JP7430605B2 - 防護工及び防護工を構築する方法 - Google Patents
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Description
土砂災害発生後の2次災害を防止するため、緊急(応急)対策工として、コンクリート基礎を使用した土砂柵、コンクリートブロックによる堰堤、大型土嚢による堰堤が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、コンクリートブロックによる堰堤は、特殊な形状をしたコンクリートブロックを縦横に連続して設置していくため、形状をかみ合わせるのに技能が必要であり、施工に時間がかかる。
また、大型土嚢による対策は、緊急時に土砂を土嚢内部に入れる作業が必要であり、施工に時間がかかる。また、土石流・流木により土嚢が破損する恐れがある。
よって、上記の方法よりも早急に施工することができる緊急対策工が求められている。
図1に示すように、防護工1は、例えば、土砂災害発生後の被災地において復旧活動を行うために緊急に構築された緊急対策工である。防護工1が構築される場所等は限定されないが、例えば、防護工1は、図1に示すような狭隘な山間部の災害発生地Xに設置されている。つまり、防護工1は、一度土石流が発生し、再び土石流の発生が予想される場所に、予想される土石流の流れに対向するように構築されている。
なお、説明の便宜上、予想される土石流の流れ方向を「F」とし、上流側を「F1」、下流側を「F2」とする。また、土石流の流れ方向Fに交差する方向を防護工1の幅方向として「W」とする。
上流基礎11及び下流基礎13は、それぞれトラック(好ましくは、4tトラック)の荷台に積載できる程度の大きさ(幅、奥行、高さ)に形成されており、使用時には比較的小さな重機で簡単に施工現場に設置することができると共に、災害発生前は備蓄倉庫に広大な場所を取らずに保管しておくことができる。
上流基礎11と下流基礎13との間に形成された空間S内には、洗掘防止のため、現場発生土とセメントを混合して作成されたソイルセメント15が打設されている。
ベースプレート30の各角部近傍には、孔が形成されており、この孔にアンカー部材35を挿通することにより、ベースプレート30は基礎10に取り付けられる。
上流柱部材21及び下流柱部材23は、ベースプレート30の上面に溶接によって接合されている。上流柱部材21及び下流柱部材23は、H形鋼を形成するフランジ22aが上流側F1及び下流側F2に面するように設けられている。上流側F1に面する上流柱部材21のフランジ22aには、後述する保持具40が上流柱部材21の延在方向に沿って所定の間隔をあけて取り付けられている。
図6に示すように、保持具40は、例えば、鋼材により形成されている。保持具40は、底板41と、保持板42と、を有する。底板41は、上流柱部材21のフランジ22aに固定される。底板41は、フランジ22aからはみ出さない程度に形成されており、締結具によって上流柱部材21に固定されている。
保持板42は、底板41に上流側F1に向かって立設されており、梁部材25を保持する。保持板42は、底板41の表面に溶接等によって接合された鋼板である。保持板42には、梁部材25を挿通する円形状の孔43が形成されている。この孔43に梁部材25を挿通し、孔43の位置で梁部材25を保持板42に溶接することにより、梁部材25は上流柱部材21に保持される。
なお、保持具40に対する梁部材25の固定は、溶接による固定に限定されず、例えば、ボルト等を用いてもよい。
次に、防護工1を構築する方法について説明する。
図7、図8に示すように、防護工1を構築する際には、災害発生地Xの近くにある備蓄倉庫からコンクリートブロックの基礎10を重機及びトラックにより搬出し、災害発生地Xまで運搬する。
この運搬作業に並行して、又は予め災害発生した災害発生地Xを重機により整地する。整地した施工位置となる地盤Gに、基礎10を載置していく(ステップ(1))。予想される土石流の上流側F1に載置される上流基礎11と下流側F2に載置される下流基礎13は、上流柱部材21が上流基礎11上に位置し、下流柱部材23が下流基礎13上に位置するように、土石流の流れ方向Fに沿って少し間隔をあけて配置する。一方、上流基礎11同士、下流基礎13同士は、幅方向Wに沿ってほぼ隙間なく並べて配置する。上流基礎11及び下流基礎13を載置した後、上流基礎11と下流基礎13との間に形成された空間S内にソイルセメント15を打設する。
次に、捕捉体20を載置された基礎10に連結する(ステップ(2))。捕捉体20は、工場で予め製造され被災地に搬送されてくる。捕捉体20をクレーン等により吊り上げて、上流柱部材21を上流基礎11にアンカー部材35を用いて取り付けると共に、下流柱部材23を下流基礎13にアンカー部材35を用いて取り付ける。
上流柱部材21及び下流柱部材23を上流基礎11及び下流基礎13に取り付ける際には、ベースプレート30に形成された孔に、コンクリートブロックから形成された上流基礎11及び下流基礎13に予め埋め込んだアンカー部材35を挿通し、固定する。
次に、梁部材25を上流柱部材21に連結する。
以上により、防護工1が構築される。
また、防護工1の全ての構成要素を備蓄できるので、施工時の準備期間を大幅に短縮できる。
また、コンクリートブロックを基礎10として用いているので、施工現場でコンクリートを打設して養生する工程は不要となり、基礎10を載置した後、すぐに捕捉体20を基礎10に取り付けることができる。
また、基礎10の載置と、捕捉体20の組み立てを互いの工程の進捗に関係なく行うことができるので、工期の短縮も可能である。
また、基礎10と捕捉体20の接続は、後施工のアンカー部材35で行うため、後から基礎10と捕捉体20を容易に切り離すことができ、撤去が容易となり、他の場所への転用もしやすくなる。
また、基礎10を上流基礎11と下流基礎13とに分けることで、コンクリートブロックのサイズを小さくすることができ、現場や工場で製作したものを小型のトラックで備蓄場所まで運搬できるようになる。
また、上流基礎11と下流基礎13との間にソイルセメント15を打設することで、上流基礎11と下流基礎13との間の地盤の洗掘を防止することができる。このとき、上流基礎11と下流基礎13は、ソイルセメント15を打設する際の型枠として機能する。なお、保護工1が比較的小型の場合には、上流基礎11と下流基礎13を一つのコンクリートブロックで形成すればよいので、ソイルセメントの打設は不要となる。
また、捕捉体20において土石流・流木を捕捉する捕捉部は、鋼管から形成された梁部材25をH形鋼から形成された上流柱部材21にボルトで連結することにより構築される。ここで、捕捉体20は、土石流・流木のエネルギーを捕捉部の鋼管の凹みと撓みで吸収し、その反力を下流柱部材23で支える構造のため、防護工1全体は大きな変形を伴わないので、土石流・流木捕捉後に損傷のあった梁部材25のみを簡単に取り替えることができる。
また、土石流・流木を捕捉後、捕捉した除石・除木をする場合、梁部材25の上部より捕捉部の梁部材25を順次取り外していくことにより除石・除木作業をスムーズに行うことができる。なお、梁部材25の取り外しは、高さ方向においていずれの梁部材25から始めてもよい。
また、防護工1は、上流柱部材21に対して下流柱部材23を斜めに連結してλ型に構成されており、現地で想定される土石流の荷重に応じて最適な形状とすることができる。つまり、防護工1をλ型に構成することにより、土石流の水平荷重を上流柱部材21に対して平行な成分と、直角な成分とに分解することができる。
次に、防護工の変形例について説明する。なお、以下の説明においては上記実施の形態と異なる部分について説明し、同じ部分については同じ名称又は符号を用いてその説明を省略する。
図9に示すように、防護工1Aは、基礎10Aと、捕捉体20Aと、を備える。
基礎10Aは、例えば、直方体状に形成されたコンクリートブロックである。基礎10Aは、上記実施の形態と異なり、柱部材は上流側と下流側に配置されておらず、幅方向Wに並んで配置されていることから、上流基礎11と下流基礎13とに分けられておらず、幅方向Wに2つの基礎10Aが設けられている。図9においては、基礎10A間の隙間はほとんどないが、間隔をあけて2つの基礎10Aを配置する場合には基礎10Aの間の空間にソイルセメントを打設しておくことが好ましい。
もちろん、捕捉体20の大きさ等によっては、1つの捕捉体20Aに対して1つの基礎10Aを構築してもよい。
捕捉体20Aは、2本の柱部材21Aと、7本の梁部材25と、を有する。柱部材21Aは、基礎10Aの上面から鉛直方向に沿って直線状に延びており、2本の柱部材21Aは互いに平行となるように配置されている。
ベースプレート30Aの各角部近傍には、孔が形成されており、この孔にアンカー部材35Aを挿通することにより、ベースプレート30Aは基礎10Aに取り付けられる。
柱部材21Aは、ベースプレート30Aの上面に溶接によって接合されている。柱部材21Aは、H形鋼を形成するフランジ22Aaが上流側F1及び下流側F2に面するように設けられている。上流側F1に面する柱部材21Aのフランジ22Aaには、保持具40が柱部材21Aの延在方向に沿って所定の間隔をあけて取り付けられている。
梁部材25は、柱部材21Aにおいて上流側F1に面するフランジ22Aaに保持具40によって取り付けられている。
なお、防護工1Aは、2本の柱部材21Aを備えるが、柱部材21A及び梁部材25の数は、構築する防護工1Aの大きさによって決まり、特定の数に限定されない。
防護工1Aの構築方法は、防護工1とほぼ同じである。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。
例えば、上記の実施の形態において梁部材25は、断面視円形状の鋼管により形成されていたがこれに限定されない。
図11に示すように、断面視四角形状の鋼管から形成された梁部材125としてもよい。梁部材125を保持する保持具140に形成された孔は、梁部材125の断面形状に対応した形状を有する。つまり、孔は、四角形状に形成されている。
図12に示すように、H形鋼から形成された梁部材225としてもよい。梁部材225は、下流側F2のフランジ225aにおいて上流柱部材21の上流側F1のフランジ22aにボルト等により直接取り付けられている。
また、基礎10は、防護工1の大きさに応じて一つのコンクリートブロックで形成してもよいし、上記のように複数のコンクリートブロックで形成してもよい。
また、基礎10の幅方向Wにおいては、隣接する基礎10同士がほぼ隙間なく並べられているが、間隔をあけて配置し、基礎間にできた空間にソイルセメントを打設するようにしてもよい。この場合も基礎がソイルセメント打設時の型枠として機能する。
また、緊急対策工として防護工1を設置した後、この防護工1を恒久対策工として用いる場合には、図14に示すように、基礎10をコンクリート(又はソイルセメント)17で根巻きして基礎10を強固にすればよい。新たに恒久対策工を構築する場合に比べて、施工期間、コストを大幅に減らすことができる。なお、防護工1が十分な大きさ、強度を有している場合には、防護工1を緊急対策工としても恒久対策工としても利用することができる。
また、基礎10にナットを埋設しておき、捕捉体20側からベースプレート30を介してボルトを挿通させて当該ナットに螺合させてもよい。逆に、基礎10に先端部(螺合部)が突出するようにボルトを埋設しておき、ベースプレート30の孔に当該ボルトを挿通させて、捕捉体20側からナットに螺合させてもよい。
10 基礎
11 上流基礎
13 下流基礎
15 ソイルセメント
20 捕捉体
21 上流柱部材
23 下流柱部材
25 梁部材
Claims (7)
- 予想される土石流の流れに対向するように構築される防護工であって、
施工位置に載置されるコンクリートブロックから構成される基礎と、
前記基礎に立設するように連結され、前記土石流中の物体を捕捉する捕捉体と、を備え、
前記捕捉体は、前記基礎に立設された柱部材と、前記柱部材における前記土石流の流れ方向上流側で前記柱部材間に架け渡された梁部材と、を有し、
前記柱部材は、一端が前記基礎に連結され、前記梁部材が架け渡される上流柱部材と、一端が前記基礎に連結され、他端が前記上流柱部材に連結される下流柱部材と、を有し、
前記基礎は、前記上流柱部材が連結される上流基礎と、前記下流柱部材が連結される下流基礎と、を有し、
前記上流基礎と前記下流基礎との間に形成された空間内には洗掘防止処理が施されていることを特徴とする防護工。 - 前記上流柱部材は、上方に向かうにつれて下流側に向かって斜めに延びており、
前記下流柱部材は、上方に向かうにつれて前記上流柱部材に向かって斜めに延びていることを特徴とする請求項1に記載の防護工。 - 前記洗掘防止処理は、前記空間内にソイルセメントが打設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の防護工。
- 前記梁部材は、前記柱部材に対して着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の防護工。
- 前記柱部材は、H形鋼から形成されており、
前記梁部材は、鋼管から形成されていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載の防護工。 - 請求項1から5までのいずれか一項に記載の防護工を構築する方法であって、
施工位置に前記土石流の流れ方向に沿って所定の間隔をあけて上流基礎と下流基礎を載置するステップ(1)と、
前記上流基礎に前記捕捉体の上流柱部材を連結し、前記下流基礎に前記捕捉体の下流柱部材を連結するステップ(2)と、
前記上流基礎と前記下流基礎との間に形成された空間内に洗掘防止処理を施すステップ(3)と、
を有することを特徴とする防護工を構築する方法。 - 前記洗掘防止処理は、前記空間内にソイルセメントを打設することを特徴とする請求項6に記載の防護工を構築する方法。
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