JP7428863B2 - 粉砕方法および混合方法 - Google Patents

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Description

本発明は、3次元回転させることのできる回転装置を用いる粉砕方法および混合方法に関するものである。
粉砕装置の1種としてボールミルが知られている。ボールミルでは、セラミックや金属などの硬質のボールと、被粉砕物を円筒形の容器にいれて回転(1軸回転,2次元回転)させることによって、被粉砕物をすりつぶして微細な粉末を作る。
2次元回転(1軸回転)は円周方向のみであるから、その回転により遠心力を受けたボールは円筒容器内壁に向かって駆け上がり落下する。ボールの移動は限定的であり、充分な粉砕効果も限定的である。
これに対し、3次元回転(2軸回転)させることのできる回転装置(ボールミル)によれば、ボールは球状容器内壁面に沿って複雑な軌道を描き、球状容器全面を利用できるため、充分な粉砕効果が期待できる。
3次元回転(2軸回転)に係る回転装置として、外部モータにより内部モータとともに第1軸回転させ、内部モータにより第2軸周りに容器等を回転させる装置が一般的である(例えば特許文献1)。
外部モータにより内部モータ自体を回転させる結果、高速回転させると、内部モータに大きな遠心力が作用し、故障の原因になる。また、内部モータ自体を回転させるには外部モータを大型化する必要がある。これにともない、多くのエネルギーを必要とし、熱損失も発生する。
これに対し、内部モータに換えて伝達機構を有する回転装置が提案されている(例えば、特許文献2)。
特許文献2に係る回転装置は、装置本体と筺体と駆動モータと支持盤とから構成される。駆動モータの回転駆動力はプーリを介して本体装置に伝達される。
本体装置は、外枠と内枠(容器保持構造)と第1円板(縦置)と第2円板(横置)と第1回転軸と第2回転軸とから構成されている。
駆動モータの回転駆動力はプーリを介して、第1回転軸に伝達される。第1回転軸まわりに、外枠、第2回転軸が回転する。
第1円板周面にはゴムが配設され、第2円板下面に当接されて、伝達機構を構成する。第1円板の回転力は第2円板に伝達される。第2回転軸まわりに、第2円板および内枠が回転する。
これにより、容器はX軸周りおよびZ軸周り、すなわち2軸周りに回転する。これを3次元回転と呼ぶ。
このように、球形容器内においてボールは複雑な軌道を描き、充分な粉砕効果が期待できる。さらに、伝達機構により内部モータは不要となり、小型化、軽量化、高速回転化(たとえば400rpm)、発熱抑制を図ることができる。
特開2002-316899号公報 特開2012-176331号公報
特許文献2の容器は球形である。球形容器を定速で3次元回転させると、ボールは球形容器内にて一定の軌道を描くようになる。本願発明者が、特許文献2の回転装置(本願基本形)を開発した当時は、定常状態の方が好ましいと考えていた。
本願発明者は様々な粉砕試験を繰り返すうちに、この定常軌道が3次元回転ボールミルの性能を制限していると考えるようになった。
本発明は上記課題を解決するものであり、3次元回転させることのできる回転装置を用いる粉砕において、更なる粉砕効果が得られる技術を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明は、容器を3次元回転させることのできる回転装置を用いる粉砕方法である。前記容器は楕円球形容器である。前記楕円球形容器に硬質ボールと被粉砕物を入れ、前記楕円球形容器を3次元回転させる。
楕円球形容器により更なる粉砕効果が得られる。また、比較的低速回転でも粉砕効果が得られる。さらに、高速回転による定常状態になるまでの時間が短い。その結果、粉砕時間を短縮できる。
上記発明において、好ましくは、前記被粉砕物の比重は前記硬質ボールの比重の半分以下である。さらに好ましくは1/4以下である。
このような比重差がある場合でも、充分な粉砕効果が得られる。
上記発明において、好ましくは、前記楕円球形容器に、小容器を介して、前記被粉砕物を入れる。
これにより、被粉砕物が小粒径または/および少量の場合でも、充分な粉砕効果が得られる。
上記発明において、好ましくは、前記小容器は楕円球形である。
小容器においても、楕円球形による効果を奏する。
上記発明において、好ましくは、前記回転装置は、第1回転駆動装置と、前記第1回転駆動装置により回転される第1水平軸と、前記第1水平軸に結合される外側回転枠と、前記第1回転駆動装置と反対側に設けられる第2回転駆動装置と、前記第1水平軸と反対側に設けられ、前記外側回転枠の一側面を貫通し、前記第2回転駆動装置により回転される第2水平軸と、前記第2水平軸に結合され、前記第2水平軸に垂直な方向に板面を有する主動円板と、前記第1水平軸および前記第2水平軸の軸芯方向とは直交方向に軸芯方向を有し、前記外側回転枠に設けられる直交軸と、前記直交軸に結合され、前記容器を保持する内側回転枠と、前記直交軸に結合され、前記直交軸に垂直な方向に板面を有する従動円板と、前記主動円板の回転力を前記従動円板に伝達する伝達機構と、前記第1回転駆動装置および第2回転駆動装置の出力を個別に制御する制御装置と、を備える。
上記回転装置により、3次元高速回転を実現できる。2軸回転を個別に制御できる。
上記発明において、好ましくは、前記回転装置は、回転駆動装置と、前記回転駆動装置により回転される水平軸と、前記水平軸に結合される外側回転枠と、前記外側回転枠の一側面を貫通して前記水平軸に結合され、前記水平軸に垂直な方向に板面を有する主動円板と、前記水平軸の軸芯方向とは直交方向に軸芯方向を有し、前記外側回転枠に設けられる直交軸と、前記直交軸に結合され、前記容器を保持する内側回転枠と、前記直交軸に結合され、前記直交軸に垂直な方向に板面を有する従動円板と、前記主動円板まわりの回転力を前記従動円板に伝達する伝達機構と、前記回転駆動装置の出力を制御する制御装置と、を備える。
上記回転装置により、3次元高速回転を実現できる。1つの駆動装置により、2軸回転を実現できる。
上記発明において、前記伝達機構は、中空チューブ構造であり、中空チューブ構造内の中空圧を調整する。
中空圧を高圧状態、中圧状態、低圧状態と調整できる。高圧状態により、確実な伝達が可能となる。中圧状態により、意図的なスリップを発生させ、更なる粉砕効果が得られる。低圧状態により、3次元回転を2次元回転とすることができる。
上記課題を解決する本発明は、容器を3次元回転させることのできる回転装置を用いる混合方法である。前記容器は楕円球形容器である。前記楕円球形容器に被混合物を入れ、前記楕円球形容器を3次元回転させる。被混合物は、物質Aと前記物質Aの比重の半分以下の比重の物質Bである。
楕円球形容器により更なる混合効果が得られる。また、比較的低速回転でも混合効果が得られる。さらに、高速回転による定常状態になるまでの時間が短い。その結果、混合時間を短縮できる。
本発明では、3次元回転させることのできる回転装置を用いる粉砕において、更なる粉砕効果が得られる。
回転装置の一例(断面図) 回転装置の一例(斜視図) 回転装置の別例(斜視図) 回転装置の別例(斜視図) 容器の保持構造の一例(斜視図) 容器の保持構造の適用例(楕円球形容器) 楕円球形容器による効果 楕円球形容器による効果(試験結果) 楕円球形容器による効果(試験結果) 楕円球形容器による効果 大容器内小容器の概念図 大容器内小容器の変形例 伝達機構の変形例
<回転装置基本構成>
図1および図2は、回転装置の一例の概略図である。図1は断面図であり、図2は斜視図である。回転装置は、装置本体と筺体と回転駆動装置であるモータ1,4と支持盤とから構成される。
装置本体は、第1水平軸2と、外側回転枠3と、第2水平軸5と、主動円板6と、直交軸7と、内側回転枠8と、従動円板9と、伝達機構10と、制御装置30とを備える。
電動モータ1の出力軸はプーリを介して第1水平軸2に結合されている。また、第1水平軸2は、外側回転枠3に結合されている。すなわち、電動モータ1の駆動により、外側回転枠3は第1水平軸2回り(軸心X-Xラインの回り)で回転する。
電動モータ4の出力軸はプーリを介して第2水平軸5に結合されている。第2水平軸5は、第1水平軸2と反対側に設けられ、外側回転枠3の一側面を貫通する。第2水平軸5と外側回転枠3との間には、ボールベアリングが設けられている。また、第2水平軸5は、主動円板6に結合されている。主動円板6は第2水平軸5に垂直な方向に板面を有する。
すなわち、電動モータ4の駆動により、主動円板6は第2水平軸5回り(X-Xラインの回り)で回転する。一方で、第2水平軸5は外側回転枠3と縁が切れているため、電動モータ4の駆動力は外側回転枠3に直接伝達されない。
直交軸7,7は外側回転枠3に設けられる。直交軸7,7と外側回転枠3との間には、ボールベアリングが設けられている。直交軸7,7は、第1水平軸2および第2水平軸5の軸芯方向とは直交方向に軸芯方向を有する。また、直交軸7,7は、内側回転枠8に結合されている。
すなわち、内側回転枠8は外側回転枠3の内側に配置され、外側回転枠3内において直交軸7回り(Z-Zライン)に回転自在となっている。
さらに、直交軸7は、従動円板9に結合されている。すなわち、従動円板9の直交軸7回りの回転に伴い、内側回転枠8も直交軸7回り(Z-Zライン)で回転する。なお、内側回転枠8および従動円板9が直交軸7回りで回転しても、この回転力は外側回転枠3に直接伝達されない。
伝達機構10は、主動円板6の周端面が従動円板9の板面外周部に対向した状態で、主動円板6の回転力を従動円板9に伝達する。
内側回転枠8内には容器22が保持されている(図5,図6参照)。
<回転装置基本動作>
制御装置30は、電動モータ1および電動モータ4の出力を個別に制御可能である。
電動モータ1を駆動させると、第1水平軸2を介して、外側回転枠3はX-Xラインの回りで回転する。
外側回転枠3の回転に伴い、外側回転枠3に設けられた直交軸7,7もX-Xラインの回りで回転する。さらに直交軸7,7を介して内側回転枠8および従動円板9も、同様に、X-Xラインの回りで回転する。
電動モータ4を駆動させると、第2水平軸5を介して、主動円板6はX-Xラインの回りで回転する。
主動円板6と従動円板9は個別にX-Xラインの回りで回転し、回転速度差が発生する。X-Xラインの回りの回転速度差は伝達機構10を介して従動円板9に伝達され、従動円板9が直交軸7の回り(Z-Zラインの回り)で回転し、内側回転枠8もZ-Zラインの回りで回転する。
すなわち、内側回転枠8および容器22は、X-Xラインの回りで回転するとともに、Z-Zラインの回りでも回転する。言い換えると、2軸回転(3次元回転)する。
<伝達機構例>
電動モータ1および電動モータ4の出力を個別に制御することにより、X-Xラインの回りでの回転数(回転速度)とZ-Zラインの回りでの回転数(回転速度)を個別に制御することができる。これにより、更に複雑な挙動を実現できる。
一方で、電動モータ1および電動モータ4の個別制御は複雑な制御になりやすい。回転速度を増していくと、接触伝達機構では当接のスリップが発生し、速度制御の精度にかかる課題が発生するおそれがある。特に、主動円板6も従動円板9もX-Xラインの回りで回転すると、接触(当接)伝達機構では当接のスリップが発生しやすい。
さらに、回転速度を周期的に増減させる様な複雑な制御を想定する場合、伝達が追従できず、当接スリップが発生するおそれがある。
図1および図2の伝達機構は非接触式であり、複数の第1磁石11と複数の第2磁石12とから構成される。第1磁石11と第2磁石12との間にスペース13が形成されている。つまり、第1磁石11と第2磁石12とは非接触である。
第1磁石11は、主動円板6の周端面に、N極とS極とが交互になる様に複数配設される。第2磁石12は、従動円板9の板面外周部に、N極とS極とが交互になる様に複数配設される。
主動円板6が回転すると、第1磁石11も回転する。第1磁石11のN極は、第2磁石12のN極と反発しあい、第2磁石12のS極と引き合おうとする。第1磁石11のS極は、第2磁石12のS極と反発しあい、第2磁石12のN極と引き合おうとする。これを繰り返すことにより、主動円板6のX-Xラインの回りの回転力が従動円板9に伝達され、従動円板9はZ-Zラインの回りで回転する。
非接触伝達機構においては、当接スリップは発生しない。その結果、精度のよい速度制御が可能である。また、回転力伝達に伴い発熱しない。回転速度を周期的に増減させるような複雑な制御も可能となる。
<回転装置変形例>
容器を3次元回転させることのできる回転装置であれば、上記に限定されない。
図3は、回転装置の変形例である。電動モータ4がなく、水平軸5が固定されることにより、主動円板6も固定されている。
電動モータ1を駆動させると、水平軸2を介して、外側回転枠3はX-Xラインの回りで回転する。
外側回転枠3の回転に伴い、外側回転枠3に設けられた直交軸7,7もX-Xラインの回りで回転する。さらに直交軸7,7を介して内側回転枠8および従動円板9も、同様に、X-Xラインの回りで回転する。
このとき、従動円板9は主動円板6外周に沿って回転する。X-Xラインの回りの回転力は伝達機構10を介して従動円板9に伝達され、従動円板9が直交軸7の回り(Z-Zラインの回り)で回転し、内側回転枠8もZ-Zラインの回りで回転する。
内側回転枠8および容器22は、X-Xラインの回りで回転するとともに、Z-Zラインの回りでも回転する。言い換えると、2軸回転(3次元回転)する。
このとき、Z-Zラインの回りでの回転数(回転速度)はX-Xラインの回りでの回転数(回転速度)に比例する。回転装置作動中は、個別制御ができない。一方で、2つのモータの個別制御に比べ、制御を単純化できる。
図4は、回転装置の別の変形例である。具体的には伝達機構10の変形例である。図1および図2の伝達機構は非接触式であるのに対し、図4の伝達機構は接触式(当接式)である。
主動円板6の周面に、摩擦係数が大きな弾性体(例えば、ゴムバンド)が取り付けられている。さらにゴムバンドには溝が設けられている。これにより、主動円板6の周面はゴム10を介して従動円板9に圧接し、両者間に摩擦抵抗力が発生する。
従動円板9の板面外周に環状かつ面状のゴムが貼付されていてもよい。すなわち、どちらかの当接面または両方に弾性体が設けられていればよい。
伝達機構10の変形例として歯の噛み合わせ機構(図示省略)としてもよい。
<容器保持機構>
図5は容器保持機構の一例の概略斜視図である。球状容器22が、容器保持板21,21を介して内側回転枠8の内部に設けられている。球状容器22の中心は、回転装置の回転中心(すなわちX-XラインとZ-Zラインとの交点)と一致する。
容器保持板21には球状容器22サイズに対応する開口が設けられている。2枚の容器保持板21により球状容器22を挟み込み、容器保持板21を内側回転枠8に取付ける。これにより、球状容器22が保持される。なお、球状容器22は2つの半球の接合により形成される。
容器保持板21の開口サイズを変えることにより、球状容器22のサイズ変更に対応可能である。また、球状容器22だけでなく楕円球容器23や紡錘形容器(図示省略)、長円球容器(図示省略)などにも適用できる。なお、紡錘形容器や長円球容器は、楕円球容器23と類似効果が得られる可能性がある。
図6は容器保持機構を楕円球容器23に適用した例である。2枚の容器保持板21により楕円球容器23を挟み込み、容器保持板21を内側回転枠8に取付ける。楕円球容器23の長軸方向が容器保持板21の開口より突出する。これにより、楕円球容器23が保持される。
楕円球容器23において、楕円長軸は楕円短軸に対し、1.2倍~3倍程度であることが好ましい。1.2倍未満では、円球容器による効果が充分でなく、3倍超になると内側回転枠が扁平になり、回転バランスについて再検討が必要となる。なお、説明の便宜の為、図6例示では、楕円長軸は楕円短軸に対し1.5倍程度としている。
紡錘形容器や長円球容器を用いる場合は、上記長軸短軸比を参考に形状を設定する。
なお、図示では半透明容器となっているが、容器も硬質ボールと同等の材質(例えば、ジルコニアやアルミナ)であることが好ましい。ステンレスを用いてもよい。
<楕円球容器による効果>
本願発明者は様々な粉砕試験を繰り返し、3次元回転ボールミルの性能限界について検討した。たとえば、ボールの比重に比べて、被粉砕物の比重が明らかに軽い(例えば半分以下)場合、球状容器22では充分な粉砕効果が得られないことに気が付いた。
一般に用いられる硬質ボールはセラミック製や金属製である。セラミックの1種であるジルコニアの比重は5.7g/cm程度である。金属の1種であるアルミナの比重は4.0g/cm程度である。
被粉砕物としてもぐさ(比重0.2cm程度)やシルク(比重1.3cm程度)を想定すると、被粉砕物の比重は、ボール比重の半分以下である。なお、被粉砕物の比重がボール比重の1/4以下となると、下記不具合(粉砕不充分)は顕著となる。
図7は球状容器22と楕円球容器23との効果の違いを説明する図である。図8は球状容器22と楕円球容器23とのもぐさの粉砕試験結果の違いを説明する図である。図9は球状容器22と楕円球容器23とのシルクの粉砕試験結果の違いを説明する図である。
球状容器22を3次元回転させると、遠心力により、硬質ボールは球状容器22の内壁面に沿って移動する。所定時間経過すると、定常軌道になる。
一方で、比重の軽い被粉砕物は球状容器22中心付近に集まる傾向にある。その結果、硬質ボールは被粉砕物に接触することが少なく、充分な粉砕効果が得られない。
粉砕試験結果においても、もぐさは粉砕されず塊のままであり、硬質ボールと混合されていないままである(図8)。シルクは粉砕されず、嵩張っている(図9)。
楕円球容器23を3次元回転させると、遠心力により、硬質ボールは楕円球容器23の内壁面に沿って移動する。楕円球容器23の内壁面に沿って移動する硬質ボールの一部は、軌道を変えて内壁面から離れ、楕円球容器23の中心付近を通過する。この際、楕円球容器23中心付近に集まる比重の軽い被粉砕物と接触し、充分な粉砕効果が期待できる。
粉砕試験結果においても、もぐさは粉砕され微粉となり、硬質ボールと混合されている(図8)。シルクは粉砕され、嵩が減っている(図9)。
なお、様々な物質を粉砕し微粉として利用する需要がある。たとえば、シルクを微粉として、化粧品クリームに混ぜると、美白効果、保湿効果が期待できる。
図10は球状容器22と楕円球容器23との別の効果の違いを説明する図である。
ボールミルによる粉砕効果を確実にするため、硬質ボールの比重は比較的重い(例:ジルコニア比重5.7g/cm程度、アルミナ比重4.0g/cm程度)。
その結果、硬質ボール自重の影響が大きく、低速回転(例えば50rpm程度)の3次元回転では、硬質ボールが球状容器22の内壁を駆け上がることができないおそれがある。高速回転(例えば200rpm程度)の3次元回転としても、硬質ボールが球状容器22の内壁を駆け上がり、球状容器全面に軌跡を描くようになるまで、所定時間を要する。
これに対し、3次元回転において、楕円球容器23の長軸が水平となる際、硬質ボールが楕円球容器23の内壁を駆け上がりやすくなる。低速回転(例えば50rpm程度)の3次元回転でも、楕円球容器23の内壁を駆け上がることができる。高速回転(例えば200rpm程度)の3次元回転とすると、硬質ボールが球状容器22の内壁を駆け上がり、短時間で、球状容器全面に軌跡を描くようになる。その結果、粉砕時間が短くなる。なお、本願回転装置は400rpmの高速回転が可能である。
<大容器内小容器>
本願発明者は様々な粉砕試験を繰り返し、3次元回転ボールミルの性能限界について検討した。たとえば、被粉砕物が極めて小粒径(たとえば容器径の1/50以下、特に容器径の1/100以下)の場合や、少量(たとえば容器容量の1/100以下、とくに容器容量の1/1000以下)場合、充分な粉砕効果が得られないことに気が付いた。
本願発明者は、様々な粉砕試験、混合試験、分離試験をおこなうために、回転装置を開発し、内径80~200mmの容器22を用いている。説明の便宜上、容器内径を100mmとする。充分な粉砕効果を得るために、硬質ボール径8~25mm程度としている。説明の便宜上、硬質ボール径を15mmとする。
例えば、被粉砕物の粒径を1mmの粒とし、当該粒を1000粒とする。このような小粒径および小容量を粉砕する場合、硬質ボールと被粉砕物とが接触する回数は少なく、充分な粉砕効果が得られない(図11参考例1)。
このような不具合に対し、本願発明者は、内径30mmの小容器に小粒径(例えば粒径5mm)の硬質ボールを用い、容器を3次元回転させてみたところ、容器およびボールの小径化により充分な粉砕力が得られず、充分な粉砕効果が得られなかった(図11参考例2)。
ところで、3次元回転ボールミルにおいては、一般的なボールミル装置(2次元回転)に比べて、格段に粉砕効果が向上するとともに、ボール衝突による容器内発熱が顕著に抑制されている。本願発明者は、容器内発熱抑制の原理について考察したところ、一般的なボールミル装置においては、ボール同士およびボールと内壁が直線的に衝突するのに対し、3次元回転ボールミルにおいては、容器の3次元回転に伴い、ボールも3次元回転し、ボール同士およびボールと内壁が回転しながら擦れあって接触している可能性があると推察した。
上記推察から類推すれば、大容器22内に小容器24を入れ、大容器22を3次元回転させれば、小容器24は大容器22内壁面に沿って移動するとともに、小容器24自体も3次元回転する。
小容器24内に小粒径または/および少量の被粉砕物をいれることにより、小容器24内で3次元回転が実現される。小容器24は大容器内22内で大きく移動しているため、充分な粉砕力が得られる。その結果、被粉砕物が小粒径または/および少量であっても、充分な粉砕効果が得られる。
小容器24内径は大容器22内径の10~30%程度が好ましい。10%未満であると、小容器24内に入れられる被粉砕物量が制限される。また、充分な粉砕効果が得られない。30%超であると小容器24が大容器22内で自由に移動することが制限される。小容器24は大容器22材質と同等の材質であることが好ましい。
説明の便宜上、大容器22内径を100mmとし、小容器24内径を20mmとする(大径小径比20%)。これにより、被粉砕物粒径は小容器24内径の1/20(5%)となり、被粉砕物量は小容器24容量の1/8(12.5%)となる。被粉砕物は小容器24に対し適度な粒径や適度な量を有する(過度な小粒径や少量とならない)。
図11は大容器内小容器の概念図である。比較の為、参考例1(大容器)および参考例2(小容器)の3次元回転イメージを示す。
実施例1では、大容器22内に小容器24のみをいれ、大径硬質ボールを用いない。小容器24に被粉砕物と小径硬質ボール(例えば径1~3mm)を入れる。複数の小容器24を大容器22内に入れることにより、一の小容器24が他の小容器24に対し硬質ボールの様に作用する。すなわち、小容器24同士が回転しながら接触する。小容器24内において、小径硬質ボールが被粉砕物と回転しながら接触する。複数の小容器24に異なる物質を入れることもでき、少量多種の粉砕作業に好適である。
実施例2では、大容器22内に小容器24と大径硬質ボールをいれる。さらに小容器24に被粉砕物と小径硬質ボール(例えば径1~3mm)を入れる。大径硬質ボールと小容器24とが回転しながら接触し、さらに、小容器24内において、小径硬質ボールが被粉砕物と回転しながら接触する。少量少種の粉砕作業に好適である。
実施例3では、大容器22内に小容器24と大径硬質ボールをいれる。さらに小容器24に被粉砕物を入れる。大径硬質ボールと小容器24とが回転しながら接触し、さらに、小容器24内において、被粉砕物が回転しながら小容器24内壁に接触する。
実施例3の変形例(図示省略)として、大容器22内に複数の小容器24とをいれ、さらに小容器24に被粉砕物を入れてもよい。一の小容器24が他の小容器24に対し硬質ボールの様に作用する。
なお、薬品を粉砕して微粉とすると体内への吸収が良くなる等の効果がある。一般に、新規開発された薬品は高価であり、少量生産されることが多い。このような場合、大容器内小容器による粉砕が好適である。
<楕円球容器との相乗効果>
図12は大容器内小容器において、大容器または/および小容器に楕円球容器を用いる場合の概念図である。
小粒径または/および少量の被粉砕物においても、容器中心付近に集まる傾向にある。また、硬質ボールの比重に比べて、薬品等の比重が明らかに軽い(例えば半分以下)場合も多い。大容器内小容器と楕円球容器とを組み合わせることの相乗効果により、確実な粉砕効果が期待できる。
また、楕円球容器により粉砕する被粉砕物は徐々に小粒径化し、接触回数が減るおそれもある。楕円球容器と大容器内小容器とを組み合わせることの相乗効果により、確実な粉砕効果が期待できる。
実施例4では、大容器に球形容器を用い、小容器に楕円球容器を用いる。実施例5では、大容器に楕円球容器を用い、小容器に楕円球容器を用いる。実施例6では、大容器に楕円球容器を用い、小容器に球形容器を用いる。
実施例4~6において、実施例1~3を参考に、適宜大径硬質ボールや小径硬質ボールを適宜用いる。
<空気圧当接式伝達機構>
本願回転装置において伝達機構10は本質的構成であるが、主動円板6の回転力を従動円板9に伝達できれば、限定されない。
図1~3の伝達機構では、磁気による非接触式を例示している。図4の伝達機構では、ゴムによる接触(当接)式を例示している。
磁気による非接触式の伝達機構もゴムによる接触式の伝達機構も一長一短を有する。磁気による非接触式の伝達機構では、スリップを抑制する一方、構成が若干複雑で、磁石の自重を無視できない。ゴムによる接触式の伝達機構は、構成が簡単で、軽量である一方、スリップのおそれがある。
本願では、上記不具合を考慮して、別方式の伝達機構を提案する。
本実施形態の伝達機構10は中空チューブ構造であり、中空チューブ構造内の中空圧を調整可能である。
図12は、伝達機構10の中空チューブ構造内の中空圧を、(A)高圧状態、(B)中圧状態、(C)低圧状態に調整する動作説明図である。中空圧状態を矢印の太さでイメージしている。
高圧状態において、ゴム接触以上の弾性状態を実現できる。中空圧の押圧により、主動円板6周面が伝達機構10を介して従動円板9の板面外周部に確実に当接する。
中空チューブ構造による伝達機構は、ゴムによる伝達機構に準ずる構成の単純性および軽量性を実現できるとともに、磁石による伝達機構に準ずるスリップ抑制を実現できる。
中圧状態において、意図的にスリップを発生させ、非定常軌跡を実現できる。確実な伝達と適度なスリップが発生する中空圧に調整する。
本願発明者が本願回転装置の基本モデルを開発した当時は、定常軌道の方が好ましいと考えていた。したがって、意図しないスリップは好ましくないと考えていた。しかし、本願発明者は様々な粉砕試験を繰り返すうちに、繰り返し微小変化を与えたほうが、更なる粉砕効果が得られると考えるに至った。
意図的にスリップ発生を上記楕円球容器や大容器内小容器と適宜組み合わせることで、更なる粉砕効果が得られる。
低圧状態において、主動円板6と従動円板9との間を非伝達とすることができる。
図1に示す2つの電動モータ駆動式では、X-Xラインの回りで回転と、Z-Zラインの回りでの回転を個別に制御できる。したがって、一方の回転数をゼロとすることにより、3次元回転を2次元回転(1軸回転)とすることもできる。
一方で、図3に示す1つの電動モータ駆動式では、X-Xラインの回りで回転に従動してZ-Zラインの回りでの回転が発生する。したがって、3次元回転を2次元回転(1軸回転)とすることができない。
主動円板6と従動円板9との間を非伝達とすることで、1つの電動モータ駆動式(図3参照)においても、3次元回転を2次元回転(1軸回転)とすることができる。
<混合方法>
以上、3次元回転させることのできる回転装置をボールミル(粉砕装置)として用いるときの粉砕効果向上について説明してきたが、本願回転装置を混合に用いてもよい。
たとえば、比重の異なる物質Aと物質B(比重半分以下)を楕円球形容器23に入れ、3次元回転させる。
球状容器22に物質Aと物質Bを入れ3次元回転させても充分な混合効果が得られない場合でも、楕円球形容器23に入れ3次元回転させることで充分な混合効果が得られる。
たとえば、大容器22内に小容器24をいれ、さらに、小容器24に少量または/および小粒径の薬品粉末Aと薬品粉末Bを入れ、3次元回転させる。
大容器22に薬品粉末Aと薬品粉末Bを入れ3次元回転させても充分な混合効果が得られない場合でも、小容器24に薬品粉末Aと薬品粉末Bを入れ3次元回転させても充分な混合効果が得られない場合でも、大容器22内に小容器24をいれ、さらに、小容器24に少量または/および小粒径の薬品粉末Aと薬品粉末Bを入れ、3次元回転させることで充分な混合効果が得られる。
たとえば、伝達機構10に中空チューブ構造に用いた回転装置を混合に用いてもよい。中空圧を高圧状態とすることで、単純な構成、軽量と言う特徴を維持しながら、スリップを抑制できる。中空圧を中圧状態とすることで、意図的にスリップを発生させ、更なる混合効果が得られる。中空圧を低圧状態とすることで、1つの電動モータ駆動式においても、3次元回転を2次元回転とすることができる。
楕円球形容器と大容器内小容器と中空チューブ構造による伝達機構を適宜組み合わせることで、更なる混合効果が得られる。
<分離方法>
以上、3次元回転させることのできる回転装置をボールミル(粉砕装置)として用いるときの粉砕効果向上について説明してきたが、本願回転装置を分離に用いてもよい。
たとえば、大容器22内に小容器24をいれ、さらに、小容器24に少量または/および小サイズの物質Aと物質Bとから構成される複合物質Cを入れ、3次元回転させる。
大容器22に複合物質Cを入れ3次元回転させても充分な分離効果が得られない場合でも、小容器24に複合物質Cを入れ3次元回転させても充分な分離効果が得られない場合でも、大容器22内に小容器24をいれ、さらに、小容器24に少量または/および小サイズの複合物質Cを入れ、3次元回転させることで、物質Aと物質Bに分離でき、充分な分離効果が得られる。
なお、近年、半導体等の精密電子部品は極めて小型化する傾向がある。このような場合、大容器内小容器による分離が好適である。基盤に用いる樹脂と回路に用いる金属を分離できる。
たとえば、伝達機構10に中空チューブ構造に用いた回転装置を混合に用いてもよい。中空圧を高圧状態とすることで、単純な構成、軽量と言う特徴を維持しながら、スリップを抑制できる。中空圧を中圧状態とすることで、意図的にスリップを発生させ、更なる分離効果が得られる。中空圧を低圧状態とすることで、1つの電動モータ駆動式においても、3次元回転を2次元回転とすることができる。
楕円球形容器と大容器内小容器と中空チューブ構造による伝達機構を適宜組み合わせることで、更なる分離効果が得られる。
1 駆動モータ
2 第1水平軸
3 外側回転枠
4 駆動モータ
5 第2水平軸
6 主動円板
7 直交軸
8 内側回転枠
9 従動円板
10 非接触伝達機構
11 第1磁石
12 第2磁石
13 スペース
21 容器保持板
22 球状容器
23 楕円球容器
24 小容器

Claims (12)

  1. 球形である容器をX軸およびZ軸回りに3次元回転させることのできる回転装置を用い、
    前記容器に硬質ボールと被粉砕物を入れ、
    前記容器を3次元回転させる粉砕方法であって、
    前記容器に、小容器を入れ、前記小容器内に前記被粉砕物を入れ、
    前記小容器を3次元回転させる
    ことを特徴とする粉砕方法。
  2. 前記小容器は、球形容器である
    ことを特徴とする請求項1記載の粉砕方法。
  3. 前記小容器は、楕円球形容器、紡錘形容器、長円球容器のいずれかである
    ことを特徴とする請求項1記載の粉砕方法。
  4. 前記容器に入れた前記小容器内に、前記硬質ボールを入れる
    ことを特徴とする請求項1~3いずれか記載の粉砕方法。
  5. 前記硬質ボールには大径ボールと小径ボールがあり、
    前記容器に入れた前記小容器内に、前記小径ボールを入れ、
    前記小容器内に前記大径ボールを入れずに、前記容器に前記大径ボールを入れる
    ことを特徴とする請求項1~3いずれか記載の粉砕方法。
  6. 前記小容器内に前記硬質ボールを入れずに、前記容器に前記硬質ボールを入れる
    ことを特徴とする請求項1~3いずれか記載の粉砕方法。
  7. 前記小容器は、硬質ボールを兼ね、
    前記容器に、硬質ボールである小容器を複数入れ、前記小容器内に前記被粉砕物を入れる
    ことを特徴とする請求項1~3いずれか記載の粉砕方法。
  8. 前記回転装置は、
    第1回転駆動装置と、
    前記第1回転駆動装置により回転される第1水平軸と、
    前記第1水平軸に結合される外側回転枠と、
    前記第1回転駆動装置と反対側に設けられる第2回転駆動装置と、
    前記第1水平軸と反対側に設けられ、前記外側回転枠の一側面を貫通し、前記第2回転駆動装置により回転される第2水平軸と、
    前記第2水平軸に結合され、前記第2水平軸に垂直な方向に板面を有する主動円板と、
    前記第1水平軸および前記第2水平軸の軸芯方向とは直交方向に軸芯方向を有し、前記外側回転枠に設けられる直交軸と、
    前記直交軸に結合され、前記容器を保持する内側回転枠と、
    前記直交軸に結合され、前記直交軸に垂直な方向に板面を有する従動円板と、
    前記主動円板の回転力を前記従動円板に伝達する伝達機構と、
    前記第1回転駆動装置および第2回転駆動装置の出力を個別に制御する制御装置と、
    を備える
    ことを特徴とする請求項1~7いずれか記載の粉砕方法。
  9. 前記回転装置は、
    回転駆動装置と、
    前記回転駆動装置により回転される水平軸と、
    前記水平軸に結合される外側回転枠と、
    前記外側回転枠の一側面を貫通して前記水平軸に結合され、前記水平軸に垂直な方向に板面を有する主動円板と、
    前記水平軸の軸芯方向とは直交方向に軸芯方向を有し、前記外側回転枠に設けられる直交軸と、
    前記直交軸に結合され、前記容器を保持する内側回転枠と、
    前記直交軸に結合され、前記直交軸に垂直な方向に板面を有する従動円板と、
    前記主動円板まわりの回転力を前記従動円板に伝達する伝達機構と、
    前記回転駆動装置の出力を制御する制御装置と、
    を備える
    ことを特徴とする請求項1~7いずれか記載の粉砕方法。
  10. 前記被粉砕物の比重は前記硬質ボールの比重の半分以下である
    ことを特徴とする請求項1~9いずれかの粉砕方法。
  11. 球形である容器をX軸およびZ軸回りに3次元回転させることのできる回転装置を用い、
    前記容器に、小容器を入れ、前記小容器内に物質Aと物質Bとを入れ、
    前記容器を3次元回転させ、
    前記小容器を3次元回転させる
    ことを特徴とする混合方法。
  12. 前記物質Bの比重は前記物質Aの比重の半分以下である
    ことを特徴とする請求項11記載の混合方法。
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