JP7429839B2 - 車両用制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両用制御装置に関する。
従来、電気自動車において、モータ冷却オイルの排熱を過冷却タイプの潜熱蓄熱材に蓄熱させ、その蓄熱エネルギを冷機始動時(冷間時)の変速機オイルの温度上昇に活用して暖機させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、電気自動車において、蓄電池の熱を蓄熱しておき、低温での始動時にこの蓄熱エネルギを変速機オイルの温度上昇に活用して暖機させる技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2011-27246号公報 特開2011-58586号公報
しかしながら、上述した特許文献1及び特許文献2に記載の技術において、冷機始動時から潜熱蓄熱材の潜熱をオイルの温度上昇に利用する際、放熱対象に与えられるエネルギは、蓄熱した潜熱エネルギから潜熱蓄熱材自体を温めるエネルギを差し引いたエネルギとなる。このため、実際に温度上昇に使用できる熱量は、蓄熱エネルギから目減りする。すなわち、潜熱蓄熱材自体の昇温に蓄熱エネルギが奪われてしまい、放熱対象に対して十分にエネルギを供給することができない事態が発生し得る。この結果、モータ等の駆動源を十分に暖機させることができず、機関効率が低下するという問題がある。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、潜熱蓄熱材の蓄熱エネルギを有効に活用して機関効率の低下を抑制することができる車両用制御装置を提供することを目的の一つとする。
本発明の車両用制御装置の一態様は、車両の走行に要する駆動力を発生する駆動源と、前記駆動源を潤滑する作動流体と、前記作動流体と熱交換可能に配置され、液相の過冷却状態から固相への相転移を生じ得る潜熱蓄熱材と、前記潜熱蓄熱材の放熱タイミングを制御する制御部と、を有する車両用制御装置であって、前記制御部は、前記駆動源が駆動を停止しており、前記作動流体が所定温度以下に低下した時に前記潜熱蓄熱材の放熱を開始し、前記潜熱蓄熱材の融点は、前記駆動源が暖機状態であると判定される暖機判定温度以上、且つ、前記作動流体に対して定められる異常判定温度以下に設定され、前記異常判定温度は、前記作動流体の温度が上昇しても、前記作動流体の粘度が一定値に維持される前記作動流体の温度に設定することを特徴とする。
本発明によれば、潜熱蓄熱材の蓄熱エネルギを有効に活用して機関効率の低下を抑制することができる。
第1の実施の形態に係る車両用制御装置が適用される車両を含む遠隔制御システムのシステム構成図である。 車両用制御装置で制御される車両の駆動源の冷却構造を示す模式図である。 遠隔制御システムにて車両を遠隔操作する際の動作を説明するためのシーケンス図である。 車両用制御装置で実行される蓄熱材の放熱制御を説明するためのフロー図である。 車両用制御装置で放熱制御された場合の冷却水の温度変化の説明図である。 車両用制御装置で放熱制御された場合の冷却水の温度変化の説明図である。 第2の実施の形態に係る車両用制御装置で実行される蓄熱材の放熱制御を説明するためのフロー図である。 第3の実施の形態に係る車両用制御装置で実行される蓄熱材の放熱制御を説明するためのフロー図である。 第4の実施の形態に係る車両用制御装置で制御される車両の駆動源の潤滑構造を示す模式図である。 車両用制御装置に適用される作動流体の油温と粘度の関係の説明図である。 第5の実施の形態に係る制御装置で制御される車両の変速機の潤滑構造を示す模式図である。
以下、本発明の各実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態に係る車両用制御装置(以下、「制御装置」という)においては、車両の所定位置に配置された潜熱蓄熱材(以下、「蓄熱材」という)の放熱タイミングを制御し、冷却水や潤滑オイル等の作動流体を介して駆動源(駆動モータ等)を保温することで、機関効率の低下を抑制するものである。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る制御装置が適用される車両1を含む遠隔制御システム100のシステム構成図である。なお、図1においては、本実施の形態に係る制御装置が、車両の予約空調を遠隔制御する遠隔制御システム100と連携して動作する場合について示している。具体的には、車両の予約空調で指定される空調開始時間に基づいて蓄熱材の放熱タイミングを制御する。しかしながら、本発明に係る制御装置は、遠隔制御システム100と連携して動作する場合に限定されず、適宜変更が可能である。例えば、遠隔制御システムからは独立して蓄熱材の放熱タイミングを制御する制御装置としてもよい。
図1に示す遠隔制御システム100は、本実施の形態に係る制御装置が組み込まれた車両1と、車両1に搭載されたエアコンシステムを遠隔操作する制御サーバ2と、車両1のユーザが所有するユーザ端末3とを含んで構成される。遠隔制御システム100では、これらの車両1、制御サーバ2及びユーザ端末3をインターネット等の通信回線網4を介して互いに通信可能とし、ユーザ端末3のユーザに各種サービスを提供するように構成されている。
車両1には、車両1の状態を制御するための複数のECUが設けられている。例えば、車両1には、オートエアコン(エアコン)11aを制御するための空気調節ECU(以下、「空調ECU」という)11と、駆動モータ(モータ)14を制御するための駆動制御ECU12とが設けられている。これらの空調ECU11及び駆動制御ECU12は、CAN(Controller Area Network)13に接続され、このCAN13を介して各種信号を送受信できるように構成されている。
空調ECU11は、マイコンを主要部として構成される。空調ECU11には、エアコン11aと、車室内の温度を検出する車室内温度センサ11bと、外気温度を検出する外気温度センサ11cとが接続されている。空調ECU11は、これらの車室内温度センサ11b及び外気温度センサ11cの検出温度と、ユーザから設定された設定温度とに基づいてエアコン11aにより車室内の空調制御を行う。空調ECU11は、ユーザ端末3からの空調指示を受け付け可能な空調制御部の一例を構成する。空調ECU11は、制御サーバ2を介してユーザ端末3からの空調指示を受け付ける。
駆動制御ECU12は、マイコンを主要部として構成される。駆動制御ECU12には、モータ14の周囲を循環する冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ14aと、モータ14の周囲の流路に冷却水を循環させるウォーターポンプ(以下、「ポンプ」という)14bとが接続されている。モータ14は、車両1の走行に要する駆動力を発生する駆動源の一例を構成する。モータ14の周囲の冷却水は、モータ14を冷却する作動流体の一例を構成するものである。
また、駆動制御ECU12には、蓄熱材15と、蓄熱材15の温度を検出する蓄熱材温度センサ15aと、蓄熱材15の放熱を開始させる放熱開始部材15bとが接続されている。例えば、放熱開始部材15bは、蓄熱材15内に収納され、外部からの刺激に応じて蓄熱材15の放熱を開始させる。蓄熱材15は、モータ14の冷却水(作動流体)と熱交換可能に配置され、液相の過冷却状態から固相への相転移を生じ得る蓄熱材の一例を構成する。駆動制御ECU12は、これらの冷却水温度センサ14a又は蓄熱材温度センサ15aの検出温度等に基づいて蓄熱材15の放熱を制御すると共に、ポンプ14bの駆動を制御する。駆動制御ECU12は、蓄熱材15の放熱タイミングを制御する制御部の一例を構成する。
CAN13には、主制御部16、外部通信部17、近距離通信部18及びタイマ19が接続されている。主制御部16は、CAN13を介して空調ECU11や駆動制御ECU12等とでデータ通信して制御情報を取得し、或いは、空調ECU11や駆動制御ECU12等に指令を出力する。外部通信部17は、通信回線網4を介して制御サーバ2と各種情報の送受信を行う。近距離通信部18は、ユーザ端末3と近距離無線通信を行う。本実施の形態において、近距離通信部18は、その通信方式として、Bluetooth(登録商標)を用いるが、Wi-Fiなどの他の通信方式を採用してもよい。タイマ19は、特定のタイミングからの経過時間を計時する。タイマ19は、後述する空調待機時間をカウントダウンする。
第1の実施の形態に係る制御装置は、車両1のモータ14と、モータ14の周囲を循環する冷却水(作動流体)と、蓄熱材15と、駆動制御ECU12とを含んで構成される。詳細について後述するように、制御装置においては、モータ14における暖機状態を維持する条件が成立した場合に、駆動制御ECU12によって蓄熱材15の放熱を開始する制御が実行される。
第1の実施の形態における車両1は、不図示のバッテリの電力で走行用モータを駆動する電気自動車(EV)、或いは、走行用モータと内燃機関とを備え、走行用モータの電源となるバッテリを外部充電可能なプラグイン式ハイブリッド自動車など、外部電源によりバッテリ充電可能なプラグイン式電動車両で構成される。しかしながら、本実施の形態に係る車両制御装置で制御される車両1は、走行用モータを備えず、内燃機関により走行する車両であってもよい。
制御サーバ2は、ユーザ端末3から送信される情報を利用して車両1の遠隔操作を行うと共に、ユーザ端末3に遠隔操作に伴う情報を提供する。制御サーバ2は、サーバ全体を制御する制御部21と、制御部21に接続された通信部22、記憶部23及び計時部24を含んで構成される。制御サーバ2の構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
制御部21は、作動開始時刻演算部211及び遠隔操作指令生成部212を有している。作動開始時刻演算部211は、空調の作動時刻を演算する。遠隔操作指令生成部212は、車両1に対する遠隔操作を実行するための指令(以下、適宜「遠隔操作指令」という)を生成する。
通信部22は、通信回線網4を介して車両1及びユーザ端末3と各種情報の送受信を行う。例えば、通信部22は、ユーザ端末3から車両1に対する遠隔操作に関する情報を受信する。また、通信部22は、車両1に対して遠隔操作指令を送信する。記憶部23は、通信部22を介して受信した車両1に関する情報や、車両1に対する遠隔操作に関する情報を記憶する。計時部24は、例えば、リアルタイムクロック回路で構成され、制御サーバ2が設置された場所における現在時刻を計時する。
ユーザ端末3は、例えば、スマートフォンや携帯電話などで構成される。ユーザ端末3は、端末全体を制御する制御部31と、制御部31に接続された外部通信部32、表示部33、記憶部34、入力部35及び近距離通信部36を含んで構成される。ユーザ端末3の構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。ユーザ端末3は、電話機能、メール機能、インターネットと接続する機能、各種のアプリケーションプログラムを実行する機能に加え、制御サーバ2と接続して各種の情報や指令を授受する機能を備えている。
外部通信部32は、通信回線網4を介して制御サーバ2と各種情報の送受信を行う。例えば、外部通信部32は、後述する空調予約情報を制御サーバ2に送信する一方、制御サーバ2から空調開始や空調完了などの通知を受信する。表示部33は、ユーザ端末3を制御するための各種情報を表示する。例えば、表示部33には、後述する空調予約情報入力画面が表示される。
記憶部34は、ユーザ端末3を制御するためのプログラムや、外部通信部32を介して受信した情報を記憶する。例えば、記憶部34には、後述する予約空調アプリケーションを実行するための情報や、これらのアプリケーションを介してユーザから指定された情報が記憶される。
入力部35は、ユーザ端末3のユーザからの指示の入力を受け付ける。例えば、入力部35は、タッチパネルで構成される。入力部35は、後述する空調予約情報の入力を受け付ける。近距離通信部36は、車両1と近距離無線通信を行う。本実施の形態において、近距離通信部36は、車両1の近距離通信部18と同様に、通信方式として、Bluetooth(登録商標)を用いるが、Wi-Fiなどの他の通信方式を採用してもよい。
図2は、本実施の形態に係る制御装置で制御される車両1のモータ14の冷却構造を示す模式図である。図2において、図1と共通の構成については、同一の符号を付与し、その説明を省略する。図2に示すように、モータ14の冷却構造においては、モータ14とラジエータ51との間で冷却水を循環させる循環流路52a、52bを有している。ラジエータ51で冷却された冷却水は、循環流路52bを介してモータ14周辺の流路に導入され、モータ14を冷却した後に循環流路52aを介して再びラジエータ51に導入される。
循環流路52aには、冷却水の流動方向に沿って、ポンプ14b、切替バルブ53及びサーモスタット54が配置されている。また、循環流路52aには、ポンプ14bの下流側とサーモスタット54の上流側とをバイパスするバイパス流路55が設けられている。蓄熱材15は、バイパス流路55上に配置されている。循環流路52bには、電気ヒータ56が配置されている。電気ヒータ56は、循環流路52bを流れる冷却水を加熱する。電気ヒータ56により温められた冷却水が循環することにより、モータ14の駆動に利用される潤滑剤等が温められる。切替バルブ53は、駆動制御ECU12により開閉状態が切り替えられる。切替バルブ53が閉状態に切り替えられると、冷却水は、蓄熱材15の周囲を通って循環流路52aを循環可能に構成される。蓄熱材15が放熱している場合には、冷却水が温められた状態で循環する。温められた冷却水が循環することにより、モータ14が保温される。
ポンプ14bの下流側とサーモスタット54の上流側との位置には、循環流路52aと循環流路52bとを連結する連結流路57が設けられている。連結流路57には、ヒータコア58が配置されている。ヒータコア58は、エアコン11aの空気を加温するための熱交換器を構成する。ヒータコア58は、モータ14により温められた冷却水と、図示しないファンにより送り込まれた空気との熱交換を行う。暖房時には、ファンにより送り込まれた空気がヒータコア58により加温され、吹出し口から車室内に供給される。
次に、このような構成を有する遠隔制御システム100にて車両1を遠隔操作する際の動作の一例について、図3を参照して説明する。図3は、遠隔制御システム100にて車両1を遠隔操作する際の動作を説明するためのシーケンス図である。図3においては、車両1のエアコンシステムを制御サーバ2で遠隔操作することで乗車前に空気調節(空調)を予約する際の動作について説明する。本明細書においては、乗車前における空調の予約を適宜「予約空調」とよぶ。なお、図3に示すシーケンスを実行する前に、車両1のモータ14は、駆動を停止しているものとする。
遠隔制御システム100にて車両1の予約空調を実行する場合、ユーザの指示の下、ユーザ端末3にて予約空調アプリケーションが起動される。ここで、予約空調アプリケーションとは、ユーザ端末3から車両1に対して予約空調を実行する際に情報入力等に利用されるアプリケーションである。例えば、予約空調アプリケーションは、通信回線網4上に接続された図示しないアプリケーションサーバからダウンロード可能に構成される。
予約空調アプリケーションが起動されると、表示部33に空調予約情報入力画面が表示される。例えば、空調予約情報入力画面は、予約空調のための情報として、出発予定時刻、空調設定温度(目標空調温度)及び空調実施時間(継続運転時間)が入力可能に構成される。なお、ユーザ端末3から予約空調のための情報(空調予約情報)として入力される内容は、これらに限定されない。エアコンシステムにおける空調の延長の可否(許否)を示す情報(延長可否情報)を入力可能としてもよい。
出発予定時刻等が入力された後、制御サーバ2への送信ボタンが選択されると、制御サーバ2に対して空調予約情報が送信される(ST301)。空調予約情報には、空調予約情報入力画面で指定された出発予定時刻等の情報が含まれる。なお、上述した延長可否情報が予約空調のための情報として指定される場合、この延長可否情報も空調予約情報に含まれる。
ユーザ端末3から空調予約情報を受信すると、制御サーバ2では、車両1に対する遠隔操作の指令を生成する処理(遠隔操作指令生成処理)が行われる(ST302)。この遠隔操作指令生成処理は、制御部21の作動開始時刻演算部211及び遠隔操作指令生成部212で行われる。遠隔操作指令生成処理では、空調予約情報で指定された出発予定時刻や空調設定温度等に基づいて、車両1に対する遠隔操作の指令(空調指令)の内容が生成される。
遠隔操作指令生成処理により遠隔操作の指令内容が生成された後、制御サーバ2から車両1に対して遠隔操作指令が出力される(ST303)。図3に示す例において、遠隔操作指令には、遠隔操作指令生成処理で生成された遠隔操作指令情報(空調指令情報)が含まれる。
制御サーバ2から遠隔操作指令を受信すると、車両1にて、エアコン11aの作動開始時刻を演算する処理(空調開始時刻演算処理)が行われる(ST304)。この空調開始時刻演算処理は、空調ECU11により行われる。空調開始時刻演算処理では、遠隔操作指示に含まれる出発予定時刻や空調設定温度等からエアコン11aの駆動を開始すべき時刻(以下、「空調開始時刻」という)が演算される。
空調開始時刻演算処理では、ST303における遠隔操作指令の受信時刻からの待機時間(空調待機時間)を算出することで、エアコン11aの駆動開始時刻を求める。この空調待機時間がタイマ19におけるタイマ値として設定される。タイマ値の設定を受けると、タイマ19は、タイマ値のカウントダウンを開始する。タイマ値が0になると、空調ECU11によりエアコン11aが駆動される(ST305:空調駆動)。
エアコン11aが駆動されると、車両1から制御サーバ2に対して空調駆動開始情報が出力される(ST306)。空調駆動開始情報には、遠隔操作の指令内容に応じてエアコン11aが駆動されたことを示す情報が含まれる。空調駆動開始情報は、外部通信部17から通信回線網4を介して制御サーバ2に送信される。
車両1から空調駆動開始情報を受信すると、制御サーバ2からユーザ端末3に対して空調開始通知が出力される(ST307)。空調開始通知には、車両1にて空調が開始されたことを示す情報が含まれる。空調開始通知を受信することにより、ユーザ端末3のユーザは、空調予約情報で指定した通りに車両1にて空調が実行されていることを把握することができる。
車両1にて、エアコン11aが駆動された後、空調指令情報に含まれる空調実施時間が経過すると、制御サーバ2に対して空調完了を示す空調完了情報が送信される(ST308)。空調完了情報は、空調駆動開始情報と同様に、外部通信部17から通信回線網4を介して制御サーバ2に送信される。
車両1から空調完了情報を受信すると、制御サーバ2からユーザ端末3に対して空調完了通知が出力される(ST309)。空調完了通知には、車両1にて空調が完了したことを示す情報が含まれる。空調完了通知を受信することにより、ユーザ端末3のユーザは、空調予約情報で指定した車両1の空調が完了したことを把握することができる。
図3に示すST303にて、遠隔操作指令情報を受信すると、車両1(駆動制御ECU12)は、予め定められた条件(モータ14における暖機状態を維持する条件)を満たすか判定し、その判定結果に応じて蓄熱材15の放熱制御を実行する。以下、本実施の形態に係る制御装置において実行される蓄熱材15の放熱制御について、図4を参照して説明する。図4は、本実施の形態に係る制御装置において実行される蓄熱材15の放熱制御を説明するためのフロー図である。
ST401において、駆動制御ECU12は、制御サーバ2から遠隔操作による空調駆動要求を受信するか監視する。駆動制御ECU12は、図3に示すST303で送信される遠隔操作指令情報に空調指令情報が含まれるかを判定することで、空調駆動要求の受信を判定する。ここで、遠隔操作による空調駆動要求を受信しない場合(ST401:No)、駆動制御ECU12は、監視動作を継続する。一方、遠隔操作による空調駆動要求を受信すると(ST401:Yes)、駆動制御ECU12は、処理をST402に進める。
ST402において、駆動制御ECU12は、蓄熱材15が放熱可能状態であるか判定する。例えば、駆動制御ECU12は、蓄熱材温度センサ15aの検出温度に応じて、蓄熱材15が液相の過冷却状態であるかを判定する。なお、蓄熱材15が放熱可能状態であるか否かの判定方法については、これに限定されず適宜変更が可能である。ここで、蓄熱材15が放熱可能状態でない場合(ST402:No)、駆動制御ECU12は、放熱制御を終了する。一方、蓄熱材15が放熱可能状態である場合(ST402:Yes)、駆動制御ECU12は、処理をST403に進める。
ST403において、駆動制御ECU12は、作動流体温度Tが保温開始温度T以下であるか判定する。駆動制御ECU12は、冷却水温度センサ14aで検出された作動流体温度Tが、予め定められた所定温度である保温開始温度T以下であるか判定する。ここで、作動流体温度Tが保温開始温度T以下でない場合(ST403:No)、駆動制御ECU12は、放熱制御を終了する。一方、作動流体温度Tが保温開始温度T以下である場合(ST403:Yes)、駆動制御ECU12は、処理をST404に進める。
ST404において、駆動制御ECU12は、遠隔操作による空調駆動要求が冷房であるか判定する。例えば、駆動制御ECU12は、空調指令情報に含まれる空調設定温度(目標空調温度)と、車室内温度センサ11bで検出された車室内温度とに基づいて、空調駆動要求が冷房であるか判定する。ここで、空調駆動要求が冷房でない場合(ST404:No)、すなわち、空調駆動要求が暖房である場合、駆動制御ECU12は、処理をST406に進める。一方、空調駆動要求が冷房である場合(ST404:Yes)、駆動制御ECU12は、処理をST405に進める。
ST405において、駆動制御ECU12は、作動流体温度Tが暖機判定温度T以上であるか判定する。駆動制御ECU12は、冷却水温度センサ14aで検出された作動流体温度Tが、予め定められた暖機判定温度T以上であるか判定する。ここで、作動流体温度Tが暖機判定温度T以上でない場合(ST405:No)、駆動制御ECU12は、放熱制御を終了する。一方、作動流体温度Tが暖機判定温度T以上である場合(ST405:Yes)、駆動制御ECU12は、処理をST406に進める。
ST406において、駆動制御ECU12は、空調指令情報に含まれる出発予定時刻に基づく放熱開始タイミングであるか判定する。例えば、放熱開始タイミングが、出発予定時刻における冷却水の温度が所定温度を上回るような時刻に設定されている場合、駆動制御ECU12は、現在時刻が当該時刻であるか判定する。放熱開始タイミングが出発予定時刻に設定されている場合、駆動制御ECU12は、現在時刻が出発予定時刻であるか判定する。また、放熱開始タイミングが出発予定時刻から蓄熱材15の放熱可能な放熱可能時間を遡った時刻(以下、「放熱時刻」という)に設定されている場合、駆動制御ECU12は、現在時刻が放熱時刻であるか判定する。ここで、出発予定時刻に基づく放熱開始タイミングでない場合(ST406:No)、駆動制御ECU12は、ST406の判定を繰り返す。一方、出発予定時刻に基づく放熱開始タイミングである場合(ST406:Yes)、駆動制御ECU12は、処理をST407に進める。
ST407において、駆動制御ECU12は、蓄熱材15の放熱を開始させる。駆動制御ECU12は、放熱開始部材15bに対して外部から刺激を与えることで、蓄熱材15の放熱を開始させる。このとき、駆動制御ECU12は、蓄熱材15の放熱を開始すると同時に切替バルブ53を閉状態とする(図2参照)。そして、蓄熱材15の放熱を開始させた後、駆動制御ECU12は、処理をST408に進める。
ST408において、駆動制御ECU12は、ポンプ14bを始動する。これにより、モータ14の冷却水が循環流路52a、52bを循環する(図2参照)。また、切替バルブ53が閉状態とされているため、ポンプ14bから送り出された冷却水は、バイパス流路55に導入され、蓄熱材15の周囲を通過して暖められた状態(保温された状態)で循環する。ポンプ14bを始動した後、駆動制御ECU12は、処理をST409に進める。
ST409において、駆動制御ECU12は、作動流体温度Tが蓄熱材温度Tと略同一の温度であるか判定する。駆動制御ECU12は、冷却水温度センサ14aで検出された作動流体温度Tが、蓄熱材温度センサ15aで検出された蓄熱材温度Tと略同一の温度であるか判定する。略同一の温度とは、作動流体温度Tと蓄熱材温度Tとの温度差が±5℃の範囲内に収まる状態の温度をいう。ここで、作動流体温度Tが暖機判定温度T以上でない場合(ST409:No)、駆動制御ECU12は、ST409の判定動作を継続する。一方、作動流体温度Tが蓄熱材温度Tと略同一の温度である場合(ST409:Yes)、駆動制御ECU12は、処理をST410に進める。
ST410において、駆動制御ECU12は、ポンプ14bを停止する。これにより、モータ14の冷却水の循環が停止する。ポンプ14bを停止した後、駆動制御ECU12は、放熱制御を終了する。このようにして一連の放熱制御が終了する。
上述した放熱制御において、駆動制御ECU12は、モータ14が駆動を停止した状態で作動流体温度Tが保温開始温度T以下であり(ST403:Yes)、空調駆動要求が暖房であると(ST404:No)、出発予定時刻に基づく放熱開始タイミングで蓄熱材15の放熱制御を開始する(ST407)。また、作動流体温度Tが保温開始温度T以下であり(ST403:Yes)、空調駆動要求が冷房であっても(ST404:Yes)、作動流体温度Tが暖機判定温度T以上であると(ST405:Yes)、出発予定時刻に基づく放熱開始タイミングで蓄熱材15の放熱制御を開始する(ST407)。これらの場合、作動流体である冷却水が保温された状態で循環されることでモータ14が保温される。
このように本実施の形態に係る制御装置によれば、モータ14が駆動を停止し、冷却水が保温開始温度T以下に低下した場合に蓄熱材15の放熱が開始される。これにより、モータ14が冷機状態に移行する前に蓄熱材15から放熱されるので、蓄熱材15が放熱する熱エネルギ(蓄熱エネルギ)が蓄熱材15自体の昇温に使用されるのを防止でき、蓄熱材15の蓄熱エネルギをモータ14の保温に有効に活用することができる。
また、蓄熱エネルギが蓄熱材15自体の昇温に使用されないことから、持続的な蓄熱材15の放熱が可能となり、冷却水を長時間に亘って保温することができる。これにより、車両1の停車中に冷却水の温度が下がり過ぎる事態を抑制できるので、再始動時の暖機時間を短縮し、再始動からの走行開始時のフリクションを低減でき、機関効率の低下を抑制することができる。
さらに、出発予定時刻を含む予約空調が実施された場合、ST406にて、出発予定時刻に基づいて蓄熱材15の放熱が開始されることから、出発予定時刻に対して最適なタイミングで蓄熱材15を放熱させることができるので、出発予定時刻に作動流体の温度を適温に調整することができる。
例えば、予約空調による空調駆動要求が暖房である場合(ST404:No)において、蓄熱材15の放熱タイミングが、出発予定時刻における冷却水の温度が所定温度を上回るような時刻に設定されている場合には、該当時刻に蓄熱材15の放熱が開始される。これにより、出発予定時刻に作動流体の温度を、所定温度を上回る温度に設定できるので、再始動時の暖機時間を効果的に短縮し、再始動からの走行開始時のフリクションを効果的に低減することができる。
ここで、出発予定時刻に所定温度を上回るように放熱制御された場合の冷却水の温度変化について、図5及び図6を参照して説明する。図5及び図6は、本実施の形態に係る制御装置で出発予定時刻に所定温度を上回るように放熱制御された場合の冷却水の温度変化の説明図である。図5及び図6においては、縦軸に時間経過を示し、横軸に冷却水の温度を示している。
図5においては、自然放熱された場合の冷却水の温度変化H1と、電気ヒータ56のみにより加熱された場合の冷却水の温度変化H2と、電気ヒータ56及び蓄熱材15により加熱された場合の冷却水の温度変化H3とを示している。また、図5においては、蓄熱材15が放熱を継続できる時間tsを示している。さらに、図5においては、出発予定時刻における冷却水の所望温度Tを示している。
図5においては、出発予定時刻t1に基づいて計算される空調開始時刻t2に、同時に、電気ヒータ56のみにより加熱される場合(温度変化H2)と、電気ヒータ56及び蓄熱材15により加熱される場合(温度変化H3)とを示している。図5に示すように、出発予定時刻t1では、温度変化H2、H3は、所望温度Tに上回っている。しかし、温度変化H3では、電気ヒータ56に加え蓄熱材15により加熱されることにより、電気ヒータ56のみで加熱される場合に比べて、冷却水の温度が早いタイミングで所望温度Tに到達している。このため、冷却水を所望温度Tに昇温させるまでの時間を退縮できると共に、電気ヒータ56が消費する電気使用量を低減することができる。
図6においては、自然放熱された場合の冷却水の温度変化H1と、電気ヒータ56のみにより加熱された場合の冷却水の温度変化H2と、蓄熱材15のみにより加熱した後に、電気ヒータ56及び蓄熱材15により加熱された場合の冷却水の温度変化H4とを示している。また、図6においては、蓄熱材15が放熱を継続できる時間tsを示している。さらに、図6においては、出発予定時刻における冷却水の所望温度Tを示している。
図6においては、出発予定時刻t1に基づいて計算される空調開始時刻t2に、電気ヒータ56のみにより加熱される場合(温度変化H2)を示している。また、この空調開始時刻t2から蓄熱材15の放熱可能時間に基づいて計算される放熱開始時刻t3に、蓄熱材15のみにより加熱された後、空調開始時刻t2に電気ヒータ56及び蓄熱材15により加熱される場合(温度変化H4)を示している。図6に示すように、出発予定時刻t1では、温度変化H2、H4は、所望温度Tを上回っている。しかし、温度変化H4では、放熱開始時刻t3から蓄熱材15のみにより加熱されることにより、冷却水の温度が所望温度Tを下回ることがない。このため、冷却水を所望温度Tに昇温させるまでの時間を省略できると共に、電気ヒータ56が消費する電気使用量を低減することができる。
なお、予約空調による空調駆動要求が暖房である場合(ST404:No)、蓄熱材15の放熱タイミングを出発予定時刻に設定してもよい。この場合には、モータ14の冷却水の温度に関わらず、蓄熱材15の放熱が出発予定時刻に開始されるので、暖房に必要となる蓄熱材15の蓄熱エネルギを確保でき、暖房に必要な空調時間を短縮することができる。
また、予約空調による空調駆動要求が暖房である場合(ST404:No)、蓄熱材15の放熱タイミング(放熱開始時刻)を、出発予定時刻から蓄熱材15の放熱可能な放熱可能時間を遡った時刻に設定してもよい。この場合においても、モータ14の冷却水の温度に関わらず、出発予定時刻から蓄熱材15の放熱可能な放熱可能時間を遡った時刻に蓄熱材15の放熱が開始されるので、暖房に必要となる蓄熱材15の蓄熱エネルギを確保でき、暖房に必要な空調時間を短縮することができる。
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態に係る制御装置においては、駆動制御ECU12が、予約空調で指定される出発予定時刻に基づいて蓄熱材15の放熱タイミングを制御する場合について説明している。第2の実施の形態に係る制御装置においては、予約空調で指定される出発予定時刻に基づくタイミングと異なるタイミングで蓄熱材15の放熱制御を実行する点で第1の実施の形態に係る制御装置と相違する。
以下、第2の実施の形態に係る制御装置の構成について、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。第2の実施の形態に係る制御装置は、第1の実施の形態と同様の構成を有し、その放熱制御時の処理においてのみ相違する。第2の実施の形態に係る制御装置においては、ユーザ端末3の位置情報から予測される運転開始時刻に基づいて蓄熱材15の放熱タイミングを制御する。
図7は、第2の実施の形態に係る制御装置で実行される蓄熱材15の放熱制御を説明するためのフロー図である。図7において、図4と共通の処理については、同一の符号を付与してその説明を省略する。図7に示すように、第2の実施の形態に係る制御装置においては、ST701、ST702及びST703の処理を行う点で、第1の実施の形態と相違する。
ST701において、駆動制御ECU12は、ユーザ端末3と車両1との距離Lが、予め定められた判定距離L1よりも小さいか判定する。駆動制御ECU12は、距離Lと判定距離L1とを比較することにより、ユーザ端末3を携帯するユーザの位置を把握する。ここで、距離Lが判定距離L1以上である場合(ST701:No)、駆動制御ECU12は、ST701の判定処理を繰り返す。一方、距離Lが判定距離L1より小さい場合(ST701:Yes)、駆動制御ECU12は、処理をST702に進める。すなわち、駆動制御ECU12は、判定距離L1よりもユーザ端末3が車両1に接近した場合に処理をST702に進める。
ST702において、駆動制御ECU12は、ユーザ端末3の位置情報に応じて車両1の運転開始時刻を予測する。そして、運転開始時刻を予測した後、駆動制御ECU12は、処理をST402に進める。なお、ST402及びST403の処理については、第1の実施の形態と同一である。作動流体温度Tが保温開始温度T以下である場合(ST403:Yes)、駆動制御ECU12は、処理をST703に進める。
ST703において、駆動制御ECU12は、ST702で予測した運転開始時刻まで、言い換えると、車両1の停車期間の間、作動流体である冷却水の温度を所望温度に保温可能であるか判定する。冷却水の温度を所望温度に保温できるか否かの判定は、例えば、許容される作動流体(冷却水)の温度低下時間A、蓄熱材15の放熱可能時間B及び予測された運転開始時刻までの滞在時間(予測滞在時間)Cが以下の関係を満たす場合に保温可能であると判定することができるが、これに限定されない。
温度低下時間A + 放熱可能時間B > 予測滞在時間C
ST703の判定において、停車期間の間、冷却水の温度を所望温度に保温可能でない場合(ST703:No)、駆動制御ECU12は、放熱制御を終了する。一方、停車期間中に冷却水の温度を所望温度に保温可能である場合(ST703:Yes)、駆動制御ECU12は、処理をST406に進める。ST406以降の処理については、第1の実施の形態と同一である。なお、ST703の処理タイミングについては、これに限定されず、ST702の直後に行ってもよい。
このように第2の実施の形態に係る制御装置においては、ユーザ端末3の位置情報に基づいて予測される運転開始時刻に応じて冷却水を保温可能であるかが判断され、運転開始時刻まで保温可能であると判断した場合に蓄熱材15の放熱制御が実行される。これにより、車両1の停車中に冷却水の温度が下がり過ぎる事態を確実に抑制できる。一方、運転開始時刻まで保温することができないと判断した場合には、蓄熱材15の放熱制御を実行しないため、蓄熱材15の蓄熱エネルギを浪費するのを防止することができる。
なお、第2の実施の形態に係る制御装置では、ユーザ端末3の位置情報に基づいて運転開始時刻を予測しているが、運転開始時刻の予測を実行する際の契機については、ユーザ端末3の位置情報に限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、スマートキー等を利用したドアロックの解除に応じて運転開始時刻を予測してもよい。このように変更する場合においても、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
(第3の実施の形態)
第1の実施の形態に係る制御装置においては、駆動制御ECU12が、予約空調で指定される出発予定時刻に基づいて蓄熱材15の放熱タイミングを制御する場合について説明している。第3の実施の形態に係る制御装置においては、予約空調で指定される出発予定時刻に基づくタイミングと異なるタイミングで蓄熱材15の放熱制御を実行する点で第1の実施の形態に係る制御装置と相違する。
以下、第3の実施の形態に係る制御装置の構成について、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。第3の実施の形態に係る制御装置は、第1の実施の形態と同様の構成を有し、その放熱制御時の処理においてのみ相違する。第3の実施の形態に係る制御装置においては、車両1の位置情報(停止位置情報)から予測される運転開始時刻に基づいて蓄熱材15の放熱タイミングを制御する。
図8は、第3の実施の形態に係る制御装置で実行される蓄熱材15の放熱制御を説明するためのフロー図である。図8において、図4と共通の処理については、同一の符号を付与してその説明を省略する。図8に示すように、第2の実施の形態に係る制御装置においては、ST801~ST803及びST804の処理を行う点で、第1の実施の形態と相違する。
ST801において、駆動制御ECU12は、車両1のイグニッションキーがオフになったか判定する。ここで、イグニッションキーがオフでない場合(ST801:No)、駆動制御ECU12は、ST801の判定を繰り返す。一方、イグニッションキーがオフである場合(ST801:Yes)、駆動制御ECU12は、処理をST802に進める。
ST802において、駆動制御ECU12は、車両1の位置情報(停車位置情報)を取得する。例えば、駆動制御ECU12は、不図示のナビゲーションシステム等から車両1の位置情報を取得するが、これに限定されない。なお、ST802において、駆動制御ECU12は、車両1の停止時刻(停車時刻)も取得する。車両1の停止位置情報及び停車時刻を取得した後、駆動制御ECU12は、処理をST803に進める。
ST803において、駆動制御ECU12は、車両1の位置情報(停車位置情報)に応じて車両1の運転開始時刻を予測する。駆動制御ECU12は、車両1の停車位置の属性に応じて運転開始時刻を予測する。例えば、車両1がショッピングセンターに停車した場合、駆動制御ECU12は、運転開始時刻まで一定時間以上の時間(例えば、120分以上の時間)が確保されることを把握することができる。また、車両1がコンビニエンスストアに停車した場合、駆動制御ECU12は、運転開始時刻まで一定時間以下の時間(例えば、10分以内の時間)が確保されることを把握することができる。そして、運転開始時刻を予測した後、駆動制御ECU12は、処理をST402に進める。なお、ST402及びST403の処理については、第1の実施の形態と同一である。作動流体温度Tが保温開始温度T以下である場合(ST403:Yes)、駆動制御ECU12は、処理をST804に進める。
ST804において、駆動制御ECU12は、ST803で予測した運転開始時刻まで、言い換えると、車両1の停車期間中に、作動流体である冷却水の温度を所望温度に保温可能であるか判定する。ここで、停車期間中に冷却水の温度を所望温度に保温可能でない場合(ST804:No)、駆動制御ECU12は、放熱制御を終了する。一方、停車期間中に冷却水の温度を所望温度に保温可能である場合(ST804:Yes)、駆動制御ECU12は、処理をST407に進める。ST407以降の処理については、第1の実施の形態と同一である。なお、ST804の処理タイミングについては、これに限定されず、ST803の直後に行ってもよい。
このように第3の実施の形態に係る制御装置においては、車両1の位置情報(停止位置情報)に基づいて予測される運転開始時刻に応じて冷却水を保温可能であるかが判断され、保温可能であると判断した場合に蓄熱材15の放熱制御が実行される。これにより、車両1の停車中に冷却水の温度が下がり過ぎる事態を確実に抑制できる。一方、運転開始時刻まで保温することができないと判断した場合には、蓄熱材15の放熱制御を実行しないため、蓄熱材15の蓄熱エネルギを浪費するのを防止することができる。
なお、ST803における運転開始時刻の予測処理について、車両1の移動履歴等に基づく機械学習を実行することにより、予測精度を高めることは実施の形態として好ましい。この場合には、例えば、車両1が同一の施設(例えば、ショッピングセンター)に停車する場合であっても、その日時に応じて予測される運転開始時刻を調整することができる。同一のショッピングセンターであっても、平日であれば停車時刻から運転開始時刻までの時間を短く予測し、休日であれば停車時刻から運転開始時刻までの時間を長く予測することができる。
(第4の実施の形態)
第1~第3の実施の形態に係る制御装置においては、蓄熱材15の放熱制御により昇温(保温)する作動流体が、駆動源であるモータ14を冷却する冷却水である場合について説明している。第4の実施の形態に係る制御装置においては、蓄熱材の放熱制御により昇温(保温)される作動流体が、駆動源であるモータや変速機を潤滑するオイルである点で、第1~第3の実施の形態に係る制御装置と相違する。
図9は、第4の実施の形態に係る制御装置で制御される車両の駆動源の潤滑構造を示す模式図である。図9に示すように、第4の実施の形態に係る制御装置で制御される車両の駆動源は、モータ61及びモータ61を収容するケース62を有するモータユニット60と、モータ61の回転速度を減速する減速ギア71及び減速ギア71を収容するケース72を有する変速機70とで構成される。モータ61の出力軸の回転が変速機70で減速され、不図示のドライブギアを介して駆動輪80に伝達される。
ケース62及びケース72の底面には、それぞれ蓄熱材63及び蓄熱材73が配置されている。これらの蓄熱材63及び蓄熱材73は、それぞれケース62及びケース72内に収容されたオイルO及びオイルOに一部又は全部が浸かった状態で配置されている。蓄熱材63及び蓄熱材73の機能は、概して第1~第3の実施の形態に係る蓄熱材15と同一である。すなわち、蓄熱材63及び蓄熱材73は、それぞれオイルO及びオイルO(作動流体)と熱交換可能に配置され、液相の過冷却状態から固相への相転移を生じ得る蓄熱材の一例を構成する。オイルO及びオイルOは、それぞれモータ61及び減速ギア71を潤滑する作動流体の一例を構成する。
第4の実施の形態に係る制御装置においては、第1~第3の実施の形態と同様に、蓄熱材63及び蓄熱材73の放熱を制御する駆動制御ECU(図示略)を備える。この駆動制御ECUには、モータ61を潤滑するオイルOの温度を検出するオイル温度センサ64と、ケース62内でオイルOを循環させるオイルポンプ65とが接続されている。また、この駆動制御ECUには、蓄熱材63と、蓄熱材63の温度を検出する蓄熱材温度センサ66と、蓄熱材63の放熱を開始させる放熱開始部材67とが接続されている。
同様に、この駆動制御ECUには、減速ギア71を潤滑するオイルOの温度を検出するオイル温度センサ74と、ケース72内でオイルOを循環させるオイルポンプ75とが接続されている。また、この駆動制御ECUには、蓄熱材73と、蓄熱材73の温度を検出する蓄熱材温度センサ76と、蓄熱材73の放熱を開始させる放熱開始部材77とが接続されている。
第4の実施の形態に係る制御装置に適用される蓄熱材63の融点は、モータ61が暖機状態であると判定される暖機判定温度以上、且つ、オイルOに対して定められる異常判定温度以下に設定される。同様に、蓄熱材73の融点は、減速ギア71が暖機状態であると判定される暖機判定温度以上、且つ、オイルOに対して定められる異常判定温度以下に設定される。
図10は、第4の実施の形態に係る制御装置に適用されるオイルO(オイルO)の油温と粘度の説明図である。図10に示すように、オイルO(オイルO)の粘度は、概して油温が上昇するに連れて低くなる。オイルO(オイルO)は、図10に示す温度領域Aにおいて、油温の低下量に対して粘度の立ち上がりが大きくなっている。また、オイルO(オイルO)の粘度は、温度領域Aよりも油温が高い範囲において緩やかに低下し、所定の油温以上で略一定値に維持される。
本実施の形態においては、温度領域Aを構成する油温のうち、最も低い油温を暖機判定温度に設定し、最も高い油温を保温開始温度に設定している。また、油温が上昇しても、オイルO(オイルO)の粘度が一定値に維持される油温を異常判定温度に設定している。このように設定される暖機判定温度以上、且つ、異常判定温度以下の範囲に、蓄熱材63(蓄熱材73)の融点が設定されている。このように融点を設定することにより、暖機判定温度以上であって、異常判定温度以下の範囲内で蓄熱材63(蓄熱材73)の融点の放熱を開始できるので、オイルO(オイルO)の温度を適温に保温することができる。
なお、第4の実施の形態に係る制御装置において実行される蓄熱材63(蓄熱材73)の放熱制御については、第1~第3の実施の形態に係る制御装置における放熱制御と同様の処理を実行することができる。例えば、第4の実施の形態に係る制御装置は、制御サーバ2からの空調指令情報に基づいて蓄熱材63(蓄熱材73)の放熱制御を行ってもよいし、ユーザ端末3の位置情報や車両1の停車位置情報に基づいて蓄熱材63(蓄熱材73)の放熱制御を行ってもよい。第4の実施の形態に係る制御装置においても、第1~第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
(第5の実施の形態)
第4の実施の形態に係る制御装置においては、作動流体としてのオイルに一部又は全部が浸かった状態で蓄熱材を配置している。これに対し、第5の実施の形態に係る制御装置においては、変速機を潤滑するオイルの循環回路の近傍に蓄熱材を配置する点で、第4の実施の形態に係る制御装置と相違する。
図11は、第5の実施の形態に係る制御装置で制御される車両の変速機の潤滑構造を示す模式図である。図11に示すように、第5の実施の形態に係る制御装置で制御される車両の変速機90内には、変速機90内の構成部品(減速ギア等)を潤滑するオイルを循環させる回路(以下、「オイル循環回路」という)91と、このオイル循環回路91にオイルを循環させるポンプ92とが設けられている。
変速機90の側面の一部には、変速機クーラ93が設けられている。変速機クーラ93には、オイル循環回路91に接続され、オイル循環回路91の一部を構成する第1接続回路94と、不図示のモータやインバータを冷却する冷却水が流れるモータ・インバータ冷却回路95に接続され、モータ・インバータ冷却回路95の一部を構成する第2接続回路96とが設けられている。高回転の運転時などにおいてオイル温度が上昇した場合には、モータ・インバータ冷却回路95を流れる冷却水との熱交換によりオイルの温度を冷却可能に構成されている。
変速機クーラ93内には、蓄熱材97が配置されている。蓄熱材97は、第1接続回路94及び第2接続回路96に一部が接するように配置されている。蓄熱材97の機能は、概して第1~第4の実施の形態に係る蓄熱材15等と同一である。すなわち、蓄熱材97は、オイル循環回路91を循環するオイル(作動流体)と熱交換可能に配置され、液相の過冷却状態から固相への相転移を生じ得る蓄熱材の一例を構成する。
蓄熱材97を蓄熱する際には、モータやインバータの排熱を利用して、モータ・インバータ冷却回路95を流れる冷却水を介して蓄熱することができる。また、図示しない蓄電池に対する充電時(特に、急速充電時)に発生する熱を利用して直接的又は間接的に蓄熱材97を蓄熱してもよい。さらに、電気ヒータを備えておき、車両の充電時の電気を利用して蓄熱材97を蓄熱してもよい。
第5の実施の形態に係る制御装置においては、第1~第3の実施の形態と同様に、蓄熱材97の放熱を制御する駆動制御ECU(図示略)を備える。この駆動制御ECUには、ポンプ92と、オイル循環回路91を循環するオイルの温度を検出するオイル温度センサ91aとが接続されている。また、この駆動制御ECUには、蓄熱材97と、蓄熱材97の温度を検出する蓄熱材温度センサ97aと、蓄熱材97の放熱を開始させる放熱開始部材97bとが接続されている。なお、蓄熱材97の融点は、第4の実施の形態と同様に設定される。すなわち、不図示のモータが暖機状態であると判定される暖機判定温度以上、且つ、オイルに対して定められる異常判定温度以下に設定される。
なお、第5の実施の形態に係る制御装置において実行される蓄熱材97の放熱制御については、第1~第4の実施の形態に係る制御装置における放熱制御と同様の処理を実行することができる。例えば、第5の実施の形態に係る制御装置は、制御サーバ2からの空調指令情報に基づいて蓄熱材97の放熱制御を行ってもよいし、ユーザ端末3の位置情報や車両1の停車位置情報に基づいて蓄熱材97の放熱制御を行ってもよい。このような放熱制御を行うことにより、第5の実施の形態に係る制御装置においても、第1~第4の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、第5の実施の形態に係る制御装置においては、変速機クーラ93に蓄熱材97が配置されている。このため、蓄熱材97が経年劣化したような場合には、変速機クーラ93を交換することにより、蓄熱材97を交換することができる。これにより、蓄熱材97の交換時における作業効率を向上することができる。
なお、図11においては、変速機クーラ93の内部に第1接続回路94を配置する場合について説明している。しかしながら、変速機90及び変速機クーラ93の構成については、これに限定されず、適宜変更が可能である。蓄熱材97の放熱制御によってオイル循環回路91を流れるオイルを保温できることを条件として、変速機90及び変速機クーラ93は、任意の構成を採用することができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
例えば、第1~第3の実施の形態に係る制御装置における蓄熱材15の放熱制御と、第4の実施の形態に係る制御装置における蓄熱材63(蓄熱材73)の放熱制御とを組み合わせて実行してもよい。この場合には、モータを冷却する冷却水と、モータ及び変速機を潤滑するオイルとを加熱することができるので、機関効率の低下を更に抑制することができる。
以上説明したように、本発明は潜熱蓄熱材の蓄熱エネルギを有効に活用して機関効率の低下を抑制することができるという効果を有し、特に、電気自動車(EV)やプラグイン式ハイブリッド自動車などの電費向上が要請される車両に有用である。
1 :車両
2 :制御サーバ
3 :ユーザ端末
4 :通信回線網
11 :空調ECU
11a :エアコン
11b :車室内温度センサ
11c :外気温度センサ
12 :駆動制御ECU
14 :モータ
14a :冷却水温度センサ
14b :冷却水ポンプ
15 :蓄熱材
15a :蓄熱材温度センサ
15b :放熱開始部材
16 :主制御部
51 :ラジエータ
52a :循環流路
52b :循環流路
53 :切替バルブ
54 :サーモスタット
55 :バイパス流路
56 :電気ヒータ
57 :連結流路
58 :ヒータコア
60 :モータユニット
61 :モータ
62 :ケース
63 :蓄熱材
64 :オイル温度センサ
65 :オイルポンプ
66 :蓄熱材温度センサ
67 :放熱開始部材
70 :変速機
71 :減速ギア
72 :ケース
73 :蓄熱材
74 :オイル温度センサ
75 :オイルポンプ
76 :蓄熱材温度センサ
77 :放熱開始部材
90 :変速機
91 :オイル循環回路
92 :ポンプ
93 :変速機クーラ
94 :第1接続回路
95 :モータ・インバータ冷却回路
96 :第2接続回路
97 :蓄熱材
100 :遠隔制御システム

Claims (6)

  1. 車両の走行に要する駆動力を発生する駆動源と、
    前記駆動源を潤滑する作動流体と、
    前記作動流体と熱交換可能に配置され、液相の過冷却状態から固相への相転移を生じ得る潜熱蓄熱材と、
    前記潜熱蓄熱材の放熱タイミングを制御する制御部と、
    を有する車両用制御装置であって、
    前記制御部は、前記駆動源が駆動を停止しており、前記作動流体が所定温度以下に低下した場合に前記潜熱蓄熱材の放熱を開始し、
    前記潜熱蓄熱材の融点は、前記駆動源が暖機状態であると判定される暖機判定温度以上、且つ、前記作動流体に対して定められる異常判定温度以下に設定され、
    前記異常判定温度は、前記作動流体の温度が上昇しても、前記作動流体の粘度が一定値に維持される前記作動流体の温度に設定することを特徴とする車両用制御装置。
  2. 前記車両は、ユーザ端末からの空調指示を受け付け可能な空調制御部を有し、
    前記ユーザ端末より、前記空調制御部に対して出発予定時刻を含む予約空調の予約情報を受信した場合、前記制御部は、前記出発予定時刻に基づいて前記潜熱蓄熱材の放熱を開始することを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
  3. 前記制御部は、前記予約空調による空調駆動要求が暖房である場合、前記出発予定時刻における前記作動流体の温度が所定温度を上回るように前記潜熱蓄熱材の放熱を開始することを特徴とする請求項2に記載の車両用制御装置。
  4. 前記制御部は、前記予約空調による空調駆動要求が暖房である場合、前記潜熱蓄熱材の放熱を前記出発予定時刻に開始することを特徴とする請求項2に記載の車両用制御装置。
  5. 前記制御部は、前記予約空調による空調駆動要求が暖房である場合、前記出発予定時刻から前記潜熱蓄熱材の放熱可能な放熱可能時間を遡った時刻を放熱開始時刻とすることを特徴とする請求項2に記載の車両用制御装置。
  6. 前記制御部は、前記ユーザ端末の位置情報又は前記車両の停止位置情報に基づいて運転開始時刻を予測し、前記運転開始時刻までに前記作動流体の温度を所望温度に保温可能であると判断した場合、前記潜熱蓄熱材の放熱を開始することを特徴とする請求項に記載の車両用制御装置。
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