JP7422262B1 - 水硬性組成物、硬化物、及び水硬性組成物の製造方法 - Google Patents

水硬性組成物、硬化物、及び水硬性組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】十分に高い圧縮強度と、低い吸水性を有する硬化物を得ることができる水硬性組成物を提供すること。【解決手段】(A)セメントと、ウレタン樹脂を含む(B)強制乳化型ウレタン樹脂エマルションと、を含み、上記ウレタン樹脂の含有量が、以下の条件(1)及び(2)からなる群より選ばれる少なくとも一つを満たす、水硬性組成物。(1)上記(A)セメント100質量部に対して25質量部以下である。(2)水硬性組成物の総量100質量%に対して7質量%以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、水硬性組成物、硬化物、及び水硬性組成物の製造方法に関する。
従来、コンクリートからなる建築・土木構造物の表面に、水の浸入による躯体の劣化や、内部への漏水を防止する目的で、ポリマーセメントで被覆する工法、珪酸質系防水剤配合モルタルで被覆する工法、有機系樹脂やセメント系、水ガラス系材料による注入・浸透・被膜塗装工法などが提案されている。
例えば、特許文献1に記載された技術には、ウレタン系樹脂を含む樹脂塗膜防水層(ウレタン系防水層)の上にウレタン系樹脂などの接着剤を薄く塗布し、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)系熱可塑性樹脂シートを敷き詰めている。ウレタン系防水層を用いた床版防水構造は、プライマー樹脂層、ウレタン系防水層、ウレタン樹脂接着剤層、EVA系熱可塑性樹脂シートを順次積層してなる構成である。このような構成の床版防水構造は、プライマー樹脂層およびウレタン系防水層を形成した後、ウレタン樹脂接着剤の主剤/硬化剤(イソシアネート/ポリオール)を工事現場で混合し、それをローラ刷毛等で薄く均一に塗布し、熱可塑性樹脂シートを敷き均して施工する。
特許第3956757号公報
しかしながら、従来のポリマーセメント等を硬化させて得られるセメント系硬化体は、強度が十分ではなく、また、吸水性が高いため、水中疲労により劣化しやすいという問題がある。そこで、本開示は、十分に高い圧縮強度と、低い吸水性を有する硬化物、並びにそのような硬化物を得ることができる水硬性組成物、及びその製造方法を提供する。
本開示の一側面は、(A)セメントと、ウレタン樹脂を含む(B)強制乳化型ウレタン樹脂エマルションと、を含み、上記ウレタン樹脂の含有量が、以下の条件(1)及び(2)からなる群より選ばれる少なくとも一つを満たす、水硬性組成物を提供する。このような水硬性組成物の硬化物は、十分に高い圧縮強度を有し、低い吸水性を有する。
(1)上記(A)セメント100質量部に対して25質量部以下である。
(2)水硬性組成物の総量100質量%に対して7質量%以下である。
本開示の一側面は、上記水硬性組成物の硬化物を提供する。このような硬化物は、十分に高い圧縮強度を有し、低い吸水性を有する。
本開示の一側面は、(A)セメントと、(C)多価アルコールと(D)多価イソシアネートの重合反応により得られたウレタン樹脂が水に分散した(B)強制乳化型ウレタン樹脂エマルションと、を混合して水硬性組成物を得る工程を備え、上記水硬性組成物におけるウレタン樹脂の含有量が、以下の条件(1)及び(2)からなる群より選ばれる少なくとも一つを満たす、水硬性組成物の製造方法を提供する。このような製造方法により得られる水硬性組成物の硬化物は、十分に高い圧縮強度を有し、低い吸水性を有する。
(1)上記(A)セメント100質量部に対して25質量部以下である。
(2)水硬性組成物の総量100質量%に対して7質量%以下である。
本開示は、十分に高い圧縮強度と、低い吸水性を有する硬化物、並びにそのような硬化物を得ることができる水硬性組成物、及びその製造方法を提供することができる。
以下、本開示の実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。本開示に明示される数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されるいずれかの値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせてもよい。本開示において例示する材料又は成分は特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
一実施形態に係る水硬性組成物は、(A)セメント(以下、「(A)成分」と称する場合もある。)と、ウレタン樹脂を含む(B)強制乳化型ウレタン樹脂エマルション(以下、「(B)成分」と称する場合もある。)と、を含み、上記ウレタン樹脂の含有量が、以下の条件(1)及び(2)からなる群より選ばれる少なくとも一つを満たす。このような水硬性組成物の硬化物は、十分に高い圧縮強度を有し、低い吸水性を有する。
(1)(A)セメント100質量部に対して25質量部以下である。
(2)水硬性組成物の総量100質量%に対して7質量%以下である。
条件(1)について、ウレタン樹脂の含有量は、(A)成分100質量部に対して25質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよく、10質量部以下であってもよい。ウレタン樹脂の含有量は、非常に小さくても上記効果を奏するため、0質量部でなければ特に制限はなく、(A)成分100質量部に対して0.01質量部以上であってもよく、0.05質量部以上であってもよく、0.1質量部以上であってもよく、1質量部以上であってもよい。本開示におけるウレタン樹脂の含有量は、固形分としての値である。
条件(2)について、ウレタン樹脂の含有量は、水硬性組成物の総量100質量%に対して7質量%以下であってもよく、6質量%以下であってもよい。ウレタン樹脂の含有量は、非常に小さくても上記効果を奏するため、0質量%でなければ特に制限はなく、水硬性組成物の総量100質量%に対して0.01質量%以上であってもよく、0.05質量%以上であってもよく、0.1質量%以上であってもよい。
[セメント]
水硬性組成物は、(A)成分としてセメントを含む。セメントとしては特に限定されず、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等のポルトランドセメント;高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等の混合セメント;エコセメント、超速硬セメント、アルミナセメント、リン酸セメント、気硬性セメント等のその他セメント等から1種又は2種以上を選択して用いることができる。
[水]
水硬性組成物に含まれる水は特に限定されず、例えば、水道水、蒸留水、脱イオン水等であってもよい。水は(B)成分を調製する際に添加されたものと、水硬性組成物を調製する際に添加されたものを含んでよい。水硬性組成物における水の含有量はセメント100質量部に対して20~100質量部であってもよく、25~80質量部であってもよく、30~70質量部あってもよい。また強制乳化型ウレタン樹脂エマルションにおける水の含有量は固形分のウレタン樹脂100質量部に対して75~2250質量部であってもよく、100~1500質量部であってもよく、200~1250質量部であってもよく、250~1000質量部であってもよい。
[強制乳化型ウレタン樹脂エマルション]
水硬性組成物は、(B)成分として強制乳化型ウレタン樹脂エマルションを含む。本開示における「強制乳化型ウレタン樹脂エマルション」とは、水にウレタン樹脂を加え、攪拌によってウレタン樹脂を強制的に水中に分散させたエマルションを指す。すなわち、強制乳化型ウレタン樹脂エマルションは、連続相である水(又は水溶液)と、ウレタン樹脂を含む粒子とを含む。攪拌は、手攪拌で行ってもよく、ホモジナイザー等の機械攪拌で行ってもよく、高圧ホモジナイザー等で行ってもよい。強制乳化型ウレタン樹脂エマルションにおいてウレタン樹脂の粒子は高い均一性で分散されていてもよい。強制乳化型ウレタン樹脂エマルションは、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤は、ウレタン樹脂の側鎖の疎水部の親水性を向上させ、ウレタン樹脂を水中に安定に分散させる役割を果たす。界面活性剤を加えることで、緩慢な攪拌でも強制乳化型ウレタン樹脂エマルションを調製することができる。
強制乳化型ウレタン樹脂エマルションに含まれるウレタン樹脂の固形分濃度は、5質量%以上であってもよく、7質量%以上であってもよい。ウレタン樹脂の固形分濃度がこの範囲であることによって、エマルション中のウレタン樹脂の均質性を向上させることができる。また、ウレタン樹脂の固形分濃度は、65質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよい。ウレタン樹脂の固形分濃度がこの範囲であることによって、エマルション中でウレタン樹脂の凝集を抑制することができる。
水硬性組成物中における(B)成分としての強制乳化型ウレタン樹脂エマルションの含有量は、水硬性組成物100質量部に対して10質量部以上であってもよく、11質量部以上であってもよい。強制乳化型ウレタン樹脂エマルションの含有量がこの範囲であることによって、硬化物の吸水性を一層低くすることができる。また、強制乳化型ウレタン樹脂エマルションの含有量は、水硬性組成物100質量部に対して25質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよい。強制乳化型ウレタン樹脂エマルションの含有量がこの範囲であることによって、優れた混練性が得られ、また、強度が十分に高い硬化物を得ることができる。
一方、本開示における「自己乳化型ウレタン樹脂エマルション」とは、側鎖構造に親水性の官能基を付与したウレタン樹脂を水中に分散させたエマルションを指す。自己乳化型ウレタン樹脂エマルションは、界面活性剤を加えず、且つ攪拌等の外力を加えずともウレタン樹脂を水中に分散させることができる点で強制乳化型ウレタン樹脂エマルションと異なる。自己乳化型ウレタン樹脂エマルションよりも強制乳化型ウレタン樹脂エマルションを使用した方が、水硬性組成物中にウレタン樹脂を十分に分散させることができる。したがって、本開示では強制乳化型ウレタン樹脂エマルションを使用する。
[多価アルコール]
水硬性組成物は、(C)成分として多価アルコールを含んでいてもよい。(C)成分は(B)成分を調製する際に添加されたものであってもよく、(B)成分とは別に水硬性組成物を調製する際に添加されたものであってもよい。多価アルコールは分子内に2つ以上のアルコール性水酸基を有する化合物である。(C)成分としては、分子内に複数の水酸基を有する化合物であれば特に限定されず、脂肪族多価アルコール(複数の水素原子が水酸基により置換された炭化水素化合物)、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ヒマシ油又はその誘導体、ポリブタジエン系ポリオール、アルカノールアミン等が挙げられる。多価アルコール一分子に含まれる水酸基の数は、2~6個であってよく、2~5個であってよく、2~3個であってよく、2個であってよい。なお、水酸基の数は、一分子当たりの平均値(個数平均)であってもよく、その場合、当該数は有理数であってよい。(C)成分は、(B)成分に含まれるウレタン樹脂を製造する際の未反応物であってもよく、ウレタン樹脂を製造する際の未反応物とは別に添加されたものであってよい。
多価アルコールは、エーテル結合及びエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも一つを含んでよい。エーテル結合を含む多価アルコールとして、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジグリセロール、トリグリセロール、ポリグリセロール等が挙げられる。エステル結合を含む多価アルコールとして、例えば、多価カルボン酸と、上記エーテル結合を含む多価アルコールとを反応させて生成する化合物等が挙げられる。具体的には、ポリエステルポリオール、及びポリエステルポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
多価アルコールは、以下の(C1)~(C3)から選択される少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。
(C1)2価アルコールのエチレンオキサイド付加物又はプロピレンオキサイド付加物。
(C2)分子量200以下の2価アルコール(以下、短鎖2価アルコールとも呼ぶ)。
(C3)3価以上のアルコールのエチレンオキサイド付加物又はプロピレンオキサイド付加物。
(C1)成分としては、後述のウレタン樹脂に親水性を付与できる観点から、ポリプロピレングリコールのエチレンオキサイド付加物が好ましい。かかる付加物におけるエチレンオキサイド単位とプロピレンオキサイド単位との質量比(EO/PO質量比)は、10/90~90/10であると好ましく、15/85~80/20であるとより好ましい。
(C1)成分としては、アクトコールED28(三井化学SKCポリウレタン株式会社製;数平均分子量4000、EO/PO質量比:20/80)、アクトコールED36(三井化学SKCポリウレタン株式会社製;数平均分子量3600、EO/PO質量比:78/22)、アクトコールED56(三井化学SKCポリウレタン株式会社製;数平均分子量2000)等が挙げられる。
(C2)成分の分子量は、180以下であってよく、150以下であってもよい。(C2)成分の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の脂肪族2価アルコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のジアルキレングリコールが挙げられる。
(C3)成分は、3価以上のアルコールを開始剤として、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの開環付加反応を行って得られる構造を有する化合物であり、当該開環付加反応で得られる構造と同じ構造の化合物であれば、実際にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを開環付加して製造されたものでなくてもよい。後述のウレタン樹脂の水溶性を低下させる効果がある。
3価以上のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価のアルコール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、ソルビトール、単糖類若しくは多糖類(例えば、スクロース)等の3価以上のアルコールが挙げられる。中でも、3価のアルコールが好ましく、グリセリンがより好ましい。3価のアルコールは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
(C3)成分の数平均分子量(Mn)は、水硬性組成物から形成される硬化物の吸水性を低下させる観点から、300~7000が好ましく、500~6500がより好ましく、1000~6000が更に好ましく、2000~6000が特に好ましい。
(C3)成分としては、例えば、EXCENOL 430(Mn=430)、EXCENOL 1030(Mn=1000)、EXCENOL 3030(Mn=3000)、EXCENOL 4030(Mn=4000)、EXCENOL 5030(Mn=5100)(いずれもAGC株式会社製)等が挙げられる。
[多価イソシアネート]
水硬性組成物は、(D)成分として多価イソシアネートを含んでいてもよい。(D)成分は(B)成分を調製する際に添加されたものであってもよく、(B)成分とは別に水硬性組成物を調製する際に添加されたものであってもよい。(D)多価イソシアネートは、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するものであれば、特に制限されず、芳香族ポリイソシアネート及び脂肪族ポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも一つを含んでいてもよい。(D)成分は、具体的には、フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-3,5-フェニレンジイソシアネート、1-エチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-イソプロピル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-4,6-フェニレンジイソシアネート、1,4-ジメチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート、1-メチル-3,5-ジエチルベンゼンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ジエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、1,3,5-トリエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、1-メチル-ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、ナフタレン-2,7-ジイソシアネート、1,1-ジナフチル-2,2’-ジイソシアネート、ビフェニル-2,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3-3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4-ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネート、カルボジイミド変性イソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等であってよい。これらの多価イソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、沓座用途では橋脚を構成するコンクリートの上に施工するので、機械的強度及び接着性の点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、芳香族ジイソシアネートがより好ましく、トルエンジイソシアネート(1-メチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート及び1-メチル-2,5-フェニレンジイソシアネート)の少なくとも一種が更に好ましい。(D)成分は、(B)成分に含まれるウレタン樹脂を製造する際の未反応物であってもよく、ウレタン樹脂を製造する際の未反応物とは別に添加されたものであってもよい。多価イソシアネート化合物は、水硬性組成物に含まれていなくてもよく、その含有量は、ウレタン樹脂100質量部に対して25質量部以下であってもよく、10質量部以下であってもよく、5質量部以下であってもよい。
[ウレタン樹脂]
(B)成分に含まれるウレタン樹脂は、(C)成分としての多価アルコールの水酸基と、(D)成分としての多価イソシアネートのイソシアネート基との重合反応(逐次重合)を行った際に得られる重合反応生成物であってもよく、当該多価アルコールの残基と、当該多価イソシアネートの残基とを有してもよい。ウレタン樹脂は、分子内に二つ以上のウレタン結合を有するポリウレタン化合物を含み、任意に分子内に一つのウレタン結合を有するモノウレタン化合物を含んでもよい。
このようなウレタン樹脂は、例えば、原料である(C)多価アルコールと(D)多価イソシアネートの混合物を加熱して得られる部分重合物に含まれていてよい。当該部分重合物では、上記混合物に含まれる多価アルコール及び多価イソシアネートのすべてが完全には反応しておらず、部分重合物には上記ウレタン樹脂に加えて原料である多価アルコール又は多価イソシアネートの一部が未反応のまま含まれていてもよい。
ウレタン樹脂について、(C)多価アルコールが反応前に有する水酸基(つまり、原料としての多価アルコールが有する水酸基)の合計のモル量([OH]と表す。)と(D)多価イソシアネートの反応前のイソシアネート基(つまり、原料としての多価イソシアネートが有するイソシアネート基)の合計のモル量([NCO]と表す。)との比[NCO]/[OH]が1より大きくてもよく、1.5以上であってもよい。[NCO]/[OH]が1より大きいと未反応のイソシアネート基が水硬性組成物中に多く存在するため、セメントの硬化に伴ってイソシアネート基と水又は多価アルコールとの反応を多く利用できるため好ましい。
ウレタン樹脂は、上記(C1)、(C2)及び(C3)成分からなる群より選ばれる少なくとも一つの残基を含んでよく、上記(C1)、(C2)及び(C3)成分の全ての残基を含んでもよい。ウレタン樹脂の原料における(C1)成分の含有量は、使用する多価アルコールの総量100質量%に対して、20~70質量%であってもよく、30~60質量%であってもよい。ウレタン樹脂の原料における(C2)成分の含有量は、使用する多価アルコールの総量100質量%に対して、1~15質量%であってもよく、3~10質量%であってもよい。ウレタン樹脂の原料における(C3)成分の含有量は、使用する多価アルコールの総量100質量%に対して、5~30質量%であってもよく、10~25質量%であってもよい。
[界面活性剤]
界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一つであってもよい。強制乳化型ウレタン樹脂エマルションにおける界面活性剤の含有量は、強制乳化型ウレタン樹脂エマルション100質量部に対して0.1~5質量部が好ましい。界面活性剤は、例えば、ノニオン性界面活性剤として、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンアルキルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンアルケニルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシアルキレンアルケニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、プルロニック型活性剤等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、各種の脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレン置換フェニルエーテルサルフェート、ポリカルボン酸塩等を使用することができ、対イオンはナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等が挙げられる。アニオン性界面活性剤として、具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
[骨材]
骨材は、特に限定されず、細骨材、粗骨材等であってよい。細骨材は特に限定されず、珪砂、川砂、海砂、山砂、砕砂、硬質高炉スラグ細骨材、高炉スラグ細骨材、銅スラグ細骨材、電気炉酸化スラグ細骨材等であってよい。粗骨材は特に限定されず、砂利、砕石、高炉スラグ粗骨材、電気炉酸化スラグ粗骨材等であってよい。水硬性組成物は、細骨材及び粗骨材の少なくとも一方を含んでいてもよい。また、水硬性組成物は、細骨材を2種以上含んでいてもよく、粗骨材を2種以上含んでいてもよい。なお、JIS A 0203:2014「コンクリート用語」に規定されるように、細骨材とは10mm網ふるいを全部通り、5mm網ふるいを質量で85%以上通る骨材であり、粗骨材とは5mm網ふるいに質量で85%以上とどまる骨材である。
骨材が細骨材のみを含む場合、水硬性組成物における骨材の含有量は、セメント100質量に対して好ましくは50~500質量部、より好ましくは100~400質量部、更に好ましくは150~350質量部である。
[増粘剤]
増粘剤は、例えば、セルロース系、蛋白質系、ラテックス系、変性アクリル系及び水溶性ポリマー系等が挙げられる。増粘剤は変性アクリル系又はセルロース系増粘剤であることが好ましい。また、増粘剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。水硬性組成物における増粘剤の含有量は、セメント100質量部に対して0.001~1質量部であってもよく、0.01~0.5質量部であってもよい。
[消泡剤]
消泡剤は、例えば、鉱油系、シリコーン系、アルコール系、ポリエーテル系等の合成物質又は植物由来の天然物質等であってよく、ウレタン樹脂中、及びウレタン分散スラリー中の消泡の観点から、好ましくはウレタンの消泡に適した消泡剤である。具体的には、アクリル系ポリマー、ビニルエーテル系ポリマー、ブタジエンポリマー、オレフィンポリマー、ジメチルシリコーン、変性シリコーン、特にポリエーテル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルキル・アラルキル変性シリコーン、高級脂肪族エステル変性シリコーン、高級脂肪酸アミド変性シリコーン、フェニル変性シリコーン、鉱物油、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アセチレンジオール、疎水性シリカ、ワックス、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、ポリオキシアルキレングリコール等並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。水硬性組成物における消泡剤の含有量は、セメント100質量部に対して0.01~2.5質量部であってもよく、0.015~2.0質量部であってもよい。
[減水剤]
減水剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物系減水剤、メラミンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物系減水剤、ポリカルボン酸系減水剤、リグニンスルホン酸系減水剤、ポリスチレンスルホン酸系減水剤、フェノールホルムアルデヒド縮合物系減水剤、及びアニリンスルホン酸系減水剤が挙げられる。減水剤は、界面活性剤的な性質を持ち、水と水酸基を有する化合物を混合して得られる分散液を安定に分散させる乳化剤の役割を果たす。さらに、減水剤は、水硬性組成物の流動性を良くし、施工性、及び作業性を改善できる。また、流動性を良くすることで、水硬性組成物の混合性を改善し、水硬性組成物の均一性を向上することができる。水硬性組成物における減水剤の含有量は、セメント100質量部に対して0.02質量部以上であってもよい。流動性を一層向上する観点から、水硬性組成物における減水剤の含有量は、セメント100質量部に対して0.04質量部以上であってもよく、0.05質量部以上であってもよい。水硬性組成物における減水剤の含有量は、セメント100質量部に対して0.5質量部以下であってもよい。
水硬性組成物のフロー値は、150~300mmであってもよい。水硬性組成物の流動性を一層向上させ、水硬性組成物の均一性及び作業性を一層向上させる観点から、フロー値の下限は180mm、190mm、又は200mmであってもよい。同様の観点から、フロー値の上限は280mm、又は260mmであってもよい。本開示における「フロー値」は、NEXCO試験法313「エアモルタル及びエアミルクの試験方法」に基づいて測定することができる。測定に使用するフローコーンは、例えば、内径が80mm、高さが80mmのものを使用することができる。
水硬性組成物の空気量は7.0%以下であってもよい。空気量の測定は、JIS A 1171「ポリマーセメントモルタルの試験方法-空気量試験」に基づいて測定することができる。なお、空気量は0.1%以上であってもよい。
[その他の成分]
水硬性組成物は、石膏、無機質微粉末、インク、顔料、分散剤、凝結調整材、膨張材、収縮低減剤等のその他成分(添加剤)を含有してもよい。
本実施形態の水硬性組成物は、コンクリート組成物又はモルタル組成物であってもよく、モルタル組成物であると好ましい。
<水硬性組成物の製造方法>
一実施形態に係る水硬性組成物の製造方法は、(A)セメントと、(C)多価アルコールと(D)多価イソシアネートの重合反応により得られたウレタン樹脂が水に分散した(B)強制乳化型ウレタン樹脂エマルションと、を混合して水硬性組成物を得る工程を備え、上記水硬性組成物におけるウレタン樹脂の含有量が、以下の条件(1)及び(2)からなる群より選ばれる少なくとも一つを満たす。
(1)上記(A)セメント100質量部に対して25質量部以下である。
(2)水硬性組成物の総量100質量%に対して7質量%以下である。
水硬性組成物を得る工程は、(C)多価アルコールと(D)多価イソシアネートの重合反応により形成されたウレタン樹脂が水に分散した(B)強制乳化型ウレタン樹脂エマルションを得る工程と(工程2)と、(A)セメントと(B)強制乳化型ウレタン樹脂エマルションとを混合して水硬性組成物を得る工程(工程3)とを含んでよい。また、工程2の前に、(C)多価アルコールと(D)多価イソシアネートとの混合物を加熱してウレタン樹脂(例えば、ウレタン化合物を含む部分重合物)を得る工程(工程1)を含んでよい。水硬性組成物を製造する際の原料は、上述したものを使用することができる。
工程1では、(C)多価アルコールと(D)多価イソシアネートとの混合物を加熱してウレタン樹脂を得る。ウレタン樹脂を得る条件としては、(C)多価アルコールの水酸基と(D)多価イソシアネートのイソシアネート基とが反応する条件であれば特に制限はないが、例えば、80~150℃で行うことが好ましい。また、加熱時間は、1~5時間であると好ましい。工程1は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で行ってもよい。
工程2では、工程1で得られたウレタン樹脂を水に分散させて(B)強制乳化型ウレタン樹脂エマルションを得てもよい。例えば、ウレタン樹脂、界面活性剤、水を混合し、機械攪拌を行うことで(B)強制乳化型ウレタン樹脂エマルションを得る。本実施形態の製造方法では、工程2においてウレタン樹脂を(B)強制乳化型ウレタン樹脂エマルションとしているため、セメント等の他成分と混合しやすく作業性に優れる。なお、(B)強制乳化型ウレタン樹脂エマルションは、上述のとおり調製することに限定されず、市販のものを購入し、任意のウレタン樹脂の固形分濃度となるように水で希釈して調製してもよい。
工程2で得られる(B)強制乳化型ウレタン樹脂エマルションにおけるウレタン樹脂の固形分濃度は5質量%以上であってもよく、7質量%以上であってもよい。ウレタン樹脂の固形分濃度がこの範囲であることによって、エマルション中のウレタン樹脂の均質性を向上することができる。また、ウレタン樹脂の固形分濃度は、65質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよい。ウレタン樹脂の固形分濃度がこの範囲であることによって、エマルション中のウレタン樹脂の凝集を抑制することができる。
工程3では、工程2で得られた(B)強制乳化型ウレタン樹脂エマルションと(A)セメントとを(1)又は(2)の条件を満たすように混合する。混合は、ホバートミキサ等により行ってよい。その他添加剤を部分重合物と一緒にセメントに配合してもよく、(B)強制乳化型ウレタン樹脂エマルションと(A)セメントとを混合した後に配合してもよい。また、骨材及び追加の水についても、(B)強制乳化型ウレタン樹脂エマルションと一緒に(A)セメントに配合してもよく、(B)強制乳化型ウレタン樹脂エマルションと(A)セメントとを混合した後に配合してもよい。
工程3では、(A)セメント100質量部に対して0.02質量部以上の減水剤を加えてもよい。流動性を一層向上する観点から、水硬性組成物における減水剤の含有量は、(A)セメント100質量部に対して0.04質量部以上であってもよく、0.05質量部以上であってもよい。減水剤の含有量は、(A)セメント100質量部に対して0.5質量部以下であってもよい。
上記製造方法で得られる水硬性組成物のフロー値は150~300mmであってもよい。水硬性組成物の流動性を一層向上させ、水硬性組成物の均一性及び作業性を一層向上させる観点から、フロー値の下限は180mm、190mm、又は200mmであってもよい。同様の観点から、フロー値の上限は280mm、又は260mmであってもよい。
<硬化物の製造方法>
硬化物(セメント系硬化体)の製造方法は、特に限定されず、水硬性組成物を成型し、成型体を得る工程(工程4)、及び成形体を養生する工程(工程5)を含んでいてもよい。なお、成型方法は特に限定されず、型(金属製、プラスチック製の型等)に水硬性組成物を流し込んでもよい。必要に応じてバイブレータによる脱気を行ってもよい。水硬性組成物を型内に収容した状態で、例えば、1~5日程度放置して成型体を得る。鉄筋、鉄骨等の芯材を使用する場合は、予め型内に芯材を配置してから水硬性組成物を流し込んでよい。
工程5では、工程4で得られた成型体を養生する。なお、養生前に脱型してもよい。養生の方法としては特に制限されず、封緘養生、水中養生等いずれの養生方法であってもよい。養生は、水硬性組成物が固化するまで行う。
本実施形態の硬化物は、高い圧縮強度及び低吸水性を有するため、建材、消波ブロック等、様々な用途に使用できる。特に、橋梁又は高架橋の支承部沓座材料、消波ブロック等の使用状態において一部が水と接触するもの又は頻繁に水と接触するものの材料として有用である。
材齢28日の硬化物の圧縮強度は、35N/mm以上であってもよく、40N/mm以上であってもよく、50N/mm以上であってもよい。硬化物の圧縮強度がこの範囲であることで、強度が十分に高い硬化物を得ることができる。このような硬化物は、建築・土木構造物の被覆材として好適である。また、材齢28日の硬化物の圧縮強度は、90N/mm以下であってもよく、80N/mm以下であってもよい。硬化物の圧縮強度は、JSCE-G-505「円柱試験体を用いたモルタルまたはセメントペーストの圧縮強度試験方法(案)」に基づいて測定することができる。
硬化物の吸水性は、JSCE-G 582-2018記載の「短期の水掛かりを受けるコンクリート中の水分浸透速度係数試験方法」に記載されている方法に基づき、硬化物の吸水高さを測定することによって評価することができる。硬化物の吸水高さは、15mm以下であってもよく、12mm以下であってもよい。硬化物の吸水高さがこの範囲であることで、吸水性が十分に低い硬化物を得ることができる。また、吸水高さは、0mm以上であってもよく、5mm以上であってもよい。吸水高さが5mm以上である硬化物は、水硬性組成物のフロー値が十分に高く、水硬性組成物の均一性及び作業性に優れる。このような硬化物は、建築・土木構造物の被覆材として好適である。
以上、本開示の幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
本開示は、以下の幾つかの実施形態を含む。
[1](A)セメントと、ウレタン樹脂を含む(B)強制乳化型ウレタン樹脂エマルションと、を含み、
前記ウレタン樹脂の含有量が、以下の条件(1)及び(2)からなる群より選ばれる少なくとも一つを満たす、水硬性組成物。
(1)前記(A)セメント100質量部に対して25質量部以下である。
(2)水硬性組成物の総量100質量%に対して7質量%以下である。
[2]前記(B)強制乳化型ウレタン樹脂エマルションが界面活性剤を含む、[1]に記載の水硬性組成物。
[3]前記界面活性剤が、ノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、[2]に記載の水硬性組成物。
[4]前記ウレタン樹脂が、(C)多価アルコール及び(D)多価イソシアネートの重合体である、[1]~[3]のいずれか一つに記載の水硬性組成物。
[5]前記(C)多価アルコールが、エーテル結合及びエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、[4]に記載の水硬性組成物。
[6]前記(D)多価イソシアネートが、芳香族ポリイソシアネート及び脂肪族ポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、[4]に記載の水硬性組成物。
[7]骨材を含む、[1]~[6]のいずれか一つに記載の水硬性組成物。
[8]フロー値が150~300mmである、[1]~[7]のいずれか一つに記載の水硬性組成物。
[9]前記(A)セメント100質量部に対して、0.02~0.5質量部の減水剤を含む、[1]~[8]のいずれか一つに記載の水硬性組成物。
[10]上記[1]~[9]のいずれか一つに記載の水硬性組成物の硬化物である、硬化物。
[11](A)セメントと、(C)多価アルコールと(D)多価イソシアネートの重合反応により得られたウレタン樹脂が水に分散した(B)強制乳化型ウレタン樹脂エマルションと、を混合して水硬性組成物を得る工程を備え、
前記水硬性組成物における前記ウレタン樹脂の含有量が、以下の条件(1)及び(2)からなる群より選ばれる少なくとも一つを満たす、水硬性組成物の製造方法。
(1)前記(A)セメント100質量部に対して25質量部以下である。
(2)水硬性組成物の総量100質量%に対して7質量%以下である。
[12]前記水硬性組成物のフロー値が150~300mmである、[11]に記載の水硬性組成物の製造方法。
[13]前記工程では、前記(A)セメント100質量部に対して、0.02~0.5質量部の減水剤を加えて前記水硬性組成物を得る、[11]又は[12]に記載の水硬性組成物の製造方法。
以下、実施例及び比較例を挙げて本開示の内容をより具体的に説明する。なお、本開示は下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<ウレタン樹脂の調製>
天秤を用いて314.89gのアクトコールED28((C1)成分、三井化学SKCポリウレタン株式会社製)、41.63gのジプロピレングリコール((C2)成分)、102.94gのEXCENOL 5030((C3)成分、AGC株式会社製)の3種の多価アルコールをセパラブルフラスコ本体に秤量しながら投入した。
ガスを供給しながら、多価アルコールを混合した。
138.55gのコロネート T-100(多価イソシアネート、東ソー株式会社製)を計り取り、上記セパラブルフラスコ本体に投入した。攪拌しながら、100℃で3時間加熱し、ウレタン樹脂を調製した。
ウレタン樹脂の反応進行度はJIS K 7301に基づき評価し、イソシアネート基の含有率が、すべての多価アルコールの水酸基と反応した場合の含有率と略等しくなった時点を終点とした。
<強制乳化型ウレタン樹脂エマルションの調製>
水1000gに界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)を4g投入し、続いてウレタン樹脂100g投入し、ホモジナイザー(製品名:ホモディスパー、プライミクス株式会社製)を用いて攪拌速度600rpmで3時間機械攪拌し、強制乳化型ウレタン樹脂エマルションを得た。
<水硬性組成物の調製>
表2の実施例1に示す配合量で各成分を配合した。具体的には、まず、セメント、珪砂、及び添加剤(増粘剤、減水剤等)を計量し、ホバートミキサに投入し、1分間混合して混合物を得た。次いで、上記のとおり調整した強制乳化型ウレタン樹脂エマルションを混合物に投入してホバートミキサにより混合した。なお、混合不良防止のため、混合開始後(例えば1分程度)、ホバートミキサを停止し、攪拌羽、及び釜についた材料を落とした。再び混合を開始し、2分間混合して水硬性組成物を得た。JIS A 1171「ポリマーセメントモルタルの試験方法-空気量試験」に基づいて、調製した水硬性組成物の空気量を測定した。
表2及び表3中の記号の意味は以下のとおりである。
C :セメントの配合量(g)
P :ウレタン樹脂の配合量(g)
S :細骨材(珪砂)の配合量(g)
Su:界面活性剤量(g)
W :水の配合量(g)
W1:水の配合量(W)のうち、実施例8~14及び比較例2の市販のウレタン樹脂エマルションを希釈する際に加えた水の量(g)
W2:水の配合量(W)のうち、実施例8~14及び比較例2の市販のウレタン樹脂エマルションにあらかじめ含まれていた水の量(g)
A :減水剤の配合量(g)
V :増粘剤の配合量(g)
D1:消泡剤の配合量(g)
C/S:骨材に対するセメントの質量比(セメント/骨材)
P/C:セメントに対するウレタン樹脂の質量比(ウレタン樹脂/セメント)
P/(P+W):強制乳化型ウレタン樹脂エマルションに対するウレタン樹脂の質量比
(P+W)/Total:水硬性組成物に対する強制乳化型ウレタン樹脂エマルションの質量比
W/P:ウレタン樹脂に対する水の質量比(水/ウレタン樹脂)
セメント、減水剤及び消泡剤としては、以下のものを使用した。
セメント:早強ポルトランドセメント(ブレーン比表面積4500cm/g、UBE三菱セメント株式会社製)
減水剤:Melflux AP 101F(商品名、SKWイーストアジア株式会社製、ポリカルボン酸系)、又はマイティ21P(商品名、花王株式会社製、ポリカルボン酸系)
消泡剤:アデカネートB115(商品名、株式会社ADEKA製)、アデカネートB1046(商品名、株式会社ADEKA製)、又はBYK1794(商品名、ビックケミージャパン株式会社製)
増粘剤:マーポローズMX30000(商品名、松本油脂製薬株式会社製)
(実施例2)
水1000gに、界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)を4g投入し、続いてウレタン樹脂を100g投入して、実施例1と同様の攪拌により強制乳化型ウレタン樹脂エマルションを調製した。続いて、配合量を表2の実施例2に示すとおりにして、各成分を配合し、水硬性組成物を調製した。混合は、実施例1と同様の手順で行い、実施例1と同様に空気量を測定した。
(実施例3~7)
表2のウレタン樹脂を同表の界面活性剤を混合した水に分散した。具体的には所定量の水に界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)を投入し、続いてウレタン樹脂を投入し1時間から3時間攪拌し強制乳化型ウレタン樹脂エマルションを得た。続いて、配合量を表2の実施例3~7に示すとおりにして、各成分を配合し、水硬性組成物を調製した。混合は、実施例1と同様の手順で行った。
(実施例8~14)
<市販のウレタン樹脂エマルションの準備>
DIC株式会社、及び日華化学株式会社より、商品名の異なるウレタン樹脂エマルションの市販品を購入した。DIC株式会社より購入した各商品名のウレタン樹脂エマルションにおける、ウレタン樹脂の固形分濃度、ウレタン樹脂のポリオールの種類、イソシアネートの種類、界面活性剤のイオン性を表1に示す。日華化学株式会社より購入したウレタン樹脂エマルションは、商品名AP-12、ウレタン樹脂の固形分濃度40.0質量%であった。
<強制乳化型ウレタン樹脂エマルションの調製>
購入した市販のウレタン樹脂エマルションを水で希釈し、実施例8~14で使用する強制乳化型ウレタン樹脂エマルションを得た。希釈するために加えた水の量(g)は、表2のW1の項目に示したとおりである。得られた強制乳化型ウレタン樹脂エマルションを用いて、配合量を表2の実施例8~14に示すとおりにし、水硬性組成物を調製した。なお、市販品に含まれる界面活性剤量は明らかでないため、表2の実施例8~14の界面活性剤量は「不明」とした。混合は、実施例1と同様の手順で行った。
(比較例1)
実施例1のウレタン樹脂を水に置き換え、表2に示す配合量で各成分を配合して水硬性組成物を調製した。すなわち、比較例1はウレタン樹脂を含まない水硬性組成物である。混合は、実施例1と同様の手順で行った。
(比較例2)
市販の自己乳化型ウレタン樹脂エマルションである「MELUSI6070」(商品名、トーヨーポリマー株式会社製)を用いて、配合量を表2の比較例2に示すとおりにし、水硬性組成物を調製した。混合は、実施例1と同様の手順で行った。
表2及び表3に示すウレタン樹脂の配合量はエマルションとしてではなく、固形分としての配合量とした。また、水(W)の配合量は、水硬性組成物中に含まれる水の量であり、水は全てエマルションとして他の成分と配合した。
<混合性の評価>
実施例1,2,8~14、及び比較例1の水硬性組成物のフロー値をそれぞれ測定した。フロー値は、NEXCO試験法313「エアモルタル及びエアミルクの試験方法」に基づいて測定した。フローコーンは、内径が80mm、高さが80mmのものを使用した。結果を表3に示す。
<供試体の作製>
調製した実施例1~14、及び比較例1,2の水硬性組成物をそれぞれ型に入れた。1日後に脱型して成型体を得た。成型体を水中に沈め、28日間養生し(水中養生)、供試体を得た。
<ウレタン樹脂の分散性の評価>
水硬性組成物のウレタン樹脂の分散性を材齢28日経過後の供試体の断面を目視で確認することにより評価した。ウレタン樹脂の塊が目視で確認されず、ウレタン樹脂が水硬性組成物中に分散していたものを「A」とした。比較例2の水硬性組成物では材齢28日経過後の供試体の断面にウレタン樹脂の白い塊が生じていたため、ウレタン樹脂の分散性を「B」とした。混合性の評価結果を表3に示す。
<圧縮強度の測定方法>
(圧縮強度)
実施例1~14、及び比較例1の各供試体の、材齢28日の圧縮強度の試験を行った。圧縮強度の試験方法は、JSCE-G-505「円柱試験体を用いたモルタルまたはセメントペーストの圧縮強度試験方法(案)」に記載されている方法に従った。圧縮強度の試験結果を表3に示す。
<吸水性の評価>
実施例1~14、及び比較例1の各供試体の吸水試験を行った。吸水試験の試験方法は、JSCE-G 582-2018記載の「短期の水掛かりを受けるコンクリート中の水分浸透速度係数試験方法」に記載されている方法に従って測定した。吸水高さの試験結果を表3に示す。
Figure 0007422262000002
Figure 0007422262000003

表3より、実施例1~14では、比較例1よりも吸水性に優れていた。また、実施例1,2,8~14においては、フロー値が向上し、比較例1よりも高い混合性を示した。
本開示によれば、十分に高い圧縮強度と、低い吸水性を有する硬化物、並びにそのような硬化物を得ることができる水硬性組成物、及びその製造方法を提供することができる。

Claims (9)

  1. (A)セメントと、ウレタン樹脂を含む(B)強制乳化型ウレタン樹脂エマルションと、減水剤と、を含み、
    前記ウレタン樹脂が、(C)多価アルコール及び(D)多価イソシアネートの重合体であり、
    前記(C)多価アルコールがエーテル結合を含み、
    前記減水剤の含有量が、前記(A)セメント100質量部に対して0.05~0.5質量部であり、
    前記ウレタン樹脂の含有量が、以下の条件(1)及び(2)からなる群より選ばれる少なくとも一つを満たす、水硬性組成物。
    (1)前記(A)セメント100質量部に対して2.5~25質量部である。
    (2)水硬性組成物の総量100質量%に対して(20/2822.6)×100~7質量%である。
  2. 前記(B)強制乳化型ウレタン樹脂エマルションが界面活性剤を含む、請求項1に記載の水硬性組成物。
  3. 前記界面活性剤が、ノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、請求項2に記載の水硬性組成物。
  4. 前記(D)多価イソシアネートが、芳香族ポリイソシアネート及び脂肪族ポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の水硬性組成物。
  5. 骨材を含み、
    前記水硬性組成物における前記骨材の含有量が、前記(A)セメント100質量部に対して150~350質量部である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水硬性組成物。
  6. フロー値が150~300mmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の水硬性組成物。
  7. 請求項1~3のいずれか一項に記載の水硬性組成物の硬化物である、硬化物。
  8. (A)セメントと、(C)多価アルコールと(D)多価イソシアネートの重合反応により得られたウレタン樹脂が水に分散した(B)強制乳化型ウレタン樹脂エマルションと、減水剤と、を混合して水硬性組成物を得る工程を備え、
    前記(C)多価アルコールが、エーテル結合を含み、
    前記水硬性組成物における前記減水剤の含有量が、前記(A)セメント100質量部に対して0.05~0.5質量部であり、
    前記水硬性組成物における前記ウレタン樹脂の含有量が、以下の条件(1)及び(2)からなる群より選ばれる少なくとも一つを満たす、水硬性組成物の製造方法。
    (1)前記(A)セメント100質量部に対して2.5~25質量部である。
    (2)水硬性組成物の総量100質量%に対して(20/2822.6)×100~7質量%である。
  9. 前記水硬性組成物のフロー値が150~300mmである、請求項に記載の水硬性組成物の製造方法。
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