JP7424357B2 - ポリブチレンテレフタレート組成物及びその成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリブチレンテレフタレート(以下「PBT」と称することがある)組成物に関し、特に射出成形や押出フィルム成形に適したポリブチレンテレフタレート組成物と、このポリブチレンテレフタレート組成物を成形してなる成形品に関する。
PBTは、その優れた物理的特性、化学的特性を活かしてエンジニアリングプラスチックとして電気電子部品、自動車用コネクター、繊維、フィルム、ボトルなどの成形材料に工業的に広く利用されている。
従来、4メッシュを通過し、16メッシュを通過しないポリエステル粒状体と、100メッシュを通過し、10μmのニッケルスクリーンを通過しないポリエステル微粉とを含み特定の物性を有するポリエステル組成物により、射出成形や押出成形において射出成形機、混練機又は押出機への安定した供給が可能であり、フィッシュアイの少ない成形品が得られることが開示されている(特許文献1)。
また、平均粒径が2mm以上6mm以下のポリブチレンテレフタレート樹脂粒子と、粒径が50μm以上1000μm以下の画分からなるポリブチレンテレフタレート細粒子とを含有する組成物により、異物の形成がより少なく、厚みのムラのより小さなラミネート層が得られることが開示されている(特許文献2)。
特開2018-154703号公報 特開2020-45460号公報
本発明の課題は、射出成形機や連続押出フィルム成形機等による成形品の製造を短時間でばらつきなく実施することができ、且つ、フィッシュアイが少ない等、成形外観に優れた成形品を得ることができるポリブチレンテレフタレート組成物の提供である。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のポリブチレンテレフタレート粒状体(A)とポリブチレンテレフタレート薄片体(B)とを所定の割合で含むポリブチレンテレフタレート組成物が、射出成形機や連続押出フィルム成形機等に供する供給材として、スクリュー食い込み性が良好で、且つ、フィッシュアイが少ない等、成形外観に優れた成形品を得ることが可能となることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1] タイラー4メッシュを通過し、タイラー16メッシュを通過しないポリブチレンテレフタレート粒状体(A)と、
最大長さ(b1)が1.1mm以上、該最大長さ(b1)に対し垂直方向の最大長さ(b2)が0.3mm以上、前記最大長さ(b1)と(b2)とで形成される平面に対し垂直方向の最大長さ(b3)が0.1mm以下であるポリブチレンテレフタレート薄片体(B)と
を含有するポリブチレンテレフタレート組成物であって、
該ポリブチレンテレフタレート粒状体(A)に対する該ポリブチレンテレフタレート薄片体(B)の含有割合が5~250質量ppmであるポリブチレンテレフタレート組成物。
[2] 前記ポリブチレンテレフタレート粒状体(A)の融点Tm(A)℃と、前記ポリブチレンテレフタレート薄片体(B)の融点Tm(B)℃とが下記式(1)を充足する[1]に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
25≧Tm(B)-Tm(A)≧0 (1)
[3] [1]又は[2]に記載のポリブチレンテレフタレート組成物を射出成形してなる成形品。
[4] [1]又は[2]に記載のポリブチレンテレフタレート組成物を押出フィルム成形してなる成形品。
本発明のポリブチレンテレフタレート組成物は、射出成形機や連続押出フィルム成形機等に供する供給材として、スクリュー食い込み性が良好で、成形品を短時間でムラなく製造することができ、且つ、フィッシュアイが少ない等、成形外観に優れた成形品を得ることができる。このため、本発明のポリブチレンテレフタレート組成物から、種々の電気電子部品、自動車用コネクター、フィルム、ボトル等の成形品を、高い生産性にて歩留りよく製造することができる。
以下に本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
[PBT組成物]
本発明のポリブチレンテレフタレート(PBT)組成物は、以下のPBT粒状体(A)とPBT薄片体(B)とを含む。本発明のPBT薄片体(B)は、さらに以下のPBT微粉(C)を含んでもよい。
PBT粒状体(A):タイラー4メッシュを通過し、タイラー16メッシュを通過しないポリブチレンテレフタレート粒状体(A)
PBT薄片体(B):最大長さ(b1)が1.1mm以上、該最大長さ(b1)に対し垂直方向の最大長さ(b2)が0.3mm以上、前記最大長さ(b1)と(b2)とで形成される平面に対し垂直方向の最大長さ(b3)が0.1mm以下であるポリブチレンテレフタレート薄片体(B)
PBT微粉(C):PBT薄片体(B)よりも小さい塊状のポリブチレンテレフタレート微粉(C)
本発明のPBT組成物中に含まれるPBT薄片体(B)量は、PBT粒状体(A)に対して5~250質量ppmである。
<PBT>
本発明のPBT組成物に含まれるPBT粒状体(A)、PBT薄片体(B)、及びPBT微粉(C)を構成するPBTは、テレフタル酸単位と1,4-ブタンジオール単位とを主たる構成要素とするポリエステルであり、PBT中のテレフタル酸単位の割合としては、全ジカルボン酸単位に対して80モル%以上が好ましく、85モル%以上がより好ましく、90モル%以上が更に好ましい。テレフタル酸単位の割合が上記下限値以上であることにより、結晶性が高く、機械物性に優れるPBT組成物とすることができる。
テレフタル酸以外のジカルボン酸としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸のような芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸のような脂環族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸のような脂肪族ジカルボン酸などを挙げることができる。
一方、PBT中の1,4-ブタンジオール単位の割合は全ジオール単位に対し、80モル%以上が好ましく、85モル%以上がより好ましく、90モル%以上が更に好ましい。1,4-ブタンジオール単位の割合が上記下限値以上であることより、結晶性に優れたPBT組成物となる傾向がある。
1,4-ブタンオール以外のジオールとしては、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどを挙げることができる。
なお、PBT粒状体(A)やPBT薄片体(B)の各ジカルボン酸単位、各ジオール単位は、PBT粒状体(A)やPBT薄片体(B)のH-NMRスペクトルを測定することにより定量することができる。具体的な測定方法は後掲の実施例の項に記載される通りである。
<PBT粒状体(A)>
本発明のPBT組成物に含まれるPBT粒状体(A)は、タイラー4メッシュを通過し、タイラー16メッシュを通過しないPBT粒状体(A)である。
PBT粒状体(A)は、例えば、後述の方法で製造されたPBTをタイラー4メッシュにより篩別し、タイラー4メッシュ篩下のものをタイラー16メッシュにより篩別し、タイラー16メッシュ篩上のものとして分離することができる。
PBT粒状体(A)は、重合後ストランド状物又はシート状物をカットして得られることが多いので、その形状は円柱や楕円柱、又は直方体であることが多い。
PBT粒状体(A)の寸法としては、概ね、長さが3~5mm程度、長径が2~4mm程度、短径が2~3mm程度であることが多い。
PBT粒状体(A)の固有粘度(IV)は、0.6dL/g以上2.0dL/g以下が好ましく、より好ましくは0.7dL/g以上1.8dL/g以下、更に好ましくは0.8dL/g以上1.7dL/g以下、最も好ましくは0.85dL/g以上1.4dL/g以下である。IVが低いと機械物性が低下する傾向にあり、IVが高いと溶融して成形する際に流動性が悪く、成形性が劣る傾向にある。PBT粒状体(A)及び後述のPBT薄片体(B)の固有粘度(IV)は、後掲の実施例の項に記載の方法で測定される。
<PBT薄片体(B)>
本発明のPBT組成物に含まれるPBT薄片体(B)は、最大長さ(b1)が1.1mm以上、該最大長さ(b1)に対し垂直方向の最大長さ(b2)が0.3mm以上、前記最大長さ(b1)と(b2)とで形成される平面に対し垂直方向の最大長さ(b3)が0.1mm以下であるPBT薄片体(B)である。
本発明に係るPBT薄片体(B)は、「薄片体」、換言すれば鱗片状であり、PBT薄片体(B)の最大長さ(b1)としては、当該PBT薄片体(B)を2枚の平行な板で挟んだ場合に、この2枚の板の間隔が最も大きい部位の長さに該当する。
また、この最大長さ(b1)に対して垂直方向の最大長さ(b2)とは、最大長さ(b1)に該当する長さ方向の線分に対して垂直な直線を引いたときに、PBT薄片体(B)内で最もその長さを長くとれる部位の長さに該当する。
更に、最大長さ(b1)と最大長さ(b2)で形成される平面に対して垂直方向の最大長さ(b3)とは、最大長さ(b1)に該当する長さ方向の線分と最大長さ(b2)に該当する長さ方向の線分を含む平面に垂線を立てた場合、PBT薄片体(B)内で最もその長さを長くとれる部位の長さに該当する。
例えば、PBT薄片体(B)が薄板状の場合、通常、最大長さ(b1)は当該薄板の板面の長径に該当し、最大長さ(b2)は当該薄板の板面の短径に該当し、最大長さ(b3)は当該薄板の厚さに該当する。
PBT薄片体(B)の最大長さ(b1)は1.1mm以上であり、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは5.0mm以上、更に好ましくは8.5mm以上である。最大長さ(b1)の上限は、通常100.0mm以下、好ましくは50.0mm以下である。
PBT薄片体(B)の最大長さ(b2)は0.3mm以上であり、好ましくは1.1mm以上、より好ましくは3.0mm以上である。最大長さ(b2)の上限は、通常10.0mm以下、好ましくは7.0mm以下である。
PBT薄片体(B)の最大長さ(b3)は0.1mm以下、好ましくは0.05mm以下、より好ましくは0.03mm以下である。最大長さ(b3)の下限は、通常0.001mm以上、好ましくは0.005mm以上である。
最大長さ(b1)、最大長さ(b2)、最大長さ(b3)が上記範囲であることで、射出成形機や連続押出フィルム成形機等のスクリューへの食い込みが安定し、成形品を短時間でムラなく製造することができ、該成形品のフィッシュアイが少ない等、成形外観に優れた成形品を得ることが可能となる。
PBT組成物に、かかるPBT薄片体(B)が存在すると、上記のような効果が発揮される理由は定かではないが、後述するように、好適なPBT薄片体(B)は、PBT粒状体(A)よりもやや高い融点を有しており、これがPBT粒状体(A)の表面又はPBT粒状体(A)同士の間隙に存在することにより、熱の伝導や結晶化等の熱的特性に好ましい影響をもたらすことによるものと考えられる。
なお、PBT薄片体(B)には、様々な大きさのものが存在し、最大長さ(b1)、最大長さ(b2)及び最大長さ(b3)が異なるものが混在している。
本発明におけるPBT薄片体(B)の最大長さ(b1)とは、このような様々な値の最大長さ(b1)を有する薄片体が混在しているPBT薄片体(B)において、選別後の寸法測定により求められた値のうち該当する成分の値である。
同様に、本発明におけるPBT薄片体(B)の最大長さ(b2)とは、このような様々な値の最大長さ(b2)を有する薄片体が混在しているPBT薄片体(B)において、選別後の寸法測定により求められた値のうち該当する成分の値である。
同様に、本発明におけるPBT薄片体(B)の最大長さ(b3)とは、このような様々な値の最大長さ(b3)を有する薄片体が混在しているPBT薄片体(B)において、選別後の寸法測定により求められた値のうち該当する成分の値である。
このように、PBT薄片体(B)には様々な大きさの薄片体が存在するため、後述のPBTからの取得方法は一律ではない。製造されたPBTからPBT薄片体(B)を分取する方法として、振動篩では効率が悪いので、例えば、風選による分離が好ましい。即ち、PBT薄片体(B)には振動篩にはむかない形状が存在するので、風選が好ましく、分離が悪い場合は複数回の風選を実施するなどして分取することが望ましい。
PBT薄片体(B)は、以下の基準において、通常前記PBT粒状体(A)と実質的に同じ構成成分のPBTよりなる。
すなわち、PBT粒状体(A)、PBT薄片体(B)をそれぞれをH-NMRスペクトルによりジカルボン酸単位とジオール単位を定量したとき、PBT薄片体(B)のジカルボン酸単位及びジオール単位それぞれの測定値が、PBT粒状体(A)のジカルボン酸単位及びジオール単位のそれぞれの測定値に対して、その差が1モル%以下であれば実質的に同じジカルボン酸成分単位とジオール単位よりなるとみなすことができる。
PBT薄片体(B)の固有粘度(IV)は、PBT粒状体(A)の固有粘度(IV)と同様の理由から、0.6dL/g以上2.2dL/g以下が好ましく、より好ましくは0.7dL/g以上2.0dL/g以下、更に好ましくは0.8dL/g以上1.9dL/g以下、最も好ましくは、0.85dL/g以上1.6dL/g以下である。
通常、後述の方法で製造されたBPTからPBT粒状体(A)を分取し、次いでPBT薄片体(B)を分離回収する場合、PBT粒状体(A)とPBT薄片体(B)の固有粘度はほぼ同等から高めとなる。これは、薄片体が発生する過程で受ける衝撃が影響していると考えられる。
<PBT粒状体(A)とPBT薄片体(B)の融点差>
本発明の効果は、PBT粒状体(A)の融点Tm(A)(単位:℃)と、PBT薄片体(B)の融点Tm(B)(単位:℃)が下記式(1)を満足するとき最大限に発揮される。
25≧Tm(B)-Tm(A)≧0 (1)
Tm(B)とTm(A)との差(以下、「ΔTm」と記載する場合がある。)は、好ましくは20℃以下で、15℃以下、10℃以下、8℃以下、6℃以下、4℃以下の順に好ましくなり、最も好ましくは2℃以下である。
また、Tm(B)とTm(A)との差ΔTmは通常0℃以上で、好ましくは0.5℃以上、より好ましくは1℃以上である。
なお、PBT粒状体(A)及びPBT薄片体(B)の融点は、後掲の実施例の項に記載の方法で測定される。
特に制限はないが、PBT粒状体(A)の融点Tm(A)は200℃以上230℃以下が好ましく、より好ましくは205℃以上227℃以下、更に好ましくは207℃以上225℃以下である。PBT粒状体(A)の融点Tm(A)が上記下限以上であれば耐熱性に優れ、上記上限以下であれば射出成形が容易である。
同様な理由から、PBT薄片体(B)の融点Tm(B)は特に制限はないが、200℃以上255℃以下が好ましく、より好ましくは205℃以上252℃以下、更に好ましくは207℃以上250℃以下である。
PBT薄片体(B)は、後述の方法で製造され、溶融重合のカッティング終了後、ペレットを配管内、およびバルブ等を経由して、設備内を高速で輸送する際に、例えば、配管曲がり部で管壁に衝突したペレットが受ける衝撃によって発生する。そのまま、ペレットに混入する事もあれば、配管内に付着して滞留し、度重なる配管へのペレットの衝突により、成長することもある。
PBT薄片体(B)は、配管内に滞留しても、ペレットの間欠的な輸送の場合、輸送開始時あるいは、終了時のタイミングで脱落しやすく、ペレットに混入する。連続的な輸送の場合、輸送設備の状況に応じて、連続的あるいは一定期間毎に脈動して混入する。
また、PBT薄片体(B)は、PBT粒状体(A)よりも高融点化している場合もあり、製品ペレットに混入した場合、未溶融になりやすく、含有量によっては、更に成形品の外観不良や強度低下に影響する。
通常、後述の方法で製造されたPBTからPBT粒状体(A)を分取し、次いでPBT薄片体(B)を分離回収する場合、PBT粒状体(A)とカッティング時の割れで発生する場合のPBT薄片体(B)の融点はほぼ同等となるが、製造されたPBTから上記式(1)を満たすPBT粒状体(A)とPBT薄片体(B)を分取するには、上記のペレットの配管輸送などに伴う、せん断を受けて発生したPBT薄片体(B)を、例えば風選による分離で分取すればよい。分離が悪い場合は複数回の風選を実施するなどして分取することが望ましい。
<PBT微粉(C)>
本発明のPBT組成物は、PBT薄片体(B)よりも小さい塊状のPBT微粉(C)を含んでいてもよい。
PBT微粉(C)とは、例えば、特許文献1に記載のポリエステル微粉(B)に該当し、以下のようにして回収、計測できるものである。
ポリエステル組成物試料1kgをタイラー4メッシュで篩分し、該タイラー4メッシュを通過したポリエステル組成物試料を更にタイラー16メッシュで篩分する。篩分後、該タイラー16メッシュ上にあるポリエステル組成物試料をタイラー100メッシュ上に移し、水2Lを5回に分割してタイラー100メッシュ上のポリエステル組成物試料を洗浄する。その後ポリエステル組成物試料を乾燥し、ポリエステル粒状体(A)とし、重量を測定する。前記洗浄に供した水は該タイラー100メッシュ下で回収する。次いで、該濾過した水は更に目開き10μmのニッケルスクリーンにより濾過し、該目開き10μmのニッケルスクリーンを120℃で4時間乾燥し、該目開き10μmのニッケルスクリーン上にある固形物を回収し、ポリエステル微粉(C)を得、重量を測定し、ポリエステル粒状体(A)量に対するポリエステル微粉(C)量の割合を計算する。
PBT微粉(C)は、後述の実施例の項に示されるように、製造されたPBTからPBT粒状体(A)及びPBT薄片体(B)を分取した後の微粉分、或いは、分取したPBT粒状体(A)又はPBT薄片体(B)に付着している微粉分を洗浄除去したときの洗浄水中の微粉分として得ることができる。
<PBT粒状体(A)、PBT薄片体(B)及びPBT微粉(C)の含有割合>
本発明のPBT組成物においてPBT薄片体(B)の含有割合は、PBT粒状体(A)の量に対して5質量ppm~250質量ppmであり、好ましくは11質量ppm~245質量ppmであり、より好ましくは13質量ppm~240質量ppmである。
上記範囲であることにより、射出成形機や連続押出フィルム成形機等のスクリューへの食い込みが安定し、成形品を短時間でムラなく製造することができ、該成形品のフィッシュアイが少ない等、成形外観に優れた成形品を得ることが可能となる。
本発明のPBT組成物がPBT微粉(C)を含有する場合、PBT微粉(C)の含有量としては、本発明の効果に影響しない程度であれば特に限定されない。
例えば、特許文献1や特許文献2に記載されている方法で特定される微粉として、PBT微粉(C)の含有割合は、粒状体(A)に対し、通常95質量ppm以下、好ましくは1~95質量ppm、より好ましくは5~60質量ppmである。
あるいは、PBT組成物に対するPBT微粉(C)の含有割合は、通常95質量ppm以下、好ましくは、1~95質量ppm、より好ましくは5~60質量ppmである。
PBT微粉(C)の含有割合が上記範囲内であると本発明の効果に影響しない。
なお、本発明のPBT組成物がPBT微粉(C)を含む場合、PBT粒状体(A)に対するPBT薄片体(B)とPBT微粉(C)の合計の含有割合は、上述のPBT微粉(C)の好適含有割合を満たし、5~345質量ppm、特に12~340質量ppm、とりわけ18~300質量ppmであることが好ましい。
PBT薄片体(B)及びPBT微粉(C)の合計の含有割合が上記範囲内であると本発明の効果に影響しない。
いずれの場合においても、本発明のPBT組成物中のPBT粒状体(A)の含有割合は99.9655質量%以上、特に99.9700質量%以上であることが好ましい。
<他の成分>
本発明のPBT組成物は、その用途に応じて更に結晶核剤、酸化防止剤、着色防止剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、離型剤、易滑剤、難燃剤、帯電防止剤、無機及び/又は有機粒子等を含有することができる。
<PBT組成物の製造方法>
本発明のPBT組成物の製造方法は特に制限されるものではないが、通常、常法に従ってPBTを製造し、得られたPBTからPBT粒状体(A)、PBT薄片体(B)、更に必要に応じてPBT微粉(C)を分離し、これらを所定の割合で混合することにより製造することができる。或いは、分離工程の運転条件、分離回数などを調整し、含有量を調整して製造することができる。
PBTの製造には、通常の方法を適用することができる。例えば、PBTは、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分と、1,4-ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、所定割合で撹拌下に混合して原料スラリーとする工程、次いで、該原料スラリーを常圧又は加圧下で加熱して、エステル化反応させPBT低重合体とする工程、次いで、得られた低重合体を漸次減圧するとともに、加熱して、溶融重縮合反応させPBT粒状体を得る溶融重縮合工程を経て製造される。該PBT粒状体を風選、篩分した後、必要に応じ混合することで、本発明のPBT組成物を得ることができる。
PBT低重合体とする工程の例としては、単一のエステル化反応槽、又は複数のエステル化反応槽を直列に接続した多段反応装置を用いて、該反応で生成する水と余剰のジオール成分を系外に除去しながら、エステル化反応率(原料ジカルボン酸成分の全カルボキシル基のうちジオール成分と反応してエステル化したものの割合)が、通常90%以上に達するまで行い、PBT低重合体を得る方法が挙げられる。
溶融重縮合工程の例としては、単一の溶融重縮合槽、又は複数の溶融重縮合槽を直列に接続し、例えば、第1段目が撹拌翼を備えた完全混合型の反応器、第2段及び第3段目が撹拌翼を備えた横型プラグフロー型の反応器からなる多段反応装置を用いて、減圧下に生成するジオールを系外に留出させながら行う方法が挙げられる。
PBT重縮合触媒の反応系への添加は、前記ジカルボン酸成分とジオール成分の混合・調製段階、前記PBT低重合体とする工程の任意の段階、又は溶融重縮合工程の初期の段階のいずれであってもよい。また、この際用いられるPBT重縮合用触媒としては、アンチモン、ゲルマニウム、チタン等の化合物が用いられる。
更に、PBT低重合体とする工程や溶融重縮合工程において、熱分解やジオールの二量化などの副反応を抑制するために、酸化防止剤や塩基性化合物を添加することもできる。具体的には、酸化防止剤としては、イルガノックス1330(BASF社製)、イルガノックス1010(BASF社製)等が挙げられ、塩基性化合物としては、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の第三級アミン、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ-n-ブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム等の水酸化第四級アンモニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム等が挙げられる。
前記溶融重縮合工程により得られるPBTは、通常、重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出した後、該ストランド状のPBTを水冷しながら、又は水冷後、カッターで切断してペレット状又はチップ状等のPBT粒状体とする。
その後、PBT粒状体を移送配管で粒状体量に対してガス量が多い低密度気力輸送を行い、サイロに回収する。
得られたPBT粒状体を風選、篩分等によりPBT粒状体(A)を分離回収した後、PBT薄片体(B)を回収し、更に必要に応じてPBT微粉(C)を得、これらを所定の割合で混合することにより、更に必要に応じて前述の他の成分を添加混合することにより、本発明のPBT組成物を得ることができる。
なお、前述の他の成分のうち、一部のもの、例えば前述の酸化防止剤等は、PBTの製造工程において、適宜添加することもできる。
このようなPBTの製造工程で得られるペレット状又はチップ状等のPBT粒状体に、PBT粒状体(A)に該当する粒子と、PBT薄片体(B)に該当する薄板と、PBT微粉(C)に該当する微粉が混在する理由は、ペレットまたはチップのカッティング以降の樹脂を使用するまでのハンドリング方法、例えば、配管を使用してのペレットまたはチップの輸送などに由来する。
このため、ペレット状又はチップ状等のPBT粒状体から、PBT粒状体(A)、PBT薄片体(B)、PBT微粉(C)を分離回収し、必要に応じて、これを所定の割合で混合することで、本発明のPBT組成物を製造することができる。或いは、分離工程の運転条件、分離回数などを調整し、含有量を調整して製造することができる。
本発明のPBT組成物に用いられるPBT粒状体(A)、PBT薄片体(B)、PBT微粉(C)は、各々別のPBT製造工程から得られたものであってもよいが、上記の通り、同一の製造工程から得られたものを用いることが効率的である。
<PBT粒状体(A)に対するPBT薄片体(B)量の定量方法>
既存のPBT組成物中に含まれるPBT薄片体(B)のPBT粒状体(A)に対する割合は、以下のようにして求めることができる。
PBT組成物中のPBT薄片体(B)の含有量は、例えば、以下の操作で、測定することが出来る。
1KgのPBT組成物を計量し、以下の選別処理を実施してPBT薄片体(B)を計量する。
(1) タイラー4メッシュで篩い、篩上の成分を回収する。(回収物I)
(2) 更にタイラー4メッシュ篩下成分をタイラー14メッシュで篩う。
(3) タイラー14メッシュの篩上成分を回収する。
(4) (3)の回収物をタイラー8メッシュで篩う。
(5) タイラー8メッシュ下成分を回収する。粒状体がある場合は目視選別し取り除く。(回収物II)
(6) タイラー8メッシュ上成分を回収する。
(7) (6)の回収物から粒状体と薄片体を目視選別し、薄片体を回収する。(回収物III)
PBT薄片体量は、回収物Iと回収物IIと回収物IIIの合計である。(合計回収物)
このPBT薄片体に付着した微粉を除去するために、合計回収物をタイラー100メッシュ上にのせて、水2Lを5回に分割して、PBT薄片体を洗浄する。洗浄後のタイラー100メッシュ上成分を乾燥し、PBT薄片体(B)を得る。その後、重量を測定する。
PBT粒状体は、(5)で目視選別した粒状体成分と(7)で薄片体を除去した粒状体成分の合計に該当する。
該PBT粒状体に付着した微粉を除去するために、これをタイラー100メッシュ上にのせて、水2Lを5回に分割して、該PBT粒状体を洗浄する。洗浄後の100メッシュ上成分を乾燥し、PBT粒状体(A)を得る。その後、重量を測定する。
PBT粒状体(A)に対するPBT薄片体(B)の割合を計算することで、PBT組成物中のPBT粒状体(A)に対するPBT薄片体(B)の割合を求めることができる。
<用途>
本発明のPBT組成物は、射出成形や押出フィルム成形により、スクリュー食い込み等のトラブルを引き起こすことなく、短時間でばらつきのない、成形外観に優れた成形品を製造することができるため、射出成形用PBT組成物、押出フィルム成形用PBT組成物として有用である。
[成形品]
本発明のPBT組成物を射出成形又は押出フィルム成形してなる成形品は、種々の電気電子部品、自動車用コネクター、フィルム、ボトル等、各種製品として有用である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、本発明における評価法、測定法は以下の通りである。
<PBT粒状体(A)とPBT薄片体(B)のジカルボン酸単位及びジオール単位の定量>
PBT粒状体(A)又はPBT薄片体(B)試料約100mgを重クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール=7/3(体積比)の混合溶媒1mLに溶解後、重ピリジン36μLを添加し、測定溶液とした。該測定溶液を日本電子(株)製「α-400」NMR測定装置により、50℃でH-NMRを測定し、PBT粒状体(A)及びPBT薄片体(B)のジカルボン酸単位及びジオール単位を定量した。
<PBT粒状体(A)とPBT薄片体(B)の融点の測定>
パーキンエルマー社製示差走査熱量計「型式DSC7」を使用し、PBT粒状体(A)及びPBT薄片体(B)試料1mg~2mgを、昇温速度20℃/minで室温から300℃まで昇温した後、降温速度20℃/minで80℃まで降温し、吸熱ピークの温度を融点とした。
<PBT粒状体(A)の固有粘度(IV)>
PBT粒状体(A)試料約0.25gを、フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒約25mLに、濃度が1.00g/dLとなるように溶解させた後、30℃まで冷却し、30℃において全自動溶液粘度計(センテック社製、「DT553」)にて、試料溶液の落下速度、溶媒のみの落下秒数それぞれを測定し、以下の式により、固有粘度(IV)を算出した。
IV=((1+4KHηsp)0.5-1)/(2KHC)
ここで、ηsp=η/η0-1であり、ηは試料溶液の落下秒数、η0は溶媒のみの落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用した。なお試料の溶解条件は、110℃で30分間とした。
<PBT組成物の計量時間変動評価>
PBT組成物を窒素雰囲気下、140℃で4時間乾燥し、射出成形機(日精樹脂工業社製「FE-80」)を用い、次の条件により射出成形を行い、計量時間変動を評価した。すなわち、縦110mm×横110mm×厚み2mmのフィルムシートを連続100回射出成形し、各々の計量時間を計測し、その平均計量時間及び標準偏差を求めた。
平均計量時間が小さくまた標準偏差が小さいほどPBT組成物のスクリューへの食い込み性に変動がなく、優れていることを示している。
シリンダー温度(ノズルからホッパー下の間の4か所の温度):
245℃-250℃-240℃-210℃
スクリュー回転数:135rpm
計量:1回当たり約96g
背圧:0.10MPa
射出時間:10秒
冷却時間:20秒
金型温度:30℃
<フィッシュアイ数の測定>
PBT組成物を窒素雰囲気下、140℃で4時間乾燥し、連続押出フィルム成形装置(OCS社製「ME-20/26V2&CR-7&FS-5」)により、次の条件でフィルム成形を行い、フィッシュアイ(個/m)を測定した。フィッシュアイ数は、フィルムを製膜しつつ装置付属のCCDカメラにより、1mの面積中に存在する長径16μm以上のサイズの個数を自動的にカウントして測定した。この値が小さいほど、成形外観に優れることを示している。中でも1,000個/m以下であることが好ましい。
シリンダー温度(ノズルからホッパー下の間の4か所の温度):
250℃-250℃-250℃-250℃
スクリュー回転数:100rpm
樹脂圧:75MPa
チルロール温度:50℃
フィルム厚み:50μm
[実施例1]
テレフタル酸1モルに対して1,4-ブタンジオールを1.8モルの割合とした出発原料を原料供給口からスラリー調製槽に供給し、撹拌、混合してスラリーを調製した。該スラリーを温度230℃、圧力78.7kPaに調整したエステル化反応槽に1,836質量部/時間で連続的に供給すると共に、該エステル化反応槽に具備された触媒供給口からテトラ-n-ブチルチタネートを1.06質量部/時間で連続的に供給し、撹拌下、滞留時間3時間としてエステル化反応させて、エステル化反応率97.5%の低重合体を得た。
該低重合体を温度250℃、圧力2.66kPaに調整した第1重合反応槽に連続的に供給し、撹拌下、滞留時間2時間で重合反応させ、プレポリマーAを得た。該プレポリマーAの固有粘度は0.250dL/gであった。該プレポリマーAを温度250℃、圧力0.133kPaに調整した第2重合反応槽に連続的に供給し、撹拌下、滞留時間3時間で重合反応を更に進めて、プレポリマーBを得た。該プレポリマーBの固有粘度は0.872dL/gであった。次いで、該プレポリマーBを温度250℃、圧力0.133kPaに調整した第3重合反応槽に連続的に供給し、撹拌下、滞留時間2時間で重合反応を更に進めて、ポリマーを得た。
該ポリマーを第3重合反応槽より抜き出しダイに移送し、円柱状のストランドとしてポリマーを押し出し、20℃の冷却水で0.9秒間冷却した後、カッティングしてポリマー粒状体とした。該ポリマー粒状体の固有粘度は1.20dL/gであった。また、該ポリマー粒状体1個当たりの重量は平均22mgであった。
カッティング直後のポリマー粒状体1kgをタイラー4メッシュで篩分し、通過したポリマー粒状体を更にタイラー16メッシュで篩分した。篩分後、該タイラー16メッシュ上にあるポリマー粒状体をタイラー100メッシュ上に移し、水2Lを5回に分割してタイラー100メッシュ上のポリマー粒状体を洗浄した。その後乾燥し、PBT粒状体(A)とし、重量を測定した。
なお、このPBT粒状体(A)は洗浄、乾燥した直後のPBT試料であり、PBT薄片体(B)、PBT微粉(C)のいずれも付着していなかった。
次に、タイラー16メッシュ下にあるポリマー粒状体を、移送配管を用いて粒状体量に対してガス量が多い低密度気力輸送を気流速度25m/秒で行い、スペックタンクを経由して、製品サイロにPBT粒状体・微粉混合物として回収した。
その後、PBT粒状体・微粉混合物を風選設備で(三興空気装置株式会社製「CFA2」)で処理し、振動篩で篩分して、フレキシブルコンテナに包装した。
風選設備で気流側に分離された成分の中から目視で回収し、回収物から寸法測定することにより、以下のPBT薄片体を分取した。
最大長さ(b1):100mm以上
最大長さ(b2):2mm
最大長さ(b3):0.02mm
分取した該PBT薄片体には、PBT微粉(C)が混在していた。該PBT薄片体からPBT微粉(C)を除去するために、タイラー14メッシュ上に移し、水2Lを5回に分割して洗浄した。PBT微粉(C)を除去した成分を乾燥し、最大長さ(b1)を2mmにカットして、以下のPBT薄片体(B)を得た。
最大長さ(b1):2mm
最大長さ(b2):2mm
最大長さ(b3):0.02mm
次いで、上記洗浄に供した水をタイラー14メッシュ下で回収し、回収した水を更に目開き10μmのニッケルスクリーンにより濾過し、該目開き10μmのニッケルスクリーンを120℃で4時間乾燥し、該目開き10μmのニッケルスクリーン上にある固形物を回収して、PBT(C)を得た。
なお、PBT粒状体(A)とPBT薄片体(B)は、H-NMR分析によるジカルボン酸単位及びジオール単位の定量の結果、同じ組成であることを確認した。
PBT粒状体(A)の融点は224℃、固有粘度(IV)は1.20dL/gであり、PBT薄片体(B)の融点は240℃であった(融点差ΔTm=16℃)。
次に分取したPBT粒状体(A)に対してPBT薄片体(B)15質量ppmを添加し、均一となるように混合し、PBT組成物を調製した。該PBT組成物について測定、評価を行った結果を表1にまとめた。
[実施例2]
実施例1において、PBT薄片体(B)を回収し、最大長さ(b1)を10mmにカットしたこと以外は同様にして各長さが以下の値となるPBT薄片体(B)を得たこと以外は同様にしてPBT組成物を調製した。該PBT組成物について測定、評価を行った結果を表1にまとめた。
最大長さ(b1):10mm
最大長さ(b2):2mm
最大長さ(b3):0.02mm
[実施例3]
実施例1において、PBT薄片体(B)の添加量をPBT粒状体(A)に対して230質量ppmとしたこと以外はそれぞれ同様にしてPBT組成物を調製した。該PBT組成物について測定、評価を行った結果を表1にまとめた。
[実施例4]
実施例2において、PBT薄片体(B)の添加量をPBT粒状体(A)に対して230質量ppmとしたこと以外はそれぞれ同様にしてPBT組成物を調製した。該PBT組成物について測定、評価を行った結果を表1にまとめた。
[実施例5]
実施例4において、ペレットの低密度気力輸送を気流速度20m/秒に低下させて、薄片体が発生する際の衝突時の衝撃を小さくすることで、融点が230℃のPBT薄片体(B)を得たこと以外は同様にしてPBT組成物を調製した。該PBT組成物について測定、評価を行った結果を表1にまとめた。
[実施例6]
実施例2において、PBT薄片体(B)をPBT粒状体(A)に対して15質量ppm添加し、更にPBT微粉(C)をPBT粒状体(A)に対して60質量ppm添加したこと以外は同様にしてPBT組成物を調製した。該PBT組成物について測定、評価を行った結果を表1にまとめた。
[実施例7、8]
実施例1において、PBT薄片体(B)を回収し、最大長さ(b1)を60mmにカットして各長さが以下の値となるPBT薄片体(B)を得、添加量を15質量ppm又は230質量ppmとしたこと以外は同様にしてPBT組成物を調製した。該PBT組成物について測定、評価を行った結果を表1にまとめた。
最大長さ(b1):60mm
最大長さ(b2):2mm
最大長さ(b3):0.02mm
[比較例1]
実施例1において、ペレットの低密度気力輸送を気流速度20m/秒に低下させて、薄片体が発生する際の衝突時の衝撃を小さくすることにより、融点230℃のPBT薄片体(B)を回収し、PBT薄片体(B)の添加量をPBT粒状体(A)に対して300質量ppmとしたこと以外は同様にしてPBT組成物を調製した。該PBT組成物について測定、評価を行った結果を表2にまとめた。
[比較例2]
実施例1において、ペレットの低密度気力輸送を気流速度30m/秒に上げて、薄片体が発生する際の衝突時の衝撃を大きくすることにより、融点250℃のPBT薄片体(B)を回収し、PBT薄片体(B)の添加量をPBT粒状体(A)に対して300質量ppmとしたこと以外は同様にしてPBT組成物を調製した。該PBT組成物について測定、評価を行った結果を表2にまとめた。
[比較例3]
実施例1において、PBT薄片体(B)を添加せず、PBT粒状体(A)のみを用いてPBT組成物とした。該PBT組成物について測定、評価を行った結果を表1にまとめた。
[比較例4]
比較例1において、PBT薄片体(B)をPBT粒状体(A)に対して300質量ppm添加し、更にPBT微粉(C)をPBT粒状体(A)に対して110質量ppm添加したこと以外は同様にしてPBT組成物を調製した。該PBT組成物について測定、評価を行った結果を表2にまとめた。
[比較例5]
実施例1において、以下のPBT薄片体(B)の添加量をPBT粒状体(A)に対して300質量ppmとしたこと以外は同様にしてPBT組成物を調製した。該PBT組成物について測定、評価を行った結果を表2にまとめた。
最大長さ(b1):2mm
最大長さ(b2):2mm
最大長さ(b3):0.02mm
[比較例6]
実施例1において、以下のPBT薄片体(B)の添加量をPBT粒状体(A)に対して300質量ppmとしたこと以外は同様にしてPBT組成物を調製した。該PBT組成物について測定、評価を行った結果を表2にまとめた。
最大長さ(b1):10mm
最大長さ(b2):2mm
最大長さ(b3):0.02mm
[比較例7]
実施例1において、以下のPBT薄片体(B)の添加量をPBT粒状体(A)に対して300質量ppmとしたこと以外は同様にしてPBT組成物を調製した。該PBT組成物について測定、評価を行った結果を表2にまとめた。
最大長さ(b1):60mm
最大長さ(b2):2mm
最大長さ(b3):0.02mm
Figure 0007424357000001
Figure 0007424357000002
表1,2より次のことが分かる。
本発明のPBT組成物は実施例で示した通り、射出成形機や連続押出フィルム成形機等による成形品の製造を短時間でムラなく実施することができ、また、フィルム評価結果よりフィッシュアイが少ない等、成形外観が良好な成形品とすることができる。
このように短時間でムラなく成形できるということは、成形時の熱履歴のばらつきが小さくなり、且つ複数の成形品を成形しても該複数の成形品で機械物性等にばらつきがなく安定することを示している。よって要求される特性が極めて厳しい電気電子部品、自動車用コネクター、フィルム、ボトル等の射出成形用又は押出フィルム成形用に本発明のPBT組成物は好適に使用することができる。

Claims (4)

  1. タイラー4メッシュを通過し、タイラー16メッシュを通過しないポリブチレンテレフタレート粒状体(A)と、
    最大長さ(b1)が1.1mm以上、該最大長さ(b1)に対し垂直方向の最大長さ(b2)が0.3mm以上、前記最大長さ(b1)と(b2)とで形成される平面に対し垂直方向の最大長さ(b3)が0.1mm以下であるポリブチレンテレフタレート薄片体(B)と
    を含有するポリブチレンテレフタレート組成物であって、
    該ポリブチレンテレフタレート粒状体(A)に対する該ポリブチレンテレフタレート薄片体(B)の含有割合が5~250質量ppmであるポリブチレンテレフタレート組成物。
  2. 前記ポリブチレンテレフタレート粒状体(A)の融点Tm(A)℃と、前記ポリブチレンテレフタレート薄片体(B)の融点Tm(B)℃とが下記式(1)を充足する請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
    25≧Tm(B)-Tm(A)≧0 (1)
  3. 請求項1又は請求項2に記載のポリブチレンテレフタレート組成物を射出成形してなる成形品。
  4. 請求項1又は請求項2に記載のポリブチレンテレフタレート組成物を押出フィルム成形してなる成形品。
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