキーダイオード1は、トレンチMOS構造を有するため、半導体層の抵抗を増加することなく、高い耐圧を得ることができる。すなわち、トレンチMOS型ショットキーダイオード1は、高耐圧かつ低損失のショットキーダイオードである。
なお、高耐圧かつ低損失のショットキーダイオードとして、ジャンクションバリアショットキー(JBS)ダイオードが知られているが、p型のGaは製造が困難であるため、Gaはp型領域が必要なJBSダイオードの材料に向いていない。
第1の半導体層10は、ドナーとしてのSi、Sn等のIV族元素を含むn型のGa系単結晶からなる。第1の半導体層10のドナー濃度N’は、例えば、1.0×1018以上かつ1.0×1020cm-3以下である。第1の半導体層10の厚さTは、例えば、10~600μmである。第1の半導体層10は、例えば、Ga系単結晶基板である。
ここで、Ga系単結晶とは、Ga単結晶、又は、Al、In等の元素が添加されたGa単結晶をいう。例えば、Al及びInが添加されたGa単結晶である(GaAlIn(1-x-y)(0<x≦1、0≦y<1、0<x+y≦1)単結晶であってもよい。Alを添加した場合にはバンドギャップが広がり、Inを添加した場合にはバンドギャップが狭くなる。なお、上記のGa単結晶は、例えば、β型の結晶構造を有する。
第2の半導体層11は、ドナーとしてのSi、Sn等のIV族元素を含むn型のGa系単結晶からなる。第2の半導体層11のドナー濃度Nは、第1の半導体層10のドナー濃度Nよりも低い。第2の半導体層11は、例えば、Ga系単結晶基板である第1の半導体層10上にエピタキシャル成長したエピタキシャル層である。
なお、第1の半導体層10と第2の半導体層11との間に、高濃度のドナーを含む高ドナー濃度層を形成してもよい。この高ドナー濃度層は、例えば、基板である第1の半導体層10上に第2の半導体層11をエピタキシャル成長させる場合に用いられる。第2の半導体層11の成長初期は、ドーパントの取り込み量が不安定であったり、基板である第1の半導体層10からのアクセプタ不純物の拡散があったりするため、第1の半導体層10上に第2の半導体層11を直接成長させると、第2の半導体層11の第1の半導体層10との界面に近い領域が高抵抗化する場合がある。このような問題を避けるため、高ドナー濃度層が用いられる。高ドナー濃度層の濃度は、例えば、第2の半導体層11よりも高い濃度に設定され、より好ましくは、第1の半導体層10よりも高い濃度に設定される。
第2の半導体層11のドナー濃度Nが増加するほど、トレンチMOS型ショットキーダイオード1の各部の電界強度が増加する。第2の半導体層11中のアノード電極13直下の領域中の最大電界強度、第2の半導体層11中の最大電界強度、及び絶縁膜15中の最大電界強度を低く抑えるためには、第2の半導体層11のドナー濃度Nがおよそ6.0×1016cm-3以下であることが好ましい。一方、ドナー濃度Nが小さくなるほど第2の半導体層11の抵抗が大きくなり、順方向損失が増加してしまうため、例えば1200V以下の耐圧を得るためには、3.0×1016cm-3以上であることが好ましい。また、より高い耐圧を得るためには、ドナー濃度Nを例えば1.0×1016cm-3程度まで下げることが好ましい。
第2の半導体層11の厚さTが増加するほど、第2の半導体層11中の最大電界強度及び絶縁膜15中の最大電界強度が低減する。第2の半導体層11の厚さTをおよそ6μm以上にすることにより、第2の半導体層11中の最大電界強度及び絶縁膜15中の最大電界強度を効果的に低減することができる。これらの電界強度の低減と、トレンチMOS型ショットキーダイオード1の小型化の観点から、第2の半導体層11の厚さTはおよそ5.5μm以上かつ9μm以下であることが好ましい。
トレンチ12の深さDによってトレンチMOS型ショットキーダイオード1の各部の電界強度が変化する。第2の半導体層11中のアノード電極13直下の領域中の最大電界強度、第2の半導体層11中の最大電界強度、及び絶縁膜15中の最大電界強度を低く抑えるためには、トレンチ12の深さDがおよそ2μm以上かつ6μm以下であることが好ましく、およそ3μm以上かつ4μm以下であることがより好ましい。また、本明細書では、トレンチ12の幅の半分の幅(以下1/2幅と呼ぶ)をWとする。
第2の半導体層11の隣接するトレンチ12の間のメサ形状部分の幅が低減するほど、第2の半導体層11中のアノード電極13直下の領域中の最大電界強度が低減する。本明細書では、隣接するトレンチ12の間のメサ形状部分の幅の半分の幅(以下1/2幅と呼ぶ)をWとする。第2の半導体層11中のアノード電極13直下の領域中の最大電界強度を低く抑えるためには、メサ形状部分の1/2幅Wが1.25μm以下であることが好ましい。一方、メサ形状部分の幅が小さいほどトレンチ12の製造難度が上がるため、メサ形状部分の1/2幅Wが0.25μm以上であることが好ましい。
絶縁膜15の誘電率が増加するほど、絶縁膜15中の最大電界強度が低減するため、絶縁膜15は誘電率が高い材料からなることが好ましい。例えば、絶縁膜15の材料としてAl(比誘電率がおよそ9.3)、HfO(比誘電率がおよそ22)を用いることができるが、誘電率の高いHfOを用いることが特に好ましい。
また、絶縁膜15の厚さTが増加するほど、第2の半導体層11中の最大電界強度が低減するが、絶縁膜15中の最大電界強度およびアノード電極13直下の領域中の最大電界強度が増加する。製造容易性の観点からは、絶縁膜15の厚さは小さい方が好ましく、300nm以下であることがより好ましい。ただし、当然ながら、トレンチMOSゲート16と第2の半導体層11の間に直接電流がほとんど流れない程度の厚さは必要である。
トレンチMOSゲート16の材料は、導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、高濃度でドーピングされた多結晶Siや、Ni、Au等の金属を用いることができる。
トレンチMOS型ショットキーダイオード1中の電界強度は、上述のように、隣接する2つのトレンチ12の間のメサ形状部分の幅、トレンチ12の深さD、絶縁膜15の厚さT等の影響を受けるが、トレンチ12の平面パターンにはほとんど影響を受けない。このため、第2の半導体層11のトレンチ12の平面パターンは特に限定されない。
図2(a)、(b)は、それぞれトレンチ12の平面パターンの典型例を示す、第2の半導体層11の面17の上面図である。
図2(a)に示されるトレンチ12は、ライン状の平面パターンを有する。図2(b)に示されるトレンチ12は、隣接する2つのトレンチ12の間のメサ形状部分の平面パターンがドット状になるような平面パターンを有する。
図1に示されるトレンチMOS型ショットキーダイオード1の断面は、図2(a)に示されるトレンチMOS型ショットキーダイオード1においては切断線A-Aに沿った切断面、及び図2(b)に示されるトレンチMOS型ショットキーダイオード1においては切断線B-Bに沿った切断面に相当する。
アノード電極13は、第2の半導体層11とショットキー接触する。アノード電極13は、Pt、Pd、Au、Ni、Ag、Cu、Al、Mo、In、Ti、多結晶Siおよびそれらの酸化物や窒化物、合金等の材料からなる。アノード電極13と第2の半導体層11のショットキー界面の逆方向リーク電流は、アノード電極13と第2の半導体層11との界面の障壁の高さ(バリアハイト)が高いほど小さくなる。一方、バリアハイトが高い金属をアノード電極13に用いた場合、順方向の立ち上がり電圧が上昇するため、順方向損失が増加する。よって、逆方向リーク電流が最大で1μA程度となるバリアハイトを持つ材料を選択することが好ましい。例えば逆方向耐圧が600Vから1200Vの場合、バリアハイトを0.7eV程度とすることで、逆方向リーク電流を1μA程度に抑えたまま、最も順方向損失を低減できる。アノード電極13は、異なる金属膜を積層した多層構造、例えば、Pt/Au、Pt/Al、Pd/Au、Pd/Al、又はPt/Ti/AuおよびPd/Ti/Auを有してもよい。
カソード電極14は、第1の半導体層10とオーミック接触する。カソード電極14は、Ti等の金属からなる。カソード電極14は、異なる金属膜を積層した多層構造、例えば、Ti/Au又はTi/Al、を有してもよい。カソード電極14と第1の半導体層10を確実にオーミック接触させるため、カソード電極14の第1の半導体層10と接触する層がTiからなることが好ましい。
図3は、トレンチMOS型ショットキーダイオード1の変形例の垂直断面図である。図3に示されるように、トレンチMOS型ショットキーダイオード1は、フィールドプレート構造を有してもよい。
図3に示される変形例においては、第2の半導体層11の面17の縁に沿って、SiO等からなる誘電体膜18が設けられ、その誘電体膜18の上にアノード電極13の縁が乗り上げている。
このようなフィールドプレート構造を設けることにより、アノード電極13の端部への電界集中を抑制することができる。また、誘電体膜18は、第2の半導体層11の面17を流れる表面リーク電流を抑制するパッシベーション膜としても機能する。なお、フィールドプレート構造の有無は、上記のトレンチMOS型ショットキーダイオード1の構造における各パラメータ(メサ形状部分の1/2幅W、トレンチ12の深さD、絶縁膜15の厚さT等)の最適値には影響を与えない。
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態は、絶縁膜15を構成する絶縁体とは別の絶縁体がトレンチの底部に埋め込まれる点において、第1の実施の形態と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については、説明を省略又は簡略化する。
(トレンチMOS型ショットキーダイオードの構成)
図4は、第2の実施の形態に係るトレンチMOS型ショットキーダイオード2の垂直断面図である。
トレンチMOS型ショットキーダイオード2の第2の半導体層11は、面17に開口するトレンチ21を有する。トレンチ21の底部には絶縁体22が埋め込まれ、絶縁膜15は、絶縁体22の上面とトレンチ21の内側側面を覆う。トレンチMOSゲート16は、トレンチ21内に絶縁膜15に覆われるように埋め込まれている。
例えば、トレンチ21の底部に絶縁体22を埋め込んだ後、エッチングにより絶縁体22の上部をラウンド状に削り、トレンチ12を形成する。そして、トレンチ12内に絶縁膜15及びトレンチMOSゲート16を形成する。トレンチ21の底面は平坦であってもよいし、トレンチ12のようにラウンドしていてもよい。
絶縁体22は、絶縁膜15よりも誘電率の低い絶縁体からなる。このため、アノード電極13とカソード電極14の間に電圧を印加したときに、絶縁膜15に印加される電界よりも絶縁体22に印加される電界の方が大きくなる。
第1の実施の形態に係るトレンチMOS型ショットキーダイオード1において、絶縁膜15中で最も電界強度が高くなる領域は、トレンチ12の底部近傍の領域である。また、第2の半導体層11中で最も電界強度が高くなる領域は、トレンチ12の直下の領域である。
第2の実施の形態に係る絶縁体22を設けることにより、絶縁膜15中のトレンチ12の底部近傍の領域における電界強度、及び第2の半導体層11中のトレンチ12の直下の領域における電界強度を低減することができる。すなわち、絶縁膜15中の最大電界強度及び第2の半導体層11中の最大電界強度を低減することができる。
絶縁体22の材料として、SiO(比誘電率がおよそ4)等の誘電率が低い材料を用いることが好ましい。絶縁膜15の最下部の直下における絶縁体22の厚さTは、およそ200nm以上であることが好ましい。絶縁体22は、トレンチ12と同じ平面パターンを有し、典型的には、トレンチ12の幅2Wとほぼ等しい幅を有する。
〔第3の実施の形態〕
第3の実施の形態は、絶縁体22が第1の半導体層10と接触する点において、第2の実施の形態と異なる。なお、第2の実施の形態と同様の点については、説明を省略又は簡略化する。
(トレンチMOS型ショットキーダイオードの構成)
図5(a)、(b)は、第3の実施の形態に係るトレンチMOS型ショットキーダイオード3の垂直断面図である。
トレンチMOS型ショットキーダイオード3は、第2の実施の形態に係るトレンチMOS型ショットキーダイオード2と比べて、絶縁体22の厚さTが大きい。このため、絶縁体22と第2の半導体層11により耐圧を確保するトレンチMOS型ショットキーダイオード2と異なり、絶縁体22のみにより耐圧を確保することができる。
このため、絶縁体22が第1の半導体層10と接触するまで第2の半導体層11の厚さTを小さくし、オン抵抗を低減することができる。すなわち、トレンチMOS型ショットキーダイオード2とトレンチMOS型ショットキーダイオード3を同じ耐圧を有するように設計した場合に、トレンチMOS型ショットキーダイオード3のオン抵抗をトレンチMOS型ショットキーダイオード2のオン抵抗よりも小さくし、より損失を小さくすることができる。
トレンチMOS型ショットキーダイオード3の絶縁体22は、図5(a)に示されるように、その底部が第1の半導体層10の上面に接触していてもよいし、図5(b)に示されるように、その底部が第1の半導体層10中に入り込んでいてもよい。すなわち、絶縁体22の最下部の高さが、第1の半導体層10と第2の半導体層11の界面の高さと同じであってもよいし、第1の半導体層10と第2の半導体層11の界面の高さより低くてもよい。
(実施の形態の効果)
上記第1~3の実施の形態によれば、半導体層にGaを用いることにより、高耐圧かつ低損失のトレンチMOS型ショットキーダイオードを提供することができる。
シミュレーションにより、第1の実施の形態に係るトレンチMOS型ショットキーダイオード1の構造における各パラメータの最適値を求めた。このシミュレーションでは、各パラメータと、第2の半導体層11中の最大電界強度、絶縁膜15中の最大電界強度、及び第2の半導体層11中のアノード電極13直下の領域(アノード電極13との界面から深さ0.5μmまでの領域)中の最大電界強度との関係を求めた。
ここで、第2の半導体層11中の電界強度Eが最も大きい点をP、絶縁膜15中の電界強度Eが最も大きい点をP、第2の半導体層11中のアノード電極13直下の領域中の電界強度Eが最も大きい点をPとする。すなわち、点Pにおける電界強度Eが第2の半導体層11中の最大電界強度、点Pにおける電界強度Eが絶縁膜15中の最大電界強度、点Pにおける電界強度Eが第2の半導体層11中のアノード電極13直下の領域中の最大電界強度である。
図6は、本実施例のシミュレーションにおける、トレンチMOS型ショットキーダイオード1中の点P、P、Pの位置を概略的に表す。
また、本実施例のシミュレーションにおいては、次の表1に示す構造パラメータのいずれかのパラメータを変化させた。各シミュレーションにおいて固定されたパラメータは、各シミュレーションの結果を示すグラフ(図7~12)中に示す。なお、全てのシミュレーションにおける値が同じパラメータ(W、W、W、N’、V)は図7~12のグラフ中に表示しない。
Figure 0007433611000001
図7(a)、(b)は、絶縁膜15の比誘電率と点P、P、Pにおける電界強度Eとの関係を示す。図7(a)、(b)中の比誘電率9.3、22は、それぞれAl、HfOの比誘電率に相当する。
図7(a)は、絶縁膜15の誘電率が増加するほど、絶縁膜15中の最大電界強度が低減することを示している。
図8(a)、(b)は、絶縁膜15の厚さTと点P、P、Pにおける電界強度Eとの関係を示す。
図8(a)は、絶縁膜15の厚さTが増加するほど、第2の半導体層11中の最大電界強度が低減することを示している。
文献“M. Higashiwakiet al., Appl. Phys. Lett. 100, 013504 (2012).”において、Gaの絶縁破壊強度がおよそ8MV/cmであることが報告されている。図8(a)によれば、絶縁膜15の厚さTをおよそ300nm以上とすることにより、第2の半導体層11中の最大電界強度を8MV/cm未満に抑えることができる。
なお、絶縁体である絶縁膜15の絶縁破壊強度は非常に高いため、絶縁膜15の電界強度は本シミュレーションの条件下では絶縁破壊強度に達することはなく、増加しても問題にならない。
図9(a)、(b)は、トレンチ12の深さDと点P、P、Pにおける電界強度Eとの関係を示す。
図9(a)によれば、トレンチ12の深さDがおよそ6μm以下、好ましくは4μm以下であるときに、第2の半導体層11中の最大電界強度及び絶縁膜15中の最大電界強度を低く抑えることができる。また、図9(b)は、トレンチ12の深さDがおよそ2μm以上、好ましくは3μm以上であるときに、第2の半導体層11中のアノード電極13直下の領域中の最大電界強度が低く抑えられることを示している。
図10(a)、(b)は、第2の半導体層11の厚さTと点P、P、Pにおける電界強度Eとの関係を示す。
図10(a)によれば、第2の半導体層11の厚さTをおよそ5.5μm以上にすることにより、第2の半導体層11中の最大電界強度をGaの絶縁破壊強度である8MV/cm未満に抑えることができる。
図11(a)、(b)は、第2の半導体層11のドナー濃度Nと点P、P、Pにおける電界強度Eとの関係を示す。
図11(a)、(b)によれば、第2の半導体層11のドナー濃度Nが小さいほど、第2の半導体層11中のアノード電極13直下の領域中の最大電界強度、第2の半導体層11中の最大電界強度、及び絶縁膜15中の最大電界強度が小さくなる。また、図11(a)によれば、第2の半導体層11のドナー濃度Nをおよそ6.0×1016cm-3以下とすることにより、第2の半導体層11中の最大電界強度をGaの絶縁破壊強度である8MV/cm未満に抑えることができる。
図12(a)、(b)は、隣接するトレンチ12の間のメサ形状部分の1/2幅Wと点P、P、Pにおける電界強度Eとの関係を示す。
図12(a)、(b)は、メサ形状部分の幅が、第2の半導体層11中のアノード電極13直下の領域中の最大電界強度に特に大きな影響を与えることを示している。図12(b)によれば、メサ形状部分の幅が低減するほど、第2の半導体層11中のアノード電極13直下の領域中の最大電界強度が低減する。
図13は、アノード電極13と第2の半導体層11との界面のバリアハイトと点P、P、Pにおける電界強度Eとの関係を示す。
図13は、第2の半導体層11中のアノード電極13直下の領域中の最大電界強度、第2の半導体層11中の最大電界強度、及び絶縁膜15中の最大電界強度が、アノード電極13と第2の半導体層11との界面のバリアハイトに依存しないことを示している。
上記のシミュレーション結果に加えて、ドナー濃度Nが低下すると耐圧が増加すること、第2の半導体層11の厚さTが増加すると耐圧が増加すること、及びトレンチMOS型ショットキーダイオード1の小型化の観点から第2の半導体層11の厚さTはおよそ9μm以下が好ましいことを考慮すれば、耐圧が1200Vの素子を形成するためには、ドナー濃度Nをおよそ3.0×1016cm-3以上かつ6.0×1016cm-3以下、第2の半導体層11の厚さTをおよそ5.5μm以上かつ9μm以下とすることが好ましいといえる。
また、耐圧が1200Vより小さくてもよい場合は、第2の半導体層11の厚さTをより小さくすることができ、例えば、耐圧が600Vの素子を形成するためには、ドナー濃度Nがおよそ3.0×1016cm-3以上かつ6.0×1016cm-3以下、第2の半導体層11の厚さTがおよそ4.5μm以上かつ9μm以下であればよい。
以上のシミュレーション結果に基づいて導き出された、耐圧1200VのトレンチMOS型ショットキーダイオード1の構造パラメータの例を次の表2に示す。
Figure 0007433611000002
第2の半導体層11と第1の半導体層10のオン抵抗は、それぞれ1.6mΩcm、0.05mΩcmとした。なお、第2の半導体層11の抵抗率から計算すると、トレンチ構造を含まない場合の第2の半導体層11のオン抵抗は1.3mΩcmであり、1.6mΩcmはトレンチ構造によりおよそ1.2倍の損失が生じるものとして導かれた値である。
図14は、アノード電極13と第2の半導体層11との界面のバリアハイトと逆方向リーク電流との関係を示す。図14のバリアハイトと逆方向リーク電流との関係は、熱電子放出に鏡像効果を考慮し、アノード電極直下の電界強度を0.4MV/cmと仮定した理論計算により求められたものである。
図14によれば、許容されるリーク電流の上限を1μA(1×10-6A)とすると、許容されるバリアハイトの最小値は0.7eVとなる。
図15は、上記のオン抵抗とバリアハイトを用いて計算した、耐圧1200VのトレンチMOS型ショットキーダイオード1の順方向特性を示す。図15によれば、例えば、200A/cmで駆動する場合の順方向電圧は0.7~0.8Vとなる。
同様に、上記のシミュレーション結果に基づいて導き出された、耐圧600VのトレンチMOS型ショットキーダイオード1の構造パラメータの例を次の表3に示す。
Figure 0007433611000003
第2の半導体層11と第1の半導体層10のオン抵抗は、それぞれ1.0mΩcm、0.05mΩcmとした。なお、第2の半導体層11の抵抗率から計算すると、トレンチ構造を含まない場合の第2の半導体層11のオン抵抗は0.86mΩcmであり、1.0mΩcmはトレンチ構造によりおよそ1.2倍の損失が生じるものとして導かれた値である。
図16は、アノード電極13と第2の半導体層11との界面のバリアハイトと逆方向リーク電流との関係を示す。図16のバリアハイトと逆方向リーク電流との関係は、熱電子放出に鏡像効果を考慮し、アノード電極直下の電界強度を0.2MV/cmと仮定した理論計算により求められたものである。
図16によれば、許容されるリーク電流の上限を1μA(1×10-6A)とすると、許容されるバリアハイトの最小値は0.7eVとなる。
図17は、上記のオン抵抗とバリアハイトを用いて計算した、耐圧600VのトレンチMOS型ショットキーダイオード1の順方向特性を示す。図17によれば、例えば、200A/cmで駆動する場合の順方向電圧は0.6~0.7Vとなる。
なお、本実施例では、耐圧が1200Vと600Vの場合についての計算結果のみを示したが、その他の耐圧を有する素子についても、本実施例の計算結果をもとに、容易に設計することができる。例えば、耐圧が300Vの素子の場合、耐圧1200Vで算出された各箇所の電界強度の値を1/4にすればよく、それに応じて構造パラメータを変更すればよい。
例えば、耐圧が300V以上かつ600V以下の素子を形成する場合、ドナー濃度Nをおよそ3.0×1016cm-3以上かつ3.0×1017cm-3以下、厚さTをおよそ2.0μm以上かつ4.5μm以下とすることが好ましい。また、耐圧が1200V以上かつ1700V以下の素子を形成する場合、ドナー濃度Nをおよそ1.0×1016cm-3以上かつ3.0×1016cm-3以下、厚さTをおよそ5.5μm以上かつ9μm以下とすることが好ましい。耐圧が1700V以上かつ10kV以下の素子を形成する場合、ドナー濃度Nをおよそ1.0×1015cm-3以上かつ1.0×1016cm-3以下、厚さTをおよそ9μm以上かつ50μm以下とすることが好ましい。
以上の計算結果をまとめると、第2の半導体層11のドナー濃度Nをおよそ1.0×1015cm-3以上かつ3.0×1017cm-3以下、第2の半導体層11の厚さTをおよそ2.0μm以上かつ50μm以下の範囲で調整することにより、耐圧が300V以上かつ10kV以下の範囲にある素子を形成することができる。
シミュレーションにより、第2の実施の形態に係るトレンチMOS型ショットキーダイオード2の絶縁体22による効果を検証した。
図18(a)、(b)、(c)は、絶縁膜15の最下部の直下における絶縁体22の厚さTと点P、P、P、Pにおける電界強度Eとの関係を示す。ここで、点Pは、絶縁体22中の電界強度Eが最も大きい点である。なお、絶縁体22が設けられている場合、第2の半導体層11中の電界強度Eが最も大きい点Pは、絶縁体22の側面近傍に位置する。
図18(a)、(b)、(c)は、絶縁体22の厚さTが増加するほど、第2の半導体層11中の最大電界強度、絶縁膜15中の最大電界強度、及び絶縁体22中の最大電界強度、が低減することを示している。また、絶縁体22の厚さTが増加しても、第2の半導体層11中のアノード電極13直下の領域中の最大電界強度はほとんど変化しない。
一方、絶縁膜15の厚さTを増加させた場合、図8(b)に示されるように、第2の半導体層11中のアノード電極13直下の領域中の最大電界強度が増加している。そこで、絶縁膜15の厚さTを増加させる代わりに絶縁体22を設けることにより、第2の半導体層11中のアノード電極13直下の領域中の最大電界強度を増加させずに、第2の半導体層11中の最大電界強度を低減することができる。
図18(a)によれば、絶縁体22の厚さTをおよそ200nm以上とすることにより、第2の半導体層11中の最大電界強度を特に低く抑えることができる。
以上、本発明の実施の形態、実施例を説明したが、本発明は、上記実施の形態、実施例に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
また、上記に記載した実施の形態、実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態、実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
1、2、3…トレンチMOS型ショットキーダイオード、 10…第1の半導体層、 11…第2の半導体層、 12、21…トレンチ、 13…アノード電極、 14…カソード電極、 15…絶縁膜、 16…トレンチMOSゲート、 22…絶縁体

Claims (5)

  1. Ga系単結晶からなる第1の半導体層と、
    前記第1の半導体層に積層される層であって、その前記第1の半導体層と反対側の面に開口するトレンチを有する、Ga系単結晶からなる第2の半導体層と、
    前記第2の半導体層の前記第1の半導体層と反対側の面上に形成されたアノード電極と、
    前記第1の半導体層の前記第2の半導体層と反対側の面上に形成されたカソード電極と、
    前記第2の半導体層の前記トレンチの内面を覆う絶縁膜と、
    前記第2の半導体層の前記トレンチ内に前記絶縁膜に覆われるように埋め込まれ、前記アノード電極に接触するトレンチMOSゲートと、
    を有し、
    前記絶縁膜の材料がAl又はHfOであり、
    前記トレンチの深さが6μm以下であり、
    前記第2の半導体層のドナー濃度が6.0×1016cm-3以下であり、
    前記第2の半導体層の厚さが5.5μm以上であ
    1μAのリーク電流が流れるときの逆方向電圧が300V以上10kV以下である、
    トレンチMOS型ショットキーダイオード。
  2. 前記絶縁膜の材料がHfOであり、
    前記絶縁膜の厚さが300nm以上である、
    請求項1に記載のトレンチMOS型ショットキーダイオード。
  3. 前記トレンチの深さが2μm以上である、
    請求項1又は2に記載のトレンチMOS型ショットキーダイオード。
  4. 前記第2の半導体層のドナー濃度が1.0×1016cm-3以上である、
    請求項1~3のいずれか1項に記載のトレンチMOS型ショットキーダイオード。
  5. 前記第2の半導体層の厚さが9μm以下である、
    請求項1~4のいずれか1項に記載のトレンチMOS型ショットキーダイオード。
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