JP7431530B2 - 車両の駆動装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の左右輪を駆動する一対のモーター及びインバーターを含む駆動装置に関する。
従来、二つのモーター(電動機)で車両の左右輪を駆動する駆動装置が知られている。例えば、左右輪の各々に個別のモーターを接続し、左右輪を互いに独立して駆動できるようにしたものが提案されている。このような駆動装置では、左右のモーターの駆動力を相違させることで、左右輪に回転数差やトルク差を生じさせることができる。これにより、車両の旋回性能や旋回時の車体安定性が改善されうる(特許文献1参照)。
各々のモーターは、給電ケーブルやバスバーなどの導電部材を介してインバーターに接続される。特許文献1に記載の技術では、モーターの内部から突設される動力線に対して駆動用コネクターを取り付け、駆動用コネクターの端子部と駆動素子ユニットの出力端子との間を出力用バスバーで接続している。また、駆動用コネクターの位置は、駆動装置の上端部近傍に設定されている。
特開2017-184523号公報
モーターとインバーターとを駆動装置の上端部近傍で接続する構造においては、モーターの直上方に導電部材が配置される。これにより、駆動装置の高さ寸法が大きくなりやすく、良好な車両搭載性が得られにくいという課題がある。また、車両のフロア下に駆動装置を搭載する際に、導電部材とフロアとの空き寸法を確保したい場合もある。一方、路面からの飛び石や路面上の異物などによる駆動装置の破損や故障を防止するには、駆動装置から路面までの距離も確保することが望ましい、したがって、駆動装置の高さ寸法はできるだけ小さいことが望ましい。
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑みて創案されたものであり、コンパクトかつ簡素な構成で車両搭載性を改善できるようにした車両の駆動装置を提供することである。なおこの目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
開示の車両の駆動装置は、車両の左右輪を駆動する左モーター及び右モーターと、左モーター及び右モーターの間に配置され左モーター及び右モーターの両方に固定されるとともに直流電力を交流電力に変換して左モーター及び右モーターに給電するインバーターとを含む。左モーターは、インバーターに繋がる左給電線が接続される左端子部を有し、右モーターは、インバーターに繋がる右給電線が接続される右端子部を有する。左端子部は、左モーターの左側面視において、左モーターの回転軸から前後方向に離隔した位置に設けられ、左モーターの回転軸を中心として半径方向外側に向かって延びた姿勢で配置される。右端子部は、右モーターの回転軸から前後方向に離隔した位置に設けられ、右モーターの回転軸を中心として半径方向外側に向かって延びた姿勢で配置される。また、左導電部材及び右導電部材の各々が、左端子部または右端子部に接続され、車両の幅方向内側に向かって延設される第一導電部と、第一導電部に接続され、第一導電部からインバーターに向かって上下方向に延設される第二導電部とを有する。
左端子部及び右端子部を各モーターの回転軸から前後方向に離隔した位置に設けることで、コンパクトかつ簡素な構成で車両搭載性を改善することができる。
実施形態としての車両の駆動装置を分解して示す模式的な斜視図である。 駆動装置の模式的な正面図である。 駆動装置の内部構造を説明するための模式的な断面図である。 (A),(B)はモーターカバーを取り外した駆動装置の模式的な側面図である。 モーターとインバーターとを繋ぐ導電部材の模式的な斜視図である。
[1.構成]
以下、図面を参照して実施形態としての車両の駆動装置10について説明する。この駆動装置10は、車両の左右輪間に介装される。駆動装置10は、左右輪の駆動/制動力(駆動/制動トルク)の大きさを能動的に制御することでヨーモーメントの大きさを調節し、車両の姿勢を安定させる機能をもつ。図1~図3に示すように、駆動装置10には、左モーター1,右モーター2,ギアボックス3,インバーター4(電力変換装置)が含まれる。なお、図中の前後左右上下は、駆動装置10が搭載された車両の運転者を基準にして定められる方向を表す。
左モーター1は車両の左輪に駆動力を伝達する電動機であり、右モーター2は車両の右輪に駆動力を伝達する電動機である。左モーター1は、少なくとも左輪軸27に繋がる動力伝達経路に接続(または介装)される。同様に、右モーター2は、少なくとも右輪軸28に繋がる動力伝達経路に接続(または介装)される。左モーター1及び右モーター2は、他の駆動用モーターやエンジンが搭載される電気自動車及びハイブリッド自動車においては、少なくとも左右輪の駆動/制動力を増減させることで旋回力を発生させるヨーモーメント生成源として機能する。他の駆動用モーターが搭載されない電気自動車においては、上記の機能に加えて、車両の駆動源としての機能を併せ持つ。
以下、左モーター1と右モーター2とを区別する必要がない場合には、単にモーター1,2とも表記する。本実施形態のモーター1,2はシンクロナスモーター(同期型交流電動機)であり、互いに独立して作動しうる。また、モーター1,2は、電動機だけでなく発電機としての機能を併せ持つ。モーター1,2を作動させるための電力は、車両に搭載される走行用バッテリーや車載発電システム(ジェネレーター,燃料電池,ディーゼル発電システムなど)から供給される。なお、同期モーターの代わりに、他の交流モーター(誘導モーター,整流子モーター)や直流モーターを使用してもよい。
図2,図3に示すように、左右のモーター1,2は車両の正面視で左右対称な構造を持つ。右モーター2の内部構造は、左モーター1と左右対称であることを除いてほぼ同一である。左モーター1について内部構造を詳述すると、その外装はモーターハウジング11とモーターカバー12との二部材に分割されている。それぞれのモーター1,2の回転軸Cは同軸とされる。また、左モーター1の内部には、ステーター23,ローター24,モーター軸25が内蔵される。
ステーター23は、例えば絶縁鋼板を積層してなる積層鉄心にコイルを巻き付けた構造を持ち、モーターハウジング11に固定される固定子である。ステーター23は、円筒面をなすように、所定の軸を中心として複数箇所に分散して配置される。ローター24は、例えば絶縁鋼板を積層してなる積層鉄心に永久磁石を内挿した円筒状の回転子である。ローター24は、ステーター23の回転軸Cと同心の状態でその内側に遊挿され、軸状のモーター軸25に固定される。モーター軸25は、モーターハウジング11やモーターカバー12に対してベアリング(不図示)を介して軸支される。ステーター23に通電される交流電力の周波数を変更することで、ステーター23の内側における磁界の回転速度が変化し、ローター24及びモーター軸25の角速度が変更される。モーター軸25の一端は、ギアボックス3に内蔵された歯車機構26に接続される。
モーターハウジング11は、ステーター23やローター24など、左モーター1の主要部品を収容するものである。モーターハウジング11の形状は、モーター1,2の主要部品が内装される筒状であって、二つの開口部を有する形状とされる。モーターハウジング11は、二つの開口部が左右を向く姿勢でギアボックス3に取り付けられる。また、モーターハウジング11は、ギアボックス3に取り付けられたときに、ギアボックス3の上端よりも上方に突出する形状とされる。これにより、ギアボックス3の上方には、左右のモーター1,2とギアボックス3とで囲まれた凹部が形成される。二つの開口部のうち、駆動装置10の左右両端側に位置する片方は、モーターカバー12が取り付けられて閉塞される。もう片方の開口部は、ギアボックス3の内部と連通状態になるようにギアボックス3の側面に接合される。
モーターカバー12は、モーターハウジング11の開口部のうち、車両の幅方向外側の側面(左モーター1の左側面と右モーター2の右側面)を閉塞するものである。モーターカバー12の取付構造には、公知の取付構造を採用することができる。例えば、図2,図3に示すようにフランジ19,20を形成し、これらを接合させて固定してもよい。フランジ19,20は、モーターハウジング11及びモーターカバー12の開口端から開口面に沿って外側に延設される。フランジ19,20を面接触させた状態で締結固定(または溶接固定)することで、モーターハウジング11に対するモーターカバー12の取付箇所における、モーター1,2の密封性が向上する。
ギアボックス3は、左モーター1と右モーター2との間に挟装される駆動力伝達装置である。ギアボックス3は、外装をなすギアボックスハウジング13とこれに内蔵された歯車機構26とを有する。歯車機構26は、少なくとも左モーター1と右モーター2とのトルク差を増幅する機構である。本実施形態の歯車機構26には、左輪軸27と右輪軸28との間に駆動/制動力差を生じさせるための機構(例えば差動歯車機構や遊星歯車機構など)が含まれる。また、歯車機構26には、車両の左輪に繋がる左輪軸27と、右輪に繋がる右輪軸28とが接続される。
モーターハウジング11及びギアボックスハウジング13の取付構造は、モーターハウジング11及びモーターカバー12と同様の構造を採用することができる。例えば、図2,図3に示すようにフランジ21,22を形成し、これらを接合させて固定してもよい。フランジ21,22は、モーターハウジング11及びギアボックスハウジング13の開口端から開口面に沿って外側に延設される。フランジ21,22を面接触させた状態で締結固定(または溶接固定)することで、これらの接合面における密封性が向上する。
インバーター4は、直流回路の電力(直流電力)とモーター1,2が介装される交流回路の電力(交流電力)とを相互に変換する変換器(DC-ACインバーター)である。インバーター4は、直流電力を交流電力に変換して左モーター1及び右モーター2の双方に給電する機能を持つ。モーター1,2の力行時には、直流電力がインバーター4で交流電力に変換されて、モーター1,2に供給される。モーター1,2の発電時には、モーター1,2側で生成される交流電力がインバーター4で直流電力に変換される。
本実施形態では、インバーター4とモーター1,2との間が三相交流の導電部材(給電ケーブルやバスバーなどの給電ライン)で接続される。以下、左モーター1とインバーター4との間を繋ぐ導電部材を左導電部材33とも呼び、右モーター2とインバーター4との間を繋ぐ導電部材を右導電部材34とも呼ぶ。また、これらを区別する必要がない場合には、単に導電部材33,34とも呼ぶ。
インバーター4には、ベースプレート5,コンデンサー6,半導体モジュール7が含まれる。ベースプレート5は、左モーター1,右モーター2の各々に固定される矩形板状の部材(土台板,base plate)である。ベースプレート5は、熱抵抗の低い素材で形成される。コンデンサー6及び半導体モジュール7は、ベースプレート5に対して取り付けられる。図1に示す例では、コンデンサー6がベースプレート5の下面側に固定されるとともに、半導体モジュール7がベースプレート5の上面側に固定されている。
コンデンサー6は、モーター1,2に供給される電力を平滑化するための電子部品である。インバーター4が電流制御型のインバーターである場合、コンデンサー6は、例えばインバーター4で変換された交流電力の給電ラインに介装される。コンデンサー6が介装された回路で三相交流の給電ラインの各相を連結することで、それぞれのコンデンサー6が一種のフィルターとして機能し、電流が安定する。インバーター4が電圧制御型のインバーターである場合には、直流電力の入力側にコンデンサー6を並列に介装させることで、電圧が安定する。
半導体モジュール7は、基板(電子回路用基板,substrate)上に複数のスイッチング素子やダイオードなどを含む三相ブリッジ回路を形成してなるパワーモジュールである。各スイッチング素子の接続状態を断続的に切り替えることで、三相の交流電力が生成される。スイッチング素子には、サイリスタ,IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor),パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)などの半導体素子が用いられる。
ベースプレート5の上面には上面カバー14が取り付けられ、下面には下面カバー15が取り付けられる。半導体モジュール7は、ベースプレート5と上面カバー14とで囲まれる空間内に配置される。また、コンデンサー6は、ベースプレート5と下面カバー15とで囲まれる空間内に配置される。これらの上面カバー14,下面カバー15は、熱抵抗の低い素材で形成される。
図3に示すように、上面カバー14は、内部に半導体モジュール7を収容しうる大きさの容器状に形成される。また、下面カバー15は、内部にコンデンサー6を収容しうる大きさの容器状に形成される。下面カバー15の壁体内部には、コンデンサー6を冷却するための冷媒が流通するカバー冷却通路16が形成される。同様に、ベースプレート5の内部には、冷媒が流通するプレート冷却通路17が形成される。これらの冷却通路16,17は連通状態とされる。カバー冷却通路16は、コンデンサー6の左右側方において前後方向に延設されるとともに、プレート冷却通路17に向かって上下方向に延設される。また、プレート冷却通路17は、上面視で半導体モジュール7と重なる大きさの平面状に形成される。
インバーター4は、左モーター1と右モーター2との間に橋架された状態で固定される。例えば図2,図3に示すように、インバーター4は、車両の幅方向左端部を左モーター1の上に載置し、かつ、右端部を右モーター2の上に載置した姿勢で取り付けられる。インバーター4は、左右のモーター1,2間に橋渡しされた状態となる。ベースプレート5でモーター1,2を固定することで、モーター1,2の制振性や静粛性が向上する。
インバーター4の一部は、左モーター1と右モーター2とギアボックス3とで囲まれた凹部の内側において、少なくともギアボックス3に対して所定の間隔をあけて配置される。好ましくは、モーター1,2との固定箇所以外の部分に対しても間隔をあけて配置される。これにより、インバーター4は、ギアボックス3の上方に浮いた状態となる。ギアボックス3とインバーター4とに挟まれた空間には、車両の走行時に走行風が通過しうる。したがって、モーター1,2,ギアボックス3,インバーター4が空冷されやすくなり、駆動装置10の冷却性能が向上する。
図4(A)は、左モーター1のモーターカバー12及び左導電部材33を取り外した駆動装置10の左側面図である。同様に、図4(B)は右モーター2のモーターカバー12及び右導電部材34を取り外した駆動装置10の右側面図である。左モーター1の左側面視において、左モーター1の回転軸Cから前後方向に離隔した位置には、左端子部8が設けられる。また、右モーター2の右側面視において、右モーター2の回転軸Cから前後方向に離隔した位置には、右端子部9が設けられる。左端子部8は、左モーター1の左側面から半径方向外側に向かって突設され、右端子部9は、右モーター2の右側面から半径方向外側に向かって突設される。なお、これらを区別する必要がない場合には、単に端子部8,9とも呼ぶ。
端子部8,9には、ステーター23のコイルに繋がる三つのモーター端子31,32(U相,V相,W相)が設けられる。左モーター1のモーター端子31には左導電部材33が接続され、右モーター2のモーター端子32には右導電部材34が接続される。左端子部8及び右端子部9をモーター1,2の回転軸Cから前後方向に離隔した位置に配置することで、モーター1,2の直上方からずれた位置に左導電部材33及び右導電部材34が配置され、駆動装置10の高さ寸法が小さくなる。
図1,図4(A), (B)に示すように、左端子部8は、上下方向に延在する所定の鉛直軸Vについて右端子部9と二回対称の回転対称位置に配置される。所定の鉛直軸Vは、例えばインバーター4の上面視における中心を通る軸である。側面視における鉛直軸Vは、モーター1,2の回転軸Cを通る鉛直線である。鉛直軸Vのまわりに左端子部8を水平面内で180度回転させた形状が、右端子部9に一致する。このように、左端子部8及び右端子部9を回転対称位置に配置することで、左端子部8と右端子部9とがほぼ同一形状になる。なお、左端子部8と右端子部9とをほぼ同一形状にする上で、鉛直軸Vの位置は不問であり、インバーター4の上面視における中心でなくてもよい。
左端子部8の位置は、左モーター1の左側面視において、左端子部8(三つのモーター端子31の側面視における図心)と左モーター1の回転軸Cとを結ぶ第一線分が左モーター1の回転軸Cを通る鉛直線に対し所定角度θ1をなす位置に設定される。所定角度θ1(ずれ角度)の範囲は、0<θ1<πである。また、右端子部9の位置も、右モーター2の右側面視において、右端子部9(三つのモーター端子32の側面視における図心)と右モーター2の回転軸Cとを結ぶ第二線分が右モーター2の回転軸Cを通る鉛直線に対し所定角度θ1をなす位置に設定される。つまり、左モーター1の回転軸Cに対する左端子部8のずれ角度θ1は、右モーター2の回転軸Cに対する右端子部9のずれ角度θ1と同一角度とされる。このような構造により、左端子部8からインバーター4までの距離と右端子部9からインバーター4までの距離とがほぼ同一となる。
図1に示すように、インバーター4に内蔵される半導体モジュール7には、前方モジュール41と後方モジュール42とが含まれる。前方モジュール41は、右モーター2に供給される交流電力を生成し、後方モジュール42は、左モーター1に供給される交流電力を生成する。これらのモジュール41,42は個別に動作しうる半導体モジュール7であり、ベースプレート5の上面で前後に対をなすように並置される。後方モジュール42は、前方モジュール41とほぼ同一形状であり、上下方向に延在する所定の鉛直軸Vについて前方モジュール41と二回対称の回転対称位置に配置される。
また、前方モジュール41よりも前方側には前方バスバー43が設けられ、後方モジュール42よりも後方側には後方バスバー44が設けられる。これらの前方バスバー43及び後方バスバー44は、金属製の導体の周囲を絶縁性樹脂で固めた導電部材である。前方バスバー43は、インバーター4の前端辺に沿って左右方向に延設される。一方、後方バスバー44は、インバーター4の後端辺に沿って左右方向に延設される。また、後方バスバー44は、前方バスバー43とほぼ同一形状であり、上下方向に延在する所定の鉛直軸Vについて前方バスバー43と二回対称の回転対称位置に配置される。
後方バスバー44には左導電部材33が接続され、前方バスバー43には右導電部材34が接続される。左導電部材33及び右導電部材34は、金属製の導体の周囲を絶縁性樹脂で固めた導電部材である。左導電部材33は、右導電部材34とほぼ同一形状であり、上下方向に延在する所定の鉛直軸Vについて右導電部材34と二回対称の回転対称位置に配置される。
図5に示すように、導電部材33,34は、第一導電部35と第二導電部36とを有する。第一導電部35は、モーター1,2の端子部8,9に接続される部位であり、端子部8,9から車両の幅方向内側に向かって延設される。第一導電部35は、その端部をモーター端子31,32に接触させた状態で、車両の幅方向外側から締結具で締結固定される。また、第二導電部36は、第一導電部35とバスバー43,44との間を縦方向に接続する部位である。第二導電部36は、第一導電部35からインバーター4に向かって上方向に延設される。第二導電部36は、その頂面をバスバー43,44に内蔵された導体の底面に接触させた状態で、上方から締結具で締結固定される。これらの導電部35,36の各々には、端子部8,9に含まれる三つのモーター端子31,32に対応する三本の導体が内蔵される。三本の導体は、互いに離隔した状態で絶縁性樹脂によって固定される。
図1,図4に示すように、インバーター4の下面には下開口部45が形成され、インバーター4の上面には上開口部46が形成される。下開口部45は、下方から第二導電部36が挿入される穴であり、ベースプレート5の二箇所に穿孔される。インバーター4の上面視における二つの下開口部45は、所定の鉛直軸Vを挟んで対角に配置される。上開口部46は、下開口部45の直上方に位置する穴であり、上面カバー14の二箇所に穿孔される。上開口部46には、蓋47が取り外し可能に取り付けられる。第二導電部36及びバスバー43,44は、下開口部45と上開口部46とに挟まれた空間内で接続される。
図1に示すように、左モーター1と下開口部45との間には左カバー37が介装され、右モーター2と下開口部45との間には右カバー38が介装される。左カバー37は、左導電部材33の周囲を覆うように設けられ、左モーター1のモーターハウジング11とインバーター4のベースプレート5との双方に対して固定される。同様に、右カバー38は、右導電部材34の周囲を覆うように設けられ、右モーター2のモーターハウジング11とインバーター4のベースプレート5との双方に対して固定される。左カバー37は、右カバー38とほぼ同一形状であり、上下方向に延在する所定の鉛直軸Vについて右カバー38と二回対称の回転対称位置に配置される。
[2.作用・効果]
(1)上述の実施形態では、左端子部8が左モーター1の回転軸Cから前後方向に離隔した位置に配置されるとともに、右端子部9も右モーター2の回転軸Cから前後方向に離隔した位置に配置される。このような構造により、各モーター1,2の直上方からずれた位置に左導電部材33及び右導電部材34を配置することが可能となり、駆動装置10の高さ寸法を小さくすることができる。また、車両のフロア下に駆動装置10を搭載する際に、フロアとの空き寸法や路面までの距離を確保しやすくすることができる。したがって、コンパクトかつ簡素な構成で車両搭載性を改善することができる。
(2)上述の実施形態では、所定の鉛直軸Vについて左端子部8が右端子部9と二回対称の回転対称位置に配置される。このようなレイアウトにより、左端子部8と右端子部9とをほぼ同一形状にすることができ、モーター端子31,32を共通化することができる。また、同一仕様(同一形状)のモーター1,2を用いることができ、駆動装置10の製造コストを削減することができる。さらに、左右のモーター1,2を確認しながら部品を組み付けるような手間が減少することから、製品の組付け性を改善することができる。
(3)左端子部8の位置は、左モーター1の左側面視において、左端子部8と左モーター1の回転軸Cとを結ぶ第一線分が左モーター1の回転軸Cを通る鉛直線に対し所定角度θ1をなす位置に設定される。これに対応するように、右端子部9の位置も、右モーター2の右側面視において、右端子部9と右モーター2の回転軸Cとを結ぶ第二線分が右モーター2の回転軸Cを通る鉛直線に対し所定角度θ1をなす位置に設定される。これにより、左端子部8からインバーター4までの距離と右端子部9からインバーター4までの距離とをほぼ同一にすることができ、導電部材33,34を共通化することができる。また、同一仕様(同一形状)の導電部材33,34を用いることができ、簡素な構成で製品の組付け性を改善することができる。また、駆動装置10の製造コストを削減することができる。
(4)上述の実施形態では、図5に示すように、導電部材33,34に第一導電部35と第二導電部36とが設けられる。第一導電部35は、車両の幅方向内側に向かって延設される部位であり、第二導電部36は、上下方向に延設される部位である。このような構造により、モーターハウジング11の外表面に沿って(できるだけモーターハウジング11の外表面から離れないように)導電部材33,34を配索することが容易となる。したがって、モーター1,2のサイズをコンパクトにしつつ、短い距離でモーター1,2とインバーター4との間を接続することができる。
(5)上述の実施形態では、下開口部45と上開口部46とがインバーター4に設けられ、下開口部45の下方から導電部材33,34(第二導電部36)が挿通される。このような構造により、インバーター4の内部でバスバー43,44と導電部材33,34(第二導電部36)とを接続する際に、上開口部46を開放したまま上から工具や締結具を差し込んで作業(上止め)をすることができる。したがって、簡素な構成で製品の組付け性を改善することができる。
(6)上述の実施形態では、図1に示すように、モーター1,2とインバーター4との間を接続する導電部材33,34の周囲が左カバー37及び右カバー38によって被覆される。このような構造により、路面からの飛び石や路面上の異物などによる導電部材33,34の汚損,破損を未然に防ぐことができ、導電部材33,34の保護性を高めることができる。したがって、製品の信頼性を高めることができる。
(7)上述の実施形態では、インバーター4の内部に一対の半導体モジュール7(前方モジュール41,後方モジュール42)が設けられる。これらのモジュール41,42は、上面視で互いに回転対称となる位置に配置される。このようなレイアウトにより、各々のモジュール41,42からモーター1,2までの接続距離をほぼ同一にすることができ、導電部材33,34の内部抵抗のばらつきを抑えることができる。したがって、モーター1,2の作動状態を安定させることができ、製品の信頼性を高めることができる。
(8)上述の実施形態では、インバーター4の前端辺と後端辺とにバスバー43,44が設けられる。前方バスバー43は前方モジュール41よりも前方側に配置され、後方バスバー44は後方モジュール42よりも後方側に配置される。このように、インバーター4の前端辺,後端辺に沿ってバスバー43,44を延設することで、インバーター4の内部構造を簡素化することができる。また、バスバー43,44からの放熱性を高めることができ、駆動装置10の冷却効率を向上させることができる。
[3.変形例]
上記の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、本実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
上述の実施形態では、左右のモーター軸25が歯車機構26に接続された駆動装置10を例示したが、左輪の動力伝達経路と右輪の動力伝達経路とを分離してもよい。あるいは、ギアボックス3を省略することも可能である。少なくとも、一対のモーター1,2とインバーター4とを含む車両の駆動装置において、モーター1,2の端子部8,9を各モーター1,2の回転軸Cから前後方向に離隔させることで、上述の実施形態と同様の効果を奏するものとなる。
なお、上述の実施形態では、左モーター1の回転軸Cと右モーター2の回転軸Cとが同軸である駆動装置10を例示したが、これらの回転軸Cを同軸とする必要はない。少なくとも、左端子部8が左モーター1の回転軸Cから前後方向に離隔した位置に設けられ、かつ、右端子部9が右モーター2の回転軸Cから前後方向に離隔した位置に設けられていれば、上述の実施形態と同様の効果を奏するものとなる。
1 左モーター
2 右モーター
3 ギアボックス
4 インバーター
5 ベースプレート
6 コンデンサー
7 半導体モジュール
8 左端子部
9 右端子部
10 駆動装置
11 モーターハウジング
12 モーターカバー
13 ギアボックスハウジング
14 上面カバー
15 下面カバー
33 左導電部材
34 右導電部材
35 第一導電部
36 第二導電部
37 左カバー
38 右カバー
41 前方モジュール
42 後方モジュール
43 前方バスバー
44 後方バスバー
45 下開口部
46 上開口部
47 蓋
C 回転軸
V 鉛直軸

Claims (7)

  1. 車両の左右輪を駆動する左モーター及び右モーターと、前記左モーター及び前記右モーターの間に配置され前記左モーター及び前記右モーターの両方に固定されるとともに直流電力を交流電力に変換して前記左モーター及び前記右モーターに給電するインバーターとを含む車両の駆動装置において、
    前記左モーターの左側面視において、前記左モーターの回転軸から前後方向に離隔した位置に設けられ、前記左モーターの回転軸を中心として半径方向外側に向かって延びた姿勢で配置されるとともに、前記インバーターに繋がる左導電部材が接続される左端子部と、
    前記右モーターの右側面視において、前記右モーターの回転軸から前後方向に離隔した位置に設けられ、前記右モーターの回転軸を中心として半径方向外側に向かって延びた姿勢で配置されるとともに、前記インバーターに繋がる右導電部材が接続される右端子部と、
    を備え
    前記左導電部材及び前記右導電部材の各々が、
    前記左端子部または前記右端子部に接続され、前記車両の幅方向内側に向かって延設される第一導電部と、
    前記第一導電部に接続され、前記第一導電部から前記インバーターに向かって上下方向に延設される第二導電部とを有する
    ことを特徴とする、車両の駆動装置。
  2. 前記左端子部が、所定の鉛直軸について前記右端子部と二回対称の回転対称位置に配置される
    ことを特徴とする、請求項1記載の車両の駆動装置。
  3. 前記左モーターの左側面視において、前記左端子部と前記左モーターの回転軸とを結ぶ第一線分が前記左モーターの回転軸を通る鉛直線に対し所定角度をなす位置に前記左端子部が配置されるとともに、
    前記右モーターの右側面視において、前記右端子部と前記右モーターの回転軸とを結ぶ第二線分が前記右モーターの回転軸を通る鉛直線に対し前記第一線分と同じ前記所定角度をなす位置に前記右端子部が配置される
    ことを特徴とする、請求項1または2記載の車両の駆動装置。
  4. 前記インバーターが、
    前記第二導電部が下方から挿通される下開口部と、
    前記下開口部の直上方に配置された上開口部とを有する
    ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両の駆動装置。
  5. 前記左導電部材の周囲を覆って前記左モーター及び前記インバーターに固定される左カバーと、
    前記右導電部材の周囲を覆って前記右モーター及び前記インバーターに固定される右カバーとを備える
    ことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の車両の駆動装置。
  6. 前記インバーターが、個別に動作し前後に並置される一対の半導体モジュールを有し、
    前記一対の半導体モジュールが、上面視で互いに回転対称となる位置に配置される
    ことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の車両の駆動装置。
  7. 前記インバーターが、前記インバーターの前端辺と後端辺とに沿って左右方向に延設される一対のバスバーを有する
    ことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の車両の駆動装置。
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