JP7424114B2 - 操舵制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、操舵制御装置に関する。
例えば、特許文献1には、車両に用いられる操舵装置は、転舵輪へと動力を伝えることなく変位可能なステアリングホイールを備える、所謂、ステアバイワイヤ式の操舵装置の一例が開示されている。
特開2019-131072号公報
上記ステアバイワイヤ式の操舵装置では、より高い信頼性が要求される。ただし、操舵装置により高い信頼性が要求されることは上記ステアバイワイヤ式の操舵装置に限らず、転舵輪へと動力を伝えるように変位可能なステアリングホイールを備える操舵装置であっても同様である。
本発明の目的は、操舵装置の機械的な異常を適切に検出できる操舵制御装置を提供することにある。
上記課題を解決する操舵制御装置は、車両の転舵輪を転舵させる装置であって、電動機を備えた装置である操舵装置を制御対象とし、前記電動機の制御を通じて前記操舵装置の作動を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記電動機を制御するための制御量を算出する制御量算出処理と、前記制御量に関する変数の値を入力として、前記電動機を制御することによって現れる前記操舵装置の特性を示す所定成分を算出する所定成分算出処理と、前記所定成分算出処理で算出された前記所定成分に基づき、前記操舵装置に機械的な異常があるか否かを判定する異常状態判定処理とを実行するようにしている。
上記構成によれば、電動機を制御するなかで算出される制御量に含まれる所定成分を通じて、電動機を制御することによって現れる操舵装置の特性を検出することができるようになる。こうした特性は、操舵装置に機械的な異常があると、当該異常がない場合に対して、例えば、粘性成分が過大や過少といった異なる特性を示すようになる。これは、操舵装置に機械的な異常が実際に生じておらず、操舵装置の機械的な部分を直接的に監視したとしても異常を判断することができない状態等、異常に至る前の状態に対しても有効である。つまり、上記構成を用いては、所定成分が示す特性に基づき、操舵装置の機械的な異常を間接的に検出することができるとともに、操舵装置の機械的な部分を直接的に監視したとしても検出することができない異常を検出することができるようになる。したがって、操舵装置の作動が困難となる状態に至る前に、その予兆を含む操舵装置の機械的な異常をより適切に検出することができる。
上記操舵制御装置において、前記所定成分算出処理は、前記電動機が出力するトルクに関する変数の値及び前記電動機の作動を制御することによって変化する前記操舵装置の状態変数の値を前記制御量に関する変数の値とし、前記電動機が出力するトルク以外に前記状態変数に影響するトルク成分を外乱トルクとして算出する外乱トルク算出処理を含むことが好ましい。
上記構成によれば、電動機が出力するトルク以外に電動機を制御することによって変化する操舵装置の状態変数に影響するトルク成分に所定成分が含まれることに鑑み、外乱トルク算出処理を用いて所定成分を算出できる。
また、上記操舵制御装置において、前記所定成分算出処理は、前記外乱トルクを入力とし、前記外乱トルクのうちの特定の周波数成分を選択的に透過させるフィルタ処理を含み、該フィルタ処理の出力を前記所定成分とすることが好ましい。
上記構成によれば、所定成分が所定の周波数において顕著となることに鑑み、フィルタ処理の出力を所定成分とすることにより、特定の周波数成分を狙った成分が特に大きくなる周波数とするなら、狙った成分を精度良く算出できる。
また、上記操舵制御装置において、前記フィルタ処理は、該フィルタ処理への入力が同一であっても前記操舵装置の温度に応じて出力の強度を変更する強度変更処理を含むことが好ましい。
操舵装置の温度に応じて所定成分の強度が変化する。そのため、上記構成のように強度変更処理を実行しない場合であっても、操舵装置の温度に応じてフィルタ処理の出力の強度が異なったものとなる。ここで、上記構成では、フィルタ処理の出力の強度を操舵装置の温度に応じてあえて変更する。これにより、フィルタ処理の出力に基づく異常状態判定処理による判定の精度の自由度を、強度変更処理を用いない場合と比較して高めることが容易となる。
また、上記操舵制御装置において、前記所定成分算出処理は、前記所定成分として、前記操舵装置の粘性成分を算出する粘性成分算出処理を含むことが好ましい。
上記構成によれば、操舵装置に機械的な異常があると、当該異常がない場合に対して、粘性成分が異なる特性を示すようになることに鑑み、電動機の制御量に関する変数の値を入力とし粘性成分を算出する。これにより、操舵装置の機械的な異常を適切に検出することができる。
また、上記操舵制御装置において、前記所定成分算出処理は、前記所定成分として、前記操舵装置の摩擦成分を算出する摩擦成分算出処理を含むことが好ましい。
上記構成によれば、操舵装置に機械的な異常があると、当該異常がない場合に対して、摩擦成分が異なる特性を示すようになることに鑑み、電動機の制御量に関する変数の値を入力とし摩擦成分を算出する。これにより、操舵装置の機械的な異常を適切に検出することができる。
また、上記操舵制御装置において、前記所定成分算出処理は、前記所定成分として、前記操舵装置の慣性成分を算出する慣性成分算出処理を含むことが好ましい。
上記構成によれば、操舵装置に機械的な異常があると、当該異常がない場合に対して、慣性成分が異なる特性を示すようになることに鑑み、電動機の制御量に関する変数の値を入力とし慣性成分を算出する。これにより、操舵装置の機械的な異常を適切に検出することができる。
本発明の操舵制御装置によれば、操舵装置の機械的な異常を適切に検出することができる。
第1実施形態の操舵装置を示す図。 同実施形態にかかる操舵制御装置が実行する処理を示すブロック図。 同実施形態にかかる操舵装置の同周波数応答性を示す図。 同実施形態にかかる操舵制御装置が実行する処理の手順を示すフローチャート。 同実施形態にかかる操舵制御装置が実行する処理の手順を示すフローチャート。 同実施形態にかかる操舵制御装置が実行する処理の手順を示すフローチャート。 第2実施形態にかかる操舵制御装置が実行する処理を示すブロック図。 第3実施形態にかかる操舵制御装置が実行する処理を示すブロック図。 第4実施形態にかかる操舵制御装置が実行する処理を示すブロック図。 第5実施形態にかかる操舵制御装置が実行する処理を示すブロック図。
(第1実施形態)
以下、操舵制御装置をステアバイワイヤ式の操舵装置に適用した第1実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、操舵装置10は、操舵機構20と、転舵輪42を転舵させる転舵アクチュエータ50と、転舵輪42とを備えている。
操舵機構20は、ステアリングホイール22と、運転者のステアリングホイール22の操作に抗する力である抗力を付与する抗力アクチュエータ30と、ラックアンドピニオン機構27と、ステアリングホイール22と一体的に回転する入力軸32とラックアンドピニオン機構27との間に介在するクラッチ24とを備えている。
抗力アクチュエータ30は、入力軸32、減速機34、操舵側電動機36、及びインバータ38を備え、入力軸32に、減速機34を介して操舵側電動機36の動力を付与する。本実施形態では、操舵側電動機36として、3相の表面磁石同期電動機(SPMSM)を例示する。また、ラックアンドピニオン機構27は、クラッチ24を介して入力軸32に機械的に連結されるピニオン軸26とラック軸28とを備えており、ピニオン軸26の回転動力をラック軸28の軸方向の変位に変換する。クラッチ24は、締結状態において入力軸32の動力をピニオン軸26に伝達し、解放状態において入力軸32とピニオン軸26との動力の伝達を遮断する。クラッチ24の締結状態においてステアリングホイール22の回転動力は、ラック軸28の軸方向の変位に変換され、この軸方向の変位がラック軸28の両端にそれぞれ連結されたタイロッド40を介して転舵輪42にそれぞれ伝達されることにより、転舵輪42の転舵角が変化する。
一方、転舵アクチュエータ50は、ラック軸28を操舵機構20と共有するとともに、転舵側電動機52、インバータ54、ボールねじ機構56およびベルト式減速機構58を備えている。転舵側電動機52は、転舵輪42を転舵させるための動力の発生源であり、本実施形態では、転舵側電動機52として、3相の表面磁石同期電動機(SPMSM)を例示する。ボールねじ機構56は、ラック軸28の周囲に一体的に取り付けられており、ベルト式減速機構58は、転舵側電動機52の出力軸52aの回転力をボールねじ機構56に伝達する。転舵側電動機52の出力軸52aの回転力は、ベルト式減速機構58及びボールねじ機構56を介して、ラック軸28を軸方向に往復直線運動させる力に変換される。このラック軸28に付与される軸方向の力によって、転舵輪42を転舵させることができる。
操舵制御装置60は、操舵装置10を制御対象とし、その制御量である転舵角を制御すべく、転舵アクチュエータ50を操作する。また、操舵制御装置60は、クラッチ24を解放状態としつつ、操舵装置10を制御対象とし、その制御量である抗力を制御すべく、抗力アクチュエータ30を操作する。操舵制御装置60は、制御量の制御に際し、トルクセンサ70によって検出される、運転者がステアリングホイール22を介して入力するトルクである操舵トルクThや、操舵側回転角度センサ72によって検出される操舵側電動機36の回転軸の回転角度θs、車速センサ74によって検出される車速Vを参照する。また、操舵制御装置60は、温度センサ76によって検出される操舵装置10の温度TSや、回転角度センサ78によって検出される出力軸52aの回転角度θtを参照する。ここで、温度TSは、転舵側電動機52の温度や操舵側電動機36の温度、インバータ54,38の温度、ボールねじ機構56の温度等であってよい。なお、温度TSは、グリースによる粘性の影響を考慮するうえでは、ボールねじ機構56の温度であるとよい。もっとも、操舵制御装置60に温度センサ76を取り付け、操舵制御装置60が操舵装置10付近にあることから、操舵制御装置60の温度を操舵装置10の温度とみなしてもよい。また、操舵制御装置60は、操舵側電動機36を流れる電流ius,ivs,iwsや、転舵側電動機52を流れる電流iut,ivt,iwtを参照する。なお、電流ius,ivs,iwsは、インバータ38の各レッグに設けられたシャント抵抗における電圧降下として検出されるものとすればよく、電流iut,ivt,iwtは、インバータ54の各レッグに設けられたシャント抵抗における電圧降下として検出されるものとすればよい。
また、操舵制御装置60は、転舵アクチュエータ50の機械的な異常の発生を運転者に警告すべく、警告装置80を操作する。ここで、警告装置80は、例えば、車両内部のインスツルメントパネル、所謂、インパネに設けられている。そして、警告装置80は、点灯や点滅することによって運転者への警告を実施するものである。転舵アクチュエータ50の機械的な異常(以下「メカ異常」という)には、ベルト式減速機構58の円滑な動作が困難となる状態、例えば、歯飛びであったり、ベルト破断であったり、ラック軸28のロックであったりの他、そのまま放っておくとベルト式減速機構58の円滑な動作が困難となる状態である予兆の状態を含んでいる。
操舵制御装置60は、CPU62、ROM64および周辺回路66を備え、それらがローカルネットワーク68によって通信可能とされているものである。なお、周辺回路66は、内部の動作を規定するクロック信号を生成する回路や、電源回路、リセット回路等を含む。本実施形態において、CPU62は制御部の一例である。
図2に、操舵制御装置60が実行する処理の一部を示す。図2に示す処理は、ROM64に記憶されたプログラムをCPU62が実行することにより実現される。なお、図2に示す処理は、クラッチ24が解放状態であるときの処理である。
ベース目標トルク算出処理M10は、後述する軸力Tafに基づき、ステアリングホイール22を介して運転者が入力軸32に入力すべき目標操舵トルクTh*のベース値であるベース目標トルクThb*を算出する処理である。ここで、軸力Tafは、ラック軸28に加わる軸方向の力である。軸力Tafは、転舵輪42に作用する横力に応じた量となることから、軸力Tafによって横力を把握することができる。一方、ステアリングホイール22を介して運転者が入力軸32に入力すべきトルクは、横力に応じて定めることが望ましい。したがって、ベース目標トルク算出処理M10は、軸力Tafから把握される横力に応じてベース目標トルクThb*を算出する処理となっている。
詳しくは、ベース目標トルク算出処理M10は、軸力Tafの絶対値が同一であっても車速Vが小さい場合に大きい場合よりも、ベース目標トルクThb*の絶対値をより小さい値に算出する処理である。これは、たとえば、軸力Tafまたは軸力Tafから把握される横加速度および車速Vを入力変数とし、ベース目標トルクThb*を出力変数とするマップデータが予めROM64に記憶されている状態でCPU62によりベース目標トルクThb*をマップ演算することによって実現できる。ここで、マップデータとは、入力変数の離散的な値と、入力変数の値のそれぞれに対応する出力変数の値と、の組データである。またマップ演算は、たとえば、入力変数の値がマップデータの入力変数の値のいずれかに一致する場合、対応するマップデータの出力変数の値を演算結果とするのに対し、一致しない場合、マップデータに含まれる複数の出力変数の値の補間によって得られる値を演算結果とする処理とすればよい。
加算処理M12は、ベース目標トルクThb*にヒステリシス補正量Thysを加算することによって、目標操舵トルクTh*を算出する処理である。
ヒステリシス処理M14は、転舵輪42の転舵角に換算可能な換算可能角度であるピニオン角θpに基づき、ベース目標トルクThb*を補正するヒステリシス補正量Thysを算出して出力する処理である。詳しくは、ヒステリシス処理M14は、ピニオン角θpの変化等に基づき、ステアリングホイール22の切り込み時および切り戻し時を識別し、切り込み時において切り戻し時と比較して目標操舵トルクTh*の絶対値がより大きくなるように、ヒステリシス補正量Thysを算出する処理を含む。詳しくは、ヒステリシス処理M14は、車速Vに応じてヒステリシス補正量Thysを可変設定する処理を含む。なお、ピニオン角θpは、ピニオン軸26の回転角度である。
操舵操作量算出処理M16は、操舵トルクThを目標操舵トルクTh*にフィードバック制御するための操作量である操舵操作量Ts*を算出する処理である。操舵操作量Ts*は、操舵トルクThを目標操舵トルクTh*にフィードバック制御するための操作量を含んだ量であるが、フィードフォワード項を含んでもよい。なお、操舵操作量Ts*は、操舵トルクThを目標操舵トルクTh*にフィードバック制御するうえで入力軸32に加えることが要求されるトルクに換算された量となっている。
軸力算出処理M18は、操舵操作量Ts*に操舵トルクThを加算することによって、軸力Tafを算出する処理である。なお、操舵トルクThは、入力軸32に加わるトルクのため、本実施形態において軸力Tafは、クラッチ24が締結状態であると仮定した場合にラック軸28の軸方向に加わる力を、入力軸32に加わるトルクに換算した値となっている。
規範モデル算出処理M20は、軸力Tafに基づき、操舵角θhの指令値である操舵角指令値θh*を算出する処理である。詳しくは、規範モデル算出処理M20は、以下の式(c1)にて表現されるモデル式を用いて、操舵角指令値θh*を算出する処理である。
Taf=K・θh*+C・θh*’+J・θh*’’ …(c1)
上記の式(c1)にて表現されるモデルは、クラッチ24の締結状態において軸力Tafと等しい量のトルクが入力軸32に入力された場合に操舵角θhが示す値をモデル化したものである。上記の式(c1)において、粘性係数Cは、操舵装置10の粘性等をモデル化したものであり、慣性係数Jは、操舵装置10の慣性をモデル化したものであり、弾性係数Kは、操舵装置10が搭載される車両のサスペンションやホイールアライメント等の仕様をモデル化したものである。このモデルは、実際の操舵装置10を正確に表現したモデルではなく、入力に対する操舵角の挙動を理想的な挙動とするために設計された規範モデルである。本実施形態では、規範モデルの設計を通じて操舵フィーリングの調整を可能としている。
具体的には、減算処理M22において、軸力Tafから、粘性項「C・θh*’」およびバネ項「K・θh*」が減算される。慣性係数除算処理M24によって、減算処理M22の出力が慣性係数Jにより除算され、操舵角加速度指令値αh*(=θh*’’)が算出される。そして、操舵角加速度指令値αh*を入力とし、積分処理M26によって、操舵角速度指令値ωh*(=θh*’)が算出される。また、操舵角速度指令値ωh*を入力とし、積分処理M28によって、操舵角指令値θh*が算出される。
また、粘性係数乗算処理M30は、操舵角速度指令値ωh*に粘性係数Cを乗算して粘性項「C・θh*’」を算出する処理である。また、弾性係数乗算処理M32は、操舵角指令値θh*に弾性係数Kを乗算することによって、バネ項「K・θh*」を算出する処理である。
操舵角算出処理M40は、回転角度θsの積算処理に基づき、ステアリングホイール22の回転角度である操舵角θhを算出する処理である。
抗力算出処理M42は、操舵角θhを操舵角指令値θh*にフィードバック制御するための操作量としての操舵側電動機36のトルクの指令値を抗力指令値Tr*として算出する処理である。操作信号生成処理M44は、操舵側電動機36の制御量となるトルクを抗力指令値Tr*に制御すべく、インバータ38を操作するための操作信号MSsを生成してインバータ38に出力する。詳しくは、操作信号生成処理M44は、操舵側電動機36に流れる電流ius,ivs,iwsを、抗力指令値Tr*から定まる電流の指令値にフィードバック制御するための操作量によって、インバータ38の出力線電圧を操作する処理とする。
舵角比可変処理M46は、操舵角指令値θh*に対するピニオン角指令値θp*の比率である舵角比を可変とするための調整量Δθaを、車速Vに応じて可変設定する処理である。詳しくは、車速Vが低い場合に高い場合よりも、操舵角指令値θh*の変化に対するピニオン角指令値θp*の変化を大きくするように、調整量Δθaを設定する。加算処理M48は、操舵角指令値θh*に調整量Δθaを加算することによって、ピニオン角指令値θp*を設定する。
ピニオン角算出処理M50は、転舵側電動機52の回転角度θtの積算処理に基づき、ピニオン角θpを算出する処理である。なお、ピニオン角θpは、「0」である場合に直進方向であることを示し、正であるか負であるかに応じて、右旋回側の転舵角であるか左旋回側の転舵角であるかを示す。
転舵操作量算出処理M60は、ピニオン角θpをピニオン角指令値θp*にフィードバック制御するための操作量である転舵操作量Tt*を算出する処理である。転舵操作量Tt*は、ピニオン角θpをピニオン角指令値θp*にフィードバック制御するうえでの転舵側電動機52に対する要求トルクに応じた量であるが、本実施形態では、トルクの付与対象をピニオン軸26と仮定した場合にピニオン軸26に加わるトルクに換算された量となっている。
転舵操作量算出処理M60は、転舵操作量Tt*以外に、転舵側電動機52を制御することによって変化する操舵装置10の状態変数であるピニオン角θpに影響するトルクを外乱トルクとして推定し、これを推定外乱トルクTldeとする外乱トルク算出処理M62を含む。なお、本実施形態では、推定外乱トルクTldeを、外乱トルクがピニオン軸26に加わると仮定した場合のピニオン軸26に加わるトルクに換算している。
外乱トルク算出処理M62は、慣性係数Jp、ピニオン角θp、転舵操作量Tt*、及びオブザーバゲインl1,l2,l3を規定する3行1列の行列Lを用いて以下の式(c2)にて、推定外乱トルクTldeや推定値θpeを算出する。なお、慣性係数Jpは、操舵装置10の慣性をモデル化したものであり、慣性係数Jと比較して、実際の操舵装置10の慣性を高精度に表現した値となっている。本実施形態において、外乱トルク算出処理M62は所定成分算出処理の一例である。
微分演算処理M64は、ピニオン角指令値θp*の微分演算によってピニオン角速度指令値を算出する処理である。
フィードバック項算出処理M66は、ピニオン角指令値θp*と推定値θpeとの差に応じた比例項と、ピニオン角指令値θp*の1階時間微分値と推定値θpeの1階時間微分値との差に応じた微分項との和であるフィードバック項Ttfbを算出する処理である。
2階微分処理M68は、ピニオン角指令値θp*の2階時間微分値を算出する処理である。フィードフォワード項算出処理M70は、2階微分処理M68の出力値に慣性係数Jpを乗算することによってフィードフォワード項Ttffを算出する処理である。2自由度操作量算出処理M72は、フィードバック項Ttfbと、フィードフォワード項Ttffとの和から、推定外乱トルクTldeを減算して、転舵操作量Tt*を算出する処理である。本実施形態において、転舵操作量算出処理M60は制御量算出処理及び所定成分算出処理の一例である。
換算処理M80は、転舵操作量Tt*を減速比Ktで除算することによって、転舵操作量Tt*を、転舵側電動機52に対する制御量となるトルクの指令値であるトルク指令値Tm*に換算する処理である。
操作信号生成処理M82は、転舵側電動機52のトルクをトルク指令値Tm*に制御するためのインバータ54の操作信号MStを生成して出力する処理である。詳しくは、操作信号生成処理M82は、転舵側電動機52に流れる電流iut,ivt,iwtを、トルク指令値Tm*から定まる電流の指令値にフィードバック制御するための操作量によって、インバータ54の出力線電圧を操作する処理とする。なお、操作信号MStは、実際には、インバータ54の各レッグの各アームの操作信号となる。
フィルタ処理M90は、推定外乱トルクTldeを入力とし、その特定の周波数成分を抽出する処理である。ここで、特定の周波数成分について説明する。
図3に、操舵装置10の周波数応答特性を示す。詳しくは、横軸は周波数であり、縦軸は、操舵装置10への入力を転舵角の変化等の変位とし出力を同変位のために必要な力である転舵側電動機52のトルクとする場合のゲインGである。
図3に示すように、周波数が下限周波数fLと上限周波数fHとの間にある場合、ゲインGが大きくなっている。これは、操舵装置10の粘性に起因したものである。そして粘性に起因して上記ゲインGは、転舵側電動機52を制御することによってその時の状態に応じた操舵装置10の粘性の想定範囲内で変動するところ、転舵アクチュエータ50にメカ異常が生じていると、上記粘性の想定範囲内での変動を超えて過大や過少となるように変動する。
また、周波数が下限周波数fLよりも小さい場合、ゲインGが一定となっている。これは、操舵装置10の摩擦に起因したものである。そして、摩擦に起因して上記ゲインGは、転舵側電動機52を制御することによってその時の状態に応じた操舵装置10の摩擦の想定範囲内で変動するところ、転舵アクチュエータ50にメカ異常が生じていると、上記摩擦の想定範囲内での変動を超えて過大や過少となるように変動する。
また、周波数が上限周波数fHよりも大きい場合、ゲインGが小さくなっている。これは、操舵装置10の慣性に起因したものである。そして、慣性に起因して上記ゲインGは、転舵側電動機52を制御することによってその時の状態に応じた操舵装置10の慣性の想定範囲内で変動するところ、転舵アクチュエータ50にメカ異常が生じていると、上記慣性の想定範囲内での変動を超えて過大や過少となるように変動する。
フィルタ処理M90について、バンドパスフィルタBPFは、操舵装置10の粘性成分を抽出する処理であり、粘性に起因した特性を抽出すべく、下限周波数fLと上限周波数fHとの間の周波数特性を抽出する。ローパスフィルタLPFは、操舵装置10の摩擦成分を抽出する処理であり、摩擦に起因した特性を抽出すべく、粘性や慣性の影響が小さい下限周波数fLよりも小さい周波数特性を抽出する。ハイパスフィルタHPFは、操舵装置10の慣性成分を抽出する処理であり、慣性に起因した特性を抽出すべく、上限周波数fHよりも大きい周波数特性を抽出する。なお、粘性成分を抽出するうえでは、バンドパスフィルタBPFが透過する中心周波数を、例えば「7~9Hz」に設定することが望ましい。また、バンド幅を、たとえば「4~6Hz」とすることが望ましい。また、摩擦成分を抽出するうえでは、ローパスフィルタLPFが透過する中心周波数を、例えば「7Hz」よりも小さく設定したりすればよい。また、慣性成分を抽出するうえでは、ハイパスフィルタHPFが透過する中心周波数を、例えば、「9Hz」よりも大きく設定したりすればよい。本実施形態において、フィルタ処理M90は所定成分算出処理の一例であり、バンドパスフィルタBPFは粘性成分算出処理の一例であり、ローパスフィルタLPFは摩擦成分算出処理の一例であり、ハイパスフィルタHPFは慣性成分算出処理の一例である。
図2に戻り、異常状態判定処理M92は、フィルタ処理M90の出力する粘性成分Tc、摩擦成分Tf、及び慣性成分Tjに基づき、操舵装置10の異常として、転舵アクチュエータ50のメカ異常を検出する処理である。詳しくは、異常状態判定処理M92は、転舵アクチュエータ50のメカ異常を検出すると、警告装置80を点灯や点滅させるための警告信号SIGを生成して出力する処理とする。
図4、図5、及び図6に、異常状態判定処理M92の手順を示す。なお、以下では、先頭に「S」が付与された数字によって各処理のステップ番号を表現する。
図4に示す一連の処理において、CPU62は、まず粘性成分Tcを取得する(SA10)。次に、CPU62は、粘性成分Tcが粘性過少判定値Tcth1未満(Tc<Tcth1)又は粘性過大判定値Tcth2よりも大きい(Tc>Tcth2)かの少なくともいずれかを満たすか否かを判定する(ステップSA12)。この処理は、転舵アクチュエータ50にメカ異常があることを示す粘性成分Tcの特性を検出するためのものである。本実施形態において、粘性過少判定値Tcth1及び粘性過大判定値Tcth2は、ベルト式減速機構58の円滑な動作が困難となる状態に陥らせるとして、例えば、ベルト式減速機構58のベルトの耐久試験等を通じて実験的に求められる範囲の値に設定されている。具体的には、粘性成分Tcは、車速V等の車両の走行状態に基づき変動するものであり、当該変動のなかで実験的に求められた最小値を粘性過少判定値Tcth1とし、実験的に求められた最大値を粘性過大判定値Tcth2として設定する。本実施形態において、CPU62は、制御部の一例である。
上記ステップSA12において、CPU62は、粘性成分Tcが粘性過少判定値Tcth1未満又は粘性過大判定値Tcth2よりも大きいことのいずれも満たさないと判定する場合(ステップSA12:NO)、転舵アクチュエータ50にメカ異常が生じていないことを判定する。その後、CPU62は、ステップSA10の処理に戻り当該ステップSA10以後の処理を繰り返し実行する。
一方、CPU62は、粘性成分Tcが粘性過少判定値Tcth1未満又は粘性過大判定値Tcth2よりも大きいことの少なくともいずれかを満たすと判定する場合(ステップSA12:YES)、転舵アクチュエータ50のメカ異常を確定させるための処理を実行する(ステップSA14)。ステップSA14にて、CPU62は、転舵アクチュエータ50のメカ異常を検出した旨を運転者に警告すべく、警告装置80を点灯や点滅させるように点灯状態を制御する。また、CPU62は、転舵アクチュエータ50のメカ異常を検出した旨を記録すべく、その旨を示す異常情報をROM64にて記録する。こうしてROM64に記録された異常情報は、図示しない診断ツールが操舵制御装置60に対して外部から接続される場合に、当該診断ツールに対して出力される。本実施形態において、ROM64は、ダイアグとしての機能を有する。その後、CPU62は、フェールセーフとしてメカ異常時フェールを作動させる処理へと移行する。本実施形態において、メカ異常時フェールでは、運転者に警告をしつつ車両を安全に停車させるための処理を実行したりする。
図5に示す一連の処理において、CPU62は、まず摩擦成分Tfを取得する(SB10)。次に、CPU62は、摩擦成分Tfが摩擦過少判定値Tfth1未満(Tf<Tfth1)又は摩擦過大判定値Tfth2よりも大きい(Tf>Tfth2)かの少なくともいずれかを満たすか否かを判定する(ステップSB12)。この処理は、転舵アクチュエータ50にメカ異常があることを示す摩擦成分Tfの特性を検出するためのものである。本実施形態において、摩擦過少判定値Tfth1及び摩擦過大判定値Tfth2は、ベルト式減速機構58の円滑な動作が困難となる状態に陥らせるとして、例えば、ベルト式減速機構58のベルトの耐久試験等を通じて実験的に求められる範囲の値に設定されている。具体的には、摩擦成分Tfは、基本的に周波数の全範囲でほぼ変動せず、変動したとしても公差範囲内で止まるものであり、当該変動のなかで実験的に求められた最小値を摩擦過少判定値Tfth1とし、実験的に求められた最大値を摩擦過大判定値Tfth2として設定する。
上記ステップSB12において、CPU62は、摩擦成分Tfが摩擦過少判定値Tfth1未満又は摩擦過大判定値Tfth2よりも大きいことのいずれも満たさないと判定する場合(ステップSB12:NO)、転舵アクチュエータ50にメカ異常が生じていないことを判定する。その後、CPU62は、ステップSB10の処理に戻り当該ステップSB10以後の処理を繰り返し実行する。
一方、CPU62は、摩擦成分Tfが摩擦過少判定値Tfth1未満又は摩擦過大判定値Tfth2よりも大きいことの少なくともいずれかを満たすと判定する場合(ステップSB12:YES)、転舵アクチュエータ50のメカ異常を確定させるための処理を実行する(ステップSB14)。ステップSB14にて、CPU62は、上記ステップSA14で説明したのと同様に各種処理を実行する。
図6に示す一連の処理において、CPU62は、まず慣性成分Tjを取得する(SC10)。次に、CPU62は、慣性成分Tjが慣性過少判定値Tjth1未満(Tj<Tjth1)又は慣性過大判定値Tjth2よりも大きい(Tj>Tjth2)かの少なくともいずれかを満たすか否かを判定する(ステップSC12)。この処理は、転舵アクチュエータ50にメカ異常があることを示す慣性成分Tjの特性を検出するためのものである。本実施形態において、慣性過少判定値Tjth1及び慣性過大判定値Tjth2は、ベルト式減速機構58の円滑な動作が困難となる状態に陥らせるとして、例えば、ベルト式減速機構58のベルトの耐久試験等を通じて実験的に求められる範囲の値に設定されている。具体的には、慣性成分Tjは、車速V等の車両の走行状態に基づき変動するものであり、当該変動のなかで実験的に求められた最小値を慣性過少判定値Tjth1とし、実験的に求められた最大値を慣性過大判定値Tjth2として設定する。
上記ステップSC12において、CPU62は、慣性成分Tjが慣性過少判定値Tjth1未満又は慣性過大判定値Tjth2よりも大きいことのいずれも満たさないと判定する場合(ステップSC12:NO)、転舵アクチュエータ50にメカ異常が生じていないことを判定する。その後、CPU62は、ステップSC10の処理に戻り当該ステップSC10以後の処理を繰り返し実行する。
一方、CPU62は、慣性成分Tjが慣性過少判定値Tjth1未満又は慣性過大判定値Tjth2よりも大きいことの少なくともいずれかを満たすと判定する場合(ステップSC12:YES)、転舵アクチュエータ50のメカ異常を確定させるための処理を実行する(ステップSC14)。ステップSC14にて、CPU62は、上記ステップSA14で説明したのと同様に各種処理を実行する。
以下、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態によれば、転舵側電動機52が出力するトルクを制御するなかで算出される推定外乱トルクTldeに含まれる粘性成分Tc、摩擦成分Tf、及び慣性成分Tjを、フィルタ処理M90を通じて取得することで、転舵側電動機52を制御することによって現れる操舵装置10の特性を検出することができるようになる。こうした特性は、転舵側電動機52の駆動に関わって作動する転舵アクチュエータ50にメカ異常があると、当該メカ異常がない場合に対して、粘性成分Tcや、摩擦成分Tfや、慣性成分Tjが過大や過少といった異なる特性を示すようになる。これは、転舵アクチュエータ50にメカ異常が実際に生じておらず、転舵アクチュエータ50の機械的な部分を直接的に監視したとしても異常を判断することができない状態等、異常に至る前の状態に対しても有効である。つまり、本実施形態を用いては、粘性成分Tcや、摩擦成分Tfや、慣性成分Tjが示す特性に基づき、転舵アクチュエータ50のメカ異常を間接的に検出することができるとともに、転舵アクチュエータ50の機械的な部分を直接的に監視したとしても検出することができない異常を検出することができるようになる。
以下、本実施形態の効果を説明する。
(1)本実施形態では、推定外乱トルクTldeに含まれる粘性成分Tcや、摩擦成分Tfや、慣性成分Tjが示す特性に基づき、転舵アクチュエータ50のメカ異常を検出することができるようにしている。したがって、転舵アクチュエータ50の作動が困難となる状態に至る前に、その予兆を含む転舵アクチュエータ50のメカ異常をより適切に検出することができる。
(2)本実施形態では、外乱トルク算出処理M62は、転舵操作量Tt*以外に、ピニオン角θpに影響するトルクを外乱トルクとして推定し、これを推定外乱トルクTldeとするように算出する。本実施形態によれば、転舵操作量Tt*以外に、転舵側電動機52を制御することによって変化するピニオン角θpに影響する外乱トルクに粘性成分Tcや、摩擦成分Tfや、慣性成分Tjが含まれることに鑑み、外乱トルク算出処理M62を用いて粘性成分Tcや、摩擦成分Tfや、慣性成分Tjを算出できる。
(3)本実施形態では、粘性成分Tcや、摩擦成分Tfや、慣性成分Tjがそれぞれ所定の周波数において顕著となることに鑑み、フィルタ処理M90のバンドパスフィルタBPF、ローパスフィルタLPF、及びハイパスフィルタHPFのそれぞれの出力を粘性成分Tcや、摩擦成分Tfや、慣性成分Tjとするようにしている。これにより、狙った成分を精度良く算出できる。
(4)本実施形態では、転舵アクチュエータ50にメカ異常があると、当該メカ異常がない場合に対して、粘性成分Tcが異なる特性を示すようになることに鑑み、転舵操作量Tt*以外に、ピニオン角θpに影響する推定外乱トルクTldeに基づき粘性成分Tcを算出する。これにより、転舵アクチュエータ50のメカ異常を適切に検出することができる。
(5)本実施形態では、転舵アクチュエータ50にメカ異常があると、当該メカ異常がない場合に対して、摩擦成分Tfが異なる特性を示すようになることに鑑み、転舵操作量Tt*以外に、ピニオン角θpに影響する推定外乱トルクTldeに基づき摩擦成分Tfを算出する。これにより、転舵アクチュエータ50のメカ異常を適切に検出することができる。
(6)本実施形態では、転舵アクチュエータ50にメカ異常があると、当該メカ異常がない場合に対して、慣性成分Tjが異なる特性を示すようになることに鑑み、転舵操作量Tt*以外に、ピニオン角θpに影響する推定外乱トルクTldeに基づき慣性成分Tjを算出する。これにより、転舵アクチュエータ50のメカ異常を適切に検出することができる。
(第2実施形態)
以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図7に、本実施形態にかかる操舵制御装置60が実行する処理を示す。なお、図7において、図2に示した処理に対応する処理については、便宜上同一の符号を付している。
図7に示すように、本実施形態では、CPU62は、温度TSに応じてフィルタ処理M90のバンドパスフィルタBPFのフィルタ特性を可変とする。詳しくは、温度TSが低い場合に高い場合よりも粘性成分Tcの強度を大きくする。
これは、温度が低い場合、操舵装置10のグリース等の潤滑剤が固くなり、粘性が大きくなることに鑑みたものである。バンドパスフィルタBPFは、推定外乱トルクTldeに含まれる粘性成分の強度が大きい場合に小さい場合よりも出力値を大きくすることから、フィルタ特性を可変としなくても、温度TSが低い場合に高い場合よりもバンドパスフィルタBPFの出力する粘性成分Tcの強度が大きくなる。これに対し、本実施形態では、温度TSに応じてフィルタの特性を可変とすることにより、可変としない場合と比較して、温度TSが低い場合の粘性成分Tcの強度をより大きくする。本実施形態において、フィルタ処理M90、すなわちバンドパスフィルタBPFは強度変更処理の一例である。
本実施形態によれば、上記第1実施形態の作用及び効果に対応する作用及び効果を奏する他、以下の効果を奏する。
(7)本実施形態では、温度TSが低い場合の粘性成分Tcの強度をより大きくするため、フィルタ処理M90の出力に基づく異常状態判定処理M92による判定の精度の自由度を、バンドパスフィルタBPFのフィルタ特性を可変としない場合と比較して高めることが容易となる。
(第3実施形態)
以下、第3の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図8に、本実施形態にかかる操舵制御装置60が実行する処理を示す。なお、図8において、図2に示した処理に対応する処理については、便宜上同一の符号を付している。
図8に示すように、本実施形態において、フィルタ処理M90は、抗力指令値Tr*を入力とし、抗力指令値Tr*に含まれる粘性成分、摩擦成分、及び慣性成分をそれぞれ粘性成分Tc、摩擦成分Tf、及び慣性成分Tjとして出力する処理である。また、異常状態判定処理M92は、抗力指令値Tr*に含まれる粘性成分Tcや、摩擦成分Tfや、慣性成分Tjに基づき、抗力アクチュエータ30のメカ異常を検出する処理である。本実施形態において、抗力算出処理M42は制御量算出処理及び所定成分算出処理の一例である。
以下、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態によれば、操舵側電動機36が出力するトルクを制御するなかで算出される抗力指令値Tr*に含まれる粘性成分Tc、摩擦成分Tf、及び慣性成分Tjを、フィルタ処理M90を通じて取得することで、操舵側電動機36を制御することによって現れる操舵装置10の特性を検出することができるようになる。こうした特性は、操舵側電動機36の駆動に関わって作動する抗力アクチュエータ30にメカ異常があると、当該メカ異常がない場合に対して、粘性成分Tcや、摩擦成分Tfや、慣性成分Tjが過大や過少といった異なる特性を示すようになる。これは、抗力アクチュエータ30にメカ異常が実際に生じておらず、抗力アクチュエータ30の機械的な部分を直接的に監視したとしても異常を判断することができない状態等、異常に至る前の状態に対しても有効である。つまり、本実施形態を用いては、粘性成分Tcや、摩擦成分Tfや、慣性成分Tjが示す特性に基づき、抗力アクチュエータ30のメカ異常を間接的に検出することができるとともに、抗力アクチュエータ30の機械的な部分を直接的に監視したとしても検出することができない異常を検出することができるようになる。
(第4実施形態)
以下、第4の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図9に、本実施形態にかかる操舵制御装置60が実行する処理を示す。なお、図9において、図2に示した処理に対応する処理については、便宜上同一の符号を付している。
図9に示すように、本実施形態において、フィルタ処理M90aは、推定外乱トルクTldeを入力とし、推定外乱トルクTldeに含まれる粘性成分、摩擦成分、及び慣性成分をそれぞれ粘性成分Tca、摩擦成分Tfa、及び慣性成分Tjaとして出力する処理である。また、異常状態判定処理M92aは、推定外乱トルクTldeに含まれる粘性成分Tcaや、摩擦成分Tfaや、慣性成分Tjaに基づき、転舵アクチュエータ50のメカ異常を検出する処理である。
また、本実施形態において、フィルタ処理M90bは、抗力指令値Tr*を入力とし、抗力指令値Tr*に含まれる粘性成分、摩擦成分、及び慣性成分をそれぞれ粘性成分Tcb、摩擦成分Tfb、及び慣性成分Tjbとして出力する処理である。また、異常状態判定処理M92bは、抗力指令値Tr*に含まれる粘性成分Tcbや、摩擦成分Tfbや、慣性成分Tjbに基づき、抗力アクチュエータ30のメカ異常を検出する処理である。
本実施形態によれば、異常状態判定処理M92aでは、転舵側電動機52の作動を制御することによって現れる操舵装置10の特性を取得して、転舵アクチュエータ50のメカ異常を検出することができる。また、異常状態判定処理M92bでは、操舵側電動機36の作動を制御することによって現れる操舵装置10の特性を取得して、抗力アクチュエータ30のメカ異常を検出することができる。つまり、本実施形態を用いては、転舵アクチュエータ50及び抗力アクチュエータ30の両アクチュエータについてメカ異常を検出することができる。
(第5実施形態)
以下、第5の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図10に、本実施形態にかかる操舵制御装置60が実行する処理を示す。なお、図10において、図2に示した処理に対応する処理については、便宜上同一の符号を付している。
本実施形態にかかる操舵装置は、図1において、クラッチ24を削除し、代わりに、ギア比を可変とするギア比可変機構を介して入力軸32をピニオン軸26に機械的に連結するものである。つまり、ステアリングホイール22の回転動力は、ラック軸28の軸方向の変位に変換され、この軸方向の変位がラック軸28の両端にそれぞれ連結されたタイロッド40を介して転舵輪42にそれぞれ伝達されることにより、転舵輪42の転舵角が変化する。
操舵制御装置60は、ステアリングホイール22の操作を補助する力である補助力を付与する転舵アクチュエータ50を備えた操舵装置を操作することにより、ステアリングホイール22の操作に応じて転舵輪42を転舵させる制御を実行する。本実施形態では、転舵アクチュエータ50によってラックアシスト型電動パワーステアリングシステムを実現しており、操舵制御装置60は、転舵側電動機52に接続されたインバータ54を操作することによって、転舵側電動機52の制御量であるトルクを制御する。本実施形態において、転舵側電動機52は補助用電動機の一例である。
規範モデル算出処理M100は、軸力Tafに基づき、ピニオン角θpの指令値であるピニオン角指令値θp*を算出する処理である。規範モデル算出処理M100は、上記の式(c1)にて表現されるのと同様のモデル式を用いて、ピニオン角指令値θp*を算出する処理である。
具体的には、減算処理M102において、軸力Tafから、粘性項「C・θp*’」およびバネ項「K・θp*」が減算される。慣性係数除算処理M104によって、減算処理M102の出力が慣性係数Jにより除算され、転舵角加速度指令値αp*(=θp*’’)が算出される。そして、転舵角加速度指令値αp*を入力とし、積分処理M106によって、転舵角速度指令値ωp*(=θp*’)が算出される。また、転舵角速度指令値ωp*を入力とし、積分処理M108によって、ピニオン角指令値θp*が算出される。
また、粘性係数乗算処理M110は、転舵角速度指令値ωp*に粘性係数Cを乗算して粘性項「C・θp*’」を算出する処理である。また、弾性係数乗算処理M112は、ピニオン角指令値θp*に弾性係数Kを乗算することによって、バネ項「K・θp*」を算出する処理である。
また、加算処理部M114は、2自由度操作量算出処理M72の出力値である転舵操作量Tt*に操舵操作量Ts*を加算して出力する処理である。そして、換算処理M80は、加算処理部M114の出力値を減速比Ktで除算してトルク指令値Tm*に換算する処理である。
以上に説明した本実施形態によれば、上記第1の実施形態の作用及び効果に対応する作用及び効果を奏する。
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記第1実施形態において、粘性成分Tcを抽出する周波数の領域には、操舵装置10が搭載される車両についての剛性成分が含まれていると考えられる。剛性成分は、車両の転舵輪42の空気圧の状態や、操舵装置10の車両への組み付けの状態に応じて変動する。これにより、粘性成分Tcを用いては、転舵輪42のパンクの状態や、操舵装置10の車両への組み付けが緩んでいる状態等の異常を検出することができる。この場合、粘性成分Tcに対して用いるための剛性過少判定値や、剛性過大判定値を設定すればよい。これは、転舵アクチュエータ50のメカ異常を検出することができる上記第2、第3、及び第5実施形態についても同様である。
・上記第1実施形態では、転舵アクチュエータ50のメカ異常を検出するために、粘性成分Tc、摩擦成分Tf、及び慣性成分Tjの少なくともいずれかの成分を用いていればよく、例えば、粘性成分Tcのみを用いたり、粘性成分Tc及び摩擦成分Tfを用いたり適宜変更可能である。なお、粘性成分Tc及び摩擦成分Tfを用いる場合には、これらの差分と、判定値との比較を通じて転舵アクチュエータ50のメカ異常を検出するようにしてもよい。また、粘性成分Tcのみを用いる場合には、ローパスフィルタLPFや、ハイパスフィルタHPFにより粘性成分を含む範囲の特性を抽出するようにしてもよい。なお、ローパスフィルタLPFで粘性成分を抽出する場合、当該抽出した成分には摩擦成分を含むものである。また、ハイパスフィルタHPFで粘性成分を抽出する場合、当該抽出した成分には慣性成分を含むものである。上記内容は、上記第2~第5実施形態についても同様である。
・上記第1実施形態において、異常状態判定処理M92の判定の方法は、例えば、粘性成分Tcや、摩擦成分Tfや、慣性成分Tjを用いて、これらの前回値及び今回値や所定のサンプリング期間での変化量を判定する等、適宜変更可能である。その他、判定の方法は、上記ステップSA12:YES、SB12:YES、SC12:YESとなる回数をカウントし、当該カウントの結果を判定するようにしてもよい。
・上記第2実施形態では、例えば、温度TSが低い場合に高い場合よりも粘性成分Tcが小さくなるようにフィルタ特性を変更する等、変更の態様は限定されない。
・上記第2実施形態において、温度TSに応じてフィルタ特性を変更する処理としては、ローパスフィルタLPFや、ハイパスフィルタHPFのフィルタ特性を変更してもよい。
・上記第2実施形態において、フィルタ特性を変更する際の入力となる温度としては、例えば、転舵側電動機52や操舵側電動機36を流れる電流の履歴から推定される温度であってもよい。また、操舵制御装置60内の部品に流れる電流の履歴から推定される温度であってもよい。また、温度を推定する際に外気温を検出するセンサの検出値を利用してもよい。
・上記第1実施形態では、外乱トルク算出処理M62を、粘性成分Tcや、摩擦成分Tfや、慣性成分Tjを算出するために利用しつつも、転舵操作量Tt*の算出には用いないようにしてもよい。これは、転舵アクチュエータ50のメカ異常を検出することができる上記第2、第4、及び第5実施形態についても同様である。
・上記第1実施形態では、オブザーバによって構成された外乱トルク算出処理としては、例えば、拡張カルマンフィルタや(EKF)や、Unscentedカルマンフィルタ(UKF)や、アンサンブルカルマンフィルタ(EnKF)等、非線形カルマンフィルタを用いて構成してもよい。これは、上記第2~第5実施形態についても同様である。
・上記第1実施形態では、例えば、指令値としてのピニオン角指令値θp*へのフィードバック制御量のフィードバック制御を実行する場合、その操作量としての転舵操作量Tt*等のトルクの指令値や電流の指令値の特定の周波数成分を選択的に透過させることによって、粘性成分Tcや、摩擦成分Tfや、慣性成分Tjを抽出してもよい。また、電流が指令値に制御されることに鑑みれば、指令値としてのピニオン角指令値θp*へのフィードバック制御量のフィードバック制御を実行する場合、転舵側電動機52に実際に流れる電流の特定の周波数成分を選択的に透過させることによって、粘性成分Tcや、摩擦成分Tfや、慣性成分Tjを抽出してもよい。ちなみに、上記転舵角に関する角度フィードバック制御のための操作量であるトルクや電流は、転舵側電動機52の制御量であることから、それらトルクや電流に加えてそれらの指令値は、転舵側電動機52の制御量に関する変数である。これは、転舵アクチュエータ50のメカ異常を検出することができる上記第2、第4、及び第5実施形態についても同様である。
・上記第3実施形態では、例えば、指令値としての操舵角指令値θh*へのフィードバック制御量のフィードバック制御を実行する場合、操作信号生成処理M44における電流の指令値の特定の周波数成分を選択的に透過させることによって、粘性成分Tcや、摩擦成分Tfや、慣性成分Tjを抽出してもよい。ちなみに、上記操舵角に関する角度フィードバック制御のための操作量であるトルクや電流は、操舵側電動機36の制御量であることから、それらトルクや電流に加えてそれらの指令値は、操舵側電動機36の制御量に関する変数である。また、抗力算出処理M42を、フィードフォワード項とフィードバック項とを算出する処理と、外乱トルクを算出する処理とによって構成し、同外乱トルクから粘性成分Tcや、摩擦成分Tfや、慣性成分Tjを抽出してもよい。また、抗力指令値Tr*の算出に外乱トルクを用いないこととし、粘性成分Tcや、摩擦成分Tfや、慣性成分Tjの算出のために外乱トルクを算出してもよい。これは、上記第4実施形態についても同様である。
・上記各実施形態では、フィードフォワード項Ttffを、例えば、ピニオン角θpの2階時間微分値に基づき算出したり、推定値θpeの2階時間微分値に基づき算出したりしてもよい。
・上記各実施形態では、例えば、転舵輪42に作用するトルクが、転舵角の角加速度に比例するトルクと転舵角の角速度に比例するトルクである粘性との和と釣り合うというモデルを用いてフィードフォワード項を算出してもよい。この場合、外乱トルク算出処理M62を、転舵輪42に作用するトルクが、転舵角の角加速度に比例するトルクと粘性成分との和と釣り合うというモデルを用いて構成すればよい。
・上記各実施形態において、フィードバック項算出処理M66の入力のうちのフィードバック制御量としては、例えば、推定値θpeやその1階時間微分値に代えて、ピニオン角θpやその時間微分値自体としてもよい。
・上記各実施形態において、フィードバック項算出処理M66としては、例えば、比例要素の出力値を出力するものとしてもよいし、微分要素の出力値を出力するものとしてもよい。その他、フィードバック項算出処理M66としては、比例要素の出力値および微分要素の出力値の少なくとも一方と、積分要素の出力値との和を出力する処理としてもよい。なお、積分要素の出力値を用いる場合には、外乱トルク算出処理M62を削除することが好ましい。もっとも、積分要素の出力値を用いない場合において、外乱トルク算出処理M62を用いること自体必須ではない。
・上記各実施形態では、舵角比可変処理M46及び加算処理M48を削除し、規範モデル算出処理M20の出力を、操舵角指令値θh*兼ピニオン角指令値θp*としてもよい。
・上記各実施形態では、軸力Tafを入力とし、上記の式(c1)等に基づき操舵角指令値θh*を算出したが、操舵角指令値θh*を算出するためのロジック(モデル)としては、これに限らない。
・上記各実施形態において、操舵側電動機36を制御するための構成としては、抗力算出処理M42を削除して、例えば、操舵操作量Ts*を操作信号生成処理M44に入力するものとしてもよい。
・上記各実施形態において、操舵トルクThのフィードバック制御をすること自体必須ではなく、例えば、操舵トルクThに基づき、アシストトルクを算出し、アシストトルクを様々に補正した値を操舵操作量Ts*とし、これを操作信号生成処理M44に入力するものとしてもよい。
・上記各実施形態では、転舵側電動機52の回転角度の換算可能角度として、例えば、転舵輪42の転舵角としてもよい。
・上記各実施形態では、操舵側電動機36の回転角度の換算可能角度として、例えば、操舵側電動機36の回転角度自体であってもよい。
・上記各実施形態では、操舵操作量Ts*を、例えば、操舵側電動機36のトルクとしてもよい。この場合、操舵トルクThを減速比で除算した値と操舵操作量Ts*との和を軸力Tafとしたり、操舵操作量Ts*に減速比を乗算した値と操舵トルクThとの和を軸力Tafとしたりすればよい。
・上記各実施形態では、転舵操作量Tt*を、例えば、転舵側電動機52のトルクとしてもよい。
・上記各実施形態において、ベース目標トルク算出処理M10としては、例えば、軸力Tafのみに基づきベース目標トルクThb*を算出する処理であってもよい。
・上記各実施形態では、ベース目標トルクThb*をヒステリシス補正量Thysで補正すること自体必須ではない。
・上記各実施形態において、各電動機36,52としては、例えば、IPMSM等であってもよいし、誘導機であってもよい。その他、各電動機36,52としては、ブラシ付きの直流電動機であってもよい。この場合、駆動回路としては、Hブリッジ回路を採用すればよい。
・上記各実施形態において、転舵アクチュエータ50としては、例えば、ピニオン軸26とは別に、転舵側電動機52の動力をラック軸28に伝達させるための第2のピニオンシャフトを備える、所謂、デュアルピニオン型のものであってもよい。
・上記各実施形態では、転舵アクチュエータ50に設けられる図示しない支持機構によって、ラック軸28はその軸線方向に沿って移動可能に支持されるとともに、ピニオン軸26へ向けて押圧されている。これにより、ラック軸28は移動可能に支持され、その周方向の回転が規制される。ただし、ピニオン軸26を使用せずにラック軸28を移動可能に支持する他の支持機構を設けてもよい。この場合、転舵アクチュエータ50としてピニオン軸26を割愛してもよい。
・上記各実施形態において、粘性過少判定値Tcth1及び粘性過大判定値Tcth2は、目的のメカ異常を検出する観点で、いずれか一方の判定値を考慮すれば十分の場合、一の判定値を削除する等、適宜変更可能である。これは、摩擦過少判定値Tfth1及び摩擦過大判定値Tfth2や、慣性過少判定値Tjth1及び慣性過大判定値Tjth2についても同様である。
・上記各実施形態において、警告装置80を通じた運転者への警告としては、例えば、アラーム等の音で知らせたり、抗力を大きくしてステアリングホイール22の操作を重くしたりする等、何かしら状況の変化を運転者が認識できる方法であれば適宜変更可能である。その他、運転者に警告する以外、車両が有する通信機能を用いて、例えば、現在位置から最も近いディーラーであったり、最寄りのディーラー等、車両のメンテナンスが可能な店舗に知らせたりすることもできる。
・上記各実施形態において、操舵制御装置60としては、CPU62とROM64とを備えてソフトウェア処理を実行するものに限らない。例えば、上記各実施形態においてソフトウェア処理されたものの少なくとも一部を、ハードウェア処理する専用のハードウェア回路(たとえばASIC等)を備えてもよい。すなわち、操舵制御装置60は、以下の(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。(a)上記処理の全てを、プログラムに従って実行する処理装置と、プログラムを記憶するROM等のプログラム格納装置とを備える。(b)上記処理の一部をプログラムに従って実行する処理装置およびプログラム格納装置と、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備える。(c)上記処理の全てを実行する専用のハードウェア回路を備える。ここで、処理装置およびプログラム格納装置を備えたソフトウェア処理回路や、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。すなわち、上記処理は、1または複数のソフトウェア処理回路および1または複数の専用のハードウェア回路の少なくとも一方を備えた処理回路によって実行されればよい。
次に、上記各実施形態及び変形例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)上記操舵装置は、前記転舵輪へと動力を伝えることなく変位可能なステアリングホイールを備え、前記電動機は、前記転舵輪を転舵させるための転舵側電動機である。
上記構成によれば、操舵装置のうち、転舵輪に動力を伝える機構の機械的な異常を検出することができるようになる。したがって、所謂、ステアバイワイヤ式の操舵装置において、転舵輪に動力伝える機構の機械的な異常を検出することができる。
(ロ)上記操舵装置は、前記転舵輪へと動力を伝えることなく変位可能なステアリングホイールを備え、前記電動機は、前記ステアリングホイールの変位に抗するトルクを付与する操舵側電動機である。
上記構成によれば、操舵装置のうち、ステアリングホイールに関わる機構の機械的な異常を検出することができるようになる。したがって、所謂、ステアバイワイヤ式の操舵装置において、ステアリングホイールに関わる機構の機械的な異常を検出することができる。
(ハ)上記操舵装置は、前記転舵輪へと動力を伝えるように変位可能なステアリングホイールを備え、前記電動機は、前記転舵輪を転舵させるべくなされる前記ステアリングホイールの操作を補助するトルクを付与する補助用電動機である。
上記構成によれば、操舵装置の機械的な異常を検出することができるようになる。したがって、所謂、電動パワーステアリング装置の機械的な異常を検出することができる。
10…操舵装置
22…ステアリングホイール
30…抗力アクチュエータ
36…操舵側電動機
42…転舵輪
50…転舵アクチュエータ
52…転舵側電動機(補助用電動機)
60…操舵制御装置
62…CPU(制御部)
M42…抗力算出処理(制御量算出処理、所定成分算出処理)
M60…転舵操作量算出処理(制御量算出処理、所定成分算出処理)
M62…外乱トルク算出処理(所定成分算出処理)
M90、M90a、M90b…フィルタ処理
M92、M92a、M92b…異常状態判定処理
BPF…バンドパスフィルタ(粘性成分算出処理、強度変更処理)
LPF…ローパスフィルタ(摩擦成分算出処理)
HPF…ハイパスフィルタ(慣性成分算出処理)

Claims (6)

  1. 車両の転舵輪を転舵させる装置であって、電動機を備えた装置である操舵装置を制御対象とし、
    前記電動機の制御を通じて前記操舵装置の作動を制御する制御部を備え、
    前記制御部は、
    前記電動機を制御するための制御量を算出する制御量算出処理と、
    前記制御量に関する変数の値を入力として、前記電動機を制御することによって現れる前記操舵装置の特性を示す所定成分を算出する所定成分算出処理と、
    前記所定成分算出処理で算出された前記所定成分に基づき、前記操舵装置に機械的な異常があるか否かを判定する異常状態判定処理と、を実行し、
    前記所定成分算出処理は、前記電動機が出力するトルクに関する変数の値及び前記電動機を制御することによって変化する前記操舵装置の状態変数の値を前記制御量に関する変数の値とし、前記電動機が出力するトルク以外に前記状態変数に影響するトルク成分を外乱トルクとして算出する外乱トルク算出処理を含む
    ことを特徴とする操舵制御装置。
  2. 前記所定成分算出処理は、前記外乱トルクを入力とし、前記外乱トルクのうちの特定の周波数成分を選択的に透過させるフィルタ処理を含み、該フィルタ処理の出力を前記所定成分とする請求項に記載の操舵制御装置。
  3. 前記フィルタ処理は、該フィルタ処理への入力が同一であっても前記操舵装置の温度に応じて出力の強度を変更する強度変更処理を含む請求項に記載の操舵制御装置。
  4. 車両の転舵輪を転舵させる装置であって、電動機を備えた装置である操舵装置を制御対象とし、
    前記電動機の制御を通じて前記操舵装置の作動を制御する制御部を備え、
    前記制御部は、
    前記電動機を制御するための制御量を算出する制御量算出処理と、
    前記制御量に関する変数の値を入力として、前記電動機を制御することによって現れる前記操舵装置の特性を示す所定成分を算出する所定成分算出処理と、
    前記所定成分算出処理で算出された前記所定成分に基づき、前記操舵装置に機械的な異常があるか否かを判定する異常状態判定処理と、を実行し、
    前記所定成分算出処理は、前記所定成分として、前記操舵装置の粘性成分を算出する粘性成分算出処理を含む
    ことを特徴とする操舵制御装置。
  5. 車両の転舵輪を転舵させる装置であって、電動機を備えた装置である操舵装置を制御対象とし、
    前記電動機の制御を通じて前記操舵装置の作動を制御する制御部を備え、
    前記制御部は、
    前記電動機を制御するための制御量を算出する制御量算出処理と、
    前記制御量に関する変数の値を入力として、前記電動機を制御することによって現れる前記操舵装置の特性を示す所定成分を算出する所定成分算出処理と、
    前記所定成分算出処理で算出された前記所定成分に基づき、前記操舵装置に機械的な異常があるか否かを判定する異常状態判定処理と、を実行し、
    前記所定成分算出処理は、前記所定成分として、前記操舵装置の摩擦成分を算出する摩擦成分算出処理を含む
    ことを特徴とする操舵制御装置。
  6. 車両の転舵輪を転舵させる装置であって、電動機を備えた装置である操舵装置を制御対象とし、
    前記電動機の制御を通じて前記操舵装置の作動を制御する制御部を備え、
    前記制御部は、
    前記電動機を制御するための制御量を算出する制御量算出処理と、
    前記制御量に関する変数の値を入力として、前記電動機を制御することによって現れる前記操舵装置の特性を示す所定成分を算出する所定成分算出処理と、
    前記所定成分算出処理で算出された前記所定成分に基づき、前記操舵装置に機械的な異常があるか否かを判定する異常状態判定処理と、を実行し、
    前記所定成分算出処理は、前記所定成分として、前記操舵装置の慣性成分を算出する慣性成分算出処理を含む
    ことを特徴とする操舵制御装置。
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